JP2010043445A - 鉄骨柱の耐火被覆構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】不燃性の外壁3に対向して設けられる鉄骨柱4の耐火被覆構造において、鉄骨柱4の外周のうち外壁3に対向しない剥出部4Aを覆う熱膨張性の耐火被覆シート層10と、耐火被覆シート層10の表面を覆う金属膜の気密層11とを具備させ、鉄骨柱4の剥出部4Aと耐火被覆シート層10の間に、フェノール樹脂発泡体を主材とする断熱層12を設ける。
【選択図】 図2
Description
また、省エネルギー化を実現する建物では、建物の外壁に沿って配置された鉄骨に耐火性と共に気密性と断熱性を付与することで、建物全体の断熱気密性を確保することが必要になる場合が多い。
しかしながら、特許文献1に開示の構成においては、外壁と耐火被覆された鉄骨柱との間に換気通路が形成されており、建物の温熱環境に貢献するための断熱層は当該耐火被覆構造とは別に設ける構成となっているため、施工が煩雑であると共に、壁内の構成も複雑なものとなってしまう問題があった。同様に、建物内外の気密をとるための構成も耐火被覆構造とは別に設ける必要があり、これによっても施工が煩雑となってしまう問題があった。
(1)不燃性の外壁に対向して設けられる鉄骨柱の耐火被覆構造であって、
該鉄骨柱の外周のうち前記外壁に対向しない剥出部を覆う熱膨張性の耐火被覆シート層と、前記耐火被覆シート層の表面を覆う金属膜の気密層と、前記鉄骨柱の剥出部と耐火被覆シート層の間に設けられるフェノール樹脂発泡体を主材とする断熱層とを備えていること特徴としている。
当該気密層により、鉄骨柱に向けての熱気の流入が防止される。また、該気密層は金属膜により形成されているために輻射熱の通過も抑制される。また、所定の温度以上となると耐火被覆シート層が膨張して(不燃性の)断熱層を形成することとなるので、これらによって当該火災による熱気の鉄骨柱に向けての流入は一次的に抑制される。
また、火災のない通常時においては、当該気密層により気密層を介しての空気の流通が著しく制限されるため、これによって、当該耐火被覆構造を介しての建物内外の気密性を確保することができるのである。
したがって、当該断熱層は、火災時においても温度上昇の鈍化にのみ貢献し、温度上昇の原因となる諸要因を発現することはないので、上記気密層と耐火被覆シート層により形成される一次的な断熱を補助する二次的な断熱として有効に機能させることができると考え、上述の如き構成を採用することとした。
また、火災のない通常時においては、当該断熱層は所定の断熱性能を発揮することができ、これによって、当該耐火被覆構造を介しての建物内外間での断熱性能を確保することができる。
これによれば、耐火被覆シート層が確実に不燃性の外壁と連続する気密に形成されている外壁に連続することとなり、建物内外の気密耐火性能をより向上させることができる。
これによれば、鉄骨柱に対する耐火性能をさらに向上させることができる。
これによれば、耐火性能をさらに向上させることができるばかりでなく、当該下地材に仕上げ層を止めつけることができ、施工性を向上させることができる。また、かかる構成によれば、下地材によりある程度の耐火性能を担保することができるので、その分だけ耐火被覆シートの厚みを減少させることができ、比較的高価格の耐火被覆シートの使用量を減らすことができてコストダウン化を図ることができる。
当該断熱部材により、火災のない通常時における当該鉄骨柱周りの断熱性が向上することとなる。
図1に示す如く、本発明に係る鉄骨柱の耐火被覆構造が利用される典型的な建物は、基礎1と、該基礎1上に組み上げられる構造躯体2と、該構造躯体2に支持される外壁3とを備えて形成される地上2階の組立住宅である。
基礎1は、外壁3や間仕切り壁の長さ方向に連続する同一断面の鉄筋コンクリート製の布基礎として形成されている。
構造躯体2は、基礎1上に立設される鉄骨柱4と、該鉄骨柱4間に架け渡される鉄骨梁5と、基礎1や鉄骨梁5に支持される床スラブ6とを備えて形成される鉄骨の軸組構造として構成されている。
鉄骨梁5は、上下一対のフランジと、該上下一対のフランジの中央部間を連結するウェブとを備えて形成される所謂H型鋼により形成されており、梁端部に設けられたエンドプレートを介して鉄骨柱4に高力ボルト接合されており、これによって溶接接合を排することとして作業者の熟練によらず接合部位の品質を一定のものとしている。
床スラブ6は、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concreteの略))製の床パネルを敷設することにより形成されている。1階床スラブ6を形成する床パネルは、端部を基礎の上面に載置した状態で設置されている。また、2階の床スラブ6及び屋根スラブ6を形成する床パネルは、端部を鉄骨梁5の上フランジ上面に載置した状態で、該梁5に取り付けられた剛床金物を介して当該鉄骨梁5に支持されている。
外壁3は、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC)製の外壁パネルを並べて配備することにより形成されている。
また、各外壁パネルは、当該階の床スラブ6の下面から鉄骨梁5の上フランジの上面に至る少なくとも各階の高さに相当する高さを有している。また、各階の外壁パネルは、鉄骨梁5から外壁パネルに向けて突出した状態に取り付けられる自重受け金具やイナズマプレート等の各種支持金物を適宜介して鉄骨梁5や基礎1に上下端部が支持されている。
上述の如く軽量気泡コンクリートにより形成される床スラブ6や外壁3は、軽量で且つ高い断熱性能を有するものとなる。
耐火被覆シート層10は、グラファイト粉末等の発泡顔料をエポキシ樹脂やブチル等の樹脂バインダーで固めたシート状に形成され、加熱により所定温度に達すると発泡・膨張し、膨張後に燃焼せずに断熱性を発揮する有機系の耐火材である。該膨張断熱シートは、通常の温度環境下では膨張することなく、200℃程度以上に加熱されると厚さ方向に5〜40倍程度に発泡して膨張し、当該膨張による発泡残渣が断熱層として機能するものであって、通常の温度環境下で厚さを1mm〜5mm程度とすると共に比重1〜2程度とし、火災時の高温雰囲気により5〜40倍に膨張するものが好ましい。本実施形態においては、この種の耐火被覆シート層として、フィブロック(登録商標フィブロック/Fiblock。商標権者:積水化学工業株式会社)を用いている。
なお、耐火被覆シート層10としては、上記フィブロックに限定されず、無機系又は有機系の他の熱膨張性の断熱シートも採用可能である。
また、アルミニウムは、きわめて高い熱反射率(一般には97%程度)を有しているので、輻射熱がアルミニウム薄膜に到達する場合であっても、殆どの輻射熱はアルミニウム薄膜表面で反射され、きわめて僅かな輻射熱がアルミニウム薄膜を貫通するのみとなり、これによって、火災時においても気密層11を通じての鉄骨柱4に向けての熱の移動が著しく抑制され、ひいては鉄骨柱4表面の温度上昇の鈍化が図られるのである。
なお、本実施形態において耐火被覆シート層10及び気密層11は、上記耐火被覆シート層10の表面に気密層11を被覆した一体のものを用いているが、気密層11としては、アルミニウム箔をガラス繊維により補強してなるアルミガラスクロス等を用い、耐火被覆シート層10と別体として用いることも好ましい。
これら各断熱部12a、12bは、フェノール樹脂発泡体等の成形体や発泡体を板状に形成して構成されており、具体的には、本件出願人が開発して既に国際出願(特願2000−558158)した技術(ネオマフォーム(登録商標))に係るものを用いている。当該技術に係るフェノール樹脂発泡体は、断熱材として好ましく使用することが可能で、且つ気密材としても好ましく使用することが可能である。
上記フェノール樹脂発泡体では、高い断熱性と気密性を有し、且つこれらの性能を長期間維持し得る性質を有している。フェノール樹脂発泡体に於ける断熱性は、気泡径が5μm〜200μmの範囲、好ましくは10μm〜150μmと小さく、且つ独立気泡率を80%以上と高く保持することによって確保することが可能である。
例えば、フェノール樹脂発泡体の密度を27kg/m3に設定した場合、20℃に於ける熱伝導率は0.02W/m・Kである。また、当該フェノール樹脂発泡体の耐熱温度(熱変形温度)は160℃〜200℃程度であり、当該温度までは形状を保持して断熱性能を発揮し続けるため、これによって、当該フェノール樹脂発泡体からなる断熱層は、自らが高温となっても高い断熱性能を維持する。
また、フェノール樹脂発泡体は、上述の如く熱変形温度が160℃〜200℃であって高い耐燃焼性を有しており、火炎が作用したとき、単に炭化するのみであって、着火することのない非発火性であり、さらには、爆発・燃焼や温度上昇に起因するガスの発生もない。
このため、フェノール樹脂発泡体からなる断熱材では、従来の押出法発泡ポリスチレンや硬質ウレタンフォームの約2/3程度の厚さで略同等の断熱性能を発揮することが可能である。
また、フェノール樹脂発泡体は、比較的脆い材料であるため、少なくとも片面にクラフト紙や不織布からなる保護層を設けるのが一般的である。特に、本件出願人が開発して特許出願している特開平11−198332号公報に開示されたフェノール樹脂発泡体積層板は、保護層を形成する不織布を改良することによって接着性能を向上させたものであり、この不織布によってフェノール樹脂発泡体の強度を改善して、強度、断熱性共に優れた建築用断熱材料として提供されるものである。
なお、各断熱部12a、12bは、厚さを7mm〜45mmの範囲で設定されたものを用いることが好ましく、本実施形態においては厚さを12mmとしたものを採用している。
なお、各下地材13及び仕上げ材14は、厚さを7mm〜20mmの範囲で設定された板材を用いることが好ましく、本実施形態においては厚さを9.5mmとしたものを採用している。
該断熱部16は、上記断熱層12の断熱部材と同様に、フェノール樹脂発泡体を薄板状に形成したものが用いられており、鉄骨柱4と一方の外壁3及びコーナーパネル部材7の一方の片の間に設けられる一方の断熱部材と、鉄骨柱4と他方の外壁3及びコーナーパネル部材7の他方の片の間に設けられる他方の断熱部材とを備えている。各断熱部材は、一方の端部が下地材13の各下地板13a、13bに突き付けられると共に、他方の端部を互いに突き付けた状態で設けられており、これによって、該下地材13を介して断熱層12に対向している。
なお、断熱部16の各断熱部材は、厚さを7mm〜25mmの範囲で設定されたものを用いることが好ましく、本実施形態においては厚さを7mmとしたものを採用している。
また、火災のない通常時においては、当該気密層11により空気の流通が著しく制限されるため、これによって、当該耐火被覆構造を介しての建物内外の気密性を確保することができるのである。
したがって、断熱層12は、火災時においても温度上昇の鈍化にのみ貢献し、温度上昇の原因となる諸要因を発現することはないので、気密層11と耐火被覆シート層10により形成される一次的な断熱を補助する二次的な断熱として有効に機能する。
また、火災のない通常時においては、断熱層12は所定の断熱性能を発揮することができ、これによって、当該耐火被覆構造を介しての建物内外間での断熱性能を確保することができる。
例えば、上記実施形態のうち、耐火被覆シート層10、気密層11、鉄骨柱4の剥出部4Aを覆う断熱層12以外の構成を除いたものを採用することが可能であり、図3に示す如く、薄板状の断熱部を不存在とする構成や、図4に示す如く、下地材を不存在とする構成を採用する場合であっても、本実施形態と同様の作用効果を奏する。
また、鉄骨柱の一側面のみが不燃性の外壁に対向している場合、当該鉄骨柱の剥出部4Aは当該一側面以外の側面によって構成され、当該剥出部4Aに上述の如く断熱層、耐火被覆シート層、気密層を備えた耐火被覆構造を設ける構成を採用することも可能である。また、外壁に対向せずに建物の内部で鉄骨梁を支持する鉄骨柱は、側面が全て剥出部となるが、当該剥出部に上述の如く断熱層、耐火被覆シート層、気密層を備えた耐火被覆構造を設ける構成を採用することも可能である。
2 構造躯体
3 外壁
4 鉄骨柱
4A 剥出部
5 鉄骨梁
6 床スラブ
7 コーナーパネル
8 内装構造
9 沿外壁断熱材
10 耐火被覆シート層
11 気密層
12 断熱層
12a、12b 断熱部
13 下地材
13a、13b 下地板
14 仕上げ材
14a、14b 仕上げ板
15 固定具
16 断熱部(断熱部材)
Claims (5)
- 不燃性の外壁に対向して設けられる鉄骨柱の耐火被覆構造であって、
該鉄骨柱の外周のうち前記外壁に対向しない剥出部を覆う熱膨張性の耐火被覆シート層と、前記耐火被覆シート層の表面を覆う金属膜の気密層と、前記鉄骨柱の剥出部と耐火被覆シート層の間に設けられるフェノール樹脂発泡体を主材とする断熱層とを備えていることを特徴とする鉄骨柱の耐火被覆構造。 - 前記耐火被覆シート層及び気密層は、前記鉄骨柱の剥出部を回りこんで前記外壁に止め付けられていることを特徴とする請求項1に記載の鉄骨柱の耐火被覆構造。
- 前記耐火被覆シート層及び気密層は、不燃性の仕上げ材で覆われていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄骨柱の耐火被覆構造。
- 前記耐火被覆シート層と鉄骨柱との間に不燃性の下地材が介在していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の鉄骨柱の耐火被覆構造。
- 前記鉄骨柱と外壁との間に断熱部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の鉄骨柱の耐火被覆構造。
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