JP2010043138A - シリル化ヒアルロン酸誘導体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はシリル化ヒアルロン酸誘導体、特に表面処理剤としての使用性に優れた新規なヒアルロン酸誘導体の開発に関する。
ムコ多糖の一種であるヒアルロン酸は、ヒトにおいて、関節、脳、皮膚組織等の細胞外基質に存在しており、特に皮膚組織ではその高い保水性により、皮膚の乾燥を防ぐ働きをしていることが知られている。このため、ヒアルロン酸は保湿成分として化粧品等に広く用いられている。しかしながら、ヒアルロン酸は、その高い親水性ゆえに化粧品に汎用されるエタノール等の有機溶媒に溶解しないため、配合に工夫を要することがあった。また、皮膚の最上層である角層は皮脂等のために若干疎水性を示すため、ヒアルロン酸のような極めて親水性の高い化合物は皮膚に吸収されにくいことが知られている。
このような問題に対して、ヒアルロン酸等の水溶性高分子と、脂質とを用いて無機粉体表面を被覆し、皮膚上での密着性と、保湿性とを両立した表面処理粉体が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、ヒアルロン酸は、汎用の有機溶媒に溶解することができない一方で、水中では多量の水分を保持して高粘度のゲル状となってしまうことから、粉体表面状へと均一に被覆することは非常に困難であり、ヒアルロン酸被覆粉体として十分に満足のいくものが得られているとは言えなかった。また、粉体表面に限らず、ヒアルロン酸の生体適合性、高親水性(保水性)といった各種機能性付与の観点から、各種物品表面に対するヒアルロン酸処理も非常に有用であると考えられている。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面処理剤としての使用性に優れた新規なヒアルロン酸誘導体を提供することにある。
上記目的を達成するため、本研究者らが鋭意検討を行った結果、トリブチルアミン処理した有機溶媒可溶性ヒアルロン酸を用い、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートと反応させることによって、ヒアルロン酸構造中にトリエトキシシリル基が導入された、特定構造のシリル化ヒアルロン酸誘導体が得られることを見出した。そして、このシリル化ヒアルロン酸誘導体を表面処理剤として使用することによって、基粉体表面上にヒアルロン酸が均一に被覆された表面処理粉体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかるシリル化ヒアルロン酸誘導体は、下記一般式(1)により表されることを特徴とするものである。
(上記一般式(1)中、R1は炭素数1〜4の2価アルキレン基、R2は炭素数1〜4の1価アルキル基、X1は水素あるいは総炭素数3〜15のアルキルアンモニウムイオンであり、mは2〜900の整数であり、m+nは8〜1500の整数である。)
また、前記シリル化ヒアルロン酸誘導体において、前記一般式(1)中、R1がプロピレン基であり、R2がエチル基であることが好適である。
本発明にかかるヒアルロン酸誘導体の製造方法は、(i)ヒアルロン酸水溶液中に総炭素数3〜15のアルキルアミンを添加し、該ヒアルロン酸のカルボキシル基をアルキルアンモニウム塩に置換することによって有機溶媒可溶性のヒアルロン酸を得る工程と、(ii)上記工程により得られた有機溶媒可溶性ヒアルロン酸を、下記一般式(2)で示されるトリアルコキシシリルアルキルイソシアネートと反応させて、該ヒアルロン酸のメチロール基にトリアルコキシシリル基を導入する工程とを備えることを特徴とするものである。
O=C=N−R1−Si(OR2)3 (2)
(上記一般式(2)中、R1は炭素数1〜4の2価アルキレン基、R2は炭素数1〜4の1価アルキル基である。)
O=C=N−R1−Si(OR2)3 (2)
(上記一般式(2)中、R1は炭素数1〜4の2価アルキレン基、R2は炭素数1〜4の1価アルキル基である。)
また、前記シリル化ヒアルロン酸誘導体の製造方法において、前記トリアルコキシシリルアルキルイソシアネートが3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートであることが好適である。
また、前記シリル化ヒアルロン酸誘導体の製造方法において、前記総炭素数3〜15のアルキルアミンが、トリブチルアミンであることが好適である。
また、前記シリル化ヒアルロン酸誘導体の製造方法において、前記総炭素数3〜15のアルキルアミンが、トリブチルアミンであることが好適である。
また、本発明にかかる表面処理剤は、前記シリル化ヒアルロン酸誘導体からなることを特徴とするものである。
また、本発明にかかる表面処理粉体は、前記表面処理剤で基粉体を処理してなることを特徴とするものである。
また、本発明にかかる表面処理粉体は、前記表面処理剤で基粉体を処理してなることを特徴とするものである。
本発明によれば、アルキルアミン処理した有機溶媒可溶性ヒアルロン酸を用い、トリアルコキシシリルアルキルイソシアネートと反応させることによって、ヒアルロン酸構造中にトリアルコキシシリル基が導入され、表面処理剤としての使用性に優れた、特定構造のシリル化ヒアルロン酸誘導体が得られる。
上記一般式(1)において、R1は炭素数1〜4の2価アルキレン基である。R1としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基基等が挙げられ、これらのうち、プロピレン基であることが特に好ましい。また、R2は炭素数1〜4の1価アルキル基である。R2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、これらのうち、エチル基であることが特に好ましい。
なお、上記R1及びR2はいずれも、シリル化ヒアルロン酸誘導体の製造時に使用する下記一般式(2)で示されるトリアルコキシシリルアルキルイソシアネートに由来するものである。
O=C=N−R1−Si(OR2)3 (2)
このため、シリル化ヒアルロン酸誘導体の製造時において、任意のR1及びR2を有するトリアルコキシシリルアルキルイソシアネートを使用することで、R1及びR2を自由に変更することができる。
O=C=N−R1−Si(OR2)3 (2)
このため、シリル化ヒアルロン酸誘導体の製造時において、任意のR1及びR2を有するトリアルコキシシリルアルキルイソシアネートを使用することで、R1及びR2を自由に変更することができる。
また、上記一般式(1)において、X1は、水素あるいは総炭素数3〜15のアルキルアンモニウムイオンである。総炭素数3〜15のアルキルアンモニウムイオンとしては、例えばトリブチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
なお、上記X1は、シリル化ヒアルロン酸誘導体の製造時に使用する総炭素数3〜15のアルキルアミンに由来するものである。すなわち、ヒアルロン酸を総炭素数3〜15のアルキルアミンで処理することによって、該ヒアルロン酸のカルボキシル基が、アルキルアンモニウム塩により置換されている。また、このアルキルアンモニウム塩は、例えば、酸処理あるいはイオン交換処理等を行うことによって容易にカルボキシル基へと再変換される。このため、本発明のシリル化ヒアルロン酸誘導体において、X1は水素であってもアルキルアンモニウムイオンであってもよい。
なお、上記X1は、シリル化ヒアルロン酸誘導体の製造時に使用する総炭素数3〜15のアルキルアミンに由来するものである。すなわち、ヒアルロン酸を総炭素数3〜15のアルキルアミンで処理することによって、該ヒアルロン酸のカルボキシル基が、アルキルアンモニウム塩により置換されている。また、このアルキルアンモニウム塩は、例えば、酸処理あるいはイオン交換処理等を行うことによって容易にカルボキシル基へと再変換される。このため、本発明のシリル化ヒアルロン酸誘導体において、X1は水素であってもアルキルアンモニウムイオンであってもよい。
また、上記一般式(1)において、mは、トリアルコキシシリルアルキル基が導入されたヒアルロン酸構成単位の結合モル数である。また、m+nは、ヒアルロン酸1分子当たりの全ヒアルロン酸構成単位の結合モル数である。ここで、上記mは2〜900の整数であり、上記m+nは8〜1500の整数である。より好ましくは、mは5〜600であり、m+nは10〜1000である。なお、トリアルコキシシリルアルキル基の導入率を表す{m/(m+n)}は、0.25〜0.6であることが好ましく、0.4〜0.6であることが特に好ましい。
製造方法
以下、上記シリル化ヒアルロン酸誘導体の製造方法について説明する。
(i)有機溶媒可溶性ヒアルロン酸の調製
本発明の製造方法方法においては、まず最初に、ヒアルロン酸水溶液中に総炭素数3〜15のアルキルアミンを添加し、該ヒアルロン酸のカルボキシル基をアルキルアンモニウム塩に置換することによって、有機溶媒可溶性のヒアルロン酸を調製する。
以下、上記シリル化ヒアルロン酸誘導体の製造方法について説明する。
(i)有機溶媒可溶性ヒアルロン酸の調製
本発明の製造方法方法においては、まず最初に、ヒアルロン酸水溶液中に総炭素数3〜15のアルキルアミンを添加し、該ヒアルロン酸のカルボキシル基をアルキルアンモニウム塩に置換することによって、有機溶媒可溶性のヒアルロン酸を調製する。
本発明に用いるヒアルロン酸は、下記一般式に示されるように、N−アセチル−D−グルコサミン残基と、D−グルクロン酸残基が交互に結合した直鎖状高分子であり、このようなものであれば特に限定することなく用いることができる。
ヒアルロン酸は、例えば、鶏冠や他の動物組織からの単離抽出、あるいはストレプト・コッカス属などの微生物を用いた発酵法により得ることができる。また、本発明においては、例えば、ヒアルロン酸の誘導体として、ヒアルロン酸ナトリウム塩、ヒアルロン酸カリウム塩等のヒアルロン酸金属塩や、ヒアルロン酸のヒドロキシル基、カルボキシル基等をエーテル化、エステル化、アミド化、アセタール化、ケタール化させて得られるヒアルロン酸誘導体等を用いても構わない。また、本発明のヒアルロン酸としては、市販品を用いることもできる。市販のヒアルロン酸としては、例えば、バイオヒアロ12(資生堂社製)、ヒアルロン酸(紀文社製)等が挙げられる。
なお、本発明に使用するヒアルロン酸は、有機溶媒に可溶性のヒアルロン酸とする必要があることから、分子量500,000〜10,000程度の低分子量ヒアルロン酸を使用することが好ましい。
また、本工程に使用するヒアルロン酸水溶液の濃度は、特に限定されるものではないが、通常、分子量500,000以上の高分子量ヒアルロン酸を用いる場合、1〜3質量%で行われる。3質量%を超えると、水溶液の粘度が高くなりすぎてしまい、操作が非常に困難になる。また、分子量500,000〜10,000程度の低分子量ヒアルロン酸を用いる場合、1〜35質量%で行われる。35質量%を超えると、水溶液の粘度が高くなりすぎてしまい、操作が非常に困難になる。
なお、ヒアルロン酸水溶液中に含まれるナトリウム塩、カリウム塩等の塩は、予め全て酸型に変更しておくことが好適である。このため、例えば、ヒアルロン酸水溶液を、予めイオン交換樹脂カラムに通しておくことが望ましい。
つづいて、上記ヒアルロン酸水溶液中に総炭素数3〜15のアルキルアミンを添加することによって、該ヒアルロン酸のカルボキシル基をアルキルアンモニウム塩に置換する。ここで、アルキルアミンの添加量は特に限定されないが、水溶液中のヒアルロン酸質量に対して、0.5〜2倍量程度が好ましい。
本発明に用いる総炭素数3〜15のアルキルアミンとしては、例えば、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等が挙げられる。例えば、ヒアルロン酸をトリブチルアミンで処理することによって、ヒアルロン酸のカルボキシル基の水素イオンがトリブチルアンモニウム塩に置換され、これによってジメチルスルホキシド(DMSO)可溶性のヒアルロン酸が得られる、
(ii)ヒアルロン酸へのトリアルコキシシリル基の導入
つづいて、以上のようにして得られた有機溶媒可溶性ヒアルロン酸を、下記一般式(2)で示されるトリアルコキシシリルアルキルイソシアネートと反応させて、該ヒアルロン酸のメチロール基にトリアルコキシシリル基を導入する。
O=C=N−R1−Si(OR2)3 (2)
(上記一般式(2)中、R1は炭素数1〜4の2価アルキレン基、R2は炭素数1〜4の1価アルキル基である。)
つづいて、以上のようにして得られた有機溶媒可溶性ヒアルロン酸を、下記一般式(2)で示されるトリアルコキシシリルアルキルイソシアネートと反応させて、該ヒアルロン酸のメチロール基にトリアルコキシシリル基を導入する。
O=C=N−R1−Si(OR2)3 (2)
(上記一般式(2)中、R1は炭素数1〜4の2価アルキレン基、R2は炭素数1〜4の1価アルキル基である。)
有機溶媒可溶性ヒアルロン酸は、任意の有機溶媒中に溶解した溶液の状態で反応に供する。使用する有機溶媒は、特に限定されるものでは無いが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、トルエン等が挙げられ、特にジメチルスルホキシドが好ましい。また、脱水有機溶媒を使用することが特に好ましい。
上記一般式(2)に示されるトリアルコキシシリルイソシアネートにおいて、R1,R2は、上記一般式(1)で説明したものと同様である。すなわち、R1は炭素数1〜4の2価アルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。これらのうち、プロピレン基であることが特に好ましい。また、R2は炭素数1〜4の1価アルキル基である。R2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、これらのうち、エチル基であることが特に好ましい。すなわち、上記一般式(2)に示されるトリアルコキシシリルイソシアネートとしては、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートが好適に用いられる。
以上の工程により、上記一般式(2)に示されるトリアルコキシシリルイソシアネートのイソシアネート基(O=C=N−)と、ヒアルロン酸のメチロール基(−CH2OH)とが反応することによって、ウレタン結合(−CH2O−C(=O)−NH−が形成する。そして、この結果、ヒアルロン酸にトリアルコキシシリルアルキル基が結合した、上記一般式(1)に示されるシリル化ヒアルロン酸誘導体が得られる。
表面処理剤
以上のようにして得られる本発明のシリル化ヒアルロン酸誘導体は、トリアルコキシシリル基の加水分解、及びその後の脱水縮合反応により、各種の表面上へのヒアルロン酸の導入を可能とする。このため、本発明にかかるシリル化ヒアルロン酸誘導体は、特に表面処理剤として有用である。
以上のようにして得られる本発明のシリル化ヒアルロン酸誘導体は、トリアルコキシシリル基の加水分解、及びその後の脱水縮合反応により、各種の表面上へのヒアルロン酸の導入を可能とする。このため、本発明にかかるシリル化ヒアルロン酸誘導体は、特に表面処理剤として有用である。
本発明の表面処理剤はどのようなものに対して用いても構わないが、特に化粧料用粉体に対して好適に用いることができる。このような粉体としては、例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、雲母、ベントナイト、チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック及びこれらの複合体等の無機粉体、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、上記化合物の単量体の2種以上からなる共重合体、セルロイド、アセチルセルロース、セルロース、多糖類、タンパク質、CIピグメントイエロー、CIピグメントオレンジ、CIピグメントグリーン等の有機粉体が挙げられる。また、粉体の形状についても、例えば、板状、塊状、鱗片状、球状、多孔性球状等、どのような形状のものでも用いることができ、粒径についても特に制限されない。これらのうち、特にシリカゲルを基粉体として好適に使用することができる。
また、本発明にかかる表面処理剤は、例えば、金属やプラスチック等の物品表面の表面処理剤として使用することもできる。
また、本発明にかかる表面処理剤は、例えば、金属やプラスチック等の物品表面の表面処理剤として使用することもできる。
本発明にかかる表面処理剤は、通常の処理方法により用いればよく、その方法は特に限定されるものではない。例えば、本発明の表面処理剤によって粉体を処理する場合には、表面処理剤を水あるいは酸水溶液等の適当な溶媒中に溶解し、この溶液中に粉体を混合、攪拌した後、溶媒を留去する方法が挙げられる。なお、本発明にかかる表面処理剤により処理した粉体を化粧料中に配合する場合には、化粧料の製造過程において、表面処理剤を粉体基剤中に直接混合攪拌してもよい。また、金属やプラスチック表面に対して用いる場合、例えば、本発明の表面処理剤を含有する水溶液を、金属あるいはプラスチックの表面上に塗布又は撒布し、自然乾燥あるいは熱処理することによって、表面上に被膜を形成することができる。
本発明にかかる表面処理剤を用いて各種粉体あるいは物品表面を処理することによって、その表面上にヒアルロン酸分子が導入される。そして、このヒアルロン酸分子は各種表面に対して化学結合を形成しているため、物理吸着等の場合と比較して剥離しにくく、より多くのヒアルロン酸を導入することができる。また、化学結合により固着されたヒアルロン酸分子は、遊離のヒアルロン酸と比較して、ヒアルロニダーゼ等による分解作用も受けにくく、例えば、高親水性(高保水性)等のヒアルロン酸分子由来の効果を、長期間にわたって発揮させることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1:トリエトキシシリル−プロピルアミド−ヒアルロン酸の合成
本発明者らは、まず最初に、トリブチルアミン処理により有機溶媒(ジメチルスルホキシド)に可溶性のヒアルロン酸を調製し、つづいてこの有機溶媒可溶性ヒアルロン酸に対し、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートを反応させることによって、ヒアルロン酸構造中へのトリエトキシシリル基の導入を試みた。
実施例1:トリエトキシシリル−プロピルアミド−ヒアルロン酸の合成
本発明者らは、まず最初に、トリブチルアミン処理により有機溶媒(ジメチルスルホキシド)に可溶性のヒアルロン酸を調製し、つづいてこの有機溶媒可溶性ヒアルロン酸に対し、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートを反応させることによって、ヒアルロン酸構造中へのトリエトキシシリル基の導入を試みた。
(i)ジメチルスルホキシド可溶性ヒアルロン酸の調製
低分子量ヒアルロン酸(資生堂社製,分子量:100000〜50000)2gを精製水400mL中に溶解し、このヒアルロン酸水溶液を、イオン交換樹脂(Amberlite IR−120 NA:オルガノ株式会社製)320gを充填したカラム(直径80mm,長さ約120mm)に通し、ヒアルロン酸のカルボキシル基を塩型から酸型に変換した(HA−COO−Na+ → HA−COO−H+)。このヒアルロン酸水溶液にトリブチルアミン2mLを添加し、充分に攪拌した。このヒアルロン酸水溶液を、分液ロートに入れ、ジエチルエーテルで洗浄し、過剰のトリブチルアミンを取り除き、凍結乾燥して、ジメチルスルホキシド可溶性ヒアルロン酸(DMSO可溶性HA)を得た。
低分子量ヒアルロン酸(資生堂社製,分子量:100000〜50000)2gを精製水400mL中に溶解し、このヒアルロン酸水溶液を、イオン交換樹脂(Amberlite IR−120 NA:オルガノ株式会社製)320gを充填したカラム(直径80mm,長さ約120mm)に通し、ヒアルロン酸のカルボキシル基を塩型から酸型に変換した(HA−COO−Na+ → HA−COO−H+)。このヒアルロン酸水溶液にトリブチルアミン2mLを添加し、充分に攪拌した。このヒアルロン酸水溶液を、分液ロートに入れ、ジエチルエーテルで洗浄し、過剰のトリブチルアミンを取り除き、凍結乾燥して、ジメチルスルホキシド可溶性ヒアルロン酸(DMSO可溶性HA)を得た。
(ii)3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートとヒアルロン酸の反応
50mLサンプル瓶に、以上で得られたジメチルスルホキシド可溶性ヒアルロン酸0.2gと脱水ジメチルスルホキシド2mLとを入れ、このサンプル瓶を自転公転式ミキサー(プラネタリーミキサー;AR−250:株式会社シンキー製)に入れ、室温で5分間撹拌した。その後、サンプル瓶に3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(IPTEOS)0.71mLを入れ、自転公転式ミキサーによりさらに5分間撹拌した。撹拌終了後、サンプル瓶中の沈殿をジエチルエーテル50mLで2回、アセトン50mLで4回洗浄した。その後、沈殿を真空凍結乾燥し、トリエトキシシリル−プロピルアミド−ヒアルロン酸(TEOSPA−HA)を得た。
50mLサンプル瓶に、以上で得られたジメチルスルホキシド可溶性ヒアルロン酸0.2gと脱水ジメチルスルホキシド2mLとを入れ、このサンプル瓶を自転公転式ミキサー(プラネタリーミキサー;AR−250:株式会社シンキー製)に入れ、室温で5分間撹拌した。その後、サンプル瓶に3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(IPTEOS)0.71mLを入れ、自転公転式ミキサーによりさらに5分間撹拌した。撹拌終了後、サンプル瓶中の沈殿をジエチルエーテル50mLで2回、アセトン50mLで4回洗浄した。その後、沈殿を真空凍結乾燥し、トリエトキシシリル−プロピルアミド−ヒアルロン酸(TEOSPA−HA)を得た。
上記実施例1の製造方法の概略図を図1に示す。
また、以上のようにして得られた実施例1のヒアルロン酸誘導体について、その構造を確認するため、乾燥サンプルについてKBr法にてFT−IRスペクトルを測定した(MAGNA−IR 560:Nicolet社製)。結果を図2に示す。
また、以上のようにして得られた実施例1のヒアルロン酸誘導体について、その構造を確認するため、乾燥サンプルについてKBr法にてFT−IRスペクトルを測定した(MAGNA−IR 560:Nicolet社製)。結果を図2に示す。
図2において、上段のスペクトルはSiを含有していると推定される実施例1のシリル化ヒアルロン酸誘導体のスペクトル、中段は反応前のジメチルスルホキシド可溶性ヒアルロン酸(DMSO可溶性HA)のスペクトル、下段は両者の差スペクトルを示す。差スペクトルにおいて、1000〜900cm−1付近に、Siに関する吸収が見られた。このことから、実施例1のヒアルロン酸誘導体においてSiが含有されていることが確認された。
つづいて、実施例1により得られたヒアルロン酸誘導体について、1H−NMR測定を行った(FCP−400:日本電子社製)。結果を図3に示す。
図3において、Et2OやDMSOとしてマークされたシグナルは、それぞれジエチルエーテル及びジメチルスルホキシドに起因するシグナルであり、また、n−But3Nとしてマークされたシグナルは、トリブチルアミン由来のシグナルである。
ここで、2ppm付近のaで囲まれたシグナルは、ヒアルロン酸のn−アセチル基のメチル基のシグナル、3〜4ppm付近のbで囲まれたシグナルは、ヒアルロン酸の水酸基を有する炭素に直接結合している水素のシグナル、4.5ppm付近のcで囲まれたシグナルは、ヒアルロン酸を構成しているグルクロン酸と、N−アセチルグルコサミンの1位の炭素に直接結合している水素のシグナルである。また、1.18ppmと、3.8ppm付近のEtO−としてマークされたシグナルは、エトキシ基に由来するシグナルである。
図3において、Et2OやDMSOとしてマークされたシグナルは、それぞれジエチルエーテル及びジメチルスルホキシドに起因するシグナルであり、また、n−But3Nとしてマークされたシグナルは、トリブチルアミン由来のシグナルである。
ここで、2ppm付近のaで囲まれたシグナルは、ヒアルロン酸のn−アセチル基のメチル基のシグナル、3〜4ppm付近のbで囲まれたシグナルは、ヒアルロン酸の水酸基を有する炭素に直接結合している水素のシグナル、4.5ppm付近のcで囲まれたシグナルは、ヒアルロン酸を構成しているグルクロン酸と、N−アセチルグルコサミンの1位の炭素に直接結合している水素のシグナルである。また、1.18ppmと、3.8ppm付近のEtO−としてマークされたシグナルは、エトキシ基に由来するシグナルである。
以上の測定結果から、実施例1において、トリエトキシシリル基が導入されたヒアルロン酸誘導体が得られていることが確認された。
なお、上記実施例1のヒアルロン酸誘導体を室温で48時間放置した後に、同様にして1H−NMRを測定したところ、図3におけるエトキシ基に由来するシグナルが消滅していた。これは、室温放置によりエトキシ基の加水分解反応が生じたことによるものと考えられる。なお、その他の全てのシグナルは図3と同様であった。
なお、上記実施例1のヒアルロン酸誘導体を室温で48時間放置した後に、同様にして1H−NMRを測定したところ、図3におけるエトキシ基に由来するシグナルが消滅していた。これは、室温放置によりエトキシ基の加水分解反応が生じたことによるものと考えられる。なお、その他の全てのシグナルは図3と同様であった。
つづいて、本発明者らは、以上のようにして得られた実施例1のシリル化ヒアルロン酸誘導体を用い、シリカゲル粉体表面上への被覆を試み、さらに粉体表面へのシリル化ヒアルロン酸誘導体の結合量を測定した。
シリル化ヒアルロン酸誘導体のシリカゲル表面への結合
実施例1のシリル化ヒアルロン酸誘導体の10mg/mL水溶液1mLと、0.1M酢酸水溶液0.1mLとをエッペンドルフ・チューブに入れ、そこにシリカゲル(EP−DF−5−120A:AGCエスアイテック株式会社製,比表約面積300m2/g)50mgを加え、よく攪拌し、室温にて1晩放置した。その後、遠心分離にてシリカゲルを除去し、1mLの水でシリカゲル洗浄を3回繰り返し、静電的非特異的結合を防ぐために10%食塩水にて洗浄、さらに水洗浄を3回繰り返し、アセトン洗浄を1回行い、シリカゲルを60℃にて1晩減圧乾燥した。
シリル化ヒアルロン酸誘導体のシリカゲル表面への結合
実施例1のシリル化ヒアルロン酸誘導体の10mg/mL水溶液1mLと、0.1M酢酸水溶液0.1mLとをエッペンドルフ・チューブに入れ、そこにシリカゲル(EP−DF−5−120A:AGCエスアイテック株式会社製,比表約面積300m2/g)50mgを加え、よく攪拌し、室温にて1晩放置した。その後、遠心分離にてシリカゲルを除去し、1mLの水でシリカゲル洗浄を3回繰り返し、静電的非特異的結合を防ぐために10%食塩水にて洗浄、さらに水洗浄を3回繰り返し、アセトン洗浄を1回行い、シリカゲルを60℃にて1晩減圧乾燥した。
以上のようにして得られた実施例1のシリル化ヒアルロン酸誘導体−シリカゲルについて元素分析を行った(シリーズIICHNS/Oアナライザー:パーキンエルマー社製)。また、比較のため、未処理低分子量ヒアルロン酸(比較例1)、ジメチルスルホキシド可溶性ヒアルロン酸(比較例2)を用いて同様の処理を行い、得られたシリカゲルについて元素分析を行った。結果を図4に併せて示す。
図4に示されるように、比較例1(未処理低分子量ヒアルロン酸)、及び比較例2(ジメチルスルホキシド可溶性ヒアルロン酸)の場合と比べて、実施例1のシリル化ヒアルロン酸誘導体により処理したシリカゲルにおいては有意に炭素量が増加していることがわかる。この結果から、実施例1のシリル化ヒアルロン酸誘導体は、シリカゲル表面のシラノール基とヒアルロン酸のトリエトキシシリル基とが脱水縮合することで、両者が直接結合しており、これによってシリカゲル表面上のヒアルロン酸量が増加しているものと考えられる。
Claims (7)
- 請求項1に記載のシリル化ヒアルロン酸誘導体において、前記一般式(1)中、R1がプロピレン基であり、R2がエチル基であることを特徴とするシリル化ヒアルロン酸誘導体。
- (i)ヒアルロン酸水溶液中に総炭素数3〜15のアルキルアミンを添加し、該ヒアルロン酸のカルボキシル基をアルキルアンモニウム塩に置換することによって有機溶媒可溶性のヒアルロン酸を得る工程と、
(ii)上記工程により得られた有機溶媒可溶性ヒアルロン酸を、下記一般式(2)で示されるトリアルコキシシリルアルキルイソシアネートと反応させて、該ヒアルロン酸のメチロール基にトリアルコキシシリル基を導入する工程と
を備えることを特徴とするシリル化ヒアルロン酸誘導体の製造方法。
O=C=N−R1−Si(OR2)3 (2)
(上記一般式(2)中、R1は炭素数1〜4の2価アルキレン基、R2は炭素数1〜4の1価アルキル基である。) - 請求項3に記載のシリル化ヒアルロン酸誘導体の製造方法において、前記トリアルコキシシリルアルキルイソシアネートが3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートであることを特徴とするシリル化ヒアルロン酸誘導体の製造方法。
- 請求項3に記載のシリル化ヒアルロン酸誘導体の製造方法において、前記総炭素数3〜15のアルキルアミンが、トリブチルアミンであることを特徴とするシリル化ヒアルロン酸誘導体の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のシリル化ヒアルロン酸誘導体からなることを特徴とする表面処理剤。
- 請求項6に記載の表面処理剤で基粉体を処理してなることを特徴とする表面処理粉体。
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JP2008206156A JP2010043138A (ja) | 2008-08-08 | 2008-08-08 | シリル化ヒアルロン酸誘導体及びその製造方法 |
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CN115124631A (zh) * | 2022-05-24 | 2022-09-30 | 山东焦点福瑞达生物股份有限公司 | 一种硅烷化透明质酸化合物的制备方法 |
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- 2008-08-08 JP JP2008206156A patent/JP2010043138A/ja not_active Withdrawn
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