JP2010041988A - 培養リアクター - Google Patents

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Abstract

【課題】通液性の培養対象物を培養するに際し、この培養対象物が必要とする種々の厚さに対応して培養することができる培養リアクターを提供すること。
【解決手段】円筒状で両端部封止の容器の内部が、円板で径方向へ、培養液が貯留される液溜め部と円柱状で通液性の培養対象物が収容される収容部とに区画され、培養液流通手段により、上記液留め部に供給される上記培養液が上記円板の周縁近傍を通過して上記培養対象物の外周側から中心方向へ流通し軸方向へ排出される培養リアクターであって、上記円板は、上記容器の上記液溜め部側の端部部材を軸方向へ貫通する可動で、上記培養対象物の厚さに対応して上記円板の位置を調節できる支持部材に連結され、上記培養対象物は、その両端面が上記円板と上記容器の収容部側の端部部材とで軸方向に挟持されて固定される等とした培養リアクターである。
【選択図】図1

Description

本発明は、動植物細胞等の培養を行う培養リアクター、更に詳しくは、細胞を三次元構造に培養したり等する培養リアクターに関する。
動物細胞を三次元構造に組織化された培養細胞は、例えば、細胞の機能評価、薬物動態試験、安全性試験等に用いられ、動物試験代替法としてその更なる普及が期待されている。
従来、このような動物細胞を三次元構造に培養する培養リアクターとしては、容器内に円筒状の大小の網を二重に配置して形成された空間に粒子状の多孔質細胞培養担体を充填し、容器内壁から離間する大きな網の外周側から中心に向かって逆放射状に培養液を流す培養リアクターが実用化されている。
この培養リアクターは、粒子状の担体を均一、かつ、細密に充填すれば、担体の内部や表面、担体同士の隙間等に増殖する細胞に培養液を均一に供給し得る優れたものである。
また、上記培養リアクターは、担体を充填する空間を形成するのに二重に配した円筒状の網を必要とする等、構造が複雑である等の観点から、例えば、担体として、多孔質の担体をあらかじめ円筒状ブロックに形成して用いる細胞培養装置(培養リアクター)等が提案されている。
上記細胞培養装置は、多孔質で円筒状の細胞培養担体と、この円筒状担体を空間を介して包囲するエンベロープと、培養液を上記空間から上記円筒状担体の外周壁面を介して中心部方向(逆放射状)に流通させる培養液流通手段とを備えるものである(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2004/005455号パンフレット(要約、図1)
図5は、上記細胞培養装置の一例の基本構造を示す概略断面図である。
細胞培養装置50は、底板51が中央の柱52と一体的に形成されており、そして、この底板51の上面に配置された弾性シート56の上に、ガラス円筒53及びその内壁から離間して(空間54を介して)収容された一体形成で円筒状多孔質担体ブロック55が、それらの下端を接して配置され(円筒状多孔質担体ブロック55には、その円筒空間部に柱52が挿入された状態で配置される)、また、それらの上端に接して弾性シート57、その上に天板58が配置されていて、底板51と天板58とで上下に一体に固定されている。このとき、これら底板51、天板58、弾性シート56、57及びガラス円筒53が、略円筒形のエンベロープを形成している。
そして、培養液は、天板58の上部に設けられた培養液供給ノズル59の空間54に連通する流路から供給され、円筒状多孔質担体ブロック55の外周側から矢印60の方向に逆放射状に流通して柱52の一部細くなっている部分から中空部52aに通じる複数の横穴52b、更に、中空部52aを通過し、柱52の先端部に設けられた培養液出口ノズル61の中空部52aに連通する流路から排出される。
ところで、細胞を三次元構造に培養するに当たり、上記したような薬物動態試験等の試験目的等によって、種々の厚さの培養細胞が求められること等から、例えば、播種細胞等が多孔質の担体に担持されている通液性の(培養液が通過する)培養対象物を培養するに際し、種々の厚さの培養対象物の培養に適用可能な培養リアクターの開発が強く望まれているところである。
上記細胞培養装置は、一体形成(成形)の担体を用いる通液性の培養対象物を培養して、細胞を三次元構造に培養する装置として好適なものではあるが、この培養対象物の厚さが一定で既定のものに対して適用されるのであって、種々の厚さに適用できる構造にはなっていない。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、通液性の培養対象物を培養するに際し、培養対象物が必要とする種々の厚さに対応して培養することができる培養リアクターを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、円筒状で両端部封止の容器の内部に、培養液の液溜め部と円柱状で通液性の培養対象物の収容部とに径方向に区画する円板を設け、そして、この円板の位置を、容器外から支持部材を介して培養対処物の厚さに調節することにより、培養対象物を円板と容器の収容部側の端部部材とで軸方向に挟持、固定し、そして更に、液溜め部の培養液を、円板の周縁近傍を経由して培養対象物の外周側から中心方向へと流通させ、培養対象物の端面の中心部から容器外に排出させることにより、培養対象物をその必要とする種々の厚さに対応して容易に培養することができる等の新知見を得、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の培養リアクターは、円筒状で両端部封止の容器の内部が、円板で径方向へ、培養液が貯留される液溜め部と円柱状で通液性の培養対象物が収容される収容部とに区画されてなり、培養液流通手段により、上記液留め部に供給される培養液が上記円板の周縁近傍を通過して上記培養対象物の外周側から中心方向へ流通し軸方向へ排出される培養リアクターであって、
上記円板は、上記容器の液溜め部側の端部部材を軸方向へ貫通する可動で、上記培養対象物の厚さに対応して上記円板の位置を調節できる支持部材に連結され、かつ、上記円板の周縁近傍には、上記培養液が上記液溜め部から上記収容部へ流通する連通部が設けられ、上記培養対象物は、その両端面が上記円板と上記容器の収容部側の端部部材とで軸方向に挟持されて固定され、
上記液溜め部には、上記培養液の供給管が開口し、
上記培養対象物のいずれかの端面に接する上記円板又は上記容器の収容部側の端部部材の中心部には、上記培養液の上記容器外への排出管の基部が軸方向へ貫通して連結され、上記培養対象物の端面に臨んで開口していることを特徴とする。
また、本発明の培養リアクターの好適形態は、上記培養対象物は、細胞又は組織が多孔質の担体に担持されたものであることを特徴とする。
更に、本発明の培養リアクターの他の好適形態は、上記培養対象物が成形体で、その中心部に軸方向へ貫通する中空部を有し、その外周側面と上記容器の側壁内面とが離間して上記収容部に収容されていることを特徴とする。
更にまた、本発明の培養リアクターの更に他の好適形態は、上記円板の中心部にその基部で連結される上記排出管が上記支持部材を兼ねることを特徴とする。
そしてまた、本発明の培養リアクターの更に別の好適形態は、上記供給管がその先端部で連結部材を介して上記円板に連結されて上記支持部材を兼ねることを特徴とする。
本発明によれば、円筒状で両端部封止の容器の内部に、培養液の液溜め部と円柱状で通液性の培養対象物の収容部とに径方向に区画する円板を設け、そして、この円板の位置を、容器外から支持部材を介して培養対象物の厚さに調節することにより、培養対象物を円板と容器の収容部側の端部部材とで軸方向に挟持、固定する等としたため、培養対象物を培養するに際し、この培養対象物が必要とする(目的とする)種々の厚さに無段的に対応して培養し得る培養リアクターを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明の培養リアクターは、動植物、特に動物の細胞及び組織の培養に好適に適用される。
なお、本発明において、培養とは増殖培養の他、組織等の維持培養も含まれる。
上記培養リアクターは、円筒状で両端部が封止された容器の内部が、円板で径方向に2部分に区画されていて、一方が培養液が貯留される液溜め部、他方が円柱状で通液性の培養対象物が収容される収容部である。
上記円筒状で両端部封止の容器について、その容量、材料等は特に制限されないが、容量としては、1〜100ml等が例示され、材料としては、ガラス、ステンレス鋼、合成樹脂等が例示される。
また、滅菌、培養状況の目視、顕微鏡による観察の観点等から、耐熱性で透明性のガラス、合成樹脂等が好適材料例として挙げられる。
また、上記両端部封止の容器としては、円筒の一端部が一体的に端部部材(封止部材)で封止され、他端部の開口が端部部材で液密に封止されたもの、あるいは、円筒の両端部の開口が端部部材で液密に封止されたもののいずれでもよい。
上記収容部に収容される円柱状の培養対象物については、上記培養リアクターでは、例えば、ポンプ等の培養液流通手段により、培養液が培養対象物の外周側から中心方向へ逆放射状に流通し軸方向へ排出される、いわゆるラジアルフロー型の一種であることから、培養液が通過する通液性の培養対象物であればよく、特に制限されない。
なお、上記培養対象物の通液性は、本発明の培養リアクター等を用い、排出管からの培養液の排出状況等からその有無を容易に判断することができる。
また、上記培養対象物の形状は、上記容器の形状から円柱状であるが、これには僅かに円錐台を呈するような略円柱状のもの等も含まれる。
そして、上記通液性の培養対象物としては、例えば、細胞又は組織が多孔質の担体に担持されたもの等が挙げられる。
より具体的には、例えば、播種細胞が多孔質の担体に含有して担持されたもの、生体から取り出された組織(例示:肝臓、肝癌組織)の薄切りされた粒状又はシート状の細胞切片が多孔質の担体に担持されたもの等が挙げられる。
上記播種細胞を担体に担持させる方法としては、例えば、以下に詳記する本発明の培養リアクターの収容部に多孔質の担体を収容し、細胞含有培養液を担体の外周側から中心方向へ流通させる方法等が挙げられる。
また、上記組織切片を担体に担持させる方法としては、例えば、成形体の担体が用いられる場合は、この担体を径方向に複数個に分割し、担体の間に粒状又はシート状の組織切片を挟む方法、担体が収容部に充填されて用いられる場合で、組織切片が粒状のときには、これを担体間に適当に分散させる方法、シート状のときには、組織切片の両面に担体層を設けて単層又は複数層とする方法等が挙げられる。
なお、上記粒状の組織切片の大きさやシート状の組織切片の厚さについては、本発明の培養リアクタ等を用いて培養が可能であればよく、特に制限されないが、例えば、粒状の組織切片では大きさ100〜500μm等、シート状の組織切片では厚さ100〜500μm等が好適である。
上記粒状の細胞切片が担体に担持されたもの場合には、培養液はこの組織切片の表面を流通し、また、上記シート状の細胞切片が担体に担持されたものの場合には、この組織切片の両面が担体で軸方向に挟持して担持されることにより、培養液はこの組織切片の両面を半径方向に流通し、この組織切片の、担体の中心部に相当する部分に設けられた通液孔から軸方向に流れて排出される。
このようにして、培養対象物が、組織が多孔質の担体に担持されたものであるときも通液性を有することになる。
上記多孔質の担体としては、細胞等を担持して培養するに用いられる通常の多孔質担体が有効に使用され、特に制限されない。
この場合、担体は、上記容器の収容部に収容され得る成形体としたものが好適であるが、担体を収容部に充填することにより、多孔質としたものでもよい。
なお、上記多孔質とは、培養液が通過、流通することができれば十分であり、通常は30〜95vol%の気孔率(通常のかさ密度測定法等による)を有していれば十分である。
担体材料は、硬質、軟質のいずれでもよく、前者の例としては、各種金属、ガラス、セラミック、ハイドロキシアパタイト等が、後者の例としては、各種樹脂(例示:ポリビニールアルコール等)、セルロース、コラーゲン、ゼラチン、エラストマー、ゴム等の高分子材料等が挙げられる。
そして、これらの材料用い、従来公知の方法により、多孔質の担体の成形体等とされる。
また、担体を収容部に充填することにより多孔質にして用いる場合、上記した硬質若しくは軟質で多孔質又は非多孔質の担体材料のビーズ(粒)(粒径例示:100〜1000μm等)等が使用される。
本発明の培養リアクターにおいて、最も特徴とする点は、上記容器の内部を液溜め部と培養対象物の収容部とに径方向へ区画する上記円板が、支持部材を介して軸方向に可動に構成されることにより、容器外から培養対象物の厚さ(軸方向の厚さ)、例えば、1〜20mm等の厚さに無段的に対応して上記円板の位置を調節することができることにある。
そして、培養に際しては、上記培養対象物は、その両端面が円板と収容部側の端部部材とで挟持され、固定されることにより、必要とする(目的とする)種々の厚さの培養対象物が容易に培養されるのである。
上記容器の内部において、円板の位置が軸方向に調節可能とされるために、この円板は、液溜め部側の端部部材を軸方向へ貫通する液密に可動の1又は2本等の棒状支持部材の一端に垂直に連結されている。そして、上記端部部材から容器外に突出する支持部材の他端近傍を手動等で軸方向に動かすことにより、円板の位置が調節される。
この場合、上記支持部材の円板への連結位置は、特に制限されないが、後記するごとく、培養液の排出管又は供給管を支持部材として兼用する等して、1本の支持部材で円板の中心部とするのが好適である。
そして、上記支持部材の液溜め部側の端部部材との摺動部は、この端部部材と支持部材の材料選択や端部部材の厚さを大にしたり、Oリングを装着したり等の適宜の方法により液密性が確保される。
また、上記容器内において、液溜め部の培養液を円板の周縁近傍を通過して培養対象物の収容部に流通させるために、円板の径を容器の内径より小にしたり、円板周縁部付近に適宜の孔を設ける等して、その周縁近傍に培養液の連通部が設けられる。
なお、このとき、上記円板の径を、培養液の液溜め部から収容部への流通を確保しつつ、できるだけ大にして、培養対象物の端面をより多く覆うようにするのが、培養対象物の外周側から中心方向への培養液の短絡流通を防ぐ観点から好ましい。
上記支持部材及び円板の材料としては、特に制限されないが、上記容器の材料等やその他の適宜の材料が有効に用いられる。
また、上記培養対象物は、上記円板とこれに接する培養対象物の端面との間を培養液が短絡して通過しない程度に軸方向に均一に適度に押圧し又は密着させて、円板と収容部側の端部部材とで軸方向に挟持され固定されるが、円板は、この挟持、固定に際し変形しない材料等が採用される。
なお、上記培養対象物の挟持、固定に際し、例えば、円板と液溜め部側の端部部材との間に位置する上記支持部材の一部に弾性体(例示:シリコンゴム等)の短管を連結、介在させて支持部材に軸方向の弾力性を付与する等して、円板による培養対象物への適度の押圧又は密着を維持させ、培養対象物がより安定して挟持、固定されるようにすることもできる。
次に、培養液は、上記のごとく、培養対象物の外周側から中心方向へ流通するが、この流通の観点から、培養物対象物が成形体、すなわち、細胞や組織が成形体の担体に担持されているものの場合には、その中心部に軸方向へ貫通する中空部を設けるのが好ましい。
また、同じく培養対象物が成形体の場合には、培養対象物をその外周側面と容器の側壁内面とを離間させて収容部に収容するのが好適であり、このことにより、離間で形成された空間部に流通した培養液が外周側面から中心方向へより容易に流通する。
しかしながら、培養対象物の厚さが薄い又は通液性が極め良好なとき等には、上記中空部や上記離間による空間部がなくても培養液の流通には実質的に支障はない。
このようなことから、培養対象物の上記中空部や上記離間による空間部の要否については、培養対象物の通液状態(排出管からの培養液の排出状態等)等により適宜判断すればよい。
更に、培養対象物が、上記したごとく、細胞や組織が収容部に充填された状態の円柱状の多孔質の担体に担持されたものの場合には、培養対象物の円板側の全端面を網等で覆い、その外周側の端面の培養対象物の流動を防ぐのが好ましい。また、このとき、担体の全外周側面も網等で覆ってその径を容器の内径より小にし、そして、この外周側面と容器の側壁内面とを離間させてそこに空間部を形成することもできる。
次に、上記液溜め部には、培養液の供給管が液溜め部側の端部部材又はこの液溜め部の側壁を貫通して開口している。
また、上記円柱状の培養対象物のいずれかの端面に接する円板又は収容部側の端部部材の中心部には、培養液を容器外へ排出するための排出管の基部が軸方向へ貫通して連結されていて、培養対象物の端面の中心部に臨んで開口している。
そして、培養液流通手段により、上記液溜め部に供給される培養液が、円板の周縁近傍を通過して培養対象物の外周側から中心方向に逆放射状に流通し、円板の中心部から又は収容部側の端部部材の中心部から容器外に排出されることになる。
なお、上記培養液流通手段としては、上記のごとく、培養液を流通させる機能が有すれば十分であり、種々のポンプ(圧送ポンプや吸引ポンプ等)が例示される。
また、上記収容部側の透明な端部部材の外側から培養状況等を観察しようとする場合には、培養液の排出管は、収容部側の端部部材に設けると観察に支障を来たすので、円板の中心部に設け、液溜め部を貫いて培養液が容器外に排出されるようにする態様が好ましい。
軸方向に可動の上記支持部材については、液溜め部側の端部部材を貫通して設けられることから、その液密性の確保の上で、1本とするのが好ましい。
この観点から、上記培養液の排出管を、液溜め部側の端部部材を軸方向に可動に貫通させることにより、円板の支持部材として兼用するのが好ましい。
また、同様の観点から、上記培養液の供給管を液溜め部側の端部部材を軸方向に可動に貫通させ、更に、その先端部を連結部材を介して上記円板の中心部に連結し、そして、先端部の管壁に開口(通液孔)を設けることにより、この供給管を円板の支持部材として兼用するのが好ましい。
ここで、本発明の培養リアクターの使用方法について、成形体の培養対象物を例にして説明する。
端部部材を取り外した容器の開口から円柱状の成形体の多孔質の担体を容器内の収容部に収容し、上記端部部材で開口を封止する。
次いで、上記端部部材に装着されている円板に連結の支持部材を軸方向に動かし、円板の位置を担体の厚さに調節して担体の端面を適度に押圧し又は密着させ、これを円板と収容部側の端部部材とで軸方向に挟持し固定する。
続いて、細胞含有培養液を液溜め部に供給し、そして、この培養液を円板の周縁近傍を通過させて培養対象物の外周側から中心方向へ流通させ、軸方向に排出管から容器外へ排出させる。
このようにして、播種細胞が多孔質の担体に担持された成形体の培養対象物が得られる。
その後、更に培養液を連続的又は断続的に流通させることにより、培養対象物の培養が行われる。
また、別の使用方法例として、端部部材を取り外した容器の開口から、細胞等があらかじめ多孔質の担体に担持された円柱状の成形体の培養対象物を容器内の収容部に収容し、上記端部部材で開口を封止する。
次いで、上記と同様にして培養対象物を円板と容器の収容部側の端部部材とで軸方向に挟持し固定する。
続いて、培養液を液溜め部に供給し、そして、この培養液を円板の周縁近傍を通過させて培養対象物の外周側から中心方向へ流通させ、軸方向に排出管から容器外へ排出させる。
このようにして、培養液を連続的又は断続的に流通させることにより、培養対象物の培養が行われる。
上記構成からなる本発明の培養リアクターは、上下反転させて使用することもできる。
また、培養対象物の中に混入している小気泡を除去する等の観点からは、培養液の排出を上方流(アップフロー)とするのが好ましい。
更に、多孔質の担体を円柱状の成形体として用いる場合、その外周側面から中心方向に1又は2以上で、担体の中心部に軸方向へ貫通する中空部を有する場合には、この中空部へ未貫通の径方向の穴道を設けることにより、また、この中空部を有しない場合には、担体の中心部近傍までの径方向の穴道を設けることにより、例えば、血管細胞、繊維芽細胞等を効果的に培養できることが期待される。
更にまた、上記培養リアクターは、上記のごとく、構造が簡単で、かつ、小容量とすることもできるので、使い捨ての培養リアクターとしても有効である。
以下、本発明を図面を参照しつつ実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1は、本発明の培養リアクターの一実施例を示す概略断面図である。
同図において、培養リアクター1は、円筒状で両端部が封止された容器2(内容量例示:3ml)からなり、この容器2は、側壁2a(材料例示:透明ガラス)と、これと一体的に形成された一方の端部部材2b(材料例示:透明ガラス)と、開口をOリング2d等を介して液密に封止する他方の端部部材2c(例示:密栓)(材料例示:ポリテトラフルオロエチレン)とから構成されている。
容器2内は、後記する支持部材9に連結する円板3で径方向へ、培養液が貯留される液溜め部4(上記他方の端部部材2c側)と円柱状の通通液性の培養対象物5が収容される収容部6(上記一方の端部部材2b側)とに区画されている。
液溜め部4には、液溜め部4側の端部部材2cを軸方向に貫通する培養液の供給管7(材料例示:ポリテトラフルオロエチレン)が開口し、また、円板3の中心部には、液溜め部4側の端部部材2cを軸方向に貫通する培養液の排出管8(材料例示:ポリテトラフルオロエチレン)の基部が軸方向に貫通して連結され、培養対象物5の端面に(後記する中空部5aの開口に臨んで)開口している。
本実施例の培養リアクター1は、培養液の排出管8が円板3の支持部材9を兼ねる態様のものであるが、この場合、排出管8兼支持部材9は、液溜め部4側の端部部材2cに対し軸方向に可動に設けられ、支持部材9の容器外に突出する部分を手動等で動かすことにより、培養対象物5の種々の厚さに対応して円板3の位置が無段的に調節される。
なお、排出管8兼支持部材9と液溜め部4側の端部部材2cとの摺動部は、端部部材2cと支持部材9の材料選択や端部部材2cの厚さを大にすること等で液密性が確保されているが、他の方法、例えば、適宜のシール部材等でその液密性を確保することもできる。
そして、通液性の培養対象物5は、その両端面がそれぞれ円板3と収容部6側の端部部材2bとで軸方向に挟持され、固定される。
このとき、培養対象物5の円板3側の端面は、その全部が円板3で覆われている。
円板3は、その直径を容器2の内径よりやや小にして、その周縁近傍に培養液が液溜め部4から収容部6へ流通する連通部が設けられている。
更に、本実施例においては、円柱状で中心部に軸方向に貫通する中空部5aを有する成形体の多孔質の担体(材料例示:ポリビニールアルコールのスポンジ(気孔率等の例示:気孔率90%、気孔径200μm)が収容部に収容され、これに細胞含有培養液を流通させることによって成形体で通液性の培養対象物5とされるが、このとき、培養対象物5は、その外周側面と容器2の側壁2a内面とが離間して空間部6aが形成され、収容部6に収容されている。
そして、供給管7及び排出管8は、培養液流通手段(図示せず)等に接続されて、培養液流通系が構成されることになる。
なお、あらかじめ、細胞や組織を多孔質担体に担持させた培養対象物を調製し、これを収容部6に収容することもできる。
以下に、本実施例の培養リアクター1の使用方法について説明する。
はじめに、容器2から端部部材2cを取り外し、成形体で通液性の培養対象物5とされる円柱状で成形体の多孔質の担体5(図1において、培養対象物5と実質的に同じであるので、符号5と記す。)を収容部に定置した後、端部部材2cを取り付ける。
次いで、排出管8兼支持部材9の容器2外に突出する部分を手動等で軸方向に動かして、円板3の位置を調節し、担体5の両端面を適度に押圧し又は密着させて軸方向に挟持、固定する。
続いて、培養液流通手段により、供給管7から液溜め部4に供給された細胞含有培養液が円板3の周縁近傍を通過し、空間部6aを経由して担体5の外周側面から中心方向に流通し、中空部5aを通って排出管から容器外へ排出されることにより、培養対象物が調製される。
引き続き、同様にして培養液が連続的又は断続的に供給、排出されることにより、培養対象物の培養が行われる。
このようにして、培養リアクター1を用いることにより、必要とする(目的とする)種々の厚さの培養対象物を容易に培養することができる。
なお、図1において、矢印は、培養液の流通方向を示し、以下の図においても同様とする。
ここで、本実施例の培養リアクター1を用い、次の条件で行った培養例を示す。
1.培養リアクターの容量:3ml
2.供試細胞:ヒト肝癌由来細胞(HepG2)(入手先:住友ファーマインターナショナル社経由、ATCC NO.HB−8065)
T型フラスコで4日間シード培養
3.多孔質の担体:ポリビニールアルコールのスポンジ(気孔率90%、気孔径200μm)(外径16mm、厚さ5mm、中心部の軸方向に貫通する内径3mmの中空部を有するもの)
4.播種細胞数:1.4×10 cells/ml担体
5.培養液:ダルベッコ改変イーグル培地−高グルコース(DMEM−HG)(インビトロジェン社製)+10%ウシ胎児血清(FBS)(インビトロジェン社製)
6.培養液循環速度:3ml/min
7.培養液量:140ml(回分)
8.培養温度:37℃
9.培養日数:8日間
上記条件により、培養液(140ml)を連続循環して供給し、2日毎にその全量(140ml)を新たな培養液に交換しながら8日間通液性の培養対象物を培養した。その結果、培養液のグルコースの消費速度から、細胞数が担体体積1ml当たり1.5×10と約10倍に増殖し、正常な培養が行われたことが確認された。
また、培養終了後、培養対象物が培養されたものを固定して薄切切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジンで染色して顕微鏡で観察したところ、多孔質の担体の空隙に細胞が重層し、正常に増殖していたことが確認された。
(実施例2)
図2は、本発明の培養リアクターの他の実施例を示す概略断面図である。
同図に示す培養リアクター11は、培養液の排出管8が支持部材9を兼ねることに代えて供給管17が支持部材9を兼ねること、排出管18の基部が収容部6側の端部部材2bの中心部を軸方向に貫通して連結され、培養対象物5の端面に臨んで開口していること以外は、実施例1に記載したと同様にして構成されている。
なお、供給管17は、その先端部が連結部材9aを介して円板3の中心部に連結されていると共に、この先端部の管壁に開口(通液孔)17aが設けられていて、培養液が液溜め部4に供給されるようになっている。この場合、開口17aの位置は、円板3の近傍とするのが、培養対象物5の厚さへの対応の範囲が大となり、好ましい。
また、以下の実施例等において、実施例1の場合と実質的に同一の部材・箇所には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
培養リアクター11において、支持部材9の容器外に突出する部分を手動等で動かすことにより、円柱状で通液性の培養対象物5の厚さに対応して円板の位置が調節され、培養対象物5の両端面が円板3と収容部6側の端部部材2bとで軸方向に挟持され、固定される。
そして、供給管17の開口17aから供給された培養液は、液溜め部4から円板3の周縁近傍を通過し、培養対象物5の外周側面から中心方向に流通し、中心部5aを通って排出管18から容器2外へ排出されることになる。
このようにして、培養リアクター11を用いることにより、必要とする種々の厚さの培養対象物が容易に培養される。
なお、収容部6側の端部部材2bを別体の密栓等とし、取り外し可能とすることもできる。
次に、実施例1に示す本発明の培養リアクター1を用いた場合における通液性の培養対象物の態様例について説明する。
(1)図3は、培養リアクター内に、厚さの薄い成形体の培養対象物が収容されている状態を示す概略断面図である。
同図において、円柱状で通液性の培養対象物25は、厚さが薄く、その中心部に中空部を有しない、円板3と同径の成形体(いわゆるディスク)で、その外周側面と容器2の側壁2a内面とが離間している(空間部6aを形成)と共に、排出管8兼支持部材9を軸方向に動かして円板3の位置を調節することにより、円板3と収容部6側の端部部材2bとで挟持、固定される。
このようにして、厚さが薄い培養対象物25であっても、培養液はその外周側から中心方向に流通され、同様にして培養を好適に行うことができる。
なお、厚さの薄い成形体の培養対象物25の例として、多孔質の担体の成形体(例示:ハイドロキシアパタイト(「CELLYARD HA scaffold」ペンタックス社製商品名)の成形体、厚さ2mmのディスク、気孔率50%)に細胞等が担持されたものが挙げられる。
また、上記のごとく、培養対象物25の厚さが薄い場合には、その中心部に中空部を設けなくても、培養液の流通には実質的に支障はなく、更には、その外周側面と容器2の側壁2aとを離間させなくても、円板3の周縁近傍に培養液の連通部が設けられているので、同様に培養液の流通には実質的に支障はない。
(2)図4は、培養リアクター内に非成形体の培養対象物が収容されている状態を示す概略断面図である。
同図において、円柱状で通液性の培養対象物35は、収容部6に担体材料(例示:ガラスビーズ)を充填し、網等で円板3側の全表面を覆って通液性の良好な多孔質とした担体に細胞等を担持させたもので、円板3と収容部6側の端部部材2bとで挟持、固定される。
このように、非成形体の培養対象物35であっても、円板3の周縁部近傍には、培養液の連通部が設けられているので、培養液はその外周側から中心方向に流通され、同様にして培養を好適に行うことができる。
は、本発明の培養リアクターの一実施例を示す概略断面図である。 は、本発明の培養リアクターの他の実施例を示す概略断面図である。 は、図1に示した本発明の培養リアクター内に厚さの薄い成形体の培養対象物が収容されている状態を示す概略断面図である。 は、図1に示した本発明の培養リアクター内に非成形体の培養対象物が収容されている状態を示す概略断面図である。 は、従来の細胞培養装置の一例の基本構造を示す概略断面図である。
符号の説明
1、11 培養リアクター
2 容器
2a 側壁
2b 一方の(収容部側の)端部部材
2c 他方の(液溜め部側の)端部部材
2d Oリング
3 円板
4 液溜め部
5 培養対象物(担体)
5a 中空部
6 収容部
6a 空間部
7、17 供給管
8、18 排出管
9 支持部材
9a 連結部材
17a 開口
25、35 培養対象物
50 細胞培養装置
51 底板
52 柱
52a 中空部
52b 横穴
53 ガラス円筒
55 円筒状多孔質担体ブロック
56 57 弾性シート
58 天板
59 培養液供給ノズル
61 培養液出口ノズル

Claims (5)

  1. 円筒状で両端部封止の容器の内部が、円板で径方向へ、培養液が貯留される液溜め部と円柱状で通液性の培養対象物が収容される収容部とに区画されてなり、培養液流通手段により、上記液留め部に供給される上記培養液が上記円板の周縁近傍を通過して上記培養対象物の外周側から中心方向へ流通し軸方向へ排出される培養リアクターであって、
    上記円板は、上記容器の液溜め部側の端部部材を軸方向へ貫通する可動で、上記培養対象物の厚さに対応して上記円板の位置を調節できる支持部材に連結され、かつ、上記円板の周縁近傍には、上記培養液が上記液溜め部から上記収容部へ流通する連通部が設けられ、上記培養対象物は、その両端面が上記円板と上記容器の収容部側の端部部材とで軸方向に挟持されて固定され、
    上記液溜め部には、上記培養液の供給管が開口し、
    上記培養対象物のいずれかの端面に接する上記円板又は上記容器の収容部側の端部部材の中心部には、上記培養液の上記容器外への排出管の基部が軸方向へ貫通して連結され、上記培養対象物の端面に臨んで開口していることを特徴とする培養リアクター。
  2. 上記培養対象物は、細胞又は組織が多孔質の担体に担持されたものであることを特徴とする請求項1記載の培養リアクター。
  3. 上記培養対象物が成形体で、その中心部に軸方向へ貫通する中空部を有し、その外周側面と上記容器の側壁内面とが離間して上記収容部に収容されていることを特徴とする請求項1又は2記載の培養リアクター。
  4. 上記円板の中心部にその基部で連結される上記排出管が上記支持部材を兼ねることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の培養リアクター。
  5. 上記供給管がその先端部で連結部材を介して上記円板に連結されて上記支持部材を兼ねることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の培養リアクター。
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