本発明の実施形態に係る電力変換装置について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。本発明の実施形態に係る電力変換装置は、ハイブリッド用の自動車や純粋な電気自動車に適用可能であるが、代表例として、本発明の実施形態に係る電力変換装置をハイブリッド自動車に適用した場合の制御構成と電力変換装置の回路構成について、図1と図2を用いて説明する。図1はハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図である。
本発明の実施形態に係る電力変換装置では、自動車に搭載される車載電機システムの車載用電力変換装置、特に、車両駆動用電機システムに用いられ、搭載環境や動作的環境などが大変厳しい車両駆動用インバータ装置を例に挙げて説明する。車両駆動用インバータ装置は、車両駆動用電動機の駆動を制御する制御装置として車両駆動用電機システムに備えられ、車載電源を構成する車載バッテリあるいは車載発電装置から供給された直流電力を所定の交流電力に変換し、得られた交流電力を車両駆動用電動機に供給して車両駆動用電動機の駆動を制御する。また、車両駆動用電動機は発電機としての機能も有しているので、車両駆動用インバータ装置は運転モードに応じ、車両駆動用電動機の発生する交流電力を直流電力に変換する機能も有している。変換された直流電力は車載バッテリに供給される。
図1において、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記述する)110は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジン120を動力源としたエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEVの駆動源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータ192,194を動力源とした車載電機システムである。車載電機システムは、主としてHEVの駆動源およびHEVの電力発生源として用いられる。モータジェネレータ192,194は例えば同期機あるいは誘導機であり、運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記すこととする。
車体のフロント部には前輪車軸114が回転可能に軸支されている。前輪車軸114の両端には1対の前輪112が設けられている。車体のリア部には後輪車軸(図示省略)が回転可能に軸支されている。後輪車軸の両端には1対の後輪が設けられている。本実施形態のHEVでは、動力によって駆動される主輪を前輪112とし、連れ回される従輪を後輪とする、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。
前輪車軸114の中央部には前輪側デファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)116が設けられている。前輪車軸114は前輪側DEF116の出力側に機械的に接続されている。前輪側DEF116の入力側には変速機118の出力軸が機械的に接続されている。前輪側DEF116は、変速機118によって変速されて伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸114に分配する差動式動力分配機構である。変速機118の入力側にはモータジェネレータ192の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ192の入力側には動力分配機構122を介してエンジン120の出力側およびモータジェネレータ194の出力側が機械的に接続されている。なお、モータジェネレータ192,194および動力分配機構122は、変速機118の筐体の内部に収納されている。
モータジェネレータ192,194は、回転子に永久磁石を備えた同期機であり、固定子の電機子巻線に供給される交流電力がインバータ装置140,142によって制御されることによりモータジェネレータ192,194の駆動が制御される。インバータ装置140,142にはバッテリ136が電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ装置140,142との相互において電力の授受が可能である。
本実施形態では、モータジェネレータ192およびインバータ装置140からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ194およびインバータ装置142からなる第2電動発電ユニットとの2つを備え、運転状態に応じてそれらを使い分けている。すなわち、エンジン120からの動力によって車両を駆動している場合において、車両の駆動トルクをアシストする場合には第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力によって作動させて発電させ、その発電によって得られた電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。また、同様の場合において、車両の車速をアシストする場合には第1電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力によって作動させて発電させ、その発電によって得られた電力によって第2電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させる。
また、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニットまたは第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力あるいは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
バッテリ136はさらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。補機としてはたとえばエアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータであり、バッテリ136からインバータ装置43に直流電力が供給され、インバータ装置43で交流の電力に変換されてモータ195に供給される。インバータ装置43はインバータ装置140,142と同様の機能を持ち、モータ195に供給する交流の位相や周波数、電力を制御する。たとえばモータ195の回転子の回転に対し進み位相の交流電力を供給することにより、モータ195はトルクを発生する。一方、遅れ位相の交流電力を発生することで、モータ195は発電機として作用し、モータ195は回生制動状態の運転となる。このようなインバータ装置43の制御機能はインバータ装置140,142の制御機能と同様である。モータ195の容量がモータジェネレータ192,194の容量より小さいので、インバータ装置43の最大変換電力がインバータ装置140,142より小さいが、インバータ装置43の回路構成は基本的にインバータ装置140,142の回路構成と同じである。
インバータ装置140、インバータ装置142およびインバータ装置43さらにコンデンサモジュール500は電気的に密接な関係にある。さらに発熱に対する対策が必要な点が共通している。また装置の体積をできるだけ小さく作ることが望まれている。これらの点から以下で詳述する電力変換装置は、インバータ装置140,142およびインバータ装置43さらにコンデンサモジュール500を電力変換装置の筐体内に内蔵している。この構成により、小型で信頼性の高い装置が実現できる。
また、インバータ装置140、インバータ装置142およびインバータ装置43さらにコンデンサモジュール500を一つの筐体に内蔵することで、配線の簡素化やノイズ対策で効果がある。またコンデンサモジュール500とインバータ装置140、インバータ装置142およびインバータ装置43との接続回路のインダクタンスを低減でき、スパイク電圧を低減できると共に、発熱の低減や放熱効率の向上を図ることができる。
次に、図2を用いてインバータ装置140、インバータ装置142あるいはインバータ装置43の電気回路構成を説明する。尚、図1〜図2に示す実施形態では、インバータ装置140、インバータ装置142あるいはインバータ装置43をそれぞれ個別に構成する場合を例に挙げて説明する。インバータ装置140、インバータ装置142あるいはインバータ装置43は同様の構成で同様の作用をなし、同様の機能を有しているので、ここでは、代表例としてインバータ装置140の説明を行う。
本実施形態に係る電力変換装置200は、インバータ装置140とコンデンサモジュール500とを備え、インバータ装置140はインバータ回路144と制御部170とを有している。また、インバータ回路144は、上アームとして動作するIGBT328(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)およびダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330およびダイオード166と、からなる上下アーム直列回路150を複数有し(図2の例では3つの上下アーム直列回路150)、それぞれの上下アーム直列回路150の中点部分(中間電極169)から交流端子159を通してモータジェネレータ192への交流電力線(交流バスバー)186と接続する構成である。また、制御部170はインバータ回路144を駆動制御するドライバ回路174と、ドライバ回路174へ信号線176を介して制御信号を供給する制御回路172と、を有している。
上アームと下アームのIGBT328,330は、スイッチング用パワー半導体素子であり、制御部170から出力された駆動信号を受けて動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力はモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される。
インバータ回路144は3相ブリッジ回路により構成されており、3相分の上下アーム直列回路150,150,150がそれぞれ、バッテリ136の正極側と負極側に電気的に接続されている直流正極端子314と直流負極端子316の間に電気的に並列に接続されている。
本実施形態では、スイッチング用パワー半導体素子としてIGBT328,330を用いることを例示している。IGBT328,330は、コレクタ電極153,163、エミッタ電極(信号用エミッタ電極端子155,165)、ゲート電極(ゲート電極端子154,164)を備えている。IGBT328,330のコレクタ電極153,163とエミッタ電極との間にはダイオード156,166が図示するように電気的に接続されている。ダイオード156,166は、カソード電極およびアノード電極の2つの電極を備えており、IGBT328,330のエミッタ電極からコレクタ電極に向かう方向が順方向となるように、カソード電極がIGBT328,330のコレクタ電極に、アノード電極がIGBT328,330のエミッタ電極にそれぞれ電気的に接続されている。スイッチング用パワー半導体素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。
上下アーム直列回路150は、モータジェネレータ192の電機子巻線の各相巻線に対応して3相分設けられている。3つの上下アーム直列回路150はそれぞれU相、V相、W相に対応し、IGBT328のエミッタ電極とIGBT330のコレクタ電極163とを接続する中間電極169、交流端子159を介してモータジェネレータ192へのU相、V相、W相を形成している。上下アーム直列回路は電気的に並列接続されている。上アームのIGBT328のコレクタ電極153は正極端子(P端子)157を介してコンデンサモジュール500の正極側コンデンサ電極に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子(N端子)158を介してコンデンサモジュール500の負極側コンデンサ電極にそれぞれ電気的に接続(直流バスバーで接続)されている。各アームの中点部分(上アームのIGBT328のエミッタ電極と下アームのIGBT330のコレクタ電極との接続部分)にあたる中間電極169は、モータジェネレータ192の電機子巻線の対応する相巻線に、交流端子159および交流コネクタ188を介して電気的に接続されている。
コンデンサモジュール500は、IGBT328,330のスイッチング動作によって生じる直流電圧の変動を抑制する平滑回路を構成するためのものである。コンデンサモジュール500の正極側コンデンサ電極にはバッテリ136の正極側が、コンデンサモジュール500の負極側コンデンサ電極にはバッテリ136の負極側がそれぞれ直流コネクタ138を介して電気的に接続されている。これにより、コンデンサモジュール500は、上アームIGBT328のコレクタ電極153とバッテリ136の正極側との間と、下アームIGBT330のエミッタ電極とバッテリ136の負極側との間で接続され、バッテリ136と上下アーム直列回路150に対して電気的に並列接続される。
制御部170はIGBT328,330を作動させるためのものであり、他の制御装置やセンサなどからの入力情報に基づいて、IGBT328,330のスイッチングタイミングを制御するためのタイミング信号を生成する制御回路172と、制御回路172から出力されたタイミング信号に基づいて、IGBT328,330をスイッチング動作させるためのドライブ信号を生成するドライブ回路174とを備えている。
制御回路172は、IGBT328,330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンには入力情報として、モータジェネレータ192に対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路150からモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される電流値、およびモータジェネレータ192の回転子の磁極位置が入力されている。目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータ192に設けられた回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では3相の電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の電流値を検出するようにしても構わない。
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータ192のd,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電流指令値と、検出されたd,q軸の電流値との差分に基づいてd,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路174に出力する。
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。これにより、各IGBT328,330は、入力されたドライブ信号に基づいてスイッチング動作する。
また、制御部170は、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、上下アーム直列回路150を保護している。このため、制御部170にはセンシング情報が入力されている。たとえば、各アームの信号用エミッタ電極端子155,165からは各IGBT328,330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,330を過電流から保護する。上下アーム直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アーム直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには上下アーム直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知および過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,330のスイッチング動作を停止させ、上下アーム直列回路150(引いては、この回路150を含む半導体モジュール)を過温度或いは過電圧から保護する。
インバータ回路144の上下アームのIGBT328,330の導通および遮断動作が一定の順で切り替わり、この切り替わり時にモータジェネレータ192の固定子巻線に発生する電流は、ダイオード156,166を含む回路を流れる。
上下アーム直列回路150は、図示するように、Positive端子(P端子、正極端子)157、Negative端子(N端子、負極端子)158、上下アームの中間電極169に接続されている交流端子159、上アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)155、上アームのゲート電極端子154、下アームの信号用端子(信号用エミッタ電極端子)165、下アームのゲート端子電極164、を備えている。また、電力変換装置200は、入力側に直流コネクタ138を有し、出力側に交流コネクタ188を有して、それぞれのコネクタ138と188を通してバッテリ136とモータジェネレータ192にそれぞれ接続される。また、モータジェネレータへ出力する3相交流の各相の出力を発生する回路として、各相に2つの上下アーム直列回路を並列接続するようにした回路構成の電力変換装置であってもよい。
図3〜図7において、200は電力変換装置、10は上部ケース、11は金属ベース板、12は筐体、13は冷却水入口配管、14は冷却水出口配管、420は下カバー、16は下部ケース、17は交流ターミナルケース、18は交流ターミナル、19Aは冷却ジャケット、19は冷却ジャケット19A内の冷却水流路、20は制御回路基板で制御回路172を保持している。21は外部との接続のためのコネクタ、22は駆動回路基板でドライバ回路174を保持している。300はパワーモジュール(半導体モジュール部)で2個設けられており、それぞれのパワーモジュールにはインバータ回路144が内蔵されている。700は積層導体板、800はOリング、304は金属ベース、188は交流コネクタ、314は直流正極端子、316は直流負極端子、500はコンデンサモジュール、502はコンデンサケース、504は正極側コンデンサ端子、506は負極側コンデンサ端子、514はコンデンサセル、をそれぞれ表す。
図3は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の全体構成の外観斜視図を示す。本実施形態に係る電力変換装置200は、上面あるいは底面が略長方形の筐体12と、筐体12の短辺側の外周の1つに設けられた冷却水入口配管13および冷却水出口配管14と、筐体12の上部開口を塞ぐための上部ケース10と、筐体12の下部開口を塞ぐための下部ケース16とを有する。筐体12の底面あるいは上面の形状を略長方形としたことで、車両への取り付けが容易となり、また生産し易い効果がある。
電力変換装置200の長辺側の外周にはモータジェネレータ192や194との接続に用いる2組の交流ターミナルケース17が設けられる。交流ターミナル18は、パワーモジュール300とモータジェネレータ192、194とを電気的に接続するために用いられる。パワーモジュール300から出力される交流電流は、交流ターミナル18を介して、モータジェネレータ192、194へ伝達される。
コネクタ21は、筐体12に内蔵された制御回路基板20に接続されている。外部からの各種信号は、コネクタ21を介して制御回路基板20に伝送される。直流(バッテリ)負極側接続端子部510と直流(バッテリ)正極側接続端子部512は、バッテリ136とコンデンサモジュール500とを電気的に接続する。ここで本実施形態では、コネクタ21は、筐体12の短辺側の外周面の一方側に設けられる。一方、直流(バッテリ)負極側接続端子部510と直流(バッテリ)正極側接続端子部512は、コネクタ21が設けられた面とは反対側の短辺側の外周面に設けられる。つまり、コネクタ21と直流(バッテリ)負極側接続端子部510が離れた配置となっている。これにより、直流(バッテリ)負極側接続端子部510から筐体12に侵入し、さらにコネクタ21まで伝播するノイズを低減することでき、制御回路基板20によるモータの制御性を向上させることができる。
図4は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の全体構成を各構成要素に分解した斜視図である。
図4に示すように、筐体12の中ほどには、内部に冷却水流路19が形成される冷却ジャケット19Aが設けられ、冷却ジャケット19Aの上面には流れの方向に並んで2組の開口400と402が形成されている。2組の開口400と402を塞ぐように2個のパワーモジュール300が冷却ジャケット19Aの上面に固定されている。各パワーモジュール300には放熱のためのフィン305(図7参照)が設けられており、各パワーモジュール300のフィン305(図7参照)はそれぞれ冷却ジャケット19Aの開口400と402から冷却水流路19中に突出している。パワーモジュール300を筐体12に固着する構造は後述する。
冷却ジャケット19Aの下面にはアルミ鋳造を行いやすくするための開口404が形成されており、開口404は下カバー420で塞がれている。また冷却ジャケット19Aの下面には補機用のインバータ装置43が取り付けられている。補機用のインバータ装置43は、図2に示すインバータ回路144と同様の回路を内蔵しており、インバータ回路144を構成しているパワー半導体素子を内蔵したパワーモジュールを有している。補機用のインバータ装置43は、内蔵しているパワーモジュールの放熱金属面が冷却水流路19の下面に対向するようにして、冷却ジャケット19Aの下面に固定されている。また、パワーモジュール300と筐体12との間には、シールをするためのOリング800が設けられ、さらに下カバー420と筐体12との間にもOリング802が設けられる。本実施形態ではシール材をOリングとしているが、Oリングの代わりに樹脂材・液状シール・パッキンなどを代用しても良く、特に液状シールを用いた場合には電力変換装置200の組立性を向上させることができる。
さらに冷却ジャケット19Aの下方には、下部ケース16が設けられ、下部ケース16にはコンデンサモジュール500が設けられている。コンデンサモジュール500は、その金属製ケースの放熱面が下部ケース16の底板内面に接するように、下部ケース16の底板内面に固定されている。この構造により、冷却ジャケット19Aの上面と下面とを利用して、パワーモジュール300およびインバータ装置43を効率良く冷却することができ、電力変換装置全体の小型化に繋がる。
冷却水入出口配管13,14からの冷却水が冷却水流路19を流れることによって、併設されている2個のパワーモジュール300が有する放熱フィンが冷却され、2個のパワーモジュール300全体が冷却される。冷却ジャケット19Aの下面に設けられた補機用のインバータ装置43も同時に冷却する。
さらに冷却水流路19が設けられている筐体12が冷却されることにより、筐体12の下部に設けられた下部ケース16が冷却され、コンデンサモジュール500の熱が下部ケース16および筐体12を介して冷却水に熱的に伝導され、コンデンサモジュール500が冷却される。
パワーモジュール300の上方には、パワーモジュール300とコンデンサモジュール500とを電気的に接続するための積層導体板700が配置される。この積層導体板700は、2つのパワーモジュール300に跨って、2つのパワーモジュール300の幅方向に幅広に構成されている。さらに、積層導体板700は、コンデンサモジュール500の正極側端子と接続される正極側導体板702と、負極側端子と接続される負極側導体板704と、正極側端子と負極側端子と間に配置される絶縁部材によって構成される。これにより積層導体板700の積層面積を広げることができるので、パワーモジュール300からコンデンサモジュール500までの寄生インダクタンスの低減を図ることができる。また、一つの 積層導体板700を2つのパワーモジュール300に載置した後、積層導体板700とパワーモジュール300とコンデンサモジュール500との電気的な接続を行うことが出来るので、パワーモジュール300を2つ備える電力変換装置であっても、その組立工数を抑えることができる。
積層導体板700の上方には制御回路基板20と駆動回路基板22とが配置されている。駆動回路基板22には図2に示すドライバ回路174が搭載され、制御回路基板20には図2に示すCPUを有する制御回路172が搭載されている。また、駆動回路基板22と制御回路基板20との間には金属ベース板11が配置されている。金属ベース板11は、両基板22,20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共に、駆動回路基板22と制御回路基板20とに発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。このように筐体12の中央部に冷却ジャケット19Aを設け、その一方の側に車両駆動用のパワーモジュール300を配置し、また他方の側に補機用のパワーモジュール43を配置することで、少ない空間で効率良く冷却でき、電力変換装置全体の小型化が可能となる。冷却ジャケット19Aを、筐体12と一体にアルミ鋳造で作ることにより、冷却ジャケット19Aは冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。またアルミ鋳造により筐体12と冷却ジャケット19Aとを一体成形構造としたので、熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。
駆動回路基板22には、金属ベース板11を通り抜けて、制御回路基板20の回路群との接続を行う基板間コネクタ23が設けられている。また、制御回路基板20には外部との電気的接続を行うコネクタ21が設けられている。コネクタ21を利用して、電力変換装置の外部に設けた車載バッテリ136、すなわちリチウム電池モジュールとの間で信号の伝送が行われる。リチウム電池モジュールから電池の状態を表す信号やリチウム電池の充電状態などの信号が制御回路基板20に送られてくる。図2に示す信号線176(図4では不図示)が基板間コネクタ23に結線され、制御回路基板20からインバータ回路のスイッチングタイミング信号が駆動回路基板22に伝達され、駆動回路基板22はゲート駆動信号を発生してパワーモジュールのそれぞれのゲート電極に印加する。
筐体12の上端部と下端部には開口が形成されている。これら開口は、それぞれ上部ケース10と下部ケース16を、例えばネジやボルト等の締結部品で筐体12に固定することにより塞がれる。筐体12の高さ方向の中央には、内部に冷却水流路19が設けられる冷却ジャケット19Aが形成されている。冷却ジャケット19Aの上面開口をパワーモジュール300で覆い、下面開口を下カバー420で覆うことにより、冷却ジャケット19Aの内部に冷却水流路19が形成される。組み立て途中に冷却水流路19の水漏れ試験を行う。水漏れ試験に合格した場合に、次に筐体12の上部と下部の開口から基板やコンデンサモジュール500を取り付ける作業を行うことができる。このように筐体12の中央に冷却ジャケット19Aを配置し、次に筐体12の上端部と下端部の開口から必要な部品を固定する作業が行える構造を採用しており、生産性が向上する。また冷却水流路19を最初に完成させ、水漏れ試験の後その他の部品を取り付けることが可能となり、生産性と信頼性の両方が向上する。
図5は冷却ジャケット19Aを有する筐体12のアルミ鋳造品に冷却水入口配管と出口配管を取付けた図であり、図5(a)は筐体12の斜視図、図5(b)は筐体12の上面図、図5(c)は筐体12の下面図である。図5に示す如く、筐体12には、内部に冷却水流路19が形成される冷却ジャケット19Aが一体に鋳造されている。平面視形状が略長方形である筐体12の短辺の一方側側面には、冷却水を取り入れるための冷却水入口配管13と冷却水入口配管14とが設けられている。
冷却水入口配管13から冷却水流路19に流入した冷却水は、矢印418の方向である長方形の長辺に沿って流れ、長方形の短辺の他方側の側面の手前近傍で矢印421aおよび421bのように折り返し、再び長方形の長辺に沿って矢印422の方向に流れ、不図示の出口孔から冷却水入口配管14へ流出する。冷却ジャケット19Aの上面には4つの開口400および402が空けられている。開口400は、冷却水の往路と復路にそれぞれ1個ずつ設けられている。開口402も同様である。開口400、402にはパワーモジュール300がそれぞれ固定され、各パワーモジュール300の放熱用フィンがそれぞれの開口から冷却水の流れの中に突出する。冷却水の流れの方向すなわち筐体12の長辺の沿った方向に並ぶ2組のパワーモジュール300は、例えばOリング800などのシール材を介して冷却ジャケット19Aの開口を水密に塞ぐように固定される。
冷却ジャケット19Aは、筐体周壁12Wの中段を横断して筐体12と一体成形されている。冷却ジャケット19Aの上面には4つの開口400および402が、下面には1つの開口404が設けられている。開口400および402のそれぞれの周囲には、パワーモジュール取り付け面410Sが設けられている。取り付け面410Sの開口400と402の間の部分を支持部410と呼ぶ。支持部410に対して冷却水の出入り口側の方に1つのパワーモジュール300が固定され、支持部410に対して冷却水の折り返し側の方に他の1つのパワーモジュール300が固定される。
図5(b)に示すボルト孔412とボルト貫通孔412Aは、冷却水出入り口側のパワーモジュール300を取り付け面410Sに固定するために用いられ、この固定により開口400が密閉される。ボルト孔414とボルト貫通孔414Aは、冷却水折り返し側のパワーモジュール300を取り付け面410Sに固定するために用いられ、この固定により開口402が密閉される。このように冷却水流路19の往路と復路の両方を跨ぐように各パワーモジュール300を配置することで、インバータ回路144を金属ベース304の上に高密度で集積できるため、パワーモジュール300の小型化が可能となり電力変換装置200の小型化にも大きく寄与する。
出入り口側のパワーモジュール300は、冷却水入口配管13からの冷たい冷却水と、出口側に近く発熱部品からの熱によって暖められた冷却水とにより冷やされることとなる。一方、折り返し側のパワーモジュール300は、少し温められた冷却水および、出口孔403近くの冷却水よりは少し冷えた状態の冷却水によって冷却される。結果として折り返し冷却通路と2つのパワーモジュール300の配置関係は、2つのパワーモジュール300の冷却効率が均衡した状態となるメリットがある。
支持部410はパワーモジュール300の固定のために使用され、開口400や402の密閉のために必要である。さらに支持部410は筐体12の強度の強化に大きな効果がある。冷却水流路19は上述の通り折り返し形状であり、流路の往路と流路の復路を隔てる隔壁408が設けられ、この隔壁408が支持部410と一体に作られている。隔壁408は、流路の往路と流路の復路を隔てる部材であるが、筐体12の機械的な強度を高める機能を有している。また流路の復路内の冷却水の熱を、流路の往路内の冷却水に熱伝達して冷却水の温度を均一化する機能も有している。冷却水の入口側と出口側との温度差が大きいと冷却効率のムラが大きくなる。ある程度の温度差は仕方ないが、この隔壁408が支持部410と一体に作られていることで冷却水の温度差を抑える効果が有る。
以上説明したように、冷却ジャケット19Aが筐体12の中段位置で筐体12を横断して設けられているので、冷却ジャケット19Aは筐体12の強度部材として機能する。加えて、支持部410および隔壁408は冷却ジャケット19A、ひいては筐体12の強度部材として機能する。
図5(c)は冷却ジャケット19Aの裏面を示しており、支持部410に対応した裏面に開口404が形成されている。この開口404は、筐体の鋳造により形成する支持部410と筐体12とを一体成形する際の歩留まりを向上するためのものである。開口404の形成により、支持部410と冷却水流路19の底部との二重構造が無くなり、鋳造し易く、生産性が向上する。
また、冷却水流路19の側部外側には貫通穴406が形成される。冷却水流路19を挟んで両側に設置される電気部品(パワーモジュール300およびコンデンサモジュール500)同士が、この貫通穴406を介して接続される。
筐体12は、冷却ジャケット19Aと一体構造として製造できるので、鋳造生産、特にアルミダイキャスト生産に適している。
ジャケット19Aの上面開口にパワーモジュール300を固定し、さらに裏面開口に下カバー420を固定した状態を図6に示す。筐体12の長方形の一方の長辺側において、筐体12の外に交流電力線186および交流コネクタ188が突出している。
図6において、筐体12の長方形の他方の長辺側内部に貫通孔406が形成されており、貫通孔406を通してパワーモジュール300と接続される積層導体板700の一部が見えている。補機用インバータ装置43は、直流正極側接続端子部512が接続された筐体12の側面の近傍に配置される。また、この補機用インバータ装置43の下方(冷却水流路19がある側とは反対側)にコンデンサモジュール500が配置される。補機用正極端子44と補機用負極端子45は、下方(コンデンサモジュール500が配置された方向)に突出し、コンデンサモジュール500側の補機用正極端子532と補機用負極端子534にそれぞれ接続される。これにより、コンデンサモジュール500から補機用インバータ装置43までの配線距離が短くなるので、コンデンサモジュール500側の補機用正極端子532および補機用負極端子534から金属製の筐体12を介して制御回路基板20に侵入するノイズを低減することができる。
また、補機用インバータ装置43は冷却水流路19とコンデンサモジュール500との隙間に配置され、さらに補機用インバータ装置43の高さは下カバー420の高さと同程度となっている。そのため、補機用インバータ装置43を冷却するとともに電力変換装置200の高さの増加を抑えることができる。
また、図6に示すように、冷却水入口配管13と冷却水出口配管14が螺子により固定されている。図6の状態で冷却水流路19の水漏れ検査を実施できる。この検査に合格したものに、上記補機用インバータ装置43が取り付けられ、さらにコンデンサモジュール500が取り付けられる。
図7は、電力変換装置200の断面図(図6のA−A断面基準)であり、基本的な構造は図3から図6に基づいて、既に説明したとおりである。
筐体12の断面における上下方向の中央部には筐体12と一体にアルミダイキャストで作られた冷却ジャケット19A(図7の点線部)が設けられ、冷却ジャケット19Aの上面側に形成された開口にパワーモジュール300(図7の一点鎖線部)が設置されている。図7の紙面に対して左側が冷却水の往路19aであり、紙面に対して右側が水路の折り返し側の復路19bである。往路19aおよび復路19bの上方には、上述のとおりそれぞれ開口が設けられ、開口は、パワーモジュール300の放熱のための金属ベース304により往路19aおよび復路19bの両方に跨るように塞がれ、金属ベース304に設けられた放熱用フィン305が冷却水の流れのなかに開口から突出する。また、冷却水流路19の下面側には補機用のインバータ装置43が固定されている。
略中央が屈曲した板状の交流電力線186は、その一端がパワーモジュール300の交流端子159と接続され、その他端が、電力変換装置200内部から突出して交流コネクタを形成している。正極側コンデンサ端子504および負極側コンデンサ端子506は、貫通孔406(図7の2点鎖線部)を介して、正極側導体板702および負極側導体板704にそれぞれ電気的および機械的に接続される。筐体12に設けた冷却水流路19内の冷却水の流れ方向と略垂直の方向に、交流コネクタ188と正極側コンデンサ端子504および負極側コンデンサ端子506が配置される。そのため電気配線が整然と配置され、電力変換装置200の小型化に繋がっている。積層導体板700の正極側導体板702、負極側導体板704、および交流側電力線186がパワーモジュール300の外に突出して接続端子を形成している。そのため、電気的接続構造がたいへん簡単で、また他の接続導体が使用されていないため小型化になっている。この構造により生産性が向上し、信頼性も向上する。
さらに貫通孔406は冷却水流路19とは筐体12内部の枠体で隔絶しており、かつ正極側導体板702および負極側導体板704と正極側コンデンサ端子506および負極側コンデンサ端子504との接続部が貫通孔406内に存在するため、信頼性が向上する。
以上説明した冷却構造では、発熱量の大きいパワーモジュール300を冷却ジャケット19Aの一方の面に固定し、パワーモジュール300のフィン305を冷却水流路19内に突出させて、パワーモジュール300を効率良く冷却する。次に放熱量の大きい補機用インバータ装置43を冷却ジャケット19Aの他方の面で冷却する。さらに次に発熱量が大きいコンデンサモジュール500を筐体12および下部ケース16を介して冷却する。このように放熱量の多さにあわせた冷却構造としているので、冷却効率や信頼性が向上すると共に、電力変換装置200をより小型化することができる。
さらに補機用インバータ装置43を、冷却ジャケット19Aのコンデンサモジュール500に面する底面に固定しているので、補機用インバータ装置43の平滑用コンデンサとしてコンデンサモジュール500を使用する際、配線距離が短くなる効果がある。また配線距離が短いことからインダクタンスを小さくできる効果がある。
パワーモジュール300の上方には、ドライバ回路174を実装した駆動回路基板22が配置され、さらに駆動回路基板22の上方には、放熱および電磁シールドの効果を高める金属ベース板11を隔てて制御回路基板20が配置されている。なお制御回路基板20には図2に示した制御回路172が搭載されている。上部ケース10を筐体12に固定することによって、本実施形態に係る電力変換装置200が構成される。
上述のように、制御回路基板20とパワーモジュール300との間に駆動回路基板22を配置しているので、制御回路基板20からインバータ回路の動作タイミングが駆動回路基板22に伝えられ、それに基づいて駆動回路基板22でゲート信号が作られ、パワーモジュール300のゲートにそれぞれ印加される。このように電気的な接続関係に沿って制御回路基板20や駆動回路基板22を配置しているので、電気配線が簡素化でき、電力変換装置200の小型化に繋がる。また、駆動回路基板22は、制御回路基板20に対して、パワーモジュール300やコンデンサモジュール500よりも近い距離に配置される。そのため駆動回路基板22から駆動回路基板20までの配線距離は、他の部品(パワーモジュール300等)と制御回路基板20との配線距離よりも短くなる。よって直流正極側接続端子部512から伝わる電磁ノイズやIGBT328、330のスイッチング動作による電磁ノイズが、駆動回路基板22から制御回路基板20までの配線に侵入することを抑えることができる。
冷却ジャケット19Aの一方の面にパワーモジュール300を固定し、他方の面に補機用インバータ装置43を固定することで、冷却水流路19を流れる冷却水でパワーモジュール300と補機用インバータ装置43を同時に冷却する。この場合、パワーモジュール300は放熱のためのフィンが冷却水流路19の冷却水と直接、接するのでより冷却効果が大きい。さらに冷却水流路19を流れる冷却水で筐体12を冷却するとともに、筐体12に固定した下部ケース16および金属ベース板11を冷却する。下部ケース16にはコンデンサモジュール500の金属ケースが固定されるので、下部ケース16と筐体12を介してコンデンサモジュール500が冷却水で冷却される。さらに金属ベース板11を介して制御回路基板20や駆動回路基板22を冷却する。下部ケース16も熱伝導性の良い材料でできていて、コンデンサモジュール500からの発熱を受け、筐体12に熱を伝導し、伝熱された熱は冷却水流路19の冷却水で放熱される。また、冷却ジャケット19Aの下面には、車内用エアコン、オイルポンプ、他用途のポンプ用として用いる、比較的小容量の補機用インバータ装置43を設置する。この補機用インバータ装置43からの発熱は、筐体12の中間枠体を通して冷却水流路19の冷却水で放熱される。このように筺体12の中央に冷却ジャケット19Aを設け、冷却ジャケット19Aの一方、すなわち上方に金属ベース板11を設け、他方、すなわち下方側に下部ケース16を設けることで、電力変換装置200を構成するのに必要な部品を発熱量に応じ、効率良く冷却することができる。また電力変換装置200の内部に部品が整然と配置されることとなり、小型化が可能となる。
電力変換装置の放熱機能を果たす放熱体は、第1に冷却水流路19であるが、この他にも金属ベース板11がその機能を奏している。金属ベース板11は、電磁シールド機能を果たすとともに、制御回路基板20や駆動回路基板22からの熱を受けて、筐体12に熱を伝導し、冷却水流路19の冷却水で放熱される。
このように、本実施形態に係る電力変換装置は、放熱体が3層の積層体、すなわち、金属ベース板11、冷却水流路19(冷却ジャケット19A)、下部ケース16という積層構造を有している。これらの放熱体はそれぞれの発熱体(パワーモジュール300、制御回路基板20、駆動回路基板22、コンデンサモジュール500)に隣接して階層的に設置される。階層構造の中央部には、主たる放熱体である冷却水流路19が存在し、金属ベース板11と下部ケース16は筐体12を通して冷却水流路19の冷却水に熱を伝える構造となっている。筐体12内に3つの放熱体(冷却水流路19、金属ベース板11、下部ケース16)が収容されて、放熱性を向上させるとともに薄型化、小型化に寄与している。
図8(a)は、本実施形態に関するパワーモジュール300の上方斜視図であり、図8(b)は、当該パワーモジュール300の上面図である。図9は、本実施形態に関するパワーモジュール300の直流端子の分解斜視図である。図10は、直流バスバーの構造を分かりやすくするため、パワーモジュールケース302を一部透明にした断面図である。図9(a)は、パワーモジュール300の構成部品である金属ベース304および3つの上下アーム直列回路のうち1つを抜き出した図である。図9(b)は、金属ベース304、回路配線パターンおよび絶縁基板334の分解斜視図である。
図8(a)において、302はパワーモジュールケース、304は金属ベース、305はフィン(図10参照)、314aは直流正極端子接続部、316aは直流負極端子接続部、318は絶縁紙(図9参照)、320U/320Lはパワーモジュールの制御端子、328は上アーム用のIGBT、330は下アーム用のIGBT、156/166はダイオード、334は絶縁基板(図10参照)、334kは絶縁基板334上の回路配線パターン(図10参照)、334rは絶縁基板334下のベタパターン337(図10参照)をそれぞれ表す。
パワーモジュール300は、主に、例えば樹脂材料のパワーモジュールケース302内の配線を含めた半導体モジュール部と、金属材料例えばCu,Al,AlSiCなどからなる金属ベース304と、外部との接続端子(直流正極端子314や制御端子320U等)と、から構成される。そして外部と接続する端子として、パワーモジュール300は、モータと接続するためのU,V,W相の交流端子159と、コンデンサモジュール500と接続する直流正極端子314および直流負極端子316(図9参照)とを有している。
絶縁基板334の上に、上下アームのIGBT328,330、ダイオード156,166等が半田付けされ、パワーモジュールケース302で囲まれた領域はレジンまたはシリコンゲル(不図示)によって封止保護されている。絶縁基板334はセラミック基板であっても良いし、さらに薄い絶縁シートであってもよい。後述するように熱伝導に優れる方が好ましいことから、窒化アルミニウムや窒化珪素等の熱伝導率の高い材料を選択・使用することが望ましい。
図8(b)は、金属ベース304に固着された熱伝導性の良いセラミックからなる絶縁基板334の上に、上下アーム直列回路が具体的にどのような配置で設置されているかを示す配置構成図である。図8(b)に示すIGBT328,330とダイオード327、332はそれぞれ2つのチップを並列接続して上アーム、下アームを構成し、上下アームに通電可能な電流容量を増やしている。
図9に示すように、パワーモジュール300に内蔵された直流端子313は、絶縁紙318を挟んで、直流負極端子316、直流正極端子314の積層構造を有する(図9の点線部) 。直流負極端子316、直流正極端子314の端部は、互いに反対方向に屈曲され、積層導体板700とパワーモジュール300とを電気的に接続するための負極接続部316aおよび正極接続部314aを形成している。積層導体板700との接続部314aおよび316aがそれぞれ2つ設けられることにより、負極接続部316aおよび正極接続部314aから3つの上下アーム直列回路までの平均距離がほぼ等しくなるので、パワーモジュール300内の寄生インダクタンスのバラツキを低減することができる。
直流正極端子314、絶縁紙318、直流負極端子316を積層して組み立てたときに、負極接続部316aと正極接続部314aが互いに反対方向に屈曲した構造となる。絶縁紙318は、負極接続部316aに沿って曲げ、正極、負極の端子の絶縁沿面距離を確保する。絶縁紙318は、耐熱が必要なときは、ポリイミドやメタ系アラミド繊維、トラッキング性を高めたポリエステルなどを複合したシートを用いる。また、ピンフォールなどの欠陥を考慮して、信頼性を高めるときは2枚重ねする。また、破れたり、裂けたりすることを防ぐために、コーナ部にアールを設けたり、端子のエッジが絶縁紙に触れないよう、打ち抜き時のダレ面を絶縁紙に面する方向にする。本実施例では、絶縁物として絶縁紙を用いたが、他の例として、端子に絶縁物をコーティングしてもよい。寄生インダクタンスを低減するため、例えば、600V耐圧のパワーモジュールのときは、正極、負極間の距離を0.5mm以下とし、絶縁紙の厚さは、その半分以下とする。
直流正極端子314および直流負極端子316は、回路配線パターン334kと接続するための接続端314k、316kを有する。それぞれの接続端314k、316kは、各相(U,V,W相)に対して2つ設けられている。これにより、後述するように、各相のアーム毎に、2つの小ループ電流経路を形成した回路配線パターンと接続することができる。また、各接続端314k、316kは、回路配線パターン334kの方向に向かって突出し、かつ回路配線パターン334kとの接合面を形成するために、その先端部が屈曲している。接続端314k、316kと回路配線パターン334kは、半田などを介して接続されるか、もしくは直接金属同士を超音波溶接により接続される。
パワーモジュール300、特に金属ベース304は、温度サイクルによって膨張および収縮する。この膨張および収縮によって、接続端314k、316kと回路配線パターン334kの接続部は、亀裂または破断するおそれが生じる。そこで、本実施形態に係るパワーモジュール300では、図9に示すように、直流正極端子314と直流負極端子316が積層されることにより形成される積層平面部319が、絶縁基板334を搭載した側の金属ベース304の平面に対して、略平行となるように構成されている。これにより、積層平面部319は、前述の膨張および収縮により発生する金属ベース304の反り返りに対応した反り返り動作が可能となる。そのため、積層平面部319に一体に形成された接続端314k、316kの剛性は、金属ベース304の反り返りに対して、小さくすることができる。したがって、接続端314k、316kと回路配線パターン334kとの接合面の垂直方向に加わる応力を緩和することができ、この接合面の亀裂または破断を防止することができる。
なお、本実施形態に係る積層平面部319は、金属ベース304の幅方向および奥行き方向の両方の反り返りに対応して反り返り動作が可能となるように、積層平面部319の幅方向の長さを130mm、奥行き方向の長さを10mmとして、奥行き方向の長さを大きめにしている。また、直流正極端子314と直流負極端子316のそれぞれの積層平面部319の厚さは、反り返り動作をしやすいように1mmと比較的薄く設定されている。
図10に示されるように、金属ベース304の一方の表面には、インバータ回路を構成するIGBTやダイオードが実装されるとともに、金属ベース304の周縁には樹脂製のパワーモジュールケース302が設けられている。冷却水流路19を流れる冷却水へ効率良く放熱するために、絶縁基板334の実装面とは反対側の金属ベース裏面に複数の放熱のフィン、すなわち複数の放熱ピン305を有している。図10(a)、図12に示す如く、金属ベース304には、上下アームにそれぞれ対応するように2組のフィン群305Gが設けられている。各放熱フィン群305Gは複数の放熱フィン305を有する。この実施の形態の電力変換装置では、一対のパワーモジュール300の4つの放熱フィン群305Gが、往復する冷却水流路19の上方の開口400,402から水路内にそれぞれ突出する。金属ベース304の放熱フィン群305G周囲の金属面は、Oリング800を介して、冷却ジャケット19Aに設けられた開口400,402を閉じるために使用される。
図13に示すように、各放熱フィン群305Gにおいて、放熱ピン305は千鳥状に配列されている。放熱ピン305を格子状に配列する場合に比べて、冷却水流路における圧損を低減しつつ、冷却水を効果的に各ピンに接触させて冷却能力を向上させることができる。
後で詳細に説明するように、フィン305は、銅を素材として鍛造により金属ベース304と一体成型されている。この製造方法では、パワーモジュール300の生産性が向上するとともに、金属ベース304からフィン305までの熱伝導率が向上し、IGBTおよびダイオードの放熱性を向上させることができる。また、後で詳細に説明するように、銅を素材として鍛造により製作した金属ベース304のビッカース硬度が60以上となるような設計をすることで、温度サイクルによって生ずる金属ベース304のラチェット変形を抑制し、金属ベース304と筐体12とのシール性を向上させることができる。
金属ベース304の一方の面には、絶縁基板334が固定され、絶縁基板334上には半田337より、上アーム用のIGBT328と上アーム用のダイオード156、および下アーム用のIGBT330や下アーム用のダイオード166を有するチップが固定される。
図11(a)に示すように、上下アーム直列回路150は、上アーム回路151、下アーム回路152、これら上下アーム回路151,152を結線するための端子370、および交流電力を出力するための交流端子159を備えている。また、図11(b)に示すように、上アーム回路151は、金属ベース304の上に、回路配線パターン334kを形成した絶縁基板334を設け、回路配線パターン334kの上にIGBT328、ダイオード156を実装して構成されている。
IGBT328およびダイオード156は、それらの裏面側の電極と、回路配線パターン334kとが、半田により接合される。絶縁基板334は、回路配線パターン面とは反対側の面(裏面)が、パターンの無い、いわゆるベタパターンを形成している。この絶縁基板334の裏面のベタパターンと、金属ベース304とが、半田で接合されている。下アーム回路152も上アームと同様に、金属ベース304の上に配置された絶縁基板334と、この絶縁基板334の上に配線された回路配線パターン334kと、この回路配線パターン334kの上に実装されたIGBT330、ダイオード166とを備えている。
IGBT330およびダイオード166の裏面側の電極も、回路配線パターン334kと半田で接合される。なお、本実施形態における各相の各アームは、IGBT328とダイオード156を並列接続した一組の回路部を2組並列に接続して構成される。要求される回路部の組数は、モータ192に通電される電流量によって決定される。本実施形態に係るモータ192に通電される電流よりも大電流が必要な場合には、回路部を3組、もしくはそれ以上を並列接続して構成される。逆に、モータを小さい電流で駆動することができる場合には、各相の各アームは、回路部を一組のみで構成される。
図11(b)を用いてパワーモジュール300の電流経路を説明する。パワーモジュール300の上アーム回路151に流れる電流の経路を以下に示す。
(1)不図示の直流正極端子314から接続導体部371U、(2)接続導体部371Uから素子側接続導体部372Uを介して上アーム用IGBT328および上アーム用ダイオード156の一方側電極(素子側接続導体部372Uと接続された側の電極)、(3)上アーム用IGBT328および上アーム用ダイオード156の他方側電極からワイヤ336を介して接続導体部373U、(4)接続導体部373Uから結線端子370の接続部374U、374Dを介して接続導体部371D を流れる。なお、前述のように上アームは、IGBT328とダイオード156を並列接続した回路部を2組並列に接続して構成される。よって、上記(2)の電流経路において、電流は、素子側接続導体部372Uにて2つに分岐され、分岐された電流は2組の回路部へそれぞれ流れる。
パワーモジュール300の下アーム回路152に流れる電流経路を以下に示す。
(1)接続導体部371Dから素子側接続導体部372Dを介して下アーム用IGBT330および上アーム用ダイオード166の一方側電極(素子側接続導体部372Dと接続された側の電極)、(2)下アーム用IGBT330および下アーム用ダイオード166の他方側電極からワイヤ336を介して接続導体部373D、(3)接続導体部373Dから不図示の直流負極端子316 を流れる。なお、上アームと同様に下アームは、IGBT330とダイオード166を並列接続した回路部を2組並列に接続して構成されるので、上記(1)の電流経路において、電流は、素子側接続導体部371Dにて2つに分岐され、分岐された電流は2組の回路部へそれぞれ流れる。
ここで、上アーム回路のIGBT328(およびダイオード156)と不図示の直流正極端子314とを接続するための接続導体部371Uは、絶縁基板334の一辺の略中央部付近に配置される。そして、IGBT328(およびダイオード156)は、接続導体部371Uが配設された絶縁基板334の一辺側とは反対側である他辺側の近傍に実装される。また、本実施形態においては、2つ備えられた接続導体部373Uは、前述の接続導体部371Uを挟んで、かつ絶縁基板334の一辺側に一列に配置される。
このような回路パターンおよび実装パターン、すなわち、絶縁基板334上の回路配線パターンを、概ねT字形状の配線パターンと、概ねT字の縦棒(371U)の両側に、2つの配線パターン(371U)とし、接続端371U、373Uから端子を実装することで、IGBT328のスイッチング時の過渡的な電流経路は、図11(b)の矢印350(破線)に示すようなM字状の電流経路、すなわち2つの小ループ電流経路となる(矢印の方向は下アームターンオン時)。この2つの小ループ電流経路の周辺には、図11(b)の矢印350H方向(実線)の磁界350Hが発生する。この磁界350Hによって、絶縁基板334の下方に配置された金属ベース304に、誘導電流、いわゆる渦電流340が誘導される。この渦電流340は、前述の磁界350Hを打ち消す方向の磁界340Hを発生させ、上アーム回路で生じる寄生インダクタンスを低減させることができる。
上述の2つの小ループ電流は、絶縁基板334上に流れる電流同士が打ち消し合うような2つのUターン電流である。このため、図11(b)の磁界350Hに示すように、パワーモジュール300の内部に、より小さいループ磁界ができるため、寄生インダクタンスを低減できる。さらに、スイッチング時に生ずる磁界ループが小さく、パワーモジュール内部に磁界ループを閉じ込めることができるため、パワーモジュールの外の筐体への誘導電流を低減し、制御回路基板上の回路の誤動作や、電力変換装置の外部への電磁ノイズも防止できる。
下アーム回路も前述の上アーム回路と同様な回路配線パターンおよび実装パターンとを有する。すなわち、下アーム回路のIGBT330(およびダイオード166)と不図示の直流負極端子316とを接続するための接続導体部371Dは、絶縁基板334の一辺の略中央部付近に配置される。そして、IGBT330(およびダイオード166)は、接続導体部371Dが配設された絶縁基板334の一辺側とは反対の他辺側の近傍に実装される。また、本実施形態においては、2つ備えられた接続導体部373Dは、前述の接続導体部371Dを挟んで、かつ絶縁基板334の一辺側に一列に配置される。
このような回路配線パターンおよび実装パターンとすることにより、下アーム回路側においても、前述の寄生インダクタンスを低減させる効果を奏する。なお、本実施形態において、各相の各アームの電流経路の入口は、例えば2つの接続導体部373Uに挟まれた接続導体部371Uとなり、一方電流経路の出口は、2つの接続導体部373Uとなっている。しかし、これら入口と出口が逆となっても、各相の各アームにおいて前述の小ループ電流経路が形成される。そのため、前述の同様に、各相の各アームの寄生インダクタンス低減および電磁ノイズ防止を図ることができる。
図14に示すように、絶縁基板334のインバータ回路実装面には回路配線パターン351が形成されており、その回路配線パターン351にチップ下半田350を介してIGBT328などのパワースイッチング素子が接合されている。また、その絶縁基板334の裏面側にも、半田付けパターン352が形成されており、その半田付けパターン352に接合半田353を介して、絶縁基板334が金属ベース304上に接合されている。IGBT328などで発生した熱は、IGBT328などのパワースイッチング素子、チップ下半田350、回路配線パターン351、絶縁基板334、半田付けパターン352、接合半田353を経由して金属ベース304と放熱ピン305に伝導して冷却水流路19内の冷却水に放熱される。
(ラチェット変形)
金属ベース304の熱膨張率は絶縁基板334の熱膨張率よりも大きいので、高温時には、図15に示すように、金属ベース304の伸びが絶縁基板334の伸びよりも大きい。高温時には、絶縁基板334と金属ベース304を接続する接合半田353が軟らかくなるため、伸び量の差は、接合半田353のせん断変形によって吸収される。この結果、金属ベース304に反りは発生しにくい。一方、低温時には、金属ベース304の収縮量が絶縁基板334の収縮量より大きくなり、また、接合半田353のせん断変形量が小さくなる。そのため、金属ベース304と絶縁基板334の縮み量の差が接合半田353で吸収仕切れず、金属ベース304は、絶縁基板334側に凸となる形状に湾曲する。このとき、金属ベース304には、曲げモーメントと同時に引張り力が作用するため、最大応力はその絶縁基板334との接合面に生じる。金属ベース304の降伏応力が上記最大応力よりも大きければ、金属ベース304の変形量は弾性変形可能な範囲内であり、温度サイクルを繰り返してもその都度元の形状に戻ることができる。しかし、上記最大応力が金属ベース304の降伏応力を超えた場合には、その金属ベース304は塑性変形する。塑性変形が発生すると、金属ベース304が再び高温になっても、元の形状に戻るような曲げ力が働かず、せん断変形して曲がった金属ベース304に沿う位置に絶縁基板334が半田353で固定される。
以上説明したように、金属ベース304には、低温時に絶縁基板334側が凸形状に湾曲するような塑性変形が発生する。金属ベース304の塑性変形は、温度サイクルを繰り返すと蓄積され、次第に変形量が大きくなる。このようなメカニズムで発生する現象をラチェット変形と呼ぶ。金属ベース304の熱負荷サイクル(温度サイクル)に起因してラチェット現象が発生すると、絶縁基板334が損傷してパワーモジュール300が故障するおそれがある。そこで、パワーモジュールにおいては、このようなラチェット変形を防止する必要がある。
(ラチェット変形の防止対策)
ラチェット変形を防止するためには、金属ベース304の変形を固定しない、言い換えると、塑性変形させないことが有効である。そのため、金属ベース304の硬度を高くして降伏応力を超えないようにすることが効果的である。
HEV110は、通常、−40〜125℃の範囲の環境下で使用されるので、この実施の形態で想定する温度サイクルを、低温側下限温度−40℃、高温側上限温度+125℃と想定する。また、パワーモジュール300の金属ベース304の材質を銅とし、厚みを3mmとする。上記温度サイクルで金属ベース304に熱負荷を与えた場合の最大応力は、以下のように算出することができる。
3mmの金属ベース304に絶縁基板334を接合した状態での弾性応力を解析した。125℃から−40℃の温度変化に伴って、金属ベース304の最大応力は150MPaであった。金属ベース304の変形が、上記温度サイクルの中間温度で中立状態になるものと仮定すると、高温側に圧縮、低温側に引張り応力として均等に分配すれば、低温時の金属ベース304に加えられる最大応力は75MPaとなる。
(金属ベース材質について)
図16は、横軸を降伏応力、縦軸をビッカース硬さとしたグラフである。図16からわかるように、金属材料のビッカース硬さと降伏応力は相関がある。上述したとおり、温度サイクルに伴って金属ベース304に発生する最大応力は75MPaである。したがって、図16のグラフから、鍛造後のビッカース硬度が60以上となる材料を選択すれば、ラチェット変形を防止できることが分る。
金属ベース304の材料としては、できるだけ熱伝導率の高いものが望ましい。冷却能力を向上させるため、たとえば、無酸素銅ないしタフピッチ銅を使用するのが好ましい。従来の金属ベースは、通常、圧延により作製されるので、その加工硬化により硬度が高くなっている。したがって、素材そのもので評価する限りでは、ラチェット変形を防止できる。しかし、金属ベース304の放熱ピン305は、従来、金属ベース304の裏面にロウ付けで固着されて突設されている。放熱ピン305を金属ベース304にロウ付けする際、600〜700℃程度に加熱する必要がある。純度の高い無酸素銅ないしタフピッチ銅を使用すると、金属ベース305が焼きなまされ、硬度がビッカース硬度40前後に下がってしまう。
特開2007−295765号公報には、上記のラチェット変形を防止するため、高温時に硬度が低下し難い銅合金を金属ベースの材料として使用することが提案されている。具体的には、スズ、コバルト、亜鉛、ニッケル、りんなどの元素が合計1%程度添加されている銅材について記載されている。この銅材の熱伝導率は300W/m℃以下であり、純度の高い無酸素銅ないしタフピッチ銅の熱伝導率よりも低くく、そのため、冷却能力が低下してしまう。また、放熱ピンを金属ベースにロウ付けする構造では、放熱ピンと金属ベースの間に挟まれるロウ材の熱伝導率が小さく、ロウ材層の熱抵抗が大きくなることが問題となる。
したがって、本実施形態のようにパワーモジュール300を直接水冷する構造においては、−40〜125℃の温度サイクルでも金属ベース304がラチェット変形を発生させることなく、同時に、金属ベース304や放熱ピン305による冷却性能の向上を達成することが課題である。
そこで、本発明者等は、ビッカース硬度60以上を確保しつつ、無酸素銅などの純度の高い銅材で金属ベース304と放熱ピン305を形成するのに最適な製造方法を鋭意研究し、以下のような知見を得た。すなわち、放熱ピン305を鍛造により金属ベース304に一体成型すれば、鍛造時の加工硬化によりビッカース硬度が60を超えることを見出した。
図17に示すように、金属ベース304と放熱ピン305は、鍛造による加工硬化により、切断断面に鍛流線900の現れる金属材料に変質する。この現象は、放熱ピン鍛造型で素材を鍛造する際、金属結晶の流動により発生するものである。ビッカース硬度60は、図16に示すグラフによれば、降伏応力としては80MPaに相当して、−40〜125℃の使用環境における温度サイクルに十分耐え得ることが分る。また、金属ベース304と放熱ピン305は同一材料で一体成型されるので、ロウ付け接合部が介在することがなく、熱伝導率の低下を招来しない。すなわち、従来よりも熱伝導率を向上させて放熱特性の向上が期待できる。
(金属ベースの厚さ)
ラチェット変形を防止するためには、金属ベース304を厚くすることにより、温度サイクルにより発生する応力を低減することもできる。しかしながら、素材の厚みによるラチェット変形防止対策では、金属ベースの厚さと接合半田353の温度サイクル寿命を示す図18から分かるように、絶縁基板334と金属ベース304を接合する半田353の熱疲労寿命が短くなってしまう。この理由は、温度サイクルにより発生するせん断応力は、金属ベース304が厚いほど大きくなるからである。この実施の形態のHEV110では、−40〜125℃の温度サイクル寿命を1000回以上とするため、図18に示す相関特性によれば、板厚は3mm〜4mmが適していることが分かる。そこで、本実施形態では金属ベース304の厚さを3mmとした。
このように半田353の温度サイクルに基づいて板厚を3mmとした場合、冷却水流路内の水圧による金属ベース304の変形量を許容値以内に抑え、かつ、ビッカース硬度60を満足できるか否かについて、以下、図30(a)、(b)を参照して説明する。
図30(a)は横軸に金属ベース304の面積を、縦軸に板厚をとったグラフである。図30(b)は横軸に面積を、縦軸にビッカース硬度をとり、板厚3mm、5mmをパラメータとして描いたグラフである。なお、横軸の面積は、冷却水流路の開口を閉鎖するに必要な金属ベース304の面積である。面積が大きいほど、また、冷却水流路の圧力が高いほど、金属ベース304の応力が大きくなる。ここでは、水圧0.2MPaとし、金属ベース304の許容変形量を0.5mmとして計算した。
図30(a)から、板厚3mmで水圧0.2MPaに耐える面積を求めると、概ね20000mm2である。図30(b)の板厚3mmの線図によれば、面積20000mm2におけるビッカース硬度は60以上であることが分かる。
以上より、半田353の熱疲労条件から決定した板厚3mmの金属ベース304を使用する場合、鍛造後の金属ベース304のビッカース硬度が60以上を満足すれば、水圧0.2MPaによる金属ベース304の変形量を0.5mm以内に抑えることができ、水漏れ性能も十分であることがわかる。
(放熱ピンの寸法形状について)
放熱ピン305の形状寸法は、冷却水流路19内に流通する冷却水の圧力損失を所定値以内に抑えつつ冷却性能を確保するように決定する。冷却性能は、ピン高さ(ピン長さ)が大きいほど、また直径が小さいほど向上する。銅材料を使用して鍛造で多数の放熱ピンを金属ベースの裏面から、効率よく成型するための高さ:直径の比率は、1:4が限界である。そこで、本実施の形態では、直径が約2mmで高さが約8mmの円柱形状の放熱ピン305とした。なお、ロウ付けで金属ベース304の一方の面に放熱ピンを突設する従来のピン形状も、直径(2mm):高さ(8mm)=1:4の比率でもあり、冷却性能を十分に満足する寸法である。
図31(a)、(b)を参照して、直径2mm、高さ8mmのピンフィンによる冷却性能が十分に満足する寸法であることを説明する。図31(a)は、横軸にピン高さを、縦軸に等価熱伝達率をとり、ピン直径を2mmとした場合のグラフである。グラフ31aは、圧力損失を許容上限値に設定した場合、グラフ31bは、ピン間間隙を許容下限値に設定した場合のグラフである。圧力損失の許容上限値は、冷却系のポンプ容量、流路断面積などに依存して決定される。ピン間間隙の許容下限値は、ピンフィンを千鳥状に配置した場合に、冷却水流路に流入することが予想される最大寸法のゴミがピン間に詰まらないような値であり、かつ、圧損が許容値以下となるような値として決定される。ピン間間隙は、千鳥状に配置したピンフィンの冷却水の流れ方向に対して直交する方向の間隙、および流れ方向に対して斜め方向の間隙である。
図31(a)のグラフ31a、31bの交点をK31とするとき、交点K31よりも左側のグラフ31aより上の領域は、圧力損失が許容上限値を超えている。交点K31よりも右側のグラフ31bより上の領域は、ピン間隙間が許容下限値を越えており圧力損失が許容上限値を超えている。したがって、グラフ31aと31bの交点K31におけるピン高さ、すなわち8mmとすれば等価熱伝達率が最も高くなることが分かる。
ピン高さを8mmとしたとき、ピン直径を2mmとするのが最適である。図31(b)を参照して検討する。図31(b)は、横軸にピン直径を、縦軸に等価熱伝達率をとり、ピン高さ7mm、8mmをパラメータとして描いたグラフである。ピン高さ8mmのグラフ31cでは、ピン直径2mmにおいて等価熱伝達率がほぼピーク値を示す。したがって、直径2mm、高さ8mmに設定したピンフィンは熱伝導効率の観点から理想的な値(最適値)であることが分かる。
温度サイクルにより金属ベース304が膨張、収縮して絶縁基板334が変形する場合には、回路配線パターン351とバッテリ136を電気的に接続する直流正極端子314や直流負極端子316との間の接合部に亀裂あるいは破断の発生するおそれがある。しかしながら、本実施形態に係るパワーモジュール300では、図5、図8、図9に示すように、直流正極端子314と直流負極端子316が絶縁基板334や金属ベース304に対面する平面状の積層状態に構成されている。このため、これら端子314、316の回路配線パターン351との接合部に当接させる端部電極は、温度サイクルにより変形する絶縁基板334や金属ベース304に追従することができる。この結果、これら端子314、316を薄くするなどして剛性を小さく設定することにより、その接合面の垂直方向に加わる応力が緩和され、接合面の亀裂や破断が発生するのをより確実に防止することができる。
本実施形態のコンデンサモジュール500の詳細構造について、図19乃至図21を参照しながら以下説明する。図19は本実施形態に関するコンデンサモジュールの外観構成を示す斜視図である。図20は、図19に示すコンデンサモジュール500の内部が分かるように、樹脂などの充填材522を充填する前の状態を示す斜視図である。図21はさらにコンデンサモジュール500の詳細構造である積層導体にコンデンサセル514を固定した構造を示す図である。
図19乃至図21において、500はコンデンサモジュール、502はコンデンサケース、504は負極側コンデンサ端子、506は正極側コンデンサ端子、510は直流(バッテリ)負極側接続端子部、512は直流(バッテリ)正極側接続端子部、532は補機用正極端子、534は補機用負極端子、514はコンデンサセル、をそれぞれ表す。
図19および図21に示されるように、負極導体板505と正極導体板507とからなる積層導体板が複数組、本実施形態では4組、直流(バッテリ)負極側接続端子部510と直流(バッテリ)正極側接続端子部512に対して電気的に並列に接続されている。負極導体板505と正極導体板507には、複数個のコンデンサセル514の正極と負極がそれぞれ並列接続されるための端子516と端子518が複数個設けられている。
図21に示されるように、コンデンサモジュール500の蓄電部の単位構造体であるコンデンサセル514は、片面にアルミなどの金属を蒸着したフィルムを2枚積層し巻回して、2枚の金属フィルムの各々を正極、負極としたフィルムコンデンサ515で構成する。正極、負極の電極は、巻回した軸面がそれぞれ、正極、負極電極となり、スズなどの導電体508を吹き付けて製造される。
また、図21に示されるように、負極導体板505と正極導体板507は、薄板状の幅広導体で構成し、絶縁紙517を介して積層した積層構造を採用し、寄生インダクタンスを低減する。積層導体の端部には、コンデンサセルの電極508と接続するための端子516、518が設けられている。端子516、518は、2個のコンデンサセル514の電極508と、半田あるいは溶接により電気的に接続される。半田装置による半田付け作業もしくは溶接機による溶接作業が行いやすくなるように、また、コンデンサセルの検査がしやすくなるように、すなわち、端子516、518と接続される電極面がセルの外側になるように、コンデンサセルを配置するとともに、導体板の構造を設計して、1つのコンデンサセル群を構成している。このようなコンデンサセル群を用いることにより、コンデンサセル群の数を増減することにより、要求されるコンデンサ容量に対応することができる。その結果、多種多様のコンデンサモジュールに共通のコンデンサセルを使用することができ、量産に適したコンデンサモジュールとすることが可能となる。寄生インダクタンスを低減するため、また、放熱のためにも、端子516、518をそれぞれ複数設けるのが好ましい。
薄板状の幅広導体である負極導体板505と正極導体板507の一方の端部には、積層導体板700と接続するための負極側コンデンサ端子504、正極側コンデンサ端子506が設けられている。負極導体505と正極導体507の他方の端部には、バッテリ電力を受電する端子に接続する直流負極側接続端子510、直流正極側接続端子512が設けられている。
図20に示すコンデンサモジュール500は、2個のコンデンサセルを1単位とするコンデンサセル群を4列縦に配置して合計8個のコンデンサセル514で構成している。コンデンサモジュール500の外部との接続端子として、積層導体板700と接続する4対の正負コンデンサ端子504、506と、バッテリ電力を受電する直流正負極側接続端子510および512と、補機用インバータのパワーモジュールに給電する補機用正負極端子532および534とが用いられている。正負コンデンサ端子504,506には開口部509,511が形成され、パワーモジュール300の直流正負極端子316,314がボルト固定できるように、開口部509,511の裏側にナットが溶接されている。
コンデンサケース502は、端子カバー520を備え、端子の位置を決めるとともに、電力変換装置の筐体との絶縁をとる。また、コンデンサケース502は、セル群の位置決めのための、仕切りがセル群とセル群の間に設ける。コンデンサケース502の材料としは、熱伝導性に優れた材料を用い、コンデンサセル群とコンデンサセル群の間の仕切りに放熱用の熱伝導性のよい材料を埋め込んでもよい。
コンデンサモジュール500では、コンデンサセル内部のフィルム上に蒸着された金属薄膜、内部導体(端子)の電気抵抗により、スイッチング時にリップル電流が流れると発熱する。コンデンサセルの耐湿のため、コンデンサセル、内部導体(端子)は、コンデンサケース502に樹脂で含浸(モールド)する。このため、コンデンサセルや内部導体は、樹脂を介してコンデンサケース502と密着した状態となり、コンデンサセルの発熱がケースに伝わりやすい構造になる。さらに本構造では、負極導体板505、正極導体板507とコンデンサセルの508と端子516、518を直接接続するため、コンデンサセルの発熱が負極、正極導体に直接伝わり、幅広導体によりモールド樹脂へ熱が伝わりやすい構造となる。このため、図7のように、コンデンサケース502から下部ケース16、下部ケース16から筐体12さらに冷却水流路19へ熱が良好に伝わり、放熱性を確保できる。
図20に示すように、本実施形態では、負極導体板505および正極導体板507の積層構造を4列縦に独立して配置してコンデンサモジュールを構成している。これら4列の負極導体505および正極導体507を一体の幅広導体板として、全てのコンデンサセル514をこの幅広導体板に接続する構成としてもよい。これにより、部品点数を削減することができ、生産性を向上させることができるとともに、全てのコンデンサセル514の静電容量を略均等に使用することができ、コンデンサモジュール500全体の部品寿命を伸ばすことができる。さらに、幅広導体板を使用することで、寄生インダクタンスを低減することができる。
図22(a)は、本実施形態に係る電力変換装置200において、コンデンサモジュール500、積層導体板700、および2つのパワーモジュール300のみを抜き出した斜視図である。図22(b)は、積層導体板700の分解斜視図である。
図22(a)に示されるように、2つのパワーモジュール300は、各々の交流端子159を一側にそろえて、並設される。これら交流端子159と反対側に、2つのパワーモジュール300とコンデンサモジュール500との電気的な接続部が設けられている。この2つのパワーモジュール300とコンデンサモジュール500との電気的な接続は、平板上の積層導体板700によって行われる。
下部ケース16上に固定されたコンデンサケース502内には、多数のコンデンサセル514(不図示)が収納され、コンデンサモジュール500の正極側コンデンサ端子504および負極側コンデンサ端子506は、コンデンサケース502の一方の長辺に沿って配列されている。正極側コンデンサ端子504および負極側コンデンサ端子506の上端部の正極接続部および負極接続部504c,506bは、コンデンサセル514の上面より突き出た位置に配置されている。
パワーモジュール300と接続される積層導体板700は、2つのパワーモジュール300を覆うように配置される。そして、正極側コンデンサ端子504および負極側コンデンサ端子506は、コンデンサケース502の開口面から立ち上がった構造のL字構造を形成しており、このL字構造の正極側コンデンサ端子504および負極側コンデンサ端子506の上端部の正極接続部506bおよび負極接続部504cが、電力変換装置200の組み立て時において、積層導体板700に直接に当接してボルトで接続されることとなる。
図22(b)に示されるように、この積層導体板700は、平板状の正極側導体板702および負極側導体板704と、これら正極側導体板702と負極側導体板704に挟まれる絶縁シート706により構成されている。すなわち積層導体板700は積層構造として形成されているので、パワーモジュール300からコンデンサモジュール500までの寄生インダクタンスの低減を図ることができる。
図22(a)および図8(b)に示すように、複数の上アーム制御端子320Uは、パワーモジュール300のA辺側(図8(b)参照)の中央部付近に寄せて配置される。すなわち、U相制御ピンをV相制御ピンに寄せ、W相制御ピンをV相制御ピンに寄せ、パワーモジュール300のA辺側の中央部付近に一列に上アーム制御端子320Uが配置されている。そして、積層導体板700は、この複数の上アーム制御端子320Uを貫通するための透孔705を有し、この透孔705の両脇においても、正極側導体板702と負極側導体板704とが積層されている。これらの構成により、負極側導体板704と正極側導体板702との積層面積を広げることができ、さらにパワーモジュール300からコンデンサモジュール500までの寄生インダクタンスの低減を図ることができる。
図8(b)に示すパワーモジュール300のA辺側の中央部付近、すなわち上アーム制御端子320U付近にボス321を配置する。このボス321に、ドライバ回路174が実装された駆動回路基板22を固定するとともに、上アーム制御端子320Uを駆動回路基板22に形成された孔に貫通させる。その後、駆動回路基板22上の端子とアーム制御端子320Uとを溶接等により接合させる。このような構成により、上アーム制御端子320Uと駆動回路基板22上の端子との接合部が、ボス321に対して近い距離となるので、車両走行時における耐振動が向上する。
駆動回路基板22は積層導体板700の上方に配置される。そこで、図22(b)に示すように、積層導体板700は、駆動回路基板22側に負極側導体板704を備え、一方、パワーモジュール300側に正極側導体板702を備える。これにより、高電圧となる正極導体板702と駆動回路基板22との間には、低電圧の負極導体板704および絶縁シート706が存在し、駆動回路基板22が高電圧に触れることを防止させることができる。
図22(b)に示すように、正極側導体板702は、2つのパワーモジュール300の上方にまたがって配置され、さらに2つのパワーモジュール300とコンデンサモジュール500とを結線する。同様に、負極導体板704は、2つのパワーモジュール300の上方にまたがって配置され、さらに2つのパワーモジュール300とコンデンサモジュール500とを結線する。これにより、積層導体板700が幅広になるので、パワーモジュール300からコンデンサモジュール500までの寄生インダクタンスを低減させることができる。また、1つのパワーモジュールに対して、コンデンサモジュール500の接続箇所が4組存在するため、寄生インダクタンスを低減できる。また、2つのパワーモジュール300からコンデンサモジュール500への接続導体を2つのパワーモジュール300間で共有化することによって、電力変換装置200全体の部品点数を少なくすることができ、生産性を向上させることができる。
図8に示すように、パワーモジュール300は、正極側接続部314aと負極側接続部316aを一組として、パワーモジュール300の一辺側に一組の接続部314a、316aが配置され、その反対側の辺に他の一組の接続部314a、316aが配置される。積層導体板700は、これら二組の接続部314a、316aの上方にまたがって配置され、さらに各接続部314a、316aとボルトにより接続される。これにより、コンデンサモジュール500から供給される直流電流が、一組の接続部314a、316a側に集中することが無くなるため、すなわち、二組の接続部314a、316aに直流電流が分散されることになるため、パワーモジュール300からコンデンサモジュール500までのインダクタンスを低減させることができる。
前述したように、コンデンサモジュール500には、複数のコンデンサセル514が内蔵されている。本実施形態においては、2つのコンデンサセル514でコンデンサセル群を構成し、このコンデンサセル群を4組設けている。さらに各組に対応した幅広導体(正極導体板507および負極導体板505)を備えている。図20に示されるように、負極側コンデンサ端子504および正極側コンデンサ端子506は、それぞれの幅広導体に一つずつ接続される。本実施形態においては、これらすべての負極コンデンサ端子504および正極コンデンサ端子506を、一組の積層導体板700に電気的に接続させる。これにより、2つのパワーモジュール300に対して、全てのコンデンサセル514が電気的に接続される関係となり、全てのコンデンサセル514の静電容量を略均等に使用することができ、コンデンサモジュール500全体の部品寿命を伸ばすことができる。また、この一組の積層導体板700を用いることにより、コンデンサモジュール500内部を、2つのコンデンサセル514で構成されるコンデンサセル群ごとに分割させて構成させることができ、モータ192の電流容量に合わせて、コンデンサセル群を構成するコンデンサセル514の単位数を容易に変更させることができる。
積層導体板700を構成する正極側導体板702と負極側導体板704は、寄生インダクタンスを小さくするために、それらの隙間距離をできるだけ小さくすることが望ましい。例えば、積層導体板700に、パワーモジュール300とコンデンサモジュール500を結線するための曲げ構造部が存在する場合には、その曲げ構造部には、平板部よりも大きい隙間距離が生じてしまい、寄生インダクタンスが大きくなってしまう。
そこで、本実施形態に係るパワーモジュール300の正極側接続部314a、負極側接続部316a、およびコンデンサモジュール500の正極側接続部504c、負極側接続部506bは、略同一平面上に配置されるように構成する。これにより、平板状の積層導体板700を用いることができるため、正極側導体板702と負極側導体板704の隙間距離を小さくして、寄生インダクタンスを低減させることができる。
図23(a)は、図22に示すパワーモジュール300と積層導体板700の接続箇所380(図22(a)参照)の拡大図を示している。
図23(a)に示されるように、負極側接続部316aおよび正極側接続部314aは、直流正極端子314および直流負極端子316の端部を反対方向に屈曲させて構成され、これら負極側接続部316aおよび正極側接続部314aに対して、積層した積層導体板700の負極導体板704、正極導体板702をそれぞれ接続する。これにより、IGBT328、330のスイッチング時に瞬時に流れる負極側の電流は、図23(a)に示す電流経路382のようになるため、負極導体板の接続部704aと負極側接続部316aとの間でUターン電流が形成される。したがって、負極側導体板704の接続部704aの周りに発生する磁束と負極側接続部316aの周りに発生する磁束が打ち消し合うので、インダクタンスの低減を図ることができる。
一方、正極導体板の接続部702aの電流は、図23(a)に示されるような電流経路384を通る。この正極導体板の接続部702aの上方には負極導体板704が配置されているため、正極導体板の接続部702aの電流方向と、負極導体板704の電流方向とが逆方向となり、それぞれの電流によって生じる磁束が打ち消しあうことになる。その結果、正極導体板の接続部702aの寄生インダクタンスを低減することができる。
また、図23(a)に示されるように、絶縁紙318と絶縁シート706は、上下方向に重なる領域を有するようにそれぞれ配置される。さらに、ボルト等により積層導体板700を負極側接続部316aおよび正極側接続部314aに固定した場合に、絶縁紙318と絶縁シート706は、積層導体板700と正極側接続部314aによって挟まれることがない領域、つまり圧縮応力が加わらない領域を有するように配置される。これにより、接続部における正極と負極間との絶縁、具体的には正極側接続部314aと負極導体板704との絶縁を確保することができる。
図23(b)は、積層導体板700の接続箇所390の拡大図(図22(a)参照)を示す。
図23(b)に示されるように、コンデンサモジュール500の正極側接続部506bおよび負極側接続部504cは、それぞれ反対方向に屈曲させて構成され、それぞれの上面に積層導体板700の正極導体板702および負極導体板704をそれぞれ接続する。これにより、IGBT328、330のスイッチング時に瞬時に流れる負極側の電流は、図23(b)に示す電流経路392のようになるため、負極導体板704の接続部704cとコンデンサモジュール500の負極側接続部504cとの間でUターン電流が形成される。したがって、負極導体板704の接続部704aの周りに発生する磁束と負極側接続部504cの周りに発生する磁束が打ち消し合うので、インダクタンスの低減を図ることができる。
同様に、IGBT328、330のスイッチング時に瞬時に流れる正極側の電流は、図21(b)に示されるような電流経路394を通る。すなわち、正極導体板の接続部702bとコンデンサモジュール500の正極側接続部506bとの間でUターン電流が形成される。したがって、正極側導体板702の接続部702bの周りに発生する磁束と正極側接続部506bの周りに発生する磁束が打ち消し合うので、インダクタンスの低減を図ることができる。
また、図23(b)に示されるように、絶縁シート517と絶縁シート706は、上下方向に重なる領域を有するようにそれぞれ配置される。さらに、ボルト等により積層導体板700をコンデンサモジュール500の正極側接続部506bおよび負極側接続部504cに固定した場合に、絶縁シート517と絶縁シート706は、積層導体板700と正極側接続部506bによって挟まれることがない領域、つまり圧縮応力が加わらない領域を有するように配置される。これにより、接続部における正極と負極間との絶縁、具体的には正極側接続部506bと負極導体板704との絶縁を確保することができる。
以上説明した実施の形態による電力変換装置によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)放熱ピン305を金属ベース304と一体で鍛造により製作するようにした。その結果、放熱ピン数が多い場合、ロウ付けにより放熱ピン305を金属ベース304に固着するよりも、工数を低減してコストを低減することができる。
(2)放熱ピン305を千鳥状に配列すれば、冷却水流路19内を流れる冷却水が効率よく接触し、金属ベース304を効果的に冷却することができる。放熱ピン群305Gの形成領域を小さくすることができ、パワーモジュール300をコンパクトにすることができる。
(3)複数の放熱ピン305をひとかたまりとせず、複数の放熱ピン305で構成される放熱ピン群305Gを一対設けるようにした。大面積に複数の放熱ピン305を一括して形成する場合に比べて、鍛造時のプレス圧力を小さくすることができ、小型のプレス機を使用して製造コストをより低減することができる。
(4)鍛造後のビッカース硬度が60以上となる銅材を使用することにより、温度サイクルによって生ずるラチェット変形を抑制し、冷却ジャケット19Aの取付け面410Sとの間のシール性を向上させることができる。ラチェット変形を抑制することにより、絶縁基板334自体の破損や端子314、316との接合部の破損を防止できる。また、冷却水流路19のシール性が損なわれることがない。
(5)以上の作用効果を奏する電力変換装置200にあっては、インバータ回路144を高密度にして高出力化を図りつつ、パワーモジュール300をコンパクトに、かつ低コストで構築することができる。また、パワーモジュール300,ひいては電力変換装置の寿命の延長と信頼性の向上を図ることができる。
以上の第1実施形態をさらに具体的に説明する。
HEV110に車載するパワーモジュール300の絶縁基板334の冷却用金属ベース304としては、銅以外の不純物元素の混入率が0.3重量%未満の高純度の無酸素銅ないしタフピッチ銅を採用して、放熱ピン305を鍛造により一体成型する。この金属ベース304の板厚としては、3mm以上4mm以下に設定する一方、放熱ピン305としては、7mm以上8mm以下の高さで1.75mm以上3mm以内の径を有する断面円形の柱状ピン形状の寸法形状に成型する。このように作製した金属ベース304と放熱ピン305は、ビッカース硬度60以上でラチェット変形の生じない寸法形状にすることができるとともに、熱伝導率300W/m℃以上を確保して、優れた冷却能力を発揮することができる。このため、パワーモジュール300に実装されるパワースイッチング素子のIGBT328として、12.5mm×14mmという大型のチップサイズを選択することができ、インバータ回路144を高密度化しつつ所定の冷却性能を担保することができる。
なお、IGBT328の大きさは12.5mm×14mmに限定されるものではない。
(第2実施形態)
図24は本発明に係る車両用電力変換装置の第2実施形態を示す図である。第2実施形態は第1実施形態と略同様に構成されている。同様の構成要素には同一の符号を付して特徴部分を説明する。
金属ベース304と放熱ピン305を鍛造により作製する場合、鍛造型と金属素材との滑りを良くするためにカーボン粉を使用する。そのため、金属ベースの表面が荒れて、表面粗さが低下することがある。また、鍛造後の加工精度により金属ベースに反りやうねり(以下、平坦度と呼ぶ)が生じる。
そこで、第2実施形態では、表面粗さと平坦度を改善する目的で、金属ベース304の裏面に設けた放熱ピン群305Gの周囲領域902をフライス加工することにより、その領域の表面粗さを改善する。放熱ピン群305Gの周囲領域902は、冷却ジャケット19Aの取付け面410Sに当接され、冷却水流路19の開口400、402をOリング800によりシールする面である。したがって、領域902の表面粗さが粗い場合には、金属ベース304による開口の水密性が低下するおそれがある。上記フライス加工により金属ベース304の領域902の表面粗さが改善され、鍛造法により放熱フィンを金属ベースと一体に成型しても、金属ベース304による開口400,402の水密性に影響を与えることがない。
なお、周囲領域902をフライス加工としたが、少なくともOリング800との接触面をフライス加工すればよい。
金属ベース304に絶縁基板334を接合する接合半田353は、金属ベース304の素子実装面904の平面方向に一定の厚さに溶融塗布するのが好ましい。半田353を溶融塗布することにより、半田内でボイド(空孔)の発生を抑制するためである。半田353を溶融塗布するため、素子実装面904の表面粗さが小さいほど、半田353による絶縁基板334の接合性がよい。そのため、放熱ピン305の形成面側の領域902だけでなく、素子実装面904もフライス加工し、その表面粗さを改善するのが好ましい。カーボンにより荒された素子実装面904の表面粗さが小さくなると、溶融塗布された半田により絶縁基板334が金属ベース304に固く結合され、パワーモジュールの信頼性が向上する。
このように第2実施形態によれば、上述第1実施形態による作用効果に加えて次のような作用効果を奏することができる。
(1)金属ベース304の取り付面領域902をフライス加工して表面粗さや平坦度を改善している。したがって、Oリング800による金属ベース304に対するシール性能が向上し、冷却水流路19からの冷却水の漏れを信頼性高く防止することができる。
(2)金属ベース304の素子実装面904をフライス加工して表面粗さや平坦度を改善している。したがって、絶縁基板334に金属ベース304を接合する接合半田353の溶融塗布性が向上し、絶縁基板334の接合寿命が延び、パワーモジュールの信頼性と寿命を向上できる。
(第3実施形態)
図25は本発明に係る車両用電力変換装置の第3実施形態を示す図である。第3実施形態では、金属ベース304と放熱ピン305を金属粉末射出成型法(Metal Injection Molding)により一体成型する。金属粉末射出成型法では、金属粉末を樹脂バインダと混合して射出成型した後に、焼成することにより成型品を得る。第3実施形態の金属ベース304は、高純度の銅粉末を樹脂バインダと共に型内に射出成型して焼成する。図25に示すように、樹脂バインダを焼成して生成されるカーボン901が金属ベース304内に残留する。放熱ピン305は図示を省略している。
通常の鋳造により成型した場合には、加工硬化による硬度の向上は望めないが、金属粉末射出成型法を採用した場合には、残留カーボン901の働きにより金属ベース304の硬度が高くなり、プレス等の後に加工を施さなくてもビッカース硬度60以上を得ることができる。
金属粉末射出成型法により製作した金属ベース304は、鍛造よりも寸法精度を高くできるため、上述第2実施形態のような機械加工を施さなくても、加工表面を高精度な面精度で作製することができる。
第3の本実施形態においては、上述第1実施形態による作用効果に加えて次の作用効果を奏する。
(1)金属ベース304と放熱ピン305を金属粉末射出成型法により作製したので、Oリング800との接触面や接合半田353との接合面を、そのまま高精度に平坦な面に形成することができる。そのため、フライス加工することなく、金属ベース304によるシール性と、接合半田による絶縁基板334の接合性を向上することができ、製造コストを低減することができる。
以上説明した実施形態による金属ベース304と放熱フィン305を次のように変形してもよい。
(1)上記実施形態では、図13に示すように、放熱ピン305を千鳥状に配列したが、図26に示すように、放熱ピン305を格子状に整列配列しても良い。冷却水流路19の冷却水の流れる方向に放熱ピン305が並列されていることから、流通抵抗を千鳥状に配列するよりも小さくして放熱ピン305に冷却水を接触させることができる。この結果、冷却水の循環効率を高めて冷却能力を向上させることができる。
(2)図27に示すように、断面が楕円形となる柱状の放熱ピン306を、放熱ピン306の断面形状における長径が冷却水流路19内の冷却水の流れる方向と平行になるように配列することができる。断面楕円の放熱ピン306の扁平方向を冷却水の流れ方向に合わせて配列することにより、冷却水の流通抵抗をより小さくできる。また、放熱ピン306の冷却水に接触する面積を大きくすることができる。この結果、冷却能力をより向上させることができる。
(3)図28に示すように、放熱平板307を、冷却水流路19の冷却水の流れる方向と平行になるように並列してもよい。放熱ピン305、306を千鳥状あるいは格子状に配列する場合よりも、流通抵抗を小さくしつつ冷却水を接触させる面積を大きくすることができる。この結果、冷却水の循環効率を高めつつ冷却能力をより向上させることができる。なお、放熱ピン305と同様に、放熱平板307の厚さを2mm、高さを8mmとすれば、厚さ:高さ=1:4の比率となり、鍛造により製造することのできる限界比率であり最適な寸法である。
(4)図17に示したように、放熱ピン305はストレートピンであったが、図29に示すように、金属ベース304から突設方向に先細り形状のテーパピンとしてもよい。テーパピンの付け根部の径は太くなり、放熱ピン308の強度を向上させることができる。また、冷却水との接触面積を大きくすることができる。この結果、冷却水の循環速度を上昇させることにより放熱ピン308が変形して損傷してしまうことを回避することができ、冷却能力の向上を容易に行い得るようにすることができる。
本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施することができる。したがって、各実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。変形例をどのように組み合わせることも可能である。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記実施形態の構成に何ら限定されるものではない。