JP2010038792A - 法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法 - Google Patents

法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
計測点の座標と法線ベクトルの計測値から被測定物の表面形状を導出し、各軸の制御方法を工夫することによって各計測点での計測時間を短縮し、被測定物の表面形状測定の高速化を図ることが可能な法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法を提供する。
【解決手段】
2軸2組のゴニオメータと、その回転中心間の距離を変える1軸直進ステージとで構成し、1組のゴニオメータは試料系2を構成し、その可動部に被測定物1を保持し、もう1組のゴニオメータは光学系3を構成し、その可動部に光源と光検出器Dを設け、2軸2組のゴニオメータと1軸の直進ステージの内、2軸1組のゴニオメータと1軸の直進ステージは、光検出器からの出力を直接軸駆動モータに入力するフルクローズドフィードバック制御し、残り2軸1組のゴニオメータはセミクローズドフィードバック制御する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法に係わり、更に詳しくは被測定物表面における有限数の離散した計測点の座標と法線ベクトルの実測値を用いて被測定物表面の全体形状を測定する法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置において、計測時間の短縮化を図るための駆動軸制御方法に関するものである。
X線自由電子レーザーや波長13.5nmの極紫外光を用いたリソグラフィー技術から要請される次世代高精度光学素子の製作には、非球面で形状誤差を1〜0.1nmRMSの精度で自由曲面の形状を計測することが不可欠である。このようなX線光学素子、代表的にはX線用反射ミラーは、10〜500cmのサイズを有し、この反射面全体にわたって前述の形状誤差を達成しなければならない。空間波長1mm以下の表面粗さの計測手段として、原子レベルの分解能をもつプローブ顕微鏡があり、現状でも要求精度を満たしているが、一度に計測できる範囲は約50μm四方と非常に狭く、また計測時間も長いので、被測定物全体の形状を計測するには全く不向きである。一方、空間波長1mm以上の形状計測技術は、被測定物に1mmφ程度の細いレーザービームを照射して、得られる反射光のズレを測定して被測定物表面の傾斜角を求める、LTP(Long Trace Profiler)がある。これは、5×10-7radRMSの測定精度(3nmRMS)が得られるが、測定範囲は±5mradに限られて2次元形状測定である。また、点光源干渉法によって、0.3nmRMSの測定精度が得られているが、点光源からの球面波を参照するため、原理上非球面の形状計測が困難である。
このような従来の課題を解消する方法として、特許文献1に記載されるような超精密形状測定方法が提案されている。この形状計測法の原理は、レーザーの直進性を活用し、光源から出射されたレーザービームが被測定物表面に反射されて、光源の位置にある検出器の中心に戻るように、即ち入射ビームと反射ビームが完全に重なるように2軸2組のゴニオメータを、また検出器と被測定物表面間の光路長Lを一定になるように光軸方向の1軸直進ステージを制御して、被測定物表面の任意計測点(座標)の法線ベクトルを計測することから形状を求めるものである(図1参照)。ここで、計測点の座標とは、最初の計測点への光線ベクトルに直交する試料面上の座標である。
そして、計測点座標と法線ベクトルの計測値から被測定物の表面形状を導出する方法として、特許文献1にも記載された傾斜角積分法と、最近本発明者らによって提案されたフーリエ級数展開最小二乗法とがある。傾斜角積分法は、各計測点の表面スロープとその1階積分により各計測点の高さを求めることによって形状を算出する方法であり、フーリエ級数展開最小二乗法は、被測定物表面における有限数の離散した計測点の座標と法線ベクトルの実測値を用いて、フーリエ級数展開によって表された近似曲面が、各計測点での誤差が最小になるように次数と係数を最適化する新規な形状導出アルゴリズムによって被測定物表面の全体形状を超精密に測定する方法である。これらの測定方法をまとめて法線ベクトル追跡型超精密形状測定方法と称することにする。
これまで、測定点の座標と法線ベクトルの測定は、2軸1組のゴニオメータに測定点座標の指示を出し、その後、検出器(4分割フォトダイオード;QPD)の出力をコンピュータに読み込み、その出力が最小になるようにもう1組の2軸ゴニオメータを制御し、それから4軸のロータリーエンコーダとは別に制御している光路長Lを一定にする直線ステージのリニアエンコーダの出力を5軸同時に読み込んでいる。この場合、各軸はセミクローズドフィードバック制御であるため、コンピュータとの通信時間が長くなり、その結果、10cm程度の一つの被測定物を測定するのに数時間を要していた。
特許第3598983号公報
高精度光学素子の製作に必要な自由曲面を形状精度0.1nmRMSで測定できる形状測定方法を確立することは急務である。法線ベクトル追跡型超精密形状測定方法は、被測定物に対する大きさの制限が少なく、基準面を用いず、非接触で測定することができる等の利点を備えており、これまで、2軸2組のゴニオメータと光軸方向の1軸直進ステージをセミクローズドフィードバック制御することによって、形状精度2nmRMS、スロープエラー5×10-7radRMSの形状測定に成功した。しかし、本計測法は、コンピュータを介したセミクローズドフィードバック制御であるため、測定時間が数時間に及び温度変化等の外乱の影響を受けやすい計測法であった。
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、計測点の座標と法線ベクトルの計測値から被測定物の表面形状を導出する法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置において、各軸の制御方法を工夫することによって各計測点での計測時間を短縮し、被測定物の表面形状測定の高速化を図ることが可能な法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法を提供する点にある。
本発明は、前述の課題解決のために、少なくとも2軸2組のゴニオメータと、その回転中心間の距離を変える1軸直進ステージとで構成し、1組のゴニオメータは試料系を構成し、その可動部に被測定物を保持し、もう1組のゴニオメータは光学系を構成し、その可動部に光源と光検出器を設け、光源から出射された計測ビームと被測定物表面で反射された反射ビームが完全に重なるように、2軸2組のゴニオメータを制御するとともに、光検出器と被測定物表面間の光路長Lが一定になるように1軸直進ステージを制御して、被測定物表面の任意計測点の法線ベクトルを計測することから形状を求める法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置において、2軸2組のゴニオメータと1軸の直進ステージの内、2軸1組のゴニオメータと1軸の直進ステージは、光検出器からの出力を直接軸駆動モータに入力するフルクローズドフィードバック制御にするとともに、残り2軸1組のゴニオメータはセミクローズドフィードバック制御とすることを特徴とする法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法を構成した(請求項1)。
具体的には、前記光学系を構成する2軸ゴニオメータと1軸の直進ステージは、光検出器からの出力を直接軸駆動モータに入力するフルクローズドフィードバック制御にするとともに、試料系を構成する2軸ゴニオメータはセミクローズドフィードバック制御とすることが好ましい(請求項2)。
ここで、光検出器は、4分割フォトダイオード(QPD)を用いた零位法によるものである(請求項3)。
また、前記試料系のホルダーに、被測定物を光軸周りに回転させるゴニオメータを追加し、該ゴニオメータをセミクローズドフィードバック制御することも好ましい(請求項4)。
更に、被測定物の平均的な曲率半径と形状測定装置の光路長Lがほぼ一致するように決めるとより好ましい(請求項5)。
以上にしてなる本発明の法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法は、各計測点座標での法線ベクトルの計測を素早く行うことができ、被測定物の表面形状の測定が短時間で行えるようになり、また大型の被測定物でも精密に形状を測定することができ、民生品を量産する製造ラインに本装置を配置することも可能になる。
つまり、本発明は、2軸1組のゴニオメータで常に法線ベクトルを追跡するようにQPDの出力をそのゴニオメータの駆動モータに直接入力し、また光路長Lを一定にする直進ステージにも検出器の出力を直接入力する3軸フルクローズドフィードバック制御を実現し、高速化を図るものである。残り2軸のゴニオメータで計測点を指示して決める。このように、法線ベクトルを追跡しながら同時に5軸のエンコーダの出力を読み出すことによって、計測時間を短縮することが可能である。
また、装置サイズは、多様な測定対象に対してそれぞれの平均的な曲率半径と光路長Lがほぼ一致するように決めると、精度が悪い直進ステージの動きを最小限にすることができ、測定精度が向上する。また、前記試料系のホルダーに、被測定物を光軸周りに回転させるゴニオメータを追加し、該ゴニオメータをセミクローズドフィードバック制御すると、法線ベクトルを測定するためのレーザービームの走査方法として、加減速の多いラスタースキャンは極力避け、回転運動を活用して走査することができ、それにより高速化と外乱となるモータからの発熱を防ぐことができる。
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の測定方法における法線ベクトルを計測する原理を示し、光の直進性を利用して被測定物1の表面上における各点の法線ベクトルを測定するのである。具体的には、2軸2組のゴニオメータと、その回転中心間の距離を変える1軸の直進運動(Y軸)とで構成されている。1組のゴニオメータは試料系2を構成し、その可動部に被測定物1を保持し、もう1組のゴニオメータは光学系3を構成し、その可動部に光源と検出器Dを設けている。光源と検出器Dの動きは一体化している。具体的な測定装置の構造は特許文献1に示されている。
本実施形態における被測定物の表面形状の測定方法は次の通りである。計測中、試料系2の2軸ゴニオメータの回転中心は不動であり、この回転中心のY軸座標Ryは一定の値をとる。更に、計測中、被測定物表面から検出器Dまでの光路長Lが一定になるように、1軸の直進運動を用いて調整する必要がある。先ず、2軸2組(θ,φ)、(α,β)の回転運動により、計測基準点A0の法線ベクトルを計測する。それには、被測定物表面上の計測基準点A0への入射光とその点での反射光とが重なるように調整する。そのとき、その点の法線ベクトルは光線の方向と等しくなる。最初の計測基準点A0を原点(0,0,0)とし、法線ベクトルと一致した光線の方向と、光源の位置調整用座標系であるY軸を一致させ、更に、その軸上に試料系2の回転中心を設定する。そのときの光学系3の位置座標をT0(0,Y0,0)、測定系のZ軸周りとX軸周り、及び試料系2のZ軸周りとX軸周りの角度を(θ,φ)=(0,0)、(α,β)=(0,0)とする。試料系2の回転中心の座標はS0(0,Ry,0)である。そして、光路長Lと、計測基準点A0と回転中心のずれRyを別の測定機を用いて測定する。
次の計測点A1(x,z)の法線ベクトルを求めるために、2軸(θ,φ)の回転運動でA1近傍に入射光が来るように調整する。それから、2軸(α,β)の回転運動によって、入射光と反射光を一致させ、4分割フォトダイオード(QPD:検出器D)を用いた零位法により法線ベクトルを計測する。ここで、第1計測点A1(x,z)の法線ベクトルを計測した際の、光学系3の位置座標をT1(X1,Y1,Z1)=(0,Y0+yo1,0)、光学系3のZ軸周りとX軸周り、および試料系2のZ軸周りとX軸周りの角度を(θ,φ)=(θ1,φ1)、(α,β)=(α1,β1)とする。このときの変位量・変角量(yo1,θ1,φ1,α1,β1)を法線ベクトル計測値とする。計測点における法線ベクトルは光学系3と試料系2の変角量より求まり、更にこの法線ベクトルから被測定物表面の傾きが求まる。また、法線ベクトル計測点の座標は、光学系の変位量・変角量、試料系の変角量、光路長L及び回転中心変位Ryから求まる。
つまり、不変の値LとRy、法線ベクトルの計測値(θ,φ,α,β,yo)を用いて以下の数1により被測定物表面上の計測点A(XA,ZA)と、数2により法線ベクトルN(nx,nz)の導出が可能である。
Figure 2010038792
Figure 2010038792
本測定方法では、フーリエ級数で測定面形状を近似し、最小二乗法によって、その点でのスロープ残差を最小にするフーリエ級数展開係数を求めて測定面形状を一意的に決定するのである。ここで、計測点での面のスロープ(傾き)は、法線ベクトルから算出することができる。実測データを用いてフーリエ級数形式形状関数を特定する前に、本測定方法では理想形状関数を用いて、形状残差とスロープ残差を共に所定の精度以下になるようなフーリエ級数展開の次数nを見出すことが特徴である。ここで、ある点の傾きは理想形状関数の一階微分から容易に算出することが可能である。
通常、被測定物の表面形状は、球面、円筒面、放物面、楕円体面は勿論、非球面、さらには解析関数で表現できない自由曲面でも光学系の設計において正確に関数で表され、その理想形状関数に近づけるように超精密に加工されるのである。従って、本測定方法において理想形状関数から導かれる理想データを用いて形状残差とスロープ残差を共に所定の精度以下になるように次数nを決定することは、何ら実用的価値を損なうものではない。そして、フーリエ級数展開の次数nが決まると、二次元形状の場合には少なくともn個の計測点、三次元形状の場合には少なくともn×n個の計測点で、座標と法線ベクトルを計測するのである。こうすることによって、計算誤差が保証された状態で、実測データを用いてフーリエ級数形式形状関数を求めることが可能となる。一般には、フーリエ級数展開を用いて最小二乗法によって任意曲面を近似する場合、座標(形状)の残差を最小にするが、本測定方法では、提案した法線ベクトル形状計測法に合わせて、形状残差とともに、スロープの残差を最小にすることが特徴である。
以上説明した形状を導出する一連の手順を形状導出アルゴリズムPと称することにする。2軸2組のゴニオメータから得られる4つの角度データ(θ,φ,α,β)と1軸直進ステージから得られる1つの距離データ(yo)とが、各計測点毎に得られる。つまり、計測点Ai毎に、絶対計測値セット(θi,φi,αi,βi,yoi)が得られる。そして、これらの実測データを用いて形状導出アルゴリズムPによって形状を導出するのである。ここで、特定の光路長Lの値で導出した形状をP(L)と表す。尚、光路長Lは、初期状態において原点と測定系3の回転中心までの距離として、別途測長機を用いて測定しておき、その実測値L0を得るが、被測定物の要求される測定精度より遥かに大きな計測誤差を有している。各計測点で光路長Lが一定になるように1軸直進ステージを駆動するが、それには検出器Dを構成する距離モニター用の4分割フォトダイオード(QPD)の出力が一定になるようにフィードバック制御する(特許文献1参照)。尚、形状測定装置に組み込み、光路長Lをモニターする機構は他のものでも良い。
本測定方法では、光源から出射された計測ビームと被測定物1の表面で反射された反射ビームが完全に重なるように、2軸2組のゴニオメータを制御するとともに、光検出器Dと被測定物表面間の光路長Lが一定になるように1軸直進ステージを制御して、被測定物表面の任意計測点を計測し、各計測点毎に、2軸2組のゴニオメータから得られる4つの角度データと1軸直進ステージから得られる1つの距離データとからなる計測値セットを取得する。この計測値(θ,φ,α,β,yo)は、計測基準点A0を原点とし、原点からの変位として取得した計測値を用いるか、あるいは前後の測定点間の差分として取得した計測値を用いる。そして、計測点の数だけの計測値セットから形状導出アルゴリズムPにより形状を導出する。この際に、光路長Lを変数として複数の形状P(L)を導出し、形状変化の収束を利用して真の光路長LCと収束形状P(LC)を算出するのである。
次に、本発明に係る法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法を図3〜図9に基づいて説明する。前述のように、本測定装置は、光源から出射された計測ビームと被測定物1の表面で反射された反射ビームが完全に重なるように、2軸2組のゴニオメータを制御するとともに、光検出器Dと被測定物表面間の光路長Lが一定になるように1軸直進ステージを制御して、被測定物表面の任意計測点を計測するものであり、最初の計測点への光線ベクトルが水平方向を向く横型(図3参照)と、鉛直方向を向く縦型(図4〜図7参照)とがある。本実施形態では、最初の計測点への光線ベクトルの方向をY軸にとり、鉛直方向をZ軸にとる座標系となっている。そして、X軸、Y軸、Z軸の周りの回転に対する回転軸をそれぞれA軸、B軸、C軸とする。
横型は、大型の被測定物を変形することなく支持することは困難であるが、安定なC軸を活用でき実績があり、また比較的光路長Lの絶対値が求めやすいといった利点がある。一方、縦型は、装置の高さが高くなるが、被測定物の支持が容易である利点がある。何れの型式の装置も、角度分解能が10-8radオーダー、測定形状精度が1nm、測定点の測定時間が30msec以下を目指している。
先ず、図3に基づいて横型の形状測定装置を簡単に説明する。横型形状測定装置M1の試料系2は、固定台4の上にC軸ゴニオメータ5を設置し、該C軸ゴニオメータ5の可動部上にA軸ゴニオメータ6を設置し、該A軸ゴニオメータ6には被測定物1を保持するホルダー7を設けている。尚、前記ホルダー7は、回転対称形の被測定物1を効率良く計測するためにB軸ゴニオメータに置き換え、該B軸ゴニオメータの可動部にホルダーを設けることも好ましい。
また、横型形状測定装置M1の光学系3は、Y軸方向の直進ステージ8のテーブル上にC軸ゴニオメータ9を設置し、該C軸ゴニオメータ9の可動部上にA軸ゴニオメータ10を設け、該A軸ゴニオメータ10の可動部にはレーザー光源と検出器Dを設けている。
次に、図4〜図6に基づいて縦型の形状測定装置を簡単に説明する。縦型形状測定装置M2の試料系2は、Z軸方向の直進ステージ11(昇降ステージ)のテーブル上にB軸ゴニオメータ12を設置し、該B軸ゴニオメータ12の可動部にA軸ゴニオメータ13を設置し、該A軸ゴニオメータ13には被測定物1を保持するホルダー14を設けている。尚、前記ホルダー14は、回転対称形の被測定物1を効率良く計測するためにZ軸ゴニオメータに置き換え、該Z軸ゴニオメータの可動部にホルダーを設けることも好ましい。
また、縦型形状測定装置M2の測定系3は、前記直進ステージ11と同じ定盤の上に、前記試料系2を跨ぐように設置した剛性の高い門形支持体15にA軸ゴニオメータ16とその可動部に設けたB軸ゴニオメータ17とから構成されている。そして、B軸ゴニオメータ17の可動部にレーザー光源と検出器Dを設けている。縦型形状測定装置M2の場合、A軸とB軸の関係は逆であっても構わない。
また、図7は、縦型の形状測定装置の変形例であり、この縦型形状測定装置M3は、固定台18の上に剛性の高い筐体19を載置し、該筐体19内に前記同様な構造の試料系3を内蔵し、筐体19の上部にはZ軸方向の直進ステージ20(昇降ステージ)を設置し、該直進ステージ20のテーブル上に前記同様の光学系3を設置した構造である。前記同様の構成には、同一符号を付してその説明は省略する。
そして、本発明は、2軸2組のゴニオメータと1軸の直進ステージの内、2軸1組のゴニオメータと1軸の直進ステージは、光検出器からの出力を直接軸駆動モータに入力するフルクローズドフィードバック制御にするとともに、残り2軸1組のゴニオメータはセミクローズドフィードバック制御とするのである。具体的には、光学系3を構成する2軸ゴニオメータと1軸の直進ステージは、光検出器Dからの出力を直接軸駆動モータに入力するフルクローズドフィードバック制御にするとともに、試料系2を構成する2軸ゴニオメータはセミクローズドフィードバック制御とする。
前記横型形状測定装置M1の場合は、C軸ゴニオメータ9、A軸ゴニオメータ10及び直進ステージ8をフルクローズドフィードバック制御し、C軸ゴニオメータ5及びA軸ゴニオメータ6をセミクローズドフィードバック制御する。また、前記縦型形状測定装置M2の場合は、A軸ゴニオメータ16、B軸ゴニオメータ17及び直進ステージ11をフルクローズドフィードバック制御し、B軸ゴニオメータ12及びA軸ゴニオメータ13をセミクローズドフィードバック制御する。更に、前記縦型形状測定装置Mの場合は、A軸ゴニオメータ16、B軸ゴニオメータ17及び直進ステージ20をフルクローズドフィードバック制御し、B軸ゴニオメータ12及びA軸ゴニオメータ13をセミクローズドフィードバック制御する。
図8は、フルクローズドフィードバック制御のブロック線図を示し、図9は、セミクローズドフィードバック制御のブロック線図を示している。これらのブロック線図は、一例を示したに過ぎない。
フルクローズドフィードバック制御は、典型的なサーボ系の追従制御である。フルクローズドフィードバック制御では、エンコーダの出力ではなく、位置または角度を別のセンサー(ここではQPD)で検出して、その信号をサーボモ−タにフィードバックする制御系である。高速化のために、DSP(Digital Signal Processor)から、サーボアンプを介してサーボモータを動かし、ゴニオメータの軸周りの回転角や、直進ステージの位置をエンコーダで読み取り、DSPにフィードバックするサブループを有する。代表的な被測定物であるミラーの動きに対して、レーザーが反射し、その動きをQPDによって検出し、電流アンプと差動アンプを介してPID(Proportional Integral Derivative)にフィードバックする典型的なサーボ系のフィードバック制御である。本制御によって、被測定物であるミラー各点の法線ベクトルを、入反射レーザー光線が一致するように追従制御して求める。常に入反射レーザー光線が一致しておれば、その点での法線ベクトルを2軸2組のゴニオメータから読み取ることができる。また、1軸の直進ステージで検出器QPDと被測定物間を一定にするフルクローズドフィードバック制御を実施すれば、直進軸のリニアエンコーダとゴニオメータのロータリーエンコーダの読みから、検出器と被測定物間の距離と法線ベクトルが分かり、測定点座標が求まる。
直進ステージのフルクローズドフィードバック制御の場合、図8において、サーボモータをリニアモータ、軸周りの回転を直進運動、ロータリーエンコーダをリニアエンコーダに変更する。
セミクローズドフィードバック制御は、一般的なCNC(Computerized Numerically Controlled)工作機械等における位置決めに用いられる追値制御である。指示値である座標値や角度をPLC(Power Line Communication)位置決めユニットに入力し、サーボモータの駆動信号に変換して、偏差カウンタでエンコーダの出力との差を演算し、サーボアンプを介してサーボモータを駆動する。サーボアンプも含めてすべてデジタル信号で制御している。サーボモータの軸の動きまたは直進ステージの位置をエンコーダによって検出し、偏差カウンタに出力することによってフィードバック制御して位置決めを行っている。
光学系3と試料系2のどちらをフルクローズドフィードバック制御系にするかは、測定対象によって考える必要がある。即ち、光学系3と試料系2のどちらを加減速の多い制御系(フルクローズド制御)にするのが得策かという判断が必要である。本実施形態では、形状測定装置の汎用性を優先して、光学系3をフルクローズド制御系にしている。それにより、被測定物サイズに合わせて試料系ステージが容易に変更できるため、使い勝手が良くなるのである。
実際の形状測定装置では、部品の形状精度や組立誤差により、A軸、B軸、C軸が正確に直交しないこともあり、回転中心が偏心する場合もある。また、これらが温度によって変化することもある。このような装置固有の誤差はデータベース化して、実際の計測値を較正することが必要である。これらの較正手法は、精密工作機械や半導体製造装置では確立されている。
図10は、R=2000mm球面ミラーの三次元形状を測定した結果である。計測範囲は50mm×50mm、フーリエ級数展開の次数nは50、測定点の数は51×51個である。次数nは、理想形状に対するスロープ残差が1×10-7rad以下と形状残差が1nm以下となる条件で見出した。図10(a)は実測データを用いたフーリエ級数展開による三次元導出形状を示し、図10(b)は理想形状からのずれを示している。測定対象の球面ミラーは、中心から25mm離れた位置で理想形状から約50nmずれていることが分かる。
被測定物表面の座標と法線ベクトルを計測する方法の原理図である。 同じく2軸2組のゴニオメータの角度と法線ベクトル及び位置座標との関係を示す説明図である。 横型形状測定装置の概念構造を示す斜視図である。 縦型形状測定装置の概念構造を示す斜視図である。 同じく縦型形状測定装置の試料系を示す省略平面図である。 同じく縦型形状測定装置の試料系を示す省略側面図である。 他の縦型形状測定装置の概念構造を示す斜視図である。 フルクローズドフィードバック制御のブロック線図である。 セミクローズドフィードバック制御のブロック線図である。 R=2000mm球面ミラーの三次元導出形状を示し、(a)は実測データを用いたフーリエ級数展開による導出形状を示すグラフ、(b)は理想形状からのずれを示すグラフである。
符号の説明
1 被測定物、
2 試料系、
3 光学系、
4 固定台、
5 C軸ゴニオメータ、
6 A軸ゴニオメータ、
7 ホルダー、
8 直進ステージ、
9 C軸ゴニオメータ、
10 A軸ゴニオメータ、
11 直進ステージ、
12 B軸ゴニオメータ、
13 A軸ゴニオメータ、
14 ホルダー、
15 門形支持体、
16 A軸ゴニオメータ、
17 B軸ゴニオメータ、
18 固定台、
19 筐体、
20 直進ステージ、
M1 横型形状測定装置、
M2 縦型形状測定装置、
M3 縦型形状測定装置。

Claims (5)

  1. 少なくとも2軸2組のゴニオメータと、その回転中心間の距離を変える1軸直進ステージとで構成し、1組のゴニオメータは試料系を構成し、その可動部に被測定物を保持し、もう1組のゴニオメータは光学系を構成し、その可動部に光源と光検出器を設け、光源から出射された計測ビームと被測定物表面で反射された反射ビームが完全に重なるように、2軸2組のゴニオメータを制御するとともに、光検出器と被測定物表面間の光路長Lが一定になるように1軸直進ステージを制御して、被測定物表面の任意計測点の法線ベクトルを計測することから形状を求める法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置において、2軸2組のゴニオメータと1軸の直進ステージの内、2軸1組のゴニオメータと1軸の直進ステージは、光検出器からの出力を直接軸駆動モータに入力するフルクローズドフィードバック制御にするとともに、残り2軸1組のゴニオメータはセミクローズドフィードバック制御とすることを特徴とする法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法。
  2. 前記光学系を構成する2軸ゴニオメータと1軸の直進ステージは、光検出器からの出力を直接軸駆動モータに入力するフルクローズドフィードバック制御にするとともに、試料系を構成する2軸ゴニオメータはセミクローズドフィードバック制御とする請求項1記載の法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法。
  3. 光検出器は、4分割フォトダイオード(QPD)を用いた零位法によるものである請求項1又は2記載の法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法。
  4. 前記試料系のホルダーに、被測定物を光軸周りに回転させるゴニオメータを追加し、該ゴニオメータをセミクローズドフィードバック制御する請求項1〜3何れかに記載の法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法。
  5. 被測定物の平均的な曲率半径と形状測定装置の光路長Lがほぼ一致するように決める請求項1〜4何れかに記載の法線ベクトル追跡型超精密形状測定装置における駆動軸制御方法。
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