JP2010035321A - 分散電源系統の制御方式 - Google Patents

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Abstract

【課題】自律分散システムを適用した分散電源系統において、系統構成や運用条件の動的な変化にも、柔軟にかつ適確に発電機台数制御ができる。
【解決手段】分散電源系統の発電機の運転台数制御を行う発電機モジュール200と、分散電源系統の負荷量を管理する負荷モジュール300と、発電機モジュールと負荷モジュールとの間の電力需給バランスを、発電機の運転台数制御で実行する仲介モジュール100とを備える。仲介モジュールは、負荷モジュールから負荷の全要求量情報と発電機モジュールから発電機の状態情報を取得し、発電機モジュールからの機器構成に変化があったときの発電機の運転台数増減をスケジューリングし、各発電機モジュールの最適出力量算出を行う発電量割り当て処理を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、自律分散システムを適用した分散電源系統の制御方式に係り、特に発電機の台数制御に関する。
(1)電力系統の集中管理型制御
電力系統は、集中管理型の制御が行われている。集中管理型とはメインコンピュータと複数台のサブコンピュータで構成され、メインコンピュータにおいて、負荷需要予測から各発電機の最適スケジューリングを計算し、それぞれに指令を与えることにより、各発電機の最適コストの実現や経済性を加味した系統運用などを行う制御方式のことをいう。
例えば、図12に集中管理型制御方式のブロック図を示すように、メインコンピュータは、一日単位での長期電力需要・数時間または数十分単位での中期電力需要の予測に対して、発電機の運転計画を作成し、さらに数分または数十秒オーダーでの短期の電力需要予測を行い、発電機の運転パターンを決定することで、負荷追従を可能とする。
(2)自律分散システム
上記の集中管理型による電力系統の制御に対し、自律分散システムはサブコンピュータのみで構成され、メインコンピュータの役割をサブコンピュータ(分散コンピュータ)に分散させ、サブコンピュータ同士の通信による協調動作を行い、分散電源系統の経済的運用などを図る(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
この自律分散システムを採用した制御システムは中央集中型の制御方式と比べ、以下の点で優れている。
(a)サブコンピュータのインテリジェンス化を図ることにより、機器構成の動的な変化に対する対応が容易である(機器の削除だけでなく、追加にも対応する)。これに対し、中央集中型では機器の構成変化の度に、データの更新作業が必要となる。さらに機器構成の大規模化が進むにつれ、中央のコンピュータの制御プログラムは複雑化する。
(b)中央集中型では中央のコンピュータがサブコンピュータの制御を一括で担うため、中央のコンピュータはスペックを高くする必要があり、一般的に高価なコンピュータが必要である。これに比べて、自律分散システムのサブコンピュータは安価である。
(c)自律分散システムの1つのサブコンピュータの故障によって、システム全体の停止というクリティカルな状況に陥ることはない。残りのサブコンピュータのみでシステム運用を継続することが可能となる。
(d)上記の(a)の性質を利用することで、サブコンピュータのメンテナンスが容易となる。
(3)現在の自律分散システム
一般的な電力系統に自律分散システムの適用例を図13に示す。電力を供給する自律分散モジュールはSellerとなり、電力を必要とする自律分散モジュールはBuyerとなる。つまり、発電機はSeller、負荷はBuyer、蓄電池は時と場合に応じてSellerまたはBuyerとなり、電力の需要、供給を満たす仕組みとなっている。SellerとBuyer同士の通信による協調動作には、図14に示す契約ネットプロトコル(Contract Net Protoco1:CNP)が用いられる。
この契約ネットプロトコルは、以下の処理手順になる。
(S1)Buyerは呼びかけ(Call for proposal)を行う。
(S2)Se1erは返答する(proposeまたはrefuse)。
(S3)返答に対し、契約を行う相手を決定し、通知する(Accept proposalまたはReject proposal)。
(S4)通知を受けたSelerはBuyerの要求に対し、実行し、結果を通知する(informまたはfailure)。
(4)台数制御
上記の自律分散システムでは、サブコンピュータは、各発電機のコストを重視し、発電機の最適出力を求めようとするが、実際には、各発電機の台数制御により、系統全体で効率良い最適な出力を算出することができる。台数制御とは系統全体で経済性運転、環境性運転など目的に合わせた運転を行うために、機器ごとに起動/停止制御、出力抑制・促進制御などによる稼動設備を最適化することをいう。
一般的な台数制御には運転順序制御があり、以下のような種類が存在する。
(a)順序固定方式
投入台数の増段時と減段時の出力を固定した方式である。一般的に系統の周波数や電圧の基準となるベース機器が存在する。この電源では頻繁に電源の入り切りを行うことはないため、この方式を採用し、一台目として投入される。また、2台目以降、運転効率の良い発電機を投入することで、系統全体でコスト重視の運転方式を実現することができる。
図15に示す順序固定方式は、発電機1,2,3を用いたときの動作の一例である
(b)先発先停方式
起動した機器順に停止する台数制御方式である。この方式では、同容量の複数台の機器において、運転時間を均一化することができ、これにより、機器の機械的寿命が均一化できるメリットがある。また、稼動し続ける機器がないため、メンテナンスも停止している間に容易に行うことができる。
図16に示す先発先停方式は、発電機1,2,3を用いたときの動作の一例である。
(c)稼働時間積算方式
増段時は運転時間(稼働時間累計)が最も少ない機器から起動し、減段時は運転時間が最も多い機器を停止する。この台数制御方式は先発先停方式と同様の増減段状況となる。
(5)発電機の起動/停止制御
コンピュータは、各発電機の台数制御に際し、発電機の起動/停止制御には以下の制御条件の一部または全部について対応可能としている。
(a)渋滞時スキップ制御
運転対象機器がコントローラからの起動または停止命令に反した場合、および警告発生の場合、次順位の機器を起動または停止させる。
(b)再起動・停止防止制御
各機器に対して、最小ON時間(OFF状態からON状態になったときの状態を変えることができない最低限の時間)、最小OFF時間(ON状態からOFF状態になったときの状態を変えることができない最低限の時間)を設定し、機器が頻繁に起動/停止することを防止する。
(c)増減段安定制御
運転台数の増減段時に、一時的に負荷状況が不安定となるため、一定時間の増段減段を行わない。
(d)エネルギー補償制御
温度や電力需要急変による計画外負荷に対応するため、強制的に増段減を行う。
(e)固定ベース機制御
電力系統における周波数や電圧の基準となる発電機を停止しない。
明電時報、2008年 No.1、第7頁、4.2マルチエージェントを用いた分散電源制御 明電時報、2004年 No.3、「モバイルエージェントによる分散電源系統制御技術
(1)一般的な発電機特性
一般的に、発電機の特性は0から100パーセントで稼動する種類は少なく、50から100などのように稼動範囲が限られている。また、OFF状態からON状態となるときのモード(動作モード1)、ON状態からOFF状態となるときのモード(動作モード2)が存在し、ヒステリシス特性のような稼動範囲が設定される。図17に一般的な発電機特性を示す。ただし、図中の発電機では、稼動範囲は動作モード1のときm〜100、動作モード2のときはn〜100となっている。(n<m)
(2)順序固定方式による台数制御の動作例
上記のような特性の発電機が複数台存在し、それらを順序固定方式による台数制御を行うことを考える。例として、3台の発電機が負荷の要求に対して電力供給を行うとき、各発電機の特性を表1のように設定すると、図18のような動作特性になる。
図18において、発電機1が動作モード1のときの稼動範囲が低領域であるため、3台の中で初めに動作する。しだいに負荷が増加し、発電機2が起動し、発電機2のみで発電機1の発電量を補うことができる場合は台数制御による切り替えが行われ、発電機2のみで発電を行う。さらに負荷が増大すると、発電機3も動作し始める。
Figure 2010035321
また、上記のような発電機特性において、稼動範囲の大きさを稼動範囲容量とすると、順序固定方式の実現には稼動範囲容量が指標とされる。なぜならば、稼動範囲容量が大きいものは発電コストに対する発電効率が良いということが一般的だからである。つまり、増段時は稼動範囲容量の大きいものが優先され、逆に減段時はそれが小さいものが選定される。
(3)自律分散システムによる台数制御の問題
電力系統の集中管理型制御の場合、発電機の台数制御にはメインコンピュータによって集中管理されるため、系統運用の経済性(効率)、環境性の要求から系統構成の変更や系統運用条件を変更する場合には、メインコンピュータ側で集中管理する情報を使用してメインコンピュータ側で一括して対応することができる。
しかし、自律分散システムによる発電機の台数制御には、各自律分散モジュールが個々に発電情報と負荷情報の収集および制御条件(運転順序制御、発電機の起動、停止制御など)の管理を必要とし、さらに自律分散モジュール間の契約ネットプロトコル通信による協調動作を必要とし、系統構成の変化などに柔軟にかつ適確に適用できるものはなかった。
例えば、分散電源系統では、機器の並列および解列による構成の変化が頻繁に起きることが予想され、この場合には図18において、発電機2が何らかの要因で突発的に系統から解列されたとすると、従来の順序固定方式のように機器構成が既知であることが前提の制御方法を適用することができない。
また、上記のように、順序固定方式による台数制御は稼動範囲容量を指標として、増減段を行う制御方法とする場合、同種の発電機が複数台存在した場合、つまり、稼動範囲容量が同じ値である場合、台数制御を実施できなくなる。
本発明の目的は、自律分散システムを適用した分散電源系統において、系統構成や運用条件の動的な変化にも、柔軟にかつ適確に発電機台数制御ができる分散電源系統の制御方式を提供することにある。
本発明は、前記の課題を解決するため、以下の構成を特徴とする。
(1)自律分散システムを適用した分散電源系統の制御方式であって、
分散電源系統の発電機の運転台数制御を行う発電機モジュールと、
分散電源系統の負荷量を管理する負荷モジュールと、
前記発電機モジュールと負荷モジュールとの間の電力需給バランスを、発電機の運転台数制御で実行する仲介モジュールとを備え、
前記仲介モジュールは、前記負荷モジュールから負荷の全要求量情報と前記発電機モジュールから発電機の状態情報を取得する情報管理手段と、前記情報管理手段で取得した前記発電機モジュールからの機器構成に変化があったときの発電機の運転台数増減をスケジューリングする台数制御処理手段と、前記各発電機モジュールの最適出力量算出を行う発電量割り当て処理手段とを備えたことを特徴とする。
(2)前記仲介モジュールは、順序固定方式で台数制御される発電機のうち、増減段候補となる発電機モジュールを優先順位付けした増減段リストを前記情報管理手段で保管し、発電機の増段時は稼動範囲容量の大きさで、減段時は動作中の発電機の経済コストを指標として、前記増減段リストに保管する発電機モジュールを時々刻々更新する手段を備えたことを特徴とする。
(3)前記仲介モジュールは、順序固定方式で台数制御される発電機のうち、増減段待機候補となる発電機の増段待機リストおよび減段待機リストを前記情報管理手段で保管し、待機時間の残りを指標として増減段待機候補を更新する発電機の再起動・停止防止制御手段を備えたことを特徴とする。
(4)前記仲介モジュールは、順序固定方式で台数制御される発電機のうち、異常のあった前記発電機モジュールを登録する無視リストを異常検知処理手段で保管し、この無視リストに登録されている前記発電機モジュールを発電量割り当て対象から外し、無視リストに登録された発電機モジュールの復帰が確認できたときは当該発電機モジュールを無視リストから削除して発電量割り当て対象とする手段を備えたことを特徴とする。
(5)前記仲介モジュールは、先発先停方式で台数制御される発電機のうち、増減段対象の発電機モジュールを登録する増段リストおよび減段リストを前記情報管理手段で保管し、それらのリストのセルは発電機の並び替えの指標となる起動回数や稼働時間の情報を持ち、それらの指標情報を用いて増段、減段対象の発電機モジュールの並び替えを行う手段を備えたことを特徴とする。
(6)前記仲介モジュールは、稼働時間積算方式で台数制御される発電機のうち、増減段対象の発電機モジュールを登録する増段リストおよび減段リストを前記情報管理手段で保管し、減段リストのセルは発電機の並び替えの指標が多いものを優先して登録する手段を備えたことを特徴とする。
(7)前記仲介モジュールは、再起動・停止防止制御される発電機のうち、増減段待機対象の発電機モジュールを登録する増段待機リストおよび減段待機リストを前記情報管理手段で保管し、残存増段待機時間や残存減段待機時間を指標にして増段、減段待機対象の発電機モジュールの並び替えを行う手段を備えたことを特徴とする。
(8)前記仲介モジュールは、渋滞時スキッブ制御を適用する発電機のうち、異常が発生した前記発電機モジュールを登録する無視リストを異常検知処理手段で保管し、この無視リストに登録されている発電機を発電量割り当て処理候補から除外する手段を備えたことを特徴とする。
以上のとおり、本発明によれば、分散電源系統の発電機の運転台数制御を行う発電機モジュールと、分散電源系統の負荷量を管理する負荷モジュールと、発電機モジュールと負荷モジュールとの間の電力需給バランスを、発電機の運転台数制御で実行する仲介モジュールとを備え、仲介モジュールは、負荷モジュールから負荷の全要求量情報と発電機モジュールから発電機の状態情報を取得し、発電機モジュールからの機器構成に変化があったときの発電機の運転台数増減をスケジューリングする台数制御処理と、各発電機モジュールの最適出力量算出を行う発電量割り当て処理を行うようにしたため、自律分散システムを適用した分散電源系統において、系統構成や運用条件の動的な変化にも、柔軟にかつ適確に発電機台数制御ができる。
(システム構成)
本発明は、自律分散システムを適用した分散電源系統の制御方式として、系統構成や運用条件の動的な変化にも、柔軟にかつ適確に発電機台数制御ができる方式を提案する。
図1は、契約ネットプロトコル(CNP)を用いた自律分散システムのモジュール構成を示し、各モジュールはコンピュータ資源とこれを利用したソフトウェア構成で実現される。同図は、他の電力系統と繋がれている連系点の潮流を監視している自律分散モジュール(仲介モジュールと呼ぶ)100、発電機制御を行う発電機モジュール200、負荷量を管理する負荷モジュール300で構成される。
仲介モジュール100は、発電機モジュールと負荷モジュールとの間の電力需給バランスを、発電機の運転台数制御で行うもので、主に負荷の要求量の取得、情報管理機能による発電機の状態を管理、台数制御処理機能による台数制御のスケジューリング、発電量割り当て処理機能による各発電機の最適出力量の算出を行い、負荷モジュール300と発電機モジュール200の間を取り持つ役割を担う。
図1のシステム全体の動作は以下のようになる。
(a)仲介モジュール100は、負荷モジュール300に対してCNP(契約ネットプロトコル)を用い、全負荷要求量の情報を取得する。
(b)仲介モジュール100は、発電機モジュール200に対してCNPを用い、状態(動作状態、生存状態など)の情報を取得する。
(c)仲介モジュール100は、発電機モジュール200の機器構成に変化があったときには、台数制御のスケジューリングを行う。
(d)仲介モジュール100は、各発電機モジュールの最適発電出力量を算出し、発電機モジュール200に発電量を割り当てる。
(e)発電機モジュール200は実機の台数制御を行う。
(実施形態1)順序固定方式
上記のシステム構成において、本実施形態は、順序固定方式で発電機の台数制御を行う。仲介モジュール100は、発電機の台数制御を行うときに必要な、増減段候補となる発電機を優先順位付けしたリストを作成し、それを情報管理機能100Aで保管する。その内容は図2に概略図で示す。リスト内の各セルには更新・並び替えに必要な分散システムのIDと更新指標の情報が含まれており、環境の変化の有無を判断することから、台数制御処理機能100Bによりリスト内の発電機モジュールの順序の更新、並び替えを行う。
順序固定方式の場合には、増段時は稼動範囲容量の大きさで、減段時は動作中の発電機の経済コストを指標とし、それらを比較し、優先順位を付ける。このように、リストを更新することにより、時々刻々変化する環境に対し、柔軟に対応できる台数制御となる。
順序固定方式による全体的な動作は図3にフローチャートで示す、以下の手順になる。
(S1)負荷からの要求量を取得
仲介モジュール100の情報管理機能100Aは系統に接続されている負荷の全要求量を取得する。
(S2)すべての発電機モジュールに状態の問い合わせ
仲介モジュール100の情報管理機能100Aはすべての発電機モジュールの状態を問い合わせ、機器構成の変化、生存の確認を前回の結果と比較する。
(S3)リストの更新の必要性
仲介モジュール100の情報管理機能100Aは系統を構成する機器に変化があったかを判断する。
(S4)リスト更新処理
仲介モジュール100の台数制御処理機能100Bは機器に変化があった場合、管理しているリストを更新する。
(S5)発電量割り当て処理
発電量割り当て処理機能100Cは、発電機出力量の最適化を行う。
(S6)発電機の制御
仲介モジュール100からの指令を受けた発電機モジュール200は対応する実機を制御する。
したがって、本実施形態によれば、自律分散システムを適用した分散電源系統の台数制御において、発電機モジュールと負荷モジュールの電力需給バランスのコンダクターとなる仲介モジュールの情報管理機能内のデータとして、増段対象となる発電機のリスト、また、減段対象となる発電機のリストを作成し、それを時々刻々更新することで順序固定方式の台数制御を実現する。これにより、系統全体での効率的な発電が可能となる。
(実施形態2)再起動・停止防止制御
本実施形態は、実施形態1における順序固定方式に、再起動・停止防止制御の機能を追加する。この機能を追加する場合、情報管理機能100A内に増段待機リスト、減段待機リストを作成する。情報管理機能100Aが管理するデータの概略図を図4に、リスト登録のサイクルを図5に示す。
増段待機リストとは増段直後の決められた時間内は減段することができない分散システムが登録されるリストのことをいう。また、減段待機リストとはある一定時間は増段することができない分散システムが登録されるリストのことをいう。
よって、発電機台数を増段したときは必ず増段待機リストが仮登録され、その後減段リストに登録される。逆に、減段したときは減段待機リストを経由し、増段リストに登録されるものである。ただし、ここでいう、一定の時間とは発電機ごとの特性により異なるものである。さらにそれから算出される残存増段待機時間や残存減段待機時間は待機リスト内での並び替えの指標となり、リスト更新の際には、それらの少ないものから優先順位が付けられる。
順序固定方式による台数制御に、再起動・停止防止制御の機能を追加したときの処理動作は、図3と基本的には差異はないが、図3のS2からS4における処理の中に、増段待機リストおよび減段待機リストに対しても更新判断、更新処理が追加されたものとなる。
したがって、本実施形態によれば、自律分散システムを適用した分散電源系統の発電機台数制御において、仲介モジュールの情報管理機能内に増段待機リストおよび減段待機リストを用意し、待機時間の残りを指標として更新を行うことで、再起動・停止防止制御を実現する。これにより、負荷要求量の急激な増減変動に対して、発電機がON/OFFを繰り返すチャタリング現象を考慮した台数制御を行うことが可能となる。
(実施形態3)渋滞時スキップ制御
本実施形態は、実施形態2における再起動・停止防止制御に、無視リストと呼ばれる、異常のあったモジュールのIDを登録するリストを情報管理機能100A内に作成することで、渋滞時スキップ制御の機能を追加する。
発電機モジュールの制御対象発電機に何らかの異常が見られたとき、その発電機および分散システムを一連の処理の流れから隔離する必要がある。図6に自律分散システムのモジュール構成を示し、図7に情報管理機能内のデータを示す。正常であるか、異常であるかは追加された異常検知処理機能(破線部分)100Dにより判断される。異常状態となる原因としては、突発的なシステムの停止や分散システムの手動運転などが考えられ、ハードウェアからのエラーコードや極端な発電出力値を確認した場合、異常状態であると判断する。
図7に示すように、無視リストヘの登録はそのような状態を確認したときに登録され、それ以降の処理は登録された発電機モジュールを除いて処理が進められる。自動復帰が確認できたときは、登録された発電機モジュールのIDを無視リストから削除する。
順序固定方式による台数制御に、渋滞時スキップ制御の機能を追加したときの処理動作は、図3と基本的には差異はないが、図3における「(S2)すべての発電機モジュールに状態の問い合わせ」の処理では、無視リストからの復帰確認処理が追加される。
したがって、本実施形態によれば、自律分散システムを適用した分散電源系統の発電機台数制御において、渋滞時スキップ制御を適用するために、無視リストを用意し、そのリストには発電機IDが登録され、それを参照することにより、発電機モジュールの異常のあるなしの判断することができる。また、このリストにIDが登録されている発電機モジュールは発電量割り当ての対象から外され、残りの発電機モジュールによる割り当て処理が行われる。これにより、頑強なシステムを構築することが可能となる。
(実施形態4)先発先停方式
本実施形態では、自律分散システムを適用した分散電源系統の発電機台数制御に、先発先停方式を適用する。この方式を適用するにあたり、前記の更新指標は起動回数もしくは稼働時間とする。起動回数が指標の場合は、増段時および減段時は少ない機器から優先される。それに対して、稼働時間を指標とした場合は、稼働時間が少ないものから優先されるように設定を行う。減段時はその逆となる。
図1または図6の構成において、情報管理機能100A内の記億領域に関する概略図を図8に示す。リスト内の各セルには分散システムのIDと稼動範囲容量の情報が含まれており、他の分散システムと比較参照し、優先順位を付け、並び替えを行う。
本実施形態による先発先停方式の動作フローチャートは図9に示す、以下の処理手順になる。
(S11)負荷からの要求量を取得する
負荷要求量取得は系統に接続されている負荷の全要求量を取得する。
(S12)全分散システムに状態の問い合わせ
CNP(契約ネットプロトコル)によって連系または解列された分散システムの有無、各分散システムの増段状態、減段状態や生存の確認を問い合わせる。
(S13)リストの更新の必要性
系統を構成する機器に変化があったかを判断する。
(S14)リスト更新処理
系統構成に変化があった場合、共有メモリに書き込まれているリストを更新する。ただし、採用する台数制御の方式により、更新・並び替えの指標は異なり、その指標を元に更新される。
(S15)発電量割り当て処理
各発電機出力量の算出を行う。各分散システムは共有メモリの登録されているID、増段リスト、減段リストを参照し、通信相手を決定し、最適出力量を求める。
したがって、本実施形態によれば、先発先停方式の台数制御を実装するために、仲介モジュールの情報管理機能内に設ける増段リスト、減段リストを設け、それらのリストのセルは発電機のIDと並び替えの指標となる起動回数や稼働時間の情報を持ち、それらの情報を用い、並び替えを行うことで、増段、減段対象の発電機モジュールを決定し、先発先停方式の台数制御を行うことができる。これにより、運転時間の平均化を行うことができる。また、同容量発電機の台数制御も行うことが可能となり、系統全体での効率的な発電が可能となる。
(実施形態5)稼動時間積算方式
本実施形態では、自律分散システムを適用した分散電源系統の発電機台数制御に、稼動時間積算方式を適用する。
この稼働時間積算方式を適用する場合の情報管理機能の内容は、先発先停方式と変わらない。増段リストおよび減段リストを作成し、それらに分散システムのIDと、更新・並び替えの指標となる起動回数や稼働時間を登録する。
ただし、先発先停方式とは更新・並び替えの方法が異なる。先発先停方式では、増段時は起動回数が少ないものを、減段時も起動回数が少ないものを優先させる。それに対して、稼働時間積算方式では増段時は先発先停方式と変わらないが、減段時は起動回数または稼働時間が多いものを優先させる。以下の表2に先発先停方式と稼働時間積算方式の比較を示す。
Figure 2010035321
本実施形態による全体的な動作についてのフローチャートは前記の図9のようになり、先発先停方式のときと動作に違いは無い。
したがって、本実施形態によれば、稼働時間積算方式を実装するために、先発先停方式と同様にリストを作成し、台数制御を行う場合に、先発先停方式では減段リストの並び替えの指標の少ないものを優先するが、稼働時間積算方式では逆に多いものを優先し、これにより稼働時間積算方式の台数制御が可能となる。
(実施形態6)再起動・停止防止制御
本実施形態では、自律分散システムを適用した分散電源系統の発電機台数制御に、再起動・停止防止制御機能を付加する。
この再起動・停止防止制御の機能を追加するにあたり、共有メモリ内に増段待機リスト、減段待機リストを作成する。情報管理機能100Aにより共有メモリで管理するデータ構成を図10に、リスト登録のサイクルを図11に示す。
増段待機リストとは増段直後の決められた時間内は減段することができない分散システムが登録されるリストのことをいう。また、減段待機リストとはある一定時間は増段することができない分散システムが登録されるリストのことをいう。
よって、発電機台数を増段したときは必ず増段待機リストが仮登録され、その後減段リストに登録される。逆に、減段したときは減段待機リストを経由し、増段リストに登録されるものである。ただし、ここでいう、一定の時間とは発電機ごとの特性により異なるものである。さらにそれから算出される残存増段待機時間や残存減段待機時間は待機リスト内での並び替えの指標となり、リスト更新の際には、それらの少ないものから優先順位が付けられる。
本実施形態による全体の動作は、図9と基本的には差異はないが、図9のS2からS4における処理の中に、増段待機リストおよび減段待機リストに対しても監視、判断、更新を行う処理が追加されたものとなる。
したがって、本実施形態によれば、自律分散システムを適用した分散電源系統の発電機台数制御に再起動・停止防止制御を適用するために、仲介モジュールに増段待機リストと減段待機リストを設け、残存増段待機時間や残存減段待機時間を指標に並び替えを行うことにより、発電機の頻繁なON/OFFの切り替わりを防止することができる。
(実施形態7)渋滞時スキップ制御
本実施形態では、自律分散システムを適用した分散電源系統の発電機台数制御に、渋滞時スキップ制御機能を付加する。
本実施形態におけるシステム構成は図6と同様になり、異常検知処理機能100Dにより、ある分散システムの制御対象発電機に何らかの異常が見られたとき、その発電機および分散システムを一連の処理の流れから隔離する。
正常であるか、異常であるかは追加された異常検知処理機能(破線部分)により判断される。異常状態となる原因としては、突発的なシステムの停止や分散システムの手動運転などが考えられる。無視リストヘの登録はそのような状態を確認したときに登録され、それ以降の処理は登録された分散システムを除いて処理が進められる。自動復帰が確認できたときは、登録された分散システムのIDを無視リストからIDなどを削除する。
したがって、本実施形態によれば、自律分散システムを適用した分散電源系統の発電機台数制御に渋滞時スキッブ制御を適用するために、何らかの原因で異常が発生した発電機モジュールを登録するための無視リストを用意する。異常が発生した発電機モジュールをこの無視リストに登録・削除することにより、発電量割り当て処理の候補の発電機を決定することができる。これにより、頑強なシステムを構築することが可能となる。
本発明の基本構成を示す自律分散システムのモジュール構成図。 情報管理機能のデータ概略図。 システム全体のフローチャート。 情報管理機能のデータ概略図。 リスト登録のサイクル図。 自律分散システムのモジュール構成図。 情報管理機能内のデータ。 情報管理機能内の記憶領域の概略図。 先発先停方式の動作フローチャート。 再起動・停止防止制御時の共有メモリのデータ構成。 リストのサイクル図。 集中管理型制御方式のブロック図。 自律分散システムの適用例。 契約ネットプロトコル。 順序固定方式の発電機投入順。 先発先停方式の発電機投入順。 一般的な発電機特性。 3台の発電機による台数制御の例。
符号の説明
100 仲介モジュール
200 発電機モジュール
300 負荷モジュール
100A 情報管理機能
100B 台数制御処理機能
100C 発電量割り当て処理機能
100D 異常検知処理機能

Claims (8)

  1. 自律分散システムを適用した分散電源系統の制御方式であって、
    分散電源系統の発電機の運転台数制御を行う発電機モジュールと、
    分散電源系統の負荷量を管理する負荷モジュールと、
    前記発電機モジュールと負荷モジュールとの間の電力需給バランスを、発電機の運転台数制御で実行する仲介モジュールとを備え、
    前記仲介モジュールは、前記負荷モジュールから負荷の全要求量情報と前記発電機モジュールから発電機の状態情報を取得する情報管理手段と、前記情報管理手段で取得した前記発電機モジュールからの機器構成に変化があったときの発電機の運転台数増減をスケジューリングする台数制御処理手段と、前記各発電機モジュールの最適出力量算出を行う発電量割り当て処理手段とを備えたことを特徴とする分散電源系統の制御方式。
  2. 前記仲介モジュールは、順序固定方式で台数制御される発電機のうち、増減段候補となる発電機モジュールを優先順位付けした増減段リストを前記情報管理手段で保管し、発電機の増段時は稼動範囲容量の大きさで、減段時は動作中の発電機の経済コストを指標として、前記増減段リストに保管する発電機モジュールを時々刻々更新する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の分散電源系統の制御方式。
  3. 前記仲介モジュールは、順序固定方式で台数制御される発電機のうち、増減段待機候補となる発電機の増段待機リストおよび減段待機リストを前記情報管理手段で保管し、待機時間の残りを指標として増減段待機候補を更新する発電機の再起動・停止防止制御手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の分散電源系統の制御方式。
  4. 前記仲介モジュールは、順序固定方式で台数制御される発電機のうち、異常のあった前記発電機モジュールを登録する無視リストを異常検知処理手段で保管し、この無視リストに登録されている前記発電機モジュールを発電量割り当て対象から外し、無視リストに登録された発電機モジュールの復帰が確認できたときは当該発電機モジュールを無視リストから削除して発電量割り当て対象とする手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の分散電源系統の制御方式。
  5. 前記仲介モジュールは、先発先停方式で台数制御される発電機のうち、増減段対象の発電機モジュールを登録する増段リストおよび減段リストを前記情報管理手段で保管し、それらのリストのセルは発電機の並び替えの指標となる起動回数や稼働時間の情報を持ち、それらの指標情報を用いて増段、減段対象の発電機モジュールの並び替えを行う手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の分散電源系統の制御方式。
  6. 前記仲介モジュールは、稼働時間積算方式で台数制御される発電機のうち、増減段対象の発電機モジュールを登録する増段リストおよび減段リストを前記情報管理手段で保管し、減段リストのセルは発電機の並び替えの指標が多いものを優先して登録する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の分散電源系統の制御方式。
  7. 前記仲介モジュールは、再起動・停止防止制御される発電機のうち、増減段待機対象の発電機モジュールを登録する増段待機リストおよび減段待機リストを前記情報管理手段で保管し、残存増段待機時間や残存減段待機時間を指標にして増段、減段待機対象の発電機モジュールの並び替えを行う手段を備えたことを特徴とする請求項5または6に記載の分散電源系統の制御方式。
  8. 前記仲介モジュールは、渋滞時スキッブ制御を適用する発電機のうち、異常が発生した前記発電機モジュールを登録する無視リストを異常検知処理手段で保管し、この無視リストに登録されている発電機を発電量割り当て処理候補から除外する手段を備えたことを特徴とする請求項5または6に記載の分散電源系統の制御方式。
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