JP2010035264A - 永久磁石式同期電動機 - Google Patents

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Abstract

【課題】ロータコアの強度を維持しつつ、モータ性能の向上を可能とする永久磁石式同期電動機を提供する。
【解決手段】複数の鋼板を積層してなるロータコア20と、ロータコア20に軸方向に沿って貫設された磁石孔21b,22bに挿入・固定される永久磁石30とを有する回転子を備える永久磁石式同期電動機において、前記ロータコア20を高強度部材からなる複数の第一鋼板21と、軟磁性材料からなる複数の第二鋼板22とを積層して構成するとともに、磁石孔21b,22bを該磁石孔21b,22bに挿入・固定された永久磁石30の周方向両側に空孔40が設けられるような形状とした。
【選択図】図1

Description

本発明は、永久磁石式同期電動機に関し、特に、永久磁石をロータに採用したインナーロータ構造であって、且つ、永久磁石をロータコア内に埋め込んだ構造を有する永久磁石式同期電動機に関する。
永久磁石式同期電動機(永久磁石式モータ。以下、PMモータという)は、直流機やIM、RMに比べ、小型高効率を可能とする高性能なモータであり、特に永久磁石を積層鋼板からなるロータコアの内部に埋め込んだIPMモータは、磁石トルクに加えてリラクタンストルクも利用可能であり、小型で高性能なモータとして様々な分野で応用されている。このようなPMモータには、更なる小型化・高出力化のニーズが高まっている。
上記IPMモータにおいては、ロータの軸方向に沿って漏れ磁束低減用の空孔を貫設し、故意に磁気飽和させることで漏れ磁束を低減することが周知となっている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−242462号公報
近年、モータの性能向上に対する要求は非常に高くなってきており、特に小型化・高出力化の要求は高まっている。
下記(1)式に示すように、モータの出力Pは回転数NとトルクTで決まる。
P=2πNT ・・・(1)
通常、トルクTを増大させるためにはモータを大型化することになるため、小型化の要求に応えつつ高出力化を実現するためには高速回転化が必要となり、ロータにはますます高速回転に耐え得る強度が要求されることとなる。
図4にIPMモータの一例として、永久磁石の周方向の両側部に漏れ磁束を低減するための空孔が設けられた四極機の例を示す。図4に示すように、IPMモータは、例えば、複数の鋼板を積層してなるロータコア102を備えている。このロータコア102にはシャフト101を挿入する軸孔102aと、永久磁石103を挿入する磁石孔102bとが軸方向に沿って貫設されている。
ここで、磁石孔102bは、該磁石孔102bに挿入・固定された永久磁石103の周方向の両側部に、漏れ磁束を低減するための空孔104が形成されるようにその形状を設定されている。なお、シャフト101は、焼き嵌めまたはキー溝を設けることにより上記ロータコア102の軸孔102aに固定される。
このようなIPMモータにおいては、回転時にはロータコア102の上記磁石孔102b間の部分であるいわゆるブリッジ102cで、遠心力が作用する永久磁石103を支持することとなる。そのため、回転速度が高速化し、永久磁石103に作用する遠心力が大きくなると、特に空孔104の径方向外側の角部(図中、C部)に面するブリッジ102cの部分に過大な引張り応力が生じる。
この引張り応力に耐え得る設計とするには、空孔104の径方向外側の角部からロータコア102の外周面までの幅dを拡張して応力集中の緩和を図ることが考えられる。しかしながら、ロータコア102を構成する積層鋼板は磁性体であるので、上述した幅dを拡張すると、漏れ磁束が増加して磁石の起磁力が有効に作用せず、ギャップ磁束密度が低下し、モータ特性の低下に繋がることが考えられ、高速回転化に伴う遠心力の増大に対するロータコア102の強度を維持しつつ、モータ性能の維持・向上を図ることは困難であった。
このようなことから本発明は、ロータコアの強度を維持しつつ、モータ性能の向上を可能とする永久磁石式同期電動機を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための第1の発明に係る永久磁石式同期電動機は、複数の鋼板を積層してなる回転子鉄心と、前記回転子鉄心に軸方向に沿って貫設された磁石孔に挿入・固定される永久磁石とを有する回転子を備えた永久磁石式同期電動機において、前記回転子鉄心が、高強度部材からなる複数の第一鋼板と、軟磁性材料からなる複数の第二鋼板とを積層して構成され、前記磁石孔が、該磁石孔に挿入・固定された前記永久磁石の周方向両側に空孔を有するように形成されたことを特徴とする。
上記の課題を解決するための第2の発明に係る永久磁石式同期電動機は、第1の発明に係る永久磁石式同期電動機において、前記回転子鉄心は、前記第一鋼板および前記第二鋼板を、一枚ずつ又は複数枚ずつ交互に積層してなることを特徴とする。
上記の課題を解決するための第3の発明に係る永久磁石式同期電動機は、第1の発明に係る永久磁石式同期電動機において、前記磁石孔に軸方向に沿って複数の永久磁石が挿入・固定されるとともに、前記回転子鉄心が、それぞれの前記永久磁石に対して少なくとも二枚の前記第一鋼板が配されるように前記第一鋼板及び前記第二鋼板を積層してなることを特徴とする。
上記の課題を解決するための第4の発明に係る永久磁石式同期電動機は、第1乃至第3のいずれかの発明に係る永久磁石式同期電動機において、前記第一鋼板は、非磁性材料からなるとともに前記永久磁石に作用する遠心力による応力集中を緩和するように前記空孔の径方向外側の角部の形状を設定され、前記第二鋼板は、漏れ磁束を低減するように前記空孔の形状を設定されることを特徴とする。
上述した第1乃至第3の発明に係る永久磁石式同期電動機によれば、回転により遠心力が作用した永久磁石を、主に第一鋼板によって支持することができるため、第二鋼板に作用する応力を低減することができる。これにより、回転速度を向上させることができるとともに、空孔による漏れ磁束低減が高速回転時においても可能となりモータ性能を維持・向上させることができる。なお、誘起電圧など電気設計に関する部分は巻き線の巻き回数などで対応することができる。
第4の発明に係る永久磁石式同期電動機によれば、第一鋼板、第二鋼板がそれぞれの用途において好適な形状となるように形成されるので、第一鋼板によって回転により遠心力が作用した永久磁石を高強度に支持しつつ、第二鋼板によって漏れ磁束を低減することができ、より確実に回転速度の向上、モータ性能の維持・向上が可能となる。
本発明の実施形態を以下の実施例において詳細に説明する。
図1を用いて本発明の第1の実施例を説明する。図1(a)は本実施例に係る永久磁石式同期電動機のロータの正面図、図1(b)は図1(a)のA−A矢視断面図である。本実施例は本発明の構成を四極機に適用した例である。
図1に示すように、本実施例に係る永久磁石式同期電動機において回転子(以下、ロータ)は、主に回転軸(以下、シャフト)10と、シャフト10に一体動可能に固定される回転子鉄心(以下、ロータコア)20と、ロータコア20の内部に埋め込まれた永久磁石30とから構成されている。
ロータコア20は複数の鋼板を軸方向に積層してなる積層鋼板型であり、具体的には、図1(b)に示すように相互に異なる材質からなる第一鋼板21(図1では16枚)と第二鋼板22(図1では17枚)を一枚ずつ交互に積層することにより形成されている。ここで、本実施例において、第一鋼板21は、例えば、非磁性材であるチタン、ステンレス、ジュラルミン、または磁性材である高張力鋼や高強度電磁鋼板等の永久磁石30に作用する遠心力に対して強度を維持することが可能な材料から構成し、第二鋼板22は高透磁率、高磁束密度、又は低鉄損な軟磁性材料、例えば、パーマロイ、電磁鋼板、アモルファス金属材料等から構成するものとする。
ここで、第一鋼板は、遠心力に耐え得るよう一般的に高張力とされる強度、例えば、引張り強さ490MPa、降伏点294Mpa以上(例えば、日本機械学会編「機械工学便覧(材料学・工業材料)」参照)とすることが望ましい。また、第二鋼板は、高透磁率、高磁束密度または低鉄損な特性が得られるようケイ素などを添加した、磁気特性の安定と性能が得られる鋼板とする。
第一鋼板21、第二鋼板22には、図1(a)に示すようにそれぞれシャフト10を挿入する軸孔21a、22a、及び、永久磁石30を挿入する複数(図1では4つ)の磁石孔21b,22bが軸方向に貫設されている。
磁石孔21b,22bは断面視概ね扇状に形成されて周方向に等間隔に配置されるとともに、周方向の長さが永久磁石30の周方向の長さに比較して長くなるように形成されている。これにより、磁石孔21b,22bに永久磁石30を挿入すると永久磁石30の周方向両側は空孔40となる。本実施例では、この空孔40により故意に磁気飽和させて漏れ磁束を低減するようにしている。なお、永久磁石30は、軸方向の長さがロータコア20の軸方向の長さと略同一となっている。
本実施例において、軸孔21a,22a、磁石孔21b,22bはそれぞれ同一形状であり、これにより、第一鋼板21及び第二鋼板22は正面視同一形状となっている。
以下に、本実施例による作用効果を説明する。上述した本実施例に係る永久磁石式同期電動機によれば、ロータコア20を、永久磁石30に作用する遠心力によって生じる引張り応力に対して強度を有する第一鋼板21と、磁性体からなる第二鋼板22とを交互に積層して構成するようにしたことにより、回転時に遠心力が作用した永久磁石30を主に第一鋼板21で支持することができるため、永久磁石30に作用する遠心力に対する強度を高めつつ、磁気特性に優れた電磁鋼板を主な磁路とした高性能なモータを構成することができる。
一般的に、電磁鋼板単体に低鉄損と高強度の性質を両立させることは難しいが、本実施例では、第一鋼板21として高強度な薄板を用い、第二鋼板22として高性能な電磁鋼板を用い、これらを併用することで上述したように高性能なモータを構成することができる。
なお、本実施例では第一鋼板21及び第二鋼板22を一枚ずつ交互に積層する例を示したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、例えば第一鋼板21及び第二鋼板22を複数枚ずつ交互に積層するなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
図2を用いて本発明の第2の実施例を説明する。図2(a)は本実施例に係る永久磁石式同期電動機のロータの正面図、図2(b)は図2(a)のB−B矢視断面図である。
本実施例は、実施例1のロータコア20及び永久磁石30に代えて、図2に示すロータコア25及び永久磁石31を用いる例である。その他の構成は図1に示し上述した構成と概ね同様であり、以下、同様の作用を奏する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
図2に示すように、本実施例に係る永久磁石式同期電動機において、永久磁石31は、図1に示し上述した永久磁石30を軸方向に等分に三分割した形状となっている。そして、ロータコア25は、それぞれの永久磁石31に対して少なくとも二枚(図2では二枚)の第一鋼板21が第二鋼板22を介して配されるように、第一鋼板21及び第二鋼板22を積層して構成されている。
上述した本実施例に係る永久磁石式同期電動機によれば、磁場変動によって生じる渦電流損失の対策として軸方向に分割した永久磁石31を用いる場合であっても、分割された永久磁石31に対してそれぞれ軸方向の二箇所以上を第一鋼板21によって支持するため、それぞれの永久磁石31に作用する遠心力によりロータコア25に応力がかかったとしても、この応力に対して強度を維持することができる。
図3を用いて本発明の第3の実施例を説明する。図3(a)は本実施例に係る永久磁石式同期電動機の第一鋼板の正面図、図3(b)は本実施例に係る永久磁石式同期電動機の第二鋼板の正面図である。
本実施例は上述した実施例1または実施例2の第一鋼板21、第二鋼板22に代えて、該第一鋼板21、第二鋼板22とは磁石孔の形状が異なる、図3に示す第一鋼板23、第二鋼板24を用いる例である。その他の構成は図1または図2に示した構成と概ね同様であり、以下、実施例1または実施例2において説明した部材と同様の作用を奏する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
図3に示すように、本実施例に係る永久磁石式同期電動機において、ロータコア20(または25)を構成する第一鋼板23と第二鋼板24とはその材質が相互に異なるとともに、永久磁石30を挿入するための磁石孔23b,24bの形状が相互に相違している。
詳しくは、第一鋼板23に形成された磁石孔23bは、図3(a)に示すように空孔41の部分を周方向に広げたような形状となっており、図1または図2に示し上述した第一鋼板21の磁石孔21bに比較して、遠心力が作用した永久磁石30による応力集中を緩和するように、径方向外側の角部の半径Rが大きくなっている。
また、第二鋼板24に形成された磁石孔24bは、図3(b)に示すようにその周方向両端部の空孔42の部分が、漏れ磁束を低減するように径方向外側に突出した形状となっている。換言すると、磁石孔24bの空孔42に対応する部分の、第二鋼板24の外周面から磁石孔24bまでの厚さdが、図1または図2に示し上述した第二鋼板22の磁石孔22bに比較して薄くなるように形成されている。
上述した本実施例に係る永久磁石式同期電動機によれば、第一鋼板23、第二鋼板24にそれぞれ貫設される磁石孔23b,24bの形状を、各々の用途に応じて好適な形状となるように相互に相違する形状としたので、実施例1または実施例2の効果に加えて、第一鋼板23によって永久磁石30に働く遠心力によりロータコア20に作用する応力の集中をより緩和することができるとともに、第二鋼板24においてより漏れ磁束を低減することができ、実施例1,2による効果に加えて、さらなる回転速度の向上及びモータ性能の維持・向上が可能になる。
本発明は、永久磁石をロータに採用したインナーロータ構造の永久磁石式同期電動機に適用可能であり、特に、永久磁石をロータコア内に埋め込む構造を有する永久磁石式同期電動機に適用して好適なものである。
図1(a)は本発明の実施例1に係る永久磁石式同期電動機のロータ構造を示す正面図、図1(b)は図1(a)のA−A矢視断面図である。 図2(a)は本発明の実施例2に係る永久磁石式同期電動機のロータ構造を示す正面図、図2(b)は図2(a)のB−B矢視断面図である。 図3(a)は本発明の実施例3に係る永久磁石式同期電動機のロータの第一鋼板に対応する部分を示す断面図、図3(b)は本発明の実施例3に係る永久磁石式同期電動機のロータの第二鋼板に対応する部分を示す断面図である。 永久磁石式同期電動機のロータの一例を示す正面図である。
符号の説明
10 シャフト
20 ロータコア
21,23 第一鋼板
22,24 第二鋼板
21a,22a,23a,24a 軸孔
21b,22b,23b,24b 磁石孔
30 永久磁石
40,41,42 空孔

Claims (4)

  1. 複数の鋼板を積層してなる回転子鉄心と、前記回転子鉄心に軸方向に沿って貫設された磁石孔に挿入・固定される永久磁石とを有する回転子を備えた永久磁石式同期電動機において、
    前記回転子鉄心が、高強度部材からなる複数の第一鋼板と、軟磁性材料からなる複数の第二鋼板とを積層して構成され、
    前記磁石孔が、該磁石孔に挿入・固定された前記永久磁石の周方向両側に空孔を有するように形成された
    ことを特徴とする永久磁石式同期電動機。
  2. 前記回転子鉄心は、前記第一鋼板および前記第二鋼板を、一枚ずつ又は複数枚ずつ交互に積層してなる
    ことを特徴とする請求項1記載の永久磁石式同期電動機。
  3. 前記磁石孔に軸方向に沿って複数の永久磁石が挿入・固定されるとともに、
    前記回転子鉄心が、それぞれの前記永久磁石に対して少なくとも二枚の前記第一鋼板が配されるように前記第一鋼板及び前記第二鋼板を積層してなる
    ことを特徴とする請求項1記載の永久磁石式同期電動機。
  4. 前記第一鋼板は、非磁性材料からなるとともに前記永久磁石に作用する遠心力による応力集中を緩和するように前記空孔の径方向外側の角部の形状を設定され、
    前記第二鋼板は、漏れ磁束を低減するように前記空孔の形状を設定される
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の永久磁石式同期電動機。
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