JP2010034905A - 音響再生装置およびプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】 所望の音場効果処理を実行させるための操作を迅速に行うことができ、かつ、オーディオ信号に多彩な音場効果を付与することができる音響再生装置を提供する。
【解決手段】 音場効果付与部130は、各々に与えられるオーディオ信号から音場効果の付与されたオーディオ信号を発生する複数のレイヤを有し、各レイヤが発生したオーディオ信号を合成して出力する。振り分け部120は、前処理部110を介して供給されるオーディオ信号を任意のレイヤに振り分ける。パーソナルコンピュータ140は、各種の操作手段を介して与えられる操作情報に応じて、各レイヤの信号処理を制御するとともに、振り分け部120によるオーディオ信号の振り分け先を制御する。
【選択図】図1
【解決手段】 音場効果付与部130は、各々に与えられるオーディオ信号から音場効果の付与されたオーディオ信号を発生する複数のレイヤを有し、各レイヤが発生したオーディオ信号を合成して出力する。振り分け部120は、前処理部110を介して供給されるオーディオ信号を任意のレイヤに振り分ける。パーソナルコンピュータ140は、各種の操作手段を介して与えられる操作情報に応じて、各レイヤの信号処理を制御するとともに、振り分け部120によるオーディオ信号の振り分け先を制御する。
【選択図】図1
Description
この発明は、クラブやホールでの音響再生やスタジオでの音楽制作等に好適な音響再生装置およびプログラムに関する。
空間内の所望の位置に再生音の音像を定位させ、あるいは所望の軌道に沿って再生音の音像を移動させる音場効果付与機能を備えた音響再生装置が各種提供されている。この種の音響再生装置では、ユーザが所望の音場効果を装置に対して容易に指示することができるよう高度な操作性が要求される。このような要求に応えた音響再生装置として、非特許文献1に開示された装置がある。この非特許文献1に開示の装置は、空間内の所望の位置や軌道を入力させるためのGUI(Graphical User Interface)をユーザに提供する。そして、非特許文献1に開示の装置は、このGUIを介して、空間内の所望の点や軌跡に関する情報を取得し、この所望の点に再生音の音像を定位させ、あるいは所望の軌跡に沿って音像を移動させる制御を行う。
"USER GUIDE, CueStation 4.6.0 Matrix3Audio Show Control System, Edition:2007-09-19 for CueStation 4.6.0"[平成19年12月23日検索]、インターネット<URL:http://www.meyersound.com/pdf/products/lcs_series/CSv4_20070919.pdf>
"USER GUIDE, CueStation 4.6.0 Matrix3Audio Show Control System, Edition:2007-09-19 for CueStation 4.6.0"[平成19年12月23日検索]、インターネット<URL:http://www.meyersound.com/pdf/products/lcs_series/CSv4_20070919.pdf>
上述した非特許文献1に開示の装置によれば、ユーザは複雑な音場効果を自在に表現し、その音場効果を再生音に付与することができる。しかし、例えばDJミキサを利用して音響再生を行うような場面では、時々刻々と変化する曲の進行に合わせて、再生音に付与する音場効果を切り換えることが必要になる場合があり、所望の音場効果処理を装置に実行させるための操作を迅速に行うことが求められる。また、DJミキサを利用して音響再生を行う場面では、オーディオ信号に多彩な音場効果を付与することが望まれる。このような要求に応える技術はこれまで提供されていなかった。
この発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、所望の音場効果処理を実行させるための操作を迅速に行うことができ、かつ、オーディオ信号に多彩な音場効果を付与することができる音響再生装置を提供することを目的とする。
この発明は、各々に与えられるオーディオ信号から音場効果の付与されたオーディオ信号を生成する複数の信号処理部を有し、前記各信号処理部が発生したオーディオ信号を合成して出力する音場効果付与手段と、オーディオ信号供給装置から供給されるオーディオ信号を前記音場効果付与手段のいずれかの信号処理部に振り分けて入力する振り分け手段と、操作手段と、前記操作手段を介して与えられる操作情報に応じて、前記音場効果付与手段の各信号処理部の信号処理を制御するとともに、前記振り分け手段によるオーディオ信号の振り分け先を制御する制御手段とを具備することを特徴とする音響再生装置を提供する。
かかる発明によれば、ユーザは、操作手段の操作により、予め各信号処理部の信号処理の内容を所望の内容にしておき、オーディオ信号供給装置から供給されるオーディオ信号を所望の信号処理部に振り分けることができる。従って、所望の音場効果処理を実行させるための操作を迅速に行うことができ、かつ、オーディオ信号に多彩な音場効果を付与することができる。
かかる発明によれば、ユーザは、操作手段の操作により、予め各信号処理部の信号処理の内容を所望の内容にしておき、オーディオ信号供給装置から供給されるオーディオ信号を所望の信号処理部に振り分けることができる。従って、所望の音場効果処理を実行させるための操作を迅速に行うことができ、かつ、オーディオ信号に多彩な音場効果を付与することができる。
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
図1はこの発明の一実施形態である音響再生装置100を含む音響再生システムの構成を示すブロック図である。この音響再生システムは、本実施形態による音響再生装置100と、音響再生装置100にオーディオ信号を供給するDJミキサ200と、DJミキサ200から出力されるオーディオ信号を音として出力する複数の電力増幅器(図示せず)と複数のスピーカSPa−i(i=1、2、…)と、音響再生装置100から出力されるオーディオ信号を音として出力する複数の電力増幅器(図示せず)と複数のスピーカSPb−j(j=1、2、…)とを有する。ここで、スピーカSPa−i(i=1、2、…)およびSPb−j(j=1、2、…)は、図1に例示するように、部屋300の周囲の壁の近傍に各々設置されており、スピーカSPa−iは部屋300の隅に、スピーカSPb−jはスピーカSPa−jを補間するように配置されている。なお、本実施形態では、スピーカSPa−iは4チャネル、スピーカSPb−jは8チャネルとした。
図1はこの発明の一実施形態である音響再生装置100を含む音響再生システムの構成を示すブロック図である。この音響再生システムは、本実施形態による音響再生装置100と、音響再生装置100にオーディオ信号を供給するDJミキサ200と、DJミキサ200から出力されるオーディオ信号を音として出力する複数の電力増幅器(図示せず)と複数のスピーカSPa−i(i=1、2、…)と、音響再生装置100から出力されるオーディオ信号を音として出力する複数の電力増幅器(図示せず)と複数のスピーカSPb−j(j=1、2、…)とを有する。ここで、スピーカSPa−i(i=1、2、…)およびSPb−j(j=1、2、…)は、図1に例示するように、部屋300の周囲の壁の近傍に各々設置されており、スピーカSPa−iは部屋300の隅に、スピーカSPb−jはスピーカSPa−jを補間するように配置されている。なお、本実施形態では、スピーカSPa−iは4チャネル、スピーカSPb−jは8チャネルとした。
周知のDJミキサと同様、DJミキサ200は、CD再生装置等の音源が出力するオーディオ信号やDJミキサ200自体が有するリズムパターン発生器が発生するリズム音信号等の複数チャネルのオーディオ信号を相互にフェードイン、フェードアウトしながらミキシングし、Kチャネル(本実施形態では4チャネル)のオーディオ信号として出力する装置である。また、DJミキサ200は、ミキシングに当たって、ミキシング対象の一部のオーディオ信号やミキシング後のオーディオ信号に各種のエフェクトやフィルタ処理を施す機能を有する。さらにDJミキサ200は、ミキシング対象である複数チャネルのオーディオ信号のうちユーザによって指定されたオーディオ信号またはミキシング後のオーディオ信号から当該オーディオ信号の拍の速度を示すBPM(Beat Per Minute)情報を抽出して出力する機能を有する。本実施形態において、DJミキサ200は、音響再生装置100にオーディオ信号を供給するオーディオ信号供給装置としての役割を果たす。
本実施形態における音響再生装置100は、前処理部110と、振り分け部120と、音場効果付与部130と、音響再生装置100全体を制御するパーソナルコンピュータ140と、このパーソナルコンピュータ140に接続された操作盤150とを有する。
前処理部110は、3つの機能を有している。第1の機能は、DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号から最大L種類までの音楽要素毎に分類されたオーディオ信号を抽出し、音場効果付与部130の処理対象として振り分け部120に供給する機能である。ここで、音楽要素とは、楽器や音声の種類や音色、リズムやテンポ(拍の速度)、音域、メロディ、演奏パート等の音楽を構成する要素である。前処理部110には、各種の音楽要素をオーディオ信号から抽出するためのフィルタ群またはイコライザ群が設けられている。DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号のうちいずれのチャネルのオーディオ信号から処理対象となる音楽要素のオーディオ信号を抽出するか、また、如何なる音楽要素のオーディオ信号を抽出するかは、パーソナルコンピュータ140から与えられる指示および制御情報により決定される。
前処理部110の第2の機能は、エフェクト処理機能である。本実施形態において、パーソナルコンピュータ140は、ユーザから与えられる操作情報に従い、特定の音楽要素に特定のエフェクト処理を施すことを前処理部110に指示する場合がある。この場合、前処理部110は、DJミキサ200からのオーディオ信号から抽出した各音楽要素のオーディオ信号のうちパーソナルコンピュータ140から指示された音楽要素のオーディオ信号を内蔵のエフェクタに与え、パーソナルコンピュータ140から指示されたエフェクト処理(例えば、高域遮断や低域遮断等のフィルタ処理による音色の加工等)をエフェクタに実行させる。
前処理部110の第3の機能は、音場効果処理の制御タイミングを指示する同期信号を発生して振り分け部120に供給する機能である。前処理部110は、この同期信号の発生手段を2種類有している。第1の同期信号発生手段は、リズムパターン発生器である。このリズムパターン発生器は、複数種類のリズムパターンを記憶している。前処理部110は、パーソナルコンピュータ140から指示された種類のリズムパターンを同パーソナルコンピュータ140から指示された速度でリズムパターン発生器から出力させ、同期信号として振り分け部120に供給する。第2の同期信号発生手段は、オーディオ信号からベース音やドラム音などの楽曲のリズムやテンポを主導する音の発生タイミングを示す同期信号を抽出して振り分け部120に供給する同期信号抽出器である。前処理部110は、DJミキサ200が出力するオーディオ信号のうちパーソナルコンピュータ140から指示されたチャネルのオーディオ信号を選択して同期信号抽出器に与え、この同期信号抽出器によってオーディオ信号から抽出される同期信号を振り分け部120に供給する。同期信号抽出器としては、楽曲の拍毎に同期信号を発生する機能、1または複数の小節毎に同期信号を発生する機能、楽曲の基本リズム毎に同期信号を発生する機能等、複数種類の同期信号の発生機能を有しており、パーソナルコンピュータ140から指示された機能により同期信号を発生する構成のものが好ましい。
以上が前処理部110の機能の詳細である。
以上が前処理部110の機能の詳細である。
音場効果付与部130は、M個(Mは複数)のレイヤを有している。これらの各レイヤは、1個の入力チャネルとN個の出力チャネルを有しており、入力チャネルを介して与えられる入力オーディオ信号に音像定位、音像移動、音量変化といった音場効果処理を施すことにより、Nチャネルのオーディオ信号を生成し、N個の出力チャネルを介して各々出力する信号処理部である。上述したパーソナルコンピュータ140は、ユーザから与えられる操作情報に従い、各レイヤに如何なる音場効果処理を実行させるかを決定し、その音場効果処理を実行するのに必要なパラメータを該当するレイヤに供給する。各レイヤが出力するNチャネルのオーディオ信号は同一チャネル同士加算され、加算により得られたNチャネルのオーディオ信号は、部屋300に設置されたスピーカSPb−j(j=1〜N)に供給される。
振り分け部120は、パーソナルコンピュータ140がユーザから与えられる指示に従い、前処理部110が出力する最大Lチャネルまでの音楽要素のオーディオ信号および同期信号を音場効果付与部130の各レイヤに振り分ける装置である。
パーソナルコンピュータ140は、内蔵のHDD(ハードディスク装置)にインストールされた制御プログラムに従って、ユーザから操作情報を受け取り、この操作情報に応じて、前処理部110、振り分け部120および音場効果付与部130の制御を行う役割を果たす。パーソナルコンピュータ140は、ユーザからの操作情報を受け取るための手段として、キーボード141やマウス142等の操作子を有するとともに、操作情報の提供を促す画面を表示するためのディスプレイ143を有する。さらにパーソナルコンピュータ140は、ヘッドフォン144が接続されている。操作盤150は、パーソナルコンピュータ140のユーザインタフェースとしての機能を補完する装置であり、タッチパネル151と複数のフェーダ152等を有する。タッチパネル151は、主に3次元空間内の音像定位点等の位置に関する情報の入力に用いられる。また、フェーダ152は、音像定位点の移動速度や音量等のアナログ量の入力に用いられる。
図2は、パーソナルコンピュータ140が実行する制御プログラムの内容を示すものである。図2に示すように、制御プログラムは、前処理デザイン部401、ルーチング部402およびレイヤデザイン部403の各ルーチンを含む。前処理デザイン部401は、ユーザから与えられる操作情報に従い、前処理部110の処理内容をデザインするルーチン、すなわち、音楽要素の抽出処理、エフェクト処理、同期信号の発生または抽出処理の処理内容を決定する各種の制御情報を操作情報から発生し、前処理部110に供給するルーチンである。また、ルーチング部402は、ユーザから与えられる操作情報に従い、ルーチングを実行する。ここで、ルーチングとは、ユーザから指示された音楽要素のオーディオ信号または同期信号がユーザから指示されたレイヤに供給されるように、オーディオ信号や同期信号を伝達するパスを振り分け部120に形成させる処理である。また、レイヤデザイン部403は、各レイヤの処理内容をデザインするルーチン、すなわち、ユーザから指示された音場効果処理がユーザから指示されたレイヤによって実行されるように、その音場効果処理の実行に必要な各種の制御情報を生成し、そのレイヤに供給するルーチンである。また、レイヤデザイン部403は、あるレイヤがタッチパネル151やフェーダ152等の操作情報を利用する音場効果処理を実行している場合には、そのレイヤに対し、該当する操作情報を供給する制御を行う。前処理デザイン部401、ルーチング部402およびレイヤデザイン部403の他、制御プログラムは、ユーザがマウス142等の操作手段の操作により指定する所望のオーディオ信号(DJミキサ200が出力する所望のチャネルのオーディオ信号、前処理部110が出力する所望の音楽要素のオーディオ信号、振り分け部120が出力するオーディオ信号、音場効果付与部130が出力するオーディオ信号)を選択し、ヘッドフォン144から出力させるピックアップルーチンを含む。ユーザは、このピックアップルーチンを利用して所望のオーディオ信号を聴覚により確認し、同期信号の抽出に適したオーディオ信号や各レイヤに送るオーディオ信号の選択、再生スピーカの出力信号の確認に役立てることができる。
次に本実施形態の動作について説明する。
パーソナルコンピュータ140が制御プログラムを実行している状態において、ユーザは、キーボード141やマウス142の操作により、前処理デザイン部401、ルーチング部402およびレイヤデザイン部403のうち所望のものを選択することができる。制御プログラムは、前処理デザイン部401が選択されているときには図3(a)に示す前処理デザイン画面を、ルーチング部402が選択されているときには図3(b)に示すルーチング画面を、レイヤデザイン部403が選択されているときには図3(c)に示すレイヤデザイン画面をディスプレイ143に表示させる。
パーソナルコンピュータ140が制御プログラムを実行している状態において、ユーザは、キーボード141やマウス142の操作により、前処理デザイン部401、ルーチング部402およびレイヤデザイン部403のうち所望のものを選択することができる。制御プログラムは、前処理デザイン部401が選択されているときには図3(a)に示す前処理デザイン画面を、ルーチング部402が選択されているときには図3(b)に示すルーチング画面を、レイヤデザイン部403が選択されているときには図3(c)に示すレイヤデザイン画面をディスプレイ143に表示させる。
<1.前処理デザイン>
前処理デザイン画面が表示されている状態において、ユーザは、キーボード141やマウス142の操作により、前処理デザインを前処理デザイン部401に実行させることができる。この前処理デザインでは、前処理部110に実行させる前処理(音楽要素の抽出処理等)の内容に関する指示をユーザから受け取り、そのような前処理の実行の指示を前処理部110に送る。前処理部110は、この指示に従い、例えば次のような前処理を実行する。
前処理デザイン画面が表示されている状態において、ユーザは、キーボード141やマウス142の操作により、前処理デザインを前処理デザイン部401に実行させることができる。この前処理デザインでは、前処理部110に実行させる前処理(音楽要素の抽出処理等)の内容に関する指示をユーザから受け取り、そのような前処理の実行の指示を前処理部110に送る。前処理部110は、この指示に従い、例えば次のような前処理を実行する。
<1−1.音楽要素の抽出処理>
この音楽要素の抽出処理には、以下例示列挙するような幾つかの態様がある。いずれの態様が実行されるかは前処理デザイン部から与えられる指示により決定される。
a.前処理部110は、DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号から各種の楽器や音声の種類や音色に対応した成分を各々抽出し、抽出した各成分を示すオーディオ信号を各々出力する。
b.前処理部110は、DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号からリズム、メロディといった各種の演奏パートに対応した成分を各々抽出し、抽出した各成分を示すオーディオ信号を各々出力する。
c.前処理部110は、DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号から低音域、中音域、高音域といった複数の周波数帯域に各々属する成分を抽出し、抽出した各成分を示すオーディオ信号を各々出力する。
d.前処理部110は、DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号から各種のリズムやテンポ(拍の速度)に対応した成分を抽出し、抽出した各成分を示すオーディオ信号を各々出力する。
この音楽要素の抽出処理には、以下例示列挙するような幾つかの態様がある。いずれの態様が実行されるかは前処理デザイン部から与えられる指示により決定される。
a.前処理部110は、DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号から各種の楽器や音声の種類や音色に対応した成分を各々抽出し、抽出した各成分を示すオーディオ信号を各々出力する。
b.前処理部110は、DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号からリズム、メロディといった各種の演奏パートに対応した成分を各々抽出し、抽出した各成分を示すオーディオ信号を各々出力する。
c.前処理部110は、DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号から低音域、中音域、高音域といった複数の周波数帯域に各々属する成分を抽出し、抽出した各成分を示すオーディオ信号を各々出力する。
d.前処理部110は、DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号から各種のリズムやテンポ(拍の速度)に対応した成分を抽出し、抽出した各成分を示すオーディオ信号を各々出力する。
<1−2.エフェクト処理>
前処理部110は、音楽要素の抽出処理により抽出された各音楽要素のオーディオ信号のうち前処理デザイン部401から選択指示された音楽要素のオーディオ信号をエフェクタに与え、前処理デザイン部401から指示された種類のエフェクト処理をエフェクタに実行させる。そして、このエフェクト処理を経たオーディオ信号を振り分け部120に供給する。
前処理部110は、音楽要素の抽出処理により抽出された各音楽要素のオーディオ信号のうち前処理デザイン部401から選択指示された音楽要素のオーディオ信号をエフェクタに与え、前処理デザイン部401から指示された種類のエフェクト処理をエフェクタに実行させる。そして、このエフェクト処理を経たオーディオ信号を振り分け部120に供給する。
<1−3.同期信号の発生処理または抽出処理>
前処理部110は、前処理デザイン部401から指示された種類のリズムパターンを前処理デザイン部401から指示された速度でリズムパターン発生器から出力させ、同期信号として振り分け部120に供給する。あるいは、前処理部110は、DJミキサ200が出力するオーディオ信号のうち前処理デザイン部401から指示されたチャネルのオーディオ信号を選択して同期信号抽出器に与え、この同期信号抽出器によってオーディオ信号から抽出される同期信号を振り分け部120に供給する。
前処理部110は、前処理デザイン部401から指示された種類のリズムパターンを前処理デザイン部401から指示された速度でリズムパターン発生器から出力させ、同期信号として振り分け部120に供給する。あるいは、前処理部110は、DJミキサ200が出力するオーディオ信号のうち前処理デザイン部401から指示されたチャネルのオーディオ信号を選択して同期信号抽出器に与え、この同期信号抽出器によってオーディオ信号から抽出される同期信号を振り分け部120に供給する。
<2.レイヤデザイン>
レイヤデザイン画面が表示されている状態において、ユーザは、キーボード141やマウス142の操作により、レイヤデザインをレイヤデザイン部403に実行させることができる。このレイヤデザインでは、所望のレイヤに実行させる音場効果処理の内容に関する情報をユーザから受け取り、そのような音場効果処理の実行に必要な制御情報をユーザが指定したレイヤに送る。以下、このレイヤデザインにより、音場効果付与部130のレイヤが実行する音場効果処理の具体例を幾つか説明する。
レイヤデザイン画面が表示されている状態において、ユーザは、キーボード141やマウス142の操作により、レイヤデザインをレイヤデザイン部403に実行させることができる。このレイヤデザインでは、所望のレイヤに実行させる音場効果処理の内容に関する情報をユーザから受け取り、そのような音場効果処理の実行に必要な制御情報をユーザが指定したレイヤに送る。以下、このレイヤデザインにより、音場効果付与部130のレイヤが実行する音場効果処理の具体例を幾つか説明する。
<2−1:部屋300内の所望の位置に再生音の音像を定位させる音像定位処理>
この音像定位処理を実行させる場合、ユーザは次の操作を行って、その操作情報をレイヤデザイン部403に供給する。
a.タッチパネル151の所望の位置を指で押すことにより、部屋300内において音像を定位させる所望の位置(音像定位点)を指示する。この操作を容易にするため、レイヤデザイン部403は、ディスプレイ143に部屋300のレイアウト図をレイヤデザイン画面に表示するとともに、ユーザがタッチパネル151により指示した位置を同レイアウト図上に表示する。ここで、音像には一般的に広がりがあるので、ここにいう音像定位点は、空間内において音像が占める領域の代表的な点を意味する。このような代表点としての音像定位点を指示させるともに、音像の広がり具合を示す情報を例えばキーボード141の操作等により入力させるようにしてもよい。あるいは例えばタッチパネル151を指で丸くなぞる等の操作により、音像が占める領域全体を指示させてもよい。
b.音像定位処理を実行させるレイヤを例えばキーボード141の操作により指示する。
この音像定位処理を実行させる場合、ユーザは次の操作を行って、その操作情報をレイヤデザイン部403に供給する。
a.タッチパネル151の所望の位置を指で押すことにより、部屋300内において音像を定位させる所望の位置(音像定位点)を指示する。この操作を容易にするため、レイヤデザイン部403は、ディスプレイ143に部屋300のレイアウト図をレイヤデザイン画面に表示するとともに、ユーザがタッチパネル151により指示した位置を同レイアウト図上に表示する。ここで、音像には一般的に広がりがあるので、ここにいう音像定位点は、空間内において音像が占める領域の代表的な点を意味する。このような代表点としての音像定位点を指示させるともに、音像の広がり具合を示す情報を例えばキーボード141の操作等により入力させるようにしてもよい。あるいは例えばタッチパネル151を指で丸くなぞる等の操作により、音像が占める領域全体を指示させてもよい。
b.音像定位処理を実行させるレイヤを例えばキーボード141の操作により指示する。
以上の操作を検知すると、レイヤデザイン部403は、部屋300内の所望の位置に音像定位させる処理の指示と音像定位点の位置座標をユーザが指示したレイヤに送る。これらの指示を受け取ったレイヤは、次の処理を行う。まず、指示された音像定位点に定位する音をスピーカSPb−j(j=1〜N)から出力させる出力オーディオ信号を得るためのパラメータ、すなわち、入力オーディオ信号を遅延させ、かつ、増幅して各スピーカSPb−j(j=1〜N)に与える各出力オーディオ信号を生成する際の各遅延時間と各ゲインを演算する。そして、入力オーディオ信号を演算により得られた各遅延時間だけ遅延させた各オーディオ信号を生成し、この各オーディオ信号に演算により得られた各ゲインでの増幅処理を施し、各スピーカSPb−j(j=1〜N)に与える各出力オーディオ信号を生成する処理を開始する。ここで、振り分け部120が当該レイヤに入力オーディオ信号を振り分けていない場合、当該レイヤでは、音量が0の無信号に対し、上記の遅延処理と増幅処理を施す。従って、この間は、当該レイヤの信号処理結果はスピーカSPb−j(j=1〜N)からの放音に影響を与えない。従って、当該レイヤに振り分け部120を介して入力オーディオ信号が供給される前に、当該レイヤが音像定位処理を開始したとしても何ら問題はない。一方、振り分け部120が当該レイヤに何らかの音楽要素の入力オーディオ信号を振り分けると、当該レイヤでは、その入力オーディオ信号に対し、上記の遅延処理と増幅処理を施し、その処理結果である各出力オーディオ信号を各スピーカSPb−j(j=1〜N)に与える。この結果、ユーザが指示した音像定位点に音像の定位した再生音が得られる。
<2−2:同期信号に合わせて複数の設定位置の各々に音像を移動させる音像移動処理>
図4はこの音像移動処理の実行に関連したレイヤデザイン部403および音場効果付与部130のレイヤの処理内容を例示する図である。この音像移動処理をあるレイヤに実行させる場合、ユーザは次の操作を行う。
a.タッチパネル151の所望の位置を指で押すことにより、部屋300内の複数の設定点を指示する。図4に示す例では、4個の設定点P1、P2、P3、P4が指示されている。
b.音像移動処理を実行させるレイヤを例えばキーボード141の操作により指示する。
c.同期信号の立ち上がりタイミングから音像の移動開始までの遅延時間tdと音像の移動の所要時間であるクロスフェード時間txを指示する。本実施形態では、モーフィング型のクロスフェード技術を利用し、音像の移動を行わせる。すなわち、例えば設定点P1から設定点P2に音像の移動を行わせる場合、入力オーディオ信号からスピーカSPj(j=1〜N)を駆動する各出力オーディオ信号を得るための信号処理の内容を、設定点P1に音像を定位させる信号処理から設定点P2に音像を定位させる信号処理に連続的に変化させるための信号処理パラメータの制御を行うのである。この信号処理の内容を連続的に変化させるための所要時間がクロスフェード時間txである。
図4はこの音像移動処理の実行に関連したレイヤデザイン部403および音場効果付与部130のレイヤの処理内容を例示する図である。この音像移動処理をあるレイヤに実行させる場合、ユーザは次の操作を行う。
a.タッチパネル151の所望の位置を指で押すことにより、部屋300内の複数の設定点を指示する。図4に示す例では、4個の設定点P1、P2、P3、P4が指示されている。
b.音像移動処理を実行させるレイヤを例えばキーボード141の操作により指示する。
c.同期信号の立ち上がりタイミングから音像の移動開始までの遅延時間tdと音像の移動の所要時間であるクロスフェード時間txを指示する。本実施形態では、モーフィング型のクロスフェード技術を利用し、音像の移動を行わせる。すなわち、例えば設定点P1から設定点P2に音像の移動を行わせる場合、入力オーディオ信号からスピーカSPj(j=1〜N)を駆動する各出力オーディオ信号を得るための信号処理の内容を、設定点P1に音像を定位させる信号処理から設定点P2に音像を定位させる信号処理に連続的に変化させるための信号処理パラメータの制御を行うのである。この信号処理の内容を連続的に変化させるための所要時間がクロスフェード時間txである。
音像の移動の典型的な2つの態様として、例えば1つの音像が設定点P1から設定点P2に音が飛ぶ、という具合に空間内を不連続に音像位置が切り換わっているように聴者に聴かせる態様と、1つの音像が時間を掛けて空間内を連続的に移動しているように聴者に聴かせる態様とがある。クロスフェード時間txを例えば150ms程度の短時間にすると、前者の態様を実現することができ、クロスフェード時間txをそれよりも十分に長くすると後者の態様を実現することができる。
前者の態様を実現する場合にもクロスフェードを利用するのは、次の理由によるものである。仮にクロスフェードを行わず、例えば打楽器音のようなアタック音の後に、共鳴音が持続するような1つの音を再生する途中のタイミングにおいて、設定点P1に音像を定位させる信号処理から設定点P2に音像を定位させる信号処理への切り換えが瞬時に行われると、打楽器音としての特徴を有する1つの時間的に連続した楽音が分断され、分断された各音の音像が別個の位置に現れる。これでは、不自然な楽音となり、打楽器音が再生されているようには聴こえないからである。
遅延時間tdは、クロスフェードの開始タイミングの調整に利用される。例えば拍の開始タイミング付近は楽音のアタック区間となる可能性が高いので、発音中の音が移動している効果を強調して聴かせたい場合は、遅延時間tdを短くし、クロスフェード時間txを長くすればよい。また、発音中の音が例えば設定点P1から設定点P2へ飛ぶように聴かせたい場合は、遅延時間tdを短くし、クロスフェード時間txも短くすればよい。また、異なる場所に忽然として音が現れるように聴かせたい場合は、楽音のレベルが十分に減衰したとき(あるいはアタック音の後に共鳴音が持続しないとき)にクロスフェードが行われるように、遅延時間tdを長くし、クロスフェード時間txを短くすればよい。
d.音像の移動先の選択方法を次の第1の選択方法または第2の選択方法の中から選択する。
第1の選択方法:図5(a)に例示するようにタッチパネル151を操作して指示した順に各設定点を音像定位点とする。
第2の選択方法:図5(b)に例示するように、1つの設定点を音像定位点にする都度、擬似乱数を発生し、発生した擬似乱数に基づいて、次に音像定位点とする設定点をランダムに決定する。
第1の選択方法:図5(a)に例示するようにタッチパネル151を操作して指示した順に各設定点を音像定位点とする。
第2の選択方法:図5(b)に例示するように、1つの設定点を音像定位点にする都度、擬似乱数を発生し、発生した擬似乱数に基づいて、次に音像定位点とする設定点をランダムに決定する。
以上の操作を検知すると、レイヤデザイン部403は、ユーザから指示されたレイヤに対し、同期信号に合わせて複数の設定点の各々に音像を移動させる音像移動処理の実行指示と、ユーザが指示した各設定点の位置座標と、ユーザが指定した音像の移動先の選択方法を示す情報と、ユーザが指示した遅延時間tdおよびクロスフェード時間txを示す情報を供給する。
この指示および各情報の供給を受けたレイヤは、次の処理を行う。まず、ユーザが指示した複数の設定点の位置座標を記憶し、各設定点について、スピーカSPb−j(j=1〜N)への各出力オーディオ信号を得るために入力オーディオ信号に施す各遅延処理の遅延時間Dj(j=1〜N)と各増幅処理のゲインGj(j=1〜N)であって、その設定点に音像が定位する音をスピーカSPb−j(j=1〜N)から放音させるための遅延時間Dj(j=1〜N)およびゲインGj(j=1〜N)を算出して記憶する。具体的には図4の例のように、4個の設定点P1、P2、P3、P4がある場合には、パーソナルコンピュータ140は、設定点P1に音像を定位させるための遅延時間Dj(j=1〜N)およびゲインGj(j=1〜N)のセットと、設定点P2に音像を定位させるための遅延時間Dj(j=1〜N)およびゲインGj(j=1〜N)のセットと、設定点P3に音像を定位させるための遅延時間Dj(j=1〜N)およびゲインGj(j=1〜N)のセットと、設定点P4に音像を定位させるための遅延時間Dj(j=1〜N)およびゲインGj(j=1〜N)のセットとを算出して記憶することとなる。
そして、レイヤは、振り分け部120を介して音楽要素のオーディオ信号と同期信号が供給されると、次の処理を行う。まず、同期信号が立ち上がったとき、次に音像定位点とする設定点を決定する。さらに詳述すると、ユーザが第1の選択方法を指示した場合、レイヤは、現在の設定点の次の設定点、すなわち、現在の音像定位点が例えば設定点P1であれば、設定点P2を次の音像定位点とする。また、ユーザが第2の選択方法を指示した場合、レイヤは、擬似乱数を発生し、現在の設定点を除く各設定点の中の1つを擬似乱数に従って選択し、次の音像定位点とする。そして、レイヤは、同期信号の立ち上がりから遅延時間tdが経過したとき、クロスフェード時間txを要して、音像定位のための信号処理の内容を現在の音像定位点に対応したものから次の音像定位点に対応したものへ連続的に変化させる。その態様には各種考えられるが、次のような簡便な態様であってもよい。すなわち、例えば設定点P1から設定点P2へと音像定位点を移動させる場合には、音像定位処理に用いる遅延時間Dj(j=1〜N)およびゲインGj(j=1〜N)の各々を設定点P1に対応した各値から設定点P2に対応した各値に直線的に変化させるのである。
音像を移動させるためのパラメータ制御に関しては、以上のように音像定位のためのパラメータDj(j=1〜N)およびGj(j=1〜N)を直線的に変化させる態様の他、次のような態様があり得る。すなわち、例えば空間内の音像定位点P1から音像定位点P2まで音像を移動させる場合には、空間内において音像定位点P1と音像定位点P2との結ぶ軌道を想定し、この軌道上の1または複数の補間点を求め、この補間点を経由して音像が移動するように、パラメータDj(j=1〜N)およびGj(j=1〜N)の制御を行うのである。この態様によれば、パラメータDj(j=1〜N)およびGj(j=1〜N)を直線的に変化させる態様に比べて、音像移動の制御のための演算量は増えるが、正確な音像移動を行わせることができるという利点がある。音像定位点P1およびP2間の軌道は、直線軌道としてもよいし、音像定位点P1と音像定位点P2と音像定位点P2の次の音像の移動先となる音像定位点P3とを結ぶ滑らかな曲線軌道を求め、この曲線軌道における音像定位点P1およびP2間の区間を音像定位点P1およびP2間の軌道としてもよい。
また、音像を移動させるためのタイミング制御に関しては、以上のように同期信号の立ち上がりから遅延時間tdが経過したときに音像定位処理の内容を変化させる制御を完了する態様の他、次の態様もあり得る。すなわち、同期信号の立ち上がりから遅延時間tdが経過したときに、音像定位処理の内容を現在の音像定位点に対応した内容から次の音像定位点に対応した内容に変化させる制御を開始し、同期信号の立ち上がりから時間td+txが経過したときにこの制御を完了するのである。上述した同期信号の立ち上がりから遅延時間tdが経過したときに音像定位処理の内容を変化させる制御を完了させる態様では、設定可能なクロスフェード時間txの下限値よりも遅延時間tdを短くすることはできない。しかし、この同期信号の立ち上がりから遅延時間tdが経過したときに音像定位処理の内容を変化させる制御を開始する態様では、このような制約はなく、任意の遅延時間tdを設定可能である。
レイヤでは、同期信号が立ち上がる毎に、以上のような音像定位点の移動制御が繰り返される。従って、オーディオ信号が振り分け部120を介してレイヤに与えられると、同期信号に同期して音像定位点を移動させる音像移動処理がこのオーディオ信号に施され、各スピーカSPb−j(j=1〜N)に与える各出力オーディオ信号が生成される。この結果、同期信号に同期して音像定位点が移動する再生音が得られる。なお、同期信号の利便性を高めるために、同期信号が音像を移動させるトリガとして利用されるのを禁止するマスク機能をレイヤ毎に設けてもよい。すなわち、同期信号マスクフラグをレイヤ毎に設けておき、あるレイヤの同期信号マスクフラグが“0”である場合は、そのレイヤに供給された同期信号を音像移動のためのトリガとして利用し、そのレイヤの同期信号マスクフラグが“1”である場合は、そのレイヤに供給された同期信号を音像移動のためのトリガとして利用しないようにするのである。同期信号マスクフラグの“1”/“0”の設定は、例えばパーソナルコンピュータ140からの指示により行うようにすればよい。
<2−3:ユーザが描く自由な軌道に沿って音像を移動させる音像移動処理>
この場合、ユーザは、自由な軌道に沿って音像を移動させる音像移動処理の実行指示と、その音像移動処理を実行させるレイヤに関する指示をレイヤデザイン部403に与えればよい。この音像移動処理の実行指示はレイヤデザイン部403を介して該当するレイヤに供給される。その後、ユーザは、タッチパネル151に指で自由な軌道を描けばよい。レイヤデザイン部403は、このタッチパネル151に描かれた軌道を部屋300内の音像の軌道と解釈する。そして、軌道の終端(現在の指の接触位置)が所定距離だけ進む毎に、その終端に対応した部屋300内の軌道の終端の位置座標を算出し、この音像移動処理を実行するレイヤに供給する。図6に示す例では、軌道上の音像定位点P7、P8、P9の位置座標がレイヤデザイン部403からレイヤに供給されている。
この場合、ユーザは、自由な軌道に沿って音像を移動させる音像移動処理の実行指示と、その音像移動処理を実行させるレイヤに関する指示をレイヤデザイン部403に与えればよい。この音像移動処理の実行指示はレイヤデザイン部403を介して該当するレイヤに供給される。その後、ユーザは、タッチパネル151に指で自由な軌道を描けばよい。レイヤデザイン部403は、このタッチパネル151に描かれた軌道を部屋300内の音像の軌道と解釈する。そして、軌道の終端(現在の指の接触位置)が所定距離だけ進む毎に、その終端に対応した部屋300内の軌道の終端の位置座標を算出し、この音像移動処理を実行するレイヤに供給する。図6に示す例では、軌道上の音像定位点P7、P8、P9の位置座標がレイヤデザイン部403からレイヤに供給されている。
レイヤでは、新たな音像定位点の位置座標が供給される毎に、新たな音像定位点に音像定位させるための遅延時間Dj(j=1〜N)およびゲインGj(j=1〜N)が算出され、古い音像定位点に対応した音像定位処理から新たな音像定位点に対応した音像定位処理に移行させるためのモーフィング型クロスフェードが行われる。従って、入力オーディオ信号が振り分け部120を介してレイヤに与えられると、このモーフィング型クロスフェードを伴う音像定位処理が入力オーディオ信号に施され、各スピーカSPb−j(j=1〜N)に与える各出力オーディオ信号が生成される。この結果、ユーザが指で描く自由な軌道に沿ってリアルタイムに音像が移動する再生音が得られる。この場合、音像の移動速度は、ユーザが描く軌道の描画速度に比例する。
<2−4:マニュアルトリガ(操作手段の操作により発生する同期信号)に合わせて、ユーザが描いた軌道に沿って音像を移動させる音像移動処理>
この場合、ユーザは、この音像移動処理の実行指示をレイヤデザイン部403に与えるとともに、タッチパネル151を指でなぞることにより、図7(a)に例示するような始点Psおよび終点Peを有する開いた軌道、すなわち、両端を持つ線、または図7(b)に示すような閉ループ状の軌道、すなわち、閉じた線を入力する。また、ユーザはこの音像移動処理を実行させるレイヤを指示する。
この場合、ユーザは、この音像移動処理の実行指示をレイヤデザイン部403に与えるとともに、タッチパネル151を指でなぞることにより、図7(a)に例示するような始点Psおよび終点Peを有する開いた軌道、すなわち、両端を持つ線、または図7(b)に示すような閉ループ状の軌道、すなわち、閉じた線を入力する。また、ユーザはこの音像移動処理を実行させるレイヤを指示する。
これによりレイヤデザイン部403は、ユーザが入力した軌道上において所定距離を隔てて並んだ複数の点を音像定位点とし、各音像定位点の位置座標を音像移動処理の実行指示とともにユーザが指示したレイヤに与える。このレイヤは、レイヤデザイン部403から受け取った各音像定位点の位置座標を記憶し、各音像定位点毎に、その位置座標に基づき、その音像定位点に音像定位させるための遅延時間Dj(j=1〜N)およびゲインGj(j=1〜N)のセットを算出して記憶する。そして、レイヤは、マニュアルトリガが与えられるのを待つ。この間、レイヤは、各スピーカSPb−j(j=1〜N)に与える各出力オーディオ信号を生成しない。
その後、ユーザがタッチパネル151を指で突っつくなどのマニュアルトリガを与えると、レイヤデザイン部403はこのマニュアルトリガを音像移動処理を実行するレイヤに伝達する。また、レイヤデザイン部403は、フェーダ152の操作位置を示す情報を同レイヤに供給し、以後、この操作位置に変化があると、変化後の操作位置を示す情報を同レイヤに供給する。
レイヤは、マニュアルトリガを受け取ると、事前にレイヤデザイン部403から受け取った複数の音像定位点を軌道上での並び順に順次選択し、選択した音像定位点に対応した遅延時間Dj(j=1〜N)およびゲインGj(j=1〜N)のセットを用いて音像定位処理を実行する。ここで、ある音像定位点から次の音像定位点への切り換えは、上述したモーフィング型クロスフェードにより実行する。また、音像定位点を切り換える速度は、レイヤデザイン部403から供給されるフェーダ152の操作位置を示す情報に基づいて制御する。
そして、レイヤは、振り分け部120を介して与えられる入力オーディオ信号にこのモーフィング型クロスフェードを伴う音像定位処理を施し、各スピーカSPb−j(j=1〜N)に与える各出力オーディオ信号を生成する。この結果、ユーザが入力した軌道に沿って音像定位点が移動する再生音が得られる。
図8は、以上説明したマニュアルトリガによる音像の移動の様子を具体的に示すものである。図8の中段のグラフは、マニュアルトリガの発生により、音像が始点Psから終点Peへ移動する様子を示すものであり、横軸は時間、縦軸は始点Psから終点Peまでの軌道上における音像の位置Pである。始点Psから終点Peまでの軌道は、曲線軌道である場合もあるが、図8の中段では、便宜上、軌道上の各点を直線である縦軸上の各点に写像している。図8の上段は、タッチパネル151を指で突っついてマニュアルトリガを発生させている様子を示している。また、図8の下段は、中断のグラフと時間軸(横軸)を共有して、フェーダ152の操作状態を時系列的に示している。図8に示す例では、時刻t1においてマニュアルトリガが発生し、レイヤは、図7(a)に例示する軌道に沿って音像定位点を始点Psから終点Peに向けて移動させている。また、その移動途中の時刻t2において、移動速度を低下させるフェーダ152の操作が行われている。そして、音像は時刻t3において終点Peに到達している。図示は省略したが、レイヤは、図7(b)に例示するような閉ループ状の軌道の音像定位点の位置座標がレイヤに与えられた場合には、マニュアルトリガが与えられたときに、その閉ループ状の軌道に沿って音像定位点を1周させる音像移動処理を実行する。この場合も、レイヤは、音像定位点が軌道を1周する速度をフェーダ152の操作位置に応じて制御する。また、図8に示す例では、マニュアルトリガが1回与えられた場合の動作が示されているが、マニュアルトリガが複数回与えられる場合には、マニュアルトリガが与えられる毎に上述と同様な動作が行われる。
<2−5:同期信号に合わせて、ユーザが描いた軌道に沿って音像の移動を繰り返す音像移動処理>
この場合、ユーザは、この音像移動処理の実行指示をレイヤデザイン部403に与えるとともに、タッチパネル151を指でなぞることにより、図7(a)または(b)に例示したような軌道を入力する。また、ユーザはこの音像移動処理を実行させるレイヤを指示する。さらにユーザは、同期信号が立ち上がる毎に、軌道上の音像定位点の移動方向を反転させるのか否かを指示する。
この場合、ユーザは、この音像移動処理の実行指示をレイヤデザイン部403に与えるとともに、タッチパネル151を指でなぞることにより、図7(a)または(b)に例示したような軌道を入力する。また、ユーザはこの音像移動処理を実行させるレイヤを指示する。さらにユーザは、同期信号が立ち上がる毎に、軌道上の音像定位点の移動方向を反転させるのか否かを指示する。
これによりレイヤデザイン部403は、上記2−4の場合と同様、ユーザが入力した軌道上において所定距離を隔てて並んだ複数の点を音像定位点とし、各音像定位点の位置座標を音像移動処理の実行指示および反転/非反転の指示とともにユーザが指示したレイヤに与える。このレイヤは、レイヤデザイン部403から受け取った各音像定位点の位置座標に基づき、各音像定位点に音像定位させるための遅延時間Dj(j=1〜N)およびゲインGj(j=1〜N)のセットを各々算出する。以後、レイヤは、算出した各音像定位点用の遅延時間およびゲインのセットを利用し、図9に例示するように、振り分け部120を介して与えられる同期信号の1周期の間に音像定位点を軌道に沿って1回移動させる音像移動処理(上述したモーフィング型クロスフェードを伴う音像定位処理)を繰り返し実行し、各スピーカSPb−j(j=1〜N)に与える各出力オーディオ信号を入力オーディオ信号から生成する。この結果、同期信号が立ち上がる毎に、ユーザが入力した軌道に沿って音像定位点が移動する再生音が得られる。図9において、例1では、図7(a)に例示したような開いた軌道に沿って、同期信号が立ち上がる毎に移動方向を反転させずに、同一方向に繰り返し音像を移動させており、例2では同期信号が立ち上がる毎に移動方向を反転させて、双方向に繰り返し音像を移動させている。
<2−6:常時は同期信号に合わせて周期的な音像の移動を行い、ユーザが軌道を描いている期間はその軌道に沿って音像を移動させる音像移動処理>
この場合、ユーザは、この音像移動処理の実行指示をレイヤデザイン部403に与えるとともに、上記2−5の場合と同様、タッチパネル151を指でなぞることにより、図7(a)または(b)に例示したような軌道を入力する。また、ユーザはこの音像移動処理を実行させるレイヤを指示する。
この場合、ユーザは、この音像移動処理の実行指示をレイヤデザイン部403に与えるとともに、上記2−5の場合と同様、タッチパネル151を指でなぞることにより、図7(a)または(b)に例示したような軌道を入力する。また、ユーザはこの音像移動処理を実行させるレイヤを指示する。
これによりレイヤデザイン部403は、上記2−4および2−5の場合と同様、ユーザが入力した軌道上において所定距離を隔てて並んだ複数の点を音像定位点とし、各音像定位点の位置座標を音像移動処理の実行指示および反転/非反転の指示とともにユーザが指示したレイヤに与える。図10は、この場合のレイヤの動作を例示する図である。
まず、レイヤは、レイヤデザイン部403から受け取った各音像定位点の位置座標に基づき、各音像定位点に音像定位させるための遅延時間Dj(j=1〜N)およびゲインGj(j=1〜N)のセットを各々算出する。
そして、レイヤは、算出した各音像定位点用の遅延時間およびゲインのセットを利用し、図10に例示するように、振り分け部120を介して与えられる同期信号の1周期の間に音像定位点を軌道に沿って1回移動させる音像移動処理(上述したモーフィング型クロスフェードを伴う音像定位処理)を繰り返し実行し、各スピーカSPb−j(j=1〜N)に与える各出力オーディオ信号を入力オーディオ信号から生成する。この結果、同期信号が立ち上がる毎に、ユーザが入力した軌道に沿って音像定位点が移動する再生音が得られる。
その後、ユーザがタッチパネル151を指でなぞって軌道を描き始めると、レイヤデザイン部403は、軌道が所定距離だけ描かれる毎に軌道上の指の接触位置の位置座標をレイヤに供給する。このような位置座標の供給が開始されると、この位置座標の供給がレイヤにとって割り込み要因となり、レイヤは、同期信号に同期した周期的な音像移動処理を中断し、割り込み処理として、レイヤデザイン部403から与えられる位置座標が示す位置に音像を移動させる音像移動処理(上述したモーフィング型クロスフェードを伴う音像定位処理)を実行し、各スピーカSPb−j(j=1〜N)に与える各出力オーディオ信号を入力オーディオ信号から生成する。この結果、ユーザがタッチパネル151に描く軌道に沿って音像定位点が移動する再生音が得られる。
その後、ユーザがタッチパネル151から指を離すと、レイヤデザイン部403は、その旨をレイヤに通知する。これにより、割り込み要因がなくなり、レイヤは、割り込み処理を終了して、中断していた周期的な音像移動処理を再開する。
<2−7:その他の音場効果処理>
音場効果付与部130の各レイヤには、以上挙げた各種の音像定位処理または音像移動処理の他、音量変化を伴う音像定位処理、音像の大きさの変化を伴う音像移動処理、音の広がり感の変化を伴う音像移動処理、残響付加処理、エコー付加処理、音量を変化させるだけの処理等、各種の音場効果処理を単独でまたはこれらの音場効果処理を複数組み合わせて実行させることが可能である。各レイヤに如何なる内容の音場効果処理を実行させるかは、レイヤデザイン部403がユーザから取得する指示や情報により決定される。
音場効果付与部130の各レイヤには、以上挙げた各種の音像定位処理または音像移動処理の他、音量変化を伴う音像定位処理、音像の大きさの変化を伴う音像移動処理、音の広がり感の変化を伴う音像移動処理、残響付加処理、エコー付加処理、音量を変化させるだけの処理等、各種の音場効果処理を単独でまたはこれらの音場効果処理を複数組み合わせて実行させることが可能である。各レイヤに如何なる内容の音場効果処理を実行させるかは、レイヤデザイン部403がユーザから取得する指示や情報により決定される。
<3:ルーチング>
ユーザがキーボード141やマウス142の操作によりルーチング部402を選択すると、図11に例示するようなルーチング画面がディスプレイ143に表示される。図11に例示するように、ルーチング画面には、DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号から如何なる音楽要素や同期信号が抽出されているか、また、各音楽要素のオーディオ信号や同期信号が如何なるレイヤに供給されているかが図示される。このルーチング画面が表示されている状態において、ユーザは次の処理をルーチング部402に実行させることができる。
ユーザがキーボード141やマウス142の操作によりルーチング部402を選択すると、図11に例示するようなルーチング画面がディスプレイ143に表示される。図11に例示するように、ルーチング画面には、DJミキサ200が出力するKチャネルのオーディオ信号から如何なる音楽要素や同期信号が抽出されているか、また、各音楽要素のオーディオ信号や同期信号が如何なるレイヤに供給されているかが図示される。このルーチング画面が表示されている状態において、ユーザは次の処理をルーチング部402に実行させることができる。
<3−1:レイヤインおよびレイヤフェードイン>
レイヤインは、音楽要素をレイヤへ入場させる処理、すなわち、その音楽要素のオーディオ信号の処理をそのレイヤに開始させる処理である。このレイヤインを実行させるために、ユーザは、マウス142により、ルーチング画面に表示された“イン”表示体をクリックした後、所望の音楽要素または同期信号を示す表示体と所望のレイヤを示す表示体とを結線するドラッグ操作を行う。これにより、ルーチング部402は、マウス操作により指示された音楽要素のオーディオ信号または同期信号をマウス操作により指示されたレイヤにレイヤインさせる旨の指示を振り分け部120に送る。これにより振り分け部120は、指示されたオーディオ信号または同期信号を指示されたレイヤに供給する。この結果、レイヤでは、振り分け部120から供給されるオーディオ信号または同期信号を利用した音場効果処理が実行される。
レイヤインは、音楽要素をレイヤへ入場させる処理、すなわち、その音楽要素のオーディオ信号の処理をそのレイヤに開始させる処理である。このレイヤインを実行させるために、ユーザは、マウス142により、ルーチング画面に表示された“イン”表示体をクリックした後、所望の音楽要素または同期信号を示す表示体と所望のレイヤを示す表示体とを結線するドラッグ操作を行う。これにより、ルーチング部402は、マウス操作により指示された音楽要素のオーディオ信号または同期信号をマウス操作により指示されたレイヤにレイヤインさせる旨の指示を振り分け部120に送る。これにより振り分け部120は、指示されたオーディオ信号または同期信号を指示されたレイヤに供給する。この結果、レイヤでは、振り分け部120から供給されるオーディオ信号または同期信号を利用した音場効果処理が実行される。
レイヤフェードインは、オーディオ信号に関するレイヤインの特殊な態様である。“イン”表示体の代わりに“フェードイン”表示体がクリックされた場合、振り分け部120は、マウス操作により指示された音楽要素のオーディオ信号をマウス操作により指示されたレイヤにレイヤフェードインさせる旨の指示を振り分け部120に送る。この場合、振り分け部120は、該当するオーディオ信号に対し、ある時間を要して0から1まで緩やかに立ち上がる乗算係数を乗算して、該当するレイヤに供給する。
ユーザは、以上説明したレイヤインやレイヤフェードインをルーチング部402に実行させることにより、1または複数の所望の音楽要素のオーディオ信号や同期信号を振り分け部120を介して1または複数の所望のレイヤに供給することができる。図12はこの場合の各レイヤの動作を例示するものである。図示のように、各レイヤでは、上述したレイヤデザインにより決定された内容の音場効果処理が振り分け部120を介して供給されるオーディオ信号に施される。そして、音場効果付与部130では、各レイヤの出力オーディオ信号が同一チャネル同士加算され、各チャネルのスピーカSPb−j(j=1〜N)に供給される。この結果、部屋300では、各レイヤの音場効果処理の結果を合成した音場効果が得られる。
<3−2:レイヤアウトおよびレイヤフェードアウト>
レイヤアウトは、音楽要素または同期信号をレイヤから退場させる処理、すなわち、その音楽要素のオーディオ信号または同期信号を用いた処理をしているレイヤにその処理を終了させる処理である。このレイヤアウトを実行させるために、ユーザは、マウス142により、ルーチング画面に表示された“アウト”表示体をクリックし、所望の音楽要素または同期信号を示す表示体と所望のレイヤを示す表示体とを結ぶ線をクリックする。これにより、ルーチング部402は、マウス操作により指示された音楽要素のオーディオ信号または同期信号をマウス操作により指示されたレイヤからレイヤアウトさせる旨の指示を振り分け部120に送る。これにより振り分け部120は、指示されたオーディオ信号または同期信号の指示されたレイヤへの供給を停止する。この結果、レイヤでは、それまでに行っていた音場効果処理を終了させる。
レイヤアウトは、音楽要素または同期信号をレイヤから退場させる処理、すなわち、その音楽要素のオーディオ信号または同期信号を用いた処理をしているレイヤにその処理を終了させる処理である。このレイヤアウトを実行させるために、ユーザは、マウス142により、ルーチング画面に表示された“アウト”表示体をクリックし、所望の音楽要素または同期信号を示す表示体と所望のレイヤを示す表示体とを結ぶ線をクリックする。これにより、ルーチング部402は、マウス操作により指示された音楽要素のオーディオ信号または同期信号をマウス操作により指示されたレイヤからレイヤアウトさせる旨の指示を振り分け部120に送る。これにより振り分け部120は、指示されたオーディオ信号または同期信号の指示されたレイヤへの供給を停止する。この結果、レイヤでは、それまでに行っていた音場効果処理を終了させる。
レイヤフェードアウトは、オーディオ信号に関するレイヤアウトの特殊な態様である。“アウト”表示体の代わりに“フェードアウト”表示体がクリックされた場合、ルーチング部402は、マウス操作により指示された音楽要素のオーディオ信号をマウス操作により指示されたレイヤからレイヤフェードアウトさせる旨の指示を振り分け部120に送る。この場合、振り分け部120は、該当するオーディオ信号に対し、ある時間を要して1から0まで緩やかに立ち下がる乗算係数を乗算して、該当するレイヤに供給する。
<3−3:レイヤ移動>
レイヤ移動は、あるレイヤの処理対象であった音楽要素のオーディオ信号を別のレイヤの処理対象に移動すること、すなわち、オーディオ信号の処理主体であるレイヤの変更である。このレイヤ移動を実行させるために、ユーザは、マウス142により、ルーチング画面に表示された“レイヤ移動”パターンをクリックし、移動元のレイヤを示すパターンと移動先のレイヤを示すパターンを順次クリックする。ルーチング部402は、このマウス操作を検知すると、オーディオ信号の処理主体を移動元のレイヤから移動先のレイヤに切り換えるべき旨のレイヤ移動の指示を振り分け部120と、移動元および移動先の各レイヤに送る。
レイヤ移動は、あるレイヤの処理対象であった音楽要素のオーディオ信号を別のレイヤの処理対象に移動すること、すなわち、オーディオ信号の処理主体であるレイヤの変更である。このレイヤ移動を実行させるために、ユーザは、マウス142により、ルーチング画面に表示された“レイヤ移動”パターンをクリックし、移動元のレイヤを示すパターンと移動先のレイヤを示すパターンを順次クリックする。ルーチング部402は、このマウス操作を検知すると、オーディオ信号の処理主体を移動元のレイヤから移動先のレイヤに切り換えるべき旨のレイヤ移動の指示を振り分け部120と、移動元および移動先の各レイヤに送る。
図13は、このレイヤ移動に関連した振り分け部120、移動元のレイヤaおよび移動先のレイヤbの処理内容を例示する図である。この例において、移動元のレイヤaでは、点Paを音像定位点とする音像定位処理を実行しており、移動先のレイヤbでは、点Paとは異なる点Pbを音像定位点とする音像定位処理を実行している。
ここで、仮に振り分け部120がオーデイオ信号の供給先をレイヤaからレイヤbに瞬時に切り換えることによりレイヤ移動を行うとすると、上述したように、連続した音波形が分断して別々の場所に現れ、本来の楽器音らしく聴こえなくなる不都合が生じる。
この不都合を生じさせないため、レイヤaに対する入力オーディオ信号とレイヤbに対する入力オーディオ信号との間のクロスフェード、すなわち、レイヤaには所定時間を要して1から0に緩やかに立ち下がる乗算係数をオーディオ信号に乗算して供給し、同じ期間、レイヤbには0から1に緩やかに立ち下がる乗算係数を同オーディオ信号に乗算して供給する方法が考えられる。しかし、このようなクロスフェードを行うと、このクロスフェードの期間、レイヤaとレイヤbでは、同一のオーディオ信号に互いに遅延時間の異なる遅延処理を施し、波形が同じで位相がずれた2つのオーディオ信号を発生して1つのスピーカに供給することとなる。この場合、スピーカからの再生音にカラーレーションが発生するという不都合が生じる。
そこで、本実施形態では、モーフィング型クロスフェードによりレイヤ移動を実現する。すなわち、振り分け部120は、所定期間を要して、移動元のレイヤへ供給するオーディオ信号のレベルを本来のレベルから0まで減衰させる一方、移動先のレイヤへ供給するオーディオ信号のレベルを0から本来のレベルまで上昇させるが、この間同時に、移動元のレイヤおよび移動先のレイヤの双方では、互いに同期して、入力オーディオ信号に施す音像定位処理の内容を音像定位点Paに対応した内容から音像定位点Pbに対応した内容に連続的に変化させるのである。このモーフィング型クロスフェードによれば、クロスフェードの期間中、レイヤaとレイヤbとで音像定位処理の内容が同じであるのでカラーレーションの問題は生じず、自然な音像移動が実現される。
以上述べたレイヤイン、レイヤフェードイン、レイヤアウト、レイヤフェードアウトおよびレイヤ移動が実行され、各種の音楽要素のオーディオ信号や同期信号の供給先であるレイヤが切り換わると、ルーチング画面(図11参照)は、その切り換え後の音楽要素のオーディオ信号や同期信号の供給先のレイヤを示す表示内容に切り換わる。従って、ユーザは、ルーチング画面により、現在における音楽要素のオーディオ信号や同期信号の供給先のレイヤを確認することができる。
以上が本実施形態の詳細である。本実施形態によれば、ユーザは、レイヤデザイン部403に操作情報を与えることにより、音場効果付与部130の所望のレイヤに所望の音場効果処理を予め実行させておくことができる。そして、ユーザは、ルーチング部402に操作情報を与えることにより、DJミキサ200の出力オーディオ信号から抽出された所望の音楽要素のオーディオ信号を振り分け部120を介して所望のレイヤに供給することができる。従って、ユーザは、所望の音場効果処理を実行させるための操作を迅速に行うことができ、かつ、オーディオ信号に多彩な音場効果を付与することができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明にはこれ以外にも他の実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
(1)上記実施形態では、同期信号に現れる全ての立ち上がりタイミングが音場効果処理の制御タイミングとしたが、例えばユーザに所望の回数mを入力させ、m回の立ち上がりに対して1回の割合で立ち上がりタイミングを制御タイミングとして採用するようにしてもよい。あるいは同期信号の波形を示すタイムチャートを表す適切なGUIをユーザに提供し、制御タイミングとする同期信号の立ち上がりタイミングを予めユーザに指定させてもよい。
(2)音楽要素のオーディオ信号について、ピッチや音量等の楽音パラメータを求め、この楽音パラメータに対応して、所望のレイヤが実行する音場効果処理の制御を行うようにしてもよい。例えば、ある音楽要素のオーディオ信号があるレイヤに供給され、音像定位処理がそのオーディオ信号に施されている状況において、そのオーディオ信号のピッチに応じて、音像の広がり感じを制御する、といった態様が考えられる。
(3)上記実施形態において、前処理部110、振り分け部120および信号処理部130は、パーソナルコンピュータ140とは別の装置であった。しかしながら、上述した前処理デザイン部401、ルーチング部402およびレイヤデザイン部403の各ルーチンに加えて、コンピュータを前処理部110、振り分け部120および信号処理部130として機能させるルーチンを含む制御プログラムを構成してパーソナルコンピュータ140にインストールし、この制御プログラムをパーソナルコンピュータ140に実行させてもよい。この態様によれば、音響再生装置100が簡素な構成となる利点がある。すなわち、この発明は、コンピュータを、各々に与えられるオーディオ信号から音場効果の付与されたオーディオ信号を生成する複数の信号処理部を有し、前記各信号処理部が発生したオーディオ信号を合成して出力する音場効果付与手段と、オーディオ信号供給装置から供給されるオーディオ信号を前記音場効果付与手段のいずれかの信号処理部に振り分けて入力する振り分け手段と、操作手段を介して与えられる操作情報に応じて、前記音場効果付与手段の各信号処理部の信号処理を制御するとともに、前記振り分け手段によるオーディオ信号の振り分け先を制御する制御手段として機能させることを特徴とするコンピュータプログラムとして実施することが可能である。
100……音響再生装置、200……DJミキサ、300……部屋、SPa−i(i=1、2、…),SPb−j(j=1、2、…)……スピーカ、110……前処理部、120……振り分け部、130……音場効果付与部、140……パーソナルコンピュータ、141……キーボード、142……マウス、143……ディスプレイ、144……ヘッドフォン、150……操作盤、151……タッチパネル、152……フェーダ。
Claims (11)
- 各々に与えられるオーディオ信号から音場効果の付与されたオーディオ信号を生成する複数の信号処理部を有し、前記各信号処理部が発生したオーディオ信号を合成して出力する音場効果付与手段と、
オーディオ信号供給装置から供給されるオーディオ信号を前記音場効果付与手段のいずれかの信号処理部に振り分けて入力する振り分け手段と、
操作手段と、
前記操作手段を介して与えられる操作情報に応じて、前記音場効果付与手段の各信号処理部の信号処理を制御するとともに、前記振り分け手段によるオーディオ信号の振り分け先を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする音響再生装置。 - 前記操作手段は、ユーザが指示した空間内の位置を指示する操作情報を出力するものであり、
前記信号処理部は、前記操作情報により指示された位置に音像を定位させる音像定位処理を実行する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の音響再生装置。 - 前記信号処理部は、前記操作情報により位置が指示される毎に、前記操作情報により指示された位置に音像を移動させる音像移動処理を実行する手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の音響再生装置。
- 前記信号処理部は、複数の位置に関する指示を受け取り、同期信号に同期して、前記複数の位置を順次選択し、該選択した位置に音像を移動させる音像移動処理を実行する手段を含む請求項2に記載の音響再生装置。
- 前記信号処理部は、複数の位置に関する指示を受け取り、同期信号に同期して、前記複数の位置を通過する軌道に沿って音像を移動させる音像移動処理を実行する手段を含む請求項2に記載の音響再生装置。
- 前記信号処理部は、複数の位置に関する指示を受け取り、同期信号に同期して、前記複数の位置を通過する軌道に沿って音像を周期的に移動させ、その途中で新たな音像の位置が割り込み指示された場合には、その割り込み指示がなされている間、音像の周期的な移動を中断し、前記割り込み指示された新たな位置に音像を移動させる音像移動処理を実行する手段を含む請求項2に記載の音響再生装置。
- 前記オーディオ信号供給装置から供給されるオーディオ信号に同期した同期信号を発生する手段を具備し、
前記制御手段は、前記操作手段からの操作情報に従い、前記同期信号の信号処理部への振り分けを前記振り分け手段に行わせることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1の請求項に記載の音響再生装置。 - 前記操作手段の操作に応じて同期信号を発生する手段を具備し、
前記制御手段は、前記同期信号を前記操作手段の操作により指示された信号処理部に供給する手段を含むことを特徴とする請求項4に記載の音響再生装置。 - 前記信号処理部は音像を移動させる場合に、音像定位処理の処理内容を移動前の音像に対応した内容から移動後の音像に対応した内容に連続的に変化させることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1の請求項に記載の音響再生装置。
- 前記制御手段は、前記操作手段からの操作情報に従い、オーディオ信号の処理主体である前記信号処理部の切り換えを前記振り分け手段および切り換え前後の処理主体である2つの信号処理部に指示する手段を含み、
前記振り分け手段は、前記信号処理部の切り換えの指示に従い、所定時間を要して、切り換え前の処理主体である信号処理部に供給するオーディオ信号のレベルを元のレベルから0まで減衰させる一方、切り換え後の処理主体である信号処理部に供給するオーディオ信号のレベルを0から所定のレベルまで上昇させ、
その所定時間の間、切り換え前の処理主体である信号処理部および切り換え後の処理主体である信号処理部の双方は、信号処理の内容を、切り換え前の処理主体である信号処理部の信号処理の内容から切り換え後の処理主体である信号処理部の信号処理の内容に連続的に変化させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1の請求項に記載の音響再生装置。 - コンピュータを、
各々に与えられるオーディオ信号から音場効果の付与されたオーディオ信号を生成する複数の信号処理部を有し、前記各信号処理部が発生したオーディオ信号を合成して出力する音場効果付与手段と、
オーディオ信号供給装置から供給されるオーディオ信号を前記音場効果付与手段のいずれかの信号処理部に振り分けて入力する振り分け手段と、
操作手段を介して与えられる操作情報に応じて、前記音場効果付与手段の各信号処理部の信号処理を制御するとともに、前記振り分け手段によるオーディオ信号の振り分け先を制御する制御手段と
して機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008195525A JP2010034905A (ja) | 2008-07-29 | 2008-07-29 | 音響再生装置およびプログラム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008195525A JP2010034905A (ja) | 2008-07-29 | 2008-07-29 | 音響再生装置およびプログラム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2010034905A true JP2010034905A (ja) | 2010-02-12 |
Family
ID=41738880
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2008195525A Withdrawn JP2010034905A (ja) | 2008-07-29 | 2008-07-29 | 音響再生装置およびプログラム |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012195883A (ja) * | 2011-03-17 | 2012-10-11 | Yamaha Corp | 電子音楽装置及び信号処理特性制御プログラム |
JP2018152669A (ja) * | 2017-03-10 | 2018-09-27 | ヤマハ株式会社 | 情報処理装置および情報処理方法 |
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JP2020188382A (ja) * | 2019-05-15 | 2020-11-19 | 株式会社Thd | 拡張サウンドシステム、及び拡張サウンド提供方法 |
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2008
- 2008-07-29 JP JP2008195525A patent/JP2010034905A/ja not_active Withdrawn
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