JP2010030806A - ガラスセラミック独立フィルムの製造方法及びそれによるフィルム - Google Patents

ガラスセラミック独立フィルムの製造方法及びそれによるフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】製造環境の湿度に起因するフィルムの変形を抑制するとともに、高度な湿度管理を必要としない、ゾル-ゲル法を用いた独立ガラスフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】シリカ超微粒子が分散媒に分散したシリカゾルと、酸塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム及びそれらの混合物からなる群より選ばれるジルコニウム含有化合物とを混合して、混合ゾルを製造する工程と、前記混合ゾルに有機バインダーを添加して、混合液を製造する工程と、前記混合液を基材上に塗布する工程と、塗布された基材上の混合液を乾燥し、該基材上に前駆体フィルムを形成させる工程と、前記前駆体フィルムを前記基材から剥離する工程と、剥離された前記前駆体フィルムを焼成する工程とを含む、ガラスセラミック独立フィルムの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明はガラスセラミック独立フィルムの製造方法及びそれによるフィルムに関する。
ゾル-ゲル法は、金属アルコキシド等の有機金属化合物溶液や無機化合物溶液から金属酸化物もしくは水酸化物ゾルを得、さらにこれをゲル化し、このゲルを加熱することによりセラミックスやガラスを作製する方法である。
ゾル-ゲル法を用いたSiO2ガラスの作製方法も従来より知られており、非特許文献1に紹介されているが、その多くは、金属アルコキシド溶液を用いてガラスや導体等の基板上に、基板と一体として形成された1μm未満の薄いコーティング膜の作製方法である。ゾル-ゲル法を用い、基板等とは別体の独立したバルク状のSiO2ガラス体の作製方法についても検討されているが、乾燥工程でのクラックの発生を防止するため、一般に非常に特殊な乾燥機(超臨界乾燥)を必要とする。また、そうでない場合でも、非常にゆっくりした乾燥を必要とする。例えば、特許文献1はゾル-ゲル法による石英ガラスの製造法を記載している。その乾燥方法では20℃で一晩放置した後、容器の蓋として所定の開口率のものを用いて、60℃で10日間乾燥させている。また、特許文献2においてゾル-ゲル法によるシリカガラスの製造法を教示している。そこでは原料ゾルをシャーレに入れ、室温でゲル化させた後、シャーレの蓋を穴のあいたものに代えて、60℃で100日間乾燥させている。このような長時間の乾燥は製造を非常に困難なものにしている。
また、上述するバルク状のSiO2ガラスは、数10mm以上の厚みを持つバルク体が主体である。基板と別体で、支持体を必要としない独立した薄いフィルム状のガラス(以下、「独立ガラスフィルム」、「独立フィルム」等という)を作製することは上述の方法では困難である。
ゾル−ゲル法を用いた独立フィルムの形成方法としては、本願出願人により出願された特許文献3において、pH4以下に調整したコロイダルシリカゾルと、硝酸ジルコニル又は酢酸ジルコニルであるジルコニウム含有化合物と、バインダーとを混合して、混合液を製造する工程と、その混合液を基材上に塗布する工程と、塗布された混合液を乾燥し、該基材上に前駆体フィルムを形成させる工程と、その前駆体フィルムを基材から剥離する工程と、剥離された前駆体フィルムを焼成する工程と、を含む、ガラスセラミック独立フィルムの製造方法が記載されている。
「ゾル-ゲル法の科学」 作花済夫著 アグネ承風社 特開昭61−236619号公報 特開平4−292425号公報 特開2007−261825号公報
上述するように、特許文献3に記載の方法を用いて、ゾルーゲル法を用いた「独立フィルム」の形成が可能であるが、本願発明者等は、鋭意検討を通じ、形成されたフィルムの平坦性が、製造環境の湿度により影響を受け、乾燥工程や、乾燥工程後で焼成工程前の間における環境湿度が高いと、フィルムが大気中の湿気を吸湿し、結果として、フィルムの変形を引き起こしやすくなることを知るに至った。
上記課題に対しては、製造環境の湿度を高精度に管理すれば、湿度の変化に伴なうフィルムの変形を抑制することができる。しかしながら、湿度変化に影響を受けにくいプロセスに改善すれば、湿度管理に伴なうプロセス管理コストの負担を軽減し、より均質なフィルムの形成を容易にできる。
そこで、本発明の課題は、製造環境の湿度に起因するフィルムの変形を抑制するとともに、高度な湿度管理を必要としない、ゾル-ゲル法を用いた独立ガラスフィルムの製造方法を提供することである。
本発明は、1つの態様によると、シリカ超微粒子が分散媒に分散したシリカゾルと、酸塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム及びそれらの混合物からなる群より選ばれるジルコニウム含有化合物とを混合して、混合ゾルを製造する工程と、
前記混合ゾルに有機バインダーを添加して、混合液を製造する工程と、
前記混合液を基材上に塗布する工程と、
塗布された基材上の混合液を乾燥し、該基材上に前駆体フィルムを形成させる工程と、
前記前駆体フィルムを前記基材から剥離する工程と、
剥離された前記前駆体フィルムを焼成する工程と
を含む、ガラスセラミック独立フィルムの製造方法を提供する。
本発明は、別の態様によると、上述の方法により製造されるガラスセラミック独立フィルムを提供する。
本発明の方法では、ジルコニウム含有化合物として、吸湿性が少ない酸塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム及びそれらの混合物等を使用することで、原料の調製時、成膜乾燥、剥離、焼成時に湿度の影響を抑制し、吸湿に起因するフィルムの変形をおさえ、フィルムの平坦性を得られ易くする。また、製造環境の湿度管理に対する負担を低減できる。
本発明のガラスセラミックス独立フィルムは、無機ガラスセラミックフィルムであるので、耐候性、耐熱性、耐食性を有する。また、特にZrO2微結晶を含むため、耐スクラッチ性が高い。さらに、独立なフィルムであるため、板状のものに比べ、柔軟性を有する。また、種々の基材に貼りあわせて使用することもできる。
本発明の実施態様について説明する。
本発明の実施形態の製造方法により得られるガラスセラミック独立フィルムは、SiO2母材ガラスと、その母材ガラス中に分散された微結晶ZrO2粒子とを含む、支持体を必要としない独立したフィルムである。この製造方法において、まず、酸性に調整されたコロイダルシリカゾルと、ジルコニウム含有化合物とを混合し、混合ゾルを作製し、次いで、有機バインダーとを混合して混合液を作製する。本実施形態においては、このジルコニウム含有化合物として、特に、吸湿性が低い酸塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム及びそれらの混合物等を使用する。次にこの混合液を基材上に塗布し、乾燥し、基材上に前駆体フィルムを形成する。その後、この前駆体フィルムを基材から剥離し、焼成する。本実施形態の製造方法によれば、製造環境の湿度に起因する変形を抑制でき、平坦性の高い、SiO2ガラス中にZrO2微結晶が分散されたガラスセラミック独立フィルムを得ることができる。
以下、本実施形態の製造方法について、より具体的に説明する。
まず、コロイダルシリカゾルと、ジルコニウム含有化合物とを混合して混合ゾルとし、次いで、有機バインダー及び必要に応じて添加物を混合し、混合液を準備する。コロイダルシリカゾルとしては、シリカ微粒子が分散媒に安定に分散したものを用いる。分散媒の種類に特に限定はしないが、水を分散媒とする、いわゆる水性のシリカゾルを用いることができる。シリカ粒子径としては550nm以下とできる。別の態様では300nm以下、更に別の態様では100nm以下にできる。シリカ微粒子の径が大きすぎると、透明性をもったフィルムを形成することが困難になる。また、粒子径が大きいものは分散安定性が低下するため不均質になり易い。更には粒子径が大きすぎる場合、粒子間の空隙寸法も大きくなるため緻密化に必要な温度が高温化する。一方、シリカ微粒子の粒子径は好ましくは4nm以上である。更に好ましくは8nm以上である。粒子径が小さすぎると、クラックを生じやすく、このため、独立フィルムを形成することが困難になる傾向があるからである。
また、シリカゾルは、酸塩化ジルコニウム及び/又は硫酸ジルコニウムのジルコニウム含有化合物と混合されるが、その前に、シリカゾルは好ましくは酸性、具体的にはpH4以下、より好ましくはpH3以下に調整しておく。シリカゾルのpHがこの条件を満たさない場合は、ジルコニウム含有化合物がゲル化を生じ又は沈殿を生じることがあり、シリカゾル中に均質にジルコニウムを分散させることができないことがある。
なお、あらかじめ酸性に調整された市販のコロイダルシリカを用いることもできるが、中性もしくはアルカリ性のコロイダルシリカを使用する場合は、ジルコニウム含有化合物を混合する前に、塩酸、硝酸、酢酸などの酸性水溶液を追加することで、コロイダルシリカゾルのpHを4以下に調整してもよい。なお、このpH値はジルコニウム含有液を混合する直前のコロイダルシリカ溶液のpH値である。
上記のコロイダルシリカゾルは、ジルコニウム含有化合物と混合される。本実施の形態では、ジルコニウム含有化合物として、酸塩化ジルコニウム(ZrOCl2)及び/又は硫酸ジルコニウム(ZrOSO4)を使用する。
従来、本願発明者等は、ジルコニウム含有化合物として、硝酸ジルコニルを使用していたが、鋭意検討を通じ、硝酸ジルコニルの吸湿性の高さが製造環境における湿度に起因するフィルムの変形を生じる主要因となっていたことをつきとめた。そこで、本実施形態では、従来の硝酸ジルコニルに替えて、それより吸湿性が低い酸塩化ジルコニウム(ZrOCl2)又は硫酸ジルコニウム、あるいはそれらの混合物を使用する。これにより、吸湿によるグリーンフィルム(未焼成のフィルム)の柔軟化、乾燥及び焼成時における湿分の開放による収縮変形を効果的に抑制することができ、平坦性が良好なフィルムの形成が容易になる。また、原料の調製時、成膜乾燥、剥離、焼成などの一連の製造工程において、厳格な湿度管理が不要になる。
なお、シリカゾルに混合する際、ジルコニウム含有化合物は、粉末などの固体形態のものを直接混合させてもよいし、ジルコニウム含有化合物を水に溶かした水溶液とした後、シリカゾルと混合しても良い。
ジルコニウム含有化合物の量は、1つの態様において、得られるシリカ−酸化ジルコニウム(SiO2+ZrO2)ガラスセラミック独立フィルムの質量に対してZrO2の質量に換算して10〜60質量%である。別の態様において、15〜55質量%であり、さらに別の態様において20〜50質量%である。
ZrO2添加量が高すぎると、混合液を乾燥する段階、或いは前駆体フォルムを焼成する段階でクラックが発生しやすくなる。
上述のシリカゾルと、ジルコニウム含有化合物とともに、バインダーが混合されて混合液を形成する。バインダーとしてはポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子が挙げられる。多量のバインダーの添加は焼成工程前の前駆体フィルムの強度向上には望ましいが、その後の焼成工程で大きな収縮やそれに伴うクラックを発生させる傾向がある。また、多量のバインダーの添加は製造コストを高くしてしまう。このため、バインダー添加量は少ないほうが望ましく、その量は、得られるシリカ−酸化ジルコニウム(SiO2+ZrO2)ガラスセラミック独立フィルムの質量に対して(すなわち、シリカ及び酸化ジルコニウムからなる無機固体分に対する質量%として)、100質量%以下が望ましい。別の態様において80質量%以下であり、更に別の態様において50質量%以下である。一方、バインダーの量が少なすぎると、グリーン(未焼成のフィルム)の強度が十分でなく、焼成前の剥離工程でフィルムが破壊されやすくなる。好ましくは、バインダーの添加量はシリカ及び酸化ジルコニウムからなる無機固体分に対する質量%で2〜100%であり、たとえば、5〜50%である。
また、混合液中には、上記バインダーのほか、添加剤として有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン類の他、γ−ブチロラクトン、乳酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,4ブタンジオールなどの多価アルコール、更にはエチレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール誘導体が挙げられる。これら有機溶剤の添加量は、得られるシリカ−酸化ジルコニウム(SiO2+ZrO2)ガラスセラミック独立フィルムの質量に対して(すなわち、シリカ及び酸化ジルコニウムからなる無機固体分に対する質量%として)5質量%以下であり、または3質量%以下である。有機溶剤を添加すると、乾燥速度を制御し前駆体フィルムのクラックを生じにくくするとともに、前駆体フィルムに柔軟性を付与し、ハンドリング性が改善される。添加量が大きすぎると、フィルムの乾燥を著しく遅らせることになる。
また、混合液に、界面活性剤を加えてもよい。界面活性剤は、前駆体フィルムと基材との密着を抑制し、前駆体フィルムを基材からはがし易くする効果がある。なお、界面活性剤の種類に限定はないが、例えばシリカゾルとの混合安定性が良好なポリオキシエチレンアルキルアミン等が使用できる。
次に、得られた混合液を、基材上に塗布する。基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリルフィルム、ポリカーボネート及びポリイミド等、プラスチックフィルムのほか、ガラスやセラミック板、金属板などが挙げられる。基材は、乾燥後の前駆体フィルムの剥離を容易にするように、シリコーン処理などの剥離処理を施されたものであってよい。しかし、比較的薄いフィルムを形成する場合には、フィルム形成能力が低下しないように剥離処理を施さない基材を用いたほうがよい場合もある。基材上への塗布にはダイコート、スプレーコート、バーコート、ナイフコート、キャスティング、スピンコート、スクリーン印刷などの印刷法等の種々の方法を用いることができる。
基材に塗布された混合液は、乾燥され、前駆体フィルムとなる。乾燥は室温(25℃)または加熱状態で、大気圧又は減圧下に行なうことができる。室温(25℃)では、数時間の乾燥で十分であるが、作業日程にあわせ一昼夜乾燥させてもよい。
乾燥後、焼成前に前駆体フィルムは基材より剥離する。なお、必要に応じ剥離後の前駆体フィルムは、適当な寸法に裁断してもよい。前駆体フィルムを焼成前に剥離するのは、剥離しないと、次工程である焼成時の加熱によって基材と前駆体フィルムとの間に応力が生じ、クラックが生じやすくなるからである。
この後、剥離した前駆体フィルムを焼成する。焼成には電気炉を用いることができ、加熱初期における有機物がバーンアウトされる温度(約450℃〜500℃以下)ではゆっくりとした加熱、たとえば、5℃/分の昇温速度、好ましくは3℃/分、更に好ましくは1℃/分またはそれ以下の速度、その後、最終温度までは、それより速い昇温速度、たとえば、5〜10℃/分で昇温を行なうことができる。最終温度である焼成温度で15分間以上の焼成でガラスセラミック独立フィルムを形成することができる。焼成温度は、通常、600℃〜1300℃である。
上記本発明の実施の態様の製造方法によれば、フィルム形成用混合液がジルコニウム含有化合物及びバインダーを含んでおり、乾燥時及び焼成時においてクラックを生じにくい。特に、ジルコニウム含有化合物として、吸湿性の低い酸塩化ジルコニウム又は硫酸ジルコニウム、あるいはそれらの混合物を使用するため、製造環境の湿度の影響を受けにくく、平坦性が良好な独立フィルムをより容易に作製できる。
この実施の態様の製造方法により得られた独立フィルムは、X線回折(XRD)分析及び走査型電子顕微鏡(TEM)による分析によって、SiO2母材ガラスとその中に分散された微結晶ZrO2粒子を含む。また、XRD分析及びTEM分析によると、微結晶ZrO2粒子は粒子径が100nm以下、より具体的には、5nm〜20nmであることも分かった。このような微結晶ZrO2粒子を含むガラスセラミック独立フィルムは、耐スクラッチ性が高く、透明である。さらに、得られるガラスセラミック独立フィルムは、その厚さを広く変更することができ、たとえば、5μm〜2mmのフィルムを得ることができる。特に、10〜100μmの厚さの薄い独立フィルムは無機フィルムであるにも関わらず、十分な可とう性を示す。なお、フィルムの厚さはマイクロメーターや顕微鏡観察などよって測定される。
製造されたガラスセラミック独立フィルムは、種々の他の材料に貼り付けて使用することができる。プラスチックフィルム、金属、木材、コンクリート、セラミックス等に貼り付けて使用できる。貼り付ける他の材料としては、金属、コンクリート、セラミックスなどの耐熱性を持つものでもよいし、耐熱性を持たないプラスチックフィルムや紙類にも貼り付けて用いることもできる。ガラスセラミック独立フィルムを他の材料に施すことにより、種々の他の材料の耐熱性を高めたり、耐スクラッチ性、耐化学薬品性を向上させることが可能となる。また、所定の焼成条件でガラスセラミックフィルムを形成して、緻密化したフィルムを製造した場合は、ガスバリアー性を向上させることができる。一方、十分な緻密化させずにガラスセラミックフィルムを形成した場合には、断熱性を付与することができる。
具体的には、ガラスセラミックフィルムはプラスチックフィルムに貼ることによって、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置、更には窓材などの軽量化構造材料等として使用できる。
以下において、本発明を実施例に基づいて説明する。特に指示がないかぎり、百分率は質量基準であるものとする。
<実施例1>
シリカゾルとして、pH約2.8のスノーテックス(Snowtex)ST−O(日産化学社製)(粒子径10〜20nm、固体含有率20.5wt%)を用いた。なお、スノーテックス(Snowtex)ST−OのpHは、数十ccの試料を容器に採取し、これを市販のポータブルチェッカー(商品名「チェッカー1」HANA INSTRUMENTS製)を用いて測定した。
酸塩化ジルコニウム八水和物(和光純薬工業社)1.2gを1.9gの蒸留水に溶解させた。得られた酸塩化ジルコニウム水溶液のうち、1.23gを取り出し、それをシリカゾル2.1gに混合し、混合ゾルを形成した。
別に、バインダーとしてポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−105)(株式会社クラレ)を蒸留水に溶解して、ポリビニルアルコール5%溶液を作製した。
更に水1.8gに2−アミノエタノール(和光純薬工業製)0.6gを溶解させ、そこに酢酸(和光純薬工業社製)1.8gをゆっくり添加して中和し、アミノエタノール溶液を作製した。
上記混合ゾル3.33gに対して、上記ポリビニルアルコール5%溶液1.5gに、界面活性剤であるアミート105(花王株式会社)0.02gと、有機溶剤であるトリエチレングリコール0.05gと、上述のアミノエタノール溶液のうち、0.03gを加えて混合した。さらに、ポリビニルアルコールの架橋剤として、10%のグリオキサール溶液を0.03g加えて混合液とした。
その混合液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製)(ルミラー)上にキャストし、一晩室温下で乾燥させた。乾燥した前駆体フィルムをPETフィルムから剥離し、乾燥後の前駆体フィルムを湿度50%の部屋に1〜2時間、静置しておいたが、変形を起こさなかった。そのフィルムをアルミナ基板上において電気炉により焼成した。焼成は、室温から500℃までは脱バインダーを目的として10時間かけ(昇温速度0.79℃/分)、ゆっくり昇温させた。さらに、1時間かけて500℃から800℃まで昇温して(昇温速度5℃/分)、そこからさらに、3時間かけて950℃まで昇温することで(昇温速度0.83℃/分)、焼成した。
得られた試料は透明なガラスセラミック独立フィルムであった。マイクロメーターで数箇所測定し、有効部分のおおよその厚みを測定したところ、フィルムの厚みは約50μmであり、殆ど変形していない平らなフィルムであった。具体的には、5cm×5cmの試料を平坦な板の上に載せた場合、浮きの最大高さが、1mm程度以下であった。X線回折(XRD)分析によると、透明な焼成試料はt−ZrO2微結晶を含んでいることが確認できた。すなわち、得られた独立フィルムは、SiO2母体ガラス中に微結晶ZrO2が分散した構造を持つことが確認できた。TEM像の直接観察から微結晶t−ZrO2の粒子径は5〜10nmであった。このように得られたフィルムは手で押してたわむ程度の柔軟性を有していた。図1には950℃焼成後のXRDの結果を示す。
<比較例1>
実施例1と同様に混合液を作製したが、但し、上記の酸塩化ジルコニウム水溶液の代わりに、硝酸ジルコニル二水和物(和光純薬工業社製)1.0gを1.9gの蒸留水に溶解させた溶液のうち、1.15gを添加した。実施例1と同様に作製した、乾燥後の前駆体フィルムを湿度50%の部屋に1〜2時間、静置しておいたところ、フィルムは吸湿によって大きなうねりを起こしていた。具体的には、そのうねりは、5cm×5cmの試料を平坦な板の上に載せると、浮きの最大高さが5〜7mmであった。
<比較例2>
比較例1に従い、試料を合成した。ここでは、乾燥及びPET基材からの剥離までの工程は湿度を30%前後に管理したチャンバー内で行った。得られた前駆体フィルムは湿度が管理されたチャンバー内では大きな変形を生じなかった。しかし、前駆体フィルムを湿度50%の部屋に露出したところ、フィルムは吸湿によって数秒以内にフィルムに変形(うねり)が発生し、1分以内で大きなうねりとなった。具体的には、5cm×5cmの試料を平坦な板の上に載せると、浮きの最大高さが、8〜10mmであった。
<実施例2>
実施例1に従い、独立フィルムを作製した。ただし、ここでは、酸塩化ジルコニウム1.2gの代わりに、硫酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業株式会社製、ZrO2基準で18.27wt%)1.0gを使用した。実施例1と同様に作製した、乾燥後の前駆体フィルムを湿度50%の部屋に1〜2時間、静置したが、フィルムは変形を起こさなかった。
実施例1と同様に焼成した試料は透明なガラスセラミック独立フィルムであった。マイクロメーターで数箇所測定し、有効部分のおおよその厚みを測定したところ、フィルムの厚みは約50μmであり、殆ど変形していない平らなフィルムであった。具体的には、5cm×5cmの試料を平坦な板の上に載せても、浮きの最大高さは1mm以下であった。X線回折(XRD)分析によると、透明な焼成試料はt−ZrO2微結晶を含んでいることが確認できた。すなわち、得られた独立フィルムは、SiO2母体ガラス中に微結晶ZrO2が分散した構造を持つことが確認できた。TEM像の直接観察から微結晶t−ZrO2の粒子径は5〜10nmであった。このように得られたフィルムは手で押してたわむ程度の柔軟性を有していた。図2には950℃焼成後のXRDの結果を示す。
<実施例3>
実施例1に従い、独立フィルムを作製した。ただし、ここでは、シリカゾルとしてスノーテックスST−O2.1gの代わりに、スノーテックスST−OS(粒子径8〜11nm、固体含有率20.5wt%)2.1gを使用した。このコロイダルシリカゾルのpH値は実施例1と同様の測定によりpH2.8であった。実施例1と同様に作製した、乾燥後の前駆体フィルムを湿度50%の部屋に1〜2時間、静置したが、フィルムは変形を起こさなかった。
実施例1と同様に焼成した試料は透明なガラスセラミック独立フィルムであった。マイクロメーターで数箇所測定し、有効部分のおおよその厚みを測定したところ、フィルムの厚みは約50μmであり、殆ど変形していない平らなフィルムであった。具体的には、5cm×5cmの試料を平坦な板の上に載せても、浮きの最大高さは、1mm以下であった。X線回折(XRD)分析によると、透明な焼成試料はt−ZrO2微結晶を含んでいることが確認できた。すなわち、得られた独立フィルムは、SiO2母体ガラス中に微結晶ZrO2が分散した構造を持つことが確認できた。TEM像の直接観察から微結晶t−ZrO2の粒子径は5〜10nmであった。このように得られたフィルムは手で押してたわむ程度の柔軟性を有していた。
<実施例4〜8>
実施例1に従い、独立フィルムを作製した。ただし、ここでは、酸塩化ジルコニウム八水和物(和光純薬工業社)の量を0.8g(実施例4)、1.0g(実施例5)、1.15g(実施例6)、1.4g(実施例7)、1.7g(実施例8)とした。
実施例1と同様に焼成した試料は透明なガラスセラミック独立フィルムであった。マイクロメーターで数箇所測定し、有効部分のおおよその厚みを測定したところ、フィルムの厚みは約50μmであり、殆ど変形していない平らなフィルムであった。具体的には、5cm×5cmの試料を平坦な板の上に載せても、浮きの最大高さは、1mm以下であった。X線回折(XRD)分析によると、透明な焼成試料はt−ZrO2微結晶を含んでいることが確認できた。すなわち、得られた独立フィルムは、SiO2母体ガラス中に微結晶ZrO2が分散した構造を持つことが確認できた。TEM像の直接観察から微結晶t−ZrO2の粒子径は5〜10nmであった。このように得られたフィルムは手で押してたわむ程度の柔軟性を有していた。
<実施例9〜12>
実施例2に従い、独立フィルムを作製した。ただし、ここでは、硫酸ジルコニウム水溶液(第一稀元素化学工業株式会社製、ZrO2基準で18.27wt%)の量を0.5g(実施例9)、0.8g(実施例10)、1.2g(実施例11)、1.5g(実施例12)とした。
実施例1と同様に焼成した試料は透明なガラスセラミック独立フィルムであった。マイクロメーターで数箇所測定し、有効部分のおおよその厚みを測定したところ、フィルムの厚みは約50μmであり、殆ど変形していない平らなフィルムであった。具体的には、5cm×5cmの試料を平坦な板の上に載せても、浮きの最大高さは、1mm以下であった。X線回折(XRD)分析によると、透明な焼成試料はt−ZrO2微結晶を含んでいることが確認できた。すなわち、得られた独立フィルムは、SiO2母体ガラス中に微結晶ZrO2が分散した構造を持つことが確認できた。TEM像の直接観察から微結晶t−ZrO2の粒子径は5〜10nmであった。このように得られたフィルムは手で押してたわむ程度の柔軟性を有していた。
実施例及び比較例の結果を下記の表1にまとめた。
Figure 2010030806
実施例1における焼成後のフィルムのX線回折(XRD)のグラフを示す。 実施例2における焼成後のフィルムのX線回折(XRD)のグラフを示す。

Claims (5)

  1. シリカ超微粒子が分散媒に分散したシリカゾルと、酸塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム及びそれらの混合物からなる群より選ばれるジルコニウム含有化合物とを混合して、混合ゾルを製造する工程と、
    前記混合ゾルに有機バインダーを添加して、混合液を製造する工程と、
    前記混合液を基材上に塗布する工程と、
    塗布された基材上の混合液を乾燥し、該基材上に前駆体フィルムを形成させる工程と、
    前記前駆体フィルムを前記基材から剥離する工程と、
    剥離された前記前駆体フィルムを焼成する工程と
    を含む、ガラスセラミック独立フィルムの製造方法。
  2. 前記シリカゾルと前記ジルコニウム含有化合物とは、SiO/ZrOの質量比を基準として90/10〜40/60となるような量で混合される、請求項1記載のガラスセラミック独立フィルムの製造方法。
  3. 前記混合液を製造する工程において、前記有機バインダーはポリビニルアルコールであり、該ポリビニルアルコールと反応しうる架橋剤がさらに添加される、請求項1又は2記載のガラスセラミック独立フィルムの製造方法。
  4. 前記混合液を製造する工程において、水と混和性があり、沸点が100℃以上の有機溶剤をさらに添加する、請求項1〜3のいずれか1項記載のガラスセラミック独立フィルムの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の方法により製造されるガラスセラミック独立フィルム。
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