JP2010024925A - フレックス燃料機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】サブフィードバック制御を通じて設定されるサブフィードバック補正量の値が、アルコール含有燃料の使用に起因して実際の空燃比センサの個体差や劣化状態の実情とかけ離れた値になってしまうことを抑制することのできるフレックス燃料機関の制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置100は、空燃比センサ55の出力値を補正することによって算出されるフィードバック制御値を目標値に一致させるように燃料噴射量を増減させるメインフィードバック制御と、酸素センサ56の出力値に基づいてメインフィードバック制御のずれが小さくなるようにサブフィードバック補正量を増減するサブフィードバック制御とを実行することにより燃料噴射量を制御する。電子制御装置100は、燃料にアルコールが含まれていることが推定されるときに、フィードバック制御値を算出する過程で濃度特性補正量を加算してフィードバック制御値を増大補正する。
【選択図】図1

Description

この発明は、排気通路における排気浄化触媒よりも上流側の部位に設けられた空燃比センサの出力値に基づいて燃料噴射量を設定するメインフィードバック制御と、前記排気浄化触媒よりも下流側の部位に設けられた酸素センサの出力値に基づいてメインフィードバック制御のずれを補正するサブフィードバック制御とを含んでなる空燃比フィードバック制御を実行することにより燃料噴射量を制御する内燃機関の制御装置であって、特にガソリンとアルコールとを任意の割合で混合したアルコール含有燃料を使用可能なフレックス燃料機関の制御装置に関する。
内燃機関の制御装置として、特許文献1に記載されているように排気通路における排気浄化触媒よりも上流側の部位に排気に含まれる酸素濃度に対応した大きさの値を出力する空燃比センサを設け、同空燃比センサの出力値を理論空燃比に対応する目標値に一致させるように燃料噴射量をフィードバック制御するものが知られている。こうしたフィードバック制御を実行することにより、燃焼室に供給される混合気の空燃比が理論空燃比に近づくように燃料噴射量が制御されるようになる。
こうしたフィードバック制御を通じて混合気の空燃比が理論空燃比近傍の値になるように制御されているときには、排気浄化触媒に導入される排気の組成が同排気浄化触媒において最も効率的に浄化反応が進行する組成の領域、いわゆる触媒ウィンドウに収まるようになり、排気浄化触媒において排気が良好に清浄化されるようになる。
しかし、実際には空燃比センサの個体差や経時劣化等に起因して空燃比センサの出力値は実際の酸素濃度に対応する値に対してずれてしまうことがある。こうした場合には、空燃比センサの出力値を理論空燃比に対応する目標値に一致させるように燃料噴射量を制御しているにも拘わらず、排気浄化触媒に導入される排気の組成が触媒ウィンドウからずれてしまう。その結果、排気浄化触媒において排気の浄化反応が効率的に進行しなくなり、未浄化の排気が排気浄化触媒を通過してしまうおそれがある。
そこで、特許文献1に記載の内燃機関の制御装置にあっては、空燃比センサに加えて排気浄化触媒よりも下流側の部位に排気に含まれる酸素の濃度に対応して出力値が急変する酸素センサを設けるようにしている。そして、上記空燃比センサの出力値に基づいて算出されるフィードバック制御値を目標値に一致させるように燃料噴射量を制御するメインフィードバック制御を実行するとともに、フィードバック制御値を同酸素センサの出力値に基づいて補正してメインフィードバック制御のずれを抑制するサブフィードバック制御を実行するようにしている。
具体的には、酸素センサの出力値に基づいて排気浄化触媒を通過してきた排気の酸素濃度が高い旨の判定がなされている場合には、排気浄化触媒に導入される排気に酸素が過剰に残存しているいわゆるリーン状態であることが推定されるため、フィードバック制御値を増大させるようにサブフィードバック補正量を増大させて燃料噴射量を増大させる。一方で、酸素センサの出力値に基づいて排気浄化触媒を通過してきた排気の酸素濃度が低い旨の判定がなされている場合には、排気浄化触媒に導入される排気に燃料成分が過剰に残存しているいわゆるリッチ状態であることが推定されるため、フィードバック制御値を減少させるようにサブフィードバック補正量を減少させて燃料噴射量を減少させる。
こうしたサブフィードバック制御を実行することにより、空燃比センサの個体差や経時劣化等に起因するメインフィードバック制御のずれを補正することができるようになり、排気浄化触媒を通じて効果的に排気を浄化することができるようになる。
特開2005‐48711号公報
ところで、近年、ガソリンはもとよりガソリンとアルコールとを任意の割合で混合したアルコール含有燃料を使用可能なフレックス燃料機関が注目されている。そして、こうしたフレックス燃料機関の制御装置にあっても上記のようにメインフィードバック制御とサブフィードバック制御とからなる空燃比フィードバック制御を実行して燃料噴射量を制御することが考えられる。
しかしながら、アルコール含有燃料を使用しているときには、空燃比センサの出力値が実際の排気の酸素濃度に対応する値よりも小さくなってしまう傾向がある。これは、アルコール含有燃料使用時には排気に含まれる未燃のアルコールが分解され、排気に水素や一酸化炭素が多く含まれるようになり、排気に含まれる酸素が空燃比センサの検出素子に接触するのをこの水素が妨害しているためであると考えられている。
このように空燃比センサの出力値が実際の酸素濃度に対応する値よりも小さくなってしまうと、実際には空燃比が理論空燃比近傍に制御されているにも拘わらず、上記メインフィードバック制御を通じて燃料噴射量が誤って減量されるようになり、排気浄化触媒に導入される排気の組成がかえって触媒ウィンドウから外れてしまうおそれがある。その結果、窒素酸化物(NOx)を多く含んだ排気が排気浄化触媒を通過してしまうようになり、排気浄化触媒よりも下流側に配設されている酸素センサによって排気中に酸素が過剰に残存している旨のリーン判定がなされるようになる。尚、排気に含まれる水素及び一酸化炭素は排気浄化触媒における反応によって消費されるため、排気浄化触媒よりも下流側の部位に配設されている酸素センサにあっては、上記空燃比センサのようなアルコール含有燃料の使用に起因する出力値のずれは発生しにくい。こうして酸素センサによってリーン判定がなされると、サブフィードバック制御を通じて上述したようにサブフィードバック補正量が増大され、メインフィードバック制御によって燃料噴射量が次第に増大されるようになる。
このように、アルコール含有燃料を使用した場合であっても、サブフィードバック制御を通じて補正量が増大されるため、空燃比フィードバック制御を繰り返すにつれて燃料噴射量は徐々に増大され、実際の空燃比が理論空燃比近傍に落ち着くようになる。しかしながら、この場合、サブフィードバック制御を通じて設定されるサブフィードバック補正量の値は非常に大きな値になってしまい、空燃比センサの個体差や劣化状態等の実情とはかけ離れたものになってしまう。
本願発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的はサブフィードバック制御を通じて設定されるサブフィードバック補正量の値が、アルコール含有燃料の使用に起因して実際の空燃比センサの個体差や劣化状態の実情とかけ離れた値になってしまうことを抑制することのできるフレックス燃料機関の制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、排気通路における排気浄化触媒よりも上流側の部位に設けられ排気の酸素濃度に対応した大きさの値を出力する空燃比センサと、前記排気通路における前記排気浄化触媒よりも下流側の部位に設けられ排気の酸素濃度に応じてその出力値が変化する酸素濃度センサとを備え、前記空燃比センサの出力値を補正することによって算出されるフィードバック制御値を目標値に一致させるように燃料噴射量を増減させるメインフィードバック制御と、前記酸素濃度センサの出力値に基づいて前記メインフィードバック制御のずれを判定しこのずれが小さくなるように前記フィードバック制御値の算出に用いられるサブフィードバック補正量を増減するサブフィードバック制御とを含んでなる空燃比フィードバック制御を実行することにより燃料噴射量を制御するフレックス燃料機関の制御装置であって、燃料に含まれるアルコール濃度を推定するアルコール濃度推定手段を備え、同アルコール濃度推定手段によるアルコール濃度の推定結果に基づいて燃料にアルコールが含まれていることが推定されるときに、前記フィードバック制御値を算出する過程で濃度特性補正量を加算して前記フィードバック制御値を増大補正することをその要旨とする。
アルコール含有燃料を使用しているときには、排気に含まれるアルコールが分解されるため、排気に水素が多く含まれるようになる。そのため、アルコール含有燃料を使用している場合には、排気に含まれる水素によって空燃比センサの検出素子への酸素の接触が妨げられるようになり、空燃比センサの出力値が実際の排気の酸素濃度に対応する値よりも小さくなってしまう。これに対して上記請求項1に記載の構成によれば、燃料のアルコール濃度を推定し、これに基づいて燃料にアルコールが含まれていることが推定されるときには、空燃比センサの出力値に基づいて算出されるフィードバック制御値が大きくなるように濃度特性補正量を加算して同フィードバック制御値を増大補正するようにしている。そのため、アルコール含有燃料の使用に起因して空燃比センサの出力値が実際の排気の酸素濃度に対応する値よりも小さくなってしまう場合であっても、この増大補正によってこの出力値の低下分を補うことができる。これにより、メインフィードバック制御を通じて燃料噴射量が誤って減量されることを抑制することができ、排気の組成が触媒ウィンドウから外れてしまうことを抑制することができる。またその結果、サブフィードバック制御を通じて設定されるサブフィードバック補正量の値が、アルコール含有燃料の使用に起因して実際の空燃比センサの個体差や劣化状態の実情とかけ離れた値になってしまうことを抑制することができるようになる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフレックス燃料機関の制御装置において、前記アルコール濃度推定手段によって推定されるアルコール濃度が所定濃度以上であることを条件に前記増大補正を行うことをその要旨とする。
燃料のアルコール濃度が高いときには排気に含まれるアルコールの量も多くなるため、このアルコールが分解して生じる水素の量も多くなる。すなわち、アルコール濃度が高いときほど排気に含まれる水素の量が多くなり、この水素の影響に起因して空燃比センサの出力値が実際の酸素濃度に対応する値よりも小さくなりやすい。そのため、アルコール濃度が所定濃度以上であるか否かを監視する構成を採用すれば、アルコール濃度が所定濃度以上である旨の判定がなされた場合には、これに基づいて燃料のアルコール濃度が高く、空燃比センサの出力値が実際の酸素濃度に対応する値よりも小さくなっている可能性が高いことを推定することができるようになる。すなわち、アルコール濃度が所定濃度以上であることを条件にフィードバック制御値の増大補正を実行する上記請求項2に記載の構成によれば、推定される燃料のアルコール濃度に基づいて実際の酸素濃度に対して空燃比センサの出力値が低下していることを推定し、この推定に基づいて的確にフィードバック制御値の増大補正を実行することができるようになる。
請求項3に記載の発明は、前記フィードバック制御値の算出に用いられる補正量として、吸入空気量が多いときほど前記フィードバック制御値が大きくなるように同フィードバック制御値を算出する過程で前記空燃比センサの出力値に加算される触媒特性補正量を含み、予め吸入空気量に対応する値が記憶された演算マップを参照して吸入空気量に基づいて前記触媒特性補正量を設定するフレックス燃料機関の制御装置であって、前記アルコール濃度推定手段によって推定されるアルコール濃度が所定濃度以上のときには、前記吸入空気量に対応する値が前記推定されるアルコール濃度が所定濃度未満のときよりも前記濃度特性補正量の分だけ大きくなるように設定された高濃度時用演算マップを参照して前記触媒特性補正量を算出し、前記フィードバック制御値を増大補正する請求項2に記載のフレックス燃料機関の制御装置である。
吸入空気量が変化すると、それに伴って排気浄化触媒において最も効率的に排気浄化反応が進行する排気の組成の領域である触媒ウィンドウが変化する。具体的には、吸入空気量が多いときほど触媒ウィンドウは酸素濃度の低いリッチ側の組成を示す領域に変化する。そのため、こうした吸入空気量の変化に伴う触媒ウィンドウの変化に対応する上では、吸入空気量が多いときほど大きな値を触媒特性補正量として設定し、この触媒特性補正量を空燃比センサの出力値に加算することによりフィードバック制御値を補正する構成を採用することが望ましい。そして、こうした吸入空気量に対応する触媒特性補正量を算出する方法としては、上記請求項3に記載されるように予め吸入空気量に対応する触媒特性補正量の値を記憶させた演算マップを作成し、これを参照することによってそのときの吸入空気量に対応する触媒特性補正量を算出する構成を採用することができる。
そして、アルコール濃度が所定濃度以上のときにフィードバック制御値を増大補正する具体的な方法としては、上記請求項3に記載の発明によるように、触媒特性補正量を算出するための演算マップとして、通常の演算マップに加えて、吸入空気量に対応する触媒特性補正量の値が濃度特性補正量の分だけ大きくなるように設定された高濃度時用演算マップを更に用意し、推定されるアルコール濃度の大きさに応じてこれらの演算マップを切り替えることにより、フィードバック制御値を算出する過程でこれに加算する補正量の値を増減する構成を採用することができる。すなわち、上記請求項3に記載の発明によるように、アルコール濃度が所定濃度以上のときには、高濃度時用演算マップを参照して触媒特性補正量を算出することにより、フィードバック制御値の値を濃度特性補正量の分だけ増大補正することができるようになる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフレックス燃料機関の制御装置において、前記濃度特性補正量は、前記アルコール濃度推定手段によって推定されるアルコール濃度に基づいて同アルコール濃度が高いときほど大きな値に設定されることをその要旨とする。
上述したように燃料のアルコール濃度が高いときには排気に含まれるアルコールの量も多くなるため、このアルコールが分解して生じる水素の量も多くなる。これにより、燃料のアルコール濃度が高くなるほど、空燃比センサの出力値が実際の酸素濃度に対応する値よりも小さくなる。そのため、上記請求項4に記載の発明によるように、アルコール濃度が高いときほど濃度特性補正量を大きな値に設定し、フィードバック制御値をより大きくすることが望ましい。こうした構成を採用すれば、アルコールの分解による水素の発生に起因する空燃比センサの出力値の低下分を濃度特性補正量の加算によって的確に補うことができるようになり、空燃比フィードバック制御のずれを好適に抑制することができるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフレックス燃料機関の制御装置において、前記サブフィードバック補正量の絶対値が異常判定値以上であることに基づいて前記空燃比センサに異常が生じている旨の異常判定を行うことをその要旨とする。
メインフィードバック制御のずれを補正するサブフィードバック制御にあっては、メインフィードバック制御にずれが生じている旨の判定がなされる度にそのずれを小さくするようにサブフィードバック補正量が所定量ずつ増減される。そのため、サブフィードバック制御を繰り返し、サブフィードバック補正量を増大又は減少させ続けているにも拘わらず、メインフィードバック制御にずれが生じ続ける場合には空燃比センサに何らかの異常が生じており、酸素濃度を適切に検出することができなくなっている可能性が高いことが推定される。そのため、上記請求項5に記載の発明のようにサブフィードバック補正量の絶対値が所定の異常判定値以上になったか否かを監視し、この絶対値が異常判定値以上になった場合にはこれに基づいて空燃比センサに異常が生じている旨の異常判定を行う構成を採用することもできる。こうした構成を採用すれば、サブフィードバック補正量の絶対値が異常判定値以上であることに基づいて空燃比センサに異常が生じている旨の異常判定を行うことができるようになり、これに基づいて空燃比センサの交換、修理等を促すことができるようになる。
また、このようにサブフィードバック補正量の絶対値に基づいて空燃比センサの異常判定を行う場合にあっては、従来の空燃比フィードバック制御のようにアルコール含有燃料の使用時に空燃比センサの誤った出力値に基づいてサブフィードバック補正量が増大されてしまうと、サブフィードバック補正量の値が実際の空燃比センサの状態とかけ離れた値になってしまい、この値に基づいて空燃比センサに異常が生じている旨の誤判定がなされてしまう。そのため、特にこのような異常判定を実行する構成を採用しているフレックス燃料機関の制御装置にあっては、請求項1〜4に記載の構成を採用し、サブフィードバック補正量の値がアルコール含有燃料の使用に起因して実際の空燃比センサの個体差や劣化状態の実情とかけ離れた値になってしまうことを抑制することが望ましい。
請求項6に記載の発明は、排気通路における排気浄化触媒よりも上流側の部位に設けられ排気の酸素濃度に対応した大きさの値を出力する空燃比センサと、前記排気通路における前記排気浄化触媒よりも下流側の部位に設けられ排気の酸素濃度に応じてその出力値が変化する酸素濃度センサとを備え、前記空燃比センサの出力値を補正することによって算出されるフィードバック制御値を目標値に一致させるように燃料噴射量を増減させるメインフィードバック制御と、前記酸素濃度センサの出力値に基づいて前記メインフィードバック制御のずれを判定しこのずれが小さくなるように前記フィードバック制御値の算出に用いられるサブフィードバック補正量を増減するサブフィードバック制御とを含んでなる空燃比フィードバック制御を実行することにより燃料噴射量を制御するフレックス燃料機関の制御装置であって、燃料に含まれるアルコール濃度を推定するアルコール濃度推定手段を備え、同アルコール濃度推定手段によるアルコール濃度の推定結果に基づいて燃料にアルコールが含まれていることが推定されるときに、前記フィードバック制御値を算出する過程で前記空燃比センサの出力値に濃度特性補正係数を乗じて同フィードバック制御値を増大補正することをその要旨とする。
フィードバック制御値を増大補正する具体的な態様としては、上記請求項1に記載される発明のように濃度特性補正量を加算することによりフィードバック制御値を増大させる方法の他、上記請求項6に記載の発明のように「1.0」よりも大きな濃度特性補正係数を設定し、空燃比センサの出力値にこの濃度特性補正係数を乗じることにより、フィードバック制御値を増大補正する構成を採用することもできる。
こうした構成を採用した場合であっても、上記請求項1と同様にフィードバック制御値の増大補正によって空燃比センサの出力値の低下分を補うことができるようになり、メインフィードバック制御を通じて燃料噴射量が誤って減量されることを抑制することができるようになる。そして、排気の組成が触媒ウィンドウから外れてしまうことを抑制するとともに、サブフィードバック制御を通じて設定されるサブフィードバック補正量の値がアルコール含有燃料の使用に起因して実際の空燃比センサの個体差や劣化状態の実情とかけ離れた値になってしまうことを抑制することができるようになる。
以下、この発明にかかるフレックス燃料機関の制御装置を、動力源としてフレックス燃料機関を搭載したフレックス燃料車を統括的に制御する電子制御装置に具体化した一実施形態について、図1〜3を参照して説明する。
図1は本実施形態にかかる電子制御装置100と、その制御対象である内燃機関10との関係を示す模式図である。尚、内燃機関10は、ガソリンはもとより、ガソリンとエタノールとを任意の割合で混合したエタノール含有燃料を使用可能なフレックス燃料機関である。
図1に示されるように内燃機関10のシリンダ11には、ピストン12が摺動可能に収容されている。これにより、シリンダ11の内周面とピストン12の頂面及びシリンダヘッド13によって燃焼室14が区画形成されている。尚、内燃機関10は複数のシリンダ11を有する多気筒機関であるが、図1にあっては複数のシリンダ11のうちの1つのみを図示している。
シリンダヘッド13における各燃焼室14の上部には、ピストン12と対向するように点火プラグ18がそれぞれ設けられている。そして、各燃焼室14には吸気通路20及び排気通路30がそれぞれ接続されており、吸気通路20には燃焼室14に向かって燃料を噴射する燃料噴射弁17が設けられている。
図1に示されるようにシリンダヘッド13には吸気通路20と燃焼室14とを連通・遮断する吸気バルブ15と、排気通路30と燃焼室14とを連通・遮断する排気バルブ16とが設けられている。これら各バルブ15,16は、図示しないクランクシャフトと連結された吸気カムシャフト及び排気カムシャフトによってそれぞれ開閉駆動される。
また、図1の左側に示されるように吸気通路20には、モータ22によってその開度が制御され、吸入空気量GAを調量するスロットルバルブ21が設けられている。
一方、図1の右側に示されるように排気通路30には、排気に含まれる炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物(以下、それぞれHC、CO、NOxと記載する)を清浄化する三元触媒が担持された排気浄化触媒40が設けられている。この三元触媒にあっては、理論空燃比近傍の空燃比に調整された混合気が燃焼室14内で燃焼したときにHC並びにCOと、NOxとの間の酸化還元反応が最も効率的に行われ、HC、CO、NOxの3成分に対する浄化効率がともに高くなる。すなわち、三元触媒によって効率的に排気を浄化するためには、混合気の空燃比を理論空燃比近傍に調整する必要がある。
電子制御装置100には、機関回転速度NEを検出する回転速度センサ50、スロットルバルブ21の開度であるスロットル開度TAを検出するスロットル開度センサ51、アクセル操作量ACCPを検出するアクセルポジションセンサ52、車速SPDを検出する車速センサ53、吸気通路20を通じて燃焼室14に導入される吸入空気量GAを検出するエアフロメータ54等のセンサが接続されている。
また、図1の右側に示されるように排気通路30における排気浄化触媒40よりも排気上流側の部位には排気浄化触媒40に導入される排気の酸素濃度に比例した電圧を出力する空燃比センサ55が設けられている。そして、排気浄化触媒40よりも排気下流側の部位には排気浄化触媒40を通過した排気の酸素濃度に対応して、理論空燃比に対応する排気の酸素濃度を境に出力値が急変する酸素センサ56が設けられている。これら空燃比センサ55及び酸素センサ56も電子制御装置100に接続されており、排気の酸素濃度に対応する出力値がこれらのセンサ55,56から電子制御装置100に取り込まれる。
電子制御装置100は、これらの各種センサ50〜56等からの出力信号を取り込んで各種演算を行い、内燃機関10を統括的に制御する。具体的には、機関回転速度NE、吸入空気量GA、車速SPD、アクセル操作量ACCP等に基づいてガソリンを噴射する場合を基準とする基本噴射量を算出する。そして、この基本噴射量に現在使用している燃料のアルコール濃度に対応する濃度係数Kを乗じた値を基本噴射量として燃料噴射を実行する。尚、ガソリンの理論空燃比に対してアルコールの理論空燃比に対応する値は小さいため、燃料にアルコールが含まれている場合には、ガソリンよりも多くの燃料を噴射しなければならない。そのため、上記の濃度係数Kは、燃料のアルコール濃度が「0」、すなわち燃料がガソリンのときには「1.0」に設定される一方、燃料のアルコール濃度が高いときほど大きな値に設定される。尚、燃料のアルコール濃度は後述するアルコール濃度学習処理を通じて推定される。
また電子制御装置100は、空燃比センサ55及び酸素センサ56の出力値に基づいて燃料噴射量をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御を行う。具体的にこの空燃比フィードバック制御にあっては、まず下記の式(1)に示されるように空燃比センサ55の出力値AFにサブフィードバック補正量SF及び触媒特性補正量PR、ストイキ補正量STを加算することによりフィードバック制御値FBを算出する。
フィードバック制御値FB=出力値AF+サブフィードバック補正量SF
+触媒特性補正量PR+ストイキ補正量ST 式(1)
尚、サブフィードバック補正量SFは、酸素センサ56の出力値の変化に基づいて増減され、フィードバック制御のずれを補正するための補正量である。具体的には、このサブフィードバック補正量SFは酸素センサ56の出力値が排気浄化触媒40を通過してきた排気の酸素濃度が高いいわゆるリーン状態である旨を示す値であるときにはその度に所定量ずつ増大され、酸素センサ56の出力値が酸素濃度の低いいわゆるリッチ状態である旨を示す値であるときにはその度に所定量ずつ減少される。
このように排気浄化触媒40の下流側に設けられた酸素センサ56の出力値に基づいてサブフィードバック補正量SFを増減することにより、空燃比センサ55の個体差や劣化等に起因して空燃比センサ55の出力値AFが実際の酸素濃度に対応する値からずれた場合であっても、空燃比フィードバック制御のずれを抑制することができるようになる。
触媒特性補正量PRは、吸入空気量GAの変化に伴って排気浄化触媒40の触媒ウィンドウが変化することに対応するための補正量である。吸入空気量GAが変化すると、それに伴って排気浄化触媒40において最も効率的に排気浄化反応が進行する排気の組成の領域である触媒ウィンドウが変化する。例えば、吸入空気量GAが多いときほど触媒ウィンドウは酸素濃度の低いリッチ側の組成を示す領域に変化する。そのため、こうした吸入空気量GAの変化に伴う触媒ウィンドウの変化に対応するため、吸入空気量GAが多いときほど大きくなる補正量として、触媒特性補正量PRを設定し、この触媒特性補正量PRを空燃比センサ55の出力値AFに加算することによりフィードバック制御値FBを吸入空気量GAに応じて補正する。
また、ストイキ補正量STは、空燃比センサ55を電子制御装置100に接続するワイヤハーネスによる電気的損失のばらつきや、空燃比センサ55に印可しているバイアス電圧のばらつきを補正するための補正量であり、内燃機関10及び電子制御装置100の組み立て後の調整において設定される補正量である。
上記の式(1)のようにフィードバック制御値FBを算出すると、次に下記の式(2)に示されるように算出されたフィードバック制御値FBと理論空燃比に対応する値として設定された目標値FBtrgとの偏差ΔFBを算出する。
偏差ΔFB=目標値FBtrg−フィードバック制御値FB 式(2)
そして、下記の式(3)に示されるように偏差ΔFBに基づいて燃料噴射量補正量Qを算出する。
燃料噴射量補正量Q=濃度係数K×偏差ΔFB 式(3)
こうして算出された燃料噴射量補正量Qに基づいて燃料噴射量を補正することにより、混合気の空燃比が理論空燃比近傍に制御されるようになる。
このように空燃比センサ55の出力値AFに基づいて算出されるフィードバック制御値FBに基づいて燃料噴射量を補正するメインフィードバック制御と、酸素センサ56の出力値に基づいてサブフィードバック補正量SFを増減するサブフィードバック制御とを含む空燃比フィードバック制御を実行することにより、燃料噴射量が制御される。
また、電子制御装置100は、給油直後等のように燃料のアルコール濃度が大きく変化することが推定される時期に上述した濃度学習処理を実行する。具体的には、上記空燃比フィードバック制御と同様に空燃比センサ55の出力値AFに基づいてフィードバック制御値FBを算出する。そして、フィードバック制御値FBと目標値FBtrgとのずれの大きさに基づいて、フィードバック制御値FBが目標値FBtrgよりも大きいときほどアルコール濃度の推定値であるアルコール濃度学習値を高く設定する。このように給油後に行われる濃度学習処理を通じてアルコール濃度の推定を繰り返し、アルコール濃度学習値を取得する。そして、こうして得られたアルコール濃度学習値を利用して現在使用している燃料のアルコール濃度を推定し、上記空燃比フィードバック制御を実行する。
ところで、アルコール含有燃料を使用しているときには、空燃比センサ55の出力値AFが実際の排気の酸素濃度に対応する値よりも小さくなってしまう傾向がある。これは、アルコール含有燃料使用時には排気に含まれる未燃のアルコールが分解され、排気に水素や一酸化炭素が多く含まれるようになり、空燃比センサ55の検出素子への酸素の接触がこの水素によって妨害されてしまうためであると考えられている。
このように空燃比センサ55の出力値AFが実際の酸素濃度に対応する値よりも小さくなってしまうと、実際には空燃比が理論空燃比近傍に制御されているにも拘わらず、フィードバック制御値FBが目標値FBtrgよりも小さくなってしまう。その結果、メインフィードバック制御を通じて燃料噴射量が誤って減量されるようになり、排気浄化触媒40に導入される排気の組成がかえって触媒ウィンドウから外れてしまう。そして、NOxを多く含んだ排気が排気浄化触媒40を通過してしまうようになり、排気浄化触媒40よりも下流側に配設されている酸素センサ56によって排気中に酸素が過剰に残存している旨のリーン判定がなされるようになる。尚、排気に含まれる水素及び一酸化炭素は排気浄化触媒40における反応によって消費されるため、排気浄化触媒40よりも下流側の部位に配設されている酸素センサ56にあっては、空燃比センサ55のようなアルコール含有燃料の使用に起因する出力値のずれは発生しにくい。
こうして酸素センサ56によってリーン判定がなされると、サブフィードバック制御を通じて上述したようにサブフィードバック補正量SFが増大され、メインフィードバック制御を繰り返すにつれて燃料噴射量が次第に増大されるようになる。このように、サブフィードバック制御を通じてサブフィードバック補正量SFが増大されるため、アルコール含有燃料を使用した場合であっても空燃比フィードバック制御を繰り返すにつれて燃料噴射量は徐々に増大され、混合気の空燃比は理論空燃比に対応する値の近傍に落ち着くようになる。
しかしながら、この場合、サブフィードバック制御を通じて設定されるサブフィードバック補正量SFの値は非常に大きな値になってしまい、空燃比センサ55の個体差や劣化状態等の実情とはかけ離れたものになってしまう。
そこで、本実施形態の電子制御装置100にあっては、燃料のアルコール濃度に基づいてフィードバック制御値FBの値を増大補正するようにしている。
以下、本実施形態の電子制御装置100によって実行される空燃比フィードバック制御について図2を参照して説明する。尚、図2は本実施形態にかかる空燃比フィードバック制御の一連の処理の流れを示すフローチャートである。この処理は機関運転中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。
図2に示されるように、この処理が開始されると電子制御装置100はまずステップS100において、上述したように濃度学習処理を通じて学習されるアルコール濃度学習値を読み込む。そして、ステップS110において、アルコール学習値に基づき、推定される燃料のアルコール濃度ALCが所定濃度ALCst未満であるか否かを判定する。
ステップS110において、推定されるアルコール濃度ALCが所定濃度ALCst未満である旨の判定がなされた場合(ステップS110:YES)には、燃料に含まれるアルコール濃度ALCが低く、空燃比センサ55の出力値AFにずれが生じにくい状態であることを推定し、これに基づいてステップS120へと進む。そして、ステップS120において、低アルコール濃度時用の演算マップを参照して吸入空気量GAに対応した触媒特性補正量PRを算出する。尚、低アルコール濃度時用の演算マップにあっては、図3に実線で示されるように吸入空気量GAが多いときほど触媒特性補正量PRが大きくなるように吸入空気量GAの値に対応する触媒特性補正量PRの値が予め記憶されている。
一方、ステップS110において、推定されたアルコール濃度ALCが所定濃度ALCst以上である旨の判定がなされた場合(ステップS110:NO)には、燃料に含まれるアルコール濃度ALCが高く、空燃比センサ55の出力値AFにずれが生じやすい状態であることを推定し、これに基づいてステップS130へと進む。そして、ステップS130において、図3に一点鎖線で示されるように低アルコール濃度時用の演算マップよりも吸入空気量GAの値に対応する触媒特性補正量PRの値が大きく設定された高アルコール濃度時用の演算マップを参照して触媒特性補正量PRを算出する。尚、高アルコール濃度時用の演算マップにあっては、図3に一点鎖線で示されるように、実線で示される低アルコール濃度時用演算マップよりも濃度特性補正量CRの分だけ触媒特性補正量PRが大きく設定されている。濃度特性補正量CRは、排気に含まれるアルコールが分解されることによって発生する水素が空燃比センサ55による酸素濃度の検出を妨げることに起因して酸素濃度が低く見積もられる分を補償するために設定される補正量であり、予め行う実験等の結果に基づいてその大きさが設定されている。
こうしてステップS120、又はステップS130を通じて各演算マップを参照して触媒特性補正量PRを算出すると、ステップS140においてフィードバック制御値FBを算出する。
具体的には、上述したように上記式(1)に基づいて空燃比センサ55の出力値AFにサブフィードバック補正量SF、触媒特性補正量PR、ストイキ補正量STを加算してフィードバック制御値FBを算出する。
こうしてステップS140においてフィードバック制御値FBを算出すると、ステップS150へと進み、上述したように上記式(2)に基づいてフィードバック制御値FBと理論空燃比に対応して設定される目標値FBtrgとの偏差ΔFBを算出する。そして、上記式(3)に示されるように偏差ΔFBに基づいて燃料噴射量補正量Qを算出して燃料噴射量を補正するメインフィードバック制御を実行する。
このように本実施形態にかかる空燃比フィードバック制御にあっては、燃料のアルコール濃度ALCに応じて演算マップを切り替え、アルコール濃度ALCが所定濃度ALCst以上である旨の判定がなされた場合には濃度特性補正量CRの分だけ補正量の値が増大された高アルコール濃度時用演算マップを参照して触媒特性補正量PRを算出する。これにより、燃料にアルコールが多く含まれているときには、そうでないときと比較してフィードバック制御値FBが増大補正されるようになる。
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)アルコール濃度学習処理を通じて燃料のアルコール濃度ALCを推定し、これに基づいて燃料にアルコールが多く含まれていることが推定されるときには、空燃比センサ55の出力値に基づいて算出されるフィードバック制御値FBが大きくなるように濃度特性補正量CRを加算して同フィードバック制御値FBを増大補正するようにしている。そのため、アルコール含有燃料の使用に起因して空燃比センサ55の出力値AFが実際の排気の酸素濃度に対応する値よりも小さくなってしまう場合であっても、この増大補正によってこの出力値AFの低下分を補うことができる。これにより、メインフィードバック制御を通じて燃料噴射量が誤って減量されることを抑制することができ、排気の組成が触媒ウィンドウから外れてしまうことを抑制することができる。またその結果、サブフィードバック制御を通じて設定されるサブフィードバック補正量SFの値が、アルコール含有燃料の使用に起因して実際の空燃比センサ55の個体差や劣化状態の実情とかけ離れた値になってしまうことを抑制することができるようになる。
(2)燃料のアルコール濃度ALCが高いときには排気に含まれるアルコールの量も多くなるため、このアルコールが分解して生じる水素の量も多くなる。すなわち、アルコール濃度ALCが高いときほど排気に含まれる水素の量が多くなり、この水素の影響に起因して空燃比センサ55の出力値AFが実際の酸素濃度に対応する値よりも小さくなりやすい。そのため、上記実施形態のようにアルコール濃度ALCが所定濃度ALCst以上であるか否かを監視する構成を採用すれば、アルコール濃度ALCが所定濃度ALCst以上である旨の判定がなされた場合には、これに基づいて燃料のアルコール濃度ALCが高く、空燃比センサ55の出力値AFが実際の酸素濃度に対応する値よりも小さくなっている可能性が高いことを推定することができるようになる。すなわち、アルコール濃度ALCが所定濃度ALCst以上であることを条件にフィードバック制御値FBの増大補正を実行する上記実施形態の構成によれば、推定される燃料のアルコール濃度ALCに基づいて実際の酸素濃度に対して空燃比センサ55の出力値AFが低下していることを推定し、この推定に基づいて的確にフィードバック制御値FBの増大補正を実行することができるようになる。
尚、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・サブフィードバック補正量SFの絶対値が所定の異常判定値以上であることに基づいて空燃比センサ55に異常が生じている旨の異常判定を行う構成を採用することもできる。
メインフィードバック制御のずれを補正するサブフィードバック制御にあっては、メインフィードバック制御にずれが生じている旨の判定がなされる度にそのずれを小さくするようにサブフィードバック補正量SFが所定量ずつ増減される。そのため、サブフィードバック制御を繰り返し、サブフィードバック補正量SFを増大又は減少させ続けているにも拘わらず、メインフィードバック制御にずれが生じ続ける場合には空燃比センサ55に何らかの異常が生じており、酸素濃度を適切に検出することができなくなっている可能性が高いことが推定される。そのため、上記のようにサブフィードバック補正量SFの絶対値が所定の異常判定値以上になったか否かを監視し、この絶対値が異常判定値以上になった場合にはこれに基づいて空燃比センサ55に異常が生じている旨の異常判定を行う構成を採用することもできる。こうした構成を採用すれば、サブフィードバック補正量SFの絶対値が異常判定値以上であることに基づいて空燃比センサ55に異常が生じている旨の異常判定を行うことができるようになり、これに基づいて空燃比センサ55の交換、修理等を促すことができるようになる。
また、このようにサブフィードバック補正量SFの値に基づいて空燃比センサ55の異常判定を行う場合にあっては、従来の空燃比フィードバック制御の場合には、アルコール含有燃料の使用時に空燃比センサ55の誤った出力値AFに基づいてサブフィードバック補正量SFが増大されてしまう。その結果、サブフィードバック補正量SFの値が実際の空燃比センサ55の状態とかけ離れた値になってしまい、この値に基づいて空燃比センサ55に異常が生じている旨の誤判定がなされてしまう。そのため、特にこのような異常判定を実行する構成を採用している場合にあっては、上記実施形態のようにアルコール濃度ALCに基づいてフィードバック制御値FBを増大補正し、サブフィードバック補正量SFの値がアルコール含有燃料の使用に起因して実際の空燃比センサ55の個体差や劣化状態の実情とかけ離れた値になってしまうことを抑制することが望ましい。
・上記実施形態では、排気浄化触媒40の下流側に排気の酸素濃度に対応してその出力値が変化する酸素濃度センサとして、所定の酸素濃度を境にその出力値の大きさが急変する酸素センサ56を設ける構成を示したが、排気浄化触媒40の下流側に設けられる酸素濃度センサとして酸素濃度に対応した大きさの値を出力する空燃比センサを設けてもよい。
・上記実施形態では、濃度学習処理を通じて取得されたアルコール濃度学習値に基づいてアルコール濃度ALCを推定する構成を示したが、これは燃料のアルコール濃度を推定するアルコール濃度推定手段の一例であり、アルコール濃度推定手段は適宜変更することができる。例えば、図1に二点鎖線で示されるように燃料に含まれるアルコールの濃度を直接検出するアルコール濃度センサ57を燃料タンクや燃料配管に設け、このアルコール濃度センサ57によって検出されるアルコール濃度検出値に基づいてアルコール濃度ALCを推定する構成を採用することもできる。
・上記実施形態では、触媒特性補正量PRの演算用マップとして、高アルコール濃度時用と低アルコール濃度時用の2つの演算マップを用意し、アルコール濃度ALCに基づいてこれらの演算マップを切り替えることによりアルコール濃度ALCが高いときにフィードバック制御値FBを増大補正する構成を示した。これに対して、触媒特性補正量PRの演算用マップとして、アルコール濃度ALCに応じて濃度特性補正量CRによる加算分の大きさの異なる複数の演算マップを用意し、アルコール濃度ALCが高いときほど濃度特性補正量CRの加算分が大きくなるようにアルコール濃度に応じてこれら複数の演算マップを切り替える構成を採用することもできる。
・また、上記実施形態ではアルコール濃度ALCが所定濃度ALCst以上であることを条件に濃度特性補正量CRの分だけ増大された触媒特性補正量PRを算出し、フィードバック制御値FBを増大補正する構成を示した。これに対して、燃料にアルコールが含まれているときには排気に含まれるアルコールが分解して発生する水素によって空燃比センサ55の出力値AFが実際の排気の酸素濃度に対応する値よりも小さくなることが懸念される。そのため、推定されるアルコール濃度ALCに基づいて燃料にアルコールが含まれていることが推定されるときには常にフィードバック制御値FBを増大補正する構成を採用することもできる。
・上記実施形態では、触媒特性補正量PRを算出するための演算マップに濃度特性補正量CRによる増大分を反映させ、触媒特性補正量PRの算出過程において濃度特性補正量CRを加算する構成を示したが、これは濃度特性補正量CRを加算することによりフィードバック制御値FBを増大補正する態様の一例である。すなわち濃度特性補正量CRの加算によるフィードバック制御値FBの補正態様は適宜変更することができる。例えば、触媒特性補正量PRの算出処理とは別に濃度特性補正量CRを算出する処理を実行する構成を採用し、アルコール濃度ALCが高いときに触媒特性補正量PRとは別に算出された濃度特性補正量CRを加算することによりフィードバック制御値FBを増大補正する構成を採用することもできる。
例えば、図2を参照して説明した上記実施形態の空燃比フィードバック制御に替えて、図4に示されるようにアルコール濃度ALCに基づいて濃度特性補正量CRを算出し、これを加算して算出されたフィードバック制御値FBに基づいてメインフィードバック制御を実行する空燃比フィードバック制御を採用することができる。この空燃比フィードバック制御にあっては、図4に示されるように、まずステップS200においてアルコール濃度学習値やアルコール濃度検出値に基づいて推定されるアルコール濃度ALCを読み込む。そして、ステップS210においてアルコール濃度ALCに基づいて濃度特性補正量CRを算出する。燃料のアルコール濃度ALCが高いときには排気に含まれるアルコールの量も多くなるため、このアルコールが分解して生じる水素の量も多くなる。これにより、燃料のアルコール濃度ALCが高くなるほど、空燃比センサ55の出力値AFが実際の酸素濃度に対応する値よりも小さくなることが考えられる。そこで、ここでは図5に示されるようにアルコール濃度ALCに比例して大きくなるように濃度特性補正量CRを設定し、推定されるアルコール濃度ALCに基づいて同アルコール濃度ALCが高いときほどフィードバック制御値FBが大きくなるように濃度特性補正量CRを設定する。
そして、ステップS220において、空燃比センサ55の出力値AFに対してサブフィードバック補正量SF、触媒特性補正量PR、ストイキ補正量STに加え、濃度特性補正量CRを加算してフィードバック制御値FBを算出する。
こうしてステップS220においてフィードバック制御値FBを算出すると、ステップS230へと進み、上述したステップS150と同様に上記式(2)に基づいてフィードバック制御値FBと理論空燃比に対応して設定される目標値FBtrgとの偏差ΔFBを算出する。そして、上記式(3)に示されるように偏差ΔFBに基づいて燃料噴射量補正量Qを算出して燃料噴射量を補正するメインフィードバック制御を実行する。
こうした構成を採用すれば、アルコールの分解による水素の発生に起因する空燃比センサ55の出力値AFの低下分を濃度特性補正量CRの加算によって的確に補うことができるようになり、空燃比フィードバック制御のずれを好適に抑制することができるようになる。
・尚、推定されるアルコール濃度ALCに基づいて燃料にアルコールが含まれていることが推定されるときにフィードバック制御値FBを増大補正する構成であれば、濃度特性補正量CRの設定態様は適宜変更することができる。例えば、図6に示されるように濃度特性補正量CRをアルコール濃度ALCが高いときほど大きくなるように階段状に設定することもできる。
・また、図7に示されるようにアルコール濃度ALCが所定の濃度A1未満であるときには濃度特性補正量CRを「0」にする一方、アルコール濃度ALCがA1以上であるときには濃度特性補正量CRを所定量C1に設定してフィードバック制御値FBを増大させる構成を採用することもできる。
・更には、図8に示されるようにアルコール濃度ALCが所定の濃度A2未満であるときには濃度特性補正量CRを「0」にする一方、アルコール濃度ALCがA2よりも大きな所定の濃度A3以上であるときには濃度特性補正量CRを所定量C2に設定する。そして、その上でアルコール濃度ALCがA2以上A3未満のときには「0」とC2の間でアルコール濃度ALCの値に比例して濃度特性補正量CRを設定するといった構成を採用することもできる。
・上記実施形態では、空燃比センサ55の出力値AFに各種補正量を加算することによりフィードバック制御値FBを算出する構成を示したが、空燃比センサ55の出力値AFに所定の係数を乗じてフィードバック制御値FBを算出する構成を採用することもできる。すなわち、「1.0」よりも大きな濃度特性補正係数KCRを設定し、燃料にアルコールが含まれていることが推定されるときに空燃比センサ55の出力値AFにこの濃度特性補正係数KCRを乗じることにより、フィードバック制御値FBを増大補正する構成を採用することもできる。
こうした構成を採用した場合であっても、上記実施形態と同様にフィードバック制御値FBを増大補正によって空燃比センサ55の出力値AFの低下分を補うことができ、メインフィードバック制御を通じて燃料噴射量が誤って減量されることを抑制することができるようになる。そして、排気の組成が触媒ウィンドウから外れてしまうことを抑制するとともに、サブフィードバック制御を通じて設定されるサブフィードバック補正量SFの値がアルコール含有燃料の使用に起因して実際の空燃比センサ55の個体差や劣化状態の実情とかけ離れた値になってしまうことを抑制することができるようになる。
・また、このように濃度特性補正係数KCRを乗じることによる増大補正を実行する場合にも上記実施形態と同様にアルコール濃度ALCが所定濃度ALCst以上であることを条件に増大補正を行う構成や、上述した変更例と同様にアルコール濃度ALCが高いときほど濃度特性補正係数KCRが大きくなるようにこの係数KCRを設定する構成を採用することができる。
この発明の一実施形態にかかる電子制御装置と、その制御対象である内燃機関との関係を示す模式図。 同実施形態の電子制御装置によって実行される空燃比フィードバック制御の一連の処理の流れを示すフローチャート。 燃料の吸入空気量と触媒特性補正量との関係並びにアルコール濃度の違いによるこの関係の変化を示すマップ。 同実施形態の変更例にかかる空燃比フィードバック制御の一連の処理の流れを示すフローチャート。 変更例の空燃比フィードバック制御にかかる濃度特性補正量とアルコール濃度との関係を示すマップ。 変更例の空燃比フィードバック制御にかかる濃度特性補正量とアルコール濃度との関係を示すマップ。 変更例の空燃比フィードバック制御にかかる濃度特性補正量とアルコール濃度との関係を示すマップ。 変更例の空燃比フィードバック制御にかかる濃度特性補正量とアルコール濃度との関係を示すマップ。
符号の説明
10…内燃機関、11…シリンダ、12…ピストン、13…シリンダヘッド、14…燃焼室、15…吸気バルブ、16…排気バルブ、17…燃料噴射弁、18…点火プラグ、20…吸気通路、21…スロットルバルブ、22…モータ、30…排気通路、40…排気浄化触媒、50…回転速度センサ、51…スロットル開度センサ、52…アクセルポジションセンサ、53…車速センサ、54…エアフロメータ、55…空燃比センサ、56…酸素センサ、57…アルコール濃度センサ。

Claims (6)

  1. 排気通路における排気浄化触媒よりも上流側の部位に設けられ排気の酸素濃度に対応した大きさの値を出力する空燃比センサと、前記排気通路における前記排気浄化触媒よりも下流側の部位に設けられ排気の酸素濃度に応じてその出力値が変化する酸素濃度センサとを備え、前記空燃比センサの出力値を補正することによって算出されるフィードバック制御値を目標値に一致させるように燃料噴射量を増減させるメインフィードバック制御と、前記酸素濃度センサの出力値に基づいて前記メインフィードバック制御のずれを判定しこのずれが小さくなるように前記フィードバック制御値の算出に用いられるサブフィードバック補正量を増減するサブフィードバック制御とを含んでなる空燃比フィードバック制御を実行することにより燃料噴射量を制御するフレックス燃料機関の制御装置であって、
    燃料に含まれるアルコール濃度を推定するアルコール濃度推定手段を備え、同アルコール濃度推定手段によるアルコール濃度の推定結果に基づいて燃料にアルコールが含まれていることが推定されるときに、前記フィードバック制御値を算出する過程で濃度特性補正量を加算して前記フィードバック制御値を増大補正する
    ことを特徴とするフレックス燃料機関の制御装置。
  2. 請求項1に記載のフレックス燃料機関の制御装置において、
    前記アルコール濃度推定手段によって推定されるアルコール濃度が所定濃度以上であることを条件に前記増大補正を行う
    ことを特徴とするフレックス燃料機関の制御装置。
  3. 前記フィードバック制御値の算出に用いられる補正量として、吸入空気量が多いときほど前記フィードバック制御値が大きくなるように同フィードバック制御値を算出する過程で前記空燃比センサの出力値に加算される触媒特性補正量を含み、予め吸入空気量に対応する値が記憶された演算マップを参照して吸入空気量に基づいて前記触媒特性補正量を設定するフレックス燃料機関の制御装置であって、
    前記アルコール濃度推定手段によって推定されるアルコール濃度が所定濃度以上のときには、前記吸入空気量に対応する値が前記推定されるアルコール濃度が所定濃度未満のときよりも前記濃度特性補正量の分だけ大きくなるように設定された高濃度時用演算マップを参照して前記触媒特性補正量を算出し、前記フィードバック制御値を増大補正する
    請求項2に記載のフレックス燃料機関の制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のフレックス燃料機関の制御装置において、
    前記濃度特性補正量は、前記アルコール濃度推定手段によって推定されるアルコール濃度に基づいて同アルコール濃度が高いときほど大きな値に設定される
    ことを特徴とするフレックス燃料機関の制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のフレックス燃料機関の制御装置において、
    前記サブフィードバック補正量の絶対値が異常判定値以上であることに基づいて前記空燃比センサに異常が生じている旨の異常判定を行う
    ことを特徴とするフレックス燃料機関の制御装置。
  6. 排気通路における排気浄化触媒よりも上流側の部位に設けられ排気の酸素濃度に対応した大きさの値を出力する空燃比センサと、前記排気通路における前記排気浄化触媒よりも下流側の部位に設けられ排気の酸素濃度に応じてその出力値が変化する酸素濃度センサとを備え、前記空燃比センサの出力値を補正することによって算出されるフィードバック制御値を目標値に一致させるように燃料噴射量を増減させるメインフィードバック制御と、前記酸素濃度センサの出力値に基づいて前記メインフィードバック制御のずれを判定しこのずれが小さくなるように前記フィードバック制御値の算出に用いられるサブフィードバック補正量を増減するサブフィードバック制御とを含んでなる空燃比フィードバック制御を実行することにより燃料噴射量を制御するフレックス燃料機関の制御装置であって、
    燃料に含まれるアルコール濃度を推定するアルコール濃度推定手段を備え、同アルコール濃度推定手段によるアルコール濃度の推定結果に基づいて燃料にアルコールが含まれていることが推定されるときに、前記フィードバック制御値を算出する過程で前記空燃比センサの出力値に濃度特性補正係数を乗じて同フィードバック制御値を増大補正する
    ことを特徴とするフレックス燃料機関の制御装置。
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