JP2010023529A - 摩擦装置を備えた自動車 - Google Patents

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Abstract

【課題】摩擦材がキャリパに対し衝当する際の運動エネルギーを低減することにより、クロンク音の発生を抑制する。
【解決手段】車輪と共に回転する回転部材としてのブレーキロータ14と、摩擦材としてのブレーキパッド18と、クリアランスをもってブレーキパッドを収容支持するキャリパ16とを有し、キャリパを介してブレーキパッドをブレーキロータに対し押圧する自動車の摩擦装置に於いて、ブレーキロータ14の回転方向進み側に於いてブレーキパッド18とキャリパ16とが接触していない状況に於いて(ステップ450、470)、制動が行われるときには(ステップ460)、ブレーキパッド18に対する押圧力の増大勾配を制限し(ステップ480〜)、ブレーキパッド18が高い運動エネルギーにてキャリパ16に衝当すること及びこれに起因するクロンク音の発生を効果的に抑制する。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車に係り、更に詳細には運動部材に対し摩擦材を押圧し、その押圧力を制御することにより運動部材を制動する摩擦装置を備えた自動車に係る。
自動車のディスクブレーキ型の摩擦制動装置は、一般に、車輪と共に回転するブレーキロータの如き回転部材と、ブレーキパッドの如き摩擦材と、摩擦材を収容支持する摩擦材支持部材としてのキャリパと、キャリパを押圧することにより摩擦材を回転部材に対し押圧する押圧手段とを有し、少なくとも運転者の制動操作に基づいて押圧手段の押圧を制御するようになっている。この場合摩擦材は交換可能にキャリパに配置し得ると共に錆等によりキャリパに固着しないよう、キャリパにより所定のクリアランスをもって収容支持されている。
かかる摩擦制動装置の一つとして、例えば本願出願人の出願にかかる下記の特許文献1に記載されている如く、車両の進行方向が逆転した後の制動開始時に摩擦材が回転部材と共にその回転方向へキャリパに対し相対的に変位し摩擦材がキャリパに衝当することに起因して発生する「カッチン」というクロンク音を低減すべく、車両の進行方向の逆転が検出された後の最初の制動開始時には車両の進行方向の逆転が検出されなかったときの制動開始時に比して、押圧手段による押圧力の増大勾配を小さくするよう構成された摩擦制動装置が既に知られている。
特開2006−290107号公報
〔発明が解決しようとする課題〕
上述の如き摩擦制動装置によれば、車両の進行方向の逆転が検出された後の最初の制動開始時には押圧手段による押圧力の増大勾配が小さくされるので、押圧力の増大勾配が小さくされない場合に比して、車両の進行方向が逆転した後の制動開始時に於けるキャリパに対する摩擦材の衝当を緩和することができ、これによりクロンク音を低減することができる。
しかし押圧手段による押圧力の増大勾配が小さくされるのは車両の進行方向の逆転が検出された後の最初の制動開始時に限られる。そのため車両の進行方向の逆転が検出されていなくても、回転部材の回転方向進み側に於いて摩擦材がキャリパと接触していない状況に於いて制動が開始されると、摩擦材がキャリパに衝当することに起因してクロンク音が発生する場合があり、クロンク音を効果的に低減することができない。
本発明は、摩擦材がキャリパにより所定のクリアランスをもって収容支持された従来の摩擦制動装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、運動部材に対し摩擦材を押圧し、その押圧力を制御することにより運動部材を制動する摩擦装置に於いて、運動部材の運動方向に関係なくクロンク音の発生を効果的に抑制することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち運動部材と、摩擦材と、クリアランスをもって前記摩擦材を収容支持する摩擦材支持部材と、前記摩擦材支持部材を介して前記摩擦材を前記運動部材に対し押圧することにより前記運動部材を制動する押圧手段とを有する摩擦装置を備えた自動車に於いて、前記押圧手段は前記運動部材の運動方向進み側に於いて前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触していないときには、前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触しているときに比して押圧力を低減することを特徴とする自動車、又は請求項2の構成、即ち車輪と共に回転する回転部材と、摩擦材と、クリアランスをもって前記摩擦材を収容支持する摩擦材支持部材と、前記摩擦材支持部材を介して前記摩擦材を前記回転部材に対し押圧する押圧手段とを有する摩擦装置を備えた自動車に於いて、前記押圧手段は前記回転部材の回転方向進み側に於いて前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触していないときには、前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触しているときに比して押圧力を低減することを特徴とする自動車、又は請求項8の構成、即ち運動部材と、摩擦材と、クリアランスをもって前記摩擦材を収容支持する摩擦材支持部材と、前記摩擦材支持部材を介して前記摩擦材を前記運動部材に対し押圧することにより前記運動部材を制動する押圧手段とを有する摩擦装置に於いて、前記押圧手段は前記運動部材の運動方向進み側に於いて前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触していないときには、前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触しているときに比して押圧力を低減することを特徴とする摩擦装置によって達成される。
上記請求項1の構成によれば、運動部材の運動方向進み側に於いて摩擦材と摩擦材支持部材とが接触していないときには、摩擦材と摩擦材支持部材とが接触しているときに比して押圧力が低減される。従って摩擦材が摩擦材支持部材によって運動部材に対し押圧されることにより摩擦材が摩擦材支持部材に対し相対的に運動部材の運動方向進み側の方向へ移動される際の速度を低減することができ、これにより運動部材の運動方向に関係なく、摩擦材が摩擦材支持部材に対し衝当する際の運動エネルギーを低減して効果的にクロンク音の発生を抑制することができる。
また上記請求項1の構成によれば、運動部材の運動方向進み側に於いて摩擦材と摩擦材支持部材とが接触していない状況に於いて押圧手段の押圧力の低減が終了されることはない。従って運動部材の運動方向進み側に於いて摩擦材と摩擦材支持部材とが接触していない状況に於いて押圧手段の押圧力の低減が終了することに起因するクロンク音の発生を効果的に防止することができる。
同様に上記請求項2の構成によれば、回転部材の回転方向進み側に於いて摩擦材とキャリパとが接触していないときには、摩擦材と摩擦材支持部材とが接触しているときに比して押圧力が低減される。従って摩擦材が摩擦材支持部材によって回転部材に対し押圧されることにより摩擦材が摩擦材支持部材に対し相対的に回転部材の回転方向進み側の方向へ移動される際の速度を低減することができ、これにより回転部材の回転方向に関係なく、摩擦材が摩擦材支持部材に対し衝当する際の運動エネルギーを低減して効果的にクロンク音の発生を抑制することができる。
また上記請求項2の構成によれば、回転部材の回転方向進み側に於いて摩擦材と摩擦材支持部材とが接触していない状況に於いて押圧手段の押圧力の低減が終了されることはない。従って回転部材の回転方向進み側に於いて摩擦材と摩擦材支持部材とが接触していない状況に於いて押圧手段の押圧力の低減が終了することに起因するクロンク音の発生を効果的に防止することができる。
また本発明によれば、上記請求項2の構成に於いて、前記押圧手段は車速が高いときには車速が低いときに比して押圧力の低減度合を小さくするよう構成される(請求項3の構成)。
上記請求項3の構成によれば、車速が高いときには車速が低いときに比して押圧力の低減度合が小さくされるので、車速が低いときには車速が高いときに比して押圧力の低減度合を大きくし、これによりクロンク音の発生を効果的に防止することができ、車速が高いときには車速が低いときに比して押圧力の低減度合を小さくし、これにより押圧力の不足に起因する制動効果の低下を抑制することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至3の何れか一つの構成に於いて、前記押圧手段は前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触していない状況にて押圧を開始する場合に押圧力の低減を開始し、押圧力を低減している状況に於いて、前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触すると、押圧力の低減を終了するよう構成される(請求項4の構成)。
上記請求項4の構成によれば、摩擦材と摩擦材支持部材とが接触していない状況にて押圧を開始する場合に押圧力の低減が開始され、押圧力を低減している状況に於いて、摩擦材と摩擦材支持部材とが接触すると、押圧力の低減が終了される。従って押圧力の低減期間に過不足が生じることを防止することができ、これにより制動力の応答性を低下させることなくクロンク音の発生を効果的に抑制することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2乃至4の何れか一つの構成に於いて、車両が前進するときの前記回転部材の回転方向を正の回転方向として、前記摩擦装置は前記摩擦材支持部材に対し相対的に前記摩擦材を前記正の回転方向へ付勢する付勢手段と、正の回転方向とは逆の方向へ回転しているときの前記回転部材の回転方向進み側に於いて前記摩擦材と前記摩擦材支持部材との接触を検出する接触検出手段とを有するよう構成される(請求項5の構成)。
上記請求項5の構成によれば、付勢手段によって摩擦材支持部材に対し相対的に摩擦材が回転部材の正の回転方向へ付勢され、正の回転方向とは逆の方向へ回転しているときの回転部材の回転方向進み側に於いて、接触検出手段によって摩擦材と摩擦材支持部材との接触が検出される。従って回転部材の回転方向が正の回転方向より逆転したときに、回転部材の回転方向進み側に於いて摩擦材と摩擦材支持部材とが接触しているか否かを確実に判定することができる。
また上記請求項5の構成によれば、回転部材が正の回転方向へ回転しているときには、摩擦材は付勢手段によって摩擦材支持部材に対し相対的に回転部材の正の回転方向へ付勢され、摩擦材と摩擦材支持部材とが接触した状態に維持される。従って正の回転方向へ回転しているときの回転部材の回転方向進み側に於いて、摩擦材と摩擦材支持部材との接触を検出する接触検出手段は不要である。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項5の構成に於いて、前記接触検出手段は前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触する部位に設けられた接触式の接触検出手段であるよう構成される(請求項6の構成)。
上記請求項6の構成によれば、接触検出手段は摩擦材と摩擦材支持部材とが接触する部位に設けられた接触式の接触検出手段であるので、接触検出手段は摩擦材又は摩擦材支持部材との接触によって摩擦材とキャリパとの接触を検出することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項5の構成に於いて、前記接触検出手段は前記摩擦材と前記摩擦材支持部材との間隔を検出する非接触式の接触検出手段であるよう構成される(請求項7の構成)。
上記請求項7の構成によれば、接触検出手段は摩擦材と摩擦材支持部材との間隔を検出する非接触式の接触検出手段であるので、接触検出手段は摩擦材や摩擦材支持部材と接触することなく摩擦材と摩擦材支持部材との接触を検出することができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至8の何れか一つの構成に於いて、押圧手段は押圧力を増大する際の押圧力の増大勾配を制限することにより押圧力を低減するよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至8の何れか一つの構成に於いて、押圧手段は押圧力を増大する際の押圧力の増大勾配を制限することにより押圧力を低減し、押圧力の増大勾配を制限する前の押圧力の増大勾配が基準値以上である場合に、押圧手段の押圧力の増大勾配を制限するよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1又は2の構成に於いて、押圧手段は押圧力の増大勾配の制限を終了すると、押圧力の増大勾配を漸次増大させるよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様1乃至3の何れか一つの構成に於いて、押圧力の増大勾配の制限度合は車速が高いときには車速が低いときに比して低くなるよう車速に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2乃至7の何れか一つ又は上記好ましい態様1乃至4の何れか一つの構成に於いて、押圧手段は運転者の制動操作が急制動の制動操作であるときには押圧力を低減しないよう構成される(好ましい態様5)。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施例について詳細に説明する。
[第一の実施例]
図1は電子制御式のディスクブレーキ型の摩擦制動装置として構成された本発明による自動車の摩擦装置の第一の実施例を示す概略構成図、図2は図1に示された摩擦制動装置のキャリパ及び標準位置にあるブレーキパッドを車輪の軸線に沿って見た状態にて示す拡大部分断面図、図3は図1に示された摩擦制動装置のキャリパ及び負の回転位置にあるブレーキパッドを車輪の軸線に沿って見た状態にて示す拡大部分断面図である。
これらの図に於いて、符号10は摩擦制動装置を全体的に示している。摩擦制動装置10は、図には示されていない車輪と共に車輪の軸線12の周りに回転する運動部材又は回転部材としてのロータディスク14と、ロータディスク14の外周縁部に近接した位置に配置された摩擦材支持部材としてのキャリパ16と、キャリパ16により収容支持された摩擦材としてのブレーキパッド18とを含んでいる。
キャリパ16は軸線12に沿ってロータディスク14に対し垂直な方向に往復動可能に図には示されていない車輪支持部材に取り付けられている。キャリパ16はブレーキパッド収容部20を有し、ブレーキパッド収容部20には所定のクリアランスをもってブレーキパッド18が配置されている。ブレーキパッド18はキャリパ16に対し相対的に軸線12に沿って移動可能であると共に、軸線12の周りの周方向にキャリパ16に対し相対的に移動可能である。
特に図示の実施例に於いては、ブレーキパッド18及びブレーキパッド収容部20は直方体の形態をなし、ブレーキパッド18の周方向の両端には案内突起22、24及びストッパ突起26、28が設けられている。案内突起22及び24の先端間の距離はブレーキパッド収容部20の周方向の両端の壁面間の距離よりも大きく、ストッパ突起26及び28の先端間の距離はブレーキパッド収容部20の周方向の両端の壁面間の距離よりも小さい。案内突起22及び24はそれぞれキャリパ16に設けられた案内溝30及び32に嵌め込まれており、案内溝30及び32は対応する案内突起22及び24を周方向に相対変位可能に支持している。
図には示されていない車輪が車両の前進方向へ回転する際のロータディスク14の回転方向を正の回転方向とすると、回転方向遅れ側の案内突起22と対応する案内溝30との間には前押しばね34が配設されている。前押しばね34は図示の実施例に於いては板ばねであり、ロータディスク14の正の回転方向へキャリパ16に対し相対的にブレーキパッド18を付勢している。
従ってブレーキパッド18がキャリパ16によってロータディスク14に対し押圧されていないときには、ブレーキパッド18は回転方向遅れ側のストッパ突起26がブレーキパッド収容部20の壁面より隔置され、回転方向進み側のストッパ突起28がブレーキパッド収容部20の壁面に当接する図2に示された標準位置に位置決めされる。よってブレーキパッド18が標準位置に位置決めされ、ロータディスク14が正の回転方向に回転している状況に於いて制動が開始され、ブレーキパッド18がキャリパ16を介してロータディスク14に対し押圧されても、ブレーキパッド18は標準位置に留まり、キャリパ16に対し相対的に周方向へ移動することはない。
これに対しブレーキパッド18が標準位置に位置決めされ、ロータディスク14が正の回転方向とは逆の負の回転方向へ回転している状況に於いて制動が開始され、ブレーキパッド18がキャリパ16を介してロータディスク14に対し押圧されると、ブレーキパッド18はロータディスク14との間の摩擦力によってロータディスク14の負の回転方向へキャリパ16に対し相対的に移動される。これによりブレーキパッド18は負の回転時の回転方向進み側のストッパ突起26がブレーキパッド収容部20の壁面に当接し、負の回転時の回転方向遅れ側のストッパ突起28がブレーキパッド収容部20の壁面より隔置される図3に示された負の回転位置に位置決めされる。
キャリパ16には正の回転時の回転方向遅れ側のストッパ突起26の先端に対向する位置に接触検出センサ36が設けられている。接触検出センサ36はストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触しているか否かを示す信号を出力するセンサであり、例えば圧力センサやON−OFFスイッチの如き接触式の任意のセンサであってもよく、またストッパ突起26の先端とブレーキパッド収容部20の壁面との間の距離を示す信号を出力するホールICセンサの如き非接触式の任意のセンサであってもよい。
キャリパ16は図1に於いて解図的に示されたホイールシリンダ38内の圧力(ホイールシリンダ圧力)が増減されることにより駆動され、ホイールシリンダ圧力は油圧回路40により制御される。図1には示されていないが、油圧回路40はリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、ホイールシリンダ圧力は通常時には運転者によるブレーキペダル42の踏み込み操作に応じて駆動されるマスタシリンダ44内の圧力、即ちマスタシリンダ圧力Pmに基づいて電子制御装置46により制御され、必要に応じてマスタシリンダ圧力Pmに関係なく制御される。
ホイールシリンダ圧力が増大されると、キャリパ16がロータディスク14へ向けて押圧され、これによりブレーキパッド18がロータディスク14に対し押圧され、ブレーキパッド18とロータディスク14との間の摩擦力により制動力が発生される。逆にホイールシリンダ圧力が低減されると、図には示されていない付勢手段によりキャリパ16がロータディスク14より離れる方向へ駆動され、これにより制動力が低減される。ホイールシリンダ圧力が非制動圧力に低減されると、ブレーキパッド18とロータディスク14との間には実質的に摩擦力が発生せず、従って制動力は発生しない。
電子制御装置46には接触検出センサ36よりストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触しているか否かを示す信号、圧力センサ48よりマスタシリンダ圧力Pmを示す信号、圧力センサ50i(i=fl、fr、rl、rr)より各車輪のホイールシリンダ圧力、即ち制動圧Pwi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号、車輪速度センサ52i(i=fl、fr、rl、rr)より各車輪の車輪速度Vwiを示す信号が入力される。
尚図1には詳細に示されていないが、電子制御装置46はCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータ及び駆動回路よりなっていてよい。
電子制御装置46はマスタシリンダ圧力Pmに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪の目標制動圧Pwti(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、各車輪の制動圧Pwiがそれぞれ対応する目標制動圧Pwtiになるよう制御し、これによりキャリパ16を介してブレーキパッド18をロータディスク14に対し押圧する力を増減させて制動力を増減制御する。
特に電子制御装置44は、車両が後進することにより各車輪が負の回転方向へ回転しており且つ接触検出センサ36によりストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触していることが検出されていない状況に於いて、運転者による制動操作が開始されたことが検出されると、接触検出センサ36によりストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触したことが検出されるまで、各車輪の制動圧Pwiの増圧勾配を低減することによって制限する。これにより電子制御装置44は、ブレーキパッド16がロータディスク10の回転方向へキャリパ12に対し相対的に移動する際のブレーキパッド16の運動エネルギーの増大を抑制し、これによりブレーキパッド16が高い運動エネルギーにてキャリパ12に衝当することを防止する。
次に図4に示されたフローチャートを参照して第一の実施例に於ける制動力制御ルーチンについて説明する。尚図4に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。また図4に於いて、フラグFbはクロンク音の発生を防止するための制動圧の増大抑制制御が行われているか否かに関するものであり、1は制動圧の増大勾配制限制御の実行中であることを意味する。また図4に示されたフローチャートによる制御の開始時には、フラグFbは1にセットされた後0にリセットされることにより初期化される。
まずステップ410に於いては圧力センサ48により検出されたマスタシリンダ圧力Pmを示す信号の読み込みが行われると共に、マスタシリンダ圧力Pmに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪の目標制動圧Pwti(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
ステップ420に於いては例えばマスタシリンダ圧力Pmの増加率に基づき運転者により急制動操作が行われたか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ430に於いてフラグFbが0にリセットされた後ステップ560へ進み、否定判別が行われたときにはステップ440へ進む。
ステップ440に於いてはフラグFbが1であるか否かの判別、即ちクロンク音の発生を防止するための制動圧の増大勾配制限制御が行われているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ500へ進み、否定判別が行われたときにはステップ450へ進む。
ステップ450に於いては例えば各車輪の車輪速度Vwiの平均値Vwaが演算されると共に、車輪速度の平均値Vwaが負の値であるか否かの判別により、各車輪が負の回転方向へ回転しているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ560へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ460へ進む。
ステップ460に於いては例えば圧力センサ48により検出されたマスタシリンダ圧力Pmが基準値Pmo(正の定数)以上であるか否かの判別により、運転者により制動操作が行われているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ560へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ470へ進む。
ステップ470に於いては接触検出センサ36よりの信号に基づきストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触していないか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ560へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ480へ進む。
ステップ480に於いてはフラグFbが1にセットされ、ステップ490に於いては補正係数Kbが0よりも大きく1以下の範囲内にて車速Vが高いほど大きくなるよう、車速Vに基づき補正係数Kbが演算され、しかる後ステップ560へ進む。
ステップ500に於いては接触検出センサ36よりの信号に基づきストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触しているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ520へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ510に於いて補正係数Kbの前回値をKbfとし、ΔKbを小さい正の定数として補正係数Kbがその前回値Kbfと増分量ΔKbとの和に設定される。
ステップ520に於いては各車輪の目標制動圧Pwtiとその前回値Pwtfiとの偏差ΔPwtiとして、各車輪の暫定の目標制動圧Pwtaiが下記の式1に従って演算される。
Pwtai=Pwtfi+KbΔPwti …(1)
ステップ530に於いては各車輪の暫定の目標制動圧Pwtiの何れかが目標制動圧Pwti以上であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ540に於いて目標制動圧Pwtiが暫定の目標制動圧Pwtaiに設定され、肯定判別が行われたときにはステップ550に於いてフラグFbが0にリセットされ、ステップ560に於いては各車輪の制動圧Pwiがそれぞれ対応する目標制動圧Pwtiになるよう制御される。
かくして第一の実施例によれば、ステップ450に於いて各車輪が負の回転方向へ回転していると判別され、ステップ460に於いて運転者により制動操作が行われていると判別され、ステップ470に於いてストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触していないと判別されると、ステップ480に於いてフラグFbが1にセットされ、ステップ490に於いて補正係数Kbが0よりも大きく1以下の範囲内にて車速Vが高いほど大きくなるよう演算される。
そしてステップ440に於いて肯定判別が行われ、ストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触した状態になるまで、ステップ500〜560に於いて各車輪の制動圧Pwiの増圧勾配が制限される。
従って第一の実施例によれば、各車輪が負の回転方向へ回転しており且図2に示されている如くストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触していない状況に於いて、運転者により制動操作が開始されると、図3に示されている如くストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触した状態になるまで、各車輪の制動圧Pwiの増圧勾配が制限される。
よってブレーキパッド16がロータディスク10の負の回転方向へキャリパ12に対し相対的に移動する際のブレーキパッド16の運動エネルギーの増大を抑制し、これによりブレーキパッド16が高い運動エネルギーにてキャリパ12に衝当すること及びこれに起因するクロンク音の発生を効果的に抑制することができる。
例えば図5は第一の実施例に於いて車輪が負の回転方向へ回転しており且ブレーキパッド16がブレーキパッド収容部20の壁面に接触していない状況に於いて、運転者により制動操作が行われる際に於ける制動圧の増大勾配制限制御の例を示すグラフである。
図5に示されている如く、例えば時点t1に於いて車両の後進が開始され、時点t2に於いて運転者による制動操作が開始され、マスタシリンダ圧力Pmが図示の如く変化し、時点t3に於いて運転者による制動操作が開始されたことが検出され、時点t4に於いてストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触したとする。
図5より解る如く、時点t3より時点t4までマスタシリンダ圧力Pmの増大に拘らず各車輪の目標制動圧Pwtiは補正係数Kbにより規制される増加勾配にて徐々に増大し、これによりクロンク音の発生が効果的に抑制される。また時点t4以降は暫定目標制動圧Pwtaiが目標制動圧Pwti以上になるまで各サイクル毎に補正係数Kbが増分量ΔKb増大され、これにより各車輪の補正後の目標制動圧Pwtiが効率的に漸次補正前の目標制動圧Pwtiに近づけられる。
特に第一の実施例によれば、各車輪の回転方向が正の回転方向より負の回転方向へ逆転したか否かの判別は不要であるので、後述の第二の実施例の場合に比して車輪の回転方向についての判別を単純化することができる。
[第二の実施例]
図6は電子制御式のディスクブレーキ型の摩擦制動装置として構成された本発明による自動車の摩擦装置の第二の実施例に於ける制動圧制御ルーチンを示すフローチャートである。尚図6に於いて図4に示されたステップと同一のステップには図4に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
この第二の実施例に於いては、電子制御装置46は車輌の前進より後進に対応する方向へ車輪の回転方向が逆転した状況に於いて、運転者により最初の制動操作が行われた場合には、接触検出センサ36によりストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触したことが検出されるまで、各車輪の制動圧Piの増圧勾配を制限する。従ってブレーキパッド16がロータディスク10の回転方向へキャリパ12に対し相対的に移動する際のブレーキパッド16の運動エネルギーの増大が抑制され、これによりブレーキパッド16が高い運動エネルギーにてキャリパ12に衝当することが防止される。
次に図6に示されたフローチャートを参照して第二の実施例に於ける制動圧制御ルーチンについて説明する。尚図6に示されたフローチャートによる制御も図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
まずステップ410乃至440は上述の第一の実施例の場合と同様に実行され、ステップ440に於いて否定判別が行われたときにはステップ455へ進む。尚ステップ460乃至560も上述の第一の実施例の場合と同様に実行される。
ステップ455に於いては例えば各車輪の車輪速度Vwiの平均値Vwaが演算されると共に、過去の数サイクルの間に車輪速度の平均値Vwaが正の値より負の値へ変化したか否かの判別により、各車輪の回転方向が正の回転方向より負の回転方向へ逆転したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ560へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ460へ進む。
かくしてこの第二の実施例によれば、過去の数サイクルの間に車輪速度の平均値Vwaが正の値より負の値へ変化した後に運転者により最初の制動が開始されると、ステップ455及び460に於いて肯定判別が行われ、上述の第一の実施例の場合と同様にステップ480及び490が実行された後、ステップ500乃至560が繰り返し実行され、これにより接触検出センサ36によりストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触したことが検出され、ステップ500に於いて肯定判別が行われるまで、各車輪の制動圧Pwiの増圧勾配が制限される。
特に第二の実施例によれば、各車輪の制動圧Pwiの増圧勾配を抑制すべきか否かの判定に際し、ストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触していないか否かの判別は不要であるので、第一の実施例の場合に比して制動圧Pwiの増圧勾配を抑制すべきか否かの判定を容易に行うことができる。
また第二の実施例によれば、各車輪の回転方向が逆転されることなく運転者により制動操作が開始されたとき及び各車輪の回転方向が逆転された後に運転者により2回目以降の制動操作が開始されたときには、制動圧Pwiの増圧勾配は低減されないので、これらの状況に於いて制動力増大の応答性が低下することを防止することができる。
前述の特許文献1に記載された摩擦制動装置に於いては、車両の進行方向の逆転が検出された後の最初の制動開始時より所定の時間に亘り押圧手段による押圧力の増大勾配を小さくするようになっている。上記特許文献1には、所定の時間は一定の時間であってよいが、所定の時間はブレーキパッドがキャリパに衝当するまでの時間として車輪速度の平均値に基づいて推定されることが好ましいことが記載されている。
しかしブレーキパッドがキャリパに衝当するまでの時間は、ブレーキパッドや回転部材の摩耗状態や温度等によっても変動するため、この時間を正確に推定することは困難である。ブレーキパッドがキャリパに衝当するまでの時間が実際の時間よりも短く推定されると、キャリパに対する摩擦材の衝当の緩和が不十分になり、クロンク音を十分に低減することができない場合がある。逆にブレーキパッドがキャリパに衝当するまでの時間が実際の時間よりも長く推定されると、過剰に長い時間に亘り押圧手段による押圧力の増大勾配が小さくされ、そのため制動力の上昇が過剰に長い時間抑制されることに起因して制動力を応答性よく発生させることができない場合がある。
この点に関し、上述の第一及び第二の実施例によれば、制動圧Pwiの増圧勾配の抑制中にストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触したことが接触検出センサ36により検出されると、補正係数Kbが増大されることにより制動圧Pwiの増圧勾配の抑制が終了される。
従ってストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触した状態になる前に制動圧Pwiの増圧勾配の抑制が終了されることもなければ、ストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触した状態になったにも拘らず制動圧Pwiの増圧勾配の抑制が不必要に継続されることもない。よって例えば制動圧Pwiの増圧勾配の抑制が所定の時間に亘り行われる場合に比して、車輪速度、ブレーキパッドや回転部材の摩耗状態や温度等の如何によって押圧力の増大勾配の低減の期間に過不足が生じることを防止することができ、これにより制動力の応答性を低下させることなくクロンク音の発生を効果的に抑制することができる。
また上述の第一及び第二の実施例によれば、車輪速度、ブレーキパッドや回転部材の摩耗状態や温度等に応じて制動圧Pwiの増圧勾配を抑制する時間を可変制御する必要がないので、制動圧Pwiの増圧勾配を抑制する時間が車輪速度等に応じて可変制御される場合に比して、制動圧Pwiの増圧勾配を抑制する時間に過不足が生じることを防止しつつ制動圧Pwiの増圧勾配の抑制を容易に終了させることができる。
また上述の第一及び第二の実施例によれば、制動圧Pwiの増圧勾配の抑制中にストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触したことが検出されると、各サイクル毎に補正係数Kbが増分量ΔKb増大されるので、暫定目標制動圧Pwtaiが目標制動圧Pwti以上になるまで例えば補正係数Kbよりも大きい一定の補正係数にて増圧抑制が継続される場合に比して、補正後の目標制動圧Pwtiを速やかに補正前の目標制動圧Pwtiに近づけることができ、これにより増圧抑制に起因する運転者の制動要求と実際の制動力との乖離を速やかに低減することができる。
また上述の第一及び第二の実施例によれば、ステップ490に於いて補正係数Kbは0よりも大きく1以下の範囲内にて車速Vが高いほど大きくなるよう車速Vに基づいて可変設定されるので、車速Vが高いほど増圧抑制度合が小さくなるよう増圧抑制度合を制御することができ、これにより増圧抑制度合が一定である場合に比して増圧抑制に起因する運転者の制動要求と実際の制動力との乖離を低減しつつクロンク音の発生を効果的に抑制することができる。
また上述の第一及び第二の実施例によれば、運転者により急制動の制動操作が行われたときには、ステップ420に於いて肯定判別が行われ、ステップ440〜550が実行されることなく、換言すれば制動圧の増圧購買制限制御が行われることなく、ステップ560に於いて各車輪の制動圧Pwiがそれぞれ対応する目標制動圧Pwtiになるよう制御されるので、運転者により急制動の制動操作が行われた場合に増圧抑制に起因して運転者の急制動の制動要求が満たされなくなることを確実に防止することができる。
[第一及び第二の修正例]
上述の各実施例に於いては、摩擦制動装置は各車輪の制動圧Pwiがマスタシリンダ圧力Pmに基づいて電子制御装置により制御される電子制御式の摩擦制動装置であり、制動圧Pwiの増圧勾配が制限されることによりキャリパ16によるブレーキパッド18に対する押圧力の増大勾配が制限されるようになっている。
本発明の摩擦制動装置はマスタシリンダ内の圧力が直接各車輪のホイールシリンダへ伝達される非電子制御式の摩擦制動装置に適用されてもよく、その場合には摩擦制動装置は運転者のブレーキ操作力をマスタシリンダ圧力Pmに変換する装置の変換係数を変化させることにより、ブレーキ操作力に対するマスタシリンダ圧力Pmの比が変更され、これにより押圧力の増大勾配が制限されるよう構成されてよい。
図7は非電子制御式の摩擦制動装置として構成された本発明による自動車の摩擦装置の第一の修正例の要部を示す説明図である。
この第一の修正例に於いては、ブレーキペダル42にはメインプッシュロッド60の一端が連結され、メインプッシュロッド60の他端はマスタシリンダ44のメインシリンダ62に嵌合するメインピストン64に連結されている。メインシリンダ62の周りにはサブシリンダ66が設けられ、メインシリンダ62とサブシリンダ66との間にはサブピストン68が嵌合している。
サブピストン68にはサブプッシュロッド70の一端が連結され、サブプッシュロッド70の他端には電磁クラッチ装置72が設けられている。電磁クラッチ装置72はメインプッシュロッド60がサブプッシュロッド70に対し相対的に長手方向に変位することを許容する第一の位置と、メインプッシュロッド60がサブプッシュロッド70に対し相対的に長手方向に変位することを阻止する第二の位置とに切り替わるようになっている。
ブレーキペダル42よりメインプッシュロッド60に与えられる荷重をFとし、マスタシリンダ44の有効面積をAとすると、マスタシリンダ圧力Pmは下記の式2により表される。よって荷重Fの変化率をFdとすると、マスタシリンダ圧力Pmの昇圧速度Pmdは下記の式3により表され、マスタシリンダ44の有効面積Aが大きいほど小さくなる。
Pm=F/A …(2)
Pmd=Fd/A …(3)
電磁クラッチ装置72が第二の位置にあるときのマスタシリンダ44の有効面積A2は電磁クラッチ装置72が第一の位置にあるときのマスタシリンダ44の有効面積A1よりも大きい。従って通常時には第一の位置に設定される電磁クラッチ装置72を第二の位置に切り替えることにより、ブレーキパッドに対する押圧力の増大勾配を制限することができる。
図8はこの第一の修正例に於ける制動圧制御ルーチンを示すフローチャートである。尚図8に於いて図4に示されたステップと同一のステップには図4に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
ステップ420乃至480及びステップ500は上述の第一の実施例の場合と同様に実行され、ステップ500に於いて肯定判別が行われたときにはステップ580へ進み、否定判別が行われたときにはステップ560へ進む。
ステップ560に於いてはステップ460の場合と同様運転者により制動操作が行われているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ570に於いて電磁クラッチ装置72が第二の位置に設定又は維持され、否定判別が行われたときにはステップ580に於いてフラグFbが0にリセットされ、ステップ590に於いて電磁クラッチ装置72が第一の位置に設定される。
図9は非電子制御式の摩擦制動装置として構成された本発明による自動車の摩擦装置の第二の修正例の要部を示す説明図である。
この第二の修正例に於いては、プッシュロッド74は電磁クラッチ装置76を介してブレーキペダル42に連結されている。ブレーキペダル42の車体側の枢支部には電磁クラッチ装置78を介して補助リンク80の一端が連結されている。補助リンク80の他端は電磁クラッチ装置82を介してプッシュロッド74に連結されている。
電磁クラッチ装置76はプッシュロッド74に対するブレーキペダル42の枢動のみを許容する第一の位置と、プッシュロッド74に対しブレーキペダル42が遊動することを許容する第二の位置とに切り替わるようになっている。電磁クラッチ装置78は補助リンク80の一端がブレーキペダル42に対し自由に枢動することを許容する第一の位置と、補助リンク80の一端がブレーキペダル42に対し相対的に枢動することを阻止する第二の位置とに切り替わるようになっている。更に電磁クラッチ装置82は補助リンク80の他端がプッシュロッド74に対しその長手方向に自由に相対変位することを許容する第一の位置と、補助リンク80の他端がブレーキペダル42に対し相対的に枢動することを許容するがプッシュロッド74に対しその長手方向に相対変位することを阻止する第二の位置とに切り替わるようになっている。
ブレーキペダル42の車体側の枢軸線P1とブレーキペダル42のペダル部の踏面の中心P2との間の距離をL1とし、枢軸線P1とプッシュロッド74とブレーキペダル42との枢点P3との間の距離をL2とし、枢軸線P1とプッシュロッド74と補助リンク80の他端との枢点P4との間の距離をL3とすると、距離L2及びL3は距離L1よりも大きく、距離L3は距離L2よりも大きく設定されている。
ブレーキペダル42のペダル部に与えられる踏力をFpとすると、プッシュロッド74の他端がマスタシリンダ44のピストン84に付与する荷重Fは、電磁クラッチ装置78、80、82が第一の位置にあるときには下記の式4により表され、電磁クラッチ装置78、80、82が第二の位置にあるときには下記の式5により表される。距離L3は距離L2よりも大きいので、電磁クラッチ装置78、80、82が第二の位置にあるときの荷重Fpは電磁クラッチ装置78、80、82が第一の位置にあるときの荷重Fpよりも小さい。
F=(L1/L2)Fp …(4)
F=(L1/L3)Fp …(5)
よって通常時には電磁クラッチ装置78、80、82を第一の位置に設定し、電磁クラッチ装置78、80、82を第二の位置に切り替えることにより、運転者の制動操作量(踏力)に対するマスタシリンダ圧力Pmの比を小さくし、これにより制動操作量増大時に於けるブレーキパッドに対する押圧力の増大勾配を制限することができる。
この第二の修正例に於いても、電磁クラッチ装置78、80、82は図8に示されたフローチャートによる制動圧制御ルーチンに従って制御されてよい。また第一の修正例の電磁クラッチ装置72及び第二の修正例の電磁クラッチ装置78、80、82は、上述の第二の実施例に於ける制動圧制御ルーチンに対応する制動圧制御ルーチンを示す図10に示されたフローチャートに従って制御されてもよい。
かして第一及び第二の修正例によれば、上述の第一及び第二の実施例の場合と同様、ブレーキパッド16がロータディスク10の負の回転方向へキャリパ12に対し相対的に移動する際のブレーキパッド16の運動エネルギーの増大を抑制し、これによりブレーキパッド16が高い運動エネルギーにてキャリパ12に衝当すること及びこれに起因するクロンク音の発生を効果的に抑制することができる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の各実施例及び修正例に於いては、クロンク音の発生の虞れがあるときには、ブレーキパッド16に対する押圧力の増大過程及び減少過程の何れに於いても押圧力の変化勾配が制限されるようになっているが、ブレーキパッド16に対する押圧力の増大過程に於いてのみ押圧力の変化勾配が制限されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例及び修正例に於いては、クロンク音の発生の虞れがあるときには、押圧力の増減変化の度合に関係なく押圧力の変化勾配の大きさが小さくなるよう押圧力の変化勾配が制限されるようになっているが、押圧力の増減変化の度合の大きさ、特に押圧力の増大変化の度合が基準値以上であるときにのみ押圧力の変化勾配が制限されるよう修正されてもよい。
また上述の第一及び第二の実施例に於いては、摩擦装置はブレーキパッド16がロータディスク10に対し押圧されるディスクブレーキ型の摩擦制動装置であるが、本発明の摩擦装置はドラム型の摩擦制動装置に適用されてもよく、また自動車を制動する摩擦制動装置以外の摩擦装置に適用されてもよい。またブレーキパッド16はホイールシリンダ18内の圧力による押圧力によりロータディスク10に対し押圧されるようになっているが、ブレーキパッド16を押圧する手段は例えば電磁式のアクチュエータであってもよい。
また上述の第一及び第二の実施例に於いては、制動圧Pwiの増圧勾配の抑制中にストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触したことが検出されると、補正係数Kbが増大されることにより制動圧Pwiの増圧勾配の抑制が終了されるようになっているが、ストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触したことを検出する手段が非接触式の検出手段である場合には、ストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触することが予測される段階で制動圧Pwiの増圧勾配の抑制が終了され、ストッパ突起26の先端がブレーキパッド収容部20の壁面に接触する前に制動圧Pwiが目標制動圧Pwtiよりも小さい範囲内にて制動圧Pwiの増圧勾配の増大が開始されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例及び修正例に於いては、車輪の回転方向の判別は車輪速度の平均値Vwaに基づいて行われるようになっているが、車輪の回転方向の判別は任意のパラメータに基づいて行われてよい。
更に上述の第一及び第二の実施例に於いては、補正係数Kbの増分量ΔKbは一定であるが、例えば所定の時間Tbが経過した時点に於ける各車輪の目標制動圧Pwtiと暫定の目標制動圧Pwtaiとの差が大きいほど大きくなるよう可変設定されてもよい。
電子制御式のディスクブレーキ型の摩擦制動装置として構成された本発明による自動車の摩擦装置の第一の実施例を示す概略構成図である。 図1に示された摩擦制動装置のキャリパ及び標準位置にあるブレーキパッドを車輪の軸線に沿って見た状態にて示す拡大部分断面図である。 図1に示された摩擦制動装置のキャリパ及び負の回転位置にあるブレーキパッドを車輪の軸線に沿って見た状態にて示す拡大部分断面図である。 第一の実施例に於ける制動圧制御ルーチンを示すフローチャートである。 第一の実施例に於いて車両が後進する際の最初の制動開始時に於ける制動圧の増大抑制制御の例を示すグラフである。 電子制御式のディスクブレーキ型の摩擦制動装置として構成された本発明による自動車の摩擦装置の第二の実施例に於ける制動圧制御ルーチンを示すフローチャートである。 非電子制御式の摩擦制動装置として構成された本発明による自動車の摩擦装置の第一の修正例の要部を示す説明図である。 第一の修正例に於ける制動圧制御ルーチンを示すフローチャートである。 非電子制御式の摩擦制動装置として構成された本発明による自動車の摩擦装置の第二の修正例の要部を示す説明図である。 第一及び第二の修正例に於ける他の制動圧制御ルーチンを示すフローチャートである。
符号の説明
10…摩擦制動装置、14…ロータディスク、16…キャリパ、18…ブレーキパッド、36…接触検出センサ、38…ホイールシリンダ、44…マスタシリンダ、46…電子制御装置、36…転舵角可変装置、46…電子制御装置、48、50i…圧力センサ、52i…車輪速度センサ、72、78、80、82…電磁クラッチ装置

Claims (8)

  1. 運動部材と、摩擦材と、クリアランスをもって前記摩擦材を収容支持する摩擦材支持部材と、前記摩擦材支持部材を介して前記摩擦材を前記運動部材に対し押圧することにより前記運動部材を制動する押圧手段とを有する摩擦装置を備えた自動車に於いて、前記押圧手段は前記運動部材の運動方向進み側に於いて前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触していないときには、前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触しているときに比して押圧力を低減することを特徴とする自動車。
  2. 車輪と共に回転する回転部材と、摩擦材と、クリアランスをもって前記摩擦材を収容支持する摩擦材支持部材と、前記摩擦材支持部材を介して前記摩擦材を前記回転部材に対し押圧する押圧手段とを有する摩擦装置を備えた自動車に於いて、前記押圧手段は前記回転部材の回転方向進み側に於いて前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触していないときには、前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触しているときに比して押圧力を低減することを特徴とする自動車。
  3. 前記押圧手段は車速が高いときには車速が低いときに比して押圧力の低減度合を小さくすることを特徴とする請求項2に記載の自動車。
  4. 前記押圧手段は前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触していない状況にて押圧を開始する場合に押圧力の低減を開始し、押圧力を低減している状況に於いて、前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触すると、押圧力の低減を終了することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の自動車。
  5. 車両が前進するときの前記回転部材の回転方向を正の回転方向として、前記摩擦装置は前記摩擦材支持部材に対し相対的に前記摩擦材を前記正の回転方向へ付勢する付勢手段と、前記正の回転方向とは逆の方向へ回転しているときの前記回転部材の回転方向進み側に於いて前記摩擦材と前記摩擦材支持部材との接触を検出する接触検出手段とを有することを特徴とする請求項2乃至4の何れか一つに記載の自動車。
  6. 前記接触検出手段は前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触する部位に設けられた接触式の接触検出手段であることを特徴とする請求項5に記載の自動車。
  7. 前記接触検出手段は前記摩擦材と前記摩擦材支持部材との間隔を検出する非接触式の接触検出手段であることを特徴とする請求項5に記載の自動車。
  8. 運動部材と、摩擦材と、クリアランスをもって前記摩擦材を収容支持する摩擦材支持部材と、前記摩擦材支持部材を介して前記摩擦材を前記運動部材に対し押圧することにより前記運動部材を制動する押圧手段とを有する摩擦装置に於いて、前記押圧手段は前記運動部材の運動方向進み側に於いて前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触していないときには、前記摩擦材と前記摩擦材支持部材とが接触しているときに比して押圧力を低減することを特徴とする摩擦装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016068591A (ja) * 2014-09-26 2016-05-09 株式会社アドヴィックス 車両の摩擦制動装置

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