JP2010018923A - 異方強化繊維シートおよび異方強化繊維シート積層体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】長手方向と強化繊維が所定の角度θを有する異方強化繊維シートを製造する場合において、強化繊維シートの裁断・配置・積層作業を正確にかつ効率よく行う方法を提供する。
【解決手段】強化繊維糸条が少なくとも長手方向に平行に延在する帯状の強化繊維シート1を、強化繊維シート1の長手方向と設けた基準線6とが平行になるように載置する載置作業や、載置した強化繊維シート1の強化繊維の方向と裁断方向とが角度θをもつように裁断する裁断作業、裁断した強化繊維シート片14を移載し、長手方向と強化繊維とが角度θをもつように再び載置する載置作業の各工程において、静電吸着を利用することにより強化繊維の角度のズレや位置ズレすることなく高い精度でかつ効率よく作業を行うことを特徴とする、異方強化繊維シート15の製造方法。
【選択図】図4

Description

本発明は、長手方向と強化繊維とが角度θを有する異方強化繊維シートおよび異方強化繊維シート積層体の製造方法に関する。
炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維を強化繊維として用いた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)は、軽量でかつ高い耐久性を有するものであることから、自動車や航空機などを構成する各種の構成部材として理想的な材料である。
これら強化繊維プラスチック(FRP)を成形する方法としては、例えば強化繊維と高靭性のエポキシ樹脂からなるプリプレグシートを強化繊維が疑似等方になるよう積層し、オートクレーブ(圧力釜)で加圧および加熱して硬化させて複合材料を成形する方法がある。
しかし、このプリプレグシートはタック性を有し、厚さ方向に空気を通さないため、プリプレグシートを型もしくは下層のプリプレグシートの上に貼り付けて積層体を作る作業を行う際、層間に気泡が残らないよう細心の注意を払う必要がある。このプリプレグシートの貼り付け作業は、本来大面積のシートを一度に貼り付けるのが効率的であるが、この場合、気泡が残る危険性が高くなるため、一般的には細幅のテープを順々に貼り付ける方法をとることとなる。このテープでの貼り付け作業を効率化する方法として、ATL(Auto Tape Lay−up machine)と呼ばれる自動装置を用いる方法があるが、装置自体が非常に高額であるため、導入するとなると設備コストの面で不都合である。
一方、プリプレグシートを用いない方法として、安価で成形時間が短縮できるRTM(Resin Transfer Molding)成型方法等がある。
この成型方法では、マトリックス樹脂が含浸されていない、ドライな強化繊維シートを強化繊維が疑似等方になるよう複数枚積層したものを成形型に配置し、低粘度の液状マトリックス樹脂をこれに注入することにより、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させて複合材料を成形するものである。また、RTM成型方法で用いるドライな強化繊維シートはタック性がなく、通気性を有するので、大面積のシートを一度に積層することが可能であり、積層作業を効率的に行うことができる。
しかし、一方でマトリックス樹脂が含浸されていないがゆえに、形状安定性が悪く、慎重に取り扱わなければ、容易に変形してしまい、高い精度で強化繊維の角度のズレや位置ズレなくシートを載置することは非常に困難である。特に従来から行われているように人手作業で、この載置作業を行う場合には、細心の注意と労力が必要になるため、作業効率が低くなるという問題がある。
これを解決する手段として、先行文献に現れる技術としては、吸引体を有する搬送装置により強化繊維シートを裁断されたままの形状で吸引・把持し、所定の位置に回転位置決めして配置することにより、自動的にかつ高い精度をもったプリフォーム(特許文献1では疑似等方性を有する平面状の強化繊維の積層体を「プリフォーム」と定義している)を製造する方法とその装置に関する発明が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、この発明においては強化繊維シートの吸引体、およびその周辺機器については具体的に定義しておらず、どういった方式で強化繊維シートを吸引、位置決めするのかという点までは具体的に言及されていない。
また、紙やフィルム等のシート材を密接し、ズレ無いように保持して搬送する方法として、真空吸引方式があるが、紙やフィルムといったシート材では厚さ方向に空気を通さないが、強化繊維シートは繊維束の間が密でなく空気を通してしまうため、真空を維持するのに必要な空気の流量を非常に大きくする必要があり、そのためエアポンプやエアの通路など付随する装置が大型になってしまう欠点がある。
仮に真空吸引方式で大型な設備を導入したとしても、吸引する強化繊維シートの形状は多種であり、これに対応する吸引面をもつ複数の吸引体が必要になってしまう。それは、多種な強化繊維シート全ての形状を覆うだけのただ一つの大型の吸引体では、吸引面のうちで強化繊維シートを吸引していない部分から大量の空気を吸い込むため、積層作業を行う際に下層の繊維強化繊維シートを吸い上げてしまい、高い精度での位置決めが困難となるからである。
特開2006−76158号公報
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、長手方向と強化繊維が所定の角度θを有する異方強化繊維シートを製造する場合において、強化繊維シートの裁断・配置・積層作業を正確にかつ効率よく行う方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用するものである。すなわち、
(1)長手方向と強化繊維が所定の角度θを有する異方強化繊維シートを製造する方法であって、下記(A)〜(D)の各工程を経ることを特徴とする異方強化繊維シートの製造方法。
(A)工程:強化繊維糸条が少なくとも長手方向に平行に延在する帯状の強化繊維シートを、第1の平板上の第1の基準線と強化繊維シートの長手方向とが平行になるように第1の平板上に載置させる第1のセット工程。
かかる工程において、「強化繊維シート」とは、強化繊維糸条を長手方向に平行に延在させるように並べ、帯状にしたものである。強化繊維糸条同士は、長手方向と垂直な方向(以後、幅方向という)に、同一の強化繊維あるいは異種の繊維で交絡させ固定されている。この方法以外にも、一方向クロス、織物、編物、組物、不織布などが強化繊維シートとして好適に用いられる。強化繊維としては炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維などを用いることができる。
また、「第1の平板」とは、材質は特に限定されるものではないが、下記(C)工程における強化繊維シートの裁断時に、第1の平板の表面が傷付かないような材質のものを選択することが好ましい。例えば、第1の平板上に硬質塩化ビニル等からなるカッティングマットが備えられていると良いが、これに限定されるものではない。
(B)工程:静電気力によって物体を吸着する静電吸着板の第1の辺と前記第1の基準線とが角度θをなすように前記強化繊維シートの上に前記静電吸着板を載置し、前記強化繊維シートを吸着する吸着工程。
かかる工程において、「静電吸着板」とは材質は特に限定されるものではないが、取り扱い上、軽量であることが好ましく、静電吸着板がたわまぬように軽量なアルミ材等で吸着板裏側等を補強することが好ましいが、これに限定されるものではない。
また、「角度θ」とは前記強化繊維シートの長手方向と平行に延在させるように並べられた強化繊維糸条と下記(C)工程における強化繊維シートの裁断方向とのなす角度である。
(C)工程:強化繊維シートを前記第1の辺に沿って裁断し、強化繊維シート片とする裁断工程。
(D)工程:前記強化繊維シート片を吸着した前記静電吸着板を移載させ、第2の平板上の第2の基準線と前記第1の辺とが平行になるように載置し、次いで前記静電吸着板の吸着を解除して前記強化繊維シート片を離反させる第2のセット工程。
(2)長手方向と強化繊維が所定の角度θを有する異方強化繊維シートを製造する方法であって、下記(A)〜(D)の各工程を経ることを特徴とする異方強化繊維シートの製造方法。
(A)工程:強化繊維糸条が少なくとも長手方向に平行に延在する帯状の強化繊維シートを、第1の平板上の第1の基準線と強化繊維シートの長手方向とが平行になるように第1の平板上に載置させる第1のセット工程。
(B)工程:強化繊維シートの長手方向と裁断方向とが角度θをなすように強化繊維シートを裁断し、強化繊維シート片とする裁断工程。
(C)工程:静電気力によって物体を吸着する静電吸着板の第1の辺を(B)工程で得られた強化繊維シート片の裁断線に沿うように前記強化繊維シート片の上に前記静電吸着板を載置し、前記強化繊維シート片を吸着する吸着工程。
(D)工程:前記強化繊維シート片を吸着した前記静電吸着板を移載させ、第2の平板上の第2の基準線と前記第1の辺とが平行になるように載置し、次いで前記静電吸着板の吸着を解除して前記強化繊維シート片を離反させる第2のセット工程。
(3)前記(1)に記載の異方強化繊維シートの製造方法において、前記静電吸着板の第1の辺とこれに隣接する第2の辺とのなす角度が角度θである静電吸着板を用い、(B)工程において前記第1の基準線に平行に設けた第1の基準ブロックに、前記静電吸着板の第2の辺を当接させて前記静電吸着板を位置決めすることを特徴とする異方強化繊維シートの製造方法。
(4)前記(2)に記載の異方強化繊維シートの製造方法において、前記静電吸着板の第1の辺とこれに隣接する第2の辺とのなす角度が角度θである静電吸着板を用い、(C)工程において前記第1の基準線に平行に設けた第1の基準ブロックに、前記静電吸着板の第2の辺を当接させて前記静電吸着板を位置決めすることを特徴とする異方強化繊維シートの製造方法。
ここで、「第1の基準ブロック」とは、材質は特に限定されるものではないが、繰り返し静電吸着板が当接しても位置ズレが起こりにくいように固定可能な機能を有すること、静電吸着板が当接しても削れにくい硬質であること、基準位置の変更時に容易に移動できるよう軽量であること、等を満たすことが好ましい。このような条件を満足する材質としては、例えば板金加工したアルミ材、ABS等の樹脂塊、合板等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(5)前記(3)または(4)に記載の異方強化繊維シートの製造方法において、(D)工程においては第2の基準線に平行な第2の基準ブロックに、前記静電吸着板の第1の辺を当接させて前記静電吸着板を位置決めすることを特徴とする異方強化繊維シートの製造方法。
ここで、「第2の基準ブロック」とは、第1の基準ブロックと同様に、材質は特に限定されるものではないが、繰り返し静電吸着板が当接しても位置ズレが起こりにくいように固定可能な機能を有すること、静電吸着板が当接しても削れにくい硬質であること、基準位置の変更時に容易に移動させるため軽量であること、等を満たすことが好ましい。このような条件を満足する材質としては、例えば板金加工したアルミ材、ABS等の樹脂塊、合板等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(6)前記第1の平板は、前記強化繊維シートを静電気力により吸着する静電吸着機能を備えたことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の異方強化繊維シートの製造方法。
(7)前記第2の平板は、前記強化繊維シート片を静電気力により吸着する静電吸着機能を備えたことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の異方強化繊維シートの製造方法。
(8)前記第1の平板が静電吸着機能を有するコンベアベルトであり、静電気力により強化繊維シートを吸着し、吸着を保持した状態で該コンベアベルトを動かすことにより強化繊維シートを引き出すことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の異方強化繊維シートの製造方法。
ここで、「ベルトコンベア」とは、位置決め制御機能を有することが好ましく、また、ベルトの材質は特に限定するものではないが、強化繊維シートを引き出す際に位置ズレしないように、ベルトの摩擦係数が大きい材質であること、強化繊維シートの裁断時にベルト表面が傷付きにくい耐カット性を有すること、等を満たすことが好ましいが、これらに限定されるものではない。
(9)前記強化繊維シートに用いる強化繊維が炭素繊維を少なくとも含んでなることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の異方強化繊維シートの製造方法。
(10)前記静電吸着板の形状が四辺形状であり、4つの角度がそれぞれ2つの90°、45°、135°で構成されていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の異方強化繊維シートの製造方法。
(11)前記(1)〜(10)のいずれかに記載の製造方法により得られた前記異方強化繊維シートを複数層重ねたことを特徴とする異方強化繊維シート積層体の製造方法。
本発明によれば、長手方向と強化繊維とが角度θを有する異方強化繊維シートを製造する場合において、強化繊維シートの裁断・配置・積層作業を高い精度でかつ効率良く行うことができる。
以下に、本発明を具体化した実施形態を、異方強化繊維シートの強化繊維が長手方向に対し、θ=45°の角度をもつ場合について、図1〜4を用いて説明する。
図1は、第1のセット工程を表す概略斜視図である。
図1において、1はロール状に巻かれた、強化繊維糸条が少なくとも長手方向に平行に延在する帯状の強化繊維シートである。
ベルトコンベア5は、駆動ローラ2と従動ローラ3とに無端状のベルト4が捲回された構成からなる。このベルトコンベア5は静電吸着機能を有しており、またベルト4の表面には第1の基準線6がマークされていて、この第1の基準線6に沿って平行に第1の基準ブロック7が設置されている。なお、第1の基準ブロック7はベルトコンベア5上に複数設けられていてもよい。ロール状に巻かれた帯状の強化繊維シート1は、その強化繊維が延在する方向と第1の基準線6とが平行になるように、ベルト4上に載置されている。
さらに、第1のセット工程においては、ロール状に巻かれた強化繊維シート1が、静電気力によりベルト4上に吸着された状態で図の右方向(矢印方向)に引き出される。静電吸着機能を有するベルトコンベア5を用いて強化繊維シート1を所定間隔ずつ固定搬送すると、強化繊維の角度のズレや位置ズレすることなく高い精度で強化繊維シート1を繰り返し送り出すことができる。
図2は、吸着工程を表す概略斜視図である。
図2において、8は静電吸着板である。静電吸着板8は四辺形状、すなわち第1の辺9、第2の辺10、第3の辺11および第4の辺12からなる。このうち、第2の辺10と第3の辺11とが平行となるように、また第1の辺9と第2の辺10とのなす角度が45°となるように、さらに第2の辺10と第4の辺12および第3の辺11と第4の辺12とのなす角度がそれぞれ90°となるように、それぞれ構成されている。なお、静電吸着板8の裏側に作業用の取手24を設けてもよい。取手24を設けておくと、第1の平板から第2の平板に移動させる際、作業者が持ちやすく、静電吸着板8を取り落とす危険性が少なくなる点で好ましい。
吸着工程においては、第1のセット工程にてセットされた強化繊維シート1の上に、静電吸着板8の第1の辺9が第1の基準線6に対し45°の角度となるように載せ、ベルトコンベア5の静電吸着機能を解除した後、静電吸着板8により強化繊維シート1を吸着させる。このとき、第1の基準ブロック7に静電吸着板8の第2の辺10を当接させると、第1の辺9が第1の基準線6に対し45°の角度が容易に位置決めできる。この方法は、特に手作業で行う際に有効である。
図3は、裁断工程を表す概略斜視図である。
図3において、13はカッターである。カッターの種類としてはロータリーカッターが好ましいが、アートナイフや引切り、押切りを利用した各種カッター等でも構わない。
裁断工程においては、吸着工程にて静電吸着板8により吸着された強化繊維シート1を静電吸着板8の第1の辺9に沿ってカッター13で裁断すると、強化繊維シート片14ができる(ただし、静電吸着板8の下にあるため、図3では見えない)。静電吸着板8で強化繊維シート1を吸着固定することで、裁断時にも強化繊維がほつれにくく、強化繊維シート片14は角度のズレや位置ズレが生ずることはない。
図4は、第2のセット工程を表す概略斜視図である。
図4において、15は複数の強化繊維シート片14を強化繊維の延在する方向を揃えて並べた異方強化繊維シートであり、第2の平板16上に載置されている。第2の平板16は静電吸着機能を有し、また第2の平板16上には第2の基準線17がマークされている。さらに、第2の基準線17に沿って平行に第2の基準ブロック18が設置されている。第2の基準ブロック18は、第2の平板16上に複数設けられていてもよい。
第2のセット工程においては、裁断工程にて裁断された強化繊維シート片14を吸着した静電吸着板8を第2の平板16上まで運搬する。静電吸着板8の第1の辺9が第2の基準線17に平行となるように静電吸着板8を回転させながら位置決めした後、静電吸着板8上に載置して静電吸着を解除する。次いで、第2の平板16の静電吸着機能を作用させ、第2の平板16上に強化繊維シート片14を吸着させた後、静電吸着板8を離反させる。この際、第2の基準ブロック18に静電吸着板8の第1の辺9を当接させると、位置決めが容易にできて好ましい。この方法は、特に手作業で行う際に有効である。
なお、静電吸着板8を第2の平板16に載置する際には、既に載置されている強化繊維シート片14と離間しないように、また強化繊維シート片14同士が重なり合わないように、強化繊維シート片14の端部同士が接するように載置しなければならない。それは強化繊維シート片14が重なり合ったり離間したりすると、CFRPに加工した際に目的とする材料特性が得られないことや、また表面に凹凸が発生し寸法精度が得られない恐れがあるためである。そのため、強化繊維シート片14同士は端部を接着等で処理せずに、単にシート片同士が接するように載置するだけで良い。
また、前述したように第2のセット工程が終わるまでに、第1のセット工程でベルトコンベア5を動かして、強化繊維シート1を所定間隔送り出されると、吸着工程から繰り返し作業を行うこともできる。例えばθ=45°の場合、「所定間隔」は図5に示すように、複数の強化繊維シート片14を並べた異方強化繊維シート15の幅Wの√2倍となる。なお、Wの値は所望する異方強化繊維シート15の幅に応じて任意に決めることができる。また、選んだ角度θの値によって所定間隔の値も異なってくる。
上記の工程を繰り返すことにより、長手方向と強化繊維とが45°の角度を有する異方強化繊維シート15を高精度にかつ効率よく製造することができる。
本発明は、上記のような工程に対して、以下のように変形実施することも可能である。
全工程を通じて強化繊維シート1や強化繊維シート片14を静電吸着させておくと、変形しやすい強化繊維シート1の裁断時や移動時に変形させることなく、寸法精度の高い異方強化繊維シート15を製造することができる。この場合であっても、必ずしも全工程を通じて静電吸着させる必要はなく、例えば第1のセット工程においては、目視確認等により強化繊維シート1の長手方向と第1の基準線6が平行になるようセットしても良い。さらには、ロール状に巻かれた強化繊維シート1をベルトコンベア5により引き出さなくても良く、単に基準線をもつ平板上に帯状の強化繊維シート1を人手作業等によりセットしても良い。
また、既に載置されている強化繊維シート片14は、第2の平板16に載置されている間は静電吸着されていることが好ましい。それは、既に載置されている強化繊維シート片14を静電吸着で固定しておけば、次の強化繊維シート片14を載置しようとする際に、舞い上がったり接触して位置ズレしたりするおそれがなく、正確に載置することができるからである。しかし、第2の平板に静電吸着機能を持たせなくても、単に第2の平板上の第2の基準線と第1の辺とが平行になるよう目視等で確認しながら人手作業によりセットしても構わない。その場合、文鎮やペーパーウエイトといった重し等で強化繊維シート片14を固定しても良い。
上述の実施形態では、吸着工程の後に裁断工程を実施したが、裁断工程の後に吸着工程を実施しても良い。つまり、強化繊維の方向と裁断方向とが45°の角度をもつように、45°の角度をもった定規等にカッター13を沿わせて強化繊維シート1を裁断し、前もって強化繊維シート片14を複数枚作っておき、しかる後にこれら強化繊維シート片14を静電吸着板8により吸着し、第2のセット工程へ載置しても構わない。
また、全工程を繰り返し行うことによって異方強化繊維シート15の積層体を製造することができる。この場合、静電吸着板8の形状は四辺形状で、それぞれ2つの90°、45°、135°の4つの角度を有するため、それぞれの角度を利用すれば一枚の静電吸着板で疑似等方の積層体を製造することができ、角度の異なる複数の静電吸着板を準備する必要がない。
具体的には、静電吸着板8は、裁断工程で説明した第1の辺9以外のいずれか一辺に沿わせて強化繊維シート1を裁断することもできる。第2の辺10以外のいずれか一辺を第1の基準ブロック7に当接させれば、上述した45°の角度以外にも、90°や135°といった角度を有する強化繊維シート片14を裁断することができる。このような裁断を組み合わせると、長方形、正方形、台形、平行四辺形といった様々な四辺形状の強化繊維シート片14を得ることができる。このように形の異なる強化繊維シート片14を組み合わせて積層させることにより、例えば特定方向にのみ強化された積層体を得ることも可能である。
特に2層以上積層する場合においては、第2の平板16は静電吸着機能を有することが有効である。それは、最下層となる異方強化繊維シート15上に次の強化繊維シート片14を載置したり位置決め等をしたりする際に、最下層の異方強化繊維シート15の滑りを防止することができるからである。
第1の基準ブロック7あるいは第2の基準ブロック18は、例えば静電吸着板8が自動で座標をもっていて、裁断・配置位置を自動で認識できる場合は、これらは必ずしも必要ではないが、手作業で位置決め作業を行う際には有効となる。また、静電吸着板8をロボットハンド等で自動制御して作業を行うことも可能であるが、この場合も確実な位置決め手段として、第1の基準ブロック7あるいは第2の基準ブロック18を設けておくことが好ましい。
上記実施形態のように、異方強化繊維シート15が長手方向、すなわち第2の基準線17の方向に長さが有限である場合には、その端部を構成する強化繊維シート片19は通常の強化繊維シート片14とは別の形状として準備する必要がある。この場合、例えば図6に示すように、通常の強化繊維シート片14を裁断した後に、端部処理を行う端部処理工程を設けることで解決できる。この端部処理工程について図6を用いて説明する。
図6(a)に示すように、裁断した強化繊維シート片14を、一時的に第3の平板20上の第3の基準線21と静電吸着板8の第1の辺9とが平行となるように載置する。次いで図6(b)に示すように、第3の平板20上の第3の基準線21と静電吸着板8の第3の辺11とが平行になるようにセットした後に、強化繊維シート片14をカッター13で第4の辺12に沿って裁断し、端部の強化繊維シート片19を製造する。そして、図6(c)に示すように、端部の強化繊維シート片19を静電吸着板8で吸着し、第3の辺11が第2の基準線17に平行となるよう位置決めした後に、静電吸着板8の吸着を解除し、第2の平板16上へ載置する。以上の端部処理工程を踏むことで、異方強化繊維シート15の端部を製造することができる。
図7は、本実施形態で用いる静電吸着板8の一態様を表す平面図である。静電吸着板8は絶縁層である基板22、金属電極23、取手24、導線25で構成されている。基板22は高抵抗(1016〜17Ω)を有する硬質プラスチック板で、その基板22上に金属電極23が作られ、体積抵抗率が108〜10Ω・cmの導電体からなる特殊プラスチックの保持層26で覆われている。また、金属電極23はプラス電極とマイナス電極とがあり、この間に直流電圧Vが印加される。
図8は、静電吸着板8の吸着原理を表す図である。
図8に示すように、静電吸着板8に保持力が生ずる原理は、双極型で保持層26の内部に設けた2つ以上の金属電極23に電圧を印加させ、被吸着物である強化繊維シート1と静電吸着板8の表面に正・負の電荷を発生させ、この間に働くジョンソン・ラーベック力により強化繊維シート1を吸着させるというものである。また、静電吸着板8の吸着を解除する際には、静電吸着板8の主電源を切断し、変圧器2次側を接地および短絡する機能を持ち合わせることにより、蓄積した電荷を消滅させ、吸着を瞬時に解除することができるように構成されていると良い。
なお、静電吸着板8の形状については、上記の実施形態ではθ=45°の場合について説明したが、θはこれ以外の角度であっても良い。具体的には、0°<θ<180°の範囲を取ることができる。また、静電吸着板8の形状を四辺形状としているが、それに限定せず例えば三角形、五角形等の多角形状であっても良い。特に角度θがあらかじめ複数種類必要とされていることが判明している場合には、五角形等の多角形とすることも好ましい。しかし、あまりに多角化し過ぎても、1つの辺の長さは強化繊維シート1の幅以上が必要となることから、静電吸着板8自体が大きくなり過ぎてしまい、取り扱いが困難になることから、六角形程度までが好ましい。
図9は、ベルトコンベア5上に裁断レール27を設置した場合の概略斜視図および断面図である。
図9に示すように、ベルトコンベア5上に裁断レール27を設置し、裁断の際には、このレール上で強化繊維シート1を裁断すれば、カッター13でベルト4の表面を傷つけないで済むのでより好ましい。なお、カッター13が静電吸着板8に対して垂直に当たらず、強化繊維シート1の裁断面が垂直にならないおそれがあるので、裁断レール27はなるべく薄いものにするのが好ましい。
第1のセット工程を表す概略斜視図である。 吸着工程を表す概略斜視図である。 裁断工程を表す概略斜視図である。 第2のセット工程を表す概略斜視図である。 所定間隔が異方強化繊維シートの幅の√2倍になることを表す図である。 (a)、(b)、(c)端部処理工程を順次表す概略斜視図である。 本発明で利用する静電吸着板の一態様を説明する平面図である。 静電吸着板の吸着原理を表す図である。 ベルトコンベア上に裁断レールを設置した場合の概略斜視図および断面図である。
符号の説明
1:強化繊維シート
2:駆動ローラ
3:従動ローラ
4:ベルト
5:ベルトコンベア
6:第1の基準線
7:第1の基準ブロック
8:静電吸着板
9:第1の辺
10:第2の辺
11:第3の辺
12:第4の辺
13:カッター
14:強化繊維シート片
15:異方強化繊維シート
16:第2の平板
17:第2の基準線
18:第2の基準ブロック
19:端部の強化繊維シート片
20:第3の平板
21:第3の基準線
22:基板
23:金属電極
24:取手
25:導線
26:保持層
27:裁断レール
W:異方強化繊維シートの幅

Claims (11)

  1. 長手方向と強化繊維が所定の角度θを有する異方強化繊維シートを製造する方法であって、下記(A)〜(D)の各工程を経ることを特徴とする異方強化繊維シートの製造方法。
    (A)工程:強化繊維糸条が少なくとも長手方向に平行に延在する帯状の強化繊維シートを、第1の平板上の第1の基準線と強化繊維シートの長手方向とが平行になるように第1の平板上に載置させる第1のセット工程。
    (B)工程:静電気力によって物体を吸着する静電吸着板の第1の辺と前記第1の基準線とが角度θをなすように前記強化繊維シートの上に前記静電吸着板を載置し、前記強化繊維シートを吸着する吸着工程。
    (C)工程:強化繊維シートを前記第1の辺に沿って裁断し、強化繊維シート片とする裁断工程。
    (D)工程:前記強化繊維シート片を吸着した前記静電吸着板を移載させ、第2の平板上の第2の基準線と前記第1の辺とが平行になるように載置し、次いで前記静電吸着板の吸着を解除して前記強化繊維シート片を離反させる第2のセット工程。
  2. 長手方向と強化繊維が所定の角度θを有する異方強化繊維シートを製造する方法であって、下記(A)〜(D)の各工程を経ることを特徴とする異方強化繊維シートの製造方法。
    (A)工程:強化繊維糸条が少なくとも長手方向に平行に延在する帯状の強化繊維シートを、第1の平板上の第1の基準線と強化繊維シートの長手方向とが平行になるように第1の平板上に載置させる第1のセット工程。
    (B)工程:強化繊維シートの長手方向と裁断方向とが角度θをなすように強化繊維シートを裁断し、強化繊維シート片とする裁断工程。
    (C)工程:静電気力によって物体を吸着する静電吸着板の第1の辺を(B)工程で得られた強化繊維シート片の裁断線に沿うように前記強化繊維シート片の上に前記静電吸着板を載置し、前記強化繊維シート片を吸着する吸着工程。
    (D)工程:前記強化繊維シート片を吸着した前記静電吸着板を移載させ、第2の平板上の第2の基準線と前記第1の辺とが平行になるように載置し、次いで前記静電吸着板の吸着を解除して前記強化繊維シート片を離反させる第2のセット工程。
  3. 請求項1に記載の異方強化繊維シートの製造方法において、前記静電吸着板の第1の辺とこれに隣接する第2の辺とのなす角度が角度θである静電吸着板を用い、(B)工程においては前記第1の基準線に平行に設けた第1の基準ブロックに、前記静電吸着板の第2の辺を当接させて前記静電吸着板を位置決めすることを特徴とする異方強化繊維シートの製造方法。
  4. 請求項2に記載の異方強化繊維シートの製造方法において、前記静電吸着板の第1の辺とこれに隣接する第2の辺とのなす角度が角度θである静電吸着板を用い、(C)工程においては前記第1の基準線に平行に設けた第1の基準ブロックに、前記静電吸着板の第2の辺を当接させて前記静電吸着板を位置決めすることを特徴とする異方強化繊維シートの製造方法。
  5. 請求項3または4に記載の異方強化繊維シートの製造方法において、(D)工程においては第2の基準線に平行な第2の基準ブロックに、前記静電吸着板の第1の辺を当接させて前記静電吸着板を位置決めすることを特徴とする異方強化繊維シートの製造方法。
  6. 前記第1の平板は、前記強化繊維シートを静電気力により吸着する静電吸着機能を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の異方強化繊維シートの製造方法。
  7. 前記第2の平板は、前記強化繊維シート片を静電気力により吸着する静電吸着機能を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の異方強化繊維シートの製造方法。
  8. 前記第1の平板が静電吸着機能を有するベルトコンベアであり、静電気力により強化繊維シートを吸着し、吸着を保持した状態で該ベルトコンベアを動かすことにより強化繊維シートを引き出すことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の異方強化繊維シートの製造方法。
  9. 前記強化繊維シートに用いる強化繊維が炭素繊維を少なくとも含んでなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の異方強化繊維シートの製造方法。
  10. 前記静電吸着板の形状が四辺形状であり、4つの角度がそれぞれ2つの90°、45°、135°で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の異方強化繊維シートの製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法により得られた前記異方強化繊維シートを複数層重ねたことを特徴とする異方強化繊維シート積層体の製造方法。
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