JP2010014496A - 超音波センサの取付け構造 - Google Patents

超音波センサの取付け構造 Download PDF

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Abstract

【課題】意匠性を向上し、且つ、所定の指向性を確保することができる超音波センサの取り付け構造を提供する。
【解決手段】超音波素子を備える超音波センサを、車両バンパの内面に取り付けてなり、バンパを振動の伝達経路とする超音波センサの取り付け構造であって、バンパの内面に、超音波センサの取り付け部位に隣接して取り付け部位を取り囲むように環状の溝部が設け、この溝部の幅W1,深さD1と、バンパの厚さT1との関係が、下記式を満たすようにした。(D1/T1)/(W1/T1)1/2≦1
【選択図】図2

Description

本発明は、超音波素子を備える超音波センサを、車両における樹脂製の壁部材内面に取り付けてなる超音波センサの取付け構造に関するものである。
従来、電気信号を振動に変換し、振動を電気信号に変換する超音波素子を備える超音波センサを、バンパなど車両における樹脂製の壁部材内面に取り付けてなる超音波センサの取付け構造として、例えば特許文献1,2に示される構造が提案されている。
特許文献1では、車両のバンパに貫通孔が設けられ、超音波センサがバンパに固定された状態で、貫通孔を介して超音波センサの頭部が外部に露出されている。このような構造では、超音波センサの頭部が車両外部に露出するため、意匠性の点で好ましいものではない。
これに対し、特許文献2では、車両のバンパの裏側に凹部が設けられ、この凹部に超音波センサが収容されている。そして、バンパを介して振動が伝達されるようになっている。このような構造では、超音波センサが車両外部から見えなくなるので、意匠性を向上することができる。
特開2004−264264号公報 特開平10−123236号公報
ところで、特許文献2に記載の超音波センサの取り付け構造では、金属ベースに円形板状のセラミック(超音波素子)が積層一体化された超音波センサが、セラミックよりも大きく設けられた凹所の底部の一部分に、セラミックの外面を直接接触させて取り付けられている。したがって、超音波センサの取り付け部位を始点としてバンパに生じた振動が、バンパにおける超音波センサの取り付け部位の周辺に伝播されやすく、振動が広範囲に及んで、指向性が不規則となるという問題がある。これは、振動が広範囲に及ぶことにより、各部位での位相が異なって互いに干渉することなどによるものと考えられる。
これに対し、本出願人は、先に特願2005−338760号などにおいて、バンパを介して振動が伝達される構造であって、バンパ内面におけるセンサ取り付け部位の周囲に溝部を設けた構造を提案している。これによれば、バンパにおける溝部形成部位の剛性が他の部位よりも低くなり、バンパにおける溝部形成部位及びセンサ取り付け部位が振動しやすくなるため、溝部よりも外側への振動の伝播を抑制することができる。
ところで、バンパなど樹脂製の壁部材は、温度によりその物性(ヤング率)が変化する。ヤング率は、温度が高いほど小さくなり、温度が低いほど大きくなる。また、バンパを伝播する振動(屈曲振動)の速度は、ヤング率の1/4乗に比例することが知られている。すなわち、温度が樹脂製の壁部材の振動に影響を及ぼす。
そこで、本発明者は、センサ取り付け部位の周囲に溝部を設けた構造についてさらに詳細に検討した。その結果、溝部の形態によっては、車両の使用温度範囲において、振動の節位置がバンパにおける溝部の外周から外側に離れた位置となることが明らかとなった。また、バンパにおける溝部の周囲は、溝部形成部位よりも厚さの厚い剛性の高い領域であるため、センサ取り付け部位に取り付けられた超音波センサの位置、すなわち、センサ取り付け部位の中心と超音波センサの中心との位置関係によって、節の位置が異なり、振幅最大の腹位置が異なるなど振動波形が変化してしまうことが明らかとなった。この場合、指向性がばらつくこととなる。なお、ここでいう振動の節位置とは、バンパの振動のうち、振幅の最大値を示す振動の腹の両端の節位置のことを示している。
本発明は、上記した点に鑑みてなされたもので、意匠性を向上し、且つ、所定の指向性を確保することができる超音波センサの取り付け構造を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、超音波素子を備える超音波センサを、車両における樹脂製の壁部材内面に取り付けてなり、壁部材を振動の伝達経路とする超音波センサの取り付け構造であって、壁部材の内面には、超音波センサの取り付け部位に隣接して取り付け部位を取り囲むように環状の溝部が設けられ、溝部の幅W1,深さD1と、壁部材の厚さT1との関係が、下記式を満たしていることを特徴とする。
(数1)(D1/T1)/(W1/T1)1/2≦1
本発明では、超音波センサが、壁部材を振動の伝達経路としつつ、壁部材の内面に取り付けられている。すなわち、例えば送信の場合、電気信号を受けた振動する超音波素子の振動がバンパに伝達され、バンパの振動により壁部材の外部に超音波が送信されるようになっている。また、受信の場合、超音波を受けた壁部材が振動し、この振動が超音波素子に伝達されて電気信号に変換されるようになっている。このように、超音波センサが、壁部材の外部から見えない所謂インビジブルソナーとなっているので、意匠性を向上することができる。
また、バンパにおける超音波センサの取り付け部位(以下、単にセンサ取り付け部位と示す)に隣接して溝部が設けられており、これにより、バンパにおける溝部形成部位の剛性がバンパの他の部位よりも低くなっている。したがって、バンパにおける溝部形成部位と該部位に囲まれたセンサ取り付け部位が振動しやすくなるため、溝部よりも外側への振動の伝播を抑制することができる。
また、本発明者は、センサ取り付け部位に隣接して環状の溝部を設けた構造について鋭意検討したところ、溝部の形態を、溝部の幅W1,深さD1と、壁部材の厚さT1との関係が上記数式1を満たすものとすると、車両の使用温度範囲全域において、加振幅比をほぼ1として溝部の外周位置付近を振幅最大の振動の腹の両端の節位置(以下、単に節位置と示す)とすることができることが明らかとなった。なお、加振幅比とは、壁部材における溝部の外周から内側の部位の幅A1に対する、壁部材の振動のうち、振幅最大の腹の部分を含む同相の振動部分の幅B1の比である。すなわち、加振幅比(B1/A1)が1の場合、壁部材における溝部の外周位置が節位置となる。
このように、本発明によれば、壁部材における振動の節位置が溝部の外周位置とほぼ一致するように溝部が設定されている。したがって、センサ取り付け部位に超音波センサを取り付ける際に、位置にばらつきが生じたとしても、節位置は、周囲よりも剛性の低い溝部形成部位にあり安定しているので、振幅最大の腹位置が異なるなど振動波形のばらつきを抑制することができる。これにより、所定の指向性を確保することができる。
請求項1に記載の発明において、請求項2に記載のように、壁部材の内面に、複数の超音波センサが取り付けられて各超音波センサに1つの溝部がそれぞれ設けられた構成では、壁部材の内面において、溝部の外周間の距離L1が、車両の使用環境における最低温度での壁部材の屈曲振動の波長λ以上とされた構成とすることが好ましい。
複数の超音波センサが同一の壁部材に取り付けられた構成においては、互いの振動が干渉し、これにより、振動波形、すなわち指向性に影響を及ぼすことも考えられる。そこで、本発明者は、複数の超音波センサが同一の壁部材に取り付けられた構成において、周囲に伝播された振動が隣接する超音波センサに与える影響について鋭意検討した。その結果、上記したように、請求項1を適用した溝部同士の外周の間隔L1を、車両の使用環境における最低温度での壁部材の屈曲振動の波長λ以上とすると、互いの振動の干渉を効果的に低減できることが明らかとなった。したがって、本発明によれば、複数の超音波センサが同一の壁部材に取り付けられた構成において、それぞれの超音波センサが単独で壁部材に設けられたときのほぼ同じ所定の指向性を確保することができる。
請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載のように、複数の超音波センサとして、超音波を送信する送信用超音波センサと、超音波の反射波を受信する受信用超音波センサを有する構成とすると良い。
超音波を送信するとともに、その反射波を受信することで障害物を検出する場合、送信波の指向性と受信波の指向性を合成した指向性により障害物を検知することとなる。また、温度が50〜80℃においては、壁部材を構成する樹脂のヤング率の温度変化により、指向性に局所的なディップ(落ち込み)が発生する。したがって、送受信兼用の超音波センサの場合、送信波の指向性と受信波の指向性が同じであり、送信波の指向性ディップの位置と受信波の指向性ディップの位置が重なるため、合成した送受波の指向性ディップの深さが深くなり、障害物を検出できない領域が発生してしまう。これに対し、本発明によれば、送信用超音波センサと受信用超音波センサの位置が異なり、送信波と受信波の指向性ディップの位置がずれるため、合成した送受波の指向性ディップの深さを、送受信兼用に比べて浅くすることができる。これにより、所定の指向性を確保することができる。
なお、請求項1〜3いずれかに記載の発明は、請求項4に記載のように、壁部材が車両のバンパである構成に好適である。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波センサの取り付け構造の概略を示す平面図である。図1においては、バンパの内面側の平面図である。図2は、図1に示すII−II線に沿う断面図である。
図1及び図2に示すように、超音波センサ10は、車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出装置の一部として、車両の前方、後方、及び四隅側のバンパ30に取り付けられている。詳しくは、バンパ30のうち、車外面31の裏面である車内面32に固定されている。図1及び図2では、これら超音波センサ10のうちの1つを示している。
図2に示すように、超音波センサ10は、その要部として超音波振動子11(所謂マイクロフォン)を有している。この超音波振動子11は、ハウジング12内に圧電素子13を収容してなるものである。ハウジング12は、例えばアルミニウムなどの導電性部材を用いて有底筒状に構成されている。ハウジング12としては、それ以外にも、有底筒状の樹脂部材の内面に金属コーティングがなされたものを採用することもできる。このハウジング12における底部14の内面15に圧電素子13が貼り付けられており、底部14の外面(内面15の裏面)が、超音波振動子11の振動面16となっている。なお、本実施形態においては、ハウジング12の外形が、路面に対して水平方向よりも垂直方向に長い有底角筒状となっており、振動面16も、ハウジング12の外形に対応して水平方向よりも垂直方向に長い矩形状となっている。しかしながら、本実施形態においては、バンパ30における超音波センサ10の取り付け部位34が、環状の溝部33によって区画されており、取り付け部位34の形状によって指向性が規定されるようになっている。したがって、指向性を規定する上で、振動面16の形状は特に限定されるものではない。
圧電素子13は、特許請求の範囲に記載の超音波素子に相当するものであり、例えばPZTやチタン酸バリウムなどの圧電セラミックスを焼結体としたものである。本実施形態においては、駆動信号が印加されると誘電分極によって歪みが生じ、縦方向(厚み方向)に振動して超音波を発生するPZTからなる直方体の圧電素子を採用している。この圧電素子13の表面には電極(図示略)が形成されており、この電極にリード17の一端が接続されている。そして、リード17の他端はハウジング12の外部に引き出されている。これにより、リード17を介して圧電素子13に電気信号(交流信号)を印加することができ、この電気信号の印加によって圧電素子13を駆動振動させ、超音波振動子11の振動面16を振動させることができる。
また、ハウジング12の内部空間18には、図示しないが、圧電素子13の表面のうち、底部14との固定面を除く側面部位の一部に接触して、振動エネルギーを熱エネルギーに変換し、圧電素子13の振動の一部を吸収するブチルゴムなどの制振材や、音のエネルギーを吸収するシリコンスポンジなどの吸音材が配置されている。
このように構成される超音波振動子11は、回路基板19とともに樹脂などの絶縁材料からなるケース20内に組み付けられ、超音波センサ10が構成されている。
回路基板19は、リード17を介して圧電素子13と電気的に接続されており、圧電素子13を振動させて超音波を発生するための電気信号を出力したり、圧電素子13に超音波が伝達されて圧電素子13に歪みが生じた場合に、圧電効果によって生じる電気信号(電圧信号)を入力処理する回路が形成されている。この回路基板19は、コネクタ21を介して図示しないコントローラに接続され、このコントローラにて車両の前方、後方、及び四隅部の障害物検出が行われる。
ケース20内には、超音波振動子11(圧電素子13)からケース20への不要振動の伝達を抑制するゴムなどの振動伝達抑制部材22が、超音波振動子11の振動面16及び振動面16の裏面を除く側面を取り囲むように設けられている。また、ケース20内を封止するために、例えばシリコン樹脂からなる封止部材23が回路基板19の後部に充填されている。
ケース20は筒状に構成されており、筒内部の途中に、振動伝達抑制部材22の被着された超音波振動子11を一方の開口部から挿入して固定し、回路基板19を他方の開口部から挿入して固定するためのストッパ24が形成されている。そして、振動伝達抑制部材22の被着された超音波振動子11がケース20に組み付けられた状態で、ケース20の開口端と超音波振動子11の振動面16とが、図2に示すように略面一となっている。また、ケース20の開口端と超音波振動子11の振動面16だけでなく、振動伝達抑制部材22の端部も略面一となっている。
このように構成される超音波センサ10は、図2に示すように、バンパ30の車内面32に対して超音波振動子11の振動面16が接するように固定されている。本実施形態においては、バンパ30の車内面32における溝部34よりも外側の部位に、図示しないセンサ装置固定用のホルダが固定され、このホルダにケース20が嵌合されて、超音波センサ10がバンパ30に固定されている。すなわち、本実施形態においては、超音波振動子11を構成するハウジング12の底面部16とバンパ30を介して、圧電素子13が超音波を送信、又は、圧電素子13が超音波を受信するようになっている。そして、超音波センサ10は、バンパ30の車外面31側に露出されない構成となっている。なお、バンパ30の車内面32への超音波センサ10の固定構造は、上記例に限定されるものではない。例えば、車内面32に対して振動面16が接着固定された構造としても良い。
バンパ30は、ウレタンやポリプロピレン等の合成樹脂成形品であり、特許請求の範囲に記載の壁部材に相当する。このバンパ30の車内面32には、環状の溝部33が形成されており、この溝部33によって取り囲まれた部位が、超音波センサ10の取り付け部位34となっている。
このように溝部33を設けると、バンパ30における溝部形成部位の剛性が、バンパ30における他の部位の剛性よりも低くなるため、溝部形成部位及び溝部33によって囲まれた取り付け部位34が、バンパ30における他の部位よりも変形しやすくなる。そして、溝部形成部位及び取り付け部位34での振動に費やされるエネルギーが増加して、溝部33よりも外側へ伝播される振動(不要振動)のエネルギーが減少するものと考えられる。または、溝部33よりも外側の部位の剛性が溝部形成部位の剛性よりも高いので、溝部33の外側の部位に振動が伝播されにくく、振動のエネルギーが反射される。これにより、高剛性の部位によって囲まれた溝部形成部位及び取り付け部位34での振動のエネルギーが大きくなるものと考えられる。いずれにせよ、溝部33を設けると、バンパ30における溝部形成部位及び取り付け部位34が振動しやすくなるため、溝部33よりも外側への振動の伝播を抑制することができる。この点については、例えば特開2007−147319号公報や特願2006−274416号にて本出願により報告されている。
また、溝部33は、取り付け部位34を取り囲むように、取り付け部位34に隣接して環状に設けられている。このように環状とすると、取り付け部位34からその周辺に放射状に伝播される振動の逃げ部位を無くし、振動の伝播を効果的に抑制することができる。また、取り付け部位34に隣接しているので、取り付け部位34の形状に応じた指向性を確保することができる。さらには、取り付け部位34に近いほど、圧電素子13によるバンパ30の振動のエネルギーが大きいので、溝部33によって、周囲への振動の伝播を効果的に抑制することができる。より詳しくは、取り付け部位34の外周に隣接する内周側の側面33a(以下内周面33aと示す)と、その対向面である外周側の側面(以下、外周面33bと示す)との間隔、すなわち溝部33の幅W1が一定とされ、溝部33の車内面32からの深さD1も全周で一定となっている。また、環状の溝部33の形状、すなわち取り付け部位34の外周形状が、振動面16の形状とほぼ一致する、水平方向よりも垂直方向に長い平面略矩形状となっている。
このような溝部33は、バンパ30の形成とともに形成されたものであっても良いし、形成されたバンパ30に対して加工を施すことで、形成されたものであっても良い。本実施形態では、バンパ30の形成と同時に形成されている。
取り付け部位34は、上記したように、環状の溝部33によって区画されたバンパ30の部位であり、バンパ30の厚さ方向において、車内面32側から溝部33の底面までの範囲が柱状部位となっている。そして、超音波センサ10が図示しないホルダにてバンパ30に固定された状態で、柱状部位の表面に超音波振動子11の振動面16の少なくとも一部が接触されて超音波センサ10が取り付けられている。すなわち、取り付け部位34が、バンパ30における振動の伝達部位となっている。
取り付け部位34の厚さT2は、少なくとも溝部形成部位の厚さよりも厚ければよい。したがって、溝部33の形成部位を除くバンパ30の部位の厚さT1と同じ厚さとしても良いし、厚さT1よりも厚くしても良い。さらには、厚さT1よりも薄くしても良い。本実施形態では、超音波センサ10がバンパ30の車内面32における溝部33よりも外側の部位と接触しないように、厚さT1よりも厚くなっている。そして、超音波センサ10の振動面16に対し、振動面16よりも面積が小さく、且つ、取り付け部位34の車内側表面全面が、振動面16との接触範囲に全て含まれるように、その外周形状が、水平方向よりも垂直方向に長い平面略矩形状となっている。これにより、超音波の指向性が、垂直方向に狭く、水平方向に広いものとなっている。
ところで、上記したように樹脂からなるバンパ30は、温度によりその物性(ヤング率)が変化する。具体的には、温度が高いほどヤング率が小さくなり、温度が低いほどヤング率が大きくなる。また、バンパ30を伝播する振動(屈曲振動)の速度Cbは、次式に示すように、ヤング率Eの1/4乗に比例することが知られている。なお、fは使用周波数、T1は上記したバンパ30の厚さ、ρはバンパ30の密度、νはバンパ30のポアソン比である。
(数2)Cb=[(πT1E)/{3ρ(1−ν)}]1/4
このように、温度は、樹脂製のバンパ30の振動に影響を及ぼす。そこで、本発明者は、取り付け部位34に隣接して環状の溝部33を設けた構造について、車両が使用される想定温度域(車両の使用温度範囲)全域において、所定の指向性を確保できる溝部33の形態を詳細に検討した。その際、溝部33の形態を、上記した溝部33の幅W1,深さD1、バンパ30の厚さT1を用いて、下記式により定義した。
(数3)V1=(D1/T1)/(W1/T1)1/2
図3〜7は、溝部33を種々の形態、すなわち数式3に示すV1を様々な値としたときの振動モードのFEM結果を示す図である。なお、図3ではV1=0.6、図4ではV1=0.9、図5ではV1=1.0、図6ではV1=1.1、図7ではV1=1.2としている。図8は、図3〜7の比較例として、溝部33のない構造における振動モードのFEM結果を示す図である。図8では、本実施形態と同一の構成要素について、100を加算した符号を付与している。なお、図3〜8では、溝部33の形態(溝部33の有無も含む)を除く構成を同一としており、車両の使用温度範囲を考慮して、3点の温度での振動モードを示している。詳しくは常温(23℃)を実線、低温(―30℃)を破線、高温(80℃)を一点鎖線としている。また、図9は、図3〜7に示した結果を、温度と加振幅比との関係についてまとめた図である。図9には、図8に示す結果も参考例として示している。
ここで、加振幅比とは、図7に例示したように、バンパ30における溝部33の外周面33bから内側の部位の幅A1に対する、バンパ30の幅A1方向の振動のうち、振幅最大の腹の部分を含む同相の振動部分の幅B1の比である。すなわち、加振幅比(B1/A1)=1の場合、バンパ30おける溝部33の外周面33bの位置が、振幅最大の振動の腹の両端の節位置(以下、単に節位置と示す)となる。この節位置は、振動レベルがゼロの部分である。また、加振幅比(B1/A1)>1となると節位置が溝部33の外周面33bよりも外側となり、加振幅比(B1/A1)<1となると節位置が溝部33の外周面33bよりも内側となる。なお、図8に示す溝部33のない構造においては、取り付け部位134の幅に対する、バンパ130の振動のうち、振幅最大の腹の部分を含む同相の振動部分の幅の比を、加振幅比として図9に示している。
図3〜5に示すように、V1=0.6,0.9,1.0、すなわちV1≦1の場合、温度によらず、バンパ30における振動の節位置が、溝部33の外周面33bの位置とほぼ一致していることが明らかである。このことは、図9において、V1=0.6,0.9,1.0のいずれにおいても、温度によらず加振幅比がほぼ1であることからも明らかである。
これに対し、図6,7に示すように、V1=1.1,1.2、すなわちV1>1の場合、高温(80℃)では、バンパ30における振動の節位置が、溝部33の外周面33bに近い位置にあるが、常温(23℃)と低温(−30℃)において、溝部33の外周面33bの位置よりも外側に離れていることが明らかである。このことは、図9において、V1=1.1,1.2のいずれにおいても、常温(23℃)と低温(−30℃)において、加振幅比が1よりも大きいことからも明らかである。本実施形態では、上記した結果を考慮して、数式3に示した値V1が1以下となるように、溝部33を形態が設定されている。なお、図8及び図9に示すように、溝部33のない構造では、温度によって節位置が大きく変化していることが明らかである。
このように、本実施形態では、数式3に示した値V1が1以下(V1≦1)となるように、溝部33が設けられているので、車両の使用温度範囲全域において加振幅比をほぼ1として溝部33の外周面33b付近を節位置とすることができる。
また、振動の節位置がバンパ30における溝部33の外周面33bよりも外側にある場合、溝部形成部位よりも外側に広がる厚さT1の部位が節位置となる。したがって、例えば取り付け部位34に対して超音波センサ10の位置、すなわち振動面16の中心にばらつきが生じたり、底部14の内面15に固定された圧電素子13の位置にばらつきが生じると、溝部形成部位よりも外側の厚さT1の部位で節位置もばらつくこととなり、振幅最大の腹位置が異なるなど振動波形もばらついてしまう。すなわち、所定の指向性を確保することが困難となる。
これに対し、本実施形態では、バンパ30における振動の節位置が溝部33の外周面33bの位置とほぼ一致するように溝部33が設けられている。すなわち、バンパ30に局所的に設けられ、他部位よりも剛性の低い溝部形成部位が、節位置となるようになっている。したがって、取り付け部位34に超音波センサ10を取り付ける際に、取り付け部位34の中心に対する超音波センサ10の中心、すなわち振動面16の中心にばらつきが生じたり、底部14の内面15に固定された圧電素子13の位置にばらつきが生じたとしても、節位置は、バンパ30における他部位よりも意図的に剛性を低くした溝部形成部位にて安定しているため殆どばらつくことはない。これにより、振幅最大の腹位置が異なるといった振動波形のばらつきを抑制することができ、ひいては所定の指向性を確保することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図10に基づいて説明する。図10は、本実施形態に係る超音波センサの取り付け構造の概略を示す断面図である。図10においては、便宜上、超音波センサの構造を簡略化している。
第2実施形態に係る超音波装置の取り付け構造は、第1実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
障害物検出のように、複数の超音波センサが同一の壁部材に取り付けられた構成においては、互いの振動が干渉し、振動波形(指向性)に影響を及ぼすことも考えられる。
そこで、本発明者は、複数の超音波センサが同一の壁部材に取り付けられた構成において、周囲に伝播された振動が隣接する超音波センサに与える影響について鋭意検討した。この検討においては、図10に示すように、壁部材としてのバンパ30の車内面32に、第1実施形態に示した形態(V1≦1)の環状の溝部33によって区画された取り付け部位34が、外周面33b間の距離L1をもって2つ形成され、それぞれの取り付け部位34に、第1実施形態に示した超音波センサ10と同一構成の超音波センサ10a,10bが、取り付けられた構造を採用した。溝部33の形態をV1≦1を満たすものとした理由は、節位置を外周面33bにほぼ一致させることができるからである。換言すれば、外周面33bを、振動の基準位置とできるからである。そして、外周面33b間の距離L1を様々な値としたときの振動モードを確認した。
ここで、外周面33b間の距離L1は、バンパ30を伝播する振動(屈曲振動)の波長λを用いて規定することができる。この波長λは、数式2に示した屈曲振動速度Cbを用いて次式のように示される。
(数4)λ=Cb/f
しかしながら、上記したように、樹脂からなるバンパ30は、温度によりその物性(ヤング率)が変化し、具体的には温度が高いほどヤング率が小さくなり、温度が低いほどヤング率が大きくなる。また、屈曲振動速度Cbは、数式2に示したように、ヤング率Eの1/4乗に比例する。したがって、波長λは温度によって変化し、温度が高いほど短く、温度が低いほど長くなる。そこで、本実施形態では、評価するにあたり、車両の使用温度範囲を考慮して、ヤング率が最も大きくなる低温(−30℃)でのヤング率の値を用いた。すなわち、使用温度範囲におけるヤング率の最大値を用いた。使用温度範囲において波長λが最も長いためである。
図11〜13は、外周面33b間の距離L1を様々な値としたときの振動モードのFEM結果を示す図である。図11ではL1=λ/2、図12ではL1=λ、図13ではL1=3λ/2としている。図14は、図11〜13の比較例として、1つの超音波センサでの振動モードのFEM結果を示す図である。なお、図11〜13では、それぞれの溝部33の形態を第1実施形態で示したV1=0.6とし、外周面33b間の距離L1を除く構成を同一としている。また、図14においても、超音波センサが単独であることを除けば、図11〜13と同一の構成となっている。
図11及び図14から、溝部33の外周面33b間の距離L1をλ/2とすると、超音波センサ10が単独でバンパ30に設けられたときの振動モードと比べて、それぞれの振幅最大の腹の部分がなだらかとなっていることが明らかである。また、図12〜14から、溝部33の外周面33b間の距離L1をλ,3λ/2、すなわちL1≧λとすると、その振動モード、特に振幅最大の腹の部分の形状が、超音波センサ10が単独でバンパ30に設けられたときの振動モードと殆ど同じとなっていることが明らかである。
このように、溝部33の外周面33b間の距離L1をλ以上とすると、単独の振動モードと殆ど同じとなる理由としては以下のことが考えられる。振動は、溝部33の外周面33b付近を節位置とし、バンパ30における超音波センサ10の取り付け部位34を振幅最大の腹位置として、溝部33の外周面33bよりも外側へ伝播されていくが、外周面33bから離れるほど振動エネルギーは低下する。すなわち、溝部33の外側へ伝播される振動(所謂不要振動)は、外周面33bに近いほど高いエネルギーを持っている。
距離L1=λ/2の場合、バンパ30の振動において、振幅最大の腹の部分を含む相の振動部分(図14に示す振動レベルがプラス側の部分)に隣接する逆相の振動部分(図14に示す振動レベルがマイナス側の部分)同士が、図11に示すように重なってしまう。このように、不要振動中でエネルギーの最も高い逆相の振動部分同士が干渉するため、振幅最大の腹の部分を含む振動部分も影響を受け、振動波形が超音波センサ10単独の場合と異なるものとなるものと考えられる。これに対し、距離L1がλ,3λ/2のいずれの場合も、図12及び図13に示すように、不要振動中でエネルギーの最も高い逆相の振動部分同士が重ならないため、振動波形が超音波センサ10単独の場合とほぼ同一となるものと考えられる。本実施形態では、この点を考慮して、溝部33の外周面33b間の距離L1が、車両の使用環境における最低温度(−30℃)でのバンパ30の屈曲振動の波長λ以上となっている。
このように、本実施形態では、複数の超音波センサ10a,10bが同一のバンパ30に取り付けられ、バンパ30における取り付け部位34の周囲に第1実施形態に示した態様で溝部33が設けられた構成において、溝部33同士の外周面33bの間隔L1を、車両の使用環境における最低温度でのバンパ30の屈曲振動の波長λ以上としている。したがって、超音波センサ10a,10b同士の振動の干渉を効果的に低減できる。そして、これにより、超音波センサ10a,10bが単独でバンパ30に設けられたときとほぼ同じ所定の指向性を、それぞれの超音波センサ10a,10bで確保することができる。
なお、本実施形態では、複数の超音波センサとして、2つの超音波センサ10a,10bの例を示したが、超音波センサの個数が特に限定されるものではない。
また、本実施形態では、超音波センサ10a,10bの構成が同一であり、バンパ30への取り付け構造も同一である例を示した。しかしながら、超音波センサ10a,10bの使用周波数が同じであって、取り付け部位34の表面の形状や大きさを異なるもの、すなわち指向性が異なるものに上記構成(L1≧λ)を適用することもできる。
また、本実施形態では、複数の超音波センサ10a,10bの機能について特に言及しなかった。しかしながら、複数の超音波センサとして、例えば超音波センサを送信する送信用の超音波センサ10aと、超音波センサ10aによる超音波の反射波を受信する受信用の超音波センサ10bを有する構成とすると更なる効果を得ることができる。その効果を、図15及び図16を用いて説明する。図15は、送信用の超音波センサと受信用の超音波センサを有する構成での指向性を示す図である。図16は、比較例として、送受信検兼用の超音波センサにおける指向性を示す図である。
超音波を送信するとともに、その反射波を受信することで障害物を検出する場合、送信波の指向性と受信波の指向性を合成した指向性により障害物を検知することとなる。また、温度が、車両の使用温度範囲において高温側の50〜80℃においては、バンパ30を構成する樹脂のヤング率の温度変化により、図15及び図16に示すように、送信波(実線)と受信波(破線)のいずれにも、指向性に局所的なディップ(落ち込み)が発生する。したがって、送受信兼用の超音波センサの場合、図16に示すように、送信波の指向性と受信波の指向性が同じであり、送信波の指向性ディップの位置と受信波の指向性ディップの位置が重なるため、合成した送受波(一点鎖線)のディップの深さが深くなり、障害物を検出できない領域が発生してしまう。これに対し、送信用の超音波センサ10aと受信用の超音波センサ10bを有する構成の場合、図10に示したように、バンパ30における送信用の超音波センサ10aと受信用の超音波センサ10bの取り付け位置が異なり、図15に示すように、送信波と受信波のディップの位置がずれるため、合成した送受波のディップの深さを、送受信兼用に比べて浅くすることができる。これにより、所定の指向性を確保することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
超音波センサ10の形態は上記例に限定されるものではない。少なくとも超音波素子としての圧電素子13を備えるものであれば良い。
また、溝部33の形状も上記例に限定されるものではない。例えば円環状や楕円環状としても良い。
バンパ30に取り付けられる超音波センサ10(10a,10b)の個数は、特に限定されるものではない。
車両における樹脂製の壁部材としてバンパ30の例を示した。しかしながら、例えばバンパ30のコーナー部に設けられた樹脂製のモールなど、バンパ30以外の樹脂製の部材を壁部材として採用することもできる。
第1実施形態に係る超音波センサの取り付け構造の概略を示す平面図である。 図1に示すII−II線に沿う断面図である。 V1=0.6のときの、振動モードのFEM結果を示す図である。 V1=0.9のときの、振動モードのFEM結果を示す図である。 V1=1.0のときの、振動モードのFEM結果を示す図である。 V1=1.1のときの、振動モードのFEM結果を示す図である。 V1=1.2のときの、振動モードのFEM結果を示す図である。 比較例として、溝部のない構造における振動モードのFEM結果を示す図である。 溝部の形態による温度と加振幅比との関係を示す図である。 第2実施形態に係る超音波センサの取り付け構造の概略を示す平面図である。 L1=λ/2のときの、振動モードのFEM結果を示す図である。 L1=λのときの、振動モードのFEM結果を示す図である。 L1=3λ/2のときの、振動モードのFEM結果を示す図である。 参考例として、単独の振動モードのFEM結果を示す図である。 送信用の超音波センサと受信用の超音波センサを有する構成での指向性を示す図である。 比較例として、送受信検兼用の超音波センサにおける指向性を示す図である。
符号の説明
10・・・超音波センサ
11・・・超音波振動子
13・・・圧電素子(超音波素子)
14・・・底部
16・・・振動面
30・・・バンパ(壁部材)
32・・・車内面
33・・・溝部
33b・・・外周面
34・・・取り付け部位

Claims (4)

  1. 超音波素子を備える超音波センサを、車両における樹脂製の壁部材内面に取り付けてなり、前記壁部材を振動の伝達経路とする超音波センサの取り付け構造であって、
    前記壁部材の内面には、前記超音波センサの取り付け部位に隣接して前記取り付け部位を取り囲むように環状の溝部が設けられ、
    前記溝部の幅W1,深さD1と、前記壁部材の厚さT1との関係が、下記式を満たしていることを特徴とする超音波センサの取り付け構造。
    (D1/T1)/(W1/T1)1/2≦1
  2. 前記壁部材の内面には、複数の前記超音波センサが取り付けられて各超音波センサに1つの前記溝部がそれぞれ設けられ、
    前記壁部材の内面において、前記溝部の外周間の距離が、車両の使用環境における最低温度での前記壁部材の屈曲振動の波長以上とされていることを特徴とする請求項1に記載の超音波センサの取り付け構造。
  3. 複数の前記超音波センサとして、超音波を送信する送信用超音波センサと、前記超音波の反射波を受信する受信用超音波センサを有することを特徴とする請求項2に記載の超音波センサの取り付け構造。
  4. 前記壁部材は、バンパであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の超音波センサの取り付け構造。
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