図1は、本発明の電気車の駆動システムにおける一実施形態の構成を示す図である。図1において、エンジン装置1は、システム統括制御部9が出力するエンジン出力指令NTC_engに基づいた軸出力を、速度演算部20aが出力する回転速度情報FR_genに応じて発生する。ここで、エンジン出力指令NTC_engにより選択されるエンジン出力値は、システム構成選択部26により与えられる各エンジンノッチの出力値、エンジン0N出力Pwr_eng_0N、エンジン1N出力Pwr_eng_1N、エンジン2N出力Pwr_eng_2N、エンジン3N出力Pwr_eng_3Nに従う。
誘導発電機2は、エンジン装置1の軸出力を動力として、これを3相交流電力に変換して出力する。コンバータ装置3は、誘導発電機2が発生する3相交流電力を入力として、これを直流電力に変換して出力する。ここで、コンバータ装置3は、システム統括制御部9が出力する、コンバータ発電指令NTC_cnvに基づいた発電電力となるように制御する。また、速度検出器10aは、誘導発電機2に付属していて、エンジン装置1と誘導発電機2を結合する回転軸の回転速度に基づいた速度パルス信号PLS_genを出力する。速度演算部20aは、速度パルス信号PLS_genをもとに、誘導発電機2の回転速度情報FR_genを演算して、エンジン装置1、およびコンバータ装置3に入力する。
インバータ装置4は、コンバータ装置3が出力する直流電力を入力として、これを3相交流電力に変換して出力する。誘導電動機5は、インバータ装置4が出力する3相交流電力を入力として、これを軸トルクに変換して出力する。ここで、インバータ装置4は、運転台11が出力する運転指令(NTC_inv)に基づいて、誘導電動機5の軸トルクまたは軸出力を発生するように、インバータ装置4の出力電圧、および交流電流の周波数を可変制御する。減速器6は、誘導電動機5の回転速度を、異なる歯数の歯車の組み合わせなどで減速して、それにより増幅した軸トルクで輪軸7を駆動して車両を加減速する。また、速度検出器10bは誘導電動機5に付属していて、誘導電動機5と減速機6を結合する回転軸の回転速度に基づいた速度パルス信号PLS_mtrを出力する。速度演算部20bは、速度パルス信号PLS_mtrをもとに、電動機5の回転速度情報FR_mtrを演算し、インバータ装置4、およびシステム統括制御部9に入力する。
システム統括制御部9は、運転台11が出力する運転指令NTC_inv、速度演算部20bが出力する電動機ロータ周波数FR_mtr、インバータ装置4が出力する駆動トルク情報TRQ_inv、蓄電装置8が出力する電池蓄電量SOC_btr、システム構成選択部26が出力する充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitを入力として、エンジン装置1にエンジン出力指令NTC_eng、コンバータ装置3にコンバータ発電指令NTC_cnvを出力し、2次電池蓄電量を一定範囲内とするように、これらの機器の総合的な動作状態を制御する。
補機電源用インバータ装置24は、コンバータ装置3と、インバータ装置4の間に位置する直流電力を入力として、これを3相交流電力に変換して出力する。さらに変圧器25により、電気車の照明や空調機などに供給するサービス電源電圧に調整して、各サービス機器に供給する。
システム構成選択部26は、ここでは図示していない、インバータ装置が供給すべき最大電力Pwr_inv、車両が走行する路線の勾配・曲線などの路線データDat_route、代表勾配量Inc、勾配でのバランス速度Velをもとに、各エンジンノッチにおける出力値であるエンジン0N出力Pwr_eng_0N、エンジン1N出力Pwr_eng_1N、エンジン2N出力Pwr_eng_2N、エンジン3N出力 Pwr_eng_3N、および蓄電装置8において、実際に使用する蓄電量範囲を限定する充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitを出力する。
この構成によると、システム構成選択部26において、インバータ装置が供給すべき最大電力Pwr_inv、代表勾配量Inc、勾配でのバランス速度Velの各データを基に、十分な登坂性能を確保できるように、各エンジンノッチにおける出力値である、エンジン0N出力Pwr_eng_0N、エンジン1N出力Pwr_eng_1N、エンジン2N出力Pwr_eng_2N、エンジン3N出力Pwr_eng_3Nを決定できる。また、同じくシステム構成選択部26において、インバータ装置が供給すべき最大電力Pwr_inv、車両が走行する路線の勾配・曲線などの路線データDat_route、代表勾配量Inc、勾配でのバランス速度Velの各データを基に、燃料消費量を低減し、かつ蓄電池寿命を拡大できる蓄電量範囲に限定するように、充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitを決定できる。すなわち、鉄道車両として必要な登坂性能の確保と、燃料消費量低減の要求を両立し、かつ蓄電装置の寿命を拡大できる、鉄道車両の駆動システムを実現できる。
図2は、本発明の鉄道車両の駆動システムにおける一実施形態の構成の詳細を示す図である。図2において、エンジン装置1は、少なくともエンジン12とエンジン制御装置13で構成する。エンジン制御装置13は、後述するシステム統括装置9が出力するエンジン出力信号NTC_eng、速度演算部20aが出力する発電機ロータ周波数FR_gen、同じく後述するエンジン出力選択部29が出力する各エンジンノッチの出力値であるエンジン0N出力Pwr_eng_0N、エンジン1N出力Pwr_eng_1N、エンジン2N出力Pwr_eng_2N、エンジン3N出力Pwr_eng_3Nを入力として、エンジン12の軸出力がシステム統括制御部9のエンジン出力指令NTC_engに追従するように、エンジン12に対してエンジン制御信号F_engを出力する。
誘導発電機2は、エンジン12の軸出力を動力として、これを3相交流電力に変換して出力する。コンバータ装置3は、少なくともコンバータ主回路14、電流検出器16a、16c、16d、16e、フィルタコンデンサ17a、抵抗器18a、電圧検出器19a、速度演算部20a、電流指令生成部21a、PWM制御部22aで構成する。
コンバータ主回路14は、誘導発電機2が発生する3相交流電力を入力として、PWM制御部22aが出力する電圧指令VP_cnvに従い、前述の3相交流電力を直流電力に変換して出力する。電流検出器16c、16d、16eは、前述の3相交流電流の各相電流Iu1、Iv1、Iw1を検出する。フィルタコンデンサ17aは、コンバータ主回路14で変換された直流電力の電流脈動を平滑する。電流検出器16aは、前記直流電力部の電流値Is1を検出する。抵抗器18aは前記直流電力の電流値Is1を分流して、これをもとに電圧検出器19aは前記直流電力の電圧値Ecf1を検出する。
また、速度検出器10aは誘導発電機2に付属していて、エンジン装置1と誘導発電機2を結合する回転軸の回転速度に基づいた速度パルス信号PLS_genを出力する。速度演算部20aは、速度パルス信号PLS_genをもとに、誘導発電機2の回転速度情報FR_genを演算し、エンジン制御装置13、電流指令生成部21a、およびPWM制御部22aに入力する。電流指令生成部21aは、システム統括制御部9が出力するコンバータ発電指令NTC_cnvと、速度演算部20aが出力する誘導発電機2の回転速度情報FR_genを入力として、誘導発電機2がコンバータ発電指令NTC_cnvにもとづいた定電力発電を行うためのベクトル制御電流指令Idp_cnv、Iqp_cnvを算出して出力する。PWM制御部22aは前述の3相交流電流の各相電流Iu1、Iv1、Iw1、発電機2の回転速度情報FR_gen、前記直流電力部の電流値Is1、同じく電圧値Ecf1、ベクトル制御電流指令Idp_cnv、Iqp_cnvを入力として、コンバータ主回路14を駆動する電圧指令VP_cnvを演算して出力する。
インバータ装置4は、少なくともインバータ主回路15、電流検出器16b、16f、16g、16h、フィルタコンデンサ17b、抵抗器18b、電圧検出器19b、速度演算部20b、電流指令生成部21b、PWM制御装置22bの構成要素を含む。
インバータ主回路15は、コンバータ装置3が出力する直流電力を入力として、PWM制御部22bが出力する電圧指令VP_invに従い、前述の直流電力を3相交流電力に変換して出力する。抵抗器18bは前記直流電力の電流値 Is2を分流して、これをもとに電圧検出器19bは前述した直流電力の電圧値Ecf2を検出する。電流検出器16bは前述の直流電力部の電流値Is2を検出する。フィルタコンデンサ17bは、インバータ主回路15に入力される直流電力の電流脈動を平滑する。電流検出器16f、16g、16hは、前述の3相交流電流の各相電流Iu2、Iv2、Iw2を検出する。
速度演算部20bは、速度パルス信号PLS_mtrをもとに、誘導電動機5の回転速度情報FR_mtrを演算し、システム統括制御部9、電流指令発生器21bおよびPWM制御部22bに入力する。電流指令生成部21bは、運転台11が出力する運転指令NTC_invと、速度演算部20bが出力する誘導電動機5の回転速度情報FR_mtrを入力として、運転指令NTC_invに基づいて、誘導電動機5の軸トルクまたは軸出力を発生するように、力行または発電制動トルクを制御するベクトル制御電流指令Idp_inv、Iqp_invを算出して出力する。PWM制御部22bは前述の3相交流電流の各相電流 Iu2、Iv2、Iw2、誘導電動機5の回転速度情報FR_mtr、前述した直流電力部の電流値Is2、同じく電圧値Ecf2、ベクトル制御電流指令Idp_inv、Iqp_invを入力として、インバータ主回路15の出力電圧および交流電流周波数を可変制御するVP_invを演算して出力する。
減速器6は、誘導電動機5の回転速度を、異なる歯数の歯車の組み合わせなどで減速して、それにより増幅した軸トルクで輪軸7を駆動して車両を加減速する。また、速度検出器10bは誘導電動機5に付属していて、誘導電動機5と減速機6を結合する回転軸の回転速度に基づいた速度パルス信号PLS_mtrを出力する。
システム統括制御部9は、運転台11が出力する運転指令NTC_inv、速度演算部20bが出力する電動機ロータ周波数FR_mtr、PWM制御部22bが出力する駆動トルク情報TRQ__inv、蓄電装置8が出力する電池蓄電量SOC_btr、充放電限界選択部30が出力する充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitを入力として、エンジン制御装置13にエンジン出力指令NTC_eng、電流指令発生器21bにコンバータ発電指令NTC_cnvを出力して、2次電池蓄電量を一定範囲内とするように、これらの機器の総合的な動作状態を制御する。
補機電源用インバータ装置24は、コンバータ装置3とインバータ装置4の間に位置する直流電力を入力として、これを3相交流電力に変換して出力する。さらに変圧器25により、電気車の照明や空調機などに供給するサービス電源電圧に調整して、各サービス機器に供給する。
システム構成選択部26は、少なくともシステム最適化演算部28、エンジン出力選択部29、充放電限界選択部30で構成される。システム最適化演算部28は、インバータ装置が供給すべき最大電力Pwr_inv、車両が走行する路線の勾配・曲線などの路線データDat_route、代表勾配量Inc、勾配でのバランス速度Velをもとに、駆動システムとして必要なエンジン出力である発電最大出力Pwr_eng_max、燃料消費量の低減と蓄電池寿命拡大を両立する最適蓄電量Pwr_bat_optをリアルタイムに演算して出力する。エンジン出力選択部29は、システム最適化演算部28が出力する発電最大出力Pwr_eng_optをもとに、各エンジンノッチでの出力値である、エンジン0N出力Pwr_eng_0N、エンジン1N出力Pwr_eng_1N、エンジン2N出力Pwr_eng_2N、エンジン3N出力Pwr_eng_3Nをリアルタイムに演算して出力する。充放電限界選択部30は、システム最適化演算部28が出力する最適蓄電量Pwr_bat_optをもとに、蓄電装置8において実際に使用する蓄電量範囲を決定する充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitをリアルタイムに演算して出力する。
この構成によると、システム構成選択部26において、インバータ装置が供給すべき最大電力Pwr_inv、代表勾配量Inc、勾配でのバランス速度Velの各データをもとに、十分な登坂性能を確保できる発電最大出力Pwr_eng_maxを決定し、これにより、各エンジンノッチにおける出力値である、エンジン0N出力 Pwr_eng_0N、エンジン1N出力 Pwr_eng_1N、エンジン2N出力
Pwr_eng_2N、エンジン3N出力 Pwr_eng_3Nを決定できる。また、同じくシステム構成選択部26において、インバータ装置が供給すべき最大電力Pwr_inv、車両が走行する路線の勾配・曲線などの路線データDat_route、代表勾配量Inc、勾配でのバランス速度Velの各データを基に、燃料消費量の低減と蓄電池寿命拡大を両立する最適蓄電量Pwr_bat_optを決定し、これをもとに充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitを決定できる。すなわち、鉄道車両として必要な登坂性能の確保と、燃料消費量低減の要求を両立し、かつ蓄電装置の寿命を拡大できる、鉄道車両の駆動システムを実現できる。
ところで、図2の実施形態においては、駆動システムとして必要なエンジン出力である発電最大出力Pwr_eng_max、燃料消費量の低減と蓄電池寿命拡大を両立する最適蓄電量Pwr_bat_optは、インバータ装置が供給すべき最大電力Pwr_inv、車両が走行する路線の勾配・曲線などの路線データDat_route、代表勾配量Inc、勾配でのバランス速度Velをもとに、システム最適化演算部28でリアルタイムに演算する場合について示している。しかし、鉄道車両について考えると、多くの場合は同じ路線をくり返し往復する運用である。これを考慮すると発電最大出力Pwr_eng_max、最適蓄電量Pwr_bat_optは、走行路線について一度だけ演算すれば十分と考えられる。この場合、発電最大出力Pwr_eng_max、最適蓄電量Pwr_bat_optは、システム最適化演算部28の演算を、車載でリアルタイムに行うのではなく、机上でオフラインに行い、その結果定数としての発電最大出力Pwr_eng_max、最適蓄電量Pwr_bat_optを、それぞれエンジン出力選択部29、充放電限界選択部30に入力する方法も考えられる。なお、発電最大出力Pwr_eng_max、最適蓄電量Eng_bat_optをオフラインにて決定した場合については、エンジン装置1として、発電最大出力Pwr_eng_maxに等しいか、あるいはこれを若干上回る最大出力仕様のエンジン、蓄電装置として、最適蓄電量Eng_bat_optに等しいか、これを若干上回る蓄電容量仕様の蓄電装置を、予め完成機器として組み込む方法も考えられる。
また、図2の実施形態では、各エンジンノッチでの出力値である、エンジン0N出力Pwr_eng_0N、エンジン1N出力Pwr_eng_1N、エンジン2N出力Pwr_eng_2N、エンジン3N出力Pwr_eng_3Nは、システム最適化演算部28の出力、あるいは前述の結果定数としての発電最大出力Pwr_eng_optをもとに、エンジン出力選択部29でリアルタイムに演算する場合を示している。しかし、前述のように、鉄道車両では、各エンジンノッチでの出力値についても走行路線について一度だけ演算すれば十分と考えられる。この場合、エンジン出力選択部29の演算を、車載でリアルタイムに行うのではなく、机上でオフラインに行い、その結果定数としてのエンジン0N出力Pwr_eng_0N、エンジン1N出力Pwr_eng_1N、エンジン2N出力Pwr_eng_2N、エンジン3N出力Pwr_eng_3Nを、エンジン制御装置13に入力するか、エンジン制御装置13の内部定数として記憶させておく方法も考えられる
さらに、図2の実施形態では、蓄電装置8において実際に使用する蓄電量範囲を決定する充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitを、システム最適化演算部28の出力、あるいは前述の結果定数としての最適蓄電量Pwr_bat_optをもとに、充放電限界選択部30でリアルタイムに演算する場合を示している。しかし、前述のように、鉄道車両では、各エンジンノッチでの出力値についても走行路線について一度だけ演算すれば十分と考えられる。この場合、充放電限界選択部30の演算を、車載でリアルタイムに行うのではなく、机上でオフラインに行い、その結果定数としての充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitを、システム統括制御部9に入力するか、システム統括制御部9の内部定数として記憶させておく方法も考えられる。
図3は、本発明におけるエンジン出力、常用蓄電量範囲の最適化の考え方を示す図である。図3において、横軸(X軸)は蓄電装置8の蓄電容量Κであり、縦軸(Y軸)は蓄電装置8による回生電力再利用により実現できるエンジン装置1の燃料消費量低減率γである。
ここでは、まず始めに、図3に示している曲線(a)の意味を説明する。蓄電容量Κが0点のとき、すなわち、蓄電装置8に充放電できない状態では、回生電力を再利用する効果は得られないので、燃料消費低減率γは零である。蓄電容量Κが0点からA点の間では、蓄電容量Κに応じてエンジン装置の燃料消費量低減率γが増加していく。これは、蓄電容量Κが増えるに従い、より多くの回生電力を吸収できるようになるため、回生電力の再利用効果が増大していくからである。
その後、蓄電容量ΚがA点よりも大きくなると、蓄電容量Κに応じて燃料消費量低減率γが増加する割合は、0点からA点の間よりも大幅に鈍くなり、飽和傾向を示す。これは、蓄電容量ΚがA点にあることは、蓄電容量Κが回生ブレーキが発生する電力量に等しい状態であることを意味している。いま、蓄電容量ΚをA点より大きくしても、回生ブレーキで発生する電力量が同じであれば、実際に蓄電装置8に充電される電力量は変らない。このため、蓄電容量ΚがA点よりも大きいときは、蓄電容量Κに応じて燃料消費量低減γが割合は鈍くなり、飽和傾向を示のである。
すなわち、蓄電装置8としては、その蓄電容量ΚをA点に設定すれば、必要最小限の蓄電容量で、十分な燃料消費量低減率γを実現できるといえる。
ところで、曲線(b)は、回生ブレーキで発生する電力量が、曲線(a)の場合に比べて少ないため、蓄電容量Κに応じて燃料消費量低減率γが増加する割合が、蓄電容量Κがより小さいB点で、飽和傾向になる状態を示している。このように、蓄電装置8の蓄電容量Κと、エンジン装置1の燃料消費量低減率γの関係が曲線(b)のようになったときは、その蓄電容量ΚをB点に設定することにより、必要最小限の蓄電容量Κで十分な燃料消費量低減率γを実現できるといえる。
同様に、曲線(c)は、回生ブレーキで発生する電力量が、曲線(b)の場合に比べて少ないため、蓄電容量Κに応じて燃料消費量低減率γが増加する割合が、蓄電容量Κがより小さいC点で、飽和傾向になる状態を示している。このように、蓄電装置8の蓄電容量Κと、エンジン装置1の燃料消費量低減率γの関係が曲線(C)のようになったときは、その蓄電容量ΚをC点に設定することにより、必要最小限の蓄電容量Κで十分な燃料消費量低減率γを実現できるといえる。
次に、曲線(a)〜(c)を用いて、具体的に充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitを決定する考え方について説明する。いま、蓄電容量Κと燃料消費量低減率γの関係が、曲線(a)になったとする(条件(A))。
この条件下では、A点において、蓄電容量Κに応じて燃料消費量低減率γが増加する割合が大幅に鈍くなり、飽和傾向を示す。すなわち、このA点での蓄電容量Κを、蓄電装置8の充電限界Aとして設定すれば、条件(A)では、必要最小限の蓄電容量K(充電限界A)で十分な燃料消費量低減率γを実現できる。なお、条件(A)における放電限界Aは、蓄電装置8の仕様として使える蓄電容量の最小値を設定する。これは、例えば蓄電装置8としての使用が考えられるリチウムイオン電池において、充放電を許容する蓄電量範囲をできるだけ低くすることにより、電池寿命を延長できることが、実機試験などにより確認されているからである。すなわち、条件(A)では、蓄電装置8の蓄電容量Κの使用範囲を、充電限界Aから放電限界Aとすれば、燃料消費量低減率γの最大化と、蓄電装置8の寿命拡大を両立する、鉄道車両の駆動システムを実現できる。
また、蓄電容量Κと燃料消費量低減率γの関係が、曲線(b)になったとする(条件(B))。
この条件下では、B点において、蓄電容量Κに応じて燃料消費量低減率γが増加する割合が大幅に鈍くなり、飽和傾向を示す。すなわち、このB点での蓄電容量Κを、蓄電装置8の充電限界Bとして設定すれば、条件(B)では、必要最小限の蓄電容量K(充電限界B)で十分な燃料消費量低減率γを実現できる。なお、条件(B)における放電限界Bは、蓄電装置8の仕様として使える蓄電容量の最小値を設定する。これにより、条件(B)では、蓄電装置8の蓄電容量Κの使用範囲を、充電限界bから放電限界Bに限定とすれば、燃料消費量低減率γの最大化と、蓄電装置8の寿命拡大を両立する、鉄道車両の駆動システムを実現できる。
さらに、蓄電容量Κと燃料消費量低減率γの関係が、曲線(c)になったとする(条件(C))。この条件下では、C点において、蓄電容量Κに応じて燃料消費量低減率γが増加する割合が大幅に鈍くなり、飽和傾向を示す。すなわち、このC点での蓄電容量Κを、蓄電装置8の充電限界Cとして設定すれば、条件(C)では、必要最小限の蓄電容量K(充電限界C)で十分な燃料消費量低減率γを実現できる。なお、条件(C)における放電限界Bは、蓄電装置8の仕様として使える蓄電容量の最小値を設定する。これにより、条件(C)では、蓄電装置8の蓄電容量Κの使用範囲を、充電限界Cから放電限界Cとすれば、燃料消費量低減率γの最大化と、蓄電装置8の寿命拡大を両立する、鉄道車両の駆動システムを実現できる。
図4は、本発明の一実施形態におけるエンジン出力、常用蓄電量範囲の最適化手順を示すブロック図である。図4のブロック図は、本発明の鉄道車両の駆動システムについて、蓄電装置8の最適蓄電量Eng_bat_optと、エンジン装置1の発電最大出力Pwr_eng_maxを決定する具体的な手順を示している。
データ設定部31では、発電最大出力Pwr_eng_maxと、最適蓄電量Eng_bat_optを決定するために必要な基本データを設定する。ここでは、基本データとして、インバータ最大電力Pwr_inv、路線データDat_route、代表勾配量Inc、勾配バランス速度Velを設定している。このほかに、エンジン装置1の燃料消費量特性、蓄電装置8の充放電特性などの機器仕様データ、外気温などの周囲環境データの入力機能をデータ設定部31に追加すれば、発電最大出力Pwr_eng_maxと、最適蓄電量Eng_bat_optの決定精度をさらに向上できると考えられる。
エンジン出力演算部32では、代表勾配量Incと、勾配バランス速度Velを入力して、発電最大出力Pwr_eng_maxを算出する。ここで、エンジン発電の最大出力である発電最大出力Pwr_eng_maxは、蓄電装置8の蓄電量が枯渇したときを想定して、エンジン発電のみで勾配区間を所定速度以上で走破できるよう決定する。
ここで、ある路線の代表勾配量をInc[rad]、その勾配バランス速度をVel[m/s]、車両の質量をM[kg]、車両の走行抵抗をReg[N]、エンジン出力から車両駆動力まで機器効率をζ、重力加速度をg[m/s^2]としたとき、発電最大出力Pwr_eng_max[J/s]は次のように導出される。
ここで、車両の質量M、車両の走行抵抗Regは車両固有の物理量であり、重力加速度は不変の物理量であることから、発電最大出力Pwr_eng_maxを決定するための変動パラメターは、代表勾配量Inc、勾配バランス速度Velである。すなわち、エンジン出力演算部32において、発電最大出力Pwr_eng_maxは、代表勾配量Inc、勾配バランス速度Velをもとに算出できる。
加減算器33では、インバータ最大電力Pwr_invから、発電最大出力Pwr_eng_maxを引き算して、蓄電装置必要電力Pwr_batを算出する。蓄電容量算出部34では、蓄電装置必要電力Pwr_batを入力として、充放電最大電力/蓄電最大容量テーブルを参照することにより、蓄電装置必要蓄電量E(1)を算出する。一般的に、最大充放電電力、最大蓄電容量は、蓄電装置を構成する単位蓄電媒体(単セル)の接続数で決定される。すなわち、単位蓄電媒体(単セル)の最大充放電電力、最大蓄電容量に対して、その接続数を掛け算することにより、蓄電装置全体の最大充放電電力、最大蓄電容量を求められる。このことから、蓄電装置必要電力Pwr_batと、蓄電装置必要蓄電量E(1)の関係は、充放電最大電力/蓄電最大容量テーブルで、数式として表現できる。
逐次演算部35では、蓄電装置必要容量E(1)と、後述のカウンタ39で繰り上げられた逐次演算インデックスnを入力として、蓄電装置必要容量E(n)を算出する。ただし、初期状態(n=1)における逐次演算部35の出力値は、蓄電装置必要容量E(1)である。
走行模擬演算部36では、発電最大出力Pwr_eng_max、路線データDat_route、蓄電装置必要容量E(n)を入力として、模擬演算の結果である燃料消費低減率ρ(n)を算出する。ここで、nは逐次演算の回数である。
初期状態(n=1)において、走行模擬演算部36は、蓄電容量算出部34の出力である蓄電装置必要容量E(1)を基に、燃料消費低減率ρ(1)を出力する。特性演算部37では、蓄電装置必要容量E(1)と、燃料消費低減率ρ(1)を入力として、蓄電装置必要容量E(1)をX軸値、燃料消費低減率ρ(1)をY軸値として、X-Y座標にプロットする。なお、n=0のときについては、E(0)=0(蓄電容量ゼロ)とすれば、このときは燃料消費低減率もゼロであることから、ρ(0)=0である。
最適判定部38では、蓄電装置必要容量E(n)、E(n-1)と、燃料消費低減率ρ(n)、ρ(n-1)を入力として、次式に基づいて条件判定演算をする。
すなわち、特性演算部37においてプロットされる、蓄電装置必要容量E(n)と燃料消費低減率ρ(1)の特性曲線の傾きであるρ(n)-ρ(n-1)}/{E(n)-E(n-1)}と、所定値Qの比較演算を行う。
(数式3)の比較演算が真(True)の場合、そのときの蓄電装置必要容量E(n)を最適蓄電量Eng_bat_optとして出力する。(数式3)の比較演算が偽(False)の場合、カウンタ39において逐次演算のインデックスnを加算して(n=n+1)、逐次演算部35において、新しい蓄電装置必要容量E(n)を算出する。以下、同様に最適判定部38で比較演算をくり返し、(数式3)の比較演算が真(True)となった時点で逐次演算を終了して、そのときの蓄電装置必要容量E(n)を最適蓄電量Eng_bat_optとして出力する。
以上の手順に従い、発電最大出力Pwr_eng_max、最適蓄電量Eng_bat_optを演算して決定し、これを満足するエンジン発電の最大出力、蓄電装置の充電限界、放電限界を決定して、さらに、これに基づいてエンジン装置を制御し、蓄電装置の蓄電量を管理することにより、鉄道車両として必要な登坂性能の確保と、燃料消費量低減の要求を両立し、かつ蓄電装置の寿命を拡大できる、鉄道車両の駆動システムを実現できる。
ところで、これまでに示した、エンジン装置1の最大出力と、蓄電装置8の最適蓄電量を導出する具体的な手順は、鉄道車両の駆動システムにおける、システム構成選択部26にてオンボードのリアルタイム演算で実現することを想定している。しかし、鉄道車両について考えると、多くの場合は同じ路線をくり返し往復する運用である。これを考慮すると発電最大出力Pwr_eng_max、最適蓄電量Pwr_bat_optは、走行路線について一度だけ演算すれば十分と考えられる。
この場合、発電最大出力Pwr_eng_max、最適蓄電量Pwr_bat_optは、システム最適化演算部28の演算を、車載でリアルタイムに行うのではなく、机上でオフラインに行い、その結果定数としての発電最大出力Pwr_eng_max、最適蓄電量Pwr_bat_optを、それぞれエンジン出力選択部29、充放電限界選択部30に入力すればよい。
すなわち、図4の手順に従うことにより、データ設定部31における各データの設定、エンジン出力部32における発電最大出力Pwr_eng_maxの演算、蓄電容量算出部34における蓄電装置必要容量E(1)の算出、逐次演算部35における蓄電装置必要容量E(n)の演算、走行模擬演算部36における燃料消費低減率ρ(n)のシミュレーション演算、最適判定部38における最適蓄電量Eng_bat_optの判定は、パソコンなどを用いたオフライン検討する方法も考えられる。
なお、発電最大出力Pwr_eng_max、最適蓄電量Eng_bat_optをオフラインにて決定した場合については、エンジン装置1として、発電最大出力Pwr_eng_maxに等しいか、あるいはこれを若干上回る最大出力仕様のエンジン、蓄電装置として、最適蓄電量Eng_bat_optに等しいか、これを若干上回る蓄電容量仕様の蓄電装置を、予め完成機器として組み込む方法も考えられる。
以上の手順に従い、発電最大出力Pwr_eng_max、最適蓄電量Eng_bat_optを、オフラインで予め演算して決定し、これに基づいて機器仕様を決定することにより、鉄道車両として必要な登坂性能の確保と、燃料消費量低減の要求を両立できる、鉄道車両の駆動システムを実現できる。
図5は、本発明の一実施形態におけるエンジン出力変更機能を実現するブロック図である。エンジン出力割付表40は、複数のエンジンノッチと、対応するエンジン出力の関係を示す複数のリストである、エンジン出力割付(A群)40a、エンジン出力割付(B群)40b、エンジン出力割付(C群)40cで構成される。
エンジン出力割付(A群)40aでは、エンジン0ノッチ(E0N)の出力Pwr_eng_A0、エンジン1ノッチ(E1N)の出力Pwr_eng_A1、エンジン2ノッチ(E2N)の出力Pwr_eng_A2、エンジン3ノッチ(E3N)の出力Pwr_eng_A3を割り付ける。ここで、各エンジンノッチの出力であるPwr_eng_A0、Pwr_eng_A1、Pwr_eng_A2、Pwr_eng_A3のうち、エンジン3ノッチ(E3N)の出力Pwr_eng_A3を最大とする。
エンジン出力割付(B群)40bでは、エンジン0ノッチ(E0N)の出力Pwr_eng_B0、エンジン1ノッチ(E1N)の出力Pwr_eng_B1、エンジン2ノッチ(E2N)の出力Pwr_eng_B2、エンジン3ノッチ(E3N)の出力Pwr_eng_B3を割り付ける。ここで、各エンジンノッチの出力であるPwr_eng_B0、Pwr_eng_B1、Pwr_eng_B2、Pwr_eng_B3のうち、エンジン3ノッチ(E3N)の出力Pwr_eng_B3を最大とする。
エンジン出力割付(C群)40cでは、エンジン0ノッチ(E0N)の出力Pwr_eng_C0、エンジン1ノッチ(E1N)の出力Pwr_eng_C1、エンジン2ノッチ(E2N)の出力Pwr_eng_C2、エンジン3ノッチ(E3N)の出力Pwr_eng_C3を割り付ける。ここで、各エンジンノッチの出力であるPwr_eng_C0、Pwr_eng_C1、Pwr_eng_C2、Pwr_eng_C3のうち、エンジン3ノッチ(E3N)の出力Pwr_eng_C3を最大とする。
なお、エンジン出力割付(A群)40a、エンジン出力割付(B群)40b、エンジン出力割付(C群)40cにおいて、それぞれ設定するエンジンノッチの出力は、最大であるエンジン3ノッチ(E3N)の出力Pwr_eng_A3、Pwr_eng_B3、Pwr_eng_C3が、少なくとも次の関係を満たすように決定する。
図4の説明の中で、発電最大出力Pwr_eng_maxは、エンジン出力演算部32において、代表勾配量Incと、勾配バランス速度Velの入力をもとに、蓄電装置8の蓄電量が枯渇したときを想定して、エンジン発電のみで勾配区間を所定速度以上で走破できる発電出力として決定すると説明した。この発電最大出力Pwr_eng_maxは、代表勾配量Incと、勾配バランス速度Velを基に、連続量として決定できる。しかし、実際のエンジンでは、最大出力はエンジンの種類、または出力性能特性により決定されるため、発電最大出力Pwr_eng_maxを連続量で決定することは難しい。このため、エンジン発電の最大出力として、Pwr_eng_A3、Pwr_eng_B3、Pwr_eng_C3のように複数値決定して、この中から発電最大出力Pwr_eng_max以上でかつ最も近いエンジン最大出力を含むエンジン出力割付を、エンジン出力割付(A群)40a、エンジン出力割付(B群)40b、エンジン出力割付(C群)40cの内からひとつ選択する。このように、発電最大出力Pwr_eng_maxとして必要なエンジン出力を確保することにより、実際のエンジンで得られる出力点を考慮し、かつ登坂性能確保の要求を両立するエンジン最大発電出力を、簡便に決定できる。
比較器41は、発電最大出力Pwr_eng_maxを入力して、エンジン出力割付表40を構成する、エンジン出力割付(A群)40a、エンジン出力割付(B群)40b、エンジン出力割付(C群)40cのうち、いずれかを選択するための信号である、エンジン出力割付信号(A群)選択信号Pwr_eng_A、エンジン出力割付信号(B群)選択信号Pwr_eng_B、エンジン出力割付信号(C群)選択信号Pwr_eng_Cを出力する。
比較器41aでは、発電最大出力Pwr_eng_maxが、エンジン出力割付(A群)とエンジン出力割付(B群)におけるエンジン3ノッチ(E3N)平均出力値である、(Pwr_eng_A3+Pwr_eng_B3)/2よりも小さいとき、エンジン出力割付信号(A群)選択信号Pwr_eng_Aとして「1」を、それ以外のとき「0」を出力する。
比較器41bでは、発電最大出力Pwr_eng_maxが、エンジン出力割付(A群)とエンジン出力割付(B群)におけるエンジン3ノッチ(E3N)平均出力値である、(Pwr_eng_A3+Pwr_eng_B3)/2以上であり、かつエンジン出力割付(B群)とエンジン出力割付(C群)におけるエンジン3ノッチ(E3N)平均出力値である、(Pwr_eng_B3+Pwr_eng_C3)/2以下のとき、エンジン出力割付信号(B群)選択信号Pwr_eng_Bとして「1」を、それ以外のとき「0」を出力する。
比較器41cでは、発電最大出力Pwr_eng_maxが、エンジン出力割付(B群)とエンジン出力割付(C群)におけるエンジン3ノッチ(E3N)平均出力値である、(Pwr_eng_B3+Pwr_eng_C3)/2よりも大きいとき、エンジン出力割付信号(C群)選択信号Pwr_eng_Cとして「1」を、それ以外のとき「0」を出力する。
エンジン出力選択器42は、エンジン出力割付信号(A群)選択信号Pwr_eng_A、エンジン出力割付信号(B群)選択信号Pwr_eng_B、エンジン出力割付信号(C群)選択信号Pwr_eng_Cを入力として、これをもとにエンジン出力割付(A群)40a、エンジン出力割付(B群)40b、エンジン出力割付(C群)40cを選択して、各エンジンノッチに対応して、エンジン0N出力Pwr_eng_0N、エンジン1N出力Pwr_eng_1N、エンジン2N出力Pwr_eng_2N、エンジン3N出力Pwr_eng_3Nを出力する。
エンジン出力割付信号(A群)選択信号Pwr_eng_Aが「1」のとき、エンジン0N出力Pwr_eng_0NとしてPwr_eng_A0、エンジン1N出力Pwr_eng_1NとしてPwr_eng_A1、エンジン2N出力Pwr_eng_2NとしてPwr_eng_A2、エンジン3N出力Pwr_eng_3NとしてPwr_eng_A3をそれぞれ選択して出力する。
エンジン出力割付信号(B群)選択信号Pwr_eng_Bが「1」のとき、エンジン0N出力Pwr_eng_0NとしてPwr_eng_B0、エンジン1N出力Pwr_eng_1NとしてPwr_eng_B1、エンジン2N出力Pwr_eng_2NとしてPwr_eng_B2、エンジン3N出力Pwr_eng_3NとしてPwr_eng_B3をそれぞれ選択して出力する。
エンジン出力割付信号(C群)選択信号Pwr_eng_Cが「1」のとき、エンジン0N出力Pwr_eng_0NとしてPwr_eng_C0、エンジン1N出力Pwr_eng_1NとしてPwr_eng_C1、エンジン2N出力Pwr_eng_2NとしてPwr_eng_C2、エンジン3N出力Pwr_eng_3NとしてPwr_eng_C3をそれぞれ選択して出力する。
この構成によると、システム構成選択部26において、インバータ装置が供給すべき最大電力Pwr_inv、代表勾配量Inc、勾配でのバランス速度Velの各データを基に、十分な登坂性能を確保できる発電最大出力Pwr_eng_maxを決定し、これにより、各エンジンノッチにおける出力値である、エンジン0N出力Pwr_eng_0N、エンジン1N出力Pwr_eng_1N、エンジン2N出力Pwr_eng_2N、エンジン3N出力Pwr_eng_3Nを決定できる。すなわち、鉄道車両として必要な登坂性能を確保できる、鉄道車両の駆動システムを実現できる。
ところで、図5の実施形態では、各エンジンノッチでの出力値である、エンジン0N出力Pwr_eng_0N、エンジン1N出力Pwr_eng_1N、エンジン2N出力Pwr_eng_2N、エンジン3N出力Pwr_eng_3Nは、システム最適化演算部28の出力、あるいは前述の結果定数としての発電最大出力Pwr_eng_optをもとに、エンジン出力選択部29でリアルタイムに演算する場合を示している。
しかし、前述のように、鉄道車両では、各エンジンノッチでの出力値についても走行路線について一度だけ演算すれば十分と考えられる。この場合、エンジン出力選択部29の演算を、車載でリアルタイムに行うのではなく、机上でオフラインに行い、その結果定数としてのエンジン0N出力Pwr_eng_0N、エンジン1N出力Pwr_eng_1N、エンジン2N出力Pwr_eng_2N、エンジン3N出力Pwr_eng_3Nを、エンジン制御装置13に入力するか、エンジン制御装置13の内部定数として記憶させておく方法も考えられる。
図6は、本発明の一実施形態における常用蓄電量範囲変更機能を実現するブロック図である。使用蓄電量範囲設定部43は、蓄電装置8で実際に使用できる蓄電量の上限値である充電限界、同じく下限値である放電限界を決定する。使用蓄電量範囲設定部43は、使用蓄電量範囲(A群)43a、使用蓄電量範囲(B群)43b、使用蓄電量範囲(C群)43cで構成される。
使用蓄電量範囲(A群)43aでは、充電限界AとしてChg_limit(0)、放電限界AとしてDch_limit(0)を予め設定しておく。使用蓄電量範囲(B群)43bでは、充電限界BとしてChg_limit(1)、放電限界BとしてDch_limit(1)を予め設定しておく。使用蓄電量範囲(C群)43cでは、充電限界CとしてChg_limit(2)、放電限界CとしてDch_limit(2)を予め設定しておく。
なお、使用蓄電量範囲(A群)43a、使用蓄電量範囲(B群)43b、使用蓄電量範囲(C群)43cにおいて、それぞれ設定する充電限界A Chg_limit(0)、充電限界B Chg_limit(1)、充電限界C Chg_limit(2)が、次の関係を満たすように決定する。
図4の説明の中で、特性演算部37でプロットされる蓄電装置必要容量E(n)と燃料消費低減率ρ(n)の特性曲線について、その傾き、{ρ(n)-ρ(n-1)}/{E(n)-E(n-1)}と、所定値Qを比較演算し、(数式3)で示す関係が真(True)であるときの蓄電装置必要容量E(n)を、最適蓄電量Eng_bat_optとして出力することを説明した。ここで、最適蓄電量Eng_bat_optは、特性演算部37でプロットされる蓄電装置必要容量E(n)と、燃料消費低減率ρ(n)の特性曲線の傾きを基に決定される連続量である。
しかし、実際の蓄電装置における蓄電容量の決定は、蓄電装置の構成単位で制限を受けるため、連続量として決定すること難しい。このため、充電限界として、Chg_limit(0)、Chg_limit(1)、Chg_limit(2)のように複数決定しておき、この中から最適蓄電量Eng_bat_opt以上であり、かつ最適蓄電量Eng_bat_optに最も近い使用蓄電量範囲を、使用蓄電量範囲(A群)43a、使用蓄電量範囲(B群)43b、使用蓄電量範囲(C群)43cの内からひとつ選択する。このように、最適蓄電量Eng_bat_optとして必要な蓄電装置の蓄電容量を確保することにより、実際の蓄電装置の構成単位を考慮し、かつ燃料消費量低減の要求を両立する蓄電容量を、簡便に決定できる。
比較器44は、最適蓄電量Eng_bat_optを入力して、使用蓄電量範囲設定部43を構成する、使用蓄電量範囲(A群)43a、使用蓄電量範囲(B群)43b、使用蓄電量範囲(C群)43cのうち、いずれかを選択するための信号である、使用蓄電量範囲(A群)選択信号CD_limit_A、使用蓄電量範囲(B群)選択信号CD_limit_B、使用蓄電量範囲(C群)選択信号CD_limit_Cを出力する。
比較器44aでは、最適蓄電量Eng_bat_optが、使用蓄電量範囲(A群)と使用蓄電量範囲(B群)における、充電限界の平均出力値である、「(Chg_limt(0)+ Chg_limt(2))/2」よりも小さいとき、使用蓄電量範囲(A群)選択信号CD_limit_Aとして「1」を、それ以外のとき「0」を出力する。
比較器44bでは、最適蓄電量Eng_bat_optが、使用蓄電量範囲(A群)と使用蓄電量範囲(B群)における、充電限界の平均出力値である、「(Chg_limt(0)+Chg_limt(1))/2」以上であり、かつ使用蓄電量範囲(B群)と使用蓄電量範囲(C群)における、充電限界の平均出力値である「(Chg_limt(1)+Chg_limt(2))/2」以下のとき、使用蓄電量範囲(B群)選択信号CD_limit_Bとして「1」を、それ以外のとき「0」を出力する。
比較器44cでは、最適蓄電量Eng_bat_optが、使用蓄電量範囲(B群)と使用蓄電量範囲(C群)における、充電限界の平均出力値である「(Chg_limt(1)+Chg_limt(2))/2」よりも大きいとき、使用蓄電量範囲(C群)選択信号CD_limit_Cとして「1」を、それ以外のとき「0」を出力する。
充放電限界選択器45は、使用蓄電量範囲(A群)選択信号CD_limit_A、使用蓄電量範囲(B群)選択信号CD_limit_B、使用蓄電量範囲(C群)選択信号CD_limit_Cを入力として、これをもとに使用蓄電量範囲(A群)43a、使用蓄電量範囲(B群)43b、使用蓄電量範囲(C群)43cを選択して、充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limit、を出力する。
使用蓄電量範囲(A群)選択信号CD_limit_Aが「1」のとき、充電限界Chg_limitとしてChg_limit(0)、放電限界Dch_limitとしてDch_limit(0)をそれぞれ選択して出力する。使用蓄電量範囲(B群)選択信号CD_limit_Bが「1」のとき、充電限界Chg_limitとしてChg_limit(1)、放電限界Dch_limitとしてDch_limit(1)をそれぞれ選択して出力する。使用蓄電量範囲(C群)選択信号CD_limit_Cが「1」のとき、充電限界Chg_limitとしてChg_limit(2)、放電限界Dch_limitとしてDch_limit(2)をそれぞれ選択して出力する。
この構成によると、システム構成選択部26において、インバータ装置が供給すべき最大電力Pwr_inv、車両が走行する路線の勾配・曲線などの路線データDat_route、代表勾配量 Inc、勾配でのバランス速度Velの各データを基に、燃料消費量の低減と蓄電池寿命拡大を両立する最適蓄電量Pwr_bat_optを決定し、これにより充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitを決定できる。すなわち、鉄道車両として必要な登坂性能の確保、および燃料消費量低減と、蓄電装置の寿命拡大を両立できる鉄道車両の駆動システムを実現できる。
ところで、図5の実施形態では、蓄電装置8において実際に使用する蓄電量範囲を決定する充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitを、システム最適化演算部28の出力、あるいは前述の結果定数としての最適蓄電量Pwr_bat_optをもとに、充放電限界選択部30でリアルタイムに演算する場合を示している。
しかし、前述のように、鉄道車両では、各エンジンノッチでの出力値についても走行路線について一度だけ演算すれば十分と考えられる。この場合、充放電限界選択部30の演算を、車載でリアルタイムに行うのではなく、机上でオフラインに行い、その結果定数としての充電限界Chg_limit、放電限界Dch_limitを、システム統括制御部9に入力するか、システム統括制御部9の内部定数として記憶させておく方法も考えられる。
以上のように、エンジン装置の出力制御、および蓄電装置の蓄電量管理により、鉄道車両として必要な登坂性能の確保と、燃料消費量低減の要求を両立し、かつ蓄電装置の寿命を拡大できる、鉄道車両の駆動システムを実現する。