JP2010001203A - 窒化珪素焼結体、窒化珪素切削工具、窒化珪素焼結体の製造方法 - Google Patents

窒化珪素焼結体、窒化珪素切削工具、窒化珪素焼結体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミニウム合金、アルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の切削加工時における、耐摩耗性、耐欠損性の高い窒化珪素焼結体工具の提供。
【解決手段】窒化珪素焼結体の結晶組成100は、微少な粒子であるα型窒化珪素101および針状の粒子であるβ型窒化珪素103からなる結晶相110と、α型窒化珪素およびβ型窒化珪素の粒子の間に存在する、焼結助剤成分を含む粒界相120とから構成されている。窒化珪素焼結体は、α率が35%以下であり、かつ、二次元断面上での長軸径が2μm以上のβ型窒化珪素の粒子面積の占める比率が10%以下である。こうすることにより、窒化珪素焼結体の組成中に粒子形状が針状のβ型の窒化珪素粒子が存在するので、β型の窒化珪素が亀裂進展に対する抵抗となるとともに、β型の窒化珪素同士が互いに絡み合うことにより靭性が向上し、窒化珪素焼結体の耐磨耗性及び耐欠損性を向上できる。
【選択図】図5

Description

本発明は、窒化珪素焼結体および窒化珪素焼結体により形成される切削工具に関する。
従来、自動車用部品等の材料として鋳鉄が利用されている。鋳鉄の加工には、窒化珪素焼結体工具が広く使用されている。窒化珪素焼結体工具は、鋳鉄の切削時において、高い耐欠損性、耐摩耗性、耐熱衝撃性等を有している(例えば、引用文献1)。
近年、自動車用部品等の金属製部品は、部品の軽量化を目的として、鋳鉄からアルミニウム合金へ材料の転換がされつつある。従来使用されている窒化珪素焼結体工具を用いてアルミニウム合金を切削加工すると、窒化珪素焼結体工具に欠損が生じるため、アルミニウム合金の切削加工には、例えば、ダイヤモンド焼結体工具や、表面に硬質炭素等の被膜が施された超硬工具が利用されている(例えば、引用文献2,引用文献3)。ダイヤモンド焼結体工具は、高耐摩耗性および長寿命という利点を有しており、また、アルミニウム合金とダイヤモンド焼結体との反応性が低いため、良好な切削性能を提供できる。被覆超硬工具は耐摩耗性が優れ、製造コストが低い利点がある。
特開平11−139876号公報 特開2003−145316号公報 特開平11−291104号公報
しかしながら、ダイヤモンド焼結体工具は、鋳鉄との反応性が高いため、アルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の切削時における耐摩耗性の低下という問題や、高価であるため費用がかさむという問題がある。また、高能率な高速切削加工を行なう場合、超硬工具は、刃先形状を鋭利に形成すると摩耗量の増大に起因する短寿命化という問題が生じたり、表層に硬質炭素等の被膜を形成すると、アルミニウム合金や、アルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の切削時における被膜の剥離という問題が生じたりする。
上述の課題は、自動車部品に限られるものではなく、種々の機械、装置に用いられるアルミニウム合金、アルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の切削加工時においても生じる課題である。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、アルミニウム合金、アルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の切削加工時において、耐摩耗性、耐欠損性の高い窒化珪素焼結体工具の提供を目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
窒化珪素に焼結助剤を添加して焼結することにより生成される窒化珪素系焼結体であって、α型の窒化珪素およびβ型の窒化珪素からなる主結晶相と、前記焼結助剤を成分に含む粒界相と、から構成され、前記窒化珪素系焼結体における、前記α型の窒化珪素の占める比率が35%以下であり、かつ、前記窒化珪素焼結体の二次元断面状での長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素の占める比率が10%以下であることを特徴とする、窒化珪素焼結体。
適用例1の窒化珪素焼結体によれば、窒化珪素焼結体の組成は、窒化珪素系焼結体におけるα型の窒化珪素の占める比率が35%以下であり、かつ、前記窒化珪素系焼結体の二次元断面上での、長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素の粒子面積の占める比率が10%以下となる。従って、窒化珪素焼結体の組成中に、粒子形状が針状のβ型の窒化珪素粒子が存在するので、β型の窒化珪素が亀裂進展に対する抵抗となるクラックディフレクションの効果を得ることができるとともに、β型の窒化珪素同士が互いに絡み合うことにより靭性が向上する。よって、窒化珪素焼結体の耐磨耗性及び耐欠損性を向上できる。また、長軸径2μm以上のβ型窒化珪素の割合が10%以下であるため、アルミニウム合金およびアルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の加工に有用な鋭利な刃先を得ることができる。また、α型の窒化珪素が35%以下であるということは、すなわち、微細なα型の窒化珪素が適度に存在していることを意味しているので、β型の窒化珪素粒子を粗大化させることなくクラックディフレクションの効果を得ることができ、靭性を向上できる。
[適用例2]
適用例1の窒化珪素焼結体において、前記β型の窒化珪素の長軸径は、7μm以下である。適用例2の窒化珪素焼結体によればアルミニウム合金およびアルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の加工に有用な鋭利な刃先を得ることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2の窒化珪素焼結体において、前記窒化珪素焼結体の二次元断面上における、前記粒界相の占める比率は、3面積%〜9面積%である。適用例3の窒化珪素焼結体によれば、従来の窒化珪素の焼成温度(約1700℃〜1900℃)よりも低温で焼結できるため、窒化珪素焼結体の粒子形状を、微細、かつ、針状組織化した、緻密な窒化珪素焼結体とすることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3いずれかの窒化珪素焼結体において、前記焼結助剤は、マグネシウム(Mg)および希土類元素を含む。適用例4の窒化珪素焼結体によれば、マグネシウムが焼結助剤として用いられる。マグネシウムは粒界相を形成する他の焼結助剤及び窒化珪素原料が不純物として含む酸化珪素との液相生成温度を低温化することができることから、窒化珪素粒子の粗大化を抑制し、かつ、緻密化させることができる。また、希土類元素は他の焼結助剤と反応して粒界相を形成し、焼結体を緻密にするとともに、窒化珪素の針状粒子の生成により窒化珪素焼結体の機械的特性を向上することができる。また、イッテルビウム元素を含む焼結助剤は、各種希土類元素を含む焼結助剤の中でも窒化珪素の焼結性を向上させる効果が大きく、特に、マグネシウム元素を含む焼結助剤と組み合わせた場合、焼結性がより向上する。従って、窒化珪素粒子の微細、かつ、針状組織化ができる。
[適用例5]
適用例4の窒化珪素焼結体において、前記焼結助剤は、前記マグネシウム(Mg)を酸化マグネシウム(MgO)換算で2〜5重量%含み、かつ、希土類元素としてイッテルビウム(Yb)を酸化イッテルビウム(Yb2O3)換算で3〜11重量%含む。適用例5の窒化珪素焼結体によれば、焼結助剤には、マグネシウム(Mg)を酸化マグネシウム(MgO)換算で2〜5重量%含み、かつ、イッテルビウム(Yb)を酸化イッテルビウム(Yb2O3)換算で3〜11重量%含まれる。従って、焼結助剤の偏析およびβ型の窒化珪素の粗大化を抑制でき、微細、かつ、針状組織化した、緻密な窒化珪素焼結体とすることができる。
[適用例6]
窒化珪素質工具であって、α型の窒化珪素およびβ型の窒化珪素からなる主結晶相と、前記焼結助剤を成分に含む粒界相と、から構成される窒化珪素焼結体からなり、前記窒化珪素焼結体は、前記窒化珪素系焼結体におけるα型の窒化珪素の占める比率が35%以下、かつ、前記窒化珪素系焼結体の二次元断面上での長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素の粒子面積の占める比率が10%以下であることを特徴とする、窒化珪素質工具。
適用例6の窒化珪素質工具によれば、窒化珪素系焼結体におけるα型の窒化珪素の占める比率が35%以下、かつ、前記窒化珪素系焼結体の二次元断面上での長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素の粒子面積の占める比率が10%以下であることを特徴とする窒化珪素焼結体を材料として形成される。従って、高耐摩耗性、高耐欠損性を有する窒化珪素質工具を提供できる。
[適用例7]
切削インサートであって、α型の窒化珪素およびβ型の窒化珪素からなる主結晶相と、前記焼結助剤を成分に含む粒界相と、から構成される窒化珪素焼結体からなり、前記窒化珪素焼結体は、前記窒化珪素系焼結体のα型の窒化珪素の占める比率が35%以下、かつ、前記窒化珪素系焼結体の二次元断面上での長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素の粒子面積の占める比率が10%以下であることを特徴とする、切削インサート。
適用例7の切削インサートによれば、窒化珪素系焼結体のα型の窒化珪素の占める比率が35%以下、かつ、前記窒化珪素系焼結体の二次元断面上での長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素の粒子面積の占める比率が10%以下であることを特徴とする窒化珪素焼結体を材料として形成される。従って、高耐摩耗性、高耐欠損性を有する切削インサートを提供できる。
[適用例8]
適用例7の切削インサートにおいて、表面に非晶質炭素膜が被覆されていることを特徴とする。適用例8の切削インサートによれば、耐摩耗性、耐欠損性を更に向上できる。
[適用例9]
窒化珪素切削工具であって、切削インサートを装着するための装着手段と、前記装着手段に装着された適用例7または適用例8の切削インサートと、を備える窒化珪素切削工具。
適用例9の窒化珪素切削工具によれば、窒化珪素系焼結体のα型の窒化珪素の占める比率が35%以下、かつ、前記窒化珪素系焼結体の二次元断面上での長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素の粒子面積の占める比率が10%以下であることを特徴とする窒化珪素焼結体を材料として形成される。従って、高耐摩耗性、高耐欠損性を有する窒化珪素切削工具を提供できる。
[適用例10]
適用例6または適用例9の窒化珪素切削工具において、アルミニウム合金材料およびアルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の切削に用いることを特徴とする。適用例10の窒化珪素切削工具によれば、アルミニウム合金材料およびアルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の切削において、従来の窒化珪素切削工具や超硬工具に比して、優れた切削性能を有する切削工具を提供できる。
[適用例11]
窒化珪素焼結体の製造方法であって、平均粒径0.5μmかつα型の窒化珪素の占める割合が95%以上の窒化珪素粉末と、焼結助剤とを、合計100重量%となるように配合して混合し、前記混合の結果生成された粉末を成形して成形体を生成し、前記成形体を約1500℃〜約1550℃で1次焼成し、前記1次焼成された成形体を、約1450℃〜約1550℃で2次焼成する、窒化珪素焼結体の製造方法。
適用例11の窒化珪素焼結体の製造方法によれば、成形体を約1500℃〜約1550℃で1次焼成し、1次焼成された成形体を、約1450℃〜約1550℃、より好ましくは、約1475℃〜約1525℃で2次焼成することにより窒化珪素焼結体が製造される。従って、従来の窒化珪素の焼成温度よりも低温で焼結できるため、窒化珪素焼結体の粒子形状を、微細、かつ、針状組織化できる。よって、高強度の窒化珪素焼結体を製造できる。
[適用例12]
窒化珪素切削工具の製造方法であって、平均粒径0.5μmかつα型の窒化珪素の占める割合が95%以上の窒化珪素粉末と、焼結助剤とを、合計100重量%となるように配合して混合し、前記混合の結果生成された粉末を成形して成形体を生成し、前記成形体を約1500℃で1次焼結し、前記1次焼成された成形体を、約1450℃〜約1550℃、より好ましくは、約1475℃〜約1525℃で2次焼結し、前記2次焼結により得られた窒化珪素焼結体を切削工具に加工する、窒化珪素切削工具の製造方法。
適用例12の窒化珪素切削工具の製造方法によれば、従来の窒化珪素の焼成温度よりも低温で焼結することにより生成された窒化珪素焼結体を加工することにより切削工具が製造される。従って、微細針状の粒子組成微細、かつ、針状化した組織を有する高強度の窒化珪素焼結体により切削工具を製造できる。よって、高耐摩耗性、高耐欠損性を有する窒化珪素切削工具を提供できる。
本発明において、上述した種々の態様は、適宜、組み合わせたり、一部を省略したりして適用することができる。
A.第1実施例:
第1実施例の窒化珪素焼結体、切削インサート、窒化珪素切削工具について、適宜図面を参照しつつ、以下に説明する。
A1.製造方法:
図1は、第1実施例における窒化珪素切削工具の製造方法を説明するフローチャートである。図2は、第1実施例における切削インサートを例示する説明図である。図3は、第1実施例における窒化珪素切削工具を表す正面図である。図4は、第1実施例における窒化珪素切削工具を表す平面図である。図2に示す切削インサートは、図1に示す製造方法により製造されたインサートである。図3および図4は、切削インサートが装着された状態の窒化珪素切削工具を表している。
平均粒径0.5μmかつα率が95%の窒化珪素粉末と、焼結助剤とを、合計100重量%となるように配合し、配合された粉末をエタノールと共にボールミル中で約40時間混合し混合物(スラリー)を生成し、次に、スラリーを湯煎乾燥により造粒し粉末にする(ステップS10)。第1実施例では、α率とは、配合される全粉末に含まれるα型の窒化珪素粉末の割合を表している。以降、本明細書では、α型の窒化珪素をα型窒化珪素と呼ぶ。第1実施例では、焼結助剤として、マグネシウム(Mg)および希土類元素を利用しており、特に、希土類として、イッテルビウム(Yb)を用いる。第1実施例の焼結助剤には、マグネシウム(Mg)が酸化マグネシウム(MgO)換算で2〜5重量%含まれており、イッテルビウム(Yb)が酸化イッテルビウム(Yb2O3)換算で3〜11重量%含まれている。尚、アルミ合金の加工に用いられる窒化珪素焼結体は、焼結体組織中の窒化珪素粒子を微細、かつ、針状組織化するために、鋳鉄加工を目的とした窒化珪素焼結体に対して焼結助剤を多く添加することが好ましく、マグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)とが、酸化マグネシウム(MgO)と酸化イッテルビウム(Yb2O3)換算による合計で、約7重量%〜約15重量%含まれていることが好ましく、約7重量%〜約13重量%含まれていることがより好ましい。
次に、造粒した粉末を、1500kgf/cm2、で冷間等方圧加圧(cold isostatic pressing:CIP)成形により成形する(ステップS12)。
続いて、CIP成形により成形された成形体を1次焼成する(ステップS14)。具体的には、成形体を、1気圧の窒素(N2)雰囲気下において、約1500℃〜1550℃で2時間保存する。
続いて、1次焼成された成形体を2次焼成する(ステップS16)。具体的には、1次焼成された成形体を、1000気圧の窒素(N2)雰囲気下において、約1450℃〜約1550℃、より好ましくは、約1475℃〜約1525℃で約4時間保持する。この結果、第1実施例の窒化珪素焼結体が得られる。
次に、得られた窒化珪素焼結体を、所定の工具形状に研磨加工することにより、切削インサートが得られる(ステップS18)。第1実施例では、図2に示すように、所定の工具形状は、ISO規格で、SNGN432サイズ(縦12.7mm、横12.7mm、高さ4.76mm、ホーニング無し)である。第1実施例では、切削インサート2の刃先は面取り刃先加工を施していないが、面取り刃先加工(例えば、面取り幅が0.3mm、面取り角が25°)を行って、面取部を形成してもよい。切削インサート2を、図3及び図4に示す様に、ホルダ付き切削工具(フライスカッター)4にセットすることにより、窒化珪素切削工具が得られる(ステップS20)。なお、切削インサート2の表面には、非晶質炭素を被膜しても良い。非晶質炭素被膜により、アルミニウム合金を切削加工する際の溶着を抑制することができる。
切削インサート2を装着した窒化珪素切削工具(フライスカッター)4について説明する。図3及び図4に示す様に、フライスカッター4は、略円柱状のカッターボディ本体(ホルダ)5を有し、その先端側(加工面側:図3の手前側)の外周に沿って、6箇所に凹状の切削部6が設けられたものである。つまり、ホルダ5の先端側の外周に沿って、6箇所に凹状の取付部7が設けられ、この取付部7内に、切削インサート2、切削インサート2を取り付けるための合金鋼製のカートリッジ8、同じ合金鋼製のクサビ9等の部材が配置されて、切削部6が構成されている。フライスカッター4の1箇所の取付部7に1枚の切削インサート2が装着されている。尚、図3及び図4では、窒化珪素切削工具の構造を明瞭にするために、一部切削インサート2等の部材が省略されている。
図5は、第1実施例における窒化珪素焼結体の結晶の組成を表す模式図である。図(a)5は、2次焼成後の結晶組成を表している。図5(b)は、β型の窒化珪素の径について表している。結晶組成100は、微細な粒子であるα型窒化珪素101と、針状の粒子であるβ型の窒化珪素(以降、本明細書では、β型窒化珪素と呼ぶ)103からなる結晶相110と、α型窒化珪素およびβ型窒化珪素の粒子の間に存在する、焼結助剤成分を含む粒界相120とから構成されている。第1実施例において、β型窒化珪素粒子の長軸径および短軸径は、窒化珪素焼結体を鏡面研磨し、エッチング後、走査型電子顕微鏡(SEM)により組織を撮影し(図5(a))、撮影画像を画像解析して、測定される。撮影画像は、窒化珪素系焼結体の二次元断面に当たる。図5(b)に示すように、β型窒化珪素の1つの粒子の中で最も幅が大きい部分がその粒子の長軸径(X)であり、長軸に対して略垂直方向で最も幅が小さい部分が、その粒子の短軸径(Y)である。第1実施例では、窒化珪素焼結体の二次元断面上における、粒界相120の占める比率は、3面積%〜9面積%である。上記製造方法によれば、従来の窒化珪素の焼成温度(約1700℃〜1900℃)よりも低温で焼結できる。窒化珪素の焼成温度が高くなると、焼結体中の比較的大きな粒子は、周囲の微細な粒子を吸収して更に粗大化するので、窒化珪素の焼成温度を低温化することで、粒子の粗大化を抑制、言い換えれば、粒子の微細化(窒化珪素の場合は柱状に粒成長していくので針状化)することができる。従って窒化珪素焼結体の粒子形状を、微細、かつ、針状組織化した、緻密な窒化珪素焼結体とすることができる。
第1実施例の窒化珪素焼結体は、窒化珪素系焼結体におけるα率が35%以下であり、かつ、窒化珪素系焼結体の二次元断面上での長軸径が2μm以上のβ型窒化珪素の粒子面積の占める比率が10%以下である。α率は、25%以下であることがより好ましく、長軸径が2μm以上のβ型窒化珪素の粒子面積の占める比率は、5%以上であることがより好ましい。また、β型窒化珪素の長軸径は、7μm以下であることが好ましい。窒化珪素系焼結体におけるα率は、冷却後の窒化珪素焼結体におけるα相(α型窒化珪素の相)の存在率を意味している。ここで、窒化珪素系焼結体のα率が35%以下であるとは、次のことを意味する。すなわち、通常、原料となるα型窒化珪素粉末に焼結助剤を添加して焼成した場合、昇温途中および温度保持の最中に高温層のβ相(β型窒化珪素の相)に相転移するが、冷却後の焼結体において、α相が35%以下の割合で存在していることを意味している。
窒化珪素系焼結体のα率は、以下に示す式1により表される。なお、式1において、α型窒化珪素の指数(hkl)のX線回折強度をα(hkl)と表し、β型窒化珪素の指数(hkl)のX線回折強度をβ(hkl)と表す。
Figure 2010001203
窒化珪素系焼結体のα率を35%以下としたのは次の理由による。すなわち、窒化珪素系焼結体のα率が35%より高い場合、焼結体組織自体は微細化するが、針状のβ型窒化珪素の割合が少ないために、クラックディフレクションの効果が低減され、靭性が低下し、耐摩耗性および耐欠損性の低下を招くためである。
また、窒化珪素系焼結体の二次元断面上に置いて、長軸径が2μm以上のβ型窒化珪素の粒子面積の占める比率を10%以下としたのは、次の理由による。すなわち、針状のβ型窒化珪素が存在すると、窒化珪素焼結体の亀裂進展に対する抵抗となることにより強度が向上するとともに、針状のβ型窒化珪素が互いに絡み合って、更に強度が向上する。よって、高い耐摩耗性および耐欠損性を得ることができる。また、β型窒化珪素の長軸径を2μm以下とすることにより、アルミニウム合金およびアルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の切削に有効な鋭利な刃先を得ることができる。
また、窒化珪素系焼結体の二次元断面上において、長軸径が2μm以上のβ型窒化珪素の粒子面積の占める比率を5%以上とすることにより、長軸径が2μm以上のβ型窒化珪素の粒子面積の占める比率が5%未満の場合に比して、窒化珪素系焼結体の耐摩耗性および耐欠損性を向上できる。
また、β型窒化珪素の長軸径が7μmより大きい粒子が存在するということは、全体的に長軸径の比較的大きなβ型窒化珪素が多く存在しているとともに、α率が低いと考えられ、窒化珪素系焼結体の耐摩耗性および耐欠損性が低下すると考えられる。よって、β型窒化珪素の長軸径が7μm以下となるように窒化珪素焼結体を製造することにより、アルミニウム合金およびアルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の加工に有用な鋭利な刃先を得ることができる。
以上説明した第1実施例の窒化珪素焼結体によれば、窒化珪素焼結体の組成は、窒化珪素系焼結体のα型の窒化珪素の占める比率が35%以下であり、かつ、長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素の粒子面積の占める比率が10%以下となる。従って、窒化珪素焼結体の組成中に、粒子形状が針状のβ型の窒化珪素粒子が存在するので、β型の窒化珪素が亀裂進展に対する抵抗となるとともに、β型の窒化珪素同士が互いに絡み合うことにより靭性が向上する。よって、窒化珪素焼結体の耐磨耗性及び耐欠損性を向上できる。また、長軸径2μm以上のβ型窒化珪素の粒子面積の割合が10%以下であるため、アルミニウム合金およびアルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の加工に有用な鋭利な刃先を得ることができる。また、α型の窒化珪素が35%以下であるということは、すなわち、微細なα型の窒化珪素が適度に存在していることを意味しているので、β型の窒化珪素粒子を粗大化させることなくクラックディフレクションの効果を得ることができ、靭性を向上できる。
また、第1実施例の窒化珪素焼結体は、窒化珪素系焼結体の二次元断面上において、長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素の粒子面積の占める比率は、5%以上である。適用例1の窒化珪素焼結体によれば、窒化珪素焼結体の組成中に、長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素が5%〜10%含まれる。よって、粒子形状が針状のβ型の窒化珪素粒子を窒化珪素焼結体の組成中に適度に存在させることができ、靭性を向上できる。
また、第1実施例の窒化珪素焼結体によれば、焼結助剤には、マグネシウム(Mg)が酸化マグネシウム(MgO)換算で0.5〜5重量%含まれ、かつ、イッテルビウム(Yb)が酸化イッテルビウム(Yb2O3)換算で3〜11重量%含まれる。従って、1450℃〜1550℃程度の温度(従来の窒化珪素の焼成温度よりも低温)で焼成できるため、α型の窒化珪素のβ型の窒化珪素への相転移が抑制されるとともに、β型の窒化珪素の径の拡大が抑制される。よって、微細、かつ、針状組織化した、緻密な窒化珪素焼結体とすることができる。
A2.切削性能の評価:
上述の製造方法により製造された窒化珪素焼結体の性能について、比較例と比較しつつ以下に説明する。図6は、第1実施例の窒化珪素焼結体と従来の窒化珪素焼結体との組織をそれぞれ表す画像である。図7は、第1実施例におけるフライス加工を説明する模式図である。表1は、上述の製造方法により得られた窒化珪素焼結体(実施例試料1〜8)と、比較例の窒化珪素焼結体(比較例試料9〜14)の、配合組成(wt%)、1次焼成温度(℃)、2次焼成温度(℃)、窒化珪素焼結体の2次元断面において長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素の占める割合(%)、β型の窒化珪素の最大長軸径(μm)、窒化珪素焼結体のα率(%)、および、粒界相量(面積%)を表している。また、表1には、後述する方法により評価された耐欠損性について「欠損」の欄に併せて示した。以降、本明細書では、実施例の製造方法により得られた窒化珪素焼結体の試料1〜8を実施例試料1〜8と呼び、比較例としての窒化珪素焼結体の試料9〜14を比較例試料9〜14と呼ぶ。
Figure 2010001203
表1において、窒化珪素粒子の長軸径および短軸径は、窒化珪素焼結体を鏡面研磨し、エッチング後、走査型電子顕微鏡(SEM)により組織を撮影し、5000倍に拡大した撮影画像を画像解析して測定した。また、窒化珪素焼結体における粒界相量は、窒化珪素焼結体の中央部を切断して得られる断面の鏡面研磨面をSEM観察し、得られた組織写真を二階調化し、その後、画像解析ソフトウェアで解析することで測定した。本実施例では、画像処理ソフトは、三谷商事株式会社製のWinROOFを使用した。また、窒化珪素焼結体のα率は、既述の式1に示す計算式を用いて算出した。
表2は、実施例試料1〜3と、比較例としての従来の窒化珪素焼結体(比較例試料9、13、14)の特性の測定結果を表している。
Figure 2010001203
表2において、特性としては、強度(MPa)、靭性(MPa/m0.5)、硬度(Hv)、熱伝導率(W/mK)を測定した。各特性の測定方法および値について説明する。強度はJISR1601に基づく3点曲げ強度測定により測定した。破壊靭性はJISR1607に基づくIF法により測定した。硬度はJISR1610に基づくビッカース硬さ試験法により測定した。熱伝導率はJISR1611に基づくレーザーフラッシュ法により測定した。
図6(a)は、実施例試料3の窒化珪素焼結体の組織を表しており、図6(b)は、比較例試料9の窒化珪素焼結体の組織を表している。図6において、黒色の領域は結晶相を表しており、白色の領域は粒界相を表している。図6(a)および図6(b)に示すように、実施例試料3の窒化珪素焼結体は、比較例試料9の窒化珪素焼結体に比して、粒子形状が、微細針状となっている。このような粒子形状にすることにより、微細針状のβ型窒化珪素同士が絡み合って、強度、硬度が向上する。また、靭性もほぼ維持される。
実施例試料1〜8と比較例試料9〜14の切削インサートを、図4に示す正面削り用6枚歯フライスカッター用ホルダに1枚セットし、以下に示す切削試験条件で切削加工を行い、耐摩耗性および耐欠損性を評価した。なお、切削インサート2は、ホーニング(面取り)加工が施されていないものを利用した。評価試験における切削加工は、具体的には、図7に示すように、フライスカッター4が回転軸4aに取り付けられており、切削対象のアルミニウム合金200がテーブルに固定されている。回転軸4aを矢印R1に示すように回転させつつ、フライスカッター4を回転軸4aに対して垂直方向(図7の矢印R2方向)に移動させることにより、アルミニウム合金200の表面200aを切削加工する。以降、本明細書では、フライスカッター4が、被削材(第1実施例ではアルミニウム合金)200上を矢印R2方向に走査した回数を「パス」と表す。例えば、フライスカッター4が被削材200上を2回走査すると、パス数は2と表される。表1において、「欠損」の欄には、耐欠損性が示されており、この切削試験により欠損が発生するまでのパス数が10以上の試料については「A」を付し、パス数が2〜9の試料については「B」を付し、パス数が1または0の試料については「C」を付した。
<切削試験条件>
・被削材:アルミニウム合金(AC4A−T6)
・切削速度:1000m/min.
・送り速度:0.1mm/刃
・切り込み深さ:1mm
・切削油:湿式(水溶性クーラントを使用)
表1に示すように、実施例試料1〜8では優れた耐欠損性が得られたのに対し、比較例試料9〜14は1〜9パスで欠損が発生した。
図8は、第1実施例における窒化珪素切削工具についてのアルミニウム合金の連続切削試験による工具刃先の逃げ面の摩耗量(mm)についての評価結果を示すグラフである。図8に、実施例の一例としての実施例試料3の切削インサートおよび比較例としての超硬工具(K種超硬)を用いて、アルミニウム合金の連続切削試験による工具刃先の逃げ面の摩耗量(mm)についての評価結果を示した。また、表3に、実施例試料1〜8,比較例試料10およびの切削インサートおよび超硬工具(K種超硬)の切削インサートを用いて、アルミニウム合金の連続切削試験による工具刃先の逃げ面の摩耗量(mm)および欠損の発生についての評価結果を示した。
Figure 2010001203
図8および表3のいずれも、以下の切削試験条件の下で行われた評価試験の結果を表している。図8のグラフ300において、縦軸は、切削インサートの逃げ面の摩耗量(mm)を表しており、横軸は、切削加工のパス数を表している。グラフ300では、一例として、実施例試料3の切削インサートの摩耗量と、超硬工具(K種超硬)の切削インサートの摩耗量を表している。なお、比較例試料の窒化珪素焼結体により形成された切削インサートでは、9パス以内に欠損してしまい、摩耗量の測定が困難であるため、比較例として、超硬工具(K種超硬)を用いた。表3における各試料および超硬工具の摩耗量は、一例である。表3において、「欠損」の欄には、耐欠損性が示されており、この切削試験により欠損が発生しない試料については「A」を付し、欠損が発生した試料については欠損の発生したパス数を記載した。また、欠損が発生しない試料については、更に継続試験を行い、40パス時点においても欠損が発生しない試料については「S」を付した。
<切削試験条件>
・被削材:アルミニウム合金(AC4A−T6)
・切削速度:1000m/min.
・送り速度:0.1mm/刃
・切り込み深さ:1mm
・切削油:湿式(水溶性クーラントを使用)
・パス数:30パス
グラフ300に示すように、切削加工のパス数の増加に伴い、実施例試料3の切削インサートも比較例としての超硬工具(K種超硬)の切削インサートも摩耗するが、実施例試料3の切削インサートの摩耗量は、超硬工具(K種超硬)の切削インサートに比して少ない。例えば、30パス終了した時点では、実施例試料3の切削インサートの摩耗量は、超硬工具の切削インサートの約1/3である。
表3に示すように、実施例試料では優れた耐欠損性が得られた。また、超硬工具(K種超硬)に対しても優れた耐磨耗性が得られた。なお、比較例試料10については7パス目で欠損が発生したため、欠損発生時点における摩耗量を示した。
以上説明したように、第1実施例の窒化珪素切削工具によれば、アルミニウム合金の切削において、従来の窒化珪素切削工具、超硬工具に比して、優れた切削性能を有する切削工具を提供できる。
B.第2実施例:
第2実施例では、性能評価試験において、アルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料を被削材とする。なお、第2実施例において、窒化珪素焼結体を生成するための試料、窒化珪素焼結体、切削インサート、窒化珪素切削工具の製造方法は、第1実施例と同様である。
B1.切削性能の評価:
図9は、第2実施例における被削材を例示する説明図である。図10は、第2実施例におけるフライス加工を説明する模式図である。図11は、第2実施例における耐摩耗性の試験結果を表すグラフである。図9および図10に示すように、第2実施例の被削材500は、2本の矩形柱状のアルミニウム合金510と、2本のアルミニウム合金510の間に、アルミニウム合金510よりも小さい矩形柱状の鋳鉄520を2つ配置してなるアルミニウム合金・鋳鉄複合部材である。以降、被削材500をアルミニウム合金・鋳鉄複合部材500と呼ぶ。実施例試料1〜8、比較例試料10(第1実施例において説明した表1参照)および超硬(K種超硬)の切削インサートの刃先を、図4に示す正面削り用6枚歯フライスカッター用ホルダにセットし、以下に示す切削試験条件で、図9に示すアルミニウム合金・鋳鉄複合部材500の切削加工を行い、耐摩耗性および耐欠損性を評価した。第1実施例と同様に、フライスカッター4の回転軸4aを矢印R1に示すように回転させつつ、フライスカッター4を回転軸4aに対して垂直方向(図10の矢印R2方向)に移動させることにより、アルミニウム合金・鋳鉄複合部材500の表面を切削加工する。
図11に、実施例試料3の切削インサートおよび比較例としての超硬工具(K種超硬)、アルミナ+SiCウィスカー系工具および比較例試料10を用いて、アルミニウム合金・鋳鉄複合部材500の連続切削試験による工具刃先の磨耗量(VB)についての評価結果を示した。また、表4に、実施例試料1〜8の切削インサートおよび比較例試料10および超硬工具(K種超硬)を用いて、アルミニウム合金・鋳鉄複合部材500の連続切削試験による工具刃先の逃げ面の摩耗量(mm)および欠損の発生についての評価結果を示した。
Figure 2010001203
図11および表4のいずれも、以下の切削試験条件の下で行われた評価試験の結果を表している。図11のグラフ600において、縦軸は、切削インサートの逃げ面の摩耗量(mm)を表しており、横軸は、切削加工のパス数を表している。表3における各試料の窒化珪素焼結体および超硬工具の摩耗量は、一例である。表4において、「欠損」の欄には、耐欠損性が示されており、この切削試験により欠損が発生しない試料については「A」を付し、欠損が発生した試料については欠損の発生したパス数を記載した。
(切削試験条件)
・被削材:アルミニウム合金(AC4A−T6)+鋳鉄(FC200)
・被削材比率:アルミニウム合金(56パーセント)、鋳鉄(13パーセント)、空転(31パーセント)
・切削速度:1000m/min.
・送り速度:0.1mm/刃
・切り込み深さ:0.5mm
・切削油:湿式(水溶性クーラントを使用)
・パス数:10パス
グラフ600に示すように、切削加工のパス数の増加に伴い、実施例試料3の切削インサートも比較例としての超硬工具(K種超硬)、アルミナ+SiCウィスカー系工具および比較例試料10も摩耗するが、実施例試料3の切削インサートの摩耗量は、超硬工具(K種超硬)、アルミナ+SiCウィスカー系工具および比較例試料10に比して少ない。例えば、超硬工具(K種超硬)は1パス目終了時点での摩耗面の荒れが大きく、アルミナ+SiCウィスカー系工具は3パス目終了時点での摩耗面の荒れが大きく、それぞれ1パス目、3パス目で試験を終了せざるを得ないほど摩耗する、すなわち、実施例試料3との耐摩耗性の比較が困難なほど摩耗する。比較例試料10は、6パス目で欠損が発生しており、また、10パス目が終了した時点での摩耗量は実施例試料3の切削インサートに比して大きい。
また、表4に示すように、実施例試料1〜6では優れた耐欠損性が得られた。また、超硬工具(K種超硬)に対しても優れた耐磨耗性が得られた。なお、比較例試料10については6パス目で欠損が発生した。また、超硬工具(K種超硬)は、被削材摩耗面の荒れが大きかったので1パスで試験を終了した。
以上説明した第2実施例の窒化珪素焼結体は、第1実施例と同様の効果を有する。また、また、第2実施例の窒化珪素切削工具によれば、アルミニウム合金と鋳鉄とからなるアルミニウム合金・鋳鉄複合部材の切削において、従来の窒化珪素切削工具、超硬工具に比して、優れた切削性能を有する切削工具を提供できる。
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成をとることができる。
第1実施例における窒化珪素切削工具の製造方法を説明するフローチャート。 第1実施例における切削インサートを例示する説明図。 第1実施例における窒化珪素切削工具を表す正面図。 第1実施例における窒化珪素切削工具を表す平面図。 第1実施例における窒化珪素焼結体の結晶の組成を表す模式図。 第1実施例の窒化珪素焼結体と従来の窒化珪素焼結体との組織をそれぞれ表す画像。 第1実施例におけるフライス加工を説明する模式図。 第1実施例における耐摩耗性の試験結果を表すグラフ。 第2実施例における被削材を例示する説明図。 第2実施例におけるフライス加工を説明する模式図。 第2実施例における耐摩耗性の試験結果を表すグラフ。
符号の説明
2…切削インサート
4…フライスカッター
4a…回転軸
5…ホルダ
6…切削部
7…取付部
8…カートリッジ
9…クサビ
100…結晶組成
101…α型窒化珪素
103…β型窒化珪素
110…結晶相
120…粒界相
200…アルミニウム合金
200a…表面
300…グラフ
500…アルミニウム合金・鋳鉄複合部材
510…アルミニウム合金
520…鋳鉄
600…グラフ

Claims (8)

  1. 窒化珪素に焼結助剤を添加して焼結することにより生成される窒化珪素焼結体であって、
    α型の窒化珪素およびβ型の窒化珪素からなる主結晶相と、
    前記焼結助剤を成分に含む粒界相と、から構成され、
    前記窒化珪素系焼結体のα型の窒化珪素の占める比率が35%以下であり、かつ、前記窒化珪素系焼結体の二次元断面上での、長軸径が2μm以上のβ型の窒化珪素の粒子面積の占める比率が10%以下であることを特徴とする、窒化珪素焼結体。
  2. 請求項1記載の窒化珪素焼結体であって、
    前記β型の窒化珪素の長軸径は、7μm以下である、窒化珪素焼結体。
  3. 請求項1または請求項2記載の窒化珪素焼結体であって、
    前記窒化珪素焼結体の二次元断面上における、前記粒界相の占める比率は、3面積%〜9面積%である、窒化珪素焼結体。
  4. 請求項1ないし請求項3いずれか記載の窒化珪素焼結体であって、
    前記焼結助剤は、マグネシウム(Mg)および希土類元素を含む、窒化珪素焼結体。
  5. 請求項4記載の窒化珪素焼結体であって、
    前記焼結助剤は、前記マグネシウム(Mg)を酸化マグネシウム(MgO)換算で2〜5重量%含み、かつ、希土類元素としてイッテルビウム(Yb)を酸化イッテルビウム(Yb2O3)換算で3〜11重量%含む、窒化珪素焼結体。
  6. 請求項1ないし請求項5いずれか記載の窒化珪素焼結体からなる切削インサートを備える窒化珪素切削工具。
  7. 請求項6記載の窒化珪素切削工具であって、
    アルミニウム合金材料およびアルミニウム合金と鋳鉄とからなる材料の切削に用いることを特徴とする、窒化珪素切削工具。
  8. 請求項1ないし請求項5いずれか記載の窒化珪素焼結体の製造方法であって、
    平均粒径0.5μmかつα型の窒化珪素の占める割合が95%以上の窒化珪素粉末と、焼結助剤とを、合計100重量%となるように配合して混合し、
    前記混合の結果生成された粉末を成形して成形体を生成し、
    前記成形体を約1500℃〜約1550℃で1次焼成し、
    前記1次焼成された成形体を、約1450℃〜約1550℃で2次焼成する、窒化珪素焼結体の製造方法。
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