JP2009544299A - 可溶性デンプン合成酵素iv(ssiv)活性を欠いた植物、該植物を得るための方法、およびその使用法 - Google Patents

可溶性デンプン合成酵素iv(ssiv)活性を欠いた植物、該植物を得るための方法、およびその使用法 Download PDF

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Abstract

可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を得るための、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠くように修飾された植物の使用法。
【選択図】図7

Description

本発明は、改良されたデンプン合成の特徴を含む、改良された産業上有益な特徴を有する、遺伝的に修飾された植物の分野に関するものである。
デンプンは、穀物粒を含む様々な植物の粒の主要な構成要素であり、穀物粒では、成熟した粒の重量のおよそ65%〜67%を占めるものである。一般的に、穀物では乾燥重量でデンプン含有量が45%から85%を占め、豆類では乾燥重量の30%から70%、そして塊茎類では乾燥重量の65%から85%を占めるとされている。
植物のデンプンは二種のグルコースホモポリマーであるアミロースとアミロペクチンで構成される。アミロースは、1000〜6000グルコース単位の重合度を有する、わずかに分岐した直鎖状分子である。アミロペクチンはより大きなポリマー単位であり(10〜10グルコース単位の重合度)、α−1,6分枝結合の頻度が高い(4%〜5%)。
デンプンは、主として、ADP−グルコースピロホスホリラーゼ(EC 2.7.7.27)、デンプン合成酵素(EC 2.4.1.21)、枝作り酵素(EC 2.4.1.18)、ならびに脱分岐酵素(EC 3.2.1.41およびEC 3.2.1.68)を含む多くの酵素の共同作用によって穀物の胚乳のアミロプラストにおいて産生される。
デンプン合成酵素(SS)は、事前に存在するα−1,4グルカンプライマーへの、ADP−グルコースのグルコシル部分(活性化されたグルコシルドナー)の転移を触媒する。ある研究では、植物系統において最も早い段階で枝分かれしていると考えられる、プラシノ藻類の一つであるOstreococcus tauriが、非常に小さなゲノムを有しているにも関わらず、稲またはアラブドプシスのゲノムにおいて記載されているものと同じ数、同じファミリー型のデンプン合成酵素を有することが示されている(Ral et al.,2004,Plant Physiol.136,3333−3340)。この高度な経路の保存は、これらの酵素がデンプンの構築において、保存され特異的な機能を果たしていることを示している。植物において、五つの異なったデンプン合成酵素ファミリーが報告されている。これらのうち四つ(SSIからSSIV)が主に可溶性酵素であるのに対し、第五の酵素(GBSSI)は顆粒結合性である。
いくつかのSSIVデンプン合成酵素をコードする核酸配列がクローニングされ、そして植物または細菌を形質転換するために利用されている。例えば、米国特許第6211436号明細書は、トウモロコシ(Zea mays)のSSIVタンパク質をコードする核酸のクローニング、ならびに、大腸菌(E.coli)細胞を形質転換するために利用されるベクターへの該核酸の挿入を開示している。しかし、米国特許第6211436号明細書は、厳密には、植物におけるSSIV遺伝子発現の実際の生理学的効果に関する、いかなる生物学的アッセイも実験結果も開示していない。また、国際公開第01/14540号パンフレットとして公開されているPCT出願は、稲、大豆、および小麦に由来するSSIVタンパク質(SSVタンパク質と称する)をコードする核酸の単離を開示している。また、PCT出願の国際公開第01/14540号パンフレットは、SSIVをコードする遺伝子によって、トウモロコシ植物の細胞、大豆植物の細胞、および大腸菌細胞を形質転換するために用いることのできる技術も開示している。しかし、PCT出願の国際公開公報第01/14450号パンフレットは、SSIVをコードする遺伝子によってトランスフェクトされたあるいは形質転換された生物が対応するSSIVタンパク質を実際に産生したことを示す、いかなる実験結果も含んでいない。実際、PCT出願の国際公開第01/14450号パンフレットは、植物におけるSSIV遺伝子発現の実際の生理学的効果に関して、当業者によって利用可能な情報を与える、いかなる実験データも含んでいない。
明らかにSSIVを除く、すべてのデンプン合成酵素に対する変異体が、異なる植物系および藻類系で得られ、分析されている。予想されるSSIVタンパク質は、触媒ドメインおよびデンプン結合ドメインを含むその他のSSに高度に類似したC末端領域を有する(Cao et al.,1999,Plant Physiol.120,205−216)。逆に、SSIVタンパク質のN末端側の半分はその他のSSアイソフォームとは著しく異なっている。
しかし、これまで、デンプンの生合成におけるSSIVの役割に関する遺伝学的証拠は依然として存在していなかった。
クラミドモナス、エンドウ豆、アラビドプシス、および穀物におけるその他のデンプン合成酵素(SSIからSSIIIおよびGBSSI)によって行われた研究から浮かび上がる構図は、各酵素がアミロペクチン構造内における特定のサイズクラスのグルカンの合成に関与しているということである(Fontaine et al.,1992,J.Biol.Chem.268,16223−16230、Craig et al.,1998,Plant Cell 10,413−426、James et al.,2003.,Curr.Opin.Plant Biol.6,215−222、Morell et al.,2003,Plant J.34,173−185、Delvalle et al.,2005,Plant J.43,398−412.)。さらに、GBSSIは、デンプン内で見られる、分岐が乏しく重要ではない第二の多糖類画分であるアミロースの生合成に関与する唯一の伸長酵素であると考えられる(Klosgen et al.,1986,Mol.Gen.Genet.203,237−244,Delrue et al.,1992,J.Bacteriol.174,3612−3620)。これらの特化した機能にも関わらず、いくつかのデンプン合成酵素はある程度の機能的な重複を示し、他のものは示さない。
デンプン、主として植物のデンプンは、食品産業および非食品産業における様々な目的に対して幅広い産業上の利点を有するため、本分野では、生産条件を向上させる方法を介することを含む、適切なデンプンを供給する必要性が存在する。
したがって、本分野では、特に低いコストで一般に向けた様々な最終製品を供給するために、向上した生産条件でデンプンを生産する必要性が存在する。
第一に、本発明は、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)活性を欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズを有するデンプン粒を含む、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物に関するものである。
また、本発明は、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を得ることを目的とする、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠くように修飾された植物の使用法にも関するものである。
また、本発明は、そのような可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた修飾された植物に由来する植物細胞ならびに種子にも関するものである。
好ましい実施態様では、本発明による植物は、遺伝的に修飾された植物と呼ぶこともできる、形質転換された植物からなり、該植物は、遺伝子工学によって、すなわち、ほとんどの実施態様では、生物学的に活性なSSIVタンパク質の産生を阻害またはブロックする影響を与えるDNA構築物を導入することによって、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いている。
また、本発明は、一つまたは複数の植物細胞に、前記細胞にSSIVを欠如させるためのDNA構築物を導入する過程を含む、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた形質転換植物を得るための方法も扱うものである。
本発明において用いる場合、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物は、デンプンホスホリラーゼも欠いた植物を含む、デンプン合成に関与する一つまたは複数のその他のタンパク質、特に酵素も欠いた植物を含んでいる。
また、本発明は、上記方法によって得られる形質転換植物、ならびに該植物に由来する植物細胞および種子にも関するものである。
また、本発明は、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた形質転換植物、ならびに(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いた形質転換植物からデンプンを抽出する過程を含む、デンプンの産生方法にも関するものである。
本発明のもう一つの目的は、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼのいずれも欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を含む植物細胞を有する、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼを欠くように修飾された植物からなる。
アラビドプシスのSS遺伝子の発現プロファイルを示す図である。アラビドプシスの可溶性デンプン合成酵素をコードする全ての遺伝子(AtSS1:At5g24300、AtSS2:At3g01180、AtSS3:At1g11720、AtSS4:At4g18240)のmRNAの絶対レベルを、実験方法で説明するように、リアルタイム定量RT−PCRによって測定した。図1−Bに示すデータは図1−Aと同じであるが、その他のAtSS遺伝子間の比較をより明確にするために、AtSS1遺伝子の発現は省略している。値は、異なる実験による少なくとも二つのcDNA調製物に対する三つの測定値の平均である。 AtSS4座における変異株の分析を示す図である。図2−A):AtSS4座のゲノム構造。エクソンおよびイントロンはそれぞれ太い黒い棒と細い黒い棒で示している。それぞれイントロン11および2での変異株Atss4−1およびAtss4−2におけるT−DNAの挿入部位は三角形で示している。図2−B):Atss4−1およびAtss4−2変異対立遺伝子ならびにそれらのそれぞれの野生型の葉の粗抽出物のウェスタンブロット分析である。タンパク質(25μg)をSDS−PAGE電気泳動によって分離し、ニトロセルロースフィルターに移し、SSIVタンパク質のN末端領域にある178個のアミノ酸からなる断片に対するウサギ抗血清によって免疫標識した(実験方法参照)。分子マーカー(kDa)の位置を示している。Col−OおよびWS野生型において予想されるSSIVの質量に対応するおよそ112kDaのバンドを矢印で示している。 Atss4変異対立遺伝子およびそれらのそれぞれの野生型の成長を示す図である。変異植物および野生型植物の種子を4℃の水中で3日間インキュベートした後、土壌に蒔いた。植物を、16時間明期/8時間暗期の光周期で、成長箱において培養した。図3−Aおよび図3−B:経時的な実験(種子の発芽後の日数、X軸)における、植物あたりのmgで示した上記の地上器官の生重量(FW)(Y軸)の測定。垂直なバーは、同時に培養した三つの独立したサンプルについて測定した平均値のSEを表している。黒の矢印は野生型植物である(図3−Aおよび図3−BにおいてそれぞれCol−OおよびWS)。四角は変異植物である(図3−Aおよび図3−BにおいてそれぞれAtss4−1およびAtss4−2)。 昼夜サイクルにおけるAtss4−1およびCol−O植物の葉におけるデンプンの蓄積を示す図である。21日間、16時間明期/8時間暗期の光周期で植物を培養し、各株の三つの植物から採取した一つの葉を指定の時間に回収した。葉におけるデンプン含有量を、実験方法で説明しているように酵素アッセイによって測定した。値は、三つの独立した実験の平均である。垂直なバーは3つの独立したサンプルから計算した標準誤差である。 図5−A:インビトロでのデンプンホスホリラーゼ活性。実験方法に説明しているように、アミロペクチンを基質として用い、葉の粗抽出物において酵素アッセイを行った。変異株における活性を、100%だと考えられる、それらのそれぞれの野生型について得られた値に対するパーセントで示している。値は三つの異なる実験の平均である(垂直なバー=SE)。図5−B:Atss4−1およびCol−O植物の葉におけるAtPHS1(At3g29320)遺伝子およびAtPHS2(At3g46970)遺伝子の発現。実験方法に説明しているようにリアルタイム定量RT−PCRを用いてPHS1のmRNAとPHS2のmRNAのレベルを判定した。データは、Col−O植物について得られた値を100として、それに対して標準化する。黒いカラム:Atss4−1植物におけるmRNAのレベル。白いカラム:Col−O植物におけるmRNAのレベル(垂直なバー=SE)。 変異対立遺伝子(Atss4−1およびAtss4−2)ならびにそれらのそれぞれのる野生型(Col−OおよびWS)に関するアミロペクチンの鎖長(CL)の分布のプロファイルを示す図である。アミロペクチンはCL−2Bカラムを用いて精製し、続いてイソアミラーゼおよびプルラナーゼの混合物で脱分岐した。生じた直鎖グルカンを、それらの非還元末端に蛍光分子(APTS)を結合した後、FACEで分析した。集団全体における各グルカンについての相対的な割合が、鎖の総数のパーセントで表されている。X軸は鎖の重合度(DP)を表している。Y軸はモル濃度%を表している。下部の二つの図において、各野生型に対して標準化された値が、それらのそれぞれの変異対立遺伝子の値から差し引かれており、その場合、Y軸はモル濃度%の差を表している。値は三つの異なる実験の平均である。標準偏差は平均の□15%より小さい。 変異植物および野生型植物に由来するデンプンの走査型電子顕微鏡分析(図7−Aおよび図7−B)と透過型電子顕微鏡分析(図7−Cおよび図7−D)を示す図である。デンプン粒は、実験方法で説明しているように、8時間の光照射(日中)後に回収した葉からパーコール勾配によって単離した。図7−A)Col−O。図7−B)Atss4−1。図7−C)WS。図7−D)Atss4−2。 以下のSSIVタンパク質をコードする核酸配列の並びを示す図である。−ライン1(上のライン):稲(Oryza sativa)由来のSSIV−2、−ライン2:小麦(Triticum aestivum)由来のSSIV、−ライン3:稲由来のSSIV−1、−ライン4:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のSSIV、−ライン5(下のライン):ササゲ(Vigna unguiculata)由来のSSIV。 野生型および変異体のシロイヌナズナ植物に由来するデンプン粒の顕微鏡写真である。図9は、同一の拡大率における、デンプン粒の走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真を示しており、該デンプン粒はそれぞれ、−図9−A:野生型のシロイヌナズナ、−図9−B:SSIVを欠いた修飾シロイヌナズナ、−図9−C:デンプンホスホリラーゼを欠いた修飾シロイヌナズナ、ならびに−図9−D:SSIVおよびデンプンホスホリラーゼの両方を欠いた(二重変異)修飾シロイヌナズナ、に由来している。
驚くべきことに、本発明により、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物は、SSIVを欠いていない同一の植物よりも細胞内で産生するデンプン粒が少ないが、これら数の少ないデンプン粒は、SSIVを欠いていない同一の植物によって産生されるデンプン粒と比較してサイズが大きく、したがって多量のデンプンを含有することが明らかになっている。
また、SSIVを欠いた植物において誘発されるこのデンプン粒のサイズの増大が、SSIVおよびデンプンホスホリラーゼの両方を欠いた植物においてさらに増幅され得ることも確認されている。
実際、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠き、選択的にデンプンホスホリラーゼも欠く植物のこれらの特徴は、デンプンを抽出するための向上した方法、とりわけより良い生産収率を可能にする方法を実施するために有益となり得る。本明細書で後述するように、デンプン粒のサイズは、最適な質的および/または量的な産業上のデンプン抽出過程の実施を考慮した際の主要なパラメータを構成するものである。
より詳細には、本発明によれば、SSIVをコードする遺伝子の変異によって可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物は、全デンプン産生量が緩やかではあるが有意に減少するにもかかわらず、同一であるが欠いていない植物によって産生されるデンプン粒よりもかなりサイズが大きなデンプン粒を産生することが明らかになっている。特に、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物は、同一であるがSSIVを欠いていない植物に由来するデンプン粒よりも少なくとも1.5倍大きいサイズを有するデンプン粒を産生することが明らかになっている。
さらに、デンプン粒の構造は、SSIVを欠いたそのような植物においては影響を受けていない。
さらに、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いた植物は、同一であるがSSIVおよびデンプンホスホリラーゼを欠いていない植物に由来するデンプン粒よりも少なくとも4倍大きなサイズを有するデンプン粒を産生することが明らかになっている。
さらに、(i)可溶性デンプン合成酵素IVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いた植物は、同一であるがSSIVおよびデンプンホスホリラーゼを欠いていない植物よりもかなり高いデンプン含有量を有することが明らかになっている。これらの特定のSSIVを欠いた植物では、デンプン含有量は同一であるが野生型である植物よりも少なくとも1.5倍高く、さらには同一であるが野生型である植物よりも、少なくとも2倍、2.5倍、3倍、または3.5倍高い。本発明の実施例で示すように、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いたシロイヌナズナ植物では、同一であるが野生型である植物で見られるデンプン含有量のおよそ4倍のデンプン含有量が測定されている。
本明細書を通して、SSIVを欠いた植物とは、(1)SSIVのみを欠いた植物と、(2)(i)SSIVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いた植物との両方を含むことが了解されているものとする。
また、驚くべきことに、SSIVを欠いた植物は、同一であるが欠いてはいない植物によって産生されるデンプン分子に化学組成が同一ではないまでも、少なくとも高度に類似したデンプン分子を産生することも明らかになっている。特に、同程度のアミロース含有量またはさらには同一のアミロース含有量、ひいてはさらに同程度または同一のアミロース/アミロペクチン割合が、SSIVを欠いた植物とSSIVを欠いていない植物の両方で見られている。また、SSIVを欠いた植物は、同一であるが欠いていない植物に高度に類似した鎖長(CL)分布のプロファイルを有するデンプンを産生し、該デンプンは、DP=7〜10の鎖の量の偶発的なわずかな減少によって示されるような、アミロペクチン構造に偶発的なわずかな変化を伴うのみである。
本明細書の意図するところでは、デンプンアミロースおよびアミロペクチンの総重量に基づくアミロースの重量パーセントで表すことができるデンプンアミロース含有量の値が、30%未満、好ましくは25%未満の相対的差異値を有する場合に、第一の植物に由来するデンプンのデンプンアミロース含有量は、第二の植物に由来するデンプンのデンプンアミロース含有量と「同程度」であるとする。
例えば、本発明によって、シロイヌナズナの野生型植物が約21%w/wのアミロース含有量を有する(したがって79%w/wのアミロペクチン)のに対し、SSIVを欠いたシロイヌナズナの変異植物は約20%w/wのアミロース含有量(したがって80%w/wのアミロペクチン)を有することが明らかになっている。この例によると、この二種の植物は、デンプンアミロース含有量における1%w/wの絶対的差異値と、デンプンアミロース含有量における4.8%の相対的差異値(=[WTとSSIVを欠いたものとの差]/WT、ここでは1/21)とを有する。
アミロースおよびアミロペクチンのデンプン含有量を測定するための様々な方法が当業者に知られている。典型的には、当業者は、慣用的なアミログルコシダーゼアッセイを用いて、デンプンのアミロースおよびアミロペクチンの含有量を測定することができる。
したがって、本発明によって初めて、構造的によく知られている植物の可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)がデンプン粒の数の制御において特定の機能を有していることが明らかになっている。
さらに、本発明では、生物学的に活性なSSIVによる植物細胞の産生の変化は、その他のSSI、SSII、SSIII、およびGBSSIデンプン合成酵素の合成を含む、デンプンの産生に関与するその他の酵素の合成には検出可能なレベルでは影響しないことも示されている。デンプンホスホリラーゼの合成の増加だけが、SSIVを欠いた植物において誘発され得る。
本発明の対象は、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物からなる。
前記SSIVを欠いた植物は、生物学的に活性な可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)の産生を欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズを有するデンプン粒を含む植物細胞を含んでいる。
本明細書においてより詳細に説明するように、前記SSIVを欠いた植物はまた、生物学的に活性な可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)の産生を欠いていない同一の植物と比較して同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を含む植物細胞も含む。
本発明のもう一つの対象は、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いていない同一の植物と比較して粒のサイズが大きく、同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を得るための、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠くように修飾された植物の使用法からなる。
本発明の意図するところでは、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を「欠いた」植物、植物の一部、または植物細胞は、通常の量の生物学的に活性なSSIVを合成または産生する野生型の植物細胞におけるような、デンプンを代謝するために十分な量のSSIVを合成または産生しない。特に、SSIVを「欠いた」植物、植物の部分、および植物細胞は、変化したデンプン合成経路を有しており、該合成経路は、SSIVを欠いていない同一の植物で見られる細胞あたりのデンプン粒の数よりも大幅に少ない、細胞あたりのデンプン粒の平均数の産生をもたらすものである。例えば、本明細書の実施例で示すように、SSIVを欠いたシロイヌナズナ植物は、葉緑体あたり1つの、または例外的に2つのデンプン粒を産生するのに対し、SSIVを欠いていない同一のシロイヌナズナ植物は、葉緑体あたりおよそ4〜5個のデンプン粒を産生する。
特筆すべきことに、(a)SSIVを欠いたシロイヌナズナ、または(b)SSIVおよびデンプンホスホリラーゼを欠いたシロイヌナズナに関してここで開示した結果は、本発明者らによって、(a)SSIVを欠くか、または(b)SSIVおよびデンプンホスホリラーゼを欠くように修飾された稲植物でも得られている。
本発明で用いる場合、デンプン粒の「サイズ」は、前記デンプン粒の絶対的な寸法値、ならびに、比較されるデンプン粒の二つの集団の平均サイズの相対値を含む。いくつかの実施態様では、絶対的な寸法値によるデンプン粒の「サイズ」は、例えばWilson et al.(2005,Cereal chemistry,Vol.38:259−268)で開示されている技術を用いて、画像分析法およびレーザー回折法によって測定することができる。その他の実施態様では、デンプン粒の「サイズ」は、Reschiglian et al.(2002,Ann Chim,Vol.92(4):457−467)で開示されているように、重力フィールドフローフラクショネーション法(GFFF)にしたがって測定することができる。さらなる実施態様では、デンプン粒のサイズを測定するためのより簡易な方法が用いられる。デンプン粒のサイズを測定するためのこれらのより簡易な方法は、(i)サイズ測定すべきデンプン粒集団の少なくとも一つの顕微鏡写真を撮影すること、(ii)少なくとも10、好適には少なくとも30、より好適には少なくとも50、最も好適には少なくとも100個のサイズ測定すべきデンプン粒の最大直径を測定すること、そして、(iii)調査したデンプン粒集団におけるデンプン粒の最大直径の平均を計算することを含み、前記最大直径の平均値は前記デンプン粒の「サイズ」からなり、したがって該サイズは、その他のデンプン粒集団の最大直径の平均(「サイズ」)と比較することができる。また、デンプン粒のサイズを測定するためのこれらのより簡易な方法は、(i)サイズ測定すべきデンプン粒集団の少なくとも一つの顕微鏡写真を撮影すること、(ii)少なくとも10、好適には少なくとも30、より好適には少なくとも50、最も好適には少なくとも100個のサイズ測定すべきデンプン粒の可視表面領域を測定すること、そして(iii)調査したデンプン粒集団のデンプン粒の最大可視表面領域の平均を計算することを含み、前記可視表面領域の平均値は前記デンプン粒の「サイズ」からなり、したがって該サイズは、その他のデンプン粒集団の可視表面領域の平均(「サイズ」)と比較することができる。
通常、本明細書において、サイズの増加またはサイズの減少といったサイズの差は、異なる二つのデンプン粒集団の比較にしたがって得られる。デンプン粒集団の最初に撮影した顕微鏡写真によってデンプン粒の「サイズ」を測定する方法を用いることで、比較される二つのデンプン粒集団の間における、サイズの絶対値の少なくとも1.5倍の増加または減少を精密に測定することができ、それにより、測定されるサイズの差は、デンプン粒サイズの統計的に有意な増加または減少として得られる。
比較される二つのデンプン粒集団が、それぞれ、好ましくは、茎、葉などの同一の植物の部分または同一の植物の組織に由来する(i)SSIVを欠いた植物および(ii)SSIVを欠いていない植物であるとき、本発明によるSSIVを欠いた植物は、同一であるがSSIVを欠いていない植物で見られるデンプン粒のサイズよりも少なくとも1.5倍大きいデンプン粒のサイズを有している。ほとんどの実施態様において、本発明によるSSIVを欠いた植物は、同一であるがSSIVを欠いていない植物で見られるデンプン粒のサイズよりも少なくとも二倍大きいデンプン粒のサイズを有している。
比較される二つのデンプン粒集団が、それぞれ、好ましくは、茎、葉などの同一の植物の部分または同一の植物の組織に由来する(i)欠いた植物および(ii)欠いていない植物であるとき、本発明によるSSIVを欠いた植物のうち、(i)SSIVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いた植物は、同一であるが(i)SSIVを欠いておらず(ii)デンプンホスホリラーゼも欠いていない植物で見られるデンプン粒のサイズよりも少なくとも3倍大きなデンプン粒のサイズを有している。ほとんどの実施態様において、本発明による(i)SSIVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いた植物は、同一であるが欠いていない植物で見られるデンプン粒のサイズよりも少なくとも四倍大きいデンプン粒のサイズを有している。
多くのSSIVの核酸配列および/またはSSIVのアミノ酸配列が既に本分野で知られているため、SSIVを欠いた植物、植物の部分、または植物細胞において、SSIVを欠いていない同一の植物、植物の部分、または植物細胞と比較した、デンプンの代謝に十分な量の生物学的に活性なSSIVの欠如からなる欠陥は、当業者によく知られている様々な方法を用いて人工的に誘発することができる。SSIVを欠いた植物を得る方法は、
(i)SSIVをコードするゲノム核酸の改変を引き起こすことで、(i)対応するmRNAを非常に少量産生するかもしくは全く産生しないようにするか、または(ii)生物学的に活性ではないSSIVをコードする改変したmRNAを産生する技術、
(ii)SSIVをコードするmRNAの合成を阻害またはブロックする技術、
(iii)SSIVをコードするmRNAからのSSIVタンパク質の産生を阻害またはブロックする技術、および、
(iv)産生されたSSIVタンパク質の生物学的活性を阻害またはブロックする技術
を含む。
上記の(i)から(iii)の技術が好ましい。上記の(i)から(iii)の技術には、植物、植物の部分、または植物細胞の遺伝子修飾の過程が含まれ、該遺伝子修飾の過程は通常、一つまたは複数の植物細胞、場合によっては一つもしくは複数の植物の部分または一つもしくは複数の植物に少なくとも一つのDNA構築物を導入することからなり、該DNA構築物は、(i)例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に由来するT−DNAなどの、SSIVタンパク質をコードするゲノム核酸の改変を引き起こすDNA配列、(ii)例えばSSIV特異的なセンス核酸などの、SSIVをコードするmRNAの合成を阻害またはブロックするDNA配列、(iii)例えばSSIV特異的なアンチセンス核酸またはSSIV特異的なリボザイムなどの、SSIVをコードするmRNAからのSSIVタンパク質の産生を阻害またはブロックするDNA配列で構成されるグループから選択したDNA配列を含む。
植物、植物の部分、または植物細胞がSSIVを欠いているかどうかを判定するためのアッセイは、当業者によく知られた様々な技術にしたがって行うことができる。
いくつかの実施態様では、SSIVを欠いた表現型を判定するための技術は、試験すべき植物、植物の部分、または植物細胞におけるSSIVの生物学的活性の存在を検出するアッセイからなる。例えば、タンパク質抽出物を、対応する植物サンプルから調製し、その後、抗SSIV抗体が固定されているイムノアフィニティークロマトグラフィーの基質と接触させることができる。抗SSIV抗体の産生は本発明の実施例で開示している。次に、最終的にクロマトグラフィーの基質に固定したSSIVタンパク質分子を溶出させ、生じた溶出物のサンプルをデンプン合成酵素の生物学的活性の存在についてアッセイするが、これは場合によっては、例えばDelvalle et al.(2005,Plant J.43,398−412)によって開示されている技術にしたがって、SSI、SSII、SSIII、およびGBSSIのうちの一つまたは複数のその他の外因性デンプン合成酵素をインビトロで添加した後であってもよい。これらの技術を用いて、SSIVを欠いた表現型が、SSIVを欠いていない同一の野生型植物の50%またはそれより低いSSIVの生物学的活性を示す、試験した植物、植物の部分、または植物細胞に対して判定される。
その他の実施態様では、SSIVを欠いた表現型を判定するための技術は、試験すべき植物、植物の部分、または植物細胞におけるSSIVタンパク質分子の存在を検出するアッセイからなる。例えば、タンパク質抽出物を、対応する植物サンプルから調製し、その後ゲル電気泳動に付すことで、前記タンパク質抽出物に最初から含まれていた様々なタンパク質を、定められたタンパク質バンドに分離する。次に、染色した後、SSIVの予想される位置におけるタンパク質バンドの存在に関する判定が行われる。最終的に、デンプン合成酵素の活性を、既知の技術にしたがって、分離したタンパク質バンドについてアッセイすることができる。さらに、例えば、タンパク質抽出物を、対応する植物サンプルから調製し、その後、例えば抗SSIV抗血清などの抗SSIV抗体を用いた免疫ブロット分析に付す。このようなゲル電気泳動または免疫ブロットを用いたSSIVアッセイは、例えばDian et al.(2005,J Exp Botany,56(No.412):623−632)ならびに本発明の実施例で開示されている。これらの技術を用い、SSIVを欠いた表現型は、SSIVを欠いていない同一の野生型植物の50%またはそれより低いSSIVタンパク質の量を示す試験した植物、植物の部分、または植物細胞に対して判定される。
さらなる実施態様では、SSIVを欠いた表現型を判定するための技術は、試験すべき植物、植物の部分、または植物細胞においてSSIVをコードするmRNAを検出および/または定量するアッセイからなる。例えば、全RNAを対応する植物サンプルから抽出した後、一つまたは複数の適切なプライマーのセットを用いてPCR増幅し、次に、生じたPCR産物を分離した後、例えば染色によって検出および/または定量する。このようなPCRによるSSIVアッセイは例えばDian et al.(2005,J Exp Botany,56(No.412):623−632)ならびに本発明の実施例に開示されている。例えば、SSIV特異的なシロイヌナズナのmRNAのPCR増幅に用いることのできるプライマーのセットには、本発明で開示される配列番号12〜13および配列番号20〜21が含まれる。これらの技術を用いて、SSIVを欠いた表現型は、SSIVを欠いていない野生型の同一の植物の50%またはそれより少ないSSIVのmRNAの量を示す、試験した植物、植物の部分、または植物細胞に対して判定される。
さらなる実施態様では、SSIVを欠いた表現型を判定するための技術は、試験すべき植物、植物の部分、または植物細胞に含まれる染色体DNAに含まれるSSIVをコードする遺伝子の改変を検出するアッセイからなる。例えば、対応する植物サンプルの全DNAを抽出した後、適切なプライマーのセットを用いてPCR増幅産物を生じさせ、その後、前記PCR増幅産物を分離し、例えばPCR増幅産物の単一ゲル電気泳動法または該産物のシーケンシングによって、SSIVをコードする遺伝子における偶発的なゲノムの改変の特徴付けを行う。また、SSIVをコードする遺伝子の改変は、本発明の実施例で開示しているものを含む、当業者によく知られている技術を用いて、対応するmRNAにおける改変を検出することによっても検出することができる。これらの技術を用いて、SSIVを欠いた表現型は、試験した植物、植物の部分、または植物細胞に対して、ゲノムの改変がプロモーター配列における変異またはコード領域のイントロンもしくはエクソンにおける変異を含むかどうかについて判定されるのだが、該変異には、エクソンとイントロンの間の接合領域における変異、ならびに、SSIVタンパク質のアミノ酸配列の改変をもたらすエクソンにおける変異が含まれる。
デンプンホスホリラーゼ活性をアッセイするための技術は当業者によく知られている。このような技術は、例えば、米国特許第5998701号明細書またはPCT出願の国際公開第2005/097999号パンフレットで説明されており、これらの全体は引用することで本発明に含まれることとする。
既に上述したように、植物デンプンの代謝経路は、同一のデンプン合成系が、プラシノ藻類から、小麦や稲のような穀物を含む最も高等な多細胞植物体にいたるまで見られるため、植物の系統発生を通して高度に保存されている。この高度な保存は、SSIVを含むデンプン合成酵素のようなデンプン合成に関与する酵素がデンプンの構築において保存的で特異的な機能を果たしていることを示唆している。また、このことはデンプンホスホリラーゼについても当てはまり、該デンプンホスホリラーゼは、アルファ−1,4グルカンホスホリラーゼとも呼ばれ、国際的にEC2.4.1.1.酵素に分類されており、一般的に当業者に知られている。例えば、よく知られたデンプンホスホリラーゼには、シロイヌナズナ(PCT出願の国際公開第2005/097999号パンフレット)、ソラマメ(Swissprotデータベース、アクセス番号P53536)、ジャガイモ(Swissprotデータベース、アクセス番号P04045またはP53535)、ビート、ホウレンソウ、トウモロコシ(PCT出願の国際公開第98/40503号パンフレット)、グリーンピース、稲(EMBLデータベース、アクセス番号D23280またはQ9AUV8)、ならびに小麦(EMBLデータベース、アクセス番号AAQ73181)に由来するデンプンホスホリラーゼが含まれる。実際、その他のデンプンホスホリラーゼは、例えば、BlastプログラムまたはFastDBプログラムのようなアミノ酸配列または核酸配列を抽出するコンピュータ・プログラムを用い、例えば上述したデンプンホスホリラーゼ配列のいずれか一つを基準配列として用いてデフォルトのパラメータとすることで、当業者が十分に利用することができる。また、その他のデンプンホスホリラーゼも、基準となるハイブリダイゼーション材料として上述したデンプンホスホリラーゼ核酸のいずれか一つを用い、そしてSambrook et al.(Molecular Cloning.A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Press,1989、とりわけ、パラグラフ11.1から11.61)により開示されている方法にしたがってストリンジェンシーが高いハイブリダイゼーションアッセイを行うことで、ハイブリダイゼーションアッセイを通して当業者に利用可能である。
このように、特定の理論に縛られようとすることなく、本出願人は、SSIV活性における欠陥が、シロイヌナズナで見られる、より大きなサイズのデンプン粒という同一の表現型をあらゆる植物で誘発すると考えている。この考えは、様々な植物に由来する既知のSSIVタンパク質のアミノ酸配列のすべてではなくともほとんどが高いアミノ酸同一性を共有しているという事実によって、非常に強められる。例えば、シロイヌナズナに由来するSSIVタンパク質のアミノ酸配列は、ササゲに由来するSSIVと68%の同一性を有し、小麦由来のSSIVとは56%の同一性を有し、稲由来のSSIV−1とは54%の同一性を有し、そして稲由来のSSIV−2とは56%の同一性を有している。さらに、例えば、cDNAのレベルでは、シロイヌナズナ由来のSSIVタンパク質をコードする核酸配列は、2323個のヌクレオチドからなる核酸長のササゲ由来のSSIVとは73%、2051個のヌクレオチドからなるヌクレオチド長の小麦由来のSSIVとは67%、それぞれ1865個と2053個のヌクレオチドからなるヌクレオチド長の稲由来のSSIV−1およびSSIV−2とは67%の同一性を有している。重要なことに、すべてのSSIVの間における最も高いアミノ酸同一性ならびに最も高い核酸同一性は、すべてのSSIVタンパク質のN末端部分とC末端部分にそれぞれ位置する二つのタンパク質領域で見られる。すべてのSSIVタンパク質の間における高い同一性を有する最もSSIV特異的なタンパク質領域は、前記タンパク質のN末端部分の、各SSIVタンパク質の200位のアミノ酸残基から420位に位置するアミノ酸残基を含むタンパク質領域に位置している。したがって、あらゆる植物でSSIVを欠くようにするとき、当業者は、SSIVタンパク質の前記共通するN末端領域をコードするSSIV特異的なDNA領域またはRNA領域を標的とする核酸配列を含む、SSIVをコードする核酸を特異的に標的とするDNA配列を含むDNA構築物を必要とする技術を含む、本明細書で開示した技術のいずれかを用いることになる。
本発明の実施例では、植物は、SSIVをコードする遺伝子の変異によって、より詳細には、SSIVをコードする遺伝子配列内に異種核酸を挿入することによってSSIVを欠くようにすることができること、および、得られたSSIVを欠いた形質転換植物または組換え植物が、対応する野生型植物よりも細胞あたりの数は少ないがより大きなサイズのデンプン粒を産生することを示している。SSIVを欠いたこれらの形質転換植物または組換え植物には大きな産業上の利点があるが、それはとりわけ、これらの形質転換植物または組換え植物によって、SSIVを欠いていない同一の植物と比較してより簡単でコストの低い産業的なデンプン抽出が可能となるためである。
また、本発明の実施例では、植物は、SSIVをコードする遺伝子およびデンプンホスホリラーゼをコードする遺伝子の両方の変異によって、(i)SSIVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠くようにすることができることを示している。より詳細には、本発明では、これらの変異は、(i)SSIVをコードする遺伝子の配列および(ii)デンプンホスホリラーゼをコードする遺伝子の配列の中に異種核酸を挿入することによって生じさせ得ること、ならびに、得られたSSIVを欠いた形質転換植物または組換え植物が、(i)対応する、SSIVを欠き/デンプンホスホリラーゼを欠いていない植物、および(ii)SSIVを欠いておらず/デンプンホスホリラーゼも欠いていない植物の両方よりも、細胞あたりの数は少ないがより大きなサイズのデンプン粒を産生することを示している。これらのSSIVおよびデンプンホスホリラーゼの両方を欠いた形質転換植物または組換え植物には重要な産業上の利点があるが、それはとりわけ、これらの形質転換植物または組換え植物によって、SSIVおよびデンプンホスホリラーゼを欠いていない同一の植物と比較してかなり簡単でコストの低い産業的なデンプン抽出が可能となるためである。
したがって、本発明のもう一つの対象は、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼのいずれも欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を含む植物細胞を有している、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼを欠くように修飾された植物からなる。
好ましくは、本発明の実施例に示すように、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼを欠くように修飾された植物のデンプン粒のサイズは、同一であるが(i)SSIVを欠いておらず(ii)デンプンホスホリラーゼも欠いていない植物で見られるデンプン粒のサイズよりも3倍以上大きい。
SSIVを欠いた植物の好ましい実施態様によっては、SSIV活性は完全に消失しているかまたはブロックされ、あるいはわずかなSSIV活性のみが残っている。これら好ましい実施態様では、わずかに残ったSSIV活性は、SSIVを欠いていない同一の植物で見られるSSIV活性の20%を超えない。最も好ましくは、わずかに残ったSSIV活性は、SSIVを欠いていない同一の植物で見られるSSIV活性の19.5%、19%、18.5%、18%、17.5%、17%、16.5%、16%、15.5%、15%、14.5%、14%、13.5%、13%、12.5%、12%、11.5%、11%、10.5%、10%、9.5%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%またはさらには0.1%を超えない。
本発明の実施例で例示される好ましい実施態様では、すべての例示される形質転換植物または組換え植物が、改変したメッセンジャーRNAの合成を引き起こすSSIVをコードする遺伝子内での変異についてホモ接合体であるため、SSIV活性は全く存在しない。
このように、本発明によるSSIVを欠いた植物の実施態様では、前記植物は変異した不活性のSSIVを産生するように遺伝的に修飾されている。植物を遺伝的に修飾するための本分野でよく知られている技術であり、変異した不活性のSSIVタンパク質の産生を引き起こすために本発明に採用されている技術は、本明細書において以下に詳細に説明する。
本発明によるSSIVを欠いた植物のその他の実施態様では、前記植物は、SSIVの合成が減少するようにまたはなくなるように遺伝的に修飾されている。本発明の意図するところでは、減少したSSIVの合成とは、SSIVを欠いていない同一の植物で見られる量の50%未満の量の活性SSIVタンパク質が測定されることを意味し、好適には、SSIVを欠いていない同一の植物で見られる量の10%未満、さらに好ましくは、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%または0.1%未満が測定されることを意味する。遺伝的に植物を修飾するための本分野でよく知られた技術であり、SSIVタンパク質の合成を減少させるかまたはなくすために本発明で採用されている技術は、本明細書で以下に詳細に説明する。これらの技術には、SSIVをコードする遺伝子の転写を阻害またはブロックするための方法、ならびに、SSIVをコードするmRNAの翻訳を阻害またはブロックするための方法が含まれる。
本発明によるSSIVを欠いた植物のさらなる実施態様では、前記植物は、前記可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)をコードするmRNAの合成が減少するかまたはなくなるように遺伝的に修飾されている。本発明で意図するところでは、SSIVをコードするmRNAの減少した合成とは、SSIVを欠いていない同一の植物で見られる量の50%未満の量のSSIV特異的なmRNAが測定されることを意味し、好適にはSSIVを欠いていない同一の植物で見られる量の10%未満、より好ましくは、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%または0.1%未満が測定されることを意味する。遺伝的に植物を修飾するための本分野で知られている技術であり、SSIVをコードするmRNAの合成を減少させるかまたはなくすために本発明で採用されている技術は、本明細書で以下に詳細に説明する。
本発明によるSSIVを欠いた植物のさらなる実施態様では、前記植物は、SSIVをコードするmRNAの翻訳を阻害またはブロックすることによりSSIVタンパク質の合成が減少するかまたはなくなるように遺伝的に修飾されている。本発明の意図するところでは、SSIVをコードするmRNAの減少した翻訳とは、SSIVを欠いていない同一の植物で見られる量の50%未満の量のSSIVタンパク質が測定されることを意味し、好適にはSSIVを欠いていない同一の植物で見られる量の10%未満、より好ましくは、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%または0.1%未満が測定されることを意味する。植物を遺伝的に修飾するために本分野でよく知られている技術であり、SSIVをコードするmRNAの翻訳を減少させるために本発明で採用されている技術は、本明細書で以下に詳細に説明する。
本発明によるSSIVを欠いた植物のさらなる実施態様では、前記植物は、SSIVをコードする遺伝子の核酸配列内に変異を導入するように遺伝的に修飾されており、該変異には、対応するSSIVタンパク質をコードするゲノム配列において一つまたは複数のヌクレオチドの置換、付加、および欠失を導入することが含まれる。SSIVをコードする遺伝子の核酸配列における変異を、プロモーター配列および/またはコード領域に導入することができる。SSIVをコードする遺伝子のコード領域に導入されたとき、変異は、エクソン配列および/またはイントロン配列に位置し得、これは、エクソン配列およびイントロン配列の間の接合部分からなる配列に位置することを含む。特に、本発明によるSSIVを欠いた植物には、SSIVをコードする遺伝子の少なくとも一つのイントロン配列および/または一つのエクソン配列の核酸配列に一つまたは複数のヌクレオチドを導入または挿入することで遺伝的に修飾されている植物が含まれる。植物を遺伝的に修飾するために本分野でよく知られている技術であり、SSIVをコードする遺伝子における変異を引き起こすために本発明で採用されている技術は、本明細書で以下に詳細に説明する。
SSIVおよびデンプンホスホリラーゼの両方を欠いている、本発明による修飾植物に関して、SSIV活性における欠陥を誘発するために用いられるものと同一の技術を、デンプンホスホリラーゼ活性の欠陥を誘発するためにもそのまま利用することができる。特に、本発明の実施例では、(i)SSIVをコードする遺伝子および(ii)デンプンホスホリラーゼをコードする遺伝子の両方の変異によって、SSIVおよびデンプンホスホリラーゼの両方を欠いている修飾植物が提供される。より詳細には、本発明の実施例では、(i)SSIVをコードする遺伝子および(ii)デンプンホスホリラーゼをコードする遺伝子の両方の少なくとも一つのイントロン配列および/または一つのエクソン配列の核酸配列に一つまたは複数のヌクレオチドを導入または挿入することで、SSIVおよびデンプンホスホリラーゼの両方を欠いた修飾植物が提供される。植物を遺伝的に修飾するために本分野でよく知られている技術であり、SSIVをコードする遺伝子および/またはデンプンホスホリラーゼをコードする遺伝子における変異を引き起こすために本発明で採用されている技術は、本明細書で以下に詳細に説明する。
通常、本発明にしたがった遺伝子操作によってSSIVを欠いた植物は、単子葉植物および双子葉植物で構成されるグループから選択される。双子葉植物の例には、アブラナ科(Brassicaceae)、ナス科(Solonaceae)、豆類、シロイヌナズナを含むアラビドプシス種に由来する植物が含まれる。単子葉植物の例には、小麦、トウモロコシ、および稲のような穀物が含まれる。
好ましくは、本発明にしたがった遺伝子操作によってSSIVを欠いた植物は、栄養的または技術的な、特に産業的な目的のために人によって栽培される有用な植物である。該植物は、好ましくはデンプンの多い植物であり、穀物種(ライ麦、大麦、オート麦、小麦、キビ、サゴなど)、稲、エンドウ豆、マロー豆(marrow pea)、キャッサバおよびジャガイモ、トマト、菜種、大豆、麻、亜麻、ひまわり、ササゲまたはクズウコン、繊維形成植物(例えば亜麻、麻、綿)、油脂の多い植物(菜種、ひまわり、大豆)、ならびにタンパク質の多い植物(豆類、穀類、大豆類)が含まれる。また、これらの植物は果樹およびヤシも含まれる。デンプンの多い植物が好適である。サトウキビおよびテンサイ、トウモロコシ、稲、小麦、ササゲ、およびトマトが特に好ましく、ジャガイモが最も好ましい。
したがって、本発明はデンプンを産生または多く含むすべての植物に適用可能である。このような植物の例には、トウモロコシ、小麦、稲、ソルガム、大麦のような穀類、バナナ、リンゴ、トマトまたはナシのような果実を産生する種、キャッサバ、ジャガイモ、ヤムイモ、ビート、カブのような根菜類、菜種、キャノーラ、ヒマワリ、オイルパーム、ココナツ、アマニ、または落花生のような油料種子作物、大豆、ソラマメ、エンドウマメのような食用作物、ならびにその他のあらゆる適切な植物種が含まれる。
好ましい実施態様では、本発明にしたがった遺伝子操作によってSSIVを欠いた植物は、アブラナ科、トウモロコシ、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ソラマメ(Vicia Faba L)、稲、ビート(Beta vulgaris)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、グリンピース(Pisum sativum)、および小麦属(Triticum)から選択される種に属している。
好ましい実施態様では、遺伝子操作によってSSIVを欠いた植物は、SSIVをコードする野生型の遺伝子が配列番号1の核酸配列を含むシロイヌナズナで構成される。
その他の好ましい実施態様では、遺伝子操作によってSSIVを欠いた植物は、SSIVをコードする野生型の遺伝子が配列番号2の核酸配列(SSIV−1アイソフォーム)または配列番号3の核酸配列(SSIV−1アイソフォーム)を含む稲で構成される。
その他の好ましい実施態様では、遺伝子操作によってSSIVを欠いた植物は、SSIVをコードする野生型の遺伝子が配列番号4の核酸配列を含む小麦で構成される。
その他の好ましい実施態様では、遺伝子操作によってSSIVを欠いた植物は、SSIVをコードする野生型の遺伝子が配列番号5の核酸配列を含むササゲで構成される。
ある実施態様では、遺伝子操作によってSSIVを欠いた植物は、SSIVをコードする遺伝子がイントロンの核酸配列に異種T−DNAを挿入することで変異したシロイヌナズナで構成される。これらの植物は、T−DNAがイントロン11に挿入され、SSIVをコードする変異した遺伝子が配列番号6の配列を含むシロイヌナズナを含み、前記形質転換植物は本発明では「Atss4−1」と称する。また、これらの植物は、T−DNAが配列番号1のイントロン2に挿入されたシロイヌナズナも含み、前記形質転換植物は本発明では「Atss4−2」と称する。
本発明のもう一つの対象は、配列番号7からなる変異した可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を含む形質転換されたシロイヌナズナで構成される、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物からなる。
本発明のもう一つの対象は、さらにデンプンホスホリラーゼを欠いた、上述したSSIVを欠いた植物から構成される。
したがって、本発明のもう一つの対象は、遺伝子操作によるものも含む、(i)SSIVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いた、SSIVを欠いた植物からなる。
ある実施態様において、遺伝子操作によってSSIVおよびデンプンホスホリラーゼを欠いた植物は、(i)SSIVをコードする遺伝子および(ii)デンプンホスホリラーゼをコードする遺伝子が、イントロンまたはエクソンの核酸配列内に異種T−DNAを挿入することによって変異しているシロイヌナズナで構成される。これらの植物は、実施例で示すように、本発明で「phs1−/ss4−」と称されるシロイヌナズナを含む。
また、本発明は、本明細書で定義される可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物に由来する、あらゆる植物の組織または器官、細胞、プロトプラスト、茎、花、および葉を含む、植物の部分にも関するものである。
また、本発明は、本明細書で定義される可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物に由来する植物細胞にも関するものである。
また、本発明は、本明細書で定義される可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物に由来する植物の種子も扱うものである。
本分野で一般的に知られており、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物を得るために採用することのできる様々な技術は以下で説明する。
SSIVを欠いた植物を得るための方法。
下記に開示する方法はすべて、SSIVをコードする遺伝子の発現または機能を阻害またはブロックすること、あるいは、SSIVタンパク質の酵素活性を阻害またはブロックすることで、前記SSIVをコードする遺伝子の発現または機能が阻害またはブロックされていない、同一であるが修飾されていない植物と比較して細胞あたりのデンプン粒の数が少ない修飾植物を得ることを目的としている。
本分野で知られている、遺伝子の発現または機能を阻害する影響を与えるあらゆるメカニズムを、生物学的に活性なSSIVタンパク質の最終的な産生に最適に干渉するように用いることができる。
下記で説明する技術は、(i)SSIVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いた植物を含む、本明細書で開示されるSSIVを欠いた植物のいずれか一つを得るために利用することができる。したがって、以下の技術はSSIVタンパク質またはSSIVをコードする核酸を標的として使用することに関するものであるが、これらの技術はまた、デンプンホスホリラーゼタンパク質またはデンプンホスホリラーゼをコードする核酸を標的として用いても容易に利用することができる。
SSIV酵素活性を阻害またはブロックするための方法
ある実施態様では、SSIVを欠いた植物は、活性なSSIVタンパク質を発現する植物を、SSIVタンパク質の酵素活性を阻害またはブロックする一つまたは複数の有機化合物または無機化合物と接触させることで得ることができる。
このようなSSIVの阻害化合物は、本分野で知られているあらゆる方法によって選択することができ、該方法には、
a)活性なSSIVタンパク質を発現する植物を用意する過程と、
b)過程a)の植物を、試験すべき阻害化合物の候補と接触させる過程と、
c)過程b)の最後に得られた植物に由来する植物細胞におけるSSIVの酵素活性を測定する過程と、
d)過程c)で測定されたSSIVの酵素活性が、過程b)が省略されたときに測定されるSSIVの酵素活性より低い場合に、前記候補化合物を陽性として選択する過程
を含むスクリーニング法も含まれる。
最も好ましくは、上記のスクリーニング法によると、前記候補化合物は、過程c)で測定されたSSIVの酵素活性が、過程b)が省略されたときに過程c)で測定されるSSIVの酵素活性の10%未満、好ましくは9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.5%、さらには0.1%より少ないときに、過程d)で陽性として選択される。
候補化合物はあらゆる有機化合物または無機化合物で構成され得る。好ましくは、候補化合物は低分子量の化合物で構成され、最も好ましくは、候補化合物は、10000Daより低い分子量、さらには5000Daより低い分子量を有し、そのため、これらの候補化合物は容易に植物細胞内に浸透できる。
上記スクリーニング法の第一の特徴によると、候補化合物、より具体的には候補となる阻害化合物は、あらかじめ合成された化合物のライブラリーから選択することができる。
上記スクリーニング法の第二の特徴によると、候補化合物、より具体的には候補となる阻害化合物は、化学構造がデータベース、例えば電子データベースで定義されている化合物から選択される。
上記スクリーニング法の第三の実施態様によると、候補化合物、より具体的には候補となる阻害化合物は、新たに考案することができる。
候補化合物は、(a)タンパク質またはペプチド、(b)核酸、および(c)有機化合物または無機化合物で構成されるグループから選択することができる。
例えば、事前に選択された候補核酸のライブラリーは、目的のSSIVタンパク質を標的分子として用いてSELEX法を行うことで、当業者によって得ることができる。SELEX法を実施するために、当業者は、米国特許第5475096号明細書および米国特許第5270163号明細書の内容を参照することができ、これら二つの文献の内容は引用することで本発明に含まれる。
さらに例えば、候補化合物は、目的のSSIVタンパク質に対して特異的な抗体で構成され得る。
SSIVをコードする遺伝子の発現を阻害する方法
本発明で用いる場合、SSIVタンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害するための方法は、対応するメッセンジャーRNAの合成を阻害またはブロックする方法、ならびに、対応するメッセンジャーRNAの活性SSIVタンパク質への翻訳を阻害またはブロックする方法を含む。
遺伝子発現を阻害するための方法は本分野でよく知られており、該方法には、これらに限定されるわけではないが、相同性依存の遺伝子サイレンシング、アンチセンス技術、RNA干渉(RNAi)などが含まれる。相同性依存の遺伝子サイレンシングという一般用語は、シス不活性化、トランス不活性化、およびコサプレッション(Finnegan et al.(1994)Biotech.12:883−888およびMatzke et al.(1995)Plant Physiol.107:679−685で開示されており、これらはともに引用することで全体が本発明に含まれるものとする)の現象を含む。これらのメカニズムは、植物におけるタンパク質の発現の減少をもたらす導入遺伝子/導入遺伝子または導入遺伝子/内在性遺伝子の干渉を伴う遺伝子サイレンシングのケースにあたる。「導入遺伝子」は、形質転換方法によってゲノムに導入された組換えDNA構築物である。あるいは、植物にSSIV特異的なアンチセンスRNAを組み込むことで、SSIVをコードする内在性遺伝子の発現を阻害し、ゲノムにおける機能的変異を誘発することができる。その効果は、細胞内に、SSIVをコードするmRNAの配列に相補的なRNAをコードするDNAを導入することで得られる(例えばBird et al.(1991)Biotech and Gen.Eng.Rev.9:207−226で開示されており、該文献は引用することでその全体が本発明に含まれる)。相同性依存の遺伝子サイレンシング、アンチセンスRNA、RNAi、またはその他の阻害メカニズムによる植物の遺伝子発現の操作は、活性なSSIVタンパク質の最終的な産生を阻害またはブロックすることを通してデンプンの生合成に最適に干渉するように用いることができ、このことによって、植物、または該植物の細胞および種子を含む該植物の所望の部分において、サイズの増大したデンプン粒が産生される。
SSIVをコードする遺伝子の発現を阻害するために用いることのできるあらゆる核酸は、好ましくは、SSIVをコードするすべての配列で見られる、mRNAを含む、対応するDNAまたはRNAのSSIVをコードする部分、特に、SSIVタンパク質のN末端部分をコードする核酸部分、より詳細には、あらゆるSSIVのアミノ酸配列の200位のアミノ酸残基から420位のアミノ酸残基に位置するアミノ酸配列を含むN末端部分を標的としている。
上記実施態様は、センス核酸またはアンチセンス核酸をコードする適切な核酸ならびにRNAiまたはさらにリボザイムを選択する場合に好適である。
Tilling
本発明によるSSIVを欠いた植物を得るために、「tilling」(Targeting Induced Local Lesions IN Genomes)と称され、当業者によく知られているもう一つの技術も用いることができる。tillingの方法は、例えば、Mc Callum et al.(2000,Plant Physiology,Vol.123:439−442)で開示されている。
SSIV遺伝子における変異の同定および特徴付けは、TILLINGシステムを用い、以下の過程を含む下記の方法にしたがって、四つの過程で行われる。
a)化学的突然変異誘発によって植物変異体のコレクションを生成する過程。変異は、エチルメタンスルホン酸(EMS)による化学的突然変異誘発(Koornneef et al.,1982)で、30000個の種子に対して突然変異誘発し、変異体を播種し、5000個のM1植物からM2世代を産生することにより得られた。
b)M2ファミリーあたり20個の植物からDNAを抽出し、100000個のM2植物(5000ファミリー)の集団から3次元のDNAプールを形成する過程。
c)標的遺伝子のPCR増幅を行い、変性HPLCによって変異を調査する過程。SSIV遺伝子をシーケンシングする。次に、PCR産物を変性させ、ヘテロ二本鎖の形成を可能にするように対合させる。その後、変異を、変性HPLC(McCallum et al.,2000)またはヘテロ二本鎖における「ミスマッチ」の検出を可能にする酵素による手段(CEL1酵素、Oleykowski et al.,1998)のいずれかによって検出する。
d)デンプン粒との振る舞いを評価するために変異体を特徴付ける過程。過程d)は、好ましくは、変異植物で見られるデンプン粒の平均サイズを測定すること、あるいは、変異植物で見られるデンプン粒の平均サイズを、野生型の植物を含む、SSIVを欠いていない植物で見られるデンプン粒の平均サイズと比較することからなる。
アンチセンス核酸およびセンス核酸。
1.アンチセンス核酸
植物遺伝子をサイレンシングするためのアンチセンス核酸およびセンス核酸の使用は本分野でよく知られている。遺伝子発現のアンチセンス抑制は、特に、米国特許第5190931号明細書および第5272065号明細書、米国特許第5478369号明細書、米国特許第5453566号明細書、Weintrab et al.(1985)Trends Gen.1:22−25、およびBourque and Folk(1992)Plant Mol.Biol.19:641−647で開示されている。アンチセンスヌクレオチド配列は、生物の表現型を変化させるための代謝経路を操作する上で特に効果的である。遺伝子発現の減少は、DNAレベル、および転写レベル、転写後レベル、または翻訳レベルで仲介することができる。例えば、dsRNAは、転写後のプロセスおよびDNAメチル化の両方によって遺伝子発現を抑制すると考えられている(Sharp & Zamore(2000)Science 287:2431−2433)。アンチセンスポリヌクレオチドは、植物細胞に導入されると、標的ポリヌクレオチドに特異的に結合し、転写、スプライシング、輸送、翻訳、および/または安定性に干渉して遺伝子発現を阻害すると考えられる。アンチセンスポリヌクレオチドは、染色体DNA、一次RNA転写物、またはプロセシングされたmRNAを標的とすることができる。好ましい標的領域には、スプライス部位、翻訳開始コドンおよび翻訳終止コドン、ならびにオープンリーディングフレーム内のその他の配列が含まれる。
当然のことながら、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドはSSIVをコードする標的遺伝子またはSSIVをコードする標的RNAに対して完全に相補的である必要はなく、また、それらは、発現を調節するかまたは特異的ハイブリッドを形成するために互いの全長にわたったハイブリダイゼーションをしない。さらに、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、SSIVをコードする標的遺伝子またはSSIVをコードする標的RNAに対して完全長である必要もない。一般的に、相同性が高ければ、ポリヌクレオチド長の短さを補うことができる。典型的には、アンチセンス分子は、標的遺伝子の少なくとも8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、75、100、200、500、または少なくとも1000個の連続するヌクレオチドと60%〜100%の配列同一性を有するRNAを含むものである。好ましくは、配列同一性は少なくとも70%であり、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、最も好ましくは少なくとも99%である。標的遺伝子には、配列番号1から配列番号5で構成されるグループから選択される核酸配列を含む、SSIVをコードする遺伝子が含まれる。
アンチセンスポリヌクレオチドは、エクソン、イントロン、エクソン−イントロンの境界、プロモーター領域、および転写開始部位や翻訳開始部位のようなその他の調節領域に結合するように設計することができる。完全なcDNAおよび部分的なcDNA、3’非コード領域、ならびにコード領域の比較的短い断片に対応するアンチセンスRNAを用いて植物の遺伝子発現を阻害するための方法は本分野で知られている(引用することで内容が本発明に含まれる米国特許第5107065号明細書および米国特許第5254800号明細書、Sheehy et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8805−8809、Cannon et al.,(1990)Plant Mol.Biol.15:39−47、およびChang et al.,(1989)Proc Natl Acad.Sci.USA 86:10006−10010)。さらに、Van der Krol et al.(1988,Biotechniques 6:958−976)は、組織特異的な方法で植物遺伝子を阻害するためのアンチセンスRNAの使用法を記載している。
導入されたセンスポリヌクレオチドによる植物における発現の遺伝子特異的な阻害は「コサプレッション」と呼ばれる。コサプレッションの方法は本分野で知られている。部分的および完全な長さのcDNAが植物の内在性遺伝子のコサプレッションに用いられている(引用することでそれぞれの内容が本発明に含まれる、米国特許第4801340号明細書、米国特許第5034323号明細書、米国特許第5231020号明細書、および米国特許第5283184号明細書。Van der Kroll et al.(1990)The Plant Cell 2:291−299、Smith et al.(1990)Mol.Gen.Genetics 224:477−481、およびNapoli et al.(1990)The Plant Cell 2:279−289)。
2.センス核酸
センス抑制については、センスポリヌクレオチドの導入によって、対応する標的遺伝子の転写がフロックされると考えられている。本発明の方法では、センスポリヌクレオチドは、植物のSSIVをコードする標的遺伝子またはSSIVをコードする標的RNAと、少なくとも80%、90%、95%またはそれより高い配列同一性を有するものである。導入されるセンスポリヌクレオチドは標的遺伝子または標的転写産物に対して完全長である必要はない。好ましくは、センスポリヌクレオチドは、配列番号1〜5にリストされているヌクレオチド配列を含む、SSIVをコードする遺伝子またはSSIVをコードするRNAの少なくとも100個の連続するヌクレオチドと、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するものである。同一領域には、イントロンおよび/またはエクソンならびに非翻訳領域が含まれる。導入されるセンスポリヌクレオチドは、植物の染色体レプリコンまたは染色体外レプリコンに安定的に組み込まれる。
本発明の方法では、センスポリヌクレオチドは標的とする植物のSSIVタンパク質のアミノ酸配列、または標的とする植物のSSIVタンパク質と少なくとも90%、95%、98%、99%、もしくはそれより高い同一性を有するアミノ酸配列をコードするものである。好ましくは、配列番号1〜5にリストされたポリヌクレオチド配列を含むセンスポリヌクレオチドは、種の間で高度には保存されていない、アミノ酸残基における5個またはそれより少ない改変を含む。導入されるセンスポリヌクレオチドは、植物の染色体レプリコンまたは染色体外レプリコンに安定的に組み込まれる。
二本鎖RNA(RNA干渉すなわちRNAiとも称される)
もう一つの特徴において、本発明は、植物のSSIVをコードする標的遺伝子の転写後の阻害を目的とする二本鎖RNA(dsRNA)を提供する。本発明の方法では、dsRNAはSSIVをコードする標的遺伝子またはSSIVをコードする標的RNAに特異的である。好ましくは、dsRNAは、少なくとも25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100個の塩基対長である(Hamilton & Baulcombe(1999)Science 286:950)。典型的には、ハイブリダイズしているRNAは同じ長さであり、5’末端または3’末端での突出もギャップも有さない。しかし、5’または3’での100個までのヌクレオチドの突出を有するdsRNAを本発明の方法で用いることができる。
したがって、一つの実施態様では、本発明は、配列番号1〜5にリストされたヌクレオチド配列を含む、SSIVをコードする遺伝子またはSSIVをコードするRNAの少なくとも25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100個の連続するヌクレオチドと少なくとも95%の相補性を有する第一のリボ核酸、および第一のリボ核酸に実質的に相補的な第二のリボ核酸を含んだdsRNAを提供する。
dsRNAは、2’−O−メチルリボシル残基のような、リボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド類似体、またはその組み合わせを含み得る(米国特許第4130641号明細書および米国特許第4024222号明細書)。dsRNAのポリリボイノシン酸:ポリリボシチジル酸は、米国特許第4283393号明細書に記載されている。dsRNAを作成し、使用するための方法は、本分野で知られている。ある方法では、インビボ、または単一のインビトロでの反応混合物における、二つの相補的なDNA鎖の同時転写が含まれる(引用することで内容が本発明に含まれる、米国特許第5795715号明細書)。本発明の方法では、dsRNAは二つの相補的なRNAの転写を通して植物細胞内で発現する。
SSIVをコードする遺伝子を破壊する方法
SSIVをコードする遺伝子に変異を導入するための方法を含む、本分野で知られている様々な方法を、SSIVをコードする遺伝子を破壊するために用いることができる。
SSIVを欠いた変異植物は、化学的突然変異誘発、電離放射線発突然変異、X線誘発突然変異、ガンマ線誘発突然変異、U.V.誘発突然変異、部位特異的突然変異誘発、およびトランスポゾン誘発突然変異を含むランダムな突然変異誘発を含む、多くの方法で生成することができる。
上記で説明したように、本発明による植物のSSIVタンパク質の遺伝子発現レベルまたはタンパク質活性のレベルの操作は、植物細胞においてSSIVをコードする遺伝子の破壊を引き起こすことで行うこともできる。上記で定義したように、「遺伝子で破壊を引き起こす」という用語は、本発明では遺伝子の発現を変化させるという意味を指すように使われる。また、適切な技術および方法には、例えば、リボザイムの使用、部位特異的突然変異誘発およびランダム突然変異誘発(化学的または放射線誘発)、T−DNAまたはトランスポゾンの挿入、ならびに標的遺伝子のアクセサリータンパク質の発現の変化のような、遺伝子破壊技術も含まれる。
したがって、本発明の一つの実施態様は、SSIVを欠いていない同一の植物と比較して細胞あたりの数が少ないデンプン粒を産生する、SSIVを欠いた植物を得るための方法であり、前記方法は、
a)植物細胞内でSSIVをコードする遺伝子の破壊を引き起こす過程と、
b)SSIVをコードする内在性遺伝子の破壊を有し、変化したデンプン代謝、特に、前記SSIVをコードする遺伝子が破壊されていない同一の植物細胞と比較して細胞あたりのデンプン粒の数が少ない植物を、植物細胞から再生させる過程、
を含んでいる。
上記方法の好ましい実施態様において、過程a)は、
a1)SSIVをコードする遺伝子の破壊を引き起こし得る作用物質に植物細胞をさらす過程と、
a2)過程a1)の最後に得られた植物細胞において、SSIVをコードする遺伝子の破壊の発生に関してスクリーニングを行う過程と、
a3)破壊されたSSIVをコードする遺伝子を有する植物細胞を陽性として選択する過程、
を含んでいる。
これらの好ましい実施態様では、過程b)は、過程a3)で陽性としてあらかじめ選択されている細胞でのみ行われる。
通常、スクリーニングの過程a2)は、SSIVをコードする核酸またはその部分のPCR増幅、および、例えば増幅産物のシーケンシングまたは適切なオリゴヌクレオチドプローブを用いた変異の検出による増幅産物の破壊の検出によって行われる。
特定の実施態様では、過程a1)は、目的の培養された植物細胞を、化合物または化合物の混合物、電離放射線、X線、ガンマ線、紫外線(UV)などのような、ランダム突然変異誘発物質と接触させることからなる。
1.リボザイムによる破壊
このような方法の一つはリボザイムを用いるものである。本発明の方法では、リボザイムは、SSIVをコードする標的遺伝子、またはAGB1、GPA1、もしくはそのオルソログである、SSIVをコードする標的RNAの発現を減少させるために用いられる。
リボザイムを作成し、使用するための方法は、当業者に知られている(引用することで内容が本発明に含まれる、米国特許第6025167号明細書、米国特許第5773260号明細書、米国特許第5695992号明細書、米国特許第5545729号明細書、米国特許第4987071号明細書、および米国特許第5496698号明細書、Haseloff & Gerlach(1988)Nature 334:586−591、Van Tol et al.(1991)Virology 180:23、Hisamatsu et al.,(1993)Nucleic Acids Symp.Ser.29:173、Berzal−Herranz et al.(1993)EMBO J.12:2567(ヘアピン型リボザイムにおける必須のヌクレオチドを記載している)、Hampel & Tritz,(1989)Biochemistry 28:4929、Haseloff et al.(1988)Nature 334:585−591、Haseloff & Gerlach(1989)Gene 82:43(自己切断反応に必要な配列を記載している)、およびFeldstein et al.(1989)Gene 82:53)。当業者であれば、様々なリボザイムモチーフ、および特にヘアピン型リボザイムの詳細を、Ahsen & Schroeder(1993)Bioassays 15:299、Cech(1992)Curr.Opi.Struc.Bio.2:605、およびHampel et al.(1993)Methods:A Companion to Methods in Enzymology 5:37の文献で理解することができる。
SSIVをコードする標的遺伝子またはSSIVをコードする標的RNA転写物にハイブリダイズするリボザイムの部分は、典型的には少なくとも7個のヌクレオチド長である。好ましくは、この部分は少なくとも8、9、10、12、14、16、18、または20個、あるいはそれより多いヌクレオチド長である。SSIVをコードする標的遺伝子またはSSIVをコードする標的RNAにハイブリダイズするリボザイムの部分は、ハイブリダイゼーションが前記標的に特異的である限り、前記標的と完全に相補的である必要はない。好ましい実施態様では、リボザイムは、SSIVをコードする標的RNAの部分に対して100%の相補性を有する、少なくとも7個または8個のヌクレオチドを有する部分を含む。実施態様の一つでは、標的RNA転写物は、配列番号1〜5にリストされたヌクレオチド配列を含む、SSIVをコードする遺伝子に対応している。
2.T−DNAの挿入またはトランスポゾンの挿入による破壊
同様に、植物のSSIVをコードする標的遺伝子を破壊させる方法には、T−DNAまたはトランスポゾンの挿入法が含まれる。病気の経過の一部として、アグロバクテリウム属の細菌はDNA断片を宿主である植物細胞の核へと移送する。この移送されたDNA(T−DNA)は宿主ゲノム中のランダムな位置に組み込まれる。標的遺伝子のオープンリーディングフレームまたはプロモーター領域内にT−DNAを組み込まれたトランスジェニック植物は、当業者に知られているポリメラーゼ連鎖反応のスクリーニング法を用いて同定される(Krysan et al.(1996)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 93:8145−50)。
また、SSIVをコードする標的遺伝子の不活性化は、前記SSIVをコードする遺伝子のプロモーター領域またはコード領域にトランスポゾンを挿入することでも実施することができる。本発明の方法では、遺伝子を不活性化するために用いられるトランスポゾンは、突然変異誘発が行われる種に固有であるか(例えばBlauth et al.(2002)Plant Mol.Biol.48:287−97)または異なる種に由来するものである(例えばKohli et al.(2001)Mol.Genet.Genomics 266:1−11)。いずれの場合にも、上記の方法に類似したポリメラーゼ連鎖反応法を用いて、所望の遺伝子破壊を伴う植物株を同定する。挿入による突然変異誘発技術はParinov & Sundaresan(2000)Curr.Opin.Biotechnol.11:157−61とKrysan,Young & Sussman(1999)Plant Cell 11:2283−90で概観されている。
3.SSIVをコードする遺伝子にその他の変異を導入することによる破壊
植物のSSIVをコードする標的遺伝子を阻害するためのその他のよく知られた遺伝子破壊技術も本発明の方法で用いることができる。このような方法の一つは、SSIVをコードする標的遺伝子の定方向突然変異誘発またはランダムな突然変異誘発に関するものである。したがって、本発明のもう一つの実施態様では、標的であるSSIVタンパク質の活性の定方向の変化は、SSIVをコードするクローニングされたcDNAのコード領域の遺伝子操作によって実施される。クローニングされたcDNAの定方向の遺伝子操作によって、SSIVをコードする標的の高度に保存された領域において変異が生じ、この結果、遺伝的に優性な仕方で、標的であるSSIVタンパク質の活性を不活性化または変化(つまり低下)させる、非保存的なアミノ酸の置換が生じる。あるいは、SSIVをコードするクローニングされたcDNAの定方向の遺伝子操作は、対応するSSIVタンパク質のアミノ末端および/またはカルボキシ末端から一つまたは複数のアミノ酸を欠失させるか、または前記末端へ一つまたは複数のアミノ酸を付加することを含む、対応するSSIVタンパク質のアミノ酸配列内において一つまたは複数のアミノ酸の欠失(いわゆる切断)または付加を行うために用いられる。
このような定方向の遺伝子操作の方法は一般的に本分野で知られている。例えば、不活性なSSIVタンパク質を産生する植物は、目的の天然SSIVタンパク質をコードするクローニングされたDNA配列における変異によって調製することができる。突然変異誘発およびヌクレオチド配列の改変のための方法は本分野でよく知られている(引用することですべてが本発明に含まれる、Walker & Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York)、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.82:488−492、Kunkel et al.(1987)Methods Enzymol.154:367−382、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning、A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,N.Y.、米国特許第4873192号明細書、および該文献で引用されている文献)。
したがって、本発明の実施態様の一つには、
a)SSIVをコードする変異した配列であり、部位特異的な優性変異を含むセンスヌクレオチド配列を含む発現カセットを植物細胞に導入する過程、および
b)過程a)で植物細胞に導入された発現カセットを安定的に組み込んでいる植物を再生させる過程であって、植物がSSIVを欠いていない同一の植物と比較して細胞あたりの数が少ないデンプン粒を産生する過程
を含む、SSIVをコードする遺伝子内に変異を導入することによってSSIVを欠いた植物を得るための方法も含まれる。
4.ランダム突然変異誘発による破壊
本発明の方法には、ランダム突然変異誘発法を用いて、植物内のSSIVをコードする標的遺伝子を破壊するための方法も含まれる。標的遺伝子のランダム突然変異誘発のために、突然変異誘発は化学物質、放射線を用いて実施される。
上記で既に開示してあるT−DNAまたはトランスポゾンの挿入もランダム突然変異誘発技術に含まれることに注意されたい。
したがって、本発明のもう一つの実施態様では、SSIVをコードする遺伝子の突然変異誘発は、化学的な変異誘発化合物またはDNAの放射線照射のいずれかを用いてランダムに実施することができる。SSIVをコードする標的遺伝子の不活性化は、好ましくはSSIVをコードする標的遺伝子の高度に保存された領域において、非保存的なアミノ酸置換をもたらす変異を生じさせることで実施される。あるいは、SSIVをコードする標的遺伝子の不活性化は、標的遺伝子のコード領域におけるあらゆるコドンの改変によって得られ、それにより、得られるSSIVタンパク質の切断が生じる。標的遺伝子におけるランダムな変異を生じさせるためのこのような技術は本分野でよく知られている(Koncz,Chua & Schell,eds.,(1993)Methods in Arabidopsis Research(World Scientific Publishing,River Edge,N.J.))。
SSIVを欠いたトランスジェニック植物
本発明は、アンチセンス、センス、dsRNA、リボザイム、またはSSIVをコードする配列からなる植物のヌクレオチド配列に対する逆方向反復であるヌクレオチド配列を含む発現カセットがゲノム中に安定的に導入されているトランスジェニック植物を含む。さらに、SSIVをコードする、植物に内在的な遺伝子からなる遺伝子内に破壊を有しているトランスジェニック植物も本発明に含まれる。本発明のトランスジェニック植物には、本明細書の別の箇所に記載したように、双子葉植物ならびに単子葉植物が含まれる。
本発明には、アブラナ科、トウモロコシ、ジャガイモ、ソラマメ、稲、ビート、ホウレンソウ、グリンピース、および小麦で構成されるグループから選択される植物種に由来する、SSIVを欠いたトランスジェニック植物が含まれる。
SSIVを欠いたトランスジェニック植物を得るための方法
本発明のトランスジェニック植物は、本発明で説明する方法および本分野で知られている方法によって作成される。
本発明のポリヌクレオチドはあらゆる植物または植物細胞に導入することができる。植物とは単子葉植物および双子葉植物、ならびにそれらの細胞、器官、および組織を意味する。ポリヌクレオチドを植物に導入する方法およびトランスジェニック植物を生成する方法は当業者に知られている(Weissbach & Weissbach (1988)Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,N.Y.、Grierson & Corey(1988)Plant Molecular Biology,2d.,Blackie,London、Miki et al.(1993)Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants,CRC Press,Inc.pp.67−80)。
本発明の発現カセットを含むベクターが本発明の方法において用いられる。「ベクター」とは、宿主細胞で複製することのできるポリヌクレオチド配列を意味する。好ましくは、ベクターは形質転換細胞の同定および/または選択に有用なマーカーとして役立つ遺伝子を含んでいる。このようなマーカーには、これらに限定されるわけではないが、バルナーゼ(bar)、G418、ハイグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、ゲンタマイシンなどが含まれる。ベクターはDNAまたはRNAを含むことができ、一本鎖または二本鎖、および直鎖または環状とすることができる。様々な植物発現ベクターおよびレポーター遺伝子が、Gruber et al.,Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology,Glick et al.,eds,CRC Press,pp.89−119,1993、およびRogers et al.(1987)Meth Enzymol 153:253−277に記載されている。好ましい実施態様では、ベクターは大腸菌/アグロバクテリウム・ツメファシエンスのバイナリーベクターである。本発明のもう一つの好ましい実施態様では、発現カセットはアグロバクテリウムのTiプラスミドの左右のT−DNA境界の間に挿入される。
本発明の組換え「発現カセット」は、目的のポリヌクレオチドの転写および終結に必要な5’および3’調節配列を含んでいる。通常、発現カセットは少なくとも一つのプロモーターと転写ターミネータを含む。本発明のプロモーターは、より詳細に本明細書において説明する。本発明のいくつかの実施態様では、その他の機能的な配列が発現カセットに含まれる。このような機能的配列には、これらに限定されるわけではないが、イントロン、エンハンサー、転写開始部位および転写終結部位、ならびにポリアデニル化部位が含まれる。調節配列は少なくとも一つの植物、植物細胞、または植物組織において機能する。これらの配列は、一つまたは複数の遺伝子に由来し得るか、または組換え技術を用いて作成することもできる。ポリアデニル化シグナルには、これらに限定されるわけではないが、アグロバクテリウムのオクトピン合成酵素シグナル(Gielen et al(1984)EMBO J.3:835−846)およびノパリン合成酵素シグナル(Depicker et al.(1982)Mol.and Appl.Genet.1:561−573)が含まれる。転写終結領域には、これらに限定されるわけではないが、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのTiプラスミドのオクトピン合成酵素遺伝子およびノパリン合成酵素遺伝子のターミネーターが含まれる(Ballas et al.(1989)Nuc.Acid Res.17:7891−7903、Guerineau et al.(1991)Mol.Gen.Genet.262:14144、Joshi et al.(1987)Nuc.Acid Res.15:9627−9639、Mogen et al.(1990)Plant Cell 2:1261272、Munroe et al.(1990)Gene 91:15158、Proudfoot(1991)Cell 64:671−674、およびSanfacon et al.(1991)Genes Devel.5:14149)。
本発明の発現カセットは、選択可能またはスクリーニング可能なマーカーをコードするポリヌクレオチドに共有結合させることができる。このようなマーカーの例には薬剤耐性または除草剤耐性をコードする遺伝子が含まれ、該耐性とは例えば、ハイグロマイシン耐性(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT))、スペクチノマイシン耐性(aadA遺伝子によりコードされる)、カナマイシンおよびゲンタマイシン耐性(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII))、ストレプトマイシン耐性(ストレプトマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(SPT))、ホスフィノトリシン耐性またはバスタ耐性(バルナーゼ(bar))、クロロスルフロン耐性(アセトラクターゼ合成酵素(ALS))、クロラムフェニコール耐性(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT))、G418耐性、リンコマイシン耐性、メトトレキサート耐性、グリホサート耐性などである。さらに、本発明の発現カセットは、容易にアッセイできる酵素をコードする遺伝子と共有結合させることができ、該酵素とは例えば、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ(ベータ−gal)、ベータ−グルクロニダーゼ(GUS)などである。
方法には、これらに限定されるわけではないが、エレクトロポレーション(Fromm et al.(1985)Proc Natl Acad Sci 82:5824、Riggs et al.(1986)Proc.Nat’l Acad Sci.USA 83:5602−5606)、粒子衝撃(引用することで内容が本発明に含まれる米国特許第4945050号明細書および米国特許第5204253号明細書、Klein et al.(1987)Nature 327:70−73、MacCabe et al.(1988)Biotechnology 6:923−926)、マイクロインジェクション(Crossway(1985)Mol Gen.Genet.202:179−185、Crossway et al.(1986)Biotechniques 4:320−334)、炭化ケイ素介在性のDNA取り込み(Kaeppler et al.(1990)Plant Cell Reporter 9:415−418)、直接的な遺伝子導入(Paszkowski et al.EMBO J.3:2717−2722)、プロトプラスト融合(Fraley et al.(1982)Proc. Natl.Acad.Sci.USA 79:1859−1863)、ポリエチレングリコール沈殿(Paszowski et al.(1984)EMBO J.3:2717−2722、Krens et al.(1982)Nature 296:72−74)、シリコン繊維移送法、アグロインフェクション(引用することで本発明に含まれる米国特許第5188958号明細書、Freeman et al.(1984)Plant Cell Physiol.25:1353(リポソーム介在性のDNA取り込み)、Hinchee et al.(1988)Biotechnology 6:915−921、Horsch et al.(1984)Science 233:496−498、Fraley et al.(1983)Proc. Nat’l. Acad.Sci.USA 80:4803、Hernalsteen et al.(1984)EMBO J.3:3039−3041、Hooykass−Van Sloteren et al.(1984)Nature 311:763−764、Grimsley et al.(1987)Nature 325:1677−1679、Gould et al.(1991)Plant Physiol.95:426−434、Kindle(1990)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 87:1228(ボルテックス法)、Gene Transfer to Plants,Potrykus et al.,eds.,Springer−Verlag,NewYork,N.Y.pp19−23所収のBechtold et al.(1995)(減圧浸潤)、Schell(1987)Science 237:1176−1183、およびPlant Molecular Biology Manual,Gelvin & Schilperoort,eds.,Kluwer,Dordrecht,1994)が含まれる。
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドはアグロインフェクションによって植物細胞に導入される。この方法では、本発明のポリヌクレオチドを含むDNA構築物は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスベクターにおけるT−DNAの左右の境界の間に挿入される。アグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主細胞の毒性タンパク質が、細菌で感染した植物細胞への挿入されたDNAの移送に介在する。アグロバクテリウム・ツメファシエンス/Tiプラスミド系に代わるものとして、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)が介在した形質転換を用いることができる(Genetic Engineering,Volume 6,Ribgy,ed.,Academic Press,London,1987所収のLichtenstein & Fuller、DNA Cloning,Volume 2,Glover,ed.,IRI Press,Oxford,1985所収のLichtenstein & Draper)。
一つまたは複数の植物配偶子が形質転換されると、トランスジェニック種子およびトランスジェニック植物を直接産生することができる。例えば、トランスジェニック種子およびトランスジェニック植物を産生する一つの方法は、花のアグロインフェクションと、アグロインフェクションされた花から産生されたトランスジェニック種子の回収を必要とする。あるいは、形質転換された植物細胞は、当業者に知られた方法によって植物内で再生させることができる(Evans et al,Handbook of Plant Cell Cultures,Vol I,MacMollan Publishing Co.New York,1983、およびVasil, Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Acad.Press,Orlando,Vol 11,1986)。
一度トランスジェニック植物が得られれば、該植物を後代の植物および植物株を産生するための親として用いることができる。従来の植物育種方法を用いることができ、該方法には、これらに限定されるわけではないが、交配および戻し交配、自家受粉、ならびに栄養繁殖が含まれる。植物を育種するための技術は当業者に知られている。トランスジェニック植物の後代は、後代がトランスジェニック構築物のすべてまたは一部を含む限り、本発明の範囲に含まれる。後代は無性生殖の方法および有性生殖の方法の両方で生成することができる。植物の後代には、トランスジェニック種子、トランスジェニック植物の次代、およびその種子が含まれる。
したがって、本発明のある実施態様は、従来の育種方法および/または遺伝形質転換の連続的な反復を用いて、SSIVをコードする遺伝子の破壊を含む遺伝子型および変化したデンプン代謝を含む表現型を有する、SSIVを欠いた植物株を産生することを含み、前記表現型は、SSIVを欠いていない同一の植物と比較して細胞あたりの数が少ないデンプン粒を含む表現型を含んでいる。
方法
このように、本発明は、
a)植物細胞を用意する過程と、
b)過程a)で用意された植物細胞に、前記植物細胞が可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)活性を欠くようにするDNA構築物を導入することで、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)活性を欠いた、形質転換された植物細胞を得る過程と、
c)過程b)の最後で得られた形質転換された植物細胞から植物全体を再生させる過程、
を含む、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた形質転換植物を得るための方法にも関するものである。
上記方法で用いられる「DNA構築物」は、本明細書で開示されているあらゆる「発現カセット」を含む。したがって、前記DNA構築物は、アンチセンス、センス、dsRNA、リボザイム、または本発明で説明しているSSIVをコードする配列からなる植物のヌクレオチド配列に対する逆方向反復であるヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。
上記方法のいくつかの実施態様では、過程b)において、前記植物細胞がデンプンホスホリラーゼ活性も欠くようにするDNA構築物を用いることができ、このことによって、過程c)では、デンプンホスホリラーゼ活性も欠いている、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)活性を欠いた形質転換植物の細胞が得られる。
これらの実施態様の第一の特徴によると、植物が(i)SSIVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠くように、過程b)で、SSIVをコードする遺伝子およびデンプンホスホリラーゼをコードする遺伝子の両方の不活性化を引き起こし得る単一のDNA構築物を用いることができる。例えば、このようなDNA構築物は、T−DNA、または、標的特異的ではない、T−DNAを有するあらゆるベクターからなるものであってよい。
これらの実施態様の第二の特徴によると、植物が(i)SSIVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠くようにするために、過程b)において、それぞれSSIVに特異的な第一のDNA構築物およびデンプンホスホリラーゼに特異的な第二のDNA構築物である少なくとも二つの異なるDNA構築物が用いられる。例えば、このようなDNA構築物は、それぞれSSIVおよびデンプンホスホリラーゼを対象とした、標的特異的なセンス核酸もしくはアンチセンス核酸をコードするDNA構築物を含むか、またはこれらからなるものとすることができる。
また、本発明は、トランスジェニック植物とも呼ばれる、SSIVを欠き上記方法によって得られる形質転換植物も扱うものである。
前記形質転換植物またはトランスジェニック植物は、単子葉植物および双子葉植物で構成されるグループから選択することができる。
好ましくは、前記形質転換植物またはトランスジェニック植物は、アブラナ科、トウモロコシ、ジャガイモ、ソラマメ、稲、ビート、ホウレンソウ、グリンピース、および小麦で構成されるグループから選択される植物種に属している。
本発明のさらなる対象は、SSIVをコードする遺伝子が、配列番号1(シロイヌナズナ)、配列番号2および配列番号3(稲)、配列番号4(小麦)、ならびに配列番号5(ササゲ)の核酸配列で構成されるグループから選択されるSSIV配列における変異によって不活性化されている、SSIVを欠いた形質転換植物またはトランスジェニック植物からなる。
特に、本発明は、配列番号7からなる変異した可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)遺伝子を含む、形質転換植物またはトランスジェニック植物に関するものである。
また、本発明は、SSIVを欠いていない同一の植物の同一の材料と比較して細胞あたりの数が少ないデンプン粒を含む、上記で定義した形質転換植物またはトランスジェニック植物に由来する植物細胞および植物の種子を含む、植物の部分にも関するものである。
デンプンを産生する方法および該デンプンの使用法
本明細書の上記で何度も既に開示しているように、本発明によるSSIVを欠いた植物は、細胞内に、SSIVを欠いていない同一の植物よりも細胞あたりの数が少ないがより大きなサイズのデンプン粒を有している。
上述しているように、SSIVを欠いた植物は、同一であるがSSIVを欠いていない植物に由来するデンプン粒よりも少なくとも1.5倍大きいサイズを有するデンプン粒を産生するのに対し、デンプン粒の構造は、SSIVを欠いたこのような植物において影響を受けていない。
さらに、(i)SSIVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いた植物は、同一であるがSSIVを欠いておらずデンプンホスホリラーゼも欠いていない植物に由来するデンプン粒よりも少なくとも4倍大きいサイズを有するデンプン粒を産生することが分かっている。
さらに、機能的なSSIVタンパク質を産生する植物(野生型植物)が平らな形のデンプン粒を比較的産生するのに対し、SSIVを欠いた植物は丸い形のデンプン粒を比較的産生することが示されている。
第一に、少なくとも、大きなサイズのデンプン粒は小さなサイズのデンプン粒よりもより良く早い堆積が可能となるということのみにより、SSIVを欠いた植物に由来する、より大きなサイズのデンプン粒によって、産業的なデンプン製造においてより良い生産性が得られる。したがって、少なくとも、植物繊維から抽出した後にデンプン粒を洗浄する過程を行う場合、デンプン粒のロスは、SSIVを欠いた植物に由来するデンプン粒を用いる場合に、より少なくなる。
第二に、本出願人はいかなる特定の理論にも縛られることを望まないが、SSIVを欠いた植物に由来する、サイズが大きく、丸い形をしたデンプン粒は、産業的なデンプン製造の過程で酵素加水分解を受けにくく、したがって最終製品の収率をかなり増大させると考えられる。
この、本発明によるSSIVを欠いた植物の本質的な特徴によって、SSIVを欠いていない植物と比較して、粒または種子を含む適切な植物の部分から、より容易に、より低いコストでデンプンを抽出することが可能となる。
このように、本発明はさらに、SSIVを欠いた本発明による植物に由来するデンプンの製造および使用まで範囲に含むものである。
本発明のもう一つの対象は、
a)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠くように修飾され、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を含む植物細胞を有する植物、ならびに
b)(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼを欠くように修飾され、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼのいずれも欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を含む植物細胞を有する植物
で構成されるグループから選択される植物からデンプンを抽出する過程を含むデンプン産生方法からなる。
本発明のもう一つの対象は、
a)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠くように修飾され、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を含む植物細胞を有する植物、ならびに
b)(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼを欠くように修飾され、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼのいずれも欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のアミロース含有量を有するデンプン粒を含む植物細胞を有する植物
で構成されるグループから選択される植物に由来する植物細胞からデンプンを抽出する過程を含む、デンプン産生方法からなる。
また、本発明は、本発明によるトランスジェニック植物の細胞、植物、および/または植物の部分をデンプンの産生/抽出プロセスに導入する過程を含む、デンプンを産生するためのプロセスにも関する。
さらに、本発明は、本発明によるデンプンを、デンプンの化学的および/または物理的な修飾/処理のプロセスに導入する過程を含む、修飾されたデンプンの産生プロセスにも関するものである。
また、本発明は、本明細書で開示した可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いた植物からデンプンを抽出する過程を含む、デンプン産生方法にも関するものである。
植物、植物細胞、または該植物の部分からデンプンを抽出するプロセスは本分野でよく知られている。このようなプロセスは、例えば、Eckhoff et al.(Cereal Chem.73(1996),54−57)に記載されている。トウモロコシデンプンの抽出は、例えば「湿式粉砕」によって行われる。様々な植物からデンプンを抽出するためのその他の方法は、例えば、Starch:Chemistry and Technology(eds.:Whistler,BeMiller and Paschall(1994)2nd Edition,Academic Press Inc.London LTD;ISBN 0−12−746270−8;Chapter XII,page 417−468、Corn and Sorghum Starches:Production;by Watson,S.A.;Chapter XIII,page 469−479、Tapioca,Arrowroot and Sago Starches:Production by Corbishley and Miller;Chapter XIV,page 479−490、Potato Starch:Production and Uses;by Mitch;Chapter XV,page 491−506、Wheat starch:Production,Modification and Uses;by Knight and Olson,Chapter XVI,page 507−528、Rice starch:Production and Uses;by Rohwer and Klem)で説明されている。植物材料からデンプンを抽出するための方法において一般的に用いられる手段は、分離器、デカンタ、液体サイクロン、および、例えばスプレードライヤーやジェットドライヤーなどの、デンプンを乾燥させるための様々な種類の機械である。
本発明によるSSIVを欠いた植物からより簡単な抽出および/または収率の増加した抽出によって得ることのできるデンプン製品は、食用製品および非食用製品の両方で慣用的に用いることができる。
本発明は、以下の実施例においてさらに例証されるが、該実施例に限定されるものではない。
実施例
A.実施例の材料および方法
A.1.アラビドプシス株、成長条件、および培地
ヴェルサイユにあるINRAのURGVで生成されたT−DNA変異体コレクション(Bechtold et al.,1993,C.R.Acad.Sci.Paris Life Sci.316,1194−1199、Bouchez et al.,1993,C.R.Acad.Sci.Paris Life Sci.316,1188−1193)およびGABI−KAT変異体コレクション(Rosso et al.,2003,Plant Mol Biol.53,247−259.)から、シロイヌナズナの変異株を得た。野生型(Wassilewskija、WS、およびColumbiaすなわちCol−O)ならびに変異株を、23℃(日中)/20℃(夜)で16時間の明期/8時間の暗期の光周期、湿度70%、そして白色蛍光灯によって供給される120μEm−2−1という植物レベルでの光強度下の培養箱で成長させた。種子を土壌に播種し、0.5×MS培地で水を与えた(Murashige and Skoog,1962,Plant Physiol.15,473−497)。
A.2.RNA抽出および逆転写
全RNAを(Prescott and Martin 1987,Plant Mol.Biol.Rep.4,219−224)にしたがって単離した。コンタミネーションしているゲノムDNAを取り除くため、cDNA合成の前に、RNA調製物を37℃で10分間にわたって10ユニットのDNAse I FPLC Pureとインキュベートし、フェノールおよびクロロホルムを用いて抽出し、沈殿させ、そしてヌクレアーゼを有していないMilliQ水に溶解した。第一の相補的なDNA(cDNA)鎖を、製造者の指示にしたがってMMLV−RTおよびoligo(dT)12−18プライマーを用いて、10μgの全RNAから合成した。反応は37℃で2時間にわたってインキュベートし、ヌクレアーゼを有さない1mlのMilliQ水を添加して停止した。すべての試薬はAmersham Biosciences(ウプサラ、スウェーデン)製である。
A.3.SSIVに対するポリクローナル抗体の産生
葉の全RNAを用いて、上述したようにcDNAを得た。オリゴヌクレオチドSA215(5’−CATATGGAGACTGATGAAAGGATT−3’、配列番号12)およびSA216(5’−CTCGAGTTCTTTATAAACGTTGGC−3’、配列番号13)を用いて、SSIVアミノ酸配列のグルタミン酸236からグルタミン酸414までをコードする、SSIVのcDNAの521bpの断片を増幅した。これらのオリゴヌクレオチドには、それぞれcDNA断片の5’末端および3’末端におけるNdeIおよびXhoIに対する制限部位を導入し、これらを、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ遺伝子の3’末端に対するフレーム内に融合している発現ベクターpGEX−4T(Amersham Biosciences、ウプサラ、スウェーデン)においてcDNA断片をクローニングするために用いた。構築物をDNAシーケンシングによって確認し、大腸菌BL21(DE3)株へと形質転換した。タンパク質発現、グルタチオンアガロースによるGST−SSIV断片融合タンパク質の精製、およびトロンビンによるマトリクスに結合したGST融合タンパク質の切断によるSSIV断片の精製は、Ausubel et al.(1987,Current Protocols in Molecular Biology.New York:Greene Publishing Associates and Willey−Interscience)の方法にしたがって行った。ウサギのポリクローナル抗血清を、精製したSSIV断片に対して産生させた。最後に、製造者の指示にしたがって、タンパク質Aのセファロースカラム(Amersham Biosciences、ウプサラ、スウェーデン)を用いて、抗血清の免疫グロブリンG断片をFPLCによって精製した。
A4.リアルタイムRT−PCR分析
リアルタイム定量逆転写PCR(リアルタイムRT−PCR)アッセイを、iCyclerという器具(Bio−Rad、カリフォルニア州、アメリカ)を用いて行った。PCR反応混合物は、全体量25μlに、5μlのcDNA、0.2mMのdNTP、2.5mMのMgCl、1:100000希釈のSYBR(登録商標)Green I核ゲル染色(Molecular Probes、ユージーン、オレゴン州、アメリカ)/フルオレセインキャリブレーション色素(BioRad、カリフォルニア州、アメリカ)、0.3ユニットのTaqポリメラーゼ、2.5μlの10×Taqポリメラーゼ緩衝液、および0.2μMの各プライマーを含むものであった。用いた特異的オリゴヌクレオチドは、AtSS1に対するSA198(5’−TGATGAGAAGAGGAATGACCCGAAA−3’、配列番号14)およびSA199(5’−CCATAGATTTTCGATAGCCGA−3’、配列番号15)、AtSS2に対するSA126(5’−GGAACCATTCCGGTGGTCCATGCCG−3’、配列番号16)およびSA127(5’−CTCACCAATGATACTTAGCAGCAACAAG−3’、配列番号17)、AtSS3に対するSA200(5’−GTGCAAGACGGTGATGGAGCAA−3’、配列番号18)およびSA201(5’−CACGTTTTTTATATTGCTTTGGGAA−3’、配列番号19)、AtSS4に対するSA419(5’−CGTGACTTAAGGGCTTTGGA−3’、配列番号20)およびSA420(5’−GCAGCTCGGCTAAAATACGA−3’、配列番号21)、AtPHS1に対するSA546(5’−TGGAAGGAAACGAAGGCTTTG−3’、配列番号22)およびSA547(5’−TGTCTTTGGCGTATTCGTGGA−3’、配列番号23)、AtPHS2に対するSA548(5’−ACAGGTTTTGGACGTGGTGATT−3’、配列番号24)およびSA549(5’−ACAGGACAAGCCTCAATGTTCCA−3’、配列番号25)、UBQ10に対するUBQF(5’−GATCTTTGCCGGAAAACAATTGGAGGATGGT−3’、配列番号26)およびUBQR(5’−CGACTTGTCATTAGAAAGAAAGAGATAACAG−3’、配列番号27)であった。熱サイクルは、94℃で3分と、その後、94℃で10秒、61℃で15秒、および72℃15秒を40サイクルで構成される。その後、溶融曲線を作成して、増幅した断片の特異性を確認した。上記の条件におけるすべてのプライマーの効率は、試験したすべてのサンプルにおいて75%〜110%の間であり、産物の同一性は配列分析によって確認した。アラビドプシスユビキチン10(Sun and Callis,1997,Plant J.11,1017−1027)を発現分析におけるハウスキーピング遺伝子として用いた。増幅産物をpGEM−Tベクター(Promega、マディソン、アメリカ)においてクローニングし、該クローンを外部較正標準として用いることで、絶対的定量(Ginzinger,2002,Exper.Hematol.30,503−512)を行った。
A.5.デンプンの抽出と精製
デンプンの構造と組成を分析するために、明期の最後にアラビドプシスの葉を採取した。100mMの3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)(pH7.2)、5mMのEDTA、10%(v/v)のエタンジオールからなる30mlの緩衝液において、Tissue Tearor(Biospec Products,Inc.、バートルズビル、オクラホマ州、アメリカ)を用いて、およそ10gの生の材料を均質化した。ミラクロスの二つの層を通してホモジネートを濾過し、4℃、4000gで15分間遠心分離した。ペレットを30mlのパーコール90%(v/v)に再懸濁し、4℃、10000gで40分間遠心分離した。デンプンのペレットを滅菌蒸留水で6回洗浄した(各洗浄の間に、4℃、10000gで10分間)。デンプンは最終的に4℃で20%エタノールに保存した。概日周期に沿った葉のデンプン含有量を分析するために、方法の規模を縮小し、三つの異なる植物の3つの葉(およそ300mg)を各点で用いた。材料は液体窒素で冷凍し、すり鉢とすりこぎで均質化し、1mlの緩衝液に再懸濁した。デンプンの単離は、上述したパーコール勾配遠心分離を用いて行った。
A.6.デンプンおよびWSPの含有量の測定ならびにデンプン・ヨウ素複合体のスペクトル特性
葉のデンプン含有量をLin et al.(1988)によって以前に説明されているように酵素的に定量した。λmax(ヨウ素・多糖類複合体の最大吸光波長)の測定の細則はDelrue et al.(1992,J.Bacteriol.174,3612−3620.)を参照することができる。葉の水溶性グルカン含有量をZeeman et al.(1998,Plant Physiol.135,849−858)で説明されているように測定した。
A.7.サイズ排除クロマトグラフィーによるデンプン多糖類の分離
デンプン(1.5.〜2.0mg)を500μlの10mM NaOHに溶解し、次に、セファロースCL−2Bカラム(内径0.5cm×65cm)に入れ、該カラムを平衡にし、10mMのNaOHで溶出させた。300μlの画分を、1.5分に1画分の割合で回収した。画分中のグルカンは、ヨウ素との反応によって検出し、アミロペクチンとアミロースのレベルはアミログルコシダーゼアッセイによって測定した。
A.8.アミロペクチンの鎖長分布
脱分岐したアミロペクチンのFACE:セファロースCL−2Bカラムにおける精製の後、500mgのアミロペクチンを蒸留水に対して透析し、凍結乾燥した。アミロペクチンのペレットを1mlの55mM酢酸ナトリウム(pH3.5)緩衝液に再懸濁し、シュードモナス・アミロデラモサ(Pseudomonas amyloderamosa)(株式会社林原生物化学研究所、岡山、日本)から単離した20ユニットのイソアミラーゼおよび肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(Sigma、セントルイス、アメリカ)から単離した1ユニットのプルラナーゼと、42℃で一晩インキュベートした。次に、塩をextract−cleanカーボグラフカラム(Alltech、ディアフィールド、イリノイ州、アメリカ)を通すことで除去した。誘導体化法:グルカンを製造者(Beckman Coulter、フラートン、カリフォルニア州、アメリカ)の推奨にしたがって8−アミノ−1,3,6−ピレントリスルホン酸(APTS)によって誘導体化した。簡潔に説明すると、15%の酢酸溶液における2mlのAPTS、およびテトラヒドロ葉酸塩における1MのNaBH3CN 2mlを添加し、37℃の暗所において一晩結合反応させた。キャピラリー電気泳動分析:APSTに結合したグルカンの分離および定量を、4−mWのアルゴンイオンレーザーを用いるレーザー励起蛍光システムを備えたP/ACE System 5000(Beckman Coulter、フラートン、カリフォルニア州、アメリカ)で行った。励起波長は488nmであり、520nmで放射される蛍光を、Beckman P/ACEステーションソフトウェアシステム(バージョン1.0)で記録した。長さ57cm×内径75μmの被覆していない石英ガラスの毛細管を用いた。ランニングバッファーはBeckman Coulter製である。サンプルを10kVで10秒間のエレクトロインジェクションによって毛細管にロードし、30kVの電圧を、25℃の一定の温度で20分間印可した。
A.9.ザイモグラム技術
これらの技術の完全な説明はDelvalle et al.(2005,Plant J.43,398−412)を参照することができる。
A.10.デンプン合成酵素のインビトロでのアッセイ
ADP−グルコースピロホスホリラーゼを、Crevillen et al.(2003,J Biol Chem 278,28508−28515)に記載されている方法にしたがって合成方向でアッセイした。デンプン合成酵素の活性は(Delvalle et al.,2005)に記載されているように、アミロペクチンまたはクリコーゲンをプライマーとして用いてアッセイした。分岐酵素、デンプンホスホリラーゼ、およびα−1,4−グルカノトランスフェラーゼの活性はZeeman et al.(1998,Plant Physiol.135,849−858)によって説明されている方法にしたがって行った。
A.11.ウェスタンブロット分析
製造者の指示にしたがい、Trans−Blot SD転移セル(Bio−Rad、アメリカ)におけるエレクトロブロッティングによって、タンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース膜に移した。ブロットは、ウサギ抗SSIV血清をプローブとして結合させた後、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合したヤギ抗ウサギ血清をプローブとして結合させ、ECL Plus Advancedウェスタンブロッティング試薬(Amersham Biosciences、ウプサラ、スウェーデン)を用いて検出した。
A.12.顕微鏡分析
16時間明期/8時間暗期の光周期で培養した植物から完全に開いた葉を指定した時間に回収した。葉の小片(2mm)をカミソリの刃で切り、すぐに、1mlあたり25mgのショ糖を含む0.05MのNa−カコジル酸緩衝液(pH7.4)中の1%のパラホルムアルデヒドおよび0.5%のグルタルアルデヒドで固定した(4℃で3.5時間、真空下)。固定し、同一の緩衝液ですすいだ後、組織をエタノール系で脱水し、段階的にLR白色樹脂(London Resin Co.、レディング、イギリス)に埋め込んだ。樹脂は−20℃でUV光によってポリマー化した(Fedorova et al.,1999,Planta 209,25−32)。あるいは、いくつかのサンプルを上述した緩衝液中の3%のグルタルアルデヒドで固定し、Lucas et al.,(1998,Protoplasma 204,61−70)に記載されているように、Araldite Durcupan ACMに埋め込んだ。半薄(1μm)と極薄(60nm)の切片を、ダイヤモンドナイフを備えたLeika Ultracutミクロトーム(Vienna、オーストリア)で切り出した。光学顕微鏡用の半薄切片は、Zeiss Axiophot顕微鏡写真機(Oberkochen、ドイツ)で直接観察するために、水性の1%ホウ酸ナトリウム中の1%(w/v)のトルイジンブルーで染色した。透過型電子顕微鏡用の極薄折半は、2%水性酢酸ウラニルとクエン酸鉛で対比染色した(Reynolds,1963,J.Cell Biol.17,208−213)。観察は、Gatan Bioscan 792デジタルカメラ(Pleasanton、カリフォルニア州、アメリカ)を備えたSTEM LEO 910電子顕微鏡(Oberkochen、ドイツ)によって80kVで行った。少なくとも三つの異なる葉のサンプルからの異なる切片を分析した。
走査型電子顕微鏡分析のために、サンプルを金でスパッタコーティングし、JEOL JSM−5400顕微鏡(東京、日本)で観察した。
透過型顕微鏡分析はDelvalle et al.(2005,Plant J.43,398−412)に記載されているように行った。
実施例1:様々な器官におけるSSIVのmRNAのレベル
SSIVアイソフォームの機能を特徴づける第一の過程として、AtSS4遺伝子(At4g18240座)の発現の空間的なパターンを明らかにした。定量リアルタイムRT−PCRを用いて、このパターンをその他のクラスのSS(それぞれAtSS1座、AtSS2座、およびAtSS3座によってコードされる、SSI、SSII、およびSSIII)のパターンと比較した。四つの遺伝子は研究したすべての器官(葉、根、花、および熟していない実)で発現した。すべてのケースで、AtSS1のmRNAの定常レベルは、その他のAtSS遺伝子のレベルと比較して10倍高かった(図1A)。逆に、AtSS4のmRNAは、分析したすべての器官で同程度のレベルで蓄積し、AtSS3遺伝子について得られたものと同等の値であった(図1B)。
実施例2:SSIVを欠いた変異株の単離
AtSS4(At4g18240)遺伝子は4番染色体に位置し、16個のエクソンと15個のイントロンで構成されている。該遺伝子は1040個のアミノ酸からなるタンパク質をコードしており、予想される質量は117747Daである。このタンパク質は、ササゲ(71%の同一性、受託番号AJ006752)、小麦(58.2%の同一性、受託番号AY044844)、または稲(SSIVa(受託番号AY373257)およびSSIVb(受託番号AY373258)でそれぞれ56.8%と58.3%の同一性)などの、その他の種で見られる、上で注記したSSIVタンパク質との高レベルの類似性を示す。生物情報学的な分析では、最初の42個のアミノ酸を含み、112997Daの成熟したタンパク質を生じさせる、葉緑体を標的としたシグナルの存在が予測された(ChloroP、http://www.cbs.dtu.dk/services/ChloroP/、(Emanuelsson et al.,1999))。二つの独立した変異対立遺伝子により設計される、Atss4−1(Col−O型)、およびAtSS4遺伝子におけるT−DNAの挿入に対応するAtss4−2(WS型)が、それぞれGABI−KAT(http://www.gabi−kat.de/、(Rosso et al.,2003))およびGenoplante−INRA(http://flagdb−genoplante−info.infobiogen.fr/projects/fst/、(Balzergue et al.,2001))の変異体コレクションで見られた。T−DNAの挿入はイントロン11と2に位置している(それぞれ、Atss4−1およびAtss4−2の開始コドンに関して+3763bpと+227の位置)(図2)。
ホモ接合の変異植物を選択し、AtSS4変異対立遺伝子の発現を、遺伝子の様々な領域に特異的なオリゴヌクレオチドを用いてRT−PCRによって分析した。この分析は、AtSS4に対応する修飾されたメッセンジャーが両方の対立遺伝子に依然として存在していることを示した(データは図示せず)。続いて、ウェスタンブロット分析を行って、両方の変異株でSSIVタンパク質の不存在について確認した。用いたウサギ抗血清は、その他すべてのSSアイソフォームと類似性を示さない領域に対応するSSIVタンパク質の178個のアミノ酸からなるポリペプチド断片に対するものであった(グルタミン酸236からグルタミン酸414)(実験方法を参照)。ウェスタンブロットは、両方の野生型でおよそ112kDaの質量を有する二つの近接したバンドが存在することを示した(図2B)。これらのバンドは予想される成熟したSSIVタンパク質のサイズと合致し、両方とも、二つの変異対立遺伝子において存在しない。SSIVタンパク質の切断された形態はいずれの変異株でも検出されなかった(より小さい非特異的なバンドが、変異株およびWT株の両方で見られた)(図2B)。両方の野生型におけるこれら2つのバンドの存在は依然解明されていないが、タンパク質の翻訳後修飾に起因している可能性がある。
実施例3:Atss4変異対立遺伝子の表現型の特徴
SSIVタンパク質の不存在は植物の成長に有害な影響を与える。変異株は両方とも、それぞれの野生型と比較して、16時間日中/8時間夜の光周期において遅い成長速度を示した(図3−Aおよび図3−B)。変異対立遺伝子のロゼット葉はWTのロゼット葉よりも小さかった(図示せず)。さらに、開花時期の遅れも記録され、Atss4−1では31+/−3日であるのに対しCol−Oでは25日であり、Atss4−2では21日であるのに対しWS型では18+/−1日であった。しかし、種子をつける時期のロゼッタ葉の数は変異体とWT植物で同じであり、このことは、開花時の遅れは、変異株において成長速度が低下した結果として生じることを示している。
果実のサイズ、長角果あたりの種子の数、および発芽率は、変異株で変化していなかった。葉のデンプン量も変異株で測定した。照射期間の最後におけるデンプン含有量は両方のケースで減少しており、WTの遺伝的バックグラウンドに対して、Atss4−1では35%の減少、Atss4−2では50%の減少であった。昼/夜サイクルに沿ったデンプン蓄積のより詳細な分析をAtss4−1株に対して行った。図4に示されているように、概日周期に沿ったデンプンの代謝回転はWT植物よりも変異体で低く、合成速度および分解速度の両方が明らかに減少していた。明期の最初におけるデンプンの量はWT植物よりAtss4−1の方で多かった。しかし、変異体におけるデンプン合成の速度の低下は、照射時期の最後における変異体のデンプンレベルを低下させる。
実施例4:Atss4変異株の酵素学的特徴
ザイモグラムおよびインビトロでのアッセイの両方を用いて(実験方法参照)、デンプンの合成および分解に関与する酵素活性のレベルを変異株で測定した。プライマーとしてウサギの肝臓のグリコーゲンまたはアミロペクチンを用いたところ、可溶性デンプン合成酵素の全活性の減少は、両方の変異体においてインビトロで観察されなかった(表1)。アッセイに用いた基質に応じて全活性が1.4から2倍増加したデンプンホスホリラーゼを除いて(表1)、その他のデンプン代謝酵素は影響を受けなかった(表1)。ザイモグラム分析は、この誘発がデンプンホスホリラーゼの細胞質基質のアイソフォーム(PHS2)とプラスチドのアイソフォーム(PHS1)の両方の活性の増大によって引き起こされることを示した(図示せず)。変異株に不在のSSIVとデンプンホスホリラーゼタンパク質との相互作用またはその他の間接的な効果がこの増大の原因と考えられるかどうかを試験するために、Atss4−1における両方のPHS遺伝子のmRNAのレベルをリアルタイムRT−PCRによって判定した。図5−Bは、両方の遺伝子の発現がWT型と比較して変異株で増加したことを示している。PHSのmRNAの誘発の程度は、PHS活性で見られる程度に匹敵しており(図5−Aおよび図5−B)、このことは、SSIVの不存在によって、プラスチドおよび細胞質基質の両方のPHS遺伝子発現の誘発を引き起こす代謝の変化を介したデンプンホスホリラーゼ活性が誘発されることを示している。
実施例5:デンプンの構造および組成に対するSSIVを削除する効果
AtSS4座の遮断はインビトロでの可溶性デンプン合成酵素の全活性に影響しなかった(表1)。しかし、デンプン合成は変異体で明らかに減少した。Atss4の変異がデンプンの構造および組成を変化させているかどうか判定するため、アミロース/アミロペクチンの割合およびアミロペクチンの鎖長の分布を両方の変異対立遺伝子で分析した。
セファロースCL−2Bカラム上で実施するサイズ排除クロマトグラフィーを用いてアミロースおよびアミロペクチンのポリマーを分離し、アミログルコシダーゼアッセイによって定量した。この分析は、アミロース/アミロペクチンの割合がAtss4変異体では影響を受けないことを示した。
次に、精製したアミロペクチンを完全な酵素的脱分岐に付し、生じた直鎖グルカンをAPTSに結合した後、フルオロフォアを用いたキャピラリー電気泳動(FACE)によって鎖長(CL)分布を判定した。Atss4変異対立遺伝子のCL分布のプロファイルと、それらのそれぞれのWT型との比較は、Atss4の変異がアミロペクチンの構造に対してわずかな影響しか持たないことを示した(図6)。実際、DP=7〜10の鎖の量に対するわずかな減少しか観察することができなかった(図6における異なるプロットのスケールに注意されたい)。
デンプン粒の形態およびサイズを、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)の両方を用いて分析した。デンプン粒は、日中に回収し、実験方法で説明したように処理した、Atss4変異体および野生型の葉から単離した。デンプン粒の形態は変異植物においては影響を受けていないと考えられた(図7)。しかし、粒サイズの劇的な増大が両方の変異対立遺伝子で検出された(図7−Bおよび図7−D)。より詳細な研究を、明期の4時間および12時間に回収した葉の切片に対する透過型電子顕微鏡分析(図示せず)および光学顕微鏡分析(図示せず)によって行った。二つの関連する結果がこれらの分析から得られた。すなわち、日中の開始時において(明期の4時間、図示せず)、Col−OおよびAtss4−1のデンプン粒の間で最も大きなサイズの差が観察された。この結果は、その後の暗期でより大きなデンプン粒を生み出すことが期待される、変異植物で観察されたデンプン分解の速度の低さ(図4)に沿ったものである。第二に、Atss4−1変異植物におけるほとんどの葉緑体が、小数の例外(葉緑体あたり二つの粒)を除いて一つのデンプン粒を含んでいる。この所見は、葉緑体あたり4〜5個のデンプン粒が観察できるWTの葉緑体で得られたものと明らかに対照的である。異なる葉のサンプルの異なる切片を分析したところ、すべてのケースで同じ結果となった(データは図示せず)。したがって、我々は、AtSS4座での機能変異の喪失が葉緑体で合成されるデンプン粒の数とサイズに影響を与えると結論づけた。
実施例1〜実施例5で示した結果に関するさらなる議論
本研究では、デンプン合成酵素クラスIV(SSIV)の特異的な喪失によって引き起こされる表現型の変化を分析した。Col−OおよびWS型のような二つの異なる遺伝的バックグラウンドで得られる二つの独立したT−DNA挿入変異体の分析は、二つの変異体で見られる共通した表現型の変化がSSIVタンパク質の喪失によって特異的に引き起こされることを示している。T−DNAの挿入は、本実施例で研究した二つの変異対立遺伝子におけるAtSS4遺伝子座(At4g18240)のイントロン2および11に位置している(図2)。これらの挿入が、両方のケースにおいて、修飾されたSSIVのmRNAの合成を決定した。しかし、ウェスタンブロッティング分析は、これらのメッセンジャーが野生型SSIVタンパク質を産生し得なかったことを示した(図2)。この分析で用いられた抗体は、T−DNA挿入部位の上流である、タンパク質のアミノ末端領域にある178個のアミノ酸からなる断片に対するものであったため、小さい変異体特異的なポリペプチドがウェスタンブロットによって検出されず、変異対立遺伝子におけるSSIVタンパク質の切断形態の存在もまた排除される(図2)。
その他三つのデンプン合成酵素のいずれか一つの変異体で見られたものとは異なり、Atss4変異体は、それぞれの野生型で見られたものに類似したアミロペクチンのCLプロファイルを示した。短い鎖の量(DP7からDP10)の、弱いが再現性のある減少のみが観察できた(図6)。アミロース/アミロペクチンの割合および水溶性多糖類のレベルは、両方の変異対立遺伝子において、それぞれのWTにおける値と比較して不変のままであった。野生型(WT)植物のアミロース含有量が21+/−2%であるのに対し、Atss4変異植物のアミロース含有量は20+/−1%である。ザイモグラム分析はSSIアイソフォームまたはSSIIIアイフォソームのいずれの活性レベルのいかなる変化も反映しておらず(図示せず)、このことによって、SSIVの喪失を補うその他のデンプン合成酵素の活性の選択的な増大をもたらす補填メカニズムの存在は排除される。これらの結果は総合的に、SSIVアイソフォームの主要な機能が、デンプンの生合成過程におけるアミロペクチン鎖の伸長とは異なる可能性があることを示唆している。
Atss4変異体のデンプン代謝における主要な変化は、デンプンの合成速度および分解速度の減少にあり(図4)、該減少は、デンプン粒のサイズの増大および葉緑体あたりの粒の数の減少(図7)と相関関係にある。概日周期に沿ったデンプン代謝回転速度の低下は、デンプン代謝酵素の活性の低下によっては説明することができず、それは、このような活性の有意な変化がインビトロおよびザイモグラム分析の両方で検出できなかったためである(表1)。
また、Atss4変異体におけるデンプン粒の数の減少は、これらの粒で見られるサイズの増大の原因となっている可能性もある(図7)。この場合、すべてのADP−グルコースプールが一つまたは二つの粒となっているはずであり、それにより、変異体において、野生型の植物と比較してかなり大きなデンプン粒がもたらされる。ここで報告したデータは、葉緑体あたりのデンプン粒の正確な数を判定するためにはSSIVが必要であるということ、および多糖類の表面の量がデンプンの合成速度と分解速度の重要な決定要因であることを示している。
実施例6:SSIVを欠いたさらなる植物
ここでは、SSIVをコードする遺伝子の改変以外に、デンプンホスホリラーゼをコードする遺伝子の改変も導入されている、SSIVを欠いたさらなる植物が提供される。
したがって、実施例6では、(i)SSIVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いたシロイヌナズナ植物が提供される。
より詳細には、実施例6のSSIVを欠いたシロイヌナズナ植物は、
−イントロン2および11に位置する、T−DNAの挿入によって変異したSSIVをコードする遺伝子を有し、
−イントロン6に位置する、T−DNAの挿入によって変異したデンプンホスホリラーゼをコードする遺伝子を有している。
(i)野生型(WS)のシロイヌナズナ植物、(ii)デンプンホスホリラーゼを欠いたシロイヌナズナ植物(phs1−)、および(iii)本発明によるSSIVを欠いた二つのシロイヌナズナ植物(ss4−、phs1−/ss4−)の葉のデンプン含有量を測定した。結果は以下の表2に示している。
Figure 2009544299
上の表2に示されているように、SSIVのみを欠いた植物(ss4−)の全デンプン含有量は、野生型植物とは大幅には異なっていない。しかし、図9に示されるように、(ss4−)植物に由来するデンプン粒は、野生型植物(WS)よりもかなり大きなサイズを有している。図9の顕微鏡写真からは、(ss4−)植物に由来するデンプン粒のサイズは、野生型植物(WS)に由来するデンプン粒のサイズよりもおよそ二倍から三倍大きいと判定される。
上の表2に示されているように、(i)SSIVおよび(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いた植物(phs1−/ss4−)のデンプン含有量は、野生型植物(WS)と比較しておよそ四倍増加している。さらに、図9に示されているように、(phs1−/ss4−)植物に由来するデンプン粒は、野生型植物(WS)に由来するデンプン粒よりもかなり大きなサイズを有している。図9の顕微鏡写真からは、(phs1−/ss4−)植物に由来するデンプン粒のサイズは、野生型植物(WS)に由来するデンプン粒のサイズよりもおよそ四倍から五倍大きいと判定される。
さらに、図9に示されているように、野生型植物(WS)に由来するデンプン粒は、比較的平らな形状であるのに対し、SSIVを欠いた両方の植物、すなわち(ss4−)と(phs1−/ss4−)に由来するデンプン粒は比較的丸い形状をしている。
Figure 2009544299
Figure 2009544299
米国特許第6211436号明細書 米国特許第5998701号明細書

Claims (18)

  1. 可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を得ることを目的とする、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠くように修飾された植物の使用法。
  2. 前記SSIVを欠いた植物が、変異した不活性の可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を産生する、請求項1に記載の使用法。
  3. 前記SSIVを欠いた植物の、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)の合成が減少しているかまたはない、請求項1に記載の使用法。
  4. 前記SSIVを欠いた植物の、前記可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)をコードするmRNAの合成が減少しているかまたはない、請求項1に記載の使用法。
  5. 前記SSIVを欠いた植物に由来する可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)をコードする遺伝子が、一つまたは複数のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換によって変異されている、請求項1に記載の使用法。
  6. 前記SSIVを欠いた植物に由来する可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)をコードする遺伝子が、プロモーター配列、イントロン配列、およびエクソン配列で構成されるグループから選択される少なくとも一つの遺伝子配列部分で変異されている、請求項5に記載の使用法。
  7. 前記SSIVを欠いた植物に由来する可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)をコードする遺伝子が、少なくとも一つのイントロンまたは一つのエクソン内における少なくとも一つのヌクレオチドの挿入によって変異されている、請求項5に記載の使用法。
  8. 前記SSIVを欠いた植物がさらにデンプンホスホリラーゼも欠いている、請求項1〜請求項7のいずれか一つに記載の使用法。
  9. 前記SSIVを欠いた植物が単子葉植物または双子葉植物で構成されるグループから選択される、請求項1〜請求項8のいずれか一つに記載の使用法。
  10. 前記SSIV不活性植物が、アブラナ科、トウモロコシ(Zea mays)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ソラマメ(Vicia Faba L)、稲(Oryza sativa)、ビート(Beta vulgaris)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、グリンピース(Pisum sativum)、および小麦(Triticum aestivum)で構成されるグループから選択される種に属する、請求項1〜請求項8のいずれか一つに記載の使用法。
  11. 前記SSIVを欠いた植物が、配列番号6で構成される変異した可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)遺伝子を含む形質転換されたシロイヌナズナからなる、請求項10に記載の使用法。
  12. (i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼを欠くように修飾された植物であり、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼのいずれも欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を含む植物細胞を有する植物。
  13. 単子葉植物または双子葉植物で構成されるグループから選択される、請求項12に記載の形質転換植物。
  14. アブラナ科、トウモロコシ(Zea mays)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ソラマメ(Vicia Faba L)、稲(Oryza sativa)、ビート(Beta vulgaris)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、グリンピース(Pisum sativum)、および小麦(Triticum aestivum)で構成されるグループから選択される種に属する、請求項13に記載の形質転換植物。
  15. 配列番号6で構成される変異した可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)遺伝子を含む形質転換されたシロイヌナズナからなる、請求項13に記載の形質転換植物。
  16. 請求項12から請求項15のいずれか一つに記載の形質転換植物の細胞に由来する、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼの両方を欠いた、形質転換された植物細胞。
  17. 植物からデンプンを抽出する過程を含むデンプン産生方法であり、該植物が、
    a)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠くように修飾され、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を含む植物細胞を有する植物、ならびに
    b)(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼを欠くように修飾され、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼのいずれも欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を含む植物細胞を有する植物
    で構成されるグループから選択される産生方法。
  18. 植物に由来する植物細胞からデンプンを抽出する過程を含むデンプン産生方法であり、該植物が、
    a)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠くように修飾され、可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)を欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のデンプンアミロース含有量を有するデンプン粒を含む植物細胞を有する植物、ならびに
    b)(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼを欠くように修飾され、(i)可溶性デンプン合成酵素IV(SSIV)および(ii)デンプンホスホリラーゼのいずれも欠いていない同一の植物と比較して大きな粒サイズおよび同程度のアミロース含有量を有するデンプン粒を含む植物細胞を有する植物
    で構成されるグループから選択される産生方法。
JP2009521277A 2006-07-28 2007-07-27 可溶性デンプン合成酵素iv(ssiv)活性を欠いた植物、該植物を得るための方法、およびその使用法 Ceased JP2009544299A (ja)

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