JP2009540133A - 木材からのリグノセルロースパルプ - Google Patents

木材からのリグノセルロースパルプ Download PDF

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Abstract

本発明は、針葉樹に関しては15°SRで8kmを上回る裂断長を有し、かつ無漂白のotroパルプに対して少なくとも15%のリグニン含有率を有し、かつ広葉樹に関しては20°SRで5.0kmを上回る裂断長を有し、かつ無漂白のotroパルプに対して少なくとも12%のリグニン含有率を有する、木材からなるリグノセルロースパルプに関する。

Description

本発明は、木材からのリグノセルロースパルプに関する。
リグノセルロース繊維は特に紙および厚紙を製造するために使用される。工業的に製造されるリグノセルロース繊維は、その特性が著しく異なるものが多数知られている:
繊維束を叩解または切断する装置を用いて機械的にフィブリル化することにより製造される繊維が木材パルプと呼ばれている。木材パルプを製造する際に、木質素はほとんど分解されない。本来使用されていたバイオマスは、ほぼ完全に木材パルプ中に見られる。木材パルプの製造には高いエネルギー使用量が必要とされる。木材パルプを製造するための最近の方法は、木材を蒸気および/または薬品により前処理することによって、繊維の特性を改善し、かつ/またはエネルギー必要量を低減することを試みている。これらは特にCTMP(ケモサーモメカニカルパルプ)およびTMP(サーモメカニカル・パルプ)である。CTMPの場合、繊維束の部分的な溶解を可能にするために、工業的な適用では通常、otro木材に対して1〜5質量%の薬品を使用する。木材パルプは一般に、高い黄変傾向と共に、低い強度特性、特に低い裂断長、および低い白色度での高い不透明度および光散乱によって特徴付けられる。
繊維束を化学的に蒸解することによって得られる繊維はパルプと呼ばれる。パルプを製造する際には、多くの場合、高圧および高温下でバイオマスに作用する薬品が使用される。程度の差はあれ、リグニンおよび一部の炭水化物をほぼ除去する場合に、つまり、収率が著しく損なわれる場合に、良好な強度特性、特に高い裂断長を有し、かつ高い白色度への良好な漂白性およびわずかな黄変傾向を有する繊維が得られる。パルプを製造するために必要とされるエネルギーは、蒸解の廃液から得られる。
リグニン含有率は繊維の使用にとって、しばしば重要ではない。重要なのは通常、強度のレベルであり、というのも、これはしばしばその使用分野を限定するからである。従って、パルプを製造する方法に基づいて、比較的高いリグニン含有率を有する繊維に関しても、比較的高い強度レベルが得られることを目指した数多くの方法が開発された。
このような方法で、実地において個別的に確立されてきたのは、NSSC法である。できる限り少ない量の亜硫酸塩を使用して、中性ないしわずかにアルカリ性のpH値を用いた工業的な適用においては、リグニンの分解を最小にしながら、繊維のできる限り高い強度を得ることが目標とされている。薬品量は実地においてできる限り低く抑えられる。というのも、この方法は、薬品を回収することなく運転され、かつ該薬品、およびリグノセルロース材料の分解によって生じる有機堆積物に基づいて、高い廃水負荷が生じるからである。NSSC法により製造されたパルプは多くの場合、漂白されずに使用される。
もう1つの方法は、約4のpH値で運転される亜硫酸水素塩法である。その他の方法、たとえばクラフト法(硫酸塩法とも呼ばれる)またはソーダ法もまた、それ自体、最小のリグニン含有率を有するパルプを製造するために開発され、適用されているが、高収率パルプの製造に関してその適性が試験されている。
このようなパルプのための適性試験では常に、繊維は叩解されていない、またはわずかに叩解された状態では、高いリグニン含有率に基づいて、満足できない低い強度を有するのみであり、かつ経済的な利用性も存在しないという実地での経験から出発する。高収率パルプに関する適切な概要は、"Choosing the best brightening process"、N. LiebergottおよびT. Joachimides, Pulp & Paper Canada、第80巻、第12号、1979年12月、T391〜T395に記載されている。ここには、種々の方法で製造された無漂白パルプに関して、その収率およびリグニン含有率に依存して達成可能な強度レベルが記載されている。製紙に使用可能な繊維のための下限として、500ml CSF(26°SR)での強度レベルが測定され、かつ300mlCSF(41°SR)に関する比較測定が実施されている。トウヒに関しては、約80%の収率で、500mlCSF(26°SR)において約9〜10kmの裂断長が達成されている。さらに叩解する場合には、この強度値は上昇する。これらの、すでに比較的高い値は、酸性のpH範囲での蒸解によって達成される(重亜硫酸蒸解、酸性亜硫酸蒸解)。中性およびアルカリ性の蒸解(中性の亜硫酸塩蒸解、クラフト蒸解およびソーダ蒸解)からの繊維に関しては、明らかにこれよりも低い強度値が記載されており、これらはさらに、フィブリル化および叩解エネルギーにおいて、数倍高い使用量を発生させなくてはならない。このことは、500mlCSF(26°SR)もしくは300mlCSF(41°SR)の叩解度を達成するために必要とされるPFI叩解装置の高い回転数から読み取ることができる。
上記の従来技術から出発して、本発明の課題は、繊維のリグニン含有率が高い場合に、高い強度レベルが得られる、無漂白パルプおよび漂白されたパルプを提供することである。
この課題は、
針葉樹の場合には、無漂白のotroパルプに対して15°SRで8km以上の裂断長および少なくとも15%のリグニン含有率を有し、
広葉樹の場合には、無漂白のotroパルプに対して20°SRで5.0km以上の裂断長および少なくとも12%のリグニン含有率を有する
リグノセルロースパルプによって解決される。
前記のパルプは、針葉樹に関してotroパルプに対して少なくとも15%、広葉樹に関して少なくとも12%のリグニン含有率を有する。このリグニン含有率は、クラーソンリグニンおよび酸可溶性リグニン(これらの定義は以下を参照のこと)の測定によって確認される。クラーソンリグニンおよび酸可溶性リグニンは一緒に、それぞれのパルプのリグニン含有率を生じる。広葉樹に関するリグニン含有率は、針葉樹に関する値よりも低い。というのは、針葉樹の出発リグニン含有率は広葉樹よりも高いからである。本発明によるパルプのリグニン含有率は、広葉樹に関しても針葉樹に関しても一貫して高く、針葉樹の場合、特に18%以上、21%以上、または24%以上である。広葉樹に関しては、これらの値は、otroパルプに対して、少なくとも14%、少なくとも16%、または18%以上でありうる。針葉樹に関しては15°SRで8km以上の、または広葉樹に関しては20°SRで5km以上の、必要とされる裂断長でパルプのリグニン含有率が高いほど、パルプを製造する際の木質素の損失は少なくなる。この収率における余剰分は、パルプの競争力を高める。
本発明によるパルプは、繊維がすでに公知の繊維に対してはるかに低い叩解度で、高い強度値を示すということによって従来技術から区別される。叩解度は、繊維懸濁液の脱水特性に関する尺度である。針葉樹に関して、12°SRまたは15°SRの叩解度で、繊維は形態学的にほぼ変化していない。高いリグニン含有率を有する公知の繊維は、15°SRで、隣接する繊維における良好な結合ひいては認容可能な静的強度レベルを構成することができない構造を有している。しかし本発明によるパルプは、すでに12°SRまたは15°SRの低い叩解度で、隣接する繊維の良好な結合を構成することができ、ひいては叩解エネルギーのコストが低い。
達成可能な強度値は、少なくとも15%のリグニン含有率を有する針葉樹に関しては8kmを上回る。そのつど15°SRで9km以上、9.5km以上、および有利には10km以上の裂断長の値は、このようなパルプに関して容易に達成可能である。少なくとも12%のリグニン含有率を有する広葉樹に関しては、達成可能な裂断長はしばしば木材の種類によって規定されている。請求項1に記載されている値は、広葉樹に関する下限値である。たとえば12%を上回るリグニン含有率を有するポプラのパルプに関しては、そのつど20°SRで、6km以上、有利には7km以上、特に有利には7.5km以上の裂断長が測定された。
しかし本発明によるパルプは、高い裂断長のみによって優れているわけではない。むしろ強度レベルは総じて高い。
たとえば本発明による、15°SRで、および100g/m2の坪量に対して、15%を上回るリグニン含有率を有する針葉樹のパルプは、少なくとも65cNの引裂強さを有している。12%を上回るリグニン含有率を有する広葉樹のパルプに関しては、100g/m2坪量において、引裂強さは20°SRの叩解度で少なくとも50cNである。高い裂断長との関連において、すでに、針葉樹に関しては15°SR、および広葉樹に関しては20°SRの極めて低い叩解度でのこのような引裂強さは、従来技術から知られていない。
同時に、高いリグニン含有率(針葉樹に関して15%以上、および広葉樹に関して12%以上)でパルプは極めて高い白色度を有する。蒸解後に、つまりそれぞれの漂白処理を行わないで、針葉樹に関してISO40%の値が測定され、広葉樹に関して少なくともISO60%の値が測定される。針葉樹に関して、ISO60%を超える値を達成することも容易に可能である。リグニンは一般に、パルプにとって着色をもたらすとみなされるので、高いリグニン含有率にもかかわらず、このような白色度が達成されることは注目すべきである。
本発明によるパルプを漂白処理する場合、繊維の特性が著しく改善される。漂白処理は、白色度に対する高い要求を伴う多くの適用にとって必要であるが、しかしこの処理は繊維の特性を調整し、かつ改善することを目的ともしている。漂白されたパルプは、針葉樹に関して、ISO70%を上回り、有利にはISO75%を上回り、かつ広葉樹に関して、ISO60%を上回り、有利にはISO80%を上回る明らかに高い白色度を有しているのみでない。裂断長は漂白処理によって、針葉樹に関しては15°SRで9km以上、有利には9.5km以上、特に有利には10km以上に向上する。針葉樹に関しては漂白処理の間に引裂強さは安定化され、通常は改善される。漂白後に、ポプラのパルプは、20°SRで、7km以上、有利には8km以上の裂断長を有する。ブナのパルプは漂白後に、5.5km以上、有利には6km以上の裂断長を有する。引裂強さは、漂白によって本質的に変化することはない。
以下で、本発明によるパルプの製造方法ならびに本質的な特性を、実施例に基づいて詳細に説明する。
繊維の特性は、以下の基準に従って把握され、かつ測定された:
収率は、使用される原料および蒸解または漂白後に得られたパルプを、そのつど105℃で、質量が一定になるまで乾燥させて秤量することによって計算した。
リグニン含有率は、TAPPI T222 om−98によりクラーソン・リグニンとして測定した。酸可溶性リグニンは、TAPPI UM 250によって測定した。白色度は、Zellchemingの説明書V/19/63の記載により試験紙の製造により確認し、Datacolor elrepho 450×Photometerを用いてSCAN C11:75により測定し、白さはISO基準2470によりパーセントで記載した。
不透明度は、Zellchemingの説明書VI/1/66の規定により測定した。
製紙技術上の特性は、Zellchemingの説明書V/8/76により製造した試験紙を用いて測定した。
かさ密度は、Zellchemingの規定のV/11/57により測定した。裂断長は、Zellchemingの規定のV/12/57により測定した。引裂強さは、DIN53128のElmendorfにより確認した。これは100g/m2の坪量を有する紙に関して記載されている。
叩解度は、Zellchemingの説明書V/3/62により把握した。
比引張強さ、比引裂強さおよび比破裂強さの測定は、TAPPI 220 sp−96により行った。
この刊行物における全ての百分率の記載は、その他の記載がない限り、質量に対する記載である。
例1〜4:針葉樹のパルプの製造
本発明によるパルプを製造するための可能な方法は以下に記載されている:105℃〜110℃で30分間スチーム処理したトウヒのチップに、otro木材材料に対して、亜硫酸ナトリウム(NaOHとして計算)27.5%の全薬品使用量を添加した。4:1(薬品溶液:otro木材材料)の浴比を調整する。pH値は、蒸解の開始時にpH9.4に調整される(例4)。これより低い、8(例3)、7(例2)または6(例1)の初期pH値での蒸解は、SO2の添加によってこれらの低い初期pH値に調整される。
チップは、液相中で蒸解する場合には、90分以内に170℃の蒸解温度に加熱され、かつこの温度で180分間蒸解される。自由に流れる蒸解廃液は取り出され、かつチップをフィブリル化する。つまり繊維束を分解し、その際、個々の繊維または繊維表面に機械的な作用は及ぼさない。チップをフィブリル化するために必要とされるエネルギーは、高収率パルプを製造するための公知法において必要とされるよりもはるかに低い。パルプをフィブリル化するために、500kWh/tチップ未満で十分である。有利には必要とされるエネルギーは、300kWh/tチップ未満である。
Figure 2009540133
前記の例1〜4に関して、以下の結果を確認することができる:
当初使用された木材材料に対してそのつど75%を超える収率は、20%をはるかに上回るリグニン含有率を有するパルプに相応する。トウヒ材に関する平均的なリグニン含有率は、otro木材材料に対して28%である(Wagenfuehr, Anatomie des Holzes, VEB Fachbuchverlag Leipzig、1980年)。パルプの実際のリグニン含有率は、これよりも高い。というのも、蒸解の間に主として(ただしもっぱらではないが)リグニンが分解されるからである。炭水化物(セルロースおよびヘミセルロース)もまた、少量溶解する。記載された値は、蒸解が、リグニンおよび炭水化物の分解を鑑みて良好な選択率を有することを示している。
白色度は、ISO55%を上回る値で意想外に高く、かつ場合によりその後の漂白に関して良好な出発ベースを提供する。
例1〜4のトウヒのパルプを15°SRの叩解度に叩解するために、20分〜30分の叩解時間が必要である。20分までの叩解時間(叩解度12°SR〜15°SR)で、叩解度は蒸解の開始時のpH値(pH6〜pH9.4)とは無関係に狭い範囲で生じる。
同様に、蒸解の初期pH値および叩解度を達成するために必要とされる叩解時間とは無関係に、15°SRの叩解度で高い強度レベルが達成される。例1は、8.9kmの裂断長および53.8cNの引裂強さと共に、総じて高い強度レベルにつながる。しかし初期pH値が、7以上の場合、裂断長は9kmおよびそれ以上に向上する。引裂強さは65cNおよびそれ以上の値を達成する。
例5および6 広葉樹パルプの製造
ブナまたはポプラのチップをそのつど、105℃〜110℃で30分間スチーム処理する。次いでブナのチップに、使用されるotro木材材料に対して、22.5%の亜硫酸ナトリウム(NaOHとして計算)を、薬品溶液:木材の浴比=4:1で添加する。ポプラのチップに、otro木材材料に対して、20%の亜硫酸ナトリウムを、4:1の浴比で添加する。
蒸解のために、両方の種類の木材を、90分で170℃の蒸解温度まで加熱した。蒸解時間はブナに関しては最大温度で60分間、およびポプラに関しては最大温度で30分間である。自由に流れる蒸解溶液を取り出し、かつチップをフィブリル化、つまり繊維束を、個々の繊維もしくは繊維表面に叩解作用を及ぼすことなく離解する。
第2表は、この蒸解の結果を示している。ブナおよびポプラのパルプを、最小のエネルギー(300kWh/t)未満でフィブリル化した。これらはすでに数分後に、極めて高い叩解度に達した。叩解されていなくてもすでに15°SR以上が測定された。従って、広葉樹のパルプを、20°SRの叩解度で分析した。
収率はotroチップに対して75%以上である。ここでも、本発明による蒸解の良好な選択性が示されている。
こうして製造されたパルプは高い収率にもかかわらず、すでに極めて高い白色度を有しており、これはISO65%を上回っている。これにより、場合によりその後に行われる漂白に関して良好な基礎となる。
ブナは20°SRで5kmを上回る裂断長で、この種類の木材にとって顕著な裂断長を有する。引裂強さは50cN以上である。ポプラのパルプに関する強度レベルはこれよりも高い。20°SRで7.5kmを超える裂断長および65cNの引裂強さは、高いリグニン含有率を有する広葉樹に関して知られていない。
Figure 2009540133
漂白処理
上記のとおりに製造された針葉樹のパルプを、白色度の向上のために漂白した。漂白は、できる限りわずかな収率の損失で行うべきである。従って、リグニンを維持する漂白を目指した。通常は複数の工程で漂白された。種々の漂白処理のための反応条件を、以下に説明する:
Q工程
錯形成剤によりパルプの重金属含有率が低減される。パルプを3%の物質密度で、4Nの硫酸により5〜5.2のpH値に調整し、かつ60℃で30分間、0.2%のDTPAを添加する。
P工程
漂白剤として、過酸化水素を用いてP工程を実施した。10%の物質密度において、80℃で240分、otroパルプに対して5%の過酸化水素の添加下に、ならびに2.5%のNaOH、3%のケイ酸塩および0.1%の硫酸マグネシウム(そのつどotroパルプに対する)の添加下に漂白した。開始時のpH値は11で測定され、漂白の終了時には9.7であった。引き続き洗浄を行う。
FAS工程
FAS工程は、パルプを漂白する手段としてFAS(ホルムアミジンスルフィン酸)を使用することに基づいている。漂白は、高温(99℃)で30分にわたり、12%の物質密度で実施される。そのつどotroパルプに対して、1%のFAS、0.5%のNaOHおよび0.5%のケイ酸塩を添加する。
繊維の特性
フィブリル化の後で、蒸解結果、特にパルプの収率、リグニン含有率、裂断長、引裂強さおよび白色度を把握する。繊維のできる限り完全な特性像を得るために、パルプの一部を15分、30分、45分および60分叩解する。
例1 (パルプをpH6で蒸解)、漂白
パルプを蒸解後に、Q、P、FASの順序で漂白した。該パルプは漂白後に82%(蒸解の開始時のotroチップに対する)全収率において、otroパルプに対して24%のリグニン含有率を有していた。漂白工程の終了時の白色度はISO77%で測定される。
15°SRでの裂断長は8.86kmであり、引裂強さは60.1cNである。不透明度は80g/m2の坪量に対して68.3で測定される。叩解を継続すると裂断長はさらに向上され、引裂強さおよび不透明度は低下する。
例2 (パルプをpH7で蒸解)、漂白
この蒸解のために、otro木材チップに対して78.5%の収率(無漂白)およびISO61.7%の白色度が測定される。繊維のリグニン含有率はotro繊維材料に対して20%で測定される(第1表を参照のこと)。15°SRの裂断長は8.97kmであり、引裂強さは69.8cNであり、かつ不透明度は82.2%で測定された。
漂白されたパルプの白色度はISO76.7%で測定される。漂白の順序は、Q、P、FASであった。全収率は、使用されるトウヒチップに対して74.3%であった。漂白された繊維のリグニン含有率は、otroパルプに対して17.8%であった。
この漂白されたパルプの裂断長は、15°SRにおいて9.34km、引裂強さは、56.6cNで測定された。不透明度は、71.2%で測定された。
例3 (パルプをpH8で蒸解)、漂白
トウヒのチップを蒸解した後で、蒸解の開始時に、otroチップに対して82.1%の収率、および無漂白のotroパルプに対して21.4%のリグニン含有率が確認された。白色度は、ISO60.5%で測定された。15°SRの裂断長は、9.36kmであり、引裂強さは、70.3cNであり、かつ不透明度は、81.1%で測定された。
漂白されたパルプに関して、ISO75.7%の白色度およびotroトウヒチップに対して、77.4%の収率が測定された。漂白されたotroパルプに関して、19.3%のリグニン含有率が測定された。
漂白されたトウヒパルプの裂断長は、15°SRで10.5kmが測定され、引裂強さは70.2cNおよび不透明度は66.8%が測定された。
例4 (パルプをpH9.4で蒸解)、漂白
無漂白のパルプの白色度はISO57.6%で測定される。収率は、使用されるotroトウヒチップに対して79.3%が測定された。リグニン含有率は、無漂白のotroパルプに関して19.9%であった。15°SRのパルプの裂断長は9.64kmであり、引裂強さは66.8cNであり、かつ不透明度は79.9%で測定された。
漂白されたパルプに関してISO75.1%の白色度が測定され、収率は、当初使用されたotroトウヒチップに対して75.1%であった。漂白されたパルプに関してotroパルプに対して17.7%のリグニン含有率が測定された。
15°SRの裂断長は、10.58kmであり、引裂強さは、70.7cNであり、かつ不透明度は、66%で測定された。
上記の試験結果に関して、漂白されたパルプは無漂白のパルプに対して、わずかに改善された強度特性を有し、その際、過剰の収率の損失は回避されうることが一般的に確認される。総じて、該パルプは漂白において極めて肯定的な特性を有し、達成された白色度の向上と共に、良好な強度レベルおよび総じて、当初使用されたotroチップ量に対して良好な収率を特徴とする。
注意すべき点は、試験されたトウヒパルプが、極めてわずかな叩解エネルギーでフィブリル化することができ、かつ15°SRの叩解度まで叩解することができたことである。無漂白のパルプは予想どおり、漂白されたパルプよりも若干高いコストで叩解することができた。15°SRを達成するための叩解エネルギーは、無漂白のトウヒパルプに関して500kWh/tパルプ未満であった。
例5 (ブナのパルプをpH9.4で蒸解)、漂白
ブナのチップを、9.4の初期pH値で蒸解した。蒸解したパルプは、著しく容易に、かつ極めてわずかな叩解エネルギーで叩解することができた。パルプの特性は、20°SRで測定した。
無漂白のパルプの白色度はISO69.7%で測定され、収率は、合計して使用されたotroチップ量に対して75.0%であった。ブナのパルプのリグニン含有率は、ブナに関して平均的な22%のリグニン含有率から出発して、無漂白のotroブナパルプに対して16.5%で測定された。20°SRにおける裂断長は、5.25kmが測定され、引裂強さは53.1cNおよび不透明度は、80g/m2の坪量に関して85.3%が測定された。
漂白されたブナのパルプに関して、裂断長は、20°SRで測定して6kmを上回っていた。引裂強さが著しく変化することはなかった。
例6 (ブナのパルプをpH9.4で蒸解)、漂白
無漂白のポプラのパルプも20°SRで分析した。白色度は、ISO67.8%で測定され、収率は、使用されたotroポプラのチップに対して79.0%であった。ポプラのパルプのリグニン含有率は、ポプラに関して平均的な20%のリグニン含有率から出発して、無漂白のotroポプラパルプに対して15%で測定された。20°SRでの裂断長は、7.72kmであり、引裂強さは、65.0cNであり、かつ不透明度は、80.0%で測定された。
漂白されたポプラのパルプの裂断長は、20°SRで、約8.3kmの裂断長が測定され、引裂強さは、漂白により著しく変化することはなかった。
例7 トウヒのパルプ、無漂白
例7に記載のパルプを、例1の条件下でトウヒチップから製造したが、ただし以下の点を変更した:27.5%の全薬品(規定の比率での亜硫酸塩およびNaOH)に加えて、薬品溶液には、使用される木材量に対して0.1%のアントラキノンを添加した。蒸解時間は45分に短縮された。
例8 トウヒのパルプ、無漂白
例7と同様に、ただし使用されるotro木材量に対して、25%の全薬品使用量で、および50分の蒸解時間で行った。
Figure 2009540133
例9 トウヒのパルプ、無漂白
例7と同様に、22.5%の全薬品使用量および50分の蒸解時間で行った。
例10 トウヒのパルプ、無漂白
例7と同様に、ただし20%の全薬品使用量で、および55分の蒸解時間で行った。
例11 トウヒのパルプ、無漂白
例7と同様に、ただし、17.5%の全薬品使用量および55分の蒸解時間で行った。
例12 トウヒのパルプ、無漂白
例7と同様に、ただし、15%の全薬品使用量および60分の蒸解時間で行った。
まず、0.1%のアントラキノンの添加により、蒸解時間は、例1における180分に対して、その他は変更しない蒸解条件下に、135分短縮されて(蒸解時間の75%)45分とすることができた。蒸解の結果は、第4表に記載されているように、比較可能なものである。この時間の利益はとりわけ、パルプを製造するための装置の寸法を小さくすることができるために貴重である。その他の節約の可能性は、蒸解のために必要とされる温度が、極めて短い時間にわたって維持する必要があるにすぎないことにある。
Figure 2009540133
さらに第3表のデータから、全薬品の使用量が27.5%から15%に低下する場合に、ほぼ同様に良好な特性を有するパルプが得られることが読み取れる。これらの結果は、アントラキノンの使用に依存するものではない。アントラキノンは、蒸解の促進をもたらすが、しかしアントラキノンを添加しなくても所望のパルプを蒸解することができる。白色度は、それぞれの蒸解例に関してISO50%を上回り、かつリグニン含有率は例7〜11の場合、otroパルプに対して21.5%〜22%の間で変動した。裂断長は、10kmを上回り、かつ引裂強さは、15°SRで70cN以上であり、通常は75cN以上である。
例12によるパルプの漂白は、以下の結果を生じる:Q工程の後で、白色度はISO52.2%に向上した。この工程の収率は、otroパルプに対して99.3%である。
P工程は、otroパルプに対して97.1%の収率でISO64.3%への白色度の向上につながる。FAS工程は、otroパルプに対して、98.9%の収率でISO75.1%への白色度の向上につながる。白色度の向上は、当初使用したotro木材材料に対して77.3%の全収率で、ISO21.3%である。
例13〜16による以下に説明する蒸解は蒸気相での蒸解に関する。
例13 蒸気相でのトウヒのパルプの製造、無漂白
薬品使用量27.5%、木材:薬品溶液の浴比=1:5で120℃において、蒸気相で120分間、トウヒチップを含浸した。薬品として、亜硫酸および0.1%のアントラキノンを使用する。含浸の開始時に、pH値を9.4に調整する。含浸後に、薬品溶液を除去する。
薬品溶液で含浸されたチップを、蒸気で約5分間、170℃に加熱する。この170℃の蒸気相を、60分にわたって維持する。次いで蒸気を放出し、かつ30秒以内に、ボイラーを100℃に冷却し、かつ周囲圧力が調整される。チップをボイラーから取り出し、かつフィブリル化する。こうして製造されたトウヒパルプの部分量を叩解し、かつ粉砕された部分量に関して叩解度およびパルプ特性を測定した。
例14 蒸気相でのトウヒパルプの製造、無漂白
例13と同様に、ただし蒸気相で45分間の蒸解時間で行った。薬品使用量は、otro木材量に対して63.0%に上昇する。
例15 蒸気相でのトウヒパルプの製造、無漂白
例14と同様に、ただし30分の蒸解時間で行った。
例16 蒸気相でのトウヒパルプの製造、無漂白
例14と同様に、ただし170℃の蒸解温度で行った。
Figure 2009540133
蒸気相での蒸解は、わずかな全時間必要量を示す。液相での蒸解に対して、最大の蒸解温度への加熱ははるかに迅速に行われる。この場合、本来の蒸解は液相中での煮沸と同様の時間を必要とする。蒸気相での蒸解の間に自由に流れる薬品溶液は存在していない。該溶液は含浸後かつ蒸解前に除去される。従って該溶液は、液相での蒸解後に除去される薬品溶液よりも少ない有機材料が添加されている。しかしこのことは、生じたパルプの品質に対して顕著な影響を与えない。
第3表に記載されている、液相でアントラキノンを添加した蒸解の収率は、otro木材量に対して75%を上回っている。このことは、蒸気相蒸解に関して、例14を例外として同様に達成される。とりわけ例13〜16において得られたパルプの白色度は、例7〜12に対して明らかに低い。最大蒸解時間60分での蒸気相蒸解の場合の、わずかISO32.2%から、白色度は蒸解時間を45分に短縮してISO39.1%に向上する。蒸解時間をさらに30分に低減することによって、ISO43.1%へと向上する。最大の蒸解温度が170℃から155℃へと低下することによって著しい効果がもたらされる。つまり白色度がISO49.1%に向上する。
蒸気相で製造されたパルプは優れた強度を有している。裂断長は、15°SRで10mk(例15)および11km(例14)が測定された。引裂強さは、82.8cN(例15)および91.0cN(例14)が測定された。これらの値は、液相での蒸解に関して達成された最善の値に相応するか、またはこれを上回る。従来技術からのパルプに関して、比較可能な強度の値は知られていない。
意外なことに、蒸気相で蒸解されたパルプを漂白する際に、低い出発白色度は、使用の要求に対する妨げにはならないことが判明した。ここでもQ段階は顕著な白色度の変化をもたらさない。しかし、P工程は白色度をISO約20%向上して、ISO63.4%が生じる。ここですでにパルプは、液相で蒸解されたパルプがP工程後に示すと同様の白色度レベルへと変動する。FAS工程の終了後に、ISO74.0%の白色度が測定されるが、これは同様に、液相で蒸解されたパルプにおいて測定される結果と一致する。漂白工程Q、P、FASの蒸解後の全収率は、当初使用されたotro木材材料に対して、71.6%である。漂白による白色度の向上は、ISO30%以上である。
以下に示す第6表および第7表は、本発明により製造したパルプがすでに12°SRの叩解度で良好な強度特性を有していることを示すものである。これらの表から特に、引裂強さを低下させることなく高い裂断長を得るために、本発明によるパルプは叩解の際にわずかなエネルギーコストを必要とするのみであることが明らかに読み取れる。12°SRの叩解度は、そのつど0〜10分で達成され、13°SRの叩解度は、5〜30分、多くの場合、10〜20分で達成される。14°SRの叩解度に達するためには、Jokroミルを30〜40分運転する必要があり、かつ15°SRの叩解度は、35〜40分を必要とする。40°SR前後の叩解度までの叩解は、著しい叩解エネルギーコストを必要とするであろうことは明らかである。従って本発明による方法の特別な利点は、低いエネルギーコストで叩解すべきパルプが得られることにある。
Figure 2009540133
Figure 2009540133
トウヒパルプに関して、12°SRの叩解度で6.5km以上の裂断長がすでに良好に生じる。裂断長の増大は、そのつど更なる叩解度により低下し、14°SR〜15°SRでは、繊維の強度は実質的に消尽している。

Claims (11)

  1. 木材からなり、
    針葉樹に関しては、無漂白の状態で12°SRで6.5kmを上回る裂断長を有するか、または15°SRで8.0kmを上回る裂断長を有し、かつ、otroパルプに対して少なくとも15%のリグニン含有率を有し、かつ
    広葉樹に関しては、無漂白の状態で20°SRで5.0kmを上回る裂断長を有し、かつotroパルプに対して少なくとも12%のリグニン含有率を有する、
    リグノセルロースパルプ。
  2. 針葉樹に関して、無漂白のパルプのリグニン含有率は、otroパルプの少なくとも18%、有利には少なくとも21%、および好ましくは少なくとも24%であり、かつ広葉樹に関しては、無漂白のパルプのリグニン含有率は、otroパルプの少なくとも14%、有利には少なくとも16%、好ましくは少なくとも18%であることを特徴とする、請求項1記載のパルプ。
  3. 針葉樹のパルプに関して12°SRで裂断長が7kmを上回り、有利には7.5kmを上回り、特に有利には8kmを上回ることを特徴とする、請求項1記載のパルプ。
  4. 針葉樹のパルプに関して15°SRで裂断長が9kmを上回り、有利には9.5kmを上回り、特に有利には10kmを上回ることを特徴とする、請求項1記載のパルプ。
  5. 広葉樹に関して裂断長が6kmを上回り、有利には7kmを上回り、特に有利には7.5kmを上回ることを特徴とする、請求項1記載のパルプ。
  6. パルプが、針葉樹に関しては少なくともISO40%、および広葉樹に関しては少なくともISO60%の白色度を有することを特徴とする、請求項1記載のパルプ。
  7. パルプが、100g/m2の坪量において、針葉樹のパルプに関しては15°SRで少なくとも65cN、および広葉樹のパルプに関しては20°SRで少なくとも50cNの引裂強さを有することを特徴とする、請求項1記載のパルプ。
  8. 木材からなり、
    針葉樹に関しては、漂白された状態で15°SRで7.5kmを上回る裂断長を有し、かつotroパルプに対して少なくとも13%のリグニン含有率を有し、かつ
    広葉樹に関しては、漂白された状態で20°SRで5.0kmを上回る裂断長を有し、かつotroパルプに対して少なくとも10%のリグニン含有率を有するリグノセルロースパルプ。
  9. パルプが、漂白後に、
    otro針葉樹パルプに対して13%を上回るリグニン含有率を有する針葉樹のパルプに関しては、少なくともISO75%の白色度を有し、かつ
    otro広葉樹パルプに対して10%を上回るリグニン含有率を有する広葉樹パルプに関しては、少なくともISO78%の白色度を有することを特徴とする、請求項8記載のパルプ。
  10. 漂白されたパルプが、
    針葉樹パルプとして15°SRで9kmを上回る、有利には10kmを上回る裂断長を有し、かつ
    広葉樹パルプとして20°SRで5.5kmを上回る裂断長を有することを特徴とする、請求項8記載のパルプ。
  11. 漂白されたパルプが、
    15°SRで13%を上回るリグニン含有率を有する針葉樹パルプとして、60cNを上回る、有利には70cNを上回る引裂強さを有し、
    20°SRで10%を上回るリグニン含有率を有する広葉樹パルプとして、50cNを上回る引裂強さを有することを特徴とする、請求項8記載のパルプ。
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