JP2009537532A - 腫瘍細胞増殖の選択的阻害剤としてのcdki経路阻害剤 - Google Patents

腫瘍細胞増殖の選択的阻害剤としてのcdki経路阻害剤 Download PDF

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Abstract

本発明は、CDKI経路を阻害するため、および特に腫瘍細胞増殖を阻害するための、新規方法を提供する。本発明はさらに、腫瘍細胞増殖の新規かつ特異的な阻害剤、ならびに、さらなるかかる阻害剤の発見のための手段を提供する。本発明者らは、驚くべきことに、3型サイクリン依存性キナーゼ(CDK3)が、CDKファミリーの他のメンバーとは対照的に、腫瘍細胞増殖のために特異的に必要であることを発見した。

Description

関連出願
本願は、2006年5月15日に出願された米国仮出願第60/747, 220号および2006年10月6日に出願された米国仮出願第60/849,968号の優先権を主張する。上記の出願の全教示は、本明細書において参考として援用する。
発明の分野
本発明は、腫瘍細胞の増殖の阻害に関する。より具体的には、本発明は、CDKI経路の阻害を介した腫瘍細胞増殖の阻害に関する。
関連技術の要旨
プログラムされた細胞周期の停止は、損傷に対する応答、成長因子欠乏、接触阻止、有糸分裂後の細胞の最終分化、および老化などの、多様な生理学的状況において起こる。Vidal and Koff, Gene 247: 1−15 (2000)は、これらの状況の全てに、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤(CDKI)タンパク質の一時的および/または恒常的な上方調節が関連することを教示する。CDKIは、細胞周期の異なる期の間の遷移を媒介するサイクリン/サイクリン依存性キナーゼ(CDK)複合体を阻害することにより、細胞周期停止を誘導する。CDKIタンパク質は、Cip/KipまたはInk4タンパク質ファミリーに属する。Roninson, Cancer Letters 179: 1−14 (2002)は、これらのタンパク質のうち最も多面発現性のものは、p21Waf1/Cip1/Sdi1であり、これは、異なるサイクリン/CDK複合体を阻害し、損傷により誘導されるチェックポイント停止、老化および最終分化において役割を果たすことを教示する。Sharpless, Experimental Gerontology 39: 1751−1759 (2004)は、他のCDKIの中で、多様な癌においてしばしば不活化される腫瘍抑制因子であるCDK4/6阻害剤p16Ink4aが、老化細胞における細胞周期停止の維持の主要な調節因子であることを教示するが、一方、上記のVidal and Koffは、CDK2阻害剤p27Kip1が、接触阻止の重要なメディエーターであることを教示する。
Roninson、上記;Blagosklonny, Cell Cycle 1:391−393 (2002);Blain et al., Cancer Cell 3:111−115 (2003);およびWeiss et al., Cancer Letters 189:39−48 (2003)は、p21、p27およびp16までもを含むいくつかのCDKIタンパク質の腫瘍発現は、いくつかの型の癌において、患者の予後と陽性および陰性の両方の二重の相関関係を示すことを教示する。Martin−Caballero et al., Cancer Research 61:6234−6238 (2001)は、動物の研究において、p21ヌルマウスは、より高い頻度の自然発生癌を示したが、同時に、放射能により誘導される発癌に対して耐性であったことを教示する。最も驚くべきことに、上記のBlain et al.およびWeiss et alは、p21またはp27の阻害剤が、腫瘍形成または薬物耐性を阻害し、これらのCDKIが癌治療の有望な新規の標的として提案されることを見出したことを教示する。
CDKIタンパク質の驚異的な発癌関連性は、いくつかの型の実験的知見を通して説明されてきた。LaBaer et al., Genes Dev. 11:847−862 (1997)は、CDKIタンパク質がサイクリン/CDK複合体の阻害剤としてのみならず、これらの組み立ての増強剤としても作用することを教示する。Dotto, Biochimica et Biophysica Acta 1471:M43−M56 (2000)は、p21WAF1/Cip1がカスパーゼおよび他のアポトーシス因子の阻害剤として作用することを教示する。Denicourt and Dowdy, Genes Dev. 18: 851−855 (2004)は、Cip/Kipタンパク質が、細胞質のp27またはp21と特異的に関連する活性である、浸潤抑制性Rho経路の阻害剤として作用することを教示する。
しかし、CDKIタンパク質の最も一般的な発癌後の作用は、本発明の発明者らの一部により最近行われた研究から明らかとなった。この作用は、分泌される異なるクラスの分裂促進因子、抗アポトーシス因子、血管新生因子、および浸潤後因子をコードする複数の遺伝子の転写刺激であり、CDKI停止細胞のパラクリン性腫瘍促進活性をもたらす。この識見は、主に、Chang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:4291−4296 (2000)において記載されるように、ヒト線維肉腫細胞株において誘導プロモーターから発現させたp21の効果のcDNAマイクロアレイ分析から来ている。この分析は、p21が複数の遺伝子の発現に有意な変化をもたらすことを示した。多数の遺伝子が、p21により強くかつ迅速に阻害され、これらの遺伝子の最も顕著な物は、細胞増殖に関連しており、有糸分裂のプロセスにおいて機能する単一の最大のカテゴリーを有する。Zhu et al., Cell Cycle 1:59−66 (2002)は、p21による細胞周期進行遺伝子の阻害は、これらの遺伝子のプロモーター中のCDE/CHRなどのネガティブシス調節エレメントにより媒介されることを教示する。Chang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:389−394 (2002)は、同じ遺伝子が、化学療法処置の後で老化を起こす腫瘍細胞において下方調節されるが、p21のノックアウトは、薬物処置細胞においてこれらの遺伝子の阻害を妨げることを教示する。したがって、p21は、DNA損傷への応答における複数の細胞周期進行遺伝子の阻害の原因である。
上記のChang et al., 2000は、p21の別の一般的な作用は、遺伝子の上方調節であり、これらの多くは、膜貫通タンパク質、分泌タンパク質、および細胞外マトリックス(ECM)構成要素をコードすることを教示する。上記のChang et al., 2000は、p21のこの作用は比較的低く、増殖の停止の後で、老化の形態学的特徴の発現と共に起こることを教示する。これらの遺伝子は、DNA損傷によって誘導されるが、p21のノックアウトは、これらの誘導を低下させる。この低下は単に部分的なものであり、p21誘導性遺伝子の大部分が他のCDKI、p16およびp27に対する応答においてもまた誘導されるという最近の知見によって説明することができる(WO 03/073062を参照)。Gregory et al., Cell Cycle 1:343−350 (2002)およびPoole et al., Cell Cycle 3:931−940 (2004)は、多数の異なるCDKI誘導性遺伝子のプロモーター構築物を用いて、CDKIによる遺伝子の上方調節を再現し、これが転写のレベルで起こることを示した。Perkins et al., Science 275: 523−526 (1997);Gregory et al.(上記)およびPoole et al.(上記)は、p21による転写の誘導は、転写因子NFκBおよびp300/CBPファミリーの転写共因子(cofactor)によって、部分的に媒介されることを教示する。残念なことに、CDKIに応答して転写の活性化をもたらすシグナル伝達経路、CDKI経路における他の媒介因子は、現在のところ知られていない。
上記のChang et al., 2000は、CDKI誘導性遺伝子の既知の機能により示されるようなCDKI経路の医学的重要性を議論する。多くのCDKIにより上方調節される遺伝子は、細胞老化および生体の加齢に関与し、加齢関連疾患および寿命の制限に関連づけられている遺伝子の群を含む。Migliaccio et al., Nature 402: 309−313 (1999)は、酸化ストレスのメディエーターであるp66Shcのノックアウトは、マウスの寿命を約30%延長することを教示する。CDKIによって誘導される他の遺伝子は、アルツハイマー病、アミロイドーシス、関節炎、腎疾患、およびウイルス性疾患を含むいくつかの加齢関連疾患において役割を果たす。Merched and Chan, Circulation 110: 3830−3841 (2004)は、p21ヌルマウスは、動脈硬化症の実験的誘導に対して耐性であることを教示する。Al−Douahji et al., Kidney International 56: 1691−1699 (1999)およびMegyesi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 10830−10835 (1999)は、p21ヌルマウスは、慢性腎疾患の実験的誘導に対して耐性であることを教示する。
しかし、CDKI誘導性遺伝子についての最も強い関連は、癌において見出されている。特に、p21の発現は、多数の増殖因子、アポトーシスの阻害因子、血管新生因子、および浸潤促進プロテアーゼについての遺伝子を活性化する。遺伝子発現のこれらの変化により、上記のChang et al., 2000は、p21により停止した腫瘍細胞および正常細胞は、パラクリン性の有糸分裂および抗アポトーシス活性を示すことを教示する。Krtolica et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 12072−12077 (2001)およびParrinello et al., J. Cell Science 118: 485−496 (2005)は、パラクリン性腫瘍促進活性を、各々インビトロおよびインビボにおいて、p21およびp16を発現するCDKI発現正常老化線維芽細胞において実証した。重要なことに、老化線維芽細胞は、ずっと以前に腫瘍関連間質性線維芽細胞に関して同定されている特徴的な発癌後活性を有する。
上記のRoninson, 2002は、線維芽細胞に腫瘍促進性のパラクリン活性を付与することが示された実験的処置の全てが、また、CDKIを誘導することを教示し、これは、CDKI経路が、間質性線維芽細胞の発癌後活性の重要なメディエーターであることを示唆する。Castro et al., The Prostate 55: 30−38 (2003); Michaloglou et al., Nature 436: 720−724 (2005)およびCollado et al., Nature 436: 642 (2005)は、CDKI経路がまた、老化の形質により特徴付けられる多様な前癌性状態において活性化されることを教示する。te Poele et al., Cancer Res. 62: 1876−1883 (2002)およびRoberson et al., Cancer Res. 65: 2795−2803 (2005)は、CDKI経路がまた、化学療法の結果としてしばしば老化する腫瘍においても活性化されることを教示する。Stein et al., Cancer Res. 64: 2805−2816 (2004)は、最近の生体情報学の研究において、最も難治性の癌と発現が関連する13個の遺伝子を同定した。
CDKIタンパク質は、CDKファミリーの異なるメンバーと相互作用する。CDK1、CDK2、CDK3、CDK5およびCDK4/CDK6を含む多様なCDKが同定されている。以前の癌関連の研究は、CDK1、CDK2、およびCDK4/CDK6に集中していた。CDK1、CDK2、およびCDK4/CDK6(後者の2つのCDKは、互いに緊密に関連し、同じクラスのサイクリンと相互作用する)は、抗癌活性の可能性を有する特異的阻害剤の開発のための標的として用いられてきた。CDKの既知の阻害剤のなかで、いくつかの市販のCDK1の選択的阻害剤(CGP74514A)(Calbiochemカタログ番号217696)、CDK2の選択的阻害剤(CVT−313)(Calbiochemカタログ番号238803)およびCDK4の選択的阻害剤(NSC 625987)(Calbiochemカタログ番号219477)、ならびに広範囲特異性CDK阻害剤フラボピラノールが開発され、試験されている。
対照的に、CDK3は、選択的阻害剤を開発するための標的として用いられたことがない。Meyerson et al., EMBO J. 11, 2909−2917 (1992)は、CDK3は、1990年代初期に、CDKタンパク質ファミリーの他の関連メンバーと共に発見されたことを報告する。ヒトCDK3タンパク質は、305個のアミノ酸を含み、CDK2と76%のアミノ酸同一性、CDK1/CDC2と67%の同一性を共有する。Hofmann and Livingston, Genes Dev. 10, 851−861 (1996)は、CDK3タンパク質は、G1/S遷移に関与するE2F1転写因子に結合することを教示する。しかし、van den Heuvel and Harlow, Science 262, 2050−2054 (1993)は、CDK3のドミナントネガティブ型変異は、哺乳動物細胞においてG1細胞周期停止を誘導することを教示する。Meikrantz and Schlegel, J. Biol. Chem. 271, 10205−10209 (1996)は、かかるドミナントネガティブ型変異が、アポトーシスを抑制することを教示する。
一方、Park et al., J. Neurosci. 17, 8975−8983 (1997)は、CDK3変異は、神経細胞においてアポトーシスを阻害することに失敗したことを教示し、Braun et al., Cell Biol. 17, 789−798 (1998)は、CDK3の過剰発現が、哺乳動物細胞をMyc誘導性アポトーシスに感受性にすることを教示する。重要なことに、Braun et al., Oncogene 17, 2259−2269 (1998)は、CDK3は発癌活性を有さず、ラット胎児線維芽細胞のc−Mycの形質転換効力を増強しないが、高レベルのCDK3は、Rat−1細胞のMyc誘導性増殖および足場非依存的増殖を増強する(しかし、CDK2は増強しない)ことを教示する。より最近では、Ren and Rollins, Cell 117, 239−251 (2004)は、CDK3とサイクリンCとの複合体が、哺乳動物細胞の細胞周期のG0状態(静止状態)からG1期への脱出を媒介することを教示する。
これらの報告にも拘わらず、CDK3について、他のCDKタンパク質についてよりも驚くほど少ない研究しか存在しなかった。CDK3研究のこの驚くべき欠落の考え得る理由は、最も一般的に使用される研究用のマウスの系統は、この遺伝子の生殖系列変異に起因してCDK3を発現しないこと(Ye et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 98, 1682−1686 (2001))、および、CDK3は全てのヒト組織において非常に低いレベルで発現することであろう。おそらく部分的にこの結果として、CDK3は、抗癌薬の可能な標的として追求されてこず、CDK3の選択的な阻害剤はこれまで開発されなかった。
CDKI経路の阻害剤の必要性は存在する。また、癌細胞についての選択性を有する新規のCDK阻害剤の必要性も存在する。
発明の要旨
本発明者らは、以下のCDK関連活性を有するいくつかの化合物を同定した。これらの化合物は、p21Waf1などのCDK阻害タンパク質の発現への応答における複数の遺伝子の転写の誘導として定義されるCDKI経路を阻害する。これらのCDKI経路阻害剤は、SNX9クラス化合物と称され、また、正常細胞に対して優先的に異なる型の腫瘍細胞の増殖を阻害する所望の能力を有する。
本発明は、腫瘍細胞増殖を特異的に阻害するための新規方法を提供する。本発明はさらに、新規かつ特異的な腫瘍細胞増殖の阻害剤、ならびにさらなるかかる阻害剤の発見のための手段を提供する。本発明者らは、驚くべきことに、3型サイクリン依存性キナーゼ(CDK3)が、CDKファミリーの他のメンバーと対照的に、腫瘍細胞増殖のために特異的に必要であることを見出した。
第1の局面において、本発明は、腫瘍細胞の増殖を選択的に阻害するための方法を提供し、該方法は、腫瘍細胞において3型サイクリン依存性キナーゼ(CDK3)を選択的に阻害することを含む。
第2の局面において、本発明は、腫瘍細胞増殖の特異的阻害剤を同定するための方法を提供し、該方法は、精製されたサイクリンとCDK3とのインビトロ複合体を、精製されたサイクリンとCDK3との複合体がキナーゼ活性を示すことができる条件下において、かかる活性の候補阻害剤と接触させること、および、かかる複合体のキナーゼ活性を、かかる候補化合物の存在下または不在下において測定すること、を含む。
第3の局面において、方法は、本発明の第2の局面により同定される化合物を含む。CDK3の特異的阻害剤化合物を提供する。
第4の局面において、本発明は、腫瘍を有する患者を、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤による転写の誘導を阻害する化合物で処置するための方法を提供する。本発明のこの局面の方法は、腫瘍を有する患者に本発明の化合物を投与することを含む。
第5の局面において、本発明は、サイクリン依存性キナーゼ(CDKI)経路を、CDKIタンパク質の下流、およびCDKI経路により転写が活性化される遺伝子の上流において、阻害するための方法を提供する。この方法は、異なる加齢関連疾患の化学的予防および治療において、多様な臨床的用途を有し得る。
本発明のこの局面による方法の実際的処置として、方法は、CDKIタンパク質の重要な腫瘍抑制機能を阻害すべきではなく、また、CDKI経路により転写が活性化される遺伝子によりコードされるタンパク質の機能を直接的に阻害すべきではない。しかし、CDKI経路により転写が活性化される遺伝子の転写の阻害は、CDKI経路により転写が活性化される遺伝子によりコードされるタンパク質の機能の直接的阻害とは見なされない。
図1は、p21により誘導されるCMV−GFP発現に対するSNX9の効果を示す。左のバーは、p21誘導なしでの正規化されたGFP発現を示す。右のバーは、p21誘導の3日後での正規化されたGFP発現を示す。 図2は、SNX9によるNK4プロモーターからのホタルルシフェラーゼのp21により誘導される転写の逆転を、無関連の化合物を対照として示す。 図3は、p21によるCDKI応答性内因性遺伝子の誘導に対するSNX9およびSNX9−1の効果のQ−PCR分析を示す。左のバーは化合物なしのキャリアの結果を示す。中央のバーは10μMのSNX9の結果を示す。右のバーは20μMのSNX9−1の結果を示す
図4は、p16によるCDKI応答性内因性遺伝子の誘導に対するSNX9の効果のQ−PCR分析を示す。左のバーは化合物なしのキャリアの結果を示す。右のバーは、10μMのSNX9の結果を示す。 図5は、SNX9が、NFκBタンパク質であるp50またはp65のNfκBの結合部位を含む二本鎖DNAオリゴヌクレオチドへの結合を阻害しないことを示す。各々のセットは、コントロール細胞(左のバー)および既知のNfκB誘導因子TNFαで処置した細胞(第2のバー)におけるp50へのオリゴヌクレオチド結合、ならびにコントロール(第3のバー)またはTNFα処置細胞(右のバー)におけるp65へのオリゴヌクレオチド結合を示す。左のバーのセットは、キャリアのコントロールで処置された細胞を表し、中央のセットは、SNX9で処置された細胞を表し、右のセットは、NfκB結合の既知の阻害剤(TPCK)で処置された細胞を表す。
図6は、DNA含有量のFACS分析により決定されるSNX9の細胞周期効果を示す。 図7は、未処理またはSNX9処理HT1080細胞のDNA含有量および有糸分裂染色の結果を示す。 図8は、3種の抗癌薬およびSNX9による正常な乳腺上皮細胞および乳癌細胞株の増殖阻害を示す。 図9は、3種の抗癌薬、SNX9およびSNX9−1による、正常線維芽細胞および異なる腫瘍細胞株の増殖阻害を示す。 図10は、p21誘導あり、およびp21誘導なしでの、HT−1080 におけるp21応答性遺伝子の発現に対するSNX9−1およびSNX14の効果を示す。
図11は、CDK阻害剤(CDKI)経路に対するSNX化合物の作用の提案される機序を示す。 図12は、サイクリン/CDK複合体のキナーゼ活性に対する多数のSNX化合物の効果を示す。 図13は、異なるCDK阻害剤による、形質転換されたおよび形質転換されていないヒト線維芽細胞の増殖阻害を示す。
図14は、3種のCDK3標的化shRNAレンチウイルスの混合物により形質転換されたHT1080細胞におけるCDK3のmRNA発現の阻害を示す。 図15は、細胞増殖に対するCDK3標的化shRNAレンチウイルスの効果を示す。 図16は、正常および腫瘍の細胞および組織におけるCDK3発現のSAGE解剖学的見地を示す。 図17は、ビヒクル、SNX9またはSNX9−1で処置されたヌードマウスにおけるHCT116異種移植腫瘍増殖を示す。
好ましい態様の詳細な説明
本発明者らは、以下のCDK関連活性を有するいくつかの化合物を同定した。これらの化合物は、p21Waf1などのCDK阻害タンパク質の発現への応答における複数の遺伝子の転写の誘導として定義されるCDKI経路を阻害する。これらのCDKI経路阻害剤は、SNX9クラス化合物と称され、また、正常細胞に対して優先的に異なる型の腫瘍細胞の増殖を阻害する所望の能力を有する。
本発明は、腫瘍細胞増殖を特異的に阻害するための新規方法を提供する。本発明はさらに、新規かつ特異的な腫瘍細胞増殖の阻害剤、ならびにさらなるかかる阻害剤の発見のための手段を提供する。本発明者らは、驚くべきことに、3型サイクリン依存性キナーゼ(CDK3)が、CDKファミリーの他のメンバーと対照的に、腫瘍細胞増殖のために特異的に必要であることを見出した。
本明細書において引用する特許および刊行物は、この分野における知識のレベルを反映し、本明細書によりその全体が参考として援用される。引用文献と本明細書との教示の間のあらゆる矛盾は、後者を優先して解決されるべきである。
第1の局面において、本発明は、腫瘍細胞の増殖を選択的に阻害するための方法を提供し、該方法は、腫瘍細胞において3型サイクリン依存性キナーゼ(CDK3)を選択的に阻害することを含む。本発明の目的のために「腫瘍細胞増殖を選択的に阻害する」とは、形質転換されていない細胞と比較して、完全にまたは部分的に形質転換された細胞の増殖を、阻害することを意味する。「CDK3を選択的に阻害する」とは、CDK1、CDK2およびCDK4/CDK6を含む他のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)を阻害するより高い程度で、CDK3を阻害することを意味する。「サイクリン依存性キナーゼ(CDK)を阻害する」とは、CDKの活性および/または発現を低下させることを意味する。CDK3を阻害する好ましい方法は、限定することなく、CDK3を(好ましくは腫瘍細胞において)、CDK3の低分子阻害剤、または、CDK3のドミナントネガティブ型変異体(例えば、CDK3活性を妨害する、不活化されたそのタンパク質相互作用ドメインまたは基質相互作用ドメインの全てではないが一部を有するCDK3タンパク質、もしくはCDK3タンパク質のフラグメントをコードする遺伝子抑制エレメント(GSE))と接触させることを含む。
好ましいCDK3の低分子特異的阻害剤は、SNX9クラス化合物である。CDK3をそのドミナントネガティブ型変異体と接触させることは、ドミナントネガティブ型変異体を発現するウイルスまたはベクターで形質移入することを介して、ドミナントネガティブ型変異体を発現させること、または、CDK3発現細胞をGSEによりコードされるペプチドと接触させることを含む。さらなる好ましい方法は、細胞をCDK3遺伝子発現の阻害剤と接触させることを含み、限定することなく、ショートヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンス核酸(AS)およびリボザイムが挙げられる。「細胞をCDK3遺伝子発現の阻害剤と接触させること」は、細胞に、細胞外からCDK3遺伝子発現の阻害剤を提供すること、ならびに、細胞内でCDK3遺伝子発現の阻害剤を発現させることを含む。細胞内で遺伝子発現の阻害剤を発現させることは、かかる阻害剤を発現するウイルスまたはベクターで形質移入することにより、簡便に提供される。
第2の局面において、本発明は、腫瘍細胞増殖の特異的阻害剤を同定するための方法を提供し、該方法は、精製されたサイクリンとCDK3とのインビトロ複合体を、精製されたサイクリンとCDK3との複合体がキナーゼ活性を示すことができる条件下において、かかる活性の候補阻害剤と接触させること、および、かかる複合体のキナーゼ活性を、かかる候補化合物の存在下または不在下において測定すること、を含む。本発明のこの局面によれば、サイクリンE、サイクリンC、サイクリンAもしくはCABLES1などのCDK3と相互作用するサイクリンまたはサイクリン関連分子とCDK3との複合体が用いられる。
比較(コントロール)実験のために、CDK1、CDK2、CDK4またはCDK6と、対応するCDKと相互作用するサイクリンとの複合体が用いられる。候補化合物は、(1)候補阻害剤の存在下におけるサイクリン/CDK3複合体の活性が、候補化合物の不在下におけるサイクリン/CDK3複合体のキナーゼ活性より低い場合、および好ましくは、(2)候補化合物が、サイクリン/CDK3複合体の活性を、CDK1、CDK2、CDK4またはCDK6と対応するCDKと相互作用するサイクリンとの複合体のキナーゼ活性より高い程度で阻害する場合、腫瘍細胞増殖の特異的な阻害剤とみなされる。「候補阻害剤の不在」とは、低分子CDK阻害剤が存在しないか、CDKの阻害剤でないことが公知であるCDK阻害剤が存在することを意味する。ポジティブコントロールとして、候補阻害剤の阻害活性を、SNX9クラス化合物などの既知のCDK3の特異的阻害剤の阻害活性と比較してもよい。
第3の局面において、方法は、本発明の第2の局面により同定される化合物を含む。CDK3の特異的阻害剤化合物を提供する。
本発明のいくつかの好ましい化合物は、構造I:
Figure 2009537532
を有し、これは、その遊離の酸、塩、またはプロドラッグを含む;
式中、R、RおよびRは、各々独立して、水素、C1−C6アルキル、シクロアルキル、アルケニル、O−アルキル、ジアルキルアミノアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択されるか、またはRおよびRは一緒になって3〜6原子の環を形成してもよく、これは、1または2以上のヘテロ原子および/または1または2以上の二重結合を含んでもよく;AおよびBは、各々独立して、水素、O−アルキル、N−アルキルおよび電子吸引性基から選択され、ただし、AまたはBの少なくとも一方は、電子吸引性基であり;ならびにZは、4〜10原子の環構造であり、これは、0〜3個のヘテロ原子を含んでもよく、1または2以上の二重結合を含んでもよい。
本発明のいくつかの好ましい化合物は、構造II:
Figure 2009537532
を有し、これは、その遊離の酸、塩、またはプロドラッグを含む;
式中、R、RおよびRは、各々独立して、C1−C6アルキル、シクロアルキル、アルケニル、O−アルキル、ジアルキルアミノアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択されるか、またはRおよびRは一緒になって3〜6原子の環を形成してもよく、これは、1または2以上のヘテロ原子および/または1または2以上の二重結合を含んでもよく;AおよびBは、各々独立して、水素、O−アルキル、N−アルキルおよび電子吸引性基から選択され、ただし、AまたはBの少なくとも一方は、電子吸引性基である。
構造IおよびIIのいくつかの好ましい態様において、Rは水素またはメチルであり、RおよびRは、独立して、水素、メチルおよびC2−C6アルキルまたはアルケニルから選択される。
いくつかの好ましい態様において、1または2以上の電子吸引性基は、ハロゲン、窒素含有基、または酸素含有基から選択されてもよい。いくつかの好ましい態様において、1または2以上のハロゲンはフッ素ではなく、好ましくは塩素および臭素から選択されてもよい。
いくつかの好ましい態様において、本発明の方法において用いられる化合物は、以下:
Figure 2009537532
から選択され、これは、その遊離の酸、塩、またはプロドラッグを含む。
第4の局面において、本発明は、腫瘍を有する患者を、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤による転写の誘導を低減または妨げる化合物で処置するための方法を提供する。本発明のこの局面の方法は、腫瘍を有する患者に本発明の化合物を投与することを含む。サイクリン依存性キナーゼ阻害剤(CDKI)は、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)、およびサイクリン依存性キナーゼ阻害剤(例えば、p21、p16、p27)の間での複合体の形成を介して、遺伝子の転写を誘導する。CDKIによって誘導される転写を低減または妨げる化合物は、かかる複合体形成を妨害することによって、複合体を不安定化させることによって、または別のやり方で複合体を作動不能にすることによって、作用する。腫瘍細胞増殖を選択的に妨害するいくつかの化合物は、CDK3に対して直接的に作用する。
第5の局面において、本発明は、サイクリン依存性キナーゼ(CDKI)経路を、CDKIタンパク質の下流、およびCDKI経路により転写が活性化される遺伝子の上流において、阻害するための方法を提供する。この方法は、異なる加齢関連疾患の化学的予防および治療において、多様な臨床的用途を有し得る。好ましい態様において、本発明の方法は、細胞を、構造(I)または(II)を有する低分子阻害剤と接触させることを含む。
本発明の処置のための方法において、上記の化合物および他の阻害剤は、医薬製剤中に組み込まれてもよい。かかる製剤は化合物を含み、これは、遊離の酸、塩またはプロドラッグの形態であっても、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、または賦形剤中にあってもよい。かかる製剤は、当該分野において周知であり、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990において記載される。
キャリアの特徴は、投与の経路に依存する。本明細書において使用される場合、用語「薬学的に受容可能」とは、無毒の材料であって、細胞、細胞培養物、組織または生体などの生物システムに適合性であり、活性成分(単数または複数)の生物学的活性の有効性を妨げないものを意味する。したがって、本発明の組成物は、阻害剤に加えて、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、および当該分野において周知の他の材料を含んでもよい。
本明細書において用いられる場合、用語「薬学的に受容可能な塩」とは、上記の化合物の所望の生物学的活性を保持し、望ましくない毒性作用を最小限しか示さないか全く示さない塩を指す。かかる塩の例として、無機酸により形成される塩(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)、ならびに、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびポリガラクツロン酸などの有機酸により形成される塩が挙げられるがこれらに限定されない。
化合物はまた、当業者に公知の薬学的に受容可能な四級塩として投与されてもよく、これは具体的には、式−−NR+Z−−の四級アンモニウム塩を含み、式中、Rは水素、アルキルまたはベンジルであり、Zは対イオンであって、塩素、臭素、ヨウ素、−O−アルキル、トルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、スルホン酸、リン酸またはカルボン酸(安息香酸、コハク酸、酢酸、グリコール酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、ベンジロエート(benzyloate)、およびジフェニル酢酸など)を含む。
活性化合物は、処置される患者において重篤な毒性作用を引き起こすことなく、治療有効量を患者に送達するために十分な量において、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤中に含まれる。薬学的に受容可能な誘導体の有効投与量の範囲は、送達されるべき親化合物の重量に基づいて計算することができる。誘導体がそれ自体において活性を示す場合、有効投与量は、上記のように誘導体の重量を用いて、または当業者に公知の他の手段により概算することができる。
本発明の方法における医薬製剤の投与は、あらゆる医学的に受容可能な経路により行うことができ、かかる経路として、非経口、経口、舌下、経皮、局所、鼻内、気管内、または直腸内が挙げられるがこれらに限定されない。特定の好ましい態様において、本発明の組成物は、非経口で、例えば病院において静脈内で投与される。特定の他の好ましい態様において、投与は、好ましくは経口経路による。
以下の例は、本発明の特定の好ましい態様をさらに例示することを意図され、本発明の範囲を限定することは意図されない。
例1
CDKI経路阻害剤の同定
同時係属の特許出願PCT/US06/01046において記載するように、本発明者らは、CDKI経路を阻害する化合物のためのハイスループットスクリーニング(HTS)法を開発した。この方法は、生理学的に中性(neutral)のβガラクトシドIPTG(イソプロピル−β−チオガラクトシド)によって誘導されるプロモーターからp21を発現するHT1080線維肉腫細胞の誘導体であるHT1080 p21−9細胞を、CDKI誘導性サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターから緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するレンチウイルスベクターで感染させ、その後、GFP陽性細胞をサブクローニングし、IPTGによるGFP発現の誘導をモニタリングすることにより作出した、高感度のレポーター細胞株を利用する。IPTGの添加によりおよそ10倍のGFPの増大を示す細胞株を、96ウェルのフォーマットにおけるHTSのために用いた。
このレポーター株を用いて、ChemBridge Corp.により開発された各50,000個の化合物を含む2つの異なる低分子ライブラリ、Microformat 04およびDiverSetをスクリーニングした。これらの異なるライブラリは、ChemBridgeにより、Chem−Xソフトウェアのバージョンを用いて薬理作用団(pharmacophore)の多様性を最大化して、500,000個より多い薬物様分子のコレクション中の薬理作用団を定量することによって、合理的に選択した。Microformat 04コレクションを、より旧いDiverSetライブラリによりカバーされる化学的空白を補填するように設計した。ChemBridgeライブラリは、多数の産業および学術研究者により、多様な細胞ベースおよび細胞フリーのアッセイにおいて、首尾よく用いられてきた。ChemBridgeライブラリを、これらのライブラリの細胞ベースのスクリーニングのための一般的な濃度である20μMの濃度でスクリーニングした。100,000個のChemBridge化合物のうち62個を、HTSにより同定し、p21に応答してのCMV−GFP発現の誘導を阻害することを証明した。この低いヒット率(0.06%)は、本発明者らのアッセイの高い選択性を示す。上に具体的に示すSNX9、SNX9−1および化合物3〜4は、レポーターアッセイにおいて抗CDKI経路活性を示した。
例2
CDKIにより誘導される転写に対する化合物の効果
図1は、IPTG(p21誘導因子)の存在下または不在下における、レポーター細胞株における正規化されたGFP発現に対するSNX9の効果を示す。化合物は、p21により顕著な転写の阻害を示すが、p21が誘導されない場合、プロモーター機能を阻害せず、このことは、その転写効果が、CDKIにより誘導される転写に特異的であることを示す。同様の結果を、SNX9−1ならびに化合物3および4によって得た。図2における実験は、SNX9はまた、p21により誘導される転写を転写を逆転することを示す。この実験において、細胞のNK4遺伝子のCDKI応答性プロモーターからホタルルシフェラーゼを発現するHT1080 p21−9細胞を、IPTGと共に2日間培養した。これは、最大に近いNK4の誘導に十分である(Poole et al.、上記)。
20μMのSNX−9の添加は、化合物をIPTGと同時に添加した場合のみならず、IPTG処置の2日後に添加した場合においても、p21によるNK4ルシフェラーゼの誘導を低下させ、このことは、化合物がCDKIにより誘導される転写を妨げるだけでなく、逆転させることを示す(ネガティブコントロールとして、図2は、無関係の化合物SNX63が、IPTGと同時に添加した場合にのみ転写を阻害し、2日後では阻害しないことを示す)。CDKIにより誘導される転写を逆転させる能力は、SNX9から誘導される薬物が、CDKI経路に関連する疾患の化学的予防のみならず、治療的用途のためにも有用であり得ることを示唆する。
本発明者らは、このクラスの化合物が、人工のプロモーター−レポーター構築物に対してだけでなく、CDKI応答性内因性遺伝子に対してもまた、CDKIの効果を阻害するか否かを決定した。この目的のために、本発明者らは、11個のCDKI応答性遺伝子のRNAレベルを測定するためのリアルタイムRT−PCR(Q−PCR)アッセイを開発した。このアッセイは、96ウェルのTurboCapture RNA抽出キット(Qiagen)を使用した。ここでは、oligo(dT)がウェル表面に共有結合しており、同じウェル中での細胞溶解物からのmRNAの単離およびcDNA合成が可能である。5ユニット/lのSuperScript III逆転写酵素(Invitrogen)をウェルに添加し、50℃で1時間cDNA合成させ、次いで、生じたcDNAの2μlを用いて、SYBR Green PCR Master Mix(ABI)およびABI 7900HT Q−PCRマシンを使用するQ−PCR分析に用いた。対応する遺伝子およびβアクチン(コントロール)について特異的な遺伝子産物を増幅するために用いたプライマーを、表1に示す。
Figure 2009537532
図3は、IPTG誘導性のp21の発現を有するHT1080細胞におけるこれらの遺伝子の誘導に対するSNX9およびSNX9−1の効果を示し、結果を、IPTGの存在下または不在下における各々の遺伝子についてのRNAレベルの比として表す(発現がCDKIにより影響を受けないβアクチンを、正規化の標準として用いた)。図4は、IPTG誘導性のp16の発現を有するHT1080細胞におけるSNX9の効果についての同じ分析を示す。これらの化合物は、p21またはp16のいずれかにより停止した細胞において、試験された遺伝子の全ての誘導を部分的に阻害する。この効果は、これらの化合物の分子標的が、特定のCDKIでなく、むしろ、異なるCDKIの転写誘導作用の共通の下流のメディエーターであることを議論する。
本発明者らはまた、これらの化合物がNFκBの阻害剤として作用することができるかを、NFκBコンセンサス結合部位を含有するオリゴヌクレオチドに結合するp50またはp65サブユニットの細胞レベルを測定することにより、ACTIVE MOTIF TransAMTMNFkB p65 ChemiおよびNFkB p50 Chemi転写因子アッセイキットを用いて試験した。図5に示すように、SNX9は、これらのアッセイにおいてNFκB活性を完全に遮断するNFκB阻害剤であるTPCK(ポジティブコントロール)と比較して、TNFαにより誘導されるNFκB活性または基底NFκB活性に対して有意な効果を有さない。
例3
SNX9クラス化合物による腫瘍特異的増殖阻害
驚くべきことに、CDKI経路阻害剤のスクリーニングにおいて同定された62個の化合物の大部分が、HT1080により誘導されるレポーター細胞株の顕著な増殖阻害を示した。SNX9、SNX9−1ならびに化合物3および4の場合、細胞増殖阻害は、細胞死(細胞の剥離により顕微鏡で検出される)および細胞周期停止の両方の誘導と関連した。後者を図6に示し、これは、未処理か、またはSNX9単独、IPTG(p21を誘導する)単独、もしくはSNX9およびIPTGの組合せにより処理されたHT1080 p21−9細胞のDNA含有量のFACS分析を示す。SNX9処理は、G2/M画分の顕著な増大を誘導した。
有糸分裂細胞に特異的な抗体GF7(Rundle et al., J. Biol. Chem. 276: 48231-48236, 2001)による染色は、SNX9処理細胞の有糸分裂画分の増大を示し、SNX9によるG2/M停止は、主にまたは限定的に有糸分裂において起こることを示す(図7)。IPTGによるp21誘導は、細胞をG1およびG2の両方において停止させた。p21とSNX9クラス化合物との組合せは、p21およびSNX9の組合せ効果について予測されるレベルで、G1およびG2/Mの両方の停止をもたらした(図6)。この分析は、SNX9クラス化合物は、G2/Mにおける細胞周期を阻害し、p21により誘導されるG1停止を妨げないことを示す。したがって、SNX9クラス化合物は、CDKIの細胞周期阻害剤としての重要な機能を遮断しない。
本発明者らは、異なる腫瘍細胞および正常細胞に対するSNX9クラス化合物の増殖阻害効果を比較した。図8および図9は、異なる用量のSNX9、SNX9−1ならびに3種の周知の抗癌薬、ドキソルビシン(Adriamycin)、カンプトテシンおよびパクリタキセル(Taxol)を使用して、多様な細胞株を用いて行った増殖阻害アッセイの結果を示す。アッセイは、96ウェルプレートにおいて、三重に行った;各々の細胞株についてプレーティングされる細胞の数を、アッセイの3日間にわたって指数関数的増殖を確実にするために、予備実験において決定した。細胞数を、Hoechst 33342で接着細胞のDNAを染色することにより測定し、各々の用量についての結果を、未処理の細胞に対して相対的な細胞数の低下として表した。いくつかの腫瘍/正常細胞株の組合せについて、CellTiter−Gloバイアビリティアッセイ(Promega)を使用して、アッセイを繰り返し、同じ結果を得た。
図8は、ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)の3つの初代培養および2種の乳癌細胞株(MCF−7およびMDA231)に対する化合物の効果を比較する。ドキソルビシンおよびカンプトテシンは、正常および形質転換された乳腺細胞の間で区別を生じないが、タキソールおよびSNX9では、明確な腫瘍選択性が明らかである。図9は、初代(WI−38)およびhTERT−不死化正常BJ線維芽細胞(BJ−EN)に対する化合物の効果を、HT1080線維肉腫ならびに3種の腫瘍細胞株、HCT116結腸癌、C33−A子宮頸癌およびCalu−6肺癌に対するそれらの効果と比較する。このセットにおいて、SNX9、SNX9−1およびタキソールは、全ての腫瘍細胞を、正常線維芽細胞より高い程度で阻害したが、ドキソルビシンおよびカンプトテシンは、選択性を示さなかった。SNX9は、HCT116およびHT1080細胞に対して特に強力であり、正常細胞に対して効果を有さない5μMの濃度で100%に近い阻害をもたらし、これは、いかなる抗癌薬も及ばない選択性である。
これらの結果は、SNX9クラス化合物は、CDKI経路阻害剤について予測される重要な効果を示し、CDKIにより誘導される転写の誘導を遮断し、CDKIにより誘導される転写を逆転し、また、顕著な腫瘍特異的増殖阻害活性を示す。SNX9クラス化合物は、したがって、癌の化学予防および治療のために有用であり得る薬物のプロトタイプを構成する。
例4
マイクロアレイ分析はCDKI経路阻害剤のCDKI様活性を示唆する
IPTG誘導性のCDKIであるp21を有するHT1080 p21−9細胞株を、未処理か、または、72時間100μMのIPTG(これはp21を誘導する)で、もしくはCDKI経路阻害剤SNX9−1(20μM、SNX9ファミリー)もしくはSNX14(80μM、SNX9とは関連しない)単独もしくはIPTGと組み合わせて、処理した。各々の処理の後で、RNAを抽出し、本質的に全てのヒト遺伝子に対応する56,000個のプローブセットを含有するAffymetrix U133 2.0 Plusマイクロアレイによるハイブリダイゼーションに用いた。マイクロアレイのデータを、Gene Spring software(Agilent)を用いて分析した。図10は、2群の遺伝子の発現の変化を表す。第1群(p21により誘導された遺伝子、上段のパネル)は、p21誘導性IPTGによる処理の後で少なくとも2倍誘導された遺伝子に対応する1124個のプローブセットを表す。
第2群(p21により阻害された遺伝子、下段のパネル)は、IPTG処理の後で少なくとも4倍阻害された遺伝子に対応する435個のプローブセットを表す。各々のパネルは、示した化合物で処理されなかった細胞(左)または処理された細胞(右)からの、遺伝子発現の変化の倍率(logスケール)を示す。左のパネルは、SNX9クラス化合物の不在下における、IPTG(p21誘導)に対する2群の遺伝子の応答を示し、IPTGにより、第1群は誘導され、第2群は阻害される。中央のパネルは、SNX9−1またはSNX14(IPTGとともに、またはIPTGなしで添加される)の存在下における、IPTGに対する同じ遺伝子の応答を示す。IPTGによる遺伝子発現の誘導および阻害の両方が、SNX9−1またはSNX14の存在下において、CDKI経路阻害剤としてのこれらの活性から予測されるように、はるかに低下するようである。
特に、本発明者らは、上記のStein et al.により癌難治性のマーカーとして同定された14個の遺伝子のうち9個が、この系においてp21により誘導されるが、SNX9−1 およびSNX14は、それらの誘導を阻害することを見出した(表2)。この結果は、癌難治性を低減するためにCDKI経路阻害剤が有用である可能性を示す。
Figure 2009537532
図10の右パネルは、IPTGの不在下におけるSNX9−1 またはSNX14に対する同じ2群の遺伝子の応答を示す。重要なことに、p21により誘導される遺伝子のほとんどが、SNX9−1およびSNX14により誘導され、p21により阻害される遺伝子のほとんどが、SNX9−1およびSNX14により阻害される。これらの化合物の効果は、p21誘導性IPTGの効果より弱いが、これらは、CDKI経路阻害剤が、遺伝子発現に対するCDKI p21の効果を部分的に模倣することができることを示す。
この知見は、以下の仮説を示唆する(図11)。この仮説によれば、CDKIタンパク質(例えばp21)、サイクリンおよびCDKIとの間の複合体の形成は、細胞周期停止(CDK阻害に起因して)、および、CDKI/サイクリン/CDK複合体と未定義の調節タンパク質Xとの相互作用に起因するCDKI転写経路の活性化の両方をもたらす(図11A)。SNX化合物は、CDKI/サイクリン/CDK複合体と物理的に相互作用し、そのタンパク質Xとの相互作用を妨げ、それによりCDKI経路を遮断する(図11B)。CDKIタンパク質の不在下において、SNX化合物は、なおサイクリン/CDK複合体に結合する。この結合は、CDKIタンパク質の転写効果を部分的に模倣し(マイクロアレイ分析により検出される)、また、CDK活性を阻害し、これは、CDK阻害剤によりもたらされる細胞周期停止を説明するであろう(図11C)。
例5
CDKI経路阻害剤は、直接的なCDK阻害剤活性を有する
上記の仮説を試験するために、本発明者らは、2種のSNX9クラス化合物(SNX9およびSNX9−1)、2種の異なる構造的クラスの化合物(SNX14およびSNX2)ならびに別の関連しない阻害剤(SNX35)を含むいくつかのCDKI経路阻害剤が、精製されたサイクリン/CDK複合体によりインビトロで形成される異なる複合体のキナーゼ活性を阻害するか否かを決定した。この分析は、Upstate Biotechnology, Inc.によるサービスとして行った。
CDK1/サイクリンB(h)
25μlの最終容積において、CDK1/サイクリンB(h)(5〜10mU)を、8mMのMOPS pH7.0、0.2mMのEDTA、0.1mg/mlのヒストンH1、10mMのMgAcetate、および[γ−33P−ATP](特異的活性約500cpm/pmol、45μMの濃度)とともにインキュベートする。反応を、MgATPミックスの添加により開始する。40分間室温にてのインキュベーションの後で、5μlの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。次いで、10μlの反応を、P30フィルターマット(filtermat)の上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄し、その後乾燥してシンチレーション計数に供する。
CDK2/サイクリンA(h)
25μlの最終容積において、CDK2/サイクリンA(h)(5〜10mU)を、8mMのMOPS pH 7.0、0.2mMのEDTA、0.1mg/mlのヒストンH1、10mMのMgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pmol、45μMの濃度)とともにインキュベートする。反応を、MgATPミックスの添加により開始する。40分間室温にてのインキュベーションの後で、5μlの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。次いで、10μlの反応を、P30フィルターマット(filtermat)の上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄し、その後乾燥してシンチレーション計数に供する。
CDK2/サイクリンE(h)
25μlの最終容積において、CDK2/サイクリンE(h)(5〜10mU)を、8mMのMOPS pH7.0、0.2mMのEDTA、0.1mg/mlのヒストンH1、10mMのMgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pmol、120μMの濃度)とともにインキュベートする。反応を、MgATPミックスの添加により開始する。40分間室温にてのインキュベーションの後で、5μlの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。次いで、10μlの反応を、P30フィルターマットの上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄し、その後乾燥してシンチレーション計数に供する。
CDK3/サイクリンE(h)
25μlの最終容積において、CDK3/サイクリンE(h)(5〜10mU)を、8mMのMOPS pH7.0、0.2mMのEDTA、0.1mg/mlのヒストンH1、10mMのMgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pmol、200μMの濃度)とともにインキュベートする。反応を、MgATPミックスの添加により開始する。40分間室温にてのインキュベーションの後で、5μlの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。次いで、10μlの反応を、P30フィルターマットの上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄し、その後乾燥してシンチレーション計数に供する。
CDK6/サイクリンD3(h)
25μlの最終容積において、CDK6/サイクリンD3(h)(5〜10mU)を、8mMのMOPS pH7.0、0.2mMのEDTA、0.1mg/mlのヒストンH1、10mMのMgAcetate、[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pmol、200μMの濃度)とともにインキュベートする。反応を、MgATPミックスの添加により開始する。40分間室温にてのインキュベーションの後で、5μlの3%リン酸溶液の添加により反応を停止する。次いで、10μlの反応を、P30フィルターマットの上にスポットし、75mMのリン酸中で5分間3回、メタノール中で1回洗浄し、その後乾燥してシンチレーション計数に供する。
第1の工程において、化合物を100μMの濃度で試験した。第2の工程において、化合物に対する有意な感受性を示したサイクリン/CDK複合体を、2つのより低い化合物濃度(SNX9およびSNX2については20μMおよび40μM、より強力な化合物であるSNX9−1 およびSNX14については10μMおよび20μM)で再試験した。図12は、これらのアッセイの結果を示し、SNX化合物の存在下における異なるサイクリン/CDK複合体の相対的なキナーゼ活性として表した(化合物の不在下におけるキナーゼ活性を100%とした)。SNX35のみが、サイクリン/CDK活性に対して効果を有さなかった。SNX9−1、SNX9、SNX2およびSNX14は全て、CDK1(CDC2)、CDK2、CDK3およびCDK6のキナーゼ活性を阻害した。SNX14およびSNX2については、相対的な阻害の効力は、CDK1>CDK2CDK3>CDK6であった。SNX9およびSNX9−1については、順序はCDK3>CDK1>CDK2>CDK6であった(図12)。したがって、いくつかのCDKI経路阻害剤はCDK阻害剤活性を有し、SNX9クラス化合物(これらは、その増殖阻害効果において最も高い腫瘍選択性を示す)は、優先的にCDK3を阻害する。
例6
CDK1、CDK2またはCDK4の選択的阻害剤の増殖阻害効果は、SNX9クラス化合物の腫瘍選択性を示さない
本発明者らは、先に、SNX9クラス化合物が、多数の異なる腫瘍細胞株の増殖を、正常細胞(ヒト線維芽細胞および正常乳腺上皮細胞)と比較して優先的に阻害することを実証した。SNX9クラス化合物の腫瘍特異的増殖阻害活性が特定のCDKの阻害に起因し得るかを決定するために、本発明者らは、CDKタンパク質のいくつかについて選択的阻害剤のアベイラビリティの平均を得た。
これらの酵素のなかで、CDK1、CDK2およびCDK4/CDK6(後の2つのCDKは、互いに緊密に関連し、同じクラスのサイクリンと相互作用する)を、抗癌活性を有する可能性がある特異的阻害剤を開発するための標的として用いた。対照的に、CDK3は、選択的阻害剤を開発するための標的としては用いなかった。本発明者らは、市販のCDK1の選択的阻害剤(CGP74514A)(Calbiochemカタログ番号217696)、CDK2の選択的阻害剤(CVT−313)(Calbiochemカタログ番号238803)、およびCDK4の選択的阻害剤(NSC 625987)(Calbiochemカタログ番号219477)を入手し、これらを、広範な特異性を有するCDK阻害剤であるフラボリピリドール、ならびにSNX14、SNX9およびSNX9−1と共に、正常および形質転換された線維芽細胞の増殖阻害について試験した。
この分析は、次第に増大する程度で新生物性に形質転換された(不死化されているが形質転換されていないか、部分的に形質転換されているか、完全に形質転換されている)3種の同質遺伝子的(isogenic)なヒト線維芽細胞株のセットを用いて行った。用量依存的増殖阻害アッセイは、96ウェルプレートにおいて三重に行った;各々の細胞株についてプレーティングされる細胞の数を、アッセイの3日間にわたって指数関数的増殖を確実にするために、予備実験において決定した。細胞数を、Hoechst 33342で接着細胞のDNAを染色することにより測定し、用量依存的な細胞数の低下を、未処理の細胞に対して相対的に表した。
図13に示すように、SNX9およびSNX9−1は、部分的に形質転換されたかまたは完全に形質転換された細胞株に対して、不死化しているが形質転換されていない線維芽細胞と比較して、顕著な選択性を示した。SNX14および選択的CDK1阻害剤に関しては、形質転換された細胞に対するはるかに低い選択性が観察され、一方、フラボピラノールおよびCDK2またはCDK4の選択的阻害剤は、形質転換細胞選択性を全く示さなかった。従って、SNX9クラス化合物の腫瘍選択性は、そのCDK1、CDK2またはCDK4/6の阻害によっては説明され得ない。この結果は、CDK3(SNX9クラス以外の選択的な化学的阻害剤は存在しない)を、腫瘍選択性の原因である最上の標的候補として位置させる。
例7
RNA干渉によるCDK3阻害は、腫瘍特異的増殖阻害をもたらす
SNX9に関連しないCDK3の特異的阻害剤を探索するために、本発明者らは、RNA干渉(RNAi)機構を介してCDK3発現を阻害するショートヘアピンRNA(shRNA)配列を発現する組み換えレンチウイルスベクターを用いることを選択した。CDK3を標的とする異なるshRNA配列を含む3種のレンチウイルスベクターを、Open Biosystems、Huntsville、ALから入手した。これらのベクターは、pLKO1骨格からなり(www.openbiosystems.com)、これは、ピューロマイシン耐性についての選択マーカーを有し、ヒトU6プロモーターからshRNAインサートを発現する。CDK3標的化shRNA配列を、表3に列記する。
Figure 2009537532
殆どの実験において、本発明者らは、RNAiの効力を最大化するために、3種全てのCDK3標的化レンチウイルスベクターの混合物を用いた。ネガティブコントロールとして、本発明者らは、インサートを含まないpLKO1ウイルス、または、pLL3.7から誘導され、またピューロマイシン耐性マーカーを有する、別のインサートを含まないレンチウイルスベクターであるLLCEPTu6X(Rubinson et al., Nat. Genet. 33, 401−406 (2003)のいずれかを用いた。3種のCDK3標的化レンチウイルスベクターの混合物がCDK3のRNA発現を阻害することを実証するために、3種のshRNAベクターとViraPowerレンチウイルスパッケージングミックスとで、293FT細胞(Invitrogen)を共トランスフェクションすることにより、ウイルスを調製し、パッケージされたウイルスを、HT1080細胞中に移入した。shRNA発現ウイルスまたはコントロールウイルスに感染した細胞を、2μg/mlのピューロマイシンで3日間選択し、それらのポリ(A)+RNAを、Oligotex Direct mRNAキット(Qiagen)を用いて精製した。さらなるコントロールとして、未感染および未選択の細胞からRNAを抽出した。
次いで、RNA調製物を、リアルタイム逆転写PCR(Q−PCR)によりCDK3のmRNAのレベルの低下について試験した。Q−PCR分析を、SYBR Green PCR Master Mix(ABI)ならびにABI 7900HT Q−PCRマシンを用いて三重に行った。プライマーの評価のために連続的なcDNA希釈およびゲル電気泳動を用い、遺伝子発現の相対的定量のための比較C法(Applied Biosystems)を用いて発現レベルを決定した。
CDK3のために以下のPCRプライマーを用いた:GCCCCCGAGATTCTCTTGG(センス)およびGGAAACAGGGCTTTTCGA(アンチセンス);これらのプライマーは、103bpのPCRプロダクトを生成する。正規化コントロールとして、以下のPCRプライマーを用いてβ−アクチン配列を増幅し:CTTCCTGGGCATGGAGTC(センス)およびTGTTGGCGTACAGGTCTTTG(アンチセンス)、これは95bpのフラグメントを生じる。図14は、CDK3のmRNAレベルの(β−アクチンに対して正規化した後の)Q−PCR分析の結果を示す。これらのレベルは、コントロールウイルスに感染した細胞において変化しなかったが、3種のCDK3標的化shRNAウイルスの混合物による感染は、CDK3のmRNAレベルを約4倍低下させ、効率的なRNAi活性を示した。
この混合物およびコントロールのインサートを含まないウイルスを用いて、本発明者らが先にSNX9クラス化合物に対して感受性が高いことを見出した2種の腫瘍細胞株、HT1080線維芽肉腫およびHCT116結腸癌、ならびにSNX9クラス化合物に対して相対的にさらに耐性である不死化した正常BJ−EN線維芽細胞を感染させることにより、正常および腫瘍細胞の増殖に対するCDK3標的化レンチウイルス混合物の効果を決定した(図13)。
感染およびピューロマイシン選択の後で、ピューロマイシンにより選択された細胞を6ウェルプレートに播種して細胞数を毎日Coulter Z1カウンターを用いて(三重に)計測することにより、6日間細胞増殖をモニターした。図15Aに示すように、3種のCDK3標的化レンチウイルスの混合物での感染は、HCT116およびHT1080細胞の増殖を劇的に阻害したが、BJ−EN細胞に対する阻害効果は、はるかに弱かった。別の実験において、HT1080細胞を、CDK3に対するshRNAを有する3種の個別のレンチウイルスで感染させ、ピューロマイシン選択の2日後に細胞数を計数した。
図15Bに示すとおり、3種の個別のレンチウイルスのうち2種(481および484)は、HT1080細胞増殖をコントロールに対して相対的に阻害し、484について最も強い効果を得た(表3を参照)。したがって、CDK3を阻害するRNAiベクターは、細胞増殖もまた阻害し、この阻害効果は腫瘍細胞に特異的であり、SNX9クラス化合物の効果を模倣する(図12を参照)。
例8
SNX9およびSNX9−1のインビボでの研究
約6〜8週齢の雄のNCrヌードマウスを、Taconic Biotechnology、Rensselaer、NYによるサービスとして行われた研究のために用いた。動物を、ウイルスフリーのバリア条件下に維持し、継続的に健康状態をモニタリングした。試験材料の投与、全てのデータ収集および研究動物の処分を、全ての適切なTaconic Biotechnology Standard Operating ProceduresならびにThe Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsによるコンプライアンスにおいて行った。研究動物を、到着時から研究を通して毎日、全体的な健康状態、行動および罹患率について観察した。試験動物の体重を測定し、試験物の投与量を決定した。
この分析の最初の部分は、急性の毒性を評価するため、および治療研究のための最大耐用量(MTD)を同定するために設計された範囲決定研究(Range Finder Study)であった。範囲決定研究は、2回行った。1回目の反復のために、30個体のマウスに、3つの群において、SNX9およびSNX9−1を、リン酸緩衝化食塩水(PBS)のみ、2.2mg/kgのSNX9、4.4mg/kgのSNX9、8.8mg/kgのSNX9、17.6mg/kgのSNX9、80%PBS:20%DMSO、2.2mg/kgのSNX9−1、4.4mg/kgのSNX9−1、8.8mg/kgのSNX9−1、17.6mg/kgのSNX9−1で、静脈内注射した。SNX9をPBSに溶解し、SNX9−1を80%PBS:20%DMSOに溶解した。動物あたりの注射された容積は、約0.1ml/注射であった。
一個体の動物が、2.2mg/kgのSNX9−1(最低用量)群において、明らかにショックのために第1日に死亡した。全ての他の動物は、健康に見え、3日間の観察の間元気であり、それらの一般的な健康状態および体重を評価した。全ての動物について、有意な体重の変化はなかった(表4を参照)。3日間の観察期間の最後に、全てのマウスを安楽死させ、末梢血液サンプルを心臓穿刺により採取した。これらの血液サンプルを全血球計算評価のために分析した。
表4に示すとおり、白血球数は、各々のケースにおいて、基準範囲内にあり、SNX9またはSNX9−1のいずれも、最高用量においても白血球数に対して検出可能な影響を及ぼさなかったことを示す。群の約半数において白血球数の僅かな上昇が検出されたが、この上昇は、上の基準範囲を7%未満しか超えておらず、有意であるとは考えられなかった。全ての他の種類の血球数は、基準範囲内に位置した。
第2の反復のために、24個体のマウスを、3つの群において、SNX9およびSNX9−1を、PBSのみ、17.6mg/kgのSNX9、35.2mg/kgのSNX9、70.4mg/kgのSNX9、80%PBS:20%DMSO、17mg/kgのSNX9−1、35.2mg/kgのSNX9−1、70.4mg/kgのSNX9−1で、静脈内注射した。1個体の動物が、70.4mg/kgのSNX9の群において、投与の直後に死亡した;この急速な死亡は、化合物の毒性によるものではなくショックに起因すると考えられる。全ての他の動物は、動物が観察されその一般的な健康状態および体重が評価された3日間の期間の間、健康であった。全てのマウスについて、有意な体重変化はなかった(表4を参照)。第2の反復におけるマウスの平均の初期体重は、23.7g+/−1.73であった。
3日間の観察期間の後で、全てのマウスを安楽死させ、末梢血液サンプルを心臓穿刺により採取した。これらの血液サンプルを全血球計算評価のために分析した。第1の反復と同様に、白血球数は、各々のケースにおいて、基準範囲内にあり(表4)、SNX9またはSNX9−1のいずれも、注射された最高用量においても白血球数に対して検出可能な影響を及ぼさなかったことを示す。群の8のうち約7において、赤血球数の僅かな上昇が検出されたが、この上昇は、上の参照範囲を6%未満しか超えておらず、有意であるとは考えられなかった。全ての他の種類の血球数は、基準範囲内に位置した。
Figure 2009537532
範囲決定研究におけるSNX9およびSNX9−1の完全な毒性の欠如は、これらの化合物が非常に迅速に血流から失われ得るか否かという疑問を生じた。SNX9がマウスの血液中に検出可能なレベルで留まる能力を決定するために、本発明者らは、そのIV注射の1時間後の血漿レベルを分析した。2個体のコントロールマウスには注射せず、2個体のマウスにIVで70mg/kgのSNX9(PBSに溶解した)を注射した。1時間後、マウスを安楽死させ、血液を心臓穿刺により採取した。全血から血漿を調製した後、凍結して−70℃で保存した。凍結した血漿を融解し、100μlを、4倍容積の100%エタノールで−20℃において1時間沈殿させることにより、血漿タンパク質を除去した:これらの条件下において、SNX9は、最小限の血漿混入物で、エタノール可溶化画分中に定量的に回収される。
第1のアッセイは、HPLC分析であった。このアッセイのために、エタノール可溶化画分を真空下で乾燥させ、100μlの30%アセトニトリル0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中に再溶解した。4μlのエタノール抽出SNX9を、C18 HPLCカラムに適用し、30%アセトニトリル0.1%TFAの緩衝液を用いて、0.3ml/分の流速で、均一濃度で溶出させた。SNX9の溶出を、その吸収最大波長である280nmでモニタリングした。0μM、250μM、500μM、1mMおよび2mMの濃度でSNX9でスパイクされたコントロール血漿から標準を同様に調製した。これらの標準は、約5.5分において溶出した場合、280nmで特徴的な吸収ピークを生じる。各々の標準ピーク下の面積は、元の血漿中のSNX9の濃度に比例する。この方法において、2個体の注射されたマウス血漿中のSNX9の濃度を、250μM付近であると概算した(データは示さず)。
第2のアッセイは、細胞毒性についての生物学的試験であった。このアッセイにおいて、エタノール可溶性画分を、10%のウシ胎児血清を含むDMEMに溶解した。1mMのSNX9でスパイクしたコントロール血漿から標準を調製した。マウス由来のサンプルを、次いで、標準の1mMのサンプルと同一に、10%のウシ胎児血清を含むDMEM中に希釈した。これらの最初の希釈を次いで連続的に、12.5μM、6.25μM、3.12μM、1.56μM、0.78μM、0.39μM、0.195μM、0.097μM、0.048μM、0.024μMおよびゼロに希釈した。バックグラウンドの血漿の効果について正規化するために、SNX9を注射した動物からのサンプルを、濃度が1mMのSNX9−1であるものとして扱った。
これらのコントロールおよび実験希釈を、次いで、96ウェル組織培養プレートの1ウェルあたり2000個の細胞で播種されたHT1080細胞に、三重で適用した。72時間後、先に記載されるように調製された96ウェル組織培養プレートの各々のウェルにおいて、細胞ライセートのHoechst染色により、増殖の阻害を測定した。70mg/kgのSNX9を注射したマウスの血漿に由来する実験サンプル、および1mMでのSNX9でスパイクされたコントロール血漿において、同様の増殖阻害プロフィールを観察した(データは示さず)。上記のアッセイから、本発明者らは、IVで70mg/kgの化合物を注射されたマウスの血漿中のSNX9の活性濃度が250μMと1mMとの間であり、毒性の欠如は、血流から化合物が急速に失われるからではないことを結論付けた。
この情報により、本発明者らは、次いで、SNX9およびSNX9−1の治療用量研究を、確立されたヒト結腸(HCT116)癌異種移植片を有するヌードマウスにおいて行った。HCT116は、American Type Culture Collection(ATCC)からのものである;凍結保存および細胞の増殖のためにATCCの情報を参照した。細胞を、5×10で、肩甲間に皮下注射した。腫瘍の寸法を、ノギスを用いて測定した。皮下の腫瘍サイズを概算するために、ノギスを皮膚に僅かに、皮下腫瘤を握るほど強くはなく、押しつけた。腫瘍の最大寸法を、Lとして記録した。Lに垂直な寸法をWとして記録した。式:容積=0.5を用いた。全ての腫瘍接種物が触知できるようになった肩甲間への腫瘍細胞注射の8日後、10個体のマウスの群を、21日間、範囲決定研究と同様に溶解したPBS(コントロール)、SNX9またはSNX9−1(各70mg/kg)で処置した。
化合物を、1週間に3回一日おきに腫瘤内に注射し、3週間にわたって動物1個体あたり合計9回の注射をした。腫瘍サイズが2000mmを超えた場合、マウスを屠殺した。図17は、全ての動物についての腫瘍サイズの変化の時間経過を示す。第31日(処置の終了の2日後)までに、SNX9処置群中のマウスの40%およびSNX9−1処置群中のマウスの10%のみと比較して、コントロール群における10個体のマウスのうち6個体(60%)が、死亡したか屠殺された。
第31日における腫瘍サイズの差異の統計学的分析を、ペアワイズの両側t検定を用いて行った;この分析において、第31日より前に死亡したか屠殺された全てのマウスの腫瘍の容積を、2000mmと仮定した。この分析により、第31日における腫瘍サイズの減少は、SNX9−1処置群においてコントロールと比較して高い有意性があり(P<0.01)、SNX9処置群については統計学的有意に達しなかった(P<0.3)ことが示された。したがって、治療用量研究により、SNX9クラス化合物、特にSNX9−1の抗腫瘍効力がインビボで実証された。

Claims (40)

  1. 腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞の集団を、構造I:
    Figure 2009537532
    式中、R、RおよびRは、各々独立して、水素、C1−C6アルキル、シクロアルキル、アルケニル、O−アルキル、ジアルキルアミノアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択されるか、またはRおよびRは一緒になって3〜6原子の環を形成し、これは、1または2以上のヘテロ原子および/または1または2以上の二重結合を含んでもよく;AおよびBは、各々独立して、水素、O−アルキル、N−アルキルおよび電子吸引性基から選択され、ただし、AまたはBの少なくとも一方は、電子吸引性基であり;ならびにZは、4〜10原子の環構造であり、これは、0〜3個のヘテロ原子および1または2以上の二重結合を含む、
    を有する化合物、または、その遊離の酸、塩、もしくはプロドラッグ;
    と接触させることを含む、前記方法。
  2. が水素またはメチルであり、RおよびRが、独立して、水素、メチルおよびC2−C6アルキルまたはアルケニルから選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 1または2以上の電子吸引性基が、ハロゲン、窒素含有基、または酸素含有基から選択される、請求項1に記載の方法。
  4. 1または2以上のハロゲンがフッ素でない、請求項3に記載の方法。
  5. 1または2以上のハロゲンが塩素および臭素から選択される、請求項3に記載の方法。
  6. 腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞の集団を、構造II:
    Figure 2009537532
    式中、R、RおよびRは、各々独立して、水素、C1−C6アルキル、シクロアルキル、アルケニル、O−アルキル、ジアルキルアミノアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択されるか、またはRおよびRは一緒になって3〜6原子の環を形成し、これは、1または2以上のヘテロ原子および/または1または2以上の二重結合を含んでもよく;AおよびBは、各々独立して、水素、O−アルキル、N−アルキルおよび電子吸引性基から選択され、ただし、AまたはBの少なくとも一方は、電子吸引性基である、
    を有する化合物、または、その遊離の酸、塩、もしくはプロドラッグと接触させることを含む、前記方法。
  7. が水素またはメチルであり、RおよびRが、独立して、水素、メチルおよびC2−C6アルキルまたはアルケニルから選択される、請求項6に記載の方法。
  8. 1または2以上の電子吸引性基が、ハロゲン、窒素含有基、または酸素含有基から選択される、請求項6に記載の方法。
  9. 1または2以上のハロゲンがフッ素でない、請求項8に記載の方法。
  10. 1または2以上のハロゲンが塩素および臭素から選択される、請求項8に記載の方法。
  11. 癌細胞の増殖を阻害するための方法であって、癌細胞の集団を、以下:
    Figure 2009537532
    から選択される化合物、または、その遊離の酸、塩、もしくはプロドラッグと接触させることを含む、前記方法。
  12. 腫瘍を有する患者を処置するための方法であって、該患者に、構造I:
    Figure 2009537532
    式中、R、RおよびRは、各々独立して、水素、C1−C6アルキル、シクロアルキル、アルケニル、O−アルキル、ジアルキルアミノアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択されるか、またはRおよびRは一緒になって3〜6原子の環を形成し、これは、1または2以上のヘテロ原子および/または1または2以上の二重結合を含んでもよく;AおよびBは、各々独立して、水素、O−アルキル、N−アルキルおよび電子吸引性基から選択され、ただし、AまたはBの少なくとも一方は、電子吸引性基であり;ならびにZは、4〜10原子の環構造であり、これは、0〜3個のヘテロ原子および1または2以上の二重結合を含む、
    を有する化合物、または、その遊離の酸、塩、もしくはプロドラッグ、および薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアもしくは賦形剤を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
  13. が水素またはメチルであり、RおよびRが、独立して、水素、メチルおよびC2−C6アルキルまたはアルケニルから選択される、請求項12に記載の方法。
  14. 1または2以上の電子吸引性基が、ハロゲン、窒素含有基、または酸素含有基から選択される、請求項12に記載の方法。
  15. 1または2以上のハロゲンがフッ素でない、請求項14に記載の方法。
  16. 1または2以上のハロゲンが塩素および臭素から選択される、請求項14に記載の方法。
  17. 腫瘍を有する患者を処置するための方法であって、該患者に、構造II:
    Figure 2009537532
    式中、R、RおよびRは、各々独立して、水素、C1−C6アルキル、シクロアルキル、アルケニル、O−アルキル、ジアルキルアミノアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択されるか、またはRおよびRは一緒になって3〜6原子の環を形成し、これは、1または2以上のヘテロ原子および/または1または2以上の二重結合を含んでもよく;AおよびBは、各々独立して、水素、O−アルキル、N−アルキルおよび電子吸引性基から選択され、ただし、AまたはBの少なくとも一方は、電子吸引性基である、
    を有する化合物、または、その遊離の酸、塩、もしくはプロドラッグ、および薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアもしくは賦形剤を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
  18. が水素またはメチルであり、RおよびRが、独立して、水素、メチルおよびC2−C6アルキルまたはアルケニルから選択される、請求項17に記載の方法。
  19. 1または2以上の電子吸引性基が、ハロゲン、窒素含有基、または酸素含有基から選択される、請求項17に記載の方法。
  20. 1または2以上のハロゲンがフッ素でない、請求項19に記載の方法。
  21. 1または2以上のハロゲンが塩素および臭素から選択される、請求項20に記載の方法。
  22. 腫瘍を有する患者を処置するための方法であって、該患者に、以下:
    Figure 2009537532
    から選択される構造を有する化合物、または、その遊離の酸、塩、もしくはプロドラッグ、および薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアもしくは賦形剤を含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
  23. 細胞におけるCDKI経路により誘導される転写を妨害または低減するための方法であって、該細胞を、構造I:
    Figure 2009537532
    式中、R、RおよびRは、各々独立して、水素、C1−C6アルキル、シクロアルキル、アルケニル、O−アルキル、ジアルキルアミノアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択されるか、またはRおよびRは一緒になって3〜6原子の環を形成し、これは、1または2以上のヘテロ原子および/または1または2以上の二重結合を含んでもよく;AおよびBは、各々独立して、水素、O−アルキル、N−アルキルおよび電子吸引性基から選択され、ただし、AまたはBの少なくとも一方は、電子吸引性基である;ならびにZは、4〜10原子の環構造であり、これは、0〜3個のヘテロ原子および1または2以上の二重結合を含む、
    を有する化合物、または、その遊離の酸、塩、もしくはプロドラッグ、および薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアもしくは賦形剤と接触させることを含む、前記方法。
  24. が水素またはメチルであり、RおよびRが、独立して、水素、メチルおよびC2−C6アルキルまたはアルケニルから選択される、請求項24に記載の方法。
  25. 1または2以上の電子吸引性基が、ハロゲン、窒素含有基、または酸素含有基から選択される、請求項24に記載の方法。
  26. 1または2以上のハロゲンがフッ素でない、請求項26に記載の方法。
  27. 1または2以上のハロゲンが塩素および臭素から選択される、請求項26に記載の方法。
  28. 腫瘍細胞の増殖を選択的に阻害するための方法であって、腫瘍細胞において、3型サイクリン依存性キナーゼ(CDK3)を選択的に阻害することを含む、前記方法。
  29. 腫瘍細胞においてCDK3を選択的に阻害することが、腫瘍細胞を、CDK3活性の低分子特異的阻害剤またはCDK3のドミナントネガティブ型変異体と接触させることを含む、請求項29に記載の方法。
  30. CDK3の低分子特異的阻害剤が、構造Iまたは構造IIを有する、請求項30に記載の方法。
  31. 腫瘍細胞においてCDK3を選択的に阻害することが、腫瘍細胞を、CDK3遺伝子発現の阻害剤と接触させることを含む、請求項29に記載の方法。
  32. CDK3遺伝子発現の阻害剤が、ショートヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンス核酸(AS)、およびリボザイムからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
  33. 腫瘍細胞増殖の特異的阻害剤を同定するための方法であって、CDK3と相互作用する精製されたサイクリンとCDK3とのインビトロ複合体を、CDK3と相互作用する精製されたサイクリンとCDK3との複合体がキナーゼ活性を示すことができる条件下において、かかる活性の候補阻害剤と接触させること、かかる複合体のキナーゼ活性を、かかる候補化合物の存在下または不在下において測定すること、を含み、ここで、候補化合物は、候補阻害剤の存在下におけるサイクリン/CDK3複合体の活性が、候補阻害剤の不在下においてより低い場合、腫瘍細胞増殖の特異的な阻害剤としてみなされる、前記方法。
  34. 請求項34に記載の方法であって、CDK1、CDK2、CDK4またはCDK6と、かかるCDKと相互作用するサイクリンとの複合体を用いることをさらに含み、ここで、候補阻害剤は、サイクリン/CDK3複合体の活性を、CDK1、CDK2、CDK4またはCDK6とそれらの相互作用するサイクリンとの複合体のキナーゼ活性より高い程度まで阻害する場合、腫瘍細胞増殖の特異的な阻害剤としてみなされる、前記方法。
  35. 請求項34または35に記載の方法により同定される、腫瘍細胞増殖の特異的阻害剤。
  36. 細胞においてCDKI経路により誘導される転写を低減または妨害するための方法であって、細胞を、構造II:
    Figure 2009537532
    式中、R、RおよびRは、各々独立して、水素、C1−C6アルキル、シクロアルキル、アルケニル、O−アルキル、ジアルキルアミノアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択されるか、またはRおよびRは一緒になって3〜6原子の環を形成し、これは、1または2以上のヘテロ原子および/または1または2以上の二重結合を含んでもよく;AおよびBは、各々独立して、水素、O−アルキル、N−アルキルおよび電子吸引性基から選択され、ただし、AまたはBの少なくとも一方は、電子吸引性基である、
    を有する化合物、または、その遊離の酸、塩、もしくはプロドラッグ、および薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアもしくは賦形剤と接触させることを含む、前記方法。
  37. が水素またはメチルであり、RおよびRが、独立して、水素、メチルおよびC2−C6アルキルまたはアルケニルから選択される、請求項37に記載の方法。
  38. 1または2以上の電子吸引性基が、ハロゲン、窒素含有基、または酸素含有基から選択される、請求項37に記載の方法。
  39. 1または2以上のハロゲンがフッ素でない、請求項46に記載の方法。
  40. 1または2以上のハロゲンが塩素および臭素から選択される、請求項39に記載の方法。
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