JP2009537296A - 有機材料の層の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は有機材料の層の製造方法を提供する。その製造方法は、堆積条件下で基体に、溶媒中に溶解した前記有機材料を含む溶液の層を供給する工程と、必要に応じて前記溶液の層を部分的に乾燥する工程と、その後前記溶液の層をアニーリングする工程であって、前記アニーリングは前期溶液の層が完全に乾燥する前に実施され、前記アニーリングの継続時間はアニーリングの間に前期溶液の層が安全に乾燥しないように制限され、前記アニーリングが前期溶液の層のリフローを生じさせるアニーリング工程と、その後前記溶液の層を乾燥させる工程であって、堆積条件下で乾燥するよりも遅く前記乾燥が実施されるように制御される乾燥工程とを含む。得られた有機材料の層はミクロ品質およびマクロ品質の両方で改善を示し、より少ない表面粗さと正確な線解像度およびエッジ解像力をを萎えた十分に長いフィルムの獲得をもたらす。
【選択図】図1

Description

本発明は有機材料の分野、より詳細には例えば光発電の用途に用いられる、有機材料の層の製造方法に関する。
多くの刊行物により有機材料をベースとする発電用途(または太陽光発電、photovoltaic application)が知られている。より詳細には光起電性(photovoltaic)活性層が、2つの電極の間に挟まれた電子供与(electron donating)材料と電子受容(electron accepting)材料との混合物を含むデバイスコンセプトが多くの注目を集めている。
光起電性活性層のためのこのような混合物を形成する化合物(または配合物、compound)は様々である。よく知られた電子受容材料はフラーレンおよびフラーレン誘導体である。しかしながら、例えばシアノ置換共役高分子またはペリレンベースの小分子のような他の材料もまた電子受容材料と考えられている。よく知られた電子供与材料は例えばポリ(フェニレン − ビニレン)、ポリ(フルオレン)、ポリ(チエニレン − ビニレン)またはポリ(チオフェン)のような共役高分子である。しかしながら他の有機ポリマーおよび小分子を含む多くの有機材料もまた電子供与材料であると考えられている。
従って、多くの材料の組み合わせが研究されているがしかし、広い領域の加工により適していると考えられていることからポリマー材料を含む混合物が多くの注目を集めている。
ポリ(チオフェン)ポリマーとフラーレン誘導体との組み合わせが光起電性活性層として広く知られている。とりわけ、レジオレギュラ(または位置規則的、regioregular)ポリ(チオフェン)を活性化合物混合物に取り入れる能力は、光起電性活性層の太陽光スペクトルに対する光吸収特性のより優れた重なりをもたらすことができる。このような光起電性活性層の光吸収の増加は、最終の太陽電池の性能にとって有益であると言われている。このような増加は、例えば、Franz Padingerらによる"Effects of Postproduction Treatment on Plastic Solar Cell" Adv. Funct. Mater. 2003, 13, No.1, January(有機太陽電池が開回路電圧より高い外部電圧とポリチオフェンのガラス転移温度より高い温度とを同時に付与して処理される(上部電極を蒸着後)ことを記載する。)に示されるような、付加的な処理を装置の製造方法に組み入れることによって達成することができる。吸収の増加をもたらす付加的な処理の別の例は、国際公開公報第WO2004/025746号に記載されており、この処理は、光起電性活性層を室温で溶媒蒸気に暴露する工程または少なくとも70℃で活性層をアニーリングする工程を含む。これらの処理は活性層の堆積(または蒸着、deposiiotn)を終了した後に実施する。Youngkyooらによる"Device annealing effect in organic solar cells with blends of region-regular poly(3-hexylthiophenon) and soluble fullerene" Applied Physics Letters 86, 063502 (2005)では、140℃でアニーリングの後、バルクヘテロジャンクション太陽電池の効率の向上および光の吸収の増加が観察されている。
これら装置(またはデバイス)の光起電性活性層は概して1μmより薄い厚さで、2つの金属接触部または接触層に挟まれており、この層の高精度な堆積が必要である。とりわけ、電極間の厚さおよびより小さな表面粗さ(minor surface roughness)がよく制御された十分に連続したフィルムを得ることへの要望が強い。
フィルムの高度な連続性および均一性は、化合物が溶媒または溶媒混合物に溶解している、スピンコート(またはスピンコーティング)を介した溶液処理(solution processing)により、概して実現される。しかしながら、このコーティング方法は、例えば多い材料消費および制限された基体寸法のような処理の種々の欠点を伴い得る。例えばドクターブレード(doctor blading)またはロールキャスト(roll-casting)のようなリニアキャスト(または直線成形、linear casting)法を用いることでこれらの問題を克服することが可能である。しかし、これらの方法は未だ堆積層のダイレクトパターンニングの可能性を欠いている。例えば光起電性構造をより大きな用途に統合するために、または光起電性デバイスの一体(monolithic)モジュールを製造するためにダイレクトパターンニングは有益であり得る。堆積層のパターンニングは、単一の基体(または基板)上に互いに接続された幾つかの光起電性デバイスを構成する可能性を与える。例えばインクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷またはオフセット印刷のような印刷方法は、これら方法の制限を解決することができる。上述の異なる堆積方法は、活性層化合物を含む溶液の物理特性に関し、かなり多彩な要件を有する。それらの方法の幾つかついては、例えば、溶液が低い粘性を有することが適当であるが、ところが他の蒸着方法は高い粘性レベルを要する。
これらの印刷方法によって、制限された厚さ(例えば1μm以下)の光起電性活性層を堆積し、同時により小さな表面粗さで所望の高品質の十分に連続したフィルムが得られるか明らかではない。さらに、他の用途への光起電性構造の優れた統合のために、または単一の基体上に互いに接続された幾つかの光起電性デバイスを構成するために、正確な線解像度(または線分解能、line resolution)およびエッジ解像力(edge definition)を要する。
米国特許公開公報第2005/0276910号では、有機層の厚さの均一性を改善するように1つの方法が記載されている。堆積した有機溶液の乾燥プロファイルは、高温でおよび/または高湿の後処理環境での乾燥したフィルムの後処理(pose-processing)により改善する。後処理は如何なる欠陥も満たすように有機材料のリフロー(reflow)を促し、従って、より均一でより平坦なフィルムプロファイルを形成する。あるいは、有機溶液の堆積後、そして乾燥している際に、高温および/または高湿に暴露する工程を含む処理を実施してもよい。有機層のパターンニングはフォトレジストラインまたはバンクを用いることにより得る。
本発明の目的は、例えば有機光起電性デバイスで光活性層として使用できる有機層の既知の技術の問題点を緩和または回避する製造方法を提供することである。本発明に係る有機層の堆積はリニア法 (または直線法、linier technique)、リニアキャストまたはリニアプリント法 (またはリニア印刷法、linear printing technique)により実施することができる。本発明の実施形態に係る方法を適用する場合、より小さい表面粗さを有する、所望の高品質の十分に連続したフィルムを得ることができる。さらに、直接パターンニングしたフィルムの直線解像度およびエッジ解像力は、既知の技術による解決法と比べ十分に改良することが可能である。本発明に係る如何なる方法も有機層の付加的な処理と更に組み合わせてこのような有機層を活性層として含む光起電性デバイスの性能を適正化してもよい。
この目的は、溶媒中に溶解している有機材料を含む溶液の層が乾燥する前に、この層をアニーリングする工程を実施することで達成される。このアニーリング工程は、溶液の堆積温度より高く、かつ溶媒の沸点よりも低い温度で実施してもよく、アニーリングの間に層が完全に乾燥しないように時間が制限される(例えば60秒より短い)。アニーリングは、層の粘性の低下をもたらし、この結果、層はリフローしてもよく、このようなアニーリング工程が実施されない場合と比較して表面粗さとエッジ解像力の十分な改善をもたらす。さらに、アニーリング工程後のこの層の乾燥は、堆積条件下での乾燥よりも遅く実行され、有機層での光の吸収の増加とこのような有機層を活性層として含む光起電性デバイスの効率の向上とをもたらすように制御してもよい。
本発明の実施形態にかかる、有機材料の層の製造方法は、堆積条件下で基体(または基板)に、溶媒中に溶解した有機材料を含む溶液の層を供給する工程と、溶液の層のアニーリング工程であって、溶液の層が完全に乾燥する前にアニーリングが実施され、アニーリングの継続時間が、溶液の層がアニーリングの間に完全に乾燥しないように制限され、これにより溶液の層のリフローを起こすアニーリング工程と、その後溶液の層を乾燥させる工程であって、堆積条件下で乾燥するよりも遅く乾燥が実施されるように制御されている乾燥工程とを含む。溶液の層が完全に乾燥されないことは、溶媒または溶媒の一部がまだ層内に存在することを意味する。溶液の層が完全に乾燥していないことは、溶媒または溶媒の一部が層中にまだ存在しているが、層がリフローするまたは凝固することを含む。比較において、溶液の層を乾燥させることは、例えば蒸発により、層から溶媒を実質的に完全に除去することを意味する。
本発明に係る実施形態では、溶液の層の乾燥は堆積条件に対応する温度より高く、溶媒の沸点より低い、例えば溶媒の摂氏での沸点の最大99%、最大90%、最大80%、最大70%、最大60%、最大50%、最大40%、最大30%または最大20%のような温度で実施してもよい。アニーリングの継続時間は、例えば60秒より短い、30秒より短いまたは10秒より短くてもよい。
好ましい実施形態では、溶液の層の乾燥は、対応する堆積条件の温度または例えば20℃と25℃との間の温度のような室温で実施してもよい。さらに、溶液の層の乾燥は、例えば溶媒が飽和した雰囲気のような、飽和雰囲気で実施してもよい。本発明の好ましい実施形態では、層を乾燥する温度はアニーリング工程を実施する温度より十分に低く、乾燥工程の継続時間はアニーリング工程の継続時間よりも十分に長い。
本発明の実施形態では、溶媒に溶解した有機材料を含む溶液の層を供給する工程は、スクリーン印刷工程で溶液が流れ出るのを防止するのに十分な高い粘性、例えば0.5Pa.sよりも高い粘性を有する溶液を供給する工程と、該溶液を基体に被覆する工程とを含んでよい。本発明の別の実施形態では、溶媒に溶解した有機材料を含む溶液の層を供給する工程は、有機材料を溶媒中に溶解する工程と、スクリーン印刷工程で溶液が流れ出すのを防止するのに十分な粘性、例えば0.5Pa.sよりも高い粘性、に達するまで待つ工程と、該溶液を基体に被覆する工程とを含んでよい。
本発明の実施形態では、溶液の体積当たり有機材料の重量が0.5%〜15%の範囲である溶液を供給してもよい。
例えばドクターブレード法またはロールキャスト法のようなリニア法 (または直線法、linear technique)もしくは印刷法を用いて溶液の層を供給してもよい。
本発明の実施形態に係る方法は、基体に溶液の層を供給する工程と溶液の層をアニーリングする工程との間に、溶液の層を部分的に乾燥させる工程を更に含んでもよい。本発明の実施形態に係る方法は、基体に溶液の層を供給する工程と溶液の層をアニーリングする工程との間に、溶液の層を部分的に乾燥させこれによりこの層を凝固させる工程を更に含んでもよい。凝固させることにより、この層が、例えば横方向の広がりについて、安定することになる。
有機材料は、例えば共役高分子(または共役ポリマー)、レジオレギュラ材料、またはポリ(チオフェン)であってもよい。有機材料はフラーレンおよび/またはフラーレン誘導体、共役添加剤(conjugated additive)または非共役添加剤(no-conjugated additive)を更に含んでもよい。
溶媒は、例えばテトラリンを含んでもよい。溶媒は溶媒の混合物であってもよい。
本発明に係る実施形態では、前記方法は、その上に溶媒に溶解した前記有機材料を含む溶液の層を後で供給する基体を供給する工程を更に含んでもよい。基体を供給する工程は、第1の電極を含む基体を供給する工程を含み、この方法は溶液の層を乾燥した後、有機材料の層の上部に第2の電極を供給する工程を更に含んでもよい。
本発明の実施形態に係る方法は、例えば太陽電池(または光電池、photovoltaic cell)、発光ダイオード、光センサー(または光検知器、photodetector)、トランジスタ、レーザーまたは記憶素子の一部である有機層を製造するのに用いてもよい。
図1は基体にスクリーン印刷した、P3HT溶媒を完全に蒸発させた後のフィルムを示す。(a)既知の方法に従い、アニーリング工程(リフロー)なし、(b)本発明の実施形態に従い、アニーリング工程(リフロー)があり、アニーリング工程は100℃で継続時間2秒である。 図2はレジオレギュラ共役高分子P3HTとPCBM分子との混合物を含むスピンコートおよびドクターブレードしたフィルムの光吸収スペクトル(紫外−可視光スペクトル)を示す。
本発明は、特定の実施形態により、および特定の図を参照することにより示されるがしかし、これにより制限されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ制限されるものである。図に示されているのは概略のみであり、制限を与えるものではない。図では、説明することを目的として、幾つかの要素の寸法が誇張され、縮尺比通りに示されていない場合がある。
さらに、明細書および特許請求の範囲の用語、第1、第2および第3等は類似する要素を区別するために用いたものであり、必ずしも逐次的なまたは時間的な順序を表すものではない。このように用いられている用語は適切な状況下で互いに置き換え可能であり、本明細書に記載した本発明の実施形態は本明細書に示したまたは説明した以外の他の順序でも実施可能であることを理解するであろう。
加えて、本明細書および特許請求の範囲の用語、上部、下部(または底部)、上、下等は説明を目的として使用しており、必ずしも相対的な位置を示すものではない。このように用いられている用語は適切な状況下で互いに置き換え可能であり、本明細書に記載した本発明の実施形態は本明細書に示した、または説明した以外の他の方向でも実施可能であることを理解するであろう。
特許請求の範囲で用いる用語「含む」は、そこに示された手段に限定されるものと解してはならず、その用語は他の要素または工程を排除するものではない。示された特徴、整数値(interger)、言及された工程または要素の存在を特定していると解すべきであり、1以上の他の特徴、整数値、工程または要素もしくはこれらのグループの存在を排除するものではない。従って、記述「手段AとBとを含む装置」の技術的範囲は要素AとBとのみから成る装置に限定してはならない。これは、本発明に関して、装置に関連ある要素はAとBのみであることを意味する。
本発明の実施形態に係る、有機材料の層の製造方法は、基体上に堆積(deposition)条件下で溶媒または溶媒の混合物に溶解した有機材料を含む溶液の層を供給する工程と、完全に乾燥する前に前記層をアニーリング(または焼鈍)する工程であってアニーリングの間に溶液の層が完全に乾燥しないように継続時間が制御されるアニーリング工程と、その後、堆積条件下よりも遅く乾燥が行われるように制御して前記層を乾燥する工程とを含む。完全に乾燥しないことは溶媒を全て除去することなしに層をリフローおよび凝固することを含み得る。必要に応じ、アニーリング工程を実施する前に、層を部分的に乾燥してもよい。
本発明の実施形態では、用語「基体(または基板)」は下に横たわる(underlying)如何なる材料またはデバイス、回路またはエピタキシャル層を形成するのに用いるまたはその上に形成することができる材料を含むことができる。基体は透明、半透明または不透明であってよい。基体はガラス、水晶、半導体(シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素等のような)、金属(プラチナ、金、パラジウム、インジウム、銀、銅アルミニウム、亜鉛、クロムニッケル等のような)、ステンレス鋼、プラスチックを含むことができる。基体は上述した基体材料に加えて、例えばSiOまたはSiのような絶縁層を含んでもよい。基体は、上述の基体材料に加えて、金属(プラチナ、金、パラジウム、インジウム、銀、銅アルミニウム、亜鉛、クロムニッケル等のような)、金属酸化物(酸化鉛、酸化錫、インジウム錫酸化物等のような)、グラファイト、ドープされた無機半導体(シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素等のような)およびドープされた導電性ポリマー(ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等のような)のような電極材料を含んでもよい。従って用語「基体」は層の下に横たわる層または部分を概して規定するのに用いられる。また、「基体」は、例えばガラスまたは金属層のような、層が形成される他の如何なるベース(または基礎)であってもよい。
溶媒または溶媒の混合物に溶解した誘起材料を含む溶液の層を基体に供給する工程は好ましくは、例えばリニアキャスト法またはリニアプリント法のようなリニア法(liner technique)を用いて実施できる。好ましい実施形態では、リニア法はドクターブレード法、ディップコート法(dip coating technique)、ウェブコート法(web coating technique)、スプレーコート法(spray coating technique)またはロールコート法もしくは例えば但しこれらに限定されるものではないインクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷のような印刷法である。このような印刷法は上面および側面を含むパターン、すなわち3次元パターンを形成することができ、好ましくは形成する。
堆積条件は、例えば大気圧の空気中で室温(例えば20℃〜25℃の温度)での堆積のような通常の雰囲気条件にすることができる。堆積は、また例えば大気圧のN中で室温でも実施することができる。他の堆積条件は、例えば他の雰囲気下での堆積、非大気圧または他の堆積温度を用いてもよい。
本発明に係るアニーリング工程は溶媒中に溶解した有機材料を含む溶液の粘性を低下させ、これによりこの層のリフローを促進する。「リフロー(reflow)」は、堆積表面、すなわち基体、での材料の再分配と定義できる。アニーリングは、好ましくは基体への層の堆積後でかつ堆積した層から溶媒が完全に蒸発する前に、すぐに又はできるだけ早く実施される。しかしながら、アニーリングは層が完全に乾燥していない限り実施することができる。リフローまたはアニーリングは、好ましくは堆積温度より高く、溶媒または溶媒の混合物の沸点よりも低い如何なる温度(たとえは摂氏で表す溶媒の沸点の99%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下)までの昇温工程を含んでもよい。アニーリング工程をできるだけ短くすること、即ち層がリフローするのに十分であるがしかしアニーリングの間に有機材料を含む層が完全に乾燥しないように長くないことは好都合である。好ましい実施形態ではアニーリング工程は60秒より短い間、好ましくは30秒より短い間、さらに好ましくは10秒より短い間実施される。さらに好ましい実施形態では、アニーリング工程は、数秒よりも長くない時間、好ましくは0.1〜10秒の間実施される。リフロー工程またはアニーリング工程の最適継続時間は、例えば有機材料と溶媒を含む溶液のリフロー下での化学および物理特性(例えば、沸点、粘性)ならびに、温度、湿度および圧力条件のような環境条件のような多くの条件に依存し、そして実験により決定することができる。好ましい実施形態では、アニーリングは例えば空気中またはN雰囲気中のような大気圧で実施することができる。リフローの継続時間は、当然ながらアニーリング中の温度上昇に依存する。温度上昇が大きい程、有機材料の層はより早く乾燥し、リフロー工程またはアニーリング工程はより短くなるであろう。より高い温度でより短いリフロー工程の方が、より低い温度でより長いリフロー工程より好ましい。リフローの継続時間も当然ながら湿度に依存する。湿度がより高い程、有機材料の層はより早くリフローする。
アニーリング工程の限定された継続時間を考慮すると、アニーリング工程は、例えば有機光起電性活性層の付加的な処理と干渉しない。
リフローまたはアニーリング工程は、既に部分的に結晶化している有機フィルム(即ちポリマー鎖が部分的に、規則化した結晶に整列する)が再びアモルファスフィルム(即ちポリマー鎖が規則化した配列を有しない)に転移するように、行うことができる。層の粗さを変えることができるように、好ましくはリフローが層の堆積後できるだけ早く実施され、好ましくは層の堆積の直後である。
本発明に係るアニーリング工程またはリフロー工程は、有機層または有機フィルムのマクロ品質を顕著に改善し、より小さい表面粗さと正確なライン解像度およびエッジ解像力を備えた十分に連続したフィルムが得られる。「マクロ品質(macro quality)」は、表面粗さ、線解像度(またはライン解像度)の精度およびエッジ解像力の尺度である。フィルムの表面粗さは、フィルムの対象とする表面からフィルムの表面に沿って引かれた線の平均距離(絶対値の平均)と定義できる。本発明の実施形態に従って製造された有機材料の層の表面粗さは、フィルム厚さの10%より小さく、5%より小さくまたは1%より小さくできる。フィルムのエッジ解像力は、パターンの対象とするエッジからパターンのエッジに沿って引かれた線の平均距離(絶対値)と定義することができる。本発明の実施形態に従って製造された有機材料の層のエッジ解像力は1mmより小さく、100μmより小さく、10μmより小さく、または1μmより小さくすることができる。
アニーリング工程の後、本発明の実施形態に従い、層は制御されて更に乾燥される(即ち、堆積条件下での乾燥と比較して、乾燥がより遅くなるように)。フィルムのより遅い乾燥はフィルムのより優れたミクロ品質をもたらす。堆積条件での溶媒の蒸発速度と比較して溶媒の蒸発速度を低くすることにより層の乾燥時間の制御を好都合に実施することができる。堆積条件に対して、例えば乾燥温度(例えば堆積温度よりも低い乾燥温度)、乾燥圧力(例えば堆積圧力よりも高い乾燥圧力)、環境の湿度または飽和雰囲気での乾燥の実施のような1以上の環境パラメータのような乾燥条件を変更することにより、これを得ることができる。好ましい実施形態では、層の乾燥は大気圧および室温(例えば20℃〜25℃の間の温度)および飽和した雰囲気(例えば溶媒により飽和した雰囲気)で実施することができる。
層の乾燥時間または溶媒の蒸発時間もまた、例えばリニアキャスト法のような直線法を例えば選択することにより制御することが可能である。伝統的なスピン法(spin-on technique)では堆積工程と乾燥工程とは少なくとも部分的に同時に存在しているが、リニアキャスト法では堆積工程と乾燥工程とは通常分かれた、逐次的な工程である。
アニーリング工程の後に実施する乾燥工程は、好ましくは溶媒の蒸発の減速(堆積条件下の蒸発と比較して)、従って堆積条件下の乾燥と比較してフィルムの乾燥の減速を少なくとも1つ含む所定の乾燥スキーム(または手順、scheme)に従う。少なくとも1つの減速の後に必要に応じ多くの(1以上の)加速および減速があってもよい。乾燥スキームは層のミクロ品質が最適になるように決定してもよい。層のミクロ品質は層内部の微細構造、即ちどのように分子が整列しているかと関係しいている。高いミクロ品質は層の分子の高度な整列に対応し、微晶質(microcrystalline)フィルムの獲得をもたらす。本発明に係る所定の実施形態では堆積条件下より遅く乾燥するような条件下でのフィルムの乾燥は層の吸収スペクトルの最適な値(例えば太陽電池にとって適切な吸収スペクトルまたは最高の吸収スペクトル)が得られるまで行ってよい。層の吸収スペクトルは、例えば層の分子の整列度合のような層のミクロ品質と関係する。フィルムの遅い乾燥は、早く乾燥または堆積条件下で乾燥した場合よりも層のより優れたミクロ品質をもたらし、従って遅い乾燥は、早い乾燥または堆積条件下での乾燥と比べて、より高いまたはよりブロードな吸収スペクトルをもたらす。乾燥スキームは例えば太陽電池用の有機活性層の適切な光吸収スペクトルを与えるように又はより長い波長領域で太陽光発電用の有機層の光吸収スペクトルの増加を促進するようにして最終の太陽電池の性能にとって利点となるように最適化することができる。最適の乾燥スキームは実験的に決定することが可能である。
活性層の材料の適切な溶媒または溶媒の混合物(即ち活性層の材料が容易に溶解する溶媒または溶媒の混合物)への溶解と、リニアキャストまたはプリントのような堆積法およびそのパラメータの制御とを組み合わせて、これにより例えば国際公開公報第WO2004/025746号に開示されているような旧来の(obsolete)のフィルムが完全に乾燥した後の温度処理のような上述の付加的な処理を行うことが可能である。しかしながら、最終の結果物の劣化なしに、この方法と組み合わせて、その後に本発明に係る遅い乾燥が続く上述のアニーリング工程を実施することができる。
有機材料を伴うとはカーボンを含む材料を意味する。本発明の実施形態に係る層の製造に用いる有機材料は、例えば電子のアクセプタである材料および/または電子のドナーである材料を含むことができる。有機材料は電子のアクセプタ材料および電子のドナー材料の混合または組み合わせであってもよい。有機材料の層は、太陽電池用途に用いるのに適切であろうが、しかしまた、例えばOLEDトランジスタ、レーザー、フォトトランジスタ、光センサー、オプトカプラ(または光カプラ)のような他のデバイスに用いるのも適切であろう。有機材料は目的とする用途に適した材料でなければならない。本発明の実施形態では、有機材料はテトラリン(THN)に可溶であってもよい。有機材料はポリマーを含んでもよく、また共役高分子であってもよい。有機材料はレジオレギュラ材料を含んでもよく、またレジオレギュラ材料であってもよい。レジオレギュラ材料は、同じ方向を向いた所定の構成単位の一定の繰り返しにより形成された材料である。概して、レジオレギュラと考えられている材料では、構成単位の3パーセント以下、好ましくは1パーセント以下が構成単位の大多数の方位と異なる方位であるべきである。有機材料はポリ(チオフェン)を含んでもよく、またポリ(チオフェン)であってもよい。有機材料はフラーレンおよび/またはフラーレン誘導体を更に含むことができる。有機材料は共役添加剤を更に含むことができる。共役添加剤は、例えば電気伝導性のような、例えば電気的機能を有することができる。非共役添加剤は、例えば印刷(またはプリント)法に関する機能を有することが可能である。これらは例えばレオロジー(または流動学)、即ち例えば溶液の粘性のような物質の変形および流れに関した特性、を制御するのに用いることができ、またはこれは、例えば堆積した溶液の紫外線硬化を行うのに用いることができる。これらは更に、堆積した層の接触角度、親和性、乾燥、希釈等に影響を与える。
本発明に係る方法は、溶液処理を行うのに適した材料または材料の組み合わせに広く適用可能である。例えば、Harald Hoppe and Niyazi Serdar Sariciftciによる"Organic Solar Cells: An Overview" Journal of Materials Research, Vol. 19, Nr 7, July 2004, pp. 1924-1945, Chapter II, "Materials"に示される材料は、本発明に係る方法に用いるのに適した特性を有している。このような適切な材料の例は以下の通りである。

・分子材料 例えば、ZnPc(亜鉛−フタロシアニン)、MePtcdi(N,N’−ジメチル−ペリレン−3,4,9,10−ジカルボキシミド)、C60、ペンタセン、オリゴメリックチオフェン、これら分子材料の誘導体化した化合物。

・正孔伝導ドナー型ポリマー 例えば、MDMD−PPV(ポリ〔2−メトキシ−5−(3,7−ジメチルオクチロキシ)〕−1,4−フェニレン−ビニレン)、P3HT(ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジキシル))、PFB(ポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−ブチルフェニル)−ビス−N,N’−フェニル−1,4=フェニレンジアミン)。

・電子伝導アクセプタポリマー 例えば、CN−MEH−PPV(ポリ−〔2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシロキシ)−1,4−(1−シアノビニレン)−フェニレン〕)、F8TB(ポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−コ−ベンゾチアジアゾール))、C60の可溶性誘導体、即ちPCBM(1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル〔6,6〕C61
これらの材料は全てその側鎖の可溶化に起因して溶液処理可能である。有機ポリマーは、例えば共役の繰り返しユニット(もしくは単位または構成単位)を有するポリマー、とりわけポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリチオフェンビニレン、ポリ(3−アルキル)チオフェン、ポリフルオレンまたはポリ−p−フェニレンビニレン、またはこれらの族(またはファミリー、family)、共重合体、誘導体、もしくはこれらの混合物のような隣接する繰り返しユニットが共役により結合しているポリマーであることができる。より詳細には、有機ポリマーは例えば、ポリフルオレン;ポリ−p−フェニレンビニレン、2−または2,5−が置換されたポリ−p−フェニレンビニレン;ポリスピロポリマー;またはこれらの族、共重合体、誘導体もしくはこれらの混合物であることができる。有機ポリマ−は例えば電荷輸送が可能な材料を含むことができる。電荷輸送材料は電荷キャリアを輸送できるポリマーまたは小分子を含む。例えば、ポリチオフェン、ポリチオフェン誘導体、オリゴメリックポリチオフェン、オリゴメリックポリチオフェン誘導体、ペンタセン、C60を含む組成物およびC60誘導体を含む組成物のような有機材料を用いることができる。
本発明の実施形態に係る有機層の製造方法にとって、例えば61℃より高い、80℃より高い、100℃より高い、101℃より高い、110℃より高い、150℃より高いまたは200℃より高い沸点を有する溶媒のような高い沸点を有する溶媒が好ましい。溶媒のより高い沸点は、同じ温度および雰囲気で、蒸発をより遅くし、従ってフィルムの乾燥をより遅くするであろう。溶媒は、例えばテトラリン(206℃の沸点を有する)を含んでもよい。溶媒は個々の溶媒の混合物であることが可能である。個々の溶媒は、テトラリン、テトラヒドロフラン、キシレン、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン等を含むことができる。
本発明の1つの態様はまた、溶媒に溶解した有機材料または有機化合物を含む溶液の粘性を制御する方法を提供することでもある。溶媒中に溶解している有機化合物の粘性は、温度、溶媒の選択、撹拌または他の適切な方法を解して制御することができる。このようにして、異なるリニアキャストまたはプリント法に適する、例えば溶媒または溶媒混合物に溶解している光起電性活性層材料のような有機材料の溶液を作ることができる。フィルム品質を改善する、本発明の第1の態様の上述のアニーリング工程は、またこのように粘性を制御した溶液の堆積により得られる、例えば光起電性活性層のような有機材料にも適用することができる。本発明の第2の態様に係る粘性を制御した溶液は、本発明の第1の態様の実施形態に係る方法とともに用いることができる。
好ましい実施形態では、溶液は、例えば0.5Pa.sよりも高い粘性のような、スクリーン印刷で溶液が流れ出るのを防止するのに十分に高い粘性を有する。溶液は例えば溶媒中に有機材料を溶解することにより製造され、例えば.5Pa.sよりも高い粘性のようにスクリーン印刷で溶液が流れ出るのを防止するのに十分に高い粘性に溶液が達するまで待ってもよい。溶液の体積当たりの有機材料の重量の比率(w/v)は好ましくは、下限として0.5%または1%または2%、上限として5%または6%または7%または8%または9%または10%または15%の間の範囲である。
本発明の実施形態に係る方法は、例えば太陽電池、発光ダイオード、光センサー、トランジスタ、レーザーまたは記憶素子の一部として有機層を製造するために用いてもよい。
光起電性の用途
本発明の実施形態に係る方法により製造された有機材料の層は太陽電池の製造に好都合に用いることができる。太陽電池を製造するためのこのような方法は、好ましくは基体に第1の電極を供給する工程と、堆積条件下で基体とこの電極とに、溶媒に溶解した有機材料を含む溶液の層を供給する工程と、この層が完全に乾燥する前に溶液の層をアニーリングする工程であって、前記層がアニーリング中に完全に乾燥しないように、従って乾燥が堆積条件下よりも遅く実施されるように層の乾燥を制御するように更に時間が制限されるアニーリング工程と、有機材料の乾燥した層の上部に第2の電極を供給する工程とを含む。
より詳細には、本発明に係る方法は、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)のようなポリチオフェンをベースとする有機太陽電池の活性層の堆積について興味深いことを示す。この材料をテトラヒドロナフタレン(THN、テトラリン、約206℃の沸点を有する)のような高沸点の溶媒に、体積当たりの重量のパーセント(w/v)が1%〜5%の範囲に対応する濃度で溶解することは、スクリーン印刷によりこの溶液を基体に堆積することを可能にする。しかしながら、これにより最終的に連続した層を形成するようにスクリーンの離れたホールに溶液を押し通す必要がある工程の不連続な特性と場合により低い溶液の粘性とは、溶媒の従来の方法に係る蒸発の後に層の全体として低い品質をもたらす。
基体に溶液を堆積した後、例えば約100℃で溶液のリフローに十分であるがしかし溶液が完全に乾燥しないように十分に短い時間、例えば2秒、本発明の実施形態に従い温度硬化またはアニーリング工程を実施することで、マクロ品質とミクロ品質の両方について層品質の十分な改善が得られる。このようなフィルムに適用する従来の方法と比較してフィルムの表面粗さが少なくとも50%減少し、パターンのエッジ解像力は顕著に優れ(少なくとも50%優れている)、そしてフィルムはミクロンスケールで分子の改善した整列を示す。本発明の実施形態に係るアニーリング手順を行わずに製造した層(図1(a))と行って製造した層(図1(b))とを溶媒の完全蒸発後のデジタルスキャンにより図1に示す。
同様の結果はフラーレン誘導体のような材料も付加的に溶解しているTHN中のP3HTの溶液において得ることができる。固体状態の活性層中のP3HTとフラーレン誘導体との材料の組み合わせは非常に性能が優れた有機太陽電池をもたらすことが広く知られている。
ポリマーの主鎖上で側鎖が特定の方位を占めるポリチオフェンのレジオレギュラリティーは、例えば整列(またはアライメント、alignment)のような離れたポリマーの互いの所定の相互作用(立体効果)を生ずることが可能である。これは溶液の中においても生じることが可能であり、単に時間とともに進行する。この過程は溶液の色の顕著な赤方偏移(またはレッドシフト)によりモニターすることができる。これは時間とともに溶液の粘性の上昇を伴う。これによりスクリーン印刷工程で溶液の流れ出しが防止できるように、例えば0.5Pa.sよりも高い粘性レベルのような粘性レベルを得ることが可能となる。この手順は溶液をスクリーン印刷のような技術を用いた方法にとってより適切にする。再び初期のより低い粘性を得るように溶液を加熱することによりこの手順を単純に逆転(または逆行、reverse)させることができる。この逆転の効果は、スクリーン印刷よりも他の堆積方法により適した溶液の粘性レベルをもたらす。この逆転は溶液の赤方編移した色の消失を伴う。
本発明の実施形態に係るアニーリング工程の堆積した溶液への適用は、光起電性活性層の層品質の改善をもたらす。アニーリング手順の層のミクロ品質への効果は、堆積する溶液が高粘性レベル(例えば0.5Pa.sよりも高い粘性)の場合、堆積した層の色の変化により明白にモニターされる。粘性の高い溶液の赤方編移した色は堆積した層のアニーリングにより消失する。このことは、本発明の実施形態に従い、堆積したままのフィルムに相当量の溶媒がまだ残っている時に実際に手順が適用されていることを示している。この色の変化は通常、溶液中のポリマー材料の非晶配向が起こっていることを示し、これにより異なるポリマー鎖はもはや互いに強く相互作用しない。制御した状態でのその後の溶媒の完全な蒸発は起電性活性層の改善された層品質を備えた固体フィルムをもたらす。
アニーリング工程を短い時間間隔に制限する可能性は、アニーリング工程と最終の光起電性デバイスの性能を最適化する光起電性層の付加的な処理との互換性を高くする。しかしながら、リニアキャストまたはプリントのような堆積法とそのパラメータの制御とを組み合わせた適当な溶媒または溶媒混合物中での活性層材料の溶解は、これにより例えばフィルムが完全に乾燥した後の熱処理のようないくつかの付加的な処理を不要なものにする。
堆積した層からの溶媒の蒸発速度および時間を制御することにより、より長い波長領域において光起電性層の放射線吸収の広がり(またはブロードニング)を促すことが可能である。これは、また層品質も改善する。より遅い蒸発速度はこれにより長い波長領域の強力なブロードニングを生じるのに対して、溶媒の早い蒸発は、より長い波長領域において吸収が減少する光起電性活性層をもたらす。例えば、環境温度および雰囲気の制御のような最先端の方法に加えて、リニアキャスト法または印刷法のような堆積方法ならびにその堆積速度および圧力のような堆積(またはデポジション)パラメータの制御と組み合わせて活性層材料を適切な沸点(即ち、好ましくは摂氏61度、摂氏80度、摂氏100度、摂氏101度、摂氏110度、摂氏150度、摂氏200度より高い沸点)を有する適切な溶媒または溶媒混合物に溶解することにより溶媒の蒸発時間または溶液の乾燥速度もまた制御することができる。スピンコートと異なり、リニアキャストまたは印刷法では、活性層材料が溶解する溶媒または溶媒混合物を適切に選択することにより溶媒の蒸発を十分に制御することが可能である。これにより、より高い沸点の溶媒または溶媒混合物を用いた場合、蒸発速度を遅くすることができる。このようにして、リニアキャスト法または印刷法と組み合わせて適切な溶媒または溶媒混合物を使用することにより、より長い波長領域において光起電性活性層の吸収の増加が制御される。
以下の実施例において、リニアキャスト法であるドクターブレード法により堆積した厚さ150nmのフィルムと回転をベースとする方法であるスピンコート法により堆積した同じフィルムとを比較している。太陽電池デバイスに用いた堆積させた混合物は、オルトジクロロベンゼン+2.5%(体積%)テトラヒドロナフタレン混合物に溶解した1.5%(重量/体積)の重量比1:2のレジオレギュラ共役高分子P3HTと分子PCBMとのブレンドを含んでいた。スピンコートによるフィルムは1000rpmで60秒間堆積した。ドクターブレードによるフィルムはブレード速度80mm/秒で堆積した。製造した活性層フィルムの紫外−可視(UV−Vis)スペクトルを図2に示す。文献において、この材料システムのUV−Vis吸収スペクトルと有機太陽電池の性能との間に関連があることが報告されている。スピンコート法により堆積したフィルムと比べて、ドクターブレード法により堆積したフィルムは望ましいより広い吸収帯を示している。これは、ドクターブレードしたフィルムの場合、スピンコートしたフィルムと比較して蒸発速度がより遅いことに起因し得る。
蒸発速度は、例えばスピンコート法よりもリニアキャスト法により、より良く制御可能な環境パラメータ(ambient parameter)に依存することから、リニアキャスト法の適用は溶媒の蒸発速度の優れた制御を可能にする。例えばスピンコートに適した温度範囲がリニアコート法よりも狭いように、リニアキャスト法は、工程の自由度をより高めることができる。さらに例えばレジオレギュラ共役高分子を含むような、有機デバイスの活性層を製造するのに、リニアキャスト法はスピンコートと比べ、蒸発速度を低減することが可能である。このことは、回転をベースとするキャスト法と比べて吸収スペクトルのブロードニングをもたらす。
上述した方法は上述の光発電に限定されるものはなく、より小さい表面粗さと高品質の線解像度およびエッジ解像力とを備えた薄いフィルム、即ち1μmより薄いフィルム、が堆積される、例えば有機発光ダイオード、光センサー、トランジスタ、レーザー、記憶素子のような多くの用途に関する。

Claims (23)

  1. 有機材料の層の製造方法であって、
    堆積条件下で基体に、溶媒中に溶解した前記有機材料を含む溶液の層を供給する工程と、
    前記溶液の層のアニーリング工程であって、前記溶液の層が完全に乾燥する前に前記アニーリングが実施され、前記アニーリングの継続時間が、前記溶液の層がアニーリングの間に完全に乾燥しないように制限され、前記アニーリングが前記溶液の層のリフローを生じさせるアニーリング工程と、
    その後に前記溶液の層を乾燥させる工程であって、堆積条件下で乾燥するよりも遅く前記乾燥が実施されるように制御される乾燥工程と、
    を含むことを特徴とする製造方法。
  2. 前記堆積条件が堆積温度を含み、前記溶液の層のアニーリング工程が前記堆積温度より高くかつ前記溶媒の沸点より低い温度で実施されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記アニーリング工程の継続時間が0.1秒〜60秒の間であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記堆積条件が堆積温度を含み、前記溶液の層の乾燥工程を前記堆積温度で実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記溶液の層の乾燥工程を20℃〜25℃の間で実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記溶液の層の乾燥工程を飽和雰囲気で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 溶液の層を供給する工程が、粘性が0.5Pa.sより高い溶液を供給する工程と基体に溶液を被覆する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 溶液の層を供給する工程が、前記溶媒に前記有機材料を溶解する工程と、前記溶液の粘性が0.5Pa.sより高くなるまで待つ工程と、前記溶液を基体に塗布する工程とを含むことを特徴する請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 溶液の層を供給する工程が、溶液の体積当たりの有機材料の重量の比率が0.5%〜15%の間である溶液の層を供給する工程を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 前記基体に溶液の層を供給する工程がリニア法を用いて前記層を供給する工程を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記リニア法がドクターブレード法またはロールキャスト法または印刷法であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
  12. 基体に溶液の層を供給する工程と溶液の層のアニーリング工程との間に前記溶液の層を部分的に乾燥する工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 前記有機材料が共役高分子であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
  14. 前記有機材料がレジオレギュラ材料であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。
  15. 前記有機材料がポリ(チオフェン)であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。
  16. 前記有機材料がフラーレンおよび/またはフラーレン誘導体を更に含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の製造方法。
  17. 前記有機材料が共役添加剤を更に含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。
  18. 前記有機材料が非共役添加剤を更に含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の製造方法。
  19. 前記溶媒がテトラリンを含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の製造方法。
  20. 前記溶媒が溶媒の混合物であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の製造方法。
  21. 基体を供給する工程であって第1の電極を備えた基体を供給する工程と、溶液の層を乾燥させる工程の後に前記有機材料の層の上部に第2の電極を供給する工程とを更に含むことを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の製造方法。
  22. 太陽電池、発光ダイオード、光センサー、トランジスタ、レーザーまたは記憶素子の一部である有機層を製造するための請求項1〜21のいずれかに記載の製造方法の使用。
  23. 請求項1〜21のいずれかに記載の製造方法により得ることができる有機層を含む太陽電池、発光ダイオード、光センサー、トランジスタ。レーザーまたは記憶素子。
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