JP2009535308A - エリスロポエチンの硝子体投与 - Google Patents

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Abstract

網膜疾患を治療する及び/又は予防するための治療組成物は,硝子体内にまたは経強膜に投与されるエリスロポエチンを含む。

Description

本発明は,糖尿病網膜症と,血液網膜関門(BRB)障害,又は,網膜血管細胞,グリア細胞,神経細胞,もしくはRPE細胞の細胞死が原因で起こる疾患である,多様な網膜疾患を治療する及び/又は予防するための方法と組成物に関する。
糖尿病網膜症(DR)は20歳から70歳の人間の失明の主な原因である。DRの直接的な原因はまだわかっていない。DRは糖尿病における単に微少管合併症であるという考えはここ数年異議を唱えられてきている。網膜中の全種類の細胞は,糖尿病の初期段階ですでに,疾患過程の多様性に関係があるということは証明されている。BRBの破壊及び視覚障害など,DRに早く見られる臨床的特徴は,人間において,この考えを支持している。DRに伴う緩やかな,しかし高進的な悪化から,DRの治療はDRがもはや治療不可能である段階に達する前になされるべきである。しかしながら,すべての既存の治療は,病理学により元に戻せない網膜血管及び神経細胞死であることが明示されているほどDRがかなり進んだ状態に対して行われている。また,視覚機能,もしくは血管漏出をわずか改善させる治療法は存在するが,ほとんどの治療が疾患の進行をくい止めるためだけに行われている。
本発明は,血液網膜関門(BRB)障害と網膜血管,グリア,もしくは神経細胞の死,又は網膜色素上皮細胞死が原因である,糖尿病網膜症及び/又は哺乳動物の眼の他の網膜疾患の治療方法及び/又は予防方法に関する。本発明は,哺乳動物の眼の網膜疾患による失明を遅らせる方法にも関する。前記方法は哺乳動物の眼の硝子体にエリスロポエチンを硝子体内(又は経強膜)投与する工程を含む。
本発明のある側面において,硝子体内に(又は経強膜に)投与されるエリスロポエチンの量は,血液網膜関門の破壊を実質的に阻害する,又は網膜血管,グリア,もしくは神経細胞,もしくは網膜色素上皮細胞,もしくは脈絡毛細管上皮細胞のうち少なくとも1つのアポトーシスを実質的に阻害するのに有効な量であってもよい。本発明の更なる側面は,投与されるエリスロポエチンの量は硝子体内に(又は経強膜に),哺乳動物の眼の硝子体に供給されるのに有効な量であってもよい。この場合,エリスロポエチンの濃度は人間の眼の硝子体体積(例えば約4.0−4.5ml)に対して約0.33ng/μlから約13.33ng/μlである。他の側面では,成人の眼に対して投与される前記エリスロポエチンの量は,一眼あたり約1.33μgから約60μg,又は一眼あたり約0.23ユニットから約9.2ユニット(例えば,一眼あたり約2.3ユニット)である。
エリスロポエチンはヒト組み換えエリスロポエチン,その変異体(variant)又はその類似体(mimetic)を含んでもよく,硝子体内注射によって哺乳動物の眼に投与することが可能である。また,エリスロポエチンは,糖尿病網膜症が検出された際,及び/又は糖尿病網膜症の発症後,血液網膜関門の破壊を阻害するために,又は網膜血管,グリア,もしくは神経細胞,もしくは網膜色素上皮細胞,もしくは脈絡毛細管上皮細胞の少なくとも1つのアポトーシスを阻害するために眼に一時的に投与することができる。
本発明は,糖尿病網膜症及び血液網膜関門(BRB)の障害,及び/又は網膜血管,グリア,もしくは神経細胞,もしくは網膜色素上皮細胞,もしくは脈絡毛細管上皮細胞のうち少なくとも一つのアポトーシスが原因である他の網膜疾患の治療のために,哺乳動物の眼の硝子体に投与される薬剤を製造するためのエリスロポエチンの使用にも関する。本発明のある側面において,薬剤は硝子体内又は経強膜に注射するための組成物を含んでもよい。注射剤の組成物として用いるEPOは,ヒト組み換えエリスロポエチンを含んでもよい。組成物は,哺乳動物の眼の血液網膜関門の破壊を実質的に阻害する,及び/又は網膜血管,グリア,もしくは神経細胞,もしくは網膜色素上皮細胞,もしくは脈絡毛細管上皮細胞のうち少なくとも一つのアポトーシスを実質的に阻害するのに有効なエリスロポエチンの量を含んでもよい。本発明のさらなる側面として,組成物は,哺乳動物の眼の硝子体に人間の眼の硝子体体積に基づいて,約0.33ng/μlから約13.33ng/μlのEPO濃度を提供するために有効なEPO量を含んでもよい。他の側面として,組成物は1眼あたり約1.33μgから約60μgのEPO,又は1眼あたり約0.23ユニットから約9.2ユニット(例えば,1眼あたり約2.3ユニット)を含んでもよい。
図1(A−B)は,糖尿病発症後4週間に硝子体内EPO治療有り又は無しの糖尿病ラットの血液中グルコースレベル(A)及び体重(B)を示すプロットである。各データ点はn≧7,平均値±S.E.で表されている。(●)は糖尿病でないコントロールラット;(○)はEPO治療を受けていない糖尿病ラット;(▼)は糖尿病発症日に1回硝子体内EPO注射(一眼あたり50ng)をした糖尿病ラットである。偽注射(生理食塩液)はコントロールラットと糖尿病ラットの両方に行った。
図2は糖尿病発症2週間後のSTZ糖尿病ラットの網膜内へのエバンスブルー−アルブミン浸透に対するインスリンとEPOの影響を示すグラフである;Cは糖尿病ではないコントロールラット;Dはインスリン未処理の糖尿病ラット;E−Iはインスリン注射をしていないが,EPOで処理をした糖尿病ラット;E+IはインスリンとEPO両方で処理をした糖尿病ラットである。両方のEPO処理群に対して,EPOを硝子体(一眼あたり5ng)に注入した。偽注射(生理食塩液)はコントロールラット群と糖尿病ラット群の両方に行った。E+I群においてインスリンは血中グルコースレベルが高レベルで維持されるように,皮下注射によって低投与量(4IU/週)投与した。インスリンで処理をしたラットとインシュリン処理をしていないラット間で有意差は見られない(n=6,P>0.05)。
図3は異なる投与量のEPOで処理をしたSTZ糖尿病ラットの網膜内へのエバンスブルー−アルブミン(EBP)の経時変化を示すグラフである。3種類のEPOの投与量(5,20,50ng)を試験した。偽注射(生理食塩液)は,健常ラット群と糖尿病ラット群の両方に行った。各データ点は平均値±S.E.として表した。各群のサンプル数は7又はそれ以上である。*がついた全ての群は糖尿病群と有意に異なり(p<0.05),#がついた全ての群は糖尿病群と比べて有意差はない(p>0.05)。
図4はSTZ糖尿病ラットに対するEPOによる用量依存的保護作用を示すグラフである。異なるEPO投与量(0.05〜200ng)を,糖尿病発症時に硝子体内に注射した。偽注射(生理食塩液)はコントロールラットと,糖尿病ラットの両方に行った。ラットは処理2週間後に屠殺した。各点は6匹のラットからの平均値±S.E.を表している。
図5はSTZ糖尿病ラットにおけるEPOの硝子体内への注射による網膜の厚さを示すグラフである。EPO投与群に対するEPO投与量は1眼当たり50ngである。偽注射(生理食塩液)は非糖尿病コントロールラットと,糖尿病ラットの両方に行った。3匹のラットを4週目まで各週屠殺した;代表的な部分をここに示した。Cは糖尿病でないコントロールラット,Dは糖尿病ラット,EはEPOを投与された糖尿病ラットである。網膜の厚さは倍率200Xの下,H/E染色されたサンプルを測定した。
図6はSTZ糖尿病ラットにおいて,EPOが,網膜神経細胞,グリア細胞,ミューラー細胞,及び血管内皮細胞の死(loss)を防ぐことを示すグラフである。EPO投与群に対してEPOの投与量は1眼あたり50ngだった。糖尿病ラットと非糖尿病コントロールラットには偽注射(生理食塩液)を行った。各群の3匹のラットを4週眼で屠殺した。異なる層における網膜神経の数は,(各ラットの12の切断面(Section)から同じ方向に体系的に数えた。つまり,各ラットの12部分(各眼から6)を調べた。幅25umの細胞核を数えた。そのため,各データ点は各群からの72数の平均値±S.E.を表す。倍率1000X下でHE染色された細胞核は細胞の数として数えた。C:非糖尿病コントロールラット,D:糖尿病ラット,E:EPO処理した糖尿病ラットである。糖尿病ラットの網膜のONLにおける細胞数は有意に低下し(n=12,p<0.001),EPO処理によって完全に回復した(n=12,p<0.001)。INLに関しては,EPO処理したラットにおける細胞数は糖尿病ラットの細胞数よりも有意に高かった(n=12,p<0.001)。
図7はTUNEL染色により検出された,EPO網膜神経細胞の死を防ぐことが可能であることを示した代表的な顕微鏡写真である。糖尿病ラットは,50ng/眼の投与量で,EPO(E)の単回硝子体内注射で処理した。偽注射(生理食塩液)は,非糖尿病コントロールラット(C)と糖尿病ラット(D)の両方に行った。文字の後ろの数字‘n’は糖尿病発症後の週数を表す。すなわち,Cn:n週のコントロールラット,Dn:n週の糖尿病ラット,En:n週のEPO処理糖尿病ラット。
図8はコントロールラット,EPOの硝子体内注射処理した又は処理していない,コントロールラット及び糖尿病ラットの異なる網膜細胞の代表的な電子顕微鏡写真である。C:非糖尿病コントロールラット,D:糖尿病ラット,E:EPO(50ng/眼)処理した糖尿病ラットである。ラットは糖尿病発症一週間後に屠殺した。図は網膜血管内皮細胞(en−C,en−D,及びen−E,9700X),網膜色素上皮細胞(rpe−C,rpe−D,及びrpe−E,5800X),桿体及び錐体外節層細胞(outer segment layer cells)(r/c−C,r/c−D,及びr/c−E,9700X),及び外顆粒層細胞(ONL,onl−C,及びonl−D,onl−E,5800X)における変化を示している。糖尿病によって起こった変化は矢印で示され,アポトーシス性血管内皮細胞,血管内皮細胞周辺の浮腫と浸出液(en−D),ブルッフ膜(BM)の破裂,及びRPEとBMの間に広がった空間内のコラーゲンの蓄積(r/c−D),及びONL内の明らかな核濃縮(onl−D)が見られる。EPO処理ラットにおいては,これらの変化を大いに防ぐことができた。
図9は健常ラットへの硝子体内注射後における,硝子体内のEPOの排出半減期を示すプロットである。硝子体中のEPOはエライザで検出した。各データ点は二つのサンプルの繰り返し測定した平均を示す。
図10はEPO,又は生理食塩水で処理した糖尿病ラットの網膜内のエバンスブルー・アルブミン浸透を示す。*p<0.05,n=6である。
図11はSTZ処理ラットにおける,TUNEL染色による網膜細胞のアポトーシスの検出を示す。C:コントロールラット,D:糖尿病ラット,E:EPO処理ラットである。n/mの数:硝子体内注射はn週目に行い,サンプルは糖尿病発症後m週目で採取した。Ex:EPO投与量はxmU/眼である。
図12はEPO(32mgU/眼)で処理した,又は処理しなかったSTZラットの網膜の厚さとONL細胞数を表す。C:健常ラット,D:糖尿病ラット,E:EPO(32mgU/眼)を処理した糖尿病ラット。糖尿病群と比較したとき,*p<0.05である。
図13はEM下で観察された網膜の形態学的特徴を示す。EPOを糖尿病発症1週間後のラットに投与し,その1週間後,ラットを屠殺した。en:内皮細胞(9700x),inl:内顆粒層(5800x),onl:外核層(5800x),r/c:杆錐状体層(9700x),rpe:網膜色素上皮細胞(5800x)。糖尿病の網膜においての変化は異なるシンボルで印を付けた。EPOの投与によってこれらの変化は有意に改善した。{かんすい じょう たいそう}
図14はEPO注射1カ月後と2週間後のウサギの細隙灯検査と眼底検査による写真である。EPOを注入した眼とNSを注入した眼では違いは見られない。炎症,白内障,又は網膜症の兆候は見られなかった。
図15にはEPOの硝子体内注射2週間後と1カ月後のウサギにおけるFFA実験を示す。眼底において,有意な漏出はない。LT:カラービュー;RT,LL,及びRLは染色液注射後の異なる時間におけるカラーの眼底検査を示す。
図16はEPO硝子体内注射のウサギのERG実験を示す。A(1000U/眼);B(100U/眼);C(10U/眼);D(0.6U/眼,繰り返し注射)。硝子体内注射後1週間内にb波の高さのピークが一つ見られ,その後,健常レベルに戻る。EPOを注射した眼とNSを注射した眼とでは違いは見られない。
図17はITV後のウサギの網膜における組織学的研究の結果を示す。A:ONLの網膜の厚さ,B:IPLにおける網膜の厚さ,C:ONLの細胞数である。
図18は光学顕微鏡検査によるウサギの網膜の組織学的観察を示す。EPO(10U,100U,1000U)を注射した眼とNSを注射した眼との間では有意差は見られない。つまり,EPOの硝子体内注射は少なくとも2カ月は安全(2カ月間のデータは示していないが,実験は正しく完了した)である。
図19は異なる溶媒緩衝EPOで処理したSTZ糖尿病ラットの網膜内における,エバンスブルーアルブミン浸透(EBP)を示すグラフである。EPO投与量は,注射量2μlで8mU/眼である。NS,PBS,BSS,及びリンゲルの4つの溶媒を使用した。偽注射(生理食塩液)は健常ラット群と糖尿病ラット群の両方に行った。各データ点は平均値±S.E.として表した。各群のサンプル数は6である。*がついた全ての群は糖尿病群と有意差がある(p<0.05)。
本発明は,哺乳動物(例:ヒト)の眼の硝子体へのエリスロポエチン(EPO)薬剤投与による哺乳動物の網膜損傷の治療方法及び/又は予防方法に関する。網膜損傷の治療及び/又は予防は,例えば,哺乳動物の眼の網膜疾患による視力喪失の進行を遅らせることを含んでもよい。EPOの硝子体内投与,または経強膜投与(すなわち,強膜を通しての投与)は実質的に血液網膜関門(BRB)の滅損を阻害し,及び実質的に外核層の光摂受体細胞(ONL),網膜色素上皮性細胞(RPE)及び脈絡毛細管枝上皮細胞のような,病んだ網膜細胞のアポトーシスを阻害,又は緩和する。従って,請求項に記載した方法と組成物は,糖尿病網膜症及び/又は網膜血管閉塞,毛細血管拡張症,及び加齢性黄斑変性症のような健常な又は異常な眼の血管漏出の原因の治療に関する。
糖尿病網膜症は糖尿病の症状の下,網膜,血管,及び神経細胞の進行性及び拡散的な疾患である。糖尿病網膜症における,視力喪失の最も一般的な原因は黄斑浮腫である。正常な血管の進行的な閉塞を伴った疾患が進行するにつれて,新血管形成が増加し,硝子体出血及び網膜剥離が結果として起こる。
本発明の方法及び組成物は血管網膜関門(BRB)の破壊並びに網膜血管細胞,グリア細胞,色素上皮細胞,及び神経細胞の死が基となる他の網膜疾患治療にも用いることもできる。その網膜疾患の例として,網膜血管閉塞,毛細血管拡張症,鎌状赤血球網膜症,放射線網膜症,未熟児網膜症,及び加齢黄斑変性が含まれるが,これらに限定されない。
本発明によれば,硝子体内に(又は経強膜的に)投与されたEPOは,初期の構造的な配座(すなわち,アミノ酸基の連続的な配列)の一部又は全部,及び生物学的特徴(例えば,インビトロの生物学的動態における免疫学的特徴)の1つ又はそれ以上,及び自然に分泌される哺乳動物EPOの物性(例えば分子量)を持ってもよい。例えば,自然に分泌される哺乳動物EPOのアミノ酸配列は,GenBank Accession No.CAA26095に相当するアミノ酸配列と実質的に同一であってもよい。
自然に分泌される哺乳動物EPOは,精製及び分離されてもよい。ここでの“精製及び分離された”という言葉は,EPOがBRB破壊と網膜細胞アポトーシスを阻害するのに有用であるために実質的に不必要な物質がないことを意味する。例えば,他のヒトのタンパク質,又は病理学的薬剤が実質的にない組み換えヒトEPOを有してもよい。
硝子体内に(経強膜に)投与されるEPOは,ヒトEPOの生物学的活性を有する即ち,BRB破壊及び網膜細胞アポトーシスを阻害する。これらの他のタンパク質又はペプチドは,例えば,EPOアナログ(analogs),EPOアイソフォーム(isoforms),EPO模倣剤(mimetics),EPO断片,ハイブリッドEPOタンパク質,融合タンパク質オリゴマー,上記物質のマルチマー,上記物質のホモログを含んでもよく,受容体遮断薬又はアゴニスト,上記物質のグリコシル化パターンの変形,上記物質の変異体を含んでもよく,その合成方法又は製造方法に関わらず,cDNAから生成されるかゲノムDNAから生成されるかに関わらず,人工的な,遺伝子組み換え,及び遺伝子活性化方法で発現する組み換えベクターを含んでもよいが,これらに限定されない。
EPOの特例は以下を含む:高純度であり,組み換え型のEPO(例えば,EPOGEN,Amgen,Thousand Oaks,USA,Epoetin alfa(例EPREX,ERYPO,Janssen−Cilag,Ltd.,Sauderton,UK and PROCRIT,Ortho Biotech LP,Bridgewater,NJ),新しい赤血球新生刺激タンパク質(NESP)(例ARANESP,Amgen,Thousand Oaks,USA),欧州特許出願第640619号に記載されたヒト組み換えEPOの高グリコシル化されたアナログ,国際公開第9966054号パンフレット記載されたヒトEPOアナログ−ヒト血清アルブミン融合タンパク質,国際公開第9938890号パンフレットに記載されたEPO変異体,米国特許第5,688,679号に記載されたヒトEPO遺伝子の制限酵素断片ApaIから作られうるEPOオメガ,国際公開第9911781号パンフレットに記載された変性グリコシル化ヒトEPO,国際公開第9805363号パンフレット又は米国特許第5,643,575号に記載されたPEG接合エリスロポエチンアナログ,これらすべては,本明細書に参照することにより組み込まれる。内在性ヒトエリスロポエチンの発現のために修飾した株細胞の特例は国際公開第9905268号パンフレット及び国際公開第9412650号パンフレットに述べられており,これらは本明細書に参照することにより組み込まれる。
本発明で用いたEPOは例えば,半減期を延長する,効力と代謝を上げる,及び/又はタンパク質の効力を増大させるために,改変することができる。米国特許第6340742号(本明細書に参照することにより組み込まれる)のBurg et al よって示されたように,EPO模倣剤はEPO共役体であってもよい。EPO模倣剤は,米国特許第6310078号(本明細書に参照することにより組み込まれる)のConnollyらによって示されたように,置換された,あるいは人工のアミノ酸を含んでもよい。EPO模倣剤は一つのタンパク質,あるいは天然のEPOとほとんど類似性がない,若しくは類似性がない小分子であってもよいが,BRB破壊と網膜細胞アポトーシスを阻害する。したがって,このことは様々な変化は,かなりの生物学的有用性または活性(例えば,BRB破壊と網膜細胞アポトーシスの抑制をするEPO活性)を失わずにEPOに起こるということを示唆する。
本発明のある側面として,EPOは硝子体内投与技術又は経強膜投与技術を用いて眼の硝子体へ投与することができる。例えば,EPOはEPOの硝子体内注射により眼の硝子体へ投与することができる。このような使用のために注射剤は,溶液,懸濁液,もしくは,注射前に液体中で溶液もしくは懸濁液としての調製に適している固形として,又はエマルションとしてのどちらかの,従来の形態で調合されてもよい。担体は例えば,水,生理食塩液(生理食塩水(NS)),リン酸緩衝生理食塩水(PBS),平衡生理食塩溶液(BSS)),乳酸ナトリウムリンゲル液,デキストロース,グリセロール,エタノールなどを含んでもよい;そしてもし必要ならば,湿潤剤もしくは乳化剤,緩衝液などの補助物質を少量加えてもよい。例えば,レシチン等のコーティング剤を用いることによって,分散させる場合は所要の粒子サイズを維持することによって,及び界面活性剤を用いることによって,適切な流動性を維持してもよい。一例として,EPOは薬学的に有効な担体に溶解させ,側頭部からのアプローチ(例えば,水晶体へのダメージを避けるためにヒトの眼に対して角膜縁より約3mmから約4mm後方)を行うことによって,微細なゲージの中空針(例,30ゲージ,1/2もしくは3/8インチ針)を使って眼の硝子体へ注射されてもよい。
なお,当業者であれば,EPOを眼の硝子体へ注射する及び/又は投与する他の方法も用いることができる。これらの他の方法は,例えば,米国特許第6,251,090号および米国特許第6,299,603号に開示された硝子体薬物送達デバイスを含んでもよい。米国特許第6,251,090号および米国特許第6,299,603号は,本明細書中に参照することによって組み込まれる。これらのデバイスと方法は,例えば,米国特許第6,251,090号に開示されているような硝子体内薬物送達デバイス,及び米国特許公開第2005/0250737号に開示されているような薬物の持続的な送達のために眼に挿入される生分解性ポリマー送達部材(members)を含んでもよい。米国特許第6,251,090号及び米国特許公開第2005/0250737号は,本明細書中に参照することによって組み込まれる。これらのデバイスと方法は,さらに,“Transscleral drug delivery for posterior segment disease.”Adv Drug Delivery Rev52:37−48に加えて,米国特許公開第2005/0208103号,米国特許公開第2005/0074497号,米国特許公開第2005/0064010号に開示されているような経強膜送達デバイスを含んでもよい。なお,これらの文献は,すべて本明細書中に参照することによって組み込まれる。
眼に投与する前記EPOは薬学的組成物で供給されてもよい。このような組成物は製造と貯蔵の過程で安定であるべきであり,細菌とカビといった,微生物との混入を必ず避けなければならない。パラベン,クロロブタノール,フェノール,アスコルビン酸及びチメロサールのような,様々な抗菌剤と抗かび剤を使用することで微生物混入を制御することができる。砂糖,マンニトール,ソルビトールのような多価アルコール及び塩化ナトリウムのような,等張剤が組成物に含まれうる。EPOの吸収を遅らせる薬剤が薬学的組成物に含まれてもよい。このような吸収遅延剤は,たとえばステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどを含んでもよい。
無菌の注射液は,1つの成分,又は成分の組み合わせを含む適当な溶媒中にEPOを取り込むことで調製し,その後滅菌することができる。一般的に,分散液(dispersions)は,基本的な分散媒及び他の所要成分を含む無菌の媒体(vehicle)にエリスロポエチンを取り入れることによって,調製される。無菌注射剤を調整するための無菌パウダーの調製方法は,無菌溶液から活性成分といずれの所要成分含むパウダーを生じる,真空乾燥工程と凍結乾燥工程を含む。
なお,他のデバイスと眼へEPOを硝子体内投与する方法が使われてもよい。これらのデバイス及び方法は,例えば,米国特許第6,251,090号(本明細書中に参照されることによって取り込まれる)に開示されているような硝子体内薬物送達デバイス,及び米国特許公開第2005/0250737号(本明細書中に参照されることによって取り込まれる)に開示されているような,薬物の持続的な送達のために眼に挿入される生分解性ポリマー送達部材(member)を含んでもよい。
EPOは,糖尿病性網膜症が検出されるよりも前に及び/又は検出時に,BRB破壊及び/又は網膜細胞,あるいは網膜色素上皮細胞のアポトーシスを治療する及び/又は予防するのに治療上有効な量を哺乳動物の眼の硝子体に投与されうる。本発明のある側面において,EPOは糖尿病及び/又は糖尿病性網膜症の初期段階の発症時,及び/又は検出時に哺乳動物の眼の硝子体に投与されうる。哺乳動物の眼の硝子体へのEPOの投与はその時点で,網膜細胞と網膜色素上皮細胞アポトーシスの阻害に加えて,BRB破壊阻害にも十分に有効であり得る。
治療において有効なEPO量は,無毒性で,しかしどんな医療にでも付随する合理的な利点/リスク比において望ましい効果とパフォーマンスを提供するのに十分なEPO量であってもよい。本発明のある側面において,哺乳動物の眼の硝子体内に投与されるEPO量は,所定の持続期間にわたって,網膜細胞と網膜色素上皮細胞アポトーシス(あるいは網膜虚血),及びBRBの破壊を十分に阻害,あるいは緩和する有効量であってもよい。所定の持続期間とは,血液網膜関門の破壊及び/又は網膜細胞もしくは網膜色素上皮細胞アポトーシスが効果的に緩和される持続期間であってもよい。この持続期間は,例えば,約1日から約3カ月までであってもよい。
一例として,哺乳動物の眼の硝子体内に投与されたEPO量は,眼の硝子体の体積に基づいて約0.33のng/μlから約13.33ng/μlの濃度のEPOを,哺乳動物の眼の硝子体に供給するために有効な量であってもよい。STZ糖尿病ラットにおいて,EPO約50ngから約200ngの硝子体内注射により与えられるこの濃度で,BRB破壊と網膜細胞アポトーシスは,最大約4週間十分に緩和されることが明らかにされている。従って,糖尿病性網膜症(又はそれ自体は網膜症ではないけれども,明白な神経細胞障害,又はBRB破壊)の初期の兆候を示している患者に対して,濃度約0.33ng/μlから約13.33のng/μlのEPOを哺乳動物の眼の硝子体に効果的に供給するために哺乳動物の眼に硝子体内投与されるEPO量は,患者の眼に断続的に約3週間から約3カ月(例えば,約4週間)増加させ,又は更に長く治療の有効性を維持し,十分にBRB破壊と網膜細胞若しくは網膜色素上皮細胞アポトーシスを阻害するために投与される。
ヒトにおいて,BRB破壊及び網膜細胞,又は網膜色素上皮細胞のアポトーシスを十分に阻害するための有効なEPO量は,1眼あたり約1.33μgから約60μg,又は1眼あたり約0.23ユニットから約9.2ユニット(例えば,1眼あたり約2.3ユニット)であってもよい。EPOの約1.33μgから約60μgは,例えば,ヒトの眼に硝子体内投与することができる,約90μlから約100μlの溶液で提供されうる。本発明の更なる側面において,ヒトの眼に投与されるEPO量は,1眼あたり約1.33μgから約60μg(例えば,1眼あたり約15μg),(又は1眼あたり約0.23ユニットから約9.2ユニット)であり,約90μlから約100μlの溶液で供給されうる。
しかし,当然のことながら,ある特定の患者に対する特定の用量レベルと投与の頻度は,変化してもよく,採用される特定のEPO組成物の活性,代謝安定性およびEPO組成物の作用の長さ,年齢,体重,一般的な健康,性別,食事制限,投与の方法と時間,排出速度,複合薬,特定疾患の重症度,及び治療を受けるホストを含む,様々な要因によってきまる。
本発明の別の側面によれば,EPOは,標的細胞からのEPOの発現を強制することによって,硝子体に投与することが可能である。眼の硝子体において発現されるEPOは,EPO遺伝子の発現産生物であり得る。天然のヒトEPOをコードする遺伝子の配列は,遺伝子配列の入手方法と同様に,例えば,米国特許第4954437号及び米国特許第4703008号(これらは本明細書中に参照することによって組み込まれる),Jacobs et al.(1985)Nature313:806−810;Lin et al.(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:7580;国際公開第95/02610号パンフレット及び欧州公開第232034号に記載されている。加えて,ネコ,イヌ及びブタの天然のEPOをコードしている遺伝子の配列は周知であり,容易に入手が可能であり(それぞれGenBank Accession Nos.:L10606;L13027及びL10607),サル(アカゲザル)のEPOをコードしている遺伝子配列もまた周知であり,容易に入手できる(GenBank Accession No.:L10609)。
硝子体におけるEPOの発現は,標的細胞の中にEPOの発現を増大させる薬剤を導入することによって,行うことができる。標的細胞は,薬剤導入後に網膜に移植される,胚性幹細胞及び/又は多分化能成体前駆細胞といった,網膜内の細胞,網膜色素上皮,又は生体外細胞の細胞を含んでもよい。
薬剤は,細胞の中へ導入され,細胞の中で複製される能力がある,典型的なDNAコンストラクトである組み換え核酸コンストラクトに組み込まれる天然の又は合成のEPO核酸を含んでもよい。このようなコンストラクトは特定の標的細胞における,複製システムとポリペプチドをコードする配列の転写と翻訳が可能である配列とを含みうる。
他の薬剤も,標的組織におけるEPO発現を促進するために,標的細胞に導入することができる。例えば,EPOをコードする遺伝子の転写を増大する薬剤;EPOをコードするmRNAの翻訳を増大する薬剤,及び/又はEPOをコードするmRNAの分解を減少させる薬剤を,EPOレベルを増大させるために用いてもよい。細胞内で遺伝子からの転写率を増大させることは,EPOをコードする遺伝子の上流に外来性プロモーターを導入することによって達成することができる。非相同的遺伝子の発現を促進するエンハンサーエレメントが用いられてもよい。
標的細胞に薬剤を導入する一つの方法は遺伝子治療を用いることに関する。本発明によれば,遺伝子治療を,インビボで,あるいはインビトロで,標的細胞からエリスロポエチンを発現するために用いることができる。
遺伝子治療方法の例は,EPOをコードするヌクレオチドを含むベクターを用いることを含む。用いることのできるベクターの例は,例えば,ウイルスベクター(例:アデノウイルス(‘Ad’),アデノ随伴ウイルス(AAV),及びレトロウイルス),リポソーム,及び他の脂質含有複合体,標的細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介することのできる高分子複合体を含む。
ベクターはさらに遺伝子送達及び/又は遺伝子発現を調整する,又は,そうでなければ標的細胞に有益な特性を与える,他の構成要素又は機能性をも含む。このような他の構成要素は,例えば,細胞に結合すること,あるいは細胞を対象とすることに影響を与える構成要素(細胞型あるいは組織特異的結合を媒介する構成要素を含む);細胞によってベクター核酸の取込みに影響を与える構成要素;(核局在化を媒介している薬剤などの)取込みの後,細胞の中でポリヌクレオチドの局在に影響を与える構成要素;及びポリヌクレオチドの発現に影響を与える構成要素を含む。このような構成要素は,マーカーも含んでもよい。マーカーの例として,ベクターによって運ばれた核酸を取り込み,そして発現している細胞を検出する又は選択するために用いることができる検出可能マーカー及び/又は選択可能マーカーが挙げられる。このような構成要素は,ベクターの自然な特徴として与えられてもよく(例えば,結合又は取り込みを媒介する構成成分又は機能性を有する特定のウイルスベクターの使用など),又は,ベクターはそのような機能性を与えるために改変されてもよい。
本発明においてEPOの発現に用いられたベクターは,ウイルスベクター,脂質ベースのベクター,標的細胞へ本発明に記載のヌクレオチドを運ぶことができる他のベクターを含む。ベクターは標的ベクター,特に網膜細胞もしくは網膜色素上皮細胞に優先的に結合する標的ベクターであってもよい。本発明で用いるウイルスベクターは標的細胞に対して低い毒性を示し,組織特異的に治療に有用なEPOの量の産生を誘導するウイルスベクターであってもよい。
標的細胞でエリスロポエチン発現に用いることのできるウイルスベクターの1つの例がアデノ随伴ウィルス(AAV)である。標的細胞においてEPO発現に用いることができるこのようなAAVベクターは,米国特許第6358998号に記載されており,本明細書中に参照することによって組み込まれる。その技術分野において公知であり,上述したウイルス性,および非ウイルス性ベクターを含む他のベクターもまた,用いることができる。
ウイルスベクターベースの方法に加えて,非ウイルスベクター法もEPO遺伝子を標的細胞に導入するために用いられる。本発明によれば,非ウイルス遺伝子送達方法の一つの例として,プラスミドDNAを用いてEPO核酸を単一細胞に導入する方法が挙げられる。プラスミドベースの遺伝子送達方法はその技術分野において一般的に知られている。
EPOの発現をコードしているベクターは,必要に応じて,生理食塩水など,薬学的に許容される担体を含む注射製剤という形で,標的細胞に運ばれてもよい。他の薬学的に強要される担体,剤形,及び投与量が用いられてもよい。
標的細胞が網膜細胞あるいは網膜色素上皮細胞を含む場合,ベクターは,治療に非常に効果的である程度に発現されるための十分なEPO量で,直接の注射によって運ばれてもよい。網膜内にベクターが直接注射されることにより,効果的に遺伝子を狙うこと,及び組み換えベクターの損失を最小限に抑えることが可能である。このような注射により,患部である心筋の心筋細胞といった他の組織に対して,必要な細胞数へ局所的にトランスフェクションし,それによって遺伝子導入による治療の有効性を最大にし,ウイルスタンパク質に対する炎症反応がおこる可能性を最小にすることができることが証明された。
標的細胞が硝子体又は網膜の中に後に移植される培養細胞(例えば,ES細胞又は多分化能成体始原細胞)である場合,ベクターは培養培地の中へ直接の注射によって運ばれてもよい。細胞へトランスフェクトされたEPO核酸は,特定のプロモーターとエンハンサーを含む,適切な調節塩基配列に関連するようにしてもよい。
トランスフェクトされた標的細胞(例えば,胚性幹細胞あるいは多分化能成体始原細胞)は,その後,よく知られている移植技術によって網膜に移植することができる。最初に標的細胞をインビトロでトランスフェクトし,その後,硝子体もしくは網膜にトランスフェクトされた標的細胞を移植する方法は,硝子体もしくは網膜に直接ベクターを注入する方法に比べて,網膜における炎症反応がおこる可能性を最小限に抑える。
本発明のEPOは一過性発現及び安定で長期間にわたる発現を含み,適切な期間に発現しうる。一つの実施態様として,EPOは,BRB破壊,並びに/又は,糖尿病網膜症及び/もしくは他の網膜症に伴う網膜細胞及び/もしくは網膜色素上皮細胞のアポトーシスを治療するため及び/又は予防するために,適切な及び決められた期間に,治療的に有効な量を発現する。
本発明の他の側面によれば,BRB破壊及び/又は網膜細胞若しくは網膜色素上皮細胞のアポトーシスを含む,糖尿病網膜症の治療及び/又は予防は,コントロール,スタンダード,ベースラインと比較して判定することができる。BRB破壊及び/又は網膜細胞のアポトーシスのレベルは,その技術分野で知られている方法を用いて数値化することができる。例えば,コントロール,スタンダード又はベースラインと比較した際の減少は,治療の成功を示す。加えて,その技術分野で定義されているように変異視覚異常の減少は,治療の成功を示す。BRB破壊及び/又は網膜細胞もしくは網膜色素上皮細胞のアポトーシスを定量した量は,そのレベルが減少したかどうかを決めるために,適切なコントロールと比較してもよい。被検サンプルは,前回のポイント(すなわち,糖尿病及び/又は糖尿病網膜症を有するより前,又は,糖尿病網膜症を治療している様々な段階の間)から特定の個体のレベルと,又は健常の個体若しくは適切なコントロールと比較してもよい。
網膜における糖尿病による症状を治療されている個体は,様々な時間のポイントにおいてBRB破壊のレベルを決定することでモニターされてもよい。このようなBRB破壊のレベルは治療前,治療中,治療後に決定されてもよい。BRB破壊のレベルの減少は,本明細書中で述べているように,治療の成功を示す。BRB破壊は現在知られている方法,又は将来開発されるであろう方法を用いて測定されてもよい。参照:KohnerE.M.,et al.,Diabetic Retinopathy Metabolism,25:1985−1102(1975)。例えば,BRB破壊は蛍光血管造影図を用いて,又は患者の視力喪失を計測することで測定されてもよい。さらに,BRB破壊はCS,MAVES,CVS,multi−focalERG,HVF等といった視力測定装置を用いても測定されてもよい。
以下の実施例は,本発明の実施態様を明らかにするために包含される。当業者であれば,以下の実施例に開示された技術が,本発明の実施に十分に機能するために発明者によって見出された技術を表し,従って,発明を実施するための好ましい態様を構成することを考慮されうるということを理解できる。しかしながら,当業者であれば,本開示を踏まえて,開示された特定の実施態様に多くの変化をつけることができ,本発明の精神及び範囲から離れることなく類似した又は同様の結果をさらに得ることができる。
本研究において,糖尿病網膜症の過程の初期とEPOの効果についての以下の二つの根本的な疑問を研究するために,動物モデルとしてストレプトゾトシン(STZ)−誘発糖尿病ラットを用いた。1)糖尿病発症後の網膜における細胞傷害の顕著なタイプは何か。2)糖尿病網膜において血管及び非血管傷害の最早期間とは何か。この二つの疑問の解決を基に,糖尿病発症の日での硝子体内へのEPO単一用量の注射により,新しい治療的な選択肢が研究される。BRB,血管及び神経細胞におけるEPOの保護的機能がはっきりと実証されている。
研究設計及び方法
試薬
エバンスブルー(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)は生理食塩液(30mg/ml)に溶かした;ストレプトゾトシン(STZ,Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)は0.05Mクエン酸緩衝液(pH4.5)に溶かした。エリスロポエチン(r−Hu−EPO,Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)は生理食塩液(0.1μg/μl)で希釈した;in situ Cell Death Detection KitとEPO ELISA KitはRoche Applied Science(Mannheim,Germany)から購入した。
実験動物と硝子体内EPO処理
体重約150gの雄スプラーグドーリーラット(Slaccas,SIBS,Shanghai,China)を利用した。動物は,ARVO Resolution on the Care and Use of Laboratory Animalsに従って処理した。糖尿病を誘発させるために,単回ストレプトゾトシン(STZ)腹腔内注射(60mg/kg体重 クエン酸緩衝液中)を24時間絶食させたラットに対して行った。コントロールラットには同量のクエン酸緩衝液を投与し,糖尿病ラットと同様にモニターした。全ての動物は12時間周期で明/暗が切り替わる装置で維持され,STZ注射の前の断食の日を除いて,随意に飲食をさせた。STZを受けた動物は,血中グルコースが毎日の測定で連続三日間250mg/dLを超えた際に,糖尿病とした。ラットが糖尿病を発症しなかった場合,そのラットは,実験から除いた。糖尿病ラットはランダムに,EPO処理群とEPO未処理群の二つの群に分けた。体重は一週間に二度記録し,4ユニットのNPHインシュリンをケトーシス予防のために一週間に一度皮下に投与した。ラットは糖尿病発症後1,2,4,及び6週目に屠殺した。EPOの硝子体内注射は糖尿病発症後2時間以内に行った。静脈内2%ペントバルビタールナトリウムによる全身麻酔と2%リカドインによる局所的角膜麻酔後に,EPO(r−Hu−EPO 生理食塩液中)はマイクロシリンジ(Hamilton,Switzerland)と30ゲージ,1/2インチ針(Becton Dickinson&Co.Rutherford,N.J.)を用い,側頭部アプローチをもちいて,つまり水晶体へのダメージを回避するために角膜から2mm後方から硝子体内に注射した。1眼あたり0.05ngから200ngの範囲で,EPOはそれぞれ2μlの等容積に溶かした。偽注射(2μl生理食塩液)は,未処理の糖尿病ラット群に加えて,非糖尿病コントロールラットにも行った。ラットは自然に麻酔から回復し,随意に食糧と水とともに動物室に戻した。
血液網膜関門透過性実験
血液網膜関門(BRB)透過性は公開されている方法により評価した。つまり,ラットは腹腔内2%ペントバルビタールナトリウム(50mg/kg体重)で麻酔した。追加の麻酔は,処置を通じて必要に応じて行った。左腸骨動脈と腸骨静脈は,ヘパリン添加生理食塩水(400ユニットヘパリン/ml生理食塩水)で満たされたカテーテル(BD Insyte)でカニューレを挿入した。エバンスブルー溶液(30mg/ml)は10秒以上左腸骨静脈を通して注入された。エバンスブルー投与2分後,0.1mlの血液を左腸骨動脈から採取した。時間平均のエバンスブルー血漿濃度を得るために,注射後2時間まで15分間隔で同量の血液を採取した。色素を2時間循環させた後,ラットの胸腔を開き,1%パラホルムアルデヒド−0.05Mクエン酸(pH3.5)を用いて37℃で左心室を通して灌流した。灌流は120mmHg生理学的圧力で2分間続けた。灌流後すぐに両眼を眼球除去し,前部分を取り除いた。手術用顕微鏡下,網膜を慎重に分け,約2時間Speed−Vac(37℃)で乾燥させた。同じ動物からの二つの眼は一緒に保存した。乾燥重量を測定した後,網膜は70℃で18時間300ulホルムアミド(Sangon,Shanghai,China)中でインキュベートした。抽出液は30,000NMWL遠心分離フィルター(Microcon,Millipore)を用いて,4℃,3,000gで45分間遠心分離した。濾液の容積は遠心分離後に測定した。血液サンプルは10,000gで数秒間遠心分離し,1:5,000で希釈した。サンプルのうち60ulは,5秒間隔で分光光度計(BeckmanDU800)を用いて三通りの測定に使用した。差し引かれたバックグランドの吸光度は各サンプルを,エバンスブルーの最大吸光度の620nm,及び最小吸光度の波長である740nmの両方を測定することで決定した。血液サンプル中及び網膜抽出物中の色素の濃度はホルムアミド中のエバンスブルーの検量線から計算した。網膜へのエバンスブルー透過(EBP)の結果はBRB透過性の関数として次の方程式を用いて計算され,(μl 血漿 Xg 網膜乾燥 wt−1hr−1)で表した。
形態学的研究のためのサンプル調整
ラットは深い麻酔と頚椎脱臼により屠殺した。裁断マークは角膜縁の3時と9時の方向につけた。クリオスタット切片サンプル調整のために,眼は眼球除去し,PBS緩衝−4%パラホルムアルデヒドで24時間固定化した。その後,鋸状縁に沿って切開し,ショ糖の濃度勾配が10%から30%の0.01mol/Lリン酸緩衝液により後方の眼杯を脱水させた。脱水後,眼杯を切断のために至適切削温度(OCT)化合物(Tissue Tek;Sakura Japan)の中に包埋した。
眼は,視神経頭および前もって摘出された切片によって位置が決められ,網膜の切断部分は眼の背腹面にそって調製された。視神経頭を貫通して連続的な切断部分を分析した。網膜の厚さ,細胞計数,及びTUNEL染色に対して,10μmの厚さの切断部分を使用した。
網膜の厚さと細胞計数における変化の測定
凍結切片化された網膜(cryosectioned retinas)は,ヘマトキシリンとエオシンにより染色した。異なる網膜層の厚さは200X倍率下で測定し,以下を含む。(1)外境界膜から内境界膜(OLMILM);(2)外境界膜から神経節細胞層(OLM−GCL);(3)外顆粒層及び外網状層(ONL−OPL);(4)内顆粒層(INL);及び(5)内網状層(IPL)。二つの測定は,上側と下側の両側に視神経から1mm離れている,2本の各基準線で,各切片において行った。5匹から6匹のラット(両眼杯)のデータは,異なる局所解剖学的領域における潜在的な解剖学的異常を回避するために,比較をするために平均化した。ONL,INL,及びGCLの細胞数は1000X倍率下で同じ領域中を数えた。固定された25umカラム内の全細胞は,1mm基準線で中央に集め,(核を数えることによって)数を数えた。その後,細胞密度は異なる層において細胞計数/mm網膜幅として表した。
TUNELアッセイによる網膜内の細胞死のInSitu検出
TUNELアッセイは,少し変更を加えたIn Situ Cell Death Detection Kitを用いて使用説明書に従って行った。凍結切片化されたサンプルは4%パラホルムアルデヒドを含む0.1mol/Lリン酸緩衝液で保存し,20分間室温で平衡化し,その後,30分間PBSで洗浄した。洗浄した切片は,新たに調整した0.1%トライトンx−100を含む0.1%クエン酸ナトリウム中40℃で2分間インキュベートした。切片はPBSで2回すすぎ,乾燥させた。10ulTUNEL反応混合物の添加後,37℃で60分間,暗所で加湿された大気下で,切片をインキュベートした。ポジティブコントロールは,標識化手順の前に室温で10分間Grade I DNase−I処理をした網膜の切片を用いた。ネガティブコントロールは,10ul標識化溶液で処理をしたが,末端転移酵素がない状態でインキュベートした網膜切片を用いた。切片はインキュベーション後にPBSで3回すすぎ,落射蛍光顕微鏡(Nikon,Japan)を用いて直接分析し,励起波長450−490nmの範囲で評価した。
電子顕微鏡
ラットは強い麻酔(腹腔内2%ペントバルビタールナトリウム,50mg/kg体重) により屠殺した。全身灌流に続き,両眼を眼球除去した後,赤道面に沿って解剖し,2.5%グルタルアルデヒドを含む0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)に一日浸した。その後,眼は1%四酸化オスミウム中で固定化し,エタノールで段階的に脱水し,その後,EPOn618(TAAB Laboratories Equipment,Berks,UK)で包埋した。網膜の後方部分の超薄の部分は,クエン酸鉛とウラニル酢酸で染色し,その後,100kV(GM120;PHLIP,Holland)の電子顕微鏡で観察した。網膜サンプル中の細胞の全タイプを形態的特徴により調べた。
眼におけるEPOの排出半減期の評価
EPOの硝子体内注射後,図9の説明文に示した時間点においてラットを屠殺した。眼球除去後,眼組織の外側は除去した。眼の外側の表面をさらに濾紙で乾燥させ,前側のセグメントを除去した。各眼の残った後方部分はエッペンドルフチューブ内に垂直に置いた。室温で15分間,700gで遠心分離した後,使用説明書に従ってEPO Elisa Kitを用い,4つの眼からの硝子体液50ulをEPO定量化のために収集した。
[統計]
データは平均値±S.E.で表した。統計学的分析はスチューデントt検定を用いて行った。0.05以下のP値は統計学的に有意差がある。
結果
EPO治療有り及び無しのラットにおける糖尿病モデルの確立
1週間から4週間の間,腹腔内へSTZを単回投与した後,ラットの糖尿病群の血清グルコース値はコントロールに比べて4倍から6倍に増加した(図1A)。非糖尿病コントロール動物の体重は4週間で74.3%増加した(図1B)一方,糖尿病ラットの体重は一週間後に7.7%減少し,2週間から4週間の間は相対的に安定していた。糖尿病発症後4週間で,糖尿病ラットの体重は同年齢の非糖尿病コントロールラット群のラットの体重の70%だった。硝子体内に投与されたEPO(50ng/眼)は健常動物群の体重と糖尿病動物群の体重のどちらにも影響はなかった。
結果
糖尿病の初期段階にけるBRB破壊と眼球内EPOによる保護作用
エバンスブルー定量化技術は,初期糖尿病のラットにおいて信頼できることが証明されたので,BRB透過性は,エバンスブルーの定量化で評価した。酸性条件下(例:糖尿病性ケトアシドーシスの条件下)の非結合エバンスブルーの増加によるBRB透過性増加の可能性を除くために,血清pHはインシュリン処理した糖尿病ラットでモニターした。
表1にインシュリン処理あり及びなし,及びEPO処理あり及びなしのSTZ糖尿病ラットの血液pH値を示す。(コントロール,の偽注射(生理食塩液の硝子体内注射)を受けたラット);EPO+インシュリンはEPO(50ng/眼)注射を硝子体内へ受け,インシュリン(4ユニット/週)を皮下注射によって受けた糖尿病ラット;EPO−インシュリンはEPOを硝子体内注射により受けたが,インシュリンによる治療は受けていない糖尿病ラットを表す。
表1と図2で示した様に,インシュリン治療は血清pHを有意に変化させず,また,糖尿病発症2週間後の血管透過性におけるEPOの機能を妨げなかった。従って,エバンスブルーの定量化におけるpHの影響の可能性は,糖尿病群における一定の血中pHによって除かれた。
糖尿病発症後1週間から4週間までのエバンスブルー透過性(EBP)を測定することで,STZ糖尿病ラットの血管透過をモニターした。図3は,STZ糖尿病ラットのEBPは,非糖尿病ラット(n=10)に比べて,1週間後に56.8%(n=8,p<0.05)増加し,2週間後に頂点に達した(62.9%増加,n=7,p<0.05)ことを示す。EBPは2週間から4週間の間,高い値で維持された(図3,n=8p<0.05)。図3によると,最初の2週間は,EPOの3通りの投与量(5,20,50ng/眼)によるBRBの保護作用の効果は類似していることがわかる。3週間後,EPO処理の最少投与量(5ng/眼)はBRBの保護的機能を失っていることが明らかになった(n=4,p>0.05)。糖尿病発症後4週間で,EPOの最大投与量(50ng/眼)のみが,糖尿病に対してまだBRBを有意に保護していることを示した(n=8;p<0.05)。さらに多いEPOを投与した場合(最大200ng/眼),EBPの用量依存性は観察された(図4,糖尿病発症後2週間目)。最も高い濃度(200ng/眼)において,BRBの完全性に対するEPOの保護的効果は少々低く,しかし,それでも糖尿病群よりもEBPを有意に低く維持している。EPOの至適量は50ng/眼レベルであることがわかった(図4)。
データによると糖尿病発症後少なくとも4週間は,適切な用量のEPOの硝子体内単回投与によってBRB機能を維持することができる。図3により,2週間間隔で,驚くべきことにEPO処理糖尿病群におけるEBPは,非糖尿病コントロール群(偽注射群)におけるEBPよりも有意に低いことがわかった(n=8;p<0.05)。偽硝子体内注射によって変化したEBPもEPO処理により防ぐことが可能である。
EPOによる網膜の厚さの減退と異なる層における神経細胞の損失からの糖尿病網膜の保護
ヘマトキシリン染色及びエオシン染色された網膜クリオスタット切片の形態計測の実験により,糖尿病発症後1週間で,非糖尿病コントロールラットと比較して,糖尿病ラットの全体的な網膜の厚さは有意に薄くなることが明らかになった(図5)。主に,網膜が薄くなることは,最大4週目まで糖尿病ラットのONLで起こった(n=72;p<0.001)。糖尿病ラットと非糖尿病コントロールラットの眼の網膜切片を比べた場合,糖尿病誘発4週間後まで,さらにONLにおける細胞数は有意に少なくなっており(84.61%,n=52;p<0.001),INLの細胞数はほとんど変わらなかった(図6)。EPO(50ng/眼)の硝子体内注射により治療を受けた糖尿病ラットについては,糖尿病発症後4週間ずっと,全体の網膜の厚さとONLにおける細胞数は,非糖尿病コントロールラットと違いは見られなかった(図5及び図6)。観察した経時変化では,非糖尿病コントロールラットの網膜の厚さ及び細胞数には有意差はなかった(n=52,p>0.05)。
糖尿病においてEPOによる細胞死からの網膜神経の保護
糖尿病ラット及び非糖尿病ラットのGCL,INL,及びONLにおける細胞死を特徴づけるために,ネクローシスによって生じうるDNAフラグメントも検出できるにもかかわらず,TUNEL分析を用いた(26)。糖尿病の治療を受けなかった眼は,ONLにおいて1週間からTUNEL−陽性細胞が有意に増加し,糖尿病誘発後4週間で頂点に達した(図7)。電子顕微鏡を用いた研究との併用により,糖尿病を患った眼のONLにおいてわずかにネクローシスが観察された。TUNEL−陽性染色はアポトーシスのマーカーであることを示す。糖尿病ラットのGCL及びINLにおいて観察されたTUNEL−陽性細胞数はONLにおけるTUNEL−陽性細胞数よりも著しく少なかった(図7)。EPO(50ng/眼)の硝子体内注射後,糖尿病発症後1週間から3週間までのGCL,INL,及びONLにおけるTUNEL−陽性細胞は基本的に検出されなかった。しかし,いくつかのTUNEL−陽性細胞はEPO処理を受けた糖尿病の眼において4週間目(図7)と6週間目(データには示していない)のONLで検出された。EPO処理糖尿病ラットにおけるTUNEL−陽性細胞数は,EPO未処理糖尿病ラットの眼のTUNEL−陽性細胞数よりも有意に少ないけれども,非糖尿病コントロールラットよりも多かった(図7)。
糖尿病傷害からの網膜血管細胞及び神経細胞におけるEPOの効果に対するEM証拠
ラットの網膜の代表的な超微細構造的変化は図8に示した。異なる網膜層の細胞及び組織変化は,非糖尿病ラットと比較して,糖尿病発症後7から10日に検出することができた。傍血管浮腫と浸出液を伴うアポトーシス性核凝縮を含む細血管内皮細胞(MEC)の顕著な変化が検出された(図8.en−D)。網膜色素上皮(RPE)において,ブルッフ膜(BM)の破壊とコラーゲンの蓄積が糖尿病を患う眼において観察され,これらはBMとRPEの間の空間を広げる原因となっている(図8.rpe−D)。杆錐状体層の構造は,断片の溶解によってできた椎間板内の空間の拡大で,著しく損なわれた(図8.rpe−D)。外核層(ONL)における著しい変化は,ONLにおける細胞死(cell loss)とTUNEL−陽性細胞の増加(上記参照)を示すデータと相関する,核濃縮の出現であった(図8.onl−D)。同じ時間点において,EPOで処理した糖尿病ラットは,非糖尿病コントロール群(図8.en−C,rpe−C,r/c−C及びonl−C)と比較して,変化がない又はほんの少しだけ変化があるかのどちらかであった(図8.en−E,rpe−E,r/c−E及びonl−E)。
硝子体内注射後の硝子体EPOの半減期
非糖尿病ラットにおいて,硝子体内注射後,EPOの排出半減期は24時間から36時間にわたった。最大濃度に達した後,EPO値は急速に減少した。注射後72時間にはEPO濃度はベースラインに戻った(図9)。硝子体内へ送達後の硝子体内でのEPOの薬物動態学的特性は一次速度式により排除される。
考察
糖尿病網膜症は,古い定義によると,糖尿病と共に起こる微小血管障害であると認識されている。微小血管障害とはBRB破壊,基底膜の毛細血管の肥厚,外膜細胞(pericytes)死,及び毛細血管閉塞によって特徴づけられる。STZ糖尿病誘発ラットモデルはヒト糖尿病網膜症の初期段階に見られるような,網膜脈管構造における形態学的変化および機能的変化を示す。微小管外膜細胞と内皮細胞のアポトーシス亢進は,ヒトとラットの両方の糖尿病網膜において血管の一部に重大な損傷を与えるという考えが定着している。網膜血管細胞におけるアポトーシスの過程は糖尿病の後期に起こるものではない。STZ糖尿病ラットモデルにおいて,網膜毛細血管内皮細胞のアポトーシスは,非ラットの網膜と比べて,9日から14日後に有意に増大することが報告されている。
本研究は糖尿病発症後1日から4週間まで,BRBの機能変化,及び内側と外側の両側のBRB細胞傷害について調査した。本研究は糖尿病発症後,早くも4日にBRB破壊を実証した(データには示していない)。糖尿病ラットにおけるこのような早期の段階のBRB破壊は他の研究者によっても報告されている。血管内皮細胞アポトーシスは,本研究では糖尿病発症後,早くも7日から10日でEMを用いて明らかになった(図8,en−D)。RPE細胞自体は重大な障害はその時見られなかったが,隣接するブルッフ膜では破裂が,そしてRPEとブルッフ膜の間では空間の拡大が観察された(図8,rpe−D)。しかしながら,RPEの透過性における機能的欠損は,STZ糖尿病ラットにおいて,他の研究者により糖尿病発症後4週間で検出された。
網膜神経症状は糖尿病において他の細胞(グリアなど)の変化とともに非常に早く進行する。微小血管障害より前に,糖尿病神経の,またはグリアの病変は起こりうるという著者もいる。本研究では,アポトーシス性神経は糖尿病発症後早くも1週間で,INL及びGCL中にわずかに有する外核層(ONL)おいて,TUNEL染色により主に検出された(図7)。この段階では毛細管閉塞やネクローシスの他の兆候は観察されなかったことから,TUNEL染色の増加はおそらく虚血性壊死ではなく,アポトーシスに起因している。この神経,特に視細胞のアポトーシス性変化もまた電子顕微鏡により実証された(図8)。我々の知見によれば,血管細胞と神経細胞の両方が糖尿病早期でアポトーシスによって死亡していることが示唆される。微小血管障害と神経細胞障害(糖尿病末梢神経障害とは異なる)の同時経時変化によれば,広汎性糖尿病障害は,早期の段階中,アポトーシス過程の引き金である。それゆえ,アポトーシス性障害からの血管細胞,グリア,及び神経の保護は非常に優先的であるべきで,そして,できるだけ早く実行されるべきである。
STZ糖尿病ラットモデル実験において,EPO硝子体内注射は,サイトカインの特徴である,U字形応答に続く,BRB破壊の用量依存的阻害を示した(図4)。特に,本用量依存曲線は最大反応が見られた50ng/眼より,200ng/眼の高用量の方が効果が低いことを示した。興味深いことに,EPO処理群において,エバンスブルーによって決定された漏出量は,2週目のコントロール(偽注射)よりも非常に低かった(図3)。このことは,注射による外傷はエバンスブルー漏出の増大を引き起こすということを示唆している。この漏出を誘発する外傷は2週間後にコントロールラットの眼では自然に回復した。この期間では,BRB破壊に対するEPOの防御効果は,EPOの公知の抗炎症性効果と関係している可能性がある。糖尿病において,BRBの透過性の上昇に対して,EPOがBRBを保護による分子メカニズムについては,現在研究が行われている。
本データは,既に報告されたように,早期の糖尿病における視覚機能不全の原因とされる神経細胞障害の形態学的な証明を提供する。EPOが神経アポトーシスを防ぐか,又は遅らせるかどうかを見極めるために,本研究では,EPOの硝子体内投与は糖尿病発症日に行った。ONLにおけるアポトーシス性神経細胞は,4週間まではEPO処理した糖尿病ラットの眼では基本的に検出できなかった(図7)。6週目のEPO処理した糖尿病ラットにおいて,アポトーシスの形態は顕著に減少したが,検出することができた(データは示していない)。加えて,EPO治療群においてONLの厚さは,4週目までは本質的に変化はなかった(図5)。ONLの厚さのわずかな減少が,糖尿病6週目で観察された(データは示していない)。これらの知見は,硝子体内のEPO濃度は3日以内にベースラインに戻るにもかかわらず,EPOの硝子体内単回投与の治療効果は少なくとも1カ月は持続することを示唆している(図9)。
本研究では,EPOの硝子体内注射が,BRBの機能と完全性を保護することと,及び早期糖尿病網膜症の血管/神経/グリア/RPE細胞のアポトーシスを防ぐことを初めて示している。他の組織の研究において,増加した内皮一酸化窒素合成酵素を通して健常の血管自己調節を維持することにより,EPOが保護機能を媒介していることは証明されている。また,他の実験モデルにおいて炎症を中和することにより,EPOは血管完全性を維持していることも既にわかっている。EPO受容体発現細胞において,アポトーシス過程はEPOの急速結合により中断されるということが提唱されている。インビトロの研究において,神経細胞のアポトーシスは,5分ほど簡単にEPOに暴露することによって阻止された。脊髄損傷モデルにおいて,損傷後すぐにEPOを単回投与すると,EPOの反復投与よりも勝る回復を実現した。それにもかかわらず,硝子体のEPOの排出半減期は24時間から36時間であり(図9),72時間までにはベースラインに戻ると観察されてときから,EPOの硝子体内単回投与が糖尿病発症ラットの眼に対して4週間効果を及ぼすカニズムは,現在は知られていない。EPOの細胞保護的効果のメカニズムは,骨髄における赤血球前駆物質を刺激するために持続したEPOレベルを必要とする赤血球新生機能のメカニズムとは異なるように思える。本データに基づき,EPOの有意な保護的機能は,硝子体内の一時的な送達を通して与えられ,最も早い段階の糖尿病網膜症に対する治療方法として供給しうるように思える。
EPOを用いるSTZラットにおける糖尿病網膜症の治療処置
方法
糖尿病は前の実験と同様にSTZ(i.p.)によりSDラットに誘発させた。EPOの硝子体内単回投与(約8mU/眼から約160mU/眼)は,糖尿病発症後1週間(群1)もしくは4週間(群2)のどちらかに行われた。群1又は2は注射後2週目に,及び群2は注射後5週眼に実験に用いた。血液網膜関門(BRB)はエバンスブルー技術によりモニターされた。アポトーシスはTUNELにより検出した。様々な層における網膜の厚さ及び細胞計数は光学顕微鏡で評価した。EMは血管傷害と神経細胞傷害を精査するのに用いた。
結果
網膜内のアルブミン浸透はコントロールレベルまでには下がらなかったにもかかわらず(図10),糖尿病発症1週間後にEPO処理したSTZラットにおいて,EPO処理(100ng/眼)は有意に血液網膜関門(BRB)機能を助ける役目を果たした。硝子体内EPO処理(8−160mU/眼)は,STZ処理ラットにおいては網膜神経細胞のアポトーシスを有意に助ける役目をはたした(図11)。EPO処理は,STZによって引き起こされる死から網膜神経細胞を有意に防いだ/助けた。網膜はSTZラットにおいて薄くなっていき,その変化は糖尿病発症後の様々な時間におけるEPOの硝子体内注射により明らか改善された(図12A)。STZラットにおいてもまた,外核層(ONL)の網膜神経細胞は有意に失われ,糖尿病発症後の様々な時間においてEPO処理をうけたSTZラットのONLの細胞計数は,コントロールラットのONLの細胞計数と同様であった(図12B)。EPO処理はSTZによって引き起こされる死,EMの兆候から網膜神経細胞を有意に防いだ/助けた。STZラットの網膜の超微細構造は明らかに損傷を受けた。しかしながら,網膜細胞は基本的に正常な構造を示した(図13)。
網膜神経細胞のアポトーシスは早期糖尿病網膜症(EDR)の重大な構成要素である。BRB機能と網膜神経細胞死に対する保護で示したように,EPOの硝子体内注射は,網膜でのSTZによって引き起こされる変化を阻止するどころか回復させる。それゆえ,EPOはEDR治療の新しい方法であると思われる。
ウサギでのEPO硝子体内注射における毒性研究
目的
目的は,ウサギに硝子体内注射をした際の様々なEPO投与量での網膜毒性を評価することである。(EPOはUS FDAにより貧血治療に用いられることが承認されている。)
材料と方法
本研究にはニュージーランド白色種ウサギを用い,4つの群に分けた。EPOの4通りの投与量を以下のように調製した:単回注射用として10U/眼,100U/眼,1000U/眼,及び毎月反復注射用として0.6U/眼(通常の治療のための投与量)。それぞれをウサギ(各群においてn=6)の左眼に硝子体内注射し,同量の生理食塩液を反対の眼に偽注射した。細隙灯検査と眼底検査を行い,少なくとも6カ月間,感染,炎症,白内障,その他の毒性反応の兆候があるか観察した。蛍光眼底写真(FFA)は血管の漏出を検出するために行った。
視細胞の機能と他の網膜神経細胞を検査するため,EPO注射前と,注射後の異なる時点(1日目,3日目;1週間目,2週間目,及び4週目;6カ月目。VEPは1ヶ月目,2カ月目,及び3カ月目行った。血液学調査には:細胞計数(ITV前並びにITV後1カ月,2カ月,及び3カ月),ITV直後の血中のEPO濃度,血中または硝子体内中の抗EPO抗体(ITV後1カ月又は3カ月)を含んだ。)においてベースライン フラッシュ網膜電図(ERG)を行った。アレルギー反応もまたモニターした。眼球除去した眼は網膜毒性の組織学的評価に用いた。ウサギはITV後1カ月目,2カ月目,3カ月目に屠殺した。
結果
細隙灯検査と眼底検査により,角膜,前眼房,虹彩,水晶体,硝子体,及び網膜において,異なるEPO投与量の硝子体内注射後2カ月までは異常は見られなかった。前部の炎症,白内障,又は網膜症の兆候も見られなかった(図14)。
蛍光眼底観察法(FFA)によっても,EPO硝子体内注射後,眼底において漏出が見られなかった(図15)。
網膜電図検査(ERG)は光受容細胞と他の関連した網膜神経細胞の機能を評価するいくつかの方法の一つである。本研究において,ERGは網膜機能における早期の変化を検出するために採用した。ERGにおいてフラッシュ刺激に対する反応で異常は見られなかった。これらの群間での有意差は検出されなかった(図16)。
ウサギの網膜は,網膜の厚さと細胞計数を光学顕微鏡下で調べた。いずれのパラメーターにおいても有意差は見られなかった(図17)。
ウサギの網膜におけるEPO毒性に対する組織学的観察により,異常な構造変化や炎症,その他明らかな異常性はを示さなかった(図18)。
結論
ウサギの眼において,EPOの硝子体内注射は炎症,白内障,又は他の眼底の疾患を引き起こさない;BRB機能を維持する;正常な網膜の電気生理学的活性を妨害せず,眼の中の構造変化を引き起こさない。ここに示したデータは,ウサギの眼において少なくとも2カ月間は,EPO(0.6U/眼から1,000U/眼)の硝子体内注射が安全であることを示唆している。
STZラットの網膜対する保護においてEPOを溶解させる種々の溶液の比較
ラットにおける糖尿病は前述の通り,STZ単回腹腔内注射(60mg/kg BW クエン酸緩衝液中)により誘発させた。糖尿病ラットはランダムにEPO処理群,EPO未処理群の2つの群に分けた。治療学的機能に対する溶液の影響を試験するために,EPO(8mU/眼)を4種類の水溶液に溶かした。4種類の溶媒は,生理食塩液(NS),リン酸緩衝食塩水(PBS),平衡塩類溶液(BSS),乳酸ナトリウムリンゲル注射液(リンガー)である。EPOはそれぞれ2μlに溶解させた。偽注射(2μl生理食塩液)を非糖尿病コントロールラット,および,非糖尿病未処理ラットの両方に施した。ラットは糖尿病発症後2週間目にエバンスブルー透過(EBP)実験を行うために屠殺した。EBP実験方法は前述した方法と同様である。
結果
EPOは,4種類すべての溶液に溶解し,全てのEPO(どの溶液中のEPOも)は,溶液の影響を試験するために選んだパラメーターとして,BRB保護効果を示した(図19)。

Claims (24)

  1. 糖尿病網膜症及び/又は哺乳動物の眼の他の網膜疾患を治療する及び/又は予防する方法であって,
    前記方法は,前記哺乳動物の眼の硝子体にエリスロポエチンを投与することを含む,
    方法。
  2. 投与される前記エリスロポエチンの量は,実質的に血管網膜関門の破壊を阻害すること,視覚機能の喪失を抑制すること,視覚機能を維持すること,若しくは視覚機能を改善すること,又は網膜細胞,網膜色素上皮細胞,もしくは脈絡毛細管上皮細胞のアポトーシスを阻害することのうち少なくとも一つに有効な量である,請求項1に記載の方法。
  3. 前記エリスロポエチンは硝子体内注射により投与される,請求項1に記載の方法。
  4. 前記哺乳動物はヒトであり,前記ヒトの眼の硝子体内に投与される前記エリスロポエチンの量は1眼あたり約1.33μg〜約60μgである,請求項1に記載の方法。
  5. 前記哺乳動物はヒトであり,前記ヒトの眼の硝子体内に投与される前記エリスロポエチンの量は1眼あたり約0.23ユニット〜約9.2ユニットである,請求項1に記載の方法。
  6. 前記エリスロポエチンは,ヒト組み換えエリスロポエチンを含む,請求項1に記載の方法。
  7. 前記エリスロポエチンは,約3週間から約3ヶ月までの増分(increment)を一時的に眼に投与される,請求項4に記載の方法。
  8. 前記エリスロポエチンは,検出される糖尿病網膜症のいずれの要素に対しても投与される,請求項1に記載の方法。
  9. 前記エリスロポエチンは,糖尿病が検出された前記哺乳動物に対して,血液網膜関門の破壊,網膜血管細胞アポトーシス,網膜グリア細胞アポトーシス,網膜神経細胞アポトーシス,網膜色素上皮細胞,又は脈絡毛細管上皮細胞アポトーシスの少なくとも一つを実質的に阻害するために投与される,請求項1に記載の方法。
  10. 前記エリスロポエチンは,加齢黄斑変性症を治療する及び/又は予防するために投与される,請求項1に記載の方法。
  11. 糖尿病網膜症及び/もしくは他の網膜疾患を治療するために,哺乳動物の眼の硝子体に投与する薬剤を製造するためのエリスロポエチンの使用。
  12. 前記薬物は,硝子体内注射のための組成物を含む,請求項11に記載の使用。
  13. 組成物は,血液網膜関門の破壊を実質的に阻害する,並びに網膜細胞,網膜色素上皮細胞,及び脈絡毛細管内皮のアポトーシスのうち少なくとも一つを実質的に阻害するために有効なエリスロポエチンの量を含む,請求項11に記載の使用。
  14. 前記哺乳動物はヒトであり,投与される前記エリスロポエチンの量は1眼あたり約1.33μg〜約60μgである,請求項11に記載の使用。
  15. 哺乳動物はヒトであり,投与される前記エリスロポエチンの量は1眼あたり約0.23〜約9.2ユニットである,請求項11に記載の使用。
  16. 前記エリスロポエチンは,ヒト組み換えエリスロポエチンを含む,請求項11に記載の使用。
  17. 前記薬剤は,加齢黄斑変性症,網膜血管閉塞,他の末梢血管拡張の病態,又は網膜血管,脈絡毛細管もしくは網膜色素上皮の漏出の少なくとも一つを治療する及び/又は予防するために使用される,請求項11に記載の使用。
  18. 糖尿病網膜症及び/又は哺乳動物の眼の他の網膜疾患を,治療する及び/又は予防するための医薬組成物であって,
    薬学的に有効なエリスロポエチンの量と薬学的に有効な担体を含む,
    医薬組成物。
  19. 湿潤剤をさらに含む,請求項18に記載の医薬組成物。
  20. 乳化剤をさらに含む,請求項18に記載の医薬組成物。
  21. 緩衝剤をさらに含む,請求項18に記載の医薬組成物。
  22. リン酸緩衝食塩水をさらに含む,請求項18に記載の医薬組成物。
  23. 前記担体は,リンゲル液,生理食塩水,リン酸緩衝生理食塩水,または平衡塩類溶液のうち少なくとも一つを含む,請求項18に記載の医薬組成物。
  24. 前記エリスロポエチンの吸収を遅らせるための薬剤をさらに含む,請求項18に記載の医薬組成物。
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