この発明を理解する上で有用なさらなる用語および前提条件は,この発明の個々の実施形態を説明するときに説明することにする。
この発明の一実施形態の目的は,補聴器がおかれた状況のもとで(in a hearing aid context)実現可能なメモリおよび計算負荷の要求を持つ(with feasible demands to memory and computational load),信号自己類似度に関して適切な特徴(性能,機能)(relevant features)を提供することである。これらの特徴は,その後,後続システム(subsequent systems)に送られて,さらなる解析,推論,および制御決定が行われる。
一実施形態では,補聴器はACIカーネルまたはACI推定手段を備え,補聴器内の信号処理を制御するためにACI特徴がいかに有益な情報を与えるかという点において最適化されたACI特徴(ACI features)を計算する。計算されたACIは,複数の帯域制限バージョン(a number of band limited versions)および一の広帯域バージョン(a wide band version)に分割される。このようにすることで,与えられる自己類似度に対応する周波数帯を直接に観察および比較でき,信号自己類似度のより詳細なイメージを得ることが可能となる。
このような補聴器の一実施形態が図1に示されている。図1は多帯域音声圧縮器(multiband audio compression)および適応フィードバック除去装置(adaptive feedback cancellation)を組込んだ補聴器のブロック図を示している。適応速度コントローラ6,適応フィードバック除去ブロック7,および音声圧縮ブロック8は,それぞれ独立に,ACIカーネル4によって与えられる特徴によってサポートされるシステム内の信号解析を通して,自身の動作を修正する。補聴器はさらに,帯域分割またはバンドパスフィルタ・バンク3を備えており,聴覚障害者のいくつかの周波数帯域にわたる聴力損失を補償するために,一の広帯域音声入力信号を複数の帯域制限音声信号に分割する。
一実施形態では,式2および3の上記自己相関関数を,より妥当な連続的観測可能かつ実際に適用可能なACIに変換する第一のステップは,上記合計(the sum)を,式5にしたがって再帰的更新(a recursive update)に置換することである。
ここで,nは収集された最新のサンプルを示し,フィルタ係数amはローパス・フィルタ関数を生成するためにあらかじめ決められているものである。他の実施形態では,いくつかのフィードバック係数およびフィードフォワード係数の両方を有する他のフィルタ構造を適用して,同等な結果を生成することもできる。上式の最もシンプルなケースは,漏洩積分器(the leaky integrator)である。この結果,式6によって与えられる,処理後入力の指数関数的忘却係数(an exponential forgetting factor of the processed input)が得られる。
ここで,aとして0.5から1の間の値が与えられる。修正自己相関関数(the modified autocorrection function)を,−1から1の範囲のインデックスに正規化するために,この結果は,式7に示すように,rmod(n,0)によって除算される。
式5および6に示す平均関数(the average function)によって,自己相関関数は適度な速度(レート)(a moderate rate)でのみ変化するので,式7の正規化処理を反復して行うことができ,その際のパフォーマンス低下を無視することができる。このようにして,高コストな除算(a costly division)を,式8に示すように,より低コストの乗算(a less costly multiplication)に置換することができる。
ここで,Δはゼロをわずかに上回る小さな数である。後続システムが,ρが所定の閾値ρthresholdを上回るかどうかを判定することのみを必要とする場合,上式は式9のように簡略化することができる。
一実施形態では,妥当性のためのACI特徴のさらなる最適化(a further optimization of the ACI features for relevancy)が,特定の所望のタイムラグまたは時間遅延(j)についてのACI(the ACI on time lags or delays (j) of particular interest)に着目することで行われる。まず,信号を帯域制限して自己相関が生成される。しかしながら,この自己相関は一般にACIを利用する後続システムの関心対象ではない(not of interest for subsequent systems utilizing the ACI)。すなわち,帯域制限によって得られる小さい自己相関(small autocorrelation)を持つタイムラグ(j)のみが計算のために必要である。さらに,ACI特徴が,図1の補聴器にあるような,フィードバック除去システムの適応速度コントローラに送られる場合,実際の関心対象のタイムラグは,フィードバック除去フィルタ状態およびマイクロフォン入力の間の相関量を示すタイムラグである。これらにおいて相関が強すぎる場合またはタイムラグが大きすぎる場合(if the correction is too strong at these or greater time lags),不適応のリスクが生じる。このような状況は上述の適応速度コントローラによって取り扱われ,デンマーク特許出願第200600467号を優先権主張の基礎とする,本件出願人による係属中の2007年4月2日出願のPCT特許出願「Hearing Aid, and a Method for Control of Adaptation Rate in Anti−Feedback Systems for Hearing Aids」にも詳述されており,その内容は参照されてこの明細書に援用される。この観点から,一実施形態では,ACIは一般に,関心対象の(所望の)周波数帯における,補聴器を通した遅延に対応するタイムラグおよび上記遅延よりも大きなタイムラグについてのみ推定される。
一実施形態によると,関心対象周波数帯域以外の波長,すなわち,周波数に対応するタイムラグについてのACI計算を破棄することによって,アルゴリズムの複雑さに対する妥当性のためのさらなる最適化(optimization for relevancy contra algorithm complexity)が行われる。これによって,関心対象周波数帯域以外の理論上支配的な正弦波がそれ以外の自己相関ビン(the remaining autocorrection bins)に影響を及ぼしにくくなるので,帯域分割されたACIの周波数選択性がさらに強化される。
この発明の実施形態では,後続システムにとっての関心対象特徴は,一の周波数帯域における最大の正規化ACI(the maximal normalized ACI)である。したがって,一実施形態では,一の周波数帯域セットにおける自己類似度量および集合的自己類似度を示す(illustrate the amount of self-resemblance within a set of frequency bands and the collective self-resemblance)以下のインデックス(indexes)が,提供される。これによって,特徴ベクトルは,少数の,有益な情報が多いACI特徴(a few very informative ACI features)に縮小される。
これに代わる実施形態は,統合されたACI特徴において(in an unified ACI-feature),最大のポジティブな(正の)自己類似度のインデックス(the most positive index of self-resemblance)を見つけることであり,自己類似度の最大のネガティブな(負の)インデックスを見つけるためのインデックス(複数)が与えられる(there are provided indexes to find the most negative index of self-resemblance)。すなわち,式12および13に示すように,最大自己逆インデックスの信号(the signals most self-opposite index)を見つける。
この他の態様のACI特徴も,後続システムにとって非常に関心の高いものになりうる。特定の実施形態では,この特徴は,ASAアルゴリズム状況において,弦楽器と声とを区別する手段(instrumental)になる。声が検出されると音声認識および了解度について最適化された補聴器の利得ストラテジが誘導され,弦楽器の音が検出されると心地よく聴くことについて最適化された利得ストラテジが誘導される。
他の実施形態による他の後続アルゴリズムは,負の自己類似度を,正の自己類似度と同じように扱う。この場合,ACI情報は,式14および15に示すように,自己類似度の最大絶対値を表す一つの特徴(a single feature)に一本化(統合)(unified)される。
簡単にするために,もちろん限定されるわけではないが,以下では,自己類似度の最大絶対値(the largest absolute magnitude in self-resemblance)を関心対象特徴(the feature of interest)とする。特徴ベクトルに達するためにより計算効率が高い方法の一つは,最も強い自己類似度が見つかった後に正規化処理を行う(to do the normalization procedure after the strongest self-resemblance)ことであり,これにより正規化処理の無用な繰返しが避けられる。
このことを念頭に置くと,除算による正規化は式16のようになる。
反復除算による正規化(the normalization by iterative division)は式17のようになる。
正規化閾値テスト(the normalized threshold test)は式18のようになる。
実現可能なメモリおよび計算負荷の要求の下で,信号自己類似度について妥当なACI特徴を与えるという目的を達成するために,この発明の実施形態では,計算要求およびメモリ使用を低減するさらなる計測(further measures)が提案される。この目的を念頭にして,保存されるタイムラグ信号が関心対象信号のサインに制限される実施形態が提供される(embidiments are provided in which the stored time lagged signal is limitted to the sign of the signal of interest)。信号の完全なダイナミクスを保存するのに代えてサインデータを保存することによって,補聴器システムのメモリ要求が大幅に軽減される。さらに,相関関数を計算するときの乗算は,サイン演算(sign operations)にまで削減されることになるので,これによっても,やはり補聴器の計算負荷が大幅に低減される。これは,式19から明らかである。
さらに別の実施形態では,正規化ACI特徴は,式16,17または18を利用することによって得ることができる。
この発明においてさらに適切なACI特徴を推定する上で,サイン演算子が十分な機能を果たすのは次の理由である。周期信号p(n)および完全ランダム・ノイズ信号s(n)を考える。これらの信号を加算して得られる実例信号x(n)を自己相関の分析の対象として選択する。p(n)がs(n)に対して優勢であれば,s(n)がサイン変化を引き起こす可能性は低い。しかしながら,p(n)のサンプルが振幅において小さい場合はs(n)がx(n)のサインを「ランダム化」する可能性がかなり高くなる。p(n)がゼロであれば,x(n)のサインは完全にランダムである。
に依存する確率関数(dependent probability function)を用いると,x(n)のサインベースの自己相関特徴(the sign based autocorrelation feature on x(n))は驚くほどよく機能を果たす。サイン演算子のさらなる使用は,式20に示すように,本質的に正規化されたアルゴリズムに導かれる。
ここで,○+(○の中に+の符号がある記号)はXOR論理演算子を表す。ρss特徴(ρss feature)の使用は,計算効率が非常に高いACIを導き,上述の他の特徴との特性の違いはわずかである。大振幅のサンプルが小振幅のサンプルよりも優勢である上述の実施形態と異なり,この発明の別の実施形態によると,この方法は,すべてのサンプルの重付けが均等であるので,より安定した自己相関のインデックス(a more stable index of autocorrection)を提供する。
したがって,振幅のシフト(a shift in amplitude)は,特定のサンプル・セットがインデックスを支配することを意味しなくなる。ρssベースのACIが中央自己相関(median autocorrection)である場合には,差異は平均自己相関と中央自己相関との間の差異(the difference between the average autocorrection and the median autocorrection)として解釈することができる。中央自己相関は,ACIを利用する後続システムにより多く依存するが,実施形態によっては,意図どおりのパフォーマンスを発揮させるために,両方のACI特徴が補聴器システムに使用される。
上記提案した方法を組合わせた,集約された有益な情報を与えるACI特徴セット(以下,集約特徴とも呼ぶ)(a set of summarized informative ACI features)(also referred to as summarized features)が,これらの特徴を利用する様々な後続の補聴器システムの解析,推論および制御決定を可能にする。そのような補聴器のさらなる実施形態を,以下に示す。
上述したACI特徴を考慮した実施例による補聴器の聴覚シーン分析(ASA(Auditory Scene Analysis))システムは,補聴器が,音声了解度,快適さ,風切音,合唱,音楽,鳥のような環境音,閉塞などに対してその機能性を最適化すべきかどうかについて決定することができる。特定の実施形態では,上記ACI特徴は,ASAシステムが,最大の正のACI特徴が大きく(a large most positive ACI feature),かつ最大の負のACI特徴が小さい(a small most negative ACI feature)ことによって示される「音声」(speech)と,最大の正のACI特徴が大きく,かつ最大の負のACI特徴が比較的大きい(a comparably large most negative feature)ことによって示される「弦楽器および正弦波」(string instuments and sinusoids)と,ACI特徴が小さいことで示されるノイズ的な音(noise-like sounds)とを区別することを,支援する。ASAシステムは,帯域別の信号エネルギー包絡線に沿う(along with the band specific signal energy envelopes)ACI特徴の長期間構築(the long term development of the ACI features)によって,補聴器ユーザが身を置く一般的な音環境を分類することができる。当業者であれば,この発明にしたがって聴覚シーン識別情報を取得することによって,補聴器内の信号処理を最適化する様々な方法を提案することが可能であろう。
一実施形態による補聴器のフィードバック除去適応フィルタのためのステップ・サイズ制御(SSC(Step Size Control)システムは,ある特定の音に対する不適応のリスク(the risk of maladaption)を,より精密に判定することができる。ACI特徴がホイッスル音または弦楽器の存在を示す場合,ステップ・サイズ制御システムは,ステップ・サイズを縮小するように構成されるか,または適応をただちに完全に停止するように構成される。他方,ACI特徴がノイズ的な音を示す場合,ステップ・サイズ制御システムは適応を促進するように(encourage)構成される。別の実施形態では,ステップ・サイズ制御アルゴリズムの厳密な動作は,適応速度を計算する前に,補聴器の利得や補聴器の指向性システムの有効性のような他の因子(factors)も考慮する。これは,参照されてこの明細書に援用される,2006年3月31日出願の係属中の特許出願PCT/EP2006/061215に詳述されている。
補聴器のホイッスル限界(the whistling limit of the hearing aid)を動的に見つけるために使用される,一実施形態による補聴器の自動ループ利得推定システム(An Automatic Loopgain Estimation system)は,補聴器がホイッスル限界に近いかどうかを決定(判断)することができる。これは,ACI特徴が反対側の耳の補聴器に伝達されている場合には,より一層効果的である。これは,既に言及した2007年4月2日出願の係属中のPCT特許出願「Hearing Aid, and a Method for Control of Adaptation Rate in Anti−Feedback Systems for Hearing Aids」に詳述されている。
これまで記載してきた実施形態は,この発明によって説明されるように,慎重に選択されるACI特徴セット(a carefully selected set of ACI features)が補聴器の機能性を高める手段(instrumental to improve the functionality of the hearing aid)になることを示している。
以下,この発明の実施形態による,実現可能なメモリおよび計算負荷の要求の下で,信号自己類似度について妥当な集約ACI特徴(relevant summarized ACI features)を与える補聴器の実装(implementation)について,図1から4を参照しつつより詳細に説明する。図1は,集約ACI特徴 ACI_Result_[0;K]およびACI_Avg_[0;K]を生成するACIカーネル4を実装する補聴器のブロック図を示している。図4は,この発明にしたがってACI特徴を推定することによって補聴器を制御する 動作ステップ410〜480のフロー図である。図2は,この発明の一実施形態によるACIカーネル4を詳細に示すブロック図である。図3a〜3gは,図2のACIカーネル内にあるサブブロックについてのさらに詳細なブロック図および機能説明である。
図1に示す補聴器は,音声入力信号d(n)を受取るマイク1(ステップ410),およびレシーバ9において発生してその一部がマイク1に戻る音響フィードバックを補償する加算ノード(信号y(n)の符号が負なので減算ノードとも呼ぶ)2を含む。減算ノードは,音声入力信号d(n)からフィードバック除去信号y(n)を減算して,バンドパスフィルタ入力信号e(n)を生成する。バンドパスフィルタ・バンク3は,フィードバック補償されたバンドパスフィルタ入力信号e(n)を複数の帯域制限音声信号vk(n)(k∈[1;K])に分割するk個のバンドパスフィルタを備えている。圧縮器(コンプレッサ)8が,帯域制限音声信号vk(n)のそれぞれに利得を適用して圧縮器出力信号u(n)を生成する。レシーバ9は,プロセッサ出力信号u(n)を出力音に変換する。さらに,適応フィードバック除去ブロック7中の適応フィードバック除去フィルタが,バンドパスフィルタ入力信号e(n),それぞれのフィルタ係数,および適応速度コントローラ6によって与えられる適応速度に基づいて,プロセッサ出力信号u(n)からフィードバック除去信号y(n)を適応的に導出する。
帯域制限信号vk(n)(複数)および広帯域信号e(n)は,その後,ACIカーネル4への入力としてまとめられる(gathered together)。ACIカーネル4は,各帯域制限信号および広帯域信号について,推定特徴セット(a set of estimated features)を出力する(ステップ420)。これらは,聴覚シーン分析ブロック5および適応速度コントローラ6のような補聴器の後続システムに送られる。帯域制限信号vk(n)(複数)はさらに圧縮器8に入力され,圧縮器8でははじめにこれらの入力信号に基づいて信号包絡線(the signal envelopes)を計算する。
ACIカーネル4から送られた特徴および圧縮器8から送られた信号包絡線特徴から,聴覚シーン分析ブロック5は音環境をファジーに分類することができる(able to categorize the sound environment in a fuzzy manner)。その後,このファジー分類は圧縮器8に戻されて,これによって,圧縮器8は,補聴器ユーザの聴力損失,入力音レベル包絡線および音環境分類にしたがって,当該補聴器ユーザのための利得ストラテジを選択することができる。これらの集約特徴に基づいて(based on these summarized features),圧縮器8は,個々の帯域制限音声信号vk(n)のそれぞれに対する利得を計算および適用し,その結果を合算して1つの圧縮器出力信号u(n)にする。
計算された利得パラメータ・セット(the calculated set of gain parameters)は,その後,ACIカーネルから提供されるACI特徴とともに適応速度コントローラ6に送られる。適応速度コントローラ6は,これらの特徴に基づいて,適応およびフィルタリング・ブロック7の適応メカニズムに最適化された適応速度を計算することができ,さらに,特定の実施形態では,適応およびフィルタリング・ブロック7の適応フィードバック除去フィルタのフィルタ係数の調節に最適化された適応速度を計算することができる。さらに,フィードバック経路のシミュレーションおよびフィードバック経路への適応を行うために,圧縮器出力u(n)は適応およびフィルタリング・ブロック7へ送られ,これによって,(フィードバック除去信号とも呼ばれる)フィードバック推定値y(n)が生成される。最後に,上述したように,圧縮器出力u(n)は,デジタル信号u(n)を可聴音波に変換するレシーバ・ユニット9へ送られる。
図2に示されているACIカーネル4は,ダウンサンプリング・ブロック10を含み,このダウンサンプリング・ブロック10は,図3fに示すように,毎N番目のACI_input_[0;K]信号のサンプルをスキップすることによって,計算およびメモリの負荷を係数Nk分削減する(ステップ430)。ダウンサンプリング・ブロック10に続くのは,図3aに示すようなサイン信号sd(n)を抽出する(ステップ440)サイン抽出ブロック11である。サイン抽出ブロックはまた,図3eに示すように,サイン信号sd(n)をサイン記憶ブロック12へ送る。サイン記憶ブロック12は記憶および遅延手段とも呼ばれ,サイン信号sdk(n)に対してDサンプル分の時間遅延を与えることによって,複数の遅延されたバージョンのサイン信号sd(n−Dk)を生成する(ステップ450)。
その後,複数の遅延されたバージョンのサイン信号のサブセット(部分集合)(subsets)が,比較ユニット(複数)によって,遅延されていない音声入力信号の一バージョン(a version of the non-delayed audio input signal)と比較される(ステップ460)。図2に示す実施形態では,各比較ユニットは,図3bに示すcMULTブロック13によって実装される。各信号帯域kについての,最後のMk個のサイン記憶セクションの出力(the outputs of the last Mk sign memory sections)は,それぞれが,図3bに示すように,cMULTブロック13に送られる。各cMULTブロック13は,遅延されたsdk(n)サイン信号に基づいてその出力を選択する。上記サイン信号が正であれば,cMULTブロック13はsxk(n)をその出力として選択し,逆に上記サイン信号が負であれば,cMULTブロック13は−sxk(n)をその出力として選択する。sxk(n)信号として,カーネル・パラメータ入力ACI_type_kに基づいてマルチプレクサ14によって入力されるsdk(n)信号またはオリジナルのxk(n)が,選択される。
その後,比較ユニット(複数)の出力(複数)が平均されて,信号自己類似度の遅延別推定値(複数)(delay specific estimates of the signals self-resemblance)が抽出される(ステップ470)。図2に示す実施形態では,各cMULTブロック13の出力に対して,図3cに示すように,Avg1ブロック15によるローパス・フィルタリングが行われる。Avg1ブロック15の平均処理の時定数は,カーネル・パラメータ入力ACI_SpeedShr_kによって決定される。
その後,ステップ480において,Avg1ブロック15から出力された遅延別推定値から集約特徴(the summarized features)が決定(判定)される。図2に示す実施形態では,cMULTブロックのローパス・フィルタリングされた出力は,ABSブロック16に送られて,ABSブロック16はその入力の絶対値を返す。ABSブロック16から返された信号はすべてMAXブロック17に送られ,MAXブロック17は,利用可能な最強の自己類似度または自己反類似度runi(n)(the strongest available self-resemblance or self-opposite runi(n))を見つける。カーネル・パラメータ入力ACI_type_kがゼロに設定されている場合は,一本化されたACI_Result_k特徴がMAXブロック17の出力runi(n)から直接送られ,そうでない場合,runi(n)は,反復除算による正規化処理を受けてからマルチプレクサ18に送られ,マルチプレクサ18は,選択された自己相関インデックスを出力する。
一実施形態では,ステップ470においてAvg1ブロック15によって理論的に取得可能な最大の信号自己類似度の推定値は,2つの段階を経て見つけられる。最初に,ダウンサンプリングされた信号x(n)がABSブロック19に送られ,ABSブロック19によって修正される(rectified)。次に,修正されたx(n)は,上記のローパス・フィルタ15によって行われたものと同じフィルタ機能性によって,ローパス・フィルタリング20される。
信号自己類似度の理論的に取得可能な最大の推定値をr0(n)とすると,乗算ブロック21によって,正規化ACI特徴の最後の推定値pold(n)とr0(n)が乗ぜられて,信号runi(n)の推定値rest(n)が生成される。信号rest(n)が実際のruni(n)よりも小さい場合,正規化比較ユニットNCU22は,信号pold(n)にΔを加算して正規化ACI特徴をΔだけ大きくすることを決定し,出力puni(n)を生成する。反対に,信号rest(n)が実際のruni(n)より大きいか等しい場合,正規化比較ユニットNCU22は,信号pold(n)からΔを減算することによって,正規化ACI特徴をΔだけ小さくすることを決定する。図3gは,正規化比較ユニット22の機能性を詳細に示している。
別の特定の実施形態では,マルチプレクサ18は,選択されたタイプのACI_resultを,図3dに示す二次ローパス・フィルタ(the secondary low pass filter)Avg2 24に送る。上記二次ローパス・フィルタは,ACI_Avg_[0;K]ベクトルに送られる二次ACI特徴を生成する。この二次特徴ベクトルACI_Result_[O;K]は,一次特徴の形成動向の情報を含み,この情報は,その後補聴器内のさらなる信号処理ユニットにおいて利用することができる。
この発明のさらなる例示的実施形態は,以下のように要約できる。
補聴器が,デジタル化された音声入力信号を受取ることが可能な信号経路,上記信号のサンプリングレートを適切に(as suitable)低減する手段,上記低減されたサンプリングレートの信号のサイン(the sign)を抽出する手段,上記サイン信号を記憶し遅延させる手段,複数の遅延されたバージョンの上記サイン信号のサブセット(subset)を,遅延のない音声入力信号(the audio input signal without delay)と比較する手段,および各比較ユニットの出力を平均して,信号自己類似度の遅延別推定値を抽出する手段(averaging means on each comparing units output to extract a time lag specific estimate of the signals self-resemblance)を備えたものである。
この補聴器はさらに,信号自己類似度の遅延別推定値セット(the set of time lag specific estimates)から信号自己類似度の集約特徴(summarized features on a signals self-resemblance)を取得する手段を備えている。上記集約特徴は,最大の正の(the most positive),または最大の負の(the most negative),または振幅が最大の(the largest in amplitude),信号自己類似度の遅延別推定値(time lag specific estimate of signal self-resemblance)を見つけることによって,決定される。
各比較ユニットは,音声入力信号のサイン(the sign of the audio input signal)および遅延されたサイン信号(the delayed sign signals)に基づいて,サイン出力(a sin output)を生成する。
各比較ユニットは,音声入力信号の振幅,および,上記音声入力信号のサインと遅延されたサイン信号との比較に基づくサインを有する出力(an output with the amplitude of the audio input signal and a sign based on comparing the sign of the audio input signal with the delayed sign signals)を,生成する。
補聴器はさらに,上記集約特徴を,信号自己類似度の理論的に取得可能な最大の推定値(the largest theoretically obtainable estimate of signal self-resemblance)によって除算することにより正規化する手段を備えている。
この正規化処理は,反復除算(iterative division)によって行われ,除算の各反復は,信号自己類似度の計算された推定値の更新(with updates on the calculated estimates of signal self-resemblance)と同時に行われる。
補聴器はさらに,一または複数の正規化された閾値の超過を評価する手段(means for evaluating the excess of one or more normalized thresholds)を備え,この超過は,集約された,正規化されていない自己類似特徴量(the magnitude of a summarized un-normalized self-resemblance)と,信号自己類似度の理論的に取得可能な最大の推定値に当該正規化された閾値を乗じたもの(the largest theoretically obtainable estimate of signal self-resemblance multiplied by the normalized threshold value in question)とを比較することによって,決定される。
上記平均化手段は自己回帰ローパス・フィルタ(an auto regressive low pass filter)によって実装される。
上記補聴器はさらに,集約された自己類似度特徴の長期平均(a long term average on the summarized self-resemblance features)を備えている。
上記補聴器はさらに,信号自己類似度の遅延別推定値セットから,信号自己類似度の集約特徴(summarized features)を取得する手段を備えている。上記集約特徴は,最大の正の,または最大の負の,または振幅が最大の(either the most positive, the most negative or the largest in amplitude),自己類似度の遅延別推定値(time lag specific estimate of self-resemblance)のインデックス・ナンバ(the index number)を見つけることによって,決定される。
補聴器では,複数の音声入力信号が自己類似度に関して評価され,上記音声入力信号は,複数のバンドパスフィルタから派生するものと直接送られる広帯域音声入力信号である。
補聴器システムにおいて自己相関関連特徴(auto correlation related features)を抽出する方法は,デジタル化された音声入力信号を受取り,上記信号のサンプリングレートを適切に低減し,上記低減されたサンプリングレートの信号のサインを抽出し,上記サイン信号を記憶し遅延させ,複数の遅延されたバージョンの上記サイン信号のサブセットを,遅延のない音声入力信号と比較し,比較出力を平均して信号自己類似度の遅延別推定値を抽出する。
この方法はさらに,信号自己類似度の遅延別推定値セットから,信号自己類似度の集約特徴を取得する。上記集約特徴は,最大の正の,または最大の負の,または振幅が最大の,信号自己類似度の遅延別推定値を見つけることによって決定される。
上記比較ステップは,音声入力信号のサインと遅延されたサイン信号とに基づいて,サイン出力を生成する。
上記比較ステップは,音声入力信号の振幅を有し,かつ音声入力信号のサインを遅延されたサイン信号と比較した結果に基づくサインを有する出力を生成する。
この方法はさらに,上記集約特徴を,信号自己類似度の理論的に取得可能な最大の推定値によって除算することで正規化するステップを含む。
この正規化処理は,反復除算によって行われ,除算の各反復は,信号自己類似度の計算された推定値の更新と同時に行われる。
この方法はさらに,一または複数の正規化された閾値の超過を評価するステップを含み,この超過は,集約された,正規化されていない自己類似特徴の値と,信号自己類似度の理論的に取得可能な最大の推定値に当該正規化された閾値を乗じたものとを比較することによって,決定される。
上記平均化ステップは自己回帰ローパス・フィルタによって実行される。
この方法はさらに,集約された自己類似度特徴の長期平均をとるステップを含む。
この方法はさらに,信号自己類似度の遅延別推定値セットから,信号自己類似度の集約特徴を取得するステップを含む。上記集約特徴は,最大の正の,または最大の負の,または振幅が最大の,自己類似度の遅延別推定値のインデックス・ナンバを見つけることによって,決定される。
この方法では,複数の音声入力信号が自己類似度に関して評価され,これらの音声入力信号は,複数のバンドパスフィルタから派生するものと,直接送られる広帯域音声入力信号とである。
補聴器内の信号処理を制御する方法は,補聴器内の一または複数の信号の自己相関インデックスを推定し,この推定値に基づいて補聴器内の信号処理を制御するステップを含む。
補聴器は,信号処理手段,補聴器内の一または複数の信号の自己相関インデックスを推定する手段,および推定された自己相関インデックスを利用して信号処理を制御する制御手段を備えている。
上述の特徴のすべての適切な組合わせは,それらの組合わせのかたちで明示的に説明されていなくても,この発明に属すると見なされるべきである。
この発明の実施形態では,この明細書に記載の補聴器は,補聴器に適した信号処理装置(たとえば,デジタル信号プロセッサ,アナログ/デジタル信号処理システム(フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む),標準的なプロセッサ,または特定用途向け信号プロセッサ(ASSPまたはASIC)など)に実装されることが可能である。明らかに,システム全体が1つのデジタルコンポーネントに実装されることが好ましいが,一部の要素が(当業者には既知である)他の様式で実装されてもよい。
この発明の実施形態による補聴器,方法,および装置は,任意の好適なデジタル信号処理システムに実装されてもよい。補聴器,方法,および装置は,たとえば,適合セッションにおいてオージオロジストによって使用されることも可能である。この発明による方法は,この明細書に記載の実施形態による方法を実行する実行可能プログラム・コードを含むコンピュータ・プログラムに実装されてもよい。クライアント・サーバ環境が使用される場合,この発明の一実施形態は,この発明によるシステムを具現化し,この発明による方法を実行するコンピュータ・プログラムをホストする,リモートサーバ・コンピュータを備える。別の実施形態では,この発明によるコンピュータ・プログラムを記憶するために,コンピュータ可読記憶媒体(たとえば,フロッピーディスク,メモリスティック,CD−ROM,DVD,フラッシュメモリ,または他の任意の好適な記憶媒体)のようなコンピュータ・プログラム製品が提供される。
さらなる実施形態によると,当該プログラム・コードは,デジタル聴取装置のメモリまたはコンピュータ・メモリに記憶され,補聴器の装置自体,または補聴器の処理ユニット(CPUなど)によって,または,上述の実施形態による方法を実行する他の任意の好適なプロセッサまたはコンピュータによって実行されることが可能である。
この発明の原理を,この発明の実施形態において説明および図示してきたが,この発明が,そのような原理から逸脱することなく,構成および細部において修正可能であることは,当業者であれば理解されよう。この発明の趣旨から逸脱することなく,この発明の範囲内において変更および修正が可能であり,この発明は,そのような変更および修正をすべて包含する。