JP2009529858A - ビール醸造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、完成したビールの風味及び/又は風味安定性を改善するべくグルコースオキシダーゼを含まない又は基本的にこれを含まないカタラーゼを含む酵素組成物を添加する段階を含むビール醸造方法に関する。

Description

本発明は、完成したビールの風味及び/又は風味安定性を改善するべくグルコースオキシダーゼを伴わない又は基本的にこれを伴わないカタラーゼ組成物を添加する段階を含むビール醸造方法に関する。
ビールの風味安定性を改善するために、醸造プロセスにおいてカタラーゼ及びグルコースオキシダーゼを含む酵素組成物を適用することは既知である。しかしながら、カタラーゼ−グルコースオキシダーゼ組成物により得られた結果は、完全には成功しておらず、グルコースオキシダーゼと亜硫酸塩が魅力的な代替案となりうることが示唆されてきた(Blockmansら、ASBC Journal 1987年、第45巻、85〜90頁)。かくして、ビールの風味安定性を改善するためのさらなる方法に対するニーズが存在する。
本発明者は、このたび、グルコースオキシダーゼを伴わないカタラーゼ組成物を適用することによって酵素処理の効果が大幅に改善できるということを発見した。従って、本発明は、完成したビールの風味及び/又は風味安定性を改善するために、マッシュ、発酵用麦汁又は発酵済みビールに対してグルコースオキシダーゼを含まない又は基本的にこれを含まないカタラーゼ(E.C.1.11.1.6)組成物を添加する段階を含んで成るビール醸造方法を提供している。
発明の詳細な説明
ビール醸造プロセスは、当業者にとっては周知である。従来の手順は、以下のように概略的に説明することができる。すなわち、出発材料は、モルト化した(すなわち加湿し、発芽させ、その後乾燥させた)大麦及び/又はモルト化していないグリストと呼ばれる副原料である。グリストをすりつぶし水と混合させ、加熱し攪拌するマッシングの間、炭水化物は、麦芽中に天然に存在する酵素に助けられて発酵可能な糖へと分解される。マッシングの後、清澄な麦汁を得るためには、固体(使用済み穀物粒子及び添加物)と液体抽出物(麦汁)を分離する必要がある。固体は大量のタンパク質、加工度の低いでんぷん、脂肪質材料、ケイ酸塩、及びポリフェノール(タンニン)及びタンパク質を含有することから、麦汁のろ過は重要である。ホップを添加した後、麦汁を沸とうさせる。こうしてポリフェノールの沈殿が発生する。冷却して沈殿物を除去した後、完成したビール麦汁(a)を曝気し、酵母を添加する。標準的に5〜10日間持続する主発酵の後、大部分の酵母を除去し、いわゆる若ビール(b)を標準的に0〜5℃の低温で1〜12週間貯蔵する。この期間の後、残りの酵母はポリフェノールと共に沈殿する。残った余剰のポリフェノールを除去するために、ろ過を実施する。ここで、発酵したビール(c)を、びん詰めに先立ってカーボネーションすることができる。二酸化炭素は、知覚される「ふくよかさ」又は「ボディ」に貢献するばかりでなく、風味増強剤としても貢献し、発泡潜在力を増強するためにも作用し、製品の寿命を延ばす上でも重要な役割を果たす。
理論により束縛されることはないが、モルト化及びマッシング中の酸化プロセスは、びん詰めされたビールにおけるオフフレーバー及び風味不安定性の主たる原因であると考えられている。最も重要な酸化生成物はDMS(硫化ジメチル)、トランス−2−ノネナール(T2N)である。DMS及びT2Nは、ビール中の重大なオフフレーバーとなる。酸化の原因及び活性化酸素の形成は、モルト化プロセス中に形成されるリポキシゲナーゼ、及び遊離ラジカル及び過酸化水素の形成を導く機序である反応性銅(Cu+)と鉄由来の非酵素的酸化に起因する。天然麦芽カタラーゼは、麦芽中の酸素ラジカルのレベルを低減させる。しかしながら、天然カタラーゼは、モルト化及び初期マッシング段階の間に容易に不活性化される。醸造プロセスに対するカタラーゼの応用は、当該技術分野において周知である(欧州特許第1122303号)。しかしながら、先行する出願には、カタラーゼならびにグルコースオキシダーゼを含む酵素組成物の使用が含まれている。グルコースオキシダーゼを含まない又は基本的にこれを含まない、カタラーゼを含む酵素組成物を使用することにより、風味及び/又は風味安定性に対するプラスの効果の増大が達成される。理論により束縛されるわけではないが、本発明のプロセスによって達成される風味安定性に対する効果の増大は、グルコースオキシダーゼにより形成されるH22に起因する酸化生成物の量の減少によって説明することができる。
本発明に関連して、「基本的にグルコースオキシダーゼを伴わない」という用語は、酵素組成物中のグルコースオキシダーゼ活性対カタラーゼ活性の比GODU/CIUが1未満、好ましくは0.75未満、例えば0.50未満、0.25未満、0.10未満、0.50未満、0.25未満、0.10未満、0.05未満、0.01未満、0.001未満、0.0001未満そして最も好ましくは0.00001未満であるものと理解される。好ましくは、グルコースオキシダーゼ活性は検出レベルより低い。
本発明に従うと、カタラーゼを含む酵素組成物が醸造プロセス中に添加される。酵素組成物は、全く又は基本的に全くグルコースオキシダーゼを含むべきではない。カタラーゼを含む酵素組成物は、プロセス中の任意の段階で、例えばマッシュ、ビール麦汁、若ビール及び/又は発酵済みビールに添加することができる。好ましくは、カタラーゼを含む酵素組成物は、マッシング段階の前及び/又はその最中に添加される。カタラーゼを含む酵素組成物は好ましくはグリストと水の混合物、マッシュに添加される。カタラーゼは、マッシュ1kgにつき0.02〜200mgの酵素タンパク質(EP)、好ましくはマッシュ1kgにつき0.2〜20mgの酵素タンパク質(EP)、より好ましくはマッシュ1kgあたり1〜10mgの酵素タンパク質(EP)の量で添加可能である。カタラーゼは、マッシュ1kgあたり1CIU〜10mill CIU、好ましくはマッシュ1kgあたり10CIU〜1mill CIU、より好ましくはマッシュ1kgあたり100CIU〜0.1millCIU、そしてさらに1層好ましくはマッシュ1kgあたり1000CIU〜1000CIUの量で添加可能である。
好ましくは、カタラーゼは、真菌及び細菌から単離されたカタラーゼといったような微生物カタラーゼである。好ましくは、カタラーゼは、スキタリジウム(Scytalidium)属、好ましくはスキタリジウム・セルモフィルム(S.thermoplilum)の菌株、アスペルギルス(Aspergillus)属、好ましくはアスペルギルス・ニゲル(A.niger)の菌株、ミクロコックス(Micrococcus)属、好ましくはミクロコックス・ルテウス(M.luteus)菌株に由来する。
好ましくは、グルコースオキシダーゼを伴わない又は基本的にこれを伴わない、カタラーゼを含む酵素組成物は、非組換え型生産菌株から誘導された酵素組成物の精製の結果もたらされる一成分組成物である。酵素を含むポリペプチドの精製方法は、当業者にとって周知である。
より好ましくは、カタラーゼを含む酵素組成物は組換え技術によって生産される。組換え技術により、グルコースオキシダーゼを伴わない又は基本的にこれを伴わない組成物といったような基本的に純粋なカタラーゼを含む酵素組成物を得ることができる。酵素を含むポリペプチドの組換え生産方法は、当業者にとって周知である。
組換え技術により生産される好ましい市販の酵素組成物は、NovozymesA/S社からTerminox UltraTMとして、及びGenencor Int.からFereolaseとして入手可能である。Aspergillus nigerから誘導された好ましい市販の一成分酵素組成物が、NovozymesA/SからCatazymeとして入手可能である。
好ましい実施形態においては、該酵素組成物は同じくラッカーゼを含む。
本発明のプロセスにより生産されるビールは、あらゆるタイプのビールであってよい。好ましいビールタイプとしてはエール、ストロングエール、スタウト、ポーター、ラガー、ビター、エクスポートビール、モルトリカー、発泡酒、高アルコールビール、低アルコールビール、低カロリービール又はライトビールが含まれる。
該プロセスは、発酵済み麦汁に対しシリカヒドロゲル、珪藻土及び/又はポリビニルポリピロリドン(PVPP)を添加し、ビールの色を明るくするためにろ過する段階を含み得る。
本発明のプロセス中に適用されるカタラーゼは、重要なオフフレーバー追跡化合物の濃度削減効果をもつ。好ましくは、麦汁及び/又はビールのDMS濃度は、従来のマッシング手順により生産される麦汁又はビール中のレベルに比べて、例えばそれぞれ標準的なCongressマッシング手順により生産される麦汁又はビール内のレベルとの関係において少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも60%だけ削減される。好ましくは、麦汁又はビールのT2Nの濃度は、それぞれ従来手順により生産された麦汁又はビール内のレベルと比べて、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%又は少なくとも60%だけ削減される。
カタラーゼ活性
カタラーゼ活性は、CIU単位で測定することができる。カタラーゼは一次反応の触媒として作用する:
2H22→2H2O+O2
過酸化水素の分解は、240nmでの分光光度法を用いて監視される。規定のH22濃度での吸光度の規定の減少にかかった時間は、カタラーゼ活性の1つの表現である。1CIUは、pH7.0及び25℃で1分あたり1μMのH22を分解し、H22濃度を10.3から9.2mMまで低減させる酵素活性として定義づけされる。
反応条件
酵素濃度 約100CIU/mL
基質濃度 10.3mMのH22
緩衝液 50mMのリン酸塩
温度 25℃
pH 7.0
検出
波長 240nm
吸光度範囲 0.450〜0.400
時間範囲 0.267〜0.400分(16〜24秒)
CIU標準方法(EB−SM−0250.02/01)の詳細な記述は、要請に基づいてNovobymesA/Sから入手可能である。
グルコース−オキシダーゼ活性
グルコース−オキシダーゼ単位(Glucose-Oxidase Unit)(GODU)は、1分あたり1μmolのβ−D−グルコースを酸化させる酵素の量である。グルコースオキシダーゼ(β−D−グルコース:酸素−1−オキシドレダクターゼ、EC1、1、3.4)は、酸素の存在下でβ−D−グルコースをΔ−グルコノ−ラクトン及び過酸化水素へと酸化する。生成された過酸化水素はペルオキシダーゼ(POD)の存在下でABTS−R(2,2−アジノ−ジ(3−エテルベンズチアゾリン)−6−スルホナート)を酸化する。こうして緑青色が生成され、これは405nmで測光的に測定される。
ベータ−D−グルコース+O2 ―――――→ デルタ−グルコノラクトン+H22
GOD、30℃、pH5.6
22+ABTSred ―――――→2H2O+ABTSox
POD
反応条件
基質 グルコース90mM(16.2g/L)
ABTS 1.25mM(688mg/L)
グルコースオキシダーゼ 0.0061〜0.0336GODU/mL
ペルオキシダーゼ(POD) 2930U/L
緩衝液 酢酸塩、100mM
pH 5.60±0.05
温度 30℃±1
反応時間 36秒(8×4.5秒)
波長 405nm
GODU標準方法(EB−SM−0244.02)の詳細な記述は、要請に基づいてNovozymesA/Sから入手可能である。
材料と方法
電子スピン共鳴(ESR)分光法
ビール風味安定性の予測のためには、今まで数年にわたり、高い温度(60℃)でのビール熟成(aging)の加速を介したビールのいわゆる遅延時間(log time)を決定する目的で、電子スピン共鳴(ESR)分光法が使用されてきた。この方法によって決定された遅延時間値は、主として還元性化合物(例えばSO2、アスコルビン酸)に基づきそれ自体酸化的ビール安定性に直接結びつけられる、ビール内在性の抗酸化潜在力についての基準として考えられている。
ESR分光法による遅延時間測定は、加速されたビール熟成(aging)中のビール内でのラジカル生成の間接的検出に基づいている。形成された短命の反応性ラジカルは、スピントラップでの捕捉及びESR分光法を用いた長寿命のスピンアダクツの検出によって監視可能である。
一定の時間、ビール内在性抗酸化活性によってラジカル生成を遅延させるか又は妨げることが可能である(遅滞期(log phase))。遅滞期の後、ラジカルの量は経時的に急速に増加し始める。
内因性抗酸化潜在力(EAP)は、63℃まで加熱され大気中酸素に曝露された時点で形成されるラジカルを急冷するビール試料の自然の能力である。ESRシグナル内の遅滞期が長くなればなるほど、ビール中のEAPは高くなる。この考え方によると、ラジカルはビール内で自然に形成されることになる。異なるビールを比較するために、所定の時間における合計ESR(T300−700)シグナルは、なおも63℃で或る時点において形成された大気に曝露されているラジカルの量と同等である。
BAX(SP)=EAP−値/△SO2−含有量〔分*1/mg〕として定義される飲料抗酸化指数(BAX)は、ビールに対する混入SO2の影響、およびビール内に存在する天然抗酸化物質との相互作用を測定する。
高EAPは高BAXと同様、より優れたビール貯蔵安定性に相関される(Uchidaら、1996年、J.Am.Brew.Chem. 第54号、205〜211頁、Andersenら、1998年、J. Agric. Food Chem.1998年、第46巻、1272〜1275頁、Andersenら、2000年、J. Agric. Food Chem.2000年、第48巻、3106〜3111頁)。
実施例1
35%の麦芽(Esperanza Riego)、モルト化されていない大麦15%及び50%のトウモロコシ粗粒を含むグリスト(grist)からビール麦汁を生産した。該グリストを0ppmのカタラーゼ(対照)、2ppmのカタラーゼ(mg/kg DSとして)及び10ppmの対照と共にマッシングした。カタラーゼは、132000 CIU/mlの活性をもちかつ検出可能なグルコースオキシダーゼ活性をもたないアスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)からの高度に精製されたカタラーゼであった。麦汁を醸造用酵母でラガービールとなるまで発酵させた。発酵レストからの移送中に、若ビールに対して、34gr/HlのBritesorb及び2gr/Hlのナトリウムエリトルベートといった添加剤を添加した。
麦汁とビールを分析した:結果は表1及び2に示されている。
Figure 2009529858
Figure 2009529858
ビールを、訓練された味覚審査員によって実施される感応分析に付した。強制的安定性試験のための手順は、攪拌下で24時間そして38℃で3日間であった。風味安定性のスケールは1〜7までである。1は酸化味(taste of oxidation)が不在であることを表わし、7は酸化度(degree of oxidation)の高いビールである。結果は表3に示されている。
Figure 2009529858
実施例2
100%の大麦ピルスナ麦芽を用いて、古典的なドイツピルスナタイプのビールを醸造した。マッシング段階の間に酵素を添加し、その後に麦汁沸とう、熟成(maturation)及びびん詰めを行なった。使用した酵素は、グルコースオキシダーゼ副活性(side activity)を含むアスペルギルス・ニゲル(A.niger)カタラーゼ組成物(Catazyme(登録商標))及びグルコースオキシダーゼ副活性を含まないスキタリジウム・セルモヒルム(Scytalidium thermophilum)カタラーゼ組成物(Terminox Ultra(登録商標))であった。
びん詰めしたビールを20℃で貯蔵し、4週間後及び12週間後に分析した。
Figure 2009529858
実施例3
大麦ピルスナ麦芽及びコーンスターチ添加物を用いてピルスナタイプのビールを醸造した。マッシング段階の間に酵素を添加し、その後に麦汁沸とう、熟成(maturation)及びびん詰めを行なった。使用した酵素は、グルコースオキシダーゼ副活性を含むA.nigerカタラーゼ組成物(Catazyme(登録商標))グルコースオキシダーゼ福活性を含まないアスペルギルス・ニゲル(A.niger)カタラーゼ組成物の精製済み試料、及びグルコースオキシダーゼ副活性を含まないスキタリジウム・セルモヒルム(Scytalidium thermophilum)カタラーゼ組成物(Terminox Ultra(登録商標))であった。
びん詰めしたビールを20℃で貯蔵し、120日後に分析した。
Figure 2009529858

Claims (7)

  1. 完成したビールの風味及び/又は風味安定性を改善するべくマッシュ、発酵用麦汁、若ビール及び/又は発酵済みビールに対しカタラーゼ組成物を添加する段階を含む、ビール生産方法において、該カタラーゼ組成物がグルコースオキシダーゼを含んでいない又は基本的にこれを含んでいない、ビール生産方法。
  2. 前記カタラーゼが、細菌又は真菌から誘導可能であるような微生物カタラーゼである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記微生物カタラーゼが、真菌、特にスキタリジウム(Scytalidium)属、好ましくはスキタリジウム・セルモフィルム(S.thermoplilum)、アスペルギルス(Aspergillus)属、好ましくはアスペルギルス・ニゲル(A.niger)及び/又はミクロコックス(Micrococcus)属、好ましくはミクロコックス・ルテウス(M.luteus)に属する真菌から誘導可能である、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
  4. 前記カタラーゼが組換え技術によって生産される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記酵素組成物がさらにラッカーゼを含む、請求項3に記載の方法。
  6. ビールの生産プロセスにおける、グルコースオキシダーゼを伴わない又は基本的にこれを伴わない、カタラーゼを含む酵素組成物の使用。
  7. ラッカーゼが存在する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酵素組成物の使用。
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