本発明は、個体に局所適用するための様々な皮膚及び美容組成物であって、胚性幹細胞、例えば非限定的に、ヒト胚性幹細胞(hESC)又は他の前駆細胞を含む胚性幹細胞により馴化された培地、つまり「馴化培地」を含む組成物、及び関連組成物、並びに方法を提供する。
本発明の1の実施態様では、当該組成物は、個体の皮膚に適用するために剤刑される。このような皮膚又は美容組成物における馴化培地の量は、未処理の皮膚に比べた際に、治療された個体、特に適用部位において、皮膚の健康又は外観において検出可能な改善を提供するために有効である量である。このような組成物での皮膚治療は、実際の加齢若しくは太陽に晒されることから生じる紫外線による老化、又はその両方のため生じる加齢などの皮膚に対する傷又は損傷により引き起こされるか又はこれらに付随する状態の改善をもたらすことができる。皮膚の老化は、しわ、色素沈着領域(しみ)の出現、皮膚の菲薄化、弾力性の喪失、及び他の不所望な特徴をもたらす。このような治療により改善することができる他の皮膚状態としては、例えばにきび又は他の原因から生じる瘢痕形成、不規則な色素沈着などが挙げられる。このような組成物は、皮膚の加齢の効果を和らげることができ、1以上の以下の利点:若く、健康で、輝く皮膚、均等であるか又は無様ではないきめの状態及び/又はきめなどの皮膚の若返り効果;しわ又は小じわ(fine line)、表面の粗さ、(例えば、ほほ、あご、又は非体の組織における)しわ又はたるみ、表面血管、そばかすの数、大きさ、及び色素沈着、赤み、にきび又は他の原因からの瘢痕などの特徴の外観の除去又は低下;並びに毛穴の大きさと外観の低下を与えることができる。
ある実施態様では、本発明の組成物は、ローション、クリーム、オイル、ジェル、例えばヒドロゲル、粉末、セラム、軟膏、ファンデーション、フェイシャルマスク、リップケア製品、日焼け止め、ヘアケア製品、例えばシャンプー、コンディショナー、例えばディープコンディショナー、ヘアケアトリートメント、ホットオイルトリートメントなど、スキンクレンザー、エクスフォリアン、コンパクト製剤などを含む。
定義
「抗酸化物質」は、酸化又はフリーラジカル生成を抑制又は予防する任意の物質を包含するように広く使用される。こうして、抗酸化物質は、酵素及び他の化合物であって、非限定的に皮膚などの組織において、とりわけ紫外線及び環境汚染物質により産生されるフリーラジカルの損傷効果を少なくとも部分的に対抗することができる他の化合物を含む。例えば、皮膚の抗酸化防御システムは、抗酸化酵素及び一群の低分子量抗酸化物質(LMWA)を含む。LMWAは、直接又は間接的に、ラジカル酸素種と相互作用することにより、少なくとも部分的に酸化損傷を予防することが示された。代表的な抗酸化物質は、システイン、グルタチオン、グルタチオン・ジスルフィド、グルタチオン過酸化物、グルタチオン・レダクターゼ、カタラーゼ、ビタミンE、例えばα-及びγ-トコフェロール、アスコルビン酸、ユビキノール9、ユビキノン9などである。抗酸化物質についての議論は、とりわけ、Kohenら、Toxicology 148:149-157 (2000); Kohen, Biomed. Pharmacother. 53:181-192 (1999); Kohenら、Methods of Enzymol. 300: 285-90, Academic Press (1999); Miyachi, Dermatol. Sci. 9:79-86 (1995);及び Stohs, Basic Clin. Physio. Pharmacol. 6:206-228 (1995)に見出だすことができる。当業者は、本明細書に記載される馴化培地中の任意及び全ての培養物由来の抗酸化物質が、本発明の範囲に含まれるということを理解するであろう。
「基礎培地」は、アミノ酸、ビタミン類、塩、及び栄養物質の溶液であって、培養物中での細胞増殖をサポートするのに効果的である溶液を指すが、通常これらの化合物は、追加の化合物が添加されない限り、細胞増殖をサポートすることはない。栄養物質は、細胞により代謝されうる炭素源(例えば、グルコースなどの糖)、並びに細胞の生存に必要とされる他の化合物を含む。これらは、当該化合物を合成するために必須であるタンパク質をコードする1以上の遺伝子がないため、細胞自体が合成できない化合物であり(例えば必須アミノ酸)、当該細胞が合成できる化合物については、その特定の発達段階のため、必須生合成タンパク質をコードする遺伝子が十分なレベルで発現されていない化合物である。多くの基礎培地は、哺乳動物細胞培養の分野において知られており、例えばダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ノックアウトDMEM(KO-DMEM)、及びDMEM/F12である。しかしながら、bFGF、インスリン、及びアスコルビン酸を添加することができ、そして霊長類始原幹細胞(primate primordial stem cells)を実質的に未分化状態で増殖させることをサポートする任意の基礎培地を使用することができる。
「馴化培地」は、当該培地中で培養された胚性幹細胞、好ましくはヒト胚性幹細胞に由来する可溶性因子(培養由来増殖因子)をさらに補われた増殖培地を指す。細胞培養から馴化培地を単離する技術は当該技術分野に周知である。知ってのとおり、馴化培地は、好ましくは実質的に細胞を伴わない。この文脈では、「実質的に細胞を伴わない」は、分離元の培養物と比べて、単位体積あたり約10%未満、好ましくは約5%、1%、0.1%、0.01%、0.001%、及び0.0001%未満の数の細胞しか含まない馴化培地を指す。本明細書に使用される場合、「馴化培地」という語句は、胚性幹細胞の増殖により馴化された培地であって、濃縮、抽出により、或いは保存、効力の増加、安定性の改善、不純物の除去などの他の手段により処理された培地を包含する。こうして、馴化培地は、例えば以下に定義される抽出物を含む。
美容医薬という用語は、当該製品の使用者に効果を与える少なくとも1の生理学的に活性な成分、及び少なくとも1の美容医薬として許容される担体を含む製剤又は組成物を指す。美容医薬は、特定の適用及び適切な条件下において医薬又は薬剤様の利得を提供しうる化粧品としてみなされてもよい。特定の適用では、例えば、美容医薬は、皮膚の基底構造に影響を及ぼし、しわの深さを低減し、或いは皮膚の光酸化又は老化の効果を元に戻すか又は軽減することもある。美容医薬は、スキンケア製品、ヘアケア製品、及びサンケア製品として特に有用であることもある。ある実施態様では、美容医薬組成物は、少なくとも1のリポソームを含むデリバリーシステム、シクロデキストリン、ポリマーシステム、又はヒアルロン酸、又は関連化合物を含む。美容医薬組成物は、美容医薬として許容される担体を含む。局所適用に適している医薬として許容される担体又は製剤は、一般的に美容医薬として許容される担体又は製剤であろう。局所用の化粧又は美容医薬用軟膏、ローション、又はゲル組成物は、通常、約1〜99%、約5〜95%、約20〜75%、又は約5〜20%の濃度の活性成分を含む馴化培地又はその抽出物を、化粧品として許容される担体又は美容医薬として許容される担体、例えば医薬クリーム基剤、水中油乳濁液、油中水乳濁液、ゲルなど中に含む。局所使用用の様々な化粧及び美容医薬組成物は、以下に詳細に記載される様に、馴化培地又は抽出物を含む液滴、チンキ剤、ローション、クリーム、軟膏、セラム、溶液、及び軟膏、並びに適切な担体を含む。各組成物中の馴化培地又は抽出物の最適割合は、組成物製剤及び所望される治療効果によって変動する。
「培養物由来」という語句は、細胞を培養しそして栄養をあたえるために使用される開始細胞培養培地に存在しないが、培養された細胞により産生され、そして培地中に含まれることになる馴化細胞培養培地の成分を指す。培養由来の意味には、馴化培養前の培地に最初から存在したが、その濃度が培養過程の間に増加した化合物も含まれる。
「合成」培地は、生化学的に規定された構成物質のみから構成される生化学的に規定された培地を指す。合成培地は、既知の化学組成を有する構成物質のみを含むこともある。合成培地は、既知のソースに由来する構成物質を含むこともある。例えば、合成培地は、既知の組織又は細胞から分泌される因子及び他の組成を含んでもよい。しかしながら、合成培地は、このような細胞の培養物からえた馴化培地を含まないであろう。こうして、「合成培地」は、必要であれば、培養培地を形成するために特定の化合物を含むこともある。これは、非分画馴化培地のサンプル中で検出できる少なくとも1の成分を取り除くために分画された馴化培地の一部を含む程度である。ここで、馴化培地の1以上の検出可能な成分を「実質的に除く」ことは、馴化培地から検出可能な既知の成分の少なくともある量を取り除くことを指し、その結果、霊長類幹細胞を長期間実質的に未分化の状態で培養することをサポートする能力の点で未分画の馴化培地とは異なっている分画済みの馴化培地をもたらす。馴化培地の分画は、検出可能な成分を取り除くために適した任意の方法(又は、方法の組み合わせ)、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、免疫沈降などにより行なわれうる。同様に、「合成培地」は、動物由来の血清成分、例えばヒト血清成分を含むこともある。この点で、「既知」は、化学組成物又は構成物質に関する技術における当業者の知識を指す。多能性(pluripotent)幹細胞培養用の合成培地は、米国特許出願60/435,991号に開示される(20070010011として公開される)。
「胚性生殖細胞」又は「EG細胞」は、精子又は卵になることが運命付けられた胚又は胎児の始原生殖細胞由来の細胞である。EG細胞は、胚性幹細胞に含まれ、本発明に従って培養されうる。
「胚性幹細胞」又は「ES細胞」は、動物(例えば、霊長類、例えばヒト)胚、好ましくは約8週齢未満である胚から得られた細胞である。始原胚性幹細胞を単離するための好ましいステージの胚として、着床前ステージの桑実胚又は胚盤胞の胚が挙げられる。細胞を幹細胞と特徴決定するための周知の基準は、本明細書に表される。このような基準のリストについては、例えば、Hoffman and Carpenter, Nature Biotech. 23:699-708, 2005を参照のこと。
「細胞外マトリクス」(ECM)又は「マトリクス」は、フィーダー細胞により合成された細胞外マトリクスにより提供されるのと同じ、細胞増殖をサポートする条件を実質的に提供する1以上の物質を指す。マトリクスは、支持体上に提供されてもよい。或いは、当該マトリクスを含む成分は、溶液で与えられてもよい。こうして、ECMは、細胞の外側に固定された全ての分離された分子を実質的に包含する。in vivoでは、ECMは、細胞外スペースの秩序を提供し、そして分化した組織及び器官を樹立、分離、及び維持するのに関する機能として働く。ECMは、例えば、結合組織及び基底膜において発見される複雑な構造であり、基底ラミナとも呼ばれる。結合組織は、通常、細胞により天然に分泌されたECMにより取り囲まれる単離された細胞を含む。ECMの成分は、成長因子及び分化因子、サイトカイン、メタロプロテアーゼ(MMP)、メタロプロテアーゼの組織阻害剤(TIMPs)、及び細胞増殖、移動、及び分化を制御する他の可溶性因子と結合することが示された。ECMの記載及びその成分は、とりわけ、「Guidebook to the Extracellular Matrix, Anchor, and Adhesion Proteins」第二版, Kreis and Vale編, Oxford University Press, 1999 ("Kreisら");Geigerら、Nature Reviews Molecular Cell Biology 2:793- 803, 2001; Iozzo, Annual Review of Biochemistry, 1998, Annual Reviews, Palo Alto, Calif.; Boudreau and Jones, Biochem. J. 339:481-88, 1999; Extracellular Matrix Protocols, Streuli and Grant共著, Humana Press 2000; Metzler, Biochemistry the Chemical Reactions of Living Cells,第二版、vol. 1, 2001, Academic Press, San Diego,特に第8章; 並びにLanzaら、特に第4章及び第12章に見出すことができる。
本発明のある実施態様として、ECMの少なくとも1の成分が挙げられる。ある実施態様では、細胞外マトリクス成分は、少なくとも1のタンパク質、少なくとも1の糖タンパク質、少なくとも1のプロテオグリカン、及び少なくとも1のグリコサミノグリカンを含む。代表的な糖タンパク質、プロテオグリカン、及びグリコサミノグリカンは、非限定的に、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、VIII型コラーゲン、IX型コラーゲン、X型コラーゲン、XI型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、XV型コラーゲン、XVI型コラーゲン、XVII型コラーゲン、XVIII型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、特にラミニン-1、ラミニン-2、ラミニン-4、及びラミニン-5、ルミカン(lumican)、テネイシン、バーシカン、パールカン、トロンボスポンジン、特にトロンボスポンジン-2及びトロンボスポンジン-4、又はラミニン、特にラミニン-1、-2、-4、及び-5、アグリン、ナイドジェン、バマカン、デコリン、バイグリカン、フィブロモジュリン、エラスチン、フィブリリン、ヒアルロナン、ビトロネクチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、及びケラタン硫酸が挙げられる。
「抽出物」という語句は、馴化細胞培養培地に関して使用される場合、透析、透析、分画、蒸留、相分離、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、中空繊維濾過(hollow fiber filtration)、沈殿、濃度などにより得られるかに関わらず、馴化培地のサブコンポーネント又は画分を指す。
「フィーダー細胞」は、その上に幹細胞、特に霊長類始原幹細胞が撒かれ、そして幹細胞の増殖を導く環境を提供する非始原幹細胞である。
フィーダー細胞の培養物から取られた馴化培地を外から加えられないか、又は培養物中に外からフィーダー細胞が加えられない場合、細胞培養は、「実質的にフィーダーフリー」である。ここで、「外から加えられたフィーダー細胞がない」は、フィーダー細胞層を発達させる細胞が、その理由のため意図的に導入されることがないということを意味する。もちろん、培養された細胞が、フィーダー細胞を含んだシード培養物に由来する場合、意図しない共単離、及びそれに続く別の培養物への所望される細胞(例えば身分か始原幹細胞)とともに少量のこれらのフィーダー細胞が入ることは、フィーダー細胞の意図した誘導としてはみなされるべきではない。同様に、培養物に撒かれた幹細胞から発生したフィーダー細胞又はフィーダー様細胞も、意図的に培養物に導入されたとみなすべきでない。
「増殖環境」は、幹細胞(例えば、霊長類始原幹細胞)がin vitroで増殖する環境である。本環境の特徴は、細胞が培養される培地、及び存在する場合支持構造(例えば、固体表面上の支持体)を含む。
本明細書に使用される場合、「増殖因子」という語句は、タンパク質、ポリペプチド、又はポリペプチドの複合体、例えば、サイトカイン、ケモカイン、モルフォゲン、中和抗体、他のタンパク質、及び細胞により産生され、そして細胞自身に影響を及ぼすことができる小分子、及び/又は様々な他の隣接又は遠隔細胞を指す。通常、増殖因子は、発達上で、又は生理又は環境刺激の程度に応答して、特定のタイプの細胞の増殖及び/又は分化に影響を及ぼす。幾つかの、しかし全てではない、増殖因子はホルモンである。皮膚の健康及び外観に有害ではない培養物由来の増殖因子が好ましい。代表的な増殖因子は、インスリン、インスリン様成長因子(IGF)、神経成長因子、VEGF、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、例えばPDGF-AA及びPDGF-AB、肝細胞増殖因子(HGF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)、例えばTGFβ1及びTGFβ3、上皮増殖因子(EGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン6(IL-6)、IL-8、アクチビン-A、骨形成のタンパク質(BMP)などである。増殖因子は、とりわけ、Molecular Cell Biology, Scientific American Books, Darnellら、1986; The Molecular and Cellular Biology of Wound Repair, Clark, Plenum Press, 1996; and Principles of Tissue Engineering, 第二版, Lanzaら編, Academic Press, 2000.で議論されている。本明細書に記載される馴化培地中の幾つか及び全ての培養由来増殖因子が、本発明の範囲内に含まれるということが当業者に理解されたい。
「等張」は、比較される他の溶液と実質的に同じ浸透圧(つまり、等しい浸透圧)を有する溶液を指す。細胞培養の点では、「等張」培地は、細胞膜を通した水の流れが認められずに培養できる培地のことである。
「低い浸透圧」を有する溶液は、約300mミリオスモル/kg(mOsm/kg)未満の浸透圧を有する溶液を指す。
「通常」の幹細胞は、異常な表現形を示さず、又は異常な遺伝子型を有しない、幹細胞(又はその前駆体)を指し、そうして、このような幹細胞から派生する細胞の全範囲を生じさせることができる。分化全能性幹細胞の文脈では、例えば、当該細胞は、例えば健常である通常の完全な動物を生じさせることができる。対照的に、「異常な」幹細胞は、例えば、1以上の突然変異又は遺伝的改版又は病原体のために通常ではない幹細胞を指す。こうして、異常な幹細胞は、通常の幹細胞とは異なる。
「非必須アミノ酸」は、所定の細胞型について培養培地に加えることを必要としないアミノ酸種を指す。これは、当該細胞が、当該特定のアミノ酸種を合成するか又は合成することができるからである。種間で異なっているところ、非必須アミノ酸として、L-アラニン、L-アスパラギン、L-グルタミン酸、グリシン、L-プロリン、及びL-セリンが挙げられるということが知られている。
「霊長類由来始原幹細胞」又は「霊長類始原幹細胞」は、ヒト及びサルを含む霊長類種から得られた始原幹細胞であり、そして遺伝的に改変された始原幹細胞を含む。
「多能性(pluripotent)」は、必ずしも全ての細胞型である必要はないが、複数の異なる細胞型のうちの一つに分化することができる細胞を指す。多能性(pluripotent)細胞の代表的なクラスは、胎生幹細胞であり、これは人体の任意の細胞型に分化することができる。こうして、多能性(pluripotent)細胞が、多能性(multipotent)細胞及び他のより分化した細胞型に分化することができる一方、逆分化の過程(つまり、脱分化)は、より複雑であり、そしてより未分化な状態になるには細胞を「リプログラミング」することを必要とすることが認識されよう。このことは、リプログラミングの後には、細胞は、リプログラミングの前に可能であった細胞型とは異なった細胞型へと分化する能力を有することを意味する。
細胞培養は、外から加えられた血清を含まない場合に「本質的に無血清である」ことになる。ここで「外から加えられたフィーダー細胞」は、血清が意図的に培地に導入されたわけではないということを意味する。もちろん、細胞が血清成分のいくらか、又は全てを産生する場合、培養される細胞が血清を含む培地中で増殖されたシード培養物に由来する場合、偶発的な共単離、及びそれに続く少量の血清(例えば、約1%未満)の別の培養物への導入は、血清の意図的な導入としてみなされるべきではない。
「皮膚」という語句は、ヒトの外側皮膚表面を指す。通常の皮膚組織の最上層は、頑強で、半透明の保護的被膜を形成する死滅した細胞から構成される。薄い外側層、表皮、及び厚い内側層、真皮が存在する。絡み合ったS様フィンガー型の部分が、表皮乳頭層と真皮乳頭層との間の界面に存在し、そして下方に伸張する。真皮の下側に、皮下組織が存在し、これらはかなりの量の脂肪を含むことが多い。真皮層は、結合コラーゲンの大部分を含むが、生きたコラーゲン結合組織はまた、同様に皮下層の下にもある程度存在する。通常の皮膚に見られる他の構造は、髪及び付随する毛胞、汗腺又は皮脂腺、及び付随する孔、血管、及び神経を含む。さらに、色素層が存在することもある。
「幹細胞」は、ヒト起源であろうと又は非ヒト起源であろうと、任意の幹細胞又は前駆細胞を含み、そして前駆細胞の特徴を保持する幹細胞由来の細胞を含む。
「実質的に含まない」という語句は、特定の物質をほとんど含まないか、又は全く含まない馴化培地又はその抽出物を指す。ある実施態様では、馴化細胞培養培地は、49.999%、30%、20%、10%、5%、1%、0.5%、0.05%未満のフェノールレッドを含むか、又は全くフェノールレッドを含まない(0%)。ある実施態様では、馴化培地は、49.999%、30%、20%、10%、5%、1%、0.5%、0.05%未満のウシ由来成分を含むか、又は全くウシ由来成分を含まない(0%)。ウシ由来の代表的な培地の成分として、ウシ胎児血清、仔ウシ血清、ウシ血清、ウシコラーゲン、ウシインスリン、ウシトランスフェリンなどが挙げられる。ある実施態様では、馴化培地は、49.999%、30%、20%、10%、5%、1%、0.5%、0.05%未満の非ヒト動物産物を含むか、又は非ヒト動物産物を含まない(0%)。上に挙げられるウシ由来の代表的成分に加えて、非ヒト動物産物は、ヒト由来ではない任意の動物産物、例えば組織培養成分及びブタ由来の産物を含む。当業者は、「無血清」培地及び動物産物由来の培地が、細胞培養培地についてのいくつもの業者から市販されている。同様に、フェノールレッドを含まない培地は、市販されているか、又は製造することができる。
「実質的に未分化」は、幹細胞(例えば霊長類始原幹細胞)の集合が、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、70%、又は80%、そしてさらにより好ましくは少なくとも約90%の未分化幹細胞を含むということを意味する。所望される未分化状態(始原状態)を指し示す1以上のマーカーに対して標識された抗体又はレポーター遺伝子/タンパク質(例えば、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP))を用いて、蛍光活性化細胞分別をすることは、所定の幹細胞集合のどれだけ多くが未分化状態であるかを決定するために使用することができる。この評価をするために、未分化状態と関連する細胞表面マーカー(例えば、Oct-4、SSEA-4、Tra-1-60、及びTra-1-81)のうちの1以上を検出することができる。テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)活性及びアルカリホスファターゼもアッセイすることができる。霊長類始原幹細胞については、レポーター遺伝子(例えば、EGFP)を免疫染色するか又は使用することにより、陽性及び/又は陰性選別を使用して、あるマーカー(例えば、Oct-4、SSEA4、Tra-1-60、Tra-1-81、SSEA-1、SSEA-3、ネスチン、テロメラーゼ、Myc、p300、及びTip60ヒストン・アセチルトランスフェラーゼ、及びアルカリホスファターゼ活性)の発現又はある翻訳後修飾の存在(例えば、アセチル化ヒストン)を検出し、それにより、細胞の自己複製又は分化の状態の評価を促すことができる。
「全能性」は、多能性(pluripotent)、多能性(multipotent)、及び完全に分化した細胞(つまり、様々な細胞型へともはや分化することができない細胞)、例えば、非限定的に、胚性幹細胞、神経幹細胞、骨髄幹細胞、造血幹細胞、真菌細胞、神経、星状細胞、筋肉細胞、及び結合組織細胞を含む任意の細胞型に分化することができる細胞を指す。
霊長類由来始原幹細胞
本発明に従って培養される霊長類始原幹細胞を含む幹細胞は、任意の適切な技術を用いて、任意のソースから得ることができる。例えば、ヒト始原幹細胞を単離及び増殖させる方法は、米国特許第6,090,622号に記載される。ミドリザル及び他の非ヒト霊長類始原幹細胞を得る方法は、米国特許5,843,78号に記載され、そして国際特許出願公開WO 96/22362号に記載される。さらに、ミドリザル始原幹細胞を単離する方法は、Thomson,ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:7844-7848, 1995により記載される。
ヒト胚性幹細胞(hESC)は、ヒトのin vivo着床前胚、in vitro受精胚、又は胚盤胞ステージに育てられた1細胞ヒト胚から得られたヒト胚盤胞から単離することができる。ヒト胚は、G1.2及びG2.2培地中で胚盤胞ステージにまで培養することができる(Gardner, ら、 (1998), Fertil. Steril.69:84)。プロナーゼ(Sigma)に軽く晒すことにより、胚盤胞から透明帯を取り除いた。免疫手術又は機械的分離により内部細胞塊を単離することができ、そしてマウス胚性フィーダー層上にプレートするか、又は上に記載される合成培養システムにプレートする。9〜15日後、内部細胞塊に由来する生成物を、1mM・EDTAを含むマグネシウム及びカルシウムフリーのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に暴露し、ジスパーゼ、コラゲナーゼ、又はトリプシンに暴露し、或いはマイクロピペットで機械的にバラバラにすることによって、クランプへとばらばらにした。バラバラにされた細胞を次に以前のように新たな培地中に再プレートし、そしてコロニー形成を観察した。未分化形態をしめすコロニーを、マイクロピペットにより個別に選択し、クランプへと機械的にバラバラにし、そして再プレートした。胚性幹細胞様形態は、明らかに高い核 対 細胞質比を有し、そして目立った核小体を有するコンパクトなコロニーとして特徴付けられる。得られた胚性幹細胞は、軽くトリプシン処理をし、ダルベッコPBS(カルシウム又はマグネシウムを伴わず、そして2mM・EDTAを伴う)に暴露し、IV型コラゲナーゼ(約200U/ml)に暴露し、又はマイクロピペッターを用いて機械的分離により個別のコロニーを選択することによって、1〜2週間ごとに決まって分割した。
ひとたび単離されると、任意の適切な細胞培養技術を用いて、霊長類始原幹細胞の実質的に未分化なままで増殖させることを支持する本発明の培養培地中で、幹細胞、例えば霊長類幹細胞を培養することができる。例えば、霊長類フィーダー細胞(好ましくは同種フィーダー細胞)の溶解の前に沈着されたマトリクス、又は合成若しくは精製されたマトリクスは、標準方法を用いて調製することができる。培養される霊長類始原幹細胞を、培養培地と一緒にマトリクスの上に加える。別の実施態様では、一度単離され、未分化状態のヒト胚性幹細胞は、ラミニン又は増殖停止ヒトフィーダー細胞層(例えば、ヒト包皮線維芽細胞層)を含む細胞外マトリクスに直接加えることができ、そして本発明の培養方法に従って無血清増殖環境中で維持された。慣用技術を用いて培養された現存するヒト胚性幹細胞系列とは異なって、この簡易方法に従って培養及び調製されたヒト胚性幹細胞及びその誘導体は、治療的に用いることができる。なぜなら、当該幹細胞は、その一生のどの時点でも動物フィーダー細胞、フィーダー細胞馴化培地、又は血清に晒されておらず、それゆえ非ヒト動物細胞でのヒト細胞の汚染、非ヒト動物細胞からヒト細胞への病原体の伝播、異種融合細胞の形成、及びヒト細胞の毒性異種抗血清因子への暴露の危険性を避けることができるからである。
或いは、幹細胞、例えば霊長類始原幹細胞は、細胞培養技術において知られている方法を用いて、生きたフィーダー細胞(好ましくは、同種フィーダー細胞)上で成長させることができる。幹細胞の増殖はモニターされ、アルカリホスファターゼ又はテロメラーゼを用いて、又はOct-4などの転写因子の発現を検出し、又は未分化状態を指し示す細胞表面マーカー(例えば、ヒト胚性幹細胞の場合、SSEA-4、Tra-1-60、及びTra-1-81の1以上のどれかについて標識された抗体)を検出することにより、幹細胞の分化程度を測定した。培養物がコンフルエントになった場合に、未分化細胞の少なくとも1部が、他の培養容器へと継代される。細胞を継代するための決定及びこのような継代を遂行する技術は、本発明の培養法(例えば、形態評価及び解離手順)に従って行なうことができる。
ある好ましい実施態様では、幹細胞は、フィーダー細胞、好ましくは同種フィーダー細胞、細胞外基質、適した表面及び未分化増殖に必要とされるシグナル伝達経路を適切に活性化する因子の混合物、並びに溶液中での幹細胞の増殖を支持するのに十分な溶液-骨格マトリクス(solution-borne matrix)からなる群から選ばれる支持体を含む培養容器中で培養される。こうして、本発明の培養培地の溶液相の成分に加えて、増殖環境は、霊長類フィーダー細胞、好ましくは同種フィーダー細胞、及び細胞外基質、特にラミニンからなる群から選ばれる支持体を含む。霊長類始原幹細胞の好ましいフィーダー細胞として、霊長類線維芽細胞及び間質細胞を含む。好ましい実施態様では、フィーダー細胞及び幹細胞は同種である。ヒト胚性幹細胞では、特に好ましいフィーダー細胞として、ヒト線維芽細胞、ヒト間質細胞、及びヒト胚性幹細胞から派生された線維芽様細胞が挙げられる。合成又は精製された細胞外マトリクス又は溶解された細胞から調製されたマトリクスとは対照的に、生きたフィーダー細胞が使用される場合、霊長類始原幹細胞の培養の間にさらにフィーダー細胞のさらなる増殖を抑制するためにこれらの細胞は細胞分裂を(例えば、照射により、又は化学的に)不活性化されうる。不活性化は、好ましくは、使用される培養容器に細胞を撒く前に行なわれる。次に霊長類始原幹細胞は、フィーダー細胞の次にプレート上で増殖させることができる。或いは、先ずフィーダー細胞がコンフルエントに成るまで増殖させ、次に不活性化してそのさらなる増殖を抑制することができる。所望される場合、フィーダー細胞は、使用前まで液体窒素中又は-140℃で凍結貯蔵されてもよい。上に記載される様に所望される場合、このようなフィーダー細胞層は幹細胞(例えば、霊長類幹細胞)の添加前に、任意の適切な技術を使用して溶解して、細胞外マトリクスのみを後に残すことができる。
理論にとらわれることなく、このようなフィーダー細胞、又はフィーダー細胞から派生した細胞外マトリクスの使用が、幹細胞(例えば霊長類始原幹細胞)の増殖を促進し、このような細胞の分化の速度を抑制又は低下させるのに必須である1以上の物質を提供するということが信じられている。このような物質は、フィーダー細胞により周囲の培地中に分泌される膜結合性及び/又は可溶性の細胞生成物を含むことが信じられている。こうして、当業者は、さらなる細胞株を本発明の細胞培養培地と使用して、同等の効果をえることができるということ、並びにこのような追加の細胞株は、標準的方法及び物質を用いて、例えば本発明に従った培養培地中で、実質的に未分化霊長類始原幹細胞をこのようなフィーダー細胞上で培養し、そして当該幹細胞が分析過程にわたり実質的に未分化のままであるかを決定することにより、同定することができるということを認めよう。本明細書中に提供される培養培地の明確な性質のため、細胞外マトリクス又はフィーダー細胞により分泌される様々な化合物をアッセイして、霊長類始原幹細胞などの幹細胞の増殖、維持、及び分化における個別の役割を決定することが可能である。
細胞外マトリクスから精製された生成物が、フィーダー細胞の代わりに用いられる場合、適切なフィーダー細胞層の細胞外マトリクスにより提供される成分を含むであろう。使用できる細胞外マトリクスの成分は、ラミニン、又はラミニンを含む生成物、例えばMatrigel(登録商標)、又はラミニン受容体及び/又はその下流のシグナル経路を活性化する他の分子を含む。こうして、本発明の目的のために、実質的に未分化状態で霊長類始原幹細胞を増殖及び維持するための合成細胞培養培地中で、ラミニンの代わりに使用できる限り、ラミニン受容体及び/又はラミニンと同様の様式でその下流のシグナル経路を活性化する分子は、「ラミニン」と考えられる(ラミニンの天然又は組換え型に比べて、1分子あたり少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも300%、少なくとも500%、又は少なくとも5000%の活性を有する高い又は低い効力を有する)。Matrigel(登録商標)は、エンゲルブレス-ホルム-スワム腫瘍細胞(Engelbreth-Holm-Swarm tumor cell)由来の可溶性調製品であり、室温でゲル化して、再構成基底膜を形成する。他の細胞外マトリクス化合物として、フィブロネクチン、コラーゲン、及びゼラチンが挙げられる。さらに、フィーダー細胞により産生されるか、又は霊長類フィーダー細胞株により産生される細胞外マトリクス中に含まれる1以上の物質細胞は、フィーダー細胞について必要性を取り除く物質を製造するために同定され、そして使用されうる。或いは、これらの成分は、可溶性形態で調製することができて、未分化の幹細胞を懸濁培養で増殖及び維持することを可能にする。こうして、本発明は、細胞を継代する際に培養物の液相に細胞外マトリクスを加えるか、又は通常の栄養供給の一部として加えること、並びに当該培養物の液体成分を加える前に物質を調製することを意図する。
本発明に従って、任意の適切な培養容器が、幹細胞(例えば、霊長類始原幹細胞)を培養するために適用できる。例えば、マトリクスの結合に適している支持体を有する容器は、組織培養プレート(例えば、マルチウェルプレート)、プレコート(ゼラチンでプレコートされた)プレート、T-フラスコ、ローラーボトル、ガス透過性容器、及びバイオリアクターが挙げられる。効力及び細胞密度を増加させるために、フィーダー細胞又は細胞外マトリクスの付着のための支持体として役立つことができる懸濁粒子(例えば、プラスチックビーズ又は他のマイクロキャリア)を使用する容器(例えば、攪拌タンク)を使用することができる。別の実施態様では、未分化幹細胞は、マトリクス成分を可溶化形態で提供することにより、懸濁状態で培養することができる。認められる様に、バッチ交換(使用済みの培地を新たな培地に置き換える)、フェッドバッチ法(つまり、新たな培地を使用済みの培地を取り除かないで加える)、又は継続交換(連続して又は定期的に培地の一部が新たな培地と置き換えられる)により、新たな培地をこれらの容器のいずれかに導入することができる。
遺伝子操作
分子遺伝学及び遺伝子工学における一般的方法は、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」の最新版(Sambrookら、Cold Spring Harbor);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(Miller & Calos編);及び「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら編、Wiley & Sons)に記載されている。細胞生物学、タンパク質化学、及び抗体技術は、「Current Protocols in Protein Science」 (Colliganら編, Wiley & Sons):「Current Protocols in Cell Biology」 (Bonifacinoら、 Wiley & Sons)、及び「Current Protocols in Immunology」 (Colliganら編、Wiley & Sons.)に見出すことができる。本開示に記載される試薬、クローニングベクター、及び遺伝子操作用のキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen、ClonTech、及びSigma-Aldrich Co.などの販売元から市販されている。
細胞培養法
本発明は、細胞培養及び適切な担体を用いて作成された、馴化hESC細胞培養培地、又はその抽出物を含む組成物に関する。本発明は、このような組成物を製造するための方法にも関する。ある実施態様では、当該培養物は、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、例えば、皮膚線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、軟骨細胞、平滑筋細胞、及び筋細胞を含む。ある実施態様では、適切な担体は、医薬として許容される担体、美容医薬として許容される担体である。ある実施態様では、馴化細胞培養培地は、無血清又は動物産物を伴わない馴化前培地を用いて作成される。
内部細胞塊から得られたヒトESCは、培養物中での長期間の未分化状態で増殖する能力、並びに人体における任意の細胞型に分化する理論的潜在性を有する。これらの性質は、hESCを、移植治療の潜在的ソースとして、並びに哺乳動物の発達の基礎をなすメカニズムの研究用のモデルシステムとして提供する。ヒトESCは、6又は12ウェルのプレート中で成熟するまで増殖され(撒いた後6日又は7日目)、その次に固定し、位相差顕微鏡の下で可視化した。細胞免疫蛍光は、hESCの分化状態を評価するために使用することができる。例えば、hESCは、各ウェルの底の丸いカバースライドを備える12又は24ウェルプレートの中で成熟するまで増殖させた(撒いた後6又は7日目)。次に細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、そして0.2%TritonX-100及び2%BSAを含むPBS緩衝液中でブロッキングした。次に、細胞を一次抗体(Oct-4、SSEA-I、SSEA-3、SSEA-4、Tra-1-60、Tra-1-81、アルカリホスファターゼ、Myc、Map-2、Nkx2.5、bFGF(Santa Cruz biotechnology, Inc.; Santa Cruz, Calif., world wide web:scbt.com)、ネスチン、チロシン水酸化酵素(Chemicon, International, Temecula, Calif.、world wide web:Chemicon.com)、β-チューブリン(Sigma)、p300、Tip60、又はアセチル化H4(K5、8、12、16)(Upstate Biotechnology, Lake Placid, N.Y., world wide web:upstate.com))を含む洗浄緩衝液(0.1%トリトンX100を含むリン酸緩衝食塩水)と4℃で一晩インキュベートした。次に二次抗体(分子プローブ;Eugene、OR)を含む緩衝液で室温にて45分間インキュベートした。さらに、DAPIで染色した後に、細胞を顕微鏡スライドにマウントし、そして免疫蛍光及び解析顕微鏡下で可視化した。Oct4プロモーターの制御の下で、HESCの分化状態をさらにレポーター遺伝子を有するhESCを作成すること(レンチウイルス媒介性形質導入)によりアッセイした。これらのトランスフェクションされたhESC(Oct-4駆動性EGFPを有する)を用いて、hESCの未分化状態は、緑色蛍光により可視化することができる(Oct-4発現を示す)。
NIHにより承認されたヒトESC株の例は、H1及びH9株であり、これは、Wicell Research Institute(Madison, WI)から購入することができる。各細胞株は、80%DMEM/F-12又はKO-DMEM、20%ノックアウト血清置換物(Knockout Serum Replacement)、2mM・L-アラニル-L-グルタミン(GlutaMax)又は L-グルタミン、1×MEM非必須アミノ酸、100μM、βーメルカプトエタノール(全て、Invitrogen, Carlsbad, CAから購入)、及び4ng/mL・bFGF(PeproTech Inc., Rocky Hill, NJ)からなるマイトマイシンC-不活性化MEF(Specialty Media, Inc., Phillipsburg, NJ)中で元々維持されていた。最初はこれらの細胞株に提供された説明書に従って、ジスパーゼで処理することにより、細胞を週に1回継代した。ヒトフィーダー層又はマトリゲル-(Becton Dickinson, Bedford, MA)被膜されたプレート(以下の被膜法を参照のこと)上のヒトESCを、DMEM/F-12又はKO-DMEM(80%)、ノックアウト血清置換物(20%)、L-アラニル-L-グルタミン又はL-グルタミン(2mM)、MEM非必須アミノ酸(1回)、P-メルカプトエタノール(100μM)、bFGF(20ng/ml)、及びインスリン(4μg/ml)に維持する。ヒト組換えインスリンを、Sigma(St. Louis, MO)から得た。
任意のヒトESC株を、本発明の実施の際に使用してもよい。ヒトESCは、任意の周知の方法により、そして任意の周知の物質を用いても増殖されてもよい。ヒトESCを取得し、特徴決定し、そして培養する方法は、例えば、Hoffman and Carpenter, Nature Biotech. 23:699-708, 2005 (総説); Yaoら、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 103:6907-6912, 2006; Bhattacharyaら、Blood 103:2956-2964, 2004; Cowanら、"Derivation of Embryonic Stem-Cell Lines from Human Blastocysts, New England J. Med. 350(13), 2004;並びにRichardsら、Nature Biotech. 20:933-936, 2002に記載されている。ヒトESCを培養する方法が提供され、そして細胞培養法はまた、Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique (R. I. Freshney ed., Wiley & Sons)の最新版; General Techniques of Cell Culture (M. A. Harrison & I. F. Rae, Cambridge Univ. Press)、及びEmbryonic Stem Cells: Methods and Protocols (K. Turksen ed., Humana Press)にも記載されている。他の有用な文献として、Creating a High Performance Culture (Aroselli, Hu. Res. Dev. Pr. 1996)及びLimits to Growth (D. H. Meadowsら、Universe Publ. 1974)が挙げられる。組織培養の供給及び試薬は、Invitrogen、Nalgene-Nunc International、Sigma Chemical Co., Chemicon International、及び ICN Biomedicalsなどの販売元から市販されている。
線維芽細胞フィーダー細胞上及び合成培地中でのヒトESCの増殖の記載は、本発明の実施のための馴化培地を提供するために、ヒトESCの増殖用に用いることができる多くの方法のうちの2つの例として提供される。
線維芽細胞フィーダー細胞上でのhESCの増殖
以下のプロトコルは、例示の目的のみで提供され;hESCを増殖させる任意の周知の方法が使用できる。
2つのNIH推奨のヒトES細胞株(H9及びH14)をヒト神経前駆体の異種培養物を作成するのに用いて同等の成功を収めた。hESCは、ノックアウトDMEM-20%血清置換物及び8ng/ml・bFGF中でMEFフィーダーと増殖した。hESCをコラゲナーゼIV処理により、プレート後5日目に回収した。細胞培養物を静置し、そして浮遊細胞を含む上清を捨てた。hESC培養物を粉砕して、緩く付着した細胞を除去し、そしてクラスターサイズを約50〜100細胞に減らし、そしてPBSで2回洗浄した。hESCの少量のクラスターをポリプロピレン皿中で(TedPella)を含む懸濁培地(1:1の比のDMEM/F12:神経基礎培地であって、N2+B27添加物、20ng/mlのインスリン、20ng/mlのbFGF、及び20ng/mlのEGFを伴う培地)で増殖させた。2日おきに培地を交換してスフィアを6日間増殖させた。スフィアを回収し、ゆっくり粉砕し、そしてhNPC増殖培地(DMEM/F12、10%BIT9500、20ng/mlbFGF、20ng/mlEGF、5μg/mlのフィブロネクチン、2μg/mlヘパリン)を含むオルニチン被膜された(5ng/ml、Sigma)プレート上に撒いた。クラスターは付着し、そして完全にロゼットを形成したように見え、2極/三角細胞が外側に広がった。増殖培地中で6日おいた後に、hESC-NPCを同じ培地中に再プレートして、hESC-NPCの単層培養を形成した。
hESCの増殖のため、フィブロブラスト単層細胞をフィーダー細胞として産生するために、ヒト陰茎包皮から単離された通常のヒト皮膚線維芽細胞を、150cm2組織培養フラスコ中に単層培養で、馴化前細胞培養培地(この例では、10%ウシ胎児血清(Hyclone Laboratories, Logan, Utah)、非必須アミノ酸(GibcoBRL)、及び100U/mlペニシリン-ストレプトマイシン-250ng/mlアムフォテレシンB(GibcoBRL)を添加された高グルコースDulbecco改変イーグル培地(DMEM;GibcoBRL、GrandIsland、N.Y.)(DMEM1)を用いて、37℃にて5%CO2インキュベーターで単層培養してもよい(Croning, Corning、N.Y.)。1〜10の分割量を用いて、週2回、新たな馴化前培地を単層培養物に与えた。一般的に、Pinneyら、J. Cell. Physio. 183:74-82 (2000)を参照のこと。皮膚線維芽細胞は、DMEM1をいれたローラーボトル中で増殖されてもよい。これらの単層培養物からの馴化培地を回収し、そしてつぎに使用するために保存しておいた。
線維芽細胞が、本実施例において代表的な目的のために使用された一方、多くの他のタイプの細胞、例えば非限定的に、他の上皮細胞型、内皮細胞、平滑筋細胞、筋細胞、ケラチノサイト、コンドロサイト、軟骨細胞などは、単層培養で及び3次元培養で増殖することができる。
ヒト皮膚線維芽細胞は、慣用技術を用いて、様々な三次元フレームワーク上に撒くことができるか、又はコラーゲンマトリクス中に懸濁することができる。例えば、細胞は、生分解性のポリグラクチン910の生分解性メッシュファイバー(90:10のポリグリコール酸:ポリ乳酸)から構成される構造物質に一般的に使用されるVictyl(商標)などの生分解性ポリガラクチンメッシュフレームワーク、又は3次元乳酸/グリコール酸ポリマーフレームワーク上に撒かれる。
線維芽細胞を、10%ウシ胎児血清、2mM・L-グルタミン、非必須アミノ酸、及び50μg/mlアスコルビン酸(J.T.Baker)を添加され抗生物質を伴わない高グルコースDMEM(DMEM2)中の3次元乳酸/グリコール酸コポリマーフレームワーク上で約2週間培養する。DMEM2の存在下、及び細胞増殖に適切な条件下で、線維芽細胞は増殖して、フレームワークの隙間を満たすように増殖する。当該細胞は、コラーゲン及び他の細胞外マトリクス成分、とりわけ成長因子及びサイトカインを分泌し、そして糖尿病性の足の壊死の治療用に開発された組織培養生成物であるDermagraft(登録商標)などの3次元ヒト組織を作成する(Advanced Tissue Sciences, La Jolla, Calif.);Naughton, Dermal Equivalents, pp. 891-902, in Principles of Tissue Engineering、第二版、 Lanzaら編, Academic Press, 2000を参照のこと。
3〜4日毎に培養物に馴化前DMEM2を与え、そして10日後に開始して馴化培地を回収し、そして直ぐに試験するか、又は-20℃でさらに試験するために凍結した。馴化培地の1の調製品中での様々な増殖因子及びサイトカインの濃度を定量するために、適切な市販のヒト成長因子ELISAキット(Quantikine(登録商標)免疫アッセイ、R & D Systems, Minneapolis, MN)を用いて免疫アッセイを行なう。馴化前DMEM2は、ネガティブコントロール(バックグラウンド)として平行してアッセイする。アッセイは、種特異的であると同定されるが、ウシ血清のあるロットは、TGFβELISA中で低いレベルのクロス反応性を示した。
培養される細胞型に依存して、多くの他のタイプの細胞培養培地を使用してもよい。代表的な細胞培養培地は、最小必須イーグル培地(MEM)、ケラチノサイト培地、メラノサイト培地、ヘパトサイト培地、アムニオサイト培地、骨髄培地、イーグル基礎培地(MEM)BGJ培地(Fitton-Jackson 改変)、イスコーブ改変ダルベッコ培地(IMDM)、L-15培地(Liebovitz)、McCoyの5A改変培地、MCDB培地、培地199,HamのF-10培地、HamのF-12培地、RPMI-1640、Waymouth培地などが挙げられ;特にSigma-Aldrich、LifeTechnologies-GibcoBRL、又はBioWhittakerから市販されている。
3次元線維芽細胞培養物の代わりは、以下のように産生されてもよい。継代8の皮下線維芽細胞を、ローラーボトルの内表面上又は付近に位置する滅菌ナイロンメッシュ骨格(Industrial Fabrics)を含む慣用の1750cm2波形ローラーボトル(Nalge又はNunc)中に撒いた。ローラーボトルあたり約4〜6×107細胞(4-6.times.10.sup.7 cell)の密度で撒き、そして抗生物質を伴わない、2mM・L-グルタミン(Life Technologies)、非必須アミノ酸(Life Technologies)、56mg/lのL-アスコルビン酸(J.T.Baker)、及び10%ウシ血清(HyClone Laboratories)を添加した馴化前培地(DMEM(#078-0521-189、Life Technologies-Gibco)中で培養した。ローラーボトルを37℃にてローラー装置中でインキュベートする。上に記載された馴化前培地を使用して、ローラーボトル中の培地を毎日又は一日おきに交換し、そして馴化細胞培養培地を回収する。馴化培地中のVEGFレベルを、製品説明書に従って、QuantikineヒトVEGFアッセイ(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いて、ELISAにより定量する。
ローラーボトルが本実施例に記載されるが、任意の数のバイオリアクターが、記載された条件へと適切に改変して使用してもよいということが、当業者により理解されよう。馴化培地を処理する任意の数の方法は、非限定的に、当該技術分野に周知の方法を用いたクロマトグラフィー、HPLC、相分離、スプレー乾燥、蒸発、凍結乾燥などが当業者により理解されよう。
馴化血清を伴わないか又は非ヒト動物生成物を伴わない培地:合成培地中の霊長類幹細胞の培養
本発明のある実施態様では、馴化培地は、無血清又は動物生成物を伴わない馴化前培地を用いて作成される。無血清かつ動物生成物を伴わない(ときおり無タンパク質と呼ばれる)培地は、とりわけ、LifeTechnologies-GibcoBRL, Rockville, Md.;Sigma- Aldrich, Saint Louis, Mo.;又は BioWhittaker, Walkersville, Md.から市販されている。代表的な無結成培地として、BioWhittakerのUltraCULTURE(商標)、UltraDOMA(商標)及びUltraCHO(商標);Sigma-Aldrichの無血清ハイブリドーマ培地、CHO無血清培地、及びMDCK無血清培地;並びにLife Technologiesのケラチノサイト-SFM(KSFM)、AIM V(商標)培地、StemPro(登録商標)-34 SFM、ヒト内皮-SFM、マクロファージ-SFM、及びHepatoZYME-SFMが挙げられる。代表的な無タンパク質培地として、BioWhittakerのUltraDOMA-PF(登録商標);動物成分を伴わないハイブリドーマ培地、無血清及び無タンパク質ハイブリドーマ培地Hybri-Max(登録商標)、CHO無タンパク質培地、化学合成CHO培地、及びMDCK無タンパク質培地(Sigma-Aldrich);及び合成ケラチノサイト-SFM(Life Technologies)を含む。哺乳動物細胞培養用の無血清培地の使用が確立されており、そしてとりわけ、Cold Spring Harbor Conferences on Cell Proliferation, Vol. 9, Satoら編(1982) Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y.; Barnesら、Anal. Biochem. 102, 255 (1980); BioWhittaker 1999/2000 catalog, pp. 42-51 ; Barnes, Serum-Free Animal Cell Culture, BioTechniques 5(6):534-42;及びFreshney, Culture of Animal Cells, 第三版、 Wiley-Liss, New York, N. Y., 1994に記載されている。
培地は、実質的に無血清であり、そしてフィーダー細胞層の使用又はフィーダー培養物を分離することから得られた馴化培地の使用を必要としないが、当該細胞を連続継代(例えば、1〜50以上の継代)用の新たなフィーダー層を伴わない培地へと移す前に、同種異型フィーダー細胞(又はこのような細胞から得られた馴化培地)を含む増殖環境中で、幹細胞を最初に培養することもある。こうして、合成細胞培養培地は、幹細胞、例えば霊長類由来幹細胞、特に霊長類始原幹細胞を実質的に未分化状態で増殖させそして維持するために使用することができる。例えば、このような細胞培養溶液は、等張性であってもよいし、又は低浸透圧であってもよい。例えば霊長類由来の始原幹細胞の増殖をサポートするために有効である基礎培地は、幹細胞の実施的に未分化増殖をサポートするために必須のbFGF、インスリン、及びアスコルビン酸のある量を添加する事ができる。このような培地は、非限定的に、非必須アミノ酸、抗酸化物質、還元剤、増殖因子、及びピルビン酸塩を含んでもよい。基礎培地は、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DMEM/F-12、又はKO-DMEMであってもよく、各々は、L-グルタミン又はGlutaMAX(登録商標)-I(2mMの終濃度で、ジペプチド、L-アラニル-L-グルタミン(Invitrogen)として提供される)、非必須アミノ酸(1%)、及び100μM・β-メルカプトエタノールを添加される。培地は、好ましくは、細胞培養に加える前に(例えばろ過により)滅菌される。
米国特許出願第60/435,991号(20070010011として発行される)は、本発明を実施するのに使用することができるDMEMに基づいた基礎培地の代表的な例を記載する。哺乳動物細胞培養において有用である他の基礎培地として、非限定的に、イーグル基礎培地(BME)、グラスゴウ最小必須培地、イスコーブ改変ダルベッコ培地、最小必須培地(MEM)、イーグル改変培地(MEM)、Opti-MEM I区還元血清培地、RPMI培地1640、WaymouthMB752/1培地、ウィリアムス培地E、培地NCTC-109、ニューロプラスマ培地、BGJb培地、ブリンスターBMOC-3培地、CMRL培地、C02-独立培地、LeibovitzsL-15培地、McCo5A培地(改変)、及びMCDB131培地が挙げられる。
外来性増殖因子は、実質的に未分化の状態で幹細胞(例えば、霊長類始原幹細胞)の培養物を維持することを手助けするために、本発明に記載される培地に加えられてもよい。このような因子及びその有効濃度は、本明細書のいたるところに記載されるように同定することができるか、又は細胞を培養する当業者に周知の技術を用いて同定することができる。この点で有用な増殖因子の代表的な例として、bFGF、インスリン、酸性FGF(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子I(IGF-I)、IGF-II、血小板由来増殖因子(PDGF)、及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、アクチビン-A、骨形成タンパク質(BMP)、ホルスコリン、グルココルチコイド(例えば、デキサメタソン)、伝達物質、及びアルブミンが挙げられる。
有用な還元剤は、β-メルカプトエタノールを含む。好ましい実施態様では、βメルカプトエタノールは、約0.1mMの濃度で存在する。他の還元剤、例えばモノチオグリセロール又はジチオスレイトール(DTT)の単独又は組み合わせは、同様の効果をあたえるために使用される。さらに他の同等の物質も、細胞培養の分野の当業者になじみがあるであろう。
ピルビン酸塩は、本発明に記載される培地中に含まれてもよい。ピルビン酸塩は、ピルビン酸ナトリウム又は霊長類幹細胞を実質的に未分化状態に維持及び/又は増進するのに有効な他のピルビン酸塩、例えばピルビン酸カリウムを含む。好ましい実施態様では、ピルビン酸塩は、約0.1mMの濃度になるまで加えられる。
本発明の培養培地を添加するために適切な他の化合物は、ヌクレオシド(例えば、アデノシン、シチジン、グアノシン、ウリジン、及びチミジン)及びヌクレオチドを含む。ヌクレオシド及び/又はヌクレオチドは、様々な濃度、好ましくは約0.1μM(マイクロモラー)〜約50μMの範囲で含むことができる。
好ましい実施態様では、1ミリリットルあたりの内毒素ユニット(eu/ml)で計測される培地の内毒性は、約0.1eu未満であり、そしてより好ましい実施態様では、約0.05eu/ml未満であろう。特に好ましい実施態様では、基礎培地の内毒性は、約0.03eu/ml未満であろう。内毒性を計測する方法は当該技術分野に知られている。例えば、好ましい方法は、U.S. Department of Health and Human Services, FDA, December 1987により発行された「Guideline on Validation of the Limulus Amebocyte Lysate Test as an End-product Endotoxin Test for Human and Animal Parental Drugs, Biological Products and Medical Devices,」に記載されている。
認められる様に、連続して又は周期的な間隔、好ましくは1〜3日おきに使用済み培養培地を新たな培養培地に交換することが望ましい。新たな培地を用いる1の利点は、慣用技術に従ってフィーダー細胞上、又は馴化培地中で培養された場合に増殖するよりも、細胞がより均一かつ迅速に増殖するように、条件を調節する能力である。
以前の開始細胞集合に比べた場合に、4、10、20、50、100、1000倍以上増殖された幹細胞(例えば、霊長類始原幹細胞)の集合を得ることができる。適切な条件下で、増加した集合における細胞は、当該培養を開始するために使用された幹細胞に比べて、50%、70%以上が未分化状態である。継代ごとの増加程度は、培養の終わりに回収されるおよその細胞数を、当該培養物中に元々まかれた細胞数で割ることにより計算することができる。増殖環境の大きさが限られているか、又は別の理由の場合、細胞は、場合により、さらに増殖させるために同様の増殖環境中に継代されてもよい。合計の増殖は、各継代における全ての増殖の産物である。もちろん、各継代において増殖した細胞全てを保持することは必要ではない。例えば、各培養で2倍増加した場合、約50%の細胞のみが各継代で保持され、次に凡そ同数の細胞が繰り越されよう。4回の継代後、細胞は、16倍に増加することになる。所望される場合継代されない細胞が保存されてもよく、この場合、これらは凍結され、そして好ましくは液体窒素又は-140℃で貯蔵することができる。
もちろん、霊長類始原幹細胞などの幹細胞に不適切な培養条件は、細胞の迅速な分化を引き起こすが、わずかに利得ある条件が、未分化細胞の集合を維持しつつ、数代継代することができるということが認められよう。幹細胞(例えば、霊長類始原幹細胞)を実質的に未分化状態で不定形培養する条件が適切であるかを試験するために、各継代ごとに細胞を好ましくは約4倍〜約10倍の範囲で増加させることが推奨される。高い増加程度及び/又は高い継代数(例えば、少なくとも11の継代数)は、より厳密な試験を提供する。細胞増殖が実質的に未分化であるかについての有効な試験は、未分化状態を指し示す細胞表面マーカーを発現するかを示すことである。
血清含有馴化前DMEM培地で増殖されたヒト皮膚線維芽細胞培養物は、慣用技術を用いて、馴化前UltraCULTURE無血清培地中での増殖に適用されうる。例えばBioWhittaker 1999/2000カタログ、42〜45頁、UltraCULTUREを参照のこと。製品説明書に従って、(BioWhittakerカタログ番号 12-725F)培地に、L-グルタミン(カタログ番号17-605)を加えた(馴化前UltraCULTURE無血清培地)。
10%子牛血清(Hyclone Laboratories, Logan, UT)、非必須アミノ酸(GibcoBRL)、及び100U/mlペニシリン-ストレプトマイシン-250ng/mlアムフォテレシンB(GibcoBRL)を添加した馴化前DMEM細胞培養培地(高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;GibcoBRL, Grand Island, NY)を用いて、ヒト皮膚線維芽細胞の単層培養を調製した。細胞を継代し、そして馴化前Ultra CULTURE無血清培地を希釈剤として用いて、1:2に分割した。細胞をプレートし、そして最大細胞密度が達成されるまで37℃、5%CO2インキュベーター内で、必要に応じて馴化前UltraCulture無血清培地を与えてインキュベートした。
細胞が少なくとも85%の生存性を示さないならば、これらの細胞は、1回の継代につき0.5%子牛血清(Hyclone Laboratories)を加えた馴化前UltraCULTURE無血清培地を用いて、1:2の比で継代される。連続継代の各々で、ウシ血清の量を0.1%づつ低下させ、5回の継代後、馴化前UltraCULTURE無血清培地は、血清を含まなかった。この時点で、当該細胞は適宜アスコルビン酸を加えられた馴化前UltraCULTURE無血清倍地中に維持されることを除いて、線維芽細胞を3次元培養で増殖させることができる。馴化無血清培地を適切な間隔で回収した。
線維芽細胞単層培養が、馴化前UltraCULTURE無血清培地中で増殖するようにうまく適応しない場合、代わりの離脱プロセスが用いられる。細胞を記載されるように継代し、5分間350×gで遠心し、そして5%子牛血清(Hyclone)を含む馴化前UltraCULTURE無血清培地中に懸濁し、1:2に分割し、そして再プレートした。次の継代時に、2%子牛血清を含む馴化前UltraCULTURE無血清培地中に細胞ペレットを再懸濁し、上に記載されるように分割及び再プレートを行なった。次の5回の継代の際に、ペレットを2%、次に1%、0.5%、0.1%、及び最終的に0%ウシ血清を含む馴化前UltraCULTURE無血清培地中にプレートした。この時点で線維芽細胞を実施例2又は3に記載されるように3次元培養で増殖させることができるが、当該細胞が馴化前UltraCULTURE無血清培地中で維持されることを除く。馴化培地は適宜回収される。
UltraCULTURE無血清培地の使用が記載される。なぜなら、他のものの中で、UltraCULTURE無血清培地は、DMEMに基づく培地であり、そして多くのヒト細胞株、例えばHuS-1*AT皮膚細胞株(BioWhittaker)の増殖を支持することが示されたからである。しかしながら、多くの無血清及び無動物生成物培地が様々なヒト細胞の増殖を妥当に支持する可能性があるということ、並びにこのような培地が過度の実験をすることなく通常行なわれるように評価することができるということを当業者は認めよう。
合成培地上でのhESCの増殖
以下は、1の例として、hESCの増殖のための合成培地の使用を記載する。
最初に、hESC株は、増殖停止MEF上に維持される。未分化のhESCは、高い核-対-細胞質比の小さいコンパクト細胞を有するきっちり詰められたコロニーを形成した。hESCコロニーは、次に周囲のフィーダー細胞に結合し、そして基礎となる組織培養プレートに緩く結合することにより増殖した。しかしながら、ジスパーゼ処理が周囲のMEF細胞からhESCを効率的に分離できないか、又は継代の間に効率的にhESCコロニーを引き離すことができないならば、さらに機械的分離ステップが、hESCコロニーを引き離しそして小片へとバラバラにするために必要とされうる。トリプシン処理はこれらの培養条件では許容される代替方法ではない。なぜなら当該細胞を引き離すために十分な処理は、フィーダー細胞上の未分化hESCにとって致死的で在り得るからであり;そして生存したhESCコロニーは、親コロニーと比べて許容できないほど高い割合の自発分化を行ない得るからである。結果として、酵素的方法に比べて、より均一の未分化hESCコロニーを産生する非酵素切り離しプロセスを使用することができる。この方法では、80%超の形態学的に未分化の細胞を有すると見積もられたコロニーが分割するように選択される。選択されたhESCコロニーは、周囲のフィーダー細胞から分離され、小片に切られ、そして滅菌プラスチックピペットチップを用いて組織培養プレートから切り離される。次に切り離されたHESCコロニー片は、新たなフィーダー層に移され、一晩付着させた。培養培地を一日おきに取り替えた。hESCを、1:8〜1:4の分割比で7日ごとにこの方法により継代する。この方法は、時間のかかるものではないが、酵素法よりも高いプレート効率をもたらすことができ、そしてより均一な未分化hESCコロニーもたらすことができる。
非ヒト動物生成物を伴わない培養システムを確立するために、一例としてヒト陰茎包皮線維芽細胞(HFF)細胞株Hs27をフィーダー層として使用することができる。ヒト陰茎包皮線維芽細胞(HFF)細胞株、HS27(米国培養細胞系統保存機関(ATCC);Manassas, VA)を増殖させて凍結細胞のマスターバンクを作成した。HFFをゼラチンプレコート60mmプレート又は6ウェルプレートに、1.7×104/cm2の密度でプレートし、そしてフィーダー細胞として使用する前に137Csγ放射線を用いて、50Gyで照射することにより不活性化した。元々MEF上で維持されていた未分化hESCを、γ線照射により有糸細胞分裂について不活性化されたHFFのプレートに移した。ESCをヒトフィーダー層に移す最初の試みでは、MEF上で増殖された細胞に比べて多くの分化した細胞が観察されることがある。hESCを取り扱う場合、未分化状態は以下の3つの基準:(a)独特かつ特徴的なステージ特異的形態及び大きさ;(b)多能性に関連する免疫マーカーの発現;及び(c)細胞系統の開始に関連する免疫マーカーがないこと、によって評価される。HFFディスプレー上に維持されたhESCコロニーは、よりイレギュラーな形態を示し、そしてより楕円形であり、そしてMEFで増殖された細胞よりも丸くない。HFFと一緒に培養されたヒトESCコロニーは、MEF上で増殖されたESCよりもかなり小さく、未分化HESC増殖を支持するMEFにより産生された幾つかの因子が、HFF培養システムでは失われているか又は不十分であるということを示唆する。未分化HESCマーカーであるOct-4、SSEA4、Tra-1-60、及びTra-1-81についての免疫染色により、HFF上でのHESCコロニーが、未分化(<30%)及び分化細胞の混合パッチを含み、しばしば明確な境界により分離されるということが示される。
HESC培地中におけるbFGF濃度を(4ng/mlから)20ng/mlに増加させることにより、HFF上で増殖されたHESCコロニーは、MEF上で増殖されたHESCコロニーのより丸くかつ未分化形態特徴を示す。これらのhESCコロニーはまた、かなり大きく、bFGFが、フィーダー層上でhESCの未分化増殖を促進したことを示唆する。bFGF(20ng/ml)に加えて、これらの結果を得るために使用される培地は、DMEM/F-12又はKO-DMEM(80%)、ノックアウト血清置換(20%)、L-アラニル-L-グルタミン又はL-グルタミン(2mM)、MEM非必須アミノ酸(1×)、及びβ-メルカプトエタノール(100μM)を含む。この培地では、80%未満の未分化HESCコロニーは、各継代でHFFフィーダーについて観察される。このシステムを用いて、形態的基準及び免疫学的基準の両方により評価された場合に、HFFフィーダー層上の未分化hESCは12ヶ月に渡り維持され(50継代超)、それにより持続性の長期間の未分化増殖が示された。特に、HFF上で維持されたhESCは、均一な未分化形態を示し、並びにOct-4、SSEA4、Tra-1-60、及びTra-1-81の高い発現レベルを示したが、SSEA1の発現を示さなかった。コロニーの端の細胞のみが、初期分化の典型的徴候:平坦な上皮細胞様の形態;細胞表面マーカーSSEA3の発現及び神経/β細胞前駆体のマーカーであるネスチンの発現、を示した。コロニーの端を超えて移動した細胞は、以前に観察されたように、ネスチン(神経外胚葉を指す)の発現及び適切に下方制御されたSSEA-3(図1a、Bの赤色矢印)の発現を示す大きな上皮細胞へとさらに分化しつづけた。
ウシFGF(bFGF)は、フィーダー細胞の非存在下においてマトリックスタンパク質上でのhESCの未分化増殖を促進するために使用することができる。ゼラチンでプレコートされたプレートをマトリゲル(増殖因子低下、Becton Dickinson)(冷DMEM/F-12中で1:30で希釈される)として知られているラミニンとコラーゲンの市販の組み合わせと4℃で一晩インキュベートする。各継代において、ラミニン/コラーゲン被膜プレート上で維持されたHESCコロニーの80%超は、かなりコンパクトであり、そして7日目にその形態並びにOct-4、SSEA4、Tra-1-60、及びTra-1-81の発現により証明されるように、未分化である。ラミニン/コラーゲン上のコロニーは、SSEA-3陽性の「過渡的」(現在まさに分化している)細胞がさらに狭まった端にしか存在しないことにより示されるように、HFF上で増殖されコロニーよりも均一な形態を有する。未分化HESCコロニーは、ラミニン/コラーゲン被膜プレート上にて持続性で長期間維持することができる。
10〜50ng/mlの範囲の濃度でbFGFを添加された培地では、hESCは、MEF-CM中で維持された場合の増殖速度に匹敵する増殖速度を示し、一方、MEF-CMに匹敵する未分化hESCの最適割合が、20ng/mlbFGFで維持されることが分かった。適切な濃度では、bFGFは、フィーダー細胞又はMEF馴化培地の代替となることもある。bFGFに加えて、インスリン及びアスコルビン酸も、おそらく共同的様式において健常未分化状態で十分な数のSCを維持するために必須である。アルブミン及びトランスフェリンはhESCの未分化増殖を維持するために決定的な成分ではないが、これらは、通常のコロニーの形を維持すること、又は生存に寄与しうる。
ラミニン/コラーゲン被膜プレート上で維持されたhESCと同様に、従来の未分化形態とそのOct4の発現により示された場合、80%を超えるHESCコロニーは、ラミニン単独で被膜された表面上で未分化のままである。対照的に、ヒトフィブロネクチン、ヒトコラーゲンIV、又は対照として、ゼラチンで被膜されたプレート上で維持されたHESCコロニーの大部分(70%超)は、一回目の継代の際に分化した形態を示し、少数(30%未満)の小さいコロニーがコンパクトで未分化形態を有した。興味深いことに、フィーダーを伴わない条件下(ラミニン又はラミニン/コラーゲン被膜されたプレート上)で維持された未分化細胞のコロニーは、ネスチン及びビメンチンを発現するhESC由来の線維芽細胞の単層を伴うことがわかる。これらの細胞は、その由来元と同一の未分化HESCのために「自己フィーダー層」として自然発生的に作用し、それらが分化することを妨げ、このシステムを「自己が含まれ」、「自己支持性」とし、そして外来性の「生体物質」、例えばヒト由来成分、の必要性を排除する。
上記生体物質を伴わない培養条件下で維持された未分化hESCの自己再生を示すために、hESCをトリプシンで処理し、単一細胞懸濁物にまで分離し、次に合成培地で培養する。未分化成熟サイズの単一細胞由来hESCコロニーは、in vitroにて4〜7日間で現れ始めた。合成条件下で培養されたhESCの12.6±3.8%のクローニング効率が観察された。この観察は、フィーダー細胞又は馴化培地を使用する培養条件を用いて以前報告されたかなり悪いクローニング効率とはかなり対照的である。実際、トリプシン処理によりバラバラにされた単一の未分化細胞(特にトリプシン切断に晒されたことのないhESC、例えばHES-25)が外来性フィーダー細胞上又は馴化培地中で継代された場合、完全な細胞死が見られた。しかしながら、未分化hESCは、合成生体物質を伴わない培養条件下でトリプシン処理すると予期しないほど高い継代効率を示す。これについての1の説明は、バラバラにされた単一細胞が、合成HESC培地中で、ラミニンを含む支持体上で高い効率で撒かれるということである。さらに未分化細胞のコロニーは、ビメンチンを発現するhESC由来線維芽細胞の単層を付随しているようである。これらの分化細胞は、それらの由来元と同一の未分化HESCコロニーについての「自己フィーダー層」として自発的に作用し、それらが分化することを妨げている。言い換えれば、多能性hESCが、その多くの分化生成物のなかに「外来」ヒトフィーダー細胞として外から供給されていた細胞株を必ず含むので、当該システムは「自己含有性」又は「自己支持性」となるようである。当該システムは、これらのhESCがその自己支持性(フィーダー)細胞を産生することを可能にする。
要約すると、馴化培地を含まない合成無血清培地は、ヒトフィーダー層上ばかりでなく、フィーダーを含まない条件下でも、未分化hESCの長期間の培養のために使用できる。この合成培養システムhESCは、トリプシン処理による分離の後に効率的および安定的に増殖することができる。
馴化培地のろ過及び濃縮
例えば、2.5μmの定格を備える3M.TM.522High Performance Liquid Fliter Bag(Southcoast)を用いて、細胞破砕物などの大きな粒子を取り除くために馴化培地を前もってフィルターにかけて、「ろ過培地」(1×の馴化培地とも呼ばれる)を生成した。ある適用では、ろ過培地は、製品操作説明書に従って、一分あたり25リットルの流速で、限外ろ過カートリッジ(モデル番号UFP-10-C55A、A/G Technology Corp., Needham, Mass.)の空洞のファイバーを流して濃縮される。開始濃度の約3〜15倍に濃縮された「栄養溶液」(10倍馴化培地とも呼ばれる)を、回収する。
1倍及び10倍馴化培地は、化粧品として、美容医薬として、又は医薬として許容される担体を有する化粧品、美容医薬、又は医薬製剤を含む組成物を製造するために製造者により使用される。化粧品として許容される担体、美容医薬として許容される担体、及び医薬として許容される担体は、組成物の意図された適用に依って同じであるか又は異なってもよいということが、当業者により認められよう。
化粧品、美容医薬、及び関連する使用方法
美容医薬という語句は、当該製品の使用者に効力を有する少なくとも1の生物的に活性な成分、及び少なくとも1の化粧品として許容される担体を含む製剤又は組成物を指す。美容医薬は、ある適用では及び適切な条件下では、機械的又は薬剤様の利得を提供し得る化粧品としてみなしてもよい。ある適用では、例えば、美容医薬は皮膚の基礎構造に影響し、しわの深さを低減し、又は皮膚の光酸化又は老化の効果を回復又は改善することもある。美容医薬は、皮膚ケア製品、ヘアケア製品、及びサンケア製品として特に有用でありうる。ある実施態様では、美容医薬組成物は、リポソーム、シクロデキストリン、ポリマーシステム、又はヒアルロン酸又は関連化合物のうちの少なくとも1を含むデリバリーシステムを含む。美容医薬組成物は、美容医薬として許容される担体を含む。局所適用に適している医薬として許容される担体又は製剤が、典型的に、美容医薬として許容される担体又は製剤であるということを当業者は理解されたい。
局所化粧品又は美容医薬軟膏、ローション、又はゲル組成物は、典型的に、有効量の馴化培地、又はその抽出物を含み、そして他の活性及び不活性成分を、例えば医薬クリーム基剤、水中油乳濁液、油中水乳濁液、ゲルなどの化粧品又は美容医薬として許容される担体と含みうる。局所に使用するための様々な化粧品及び美容医薬組成物として、馴化培地又は抽出物及び適切な担体を含む液滴、チンキ剤、ローション、クリーム、軟膏、セラム、溶液、及び軟膏が挙げられる。各組成物中の馴化培地又は抽出物の最適割合は、組成物の剤形および所望される治療効果に従って変化する。
製剤技術分野の当業者にあっては、製品のタイプ、組成物の性質、組成物の使用位置、所望される効果などに依存して、多くの化粧品として、美容医薬として、又は医薬として許容される製剤のいずれかを含んでもよいということを理解されたい。特許製剤は製剤技術において周知である一方、通常の技術を有する製造者は、過度の実験を行なうことなく、具体的適用について適切な製剤を決定することができるか、又は容易に選択することができよう。
化粧品及び美容医薬として許容される成分及び製剤の議論は、とりわけ、FDA、Cosmetics Handbook, U.S. Food and Drug Administration; Handbook of Cosmetic and Personal Care Additives, Ash and Ash, compilers, 1994, Chemical Publishing, New York, N. Y.; Bennett's Cosmetic Formulary, 1993, Chemical Publishing Co.; Harry's Cosmeticology、第7版、Wilkinson & Moore, 1982 及び第8版、 Rieger, 2000, Chemical Publishing; Cosmetic Bench Reference-2001, Allerud Publishing Corp.; CTFA Compendium of Cosmetic Ingredient Composition, Nikitakis及び McEwen編, 1990, Cosmetic, Toiletry、並びに Fragrance Association, Washington, D.C., Surfactant Encyclopedia, 第2版 Rieger, 1996, Allured Publishing; The Chemistry and Manufacture of Cosmetics, 第2版 De Navarre, Van Nostrand, Princeton, N.J.; Encyclopedia of Common Natural Ingredients Used in Food, Drugs, and Cosmetics, Leung, 1996, John Wiley; A Consumer's Dictionary of Cosmetic Ingredients, 第5版, Winter, 1999, Three Rivers Press, New York, N. Y.; Cosmeceuticals: Active Skin Treatment, 1998, Allured Publishing; Handbook of Cosmetic Science and Technology, Knowlton and Pearce, 1993, Elsevier Advanced Technology, Oxford, UK; Personal-Care Formulas, 1997, Allured Publishing; Beginning Cosmetic Chemistry, Scheuller and Romanowski, 1999, Allured Publishing;並びに Skin Permeation: Fundamentals and Application, Zatz, 1993, Allured Publishingに見出すことができる。医薬として許容される成分及び製剤は、とりわけ、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版, Gennaro編, 1990, Mack Publishingに見出すことができる。
本発明の方法は、美容状態(cosmetic condition)に広い適応性を有する。化粧品適用のための投与様式は、典型的に局所投与であるが、投与及び投与計画は、その調節が考えられている美容状態に依存して変化するであろう。
本発明は、美容用の方法、組成物、及びキットを個体(individual)に提供する。本明細書で使用される「個体」という語句は、ヒト並びに他の哺乳動物を含む。幾つかの実施態様では、当該組成物、方法、及び/又はキットは、美容治療を所望する個体、及び/又は美容治療を必要とする個体(例えば、やけどを受け又は他の瘢痕を有する子供は、治療を望んでいないかもしれないが、それにもかかわらず治療の必要性がある)に美容治療を提供するために使用される。本明細書に使用される「治療する」又は「治療」という語句は、美容利得を得ることを含む。美容利得は、治療される美容状態の所望される任意の調節を意味する。例えば、しわを有する個体において、美容利得は、しわの外観を無くすか又は低減することを含む。また、美容利得は、潜在的な状態に付随する生理的症状の1以上を除去又は改善して達成され、その結果、美容状態をいまだ患っているという事実にも関わらず、改善が患者において観察される。例えば、馴化培地は、美容の欠点が取り除かれた場合のみならず、美容の欠点及びそれに伴う結果、例えば心理的結果に関して個体において改善が観察された場合にも、馴化培地は、美容利得を提供する。幾つかの場合、本発明の方法及び組成物が、予防利得を達成することに向けられてもよい。「予防」又は「予防」効果は、状態の予防、状態(例えば皮膚老化)の進行、又は状態の発生可能性の低下を含む。本明細書に使用される場合、「治療する」又は「治療」は、予防を含む。
本明細書に使用される場合、「有効量」という語句は、有利又は所望の美容結果をもたらすために十分な量を含む。有効量は、1回以上で投与することができる。美容治療の点で、本発明の「有効量」の馴化培地は、美容状態の進行を軽減、改善、安定化、回復又は緩めるために、或いは軟組織の美容増加などの所望の効果を提供するために十分である。「有効量」は、単独で、或いは美容状態を調節するために使用された1以上の薬剤と組み合わせて使用される馴化培地からなることもある。
皮膚は、不所望と考えられている機能及び/又は外観の変化をもたらす多くの美容状態を患い、そしてその症状は、心理的不快感、並びに幾つかの場合生理的不快感又は不都合をもたらし得る。幾つかの場合、欠点は存在しないが、それにも関わらず、美容的に好ましい効果をもたらすために、このような方法で皮膚を増強又は改善することが個体にとって望ましい。
本発明の方法により調節され得る代表的な美容状態として、非限定的に、皮膚老化、美容欠点、不所望な色素付着、及び美容手術後の損傷が挙げられる。
皮膚の老化は、加齢、並びに光老化を含み、そしてしわ、弾力性の喪失(たるみ)、不均一な色素沈着、皮膚及び/又はコラーゲンの菲薄化として現れ、その結果、静脈及び他の基礎構造がより目立つようになる。皮膚の老化は、細胞増殖及び細胞機能の低下に関連する皮膚状態の主な例である。本明細書に使用される場合、「皮膚の老化」は加齢とともに生じる皮膚の外観及び機能の変化、例えばしわ、弾力性の喪失、たるみ、不均一な色素沈着(例えば、「そばかす」又は「肝斑」)、及び基礎組織のかさの喪失を指す。このような条件は、紫外線照射に当たることにより(光老化)、及び他の環状条件によって加速及び/又は悪化されることがある。加齢とともに、及び/又はUV照射に当たるとともに、表皮が薄くなり、そして皮膚は萎縮を伴うことがある。髪は薄くなり、そして脂肪分泌が減り、結果として乾燥、肌荒れ、亀裂への感受性が高くなる。弾力性及びコラーゲンファイバーの喪失を伴い、真皮が減少する。さらに、ケラチノサイトの増殖(これは皮膚の厚さ及び皮膚増殖能力を指し示す)が加齢とともに減少する。
ケラチノサイト増殖及びコラーゲン産生の増加は、皮膚の老化、つまり、しわ、厚さ、弾力性及び修復力に対抗すると信じられている。本発明に従い馴化培地は、皮膚の加齢の効果に対抗するために少なくとも1回、美容のために使用することができる。馴化培地を含む製剤は、皮膚の老化に対抗することが望まれている領域に局所的に適用されてもよい。
本発明の方法により治療されうる皮膚状態に、美容欠点が含まれる。これは病的又は生理的に有害ではない一方で、それにも関わらず生理的心理的苦痛、幾つかの場合かなりの程度の苦痛をもたらし得る。これらの場合、苦痛を引き起こす特徴を治し、或いは望ましいと考えられている特徴を高めることが望ましい。皮膚の老化に加えて、このような状態として、例えば、妊娠線及び萎縮性線(striae distensiae)(皮膚線条)、萎縮性瘢痕(例えば、にきび瘢痕)、傷(例えば、外傷性傷害、慢性傷害、又はヤケド)、又は手術瘢痕、肥厚及び亀裂皮膚(特に足)、及び脱毛が挙げられる。
後者の実施態様では、本発明は、毛髪の成長を高めるために馴化培地を含む製剤の使用に関する。毛髪を産生する細胞は、毛胞の根で増殖する。毛髪は、細胞が毛胞内で増殖するにつれて線維の形態で押し出される。毛髪の伸張は、分裂細胞による毛髪線維の形成及び伸張を指す。幾つかの実施態様では、本発明の方法は、毛髪成長のダイナミクスを変更して、毛胞細胞、特に毛胞の増殖を誘導する手段を提供する。本発明の対象である組成物及び方法は、例えば毛胞幹細胞の増殖を促進することにより、個体、例えばヒトにおいて毛胞サイズ及び毛髪成長割合を増加させるために使用することができる。1の実施態様では、当該方法は、動物、例えばヒトにおいて毛髪の成長割合及び/又は毛胞サイズを増加させるために十分な量の馴化培地を、毛髪が増殖する領域において皮膚に投与することを含む。一般的に、組成物は、クリーム又はローションとして局所的に投与され、そして毛髪の成長が観察されるまで毎日適用され、そして所望量の毛髪成長を維持するために十分である期間のあいだ適用されよう。
不所望な色素沈着は、個体により所望される色素沈着とは異なっている体領域上の色素沈着を含む。不所望な色素沈着は、光老化、炎症への反応、又は外傷、例えば外科的又は事故による皮膚の損傷への反応などの結果でありうる。不所望な色素沈着は、狭い領域の変貌した又は不所望な色素沈着、例えばそばかす、並びに広い領域の変貌した又は不所望な色素沈着、例えば不均等な色素沈着又は広い領域の不所望な色素沈着を含む。
本発明の方法のさらなる美容的使用は、一般的に、局所適用を通した組織の増量、例えば唇のボリュームアップなどを含む。「増量」は、一般的に皮膚の組織又は基礎組織の増加を通して、ふくよかさの外観を与えることを意味する。任意の適切な皮膚領域は、本発明の方法による増量について選択されてもよい。
さらに、本発明の方法は、それ自体皮膚及び/又は基礎組織に損傷を与え、かつ回復に不所望なほど長期間を要し、及び/又は次善の結果をもたらし得る、標準的な美容方法からの回復を促進及び/又は加速するために使用することができる。このような方法として、化学的剥離、皮膚切除、レーザー皮膚表面再構築(laser resurfacing)、切除皮膚表面再構築(ablative resurfacing)、非切除皮膚表面再構築、光線力学的治療、非コヒーレント光線療法、乳房リフト術、顔リフト術、眼瞼リフト術、前頭リフト術、首リフト術、大腿リフト術、殿部リフト術、腹部整形手術、及び瘢痕修正が挙げられる。
当業者に明らかなことであるが、これらの方法の幾つか(例えばリフト術)は、さらなる皮膚安定を必要とすることがある一方、他のもの(例えば、化学的剥離、皮膚切除、切除又は非切除皮膚表面再構築)は、皮膚表面に過度に損傷を与え、そして適宜及び最適な様式で回復の手助けを必要とする。幾つかの実施態様では、本発明の方法は、まぶたを引き締めそしてリフトを達成するための方法を提供し;この方法は、慣用のまぶたリフト術と組み合わせて又は代替として使用されうる。本発明の方法は、ヒーリング及び回復を高め及び/又は促進する方法の両方のタイプと併せて使用されてもよい。
馴化培地は、以下により詳細に記載されるように、美容医薬として許容される任意の担体中で投与されうる。本発明の方法の実施態様では、使用される馴化培地の濃度は、約0.00001、0.00005、0.0001、0.001、0.01、0.1、1、5、10、又は20%超でありうる。幾つかの実施態様では、馴化培地の濃度は、約0.00005%超である。馴化培地の濃度は、約0.0001、0.001、0.001、0.01、0.1、1、5、10、又は20%未満であってもよい(ここで与えられる全ての濃度割合は、他に記載がない限りw/wである)。幾つかの実施態様では、馴化培地や、約0.00001%〜約1%;又は約0.00001%〜約0.1%;又は約0.0001%〜約0.01%;又は約0.0005%〜約0.005%;又は約0.0005%〜約0.002%;或いは約0.001%の濃度で使用される。幾つかの実施態様では、それより低い濃度及び高い濃度が意図される。皮膚範囲は、馴化培地の合計量(μl)/皮膚領域cm2の点で記載されてもよく;これらの点では、投与あたりの典型的な範囲は、約3、6、60、600、6000、60,000、又は600,000μL/皮膚cm2;約900,000、600,000、60,000、6000、600、60、又は6μL/皮膚cm2;或いは約6μL/cm2〜約600μL/cm2の皮膚;或いは約60μL/皮膚cm2である。
本発明の方法は、一般的に局所投与を用いる。当該方法は、馴化培地を用いる任意の適切な手段であってもよく、そして場合により、皮膚の表面で接触する他の化粧品又は皮膚医薬であってもよく、例えば密封を伴って又は伴わずにゲル、ローション、クリーム、リポソーム調製品などの適用を含み、又は皮膚の罹患領域と接触されるプラスター、パッチ、マスク、手袋、又は同様の装置として適用を含む。美容状態の調節のために、又は所望される美容効果を提供するために、馴化培地を含む製剤の投与の頻度及び期間は、製剤の性質(例えば、濃度、他の化粧品又は皮膚薬、ビヒクルタイプの有無)、当該状態の重篤度及び程度、そしてある場合、皮膚ケア専門家、例えばヘルスケアの専門家、例えば皮膚科医、又は美容師の判断に左右される。
局所適用は、一週間あたり約1回、2回、3回、4回、5回、又は6回以上でありうるか、或いは1日あたり1回、2回、3回、4回、5回、又は6回以上でありうる。適用頻度は、1週間あたり、約2回、3回、4回、5回、又は6回未満であってもよく、又は1日あたり少なくとも約1回、2回、3回、4回、5回、又は6回未満であってもよい。本発明の幾つかの実施態様は、馴化培地の有効量の局所投与により、個体の皮膚を美容治療する方法を提供する。幾つかの実施態様では、当該製剤は1日あたり平均で約1回投与され;幾つかの実施態様では、製剤は、1日あたり平均約1回又は2回投与され;幾つかの実施態様では、製剤は、1日あたり平均で約1回〜3回投与され;幾つかの実施態様では、製剤は、1日あたり平均で約3回以上投与される。1の実施態様では、製剤は1日あたり平均で約2回投与される。一般的に日が昇った際の朝に、そして日が暮れる前の夜に投与される。局所投与は、カバーされることがなくてもよい。或いは、局所投与は、製剤上にカバーの使用を含んでもよい。これは、密封性であっても非密封性であってもよい。例えば、寝る前の夜の投与は、密封又は非密封カバーで投与領域をカバーすることを含んでもよく、これは寝ている間に依然として有効である。
治療期間は、一般的に、美容治療に対する皮膚の応答に依存するであろう。治療は、治療を受ける個体の判断で続けられてもよい。幾つかの場合、馴化培地を含む製剤の投与又は適用は、治療の始めより頻繁に行なわれてもよいし、そして治療を続け、そして状態が改善し、又は所望の効果が達成されるにつれて、頻度が少なくなってもよい。幾つかの場合、状態を休止又は改善状態で維持するため、美容状態(例えば皮膚老化)の開始を遅らせるため、又は美容状態の進行を遅らすために、治療が無期限に続けられてもよい。これらの頻度及び期間の変更は、治療を受ける個体により簡単に達成される。
皮膚の美容治療の幾つかの実施態様は、以下に記載されるように、馴化培地を含むローション、幾つかの実施態様では乳化ラノリンアルコール、ワックス、及びオイルの混合物(例えばEUCERIN(登録商標))、又はワセリン又はミネラルオイルの混合物、四級アンモニウム化合物、脂肪アルコール、及び脂肪エステル皮膚軟化薬の混合物(例えば、CUREL(登録商標)、米国特許第4,389,418号を参照のこと)の局所投与を使用する。馴化培地を含むローションは、所望される結果、例えばしわ、たるみなどの低下又は除去が観察されるまで、1日あたり1〜3回の頻度で、幾つかの実施態様では1日あたり1回適用され、続いて、その後1週間あたり1〜3回、幾つかの実施態様では1週間あたり1回局所適用される。
本発明の組成物の適切な担体が、化粧品及び美容医薬の分野において一般的に見出される他の成分:オイル、ワックス、又は他の標準脂肪物質、又は慣用のゲル化剤及び/又は増粘剤;乳化剤;湿潤剤;皮膚軟化薬;日焼け止め剤;親水性又は親油性活性剤、例えばセラミド;フリーラジカル除去剤;殺菌剤;隔離剤;保存料;塩基性化又は酸性化薬剤;芳香剤;界面活性物質;賦形剤;天然物又は天然抽出物、例えばアロエ又は緑茶抽出物;ビタミン;又は着色剤であるということを当業者においては理解されたい。これらの様々な成分の量は、組成物の用途及び所望される美容又は美容医薬効果に依存して変化するであろう。
馴化培地が、別の皮膚ケア法又は組成物と組み合わせて使用される場合、馴化培地とさらなる方法又は組成物の任意の組み合わせが使用されてもよい。こうして、例えば、馴化培地の使用が、別の美容又は皮膚医薬と組み合わせられるならば、この二つは、同時に、連続して、重なった期間のあいだ、同様の頻度、同一の頻度、又は異なる頻度で投与されてもよい。幾つかの場合、1以上の他の化粧品又は皮膚薬と組み合わせて馴化培地を含む組成物が使用されてもよい。
本発明の方法で使用されうる他の皮膚薬又は美容薬が、以下に詳細に記載される。これらの薬剤についての用量、投与経路、投与計画などが、当該技術分野に周知である。
美容組成物が局所用である場合、滅菌される必要はないが;滅菌が所望される場合、滅菌は、滅菌ろ過膜(0.22μm)を通してろ過することにより、又は他の技術的に許容される手段により容易に達成される。
所望される場合、さらなる化粧品又は皮膚科成分が、製剤中に取り込まれてもよい。他の成分の性質は、調節される美容状態及び/又は所望される美容結果に左右されよう。これらは、以下にさらに十分に記載される。
馴化培地は、(例えば、適用部位で馴化培地が汗中に溶解又は懸濁されるように密封包帯を用いて)そのまま使用されてもよいが、一般的に局所投与用に適したビヒクル中に調製される。本発明の組成物は、局所投与に適したビヒクル中に馴化培地を含む。
美容組成物の局所適用のための多くのビヒクルが当該技術分野に知られている。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Gennaro, A R編, 第20版, 2000: Williams 及びWilkins PA, USAを参照のこと。美容組成物を局所投与するために通常使用される全ての組成物、例えばクリーム、ローション、ゲル、包帯剤、シャンプー、チンキ剤、ペースト、軟膏、軟膏、粉末、液体又は半液体製剤、パッチ、リポソーム製剤などが使用されてもよい。当該組成物の適用は、適切である場合、窒素、二酸化炭素、フッ素などの推進剤を伴うか、又は推進剤を伴わない(例えばポンプスプレー)エアロゾルによるもの、スワブにより適用することができる液滴、ローション、又は半固体、例えば増粘組成物である。特定の組成物では、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、軟膏などの半固体組成物が慣用的に使用されよう。馴化培地は、場合により、少量の適切な溶媒、例えばエタノール又はDMSOなど中に溶解又は希釈されてもよいが、しかしながらこれは必要とされるわけではない。
当該技術分野に周知の組成物、好ましくは低刺激性及びpH調節組成物は、局所投与用に特に好ましく、そして化粧水、パック、ローション、スキンミルク、又は乳液が挙げられる。当該調製品は、馴化培地のほかに、そして場合により他の活性成分、このような調製品中に通常使用される成分を含む。このような組成物の例は、オイル、ワックス、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、抗酸化物質、粘度安定剤、キレート剤、緩衝剤、保存剤、香料、染料、低級アルカノールなどである。
オイルの例として、脂肪及び油、例えばオリーブオイル及び水素添加油;ワックス、例えば蜜蝋及びラノリン;炭化水素、例えば液体パラフィン、セレシン、及びスクアレン;脂肪酸、例えばステアリン酸及びオレイン酸;アルコール、例えばセチルアルコール、ステアリルアルコール、ラノリンアルコール及びヘキサデカノール;並びにエステル、例えばミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及びステアリン酸ブチルが挙げられる。界面活性物質の例として、陰イオン性界面活性物質、例えばステアリン酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、N-アシルグルタミン酸ナトリウム;陽イオン性界面活性物質、例えばステアリルジメチルベンジルアンモニウム・クロリド及びステアリルトリメチル・アンモニウム・クロリド;両性界面活性物質、例えばアルキルアミノエチルグリシン塩酸塩溶液及びレシチン;並びに非イオン性界面活性剤、例えばグリセリン・モノステアレート、ソルビタン・モノステアレート、スクロース脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレン・オレイルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレン・ソルビタン・モノパルミテート、ポリオキシエチレン・ココナッツ脂肪酸・モノエタノールアミド、ポリオキシプロピレン・グリコール(例えば、商標名「Pluronic」の固体物質)、ポリオキシエチレン・ひまし油、及びポリオキシエチレン・ラノリンでありうる。保湿剤の例として、グリセリン、1,3-ブチレン・グリコール及びプロピレングリコール;低級アルコールの例として、エタノール及びイソプロパノール;増粘剤の例として、キサンタンガ・ヒドロキシプロピル・セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール及びナトリウム・カルボキシメチル・セルロース;抗酸化物質の例として、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、クエン酸及びエトキキン(ethoxyquin);キレート薬の例として、エデト酸二ナトリウム及び二リン酸エタンヒドロキシ;緩衝剤の例として、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、及び燐酸水素二ナトリウム;及び保存料の例として、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、デヒドロ酢酸、サリチル酸、及び安息香酸を含む。これらの物質は、単に例示であり、そして当業者により、他の物質が官能性を失うことなく置換されうるということが認識されよう。
局所投与用の組成物を製造するために、馴化培地の濃度は、約0.00001、0.00005、0.0001、0.001、0.01、0.1、1、5又は10重量%であってもよい。幾つかの実施態様では、馴化培地の濃度は、約0.00005%より高い。馴化培地の濃度は、約0.0001、0.001、0.001、0.01、0.1、1、5、10又は20%より少ないこともある(本明細書で与えられる全ての濃度割合は、他に特記がない限り、w/wである)。幾つかの実施態様では、それらより低い濃度及び高い濃度が意図される。軟膏、ローション、又はクリームを使用する幾つかの実施態様では、例えば、担体は、1〜20%、特に5〜15%の湿気、0.1〜10%、特に0.5〜5%の増粘剤及び水を含むことができ;或いは、当該担体は、70〜99%、特に20%〜95%の界面活性剤、及び0〜20%、特に2.5〜15%の脂肪;或いは、80〜99.9%、特に90〜99%の増粘剤;5〜15%の界面活性剤、2〜15%の保湿剤、0〜80%のオイル、かなり少量(2%未満)の保存剤、着色剤、及び/又は香料、及び水からなることがある。化粧水では、例えば担体は、2〜10%の低級アルコール、0.1〜10%、又は特に0.5〜1%の界面活性剤、1〜20%、特に3〜7%の保湿剤、0〜5%の緩衝液、水および少量(2%未満)の保存剤、染料、及び/又は香料からなる。スキンミルクでは、担体は、一般的に、10〜50%のオイル、1〜10%の界面活性剤、50〜80%の水及び0〜3%の保存剤及び/又は香料からなる。
幾つかの実施態様では、場合により他の活性成分を伴う馴化培地は、乳化ラノリン、アルコール、ワックス、及びオイルの混合物(例えば、EUCERIN(登録商標)ローション)中、又はワセリン又はミネラルオイル、四級アンモニウム化合物、脂肪アルコール、及び脂肪エステル皮膚軟化剤の混合物(例えば、CUREL(登録商標)ローション)中に、又は組成物中で実質的に類似しているローション中に溶解、混合、又は懸濁される。
EUCERIN(登録商標)乾燥皮膚治療オリジナルモイスチャライジングローションは、水、ミネラルオイル、ミリスチン酸イソプロピル、PEG-40ソルビタン・ペロレアート、ラノリン酸グリセリル、ソルビトール、プロピレングリコール、パルミチン酸セチル、硫酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラノリンアルコール、BHT、メチルクロロイソチアゾリノン、及びメチルイソチアゾリノンを含む。CUREL(登録商標)無香料デイリーモイスチャライジングローションは、水、グリセリン、ジステアリルジアンモニウム・クロリド、ワセリン、イソプロピルパルミチン酸、セチルアルコール、ジメチコン、塩化ナトリウム、メチルパラベン、及びプロピルパラベンが含まれる。
本発明の組成物の幾つかの実施態様は、約0.00005%より高い濃度で乳化ラノリンアルコール、ワックス、及びオイルの混合物(例えば、EUCRIN(登録商標)乾燥皮膚治療オリジナルモイスチャライジングローション)を含むローション中に馴化培地を含む。本発明の組成物のいくつかの実施態様は、約0.0001%〜約0.01%の濃度で、ラノリンアルコール、ワックス、及びオイルの混合物(例えば、EUCERIN(登録商標)乾燥皮膚治療オリジナルモイスチュライジング・ローション)を含むローション中に馴化培地を含んだ。
本発明の組成物の幾つかの実施態様は、ワセリン又はミネラルオイル、四級アンモニウム化合物、脂肪アルコール、及び脂肪エステル皮膚軟化剤の混合物(例えば、CUREL(登録商標)、無香料デイリーモイスチャライジングローション)を、約0.00005%超の濃度で含む。本発明の組成物の幾つかの実施態様は、ワセリン又はミネラルオイル、四級アンモニウム化合物、脂肪アルコール、及び脂肪エステル皮膚軟化薬の混合物(例えば、CUREL(登録商標)無香料デイリーモイスチャライジングローション)を含むローション中に、馴化培地を約0.0001%〜約0.01%の濃度で含む。
さらに、馴化培地、及び場合により他の活性成分は、リポソーム含有組成物中に剤形されてもよい。リポソームは極性脂質などの両親媒性分子、例えば、ホスファチジルコリン、エタノールアミン及びセリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、プラスマロゲン、ホスファチジン酸、及びセレブロシドにより形成される人工ベシクルである。適切な両親媒性分子を水中又は水性溶液中で膨潤させて、水性物質によって互いから分離されている多くの二重層から構成される多層構造の液晶を形成する場合、リポソーム(粗リポソームと呼ばれることもある)が形成される。水性物質を封入する単一二重層からなると知られている別のタイプのリポソームは、単層ベシクルと呼ばれる。水溶性の物質が、脂質の膨潤の間に水相中に含められるならば、これらは脂質二重層の間の水相中にトラップされる。
局所適用に適したリポソーム調製品中に馴化培地を取り込むことは、多くの方法により達成することができる。リポソーム調製品では、状態の治療のためのリポソームを調製する既知の方法が使用されてもよい。例えば、Banghamら、J. MoL Biol, 23: 238-252 (1965)及び Szokaら、Proc. Natl Acad. Sci. 75: 4194-4198 (1978)を参照のこと。これらの組成物を特定の作用部位へと仕向けるためにリガンドを付着させてもよい。
馴化培地及び、場合により他の成分を含むリポソームは、直接使用できるか、又は当該リポソームは、局所投与のための医薬として許容される適切な担体に使用できる。リポソームの粘度は、1以上の適切な増粘剤、例えば、キサンタンガム、ヒドロキシプロピル・セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びそれらの混合物により増加することができる。水性成分は、水のみからなってもよいし、又は電解質、緩衝系、及び他の成分、例えば保存剤からなってもよい。使用できる適切な電解質は、金属塩、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩を含む。代表的な金属塩は、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムである。電解質の濃度は、0〜260mM、好ましくは5〜160mMで変わりうる。これは有機成分を注入する間にかなりの乱流を生じさせることによってホモジェナイズを引き起こすように適用できる適切な容器中に水性成分を入れた。2つの成分のホモジェナイズは、容器内で達成することができるか、或いは、水性成分及び有機性成分は、容器外に位置する混合手段に別々に注入されてもよい。後者の場合、リポソームは、混合手段において形成され、そして次に回収用の別の容器に移される。
有機成分は、適切な非毒性の美容医薬として許容される溶媒、例えばグリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール、並びに当該溶媒中に適切なリン脂質からなる。使用できる適切なリン脂質として、レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン及びホスファチジル・グリセリンが挙げられる。他の脂溶性添加物は、リポソームの特徴を選択的に改善するために使用できる。このような他の添加物の例として、ステアリルアミン、ホスファチジン酸、トコフェロール、コレステロール及びラノリン抽出物を含む。さらに、リン脂質の酸化を防ぐことができる他の成分が、当該有機成分に加えられてもよい。このような他の成分の例として、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、アスコルビルパルミチン酸及びアスコルビル・オレイン酸が挙げられる。安息香酸、メチルパラベン及びプロピルパラベンなどの保存剤が加えられてもよい。
馴化培地は一般的に、細胞膜を浸潤し、そして皮膚の深い層にまで達することができるが、幾つかの実施態様では、さらに本発明の製剤中に浸透促進剤を含めることが有用であることもある。浸透促進剤は、生物活性物質の皮膚浸透を改善する物質である。適切な浸透促進物質は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、DMSO様化合物、エタノール性化合物、ピログルタミン酸エステル並びに、医薬組成物に選択される薬剤又は化学物質の皮膚浸透を促進する医薬技術の分野において当業者に知られている他の溶媒又は化合物が挙げられる。他の浸透促進物質として、両親媒性物質、例えばL-アミノ酸、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両親媒性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、脂肪酸及びアルコールが挙げられる。さらなる浸透促進物質が、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第19版 (1995) 1583頁に開示されている。選択された浸透促進物質、活性薬剤及び活性化合物に対する浸透促進物質の相対比は、当該薬剤又は化学物質の所望されるデリバリー割合に依存し、これは次に治療される状態と結果の求められる結果に左右される。より具体的に、十分高い濃度の薬剤又は化学物質が、皮膚に達して、所望されると考えられている時間のあいだに状態を治療するように、促進物質のタイプ及び量が選択される。
上記組成物から離れて、使用されるのは、カバー、例えば硬膏剤、包帯、包帯材、ガーゼパッド、パッチなどから作られ、適切な量の馴化培地、及び場合により他の成分を含むものであった。幾つかの場合、使用されるは、硬膏剤、包帯、包帯材、 ガーゼパッド、パッチなどであって、治療製剤を含む局所製剤に浸漬されたものであった。
追加の美容及び皮膚薬剤
他の美容薬剤又は皮膚薬剤は、本発明の方法及び製剤に含まれうる。本明細書で使用される「美容薬剤又は皮膚薬剤」には、美容状態の治療のための、又は所望の美容効果を達成するための当該物質の投与が美容薬剤又は皮膚薬剤の使用を伴わない場合の状態よりも優れている状態をもたらす任意の物質が含まれる。
しわとり薬は、美容薬剤又は皮膚薬剤の1の形態である。皮膚しわとり薬には、様々な作用を通してしわを予防又は治療し、しばしば組み合わせて使用される様々な薬剤が含まれる。顔のしわ及び他のしわの外観を低減するために、しわ形成の分子的機序の理解に基づいて、多くのアプローチが行なわれる。このような治療として、化粧品、薬剤治療、及び外科的手術が挙げられる。例えば、多くの化粧品は、コラーゲン合成を刺激しうるヒドロキシ酸を含む。他の一般的な治療は、レチノール、レチノイン酸、パルミチン酸レチノール、ビタミンA誘導体(又は処方形態であるレチンーA及びRenova)であって、コラーゲン産生を直接又は間接的に刺激することができるか、又はコラーゲン分解を遅らすことができるものを利用する。様々なケラチン化傷害の予防又は治療に特に有用である、レチノイド型活性を有する二環芳香族化合物は、EP679630に記載されている。これらの化合物は、皮膚の経時又は化学的加齢を補修又は対抗するために特に活性があり、例えばしわとり薬中に含まれる。ビタミンC及びE、並びにコエンザイムQ10などの抗酸化物質は、細胞に損傷を与え、そして加齢を引き起こすフリーラジカルに対抗すると信じられており、そしてしわの治療に用いられてきた。近年、FDAは眉間のしわを治療するためにボトックス(極度に精製された形態のボツリヌス毒素)の使用を承認した。
こうして、本発明の方法又は組成物で皮膚の美容治療を補う美容薬剤又は皮膚薬剤は、上に定義される二環芳香族化合物、レチノイド型の活性を有する他の化合物、フリーラジカル・スカベンジャー、ヒドロキシ酸又はケト酸又はその誘導体を単独で、又は組み合わせて含む。
「フリーラジカル・スカベンジャー」は、例えば、α-トコフェロール、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノール(例えば、コエンザイムQ10)又は特定の金属キレート薬を指す。ヒドロキシ酸として、例えば乳酸及びグリコール酸などのαヒドロキシ酸、又はサリチル酸及びサリチル酸誘導体、例えばオクタノイル誘導体などのβヒドロキシ酸;他のヒドロキシ酸及びケト酸は、リンゴ酸、クエン酸、マンデル酸、酒石酸又はグリセリン酸又はそれらの塩、アミド、又はエステルが挙げられる。
本発明において有用である他のしわとり薬及び抗皮膚加齢薬として、硫黄含有D及びLアミノ酸及びその誘導体及び塩、特にN-アセチル誘導体、その好ましい例は、N-アセチル-L-システイン;チオール、例えばエタンチオール;脂溶性ビタミン、パルミチン酸アスコルビル、セラミド、シュードセラミド(例えば、シュードセラミドは米国特許第4,198,210号、第4,778,823号、第4,985,547号、第5,172,321号に記載される。これらの特許文献はすべて本明細書に援用される)、リン脂質(例えば、ジステアロイル・レシチン・リン脂質)、脂肪酸、脂肪アルコール、コレステロール、植物ステロール、フィチン酸、リポ酸、リソホスファチジン酸、及びスキンピール剤(例えばフェノールなど)、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましい脂肪酸又はアルコールは、12〜20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル鎖を有するものである。特に好ましい脂肪酸は、リノレン酸である。なぜならリノレン酸は、紫外線の吸収を支援し、そしてさらに天然皮膚脂質の必須成分であるからである。本明細書で使用するための適切なしわとり剤の非限定的な例が、米国特許第6,217,888号に記載され、その記載は本明細書に援用される。
皮膚の美容治療のための組成物は、有害なUV光に対する皮膚の暴露を低減する日焼け止めをさらに含む。日焼け止めとして、紫外線を吸収又はブロックするために一般的に使用される物質が挙げられる。代表的な化合物は、PABAの誘導体、シナマート(Cinnamate)及びサリチレートの誘導体(フェルリル・サリチラートを除く)である。例えば、オクチル・メトキシシナマート及び2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾンとしても知られている)が使用されうる。オクチル・メトキシシナマート及び2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンは、それぞれPARSOL MCXとBENZOPHENONE-4という商標名で市販されている。皮膚スクリーン(dermascreen)が使用されてもよい。
多くの他の日焼け止めは、当業者に知られている。幾つかの実施態様では、日焼け止めは、FDAに承認されているか、欧州連合において使用が承認されている。例えば、FDA承認済みの日焼け止めが単独で、又は好ましくは組み合わせで使用されてもよい。例えば、米国特許第5,169,624号;第5,543,136号;第5,849,273号;第5,904,917号;第6,224,852号;第6,217,852号、及びSegarinら、Cosmetics Science and Technologyの第7章、189頁、及び Final Over-the-Counter Drug Products Monograph on Sunscreens (Federal Register, 1999:64:27666-27963)を参照のこと。これらの文献は全て本明細書に援用される。組成物中に使用される日焼け止めの正確な量は、太陽の紫外線照射から所望される保護の程度に依存して変化しうる。
本発明の美容組成物は、さらに、抗ニキビ薬をさらに含む。抗にきび薬として、過酸化ベンゾイル、抗生物質、例えばエリスロマイシン、リン酸クリンダマイシン、5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシキノリン、レゾルシノール、酢酸レゾルシノール、サリチル酸、アゼライン酸、長鎖ジカルボン酸、イオウ、亜鉛、レチノイド、抗アンドロゲン、及び多様な天然物質、例えば緑茶に由来物質、茶木油、及びそれらの混合物が挙げられる。本明細書に使用される他の適切な抗にきび薬の非限定的な例は、米国特許第5,607,980号に記載される。本文献は、本明細書に援用される。
他の美容薬剤及び皮膚薬剤は、抗セルライト薬剤を含む。抗セルライト薬剤として、イソブチルメチルキサンチン、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン、アミノフィリン、ヨヒンビン、及びそれらの混合物が挙げられる。
皮膚の美容治療を補うさらに別の美容薬剤又は皮膚薬剤として、α-インターフェロン、エストラジオール;プロゲステロン;プレグナナロン(pregnanalone);メチルソラノメタン(MSM);銅ペプチド(銅抽出物);プランクトン抽出物(ファイトソム);ブロパロエストロール(broparoestrol);エストロン;アドロステンジオン(adrostenedione);及びロスタンジオール(rostanediols)などが挙げられる。
本発明の組成物は、広い範囲の追加成分を含み得る。CTFA美容成分ハンドブック、第7版(1997)及び第8版(2000)は、スキンケア組成物中に一般的に使用される広範囲の様々な成分を記載し、これらは本発明の組成物中に使用するために適している。他の局所に適用される化合物は、Remington Pharmaceutical Sciences第20版、Lippincott Williams & Witkins, Baltimore, Md. (2000)(以後Remintonとする)、米国薬局方協会、Inc., Rockville, Md.及び米医薬品便覧、Medical Economics Co., Inc., Oradell, N.J.に掲載される。これらの文献は本明細書に援用される。本発明により提供される製剤中での他の活性成分の濃度は、他の活性成分の有効量を提供する濃度であり;この濃度は当該技術分野に周知である。例えば、上記参考文献、並びにTextbook of Dermatology, Champion, Burton, Burns, and Bretnach編、Blackwell Publishing, 1998を参照のこと。
美容及び美容医薬として許容される成分及び製剤についての議論は、とりわけ、FDA Cosmetics Handbook, U.S. Food and Drug Administration; Handbook of Cosmetic and Personal Care Additives, Ash and Ash, compilers, 1994, Chemical Publishing, New York, N. Y.; Bennett's Cosmetic Formulary, 1993, Chemical Publishing Co.; Harry's Cosmeticology、第7版、Wilkinson & Moore, 1982 及び 第8版, Rieger, 2000, Chemical Publishing; Cosmetic Bench Reference-2001, Allerud Publishing Corp.; CTFA Compendium of Cosmetic Ingredient Composition, Nikitakis and McEwen編、1990, Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association, Washington, D.C., Surfactant Encyclopedia, 第2版改訂版、Rieger, 1996, Allured Publishing; The Chemistry and Manufacture of Cosmetics, 第2版、De Navarre, Van Nostrand, Princeton, N.J.; Encyclopedia of Common Natural Ingredients Used in Food, Drugs, and Cosmetics, Leung, 1996, John Wiley; A Consumer's Dictionary of Cosmetic Ingredients, 第5版、Winter, 1999, Three Rivers Press, New York, N. Y.; Cosmeceuticals: Active Skin Treatment, 1998, Allured Publishing; Handbook of Cosmetic Science and Technology, Knowlton and Pearce, 1993, Elsevier Advanced Technology, Oxford, UK; Personal-Care Formulas, 1997, Allured Publishing; Beginning Cosmetic Chemistry, Scheuller and Romanowski, 1999, Allured Publishing; and Skin Permeation: Fundamentals and Application, Zatz, 1993, Allured Publishing. Discussions of pharmaceutically-acceptable ingredients and formulations may be found in, among other places, Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版、 Gennaro編, 1990, Mack Publishingに見出すことができる。
キット
さらに別の態様では、本発明は、所望される美容結果をもたらすために、美容皮膚治療用のキットを提供する。これらのキットは、馴化培地又は本明細書に記載される任意の馴化培地含有組成物を適切なパッケージに維持される容器(単数又は複数)中に含む。幾つかの実施態様では、このようなキットは、化学引用文献、添付文書、美容試験の結果、及び/又はこれらの要約などを含んでもよく、これは組成物の活性及び/又は利点を指し示すか明らかにする。このような情報は、例えばin vivoモデルに基づいた実験動物を使用する試験、及びヒト美容又は臨床試験に基づく試験などの様々な試験の結果に基づいている。本明細書に記載されるキットは、ヘルスケア提供者(例えば、皮膚科専門医及び他の医師)、スキンケア外観ケアの提供者、例えば美容師、ヘアスタイリストなどに提供され、販売され、及び/又は導入される。美容用のキットは、直接消費者に提供され、市販され、及び/又は導入される。キットは、温泉及び小売店で市販されることもある。
本明細書中で言及された全ての特許及び特許出願、公開、科学論文及び他の参考文献は、本発明が属する技術の当業者のレベルを示すものであり、それゆえ各文献がその全てを個別に援用されるのと同程度に本明細書に援用される。出願人は、任意のこうした特許及び特許出願、公開、科学文献、電子情報、及び他の援用された文献又は文書から得た任意及び全ての構成及び情報を本明細書中に物理的に援用する権利を留保する。
特定の培地組成、培養システム、美容組成物及び本明細書に記載されるその製造及び使用方法が、好ましい実施態様を表し、そして例示であり、そして本発明の範囲を制限するものとして意図されない。本明細書を考慮すると、当業者は他の対象、態様、及び実施態様を思いつくであろうし、そしてそれらは特許請求の範囲により定義される本発明の本質の中に含まれる。本発明の範囲及び本質から逸脱することなく、様々な置換及び変更が、本明細書に開示された発明になされるということが当業者に容易に明らかである。本明細書に例示的に記載された発明は、本明細書に必須であるとは特に開示されていない任意の構成(単数又は複数)又は限定(単数又は複数)を含まずに実施されることがある。「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などは、拡張して非制限的に読むべきである。本明細書に使用される場合、添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形を含み、そして「a又はb」の場合におけるように、「又は」という語句の使用は、文脈が明らかにそうではないと記載する場合を除き、aのみ、bのみ、又はaとbと一緒にということを指すこともある。
使用された語句及び表現は説明の点で使用されており、そして制限の点で使用されているわけではなく、そしてこのような語句及び表現を使用する際に、示されそして記載された特徴の現存する又は後に開発された同等物を除外することを意図しないが、様々な変更が特許請求された本発明の範囲内で可能であるということが認識される。こうして、本発明が、好ましい実施態様及び選択的な特徴により具体的に開示されたが、開示された構成の変更及び/又は改変が、当業者により再分類されてもよく、そしてこのような変更及び改変は、特許請求される本発明の範囲内である。
参考文献
全ての文献、特許及び特許出願は、本明細書に援用される。前述の明細書において、本発明はある好ましい実施態様に関して記載された一方、そして多くの詳細が、例示の目的で記載され、本発明が、追加の実施態を受けいれる余地があり、そして本明細書のある詳細が、本発明の基本原理から逸脱することなく、かなり変更されうるということが当業者により明らかであろう。