損傷を被った又は易感染性の骨部位に外科的に介入することは、患者、例えば椎骨の損傷を伴う背痛を有する患者にとって、非常に有用であることが証明されている。
ヒトの骨格系の骨は、一般的に2つの形態学的グループ、即ち「皮質」骨と「海綿質」骨に分類することのできる鉱質化組織を含んでいる。全ての骨の外壁は、皮質骨で構成されており、皮質骨は、微細多孔性を特徴とする高密度で緻密な骨構造を有している。海綿質又は「小柱」骨は、骨の内部構造を形成している。海綿質骨は、「小柱」という用語で知られている、相互接続された細いロッド及びプレートの格子で構成されている。
或る種の骨処置の間に、海綿質骨は、小柱を安定させるために採用される緩和用(又は硬化性)材料を注入することによって、補足される。例えば、脊柱の上位及び下位の椎骨は、適切な硬化可能材料(例えば、PMMA又は他の骨硬化可能材料)を注入することによって好都合に安定させることができる。別の処置では、コンピューター断層撮影法(CT)及び/又は蛍光透視法の案内の下に、安定化材料を椎骨の圧迫性骨折部に、例えば、脊椎茎を通して又はその側を通して接近することにより経皮的に注入することは、痛みを和らげ、損傷した骨部位を安定させるのに有用であることが証明されている。他の骨格骨(例えば、大腿骨)は、同様の様式で治療することができる。何れにしても、一般に、骨は、特に海綿質骨は、骨適合性材料を緩和的に注入することによって、強化し、安定させることができる。
例えば限定ではないが、例として椎体形成術を用いると、骨安定化材料を送達するための従来の技法では、内部スタイレット付きカニューレを所望の注入部位に配設することが伴う。カニューレとスタイレットは、補足対象の硬質組織の上の患者の皮膚層を穿刺し、次に椎骨の硬い皮質骨を貫通し、最終的に、皮質骨の下にある柔らかい海綿質骨の中へと入って行くのと結び付けて用いられる。一旦海綿質骨内に配置されると、損傷した硬質組織を強化し固化させるために、硬化可能材料を椎骨の小柱の空間に送達するのに適した位置にカニューレを残して、スタイレットは取り出される。
先行技術の1つの方法によれば、硬化可能材料は、椎骨に送達するためカニューレの端部に、1ccの注射器を使って導入される。1ccの注射器は、カニューレを通して椎骨の中へ硬化可能材料を入れるのに必要な高圧を生成するので、1ccの注射器が使用される。1ccの注射器の欠点は、処置に必要な硬化可能材料の量が1ccより多いことである。その結果、処置の間に、注射器を無菌状態で数回装填する必要がある。これは、時間と処置の煩雑さを増し、医者に対する放射線照射の危険を増す。
改良された先行技術の処置では、比較的大量の硬化可能材料が装填された硬化可能剤注入器が使用される。注入器は、コンプライアンスの無い供給管を介してカニューレの端部に接続される。注入器で作られた圧力は、柱状の硬化可能材料を、供給管を通してカニューレの中へと押し込む。次に、硬化可能材料は、カニューレから椎骨の小柱空間へと送達される。注射器の使用については改良されたが、この方法には幾つかの欠点がある。
この方法は、カニューレを通る硬化可能材料の流れは予測できないところもあることが分かっているので、医者があまり制御できないことになる。柱状の硬化可能材料は、相当な圧力によって或る距離押し出され、柱内に圧力ヘッドを作り出す。硬化可能材料の柱がカニューレの端部に達すると、硬化可能材料が小柱空間内へとバーストし、制御できない量の硬化可能材料を制御できないでやり方で堆積させかねないことを、医者は経験している。更に、硬化可能材料の、注入器から椎骨への移送は、供給管がカニューレに接続された後でしか始まり得ない。柱状の硬化可能材料が供給管とカニューレを通して進められる間に、相当量の時間が経過することもある。
更に、長い処置の間に、硬化可能材料は、カニューレの内側で硬化し始めかねない。所望量の硬化可能材料が椎骨内に堆積された後、カニューレは、処置の終了時に取り出される。カニューレ内にあって硬化し始めた硬化可能材料は、骨内の硬化可能材料の核に接着したままになることもある。カニューレが取り出されると、硬化可能材料は、カニューレの先端ではなくカニューレの内側で破断し、硬化可能材料の「スパイク」が椎骨から突き出た状態になることもある。
医療装置分野では、改良された皮下骨材料送達システムが必要とされている。本発明は、硬化可能材料又は他の材料を骨構造に制御された方式で導入する効率的な装置と方法を提供する。
米国特許第4,969,888号
米国特許第5,108,404号
図1は、本発明の原理による骨内の硬化可能材料送達システム5の構成要素を示している。本発明の好適な実施形態による硬化可能材料送達システム5は、注入器10、注入コネクタ110を介して注入器10に接続されているキャリヤアッセンブリ20、及び患者体内の対象骨部位に挿入するためのカニューレ30を有している。図1に示している実施形態では、対象骨部位は、椎骨40である。
様々な構成要素の細部について、以下に説明する。しかしながら、一般的に言えば、キャリヤアッセンブリ20の一部分は、他にも骨内の所望の注入部位を形成し及び/又は定める働きをするカニューレ30の中に、滑動可能に配置される大きさになっている。カニューレの中に配置されると、キャリヤアッセンブリ20は、硬化可能な骨安定化材料を送達部位に注入するのに使用される。システム5は、例えば、椎体形成、及び硬化可能材料が骨内の部位に送達される他の骨増強処置、並びに、骨内の部位からの材料除去又は吸引を含め、数多くの異なる処置に用いることができる。
システム5、特にキャリヤアッセンブリ20は、骨硬化可能材料の形態をした硬化可能材料を送達するには非常に有用である。ここに記載している本発明のシステム/装置によって送達することのできる物質の文脈内の「硬化可能材料」という語句は、流体又は流動可能な状態又は相と、硬くなった固体又は硬化状態又は相を有する材料(例えば、複合材、ポリマーなど)を指すものとする。硬化可能材料には、限定するわけではないが、(ポリメチルメタクリレート(PMMA)骨硬化可能材料の様な)注入可能な骨セメントが含まれ、この骨セメントは、カニューレにより部位に送達(例えば、注入)することのできる流動可能な状態を有し、その後、硬化して硬くなった硬化可能材料となる。リン酸カルシウム、骨内成長材料、抗菌剤、蛋白質などの様な他の材料を、代わりに、又は骨セメントを増強するために使用することもできる(が、それらは、流動可能状態及び硬くなった、固体、又は硬化状態を有する最終的な調合物の重要な特性に影響を及ぼさない)。これは、身体が硬化可能材料を再吸収することができるようにするか、又は、充填材移植材料の種類に基づいて臨床的結果を改良することになる。
注入器10は、通常、或る量の硬化可能材料が詰まったチャンバを備えており、任意の適した注入システム又はポンプ機構を使用して、硬化可能材料を注入器からキャリヤアッセンブリ20を通して送る。通常は、医者が手動で注入器に力を加える手動注入システムが用いられる。力は、硬化可能材料に掛かる圧力に変換され、硬化可能材料をチャンバから流し出す。力を加えるのに、電動システムを使用してもよい。
カニューレ30は、注入部位に設置して硬化可能材料をその中に送達するために提供されている。カニューレ30は、外科等級のステンレス鋼で作られているのが望ましいが、生体適合性があり、且つここに記載している作動圧力で実質的にコンプライアンスの無い既知の等価な材料で作られていてもよい。カニューレ30は、ルーメン325を画定し、スタイレット(図示せず)、キャリヤアッセンブリ20、及び他の機材がカニューレ30を通過できるようにしている。カニューレ30の少なくとも遠位端部330は、放射線不透過性であるのが望ましい。カニューレ30は、スタイレットの外径よりも僅かに大きい内径を有している。カニューレ30の遠位端部330は、カニューレが皮膚及び軟組織、及び特に硬組織を貫通して穿刺し易いように斜めになっているのが望ましい。
カニューレ30の近位端328を取り囲んでいるのは、カニューレ30を操作し、ハンドルコネクタ312を介してカニューレ30をキャリヤアッセンブリ20と接続させるためのハンドル310である。ハンドルコネクタ312は、ルアーロック式のコネクタを有しているのが望ましいが、従来のねじ穴、ねじ、及びロックナット装置など他の既知の接続機構に換えても巧くゆくであろう。カニューレは、標準的な長さと直径を有していればよい。カニューレは、長さが約4cmから約20cmであればよく、12cmの長さが望ましい。更に、カニューレの直径に関しては、カニューレは、外径が約1.2mm(18ゲージ)で壁の厚さが約0.216mmから、外径が約5.2mm(6ゲージ)で壁の厚さが約0.381mmであればよく、外径が約3.1mm(11ゲージ)で壁の厚さが約0.33mm、又は外径が約2.1mm(13ゲージ)で壁の厚さが約0.305mmであるのが望ましい。
キャリヤアッセンブリ20は、硬化可能材料を、注入器10から、椎骨40の様な注入部位へ送り込む経路を提供する。図2に示すように、キャリヤアッセンブリ20は、注入コネクタ110から、患者の体内に配置されているその末端部144まで、ルーメン100を好適に画定している。1つの好適な実施形態によれば、キャリヤアッセンブリ20は、注入コネクタ110、カニューレコネクタ130、及び移送本体115を備えている。移送本体115は、供給区画120と内部区画140を更に備えている。注入コネクタ110は、ルアーロック式コネクタであるのが望ましいが、医療製品に適した他の既知の接続機構に換えても巧くゆくであろう。
カニューレコネクタ130は、移送本体115に固く取り付けられており、キャリヤアッセンブリ20をカニューレ30及びカニューレハンドル310に接続する。或る好適な実施形態によれば、カニューレコネクタ130は、カニューレ30のルアーロックねじ付金具300と接続させるためのルアーロックねじ付金具200を含んでいて、キャリヤアッセンブリ20とカニューレ30を取り外し可能に取り付けることができるようになっている。
移送本体115は、ルーメン100を画定する単一の管状構造であるのが望ましい。キャリヤアッセンブリ20を通して硬化可能材料を移送するのに必要な作動圧力のために、移送本体115は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の様なコンプライアンスの無い材料で作られているのが望ましい。他の適した材料には、アルミニウム又はワイヤー強化プラスチックが含まれる。移送本体115の供給区画120は、注入器10から硬化可能材料を受け取るよう使用可能であり、全体的に、注入器10とカニューレコネクタ130の間の移送本体115の区画によって画定されている。移送本体115の内部区画120は、硬化可能材料を注入部位へ送達するよう使用可能であり、全体的に、患者体内に配置するための、カニューレコネクタ130とキャリヤアッセンブリ20の末端部144の間の移送本体115の区画によって画定されている。内部区画140の少なくとも一部分は、カニューレ30に挿入されるようになっている。内部区画140は、従って、カニューレ30の内径より小さい外径を有していなければならないが、この外径は、硬化可能材料が内部区画140の外側の回りを移動してカニューレ30の中に戻ることができるほど小さくてはいけない。カニューレ30の内径と内部区画140の外径の間の間隙は、約0.0254mmから0.762mm(約1000分の1から30インチ)の範囲内にあるのが望ましく、約0.127mm(約1000分の5インチ)以下であるのが更に望ましい。
更に、或る好適な実施形態によれば、カニューレ30の遠位端部330は、内部区画140の末端部144を越えて伸張しており、内部区画140の末端部144は、カニューレ30の遠位端部330からの長さで、カニューレ30の長さの50%未満の長さの位置にある。別の好適な実施形態によれば、内部区画140の末端部144は、カニューレ30の遠位端部330と実質的に同面にある。更に、当業者には理解頂けるであろうが、内部区画140が注入部位内に嵌り、硬化可能材料を効果的に供給できる限りにおいて、カニューレ30の遠位端部330を越えて伸張する内部区画140を用いることもできる。
当業者には理解頂けるであろうが、この実施形態は、硬化可能材料を患者に送達するために単一の管を使用しているが、この単一の管は、管の異なる区画で異なる直径を有するように作ってもよい。
図3に示す別の好適な実施形態では、供給区画120と内部区画140は、別々の構造としてカニューレコネクタ130で接続してもよい。この実施形態では、供給区画120、カニューレコネクタ130、及び内部区画140が、ルーメン100を好適に画定している。供給区画120は、第1端部122と第2端部124を有しており、好適に、ルーメン100の一部を画定する管状構造となっている。キャリヤアッセンブリ20を通して硬化可能材料を移送するのに必要な作動圧力のために、供給区画120は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又は他のポリマーの様なコンプライアンスの無い材料で作られるのが望ましい。他の適した材料には、アルミニウム又はワイヤー強化プラスチックが含まれる。供給区画120の第2端部124は、カニューレコネクタ130の第1端部132に接続されている。
内部区画140は、カニューレコネクタ130と接続されている第1端部142と、患者の中に配置して硬化可能材料を注入部位へ送達するための末端部144を備えている。内部区画140は、カニューレに挿入されるようになっており、カニューレコネクタ130から注入部位まで伸張しているのが望ましい。硬化可能材料を注入することによって作動圧力が掛かるので、内部区画140は、コンプライアンスの無い材料で作るのが望ましく、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はアルミニウムで作るのが更に望ましい。内部区画140は、従って、カニューレ30の内径より小さい外径を有していなければならないが、外径は、硬化可能材料が内部区画140の外側の回りを移動してカニューレ30の中に戻ることができるほど小さくてはいけない。カニューレ30の内径と内部区画140の外径の間の間隙は、約0.0254mmから0.762mm(約1000分の1から30インチ)の範囲内にあるのが望ましく、約0.127mm(約1000分の5インチ)以下であるのが更に望ましい。供給区画120と内部区画140の材料は、同じであっても、異なっていてもよい。
更に、或る好適な実施形態によれば、カニューレ30の遠位端部330は、内部区画140の末端部144を越えて伸張しており、内部区画140の末端部144は、カニューレ30の遠位端部330からの長さで、カニューレ30の長さの50%未満の長さの位置にある。別の好適な実施形態によれば、内部区画140の末端部144は、カニューレ30の遠位端部330と実質的に同面にある。更に、当業者には理解頂けるであろうが、内部区画140が注入部位内に嵌り、硬化可能材料を効果的に供給できる限りにおいて、カニューレ30の遠位端部330を越えて伸張する内部区画140を用いることもできる。
この実施形態では、カニューレコネクタ130は、キャリヤアッセンブリ20をカニューレ30と接続するだけでなく、供給区画120を内部区画140と接続する。或る好適な実施形態によれば、供給管120は、ルアーロック式コネクタ210を介してカニューレコネクタ130と接続されるが、医療製品に適した他の既知の接続機構に換えても巧くゆくであろう。カニューレコネクタ130は、更に、内部区画140をカニューレコネクタ130と接続させるための第2ルアー接続部312を備えている。
図4に示すように、カニューレコネクタ130は、フランジ無しアダプタ220を備えているのが望ましい。フランジ無しアダプタ220は、供給区画120から内部区画140への正確且つ滑らかな移行を提供する。取付金具又は接続部における急激な移行の様に、ルーメン100を画定している壁が円滑さを欠くと、ルーメン100内の硬化可能材料が過早硬化し、管を塞ぐことになりかねないことが分かっている。結果的に、管と管の間の取付金具又は接続部が円滑に移行することが、硬化可能材料を患者に送達するのに好都合である。
フランジ無しアダプタ220は、第1半径方向リップ230、チャンバ240、及び第2半径方向リップ250を画定しているのが望ましい。チャンバ240は、更に、入力端部242、出力端部244、及び移行領域246を画定している。供給区画120からチャンバ240まで正確且つ滑らかに移行させるために、供給区画124の第2端部は、チャンバ240の入力端部242で、第1半径方向リップ230と当接している。チャンバの入力端部242は、供給区画120の内径と実質的に同じ内径を有している。同様に、内部区画140の第1端部142は、チャンバ240の出力端部244で、第2半径方向リップ250と当接している。チャンバ240の出力端部244は、内部区画140の内径と実質的に同じ内径を有している。供給区画と内部区画の間で正確且つ滑らかな移行が実現されることを理解頂けるであろう。
図4に示している実施形態では、供給区画120と内部区画140は、内径が同じである。その結果、チャンバの入力端部242、移行領域246、及び出力端部244も、同じ直径を有している。別の好適な実施形態では、供給区画120と内部区画140は、内径が異なっていてもよい。従って、チャンバ240の入力端部242と出力端部244も、異なる内径を有することになる。この実施形態では、チャンバ240の移行領域246は、チャンバ240を、一方の直径から他方の直径に円滑に移行させるため、傾斜が付けられている。
硬化可能材料の適用は、硬化可能材料の下流側経路が上流側経路よりも狭くなっている方が、制御し易いことが観察されている。その結果、或る好適な実施形態によれば、内部区画140の内径は、供給区画120の内径より小さい。この好適な実施形態では、移行領域246は、チャンバ240をチャンバの入力端部242の大きい直径からチャンバの出力端部244の小さい直径に円滑に移行させるのが望ましい。硬化可能材料で塞がるのを防ぐには、接続部における急激な移行を回避せねばならないことに留意することが重要である。フランジ無しアダプタ220は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又は他のポリマーの様な、作動圧力に耐えられる材料で作られているのが望ましい。
図5は、カニューレコネクタの別の実施形態を呈示している。この実施形態では、供給区画120と内部区画140は、異なる内部区画140を供給区画120と取り付け取り外しできるように、互いに便利に取り外せるようになっている。この実施形態では、内部区画140は、内部区画コネクタ480を備えている。内部区画コネクタ480は、先の実施形態ではカニューレハンドル310に接続させるために使われていたルアーロック接続部200を介して、カニューレコネクタ130に接続されている。内部区画コネクタ480は、更に、カニューレハンドル310に接続するための別のルアーロック接続部475を備えている。内部区画コネクタ480は、更に、カニューレコネクタ130から内部区画140へと正確且つ滑らかに移行させるため、第2フランジ無しアダプタ420を備えている。図5では、第2フランジ無しアダプタ420は、チャンバ440と半径方向リップ450を好適に画定している。チャンバ440は、更に、入力端部442、出力端部444、及び移行領域446を画定している。カニューレコネクタ130からチャンバ440へと正確且つ滑らかに移行させるため、カニューレコネクタ130のチャンバ240の出力端部477は、第2チャンバ440の入力端部442と当接している。第2チャンバ440の入力端部442は、カニューレコネクタ130のチャンバ240の出力端部477と実質的に同じ内径を有している。理解頂けるであろうが、各内部区画コネクタは、供給区画120を内部区画140に滑らかに移行させるのに適している、特別な傾斜の移行領域446を含んでいるので、様々な寸法の内部区画を単一寸法の供給区画に取り付けることができる。
正確な構成に関係なく、本発明の原理による、(図1の硬化可能材料送達システム5の様な)組み立てられた硬化可能材料送達システムは、多種多様な骨安定化処置を、硬化可能材料送達システム全体の一部として実行するのに非常に有用である。限定ではないが、例として椎体形成術を使うと、作動時、カニューレ30とスタイレット(図示せず)は、椎骨40の小柱腔に達するように椎骨40の中へと押し込まれる。スタイレットが取り外され、カニューレ30の中に開放ルーメン325が残される。硬化可能材料は、混ぜ合わされ、注入器10に装填される。硬化可能材料は、内部区画140がカニューレ30のルーメン325に挿入される前に、圧力下で注入器10から内部区画140の末端部144まで送られるのが望ましい。実際、オペレーターは、内部区画140を完全に満たすために、硬化可能材料を、内部区画140の末端部144を越えて進ませ、その後カニューレ30に挿入する前に、内部区画140の末端部144から過剰な硬化可能材料を拭き取ることができる。キャリヤアッセンブリには、この様にして硬化可能材料が事前装填され、その後、キャリヤアッセンブリ20はカニューレ30と接続され、内部区画140がカニューレ30に挿入される。内部区画140がカニューレ30に挿入され、キャリヤアッセンブリ20がカニューレ30と接続されると、硬化可能材料は、直ちに椎骨40の中に送達できるようになっている。この事前装填段階は、カニューレ30が椎骨の中に押し込まれるのと実質的に同時に行えるので、硬化可能材料を患者体内に送達するのに要する時間を好都合に短くすることができる。先行技術では、硬化可能材料を注入器から送るのは、供給管がカニューレと接続された後でなければ始められない。従って、硬化可能材料を、注入器から供給管に、カニューレ管を通して、そして患者体内へと送り込むのに、時間が必要である。本発明の好適な実施形態では、しかしながら、硬化可能材料は、内部区画140の末端部144に事前装填され、次いで内部区画140がカニューレ30に挿入されるので、硬化可能材料を直ちに患者に送達することができる。しかしながら、当業者には理解頂けるように、本発明の別の利点を理解するために、硬化可能材料をキャリヤアッセンブリに事前装填する必要はない。
処置のこの時点で、内部区画140は、カニューレ30に挿入され、圧力を受けてキャリヤアッセンブリ20がカニューレ30から放出されるのを阻止するために、キャリヤアッセンブリ20をカニューレ30に接続するルアーロックを使って所定の位置にロックされる。本発明は、カニューレ30に挿入する前にキャリヤアッセンブリ20が硬化可能材料を装填されているので、処置の最初に、バーストすること無く硬化可能材料を注入部位に注入することができる。医者が注入器10を作動させるとき、硬化可能材料は既に注入部位に進んでいるので、流れをより良く予測することができる。その後、注入器は、細かに制御された量の硬化可能材料を患者に送り込むことができる。
所定量の硬化可能材料を椎骨の中に送達した後、キャリヤアッセンブリ20は、カニューレ30から取り外し、取り出すことができる。当業者には理解頂けるであろうが、キャリヤアッセンブリ20が取り出されると、硬化可能材料が装填されている内部区画140も取り出され、従って、柱状の硬化可能材料がカニューレ30から取り出される。この実施形態では、従って、幾つかの利点が理解される。第一に、内部区画140は硬化可能材料とカニューレ30の間の内張として機能するので、カニューレ30の内側に硬化可能材料は残留しない。カニューレ30は、従って、追加の材料を椎骨に送達するのに、再度用いることができる。第二に、先行技術では、硬化可能材料は、処置が完了する前に、カニューレ30内で硬化し始めるかもしれない。処置が完了し、カニューレが取り出されるとき、でき上がった柱状の硬化可能材料は、カニューレ30の遠位端部330の先端ではなく、カニューレ30の内側の或る点で破断することもある。その結果、椎骨の内側に堆積している硬化可能材料になお取り付いている硬化可能材料の「スパイク」となり、「スパイク」は、椎骨の外側に伸張することになるかもしれない。本発明では、内部区画140が取り出されるとき、硬化可能材料は、内部区画140の末端部144の先端でより均一に破断して、硬化可能材料の「スパイク」の機会が最小になることが観察されている。更に、当技術では、硬化可能材料は体温に曝されるとより迅速に硬化し始めることが理解されている。本発明では、硬化可能材料の送達を或る時間中断しなければならない場合は、好便に、内部区画140をカニューレ30から一時的に取り出して比較的低温の室温で冷却し、硬化可能材料の硬化を遅くすることができる。これは、作動中はカニューレ30を満たしている硬化可能材料を取り出せない先行技術では不可能である。
本発明は、更に、医者が、1つ又は複数の椎骨に入っている複数のカニューレを硬化可能材料で、同じ操作で満たすことができ便利である。医者は、基本的な片側椎弓根法(uni−pedicular approach)および両側椎弓根法(bi−pedicular approach)などにより、椎体に進入する、と理解されている。片側椎弓根法では、医者は、カニューレを、椎体の正中線を横断するように配置しようとする。これは、椎骨全体を、1つの進入点と1つのカニューレを通して満たすことができるように行われる。この技法は、硬化可能材料の充填を早く行えるので、処置時間が短くなる。しかしながら、本技法は、医者にとって、技法的には難しくなることもあり、常に使用できるわけではない。両側椎弓根法は、カニューレを、椎骨の各椎弓根を通して配置することに依存している。椎体の正中線を横断する必要が無いので、両側椎弓根法は、技法的には簡単で安全であると考えられている。この方法は、椎骨の両側に等しく充填できるので、硬化可能材料がより均一に分布される。
本発明は、片側椎弓根法及び両側椎弓根法の両方に使用することができる。両側椎弓根法では、同じキャリヤアッセンブリ20を用いて、椎体の第1側を、第1カニューレを通して第1側が十分に満たされるまで、満たすことができる。次に、キャリヤアッセンブリ20の内部区画140を第1カニューレから取り出して、椎体の他方の側の第2カニューレ内に配置することができる。理解頂けるように、キャリヤアッセンブリ20を取り出すと、第1カニューレ内には硬化可能材料が実質的に無い。これも理解頂けるように、内部区画140は硬化可能材料で満たされており、従って、第2処置に関して「事前装填されている」。従って、硬化可能材料が第1側で硬化し始める間に、椎体の第2側の充填を直ちに始めることができる。医者が望めば、医者は、第1カニューレに戻り、第1側の充填を再開することができる。或る好適な実施形態では、医者は、1つの処置の中で、第1と第2カニューレを交互にし、両方を清潔に保つことができる。
別の好適な実施形態では、医者は、1つの処置で2つの異なる椎体を満たすことができる。この技法は、医者が、複数のカニューレを清潔に保ちながら、各カニューレの間で別々のタイミングで作業できるようにする。この実施形態では、医者は、カニューレを2つ又はそれ以上の椎骨の中に押し込む。キャリヤアッセンブリ20には、先に述べた様に、硬化可能材料が事前装填されている。キャリヤアッセンブリ20は、第1処置の際は第1カニューレ30に接続されており、硬化可能材料は、椎骨に直ちに送達される。第1処置が完了すると、キャリヤアッセンブリ20は、第1カニューレ30から取り出される。理解頂けるであろうが、内部区画140は、なお硬化可能材料で満たされており、従って、第2処置に関して「事前装填」されている。キャリヤアッセンブリ20は、第2カニューレ30に接続され、硬化可能材料は、椎骨に直ちに送達される準備が整っている。
本発明の範囲内で代替構造を採用することができる。図6に示す別の好適な実施形態では、内部区画の末端部144は、カニューレ30の遠位端部330を越えて伸張している。末端部144の先端部分550には、硬化可能材料を注入部位に送達するための異なる構造が含まれていてもよい。
図7に示す或る好適な実施形態では、先端部分550には閉じた尖っていない端部518が含まれており、末端部144はルーメン100に対して軸線方向に閉じている(即ち、ルーメン100の軸線に関し末端部144から軸線方向に材料を排出することができない)。つまり、ルーメン100内の材料は、そこから軸線方向的に遠位方向に押し出すことができない。更に、末端部100は、尖っていない端部518を画定するか、又は含んでいる。1つの実施形態では、尖っていない端部518は半球形の表面を画定しているが、他の尖っていない(即ち、湾曲した又は曲線状の)形又は外形でも構わない。尖っていない端部518は、骨又は組織に接近し、接触し、探るのに適した外傷を与えない表面を提供し、同時に、組織の穿刺及び/又は芯抜きの危険性又は骨への損傷を最小にするようになっている。
先端部分550は、更に、末端部144に隣接して形成され、先端部分550の側壁の厚さを貫いて伸張する側面オリフィス520を画定している。側面オリフィス520は、多種多様な形状と寸法を取ることができる。例えば、側面オリフィス520は、楕円形、円形、曲線状などでもよい。1つの実施形態では、面取り領域570を側面オリフィス520の周りに形成し、先端部分550の外部に沿った鋭い縁部を無くすと共に、(面取り領域570によってもたらされた拡張したオリフィス寸法を介する)側面オリフィス520からの硬化可能材料の安定した流れを促進するようにしてもよい。先端部分550は、1つの側面オリフィス520を含むか、又は形成するように述べてきたが、周方向に整列した2つの側面オリフィスを設けてもよい。
図8、9に示すように、先端部分550には様々な他の構成も受け入れられる。図8は、順次小さくなってゆく側面オリフィスを有する3つの側面オリフィス522を有する先端部分550を示している。末端部144近傍で側面オリフィス寸法がこの様に小さくなってゆくのは、そうでなければ先端部分550を通して押し出されることになる硬化可能材料の安定した分配を促進する。3つの側面オリフィス522を示しているが、他の構成としてもよい。例えば、複数の側面オリフィス(即ち、4つ以上の側面オリフィス)を先端部分550の長さに沿って長手方向に形成してもよいし、更に、側面オリフィスは、2つ以上の長手方向に整列した一連の側面オリフィスを含んでいてもよい。或る代表的な実施形態では、図8に見られる側面オリフィスは、先端部分550の反対側に形成されている(従って図8では見ることができない)もう1つの列状の長手方向に整列している側面オリフィスと対になっている。本発明の態様は、側面オリフィス522が、円形側面オリフィス、非円形側面オリフィス、又は一組の円形及び非円形側面オリフィスを画定することを考慮している。
図9は、先端部分550の別の好適な実施形態を示している。この実施形態では、先端部分550は、曲がっていて内部区画140の軸線に対してほぼ90度の開口部560を提供している。この代表的な実施形態では、開口部560と内部区画の軸線の間の角度は、θで示されており90度である。本発明の態様は、角度θは、0から90度の間でよく、実質的に90度であるのが望ましいと考えている。先端部分550の先導縁部は、先端部分550が容易に組織を切ることの無いように、実質的に丸くすべきである。1つの実施形態では、内部区画は、内部区画140を回転させる回転可能なハブを備えている。ハブは、開口部560の向きに対応する視認標示を備えていて、臨床医が、内部区画の末端部の開口部を視認できるようになっているのがよい。内部区画のハブは、ハブを360度回転できるようにシールを有しているのが望ましい。従って、臨床医は、骨セメントが注入される領域の構造に基づいて、セメント注入をどの様な方向にでも向けることができる。
図10に示す本発明の別の好適な実施形態は、内部区画の末端部505に、処置中にカニューレ30の遠位端部を越えて伸張する湾曲部分510を備えている。この実施形態では、湾曲部分510は、カニューレの細長い管状部分を通して挿入するために真っ直ぐにすることのできる弾性のある事前成形された湾曲区画である。湾曲部分は、更に、細長い管状部分の遠位端部を出た後、その湾曲形状に戻ることのできる形状記憶特性を有していてもよい。湾曲部分510は、内部区画と一体に形成してもよいし、別体構造として内部区画と接着してもよい。或る好適な実施形態では、カニューレコネクタ上の記号又は色標示の様な視認標示は、例えば、医者に、湾曲部510の、カニューレコネクタに対する向きを表示するために設けられている。内部区画140は、末端部144に隣接する標識517を含んでいる。標識517は、末端144の、カニューレ30の遠位端部に対する位置を表示する。標識517は、図10に示しているものとは異なる多種多様な形態を取ることができ、或る実施形態では省くこともできる。端部分550は、先に述べた何れの先端構成でもよい。
作動時、カニューレは、先に述べた様に、椎体内に位置決めされる。湾曲部分510を有するキャリヤアッセンブリは、硬化可能材料を事前装填され、カニューレの細長い管状部分に挿入される。内部区画の深さ標識517は、湾曲部分510がカニューレ30の遠位端部を越えてどれほど進んだかを、医者が判断するのに用いることができる。所望の深さに達した後、硬化可能材料を椎体に送達することができる。湾曲部分517の向きの視認標示を使うと、湾曲部分515は、硬化可能材料を椎体内の異なる領域に送達できるように、配置し直すことができる。所定量の硬化可能材料を椎骨に送達した後、キャリヤアッセンブリ20をカニューレ30から取り出してもよい。
別の好適な実施形態によれば、本発明を、拡張型器具を使用して突き固め(tamping)術に用いることも考えられる。バルーンを使用する突き固め術は、先行技術では知られており、例えば、米国特許第4,969,888号「拡張型器具を使って骨粗鬆症の骨を固定する外科的プロトコル」と米国特許第5,108,404号「拡張型器具を使って骨を固定する外科的プロトコル」に開示されている。医者が、内部の骨を突き固めることによって医療的な利点を得ることができると考えるこれらの処置では、本発明は、以下の様に用いることができる。第一に、医者は、カニューレとスタイレットの組み合わせを使って、骨への入口を得る。入口を得た後、小柱骨は、突き固め器具のための空隙を作り出すために細切される。突き固め器具をこの空間に挿入して拡張させると、骨内の空隙が大きくなる。突き固め器具を取り出した後、既に述べた様に、事前装填されている内部区画をカニューレに挿入し、硬化可能材料を当該部位に送達する。
以上の詳細な説明は、従って制限を課すものではなく例証的なものであって、本発明の精神及び範囲を定義しようとするものは、特許請求の範囲、並びにその全ての等価物であるものと理解されたい。これに関し、骨部位及び硬化可能材料に言及しているが、ここに開示している装置及び方法は、骨部位及び硬化可能材料への適用に限定されるものではないものと理解されたい。当業者には理解頂けるであろうが、ここに開示している装置及び方法は、脊椎円板の様な非骨部位にも使用することができ、硬化可能材料以外の材料を注入するのにも使用することができる。