JP2010504153A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、骨格を安定させるための器具及び方法に関する。より詳細には、本発明は、硬化性の安定化材料を骨格に送達するための器具、システム及び方法に関する。
損傷した、又は障害の起きた骨部位における外科的介入は、患者、例えば脊椎損傷に関連した背痛を有する患者にとって極めて有益であることが分かっている。
ヒト骨格系の骨は石灰化組織を含み、これは一般に形態学的に「皮質」骨と「海綿」骨との2種類に分類され得る。全ての骨の外壁は皮質骨からなり、これは密度の高い緻密な骨格であって微視的な多孔性を特徴とする。海綿骨又は「骨小柱」は骨の内部構造を形成する。海綿骨は、用語「骨梁」として知られる細長い棒と平板とが相互に接続された格子からなる。
特定の骨の手技中、骨梁を安定させるために用いられる緩和的な(又は治癒的な)材料を注入することによって海綿骨が補填される。例えば、脊椎の上部椎骨及び下部椎骨が、然るべき硬化性材料(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又は他の骨用硬化性材料)を注入することにより有利に安定化され得る。他の手技においては、コンピュータ断層撮影(CT)及び蛍光透視鏡、或いはそのどちらか一方による案内下に、例えば経椎弓根的又は傍椎弓根的(parapedicular)手法によって安定化材料を脊椎圧迫骨折に経皮注入することが、疼痛を軽減し、損傷した骨部位を安定させるうえで有益であると分かっている。同様にして骨格の他の骨(例えば、大腿骨)を処置できる。いずれにおいても、骨全般、特に海綿骨は、骨適合性材料の緩和的注入によって強化及び安定化され得る。
椎体形成術(vertebropasty)を非限定的な例として用いると、骨安定化材料を送達するための従来技術は、内部スタイレットを有するカニューレを所望の注入部位に配置する必要がある。カニューレとスタイレットとを共に用いて補填されるべき硬組織の上にある患者の皮膚層に刺入し、次に椎骨の硬い皮質骨を貫通させ、最終的に皮質骨の下層のより柔らかい海綿骨の中まで通し込む。海綿骨において位置が定まると、次にスタイレットが取り出され、カニューレが然るべき位置に残って椎骨の骨梁間腔に硬化性材料を送達し、それにより損傷した硬組織が補強されて固くなる。
先行技術の一方法に従えば、硬化性材料は1ccシリンジを使用してカニューレの端部まで導入され、椎骨内に送達される。1ccシリンジが使用されるのは、それがカニューレを通じて椎骨まで硬化性材料を送り込むのに必要な高圧を生成するためである。1ccシリンジの欠点は、手技に必要な硬化性材料の量が1ccより多いことである。結果として、手技中に数回、無菌状態でシリンジに再装填することが要求される。これによって手技の時間及び複雑性が増し、医師の放射線被曝のリスクが高まる。
改良された先行技術の手技は、比較的大きい容量の硬化性材料が装填された硬化性材料注入器を使用する。この注入器は、柔軟性を有しない供給管を介してカニューレの端部と接続される。注入器で生じる圧力によって硬化性材料のカラムが供給管を通じてカニューレへと押し込まれる。次に硬化性材料はカニューレから椎骨の骨梁間腔へと送達される。シリンジの使用を克服する改良にも関わらず、この方法はいくつかの点で不利である。
カニューレを通じた硬化性材料の流れは若干予測できないところがあると分かっているため、この方法は結果として医師の制御性が低くなる。硬化性材料のカラムはある距離にわたりかなりの圧力によって押し込まれるため、カラムには圧力ヘッドが生じる。硬化性材料カラムがカニューレの端部に到達するとき、医師は硬化性材料が骨梁間腔の中に噴き込み、抑制の効かない量の硬化性材料が制御不能に堆積し得ることを経験している。さらに硬化性材料の注入器から椎骨への移送は、供給管がカニューレに接続された後でなければ開始できない。硬化性材料のカラムが供給管及びカニューレを通じて前進する間には、相当な時間が経過し得る。
そのうえ、手技が長時間にわたるなか、硬化性材料がカニューレの内部で固まり始めることがある。所望の量の硬化性材料が椎骨に堆積した後、手技が完了した時点でカニューレは取り出される。カニューレ内にあった固化し始めていたかもしれない硬化性材料が、骨内の硬化性材料のコアに付着したままであり得る。カニューレが取り出されるとき、硬化性材料がカニューレの先端ではなくカニューレの内部で割れ、椎骨から突出する硬化性材料の「スパイク」が残り得る。
医療器具分野においては、改良された骨材料皮下送達システムが必要とされている。本発明は、硬化性材料、又は他の材料を制御された方法で骨格の中に導入する効率的な器具及び方法を提供する。
本発明の一態様は、患者の注入部位に材料を導入するための装置に関する。本装置は、ルーメンを画定するカニューレを含む。本装置はまた、材料を注入器から注入部位に送達するための搬送体も含む。搬送体はルーメンを画定し、硬化性材料を受け取るよう機能し得る供給セクションと、軸線を有し先端セクションを画定する内挿セクションとを含み、先端セクションは材料を内挿セクションの軸線と同軸ではない方向に送るよう機能し得る。本装置では、搬送体はカニューレに解除可能に取り付け可能であり、内挿セクションの少なくとも一部分はカニューレのルーメン内部に位置する。
本発明の別の態様において、患者の注入部位に材料を導入するための装置が提供される。本装置は、所定量の材料を収容する注入器と、ルーメンを画定する細長部分を有するカニューレであって、細長部分の端部が注入部位の内部に配置するためのものであるカニューレと、注入器と注入部位との間のルーメンを画定する搬送体とを有する。搬送体はさらに供給管を含み、これは供給管を注入器と接続して注入器から材料を受け取るよう構成可能な第1の端部と、第2の端部とを有する。搬送体はまた、搬送体をカニューレに取り付けるコネクタも含む。コネクタはまたチャンバも画定する。搬送体はまた、第1の端部と第2の端部とを有する内挿管も含み、ここでコネクタは供給管の第2の端部を内挿管の第1の端部と、チャンバを介して接続し、これは供給管、チャンバ及び内挿管が供給管から内挿管へと実質的に滑らかに移行するルーメンを形成するような接続とされる。本装置では、内挿管の少なくとも一部分がカニューレの細長部分のルーメン内部に位置する。
本発明のさらに別の態様において、材料を注入部位に送達する方法が提供される。本方法は、細長ルーメンを画定するカニューレを注入部位に挿入するステップを含む。本方法はまた、ルーメンを画定する搬送体を所定量の材料を収容する注入器と接続するステップも含む。本方法はさらに、材料が注入器から搬送体の遠位端まで送達されるように搬送体のルーメンに材料を事前装填するステップを含み、従って搬送体には材料が事前装填される。本方法はまた、事前装填された搬送体の遠位端の少なくとも一部分をカニューレの細長ルーメンに挿入して材料を注入部位に送達するステップも含む。
本発明の別の態様において、材料を注入部位に送達する方法が提供される。本方法は、細長ルーメンを画定するカニューレを注入部位に挿入するステップを含む。本方法はまた、搬送体を所定量の材料を収容する注入器と接続するステップも含み、該搬送体はルーメンを画定し、注入器から遠位に内挿セクションを備える。本方法はさらに、搬送体の遠位内挿セクションの少なくとも一部分をカニューレの細長ルーメンに挿入するステップを含む。本方法はまた、材料を注入器から搬送体のルーメンを通じて移送するステップも含み、ここで硬化性材料はまた遠位内挿セクションも通じて移送される。本方法は最後に、材料を注入部位に送達するステップを含む。
本発明の利点は、例示として図示及び説明されている以下の本発明の好ましい実施形態の説明から当業者にはさらに明確となるであろう。理解されるであろうとおり、本発明は他の異なる実施形態が可能であり、その詳細は様々な点で修正することが可能である。従って、図面及び説明は、限定的なものではなく、例示的な性質のものと見なされるべきである。
図1は、本発明の原理に従う硬化性材料骨内送達システム5の構成要素を示す。本発明の好ましい実施形態に係る硬化性材料送達システム5は、注入器10と、注入コネクタ110を介して注入器10と接続される搬送体アセンブリ20と、患者の対象となる骨部位に挿入するためのカニューレ30とを有する。図1に表される実施形態において、対象となる骨部位は椎骨40である。
以下に様々な構成要素に関する詳細が提供される。しかしながら、概して言えば、搬送体アセンブリ20の一部分はカニューレ30の内部に摺動自在に配置されるサイズであり、カニューレ30はその他に、骨内部の所望の注入部位の形成及び位置決定、或いはそのどちらか一方を行う働きをする。搬送体アセンブリ20はカニューレ内部に配置されると、硬化性の骨安定化材料を送達部位に注入するために用いられる。システム5は、例えば椎体形成術及び他の骨増強手技を含め、硬化性材料が骨内部の部位に送達される数多くの異なる手技に使用できると同時に、骨内部の部位から材料を除去又は吸引するためにも使用できる。
システム5、特に搬送体アセンブリ20は、骨セメント硬化性材料の形態の硬化性材料の送達に極めて有用である。本明細書に記載される本発明のシステム/器具によって送達され得る物質に関連する範囲内で、語句「硬化性材料」は、流体の又は流動性の、状態又は相と、硬くなった固形の又は硬化した、状態又は相とを有する材料(例えば、複合物及び重合体など)を参照するよう意図される。硬化性材料としては、限定はされないが、注入用骨セメント(ポリメチルメタクリレート(PMMA)骨用硬化性材料など)が挙げられ、これらは流動性状態を有し、このときカニューレによって部位まで送達(例えば、注入)され、その後硬化して硬くなった硬化性材料となり得る。他の材料、例えば、リン酸カルシウム、骨内成長材料、抗生物質、タンパク質等を骨セメントの代わりに、又は骨セメントを増強するために(しかし、結果として生じる配合物の、流動性状態と、硬くなった固形の又は硬化した状態とを有する最も重要な特性には影響を及ぼさず)使用してもよい。これによって体は、充填移植材料の種類に基づき、硬化性材料を再吸収したり、又は臨床転帰を改善したりすることが可能となり得る。
注入器10は典型的には、所定量の硬化性材料が充填されたチャンバを備えることができ、任意の好適な注入システム又は圧送機構を用いて硬化性材料を注入器から送り出し、搬送体アセンブリ20へと通す。典型的には、医師が手で注入器に力をかける手動注入システムが使用される。次にその力が硬化性材料に対する圧力に変わることでチャンバから流れ出す。力をかけるために電動システムを使用してもよい。
注入部位に硬化性材料を送達するためカニューレ30が提供され、注入部位に配置される。カニューレ30は好ましくは外科手術級のステンレス鋼製であるが、生体適合性であると同時に本明細書に記載される動作圧において実質的に柔軟性を有しない公知の同等材料で作製されてもよい。カニューレ30はルーメン325を画定しており、スタイレット(図示せず)、搬送体アセンブリ20、及び他の用具がカニューレ30を通過できる。好ましくは、カニューレ30の少なくとも遠位端330は放射線不透過性である。カニューレ30は、スタイレットの外径よりほんの僅かだけ大きい内径を有する。カニューレ30の遠位端330は好ましくは傾斜が付けられ、皮膚組織及び軟部組織、特に硬組織を通じたカニューレの貫通を容易にする。
カニューレ30の近位端328の周囲には、カニューレ30を操作し、且つハンドルコネクタ312を介してカニューレ30を搬送体アセンブリ20と接続するためのハンドル310がある。好ましくは、ハンドルコネクタ312はルアーロック型のコネクタを有するが、例えば従来式のねじ穴、ねじ山及び係止ナットの構成等、他の公知の接続機構に好都合に代えられてもよい。カニューレは標準的な長さ及び直径であってよい。カニューレは約4cm〜約20cmの長さ、好ましくは12cmの長さであり得る。さらに、カニューレの直径に関して、カニューレは約1.2mmの外径(18ゲージ)で壁厚が約0.216mmのものから、約5.2mmの外径(6ゲージ)で壁厚が約0.381mmのものまで、好ましくは約3.1mmの外径(11ゲージ)で壁厚が約0.33mmか、又は約2.1mmの外径(13ゲージ)で壁厚が約0.305mmであり得る。
搬送体アセンブリ20は、硬化性材料が注入器10から注入部位、例えば椎骨40まで移動するための通路を提供する。図2を参照すると、搬送体アセンブリ20は好ましくは、注入コネクタ110から患者の体内に配置されるその終端144までルーメン100を画定する。好ましい一実施形態に従えば、搬送体アセンブリ20は、注入コネクタ110とカニューレコネクタ130と移送本体115とを備える。移送本体115はさらに、供給セクション120と内挿セクション140とを備える。注入コネクタ110は好ましくはルアーロック型のコネクタであるが、医学的用途に好適な他の公知の接続機構に好都合に代えられてもよい。
カニューレコネクタ130は移送本体115と固着され、搬送体アセンブリ20をカニューレ30及びカニューレハンドル310と接続する。好ましい実施形態に従えば、カニューレコネクタ130は、カニューレ30のルアーロックねじ式継手300と接続するためのルアーロックねじ式継手200を内蔵し、搬送体アセンブリ20とカニューレ30とを着脱式に取り外し可能とすることができる。
移送本体115は好ましくは、ルーメン100を画定する単一の管状構造である。搬送体アセンブリ20を通じて硬化性材料を移送するために必要とされる動作圧のため、移送本体115は好ましくは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの柔軟性を有しない材料で作製される。他の好適な材料としては、アルミニウム又はワイヤ補強プラスチックが挙げられる。移送本体115の供給セクション120は、注入器10から硬化性材料を受け取るよう機能し、移送本体115のうち注入器10とカニューレコネクタ130との間にある部分によってほぼ画定される。移送本体115の内挿セクション140は、硬化性材料を注入部位に送達するよう機能し、移送本体115のうちカニューレコネクタ130と患者の体内に配置するための搬送体アセンブリ20の終端144との間にある部分によってほぼ画定される。内挿セクション140の少なくとも一部分はカニューレ30に挿入されるよう構成される。従って内挿セクション140はカニューレ30の内径より小さい外径を有しなければならないが、しかしこの外径は、硬化性材料が内挿セクション140の外側の周りを移動してカニューレ30に戻ることができるほど小さいものであってはならない。好ましくはカニューレ30の内径と内挿セクション140の外径との間のクリアランスは、約千分の2.5〜76.2センチメートル(約千分の1〜30インチ)の範囲内であり、より好ましくは約千分の12.7センチメートル(約千分の5インチ)以下である。
さらに、好ましい実施形態に従えば、カニューレ30の遠位端330は内挿セクション140の終端144を越えて、カニューレ30の遠位端330からの内挿セクション140の終端144の長さがカニューレ30の長さの50%未満であるように延在する。別の好ましい実施形態に従えば、内挿セクション140の終端144はカニューレ30の遠位端330と実質的に同じである。当業者はまた、内挿セクション140が注入部位の内部に嵌まり込み、硬化性材料を効果的に分注する限り、カニューレ30の遠位端330を越えて延在する内挿セクション140が用いられてもよいことも理解するであろう。
この実施形態は単一の管を使用して硬化性材料を患者に送達するが、この単一の管は、管の異なる部分で異なる直径を有するよう製造され得ることを当業者は理解するであろう。
図3を参照すると、別の好ましい実施形態において、供給セクション120と内挿セクション140とはカニューレコネクタ130で接続される別個の構造であり得る。この実施形態において、好ましくは供給セクション120、カニューレコネクタ130及び内挿セクション140はルーメン100を画定する。供給セクション120は第1の端部122と第2の端部124とを有し、好ましくはルーメン100の一部分を画定する管状構造である。搬送体アセンブリ20を通じて硬化性材料を移送するために必要な動作圧のため、供給セクション120は好ましくは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又は他のポリマーなどの柔軟性を有しない材料で作製される。他の好適な材料としては、アルミニウム又はワイヤ補強プラスチックが挙げられる。供給セクション120の第2の端部124はカニューレコネクタ130の第1の端部132と接続する。
内挿セクション140は、カニューレコネクタ130と接続される第1の端部142と、患者の体内に配置されて硬化性材料を注入部位に送達するための終端144とを備える。内挿セクション140はカニューレに挿入されるよう構成され、好ましくはカニューレコネクタ130から注入部位まで延在する。硬化性材料の注入に伴い加えられる動作圧のため、内挿セクション140は好ましくは柔軟性を有しない材料で作製され、より好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はアルミニウムで作製される。従って内挿セクション140はカニューレ30の内径より小さい外径を有しなければならないが、しかしこの外径は、硬化性材料が内挿セクション140の外側の周りを移動してカニューレ30に戻ることができるほど小さいものであってはならない。好ましくはカニューレ30の内径と内挿セクション140の外径との間のクリアランスは約千分の2.5〜76.2センチメートル(約千分の1〜30インチ)の範囲内であり、より好ましくは約千分の12.7センチメートル(約千分の5インチ)以下である。供給セクション120と内挿セクション140とは、同じ材料で作製されても、又は異なる材料で作製されてもよい。
内挿セクション140の好ましい一実施形態に従えば、内挿セクション140の内表面は滑らかで、材料の送達部位への送達を補助する。硬化性材料を導入するための先行技術における典型的な医療用カニューレ又は針は、粗い内表面を含む。粗い内表面は、二乗平均平方根(RMS)値が1.27マイクロメートル(50マイクロインチ)以上であり得る。硬化性材料を導入するためのルーメンを画定する表面が滑らかなとき、硬化性材料の適用に要する力は比較的小さいことが認められている。滑らかな表面は、二乗平均平方根(RMS)値が約1.14(45)以下であり得る。結果として、好ましい実施形態において、ルーメン100を画定する内挿セクションのRMS値は、約0(0)〜約1.14(45)のRMS値を有する。別の好ましい実施形態において、RMS値は好ましくは約0(0)〜約0.81(32)、より好ましくは約0(0)〜約0.41(16)である。
図4aは、ルーメン100の一部分を画定する滑らかな内表面141を有する内挿セクション140を表す。好ましい一実施形態において、内挿セクション140の内表面141は乾式潤滑剤、例えばTeflon(登録商標)で被膜される。別の好ましい実施形態において、滑らかな内表面141を有する滑面ライナーが内挿セクション140の内部に設けられてもよく、それにより滑面ライナーが内挿セクション140の内表面を被覆する。好ましい一実施形態に従えば、滑面ライナーはTeflon(登録商標)製である。別の好ましい実施形態において、内挿セクション140の内表面141は、内挿セクション140の内表面141が1.24(49)以下のRMS値を有する実質的に滑らかな表面仕上げを有するように、研磨された、又は鏡面状の表面仕上げを有するよう製造される。この実施形態において、内挿セクション140は好ましくは金属製であり、より好ましくはステンレス鋼製である。
さらに、好ましい実施形態に従えば、カニューレ30の遠位端330は内挿セクション140の終端144を越えて、カニューレ30の遠位端330からの内挿セクション140の終端144の長さがカニューレ30の長さの50%未満であるように延在する。別の好ましい実施形態に従えば、内挿セクション140の終端144はカニューレ30の遠位端330と実質的に同じである。当業者はまた、内挿セクション140が注入部位の内部に嵌り込み、硬化性材料を効果的に分注する限り、カニューレ30の遠位端330を越えて延在する内挿セクション140が用いられてもよいことも理解するであろう。
この実施形態において、カニューレコネクタ130はまた搬送体アセンブリ20をカニューレ30と接続することに加え、供給セクション120を内挿セクション140と接続する。好ましい実施形態に従えば、供給管120はルアーロック型のコネクタ210を介してカニューレコネクタ130と接続するが、医学的用途に好適な他の公知の接続機構に好都合に代えられてもよい。カニューレコネクタ130はさらに第2のルアー接続312を備え、内挿セクション140をカニューレコネクタ130と接続する。
図4を参照すると、カニューレコネクタ130は好ましくはフランジレスアダプタ220を備える。フランジレスアダプタ220は、供給セクション120から内挿セクション140への正確で滑らかな移行を提供する。ルーメン100を画定する壁の寸断、例えば継手又は接続部の急激な移行があると、ルーメン100の内部で硬化性材料が早まって固まり、ラインを詰まらせる可能性があることが分かっている。結果として、ライン間の継手又は接続部における移行が滑らかであると、硬化性材料は有利に患者に送達される。
好ましくは、フランジレスアダプタ220は、第1の半径方向リップ230、チャンバ240、及び第2の半径方向リップ250を画定する。チャンバ240はさらに、流入端242、流出端244及び移行領域246を画定する。供給セクション120からチャンバ240への正確で滑らかな移行を実現するため、供給セクションの第2の端部124がチャンバ240の流入端242において第1の半径方向リップ230と当接する。チャンバの流入端242は供給セクション120の内径と実質的に同じ内径を有する。同様に、内挿セクション140の第1の端部142がチャンバ240の流出端244において第2の半径方向リップ250と当接する。チャンバ240の流出端244は内挿セクション140の内径と実質的に同じ内径を有する。このようにして供給セクションと内挿セクションとの間の正確で滑らかな移行が達成されることは理解されるであろう。
図4に表される実施形態において、供給セクション120と内挿セクション140とは同じ内径を有する。結果として、チャンバの流入端242、移行領域246及び流出端244もまた同じ直径を有する。別の好ましい実施形態において、供給セクション120と内挿セクション140とは異なる内径を有し得る。従って、チャンバ240の流入端242と流出端244もまた異なる内径を有し得る。この実施形態において、チャンバ240の移行領域246は縮径して、チャンバ240をある直径から他の直径へと滑らかに移行させる。
硬化性材料の下流経路が上流経路より狭い場合に硬化性材料の適用は制御性がさらに高まることが認められている。結果として、好ましい実施形態に従えば、内挿セクション140の内径は供給セクション120の内径より小さい。この好ましい実施形態において、移行領域246は好ましくは、チャンバの流入端242におけるより大きい直径からチャンバの流出端244におけるより小さい直径へとチャンバ240を滑らかに移行させ得る。硬化性材料による詰まりを防ぐため、接続部における急激な移行は回避すべきである点に留意することは重要である。フランジレスアダプタ220は好ましくは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又は他のポリマーなどの、動作圧に耐え得る材料で作製される。
図5を参照すると、カニューレコネクタの別の実施形態が提示される。この実施形態において、供給セクション120と内挿セクション140とは互いに適宜着脱可能であるため、種々の内挿セクション140を供給セクション120に取り付けたり、そこから取り外したりし得る。この実施形態において、内挿セクション140は内挿セクションコネクタ480を備える。内挿セクションコネクタ480は、先述の実施形態でカニューレハンドル310に接続するために用いられたルアーロック接続200を介してカニューレコネクタ130と接続する。内挿セクションコネクタ480はまた、カニューレハンドル310との接続用に別のルアーロック接続475も備える。内挿セクションコネクタ480はさらに第2のフランジレスアダプタ420を備え、カニューレコネクタ130から内挿セクション140への正確で滑らかな移行を提供する。図5を参照すると、好ましくは第2のフランジレスアダプタ420はチャンバ440及び半径方向リップ450を画定する。チャンバ440はさらに、流入端442、流出端444及び移行領域446を画定する。カニューレコネクタ130からチャンバ440への正確で滑らかな移行を実現するため、カニューレコネクタ130のチャンバ440の流出端477は第2のチャンバ440の流入端442と当接する。第2のチャンバ440の流入端442は、カニューレコネクタ130のチャンバ240の流出端477の内径と実質的に同じ内径を有する。各内挿セクションコネクタは特に、供給セクション120を内挿セクション140と滑らかに移行させるのに好適な縮径した移行領域446を含むため、多様なサイズの内挿セクションが単一サイズの供給セクションに取り付けられ得ることが理解されるであろう。
図5aを参照すると、カニューレコネクタの別の実施形態が提示されている。この実施形態において、供給セクション120(図示せず)と内挿セクション140とは互いに適宜着脱可能であるため、種々の内挿セクション140を供給セクション120に取り付けたり、そこから取り外したりし得る。加えて、この実施形態において供給セクション120は内挿セクション140に対し適宜回転させることができ、材料注入器及び供給セクション120を内挿セクション140の長手方向軸線の周りに回転させて使い易いよう好ましい向きを実現し得る。この実施形態において、内挿セクション140はコネクタ本体680と接続される。コネクタ本体680はルアーロック接続628を介してカニューレハンドル310に接続する(図1を参照)。コネクタ本体680はまた固定アダプタ690及び回転アダプタ620も備える。回転アダプタ620は、供給セクション120から内挿セクション140への、コネクタ本体680を介した回転可能な移行を可能とする。この実施形態において、回転アダプタ620は固定アダプタ690に対し回転し、且つ内挿セクション140の長手方向軸線の周りに回転するよう動作する。回転アダプタ620は供給セクション120と連係し、且つ使用中に供給セクション120を回転させるよう動作する。好ましい実施形態において、回転アダプタは供給セクションを好ましくは約90度、より好ましくは約360度回転させるよう動作する。
図5aを参照すると、好ましい一実施形態に従えば、回転アダプタ620は、把持セクション622、ホルダセクション624及びキャップ626を画定する。好ましい一実施形態において、把持セクション622とホルダセクション624とは接着剤によって互いに接続されるが、別の実施形態においては把持セクションとホルダセクションとは一体に形成されてもよい。ホルダ624セクションは固定アダプタ690の空洞内に挿入され、キャップ626が固定アダプタ690の端部に被せて設置されることで、ホルダセクション624を固定アダプタ690の内部に固定する。好ましい一実施形態に従えば、固定アダプタ690の空洞はまたOリング692も含み、ホルダセクション624と連係する。把持セクション622は好ましくは1つ又は複数のフィン様突起630を含み、回転アダプタ620の回転を補助する。把持セクション622はまた、供給セクション120をコネクタ本体680に接続するよう機能するルアーねじ628も含む。コネクタ本体680、内挿セクション140及び供給セクション120は組み立てられると、材料を材料注入器から材料送達部位に送達できるルーメンを形成する。
コネクタ本体680の別の実施形態において、コネクタ本体680はさらに、本明細書に記載されるフランジレスアダプタに基づくフランジレスアダプタ(図示せず)を備え、供給セクション120から内挿セクション140への正確で滑らかな移行を提供する。内挿セクションは供給セクションと着脱可能であるため、多様なサイズの内挿セクションを単一サイズの供給セクションに取り付け得ることもまた理解されるであろう。
別の好ましい実施形態に従えば、回転アダプタ620が回転すると内挿セクション140も回転する。この実施形態においては、供給セクション120が回転することにより内挿セクション140が回転し、注入部位内部で方向性をもった硬化性材料の送達がもたらされる。図5bを参照すると、好ましい一実施形態に従えば、内挿セクション140が回転アダプタ620に接続される。図5bで分かるとおり、内挿セクション140は固定アダプタ680の中を回転アダプタ620まで貫通する。内挿セクション140と回転アダプタ620とは接着剤によって接続され得るが、他の接続手段が用いられてもよい。好ましい一実施形態に従えば、内挿セクション140の端部691は回転アダプタ620の表面に対応するようフレア状になっており、これが本発明の製造を補助し、接着剤用の表面積を増加させる。この実施形態において、供給セクション120は上記のとおり回転アダプタと接続される。供給セクションが内挿セクション140の長手方向軸線の周りに回転すると、内挿セクションもまた固定アダプタ690の内部で、固定アダプタ690に対し回転する。従って、内挿セクション140の回転は供給セクションの回転に依存する。様々な内挿セクション先端形状と共に使用されるときにも、供給セクションが回転することで内挿セクションの回転が生じ、注入部位内部で方向性をもった硬化性材料の適用がもたらされ得る。
さらに別の好ましい実施形態に従えば、内挿セクション140と供給セクション120とは互いに独立して回転できる。この実施形態において、供給セクション120は内挿セクション140を回転させることなく内挿セクション140の長手方向軸線の周りに回転し得る。加えて、内挿セクション140の回転により、供給セクション120が回転することなく方向性をもったセメントの送達がもたらされ得る。図5cを参照すると、この実施形態において、回転アダプタ620は第2のコネクタ本体780と接続される。第2のコネクタ本体780はルアーねじ628を介して回転アダプタ620に接続する。第2のコネクタ本体780はまた第2の固定アダプタ790と第2の回転アダプタ720とを備える。第2の回転アダプタ720は、供給セクション120から内挿セクション140への独立回転式の移行を可能にする。この実施形態において、第2の回転アダプタ720は第2の固定アダプタ790に対し回転し、且つ内挿セクション140の長手方向軸線の周りに回転するよう動作する。第2の回転アダプタ720は供給セクション120と連係し、使用中に供給セクション120を回転させるよう動作する。
引き続き図5cを参照すると、好ましい一実施形態に従えば、第2の回転アダプタ720は第2の把持セクション722、第2のホルダセクション724及び第2のキャップ726を画定する。好ましい一実施形態において第2の把持セクション722と第2のホルダセクション724とは接着剤によって互いに接続されるが、別の実施形態において、把持セクションとホルダセクションとは一体に形成されてもよい。第2のホルダセクション724は第2の固定アダプタ790の空洞内に挿入され、第2のキャップ726が第2の固定アダプタ790の端部に被せて設置されることで、第2のホルダセクション724が第2の固定アダプタ790の内部に固定される。好ましい一実施形態に従えば、固定アダプタ690の空洞はまた第2のOリング792も含み、第2のホルダセクション724と連係する。第2の把持セクション622は好ましくは1つ又は複数のフィン様突起730を含み、第2の回転アダプタ720の回転を補助する。第2の把持セクション722はまた、供給セクション120を第2のコネクタ本体780と接続するよう機能するルアーねじ728も含む。コネクタ本体680、第2のコネクタ本体780、内挿セクション140及び供給セクション120は組み立てられると、材料を材料注入器から材料送達部位に送達できるルーメンを形成する。
この実施形態において、内挿セクション140は回転アダプタ620を使用して、供給セクション120の回転とは独立して回転させ得る。様々な内挿セクション先端形状と共に使用されるときにも、内挿セクション140の回転により注入部位内部での方向性をもった硬化性材料の適用がもたらされ得る。
正確な形状に関わらず、本発明の原理に従い組み立てられた硬化性材料送達システム(図1の硬化性材料送達システム5など)は、硬化性材料送達システム全体の一部として広範な骨安定化手技の実施において極めて有用である。椎体形成術を非限定的な例として用いれば、手術中、カニューレ30及びスタイレット(図示せず)が椎骨40の中に刺し込まれ、椎骨40の骨梁腔に達する。スタイレットが取り出され、カニューレ30内部の開放されたルーメン325が残る。硬化性材料が混合され、注入器10の中に装填される。好ましくは、硬化性材料は内挿セクション140をカニューレ30のルーメン325に挿入する前に、圧力下に注入器10から内挿セクション140の終端144へと移送される。実際には、操作者は内挿セクション140を完全に充填するため内挿セクション140の終端144を越えて硬化性材料を前進させ、次にカニューレ30に挿入する前に内挿セクション140の終端144から過剰な硬化性材料を拭い取り得る。従って搬送体アセンブリは、搬送体アセンブリ20がカニューレ30と接続され、内挿セクション140がカニューレ30に挿入される前に、硬化性材料を事前装填される。内挿セクション140がカニューレ30に挿入され、搬送体アセンブリ20がカニューレ30と接続されると、硬化性材料は直ちに椎骨40に送達可能となる。この事前装填ステップは有利には、カニューレ30が椎骨に刺し込まれるのと実質的に同時に行うことができるため、硬化性材料の患者への送達に要する時間は低減される。先行技術では、硬化性材料の注入器からの移送は、供給管がカニューレに接続された後でなければ開始できない。従って硬化性材料を注入器から供給管、カニューレ管を通じて患者の体内まで移送するために時間がかかる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態においては、硬化性材料は内挿セクション140の終端144まで事前に装填され、次に内挿セクション140がカニューレ30に挿入されるため、硬化性材料は患者に直ちに送達可能となる。しかしながら、当業者は、硬化性材料が搬送体アセンブリに事前装填されなくとも本発明に関する他の利点が実現されることを理解するであろう。
最初に送達器具に硬化性材料を事前装填する間、硬化性材料カラムが器具中を前進するに従いその端部に「ドライプラグ(dry plug)」が形成されることが認められている。ドライプラグは、硬化性材料のカラムの先端部から単量体が抽出されるときに、それが送達器具ルーメンの内表面を被膜するため、形成される。硬化性材料から単量体が抽出されるとカラムの端部は乾燥し、内表面との摩擦が増加する。ドライプラグは硬化性材料のカラムが前進するに従い一層長くなり、ひいては摩擦がさらに増加する。
従ってドライプラグにより、ドライプラグを有しないカラムと比較したとき、硬化性材料のカラムを前進させるために注入器により大きい圧力をかける必要がある。結果として、好ましい一実施形態に従えば、事前装填中のドライプラグの発生を低減するための好ましい方法が用いられ得る。この硬化性材料送達器具を事前装填する好ましい方法に従えば、内挿セクション140が供給セクション120から取り外され、硬化性材料が供給セクション120の遠位端まで装填される。次に硬化性材料をさらに前進させて、ドライプラグを供給セクション120の遠位端から取り除く。次に供給セクション120の遠位端をいかなる過剰な硬化性材料もない状態に拭き取り、内挿セクション140を供給セクション120に取り付ける。硬化性材料の事前装填が上記のとおり続く。
手技のこの時点において、内挿セクション140がカニューレ30に挿入されてルアーロックにより所定の位置で係止され、ルアーロックが搬送体アセンブリ20をカニューレ30と接続することにより、圧力下で搬送体アセンブリ20がカニューレ30から外れ落ちることのないようにされる。本発明では、搬送体アセンブリ20はカニューレ30に挿入される前に準備できているため、手技の開始時に硬化性材料を注入部位に噴出させずに注入することが可能となる。医師が注入器10を作動させるとき、硬化性材料は既に注入部位の中に入っており、従って流れを予測し易い。このとき注入器によって、緻密に制御された量の硬化性材料を患者の体内に移送することが可能となる。
所定量の硬化性材料を椎骨に送達した後、搬送体アセンブリ20はカニューレ30から外され、取り出され得る。当業者は、搬送体アセンブリ20が取り出されるとき、硬化性材料を装填された内挿セクション140もまた取り出され、ひいては硬化性材料のカラムがカニューレ30から取り出されることを理解するであろう。従っていくつかの利点がこの実施形態において実現される。第一に、内挿セクション140が硬化性材料とカニューレ30との間のライナーとして機能するため、カニューレ30の内部に硬化性材料が残留しない。従ってそのカニューレ30は椎骨への別の材料の送達に再び使用され得る。第二に、先行技術では硬化性材料は手技が完了しないうちにカニューレ30の内部で固まり始めることがある。手技が完了し、カニューレが取り出されるとき、結果として存在する硬化性材料カラムはカニューレ30の遠位端330の先端ではなく、カニューレ30内部の箇所で割れ得る。この結果、椎骨の内部に堆積した硬化性材料に付着したままの硬化性材料の「スパイク」が生じ、この「スパイク」が椎骨の外側に伸張し得る。本発明では、内挿セクション140が取り出されるとき、硬化性材料は内挿セクション140の終端144の先端でより均一に割れることが認められており、ひいては硬化性材料「スパイク」の生じる機会が最小限となる。加えて、当該技術分野では、硬化性材料は体温に曝露されるとより急速に固まり始めることが理解されている。本発明では、硬化性材料の送達がある時間中断される必要がある場合、内挿セクション140を適宜カニューレ30から一時的に取り出し、比較的冷温の室温によって冷却することで、硬化性材料の固化を遅延させ得る。手術中にカニューレ30の内部に充満している硬化性材料を取り出すことができない先行技術のもとでは、これは不可能である。
本発明はまた、医師が同じ手術のなかで1つ又は複数の椎骨にある複数のカニューレを硬化性材料で適宜充填することも可能である。医師は、2つの基本的な手法、すなわち片側椎弓根的手法及び両側椎弓根的手法により椎体に侵入し得ることが理解されている。片側椎弓根的手法では、医師はカニューレが椎体の正中線を通るようにカニューレを設置しようとする。これは、椎骨全体が1つの侵入点及び1本のカニューレを通じて充填できるように行われる。この技法はより速い硬化性材料の充填をもたらし、ひいては手技にかかる時間が低減され得る。しかしながら、この技法は医師にとって技術的により困難なものであり、常に用いることができるわけではない。両側椎弓根的手法は椎骨の各椎弓根を通じたカニューレの設置に依拠する。椎体の正中線を通る必要がないため、両側椎弓根的手法は技術的により容易で安全であると考えられる。両側椎弓根的手法は椎骨の両側に同等に充填することが可能であり、ひいては硬化性材料のより均一な分布がもたらされる。
本発明は片側椎弓根的手法及び両側椎弓根的手法の双方で用いることができる。両側椎弓根的手法では同じ搬送体アセンブリ20を使用して、第1のカニューレを通じて第1の側の椎体を、第1の側が十分に充填されるまで充填できる。次に搬送体アセンブリ20の内挿セクション140が、第1のカニューレから取り出され、他方の側の椎体に対する第2のカニューレの内部に配置され得る。搬送体アセンブリ20を取り出したとき、第1のカニューレは硬化性材料を実質的に含まないことは理解されるであろう。また、内挿セクション140はなお硬化性材料で充填されており、つまり第2の手技に関して「事前装填済み」であることも理解されるであろう。従って、第2の側の椎体の充填は直ちに始めることができ、その一方で硬化性材料は第1の側で固まり始める。医師は、所望するのであれば、第1のカニューレに戻って第1の側の充填を再び始めることができる。好ましい実施形態において、医師は第1のカニューレと第2のカニューレとの間で交互に、双方とも清浄に保ちながら手技を行うことができる。
別の好ましい実施形態において、医師は1回の手技のなかで2つの異なる椎体を充填し得る。この技法により医師はカニューレ間を様々な時点で、カニューレを清浄に保ちながら作業することが可能となる。この実施形態において、医師はカニューレを2つ以上の椎骨に刺し込む。搬送体アセンブリ20は上記のとおり硬化性材料で事前に装填される。搬送体アセンブリ20が第1の手技用の第1のカニューレ30と接続され、硬化性材料が直ちに椎骨に送達される。第1の手技が完了すると、搬送体アセンブリ20は第1のカニューレ30から取り出される。内挿セクション140には硬化性材料が充填されたままであり、ひいては第2の手技に関して「事前装填済み」であることは理解されるであろう。搬送体アセンブリ20は第2のカニューレ30に接続され、硬化性材料は直ちに椎骨に送達できる状態にある。
代替的構造が本発明の範囲内で用いられ得る。図6を参照すると、別の好ましい実施形態において、内挿セクションの終端144がカニューレ30の遠位端330を越えて延在している。終端144の先端部分550は、硬化性材料を注入部位に送達するため種々の形態を含み得る。
図7に図示される好ましい実施形態において、先端部分550は、終端144がルーメン100に対し軸線方向に閉じている(すなわち、材料がルーメン100の軸線に対し終端144から軸線方向に放出されることがない)閉じた丸い端部518を含む。すなわち、ルーメン100の材料がルーメンから軸線方向の遠位に送り込まれることはない。さらに、終端100は丸い端部518を画定するか、又は含む。一実施形態において、丸い端部518は半球状の表面を画定するが、他の丸い(すなわち、湾曲状又は曲線状の)形状又は外形もまた許容され得る。丸い端部518は骨又は組織への到達、それとの接触及びその探索に好適な非外傷性の表面を提供するよう構成されると同時に、組織を穿刺及び/又は穿孔したり、又は骨を損傷したりするリスクを最小限に抑える。
先端部分550はまた側部オリフィス520も画定し、これは終端144に隣接して形成され、先端部分550の側壁の厚みを貫通している。側部オリフィス520は多様な形状及びサイズをとることができる。例えば、側部オリフィス520は、長円形、円形、曲線形等であってもよい。一実施形態において、面取り領域570が側部オリフィス520の周囲に形成されることにより、先端部分550の外側に沿った鋭縁が取り除かれると同時に、側部オリフィス520からの硬化性材料の一定した流れが(面取り領域570によって生じるオリフィスサイズの拡張を介して)促進され得る。先端部分550は1つの側部オリフィス520を含むか、又はその他の方法でそれを形成するものとして説明されているが、2つの円周方向に整列した側部オリフィスが提供されてもよい。
図8〜9を参照すると、先端部分550に対し様々な他の形態もまた許容され得る。図8は、連続して小さくなる側部オリフィスを有する3つの側部オリフィス522を有する先端部分550を図示する。側部オリフィスサイズが終端144の近位にこのように縮小することによって、他の方法で先端部分550を通じて押し出される硬化性材料の均一な分布が促進される。3つの側部オリフィス522が図示されているが、他の形態もまた許容され得る。例えば、多数の側部オリフィス(すなわち、4つ以上の側部オリフィス)が先端部分550の長さに沿って長手方向に形成されてもよく、加えて、それらの側部オリフィスが2つ以上の長手方向に整列した一連の側部オリフィスを含んでもよい。例示的実施形態において、図8に見ることのできる側部オリフィスは、先端部分550の反対側に形成された(従って図8の図では見ることができない)別の一列の長手方向に整列した側部オリフィスと合致する。本発明の態様は、円形の側部オリフィス、非円形の側部オリフィス、又は一組の円形及び非円形側部オリフィスを画定する側部オリフィス522を提供する。
図9は先端部分550の別の好ましい実施形態を図示する。この実施形態において、先端部分550は屈曲して、内挿セクション140の軸線に対し約90度の開口560を提供している。例示的実施形態において、開口560と内挿セクションの軸線との間のθで表される角度は90度である。本発明の態様は、角度θが0〜90度であってもよく、好ましくはほぼ90度であることを企図する。好ましくは、先端部分550の前縁はほぼ円形とされ、先端部分550が安易に組織に切り込まないようにしなければならない。一実施形態において、内挿セクションは、内挿セクション140を回転させる回転式ハブを備える。ハブは開口560の向きに対応する視覚的なインジケータを備えてもよく、それにより臨床医は内挿セクションの終端にある開口を視覚化できる。好ましくは、内挿セクションのハブはハブを360度回転させることのできるシールを有する。従って、臨床医は骨セメントが注入される領域の構造に基づいてセメント注入をいかなる方向にも向けることができる。
図10を参照すると、本発明の別の好ましい実施形態は、手技中、カニューレ30の遠位端を越えて延在する内挿セクションの終端505に湾曲部分510を備える。この実施形態において、湾曲部分510は、カニューレの細長管状部分を通じて挿入するために直状にすることができる弾性の予成形された湾曲部である。湾曲部分はまた形状記憶特性も有し、それによって細長管状部分の遠位端を出た後にその湾曲形状に戻ることができる。湾曲部分510は内挿セクションと一体に形成されてもよく、又は内挿セクションと結合される別個の構造であってもよい。好ましい実施形態において、視覚的インジケータ、例えば記号又は色インジケータがカニューレコネクタ上に設けられ、医師にカニューレコネクタに対する湾曲部分510の向きを知らせる。内挿セクション140は終端144に隣接して表示517を含む。表示517はカニューレ30の遠位端に対する終端144の位置の指標となる。表示517は、図10とは異なる多様な形をとることができ、ある実施形態においては省略されてもよい。端部部分550は上記の先端形態のいずれであってもよい。
操作中、カニューレは上記のとおり椎体の内部に配置される。湾曲部分510を有する搬送体アセンブリは硬化性材料が事前装填され、カニューレの細長管状部分に挿入される。医師は内挿セクション上の深さ表示517を用いて、湾曲部分510がカニューレ30の遠位端をどのくらい越えて進んだかを判断し得る。所望の深さに達すると、硬化性材料が椎体に送達され得る。湾曲部分517の向きについての視覚的なインジケータを用いて、硬化性材料が椎体内部の異なる領域に送達され得るように湾曲部分510を配置し直してもよい。所定量の硬化性材料が椎骨中に送達された後、搬送体アセンブリ20はカニューレ30から取り出される。
別の好ましい実施形態に従えば、本発明は、膨張式器具を使用したタンピング(tamping)手術で用いられ得ることもまた企図される。バルーンを使用したタンピング手術は先行技術において周知であり、例えば、「骨粗しょう症骨の固定のための膨張式器具使用の外科手術手順(Surgical Protocol for Fixation of Osteoporotic Bone Using Inflatable Device)」と題される米国特許第4,969,888号、及び「骨の固定のための膨張式器具使用の外科手術手順(Surgical Protocol For Fixation of Bone Using Inflatable Device)」と題される米国特許第5,108,404号に開示されている。医師が内側の骨にタンピングを行うことにより臨床的利点が得られるであろうと考える手技において、本発明は以下のように用いられ得る。まず初めに医師はカニューレとスタイレットとの組み合わせを使用して骨に侵入する。侵入後、骨小柱を粉砕してタンピング器具用の空隙を設ける。タンピング器具はこの空間に挿入して膨張され、それにより骨の空隙が拡大される。タンピング器具が取り出された後、既述のとおり事前装填された内挿セクションがカニューレに挿入され、硬化性材料が部位に送達される。
従って前述の詳細な説明は限定ではなく例示とみなされることが意図され、本発明の趣旨及び範囲を定義するよう意図されるのは、全ての等価物を含む以下の特許請求の範囲であることは理解されたい。これに関連して、骨部位及び硬化性材料が参照されているが、本明細書に開示される器具及び方法は骨部位及び硬化性材料の適用に限定されないことは理解されなければならない。当業者は、本明細書に開示される器具及び方法が脊椎板などの骨以外の部位で用いられてもよく、硬化性材料以外の材料の注入に用いられてもよいことを理解するであろう。
本システム及び方法は、骨部位への硬化性材料の投与における高い安全性及び制御性という長年の切実な要求に対し、カニューレ内部に硬化性材料が事前装填され得る管の形態の内挿セクションを提供することによって応えるものである。管の形態の内挿セクションによりカニューレは硬化性材料を含まない状態を維持でき、そのため手技中にカニューレは再使用され得る。加えて、管の形態の内挿セクションに硬化性材料が事前装填されることにより、硬化性材料を患者に送達する時間を短縮し、硬化性材料の送達に対する制御性を高めることができる。
Claims (17)
- 患者の注入部位に材料を導入するための装置であって、
ルーメンを画定するカニューレと、
注入器から注入部位まで材料を送達するための搬送体であって、ルーメンを画定し、且つ、
硬化性材料を受け入れるよう機能する供給セクションと、
長手方向軸を有する、患者に対して近位の内挿セクションと、
を備える搬送体と、を備え 前記供給セクションが前記内挿セクションの前記長手方向軸に対し回転可能であり、前記内挿セクションの少なくとも一部分が前記カニューレの前記ルーメンの内部に位置する、装置。 - 前記内挿セクションが回転可能であり、前記内挿セクションの回転が前記供給セクションの回転に依存する、請求項1に記載の装置。
- 前記内挿セクションが回転可能であり、前記内挿セクションの回転が前記供給セクションの回転と独立している、請求項1に記載の装置。
- 前記搬送体が前記供給セクションの端部を前記内挿セクションの端部と接続するためのコネクタをさらに備え、前記コネクタが前記供給セクションの前記端部と前記内挿セクションの前記端部との間のチャンバを画定する、請求項1に記載の装置。
- 前記コネクタが、前記供給セクションの前記端部と接続する回転アダプタをさらに備える、請求項4に記載の装置。
- 前記回転アダプタが前記供給セクションを少なくとも約90度回転させるよう動作する、請求項5に記載の装置。
- 前記供給セクションと前記チャンバと前記内挿セクションとが、前記供給セクションから前記内挿セクションへの実質的に滑らかな移行を画定する壁を有するルーメンを形成する、請求項6に記載の装置。
- 患者の注入部位に材料を導入するための装置であって、
硬化性材料を移送するためのルーメンを画定する内表面を有する管状セクション
を備え、前記ルーメンの前記内表面が滑らかである、装置。 - 前記滑らかな内表面が約0(0)〜約1.14(45)のRMS値を有する、請求項8に記載の装置。
- 前記滑らかな内表面が約0(0)〜約0.91(36)のRMS値を有する、請求項8に記載の装置。
- 前記内表面が約0(0)〜約0.41(16)のRMS値を有する、請求項8に記載の装置。
- 前記内表面が乾式潤滑剤で被膜される、請求項8に記載の装置。
- 前記乾式潤滑剤がTeflon(登録商標)である、請求項12に記載の装置。
- 前記管状セクション内部のライナーが前記滑らかな内表面を画定する、請求項8に記載の装置。
- 前記ライナーがTeflon(登録商標)製である、請求項14に記載の装置。
- 前記管状セクションが金属製である、請求項10に記載の装置。
- 第2のルーメンを画定するカニューレをさらに備える請求項8に記載の装置であって、前記内挿セクションの少なくとも一部分が前記材料の送達中に前記カニューレの前記第2のルーメンの内部に位置する、装置。
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