JP2009521666A - 共鳴エネルギー移動後の偏光解消(daret)を用いる分子または細胞より小さい部分の相互作用力のアッセイ - Google Patents

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Abstract

本発明は、DARETを経ることができるフルオロフォアで標識された2以上の分子構造の近接性、または近接性の変化を測定する方法を提供する。好ましい態様において、サンプルにおける分子構造の近接性の変化は、サンプルの蛍光偏光の変化と相関し、リアルタイムでモニターすることが出来る。

Description

本出願は35 U. S. C. セクション 119(e)にしたがって2005年10月12日出願の米国仮出願 60/726,515からの優先権を主張し、該出願はその内容全体を引用により本明細書に含める。
本発明は一般に、2以上の異なる分子間または同一分子の2以上の部分の間の物理的相互作用 (または物理的相互作用の欠如)を検出するアッセイに関する。さらに、本発明のアッセイは、例えば、細胞より小さい構造(subcellular feature)、例えば、これらに限定されないが、細胞膜、ミトコンドリア、ゴルジ体、小胞等の間の相互作用を、共鳴エネルギー移動後の偏光解消 (DARET)と称される新規光学技術を用いて検出することに適用される。
かかるアッセイは、リガンド:受容体相互作用の測定または検出、ある種の酵素アッセイ(例えばプロテアーゼアッセイ)、細胞内分子輸送の検出、およびタンパク質:タンパク質、核酸:核酸、およびタンパク質:核酸相互作用の検出を含む用途に非常に有用であり得る。
細胞内の分子の位置は、その機能に関する情報を示唆しうる。細胞がホルモンまたは成長因子に曝された際に細胞質から核へと移動するタンパク質は、遺伝子発現に関与している可能性がある。あるいは、刺激に応答して細胞膜へと輸送される分子は、細胞間シグナル伝達に関与する分泌分子であり得、例えば、神経細胞内で産生される神経伝達物質は、シナプス間隙に分泌されることにより、膜電位の一過性変化に応答する前に、使用時まで貯蔵される。細胞内構造(cellular feature)、例えば、ゴルジ体、細胞膜およびリソソームとの関係におけるかかる分子の位置をモニターすることは有用である。
さらに、分子間の相互作用力を検出するアッセイは、創薬における努力に明らかに利用できる。例えば、数十万またはそれ以上の化合物を含む化合物ライブラリーの構築は今ではもう一般的である; しかし、かかる大きな化合物ライブラリーをスクリーニングする能力は、創薬における一般的なボトルネックである。 本発明の方法は、放射性または毒性試薬を使用せずにリアルタイムで実施することが出来る、例えば、薬物結合および/または活性の簡単で迅速なアッセイを提供する。本発明の方法は、ハイスループットスクリーニング形式での使用にも適用でき、アッセイの様々な工程の自動化を可能とする。
化合物の大きいライブラリーの構築およびスクリーニングは、創薬において比較的最近の実用面での進歩であり、クローニングされた標的分子、特にタンパク質の構築を可能とする正確な分子クローニングおよび遺伝子操作技術の進歩と同期している。タンパク質は通常は遺伝子操作の結果であり、宿主細胞に導入されたベクターコンストラクトからの発現の結果であることが多い。標的分子は部分的に精製することが出来、完全にインビトロのアッセイ系で用いられることが多い。あるいは、標的分子を発現する宿主細胞がアッセイ系の一部として培養中で用いられることもある。
ハイスループットスクリーニングの出現の前は、薬剤-スクリーニングアッセイは、しばしば、大容量ではなく、基本的生物学的研究に焦点をあてて開発された学術的研究の結果であった。かかるアッセイはしばしば時間と労力がかかり、典型的には放射性核種の使用を伴い、それに関わる実験者の健康に危険を伴うものであった。したがって、最初に合理的に設計された創薬の努力の基礎として用いられるアッセイ系はかかるアッセイの派生物であり、所与の治療用途のために潜在的に有用な化合物の迅速な同定においては律速段階となっていた。
典型的には、アッセイ方法は、いわゆる異種アッセイ方法に基づくものであった。ほとんどのアッセイにおいて、アッセイ結果として、未反応または非結合化合物(例えば、これらに限定されないが、酵素基質または受容体リガンド)と反応または結合成分(例えば、酵素生成物または受容体に結合したリガンド) の混合物が生じる。しばしば、これら成分の1以上が検出可能な標識により標識される。「異種アッセイ」において、この混合物は、反応済み、修飾済み、または結合済みの標識材料が残りの標識から物理的分離によって分離され(そして一般に分離されなくてはならず)、その後に、有用なデータが得られる。例えば、アッセイが結合アッセイである場合、固体支持体、例えば、磁気ビーズへのリガンドに結合される受容体の連結により、ビーズの洗浄、その後の反応を可能とする。洗浄されたビーズに付随している標識を、所望の相互作用または活性の指標として検出することができる。
一方、反応済み、修飾済み、または結合済みの標識材料の検出が分離工程を必要とせずに行うことが出来るアッセイ方法は「同種」アッセイ系と称される。同種核酸検出系の説明は、「同種保護アッセイ」という名称の米国特許第5,639,604号にみることができる。
本特許出願に引用されるこのおよびすべての刊行物は、特に断りのない限り本出願の一部として引用によりその内容を本明細書に含める。
より最近では、特に蛍光部分、例えば、緑色蛍光タンパク質 (GFP) およびその他の色のその誘導体を導入した正確に操作された融合タンパク質の開発に次いで、蛍光の使用がますます一般的に生命科学の研究開発において用いられるようになってきている。フルオロフォアはより小さい有機分子、例えば、蛍光色素またはより大きい分子、例えば蛍光ポリペプチドでありうる。すべての蛍光方法がハイスループットスクリーニングに用いられる訳ではないが、多数の方法が文献に記載されている。例えば、Eggeling et al.、8:632 Drug Discovery Today (2003年7月) には、全蛍光、時間ゲート蛍光、蛍光偏光、蛍光寿命、または時間分解異方性を含む、ハイスループットスクリーニングに用いられる技術が記載されている。
全蛍光は、基質 (または生成物)が基質の酵素による修飾の際に蛍光となる(または蛍光がクエンチされる)ように設計されたアッセイにおいて酵素活性を検出するのにしばしば用いられる。本出願の目的で、「蛍光」という用語は、入射放射線の吸収により物質において刺激される、電磁放射、特に可視光の放出(emittion)をいい、具体的には発光(luminescence)を含む。時間ゲート蛍光は、長い蛍光寿命を有するフルオロフォア(例えば、ランタニドキレート)を用いて短命の蛍光からその蛍光を識別する。これは、ドナーからアクセプター分子へのエネルギーの非放射移動を伴う蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)と組み合わせて用いられてきたことが報告されている。蛍光偏光は、反応物と生成物のモル体積の相違に起因する偏光の変化の検出を伴う技術である。
さらに、例えば、励起のための高出力レーザーおよび共焦点顕微鏡といったデバイスの使用により、今日では放射光の励起および検出が以前にましてより容易に制御しやすくなっている。例えば、単にまたは厳密にハイスループット方法ではないが、GFP および赤色蛍光タンパク質 DsRedをFRETと二色相互相関分析との両方を可能とするように利用するプロテアーゼアッセイ(2つの識別可能なプローブの同時運動を選択的にプローブする超低体積一分子方法)が最近記載されている。この同種アッセイにおいて、プロテアーゼ基質は2つの蛍光標識で標識され、2つの蛍光タンパク質ドメインを含む基質のタンパク分解切断が、二重標識基質が2つの一重標識基質に分離した際に検出される。切断は2つの検出チャネルの結合部のゆらぎ(fluctuation)を破壊するだけでなく、標識間のFRETの終了をもたらす。Kohl et al.、Proc. Nat’l. Acad. Sci. 99: 12161 (September 17、2002)参照。
上記のように、蛍光偏光は、従来から分子の大きさおよび/または形状に関する情報を得るために用いられてきた。蛍光偏光は、蛍光分子が所与の波長の平面偏光により励起されることにより、それがより高いエネルギーのS1 状態と称される励起状態へ遷移する際に起こる現象である。かかる分子は次いでより低いエネルギー (したがってより長い波長) の光を放射するとその非励起基底状態 (S0)に戻る。フルオロフォア (あるいはより正確には、同一フルオロフォア集団)が蛍光発光を介して基底状態に戻るまでに励起状態で費やす平均時間を「蛍光寿命」といい、それぞれの化合物に特有である。分子が液体溶液にある場合、ブラウン運動 (ブラウン回転と称されることもある)が、励起時と蛍光発光(emittion)時の間の蛍光分子の配向を変化させうる。フルオロフォアは励起された場合に決まった配向に沿って振動し、基底状態に戻る際にその配向に沿って光子を放射する決まった配向を有する双極子モーメントを固有に有する。溶液中の場合、この双極子モーメントの配向は分子が回転すると変化する可能性があり、それゆえ分子によって次に放射される光の配向はある程度無作為化される。双極子モーメントの運動は多数の因子に依存する。
かかる因子のいくつかは励起された分子が回転する能力に関連する。溶液の粘度はかかる因子の1つである。蛍光分子が含まれる溶液の粘度が高ければ高いほど、その配向の変化から各分子はより拘束され、放射された蛍光は平面偏光解消励起光の角度に関して偏光しにくくなる。
同様に、実質的に丸い球状の分子は長いフィラメント上の分子が回転するよりもより自由にあらゆる軸のまわりに回転し、嵩高い、大きな分子はより小さく、嵩の低い分子よりもより大きな慣性を有する (したがって回転に対して抵抗性である)。したがってかかる状況において、その他の条件をすべて同じにすると、小さい分子ほど、大きいより嵩高い分子と比べてより蛍光偏光解消を示しやすい。
特定の条件下では、エネルギー移動と称されるさらなる現象が溶液中の蛍光分子について観察される。濃厚な溶液において、蛍光分子の濃度が上昇すると、それら分子の間の例えば、励起された第一の S1 分子 から、類似ではあるが必ずしも第一の配向と完全に並行ではない配向を有する非励起 S0 第二分子へのエネルギー移動の可能性も増す。第一の分子から第二へのより高いエネルギーの状態の移動は、第一の分子をS0 基底状態に戻らせ、第一の分子をより高いエネルギーの状態へと遷移させる。このように放射フルオロフォアの配向は元々励起されているものとわずかな関係しか有さないであろう。例えば、Weber, G., Polarization of the Fluorescence of Solutions, in FLUORESCENCE AND PHOSPHORESCENCE ANALYSIS 217, 229 (Chapter 8 Wiley Interscience 1966)を参照、これは引用により本明細書に含める。したがって蛍光分子の濃度が共鳴エネルギー移動を起こすのに十分に高ければ、(分子が回転する能力が非常に制限されている)非常に高粘度の溶液においてさえも蛍光偏光解消が観察される。前掲参照。
最近、蛍光偏光の進歩により、より多数の研究者が酵素またはその他の生物学的または生化学的活性の指標としてこの現象を使用した研究をするようになった。Simeonov et al.、304 Anal. Biochem. 193 (2002)には、キナーゼ、ホスファターゼ、およびプロテアーゼ活性の検出のためのポリアルギニンを含む溶液における蛍光偏光の使用が記載されている。Scott and Carpenter、316 Anal. Biochem. 82 (2003)には、キナーゼ活性のアッセイにおけるリンペプチドの検出のための亜鉛塩の存在下での蛍光偏光の使用が記載されている。Kristjansdottir and Rudolph、316 Anal. Biochem. 41 (2003)には、 キナーゼのネイティブなタンパク質基質の検出のための蛍光偏光アッセイが記載されている。Sugden et al.、米国特許第6,110,750号には、マイコバクテリウム・ボビスの蛍光偏光による検出方法が記載されている。
蛍光偏光アッセイの利点にはそれらが同種であるということ--- それらが分離工程を必要とせず、基質の固定相への結合も必要としないということも含まれる。さらに、偏光値は必要なサンプルまたは基質を消費せずに繰り返し測定することが出来る。さらに、蛍光偏光は、低ピコモルからマイクロモルレベル、さらにはアトモルレベルの範囲でフルオロフォアの偏光値を測定するのに利用することができる高感度の技術である。偏光はまた、蛍光強度にも依存しない。
具体的には、蛍光偏光 (P)および異方性 (r)は以下のように定義される:
偏光 = P = (I 垂直 I 水平)/(I 垂直 + I 水平)
および、
異方性 = r = (I 垂直 I 水平)/(I 垂直 + 2*I 水平)
ここで、I 垂直 は励起光面に対して平行な発光の強度であり、I 水平は励起光面に対して垂直な発光の強度である。Pおよびrは、光強度の比であるため、無次元である。実験データはミリ偏光単位(mP)で表すことが出来、ここで1 偏光単位 = 1000 mP 単位であり、あるいはミリ異方性単位(mA)でも表すことが出来、ここで 1 異方性単位 = 1000 mA 単位である。
蛍光偏光において部分的には、偏光は蛍光寿命と励起と発光との間にどれほど速くフルオロフォアが回転するかの関係として表現出来る。回転を制御する主要因は、モル体積 (V)、絶対温度 (T)、および粘度 (η)である。 回転相関時間 (θ)および回転緩和時間 (ρo)はPerrinおよびWeberの研究から得られる。具体的には、回転相関時間 (θ)は以下のPerrin 方程式から得られる:
Figure 2009521666
そして以下のように定義される:
回転相関時間
Figure 2009521666
さらに、回転緩和時間 (ρo)は以下のPerrin/Weber 方程式から得られる:
Figure 2009521666
そして以下のように定義される:
回転緩和時間
Figure 2009521666
ここでRは気体定数、τは蛍光寿命、Pは偏光、そしてP0は限界(limiting)偏光である。
上記から、寿命、粘度、および温度が一定に維持されている場合、モル体積 (したがって偏光または異方性)が回転を決定することが理解できる。モル体積が大きいほど、分子の回転は遅くなり、偏光および異方性値は高くなる。さらに、上記方程式から明らかなように、回転緩和時間は回転相関時間よりもちょうど3倍長くなる。
同様にFRET (蛍光共鳴エネルギー移動)は、分子および分子相互作用のアッセイに既に広く用いられてきた現象である。蛍光エネルギー移動には、所与の波長の光エネルギーを吸収する「ドナー」フルオロフォアおよび、励起されたドナー分子の振動から光の放出なく共鳴エネルギーを受け取る「アクセプター」フルオロフォアが必要である。かかるエネルギーはいったん移動すると、ドナー分子はその基底状態に戻り、アクセプター分子は励起され、その後光子を放出し、その基底状態へ戻ることが可能となる。
FRET はドナー分子からアクセプター分子へのエネルギー移動を必要とするので、FRET 現象は距離に依存する; FRETの有効性は分子間分離の六乗の逆数(inverse sixth power)に依存し、それゆえ生物学的高分子の大きさに匹敵する距離にわたって有用である。これは、色素分子が多くとも 約 5 オングストローム、または約 10 オングストロームから約 100 オングストローム、または好ましくは多くとも 約 20 から約 100 オングストローム、または約 50 から約 100 オングストローム または約 50 から約 80 オングストローム離れていなければならないことを意味する。アクセプターの吸収スペクトルがドナーの蛍光発光スペクトルにオーバーラップするような適当なドナー/アクセプターフルオロフォア対の選択も重要である。最後に、ドナーおよびアクセプターの遷移双極子モーメント はほぼ平行でなければならない。例えば、Invitrogen Web siteを参照、probes.invitrogen.com/handbook/にて検索されたい。
生化学研究試薬および研究ツールの多数の供給者が分子および/または細胞の構造(feature)の互いの近接性を検出する方法としてFRETを利用する製品を販売している。例えば、FRETの使用はある種のシグナル伝達、タンパク質輸送、遺伝子発現およびプロテアーゼアッセイにおいてよく確立されている。
FRET およびそれと組み合わせた蛍光タンパク質の使用にも拘わらず、ハイスループットスクリーニング、品質管理および保証アッセイを含む用途におけるさらなる様々な迅速な同種アッセイの、分子の近接性を検出する基本的科学的ツールとしての要求がある。好ましくはかかる方法はリアルタイムでモニターすることができるものである。
2004年9月22日出願の「クロストリジウム毒素活性の判定のための蛍光偏光アッセイ」と題する特許出願 10/948097は、本出願と同じ発明者を含む。この出願は、とりわけ、プロテアーゼ活性、特に、例えば、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)および破傷風菌(Clostridium tetanii)由来の神経毒活性の検出と測定のためのDARETの使用に関する。
本発明は2以上の分子構造(molecular feature)の間の距離の相違を検出および/または測定する新規な方法に関する。共鳴エネルギー移動後の偏光解消(DARET)と呼ばれるこの方法は、標識分析物における1つのフルオロフォアによって吸収される光と第2のフルオロフォアによって放射される光の偏光状態における変化の検出に依存する。
上記のように、蛍光は電磁エネルギーの吸収に続く有限の持続時間の後に原子または分子によって放射される光である。具体的には、放射光は第1の励起電子一重項レベルから基底電子レベルへの励起種の遷移により起こる。
標準的な蛍光に基づく検出において、フルオロフォアはその吸収双極子モーメント(フルオロフォアの分子骨組み上に固定された方向を有する)が照射の電気ベクトルとおよそならんでいる場合にのみ励起光を吸収することが出来る。このプロセスは光選択と称される。蛍光に基づく方法の作動原理は、蛍光強度と呼ばれる、励起後にフルオロフォアから放射された光子の量を単に測定することである。
標準的な蛍光に基づく検出を使用する方法としては例えば、古典的蛍光および蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)が挙げられる。古典的蛍光において、光がフルオロフォアを直接励起し、それが基底状態に戻る際に光を放射する。FRETにおいて、アクセプターフルオロフォアの励起は分子間長距離双極子-双極子カップリングによりドナーフルオロフォアの励起状態エネルギーがアクセプターに移動した際に起こる。FRETにおいて、エネルギー移動効率は、ドナー発光スペクトルとアクセプター吸収スペクトルとのスペクトルのオーバーラップの程度、ならびにドナーとアクセプター分子との距離およびドナーの発光双極子とアクセプターの吸収双極子との相対的配向に依存する。アクセプターフルオロフォアにより放射される光はドナーフルオロフォアにより吸収(または放射)された光より低いエネルギーを有し、したがってドナーのみによって放射される光と比べて異なる波長を有する。
蛍光偏光に基づく検出 (FP)において、励起光は偏光し、即ち、光の電気ベクトルの方向が特定の平面的方向を有する。フルオロフォア集団により放射される光の偏光はその集団からの各フルオロフォアがその励起状態寿命の間に経験する回転の程度に依存する。偏光によって励起されるフルオロフォアのみが、その吸収双極子モーメントがこの偏光とほぼ整列する(aligned)フルオロフォアである。したがって、FPは蛍光強度を検出せず、その代わりに励起と発光の間のフルオロフォア回転の程度を測定する。
一般原理として、分子に占有される体積が大きいほど、あるいは溶媒の粘度が高いほど、励起されたフルオロフォアが光を放射する前の分子の回転は遅くなる。したがって、励起状態寿命に対してフルオロフォアがゆっくり回転している場合、放射光が偏光した励起の方向とほぼ整列する電気ベクトルを有する機会が大きくなり、したがってこの発光の偏光は高くなる。逆に、分子が占有する体積が小さいほど、あるいは溶媒の粘度が低いほど、励起されたフルオロフォアが光を放射する前に分子がより空間中で回転する。この速い回転シナリオにおいて、放射光が偏光した励起の方向とほぼ整列したその電気ベクトルを有する機会が減少し、したがってこの発光の偏光は低くなる。
共鳴エネルギー移動後の偏光解消に基づく検出 (DARET)において、偏光がドナーフルオロフォアを励起し、励起されたドナーフルオロフォアがその励起状態エネルギーを近接しているアクセプターフルオロフォアに移動することができる。しかし、アクセプターフルオロフォアは通常ドナー分子とは異なる配向を有するため、その吸収双極子モーメントは一般にドナー発光双極子と整列しない。かかる状況において、アクセプターフルオロフォアからの発光はドナーフルオロフォアに特有の偏光よりも低い偏光を有する。したがって、アクセプターフルオロフォアから放射される光は偏光した励起光の方向と整列しない電気ベクトルを有する。
しかしドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとが離れていると、状況は異なる。この場合に観察される唯一のアクセプターフルオロフォア発光は偏光により直接励起されたアクセプターフルオロフォアからものである。というのはアクセプターフルオロフォアは共鳴エネルギー移動が起こるためにはドナーフルオロフォアと離れすぎているからである。本願において示す実施例において、アクセプターフルオロフォアはエネルギー移動により起こる蛍光に特有のものより高い偏光を有する。その結果、分離後の偏光が分離前の偏光よりもより大きくなる。
したがって、DARETはドナーおよびアクセプターフルオロフォアから発する非平行配向の双極子モーメントを用いて偏光変化を測定し、FRETのように、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとの発光極大の測定により得られる蛍光強度の比を測定するのではない。したがって、DARETはアクセプターフルオロフォアから放射される偏光における変化を測定する。FRETにおけるようにドナーとアクセプターフルオロフォアとの蛍光強度変化または、FPにおけるように回転緩和変化もまた、この方法においても起こりうるが、DARETは蛍光強度または回転緩和にその検出スキームを依存するものではない。
DARETの使用はいくつかの利点を提供する。1つの利点は測定の絶対的性質はデータを得るために用いられる特定の装置プラットフォームに依存しない。この特徴は蛍光強度に基づく FRET アッセイと対照的であり、FRETでは利用する正確な器具に依存して異なる強度比を有する。DARETはまた、放射種の実際の大きさまたは体積に感受性ではなく、一方通常のFP測定は、例えば、リガンド受容体結合またはプロテアーゼ切断が起こる場合等の分子構造間の距離における変化の前後のフルオロフォアの回転速度の有意な変化に依存する。
したがって、一つの態様において、本発明はサンプルにおける2以上の分子構造の近接性を測定する方法に関し、この方法は、該サンプル中で、第一の吸収スペクトルと第一の発光スペクトルを有するドナーフルオロフォアで標識された第一の分子構造と、第一の発光スペクトルとオーバーラップする第二の吸収スペクトルおよび第二の発光スペクトルを有するアクセプターフルオロフォアで標識された第二の分子構造とを接触させる工程;該第一の吸収スペクトル内の波長にて平面偏光で該サンプルを照射する工程;該第二の発光スペクトル内の波長にてサンプルの蛍光偏光を検出する工程; および、エネルギー移動と偏光の変化を、第一および第二の分子構造の互いの近接性のある時間にわたってまたは対照と比較しての変化と相関づける工程。
任意的な態様において、アクセプターフルオロフォアをアクセプターフルオロフォアの双極子モーメントの自由回転を少なくともある程度拘束するのに有効な嵩高い基と連結する。本発明のこれらの側面において嵩高い基の存在は、2以上の分子構造の近接性の変化の検出を、例えばアッセイの感受性またはダイナミックレンジを上昇させることにより促進しうる。
したがって、別の例示的な、本発明の任意的な態様は、2以上の分子構造が近接しているか否かを判定する方法に関し、該方法は以下の工程を含む:液相中で 第一の吸収スペクトルと第一の発光スペクトルを有するドナーフルオロフォアで標識された第一の分子構造、および第一の発光スペクトルとオーバーラップする第二の吸収スペクトルを有するアクセプターフルオロフォアで標識された第二の分子構造を接触させる工程、ここでドナーフルオロフォアが、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとの間の共鳴エネルギー移動を可能とする条件下で第一の平面において偏光した光で励起されると、共鳴エネルギー移動を可能としない条件下で該アクセプターフルオロフォアにより放射される偏光と比較して該第一の平面に関して偏光解消した光をアクセプターフルオロフォアが放射し、ここである時間にわたってまたは対照と比較してのエネルギー移動の低下および偏光の上昇が第一および第二の構造の間の距離が上昇したことを示し 、ある時間にわたってまたは対照と比較してのエネルギー移動の上昇および偏光の低下が第一および第二の構造の間の距離が低下したことを示す。
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、サンプル中の2以上の分子構造が近接しているか否かを判定する方法に関する: 該サンプル中で、第一の吸収スペクトルと第一の発光スペクトルを有するドナーフルオロフォアで標識された第一の分子構造と、第一の発光スペクトルとオーバーラップする第二の吸収スペクトルおよび第二の発光スペクトルを有するアクセプターフルオロフォアで標識された第二の分子構造とを接触させる工程;該サンプルを該第一の吸収スペクトル内の波長にて平面偏光で照射する工程;該第二の発光スペクトル内の波長にてサンプル蛍光の偏光を検出する工程;および、エネルギー移動および偏光における変化と第一および第二の分子構造の互いの近接性の変化を相関づける工程、該変化は異なる時点での同じサンプルまたは対照からの放射光のエネルギー移動および偏光に対するものである。
本発明のこの態様の改変において該方法は1以上の以下のさらなる要素を含んでいてもよく、ここで要素は互いに矛盾しない:
第一および第二の分子構造が同一分子に含まれる態様。
分子がアミノ酸配列を含む態様。
第一の分子構造が該アミノ酸配列のアミノ末端半分に含まれる態様。
第一の分子構造が該アミノ酸配列のカルボキシル末端半分に含まれる態様。
該ドナーおよびアクセプターフルオロフォアの少なくとも一つが該分子に連結したポリペプチドを含む態様。
ドナーまたはアクセプターフルオロフォアの少なくとも一つが該分子にペプチド結合により連結している態様。
少なくとも一つのフルオロフォアが、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、赤色蛍光、シアン蛍光タンパク質、および黄色蛍光タンパク質からなる群から選択されるポリペプチドを含む態様。
ドナーおよびアクセプターフルオロフォアの一方または両方が該分子に連結したポリペプチドを含む態様。
ドナーおよびアクセプターフルオロフォアの少なくとも一つがAlexa Flour(登録商標) 色素; フルオレセイン; フルオレセイン誘導体; ジアミノトリアジニルアミノ-フルオレセイン (DTAF); フルオレセインの二ヒ素(biarsenic) 誘導体; フルオレセインヒ素(arsenical) ヘアピン結合色素 (FlAsH(商標)); 赤色二ヒ素(biarsenical) 色素 (ReAsH(商標)); カルボキシフルオレセイン (FAM); テキサスレッド(商標); テトラメチルカルボキシローダミン (TMR); カルボキシ-x-ローダミン (ROX); ローダミングリーン; オレゴングリーン 488; BODIPY-TR(登録商標); BODIPY-TMR(登録商標); BODIPY-FL(登録商標); Cy3、Cy3B(商標)およびダンシルからなる群から選択される態様。
ドナーおよびアクセプターフルオロフォアの少なくとも一つが二官能性試薬であってよいリンカーにより分子構造に連結している態様。
連結するリンカーが、チオール、ハロアセチル、N-ヒドロキシスクシンアミド、ビニルスルホン、およびマレイミドからなる群から選択される反応性部分を含む態様。
第一および第二の分子構造の少なくとも一つがポリヌクレオチド領域を含む態様。
少なくとも一つの分子が脂質または炭水化物部分を含む態様。
第一および第二の分子構造が異なる分子または細胞構造に含まれる態様。
該第一または第二の分子構造の少なくとも一つが細胞膜に含まれている態様。
該第一および第二の分子構造の一つが小胞に含まれている態様。
該第一および第二の分子構造の一つが受容体を含む態様。
該第一および第二の分子構造の一つが抗体可変領域を含む態様。
該第一および第二の分子構造の一つが受容体リガンドを含む態様。
該第一および第二の分子構造の一つがポリペプチドを含む態様。
該第一および第二の分子構造の一つが脂質を含む態様。
該脂質がリン脂質を含む態様。
第一および第二の分子構造の少なくとも一つがコレステロールまたはコレステロール誘導体を含む態様。
該脂質がプロスタグランジンまたはプロスタグランジン誘導体を含む態様。
該第一または第二の分子構造の少なくとも一つがポリヌクレオチド領域を含む態様。
該第一および第二の分子構造の両方がポリヌクレオチド領域を含む態様。
ドナーまたはアクセプターフルオロフォアの少なくとも一つが少なくとも第一または第二の分子構造にペプチド結合により連結している態様。
相関づける工程が、ある時間にわたってまたは対照と比較しての偏光の上昇と第一および第二の分子構造の間の互いの距離の低下とを相関づけること、およびある時間にわたってまたは対照と比較しての偏光の低下と第一および第二の構造の間の互いの距離の上昇とを相関づけることを含む態様。
相関づける工程が、ある時間にわたってまたは対照と比較しての偏光の低下と第一および第二の分子構造の間の互いの距離の低下を相関づけること、およびある時間にわたってまたは対照と比較しての偏光の上昇と第一および第二の構造の間の互いの距離の上昇を相関づけることを含む態様。
本発明のいくつかの態様において、アッセイの結果は第一および第二の分子構造の間の距離が上昇すると起こる偏光の低下でありうる; 本発明の別の態様において、アッセイの結果は、第一および第二の分子構造の間の距離が上昇すると起こる偏光の上昇でありうる。したがって、本発明の方法は、より広い態様において、アクセプターフルオロフォアとドナーフルオロフォアとの間の距離が上昇した場合にアクセプターフルオロフォアにより放射される光の偏光の変化を提供し;ドナーおよびアクセプターフルオロフォアは互いに離れた分子構造に連結している。
「分子構造」とは、1以上の別の分子または細胞領域との近接性が本発明の方法において確認されるべき分子または細胞領域を意味する。異なる分子構造が同じ分子の一部であり得、例えば、これらに限定されないが、タンパク質のアミノおよびカルボキシル末端、タンパク質内の2つの内部部位、ポリヌクレオチド分子の5’および3’-末端またはポリヌクレオチド分子の2つの内部部位が挙げられる。あるいは、異なる分子構造は異なる分子の一部であることもある;この側面の例としては、抗体/抗原対、DNA 結合タンパク質およびプロモーター、リプレッサーまたはエンハンサー領域などのポリヌクレオチド結合領域、脂質/膜タンパク質対またはリガンド/受容体対が挙げられる。さらに、分子構造は細胞のオルガネラであってもよく、例えば、細胞膜が挙げられ、ここで標識は分子構造にインターカレートしているかあるいはその他の様式で分子構造と結合しているが、いずれかの分子と共有結合している必要はない。かかる使用において、もう一つの標識した分子構造 (例えば、膜-標的化タンパク質に含まれる分子構造)の細胞膜との結合は、本出願に記載の条件下で、結合していないタンパク質上の標識分子構造と比較してDARETおよび偏光の変化をもたらすであろう。
請求の範囲において用いる「接触させる」という用語は、分子構造が(標識の間の共鳴エネルギー移動を可能とするのに有効な程度で) 元々、ある時間にわたって、あるいは対照と比較してのそれらの相互作用を可能とする条件下で、一緒になることを意味する。したがって、分子内の近接性を測定しようとする標識分子構造の接触は同じ分子の2以上の異なる分子構造を単に標識することであり得る。あるいは、例えば、分子間の近接性を確認すべき2つの分子構造の接触は、異なる分子または細胞位置に含まれる分子構造を、それらの分子の近接性がある時間にわたってあるいは対照と比較して異なるような条件下で混合して一緒にすることであり得る。
「流体相」という用語は、気相または液体相を含み得、流体相中で分子構造を接触させるには分子構造の1つが流体相にあることのみが必要である。したがって、該接触は構造(feature)がともに気相にあること、ともに液体相にあること、あるいは1つの分子構造が気相および液体相からなる群から選択される相にあり、他方の分子構造が気相、液体相および固相からなる群から選択される別の相にあることを意味しうる。
例えば、同じ分子の異なる分子構造を上記のようなあるいは当業者に知られたDARET パートナーとして作用しうる異なるフルオロフォアで、それら構造が共鳴エネルギー移動が蛍光標識の間で起こるように互いに十分に近接することを可能とするように標識することができる。その後の分子の消化、切断または破壊の結果、これら分子構造間の共鳴エネルギー移動の休止が起こりうる。一例として、タンパク質を2つの蛍光標識で標識することができ、1つをタンパク質のアミノ末端にてまたはその近くで、他方をカルボキシル末端にてまたはその近くで標識するとよい。2つの分子構造の間のペプチド結合でのタンパク分解により、標識の解離が起こり、これら標識の間の共鳴エネルギー移動が終了するであろう。
分子構造の接触の別の例において、核酸を、コードされるタンパク質の発現を可能とする条件下で細胞に導入してもよい。タンパク質は、例えば、緑色蛍光タンパク質 (GFP) コード配列がアミノまたはカルボキシル末端に導入されている融合タンパク質であってよい。宿主細胞の細胞膜に親油性蛍光色素を載せる場合、発現したタンパク質の膜への移動がDARETの変化によって検出することが出来る。さらに、タンパク質と細胞膜の会合の結果によっても、膜-結合蛍光により放射される光の、前記のエネルギー移動偏光解消による偏光変化が起こりうる。
さらに別の例において、抗原に含まれる分子構造を蛍光アクセプターで標識してもよい。GFP ドナー部分が分子構造に存在する一本鎖合成抗体を設計し、発現させ、精製する。抗原と抗体との結合により標識の間のFRETが可能となり、抗原と GFP/抗体 融合タンパク質との結合が、結果として起こる不完全に整列したドナーとアクセプターとの間のエネルギー移動に起因する蛍光偏光の相違をもたらす。
本発明を限定するわけではなく、いかなる理論にも拘束されないが、本出願人は蛍光偏光における一定の変化が部分的にはそれが吸収極大またはその近くの光により励起される時間とそれ(または第一の分子からの共鳴エネルギー移動の結果励起される別の蛍光分子)がより長波長の光を放射するいくらか後の時間の間の分子の配向の相違(実際は、フルオロフォアの双極子モーメントの配向の相違)の指標であることを信じている。したがって、フルオロフォアが、例えば、結晶形態に閉じこめられていると、非常にわずかな双極子モーメントの運動しか可能でなく、放射光は大幅に偏光したままであろう。同様に、粘稠溶液において、フルオロフォアは運動能力がいくらか制限され、結晶形態にある場合よりは運動能力は高いとしても、放射光は大幅に偏光したままであろう。低粘度の水溶液中の蛍光分子の双極子モーメントは 実質的に他の2例のいずれよりも大きな回転能力を有し、結果として生じる放射光はしたがってより偏光解消しているであろう。
単に例示としてのみ、本出願人は、蛍光偏光の変化が誘導されうるもう一つの方法は、互いに近接している蛍光分子の間に非放射共鳴エネルギー移動がある場合であると信じている。非常に高濃度または他の好適な条件下で、エネルギー移動は、ランダムに配向した分子の集団に対してぶつかる平面偏光が励起光とおよそ同一に配向した(または逆に配向した) 平面に双極子モーメントを有する分子により吸収され、およびかかる分子を励起する場合にのみ起こりうる。これら励起された分子は共鳴エネルギー移動を介してわずかに異なるよう配向した双極子モーメントを有する別の分子に励起状態を移動しうる。励起された分子が光を放射する場合、その結果生じる蛍光は元の平面偏光の配向とはまったく関係のない配向を有しうる。したがって励起光の偏光が、励起された分子からその光とは正確には同じ平面に配向していない基底状態分子への共鳴エネルギー移動により低下して観察され、その結果偏光のより少ない発光が生じる。
本発明の利点は、従来のFPは励起と発光の間の分子の回転に起因するフルオロフォアの双極子モーメントの配向の変化に依存するという事実である。一方、類似であるが異なる配向の分子間の非放射エネルギー移動に起因する本発明のDARET 方法は、第一および第二の分子構造の間のバルクまたはモル体積の相違を必要としない(がそれを伴うこともあり得る)。
上記のように、本発明の特定の態様において、近接している場合と近接していない場合との標識分子構造の間に体積の相違があることが重要であり得る。本発明のそれほど好ましくない態様において、ドナーフルオロフォアに連結した分子構造は、アクセプターフルオロフォアに近接していない場合はアクセプターフルオロフォアに近接しているときよりもそのみかけの体積より有意に低い体積を有する。
本発明の特定の態様、例えば、比較的小さいポリペプチド基質を用いるプロテアーゼアッセイにおいて、本アッセイはフルオロフォアの1つに連結または結合している分子構造に結合している嵩高い基の使用により利益を被る;かかる場合、他方のフルオロフォアに連結または結合している分子構造が嵩高い基に結合していないことがより有用であるが、必須ではない。蛍光タンパク質のファミリー、例えば、緑色蛍光タンパク質 (GFP) はかかる嵩高い基を構成し得る。というのはかかるポリペプチドは大きく安定なバレル様の三次構造をそのなかの修飾アミノ酸から構成されるフルオロフォアの保護のためにとるからである。例えば、Fang et al.、Nature Biotechnology 14:1246-1251 (1996)を参照されたい。
特定の態様において、以下による、プロテアーゼの存在または活性を測定する方法がさらに提供される:(a)プロテアーゼ活性に好適な条件下で、 (i)ドナーフルオロフォア; (ii)ドナーフルオロフォアの 発光スペクトルとオーバーラップする吸収スペクトルを有するアクセプター; および (iii)切断部位を含むプロテアーゼ 認識配列、を含むプロテアーゼ基質をサンプルで処理する工程、ここで切断部位はドナーフルオロフォアとアクセプターとの間に介在し、適当な条件下で、共鳴エネルギー移動がドナーフルオロフォアとアクセプターとの間に示される; (b)ドナーフルオロフォアを平面偏光で励起する工程;および(c) 対照基質と比較しての処理された基質の蛍光偏光を測定する工程、ここで、対照基質の蛍光偏光と比較しての処理された基質の蛍光偏光の変化 (上昇または低下) は、プロテアーゼの存在または活性を示す。
図面の簡単な説明
図 1は、キュベットに基づくアッセイ形式におけるBoNT/A 複合体 (900 kDa)とGFP-SNAP25-2xBFP 基質とのDARET アッセイを示す。最終反応条件は、 200 pM BoNT/A 複合体および10 μM 基質であった。陰性対照には毒素を有さない基質を含めた。
図 2は、 キュベットに基づくアッセイ形式における精製BoNT/A (150 kDa) と GFP-SNAP25-2xBFP 基質とのDARET アッセイを示す。
図 3 は、キュベットに基づく形式におけるGFP-SNAP25-2xBFP 基質を用いるrLC/AのDARET アッセイを示す。
図 4 は、 DARET アッセイとGFP-SNAP25-2xBFP 基質を用いるBoNT/E 活性のキュベットに基づくアッセイを示す。
図 5 は、BoNT/A 複合体 (900 kDa) とGFP-SNAP25-1xBFP 基質とのプレートに基づく DARET アッセイを示す。
図6、7、および8は、それぞれGFP-SNAP25-1xBFP 基質を用いる類似のプレートに基づくアッセイ形式における純粋なBoNT/A、BoNT/E および rLC/EのDARET アッセイを示す。
図 9は、トリプシン添加によるGFP-SNAP25-1xBFPの切断の際のDARETの結果を示す。
詳細な説明
本発明は、同じ分子または異なる分子の上に位置する2以上の分子構造の近接性をモニターする方法を提供する。したがって、非限定的な例として、本発明の方法は特に蛍光偏光分析に有用な基質を用いるプロテアーゼアッセイに用いることが出来、かかる基質としては、例えば、少なくとも一つのドナーおよび一つのアクセプターフルオロフォアをそれぞれ分子構造に連結して有しているものであり、互いに別の分子構造からプロテアーゼ切断部位によって離れているものが挙げられる。共鳴エネルギー移動と蛍光偏光分析の組合せの結果、非常に高感度の検出方法が得られ、この方法は従来の FRETに基づくアッセイと比べてサンプル中の蛍光バックグラウンドによる干渉からの影響を受けにくい。さらに、本発明の新規な方法は同種溶液相アッセイとして行うことが出来、自動化ハイスループット形式およびリアルタイム分析に適用しやすく、サンプルが消費される必要がない。
これら方法はまた、その他の近接性分析、例えば、これらに限定されないが、受容体-リガンド結合研究、細胞内輸送研究、タンパク質とその他の分子の共局在化、膜局在化研究、キナーゼ自己リン酸化アッセイなどにも好適である。例えば、D. Mochinsky et al.、J. Biomol. Screening、Vol. 8、 447-452 (2003)を参照されたい。実際、FRETが現在使用される実質的にあらゆるアッセイ用途に本明細書に記載するDARET アッセイを使用することができる。したがって、本発明のDARET アッセイ方法を、例えば、これらに限定されないが以下の調査に用いることが出来る:
1) タンパク質の構造および立体構造 (例えば、Jonsson、T. et al.、Biochemistry 35:4795-4802 (1996) を参照されたい); 例えばWells, et al., Method For Identifying Active Domains And Amino Acid Residues In Polypeptides And Hormone Variants, US6428954; Craig, et al., Methods and Compositions Using Protein Binding Partners, US9672198を参照されたい;
2) タンパク質の空間的分布およびアセンブリー(例えば、Watson、B.S. et al.、Biochemistry 34:7904-7912 (1995) を参照されたい);
3)受容体/リガンド相互作用(例えば、Berger, W. et al., Biochemistry 33: 1875-11883 (1994); Nakayama et al., Fluorescence Polarization Method, US6432632; Lustig et al., Nuclear Hormone Receptor Drug Screens, US7101681; Huggins, et al., Specific Binding Assay Techniques, US4211762; Sippel et al., Method For The Cellular High-Throughput-Detection Of Receptor Ligand Interactions, US7029905を参照されたい);
4)イムノアッセイ(例えば、Khanna、P.L. et al.、 Anal. Biochem. 108:156-161 (1980); Magnusson et al., Immunoassay Of Proteins, US4455381; Newman et al., Immunoassay Of Thymosin α1, US4427783; Hammerling et al., Process For Sex Determination In Man By Use Of Monoclonal Antibodies To The H-Y Antigen, US4680258; Forrest et al., Immunoassay Of Antigens, US4659678; Gay, Vitro Diagnostic Methods Using Monoclonal Antibodies Against Connective Tissue Proteins, US4628027; Ota et al., Amyloid-β Protein Aggregation-Regulating Factors, US7029860を参照されたい);
5) 核酸の構造および立体構造 (例えば、Clegg、R.M. et al.、Biophys. J. 66:99-109 (1994); Weiss et al., Semiconductor Nanocrystal Probes For Biological Applications And Process For Making And Using Such Probes US6207392を参照されたい);
6)リアルタイム PCR アッセイおよびSNP 検出 (例えば、Lee, L.G., Biotechniques 27:342-349 (1999); Myakishev, M.V., Genome Res. 11:163-169. 2001; Cockerill et al., Detection of Legionella, US6830888; Parkhurst et al., Method For Detecting Point Mutations In DNA Utilizing Fluorescence Energy Transfer; US6248518を参照されたい;
7)核酸ハイブリダイゼーション(例えば、Parkhurst, K.M. et al., Biochemistry 34:285-292 (1995)); Clark et al, Diagnostics and Therapeutics for Glaucoma, US7033755; Stefano et al., Methods, Kits And Compositions For Detecting And Quantitating Target Sequences US6287772; Gellibolian et al., Methods And Compositions For High Throughput Identification Of Protein/Nucleic Acid Binding Pairs US6713262; Smith et al., Detection Of Herpes Simplex Virus US6958210; Cockerill et al., Detection Of Vancomycin-Resistant Enterococcus spp. US7074598を参照されたい);
8) 脂質の分布および輸送 (例えば、Nichols, J.W. et al., J. Biol. Chem. 258:5368-5371 (1983)); Normant et al, Methods And Compositions For Screening Modulators Of Lipid Kinases, US6723525; Hammock et al., Linoleic Acid Diol And Glucuronide Conjugate Levels As Diagnostic Markers Of Disorders Of Abnormal Regulation Of Cytochrome P450 Metabolism Of Unsaturated Fatty Acids, US6756210; Kreiger et al., Methods For Modulation Of Lipid Uptake, US5925333; Drees et al., Assaying Apparatus, Kit, And Method For Lipids And Associated Enzymes, US7067269; Lusk et al., Monoclonal Antibodies For Assaying Lipid Transfer Proteins, US6423546を参照されたい);
9)膜融合アッセイ (例えば、Uster P.S., Methods Enzymol. 221:239-246 (1993) を参照されたい);
10)膜電位センシング (例えば、Hoffman, R.et al., Bio-Tek Application Not)e. http:www.biotek.com/products/tech_res_detail.php?id=135; Gonzalez, J.E. et al., Biophys. J. 69:1272-1280 (1995)); Farinas et al., Use Of Nernstein Voltage Sensitive Dyes In Measuring Transmembrane Voltage; US6979553; Tsien et al., Detection Of Transmembrane Potentials By Optical Methods, US6107066; Negulescu et al., Photon Reducing Agents For Reducing Undesired Light Emission In Assays US6214563; Tsien et al., Detection Of Transmembrane Potentials By Optical Methods, US6596522; Tsien et al., Detection Of Transmembrane Potentials By Optical Methods, US6342379を参照されたい);
11)プロテアーゼアッセイ (例えば、Matayoshi E.D., et al., Science 247, 954-958 (1990); Shone et al., Toxin Assay US6337386; Auld, Methods for Measuring Kinase Activity US6942987; Darrow et al., Methods for Identifying Modulators of Serine Protease EOS, US6806059; Shine et al., Substrate Peptides And Assays For Detecting And Measuring Proteolytic Activity Of Serotype A Neurotoxin From Clostridium Botulinum, US6504006; Darrow et al., DNA encoding the human serine protease T, US6458564; Darrow et al., Zymogen Activation System US6420157を参照されたい);および、
12) サイクリックAMPについての指標 (例えば、Adams S.R. et al., Optical Probes for Cyclic AMP, Fluorescent and Luminescent Probes for Biological Activity, pp. 133-149 (Mason W.T., Ed. (1993) Tomlinson, Cloning And Characterization Of A Human Adenylyl Cyclase, US7115570; Reymond, Use Of The Regulatory Subunit Of The Camp Dependent Protein Kinase (Pka) From Dictyostelium For Camp Measurements US6573059; Garman, Fluorescence Energy Transfer Substrates; US6291201を参照されたい)。
上記引用刊行物および特許は本明細書の一部として引用により本明細書にそれぞれ含める。
本発明の特に有用な側面において、本発明の方法は、すべての血清型のボツリヌス毒素および破傷風毒素を含むクロストリジウム毒素の存在または活性の判定に有用であり得る。本発明のかかる側面は、DARET 分析に有用なクロストリジウム毒素基質に依存し、動物毒性研究の必要性を低減し、クロストリジウム神経毒の粗およびバルクサンプルならびに 高度に精製された二本鎖または一本鎖毒素、毒素複合体、製剤化された毒素生成物または毒素誘導体、例えば米国特許第6,843,998号に開示のものの分析に利用できる。
本発明のDARET 方法において、方法は、部分的にはドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアまたはその両方を含む分子構造を伴う。本明細書において用いる場合、「フルオロフォア」という用語は、特定の波長の光を照射されると、異なる波長の光を放射する分子を意味する。フルオロフォアという用語は、当該技術分野において「蛍光色素」という用語と同義である。「ドナーフルオロフォア」は、特定の波長の光を照射されるとエネルギーをアクセプターに非放射共鳴エネルギー移動を介して移動する分子である。本明細書において用いる場合、「アクセプターフルオロフォア」という用語はドナーフルオロフォアが励起されるとドナーフルオロフォアからエネルギーを吸収できる分子を意味する。
あらゆるすべてのフルオロフォアが、DARETのためのドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアとして作用しうると考えられ、例えば、これらに限定されないが、蛍光タンパク質、フルオロフォア結合タンパク質および蛍光色素が挙げられる。当業者であれば、DARETに好適なこれらおよびその他のフルオロフォアが当該技術分野において知られており、本発明の方法に利用できることを理解している。
本明細書に開示されるドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアは部分的には蛍光タンパク質であり得る。本明細書において用いる場合、「蛍光タンパク質」という用語は、特定の波長の光エネルギーを吸収し、異なる波長の光エネルギーを放射するペプチドを意味し、様々なスペクトルにて放射するものが含まれ、例えば、紫色、青色、シアン、緑色、黄色、橙色および赤色光が挙げられる。表1を参照されたい。様々な種のいずれに由来する蛍光タンパク質も本発明の側面に有用であると考えられ、これらに限定されないが、例えば、オワンクラゲ蛍光タンパク質、アネモニア(Anemonia)蛍光タンパク質、花虫綱蛍光タンパク質、ディスコソマ(Discosoma)蛍光タンパク質、エンタクメア(Entacmeae)蛍光タンパク質、ヘテラクティス(Heteractis)蛍光タンパク質、モンタストレア(Montastrea)蛍光タンパク質、ウミシイタケ蛍光タンパク質、ゾアンツス(Zoanthus)蛍光タンパク質およびその他の生物由来の蛍光タンパク質が挙げられる。本発明に有用な蛍光タンパク質には、これらに限定されないが、野生型蛍光タンパク質、天然変異体、および例えばランダム変異誘発によって作られたか合理的に設計された遺伝子改変変異体および生物由来の活性ペプチド断片が含まれる。本発明の側面において有用な蛍光タンパク質には、例えば、優れた能力を有するよう遺伝子改変されたものも含まれ、例えば、これらに限定されないが、励起または発光波長を改変されたもの;明度、pH 抵抗性、安定性または蛍光タンパク質形成速度を改善されたもの; 光活性化したもの; あるいはオリゴマー化または光退色を低減されたものが挙げられ、例えば、Brendan P. Cormack et al., FACS-optimized Mutants of the Green Fluorescent Protein (GFP)、米国特許第5,804,387号(Sep. 8、1998); Roger Y. Tsien & Roger Heim, Modified Green Fluorescent Proteins, 米国特許第6,800,733号 (Oct. 5, 2004); Roger Y. Tsien et al., Long Wavelength Engineered Fluorescent Proteins,米国特許第6,780,975号 (Aug. 24、2004);および Roger Y. Tsien et al., Fluorescent Protein Sensors For Measuring the pH of a Biological Sample、米国特許第6,627,449号 (Sep. 30、2003) を参照されたい。蛍光タンパク質は、野生型コドンをクロストリジウム毒素基質を発現するよう作用する細胞においてより有効に利用されるその他のコドンに変換することによってタンパク質発現を改善するよう操作することができることが理解され、例えば、Brian Seed and Jurgen Haas, High Level Expression of Proteins、米国特許第5,795,737号 (Aug. 18、1998) を参照されたい。蛍光タンパク質を、標準的な分子生物学技術を用いてポリペプチドを含む分子構造と作動可能に連結させて融合タンパク質を作ることも出来る。さらに、蛍光タンパク質は、ポリペプチドを含む分子構造のアミノまたは カルボキシル末端に周知の化学的方法を用いて特異的に連結されることも出来、例えば、Chemical Approaches to Protein Engineering, Protein Engineering: A Practical Approach (Eds. Rees et al., Oxford University Press, 1992) を参照されたい。
表 1. 例示的な蛍光タンパク質の励起および発光極大
Figure 2009521666
蛍光タンパク質の様々な活性タンパク質断片のいずれも活性断片が本発明の側面の正しい配向に好適な範囲にて光エネルギーを放射する能力を保持している限り、本発明の側面に有用であり得るということも考えられる、例えば、青色放射蛍光タンパク質については420-460 nm、シアン放射蛍光タンパク質については460-500 nm、緑色放射蛍光タンパク質については500-520 nm、黄色放射蛍光タンパク質については520-550 nm、赤色放射蛍光タンパク質については550-740 nmである。したがって、この態様の側面は、本発明の側面の正しい配向に好適な範囲にて光エネルギーを放射する能力を保持し、例えば、少なくとも 50 アミノ酸、少なくとも 60 アミノ酸、少なくとも 70 アミノ酸、少なくとも 80 アミノ酸、少なくとも 90 アミノ酸、少なくとも 100 アミノ酸、少なくとも 125 アミノ酸、少なくとも 150 アミノ酸、少なくとも 175 アミノ酸 および 少なくとも 200 アミノ酸の長さを有する蛍光タンパク質の活性断片も含みうる。この態様の別の側面には、本発明の側面の正しい配向に好適な範囲にて光エネルギーを放射する能力を保持し、例えば多くとも 50 アミノ酸、多くとも 60 アミノ酸、多くとも 70 アミノ酸、多くとも 80 アミノ酸、多くとも 90 アミノ酸、多くとも 100 アミノ酸、多くとも 125 アミノ酸、多くとも 150 アミノ酸、多くとも 175 アミノ酸 および多くとも 200 アミノ酸の長さの蛍光タンパク質の活性断片も含まれうる。
したがってある態様において、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアは蛍光タンパク質である。この態様の側面において、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアは、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質または紫外蛍光タンパク質である。この態様の別の側面において、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとは共に、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質または紫外蛍光タンパク質であり得る。
本明細書に開示されるドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアは、部分的には、後でフルオロフォアと結合されるフルオロフォア結合タンパク質であり得る。フルオロフォア結合タンパク質は、選択的化学または生化学反応においてフルオロフォアと共有結合または強い非共有結合相互作用を確立する。かかるフルオロフォア結合タンパク質および対応するフルオロフォアの非限定的な例としては、二ヒ素(bisarsenical) テトラシステイン系、例えば、B. Albert Griffin et al., Specific covalent labeling of recombinant protein molecules inside live cells, 281(5374) Science 269-272 (1998);およびB. Albert Griffin et al., Fluorescent labeling of recombinant proteins in living cells with FlAsH, 327 Methods Enzymol. 565-578 (2000) を参照されたい; アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼ(AGT)系、例えば、Antje Keppler et al, A General Method for the Covalent Labeling of Fusion proteins with Small Molecules in vivo, 21(1) Nat. Biotech 86-89 (2003); Antje Keppler et al, Labeling of fusion proteins of O6-alkylguanine-DNA alkyltransferase with small molecules in vivo and in vitro, 32(4) Methods 437-444 (2004); および Antje Keppler et al, Labeling of Fusion Proteins with Synthetic Fluorophores in Live Cells, 101(27) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 9955-9959 (2004)を参照されたい;およびデハロゲナーゼ系が挙げられる。さらに、フルオロフォア結合タンパク質および対応するフルオロフォアならびによく特徴づけられた試薬、条件およびプロトコールの非限定的な例は、市販供給メーカーから容易に入手でき、これらに限定されないが、TC-FlAsH(商標) TC-ReAsH(商標) In-Cell テトラシステインタグ検出キット(Invitrogen Corp.、Carlsbad、CA); SNAP-タグ(商標) 多目的 タンパク質 タグ系 (Covalys Biosciences AG、Switzerland);および HaloTag(商標) Interchangeable Labeling Technology (Promega Corp.、Madison WI) が挙げられる(表2参照)。これらのプロトコールは当業者の能力の範囲内の常套手順であり本明細書の教示の範囲内である。フルオロフォア結合タンパク質は標準的な分子生物学技術を用いてポリペプチドを含む分子構造と作動可能に連結させて融合タンパク質を作ることが出来る。さらに、フルオロフォア結合タンパク質は、周知の化学方法を用いてポリペプチドを含む分子構造のアミノまたは カルボキシル末端に特異的に連結させることも出来、例えば、Chemical Approaches to Protein Engineering, in PROTEIN ENGINEERING: A PRACTICAL APPROACH (Eds. Rees et al., Oxford University Press, 1992)を参照されたい。
表 2.フルオロフォア結合タンパク質についての例示的なフルオロフォアの励起および発光極大
Figure 2009521666
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したがってある態様において、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアは、フルオロフォアと強く相互作用するフルオロフォア結合タンパク質である。別の態様において、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアは、フルオロフォアと強く相互作用するテトラシステインペプチドである。この態様の側面において、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアは、フルオレセインの非蛍光 二ヒ素(biarsenical) 誘導体またはレソルフィンの非蛍光 二ヒ素(biarsenical) 誘導体と強く相互作用するテトラシステインペプチドである。別の態様において、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアは、フルオロフォアと強く相互作用するAGT ポリペプチドである。この態様の側面において、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォア は、ジエチルアミノクマリン、ジアセチルフルオレセイン、ジオミック(dyomic) DY-505-05、ATTO 488、ATTO 532、DY-547、テトラメチルローダミン、ATTO 600、ジオミック(dyomic) DY-632、ジオミック(dyomic) DY-647、ジオミック(dyomic) DY-732または ジオミック(dyomic) DY-747を含むパラ-置換ベンジルグアニン誘導体と強く相互作用するAGTである。別の態様において、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアは、フルオロフォアと強く相互作用するデハロゲナーゼポリペプチドである。この態様の側面において、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアは、クマリン 誘導体、例えば、 HaloTag クマリン、フルオレセイン誘導体、例えば、HaloTag diAcFAMまたはテトラメチルローダミン 誘導体、例えば、 HaloTag TMRと強く相互作用するデハロゲナーゼである。
別の態様において、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアの両方がフルオロフォアと強く相互作用するフルオロフォア結合タンパク質であり得る。別の態様において、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアの両方がフルオロフォアと強く相互作用するテトラシステインペプチドであり得る。この態様の側面において、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアの両方が、フルオレセインの非蛍光二ヒ素(biarsenical) 誘導体またはレソルフィンの非蛍光 二ヒ素(biarsenical) 誘導体と強く相互作用するテトラシステインペプチドでありうる。別の態様において、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアの両方がフルオロフォアと強く相互作用するAGT ポリペプチドであり得る。この態様の側面において、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアの両方が、ジエチルアミノクマリン、ジアセチルフルオレセイン、ジオミック(dyomic) DY-505-05、ATTO 488、ATTO 532、DY-547、テトラメチルローダミン、ATTO 600、ジオミック(dyomic) DY-632、ジオミック(dyomic) DY-647、ジオミック(dyomic) DY-732 またはジオミック(dyomic) DY-747を含むパラ-置換ベンジルグアニン誘導体と強く相互作用するAGTであり得る。別の態様において、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアの両方がフルオロフォアと強く相互作用するデハロゲナーゼポリペプチドであり得る。この態様の側面において、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアの両方が、クマリン誘導体、例えば HaloTag クマリン、フルオレセイン誘導体、例えば HaloTag diAcFAM またはテトラメチル ローダミン誘導体、例えば HaloTag TMRと強く相互作用するデハロゲナーゼであり得る。
本明細書に開示されるドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアは、部分的には、蛍光色素であり得る。本明細書において用いる場合、「蛍光色素」という用語は、例えば紫色、青色、シアン、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤橙色、赤色、近赤外、赤外を含む特定の波長の光エネルギーを吸収し、様々なスペクトル、例えば紫色、青色、シアン、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤橙色、赤色、近赤外、赤外にて異なる波長の光エネルギーを放射する分子を意味する。非限定的な例として表3 を参照されたい。蛍光色素の非限定的な例としては例えば以下に由来する色素が挙げられる:クマリン、シアニン、フルオレセイン、イソシアネート、イソチオシアネート、インドカルボシアニン、インドジカルボシアニン、ピリジルオキサゾール、フィコエリトリン、フィコシアニン、o-フタルデヒドおよびローダミン。別の非限定的な例として、蛍光色素は、青色蛍光色素、例えば、7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸 (AMCA)、カスケードブルー、Alexa Flour(登録商標) 350およびAlexa Flour(登録商標) 405であり得る。さらに別の非限定的な例として、蛍光色素は、緑色蛍光色素、例えば、フルオレセイン、フルオレサミン、カルボキシフルオレセイン (FAM)、フルオレセイン イソチオシアネート (FITC)、Cy2、BODIPY FL、BODIPY 493/503、BODIPY 499/508、Alexa Flour(登録商標) 488、オレゴングリーン(登録商標) 488およびAlexa Flour(登録商標) 500であり得る。さらに別の非限定的な例として、蛍光色素は黄緑色蛍光色素、例えば、ローダミン 6G、BODIPY R6G、Alexa Flour(登録商標) 430 および Alexa Flour(登録商標) 514であり得る。さらなる非限定的な例として、蛍光色素は黄色蛍光色素、例えば、Lucifer Yellow、BODIPY 507/545、BODIPY 530/550、Alexa Flour(登録商標) 532であり得る。さらに別の非限定的な例として、蛍光色素は、橙色蛍光色素、例えば、テトラメチル ローダミン (TAMRA)、テトラメチル ローダミン-5-イソチオシアネート (5-TRITC)、テトラメチル ローダミン-6-イソチオシアネート (6-TRITC)、Cy3、BODIPY TMR、BODIPY 581/591、Alexa Flour(登録商標) 546であり得る。さらに別の非限定的な例として、蛍光色素は赤橙色蛍光色素、例えば、リサミン ローダミン B、Alexa Flour(登録商標) 555およびAlexa Flour(登録商標) 568であり得る。別の非限定的な例として、蛍光色素は赤色蛍光色素、例えば、テキサスレッド、BODIPY TR、BODIPY 577/618、Alexa Flour(登録商標) 594 および Alexa Flour(登録商標) 610であり得る。 更に別の非限定的な例として、蛍光色素は遠赤外蛍光色素、例えば、Cy5、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、Alexa Flour(登録商標) 633、Alexa Flour(登録商標) 635 および Alexa Flour(登録商標) 647;ならびに 近赤外蛍光色素、例えば、アロフィコシアニン (APC)、Cy5.5、Cy7、Alexa Flour(登録商標) 660、Alexa Flour(登録商標) 680、Alexa Flour(登録商標) 700 およびAlexa Flour(登録商標) 750であり得る。
本明細書に開示される蛍光色素は当該技術分野において知られている標準的な結合化学方法を用いて分子構造に結合させることが出来、例えば、Richard P. Haugland, A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, (Michelle T. Z. Spence ed., Invitrogen Corp., 10th ed., 2005) を参照されたい。様々な反応基が、本明細書に開示される分子構造の所望の位置にドナーフルオロフォアまたはアクセプターフルオロフォアを結合させるのに用いることが出来る。本明細書に開示される分子構造を標識する1つの方法はリジン残基に存在する遊離アミン基およびポリペプチドのアミノ末端に蛍光色素を結合させることである。本明細書に開示される分子構造の別の標識方法は、ヌクレオチドに存在する遊離反応基およびポリヌクレオチドの5’-末端に蛍光色素を結合させることである。アミン反応性色素はたいていはアミンとの反応によりカルボキサミド、スルホンアミドまたはチオウレアを形成するアシル化剤である。アミン反応性蛍光色素に通常存在する反応基としては、これらに限定されないが、サクシニミジルエステル基、スルホサクシニミジル エステル基、テトラフルオロフェニル エステル基、カルボニルアジド基、イソシアネート基、塩化スルホニル 基 またはアルデヒド含有 基、例えば、o-フタルジアルデヒド (OPA)、ナフタレンジカルボキシアルデヒド (NDA)および3-アシルキノリンカルボキシアルデヒド (ATTO-タグ)が含まれる。本明細書に開示される分子構造の別の標識方法は蛍光色素をポリペプチドのシステイン残基に存在する遊離チオール基 (メルカプタンまたはスルフヒドリルとも称される)に結合させることである。チオール反応性蛍光色素に通常存在する反応基としては、これらに限定されないが、マレイミド 基、ヨードアセトアミド 基、フェニル水銀 基、チオスルファート 基または臭化メチル基が挙げられる。本明細書に開示される分子構造の別の標識方法は、遊離カルボン酸基に蛍光色素を結合させることである。カルボン酸反応性蛍光色素に通常存在する反応基としては、これらに限定されないが、ヒドラジド 基、ヒドロキシルアミン基、カダベリン 基またはアミン 基が挙げられる。蛍光色素は、クロスリンカー部分、例えば、これらに限定されないが、ホモおよびヘテロ 二官能性 クロスリンカー、例えば、BMH およびSPDPを用いて結合させてもよい。
表 3.例示的な蛍光色素の励起および発光極大
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したがって、ある態様において、ドナーフルオロフォアは、紫色蛍光色素、青色蛍光色素、シアン蛍光色素、緑色蛍光色素、黄緑色蛍光色素、黄色蛍光色素、橙色蛍光色素、赤橙色蛍光色素、赤色蛍光色素、近赤外蛍光色素または赤外蛍光色素である。別の態様において、アクセプターフルオロフォアは、紫色蛍光色素、青色蛍光色素、シアン蛍光色素、緑色蛍光色素、黄緑色蛍光色素、黄色蛍光色素、橙色蛍光色素、赤橙色蛍光色素、赤色蛍光色素、近赤外蛍光色素または赤外蛍光色素である。別の態様において、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアの両方が、紫色蛍光色素、青色蛍光色素、シアン蛍光色素、緑色蛍光色素、黄緑色蛍光色素、黄色蛍光色素、橙色蛍光色素、赤橙色蛍光色素、赤色蛍光色素、近赤外蛍光色素または赤外蛍光色素であり得る。
本発明に有用なフルオロフォアは、蛍光偏光分析に好適な蛍光寿命を有するものを含む。好ましくは、ドナーフルオロフォアは長い蛍光寿命を有し、好ましくは、アクセプターフルオロフォアは短い蛍光寿命を有する。本発明の側面において、フルオロフォアは、これらに限定されないが、少なくとも 0.1 ナノ秒、または少なくとも 0.5 ナノ秒、または少なくとも 5 ナノ秒、または少なくとも 10 ナノ秒、または100 ナノ秒未満または約 0.1〜約 100 ナノ秒の蛍光寿命を有しうる。いくつかのフルオロフォア、特に、特定の金属キレート、およびピレンなどは1-2ミリ秒の長さの蛍光寿命を有しうる。例えば、引用により本明細書に含めるJoseph R. Lakowicz, PRINCIPLES OF FLUORESCENCE SPECTROSCOPY, (2d ed. Kluwer Academic/Plenum Publishers, New York 1999) を参照されたい。
本発明の多くの側面において、ドナーとアクセプター (またはそれぞれに結合する分子構造)の間のモル体積が相違することは必須ではない。しかしある状況では、嵩高い基は DARETを用いた2以上の分子構造の近接性の変化の検出を増強しうる。
本明細書において用いる場合、「嵩高い基」という用語は、嵩高い基が組み込まれているドナー結合分子構造からアクセプター結合分子構造が解離した際に、少なくとも 3 ミリ偏光単位(mP)の偏光変化をもたらすのに十分な水力学的体積を有する部分を意味する。様々な 嵩高い基が本発明の方法の特定の側面に有用であり得、これらに限定されないが、蛍光タンパク質、 例えば、緑色蛍光タンパク質が挙げられる。
一つの態様において、本発明の方法は、分子構造が結合状態から非結合状態へと移行する際に生じる分子量変化が少なくとも 約 1000 Da または少なくとも 約 1500 Da または少なくとも 約 1700 Daとなるように実施される。さらなる態様において、本発明の方法は、蛍光偏光の変化が少なくとも 5 ミリ偏光単位 (mP)となるように実施される。さらなる態様において、本発明の方法は、蛍光偏光の変化が少なくとも 15 mPとなるように実施される。
蛍光タンパク質である嵩高い基、例えば GFPの使用がしばしば便利であるが、嵩高い基はフルオロフォアである必要はない。実際、嵩高い基を用いる本発明の側面において、様々な部分のいずれも本発明の方法において嵩高い基として有用であり得、例えば共有結合または非共有結合により、ドナー結合分子構造に組込み、または連結されうる物理的、化学的および生物学的部分が含まれる。本発明の方法を例えばプロテアーゼ 切断アッセイとして用いる場合 (そして嵩高い基が用いられる場合)、嵩高い基はプロテアーゼ 基質の他の成分との融合タンパク質として発現させてもよい。
本発明のかかる側面に有用な嵩高い基には天然および人工の部分が含まれ、これらに限定されないが、不活性部分ならびに生物学的またはその他の活性を有する部分が挙げられる。本発明に有用な嵩高い基としてはこれらに限定されないが、不活性または活性タンパク質、ペプチドまたはペプチド模倣体; 抗体; 有機化合物; ラテックスまたはその他のビーズ;あるいは例えばストレプトアビジン等の部分が挙げられる。本発明に有用なさらなる嵩高い基には、これらに限定されないが、ファージおよびその他のウイルス; 細胞; リポソーム; 細胞膜、ポリマーおよび非ポリマーマトリックス;金およびその他の粒子; およびマイクロデバイスおよびナノデバイスが挙げられる。非限定的な例として、本発明に有用な嵩高い基は、蛍光タンパク質、例えば GFPまたはBFP、またはその断片;アフィニティー精製に有用なタンパク質、例えば グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)またはマルトース-結合タンパク質 (MBP);または抗体、例えば、これらに限定されないが、抗ポリヒスチジン、抗-FLAG、抗-赤血球凝集素 (HA)または抗-myc 抗体であり得る。 ストレプトアビジンも本発明に有用な嵩高い基であり得る。
本発明に有用な分子構造は1以上の追加の成分を含んでいてもよいことが理解される。非限定的な例として、柔軟なスペーサー配列、例えば GGGGS (配列番号1)および EAAAK (配列番号2)を本発明に有用なプロテアーゼまたはその他のペプチド基質に含めることが出来る。有用なペプチド基質はさらに、これらに限定されないが、以下の1以上を含んでいてもよい:アフィニティータグ、例えば、ポリヒスチジン; ビオチンまたはビオチン化配列;またはエピトープ、例えば FLAG、赤血球凝集素 (HA)、c-myc、またはAU1;イムノグロブリンヒンジ領域; N-ヒドロキシスクシンイミドリンカー; ペプチドまたはペプチド模倣体ヘアピンターン; または 親水性配列または、例えば、クロストリジウム毒素基質の精製を容易にするまたは溶解度や安定性を高める別の成分または配列。
DARET アッセイに好適な条件は、一般に少なくとも一つのフルオロフォア-結合分子構造が流体相にある温度で行わなければならない。したがって、流体の特性に依存して、かかる温度は0℃未満であり得るが、一般に水相においてかかる温度は0℃を超え、例えば約 4℃から約 45℃である。 より一般的には、温度は約 20℃から約 45℃の範囲であり得、例えば、25℃から40℃、または35℃から 39℃の範囲である。アッセイ体積はしばしば約 5 から約 200 μlの範囲、例えば、約 10 μl〜100 μl または約 0.5 μl〜 100 μlの範囲であるが、ナノリットル反応体積も本発明の方法に用いることが出来る。アッセイ体積はまた、例えば、100 μl〜 2.0 ml の範囲または 0.5 ml〜1.0 mlの範囲であり得る。
アッセイ時間は当業者によって適宜変更でき、一般に部分的には、分子構造の濃度、純度および活性に依存する。アッセイ時間は一般に、これらに限定されないが、ほぼ瞬間 〜約 5 時間の範囲で変動する。非限定的な例として、例示的なアッセイ時間は、例えば、37℃で1 秒、37℃で 5 秒、37℃で 30 秒、37℃ で 1 分、37℃で 5 分、37℃ で15 分、37℃で30 分、45 分、60 分、75 分または90 分のインキュベーションを含む。特定の態様において、例えばプロテアーゼアッセイを伴う場合、分子構造は少なくとも 5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95% または100% 解離する。例えば、プロテアーゼ活性は基質が少なくとも 5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または 100% 切断されると検出されうる。例えば、GFPをドナーフルオロフォアとして含む基質に基づくプロテアーゼ反応は、例えば、終濃度1〜2 Mまでの塩化グアニジウムの添加によって終止させることが出来る。プロテアーゼ反応は、H2SO4の添加;約 0.5〜1.0 ホウ酸ナトリウム、pH 9.0〜9.5の添加;亜鉛キレート剤の添加または有効濃度の界面活性剤、例えば尿素または塩化グアニジウムの添加によっても終止させることが出来る。当業者であれば、プロテアーゼおよびその他の酵素反応はフルオロフォアまたはドナーフルオロフォアの平面偏光による励起の前に、所望により終結させることができることを理解している。
上記のように、本発明の方法は自動化でき、例えばこれらに限定されないが、96-ウェル、384 ウェル または1536-ウェルプレートを用いるハイスループットまたは超ハイスループット形式に配置することが出来るということが理解される。適切な偏光子を備えた様々な分光蛍光光度計のいずれもある時間にわたる蛍光偏光変化のアッセイに利用でき、これらに限定されないが、Cary Eclipse 分光蛍光光度計; SpectraMax M5 マイクロプレートリーダー およびその他のシステム、例えば、Perkin-Elmerからのものが挙げられる。
本発明の方法において、蛍光偏光の変化は、蛍光偏光の上昇または低下であり得る。一つの態様において、ドナーフルオロフォアは少なくとも 0.5 ナノ秒の蛍光寿命を有する。別の態様において、ドナーフルオロフォアは 少なくとも 5 ナノ秒の蛍光寿命を有する。蛍光寿命は約 10 ピコ秒、または約 100 ピコ秒、または約 200 ピコ秒 から約 10 マイクロ秒、または約 25 マイクロ秒、または約 50 マイクロ秒、または約 100 マイクロ秒またはミリ秒の範囲であり得る。BFP およびGFPは約 4 ナノ秒の蛍光寿命を有する。偏光を放射する蛍光金属キレート、例えば ルテニウムは、マイクロからミリ秒の蛍光寿命を有し得る。
本発明の DARET 方法において、クロストリジウム毒素基質に有用なアクセプターフルオロフォアは基質に含まれるドナーフルオロフォアの発光スペクトルとオーバーラップする吸収スペクトルを有する。本発明に有用なアクセプターは 一般に、ドナーフルオロフォアの励起に好適な波長にて比較的低い吸収を有する。
上記のように、アクセプターはドナーフルオロフォアの発光スペクトルとオーバーラップする吸収スペクトルを有する 。アクセプターの吸収スペクトルとドナーフルオロフォアの発光スペクトルに関して本明細書において用いる場合「オーバーラップする」という用語は、部分的または完全に共有される吸収スペクトルと発光スペクトルを意味する。したがって、かかるオーバーラップするスペクトルにおいて、ドナーフルオロフォアの発光スペクトルの範囲の高い側の端はアクセプターの吸収スペクトルの範囲の低い側の端よりも高い(即ちより長い波長を有する)。したがって、あるフルオロフォアがドナーであるかアクセプターであるかは 対となる相手方のフルオロフォアのスペクトル特性に依存する。
上記のように、様々なドナーフルオロフォアおよびアクセプターフルオロフォアのいずれも本発明に有用であり得、これらに限定されないが、蛍光タンパク質、例えば、BFP、CFP、GFP、YFP および RFP;フルオロフォアと強く相互作用するフルオロフォア結合タンパク質、例えば、テトラシステイン、AGT ポリペプチドまたはデハロゲナーゼ;および蛍光色素、例えば、紫色蛍光色素、青色蛍光色素、シアン蛍光色素、緑色蛍光色素、黄緑色蛍光色素、黄色蛍光色素、橙色蛍光色素、赤橙色蛍光色素、赤色蛍光色素、近赤外蛍光色素または赤外蛍光色素が挙げられる。
DARET を示し本発明の方法に有用な例示的な ドナーフルオロフォア-アクセプター 対としては、これらに限定されないが、GFPと BFP、GFPとAlexa Flour(登録商標) 546; フルオレセインとテトラメチルローダミン; ダンシル と オクタデシルローダミン (表 4)が挙げられる。その他の公知の DARET 対にはこれらに限定されないが、以下が含まれる。
表 4. 例示的な DARET ドナーフルオロフォア-アクセプターフルオロフォア対
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当業者であれば、列挙されたドナーフルオロフォアおよびその他のDARETに好適なドナーフルオロフォアが、ドナーフルオロフォアの発光スペクトルとオーバーラップする吸収スペクトルを有する様々な アクセプターと対形成できることを理解している。
上記のように、特定の場合においては、本発明による1以上の分子構造を作成するのに組換え方法を用いてもよい。さらに、ドナー および/または アクセプターフルオロフォアは蛍光タンパク質または蛍光結合タンパク質を含み得、ペプチド結合により分子構造に連結しうる。あるいは、システインまたはその他の反応性部分を組み込んでフルオロフォアのタンパク質組換え分子構造への結合に利用してもよい。別の態様において、フルオロフォアはタンパク質に例えば二官能性試薬またはリンカーを用いて結合させてもよい。
タンパク質、ペプチドまたはペプチド模倣体を、フルオロフォアおよび/または嵩高い基、またはドナーフルオロフォアおよびアクセプターを含むように改変する化学方法は当該技術分野において周知である(Fairclough and Cantor、Methods Enzymol. 48:347 379 (1978); Glaser et al.、Chemical Modification of Proteins Elsevier Biochemical Press、Amsterdam (1975); Haugland、Excited States of Biopolymers (Steiner.Ed.) pp. 29 58、Plenum Press、New York (1983); Means and Feeney、Bioconjugate Chem. 1:2 12 (1990); Matthews et al.、Methods Enzymol. 208:468 496 (1991); Lundblad、Chemical Reagents for Protein Modification 2nd Ed.、CRC Press、Boca Ratan、Florida (1991); Haugland、前掲、1996)。嵩高い基 (用いる場合)、ドナーフルオロフォアおよび/またはアクセプターフルオロフォアを、例えば、ペプチドまたはペプチド模倣体に結合させるのに、様々な基を利用することが出来る。チオール基を、例えば、フルオロフォア、嵩高い基、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターをペプチドまたはペプチド模倣体の所望の部分に結合させて本発明の標識分子構造を産生するのに用いることが出来る。ハロアセチルおよびマレイミド標識試薬も、フルオロフォア、嵩高い基、ドナーフルオロフォアおよび/またはアクセプターを本発明に有用な分子構造の調製において結合させるのに利用することが出来る。例えば、Wu and Brand、前掲、1994を参照されたい。
クロスリンカー部分も、フルオロフォア-標識分子構造の調製において有用であり得る。クロスリンカーは当該技術分野において周知であり、ホモおよびヘテロ-二機能性クロスリンカー、例えば、 BMHおよびSPDPが挙げられる。フルオロフォア、嵩高い基、ドナーフルオロフォアおよび/またはアクセプターがタンパク質である場合、タンパク質のアミノまたはカルボキシ末端に特異的に分子を結合させる周知の化学方法を利用できる。例えば、”Chemical Approaches to Protein Engineering” in Protein Engineering: A Practical Approach Rees et al. (Eds) Oxford University Press、1992を参照されたい。
プロテアーゼアッセイを本発明によるDARETのために設計する場合、プロテアーゼ 基質はドナーフルオロフォアおよびアクセプター、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとの間に位置するプロテアーゼ切断部位を含む。一つの態様において、ドナーフルオロフォアは切断部位のアミノ末端に位置させ、アクセプターは切断部位のカルボキシ-末端に位置させる。別の態様において、ドナーフルオロフォアは切断部位のカルボキシ-末端に位置させ、アクセプターを切断部位のアミノ末端に位置させる。
当業者であれば、本発明に有用な嵩高い基 (用いる場合)、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターフルオロフォアの選択および位置決定におけるいくつかの考慮因子があることを理解している。ドナーフルオロフォアおよびアクセプターフルオロフォアは、一般に分子構造の間の結合または相互作用の干渉を最小化するように位置される。したがって、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターは、例えば、結合に重要な結合および非結合相互作用の破壊を最小化させ、立体障害を最小化するように選択および位置づけるとよい。さらに、以下にさらに記載するように、アクセプターとドナーフルオロフォアとの空間的距離は一般にドナーフルオロフォアから アクセプターへの有効なエネルギー移動を達成するように制限され、そしてかかる距離は約 5オングストローム〜約 100オングストローム、好ましくは約 10オングストローム〜約 50オングストローム、または約 10 オングストローム〜約 30オングストローム、または約 30オングストローム〜約 100オングストローム、または約 70オングストローム〜約 100 オングストロームの範囲でなければならない。
上記のように、ドナーフルオロフォアからアクセプターへのエネルギー移動効率は、部分的には、ドナーフルオロフォアおよびアクセプター分子の空間的分離に依存する。ドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間の距離が増加すると(および/または双極子配向が変化すると)、アクセプターへのエネルギー移動が少なくなり、それゆえドナー蛍光シグナルが上昇する。ドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間の総エネルギー移動は多くの因子に依存し、例えば、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間の分離距離、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間のスペクトルオーバーラップ、およびドナーとアクセプターの相対的双極子配向が挙げられる。当業者であれば分子構造濃度が上昇すれば、ドナーの分子間クエンチングが、因子となりうるということを理解している。この現象は「内側フィルター効果(inner filter effect)」と称される。当業者であればさらに、基質濃度をこれを最小化するように制御できることを理解している。
50%非放射エネルギー移動のためのドナーフルオロフォアとアクセプターとの間の分離であるフェルスター距離は、良好な感度を提供するドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間の空間的分離を表す。ペプチド基質については、隣接残基はもっとも伸長した立体構造においておよそ 3.6オングストロームの距離離れている。例えば、フルオレセイン/テトラメチルローダミン対の計算フェルスター距離は55オングストロームであり、これはもっとも伸長した立体構造においてフルオレセインとテトラメチルローダミンとの間の空間的分離が 約 15 アミノ酸残基であることを表す。溶液中のペプチドおよびペプチド模倣体は完全に伸長した立体構造をとることは珍しく、実質的に柔軟性を有しうるため、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターは、残基当たり3.6 オングストロームの距離を利用して行われる計算に基づいて予測されるより広い間の距離をとっていてもよく、フェルスター距離内に維持される。これは、例えば、約 50 アミノ酸離れたドナーアクセプター対の間でFRET が起こることにより示される(Graham et al.、Analyt. Biochem. 296: 208 217 (2001))。
フェルスター理論はドナーフルオロフォアとアクセプターとの間の非常に弱い相互作用に基づく; 分光的特性、例えば、1つのフルオロフォアの吸収は別のフルオロフォアの存在により変化してはならず、理論が有効である最短の距離範囲を規定する。多くのドナーフルオロフォア-アクセプター対について、ドナーフルオロフォアとアクセプターとが約 10オングストローム から100オングストローム離れている場合にフェルスター 理論は有効であるといういことが理解される。しかし、特定のドナーフルオロフォア-アクセプター対については、フェルスター 理論はピコ秒未満の技術によって判定して10オングストロームを下回る場合(例えば、5オングストローム以下)に有効である(Kaschke and Ernsting、Ultrafast Phenomenon in Spectroscopy (Klose and Wilhelmi (Eds.)) Springer Verlag、Berlin 1990)。
R0、フェルスター 半径についてのフェルスター式は: R0 = [8.8 x 1023 κ2 n4 QYD J(λ)]1/6 オングストロームであり、ここでκ2は双極子配向因子 (0〜4の範囲;ランダムに配向した ドナーおよびアクセプターについては2/3); QYD はアクセプターの非存在下でのドナーの蛍光量子収率; n は屈折率、J(λ) はスペクトルのオーバーラップの積分∫ εA(λ)FD(λ) λ4dλcm3 M-1、ここでεAはアクセプターの吸光係数;およびFD は全積分強度の関数として表したドナーの蛍光係数強度である。
特定の態様において、本発明は、ドナーフルオロフォアがアクセプターから多くとも約100オングストロームの距離離れている分子構造の近接性を測定する方法を提供する。別の態様において、本発明は、ドナーフルオロフォアがアクセプターから多くとも 90オングストローム、80オングストローム、70オングストローム、60オングストローム、50オングストローム、40オングストローム、30オングストローム、20オングストローム、10オングストロームまたは5オングストロームの距離離れている分子構造の近接性を測定する方法を提供する。さらなる態様において、本発明は、ドナーフルオロフォアがアクセプターから5オングストローム〜 100オングストローム、10オングストローム〜 80オングストローム、10オングストローム〜 60オングストローム、10オングストローム〜 40オングストローム、10オングストローム〜 20オングストローム、20オングストローム〜 100オングストローム、20オングストローム〜 80オングストローム、20オングストローム〜 60オングストローム、20オングストローム〜 40オングストローム、40オングストローム〜 100オングストローム、40オングストローム〜 80オングストロームまたは40オングストローム〜 60オングストロームの距離離れている分子構造の近接性を測定する方法を提供する。 さらなる態様において、本発明は、ドナーフルオロフォアとアクセプターが、多くとも6アミノ酸残基、多くとも8残基、多くとも10残基、多くとも12 残基、多くとも15残基、多くとも20残基、多くとも 25残基、多くとも30残基、多くとも35残基、多くとも40残基、多くとも45残基、多くとも50残基、多くとも60残基、多くとも70残基、多くとも80残基、多くとも90残基、多くとも 100 残基、多くとも 150 残基、多くとも 200 残基離れているタンパク質またはタンパク質の領域間の分子構造の近接性を測定する方法を提供する。分子構造は広く離れたアミノ酸残基に結合しうるにもかかわらず、立体構造フォールディングによって近接しうることが理解される。
単一分子内での分子構造の近接性を、例えばプロテアーゼアッセイにおいて測定しようとする場合、またはタンパク質の立体構造変化を検出する場合、当業者であれば、本発明に有用なペプチド基質は、所望の場合、DARETの有効性を最適化するように設計すればよいということを理解している。フェルスター 距離を最大化するために、ドナーフルオロフォアは、所望の場合、量子収率が高いものを選択するとよく、アクセプター は、所望の場合、吸光係数が高いものを選択するとよいということを当業者であれば理解している。当業者であればさらに、アクセプターの直接に励起に起因する蛍光は共鳴エネルギー移動に起因する蛍光と識別することが困難でありうるということを理解している。したがって、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターは、アクセプターの最小の直接的励起をもたらすような波長でドナーが励起されるように励起スペクトルの オーバーラップを比較的小さくするように選択すればよいと認識される。本発明に有用な分子構造および ドナーおよびアクセプターフルオロフォアを含む基質は、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターの発光スペクトルのオーバーラップが比較的小さくなり、2つの発光が容易に識別できるようにするよう設計すればよいことがさらに認識される。
基質、例えば、プロテアーゼ切断部位、リン酸化部位 (またはその両方)、またはその近接性を測定すべき2以上の分子構造を含む基質は、天然分子と比較して1または複数の修飾を有していてもよい。一例として、かかる分子は1または2の蛍光タンパク質部分を含む融合タンパク質であり得る。さらに、かかる分子はフルオロフォアに直接またはリンカーを介して結合を形成することが出来る1以上のアミノ酸残基を含むよう作るとよい。一つの態様において、かかる残基はシステイン残基である。
本明細書において用いる場合、「ペプチド模倣体」という用語は、それが構造的に基づくペプチド基質についてのモデルとして作用することが出来るペプチド様分子を広く意味するのに用いられる。かかるペプチド模倣体は、化学修飾されたペプチド、非天然アミノ酸を含むペプチド様分子、およびN-置換グリシンのオリゴマーアセンブリーに起因するペプチド-様分子であるペプトイドを含む(例えば、Goodman and Ro、Peptidomimetics for Drug Design、"Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery" Vol. 1 (ed. M.E. Wolff; John Wiley & Sons 1995)、pages 803 861を参照)。
様々なペプチド模倣体が当該技術分野において知られており、例えば、束縛されたアミノ酸、ペプチド二次構造を模倣する非ペプチド成分またはアミド結合アイソスターを含むペプチド様分子が挙げられる。束縛された、非天然アミノ酸を含むペプチド模倣体としては、例えば、以下を含みうる:α-メチル化アミノ酸; α,α-ジアルキル-グリシンまたはα-アミノシクロアルカンカルボン酸; Nα-Cα 環化(cylized)アミノ酸; Nα-メチル化アミノ酸;β-またはγ-アミノシクロアルカンカルボン酸;α,β-不飽和アミノ酸;β,β-ジメチルまたはβ-メチルアミノ酸; β-置換-2,3-メタノアミノ酸; NCδまたはCα Cδ 環化アミノ酸;または置換プロリンまたはその他のアミノ酸模倣体。さらに、ペプチド二次構造を模倣するペプチド模倣体には、例えば、以下が含まれうる: 非ペプチド性 β ターン模倣体; γ-ターン模倣体;β-シート構造の模倣体;またはヘリックス構造の模倣体、これらはいずれも当該技術分野において周知である。ペプチド模倣体は、例えば、以下のようなアミド結合アイソスターを含むペプチド様分子であってもよい:例えば、 レトロ逆(retro-inverso)修飾; 還元型アミド結合; メチレンチオエーテルまたはメチレンスルホキシド結合; メチレンエーテル結合; エチレン結合; チオアミド結合; トランス-オレフィンまたはフルオロオレフィン結合; 1,5-ジ置換テトラゾール環; ケトメチレンまたはフルオロケトメチレン結合またはその他のアミドアイソスター。当業者であれば、これらおよびその他のペプチド模倣体が、本明細書において用いる「ペプチド模倣体」という用語の意味に含まれるということを理解している。「ポリペプチド」という用語には特に断りの無い限りペプチド模倣体が含まれる。
実施例 1. BoNT-A DARET アッセイ GFP/Alexa Flour 546-標識基質
本発明の一つの側面の一例として、その近接性を測定すべき分子構造は以下から構成される: ボツリヌス菌 A型 神経毒 (BONT-A)によるSNARE タンパク質 SNAP-25の認識および切断部位 (残基134-206に含まれる)を含み、これら2つの分子構造の間に位置する鋳型の、a)アミノ末端部分および b) カルボキシル末端部分。
ベクター pQBI GFP-SNAP25(134-206)はGFP-SNAP-25 融合タンパク質をコードする核酸領域を含む。このベクターは以下のように二段階で構築した:第一に、ベクター pQBI T7-GFPをPCRで改変してGFP-コード配列の3’末端の終止コドンを除き、GFP とSNAP-25 断片とを分離するペプチドリンカー部分に対するコード配列を挿入した。第二に、SNAP-25 (134-206)をコードするDNA 断片をpQE50/BirASNAP(128-206)から PCR増幅した。PCR プライマーは5’にてSNAP-25(134-206) 遺伝子に、遺伝子の3’にて6xHis アフィニティータグに融合したペプチドリンカーの残りについてのコード配列を組み込むように設計した。その結果得られた PCR 産物を改変 pQBI ベクターにクローニングして 所望の pQBI GFP-SNAP25(134-206) プラスミドを得た。
このベクターを改変して新規に組み込んだシステイン残基を異なる位置に有する2つの誘導体ベクターを作成し、第2のフルオロフォア、Alexa Flour(登録商標) 546、をBONT-A 切断部位のカルボキシル末端側に配置できるようにした。第一のかかるコンストラクトにおいて、システインを融合タンパク質の最後のC-末端残基に配置し、第二のコンストラクトにおいて、システインを SNAP-25 配列とHIS6タグとの間に配置した。これらのコンストラクトを pQBI GFP-SNAP25(Cys-Stop)および pQBI GFP-SNAP25 (Cys-6His)と命名した。
ベクター pQBI GFP-SNAP25(134-206)を2つの別々の ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し、上記のコンストラクトをプライマーCys-StopおよびCys-6His そしてその相補的配列を「逆ストランド」プライマーとして用いて作成した。
プライマー Cys-Stop (配列番号3): 5’-GTTATTGCTCAGCTTtagCAGTGATGGTGATGGTG -3’
プライマー Cys-6His (配列番号4): 5’- GATGGTGATGGTGATGACAGCCGCCACCGCCACC-3’
6つの50 μL PCR 反応をプライマーの各対について組み立てた。それぞれの反応は以下の PCR バッファーを含んでいた:5 μL 10x Pfu バッファー (Stratagene)、1 μL dNTP (各12.5 mM; Promega)、1 μL Pfu Turbo DNA ポリメラーゼ (Stratagene; ホットスタート添加)、鋳型 DNA (20、30、または40 ng pQBI GFP-SNAP25(134-206)、および終濃度0.2 μMの適切な対の各プライマー 。反応混合物をヌクレアーゼ非含有水により最終体積 50 μLとし、サンプルを以下のサーマルサイクラー条件にしたがってインキュベートした:
工程 1 95℃2 分
工程 2 95℃1 分
工程 3 50 または 55℃30 秒
工程 4 72℃12 分
工程 5 72℃7 分
工程 6 10℃保持
工程 2-4を25 回繰り返した後、工程5および6に進めた。サーマルサイクリングの後、1 μL Dpn I 制限酵素 (Stratagene)を各反応に添加し、1時間 15 分37℃でインキュベートして鋳型 DNAを消化した。反応を QIAquick kit (Qiagen)で精製し、アガロースゲル電気泳動で分析した。2つの反応以外のすべてで全長プラスミドが生じた。候補プラスミドの配列決定により所望の変化を含む各タイプの1つのプラスミドが同定され、これら2つのサンプルを選択して次に用いた。
第一のプラスミドはGFP/SNAP-25 融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むオープンリーディングフレームを含んでおり、該タンパク質には最後のC-末端残基にシステインを組み込んだ。このアミノ酸および対応するヌクレオチド配列を以下にそれぞれ配列番号5 および 配列番号6の配列として示す。
Figure 2009521666
第二のプラスミドはGFP/SNAP-25 融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むオープンリーディングフレームを含んでおり、該タンパク質には、システインを HIS6タグとSNAP-25 領域との間に組み込んだ。このアミノ酸および対応するヌクレオチド配列を配列番号7および配列番号8の配列としてそれぞれ以下に示す。
Figure 2009521666
プラスミドpQBI GFP-SNAP25(Cys-Stop)およびpQBI GFP-SNAP25(Cys-6His) をT7 RNA ポリメラーゼ遺伝子を含む大腸菌 BL21-CodonPlus(登録商標)(DE3)-RIL 細胞(Stratagene、Inc.)に形質転換した。形質転換細胞をアンピシリン (100 μg/ml) を含むL培地プレートに播き、一晩37℃でインキュベートした。シングルコロニーを用いて2-mL L培地 + アンピシリン (LB + amp) 培養に接種し、これら培養液それぞれから1 mlを用いて各タイプの500 mL LB + amp培養に接種した。
これら大量培養液を37℃で振盪しながらA595 が0.5-0.6 吸光度単位に達するまで培養し、その時点でインキュベーターから取り出し、放冷した。lac リプレッサーの誘導制御下でのタンパク質発現をイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド (IPTG)の終濃度1 mMでの添加により誘導し、培養液を一晩16℃で振盪しながらインキュベートした。各培養液の250 mL アリコットからの細胞を遠心分離 (6,000 x g、15 分、4℃)により回収し、タンパク質をすぐに精製しない場合は-80℃で保存した。融合タンパク質を以下のように精製した。
すべての精製工程は4℃で行った。各 250 mL 培養液からの細胞ペレットを10 mL 融合タンパク質 カラム結合バッファー (25 mM HEPES、pH 8.0; 500 mM NaCl; 1 mM β-メルカプトエタノール; 10 mM イミダゾール)に再懸濁し、それには100 μL (10 μL/mL) プロテアーゼ 阻害剤カクテルセット III (Calbiochem)を添加しておいた。細胞を超音波処理 (38% 振幅にて10-秒パルスにおいて1 分 40 秒)により溶解し、遠心分離 (16,000 rpm、4℃、45 分)により清澄にした。 アフィニティー樹脂 (8 mL Talon(登録商標) SuperFlow Co2+、B-D Biosciences) を20 mL カラム支持体(Bio-Rad)中で8 カラム体積の ddH2Oと 8 カラム体積の 融合タンパク質カラム結合バッファーですすぐことにより平衡化した。清澄にした溶解液を樹脂に添加し、 1 〜 1.5 時間穏やかに回転させながら水平インキュベーションによりバッチ結合させた。バッチ結合の後、カラムを垂直にし、溶液を流し、回収し、樹脂ベッドに再び流した。カラムを8 カラム体積の融合タンパク質カラム洗浄バッファー (25 mM HEPES、pH8.0; 500 mM NaCl; 1 mM β-メルカプトエタノール; 20 mM イミダゾール)で洗浄し、タンパク質を15 mL 融合タンパク質カラム溶出バッファー (25 mM HEPES、pH 8.0; 500 mM NaCl; 1 mM β-メルカプトエタノール; 500 mM イミダゾール)で溶出し、それを~1.4 mLのフラクションにて回収した。緑色フラクションを各タンパク質について併せ、総体積が5 mL未満となるようにApollo 20-mL 濃縮機 (QMWL 25 kDa、Orbital Biosciences)で濃縮した。タンパク質をFPLC (BioRad Biologic DuoLogic、QuadTec UV-Vis 検出器) で、HiPrep 26/10 サイズ排除カラム (Pharmacia) および冷却融合タンパク質脱塩 バッファー(50 mM HEPES、pH 7.2、4℃) の均一溶媒移動相を用いて流速10 mL/分で脱塩した。脱塩したタンパク質を1つのフラクションとして回収し、濃度をBioRad タンパク質アッセイで測定した。タンパク質溶液を 500 μL アリコットに分け、液体N2で瞬間凍結し-80℃で保存した。一度解凍したら、用いるアリコットは遮光して4℃で保存する。
Alexa Flour(商標) 546をGFPとともにDARETを示すことが出来る補完的 フルオロフォアとして選択した。Alexa Flour(商標) 546 C5 マレイミドは例えばシステイン残基の遊離スルフヒドリル基と結合するよう設計されたリンカーを含むAlexa Flour 546 の誘導体である。Alexa Flour(商標) 546 C5 マレイミドの構造を以下に示す:
Figure 2009521666
すべての試薬、バッファーおよび反応は4℃に維持した。4μlの Alexa 546 C5 マレイミド (MW 1,034.37; Molecular Probes) 10 mM 水溶液を、200 μLのGFP-SNAP25(Cys-Stop) (25 mM HEPES バッファー中135 μM、pH 7.2)および200 μL 溶液のGFP-SNAP25(Cys-6His) (25 mM HEPES バッファー中135 μM、pH 7.2)に添加し、よく混合し、4℃で一晩インキュベートした。反応をBiomax Ultrafree 遠心フィルター(30 KDa NMWL、Millipore)に移し、濃縮し、さらに2回25 mM HEPES、pH 7.2から濃縮して、ほとんどの過剰の未反応の Alexa Flour 546を除いた。残りの未反応の Alexa 546を除くために、濃縮溶液をSpin Microdialyzers (Harvard Apparatus) に移し、それぞれ500 mL 20 mM HEPES、pH 6.9に対して1時間、3 x 250 mLのそのバッファーに対して~1.5 時間それぞれ透析した。小さいアリコットを蛍光測定のために取り出し、反応のバランスを液体N2中で瞬間凍結し、-80℃で保存した。
DARET 測定は Cary Eclipse 分光光度計 (Varian)にて行った。Alexa 546 結合体の励起はGFP 成分の励起極大である474 nmで行った。発光を Alexa 546 蛍光極大である570 nmにて測定した。すべての場合において、二重経路長キュベット (2 mmずつ10 mm) を用い、発光を2 mm 経路を介してみた。390 μL 毒素 反応 バッファー (50 mM HEPES、pH 7.2; 0.1 % v/v TWEEN-20; 10 μM Zn Cl2、10 mM DTT)および10 μL のGFP-SNAP25(Cys-Stop)-Alexa 546またはGFP-SNAP25(Cys-6His)-Alexa 546の溶液をキュベットに入れ、30℃で平衡化させた。30 秒間隔で記録したDARET 測定が安定したら、1.0 μg/μL、0.5 μg/μL、0.25 μg/μL、または 0.1 μg/μLの濃度の10 μLの組換え BONT-A 軽鎖 (rLC/A)をキュベットに添加した。測定はシグナルが再び安定化するまで記録し続けた。
本発明のこの態様におけるシステイン含有誘導体の構築のための出発物質として用いる融合タンパク質基質はリンカー領域およびSNAP25 134-206 配列の後に6xHisタグを含む。この基質には全部で4つのCys 残基があり、それらはすべて立体構造的に安定な GFP ドメイン内にある。GFP システインはGFP 三次構造の表面には曝されておらず、報告によれば、蛍光色素、例えば Alexa Flour 546のマレイミドリンカーとは反応しない。Plafker、K et al.、J. Biol. Chem. 277:30121-30127 (2002)。Cys 残基はそれゆえSNAP-25 配列において含まれるA型 切断部位のC-末端側に第2のフルオロフォアへの結合のための化学的ハンドルとして挿入されている。事前に最良の結合部位を決定する方法がなかったため、両方のコンストラクト、即ちシステインが最後のC-末端残基として挿入されているものと他方の変異体 (6xHisタグの直前)を用いた。タンパク質を発現させ、精製し、標識反応に直接用いた。
導入したシステイン残基を Alexa Flour 546 色素のマレイミド部分にMichael 付加によって付加し、融合タンパク質とのチオエーテル結合を形成した。2-4 M 過剰の色素を融合タンパク質の氷冷溶液にpH 7.2にて添加し、反応を一晩4℃で進行させた。反応をβ-メルカプトエタノールによりクエンチし、過剰の色素を遠心ろ過および透析の組合せにより除去した。透析した生成物をさらに精製せずにDARET 研究に用いた。標識タンパク質を液体N2で瞬間凍結し、-80℃で各使用の間保存した。
典型的な蛍光偏光 (FP) アッセイにおいて、基質のタンパク分解は親分子よりも有意に小さい(または嵩が低い) フルオロフォア-標識断片を放出する。この断片の回転速度はそれゆえ親よりも速く、非切断断片と比較してより小さい断片の偏光の低下が観察される。しかし本発明者らの融合タンパク質結合体 がrLC/Aで処理されるDARET 試験においては、偏光の低下ではなく上昇が測定された。アクセプターフルオロフォアがGFP 吸収極大で励起され、DARET 測定は Alexa 発光極大で記録した。
しかし当業者であれば、本発明のDARET アッセイの別の態様において、偏光の低下が分子構造の解離と同時に起こり得、共鳴エネルギー移動の休止または減少が同時に起こりうることを理解しているであろう。
いかなる理論にも拘束される意図はないが、本出願人は、この実施例においてインタクトな基質について観察される偏光解消は、最初に励起されたアクセプターフルオロフォアと、およそ (しかし正確ではなく)同じ方向に配向した双極子モーメントを有する別の(アクセプター) 分子との間の共鳴エネルギー移動に起因することを信じている。励起されたアクセプター分子は正確には元の励起されたドナーフルオロフォアと同じ配向にはないので、偏光の低下が、アクセプターフルオロフォアからの蛍光偏光を測定すると観察される。この効果は共鳴エネルギー移動がもはや起こらない場合、即ち、ドナーおよびアクセプターフルオロフォアが互いに約 100 オングストロームよりも離れている場合には消滅する。
このDARET アッセイを様々なrLC/A濃度 (2.4、6.0、および 12.0 ng/mL)で繰り返したところ、同じ結果が得られた。2つの試験のデータプロットを図 1Aおよび1Bに示す。
実施例 2. BoNT プロテアーゼアッセイ -- 組換え基質および高機能読み取り形式
この実施例において、BoNT/AおよびBoNT-E活性のDARET アッセイを完全に組換えの基質分子を用いて行い、結果をキュベットに基づく形式およびハイスループットスクリーニングに適合する96-ウェル形式の両方で得た。
GFP-SNAP25-1xBFPおよび-2xBFP 融合タンパク質基質をコードするプラスミドをSNAP25の残基134-206を含むGFP 領域から下流の領域、その直後に制限エンドヌクレアーゼ Kpn I部位、そしてHIS6タグをコードする配列を含むようベクター pQBI GFPを改変することにより調製した。青色蛍光タンパク質 (BFP)をコードするDNA をClontech (BD Biosciences)から購入したプラスミド pQBI T7-BFPから得た。BFP コード領域を開始メチオニンを除き、Kpn I 制限部位を両端に導入するよう設計したPCR プライマーを用いてPCR増幅した。
プライマー BFP-A: 5’-GGTACCTTTGTATAGTTCATCCATG-3’ (配列番号9)
プライマー BFP-B: 5’-GGTACCGCAAGCAAAGGAGAAGAACTC-3’ (配列番号10)
4つの 50 μL PCR 反応の2セットを組み立てた。各反応には、5 μL 10x Pfu バッファー (Stratagene)、1 μL dNTP(各12.5 mM; Promega)、1 μL Pfu Turbo DNA ポリメラーゼ (Stratagene; ホットスタート添加)、20-50 ng 鋳型 DNA (pQBI T7-BFP; Clontech)、および終濃度0.2 μMの各プライマーを含めた。反応をヌクレアーゼ非含有水により最終体積50 μLとした。PCR サーマルサイクラー条件は以下の通りとした:
工程 1 95℃2 分
工程 2 95℃1 分
工程 3 50℃30 秒
工程 4 72℃18 分
工程 5 72℃5 分
工程 6 10℃保持。
工程2-4を25 サイクル繰り返した後工程 5および6を行った。サーマルサイクリングの後、1 μL Dpn I 制限酵素 (New England Biolabs) を各反応に添加し、一晩37℃でインキュベートして鋳型 DNAを消化した。反応生成物をアガロースゲル電気泳動により分析した。すべての反応は予測したサイズの生成物を含んでおり、すべてをPCR 断片のクローニングを可能にするTOPO-Blunt ベクターにサブクローニングし、これを次いで化学的コンピテント大腸菌 TOP10 細胞 (Invitrogen)の形質転換に用いた。形質転換体を50 μg/mL カナマイシンを含むLB プレートで選抜し、培養し、5 mL 一晩培養物からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen)により精製した。配列決定 (Sequetech)により正しい予測BFP DNA 配列を含む3つのクローンを同定した。
プラスミド pQBI GFP-SNAP25-1xBFPを pBFP-TOPOからのKpn I 断片としてのBFP 配列をベクター pQBI GFP-SNAP25(KpnI)にライゲーションすることにより調製した。第一工程として、両方のプラスミドを制限酵素 Kpn Iで消化した。直鎖化した pQBI GFP-SNAP25(KpnI)ベクターおよびBFPインサートをアガロースゲル電気泳動で分離し、QIAquick(登録商標) Gel Extraction Kit (Qiagen)で精製した。アガロース精製ベクターをエビアルカリホスファターゼ (Roche)で脱リン酸化し、再びQIAquick(登録商標) Gel Extraction Kit (Qiagen)を用いて精製した。2つのライゲーション反応をインサート:ベクターモル比6:1 および 12:1で組み立て、およそ 20 時間16℃でインキュベートした。ライゲーション反応生成物を用いて化学的コンピテント大腸菌 TOP10 細胞 (Invitrogen)、および滅菌脱イオン水で40 分透析したエレクトロコンピテント 大腸菌 TOP10 細胞 (Invitrogen)を形質転換した。形質転換コロニーを100 μg/mL アンピシリンを含むLB プレートで選抜し、培養し、5 mL 一晩培養液からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen)により精製した。配列決定 (Sequetech)により正しいDNA 配列を含む3つのクローンを同定した。
プラスミド pQBI GFP-SNAP25-2xBFPは 1xBFP プラスミドを作るライゲーション反応に意図していない生成物であり、BFP コード領域の二重挿入の結果生じたものである。最初の配列決定では2つのクローンの存在は検出されなかった。タンデム BFP 領域の上流および下流で開始する配列決定反応は BFP 領域の1つを完全に配列決定し、次へと伸長するために十分に伸長しなかったからである。後でこれを行った場合、配列決定により2つのプラスミドが生じていたことが最終的に確認され、一方は単一 BFP 遺伝子を含むpQBI GFP-SNAP25-1XBFPであり、他方は2つの BFP遺伝子をタンデムに含む、pQBI GFP-SNAP25-2xBFPであった。
GFP-SNAP-25-IxBFP DNA (配列番号11) の配列およびアミノ酸配列(配列番号12)は以下の通りである:
GFP-SNAP25-1xBFP 融合タンパク質およびDNA コード配列
Figure 2009521666
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Figure 2009521666
GFP-SNAP25-2XBFPのヌクレオチド配列 (配列番号13)およびアミノ酸配列 (配列番号14)
Figure 2009521666
Figure 2009521666
Figure 2009521666
プラスミド pQBI GFP-SNAP25-1xBFPおよびpQBI GFP-SNAP25-2xBFPをT7 RNA ポリメラーゼ遺伝子を含む化学的コンピテント大腸菌 BL21-(DE3) 細胞 (Novagen)に形質転換した。形質転換細胞を100 μg/mL アンピシリンを含むLB プレートに播き、一晩37℃でインキュベートした。シングルコロニーまたはシングルコロニーから培養したフリーザーストックを用いてLB (100 μg/mL アンピシリン) またはPA 0.5G (100 μg/mL アンピシリン) 培地中の少量(1 〜 3 mL) 出発培養物に接種した。出発培養物を一晩振盪しながら37℃でインキュベートした。この培養物を再び1000x 希釈にて用いてLB (100 μg/mL アンピシリン) 培地またはZYP-5052 (100 μg/mL アンピシリン) 自己誘導培地中の大量培養液に接種した。非誘導培地、PA 0.5Gは、50 mM Na2HPO4、50 mM KH2PO4、25 mm (NH4)2SO4、2mM MgSO4、0.2x 微量金属、0,5% グリセロール、0.5% グルコースを含み、自己誘導培地 ZYP-5052 培地は、1% N-Z アミン、0.5% イーストエクストラクト 50 mM Na2HPO4、50 mM KH2PO4、25 mm (NH4)2SO4、2mM MgSO4、0.2x 微量金属、0,5% グリセロール、0.05% グルコース、0.2% ラクトースを含む。LB 培養を37℃で振盪しながらA600 が0.62 0.65 吸光度単位に達するまで培養し、その時点でインキュベーターから取り出し、短時間で冷却して周囲温度とした。次いでタンパク質発現をIPTGの終濃度 1 mMでの添加により誘導し、培養を一晩16℃で振盪しながらインキュベートした。 ZYP-5052 培養を37℃ で接種後8 時間培養し、その時点で温度を下げ、培養を16-19 時間16℃で振盪しながらインキュベートした。タンパク質はGFP フルオロフォアが最適に形成するためには30℃より低温で発現させなければならない。発現培養液からの細胞を遠心分離 (30 分、6,000 x g、4℃) により回収し、-80℃で必要時まで保存した。
融合タンパク質コンストラクトの精製のために、すべての工程を4℃または氷上で行い、ただし適用する場合は化学的細胞溶解工程は異なる温度で行った。超音波処理による溶解のために、250 mL 培養液からの細胞ペレットをそれぞれ10 mL カラム結合バッファー (25 mM HEPES、pH 8.0; 500 mM NaCl; 10 mM イミダゾール)に再懸濁し、2 分、10-秒パルス、振幅40%でBranson Digital Sonifier(登録商標)を用いて超音波処理した。化学的溶解のために、細胞ペレットを細胞ペースト1g当たり5 mL の溶解バッファーに室温で再懸濁し[溶解バッファー = BugBuster(登録商標) 試薬 (Novagen、カタログ番号: 70584)、タンパク質抽出試薬は以下を含有:25 U/mL Benzonase ヌクレアーゼ (Novagen、カタログ番号: 70664)、1 KU/mL rLysozyme (Novagen、カタログ番号: 71297)および 1 x プロテアーゼ 阻害剤カクテル III (Calbiochem、カタログ番号: 539134)]、穏やかに回転させながら20 分室温でインキュベートした。両方の場合において、溶解液を遠心分離 (36000 RCF、4℃、0.5 - 1時間)により清澄にした。
Co2+ アフィニティー樹脂 (超音波処理にて溶解する細胞について細胞ペレット当たり5 mL Talon(登録商標) SuperFlow;化学的溶解する細胞について細胞ペレット当たり5-10 mL)をガラスまたは使い捨てカラム支持体 (Bio-Rad)中で 4 カラム体積の滅菌 dH2O および 4 カラム体積のカラム結合バッファーですすぐことにより平衡化した。溶解液をカラムにアプライし、カラムにゆっくりと重力流により入れた。溶解液がカラムに入った後、カラムを5 カラム体積のカラム結合バッファーにより洗浄する。
タンパク質を1 - 2 カラム体積のカラム溶出バッファー (25 mM HEPES、pH 8.0; 500 mM NaCl; 500 mM イミダゾール)により溶出し、これを~2.0 mLのフラクションに回収した。緑色フラクションを合せて、15 mL 濃縮機 (MWCO 30 kDa、Millipore)で濃縮し、FPLC (BioRad Biologic DuoLogic、QuadTec UV-Vis検出器)によりHiPrep 26/10 サイズ排除カラム (Pharmacia)および冷却融合タンパク質脱塩バッファー (25 mM HEPES、pH 7.2、4℃)の均一溶媒移動相を用いて、 流速10 mL/分にて脱塩した。脱塩したタンパク質を単一フラクションとして回収し、濃度をデンシトメトリーで測定し、そのロットの蛍光レベルについて必要の場合補正を行った。タンパク質溶液を500 μL アリコットに分け、液体窒素で瞬間凍結し、- 80℃で保存した。いったん解凍したら、用いるアリコットを4℃で10 日間遮光しながら保存した。
500 mL 発現培養液液からの細胞を遠心分離 (10 分、6000 RCF、4℃)によりペレットにし、30 mLの上清溶液を除いてはデカントした。細胞ペレットを残りの上清溶液に再懸濁し、最終体積を ~38 mLとした。細胞懸濁液に420 μL プロテアーゼ阻害剤カクテル III (Calbiochem、カタログ番号: 539134)、42 μL Benzonase ヌクレアーゼ (Novagen、カタログ番号: 70664)、および4 mL 10 x FastBreak(商標) 細胞溶解試薬 (Promega、カタログ番号: V8573)を添加した。混合物を穏やかに回転させながら30 分室温でインキュベートし、遠心分離 (30 分、15000 RCF、4℃)により清澄にした。
10 mL IMAC カラムを HisLink(商標) タンパク質精製樹脂 (Promega、カタログ番号: V8821)をガラスカラム支持体 (Bio-Rad)に移すことにより調製し、保存バッファーを捨てた。溶解液を次いでカラムにアプライし、カラムにゆっくりと重力流により入れた。溶解液がカラムに入った後、カラムを10 カラム体積のカラム洗浄バッファー (50 mM HEPES、pH 7.4; 10 mM イミダゾール)により洗浄した。タンパク質を2.5 カラム体積のカラム溶出バッファー (50 mM HEPES、pH 7.4; 300 mM イミダゾール)により溶出し、~2.0 mLのフラクションに回収した。フラクション4 - 12を合わせ、 15 mL 濃縮機 (MWCO 30 kDa、Millipore)で濃縮して 最終体積~4.6 mLとし、FPLC (BioRad Biologic DuoLogic、QuadTec UV-Vis 検出器)でHiPrep 26/10 サイズ排除カラム (Pharmacia) および冷却融合タンパク質脱塩バッファー (25 mM HEPES、pH 7.2、4℃)の均一溶媒移動相を用いて流速10 mL/分にて脱塩した。脱塩したタンパク質を~10 mLの単一フラクションとして回収した。タンパク質溶液を40の 250 μL アリコットに分け、液体窒素で瞬間凍結し、-80℃で保存した。
IMAC-精製したGFP-SNAP25-1xBFP および -2XBFP タンパク質についてさらなるアニオン交換精製工程を1 mL UNO-Q1 アニオン交換 カラム [BioRad、カタログ番号: 720-0001および UNO-Q1R (Replacement) カタログ番号: 720-0011] で行い、バッファーはあらかじめ冷却してクロマトグラフィー手順にわたって氷上で維持した。それぞれの融合タンパク質 GFP-SNAP25-1xBFP (ロット# 1)および GFP-SNAP25-2xBFP (ロット# 7)の500 μL アリコットを解凍し、それぞれ ~100 μLに15 分 7,500 RCF、4℃ (Biomax-30K NMWL 膜 0.5 遠心フィルターおよびチューブ、Millipore、カタログ番号: UFV5BTK00)の遠心ろ過によって濃縮した。サンプル体積をバッファー A (25 mM Tris-HCl、pH7.2)の添加により1 mL まで上昇させ、 カラムに流速0.5 mL/分にてアプライした。サンプルをバッファー B (25 mM Tris-HCl、pH7.2、1 M NaCl)で以下のようにして(表5)溶出した。溶出したタンパク質を次いで25 mM HEPES、pH7.2で1回バッファー交換した。
表 5. ステップグラジエント、次いで直線的グラジエントでのAEX 溶出 プロトコール
Figure 2009521666
さらに、AEX 精製の予期せぬ結果が得られた。試験に用いたタンパク質、GFP-SNAP25-1xBFPおよびGFP-SNAP25-2xBFPはDARET アッセイに含めた場合阻害活性を有し、その結果見かけ上アッセイされた毒素の活性が低下した。AEX 精製の前後の各ロットからのタンパク質のサンプルを1.4 nM His10-rLC/AのDARET アッセイにおける基質として試験した。驚くべきことに、以前にみられた阻害効果はAEX 精製された基質においては完全に排除された。このDARET アッセイ結果はバッファーにおけるいくらかの阻害成分が IMAC 精製と脱塩工程とでは効率的に除去されず、AEX カラム精製が残余コンタミネーションの除去のためのもっとも確かな方法であることを示す。
BONT/A 900 kDa 複合体、BoNT/A 150 kDa 二本鎖毒素、および BoNT/E 160 kDa 一本鎖毒素は Metabiologics Incから購入した。一本鎖毒素にトリプシンによりニックを入れ、活性 BoNT/E 毒素を生じさせた。さらに、BoNT/AおよびBoNT-E 軽鎖の組換えバージョン (rLC/AおよびrLC/Eと称し、精製のためにポリヒスチジンタグを含む)をコードするプラスミドを大腸菌 BL21-CodonPlus(登録商標)(DE3)-RIL 細胞で発現させた。
GFP-SNAP25-1xBFP および GFP-SNAP25-2xBFP 基質については、GFP およびBFPは既知のFRET パートナーであり、エネルギー移動がこれらフルオロフォアの間で効率的に起こる。BFPの励起極大は387 nmであり、発光極大は450 nmであるが、この特定の GFP は励起極大が473 nmであり発光極大が509 nmである。これら基質のSNAP-25 セグメントはBoNT/A (Gln197 とArg198との間)、BoNT/E (Arg180と Ile181との間) および BoNT/C1 (Arg198 とAla190との間)についての切断部位を含む。
DARET アッセイはキュベット形式またはプレート形式で実行することが出来る。キュベット形式は以下のように行う:アッセイ反応バッファー (50 mM HEPES pH 7.2、0.1% (v/v) Tween(登録商標) 20; 10 μM ZnCl2; 10 mM ジチオトレイトール (DTT))中の5-12 μM 基質溶液を石英キュベットに入れ37℃で平衡化する。基質を次いでBFPの励起極大387 nmにて平面偏光で励起し、GFP波長509 nmで放射される光の偏光を0.5-3 分間隔で測定する。 その間に、毒素 (または組換え軽鎖)をアッセイ反応バッファー中で20-30 分インキュベートする。基質シグナルが安定化した後、毒素を添加し、偏光測定を所望の反応期間継続する。
プレート形式において、毒素 (または組換え軽鎖)を2倍希釈 して2 x アッセイ反応バッファー中最終反応濃度とし、20 μl アリコットを96-ウェルプレートのウェルに、一般に三連にて入れる。基質もまた2倍希釈して最終反応濃度5-12 μMとし、25 μl アリコットの基質を第二の96 ウェルプレートの対応するウェルに入れる。溶液を 37℃に温め、毒素を20-30 分プレインキュベートした後、20 μl アリコットの基質を毒素プレートに同時に入れて混合する。プレートをプレートリーダーに移し、偏光測定を反応持続時間に渡って10-20 分毎に行う。励起波長は 400 nm (プレートリーダー限界)、発光波長は 509 nmで495 nm カットオフフィルターを用いる。
これらアッセイの結果を図2-9に示す。図 1は、キュベットに基づくアッセイ形式におけるGFP-SNAP25-2xBFP 基質を用いるBoNT/A 複合体 (900 kDa)のDARET アッセイを示す。最終反応条件は200 pM BoNT/A 複合体、 10 μM 基質であった。励起波長は 387 nm、発光波長は509 nmであった。陰性対照には8 μM 基質を含め、毒素は含めなかった。結果は明らかに約 60 分の経過の内に、毒素含有サンプルの偏光が約 0.20 偏光単位上昇し、一方陰性対照には変化がなかったことを示す。
図 2は、キュベットに基づくアッセイ形式においてGFP-SNAP25-2xBFP 基質を用いる精製BoNT/A (150 kDa)のDARET アッセイを示す。毒素を11 分後に添加した;偏光の測定を約 120 分続けた。最終反応混合物には300 pM BoNT/A 複合体および8 μM 基質が含まれた。励起波長は387 nm、発光波長は 509 nmであった。陰性対照には8 μM 基質を含め、毒素は含めなかった。この場合もBoNT/Aを含むキュベットにおいて偏光の上昇がみられたが、陰性対照においては変化はみれらなかった。
図 3は、キュベットに基づく形式におけるrLC/AのDARET アッセイを示す。 この場合も基質はGFP-SNAP25-2xBFPであり、14分偏光測定を行った後、毒素を添加した。rLC/A 毒素の終濃度は9 nMであり、サンプルには8 μM 基質が含まれた。偏光測定はおよそ 45 分行った。励起波長は387 nm、発光波長は509 nmであった。
図 4において、BoNT/E 活性のキュベットに基づくアッセイをGFP-SNAP25-2xBFP 基質を用いたDARET アッセイを用いて行った。毒素および基質の終濃度はそれぞれ200 pMおよび 8 μMである。偏光の読みを18 分記録した後、毒素を添加し、全部で 約 110 分続けた。励起波長は387 nm、発光波長は 509 nmであった。
図 5は、GFP-SNAP25-1xBFP 基質を用いたBoNT/A 複合体 (900 kDa)のプレートに基づく DARET アッセイを示す。用いた最終反応条件は 8 μM 基質および25 pM、50 pM、100 pM、および 150 pM BoNT/A 複合体であった。励起波長は 400 nmであり、発光波長は509 nmであった。用いた陰性対照には8 μM 基質を含め、毒素は含めなかった。キュベットに基づくアッセイと同様に、結果は約 90 分の経過にわたり、毒素含有サンプルの偏光が上昇したことを示し、一方陰性対照には変化はなかった。プレートに基づくアッセイ形式において、偏光の変化はmP即ちミリ偏光単位にてモニターした。
図 6、7および8は純粋なBoNT/A、BoNT/EおよびrLC/EのDARET アッセイをそれぞれ、同様のプレートに基づくアッセイ形式において示す。図 7および8において、GFP-SNAP25-1xBFP 基質を8 μMの濃度で用い;図 9においてGFP-SNAP25-1xBFP 基質を10 μMの濃度で用いた。図 7において、純粋なBoNT/A 毒素を25、50、100、150および200 pM濃度にて用い、20 分毎に100 分間モニターした。図 8において、純粋なBoNT/Eを反応に400、500、および 1000 pM の濃度で添加した。偏光をおよそ 10 分毎に測定した。図 9において、プレートに基づく DARET アッセイを0.5 mM、1.0 mM、および1.5 mM rLC/Eを用いて行い、偏光をおよそ10 分毎に測定した。各場合においてサンプルの偏光の変化を、基質が切断されたことの指標として観察した。
実施例 3. トリプシン活性のDARET アッセイ
この実施例において、GFP-SNAP-25-1XBFP 融合タンパク質をクロストリジウム神経毒に含まれるのとは異なるプロテアーゼ活性についてのアッセイ 基質として用いた。
トリプシンはSNAP-25(134-206) 配列を11 回切断すると予測される。トリプシンの切断パターンは以下の通りである: NH3-----P4-P3-P2-P1==P’1-P’2-P’3-P’4-----COOH、ここで ==は切断部位、および P1 はArgまたは Lysであるが、特定のその他のアミノ酸残基がその他の位置に存在する場合は例外である。
キュベット形式は以下の通りである: アッセイ反応バッファー (50 mM HEPES pH 7.2、0.1% (v/v) Tween(登録商標) 20; 10 μM ZnCl2; 10 mM ジチオトレイトール (DTT))中8 μM GFP-SNAP-25-1XBFP 基質の溶液を、石英キュベットに入れ、 37℃で平衡化させる。基質を次いでBFP 励起極大の 387 nm にて平面偏光で励起し、GFP 波長の509 nmで放射される光の偏光を0.5-3 分間隔で測定する。その間に、170 pM トリプシンをアッセイ反応バッファー中で20-30 分インキュベートする。DARET 基質の測定を17 分モニターし、次いでトリプシンを添加し、反応をおよそ 90 分続け、サンプルをおよそ毎分モニターする。
結果を図 9に示す。理解されるように、基質が2つの分子構造 (融合タンパク質のGFP- およびBFP-標識領域)を反応混合物へのトリプシンの添加のほぼ直後に分離するように切断され、インタクトな基質と比較してDARET アッセイ条件下で蛍光偏光の上昇がもたらされた。
実施例 4. キナーゼ活性のDARET 検出
推定リン酸化部位の近くにキモトリプシン切断部位を含むペプチドは、ペプチドがリン酸化または非リン酸化であるかに依存して異なるプロテアーゼ感受性に供される。
キモトリプシンは優先的に位置 P1 (切断部位のすぐアミノ末端側のアミノ酸残基)のTrp、Tyr およびPheにて切断し、程度は低いが (低特異性キモトリプシンを扱うことを考慮して) 位置 P1の Leu、MetおよびHisにて切断する。これらの規則の例外は以下の通りである: Trpが位置 P1にある場合、切断は Metまたは Proが位置 P1' (切断部位のカルボキシル末端側の第一のアミノ酸) に同時にある場合にブロックされる。 さらに、位置 P1'のProは位置 P1のアミノ酸が何であるかにかかわらず切断をほぼ完全にブロックする。Metが位置 P1にある場合、切断は位置 P1'のTyrの存在によりブロックされる。Pearson、R. B.、and Kemp、B. E. in Methods in Enzymology Vol. 200: 6281 (T. Hunter and B. M. Sefton (Eds.) San Diego: Academic Press. (1991)) には、リン酸化部位および認識モチーフが記載されている。
融合ペプチドを タンパク質キナーゼ AのB. taurus RII 調節サブユニット(PKA RII)のキナーゼ リン酸化 モチーフを有するよう操作し、キモトリプシン部位がこの配列のカルボキシ末端側に生じる(およびこの配列に隣接して位置する)よう操作する。ペプチドはまた精製の目的でHIS6タグを含むようにする。この融合タンパク質をカゼインキナーゼ II 活性の検出のための基質として用いる; カゼインキナーゼ IIの認識モチーフ(リン酸化残基に下線を施す)は: S/T-X-X-Eである。PKA RII リン酸化 認識 モチーフはDSESEEED (配列番号15)である;このモチーフにおける両方のセリンがリン酸化されている。PKA RII 配列 (GenBank 受入番号 P00515)は以下の通りであり、上記の同定されたモチーフに下線を施す。
Figure 2009521666
この融合ペプチドの N 末端をクマリンでカルボキシル末端をフルオレセインで標識する。
融合ペプチドを次いで ATPと合わせ、その活性を確認すべきキナーゼ調製物をリン酸化が起こる反応条件下でインキュベートする。この後、キナーゼ反応をクエンチし、基質をキモトリプシンとの第二の反応にてインキュベートする。これらの条件下で、リン酸化された基質はキモトリプシン切断を干渉するが、非リン酸化基質は容易に切断される。
サンプルをクマリンの吸収極大波長(370 nm)で平面偏光を用いて励起する。これらの条件でDARETを用いてモニターされたフルオレセインの発光極大の波長での偏光はキナーゼの濃度が上昇すると変化する。切断はペプチド基質上のドナー とアクセプターフルオロフォアとの間の共鳴エネルギー移動を破壊するが、非切断リン酸化ペプチド基質は共鳴エネルギー移動を維持する。反応条件下で、非リン酸化ペプチドのほとんど、そして、リン酸化ペプチドのわずかなパーセンテージのみが切断される。キナーゼ活性の上昇は、基質のタンパク分解切断を低下させ (したがって共鳴エネルギー移動の干渉または休止が低下する)、 「無プロテアーゼ」対照と比較して偏光解消を低下させる。
実施例 5.
ヌクレオチド配列 (5’-TTC TCCTTTGCtagCCAT-3’) (配列番号17)を含み、化合物 Alexa Flour(登録商標) 350 が遠位末端にドナーフルオロフォアとして結合しており、3’ 合成 N-ヒドロキシスクシンアミドエステルリンカーが結合しているDNA プローブを構築する。リンカーは100 オングストローム未満の長さであり、好ましくは50 オングストローム未満の長さである。さらに、配列番号13の核酸を合成し、化合物 Alexa Flour(登録商標) 488 をこのDNA 配列の 5’末端を介して別のN-ヒドロキシスクシンアミド エステルリンカーを介して結合させる。
配列番号13の標識核酸鎖配列を上記標識DNA プローブと溶液中で混合し、 98℃に熱する。溶液を次いでゆっくりと32℃に冷却し、波長346 nmの平面偏光を溶液に照射する 。溶液の蛍光偏光を519 nmでモニターする。
溶液を冷却し、より多くのプローブ分子と標的核酸鎖がアニールすると、共鳴エネルギー移動が Alexa Flour(登録商標) 350 ドナーフルオロフォア と Alexa Flour(登録商標) 488 アクセプターフルオロフォアとの間で起こり、その結果、偏光解消の低下が温度が室温に近づくと観察される。したがって、このモデル系は2つの離れた分子の結合またはハイブリダイゼーションの検出のためのDARETの使用の一般的適用可能性を示す。
括弧内またはその他により示したすべての論文、引用文献および特許の記述は以前に記載されたか否かにかかわらず、本明細書にその内容全体を引用により含める。
本発明を上記の実施例に言及して記載したが、様々な改変が本発明の精神を逸脱することなく行うことが出来ることを理解されたい。したがって、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限される。
図 1は、キュベットに基づくアッセイ形式におけるBoNT/A 複合体 (900 kDa)とGFP-SNAP25-2xBFP 基質とのDARET アッセイを示す。最終反応条件は、 200 pM BoNT/A 複合体および10 μM 基質であった。陰性対照には毒素を有さない基質を含めた。 図 2は、 キュベットに基づくアッセイ形式における精製BoNT/A (150 kDa) と GFP-SNAP25-2xBFP 基質とのDARET アッセイを示す。 図 3 は、キュベットに基づく形式におけるGFP-SNAP25-2xBFP 基質を用いるrLC/AのDARET アッセイを示す。 図 4 は、 DARET アッセイとGFP-SNAP25-2xBFP 基質を用いるBoNT/E 活性のキュベットに基づくアッセイを示す。 図 5 は、BoNT/A 複合体 (900 kDa) とGFP-SNAP25-1xBFP 基質とのプレートに基づく DARET アッセイを示す。 図6、7、および8は、それぞれGFP-SNAP25-1xBFP 基質を用いる類似のプレートに基づくアッセイ形式における純粋なBoNT/A、BoNT/E および rLC/EのDARET アッセイを示す。 図6、7、および8は、それぞれGFP-SNAP25-1xBFP 基質を用いる類似のプレートに基づくアッセイ形式における純粋なBoNT/A、BoNT/E および rLC/EのDARET アッセイを示す。 図6、7、および8は、それぞれGFP-SNAP25-1xBFP 基質を用いる類似のプレートに基づくアッセイ形式における純粋なBoNT/A、BoNT/E および rLC/EのDARET アッセイを示す。 図 9は、トリプシン添加によるGFP-SNAP25-1xBFPの切断の際のDARETの結果を示す。

Claims (16)

  1. 以下の工程を含む、サンプル中の2以上の分子構造が近接しているか否かを判定する方法:
    a)該サンプル中で、第一の吸収スペクトルと第一の発光スペクトルを有するドナーフルオロフォアで標識された第一の分子構造と、第一の発光スペクトルとオーバーラップする第二の吸収スペクトルおよび第二の発光スペクトルを有するアクセプターフルオロフォアで標識された第二の分子構造とを接触させる工程;
    b)該サンプルを、該第一の吸収スペクトル内の波長にて平面偏光で照射する工程;
    c)該第二の発光スペクトル内の波長にてサンプル蛍光の偏光を検出する工程;および、
    d)偏光の変化を、第一および第二の分子構造の互いの近接性の変化と相関づける工程、ここで該偏光の変化は、異なる時点での同じサンプルまたは対照からの放射光の偏光と比べてのものである。
  2. 該第一および第二の分子構造が同じ分子中に含まれる請求項 1の方法。
  3. 該分子がアミノ酸配列を含む請求項 2の方法。
  4. 該第一の分子構造が該アミノ酸配列のアミノ末端半分に含まれる請求項 3の方法。
  5. 該第一の分子構造が該アミノ酸配列のカルボキシル末端半分に含まれる請求項 3の方法。
  6. 該ドナーおよびアクセプターフルオロフォアの少なくとも一つが、該分子に結合したポリペプチドを含む請求項 3の方法。
  7. 該ドナーまたはアクセプターフルオロフォアの少なくとも一つが該分子にペプチド結合によって結合している請求項 6の方法。
  8. 少なくとも一つのフルオロフォアが、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、フルオロフォアと強く相互作用するテトラシステインペプチド、フルオロフォアと強く相互作用するAGT ポリペプチド、フルオロフォアと強く相互作用するデハロゲナーゼポリペプチド、紫色蛍光色素、青色蛍光色素、シアン蛍光色素、緑色蛍光色素、黄緑色蛍光色素、黄色蛍光色素、橙色蛍光色素、赤橙色蛍光色素、赤色蛍光色素、近赤外蛍光色素または赤外蛍光色素からなる群から選択され、別の態様において、アクセプターフルオロフォアが、紫色蛍光色素、青色蛍光色素、シアン蛍光色素、緑色蛍光色素、黄緑色蛍光色素、黄色蛍光色素、橙色蛍光色素、赤橙色蛍光色素、赤色蛍光色素、近赤外蛍光色素および赤外蛍光色素である、請求項 6の方法。
  9. 該第一および第二の分子構造が同じポリペプチドに含まれており、プロテアーゼ切断部位に感受性の酵素によって分離されている請求項 1の方法。
  10. プロテアーゼ切断部位が、トリプシン切断部位、キモトリプシン切断部位およびボツリヌス毒素エンドペプチダーゼ切断部位を含む、請求項 9の方法。
  11. 以下の工程を含む、サンプルにおける2以上の分子構造の近接性を判定する方法:
    a)該サンプル中で、第一の吸収スペクトルと第一の発光スペクトルを有するドナーフルオロフォアで標識された第一の分子構造と、第一の発光スペクトルとオーバーラップする第二の吸収スペクトルおよび第二の発光スペクトルを有するアクセプターフルオロフォアで標識された第二の分子構造とを接触させる工程;
    b)該サンプルを、該第一の吸収スペクトル内の波長にて平面偏光で照射する工程;
    c)サンプルの蛍光偏光を該第二の発光スペクトル内の波長にて検出する工程;および、
    d) ある時間にわたってまたは対照と比較してのエネルギー移動および偏光における変化と、第一および第二の分子構造の互いの近接性の変化を相関づける工程。
  12. 該第一の分子構造および該第二の分子構造がポリペプチドドメインである請求項 11の方法。
  13. 少なくとも一つのフルオロフォアが、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、フルオロフォアと強く相互作用するテトラシステインペプチド、フルオロフォアと強く相互作用するAGT ポリペプチド、フルオロフォアと強く相互作用するデハロゲナーゼポリペプチド、紫色蛍光色素、青色蛍光色素、シアン蛍光色素、緑色蛍光色素、黄緑色蛍光色素、黄色蛍光色素、橙色蛍光色素、赤橙色蛍光色素、赤色蛍光色素、近赤外蛍光色素または赤外蛍光色素からなる群から選択され、別の態様において、アクセプターフルオロフォアが、紫色蛍光色素、青色蛍光色素、シアン蛍光色素、緑色蛍光色素、黄緑色蛍光色素、黄色蛍光色素、橙色蛍光色素、赤橙色蛍光色素、赤色蛍光色素、近赤外蛍光色素および赤外蛍光色素である請求項 11の方法。
  14. 該第一および第二の分子構造が単一基質分子上に切断可能な標的により分離されて位置している請求項 11の方法。
  15. 切断可能な標的がポリペプチドドメインを含む請求項 11の方法。
  16. ポリペプチドドメインが選択的酵素によって切断可能である請求項 11の方法。
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