各検体スライドについてのプレスクリーニング及び視野の選択にかかわらず、現れた視野のうちの少なくとも一部の関心のある細胞対象が異常でないにしても少なくとも「疑わしく」、さらなる検査が必要であるとして細胞検査技師がスライドを特徴付ける状況を有していても、細胞検査技師が「正常」として検体スライドを時折特徴付けてしまうことが、研究により分かっている。このため、検体スライド検査プロセスの際に生じるこのような「偽陰性(false negatives)」の可能性を減らすのに役立つ細胞の画像処理及び検査システムのための改良した方法が、非常に望ましい。
本発明に係る実施例は、細胞検体をプレスクリーニング及び検査するためのシステム及び方法を有している。ある実施例では、細胞検体をプレスクリーニング及び検査するためのシステムが、検体スライドの画像データを取得及び処理するための撮像装置を有している。特に、撮像装置は、(画像データから)検体の中の関心のある細胞対象を特定し、形状、大きさ、組織(texture)、コントラスト、細胞核の積分光学密度、及び細胞核の平均光学密度といった、1又はそれ以上の対象の物理的な特性に基づいて、特定した対象に関するオブジェクト値を計算する。そして、撮像装置は、比較的大きな関心のあるオブジェクト値を有する特定した対象の場所に基づいて、検査スコープでの後に続く検査のために検体スライドの視野を選択する。
1又はそれ以上の対象は、さらに、強調検査のために撮像装置によって選択され、これは、例えば、対象が元々供された場合と同一又は異なる視野において、対象の検査スコープへの追加の提供の形式を取ってよく、このような追加の提供は、自動的又は条件付きであってよい。例えば、強調検査のために選択された対象を、検体スライドの最初の検査に際にいずれの対象も後に続く分析のためにマーキングされなかった場合にのみ、又は検体の判定した特性が異常又は異常の疑いのある細胞の存在度の平均よりも高い尤度を示す場合にのみ、追加検査のために与えてもよい。代替的及び/又は追加的に、選択した対象のこのような強調検査を、対象が検査スコープでの観察のために与えられた場合に、対象を反転表示又はそうでなければ視覚的に強調することによって与えてもよい。一例として、検査スコープが、強調すべき対象の倍率を大きくしてもよい。
非限定的な例として、強調検査のために選択した対象は、オブジェクト値が計算された物理的な特徴に関して母集団から抽出される統計的な情報に基づいて、もし有るとすれば平均尤度よりも高い細胞異常を示すオブジェクト値を有する検体の中の対象であってよい。追加的又は代替的に、強調検査のために選択した対象は、特定した検体に対して、オブジェクト値の上位パーセント(例えば、上位2−3%)、又はオブジェクト値の特定数(例えば、上位2−3個)に収まるオブジェクト値を有する対象であってよい。
別の実施例では、細胞検体をプレスクリーニング及び検査するためのシステムが、検体スライドの画像データを取得及び処理するための撮像装置を有している。特に、撮像処理は、検体の中の関心のある細胞対象を(画像データから)特定し、形状、大きさ、組織、コントラスト、細胞核の積分光学密度、及び細胞核の平均光学密度といった、対象の1又はそれ以上のそれぞれの物理的特性に基づいて、特定した対象に関するオブジェクト値を計算する。さらに、撮像装置は、画像データに基づいて、母集団の中の細胞異常の尤度に関する1又はそれ以上の検体の特性を判定する。1又はそれ以上の判定した特性のうちのいずれかが、異常又は異常が疑わしい細胞の存在度の平均よりも高い尤度を示す範囲内にある場合、撮像装置は検査スコープでの検査のために比較的多数の対象及び/又は視野を選択する。しかしながら、1又はそれ以上の判定した特性のいずれもがこのような範囲内にない場合、撮像装置は検査のために少数の対象及び/又は視野を選択する。2以上の検体の特性を判定する実施例では、重み付けした検体スコアを計算してこのような可能性のある重み付けしたスコアの範囲と比較し、どのくらいの数の対象及び又は視野が検査スコープでの検査のために与えられるのかを判定してもよい。そのような数がいかなる場合であっても、撮像装置は視野の中に位置する対象の相対的なオブジェクト値に基づいて視野を選択し、また、1又はそれ以上の対象を強調検査のために選択できる。
非限定的な例では、判定した検体の特性が、血球の相対的な存在度、検体スライド又はその領域の不透明度、細胞核の平均積分光学密度よりも実質的に高い所定の細胞核の積分光学密度を有する細胞の相対的な存在度、検体の中の特定した細胞対象についての細胞核の積分光学密度の分布の標準偏差の相対的な存在度を有してよい。ある実施例では、特性が、形状、大きさ、組織、コントラスト、細胞核の積分光学密度、及び細胞核の平均光学密度を具える群から選択され、1又はそれ以上の判定した特性のうちの少なくとも1が、母集団の中の平均尤度を超える細胞異常を示す物理的な特性を有する検体の中の細胞の相対的な存在度である。別の実施例では、1又はそれ以上の判定した特性のうちの少なくとも1が、母集団の中の平均尤度を超える細胞異常を示すオブジェクト値を有する検体における特定した細胞対象の相対的な存在度である。
さらに別の実施例では、細胞検体をプレスクリーニング及び検査するための方法が、検体スライドの画像データを取得及び処理して検体の中の関心のある細胞対象を特定するステップと、形状、大きさ、組織、コントラスト、細胞核の積分光学密度、及び細胞核の平均光学密度といった、対象の1又はそれ以上の物理的な特性に基づいて、特定した対象に関するオブジェクト値を計算するステップとを有する。本方法は、さらに、比較的関心の高いオブジェクト値を有する特定した対象の位置に基づいて、後に続く検査スコープでの検査のために検体スライドの視野を選択するステップを有しており、1又はそれ以上の特定した対象が強調検査のためにさらに選択される。強調検査は、例えば、対象が元々供された場合と同一又は異なる視野での、対象の検査スコープにおける追加検査を有してよく、このような追加検査は自動的又は条件付きでよい。例えば、強調検査のために選択した対象は、検体スライドの最初の検査の際に後に続く分析のためにいずれの対象もマーキングされていなかった場合にのみ、又は検体の判定した特性が異常又は異常が疑わしい細胞の平均尤度を超える存在度を示す場合にのみ、追加検査のために供してもよい。代替的及び/又は追加的に、選択した対象のこのような強調検査を、検査スコープでの検査のために対象が与えられた場合に、対象を反転表示又はそうでなければ視覚的に強調することによって与えてもよい。一例として、検査スコープが強調すべき対象の倍率を大きくしてもよい。
非限定的な例として、強調検査のために選択された対象が、オブジェクト値が計算された物理的な特性に関する母集団から抽出される統計情報に基づいて平均尤度を超える異常細胞を示すオブジェクト値をいくらかでも有する、検体の中の対象である。追加的又は代替的に、強調検査のために選択した対象が、特定した検体に関するオブジェクト値の上位パーセンテージ(例えば、上位2−3%)、又は上位特定数(例えば、上位2−3個)に収まるオブジェクト値を有する対象でよい。
さらに別の実施例では、細胞検体をプレスクリーニング及び検査するための方法が、検体スライドの画像データを取得及び処理して検体の中の関心のある細胞対象を特定するステップと、形状、大きさ、組織、コントラスト、細胞核の積分光学密度、及び細胞核の平均光学密度といった、対象の1又はそれ以上の物理的な特性に基づいて特定した対象に関するオブジェクト値を計算するステップと、を有する。さらに、本方法は、画像データに基づいて、母集団の中の細胞異常の尤度に関する検体の1又はそれ以上の特性を判定するステップを有する。1又はそれ以上の判定した特徴のうちのいずれかが、異常又は異常が疑わしい細胞の平均尤度を超える存在度の範囲内に有る場合、比較的多数の対象及び/又は視野が検査スコープでの検査のために選択される。しかしながら、1又はそれ以上の判定した特徴のうちのいずれもが、このような範囲内にない場合、少数の対象及び/又は視野が検査のために選択される。2以上の検体の特性が判定される実施例では、重み付けした検体スコアを計算してこのような可能性のある重み付けしたスコアの範囲と比較して、どれくらいの数の対象及び/又は視野が検査スコープでの検査のために与えられるかを判断する。それらの数がいずれであっても、視野に位置する対象の相対的なオブジェクト値に基づいて視野が選択され、また、1又はそれ以上の対象が強調検査のために選択される。
非限定的な例として、判定した検体の特性が、血球の相対的な存在度、検体スライド又はその領域の不透過度、細胞核の平均積分光学密度よりも実質的に高い所定の細胞核の積分光学密度を有する細胞の相対的な存在度、検体の中の特定した細胞対象の細胞核の積分光学密度分布の標準偏差の相対的な存在度を有する。ある実施例では、特性が形状、大きさ、組織、コントラスト、細胞核の積分光学密度、及び細胞核の平均光学密度を具える群から選択され、1又はそれ以上の判定した特性のうちの少なくとも1が、母集団の中の平均尤度を超える細胞異常を示す物理的な特性を有する検体の中の細胞の相対的な存在度である。別の実施例では、1又はそれ以上の判定した特性のうちの少なくとも1が、母集団の中の平均尤度を超える細胞異常を示すオブジェクト値を有する検体の中の特定した細胞対象の相対的な存在度である。
本発明に係る実施例が、以下の詳細な説明及び添付図面において説明且つ図式的に示されており、添付図面では代替的な実施例における同じ構成要素に共通の符号を付している。
図1は、典型的な細胞検体の画像処理及び検査システム20の概略図であり、限定するのではなく例として図示及び記載され、本発明の実施例の様々な態様及び可能性をより十分に説明する。本書に開示及び記載された発明概念は、多くの代替的な細胞検体の画像処理及び検査システムに適用できることに留意されたい。
画像処理及び検査システム20は、2つの主要な構成要素:撮像装置22及び検査スコープ24を有している。さらに、システム20は、複数のスライド格納カセット26(説明を簡単にするために3つを図示する)を有しており、撮像装置22及びスライドカセット26は、全体として、スライド移送アッセンブリ28の周りの円周方向のパターンで設置されている。スライド移送アッセンブリ28は、中央に位置している鉛直方向の進路32に回転可能に結合された伸長可能なアーム30を有している。スライド係合機構36が伸長可能なアーム30の遠位端に設置されており、スライド格納カセット26から取り出される個々のスライド34に容易に係脱するよう構成されている。スライド移送アッセンブリが、1又はそれ以上の駆動機構を有して伸長可能なアーム30の精度ある移動を与え、アーム30が鉛直方向の進路32の周りを回転し、進路32から伸長し、進路32に向かって引っ込み、進路32に沿って軸方向に移動できる。これにより、スライド係合機構36が、半径方向の伸長範囲、及び鉛直方向の進路32に沿った軸方向の移動範囲、及び伸長可能なアーム30のみによって制約されながら、3次元空間内の任意の点に達し得る。駆動機構は、適切なモータ駆動装置(例えば、圧電アクチュエータ、ステッパモータ、サーボモータ)及び/又はエンコーダ、可動性及び/又は可撓性のジョイント、及び動作駆動ハードウェアを含む、既知である従来の機械システム及び/又は電気機械システムとすることができ、伸長可能なアーム30及びスライド係合機構36の移動を制御する。格納カセット及び撮像装置との間でスライドを移送するための伸長可能なアームを使用した典型的なスライド移送システムが、米国特許出願公開番号第2003−0179445号に図示及び記載されている。
撮像及び検査システム20で使用するための典型的なスライド格納セット26を図2に示す。スライド格納カセット26は、好適には、カセット26の個々の棚38の上に鉛直方向に積層した多くの(例えば、少なくとも2ダース)スライド34を格納する。カセット26の少なくとも一端が開放されており、伸長可能なアーム30のスライド係合機構36によって個々の棚38に対するスライド34の取り出し及び戻しのためにアクセスできる。代替的な実施例では、スライド格納カセット26及び/又は棚38が任意の数の実行可能な構成を有しており、係合機構36によってスライド34の取り出し及び戻しが可能な従来のパターンで積層及び/又は配置できる。
図1に戻ると、各スライド上に定着された検体の離散的な拡大像を取得するための既知の従来型の画像処理システム及び/又は機構として撮像装置22を実行できる。一例として、図3に図式的に示すように、撮像装置22は、好適には、個々のスライド34が上に取り付けられたスライドステージ40と、スライド34上に定着された生体学的検体の画像を取得するよう設置された高速カメラ42とを有する。スライドステージ40及びカメラ42は、好適には、スライド34上の離散的位置の画像を取得するように互いに相対移動可能である。画像処理及び検査システム20で使用する典型的な撮像装置が、米国特許出願公開番号第2003−0179445号に図示及び説明されている。また、米国特許出願番号第09/430,198号に見られる示唆及び開示が引用される。
撮像装置22の動作中に、スライド34がそれぞれの格納場所(すなわち、カセット/棚26/38)から(好適には体系的な順序で)一つずつ引き出され、伸長可能なアーム30によってスライドステージ40上に配置される。カメラ42が検体スライド34の画像を取得し、スライド34がスライドステージ40から外されて、伸長可能なアーム30によってそのそれぞれの格納位置に戻される。好適には、このようなプロセスが、全ての検体スライド34の画像が取得されるまで続行する。撮像装置22は、各画像データを処理するための1又はそれ以上のコンピュータ44に動作可能に結合されている。本書で使用するように、「コンピュータ」は「プロセッサ」と同義であり、コンピュータ44を撮像装置22と別にする必要は無く、例えば、撮像装置22に「内蔵型」コンピュータ44を設けて画像処理を実行してもよい。いずれのケースにおいても、撮像装置22及び/又はコンピュータ44が、システム動作ソフトウェア及び(少なくとも一時的に)検体スライド34からの処理画像データの双方を記憶するための十分な帯域幅を有するメモリとともに、適切なユーザインターフェイス及び(任意の)画像ディスプレイ(いずれも図示せず)と連結されている。撮像装置22及び/又はコンピュータ44は、ネットワーク接続するか又は独立型でよい。さらに、各検体スライドからの画像データを、リアルタイム及び後の分析のために、撮像装置22及び/又はコンピュータ44と関連するローカルメモリに記憶するか、又は別の場所又は記憶媒体に伝送してもよい。
スライド移送アセンブリ28は、好適には、撮像装置22及びコンピュータ44によって制御されるか、又はそうでなければこれらに動作可能に結合され、撮像装置22の動作及び各検体スライド34に関する画像データの処理と伸長可能なアーム30の移動とを同期させる。特に、撮像装置22は、好適には、画像が取得されると各検体スライド34について取得された画像データを処理し、細胞対象(単細胞及び細胞クラスターの双方)がアーチファクトと区別されて、各検体における関心のある対象を特定する。撮像装置22は、形状、大きさ、組織、コントラスト、暗さ、細胞核の積分光学密度、及び細胞核の平均光学密度といった、それぞれの対象の1又はそれ以上の物理的な特性に基づいて、特定した関心のある細胞対象(一般に細胞核であるが、ある実施例では細胞質とすることができる)のオブジェクト値を計算する。検査スコープ26での検査のために供すべき各検体スライド34の視野が、相対的に最も関心の高いオブジェクト値を有する特定した対象の場所に基づいて撮像装置22によって選択される。
また、撮像装置22が、改良型「traveling salesman」といったアルゴリズムを用いて選択した視野のx,y座標を描き、検査スコープ24での視野を与えるための効果的な観察経路を決定する。選択した視野のx,y座標は、それらの観察のための経路プランに加えて、システム20、例えばコンピュータ44に関連するメモリによって、検査スコープ24による後の検索のために記憶される。検査スコープ24は、画像処理装置によって決定された経路にしたがって各検体スライドに関する関心のある選択視野を与える駆動ステージを有する従来の顕微鏡インターフェイスである。細胞検査技師は、検体スライド34に関する関心のある特定した視野のそれぞれを観察し、細胞異常の可能性のレベルについて、いくらかでもあれば判定する。検査スコープ24は、好適には、細胞検査技師が前の関心のある視野に戻って、撮像装置22によって必ずしも予め選ばれたのではない検体スライド34上の場所を手で移動させる(及び観察する)ことができるよう構成される。また、検査スコープ24は、さらなる分析のために検査する細胞検査技師が検体スライド34上の対象に電子的にマーキングするための手段を提供する。画像システム20で使用するための典型的な検査スコープが、米国特許出願公開番号第2003−0179445号に図示及び記載されている。
画像処理及び検査システム20の実施例の典型的な特徴及び機能がシステム20の方法とともに、細胞の検体スライドのプレスクリーニング及び検査のために使用する。特徴及び機能は、画像処理装置22,検査スコープ24、及び関連するコンピュータ44のうちの1又はそれ以上によって実施され制御されるソフトウェア及び/又はファームウェアでよい。次の説明及び関連する図面が、細胞の検体スライドをスクリーニング及び検査するためのシステム20の使用方法との関連で主に与えられている一方で、このような説明が他方で記載された方法を実施するために使用するシステム20の実施例の様々な特徴及び機能を説明するものであることに留意されたい。
図4を参照すると、ある実施例において、撮像装置22、検査スコープ24、及び関連するコンピュータ44が、細胞検体をプレスクリーニング及び検査するための方法100を実施するよう又は方法100の実施を促進するよう構成される。方法100は、撮像装置22を使用して検体スライド34に定着された細胞検体から画像データを取得する開始ステップ102を有する。ステップ104で、画像データが処理され、検体の中の関心のある細胞対象が、撮像装置22によって適用される1又はそれ以上のスクリーニング基準に基づいて特定される。スクリーニング基準は、いくつかのアーチファクトを排除しない一方で、いくつかの細胞対象自身を排除してしまう可能性があるが、好適には、検体の中のアーチファクトから関心のある細胞対象(単細胞及び細胞クラスターの双方)を区別する。
ステップ106で、撮像装置22が、形状、大きさ、組織、コントラスト、細胞核の積分光学密度、細胞核の平均光学密度といった、それぞれの物理的な特性に基づいて、特定した関心のある細胞対象それぞれについてのオブジェクト値を計算する。ステップ108で、比較的大きな関心のあるオブジェクト値を有するオブジェクトの検体スライド34のx,yスライド座標に基づいて、検査スコープ24での検査のために与えられる検体スライドの視野を選択する。例えば、検体の中の特定した関心のある対象のオブジェクト値を、(単細胞の対象について)相対的な積分光学密度、又は(クラスターの対象について)平均光学密度に基づいて順番に並べてもよく、Cytyc Corporationによって現在市販されているThin Prep Imaging Systemで行われているように、選択した視野が各検体について相対的に最も高い順位の単細胞対象及びクラスター対象のx,yスライド座標を含む。
ステップ110で、さらに、検体の中の1又はそれ以上の関心のある特定した対象を、以下のステップ118でより詳細に説明するように、強調検査のために選択する。非限定的な実施例として、強調検査のために選択した対象は、オブジェクト値が計算された物理的な特性に関して母集団から抽出される統計情報に基づいて、平均尤度を超える細胞異常をいくらかでも示すオブジェクト値を有する検体の中の対象である。追加的又は代替的に、強調検査のために選択した対象は、特定した検体についてオブジェクト値の上位パーセント(例えば、上位2−3%)又は上位特定数(例えば、上位2−3個)に収まるオブジェクト値を有する対象でもよい。
ステップ112で、検体スライドに関して選択した視野のx,y座標が、Cytyc CorporationのThin Prep Imaging Systemによって採用された改良型巡回セールスマンアルゴリズムといった、検査スコープの視野を与えるための効果的な観察ルートを決定するアルゴリズムを使用して描かれる。ある実施例では、例えば、特定の順番でこのような強調した対象を含む視野を与えることによって、及び/又は、同じ視野又は異なる視野で、このような対象の2又はそれ以上の離散時間を与えることを繰り返すことによって、観察経路が、どの視野が強調検査のために選択された対象を含んでいるのかが必然的に考慮に入れられる。ステップ114で、選択した視野のx,y座標が、観察経路とともに、検査スコープ24による後の検索のためにシステム20(例えば、関連するコンピュータ44)によって記憶される。代替的な実施例では、検体スライド34の同時検査(又は同時検査に近いもの)のために検査スコープ24にリアルタイムで情報を送って画像処理を迅速に終えるようにしてもよい。
ステップ116で、各検体スライド34が検査スコープ24の観察ステージに取り付けられ、選択した視野が観察経路に従って検査する者(一般に細胞検査技師)に提供する。ステップ118で、強調検査のためにステップ110で選択した対象が、画像処理及び検査システム20によって用いられる特定の実施例に対応する方法で検査スコープ24によって強調される。このような強調検査は、元々供されたのと同一又は異なる視野において、例えば、1又はそれ以上の選択した対象の検査スコープへの追加的な提供を有してよい。このような追加的な提供は自動的又は条件付きでよい。例えば、検体スライドの初期の検査の際に対象が後の分析のためにマーキングされていない場合にのみ、強調検査のために選択した1又はそれ以上の対象を追加の検査のために供してもよい。代替的及び/又は追加的に、選択した1又はそれ以上の対象のこのような強調検査を、検査スコープ24に観察のために対象が供された場合に対象を反転表示することによって又はそうでなければ視覚的に強調することによって供してもよい。
一例によれば、図5Aは、視野を観察する細胞検査技師によって円形に見える強調した関心のある対象134及び136を有する視野132を示す。特に、円138及び140の画像が視野132に検査スコープ24によって加えられ、良く知られた方法でそれぞれの対象134及び136の位置を囲んで、検査スコープ24の視野に複数の視覚映像入力を形成する。2つの円形の対象の特定の例は非限定的な説明であり、2の対象よりも多い対象もまた可能であるが、多くの場合1つの対象のみが円で囲まれる(すなわち、反転表示される)。別の実施例として、図5Bに示すように、矢印142及び144の画像が視野146に加えられており、矢印142及び144の照準が強調すべき各対称体148及び150に向けられている。さらに、矢印142及び144によって指し示された2つの対象の特定の例は非限定的な記載であり、2つよりも多い対象も可能であるが、多くの場合1つの対象のみを指す(すなわち、反転表示される)。さらなる例として、図5Cは視野152を示しており、1組の整列した角括弧154の画像が、それぞれの強調した対象156を「囲む」ために加えられている;そして図5Dは視野158を示しており、強調画像160が、「強調した」カラー又は色合いを具える付加的なバッキング・イルミネーション(backing illumination)162を具えて反転表示されている。
図5A−5Dに示す例は、検査スコープ24が選択した関心のある対象の検査を強調できるほんの一部の方法であり、検査する者によって検索及び分析し易くするために、個々の関心のある対象又は視野全体を視覚的に反転表示又は強調する多くの他の様々な方法があることに留意されたい。例えば、視野が強調すべき1又はそれ以上の対象を有する検査スコープ24に与えられるときにいつでも、音声(例えば、弱いブザー)又は機械的な振動(例えば、携帯型のコントローラ)を作動させてもよい。さらなる例として、1又はそれ以上の強調すべき対象を含む視野に反転表示した境界を与えるか、又は、検査スコープを対象とするレンズを通して示される点滅光又は表示の後に、1又はそれ以上の強調すべき対象を含む視野が与えられてもよい。ある実施例では、強調すべき対象、又はいくらかでもあれば所定の検体スライド34にこのような対象を含む視野が、検査のために最初に与えられたときに強調される。他の実施例では、対象及び/又は視野が、同一又は異なる視野に拘わらず、検査のための別の提供の際にのみ視覚的に強調される。さらに別の実施例では、選択した対象及び/又は視野が、検査のために供される毎に強調される。さらに別の実施例では、強調すべきこれらの対象及び/又は視野が各検体スライド34の検査の際に1回よりも多く検査のために与えられた場合を除いて、個々の対象及び/又は視野に特定の強調が与えられない。さらに別の実施例では、検査スコープが、例えば、標準的な10倍から強調検査のための最大40倍まで、強調すべき対象の倍率のレベルを大きくさせる。
上述のように、検査スコープ24が、好適には、さらなる検査のために検体スライドの細胞対象をマーキングするためのユーザインターフェイスを有する。検体スライドの検査の際にさらなる分析のために対象にマーキングされた場合、明らかに偽陽性が生じないため、本発明のある実施例では、検査のために供される場合にどの対象も初めに強調されず、その代わりに、追加的なステップ120で、検体スライド34の検査の際にさらなる検査のために細胞対象がマーキングされているかどうかを検査スコープが検出する。与えられた全ての視野の検査の後で、どの対象もマーキングされていなかった場合、1又はそれ以上の対象が前に与えられた場合と同一又は異なる視野における、検体スライド34の1又はそれ以上の前に与えられた特定した関心のある対象が、検査スコープ24での追加的な検査のために供される。上記のように、ステップ122の一部として、繰り返し検査のために与えられたこのような対象を(追加的に)視覚的に(又は音声的又は機械的に)強調する。
図6を参照すると、画像処理及び検査システム20を使用して細胞検体をプレスクリーニング及び検査するための別の方法200が、一般に、方法100で実行されるのとほぼ同じ開始ステップを有しており:検体スライドに定着された細胞検体の画像を取得するステップと(ステップ202);画像処理を行って検体の中の関心のある細胞対象を特定するステップと(ステップ204);1又はそれ以上の物理的な特性に基づいて特定した細胞対象についてのオブジェクト値を計算するステップと(ステップ206);を有する。しかしながら、方法200では追加的なステップ224が実行され、さらに、撮像装置22が画像データに基づいて、母集団の中の細胞異常の尤度に関連する検体スライド34の1又はそれ以上の特性を判定する。
ステップ226で、1又はそれ以上の判定した特性のうちのいくつかが、異常細胞又は異常が疑わしい細胞の存在度の平均以上の尤度を示す範囲内にある場合、撮像装置22は、検査スコープ24での検査のために比較的多くの数の対象及び/又は視野を選択する。しかしながら、1又はそれ以上の判定した特性のいずれもが、このような範囲内にない場合、撮像装置22は、検査スコープ24での検査のためにより少ない数の対象及び/又は視野を選択する。1以上の検体の特性を判定する実施例では、重み付けした検体スコアを計算し、このような重み付けした可能性のある検体スコアの範囲と比較して、どのくらいの数の対象及び/又は視野が検査スコープでの検査のために供されているのかを判定してもよい。このような数がいかなるものであっても、撮像装置は視野の中にある相対的なオブジェクト値に基づいて視野を選択し、さらに強調検査のために1又はそれ以上の対象を選択する。
非限定的な例によれば、判定した検体の特性が、血球の相対的な存在度、検体スライド又はその領域の不透過度、細胞核の平均積分光学密度よりも実質的に大きい所定の細胞核の積分光学密度を有する細胞の相対的な存在度、又は検体の中の特定した細胞対象についての細胞核の積分光学密度の分布の標準偏差の相対的な存在度を有する。ある実施例では、1又はそれ以上の判定した特性のうちの少なくとも1が、母集団の中の平均尤度を超える細胞異常を示す物理的な特性を有する検体の中の細胞の相対的な存在度であり、特性が、形状、大きさ、組織、コントラスト、細胞核の積分光学密度、及び細胞核の平均光学密度を具える群から選択される。別の実施例では、1又はそれ以上の判定した特性のうちの少なくとも1が、母集団の中の平均尤度を超える細胞異常を示すオブジェクト値を有する検体の中の特定した細胞対象の相対的な存在度である。
方法200は、方法100で実行されるのとほぼ同じさらなるステップを有している。特に、ステップ218で、検体の中の1又はそれ以上の関心のある特定した対象が、さらに、方法100のステップ110に関する上記と同じ基準に基づいて強調検査のために選択される。ステップ212で、検体スライド34に関する選択した視野のx,y座標が、検査スコープに視野を与えるための効果的な観察経路を判定するアルゴリズムを用いて描かれ、観察経路が、方法100のステップ112に関する上記のように、どの視野が強調検査のために選択された対象を含んでいるかを考慮に入れられる。ステップ214で、選択した視野のx,y座標が、検体スライド34に関する観察経路及び判定した特性情報とともに、検査スコープ24による後の検索のために(例えば、コンピュータ44に関する)システム20によって記憶される。代替的な実施例では、画像処理の完了の直後の検体スライド34の同時検査(又はほぼ同時検査)のために、検査スコープ24に情報をリアルタイムで伝送してもよい。
ステップ216では、検査スコープ24での検査のための視野が与えられ、ステップ218で、強調検査のためにステップ226で選択されたこれらの対象が(いくらかでもあれば)、画像処理及び検査システム20によって使用される特定の実施例に対応する方法で検査スコープ24によって強調される。このような強調検査は、方法100のステップ118に関して上記と同じ形式を取り、最初に供された場合と比較して同一又は異なる視野であるかどうかに拘わらず、このような追加的な提供が自動的又は条件付きであるかどうかに拘わらず、例えば、1又はそれ以上の選択した対象の検査スコープへの追加的な提供を含む。例えば、強調検査のために選択した1又はそれ以上の対象は、(ステップ224によって)検体スライドの判定した特性が異常又は異常が疑わしい細胞の存在度の平均以上の尤度を示す場合にのみ、追加の検査のために与えられてもよい。さらに、選択した1又はそれ以上の対象のこのような強調検査が、対象が検査スコープ24上で観察するために与えられた場合に、反転表示又はそうでなければ視覚的に強調した対象を有してもよい。
また、方法100と同様に、検査スコープ24での検体スライド34の検査の際にさらなる分析のために対象がマーキングされた場合に擬陽性が生じないため、本発明のある実施例では、方法200において検査のために与えられた場合にいかなる対象も最初に強調されず、その代わりに、追加のステップ220において、検査スコープが検体スライド34の検査の際にさらなる検査のために細胞対象がマーキングされたかどうかを検出する。与えられた全ての視野の検査の後に、いかなる対象もマーキングされていなかった場合、ステップ222で、検体スライド34に1又はそれ以上の前に与えられた特定した関心のある対象が、1又はそれ以上の対象が前もって与えられた場合に、同一又は異なる視野で、検査スコープ24上の追加の検査のために与えられる。ステップ222の一部として、繰り返し検査のために与えられたこのような対象を、上記のように(追加的に)視覚的に(又は音声的に又は機械的に)強調してもよい。