通信システムは、アナログでもデジタルでも信号を送信するためにそれらを使用する場合、典型的には、信号送信機の一部として電力増幅器を採用する。例えば、無線基地局の送信機においてはそのような電力増幅器を使用する。残念ながら、そのような電力増幅器は非線形伝達関数を持つ。もしプロットすれば、電力増幅器の出力信号の振幅と位相は、電力増幅器の入力振幅の関数として、入力信号振幅の広い範囲にわたって非線形曲線を示すであろう。変化する振幅を有する強い信号が電力増幅器を通過すると、非線形伝達関数はひずみの原因となる。二つ以上の強い信号が同時に非線形伝達関数を受けると、相互変調(IM)ひずみが発生し、これは大きな問題である。
直交周波数分割多重(OFDM)を採用する場合、振幅変動が時間領域で発生するが、この理由は、多くの副搬送波が、全て異なる周波数と変化する位相位置を有して、変調信号を得るために一緒に加算されるからである。これらの副搬送波間の干渉のため、変調方式のいかんにかかわらず、変調信号の振幅の時間領域で山と谷ができる。この場合もまた、電力増幅器の非線形性は問題である。
そのようなひずみの効果を削減する一つの野蛮な強制方法は、増幅器への駆動レベルを低減し(“バックオフ”)、増幅器出力電力を飽和レベルよりはるかに低くして、AM/AM、AM/PM、及びIMひずみの大きさを許容できるようにすることである。しかしながら、受け入れ可能なひずみレベルを得るために、増幅器を著しくバックオフしなければならないなら、この技術は選択肢とはならない。電力増幅器をバックオフすると、電力増幅器の電力変換効率が低減する傾向がある。加えて、所定の要求送信出力電力に関して、より低い効率で動作する電力増幅器は、最高効率で動作可能な電力増幅器より大きく(かつ高価に)なってしまう。また、所定の出力電力では、より低い効率の電力増幅器は、よりコストのかかる電力供給と冷却構成とを必要とする。
そのようなひずみを処理する別の方法は、線形化回路を使用することである。その回路において、線形化は、例えば、プリディストーション、カーテシアンフィードバック、フィードフォワード、また、何らかの線形化原理によって達成可能である。例えば、プリディストーション回路は、変調信号に対して動作し、その変調信号は、電力増幅器の伝達関数の逆数を計算して前記変調信号をひずませることによって増幅される。振幅および位相の両伝達関数はプリディストーションされる。従って、理想的には、プリディストーションおよび電力増幅器ひずみは相互にキャンセルし、線形化ユニットの入力とRF電力増幅器の出力との間で線形増幅を得る望みがある。
いくつかのセルラ無線ネットワーク標準では、セル領域内の送信のため周波数領域で無線基地局に割当てた利用可能バンド幅内で、OFDMまたは同様の変調技術を使用して、しばしばユーザ端末(US)として言及される数個の移動体無線局に対して、無線基地局は個々のデータを即時に送信する。
OFDMでは、利用可能なバンド幅は多くの等距離周波数副搬送波に分割され、時間は同じ大きさのシンボルに分割される。図1は副搬送波およびシンボルをOFDMデータ“チャンク”にいかに編成できるかを示している。ここで、各OFDMデータチャンクは一定数の連続する副搬送波を含み、一定数の連続するシンボルで各副搬送波を変調する。異なるチャンクには原理的には、異なる数の副搬送波を含んでもよい。しかしながら、スケジューリングに要する実時間処理容量の大きさを制限するため、チャンクの概念がまず導入される。したがって、全てのチャンクに、同じだがあまりにも小さくはない数の副搬送波を含ませることが実際的であろう。非限定的な例では、20MHzの周波数バンドには、15kHz離れた1280個の副搬送波に分割した19.2MHzの利用可能なバンド幅と2×0.4MHzのガードバンドとを含めてもよい。この場合、各OFDMデータチャンクには20個の副搬送波を含むことができ、各副搬送波は7個のシンボルで変調できるであろう。各シンボルは約71.4μsec継続できる。従って、各OFDMデータチャンクは0.5msecで300kHzに及ぶ。
無線基地局は、数個のUEに即時に送信するため、OFDMデータチャンクを動的にスケジュールする。周波数領域では、異なる電力レベルを持たせてでも、数個のチャンクを各UEに割当てもよい。電力増幅器への信号は、送信する異なる副搬送波全ての総和であるから、ピーク対平均電力比(PAPR)は高い。
各OFDM送信時間区間の間、無線基地局は適当な数のOFDMチャンクを各UEへの送信に使用し、その数は送信すべきデータ量、要求サービス品質等に依存する。図2は、周波数領域で隣接するOFDMチャンクを3個のUE各々に割当てられる方法を示す。無線基地局送信機とUE受信機との間のパス損失は、距離、パス反射、 レーリーフェージング等との違いによって、異なる同時UE間で大きく異なる可能性がある。不必要な干渉を削減し、利用可能な出力電力の利用を最大化するため、無線基地局送信機は、各UEに対する個々の出力電力を可能な限り低く設定し、一方ではさらに、対応するパス損失を補償し、所望のデータ転送タイプに必要な信号対雑音比を維持する。これは、送信電力レベルが周波数にわたって大きく変化する原因となる。電力変化が利用可能なバンド幅にわたってでこぼこであればあるほど、特にバンド幅の外側部分に向かってより高い電力レベルを有すると、IMひずみスペクトルにおいてより多くのピークが発生する。出力電力レベル変化が図2に示されている。UE1に対する複数のチャンクの全てが、周波数領域で1個のブロックとして一緒にグループ化されて高い第1の電力で送信され、UE2に対する複数のチャンクの全てが、周波数領域で1個のブロックとして一緒にグループ化されて低い第2の電力で送信され、そして、UE3に対する複数のチャンクの全てが、周波数領域で1個のブロックとして一緒にグループ化されて中間の第3の電力で送信されることが示されている。
米国特許出願公開第2004/0247042号明細書
以下に、特定の実施例、手順、技術等について、説明と非限定とを目的に特に詳しく説明する。しかし、当業者は理解するであろうが、これらの具体的な詳細とは別に、他の実施例が採用されてもよい。例えば、Wimaxの送信機の非限定的な例のような、種々のOFDM送信機に対する非限定的な適用例を使用して以下の説明を容易にしているが、この技術は、GSMやTDMA用の送信機の非限定的な例のような何らかのタイプの無線送信機に対して、また、ADSL用の送信機の非限定的な例のような何らかのタイプの有線接続送信機に対しても、適用してもよい。ある場合には、公知の方法、インタフェース、回路、およびデバイスについての詳細な説明を省略し、不必要な詳細で説明を不明瞭にしないようにしている。さらに、幾つかの図では、個々のブロックを示す。しかし、一つ以上のエンティティが複数の機能を実行してもよい。当業者は理解するであろうが、個々のハードウエア回路を使用することや、適切にプログラムしたデジタルマイクロプロセッサまたは汎用計算機とともにソフトウエアプログラムとデータを使用することや、特定用途向け集積回路(ASIC)を使用することや、一つ以上のデジタル信号プロセッサ(DPS)を使用することの内、少なくともいずれかを使用して、これらのブロックの機能を実施してもよい。
ここで、周波数へのRF電力分配技術について、図4に示す無線送信機に関連して説明する。送信機10は、送信されたデータを受信するデータインタフェースユニット12を含む。データインタフェースユニット12は、さらなる処理に適するフォーマットにデータを変換し、その変換されたデータをベースバンド処理ユニット14に渡す。ベースバンド処理ユニット14は、例えば、データの暗号化、データのブロック符号化、データのインターリーブ等により、送信のためのデータを準備し、スケジューラ16にそのデータを転送する。スケジューラ16は一つ以上のデータブロックにそのベースバンドデータを小分割する。ここで、送信時間区間の間で同じ電力レベルで送信される全てのデータは、同じブロックに集められる。処理負荷を削減するため、同じブロックに類似の電力レベルを一括して集めてもよい。一つの送信時間区間の間に送信するデータ量で、利用可能なバンド幅を使い果たしてもよいし、そうでなくてもよい。
スケジューラ16はさらに、各データブロックをデータ部分に小分割する。ここで、各部分は利用可能なバンド幅内の一つ以上の連続する副搬送波と関連している。その部分は同じ大きさであってもよいし、同じ大きさでなくてもよい。簡単な場合は、単一の電力レベルでの送信のために単一のデータブロックがあるであろうが、RF電力分配技術は、異なる電力レベルで送信する二つ以上のデータブロックにも適用する。好ましい非制限的な実施例では、スケジューラ16は、全てのブロックの部分を周波数領域に分配し、複数の電力レベル各々での部分部分の送信が、その送信時間の間、利用可能な周波数バンド幅の中心に向かって、より低い電力レベルより、より高い電力レベルで、より多く分配されるようにする。さほど好ましくはない非限定的な実施例では、スケジューラ16は、利用可能な周波数バンド幅にわたり実質的に一様に、周波数領域の全てのブロックの部分を分配する。利用可能な周波数バンド幅と決められた周波数バンド幅という用語は、送信機による送信のために使用される、或いは、送信機による使用のために決定または判断される何らかの周波数バンド幅を意味する。例えば、もしOFDM送信機に10個の副搬送波により送信することが許可されるが、これらの副搬送波の内の9個のみを使用して送信すると判断すれば、利用可能な或いは決められた周波数バンド幅はこの9個の副搬送波である。
スケジュールされたデータ部分は変調器18で変調され、次に、変調されたデータ部分は線形化ユニット20で処理される。線形化を使用するのは好ましいが、それはRF電力分配技術の使用のために要求されてはいない。一つの非制限的な例は、本願と共通の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2004/0247042号明細書に記載されたデジタル線形化回路である。次に、線形化ユニット20からの出力信号は、デジタル/アナログ変換器22でアナログ信号に変換される。周波数アップコンバータ24は、ベースバンド信号をRFに変換し、そのRF信号をRF電力増幅器26に供給する。電力増幅器26は分配されたデータブロック部分を搬送するRF信号を増幅し、アンテナを経由して伝送する。電力増幅器26からの出力信号の一部分はオプション的にアナログ/デジタル変換され、適応フィードバックループで線形化ユニット20にフィードバックされてもよく、電力増幅器26により生じるひずみは経時変化するかもしれないという事実に対処する。フィードバックループにより、線形化ユニット20がRF電力増幅器26の転送特性における変化を追跡し、適応することができる。図4の非限定的な例は、送信機のデジタル部分における個別のブロックとして、線形化エンティティを示しているが、その線形化機能は、他の非限定的な例では、送信機のアナログ部分において、または送信機のデジタル部分において部分的に、そして、アナログ部分において部分的に実行しても良い。
送信機10は何らかの適当な送信への適用において使用できる。一つの非限定的な例はセルラ無線アクセスネットワークで使用する無線基地局である。もう一つ別の非限定的な例は、無線構内通信網(WLAN)におけるアクセスポイントである。さらにもう一つの非限定的な例の適用は移動局である。この場合、“移動局”という用語が一般的に使用されており、この用語は、無線インタフェースを介して通信できる何らかのタイプのユーザ機器を包含する。また、非限定的なADSLの例のような有線接続への適用もある。
図5は、周波数へのRF電力分配を実施するために使用される非限定的手順の例を示すフローチャートである。送信機により送信のために割当てられる利用可能なバンド幅が決定される(ステップS1)。次の送信時間区間の間に一つ以上の受信器に送信するため、種々の異なるデータ量が識別される(ステップS2)。受信器としては、移動局、計算デバイスで実行されるソフトウエアアプリケーション、または、例えばマルチメディア通信における多くのデータフローの中の一つのような特別のデータフローがあり得る。さらに、送信源を必要とするか、または送信源となる可能性のある他のパラメータがオプション的に決定されてもよい。例えば、パス損失や、最小ビットレート、最大ビットエラーレート等のようなあるサービス品質パラメータは、特定の受信器へのデータ送信に必要な電力レベルに影響を及ぼすであろう。次の送信時間区間の間の送信のために識別されたデータ量内で、同じか類似の電力レベルで送信するデータ量が識別される(ステップS3)。次に、好適なものであり、必らずしも必要なものではないが、そのデータ量は、決められた周波数バンド幅の中心に向かって、より低い電力レベル部分より、より高い電力レベル部分がより多くなるように、周波数にわたって分配される。何らかの方法で、決められた周波数バンド幅の中心に向かって、より低い電力レベルを有するデータ量より、より高い電力レベルを有するデータ量をより多く分配する何らかのやり方で分配おこなうなら、いずれのタイプの分配方法が使用されてもよい。実際には、例えば、実質的に一様な分配を行うような他のタイプの分配が使用されてもよい。次に、制御はステップS1に戻る。
図6は、周波数領域における利用可能なバンド幅内に分配した幾つかのユーザに対する電力レベルを示すグラフである。図6の分配を、図2の非限定的な例で使用されている送信機により使用される典型的なタイプの電力分配と比較する。図2では、全てのUE1チャンクは、電力レベル1で単一の隣接するデータブロックに一緒にグループ化され、全てのUE2チャンクは、電力レベル2で一つのデータブロックに隣接してグループ化され、全てのUE3チャンクは、電力レベル3で一つのデータブロックに隣接してグループ化されている。図6では、これらの隣接するデータブロックが分解され、その結果、電力増幅器出力において、決められた周波数バンド幅の中心に向かって、より低い電力レベルより、より高い電力レベルをより多くして利用可能なバンド幅内に分配されていることを示している。
図7は、図3とは対照的に、三次および五次相互変調ひずみに相当する位置においてバンド外放射の違反が全くないことを示している。従って、図3で要求されるIM抑圧能力と比較すると、はるかに小さいバンド幅ではるかに低いIM抑圧能力が線形化ユニットから必要とされる。
周波数へのRF電力分配技術に関連して、多数の利点がある。第一に、RF電力増幅器出力を適切に線形化するために、バンド幅がより狭く、バンド外放射要求条件のより低い線形化ユニットを採用しても良いため、より低コストである。第二に、電力増幅器を線形化する線形化ユニットに対する要求条件を下げることは、もし適応フィードバックを使用するなら、電力から線形化ユニットへの適応フィードバックに対する要求条件をもまた小さくする。第三には、レイリーフェージングにより生じる電力ディップは利用可能なバンド幅の局部的部分に影響を及ぼすだけであり、一方、各UEに宛てられた電力は拡散されるので、レイリーフェージングに対するより良い回復力が得られる。
この技術を使用できる環境の一例は移動体通信である。図8は、複数のユーザ機器(UE)が無線インタフェースを介して、一つ以上の基地局(BS)とアクセスポイント(AP)との内いずれかをを含む転送ネットワークと通信する単純化した移動体通信システムを示している。その転送ネットワークは典型的には、一つ以上のコアネットワークに接続され、それは次いでインターネットやPSTN等のような他のネットワークに接続される。
この移動体通信環境において、一つの非限定的な適用例は、図9の50で示すような無線基地局である。この図は、図4に説明したものと同様のものである。それで、ここでは相違点のみについて説明する。一つまたは数個のUEにダウンリンク伝送するため、伝送ネットワーク、例えば、無線アクセスネットワークからデータがデータインタフェースユニット12において受信される。この例では、OFDMを使用し、したがって、データブロックスケジューラはチャンクスケジューラ52である。チャンクスケジューラ52は、周波数領域における利用可能なバンド幅にわたって各々それ自身の電力レベルで送信される一つ以上のデータブロックの複数チャンクを分配するために構成されている。次に、OFDMチャンクスケジューラ52は、OFDM変調器54にスケジュールされたチャンクを供給し、OFDM変調器54はスケジューラ出力にしたがって、利用可能なバンド幅内で各副搬送波を変調し、これら副搬送波のセットを時間領域信号に変換する。OFDM変調器出力は、図4に関して説明したように処理される。移動局はまた、図9に示すような送信機を使用することができる。
OFDMを使用する無線基地局送信機により実行される、図10のフローチャートに示されるOFDM電力分配手順の例を参照して説明する。送信時間区間に間に、送信に利用可能なバンド幅が決定される(ステップS10)。次の送信時間区間の間に送信される種々の異なるデータ量が識別される(ステップS11)。データの種々の部分各々に使用する電力レベルが決定される(ステップS12)。例えば、パス損失や、最小ビットレート、最大ビットエラーレート等のようなあるサービス品質パラメータは、データの特定の量または一部を送信するのに要する電力レベルに影響を及ぼすであろう。決められたデータ量を一つ以上のブロックに小分割する。ここで、各ブロックは同じまたは類似の電力レベルに関連するデータ量を含む(ステップS13)。各ブロックは一つ以上のOFDMチャンクに小分割される。各OFDMチャンクは、利用可能なバンド幅内で一つ以上の連続した副搬送波に対応する(ステップS14)。次に、そのOFDMチャンクは周波数にわたって分配され、利用可能な周波数バンド幅の中心に向かって、より低い電力レベルを有するOFDMチャンクより、より高い電力レベルを有するOFDMチャンクが、より多くなるように分配されるようにする(ステップS15)。もし、特定の移動局の受信バンド幅が送信機の利用可能なバンド幅のサブセットに制限されるなら、その移動局に送信されるOFDMチャンクは、送信機の利用可能な周波数バンド幅の中心に向かって、より低い電力レベルより、より高い電力レベルにより多くなるように、しかし、移動体の受信バンド幅内のみで、分配されなければならない。
ここで、上記OFDMの例のために、周波数にわたって電力レベル分配する一つの非制限的な例のアルゴリズムについて説明する。OFDMチャンクは、その対応する電力レベルにしたがい、高い電力レベルから低い電力レベルに並べ替えられる。次に、そのOFDMチャンクを電力レベル順に、最高電力レベルから開始し、利用可能なバンド幅の中心からかつ連続的に外側に向かって割当て、全ての第二のチャンクを次のより低い周波数空間に割当て、各残りのチャンクを次のより高い周波数空間に割当てるようにする。そのアルゴリズムが終了すると、利用可能なバンド幅の中心に向かって、より高い電力レベルを有するOFDMチャンクがより低い電力レベルを有するチャンクより、より多く生じることになる。
各種の実施例を示し、詳細に説明したが、請求の範囲はいかなる実施例または例によって限定されるものではない。いかなる特別な構成要素、ステップ、範囲、または機能も、本願の請求の範囲に含めなければならないように本質的であるということを示唆するものとして、上記説明が読まれるべきではない。請求の範囲によってのみ、特許されるべき主題の範囲は定義される。法的保護の範囲は特許された請求の範囲とその均等物において述べられた文言によって規定される。