JP2009508135A - 質量標識体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量標識体のグループを複数含む質量標識体セットであって、セット内の前記質量標識体は、それぞれ、切断可能なリンカーを介して質量正規化部に結合している質量マーカー部を有し、セット内の前記質量標識体は、互いに質量が同じであり、グループ内の前記質量標識体において、前記質量マーカー部の質量は同じであり、グループ間の前記質量標識体において、前記質量マーカー部の質量が異なり、前記質量マーカー部は、2つ以上のフラグメントにフラグメンテーション可能であり、グループ内の前記質量標識体間で、前記質量マーカー部の少なくとも1つの前記フラグメントの質量が異なることを特徴とする質量標識体セットの提供。
【選択図】図3
Description
増感基−アミド結合−リンカー−反応性官能基
構造式中、増感基は、通常、質量マーカー部に結合し、質量分析計において質量マーカー部の検出感度を高めるものである。反応性官能基は増感基とは異なる部分に結合し存在するように示される。増感基は2つ以上の成分を含んでもよく、第1成分は、MS/MSイオン強度(一般的に、塩基性残基)を高め、第2成分は、MSイオン強度を高める。しかしながら、タグはこの様に限定される必要はなく、増感基を含むが、反応性官能基を有さない場合もある。他の実施形態において、増感基が反応性官能基と同じ部分に結合してもよい。
1.生体分子又は生体分子の混合物を本発明による質量標識体と反応させる。
2.標識した生体分子を電気泳動又はクロマトグラフィーにより任意に分離する。
3.標識した生体分子をイオン化する。
4.標識した生体分子の好ましいイオンの質量電荷比に対応する所定の質量電荷比を有するイオンを質量分析計で選択する。
5.衝突させることで選択されたイオンを誘起解離する。
6.質量マーカー部を含む衝突生成イオンを選択する。
7.質量マーカー部を含む衝突生成イオンを誘起解離する。
8.質量マーカー部から生じるフラグメントを検出する。
検体−リンカー−標識体
構造式中、標識体は、本発明のセット又はアレイの質量マーカーであり、リンカーは、下記に示すリンカーであり、検体は、生体分子等の所望の検体であってもよい。本実施形態の1つの好適な態様は、セット又はアレイの検体(1、1を超える、又は、全ての検体)が、周知の質量又はクロマトグラフィーにおける所定の性質を有する標準的な検体である。このような標準的な検体を本発明の方法に用いて、例えばクロロマトグラフィーによる分離工程の結果を分析する際に、未知の検体と比較することができる。
1. 6−(クロルアセトアミド)ヘキサン酸の合成
クロルアセチルクロリド18mL(221mMol)を、冷NaOH溶液(2N)80mLに溶解した6−アミノヘキサン酸20g(153mMol)に室温で滴下した。NaOH溶液(6N)を時々加えて溶液のpHを10〜11に保ちながら反応混合物を30分間撹拌した。そして、反応混合物のpHをHCl(2N)でpH5に変え、残留物がろ過された。次に、水のpHが中性になるまで残留物を水で洗浄した。生成物を五酸化リン上で乾燥し、クロロホルム300mlに再び溶解し、ろ過して、不溶解残留物を取り除いた。へプタンをろ液に加え、冷却しながら撹拌してシロップ剤を得た。生成物が、水からろ過、乾燥されて、結晶化された。
収量:20g(63%)
融点:82℃
炭酸水素カリウム2.8g(20mMol)を、水25mlに溶解した6−(クロルアセトアミド)ヘキサン酸8.3g(40mMol)に加えた。シアン化カリウム3.2g(48mMol)を氷冷した澄明な液に加えた。反応混合物を17時間撹拌し、そして、HCl(2N)で酸性化した。抽出後の残留物をクロマトグラフィー(シリカゲル、溶媒:酢酸エチル)により精製した。
収量:6g(76%)
融点:80℃〜81℃
6−(2−シアン−アセチルアミノ)ヘキサン酸3.96g(20mMol)をピリジン27mlに溶解した。3−ジメチルアミノ−4−メトキシベンズアルデヒド3.64g(20mMol)及びピペリジン0.6mLを溶液に加え、反応混合物を20時間撹拌した。反応混合物の気化後、残留物を酢酸エチル150ml及び水150mlに溶解し、pHが純粋な酢酸で4.2に調製された。水相が酢酸エチルを用いて抽出された。回収された酢酸エチル相を、NaCl溶液で洗浄し、乾燥、蒸発させた。残留物を低圧で酢酸エチルを用いてSiO2クロマトグラフした。生成物を少量の酢酸エチルから結晶化した。
収量:4.6g(66%)
融点:130℃
N−ヒドロキシスクシンイミド0.78g(6.76mMol)及び6−[2−シアン−3−(3−ジメチルアミノ−4−メトキシ−フェニル)アクリロイルアミノ]ヘキサン酸2.43g(6.76mMol)をCH2Cl250mlに加えた。混合物を室温で20時間撹拌した。溶液をろ過し、蒸発した。残留物を、酢酸エチルを用いて、低圧下フロリジルでクロマトグラフした。結晶性生成物をジイソプロピルエーテルでペースト状にし、フィルターに回収した。
収量:1.9g(62%)
融点:104℃
上述又は後述する説明において、所望の分子を本発明の質量標識体化合物に結合させるために使用するリンカー基について言及する。様々なリンカーが当該技術分野において公知であり、これらのリンカーは本発明の質量標識体とこれらに共有結合した検体との間に導入される。これらのリンカーのいくつかは切断可能であってもよい。オリゴ又はポリエチレングリコール又はこれらの誘導体をリンカーとして用いることができ、例えば、Maskos,U.&Southern,E.M. Nucleic Acids Research 20:1679−1684,1992に開示されたものを用いることができる。コハク酸系リンカーも広く用いられているが、一般に塩基に不安定であり、多数のオリゴヌクレオチド合成で使用されている塩基介在脱保護工程には不適合であるため、オリゴヌクレオチドの標識には好ましくない。
検体−リンカー−標識体
構造式中、リンカーは上記に定義するリンカーであり、標識体は、上記に定義するセット及びアレイの質量標識体である。
(a)1つ以上の検体をプローブセット又はプローブアレイに接触させる。セット内又はアレイ内の各プローブは少なくとも1つの検体に特異的なものであり、プローブは上記のように定義されたものである。
(b)検体に特異的なプローブを検出して生体分子を同定する。
様々なアミノ酸が質量マーカー部及び質量正規化部に使用できる。例えば、本発明の第1及び第4実施形態において、アミノ酸1及びアミノ酸2を記した位置で、(イオン化を促進し、感度を高めるので)中性アミノ酸が質量正規化部に好ましく使用され、帯電アミノ酸が質量マーカー部に好ましく使用される。下記表5に、同位体によって質量変動された市販のアミノ酸を示す。この表に示した1、2、3又は4つ以上のアミノ酸の組合せはいずれも、本発明の各質量マーカー部又は質量正規化部に好ましく用いられる。また、本発明によると、質量マーカー部のフラグメントが、異なる質量標識体では質量を異なって有するように、質量マーカー部自体が、グループ内で異なる質量標識体に変動されることも重要である。これは、例えば、質量標識体のグループにおいて質量マーカー部を形成するアミノ酸の特定の組合せを差別的に同位体標識することで行うことができる。
既に説明したように、本発明のいくつかの態様において、本発明の質量タグは反応性官能基を含む。最も簡潔な実施形態において、これは、本発明のタグペプチドのC末端の活性化により導入されたN−ヒドロキシスクシンイミドエステルであってもよい。従来の合成において、ペプチド質量タグがペプチド質量タグ合成の原産物から精製された後で、活性化工程を行う必要がある。N−ヒドロキシスクシンイミド活性化質量タグは、ヒドラジンと反応して、ヒドラジド反応性官能基を生成することもできる。これは、例えば、過ヨウ素酸酸化糖部分の標識に用いることができる。アミノ基又はチオールを反応性官能基として用いることもでき、これらは、タグの結合後にリシン又はシステインを結合することで導入してもよい。リシンを用いて、タグを遊離カルボキシル官能基に結合することができる。この場合、カルボジイミドをカップリング剤として用いる。本発明のタグに他の反応性官能基を導入するにあたって、最初にリシンを用いることもできる。リシンεアミノ基を無水マレイン酸に反応させることにより、チオール反応性マレイミド官能基を導入することができる。様々なアルケニルスルフォン化合物を合成するにあたって、チオールとアミンに反応する有用なタンパク質標識試薬であるシステインチオール基を最初に用いることができる。アミノヘキサン酸等の化合物を用いて、質量マーカー部と質量正規化部との間に、スペーサーを設けることができる。
本発明の特定の実施形態の第1の態様において、質量マーカーはアフィニティー捕捉リガンドを含む。アフィニティー捕捉リガンドは、特異性の高い結合相手を有するリガンドである。これらの結合相手により、結合相手がリガンドでタグされた分子の選択的な捕捉が可能になる。結合相手により固相担体が誘導体化することが好ましく、それによりアフィニティーリガンドでタグされた分子は選択的に固相担体に捕捉される。好ましいアフィニティー捕捉リガンドはビオチンであり、当該技術分野において公知の標準的な方法により本発明のペプチド質量タグに導入することができる。特にリシン残基は、アミノ酸2の後に導入することができ、これを介してアミン反応性ビオチンがペプチド質量タグに結合できる(例えば、Geahlen R.L.ら、Anal Biochem 202(1):68−67「カルボキシ末端をビオチニル化したペプチドの一般的作製方法」1992;Sawutz D.G.ら、Peptides 12(5):1019−1012「[Lys]ブラディキニンのビオチニル化類似化合物の合成及び分子特性分析」 1991;Natarajan S.ら、Int J Pept Protein Res 40(6):567−567「部位特異的ビオチニル化。エンドセリン―1類似化合物及びPTH−1類似化合物の新規アプローチとその応用」、1992を参照)。また、イミノビオチンを用いることもできる。ビオチンに対する様々なアビジンカウンターリガンドを使用することができる。アビジンカウンターリガンドには単量体及び四量体アビジン及びストレプトアビジンがあり、これら全てを多くの固相担体に用いることができる。
本発明の好適な実施形態の態様において、ペプチド質量タグは増感基を含む。これらの増感基は、MSモードにおける強度、及びMS/MS又はMS/MS/MSモードにおける質量マーカー又は質量マーカーのフラグメントの強度を高める。適切な増感基が国際公開第02/099435、03/087839、及び2005/012914号パンフレットに開示される。グアニジノ基及び第三級アミノ基は、特に質量マーカーのMS/MS及びMS/MS/MS強度の向上に有用である。
質量分析計の本質的な特徴は以下の通りである。
導入系→イオン源→質量分析計→イオン検出器→データ捕捉システム
本発明の第2の態様において、質量分析法による分析前に試料の複雑性を軽減するために、クロマトグラフィー又は電気泳動法が好まれる。各種の質量分析法技術は、特にキャピラリーゾーン電気泳動法及びHPLC(高速液体クロマトグラフィー)等の分離技術と互換性がある。典型的な連結器は、オンラインHPLC−ESI、オフラインHPLC−MALDI等が挙げられる。
生物学的質量分析法としていわゆる「ソフト」イオン化技術を利用することが多い。これにより、タンパク質及び核酸等の大きな分子をほぼ損傷せずにイオン化することができる。多数の技術が本発明での使用に適しており、例えば、ESI−MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析法)、FAB(高速原子衝撃イオン化質量分析法)、MALDI−MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法)及びAPCI−MS(大気圧化学イオン化質量分析法)が挙げられるが、これらに限定されない。
エレクトロスプレーイオン化法において、検体生体分子の希釈溶液を質量分析計において「原子化する」、即ち、微細スプレーとして注入する必要がある。例えば、溶液を帯電した針の先端から乾燥窒素流及び静電場に噴霧する。イオン化のメカニズムは完全には明らかになっていないが、概して以下のように作用すると考えられている。溶媒が窒素流において蒸発し、小さな液滴となり、これが検体分子の濃縮につながる。ほとんどの生体分子は実効電荷を有していることから、溶解した分子の静電反発が高まる。蒸発するにつれ、この反発は液滴の表面張力よりも最終的に大きくなり、液滴が分解され、小さな液滴になる。これは、「クーロン爆発」とも呼ばれる。静電場により、更に、液滴の表面張力に打ち勝って、噴霧プロセスが容易となる。小さな液滴になっても蒸発が継続し、結果として、全ての溶媒のように、生体分子が基本的に気相となるまで繰り返し爆発が起こる。この技術は他の技術と比べ、イオン化の過程においてイオンに付加するエネルギーが比較的少量であり、そのエネルギーが比較的狭い範囲において分布することから、質量標識体の使用においてこの技術は特に重要である。適切に配置された電極による電場を使用することにより、イオンが加速しイオン化室から出てくる。電場の極性を変えて、陰又は陽イオンを抽出してもよい。電極間の電位差により、質量分析器に導入する陽又は陰イオン、及び質量分析計に導入するイオンの運動エネルギーが決定する。このことは、質量分析計におけるイオンのフラグメンテーションを考慮する際に重要である。イオンに付加するエネルギーが多いほど、検体分子とイオン源に存在する浴ガスの衝突により、フラグメンテーションが起こりやすくなる。イオン化室からのイオンの加速に用いられる電場を調整することにより、イオンのフラグメンテーションを制御することができる。標識した生体分子からタグを取り除く手段としてイオンのフラグメンテーションが用いられる場合、これは特に有利である。エレクトロスプレーイオン化法は、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS)と呼ばれる液体クロマトグラフィーとインラインで用いることができることから、特に有利である。
MALDIでは、光励起「マトリックス」に過剰モル生体分子溶液を包埋させる必要がある。適切な周波数を有するレーザー光を用いることにより、マトリックスが励起され、マトリックスと共に包括された生体分子が急速に蒸発する。詳細なイオン化のメカニズムは完全に理解されてはいないが、特に飛行時間(TOF)質量分析法等の陽イオン質量分析法で検出できるプロトン化生体分子の数を増やすことができる。陰イオン質量分析法もMALDI−TOFによって行うことができる。この技術は、イオンに大量の並進エネルギーを与えることができるにも関わらず、余分なフラグメンテーションを生じない傾向がある。電圧を加速し、且つマトリックスを選択することでMALDIにおけるフラグメンテーションが制御可能である。
高速原子衝撃法(FAB)を用いて、比較的不揮発性である分子の気化及びイオン化技術を説明する。これらの技術では、試料とキセノン原子又はセシウムイオンの高エネルギービームの衝突により、表面から試料が脱離する。試料は、通常、不揮発性材料(例えば、m−ニトロベンジルアルコール(NBA)又はグリセロール)である単純マトリックス表面上に塗布される。FAB技術も液相導入系に対応しており、キャピラリー電気泳動導入系又は高圧液体クロマトグラフィー系から溶出した液体はフリットを通過し、検体溶液でフリット表面を実質的に被覆し、フリット表面から検体溶液を原子衝撃によりイオン化する。
衝突誘起解離によるペプチドのフラグメンテーションを本発明に用いることにより、タンパク質に結合したタグを同定する。様々な質量分析器を用いてペプチドをフラグメント化し、フラグメントの質量を決定してもよい。
タンデム型質量分析計において、CID(衝突誘起解離)により所定の質量電荷比を有するイオンを選択し、フラグメント化することが可能である。そして、フラグメントを検出し、選択したイオンの構造情報を得ることができる。タンデム型質量分析計でCIDによりペプチドを分析する場合、特徴的な切断パターンを観察して、ペプチド配列を決定することができる。一般に天然ペプチドはペプチドバックボーンのアミド結合において無作為にフラグメント化し、そのペプチドの特徴的なイオンシリーズが得られる。イオンの電荷がイオンのN末端フラグメントに保持される場合には、n番目のペプチド結合での切断に対するCIDフラグメントシリーズはan、bn、cn等と表される。同様に、電荷がイオンのC末端フラグメントに保持される場合にはフラグメントシリーズはxn、yn、zn、等と表される。
FTICR質量分析計は、イオン試料が空洞内に保持されるという点でイオントラップと類似する特徴を有する。しかし、FTICR MSでは、交差電磁場により高真空室にイオンがトラップされる。箱の二つの側面を形成する一対の平板電極によって電場は形成される。この箱は超伝導磁石の磁場に収容される。この磁石は、トラッププレートである2枚の平板に連結しており、トラッププレート間にあってかつ印加した磁場に直交する円形軌道に注入イオンを束縛する。箱の他の対立側を形成する2枚の「送信板」に高周波パルスを印加すると、イオンはより大きな軌道に励起される。イオンのサイクロイド運動により、「受信板」を含む箱の残りの二つの対立側に、対応する電場が発生する。励起パルスによりイオンはより大きな軌道に励起されるが、衝突を経てイオンの固有運動が失われるのに従いこの軌道は崩壊する。受信板が検出した対応シグナルは、フーリエ変換(FT)分析により質量スペクトルに変換される。
本発明の一実施形態において、質量分析による分析前に標識された生体分子をクロマトグラフィーで分離する。HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分離することが好ましく、これを質量分析計に直接連結すれば、ペプチドをクロマトグラフィーカラムから溶出しながらペプチドをインライン分析することができる。HPLCによって多様な分離技術を実施できるが、質量分析前のペプチド分離には、逆相クロマトグラフィーが一般的である。キャピラリーゾーン電気泳動は別の分離方法であり、質量分析計に直接連結することにより溶出試料の自動分析ができる。これらの分析方法や他の分画技術を用いて、質量分析前の生体分子の混合物の複雑さを軽減してもよい。
ペプチド及びポリペプチドの標識及びLC−MS−MS−MSによる分析
本発明の好適な実施形態の第2の態様では、タグを使用してペプチド混合物を液体クロマトグラフィートリプル質量分析法(LC−MS−MS−MS)により分析する。本発明の質量標識体の使用について、ペプチド分析に関連付けて説明する。図示されたような質量標識体を用いて、ペプチドを標識してもよい。これらの化合物における反応性官能基が、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルであるならば、タグがリシンのαアミノ基及びεアミノ基等の遊離アミノ基と反応する。
癌組織の変化を理解するには、例えば、その組織での分子的変化を全て理解し、理想的にはそれらの変化を正常組織に関連付けることが必要である。分子的変化を全て決定するには、遺伝子発現の変化、タンパク質発現及び最終的には代謝産物の変化を測定する能力が必要とされる。異なる組織試料間の多数の遺伝子の発現量は、マイクロアレイ技術を使用してメッセンジャーRNA(mRNA)量で同時に比較可能である(例えば、Iyer V.R.ら、Science 283(5398):83−87「ヒト繊維芽細胞の血清に対する応答の際の転写プログラム」1999参照)。しかし、mRNA量は組織中のタンパク質量に直接相関しない。組織についてタンパク質発現のプロファイルを決定するのにあたって、二次元ゲル電気泳動法が広く使用されている。残念ながら、この技術は極めて手間がかかり、再現性に難点があるため2つ以上の試料を2−Dゲル上で同時に比較することは困難である。上述のように、本発明の方法を使えば、ペプチドを効果的に分析することができる。本発明のタグをLC−MS−MSで使用すれば、試料が異なっても同じペプチドを同定することができる。更に、試料が異なっても同一のペプチドの相対量を決定することができる。多数の試料中のペプチドの同一性及び相対量を迅速かつ感度よく測定できるため、発現をプロファイルすることができる。したがって、本発明の目的は、ペプチドの選択的単離及び標識に基づく複雑なタンパク質試料を比較分析する改良した方法を提供することである。以下に、タンパク質発現を包括的に分析する2つの開示されたアプローチについて説明し、タンパク質の特定の状態、例えばリン酸化及び炭水化物修飾を分析するための様々な方法についても記載する。
N末端又はC末端のペプチドの単離については、タンパク質試料の包括的な発現プロファイルを決定する方法として説明してきた。末端ペプチドの単離により、1つのタンパク質において少なくとも1つのペプチド又は1つのペプチドのみが確実に単離され、その結果、複雑な分析試料における成分が最初の試料より確実に少なくなる。大きなポリペプチドを短いペプチドにすれば、質量分析法による試料の分析がより容易となる。ポリペプチド末端からペプチドを単離する方法は、国際出願番号PCT/GB98/00201明細書及び国際出願番号PCT/GB99/03258明細書に記載されている。
Claims (38)
- 質量標識体のグループを複数含む質量標識体セットであって、
セット内の前記質量標識体は、それぞれ、切断可能なリンカーを介して質量正規化部に結合している質量マーカー部を有し、
セット内の前記質量標識体は、互いに質量が同じであり、
グループ内の前記質量標識体において、前記質量マーカー部の質量は同じであり、
グループ間の前記質量標識体において、前記質量マーカー部の質量が異なり、
前記質量マーカー部は、2つ以上のフラグメントにフラグメンテーション可能であり、
グループ内の前記質量標識体間で、前記質量マーカー部の少なくとも1つの前記フラグメントの質量が異なることを特徴とする質量標識体セット。 - セット内の1つ以上の質量標識体が1つ以上の同位体標識体を含む請求項1に記載の質量標識体セット。
- セット内のそれぞれの質量標識体が同位体標識体を含み、セット内の質量標識体間で前記同位体標識体の位置が異なる請求項2に記載の質量標識体セット。
- セット内のそれぞれの質量標識体が2つ以上でかつ同数の同位体標識体を含み、セット内の質量標識体間で前記同位体標識体の位置が異なる請求項3に記載の質量標識体セット。
- グループ内の質量標識体において、それぞれの質量マーカー部に含まれる同位体標識体の数が同じである請求項2から4のいずれかに記載の質量標識体セット。
- グループ内の質量標識体において、それぞれの質量正規化部に含まれる同位体標識体の数が同じである請求項2から5のいずれかに記載の質量標識体セット。
- グループ内の質量標識体において、それぞれの質量標識体の質量マーカー部が少なくとも1つの同位体標識体を含み、
前記グループ内の質量標識体間で、少なくとも1つの前記同位体標識体の位置が異なる請求項2から6のいずれかに記載の質量標識体セット。 - グループ内のそれぞれの質量標識体が、質量マーカー部の異なる位置に同位体標識体を含み、
前記グループ内のそれぞれの質量標識体において、前記同位体標識体が異なるフラグメントに含まれる請求項2から7のいずれかに記載の質量標識体セット。 - グループ内のそれぞれの質量標識体において、2つ以上の同位体標識体を含み、
前記グループ内の質量標識体間で、少なくとも1つの前記同位体標識体の位置が異なり、
前記グループ内のそれぞれの質量標識体において、少なくとも1つの前記同位体標識体が質量マーカー部の異なるフラグメントに含まれる請求項2から8のいずれかに記載の質量標識体セット。 - グループ内のそれぞれの質量標識体が、同じ化学種である質量マーカー部を含み、
前記グループ内のそれぞれの質量標識体は、質量マーカー部の異なる位置に同位体マーカーを含む請求項2から8のいずれかに記載の質量標識体セット。 - セット内のそれぞれの質量標識体が、同じ化学種であり、
セット内のそれぞれの質量標識体が、2つ以上でかつ同数の同位体標識体を含み、
グループ内のそれぞれの質量標識体は、質量マーカー部に第1番号同位体マーカーを、質量正規化部に第2番号同位体マーカーを含み、
グループ間で、前記第1番号及び前記第2番号が異なる請求項9から10のいずれかに記載の質量標識体セット。 - 同位体標識体が2H,13C,15N又は18Oを含む請求項2から11のいずれかに記載の質量標識体セット。
- グループ内の質量標識体において、質量正規化部の質量が同じであり、
グループ間の質量標識体において、質量正規化部の質量が異なる請求項2から12のいずれかに記載の質量標識体セット。 - 質量マーカー部が衝突誘起解離によりフラグメント化可能である請求項1から13のいずれかに記載の質量標識体セット。
- 請求項1から14のいずれかに記載の複数の質量標識体セットを含み、
セット間で、質量標識体の質量が異なることを特徴とする質量標識体アレイ。 - 請求項1から15のいずれかに記載の質量標識体セット又はアレイとは異なる質量標識体に結合している検体、又は、請求項1から15のいずれかに記載の質量標識体セット又はアレイとは異なる組合せの質量標識体に結合している検体、をそれぞれ含むことを特徴とする標識した検体のセット。
- 請求項1から15のいずれかに記載の質量標識体セット又はアレイを含む請求項16に記載の標識した検体のセット。
- セット内のそれぞれの検体が、異なるか、又は、異なる試料に由来する請求項16から17のいずれかに記載の標識した検体のセット。
- セットの各標識したプローブは、請求項1から15のいずれかに記載の質量標識体セット又はアレイとは異なる質量標識体に結合しているプローブ、又は、請求項1から15のいずれかに記載の質量標識体セット又はアレイとは異なる組合せの質量標識体に結合しているプローブを含むことを特徴とする2つ以上の標識したプローブのセット。
- それぞれの検体又はプローブが生体分子を含む請求項16から19のいずれかに記載の標識した検体又は標識したプローブのセット。
- 生体分子が、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、核酸塩基、タンパク質、及び/又はアミノ酸から選択される請求項20に記載の検体又はプローブのセット。
- 検体に関連付けられる質量標識体又は質量標識体の組合せを、質量分析法により同定することで検体を検出する工程を含む分析方法であって、
前記質量標識体が請求項1から15のいずれかに記載の質量標識体セット又はアレイの質量標識体であることを特徴とする分析方法。 - 使用する質量標識体が、アフィニティー捕捉リガンドを含む標識体であり、
前記アフィニティー捕捉リガンドをカウンターリガンドで捕捉することにより、標識した検体を未標識検体から分離する請求項22に記載の分析方法。 - 2つ以上の検体を、前記検体の質量標識体又は質量標識体の組合せを質量分析法で同時に同定することにより、検出する請求項22から23のいずれかに記載の分析方法。
- それぞれの検体を、質量標識体セット又はアレイの質量標識体の固有の組合せによって同定し、
それぞれの組合せを、セット又はアレイ中の各質量標識体の有無及び/又は各質量標識体の量によって識別する請求項22から24のいずれかに記載の分析方法。 - 検体の質量標識体を質量分析法で検出する前に、前記検体を質量に応じて分離することにより、2つ以上の検体を同定する請求項22から25のいずれかに記載の分析方法。
- 分離が、クロマトグラフィー法又は電気泳動法によって行われる請求項23から26のいずれかに記載の分析方法。
- 質量標識体の検出に使用する質量分析器が、1つ以上の質量分析計を含み、
前記質量分析計が、特定の質量又は質量範囲のイオンを検出のために通過させることができる、及び/又は、イオンを解離させることができる請求項22から27のいずれかに記載の分析方法。 - 1つ以上の公知の質量標識体に特異的な特定の質量又は質量範囲のイオンを、質量分析計によって選択し、選択したイオンを解離させ、解離生成物を検出して、選択した前記質量標識体を示すイオンパターンを同定する請求項28に記載の分析方法。
- 質量分析器が、3つ以上の四重極質量分析計を含む請求項28から29のいずれかに記載の分析方法。
- 質量分析器が、2つの四重極質量分析計及びイオントラップ質量分析計を含む請求項28から29のいずれかに記載の分析方法。
- 第1質量分析計を使用して特定の質量又は質量範囲のイオンを選択し、第2質量分析計を使用して選択したイオンを解離させ、第3質量分析計を使用して得られたイオンを検出する請求項30から31のいずれかに記載の分析方法。
- (a)1つ以上の検体を、請求項19から21のいずれかに記載のプローブのセットと接触させ、
(b)検体を、前記検体に関連付け可能なプローブを検出することにより同定する、
請求項22から32のいずれかに記載の分析方法。 - 質量標識体を質量分析計で検出する前に、前記質量標識体をプローブから切断させる請求項33に記載の分析方法。
- 1つ以上の核酸をハイブリダイゼーションプローブセットと接触させる請求項33から34のいずれかに記載の分析方法。
- 質量分析方法であって、
(a) 請求項1から15のいずれかに記載の質量標識体セットを質量分析器で検出し、
(b) 前記質量分析器で質量標識体を解離して、質量正規化部から質量マーカー部を遊離させ、
(c) 前記質量分析器で前記質量マーカー部を検出し、
(f) 前記質量分析器で前記質量マーカー部をフラグメント化して、それぞれの質量マーカー部から2つ以上のフラグメントを生成し、
(f) 前記フラグメントを検出する、
工程を含むことを特徴とする質量分析方法。 - 質量標識体が、請求項16から18のいずれかに記載の標識した検体のセットに含まれる請求項36に記載の分析方法。
- マルチプルリアクションモニタリング実験を含む請求項22から37のいずれかに記載の分析方法。
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