JP2017519209A - アイソバリック質量標識 - Google Patents

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Abstract

本発明は、2以上の質量標識のセットであって、各質量標識が、式:X-L-M-Re(式中、Xは、精密質量を有するレポーター部分であり、Lは、質量分析計における衝突によって開裂可能な結合であり、Mは質量修飾因子であり、Reは、a)該質量標識を分析物に付着させるための反応性官能基又はb)該分析物である)を含み、該セット中の各質量標識が整数質量を有し、該セット中の各質量標識が同じ整数質量を有し、該セットが質量標識の2以上のサブセットを含み、各サブセットが、1つ、2つ、又はそれより多くの質量標識を含み、該サブセットが2以上の質量標識を含む場合、該サブセット中の各質量標識のレポーター部分Xの精密質量が同じサブセット中の及び他の全てのサブセット中の該質量標識のレポーター部分Xの精密質量と異なり、各質量標識が質量分析によって区別可能である、セットに関する。【選択図】なし

Description

本発明は、ペプチドを標識するための有用な反応性標識、並びにこれらの反応性標識を用いて、ペプチド、特に、複雑なタンパク質混合物に由来するペプチドを同定及び定量する方法に関する。これらの反応性標識は、高分解能及び高質量精度の質量分析装置、例えば、オービトラップ型、飛行時間型、及びイオンサイクロトロン共鳴型質量分析装置によるペプチドの分析に特に有益である。
(発明の背景)
生体システムの研究、特に、ヒト疾患の理解は、疾患によって又は疾患に応答して生体システム内に生じた変化を検出する能力に依存する。そのような変化は、診断の手段を提供し、ワクチン及び医薬などの治療用化合物の標的についての知識をもたらす。疾患過程を理解するためには、核酸、タンパク質、ステロイド、糖、及び脂質を含む、広範囲の生体分子を定量的に測定する必要がある。この文脈において、そのような生体分子を質量分析計を用いて定量的に検出する能力は、その研究、並びにヒトへの及びさらには獣医学的疾患への応用におけるかなりの進歩をもたらした。同じ進歩は、環境の分析及びモニタリングにおいても、食品及び飲料の製造においても起こった。特に、合成定量基準を提供するための安定同位体の使用が、全てのクラスの生体分子をモニタリングするための同位体希釈質量分析において開発された。しかしながら、これらの方法は、従来、利用可能な合成標準を必要としており、これは、常に可能というわけではない。
最近、質量分析による生体分子の定量分析をさらに改良するために、重同位体置換を有する様々な化学質量タグが開発されてきた。タグの設計に応じて、タグセットのメンバーは、同一の化学構造を有するが絶対質量は異なる同位体タグか、又は構造も絶対質量も同一であるアイソバリックタグ及びアイソトポメリックタグかのどちらかである。同位体タグは、通常、MSモードでの定量に使用されており、一方、アイソバリックタグは、固有の質量を有するレポーターフラグメントを放出するためにMS/MSモードでフラグメント化されなければならない。
同位体質量タグの初期の例は、同位体コード化親和性タグ(ICAT)であった(Gygi, S.P.らの文献(1999) Nat Biotechnol, 17, 994-999)。ICAT試薬は、一方の(重い)タグに重同位体が示差的に取り込まれ、もう一方の(軽い)タグには置換が存在しない1対の質量タグである。2つの試料を重いタグか又は軽いタグかのどちらかで標識し、次いで混合した後、LC-MSによって分析する。両方の試料中に存在するペプチドは、重同位体原子置換数に比例して質量が異なる1対のプリカーサーイオンを生じる。
ICAT法は、「サンプリング」法の例となるものでもあり、該方法は、生成される質量スペクトルの複雑性を低下させるために小さいペプチド集団を取り扱う一方で、その成分を同定するためにもとの試料に関する十分な情報を保持する必要性を両立させる方法として有用である。ICAT法で使用される「同位体コード化親和性タグ」は、システインを含むペプチドを捕捉するための、チオールに反応する、1対のビオチンリンカー同位体を含む。通常、プロテオーム中の90〜95%のタンパク質は、少なくとも1つのシステイン含有ペプチドを有し、通常、システイン含有ペプチドは、全体で10個に約1個のペプチドに相当するため、システイン含有ペプチドの分析は、試料に関する重大な情報を失うことなく、試料の複雑性を大きく低下させる。したがって、ICAT法では、ある源由来のタンパク質の試料を「軽」同位体ビオチンリンカーと反応させ、一方、第2の源由来のタンパク質の試料を、通常、軽同位体よりも4〜8ダルトン重い「重」同位体ビオチンリンカーと反応させる。その後、2つの試料をプールし、エンドペプチダーゼで切断する。その後、ビオチン化システイン含有ペプチドを質量分析による次の分析のためにアビジン化ビーズ上で単離することができる。2つの試料を定量的に比較することができ:対応するペプチド対が相互標準としての役割を果たし、それらの比を定量することが可能になる。ICATサンプリング法は、MudPITよりも複雑性が低いながら、源試料をなお正確に表すペプチド混合物を生じさせるが、多くのペプチドはそれでも分離しており、LC-MS/MSによるそのペプチド分析によって複雑なスペクトルが生成される。2つのICATタグを用いると、質量スペクトル中のペプチドイオンの数は、標識なしの分析と比較して2倍になる。
同位体タグのさらなる例としては、最大4つの異なる試薬を提供するICPL試薬が挙げられ、ICPLを用いると、質量スペクトル中のペプチドイオンの数は、標識なしの分析と比較して4倍になる。このため、簡単な重同位体タグ設計で非常に高レベルの多重化を開発することが実際的である可能性は低い。
同位体タグは、プロテオーム研究における定量を可能にし、実験の再現性を助けるが、これは、質量スペクトルの複雑性を高めることを犠牲にして達成される。この制限を克服するために、及びタンデム質量分析のより大きな特異性を利用するために、アイソバリック質量タグが開発された。2000年のその導入(WO01/68664号)以来、アイソバリック質量タグは、タンパク質及びペプチド中のアミン及び他の反応性官能基を満遍なく標識した後に複数の試料を混合し、同時に分析することにより、プロテオーム発現プロファイリングの手段の改善をもたらした。このタグは、同じ質量を有する、アイソバリックなものなので、これによって、質量スペクトルの複雑性が増大することはない。なぜなら、同じペプチドのプリカーサーは全て、クロマトグラフィー分離において正確に同じ点で出現し、同じ総質量を有するからである。分子がフラグメント化された後にタンデム質量分析にかけられる場合にのみ、固有の質量レポーターが放出され、それにより、もとの試料の各々に存在するペプチドの相対量又は絶対量を決定することが可能になる。
WO01/68664号には、アイソバリック質量タグの根本的な原理が記載されており、分子内の様々な特定の原子がそれぞれ13C及び15Nを含む重同位体形態と置換されている好適なタグの具体例が提供されている。WO01/68664号には、全体の多重化率を増加させるための複数のアイソバリックセットを、個々のタグのサイズを過度に増大させることなく利用可能にするオフセット質量の使用がさらに記載されている。
WO2007/012849号には、3-[2-(2,6-ジメチル-ピペリジン-1-イル)-アセチルアミノ]-プロパン酸-(2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イル)-エステル(DMPip-βAla-OSu)を含むアイソバリック質量タグのさらなるセットが記載されている。
最近、オービトラップ(Hu, Q.らの文献(2005) J Mass Spectrom, 40, 430-443及びMakarov, A.の文献(2000) Anal Chem, 72, 1156-1162)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)質量分析計(Marshall, A.G.らの文献(1998) Mass Spectrom Rev, 17, 1-35)、及び高分解能飛行時間型(TOF)質量分析計(Andrews, G.L.らの文献(2011) Anal Chem, 83, 5442-5446)などの高質量分解能質量分析計によって可能になった質量精度及び質量分解能の劇的な改善により、イオン質量電荷比間のミリダルトンの差を分解することが可能になった。この高分解能は、レポーター領域での15Nに代わる13Cの重核子置換を用いてアイソバリックタンデム質量タグの多重化を増大させるために利用されており、この多重化によって、MS/MSで分析したときに、それぞれのレポーターフラグメント間で6.32ミリダルトンの差が生じる(McAlister, G.C.らの文献(2012) Anal Chem, 84, 7469-7478及びWerner, T.らの文献(2012) Anal Chem, 84, 7188-7194)。同様に、ミリダルトンの質量差を含むリジン同位体を用いた代謝標識を高分解能質量分析によって分解することができ、試料の多重化及び相対定量が酵母で可能になることが示されている(Hebert, A.S.らの文献(2013) Nat Methods, 10, 332-334)。
以前に開示されたアイソバリック質量タグの大きな有益性にもかかわらず、多重化率は、これまで、市販の試薬において10重に限定されている。さらに、互いに関連する標識イオン、例えば、異なる試料由来の対応するペプチドは、同じイオンエンベロープの中に、容易に認識することができかつ他の異なるペプチドの同定を妨害する可能性がはるかに低い非常に特徴的かつ非天然の同位体パターンで密集するので、ごくわずかな質量差を含むタグであれば有用である。
それゆえ、各タグが他のものとミリダルトンの質量差だけ異なる、ペプチド及び生体分子を標識するための、10倍を優に超える多重化率を有するタグのセットが依然として必要とされている。
(発明の記述)
したがって、第1の態様において、本発明は、2以上の質量標識のセットであって、各質量標識が、式:
X-L-M-Re
(式中、Xは、精密質量を有するレポーター部分であり、Lは、質量分析計における衝突によって開裂可能な結合であり、Mは質量修飾因子であり、Reは、a)該質量標識を分析物に付着させるための反応性官能基又はb)該分析物である)を含み、該セット中の各質量標識が整数質量を有し、該セット中の各質量標識が同じ整数質量を有し、該セットが質量標識の2以上のサブセットを含み、各サブセットが、1つ、2つ、又はそれより多くの質量標識を含み、該サブセットが2以上の質量標識を含む場合、該サブセット中の各質量標識のレポーター部分Xの精密質量が同じサブセット中の及び他の全てのサブセット中の該質量標識のレポーター部分Xの精密質量と異なり、各質量標識が質量分析によって区別可能である、セットを提供する。
第2の態様において、本発明は、各標識が、式:
X-L-M-Re
(式中、Xは、精密質量を有するレポーター部分であり、Lは、質量分析計における衝突によって開裂可能な結合であり、Mは質量修飾因子であり、かつReは、該質量標識を分析物に付着させるための反応性官能基又は該分析物であり、かつXは、以下の一般式:
Figure 2017519209
(式中:
i)R1は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基;或いはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、又はネオペンチル、
Figure 2017519209
から選択される構造であり、かつR9は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基又は水素から選択され、かつ
R2及びR3はともに:
Figure 2017519209
を含み、ここで、R4は、H又は置換もしくは非置換線状もしくは分岐状C1-C10アルキル基であるか;或いは
ii)R3はHであり;かつ
R1及びR2はともに:
Figure 2017519209
を含み、ここで、R5及びR6は、各々独立に、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基、又は置換もしくは非置換アミン基、又は
Figure 2017519209
であり;かつ各々のR9は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基又は水素から独立に選択される)
を含む)を含む、2以上の質量標識のセットを提供する。
第1の態様の一実施態様において、該質量標識は、本発明の第2の態様に定義されているような構造を有する。
本発明の第1及び第2の態様の一実施態様において、各質量標識は質量系列修飾基を含み、ここで、該質量系列修飾基は、該レポーター部分Xの部分又は該質量修飾因子Mの部分であり;好ましくは、該質量系列修飾基は該レポーター部分Xの部分である。
本発明の第1及び第2の態様の別の実施態様において、該質量系列修飾基は:
a)重同位体2H、13C、15N、もしくは18O;又は
b)1以上の重同位体置換を任意に含む置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基;又は
c)a)とb)の組合せ
から選択される。
一実施態様において、該質量系列修飾基は、-CH3、-13CH3、-13CD3、又は-CD3から選択される。
本発明の第1及び第2の態様の別の実施態様において、各質量標識は、以下の構造を有する質量系列修飾基を含む:
Figure 2017519209
(ここで、各々のR11は、独立に、H、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C6アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基、或いはアミノ酸側鎖であり; fは0〜10の整数であり;かつd及びeは、少なくとも1である)。
本発明の第1及び第2の態様の別の実施態様において、Reは分析物であり、ここで、該分析物は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、リン脂質、又はこれらの組合せの群から選択される1以上の分析物を含む。
本発明の第1及び第2の態様のまた別の実施態様において、各質量標識は、一般式i)を有するレポーター部分を有し、式中、R1は:
Figure 2017519209
から選択され、かつR9は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、もしくはネオペンチルから選択されるアルキル鎖、又は水素から選択されるか;或いはその代わりに、各質量標識は、一般式ii)を有するレポーター部分を有し、R5及びR6は、各々独立に、
Figure 2017519209
であり、ここで、R7及びR8は、各々独立に、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、又は水素である。
好ましくは、R4が存在するとき、R4は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、又は(ジメチルアミノ)メチルである。
本発明の第1及び第2の態様のいくつかの実施態様において、各質量標識は、以下から選択されるレポーター部分Xを有する:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
本発明の第1及び第2の態様のまたいくつかの他の実施態様において、各質量標識は、以下の構造を含むか又は該構造を有する質量修飾因子Mを含む:
Figure 2017519209
(ここで、各々のR10は、独立に、H、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C6アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基、或いはアミノ酸側鎖から選択され; aは0〜10の整数であり; b及びcは、整数でかつ少なくとも1である)。
本発明による質量標識は、以下の構造のうちの1つを有し得る:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
(ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
該質量標識はまた、以下の構造のうちの1つを有し得る:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
(ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
第3の態様において、本発明は、本発明の第1及び第2の態様並びにそれらの実施態様に定義されているような質量標識の2以上のセットを含む、質量標識のアレイを提供する。
この第3の態様の一実施態様において、該アレイ中のいずれか1つのセットの質量標識の各々の整数質量は、該アレイ中の他の全てのセットの質量標識の各々の整数質量と異なる。
好ましくは、セット中の各質量標識は:
a)該セット中の他の全ての質量標識と同じ整数質量を有する質量系列修飾基
b)該アレイの他の全てのセットの質量標識と異なる整数質量
を含む。
本発明の第3の態様の別の実施態様において、セット中の各質量標識は:
a.同じもの;又は
b.該アレイの他の全ての質量標識の質量系列修飾基のアイソトポログ
である、質量系列修飾基を含む。
第4の態様において、本発明は、質量分析の方法であって、分析物と関連付けることができる質量標識又は質量標識の組合せを質量分析によって同定することにより、該分析物を検出することを含み、ここで、該質量標識が、いずれかの前述の請求項に定義されているような質量標識のセット又はアレイ由来の質量標識である、方法を提供する。
この第4の態様の一実施態様において、本方法は:
a)各試料が1以上の分析物を含み、各試料が質量標識又は質量標識の組合せで示差標識されて、1以上の標識分析物が得られる、複数の試料を提供すること(ここで、該質量標識は、いずれかの前述の請求項に定義されているような質量標識のセット又はアレイに由来するものである);
b)該複数の示差標識された試料を混合して、標識分析物を含む分析混合物を形成させること;
c)任意に、該標識分析物を質量分析計で検出すること;
d)該標識分析物を該質量分析計で解離させて、質量標識及び/又はインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントを形成させること;
e)該質量標識及び/又はインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントを検出すること;
f)任意に、該質量標識を該質量分析計で解離させて、レポーター部分を放出させ、該レポーター部分を検出すること;
g)任意に、工程fで形成されたレポーター部分を解離させて、フラグメントを形成させ、該フラグメントを検出すること;
h)該標識分析物の質量スペクトル;並びに/又は該質量標識及び/もしくはインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントの質量スペクトル;並びに/又は該レポーター部分もしくはレポーター部分のフラグメントの質量スペクトルに基づいて分析物を同定すること
を含む。
該分析物は、i)該標識分析物の質量スペクトル;又はii)該質量標識及び/もしくはインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントの質量スペクトル;又はiii該レポーター部分もしくはレポーター部分のフラグメントの質量スペクトルに基づいて同定することができる。ii)による同定が行われるとき、好ましくはインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントは、インタクトな質量標識を含むb系列イオン、好ましくは、b1イオンである。
別の実施態様において、質量分析の方法は:
a)各試料が1以上の分析物を含み、各試料が質量標識又は質量標識の組合せで示差標識されて、1以上の標識分析物が得られる、複数の試料を提供すること(ここで、該質量標識は、いずれかの前述の請求項に記載の質量標識のセット又はアレイに由来するものである);
b)該複数の示差標識された試料を混合して、標識分析物を含む分析混合物を形成させること;
c)該標識分析物を質量分析計で検出すること;
d)該標識分析物を該質量分析計で解離させて、レポーター部分を放出させ、該分析物又は該分析物のフラグメントに付着した該質量標識の残りの部分を含む相補イオンを検出すること;
e)任意に、工程dで形成された該相補イオンを解離させて、フラグメントを形成させ、該フラグメントを検出する1以上のさらなる工程;
f)該標識分析物の質量スペクトル並びに/又は該相補イオン及び/もしくはそのフラグメントの質量スペクトルに基づいて該分析物を同定すること
を含む。
好ましくは、該解離は、質量分析計における衝突誘起解離である。
本方法は、質量電荷比400で分解能が60,000超、好ましくは、質量電荷比400で分解能が100,000超、最も好ましくは、質量電荷比400で分解能が250,000超の質量分析計で実施することができる。
好ましくは、本発明による方法の工程d)において、該相補イオンは、該結合Lからの一酸化炭素のニュートラルロスによって形成される。
さらなる代わりの実施態様において、2以上の質量標識のセットであって、各質量標識が、式:
X-L-M
(式中、Xはレポーター部分であり、Lは質量分析計における衝突によって開裂可能なリンカーであり、かつMは質量修飾因子である)を含み、各質量標識が該質量標識を分析物に付着させるための反応性官能基Reをさらに含み、該セット中の各質量標識が同じ整数質量を有し、該セットが質量標識の2以上のサブセットを含み、各サブセットが1以上の質量標識を含み、該サブセットが2以上の質量標識を含む場合、該サブセット中の各質量標識が該サブセット中の他の全ての質量標識のレポーター部分の精密質量と異なる精密質量を有するレポーター部分を有し;かつ
該サブセット中の各質量標識のレポーター部分の整数質量が他の全てのサブセット中の該質量標識のレポーター部分の整数質量と異なり、各質量標識が質量分析によって区別可能である、セットが提供される。
(図面の簡単な説明)
図1は、本発明による第1のクラスの質量標識の予測されるフラグメンテーション経路の模式図である(示された構造は仮想上のものであり、予想されるレポーターイオンの質量電荷比を単に予測するために例示されている)。 図2は、N-アルキルプロリン質量標識の予測されるフラグメンテーション経路の模式図である(示された構造は仮想上のものであり、予想されるレポーターイオンの質量電荷比を単に予測するために例示されている)。 図3は、セット1の質量標識のレポーター部分の合成方法の略図を示している。 図4は、図3に示されたレポーターイオン構造と2つの連続するβ-アラニン残基とのカップリングの略図を示している。 図5は、セット2の質量標識のレポーター部分の合成方法の略図を示している。 図6は、図5に示されたレポーターイオン構造と2つの連続するβ-アラニン残基とのカップリングの略図を示している。 図7A及び7Bは、アミノキシ反応性官能基を用いた反応性質量標識の形成のスキームを示している。 図8A及び8Bは、2-ジチオピリジン反応性官能基を用いた反応性質量標識の形成のスキームを示している。 図9A及び9Bは、ヨードアセトアミド反応性官能基を用いた反応性質量標識の形成のスキームを示している。 図10A及び10Bは、アジド反応性官能基を用いた反応性質量標識の形成のスキームを示している。 図11は、様々な活性エステル反応性官能基を有する質量標識を示している。 図12は、グリシン、ブロモ酢酸、及びアルキルアミン、例えば、メチルアミンを用いて、N-アルキルピペラジンを合成することができる方法を示している。 図13は、市販の同位体を用いて合成することができる可能な重同位体置換N-メチルピペラジンの例を示している。 図14は、本発明による質量標識の形成のスキームを示している。 図15は、本発明による質量標識の形成のスキームを示している。
(詳細な説明)
本発明は、ペプチド及び他の生体分子を標識するための、10重を優に超える多重化率を有するアイソトポメリック反応性タグのセットを提供する。アイソトポメリック反応性タグの共選択可能なアイソトポログアレイは、一層より高いレベルの多重化を支持するミリダルトンの範囲の質量差を有する。
本発明はまた、特に生体試料のセット間の生物学的に有意な違いを発見するための標識ペプチド及びタンパク質の新規の分析形態を可能にするアイソトポメリック反応性タグの共選択可能なアイソトポログアレイの使用方法を提供する。
本発明は、2以上の質量標識のセットであって、各質量標識が、式:
X-L-M-Re
(式中、Xは、精密質量を有するレポーター部分であり、Lは、質量分析計における衝突によって開裂可能な結合であり、Mは質量修飾因子であり、Reは、a)該質量標識を分析物に付着させるための反応性官能基又はb)該分析物である)を含み、該セット中の各質量標識が整数質量を有し、該セット中の各質量標識が同じ整数質量を有し、該セットが質量標識の2以上のサブセットを含み、各サブセットが、1つ、2つ、又はそれより多くの質量標識を含み、該サブセットが2以上の質量標識を含む場合、該サブセット中の各質量標識のレポーター部分Xの精密質量が同じサブセット中の及び他の全てのサブセット中の該質量標識のレポーター部分Xの精密質量と異なり、各質量標識が質量分析によって区別可能である、セットを提供する。
この文脈で使用される質量標識という用語は、質量分光法による決定のための分析物を標識するのに好適な試薬を指すことが意図される。標識という用語は、タグという用語と同義である。
本発明の好ましい実施態様において、2以上の質量標識のセットは、以下の一般式:
Figure 2017519209
(式中:
i)R1は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基;或いはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、又はネオペンチル、
Figure 2017519209
から選択される構造であり、かつR9は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基又は水素から選択され、かつ
R2及びR3はともに:
Figure 2017519209
を含み、ここで、R4は、H又は置換もしくは非置換線状もしくは分岐状C1-C10アルキル基であるか;或いは
ii)R3はHであり;かつ
R1及びR2はともに:
Figure 2017519209
を含み、ここで、R5及びR6は、各々独立に、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基、又は置換もしくは非置換アミン基、又は
Figure 2017519209
であり;かつ各々のR9は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基又は水素から独立に選択される)
を含むレポーター部分Xを有する。
いくつかの好ましい実施態様において、質量標識X-L-Mは、式:
Figure 2017519209
(式中、R2及びR3はともに、
Figure 2017519209
を含み、かつR1は、イソプロピル又はブチル又はイソブチル又はネオペンチルから選択される)
を含むレポーター部分Xを有する。
好ましくは、各質量標識は質量系列修飾基を含み、ここで、該質量系列修飾基は、該レポーター部分Xの部分もしくは該質量修飾因子Mの部分又は両方である。より好ましくは、該質量系列修飾基は、該レポーター部分Xの部分である。
該質量系列修飾基は:
d)重同位体2H、13C、15N、もしくは18O;
e)1以上の重同位体置換を任意に含む置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基;又は
f)a)とb)の組合せ
から選択することができる。
一実施態様において、該質量系列修飾基は、-CH3、-13CH3、-13CD3、又は-CD3から選択される。
他の実施態様において、各質量標識は、以下の構造を有する質量系列修飾基を含む:
Figure 2017519209
(ここで、各々のR11は、独立に、H、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C6アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基、或いはアミノ酸側鎖であり; fは0〜10の整数であり;かつd及びeは、少なくとも1である)。
本発明による質量標識において、Reは、該質量標識を分析物に付着させるための反応性官能基又は分析物のいずれかであり得る。
好ましくは、質量タグは、質量標識を分析物にコンジュゲートさせるのを可能にする反応性官能基をさらに含む。質量標識を分析物に付着させるための反応性官能基は、特には限定されず、任意の適当な反応基を含み得る。
該反応性官能基は、生体分子上のアミノ基、例えば、リジン残基のε-アミノ基と反応し得る。最も単純な実施態様において、これは、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルであり得る。他の反応性官能基、例えば、生体分子中のチオール基と反応するものが、本明細書において想定される。特に、これらの反応性官能基は、システイン残基のチオール基と反応するように設計される。システイン残基と反応することができる本発明の反応基の例は、マレイミド、ハロアセチル、及び2-ジチオピリジン基である。システインのチオール基は、マレイミド基の二重結合にまたがる求核付加を受け、ハロアセチル又は2-ジチオピリジン基との求核置換を受ける。
生体分子中のカルボニル又はヒドロキシル基と反応することができる反応性官能基も本明細書において想定される。特に、これらの反応性官能基は、ステロイドホルモンのカルボニル又はヒドロキシル基と反応するように設計される。生体分子中のカルボニル又はヒドロキシル基と反応することができる本発明の反応基は、ヒドラジド又は-CONH-(CH2)n-ONH2(式中、nは1〜6であり、好ましくは、nは3である、すなわち、アミノキシプロピルアミド)である。これらの基は、カルボニル基と反応して、それぞれ、ヒドラゾン又はO-アルキルオキシムを形成する。反応性官能基の例は、その引用が本明細書中に組み込まれているWO2011/036059号に示されている。
好ましくは、該反応性官能基は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニルエステル、又はスルホジクロロフェニルエステルである。
Reが分析物であるとき、該分析物は、好ましくは、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、リン脂質、又はこれらの組合せを含む。
所望の整数質量を達成するために、部分XとMのうちの一方もしくは両方、反応性官能基Re、又は分析物を重同位体tで修飾することができる。
通常、重同位体は、2H、13C、15N、又は18Oから選択される。
「精密質量」という用語は、質量標識又はレポーター部分の理論上の質量を指し、質量標識又はレポーター部分全体の個々の同位体の精密質量の合計であり、個々の同位体の精密質量は、例えば、12C=12.000000、13C=13.003355、H1=1.007825、16O=15.994915である。「精密質量」は、質量欠損を考慮したものである。
「整数質量」という用語は、分子を構成する各核の各同位体の整数質量の合計であり、各同位体の整数質量は、例えば、12C=12、13C=13、1H=1、16O=16である。同位体の整数質量は、同位体の核を構成する陽子と中性子の合計である、すなわち、12Cは、6個の陽子と6個の中性子を含み、一方、13Cは、6個の陽子と7個の中性子を含む。これは、同位体のノミナル質量、又は原子質量数もしくは核子数と呼ばれることも多い。
文献において、「アイソバリック」という用語は、同じ整数質量を有し、かつMS/MS用に共選択可能である種を指すことが多いが、本発明の文脈において、本発明者らは、同じ精密質量を有する種に関しては「アイソバリック」という用語を使用し、かつ本発明者らは、同じ整数質量を有するが、わずかに異なる精密質量を有し得る種に対しては、「シュードアイソバリック」という用語を使用する。
サブセット中の少なくとも2つの該質量標識間の精密質量の差は、通常、100ミリダルトン未満、好ましくは、50ミリダルトン未満、最も好ましくは、20ミリダルトン(mDa)未満である。好ましくは、セット中の少なくとも2つの該質量標識間の精密質量の差は、同位体置換が共通であるため、2.5mDa、2.9mDa、6.3mDa、8.3mDa、9.3mDa、又は10.2mDaである。例えば、第1の標識が13C同位体を含み、第2の標識において、この13C同位体が12Cに置き換えられるが、14N同位体が15N同位体に置き換えられる場合、これら2つの標識の間の精密質量の差は、6.3mDaとなる。
好ましくは、サブセット中の各質量標識のレポーター部分は、該サブセット中の他の全ての質量標識のレポーター部分のアイソトポログである。アイソトポログは、その分子の同位体組成のみが異なる化学種である。例えば、水は、3つの水素関連アイソトポログ: HOH、HOD、及びDOD(ここで、Dは、重水素(2H)を表す)を有する。アイソトポログは、同じ数の各同位体を有するが、位置が異なる同位体異性体であるアイソトポマー(同位体異性体)とは区別される。より好ましくは、2以上の質量標識のセットは、2以上の質量標識を含む少なくとも1つのサブセットを含む。
通常、精密質量の差は、異なる数又はタイプの重同位体置換によってもたらされる。
レポーター部分Xという用語は、通常は開裂の後、質量分析によって独立に検出される質量標識の部分を指すために使用されるが、相補イオンとして分析物に付着している質量標識の残りの部分も本発明の方法で検出され得ることが理解されるであろう。該質量修飾因子Xは、質量標識が所望の整数質量を有することを保証するために質量標識に取り込まれる部分である。各質量標識のレポーター部分Xは、いくつかの実施態様においては、重同位体を含まなくてもよい。
質量修飾因子Mは、該セット中の各質量標識が所望の整数質量を有することを保証する。質量修飾因子Mは、質量分析によって必ずしも検出されるわけではない。しかしながら、質量修飾因子Mは、相補イオンの一部として検出され得る(下記参照)。質量修飾因子Mは、構造的に特に限定されるものではなく、単に質量標識の全体的な質量を変化させる役割を果たす。
2以上の質量標識のセットのいくつかの実施態様において、各質量標識は、上で定義されているような以下の一般式i)を含むレポーター部分Xを有し、
式中、R1は:
Figure 2017519209
から選択され、かつR9は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、もしくはネオペンチルから選択されるアルキル鎖、又は水素から選択される。
2以上の質量標識のセットのいくつかの他の実施態様において、各質量標識は、上で定義されているような以下の一般式ii)を含むレポーター部分Xを有し、かつR5及びR6は、各々独立に、
Figure 2017519209
であり、ここで、R7及びR8は、各々独立に、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基又は水素である。
いくつかの他の実施態様において、R4は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、又は(ジメチルアミノ)メチルである。より好ましくは、R4は(ジメチルアミノ)メチルである。
本発明によるレポーター部分の構成要素は、該レポーター部分のフラグメンテーションの部位が、衝突誘起解離(CID)、表面誘起解離、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、又は高速原子衝撃によって容易に破壊される開裂可能な結合Lの導入によって制御することができるように、フラグメンテーション抵抗性であることが好ましい。最も好ましい実施態様において、該結合は、CIDによって容易に破壊される。
好ましい実施態様において、該開裂可能な結合Lはアミド結合を含む。
一実施態様において、該質量標識は、WO01/68664号に定義されているようなタンデム質量タグのアイソトポログである。
好ましい実施態様において、該質量標識の総分子量は、600ダルトン以下、より好ましくは、500ダルトン以下、さらにより好ましくは、400ダルトン以下、最も好ましくは、300〜500ダルトンである。
別の好ましい実施態様において、該レポーター部分の分子量は、400ダルトン以下、好ましくは、250ダルトン以下、より好ましくは、100〜250ダルトン、最も好ましくは、100〜220ダルトンである。サイズの小さいレポーター部分は、それが、質量スペクトルのサイレント領域にピークを生じさせ、それにより、レポーター部分が質量スペクトルから容易に同定されることが可能になり、かつ感度の高い定量も可能になるので、特に好都合である。
本文脈で使用される質量スペクトルのサイレント領域という用語は、標識ペプチドのフラグメンテーションによって生成されるフラグメントの存在に関連するピークによって生じる低いバックグラウンド「ノイズ」を有する質量スペクトルの領域を指すことが意図される。したがって、サイレント領域という用語は、検出されるペプチドに関連するピークによって生じる低い「ノイズ」を有する質量スペクトルの領域を指すことが意図される。ペプチド又はタンパク質について、質量スペクトルのサイレント領域は、220ダルトン未満、好ましくは、200ダルトン未満である。
本発明による質量標識は、タンパク質などの生体分子と反応して、標識生体分子、例えば、標識タンパク質を形成するように設計される。
一実施態様において、2以上の質量標識のセットは、以下の一般式を含むレポーター部分Xを有する質量標識を含む:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
別の好ましい実施態様において、本発明による質量標識は、以下の構造を含むか又は該構造を有する質量修飾因子Mを有する:
Figure 2017519209
(式中、(炭素原子上にある)各々のR10は、独立に(すなわち、同じであっても、異なっていてもよい)、H、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C6アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基、或いはアミノ酸側鎖であり; aは0〜10の整数であり; b及びcは、整数でかつ少なくとも1である)。例えば、C(R10)2基は、CH(R10)などの基を含み、ここで、一方のR10はHであり、もう一方のR10は、R10の上の定義から選択される別の基である。
最も好ましい実施態様において、質量標識X-L-Mは、式:
Figure 2017519209
(式中、R2及びR3はともに
Figure 2017519209
を含み、かつR1は、イソプロピル又はイソブチル又はネオペンチルから選択される)を含むレポーター部分Xを有し;質量修飾因子Mは、以下の構造
Figure 2017519209
(ここで、R10はHであり、a=1であり、b=2であり、かつc=2である)を含み;質量修飾基は、2H、13C、15N、又は18Oから選択される1以上の重同位体であり;かつ任意に、質量標識X-L-Mは、Mを介して、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニルエステル、スルホ-ジクロロフェニルエステル、ヨードアセトアミド基、マレイミド基、又はアミノキシ基から選択される反応性官能基Reに接続している。
一層より好ましくは、本発明による質量標識X-L-Mは、以下の式のうちの1つを含むレポーター部分Xを有する:
Figure 2017519209
本発明による最も好ましい質量標識は、重同位体質量系列修飾基を含む2以上の質量標識のセットの例とともに、以下、本明細書において、実施態様1〜6に詳細に記載されている。
(実施態様1:)
質量標識は、以下の構造を有する:
Figure 2017519209
(ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
実施態様1の質量標識の合成は、下の例で詳細に記載されている(実施例2)。この質量標識のフラグメンテーションは、図2に示されており、ここで、Rはイソブチル基である。
質量系列修飾基13C又は15Nを含むn=18の質量標識のセットの例を下に示す:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
1H、12C、及び14Nの置換は、実施態様1のセット例における特定の場所に示されているが、これは、説明のための便宜として行われており、実施態様1のセット例における置換は、それらを別の場所に配置することがより好都合であるか又は費用効率的である場合、レポーター部分X又は質量修飾因子Mリンカー内の任意の好適な位置に配置することができることに留意すべきである。
下の実施態様2に示すような水素、重水素、12C、13C、14N、及び15Nの固定された置換を有する、さらなる質量標識を構築することができる。
(実施態様2:)
質量標識は、以下の構造を有する:
Figure 2017519209
(ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
実施態様2の質量標識の合成は、下の例で詳細に記載されている(実施例2)。この質量標識のフラグメンテーションは、図2に示されており、ここで、Rはイソブチル基である。
質量系列修飾基2H(すなわち、D)、13C、又は15Nを含むn=5の質量標識のセットの例を下に示す:
Figure 2017519209
実施態様11の質量標識は実施態様10の質量標識とシュードアイソバリックであることが明白であろう。したがって、これらのセットを同時に用いて、23重の多重化を支持することができる。
実施態様1及び2の質量標識のセットとシュードアイソバリックである質量標識を下の実施態様3の構造に基づいて合成することもできる。
(実施態様3:)
質量標識は、以下の構造を有する:
Figure 2017519209
(ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
質量系列修飾基2H(すなわち、D)、13C、又は15Nを含むn=2の質量標識のセットの例を下に示す:
Figure 2017519209
実施態様1、2、及び3による質量標識のセットは、もとの質量標識の精密質量が、それぞれ、419.24041、419.24285、及び419.2521であるので、互いにシュードアイソバリックである。したがって、これらの質量標識は同位体であり、かつ互いに11.7ミリダルトンの範囲内でシュードアイソバリックである。したがって、これらの試薬で標識されたペプチドは共分離し、MS/MSベースのシークエンシング用にまとめて共選択される。それゆえ、これらの試薬は、25個のタグのシュードアイソバリックアレイを形成する。
プロリン窒素の線状ブチル鎖置換又はプロリン窒素のsec-ブチル鎖置換に基づく対応するタグセットを、それぞれ、対応する線状ブチルアルデヒド及びブタノン同位体から容易に合成することができることも当業者には明白であろう。
(実施態様4:)
質量標識は、以下の構造を有する:
Figure 2017519209
(ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
実施態様4の質量標識の合成は、下の例で詳細に記載されている(実施例3)。この質量標識のフラグメンテーションは、図2に示されており、ここで、Rはイソプロピル基である。
質量系列修飾基13C又は15Nを含むn=16の質量標識のセットの例を下に示す:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
(実施態様5:)
質量標識は、以下の構造を有する:
Figure 2017519209
(ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
印が付けられた重水素部位(D)は、固定された質量系列修飾因子基、したがって、実施態様5のレポーター部分の質量を実施態様4のレポーター部分の質量と比べてシフトさせるものとみなすことができる。
実施態様5の質量標識の合成は、下の例で詳細に記載されている(実施例3)。この質量標識のフラグメンテーションは、図2に示されており、ここで、Rはイソプロピル基である。
質量系列修飾基2H(すなわち、D)、13C、又は15Nを含むn=4の質量標識のセットの例を下に示す:
Figure 2017519209
実施態様5の質量標識は、実施態様4の質量標識とシュードアイソバリックであるが、それは、これらの質量標識の精密質量が、それぞれ、405.23352及び405.21844であるからである。まとめると、これら2つのセットは、20個の分解可能な質量標識のアレイを提供する。
代わりの重同位体置換を下に示すように導入することもできる:
Figure 2017519209
(ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
(実施態様6:)
質量標識は、以下の構造を有する:
Figure 2017519209
(ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
実施態様6の質量標識の合成は、下の例で詳細に記載されている(実施例6)。この質量標識のフラグメンテーションは、図2に示されており、ここで、Rはネオペンチル基である。
質量系列修飾基13C又は15Nを含むn=18の質量標識のセットの例を下に示す:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
代わりの重同位体置換を下に示すように導入することができる:
Figure 2017519209
(ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
印が付けられた重水素部位(D)は、固定された質量系列修飾因子基、したがって、これらのレポーター部分の質量を実施態様6のレポーター部分の質量と比べてシフトさせるものとみなすことができる。
本発明による質量標識のさらなる実施態様が以下に記載されている。上記の好ましい実施態様に関して、質量標識は、セット数、もとのセットのサイズ、及びレポーターイオン質量によって識別され、例えば、下のセット1において、各質量標識は、TMT-1-24-「レポーター質量」と命名されており、ここで、TMTは、タンデム質量タグ、すなわち、タンデム質量分析用のタグを表し、数字の1は、セット数を指し、24は、セット中の質量標識の数を指し、レポーター質量は、衝突誘起解離条件下での予想されるレポーターイオンの質量電荷比である。様々なレポーターイオンを電子移動解離(ETD)又は電子捕獲解離(ECD)によって得ることができる。
(セット1:)
アイソバリック質量標識は、以下の構造を有し得る:
Figure 2017519209
(ここで、質量系列修飾基*は、酸素が18Oに交換(もしくは置換)されているか、炭素が13Cに交換(もしくは置換)されているか、又は窒素が15Nに交換(もしくは置換)されていることを表し、或いは水素が存在する部位において、*2Hを表す)。1以上の位置が単一の標識中で置換され得る。好ましくは、2以上の位置が置換される。
レポーター部分(セット1の一般構造において開裂可能な結合Lを表す破線の左側に示されている)の合成を図3に示す。図3は、本発明による種々のレポーター基を生じさせるための一般化された合成経路の模式図を示している。メタノールを用いて、プロリンカルボン酸をメチルエステル(1)として保護する。このエステルを、水素化アルミニウムリチウムにより、プロリノール(2)に還元する。その後、プロリンアミノ基を、クロロギ酸ベンジルとの反応により保護して、ベンジルオキシカルボニル保護アミン(3)を得る。その後、アルコールを、臭化ナトリウム又は臭化カリウムのいずれかと濃硫酸の混合物との反応により、対応する臭化物(4)に変換する。その後、第二級アミンを臭化物(4)とカップリングさせて、第三級アミン(5)を生じさせる。いくつかの異なる第二級アミンをこの段階で使用することができる。好ましい例を図3の下に示す。その後、保護されたアミンを、通常、パラジウム触媒の存在下での水素による還元により脱保護して、ピロリジンアミン(6)を遊離させる。並行して、ブロモ酢酸をベンジルエステル(7)として保護する。その後、ピロリジンアミン(6)を保護されたブロモ酢酸とカップリングさせて、ジ-第三級アミン(8)を生じさせ、これをその後、通常、パラジウム触媒の存在下での水素による還元により脱保護して、遊離カルボン酸(9)を遊離させる。
このレポーター部分と2つの連続するβ-アラニン残基(質量修飾因子M)とのカップリングを図4に示す。図4は、アミノ酸リンカーと本発明のレポーター基とのカップリングのための一般化された合成経路の模式図を示している。β-アラニン又はその同位体をベンジルエステル(10)として保護する。その後、保護されたβ-アラニン(10)を、図3のレポーター基(9)の遊離カルボン酸とカップリングさせて、1つ伸長したレポーター構造(11)を生じさせることができる。その後、ベンジルエステル保護基を、通常、パラジウム触媒の存在下での水素による還元により除去して、遊離カルボン酸(12)を遊離させる。その後、構造12をさらなるベンジルエステル保護β-アラニン(10)とカップリングさせて、保護された二重βアラニン伸長レポーター基(13)を生じさせる。最後に、ベンジルエステル保護基を図3について説明されているように除去すると、完成したタグが遊離酸(14)として得られる。
このセット1による質量タグのアイソバリックセットの好ましい実施態様において、質量系列修飾基*13C又は15Nであり、該セットは、以下の構造を有するn=24の質量標識を含む:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
上の構造において破線で印が付けられている開裂可能な結合Lは、質量分析計において、レポーター部分と質量修飾因子(M)に分かれ、レポーターイオン(質量標識の残りの部分から分かれたレポーター部分X、一般構造における破線の左側の構造)を生成させる。セット1には、レポーターイオンの質量に基づく質量標識のサブセットが10個ある、すなわち、サブセット2のレポーターイオンは、サブセット1のレポーターイオンよりも約1ダルトン重い。同様に、サブセット3のレポーターイオンは、サブセット2のレポーターイオンよりも約1ダルトン重い、などである。質量標識の各サブセットにおいて、各質量標識が次のものと6.32ミリダルトン異なることが計算精密質量から分かる。
サブセット1では、重同位体質量調整因子がレポーターイオン中に存在せず、このレポーターを構築することができる方法は1つしかないため、サブセット1には1つのタグしか存在しない。サブセット2では、重同位体がレポーターイオン中に1つ存在し、レポーターの質量をサブセット1と比べて約1ダルトンだけシフトさせる。重同位体を導入するには、1つの15N核の導入によるか又は1つの13C核の導入によるかの2つの方法があり、それゆえ、サブセット2には、質量が互いに6.3ミリダルトン異なる2つのタグが存在する。サブセット3では、重同位体質量調整因子がレポーターイオン中に2つ存在し、レポーターの質量をサブセット2と比べて約1ダルトンだけシフトさせる。2つの質量調整因子をサブセット3に導入するには、2つの15N核の導入によるか又は1つの15N核と1つの13C核の導入によるか又は2つの13C核の導入によるかの3つの方法があり、それゆえ、サブセット3には、3つのタグが存在する。サブセット4では、重同位体質量調整因子がレポーターイオン中に3つ存在し、レポーターの質量をサブセット3と比べて約1ダルトンだけシフトさせる。この場合も、3つの質量調整因子をサブセット3に導入するには、2つの15N核と1つの13Cの導入によるか又は1つの15N核と2つの13C核の導入によるか又は3つの13C核の導入によるかの3つの方法しかなく、それゆえ、サブセット4には、3つのタグが存在する。一般に、各サブセットにおけるタグの数は、質量調整因子核のうちのどれがその構造の中により低い頻度で存在するかということによって限定される。
この特異的な質量標識中に2つのβ-アラニン残基を含む質量修飾因子Mはかなり多様であり得ることが当業者に理解されるであろう。可能な置換としては、アラニン、バリン、ロイシンなどの他のアミノ酸との、又はγ-アミノ酪酸、アミノペンタン酸、もしくはアミノヘキサン酸などのより長いアミノ酸との置換が挙げられる。アミノ末端及びカルボン酸末端に関しては、ポリエチレングリコールリンカーが適切である場合もある。ベンジルエステルの調製及び全てのこれらの代替物に対するこれらのエステルの使用は、β-アラニンについて図4に示されているものと本質的に同じである。
(セット2:)
アイソバリック質量標識は、以下の構造も有し得る:
Figure 2017519209
(ここで、質量系列修飾基*は、酸素が18Oに交換(もしくは置換)されているか、炭素が13Cに交換(もしくは置換)されているか、又は窒素が15Nに交換(もしくは置換)されていることを表し、或いは水素が存在する部位において、*2Hを表す)。1以上の位置が単一の標識中で置換され得る。好ましくは、2以上の位置が置換される。
セット2のレポーター部分構造の合成を図5に示す。図5は、本発明による種々のレポーター基を生じさせることができる一般化された合成経路の模式図を示す。図5において、プロリンを保護して、プロリンベンジルエステル(1)を生じさせ、その後、保護されたプロリンをブロモエタノール(又はその同位体)とカップリングさせて、遊離ヒドロキシル基を有する第三級アミン(2)を生じさせる。その後、この遊離ヒドロキシル基を、臭化ナトリウム又は臭化カリウムのいずれかと濃硫酸の混合物との反応により、臭化物(3)に変換する。その後、第二級アミンを臭化物(3)とカップリングさせて、ジ-第三級アミン(4)を生じさせる。いくつかの異なる第二級アミンをこの段階で使用することができる。好ましい例を図5の下に示す。その後、保護されたアミンを、通常、パラジウム触媒の存在下での水素による還元により脱保護して、プロリンカルボン酸レポーター構造(5)を遊離させる。
このレポーター部分とβ-アラニン残基及びγ-アミノ酪酸残基(質量修飾因子M)とのカップリングを図6に示す。図6は、アミノ酸リンカーと本発明のレポーター基とのカップリングのための一般化された合成経路の模式図を示す。手短に言えば、β-アラニン又はその同位体をベンジルエステル(6)として保護する。その後、保護されたβ-アラニン(6)を、図5のレポーター基(5)の遊離カルボン酸とカップリングさせて、1つ伸長したレポーター構造(7)を生じさせることができる。その後、ベンジルエステル保護基を、通常、パラジウム触媒の存在下での水素による還元により除去して、遊離カルボン酸(8)を遊離させる。γ-アミノ酪酸(GABA)も保護して、ベンジルエステル(9)を生じさせる。その後、構造8をベンジルエステル保護GABAリンカー(9)とカップリングさせて、保護されたβアラニン及びGABA伸長レポーター(10)を生じさせる。最後に、その後、ベンジルエステル保護基を上記のように除去すると、完成したタグが遊離酸(11)として得られる。
本発明による質量標識のアイソバリックセットの好ましい実施態様において、質量系列修飾基*13C又は15Nであり、該セットは、以下の構造を有するn=24の質量標識を含む:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
セット2の質量標識の構造は、セット1の質量標識の構造の異性体であり、両方とも、質量分析計において、同じ質量を有するが、構造が異なるレポーターイオンを生じる。
(セット3:)
アイソバリック質量標識は、以下の構造も有し得る:
Figure 2017519209
(ここで、質量系列修飾基*は、酸素が18Oに交換(もしくは置換)されているか、炭素が13Cに交換(もしくは置換)されているか、又は窒素が15Nに交換(もしくは置換)されていることを表し、或いは水素が存在する部位において、*2Hを表す)。1以上の位置が単一の標識中で置換され得る。好ましくは、2以上の位置が置換される。
N-メチルピペラジンを第二級アミンとして用いたレポーター部分構造の合成を図3に示す。このレポーター部分構造と2つの連続するβ-アラニン残基及びγ-アミノ酪酸(GABA)残基とのカップリングを図4及び図14に示す。図4に示すスキームは、図4の生成物14を生じさせるための本発明によるレポーター部分と2つの連続するβ-アラニンリンカーとのカップリングを示している。図14は、保護されたGABA伸長生成物(16)を生じさせるための図4の二重β-アラニンタグ(生成物14)とベンジルエステル保護GABAリンカー(15)とのさらなるカップリングを示している。その後、ベンジルエステル保護基を還元により除去して、タグの遊離酸形態(17)を生じさせる。セット3は、R1及びR2がともにセット3のN-メチルピペラジン環を形成する生成物16の具体的な例である。N-メチルピペラジン環の合成は、以下、本明細書において、合成の節の実施例に記載されている。
本発明による質量標識のアイソバリックセットの具体的な好ましい実施態様において、質量系列修飾基*13C又は15Nであり、該セットは、以下の構造を有するn=48の質量標識を含む:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
セット3のレポーター部分(破線の左側)の対応する異性体を図5のスキームに従って合成することができ、これにより、以下の一般構造を有するタグのアイソバリックな48重セットも得られる:
Figure 2017519209
単一のアイソバリック質量標識セット、例えば、上記のセット1、2、及び3の多重化率の制限は、固有の追加の質量を各々保有する複数のセットを、例えば、1以上のβ-アラニン部分の形態で提供することによって克服することができる。追加の質量は、本発明による質量系列修飾基によって提供される。固有の追加の質量系列修飾基を質量修飾因子Mに導入するという概念は、その引用がどちらも本明細書中に組み込まれている、US 7,294,456号及びWO2011036059号に記載されている。したがって、追加のβ-アラニン部分を、市販の6重タンデム質量タグであるジメチルピペラジン-β-アラニンタグ構造のリンカーLに付加することにより、アイソバリック質量標識セットのアレイを開発することが可能である。そのような一元的アプローチは、多重化率を6から12、18、24、又はそれを上回る試料へと増大させる迅速でかつ費用のかからない手段を提供する。本発明のアイソバリック質量標識セットは、追加のリンカーの導入によっても修飾することができる。
例えば、セット1の質量標識の合成を、図14に示すようなリンカーLへのドープされていないさらなるγアミノ酪酸(GABA)分子の導入により修飾して、GABA分子の質量によってセット1の質量標識と区別される24個の質量標識の異なるセットを生じさせることができる。ドープされていないβ-アラニンをセット1の質量標識の構造に付加することによって、24個の質量標識のさらなるセットを作出することができることが明らかである。さらに、ドープされたβ-アラニンリンカーをセット1の全ての質量標識に付加することによって、24個の質量標識のさらなるセットを作出することができ、その場合、追加のβ-アラニンは、3つの13C核と1つの15N核の固定された置換を含む。
追加の質量を本明細書に開示される質量標識に導入すること及び代替手段は、本発明の範囲内で想定されている。
驚くべきことに、質量標識の質量の修飾をセット4〜9の質量標識について以下で論じられている非常に好都合な新規の方法によってレポーター部分に適用し得ること、特に、質量系列修飾基をレポーター部分に付加することができることが分かった。実施態様1〜6について既に論じられたこうしたレポーター部分の修飾は非常に好都合であることが本発明者らによって見出されており、それらを、以下のセット4〜9を参照して、さらに論じることにする。
(セット4:)
アイソバリック質量標識は、以下の構造も有し得る:
Figure 2017519209
(ここで、質量系列修飾基*は、酸素が18Oに交換(もしくは置換)されているか、炭素が13Cに交換(もしくは置換)されているか、又は窒素が15Nに交換(もしくは置換)されていることを表し、或いは水素が存在する部位において、*2Hを表す)。1以上の位置が単一の標識中で置換され得る。好ましくは、2以上の位置が置換される。
レポーター部分のピペラジン環中に置換されたN-メチル基は、3つの水素原子と1つの12C原子の固定された置換を有する。さらに、ピペラジン環中のメチル置換窒素原子は、14Nの固定された置換を有する。ピペラジン環中への1つの12C原子の固定された置換がさらに存在する。「固定された置換」という用語は、このセットの全ての質量標識がこの置換をレポーター部分に有するが、該レポーター部分における置換の正確な場所が異なり得るということを意味する。
N-メチルピペラジンを第二級アミンとして、及び以下、本明細書において、合成の節の実施例に記載されているように用いたレポーター部分構造の合成を図3に示す。このレポーター部分構造と2つの連続するγ-アミノ酪酸残基とのカップリングを図15に示す。図15は、アミノ酸リンカーと本発明のレポーター基とのカップリングのための一般化された合成経路の模式図を示している。手短に言えば、γ-アミノ酪酸(GABA)又はその同位体をベンジルエステル(10)として保護する。その後、カルボキシル保護GABAリンカー(10)を、図3のレポーター基(9)の遊離カルボン酸とカップリングさせて、1つ伸長したレポーター構造(11)を生じさせることができる。その後、ベンジルエステル保護基を、通常、パラジウム触媒の存在下での水素による還元により除去して、遊離カルボン酸(12)を遊離させ、これをその後、さらなるベンジルエステル保護GABAリンカー(10)とカップリングさせて、保護された二重GABA伸長レポーター(13)を生じさせる。最後に、ベンジルエステル保護基を図3について上で記載されているように除去すると、完成したタグが遊離酸(14)として得られる。
質量標識のアイソバリックセットの好ましい実施態様において、該セットは、以下の構造を有するn=30の質量標識を含む:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
2H、13C、及び15Nの固定された置換は、上に示された質量標識中の特定の場所に示されているが、これは、説明のための便宜として行われており、セット4におけるこれらの固定された置換は、それらを別の場所に配置することがより好都合であるか又は費用効率的である場合、レポーターイオン内の任意の好適な位置に配置することができることに留意すべきである。この例では、固定された置換基は、TMT-4-30-205.21102、TMT-4-30-206.20805、及びTMT-4-30-207.20509中の異なる場所に示されている。
(セット5:)
アイソバリック質量標識は、以下の構造も有し得る:
Figure 2017519209
(ここで、質量系列修飾基*は、酸素が18Oに交換(もしくは置換)されているか、炭素が13Cに交換(もしくは置換)されているか、又は窒素が15Nに交換(もしくは置換)されていることを表し、或いは水素が存在する部位において、*2Hを表す)。1以上の位置が単一の標識中で置換され得る。好ましくは、2以上の位置が置換される。
ピペラジン環中に置換されたN-メチル基は、3つの重水素原子の固定された置換と12Cの固定された置換を有する。さらに、レポーターのピペラジン環中の窒素原子のうちの1つは、14Nの固定された置換を有し、該ピペラジン環中の炭素原子のうちの1つは、12Cの固定された置換を有する。この例におけるこれらの固定された置換は、セット5の質量標識のレポーター部分がセット4の質量標識のレポーター部分と比べて固定された質量オフセットを有し、そのため、セット4の最も軽いレポーター部分がセット5の最も軽いレポーター部分よりも約3ダルトン軽いということを意味する。セット5における重水素置換は、レポーター部分のいくつかが同じ質量を有するにもかかわらず、セット5の全てのレポーター部分がセット4の全てのレポーターと異なる精密質量を有するということも意味する。しかしながら、これらの質量差のうちのいくつかは非常に小さい。
N-メチルピペラジンを第二級アミンとして用いたレポーター部分構造の合成を図3に示す。このレポーター部分構造と2つの連続するγ-アミノ酪酸残基とのカップリングを図15に示す。
質量標識のアイソバリックセットの好ましい実施態様において、該セットは、以下の構造を有するn=30の質量標識を含む:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
セット5の質量標識は全て、セット4の質量標識の同位体であり、セット5の質量標識(もとのタグ質量:425.32765ダルトン)は、セット4の質量標識(もとのタグ質量:422.30882ダルトン)よりも約3ダルトン重い。より重要なことに、セット5のレポーター部分の質量は全て、セット4のレポーター部分の質量と異なる。これは、セット5の質量標識をセット4の質量標識と一緒に用いて、多重化用に最大60個の試料を標識することができるということを意味する。セット4の質量標識で標識されたペプチドは、セット5の質量標識で標識されたペプチドと共溶出するが、セット5のタグ中に重水素が存在するため、移動度がわずかにシフトする可能性がある。しかしながら、質量標識中の塩基性部位での重水素の置換は、大きな移動度シフトを起こさないことが報告されており(Zhang, J.らの文献(2010) Anal Chem, 82, 7588-7595)、そのため、セット5の質量標識における重水素置換は、セット4の質量標識と比べて無視できる程度にしかこれらの質量標識の移動度シフトをもたらさないと予想される。これらの質量標識は互いの同位体であり、ほとんどが共溶出するので、セット5のペプチドを分析するときに、セット4で標識されたペプチドが共選択される可能性があり、逆の場合も同じである。これは、レポーター部分にではなく、質量修飾因子にある同位体置換を有するアイソバリック質量標識を提供しようとする以前に開示された試みの問題点である。本発明のセット4及び5で示されたようなレポーター部分の同位体修飾を使用している報告はこれまでにない。これら2つの質量標識のセットは、レポーター部分に同位体置換を含み、それゆえ、異なるレポーター部分(フラグメンテーションされて、レポーターイオン)を生じさせるので、異なる質量標識セットで標識されたペプチドが共選択される。この異なるレポーター部分は、正確な同定及びペプチドへの正確な帰属を可能にする。異なるセットのいくつかのレポーター部分間の質量差のうちのいくつかが極めて小さいものであっても、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴装置は、1ppmを十分に超える質量分解能を既に提供することができる。さらに、それが望ましい場合、さらなる重水素原子の導入によるか、又はより大きいレポーター部分を用いて、より大きい質量差を質量標識のセット間に導入することができる。
2H、12C、及び14Nの固定された置換は、上に示された例の特定の場所に示されているが、これは、説明のための便宜として行われており、セット5におけるこれらの固定された置換は、それらを別の場所に配置することがより好都合であるか又は費用効率的である場合、レポーター部分内の任意の好適な位置に配置することができることに留意すべきである。実際、12Cの固定された置換のうちの1つは、全てのタグ中の同じ位置で示されているわけではないが、最も重いレポーター(サブセット12)の中でさえも、該レポーター中に2つの12C置換が存在する。しかしながら、移動度シフトを避けるためには、緩衝液中で及び通常、エレクトロスプレーによるイオン化又はMALDIにおいて使用される酸性条件下でプロトン化するアミノ基などの塩基性部位の近くで重水素原子を置換することが好ましい。
(セット6:)
質量標識は、以下の構造も有し得る:
Figure 2017519209
(ここで、質量系列修飾基*は、酸素が18Oに交換(もしくは置換)されているか、炭素が13Cに交換(もしくは置換)されているか、又は窒素が15Nに交換(もしくは置換)されていることを表し、或いは水素が存在する部位において、*2Hを表す)。1以上の位置が単一の標識中で置換され得る。好ましくは、2以上の位置が置換される。
ピペラジン環中に存在する窒素ヘテロ原子のうちの1つは、15Nの固定された置換を有し、ピペラジン環中に存在する炭素原子のうちの2つは、13Cの固定された置換を有し、セット4の質量標識と比べて、この質量標識セットの質量標識の質量に、固定された3ダルトンのオフセットを生じさせる。
N-メチルピペラジンを第二級アミンとして用いたレポーター構造の合成を図3に示す。このレポーター部分構造と2つの連続するγ-アミノ酪酸残基とのカップリングを図15に示す。
質量標識のアイソバリックセットの好ましい実施態様において、該セットは、以下の構造を有するn=30の質量標識を含む:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
セット6の質量標識は全て、セット5の質量標識のアイソトポログであり、セット5の質量標識(もとのタグ質量:425.32765ダルトン)は、セット6の質量標識(もとのタグ質量:425.31256ダルトン)とほぼアイソバリック(シュードアイソバリック)である。これは、セット6の質量標識で標識されたペプチドが、セット5の質量標識で標識されたペプチドと共選択可能であるということを意味する。しかしながら、セット5の質量標識中のレポーター部分の質量は全て、セット6の質量標識のレポーター部分の質量と異なる。言い換えると、セット5の質量標識をセット6の質量標識と一緒に用いて、多重化用に最大60個の試料を標識することができる。セット6の質量標識で標識されたペプチドは、ほとんどが、セット5の質量標識で標識されたペプチドと共溶出する(上で言及したように重水素が存在するため、移動度がわずかにシフトする可能性があることを差し引く)。これらの質量標識は互いの同位体であり、ほとんどが共溶出し、かつこれらの質量標識は共選択可能であるので、セット6の質量標識で標識されたペプチドは、セット5の質量標識で標識されたペプチドと同時に分析され、これらの質量標識は、それらが質量標識の単一のシュードアイソバリックセットであるかのように挙動する。しかしながら、これら2つの質量標識セットは異なるレポーターイオンを生じさせるレポーター部分を含み、そのため、ペプチドをセット5及び6の質量標識で標識したとき、レポーター部分が全て異なるので、レポーターイオンをその正確なペプチドになお帰属させることができる。13C及び15Nの固定された置換は、上に示した実施例中の特定の場所に示されているが、これは、説明のための便宜として行われており、セット6におけるこれらの固定された置換は、それらを別の場所に配置することがより好都合であるか又は費用効率的である場合、レポーターイオン内の任意の好適な位置に配置することができることに留意すべきである。
セット5及びセット6を一緒に使用するとき、それらをアイソバリック質量標識の2つのアイソトポメリックセットのアイソトポログアレイとみなすことができる。60個のタグを有する、セット5及びセット6を含む、アイソトポログアレイが、セット3で示された48重のアイソバリックタグセットを達成するのに必要とされるよりも小さいタグでできていることも注目に値する。これは、合成の点で好都合であるが、それは、大きいタグセットをより小さい構造から作出することができる、すなわち、レポーターオフセットを用いて所与の数のタグを達成するときに、より小さい質量修飾因子構造が必要とされるからであり、これは、ここで提示された本発明の重要な利点である。
(セット7:)
アイソバリック質量標識は、以下の構造も有し得る:
Figure 2017519209
(ここで、質量系列修飾基*は、酸素が18Oに交換(もしくは置換)されているか、炭素が13Cに交換(もしくは置換)されているか、又は窒素が15Nに交換(もしくは置換)されていることを表し、或いは水素が存在する部位において、*2Hを表す)。1以上の位置が単一の標識中で置換され得る。好ましくは、2以上の位置が置換される。
レポーター部分構造に存在する窒素ヘテロ原子は全て、14Nの固定された置換を有し、レポーター部分構造に存在する炭素原子のうちの3つは、13Cの固定された置換を有し、セット4の質量標識と比べて、このタグセットのもとのタグ質量に、固定された3ダルトンのオフセットを生じさせる。
N-メチルピペラジンを第二級アミンとして用いたレポーター部分構造の合成を図3に示す。このレポーター部分構造と2つの連続するγ-アミノ酪酸残基とのカップリングを図15に示す。
質量標識のアイソバリックセットの好ましい実施態様において、該セットは、以下の構造を有するn=9の質量標識を含む:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
セット7の質量標識は全て、セット5及び6の質量標識の同位体であり、セット5の質量標識(もとのタグ質量:425.32765ダルトン)は、セット6及びセット7の質量標識(もとのタグ質量:それぞれ、425.31256及び425.31888ダルトン)とほぼアイソバリックである。上で説明されているように、これらの質量標識で標識されたペプチドは共溶出するが、レポーター部分の質量が全て異なるので、レポーターイオンを正確なペプチドになお帰属させることができる。
13C及び15Nの固定された置換は、上に示された例の特定の場所に示されているが、これは、説明のための便宜として行われており、セット7におけるこれらの固定された置換は、それらを別の場所に配置することがより好都合であるか又は費用効率的である場合、レポーターイオン内の任意の好適な位置に配置することができることに留意すべきである。
(セット8:)
アイソバリック質量標識は、以下の構造も有し得る:
Figure 2017519209
(ここで、質量系列修飾基*は、酸素が18Oに交換(もしくは置換)されているか、炭素が13Cに交換(もしくは置換)されているか、又は窒素が15Nに交換(もしくは置換)されていることを表し、或いは水素が存在する部位において、*2Hを表す)。1以上の位置が単一の標識中で置換され得る。好ましくは、2以上の位置が置換される。
レポーター部分構造に存在する窒素ヘテロ原子は全て、15Nの固定された置換を有し、ピペラジン環中に置換されたN-メチル基は、3つの重水素原子の固定された置換を有する。
N-メチルピペラジンを第二級アミンとして用いたレポーター部分構造の合成を図3に示す。このレポーター部分構造と2つの連続するγ-アミノ酪酸残基とのカップリングを図15に示す。
質量標識のアイソバリックセットの好ましい実施態様において、該セットは、以下の構造を有するn=9の質量標識を含む:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
セット8の質量標識は全て、セット5、6、及び7の質量標識の同位体であり、セット5の質量標識(もとのタグ質量:425.32765ダルトン)は、セット6の質量標識(もとのタグ質量:425.31256ダルトン)、セット7の質量標識(もとのタグ質量:425.31888ダルトン)、及びセット8の質量標識(もとのタグ質量:425.32133ダルトン)とほぼアイソバリックである。これは、セット8の質量標識で標識されたペプチドが、セット5、6、及び7の質量標識で標識されたペプチドと共選択可能であるということを意味する。より重要なことに、セット8のレポーター部分の質量は全て、セット5、6、及び7のレポーター部分の質量と異なる。これは、セット8の質量標識をセット5、6、及び7の質量標識と一緒に用いて、多重化用に最大78個の試料を標識することができるということを意味する。セット8の質量標識で標識されたペプチドは、セット5の質量標識で標識されたペプチドと正確に共溶出し、セット6及び7の質量標識と、程度の差はあれ、正確に共溶出するであろうが、セット5及び8の質量標識中に重水素が存在するため、移動度がわずかにシフトする可能性がある。これらの質量標識は互いの同位体であり、ほとんどが共溶出し、かつこれらの質量標識は共選択可能であるので、セット8の質量標識で標識されたペプチドは、セット5、6、及び7の質量標識で標識されたペプチドと同時に分析され、これらの質量標識は、それらが質量標識の単一のシュードアイソバリックセットであるかのように挙動する。しかしながら、レポーター部分は全て異なる質量を有するので、それらをその正確なペプチドに帰属させることができる。2H、13C、及び15Nの固定された置換は、上に示された例の特定の場所に示されているが、これは、説明のための便宜として行われており、実施例セット8におけるこれらの固定された置換は、それらを別の場所に配置することがより好都合であるか又は費用効率的である場合、レポーターイオン内の任意の好適な位置に配置することができることに留意すべきである。
セット5、6、7、及び8の質量標識の同位体であるいくつかのさらなるシュードアイソバリック質量標識を、以下の構造に従って作製することができる:
Figure 2017519209
これら3つの質量標識も、セット5、6、7、及び8の質量標識とシュードアイソバリックでかつ共選択可能であり、81重の多重化が可能になる。
以下の一般式の例に示されるような水素、重水素、12C、及び14Nのさらなる固定された置換を有する質量標識のさらなるセットを構築することができる:
Figure 2017519209
固定された水素、重水素、12C、13C、14N、及び15N置換の非常に多くの異なる組合せが可能であるということ、並びにアイソバリックタグ及びシュードアイソバリックタグのセットの非常に大きなアレイが可能であるということが当業者には明白であろう。レポーターイオン環中に特定の置換を固定する同じ手法を異なるレポーターイオン構造に容易に適用することができるということも当業者には明白であろう。
本発明のいくつかの実施態様において、分析物がLC-MSによって分析されることになる場合、重水素の数が異なる同位体を含む質量標識の相対的な移動度シフトの可能性を最小限に抑えるために、重水素置換の数を最小限に抑えることが好ましい場合がある。他の実施態様において、LCが使用されない場合、移動度シフトの問題は重要でない可能性があり、その場合は、広範な重水素置換の使用が望ましい可能性がある。とはいえ、重水素が、文献(Zhang, J.らの文献(2010) Anal Chem, 82, 7588-7595及びThompson, A.らの文献(2003) Anal Chem, 75, 1895-1904)中に報告されているような示差置換された同位体の移動度シフトを常にもたらすわけではないことに留意すべきである。
本発明の別の実施態様において、質量標識は、以下の一般式を有するセット4〜8の質量標識の異性体に対応する:
Figure 2017519209
レポーター部分構造は、図5に示されるスキームに従って合成することができる。GABAリンカーのカップリングは、異性体レポーターについて図15に示されているものと本質的に同じである。
(セット9:)
アイソバリック質量標識は、以下の構造も有し得る:
Figure 2017519209
(ここで、質量系列修飾基*は、酸素が18Oに交換(もしくは置換)されているか、炭素が13Cに交換(もしくは置換)されているか、又は窒素が15Nに交換(もしくは置換)されていることを表し、或いは水素が存在する部位において、*2Hを表す)。1以上の位置が単一の標識中で置換され得る。好ましくは、2以上の位置が置換される。
ピペラジン環中に置換されたN-エチル基は、5つの水素原子と2つの12C原子の固定された置換を有する。N-エチルピペラジンを第二級アミンとして用いたレポーター部分構造の合成を図3に示す。このレポーター部分構造と2つの連続するγ-アミノ酪酸残基とのカップリングを図15に示す。
質量標識のアイソバリックセットの好ましい実施態様において、該セットは、以下の構造を有するn=30の質量標識を含む:
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
Figure 2017519209
セット9の質量標識は、セット4〜8の質量標識と化学的に非常によく似ており、ピペラジン環中のメチル置換からエチル置換への変化により異なっている。セット9の質量標識は、セット4〜8と比べて非同位体修飾を含む。セット9の質量標識(もとのタグ質量:436.32447ダルトン)は、セット4の質量標識(もとのタグ質量:422.30882ダルトン)よりも約14ダルトン重い。これは、セット9の質量標識をセット4の質量標識と一緒に用いて、多重化用に最大60個の試料を標識することができるということを意味する。セット9の質量標識で標識されたペプチドは、セット4の質量標識で標識されたペプチドと正確に一緒に溶出するわけではないが、セット9の質量標識中の余分な-CH2-官能基の存在に起因する移動度シフトはわずかである可能性が高く、セット9の質量標識で標識された多くのペプチドがセット4の質量標識で標識されたペプチドと溶出が重複することが予想される。これらの質量標識は、ある程度共溶出する可能性が高いので、セット9の質量標識で標識されたペプチドを分析するときに、セット4の質量標識で標識されたペプチドが共選択される可能性があり、逆の場合も同じである。これは、レポーターイオンにではなく、質量正規化官能基にある質量系列オフセットを有するアイソバリック質量タグを提供しようとする以前に開示された試みの問題点である。セット4及び9の質量標識中に示されたようなレポーター部分に非同位体質量系列修飾因子を使用している報告はこれまでにない。しかしながら、これら2つの質量標識セットは、その全てが異なるレポーターイオンを生じさせるレポーター部分を含むので、これらのレポーターイオンをその正確なペプチドになお帰属させることができる。
1H、12C、及び14Nの固定された置換は、上に示された例の特定の場所に示されているが、これは、説明のための便宜として行われており、実施例セット9におけるこれらの固定された置換は、それらを別の場所に配置することがより好都合であるか又は費用効率的である場合、レポーターイオン内の任意の好適な位置に配置することができることに留意すべきである。
当業者であれば、セット9の質量標識と同位体でかつシュードアイソバリックである質量標識のさらなるセットを設計することもできるであろう。
例えば、以下の一般式の例に示すような水素、重水素、12C、13C、14N、及び15Nのさらなる固定された置換を有する質量標識のさらなるセットを構築することができる:
Figure 2017519209
これら4つの一般式が、セット5、6、7、及び8と同じ固定された置換に対応すること、並びにそれぞれ、30個、30個、9個、及び9個の質量標識の対応するセットを、78重の多重化を支持するものにすることができることが明白であろう。これらの質量標識のセットをセット5、6、7、及び8の質量標識と同時に用いて、156重の多重化を支持することができる。望ましい場合、水素、重水素、12C、13C、14N、及び15Nの代わりの固定された置換を用いて、一層より高いレベルの多重化が達成可能であることも明白であろう。同様に、図5のレポーター部分に基づく対応する異性体質量標識を合成することもできる。
(多重化用のアイソバリック質量標識の設計)
多重化の改善は、それにより多くの試料の標識が可能になり、分析がたった1回の実験となり、したがって、分析の時間、費用が軽減され、また、より多くの試料のための分析条件が標準化されるので、アイソバリック質量標識の非常に求められている特徴である。本発明に開示されている一般構造による質量標識中の15N及び13C置換のみを用いてアイソバリック質量標識用の質量標識を作製するために、2つの異なる元素を含む重同位体質量系列修飾基で置換可能な位置(P位置)と第1の元素に置換可能な位置(A位置)と第1のものとは異なる第2の元素に置換可能な位置(B位置)とを考慮する必要がある。A位置の数は、B位置の数以上であるべきである。質量標識の(P+1)個のサブセットが存在し、質量標識のx番目のサブセットがC個の質量標識を含むと仮定すると、Cは、(B+1)以下であるべきである。各レポーター部分は、第1の元素又は第2の元素のいずれかに由来する重同位体で置換された(x-1)個の位置を含み、その場合、質量標識の各サブセットにおけるw番目の質量標識は、第1の重同位体元素のy個の原子及び第1のものとは異なる第2の重同位体元素のz個の原子を含み、xは、1〜(P+1)の値を有する。P=(A+B)であり、質量標識の総数は、(A+1)に(B+1)を乗じたものとなる。
好ましい実施態様において、Bは2以上である。
例えば、レポーター部分中及び質量修飾因子中に7つのドープ可能な炭素と2つのドープ可能な窒素が存在する質量標識は、最大24重の、すなわち、(7+1)に(2+1)を乗じたアイソバリックセットを支持する。1ダルトンの分解能で、これらのレポーターは、異なる整数レポーター質量を有する質量標識の10重(P=7+2により、(9+1)個)のサブセットを支持する。レポーター部分基を異なるR-基で置換することができるので、質量標識の異なる異性体が可能となり、異なるフラグメンテーション挙動の選択肢が提供されることが明らかである。
(N-メチルピペラジン環同位体の合成)
多くのN-メチルピペラジン同位体の合成が以前に記載されている(例えば、US 7,947,513号、US 7,355,045号、及びUS 8,273,706号)。図12は、グリシン、ブロモ酢酸、及びアルキルアミン、例えば、メチルアミンを用いて、N-アルキルピペラジンを合成することができる以前に公表された経路を示している。合成の第1工程において、グリシンをエタノールと反応させて、グリシンのカルボキシル基を保護するエチルエステル(1)を形成させる。並行して、ブロモ酢酸をエタノールと反応させて、その対応するエチルエステル(2)を形成させる。その後、生成物1及び2を1つにカップリングさせて、第二級アミン(3)を形成させる。ジエステル生成物(3)を脱保護して、遊離酸を生じさせ、その後、ジカルボン酸を、好適な試薬(例えば、塩化チオニル)との反応により、対応するジ-酸塩化物(4)に変換する。このジ-酸塩化物生成物(4)をアルキルアミン(例えば、メチルアミン)と閉環反応で反応させて、N-アルキル-ジケトピペラジン(5)を生じさせる。その後、このN-アルキル-ジケトピペラジン(5)を適当な還元剤(例えば、水素化アルミニウムリチウム)と反応させて、N-アルキルピペラジン(6)を生じさせる。図13は、市販の同位体を用いて合成することができる可能な重同位体置換N-メチルピペラジンの例を示しているが、特に、さらなる重水素置換を用いると、さらに置換された環が可能となる。図13に示されるN-メチルピペラジン同位体は、本発明によるアイソバリック質量標識のセットを作製するのに十分である。当業者は、図12に示される閉環に使用されるアルキルアミンを、メチルアミン以外の分子、例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、又はヘキシルアミンから選択することができることを理解しているであろう。同様に、他のαアミノ酸、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンなどを、グリシンの代わりに用いることができる。
(反応基)
本明細書に例示される質量標識は全て、遊離カルボン酸を反応性官能基Reとして有することが示されている。カルボン酸を反応性官能基として有する質量標識を、好適なカップリング剤、例えば、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドのようなカルボジイミドを用いて、アミノ基とカップリングさせることができる。より好ましくは、遊離カルボン酸を修飾して、いわゆる、活性エステルを形成させる。活性エステルは、追加のカップリング剤を必要とせずに、遊離アミノ基と容易に反応する安定な試薬である。好ましいN-ヒドロキシスクシンイミド活性エステル形態の合成は、質量標識の遊離酸形態(1つの例を以下に示す)
Figure 2017519209
をジメチルホルムアミド(DMF)又はジクロロメタン(DCM)に溶解させる一般的な経路をたどり、その後、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下でN-ヒドロキシスクシンイミドとカップリングさせて、活性エステルを生じさせる。他の好ましい活性エステルは、図11に示されるのと同様の様式で調製することができる。ペンタフルオロフェノールエステルは、質量標識をペンタフルオロフェノールとカップリングさせることにより調製され、同様に、ニトロフェノールは、質量標識をニトロフェノールとカップリングさせることにより調製される。1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールエステル、N-ヒドロキシスルホスクシニミジルエステル、2,3,5,6-テトラフルオロフェニルエステル、スルホ-ジクロロフェニルエステル、スルホテトラフルオロフェニルエステル、及び3,4-デヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジニル(DHBT)エステルは全て、対応するアルコールから調製することができる。
図7A及び7Bは、本発明の質量標識のアミノキシ活性化形態の合成を示している。本発明の2つの質量標識のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル活性化形態をBoc保護アミノキシプロピルアミン(1)とカップリングさせる。その後、BOC保護基を酸条件(2)下で除去して、質量標識のアミノキシ形態を生じさせる。このアミノキシは、カルボニル官能基と反応して、非常に安定であるオキシム結合を形成する。カルボニル官能基は、酸化された炭水化物及びステロイドに見られ、アミノキシ官能基化質量標識で標識するためのステロイド含有試料、炭水化物含有試料、又は糖タンパク質含有試料を調製するための様々な方法が当技術分野で公知である。
ヒドラジド試薬は、カルボニル基と反応して、ヒドラゾン結合を形成させる。ヒドラゾンは適度に安定であり、この方法で標識された化合物をそのまま分析することができるし、又はカップリング反応が逆転する可能性を回避するために、ヒドラゾンを第二級アミンに還元することができる。本発明の質量標識のヒドラジド活性化形態の合成は、ヒドラジンを本発明の質量標識のうちの2つのN-ヒドロキシスクシンイミドエステル活性化形態とカップリングさせることにより達成される。
図8A及び8Bは、本発明の質量標識のピリジルジチオ活性化形態の合成を示している。この反応スキームでは、システアミンをジチオピリジンと反応させて、保護アミンを生じさせ、これをその後、本発明の質量標識のうちの2つのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルエステル活性化形態とカップリングさせて、本発明の質量標識のピリジルジチオ活性化形態を得る。本発明の質量標識のピリジルジチオ活性化形態を用いて、本発明の質量標識を、チオール官能基、例えば、タンパク質又はペプチド中の還元されたシステイン残基とカップリングさせることができる。2-ジチオピリジン基はいくつかの利点を有する:それは、プロテオーム研究において有用な緩衝剤溶液(例えば、重炭酸トリエチルアンモニウムTEAB)で使用されることが多い高いpHでさえもシステイン残基を標識する高い選択性を示し、かつそれは水への曝露に対して不安定ではない。さらに、この基は、望ましい場合、任意のジスルフィド還元試薬による処理によってペプチドから容易に再切断することができる。
図9A及び9Bは、本発明の質量標識のヨードアセトアミド活性化形態の合成を示している。この反応スキームでは、BOC保護エチレンジアミンを、本発明の質量標識のうちの2つのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルエステル活性化形態と反応させ、その後、BOC基を除去して、本発明の質量標識のアミノ官能基化形態を得る。アミノ官能基化質量標識は、それ自体で有用であり、これを用いて、得られるイミンの還元を伴って、本発明の質量標識をカルボニル基とカップリングさせることができる。本発明の質量標識のアミノ官能基化形態をさらに反応させて、ハロ酢酸無水物、例えば、ヨード酢酸無水物をアミノ官能基化タグとカップリングさせることにより、本発明の質量タグのハロアセチル形態を生じさせることができる。本発明の質量標識の得られたヨードアセトアミド活性化形態を用いて、本発明の質量標識を、チオール官能基、例えば、タンパク質又はペプチド中の還元されたシステイン残基とカップリングさせることができる。
本発明の質量タグのアルキン活性化形態の合成は、プロパルギルアミンを本発明による質量標識のうちの2つのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルエステル活性化形態と反応させて、本発明の質量標識のアルキン官能基化形態を得ることにより達成される。アルキン官能基化質量標識を、銅触媒アジドアルキン付加環化(CuAAC)反応によりアジド官能基と反応させて、トリアゾール結合を形成させることができ、これは、「Sharpless反応」と呼ばれることもある(Rostovtsev, V. V.; Green, L. G.; Fokin, V. V.; Sharpless, K. B.著、Angew. Chem., Int.編. 2002, 41, 2596-2599.)。生細胞の代謝標識用の種々のアジドベースの試薬は市販されており、そのような細胞に由来するアジド標識分子が本発明の質量標識で標識されるのを可能にしている。
図10A及び10Bは、本発明の質量標識のアジド活性化形態の合成を示している。BOC保護エチレンジアミンを、本発明の質量標識のうちの2つのNHS-エステル活性化形態と反応させ、その後、BOC基を除去して、本発明の質量標識のアミノ官能基化形態を得る。本発明の質量標識のアミノ官能基化形態をさらに反応させて、市販のNHS-アジド試薬(Thermo Scientific社のPierceバイオテクノロジー部門, Rockford, Illinois, USA)をアミノ官能基化質量標識とカップリングさせることにより、本発明の質量標識のアジド官能基化形態を生じさせることができる。或いは、アミノ官能基化質量標識を、アジド化試薬であるイミダゾール-1-スルホニルアジドとの反応により、アジドに直接変換することができる。イミダゾール-1-スルホニルアジドは、塩化スルフリルを、アセトニトリル中で、アジ化ナトリウムで処理し、その後、過剰のイミダゾールを添加することにより調製される(Goddard-Borger, E.D.及びStick, R.V.の文献(2007) Org Lett, 9, 3797-3800)。アジド官能基化タグを、「Sharpless反応」又は銅触媒アジドアルキン付加環化(CuAAC)反応を介して、アルキン官能基と反応させて、トリアゾール結合を形成させることができる。生細胞の代謝標識用の種々のアルキンベースの試薬は市販されており、そのような細胞に由来するアルキン標識分子が本発明のタグで標識されるのを可能にしている。
(質量標識のアレイ)
本発明はまた、本明細書に定義されているような質量標識の2以上のセットを含む、質量標識のアレイを提供する。
好ましくは、アレイ中のいずれか1つのセットの質量標識の各々の整数質量は、該アレイ中の他の全てのセットの質量標識の各々の整数質量と異なる。
より好ましくは、セット中の各質量標識は:
a)該セット中の他の全ての質量標識と同じ整数質量を有する質量系列修飾基及び
b)該アレイの他の全てのセットの質量標識と異なる整数質量
を含む。
特に好ましい実施態様において、レポーター部分は質量系列修飾基を含む。
一実施態様において、セット中の各質量標識は、同じ質量系列修飾基を含む。好ましくは、セット中の各質量標識は、アレイの他の全ての質量標識の質量系列修飾基のアイソトポログである質量系列修飾基を含む。
(質量分析の方法)
本発明はまた、質量分析の方法であって、分析物と関連付けることができる質量標識又は質量標識の組合せを質量分析によって同定することにより、該分析物を検出することを含み、ここで、該質量標識が、本明細書に定義されているような質量標識のセット又はアレイ由来の質量標識である、方法を提供する。
一実施態様において、本方法は:
a.各試料が質量標識又は質量標識の組合せで示差標識される複数の試料を提供すること(ここで、該質量標識は、本明細書に定義されているような質量標識のセット又はアレイに由来するものである);
b.該複数の標識試料を混合して、標識分析物を含む分析混合物を形成させること;
c.任意に、該標識分析物を質量分析計で検出すること;
d.該標識分析物を該質量分析計で解離させて、質量標識及び/又はインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントを形成させること;
e.該質量標識及び/又はインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントを検出すること;
f.任意に、該質量標識を該質量分析計で解離させて、レポーター部分を放出させ、該レポーター部分を検出すること;
g.任意に、工程fで形成されたレポーター部分を解離させて、フラグメントを形成させ、該フラグメントを検出すること;
h.該標識分析物の質量スペクトル;並びに/又は該質量標識及び/もしくはインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントの質量スペクトル;並びに/又は該レポーター部分もしくはレポーター部分のフラグメントの質量スペクトルに基づいて分析物を同定すること
を含む。
分析物は、標識分析物の質量スペクトルに基づいて同定することができる。分析物は、質量標識及び/又はインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントの質量スペクトルに基づいて同定することができる。一実施態様において、インタクトな質量標識を含む分析物フラグメントは、インタクトな質量標識を含むb-系列イオン、好ましくは、b1イオンである。分析物は、レポーター部分又はレポーター部分のフラグメントの質量スペクトルに基づいて同定することができる。
別の実施態様において、本方法は:
a.各試料が質量標識又は質量標識の組合せで示差標識される複数の試料を提供すること(ここで、該質量標識は、本明細書に定義されているような質量標識のセット又はアレイに由来するものである);
b.該複数の標識試料を混合して、標識分析物を含む分析混合物を形成させること;
c.該標識分析物を質量分析計で検出すること;
d.該標識分析物を該質量分析計で解離させて、レポーター部分を放出させること、及び該分析物又は該分析物のフラグメントに付着した該質量標識の残りの部分を含む相補イオンを検出すること;
e.任意に、工程dで形成された該相補イオンを解離させて、フラグメントを形成させ、該フラグメントを検出する1以上のさらなる工程;
f.該標識分析物の質量スペクトル並びに/又は該相補イオン及び/もしくはそのフラグメントの質量スペクトルに基づいて該分析物を同定すること
を含む。
解離は、好ましくは、質量分析計における衝突誘起解離である。いくつかの実施態様において、相補イオンは、工程dにおいて、リンカーLからの一酸化炭素のニュートラルロスによって形成される。
好ましくは、本明細書に記載の方法は、質量電荷比400で分解能が60,000超、好ましくは、質量電荷比400で分解能が100,000超、最も好ましくは、質量電荷比400で分解能が250,000超の質量分析計で実施される。
本発明の質量標識の多くは、時にはたった1ミリダルトン程度の、ごくわずかな質量差によって互いに区別される。現在のオービトラップ型機器が6.3ミリダルトンの質量差を有するレポーターイオンを分解することができることは既に立証されている(6)。しかしながら、最小の質量差によって互いに区別される質量標識については、より高い分解能が必要となる場合があり、これは、現在、市販のフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計でルーチンに達成することができる。
飛行時間型(TOF)質量分析計は、飛行管の長さに応じて、高解像度、高質量精度のデータを取得することができるタイプの質量分析計のさらなる例である。市販のマルチターンTOF(Okumura, D.らの文献(2005) Eur J Mass Spectrom(Chichester, Eng), 11, 261-266)及びスパイラルTOF(Shimma, S.らの文献(2012) PLoS One, 7, e37107)配置は、オービトラップと同様の質量分解能を既に達成することができる。
オービトラップ型質量分析計は、クアドロ対数(quadro-logarithmic)ポテンシャル分布を有する静電場を形成する外側バレル様電極及び同軸内側スピンドル様電極からなる(Hu, Q.らの文献(2005) J Mass Spectrom, 40, 430-443及びMakarov, A.の文献(2000) Anal Chem, 72, 1156-1162)。動的にトラップされたイオンからのイメージ電流が検出され、デジタル化され、フーリエ変換を用いて、周波数領域データに変換され、その後、質量スペクトルに変換される。イオンがオービトラップに注入され、そこで、イオンは、内側電極周囲の軌道経路に落ち着く。内側電極周囲の軌道振動の周波数がイメージ電流として記録され、それに対して、フーリエ変換アルゴリズムが適用されると、周波数領域信号を超高解像度の質量スペクトルに変換することができる。
フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)質量分析では、イオンの試料がイオントラップのような空洞に保持されるが、FTICR MSでは、イオンが、交差電磁場によって高真空チャンバーにトラップされる(Marshall, A.G.らの文献(1998) Mass Spectrom Rev, 17, 1-35並びにMarshall, A.G.及びHendrickson, C.L.の文献(2008) Annu Rev Anal Chem(Palo Alto Calif), 1, 579-599)。電場は、箱の2つの側面を形成する1対のプレート電極によって形成される。この箱は、超伝導磁石の磁場に収容され、この超伝導磁石は、2枚のプレート、すなわち、トラッピングプレートとともに、注入されたイオンを、該トラッピングプレートの間にある、印加された磁場に直交する円形軌道に拘束する。箱の2つのさらなる対向側面を形成する2枚の「送信プレート」に高周波パルスを印加することにより、イオンはより大きな軌道に励起される。イオンのサイクロイド運動によって、「受信プレート」を含む箱の残り2つの対向側面に対応する電場が発生する。励起パルスによって、イオンはより大きな軌道に励起されるが、この軌道は、イオンのコヒーレントな運動が衝突によって失われるときに崩壊する。受信プレートによって検出された対応する信号は、フーリエ変換(FT)分析によって質量スペクトルに変換される。FTICR装置の質量分解能は、印加される磁場の強度とともに増加し、超高分解能(>1,000,000)分析を達成することができる(Schaub, T.M.らの文献(2008) Anal Chem, 80, 3985-3990)。
誘起フラグメンテーション実験では、FTICR装置は、イオントラップと同様の様式で作動することができ−対象となる単一種を除く全てのイオンをFTICRキャビティから放出することができる。衝突ガスをFTICRキャビティに導入し、フラグメンテーションを誘起することができる。その後、フラグメントイオンを分析することができる。通常、フラグメンテーション生成物と浴ガスが組み合わさると、「受信プレート」により検出される信号のFT分析によって分析する場合に分解能が低くなるが、フラグメントイオンを該キャビティから放出させ、例えば、四重極型又は飛行時間型装置とのタンデム構成で分析することができる。
飛行時間型質量分析計では、狭い運動エネルギー分布を有するイオンのパルスをフィールドフリードリフト領域に進入させる。装置のドリフト領域において、各パルスにおける異なる質量電荷比を有するイオンは、異なる速度で移動し、したがって、ドリフト領域の末端に位置するイオン検出器に異なる時間で到達する。ドリフト領域の長さは、TOF装置の質量分解能を決定し、これは、容易に増大させることができる。到達イオンに応答して検出器によって生成されるアナログ信号は時間-デジタル変換器によってすぐにデジタル化される。イオン飛行時間の測定により、各到達イオンの質量電荷比が決定される。飛行時間型装置にはいくつかの異なる設計がある。この設計は、イオン源の性質によってある程度決定される。マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI TOF)型質量分析では、イオンのパルスが、金属ターゲット上に結晶化した試料材料のレーザー励起によって生成される。これらのパルスは、それらが加速される飛行管の一方の末端で発生する。
エレクトロスプレーイオン源から質量スペクトルを取得するために、直交軸TOF(oaTOF)配置が使用される。エレクトロスプレーイオン源で生成されるイオンのパルスは、連続流から「パルサー」プレートによってサンプリングされる。このパルサープレートは、該源から直交配置された飛行管にイオンを加速する一時的な電位差を用いて、イオンを飛行時間型質量分析計に注入する。質量電荷比に対するイオン到達数のヒストグラムを作成するために、パルサープレートから検出器までの飛行時間が記録される。このデータは、時間-デジタル変換器を用いてデジタルに記録される。
本発明の全ての可能なタグを分解するために、高分解能を有する質量分析計が必要とされるが、機器の性質は、本発明の実施にとって特に重要なものではない。さらに、本出願に記載されているタグの多くは、1ダルトンの質量差で分離される可能なタグのサブセットを使用する限り、1ダルトンの分解能しか有しない機器でも分解することができる。
(質量標識の合成)
(実施例1:)
(N-メチルプロリン-β-アラニン-β-アラニン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル質量標識の合成)
下に示すN-メチルプロリン-β-アラニン-β-アラニン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル質量標識構造を合成した(N-メチルプロリンタグ)。
Figure 2017519209
プロリン及びN-メチルプロリンは、非ドープ形態で市販されている(SigmaAldrich, St Louis, MO, USA)。プロリンの同位体ドープバリアントは、Sigma Aldrich(St Louis, MO, USA)、Cambridge Isotope Laboratories社(Tewksbury, MA, USA)、及びAlsa Chim(Illkirch-Graffenstaden, Strasbourg, France)から市販されている。
Figure 2017519209
N-Boc保護プロリンを、そのカルボン酸基を介して、そのカルボン酸基でベンジルエステルとして保護されているβ-アラニンの遊離アミノ基とカップリングさせた。このベンジルエステルを除去した後、さらなるベンジルエステル保護β-アラニン分子をβ-アラニン伸長N-Bocプロリン構造とカップリングさせると、二重β-アラニン伸長構造が得られた。このBoc基をトリフルオロ酢酸による処理によって切断し、N-メチル基をホルムアルデヒド及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムとの反応によって導入した。第2のベンジルエステルを脱保護した後、タグ構造を活性化させると、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルが得られた。
同位体ドープ型のN-メチルプロリンタグを、市販のプロリン同位体から上記の手順を用いて、又は公表されている方法(da Silvaらの文献、Tetrahedron Letters 48(43) 7680-7682、「水性ホルムアルデヒド及び亜鉛による第一級及び第二級アミン並びにアミノ酸の還元的メチル化」、2007)に従って調製することができる。様々なホルムアルデヒド同位体(13COH2、COD213COD2)が、SigmaAldrich(St Louis, MO, USA)及びCambridge Isotope Laboratories社(Tewksbury, MA, USA)から市販されている。
N-メチルプロリンタグを、配列
Figure 2017519209
を有する合成ペプチドとカップリングさせた。このペプチド配列は、N末端に1つの遊離の第一級アミノ基を有し、これは、N-メチルプロリンタグとカップリングして、1095.32の質量を有する標識分子を生じる。このペプチドタグを、該タグ(アセトニトリルに溶解しているもの)が添加されるpH 8.5の100mMの重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB)緩衝液に溶解させて、15mMの最終濃度のタグを生じさせ、反応液を室温で1時間放置した。その後、試料を、タンデム質量タグについての以前に公表されたプロトコル(Kuhn Kらの文献、Methods Mol Biol. 799:127-41、「髄膜炎菌プロテオームにおける適応応答の定量分析用のTMT標識(TMT labelling for the quantitative analysis of adaptive responses in the meningococcal proteome.)」 2012)に従って、少量のヒドロキシルアミンでクエンチした。
この標識ペプチド構造のエレクトロスプレーイオン化質量スペクトルを、タグ化ペプチド溶液の直接注入により、Waters Q-TOF 2装置で取得した。標識ペプチドのMS-モードスペクトルにおいて、[M+2H]2+イオンがm/z 548.309で見られた。m/z 548.3でのイオンのプリカーサー選択を伴う衝突誘起解離(CID)後のタグ化ペプチドのMS/MSスペクトルを実施した。m/z 84での強いN-メチルプロリンa-イオンレポーターが観察された。さらに、かなり強い「相補イオン」がm/z 984.6で見られた。この相補イオンは、レポーターの損失及び一酸化炭素のさらなるニュートラルロスの後に残るペプチドフラグメントイオンである。この種は1つの電荷を有する。この質量標識のフラグメンテーション機構を図2に示し、ここで、R置換基はメチル基である。N-メチルプロリンタグ構造は、本発明による13C及び15Nの全ての可能な同位体置換に基づく12重のアイソバリックタグセットを支持する。対応するN-エチルプロリンタグ構造は、14重のアイソバリックタグセットを支持し、一方、N-プロピルプロリンタグ構造は、13C及び15Nの全ての可能な同位体置換に基づく16重のアイソバリックタグセットを支持する。全ての可能な重水素置換を含めた場合、より大きいアイソバリックタグセットを作製することができる。
(実施例2:)
(3-{3-[((S)-1-イソブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(イソブチル-L-Pro-b-Ala-b-Ala-OSu)の合成−セット10、11、及び12)
(工程1: 3-tert-ブトキシカルボニルアミノプロピオン酸(Boc-β-Ala-OH)の合成)
Figure 2017519209
6Lの4頭フラスコに、800mLのジオキサン中の71.3g(0.8mol)のβ-アラニン及び183.3g(1.05mol)のジ-tert-ブチルジカルボネートの溶液を室温で充填した。30分間かけて、800mlの水中の217.3gの炭酸ナトリウムの溶液を添加すると、30分後、固体が沈殿した。3.5Lの水を添加し、沈殿物が溶解すると、溶液を室温で3時間撹拌した。この溶液を1L部のジイソプロピルエーテルで2回洗浄した。水相のpHを2Mの塩酸で5に合わせ、溶液を3回500mL部のジクロロメタンで抽出した。水相のpHを2Mの塩酸で3〜4に合わせ、溶液を2回500mL部のジクロロメタンで抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で蒸発させた。残渣をジイソプロピルエーテルにより結晶化させた。固体を濾過し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させると、129.9g(0.687mol、86%)が得られた。
(工程2: 3-アミノプロピオン酸ベンジルエステル(H-β-Ala-OBn)の合成)
Figure 2017519209
ディーン・スターク装置とコンデンサを備えた4Lの4首フラスコに、115.8g(1.3mol)のβ-アラニン、811mL(7.8mol)のベンジルアルコール、264.4g(1.39mol)のp-トルエンスルホン酸、及び1.3Lのトルエンを仕込んだ。反応混合物を還流下で2.5時間加熱し、約54mLの水を分離した。この溶液を冷却させておき、45℃〜50℃で、1.5Lのジイソプロピルエーテルをゆっくりと添加すると、生成物が結晶化し始めた。混合物を1.5時間撹拌し、溶液の温度を20℃〜25℃に低下させると、生成物の結晶化が終了した。固体を濾過し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、真空中、40℃で乾燥させた。
収量:p-トルエンスルホネート塩として447.7g(1.274mol、98%)。
(工程3: 3-(3-tert-ブトキシカルボニルアミノプロピオニルアミノ)-プロピオン酸ベンジルエステル(Boc-β-Ala-β-Ala-OBn)の合成)
Figure 2017519209
1.2Lのテトラヒドロフラン中の126.8g(0.67mol)の(1)の懸濁液に、227.9mLのジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を添加すると、透明な溶液が形成された。143.6g(0.94mol)の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(HOBt)及び167.0g(0.87mol)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)の添加に続いて、235.5g(0.67mol)の(2)を30分後に添加した。この溶液を室温で2時間撹拌した。反応液を真空中で蒸発させ、残渣を2Lの酢酸エチルに溶解させた。この酢酸エチル溶液を2回2L部の飽和重炭酸ナトリウム溶液で、及び1Lの半飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で蒸発させた。残渣を250mLのジクロロメタンに溶解させ、500mLのジイソプロピルエーテルで処理し、ジクロロメタンを真空中で蒸発させた。冷却中に結晶化した生成物を濾過し、ジイソプロピルエーテル及びn-ヘキサンで洗浄し、真空中で乾燥させた。
収量:125.9g(0.359mol;53,6%)
(工程4: 3-(3-アミノプロピオニルアミノ)-プロピオン酸ベンジルエステル塩酸塩(H-β-Ala-β-Ala-OBn*HCl)の合成)
Figure 2017519209
450mLのジクロロメタンに溶解した125.9g(0.36mol)のBoc-β-Ala-β-Ala-OBnを、468mlの2M(0.94mol)のエーテル性塩化水素で処理した。この溶液は茶色からオレンジ色に変化し、ガスが生成した。4時間後、結晶化した生成物を濾過し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、真空中、40℃で乾燥させた。
収量:104.1g(100%)
β-アラニンの数多くの同位体は市販されているので、これらを上の合成工程で置換して、複数の異なる同位体質量を有する二重β-アラニンリンカーを作製することができるということが当業者には明白であろう。
(工程5:(2S)-ピロリジン-1,2-ジカルボン酸 1-tert-ブチルエステル(Boc-L-プロリン、Boc-L-Pro)の合成)
Figure 2017519209
6Lの4頭フラスコに、800mLのジオキサン中の92.1g(0.8mol)のL-プロリン及び183.3g(1.05mol)のジ-tert-ブチルジカルボネートの溶液を室温で充填した。30分間かけて、800mlの水中の217.3gの炭酸ナトリウムの溶液を添加すると、10分後、固体が沈殿した。3.5Lの水を添加し、沈殿物が溶解すると、溶液を室温で3時間撹拌した。この溶液を1L部のジイソプロピルエーテルで2回洗浄した。水相のpHを2Mの塩酸で5に合わせ、溶液を3回500mL部のジクロロメタンで抽出した。その後、水相のpHを2Mの塩酸で3〜4に合わせ、溶液を2回500mL部のジクロロメタンで抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で蒸発させた。残渣をジイソプロピルエーテルにより結晶化させた。固体を濾過し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させると、155.4g(0.722mol、90.3%)が得られた。実施例1で論じた全ての市販の同位体を合成のこの段階で用いて、本発明による様々なレポーター同位体を生成させることができる。
(工程6:(S)-2-[2-(2-ベンジルオキシカルボニル-エチルカルバモイル)-エチルカルバモイル]-ピロリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル(Boc-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBn)の合成)
Figure 2017519209
400mLのテトラヒドロフラン中の22.5g(0.105mol)のBoc-L-プロリンの懸濁液に、63.0mL(0.362mol)のジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を添加すると、透明な溶液が形成された。22.4g(0.146mol)の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(HOBt)及び26.1g(0.136mol)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)の添加に続いて、30.0g(0.105mol)のH-β-Ala-β-Ala-OBn*HClを5分後に添加した。この溶液を室温で3.5時間撹拌した。反応液を真空中で蒸発させ、残渣を酢酸エチルに溶解させた。この酢酸エチル溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液で、及び半飽和塩化ナトリウム溶液で2回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で蒸発させた。残渣をジクロロメタンに溶解させ、ジイソプロピルエーテルで処理し、ジクロロメタンを真空中で蒸発させた。冷却中に結晶化した生成物を濾過し、ジイソプロピルエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させた。
収量:38.3g(0.086mol;82.2%)
プロリンの任意の重同位体をこの合成で置換して、本発明による同位体的に識別される様々な試薬を作製することができるということが当業者には明白であろう。
(工程7: 3-{3-[((S)-ピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸ベンジルエステル塩酸塩(H-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBn*HCl)の合成)
Figure 2017519209
250mLのジクロロメタンに溶解した50g(0.11mol)のBoc-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBnを250mlの2M(0.50mol)のエーテル性塩化水素で処理した。反応液を室温で2.5時間撹拌した後、溶液を真空中で蒸発させると、非常に粘性の高い油状物が得られた。
収量:43.0g(100%)
(工程8: 3-{3-[((S)-1-イソブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸ベンジルエステル(イソブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBn)の合成)
Figure 2017519209
10gのL-Pro-β-Ala-β-Ala-OBnを、アルゴン雰囲気下で、150mLの1,2-ジクロロエタンに溶解させ、5.8mlのジイソプロピルエチルアミンを添加した。その後、3.04mlのイソブチルアルデヒド及び7.06gのナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを冷却しながら添加し、反応液を室温で1時間撹拌した。この溶液を真空中で蒸発させた。残渣を酢酸エチルに溶解させ、飽和重炭酸ナトリウム及び飽和塩化ナトリウムで2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムに充填し、ジクロロメタン/メタノール(20:1)により溶出させた。
収量:7.8g(74.2%)
(工程9: 3-{3-[((S)-1-イソブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸(イソブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OH)の合成)
Figure 2017519209
水素を反応混合物に通すことにより、アルゴン雰囲気下の5%-Pd/C触媒上の40mLのメタノール中の3.2g(7.9mmol)のイソブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBnを水素化した。水素の消費が終了した後、反応混合物を濾過し、フィルター残渣をメタノールで洗浄した。合わせたメタノール層を真空中で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムに充填し、ジクロロメタン/メタノール(3:1)により溶出させた。
収量:1.4g(58.8%)
(質量分析によるイソブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OHタグの分析:)
タグ(イソブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OH)の遊離酸形態のエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量スペクトルを、遊離酸タグ溶液(1%ギ酸中)の直接注入により、Waters Q-TOF 2装置で取得した。タグ遊離酸のMS-モードスペクトルにおいて、[M+H]+イオンがm/z 314.2で見られた。m/z 314.2でのイオンのプリカーサー選択を伴う衝突誘起解離(CID)後のタグ遊離酸のMS/MSスペクトルにおいて、m/z 126.14での強いイソブチルプロリンa-イオンレポーターが観察された。このタグのフラグメンテーション機構を図2に示し、ここで、R置換基はイソブチル基である。イソブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSuは、セット10に示されたような18重のアイソバリックタグセットを支持する。セット11に示されたような重水素置換を含めた場合、より大きいアイソバリックタグセットを作製することができる。なぜなら、これらのタグセットは、組み合わせて使用することができるからである。
(工程10: 3-{3-[((S)-1-イソブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(イソブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSu)の合成)
Figure 2017519209
100mLのジクロロメタン中の3.6g(11.4mmol)のイソブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OHの溶液に、3.56g(13.7mmol)のジスクシニミジルカルボネートを添加した。懸濁液は、二酸化炭素の発生を伴って透明な溶液を生じ、これを室温で2時間撹拌した。反応液をジクロロメタンで希釈し、3回40mL部の飽和重炭酸ナトリウム溶液で、及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。残渣を酢酸エチル/ジイソプロピルエーテルにより結晶化させた。
収量:3.5g(8.5mmol、74.8%)
(実施例3:)
(3-{3-[((S)-1-イソプロピルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(イソプロピル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSu)の合成−セット13及び14)
(工程1: 3-{3-[((S)-1-イソプロピルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸ベンジルエステル(イソプロピル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBn)の合成)
Figure 2017519209
4g(10.4mmol)のL-Pro-β-Ala-β-Ala-OBnをアルゴン雰囲気下で50mLの1,2-ジクロロエタンに溶解させ、3.54ml(20.8mmol)のジイソプロピルエチルアミンを添加した。その後、3g(50.9mmol)のアセトン及び2.65g(12.5mmol)のナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを冷却しながら添加し、反応液を室温で1時間撹拌した。この溶液を真空中で蒸発させた。残渣を酢酸エチルに溶解させ、飽和重炭酸ナトリウム及び飽和塩化ナトリウムで2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。
収量:3.4g(8.02mmol、83.9%)
複数のレポーター同位体を、市販のアセトンの同位体を用いて容易に合成することができることに留意すべきである。上で論じた市販のプロリンの同位体の他に、アセトンの同位体がSigmaAldrich(St Louis, MO, USA)及びCambridge Isotope Laboratories社(Tewksbury, MA, USA)から市販されている:
Figure 2017519209
(工程2: 3-{3-[((S)-1-イソプロピルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸(イソプロピル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OH)の合成)
Figure 2017519209
水素を反応混合物に通すことにより、アルゴン雰囲気下の5%-Pd/C触媒上の40mLのメタノール中の3.4g(8.7mmol)のイソブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBnを水素化した。水素の消費が終了した後、反応混合物を濾過し、フィルター残渣をメタノールで洗浄した。合わせたメタノール層を真空中で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムに充填し、ジクロロメタン/メタノール(2:1)により溶出させた。
収量:2.4g(92.1%)
(質量分析によるイソプロピル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OHタグの分析)
質量標識(イソプロピル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OH)の遊離酸形態のエレクトスプレーイオン化(ESI)質量スペクトルを、遊離酸タグ溶液(1%ギ酸中)の直接注入により、Waters Q-TOF 2装置で取得した。タグ遊離酸のMS-モードスペクトルは、m/z 300.2で[M+H]+イオンを示した。m/z 300.2でのイオンのプリカーサー選択を伴う衝突誘起解離(CID)後のタグ遊離酸のMS/MSスペクトルは、m/z 112.12での強いイソプロピルプロリンa-イオンレポーターを生じさせた。このタグのフラグメンテーション機構を図2に示し、ここで、R置換基はイソプロピル基である。イソプロピル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSuは、セット13及び14で示されたような16重のアイソバリックタグセットを支持する。重水素置換を含めた場合、より大きいアイソバリックタグセットを作製することができる。
(工程3: 3-{3-[((S)-1-イソプロピルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(イソプロピル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSu)の合成)
Figure 2017519209
30mLのジクロロメタン中の2.4g(8.0mmol)のイソプロピル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OHの溶液に、2.46g(9.6mmol)のジスクシニミジルカルボネートを添加した。懸濁液は、二酸化炭素の発生を伴って透明な溶液を生じ、これを室温で2時間撹拌した。反応液をジクロロメタンで希釈し、3回10mL部の飽和重炭酸ナトリウム溶液で、及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させると、粘性のある油状物が得られた。
収量:2.8g(7.1mmol、88.0%)
(工程4: 3-{3-[((S)-1-イソプロピルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,3,5,6-テトラフルオロフェニルエステル(イソプロピル-L-Pro-b-Ala-b-Ala-O-TFP))
Figure 2017519209
20mlのジクロロメタン中の1g(3.3mmol)のイソプロピル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OH及び0.55g(3.3mmol)のテトラフルオロフェノール(TFP)の溶液に、0.64g(3.3mmol)のN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC*HCl)を添加した。反応液を室温で2時間撹拌し、ジクロロメタンで希釈し、2回10mL部の飽和重炭酸ナトリウム溶液で、及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させると、粘性のある油状物が得られた。この油状物を4℃で一晩放置すると、固体生成物が得られた。
収量:0.93g(2.08mmol、63%)
(実施例4:)
3-{3-[((S)-1-ブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSu)
(工程1: 3-{3-[((S)-1-ブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸ベンジルエステル(ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBn)の合成)
Figure 2017519209
5g(13.0mmol)のL-Pro-β-Ala-β-Ala-OBnをアルゴン雰囲気下で50mLの1,2-ジクロロエタンに溶解させ、3.1ml(18.2mmol)のジイソプロピルエチルアミンを添加した。その後、1.4ml(15.6mmol)のブチルアルデヒド及び3.3g(15.6mmol)のナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを冷却しながら添加し、反応液を室温で1.5時間撹拌した。この溶液を真空中で蒸発させた。残渣を酢酸エチルに溶解させ、飽和重炭酸ナトリウム及び飽和塩化ナトリウムで2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。
収量:2.9g(7.19mmol、55.2%)
(工程2: 3-{3-[((S)-1-ブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸(n-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OH)の合成)
Figure 2017519209
水素を反応混合物に通すことにより、アルゴン雰囲気下の5%-Pd/C触媒上の40mLのメタノール中の2.9g(7.1mmol)のブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBnを水素化した。水素の消費が終了した後、反応混合物を濾過し、フィルター残渣をメタノールで洗浄した。合わせたメタノール層を真空中で蒸発させた。
収量:2.0g(6.38mmol、90.9%)
(質量分析によるn-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OHタグの分析:)
タグ(n-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OH)の遊離酸形態のエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量スペクトルを、遊離酸タグ溶液(1%ギ酸中)の直接注入により、Waters Q-TOF 2装置で取得した。タグ遊離酸のMS-モードスペクトルは、m/z 314.2で[M+H]+イオンを示した。m/z 314.2でのイオンのプリカーサー選択を伴う衝突誘起解離(CID)後のタグ遊離酸のMS/MSスペクトルにおいて、m/z 126.14での強いn-ブチルプロリンa-イオンレポーターが観察された。このタグのフラグメンテーション機構を図2に示し、ここで、R置換基は線状ブチル鎖である。n-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSuは、イソブチル試薬と同じように18重のアイソバリックタグセットを支持する。同様に、重水素置換を含めた場合、より大きいアイソバリックタグセットを作製することができる。
(工程3: 3-{3-[((S)-1-ブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSu)の合成)
Figure 2017519209
100mLのジクロロメタン中の2.0g(6.38mmol)のブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OHの溶液に、1.96g(7.65mmol)のジスクシニミジルカルボネートを添加した。懸濁液は、二酸化炭素の発生下で透明な溶液を生じ、これを室温で2時間撹拌した。反応液をジクロロメタンで希釈し、3回40mL部の飽和重炭酸ナトリウム溶液で、及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させると、粘性のある油状物が得られた。
収量:2.0g(4.87mmol、76.4%)
(実施例5:)
3-{3-[((S)-1-sec-ブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(sec-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSu)
(工程1: 3-{3-[((S)-1-sec-ブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸ベンジルエステル(sec-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBn)の合成)
Figure 2017519209
5g(13.0mmol)のL-Pro-β-Ala-β-Ala-OBnをアルゴン雰囲気下で50mLの1,2-ジクロロエタンに溶解させ、3.1ml(18.2mmol)のジイソプロピルエチルアミンを添加した。その後、1.4ml(15.6mmol)のブタノン及び3.3g(15.6mmol)のナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを冷却しながら添加し、反応液を室温で1.5時間撹拌した。この溶液を真空中で蒸発させた。残渣を酢酸エチルに溶解させ、飽和重炭酸ナトリウム及び飽和塩化ナトリウムで2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。
収量:3.7g(9.17mmol、70.4%)
(工程2: 3-{3-[((S)-1-sec-ブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸(sec-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OH)の合成)
Figure 2017519209
水素を反応混合物に通すことにより、アルゴン雰囲気下の5%-Pd/C触媒上の40mLのメタノール中の3.7g(9.17mmol)のsec-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBnを水素化した。水素の消費が終了した後、反応混合物を濾過し、フィルター残渣をメタノールで洗浄した。合わせたメタノール層を真空中で蒸発させた。
収量:2.8g(8.93mmol、90.9%)
(質量分析によるsec-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OHタグの分析:)
質量標識sec-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OHの遊離酸形態のエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量スペクトルを、遊離酸タグ溶液(1%ギ酸中)の直接注入により、Waters Q-TOF 2装置で取得した。タグ遊離酸のMS-モードスペクトルは、m/z 314.2で[M+H]+イオンを示した。m/z 314.2でのイオンのプリカーサー選択を伴う衝突誘起解離(CID)後のタグ遊離酸のMS/MSスペクトルにおいて、m/z 126.14での強いsec-ブチルプロリンa-イオンレポーターが観察された。このタグのフラグメンテーション機構を図2に示し、ここで、R置換基はsec-ブチル鎖である。sec-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSuは、セット10で示されたイソブチル試薬と同じように18重のアイソバリックタグセットを支持する。同様に、重水素置換を含めた場合、より大きいアイソバリックタグセットを作製することができる。
(工程3: 3-{3-[((S)-1-sec-ブチルピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(sec-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSu)の合成)
Figure 2017519209
100mLのジクロロメタン中の2.8g(8.93mmol)のsec-ブチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OHの溶液に、2.74g(10.7mmol)のジスクシニミジルカルボネートを添加した。懸濁液は、二酸化炭素の発生下で透明な溶液を生じ、これを室温で2時間撹拌した。反応液をジクロロメタンで希釈し、3回40mL部の飽和重炭酸ナトリウム溶液で、及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させると、粘性のある油状物が得られた。
収量:3.0g(7.31mmol、95.7%)
(実施例6:)
(3-{3-[((S)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-ピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(ネオペンチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSu)−セット15)
(工程1: 3-{3-[((S)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-ピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸ベンジルエステル(ネオペンチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBn)の合成)
Figure 2017519209
6g(15.6mmol)のL-Pro-β-Ala-β-Ala-OBnをアルゴン雰囲気下で30mLの1,2-ジクロロエタンに溶解させ、5.4ml(31.1mmol)のジイソプロピルエチルアミンを添加した。その後、1.89ml(17.1mmol)のピバルアルデヒド及び3.6g(17.1mmol)のナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを冷却しながら添加し、反応液を室温で1.5時間撹拌した。この溶液を真空中で蒸発させた。残渣を酢酸エチルに溶解させ、飽和重炭酸ナトリウム及び飽和塩化ナトリウムで2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。
収量:5.8g(13.9mmol、80.0%)
(工程2: 3-{3-[((S)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-ピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸(ネオペンチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OH)の合成)
Figure 2017519209
水素を反応混合物に通すことにより、アルゴン雰囲気下の5%-Pd/C触媒上の100mLのメタノール中の5.8g(13.9mmol)のネオペンチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OBnを水素化した。水素の消費が終了した後、反応混合物を濾過し、フィルター残渣をメタノールで洗浄した。合わせたメタノール層を真空中で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムに充填し、ジクロロメタン/メタノール(2:1)により溶出させた。
収量:4.0g(12.2mmol、87.8%)
(質量分析によるネオペンチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OHタグの分析:)
タグ(ネオペンチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OH)の遊離酸形態のエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量スペクトルを、遊離酸タグ溶液(1%ギ酸中)の直接注入により、Waters Q-TOF 2装置で取得した。タグ遊離酸のMS-モードスペクトルにおいて、[M+H]+イオンはm/z 328.2で見られた。m/z 328.2でのイオンのプリカーサー選択を伴う衝突誘起解離(CID)後のタグ遊離酸のMS/MSスペクトルにおいて、m/z 126.14での強いsec-ブチルプロリンa-イオンレポーターが観察された。このタグのフラグメンテーション機構を図2に示し、ここで、R置換基はネオペンチル鎖である。ネオペンチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSuは、セット15で示されたような20重のアイソバリックタグセットを支持する。同様に、重水素置換を含めた場合、より大きいアイソバリックタグセットを作製することができる。
(工程3: 3-{3-[((S)-1-(2,2-ジメチルプロピル)-ピロリジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(ネオペンチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OSu)の合成)
Figure 2017519209
50mLのジクロロメタン中の4.0g(12.2mmol)のネオペンチル-L-Pro-β-Ala-β-Ala-OHの溶液に、3.75g(14.6mmol)のジスクシニミジルカルボネートを添加した。懸濁液は、二酸化炭素の発生下で透明な溶液を生じ、これを室温で2時間撹拌した。反応液をジクロロメタンで希釈し、3回10mL部の飽和重炭酸ナトリウム溶液で、及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させると、粘性のある油状物が得られた。
収量:4.92g(11.6mmol、95.0%)
(実施例7:)
(アルキル-プロリンタグの重水素化形態の合成)
本明細書に例示される質量標識は全て、関連するアルデヒド又はケトンを還元剤のナトリウムトリアセトキシボロヒドリドとともに用いて、プロリン窒素の還元アルキル化により調製した。トリアセトキシ重水素化ホウ素ナトリウム試薬は、公表されている手順(Evans D. A.らの文献、J. Am. Chem. Soc. 110, 3560-3578, 1988)を用いて、対応する重水素化ホウ素ナトリウム(SigmaAldrich, St Louis, MO, USAから市販されている)から調製することもできる。
簡潔に述べると、100mlのフラスコに、206mg(4.92mmol)の重水素化ホウ素ナトリウム及び50mLのトルエンを仕込んだ。スラリーを10℃に冷却し、860μL(15.0mmol、3.05当量)の酢酸を滴加した。酢酸の添加が終了した後、混合物を室温に温めておき、5時間撹拌した。無色のスラリーを濾過し、得られた白色の粉末を3回20mL部のエーテルで洗浄した。この粉末を真空下で一晩保持すると、961mg(92%)のナトリウムトリアセトキシボロヒドリドが白色の固体として得られた。
トリアセトキシ重水素化ホウ素ナトリウムの使用により、本明細書に開示されるプロリン質量標識の重水素化形態の合成が可能になる。
Figure 2017519209
(実施例8:)
3-{3-[(1,4-ジエチル-ピペラジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル
(工程1:ピペラジン-1,2,4-トリカルボン酸 1,4-ジ-tert-ブチルエステルの合成)
Figure 2017519209
1Lのフラスコに、300mlの水及び200mlのジオキサン中の10g(49.2mmol)のピペラジン-2-カルボン酸二塩酸塩を充填した。13gの炭酸ナトリウムを懸濁液に添加した後、透明な溶液が形成され、32.2g(147mmol)のジ-tert-ブチルジカルボネートを添加し、溶液を室温で撹拌した。1時間後、炭酸ナトリウムの添加により、pHを10に合わせ、反応液をさらに5時間撹拌した。この溶液を200mlの水で希釈し、2回200ml部のジイソプロピルエーテルで洗浄した。水相を2Mの塩化水素でpH 5に合わせ、ジクロロメタンで3回抽出し、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。残渣をジエチルエーテルに懸濁させ、濾過し、真空中で乾燥させた。
収量:13.5g(40.9mmol、83.3%)
(工程2: 2-[2-(2-ベンジルオキシカルボニル-エチルカルバモイル)-エチルカルバモイル]-ピペラジン-1,4-ジカルボン酸ジ-tert-ブチルエステル)
Figure 2017519209
150mlのジメチルホルムアミド中の5g(15.1mmol)のジ-Boc-Pip-OHの溶液に、7.8ml(45.4mmol)のヒューニッヒ塩基、3.2g(21mmol)のヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物、及び4.05g(19.6mmol)のN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドを添加し、反応液を30分間撹拌した。4.3g(15.1mmol)のH-β-Ala-β-Ala-OBn*HClを添加し、室温で2.5時間撹拌した後、沈殿した固体を濾過し、メタノールから再結晶化させ、エーテルで洗浄した。
収量:7.1g(12.6mmol、83.5%)
(工程3: 3-{3-[(ピペラジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸ベンジルエステル二塩酸塩の合成)
Figure 2017519209
3g(5.3mmol)のジ-Boc-Pip-β-Ala-β-Ala-OBnを30mlのジクロロメタン及び30mlの2Mエーテル性塩化水素に溶解させた。室温で1時間撹拌した後、沈殿した固体を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。
収量:2.3g(5.2mmol、98%)
(工程4: 3-{3-[(1,4-ジエチルピペラジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸ベンジルエステルの合成)
Figure 2017519209
10mlの1,2-ジメトキシエタン中の1g(2.2mmol)のPip-β-Ala-β-Ala-OBn*2HCl及び1.36ml(8mmol)のヒューニッヒ塩基の溶液に、0.28ml(5mmol)のアセトアルデヒド及び0.31g(5mmol)のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加し、反応液を室温で1時間撹拌した。この溶液を炭酸ナトリウム溶液で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機相を炭酸ナトリウム溶液及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させた。
収量:0.8g(1.19mmol、86.9%)
(質量分析による3-{3-[(1,4-ジエチルピペラジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸ベンジルエステルの分析:)
3-{3-[(1,4-ジエチルピペラジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸ベンジルエステル(質量標識のベンジルエステル保護形態)のエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量スペクトルを、ベンジルエステル質量標識溶液(1%ギ酸中)の直接注入により、Waters Q-TOF 2装置で取得した。タグ遊離酸のMS-モードスペクトルにおいて、[M+H]+イオンがm/z 328.2で見られた。m/z 419.24でのイオンのプリカーサー選択を伴う衝突誘起解離(CID)後のタグ遊離酸のMS/MSスペクトルにおいて、m/z 140.137での強いジエチルピペラジンレポーターが観察された。ジエチル-ピペラジン-2-カルボン酸-β-Ala-β-Ala-OSu構造は、27重のアイソバリックタグセットを支持する。同様に、重水素置換を含めた場合、より大きいアイソバリックタグセットを作製することができる。
(工程5: 3-{3-[(1,4-ジエチルピペラジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸の合成)
Figure 2017519209
水素を反応混合物に通すことにより、0.45g(1.07mmol)のジエチル-Pip-β-Ala-β-Ala-OBnを、アルゴン雰囲気下、5%-Pd/C上で水素化した。水素の消費が終了した後、反応混合物を濾過し、フィルター残渣をメタノールで洗浄した。合わせたメタノール層を真空中で蒸発させた。
収量:250mg(0.76mmol、71.1%)
(工程6: 3-{3-[(1,4-ジエチル-ピペラジン-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオニルアミノ}-プロピオン酸 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステルの合成)
Figure 2017519209
20mLのジクロロメタン中の0.25g(0.76mmol)のジエチル-Pip-β-Ala-β-Ala-OHの溶液に、0.23g(0.91mmol)のジスクシニミジルカルボネートを添加した。懸濁液は、二酸化炭素の発生下で透明な溶液を生じ、これを室温で2時間撹拌した。反応液をジクロロメタンで希釈し、3回10mL部の飽和重炭酸ナトリウム溶液で、及び水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で蒸発させると、粘性のある油状物が得られた。
収量:120mg(0.28mmol、37.1%)。

Claims (44)

  1. 2以上の質量標識のセットであって、各質量標識が、式:
    X-L-M-Re
    (式中、Xは、精密質量を有するレポーター部分であり、Lは、質量分析計における衝突によって開裂可能な結合であり、Mは質量修飾因子であり、かつReは、a)該質量標識を分析物に付着させるための反応性官能基又はb)該分析物である)を含み、該セット中の各質量標識が整数質量を有し、該セット中の各質量標識が同じ整数質量を有し、該セットが質量標識の2以上のサブセットを含み、各サブセットが、1つ、2つ、又はそれより多くの質量標識を含み、該サブセットが2以上の質量標識を含む場合、該サブセット中の各質量標識のレポーター部分Xの精密質量が同じサブセット中の及び他の全てのサブセット中の該質量標識のレポーター部分Xの精密質量と異なり、各質量標識が質量分析によって区別可能である、前記セット。
  2. 各質量標識が、以下の一般式:
    Figure 2017519209
    (式中:
    i)R1は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基;或いはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、又はネオペンチル、
    Figure 2017519209
    から選択される構造であり、かつR9は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基又は水素から選択され、かつ
    R2及びR3はともに:
    Figure 2017519209
    を含み、ここで、R4は、H又は置換もしくは非置換線状もしくは分岐状C1-C10アルキル基であるか;或いは
    ii)R3はHであり;かつ
    R1及びR2はともに:
    Figure 2017519209
    を含み、ここで、R5及びR6は、各々独立に、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基、又は置換もしくは非置換アミン基、又は
    Figure 2017519209
    であり;かつ各々のR9は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基又は水素から独立に選択される)
    を含むレポーター部分Xを有する、請求項1記載の2以上の質量標識のセット。
  3. 各標識が、式:
    X-L-M-Re
    (式中、Xは、精密質量を有するレポーター部分であり、Lは、質量分析計における衝突によって開裂可能な結合であり、Mは質量修飾因子であり、かつReは、該質量標識を分析物に付着させるための反応性官能基又は該分析物であり、かつXは、以下の一般式:
    Figure 2017519209
    (式中:
    iii)R1は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基;或いはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、又はネオペンチル、
    Figure 2017519209
    から選択される構造であり、かつR9は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基又は水素から選択され、かつ
    R2及びR3はともに:
    Figure 2017519209
    を含み、ここで、R4は、H又は置換もしくは非置換線状もしくは分岐状C1-C10アルキル基であるか;或いは
    iv)R3はHであり;かつ
    R1及びR2はともに:
    Figure 2017519209
    を含み、ここで、R5及びR6は、各々独立に、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基、又は置換もしくは非置換アミン基、又は
    Figure 2017519209
    であり;かつ各々のR9は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基又は水素から独立に選択される)
    を含む)を含む、2以上の質量標識のセット。
  4. 各質量標識が質量系列修飾基を含み、ここで、該質量系列修飾基が、前記レポーター部分Xの部分又は前記質量修飾因子Mの部分である、請求項1〜3のいずれか一項記載のセット。
  5. 前記質量系列修飾基が前記レポーター部分Xの部分である、請求項4記載のセット。
  6. 前記質量系列修飾基が、
    a)重同位体2H、13C、15N、もしくは18O;又は
    b)1以上の重同位体置換を任意に含む置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基;又は
    c)a)とb)の組合せ
    から選択される、請求項4又は請求項5記載のセット。
  7. 前記質量系列修飾基が、-CH3、-13CH3、-13CD3、又は-CD3である、請求項6記載のセット。
  8. 各質量標識が、以下の構造:
    Figure 2017519209
    (ここで、各々のR11は、独立に、H、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C6アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基、又はアミノ酸側鎖であり; fは0〜10の整数であり;かつd及びeは、少なくとも1である)
    を有する質量系列修飾基を含む、請求項6記載のセット。
  9. Reが前記分析物であるとき、該分析物が、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、リン脂質、又はこれらの組合せの群から選択される1以上の分析物を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載のセット。
  10. 各質量標識が、一般式i)を有するレポーター部分を有し、式中、R1は:
    Figure 2017519209
    から選択され、かつR9は、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、もしくはネオペンチルから選択されるアルキル鎖、又は水素から選択される、請求項2〜9のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット。
  11. 各質量標識が、一般式ii)を有するレポーター部分を有し、R5及びR6は、各々独立に、
    Figure 2017519209
    であり、ここで、R7及びR8は、各々独立に、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C10アルキル基、又は水素である、請求項2〜8のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット。
  12. R4が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、又は(ジメチルアミノ)メチルである、請求項2〜9のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット。
  13. 各質量標識が、以下から選択されるレポーター部分Xを有する、請求項1〜12のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
  14. 各質量標識が、以下の構造を含むか又は該構造を有する質量修飾因子Mを含む、請求項1〜13のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    (ここで、各々のR10は、独立に、H、置換もしくは非置換直鎖もしくは分岐状C1-C6アルキル基、置換もしくは非置換脂肪族環式基、置換もしくは非置換芳香族基、又は置換もしくは非置換ヘテロ環基、或いはアミノ酸側鎖から選択され; aは0〜10の整数であり; b及びcは、整数でかつ少なくとも1である)。
  15. 各質量標識が、以下の構造のうちの1つを有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    (ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
  16. *が、13C又は15Nであり、かつ前記セットが、以下の構造を有するn=18の質量標識を含む、請求項15記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
  17. 各質量標識が、以下の構造を有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    (ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
  18. *が、13C又は15Nであり、かつ前記セットが、以下の構造を有するn=5の質量標識を含む、請求項17記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
  19. 各質量標識が、以下の構造を有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    (ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
  20. *が、13C又は15Nであり、かつ前記セットが、以下の構造を有するn=2の質量標識を含む、請求項19記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
  21. 各質量標識が、以下の構造を有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    (ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
  22. *が、13C又は15Nであり、かつ前記セットが、以下の構造を有する質量標識を含む、請求項21記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
  23. 各質量標識が、以下の構造を有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    (ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
  24. *が、13C又は15Nであり、かつ前記セットが、以下の構造を有する質量標識を含む、請求項23記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
  25. 各質量標識が、以下の構造のうちの1つを有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    (ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
  26. 各質量標識が、以下の構造を有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    (ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
  27. *が、13C又は15Nであり、かつ前記セットが、以下の構造を有するn=18の質量標識を含む、請求項26記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
  28. 各質量標識が、以下の構造のうちの1つを有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    (ここで、*は、酸素が18Oであるか、炭素が13Cであるか、窒素が15Nであるか、又は水素が2Hであることを表し、かつ1以上の*が存在し得る)。
  29. 各質量標識が、以下の構造のうちの1つを有する、請求項1〜14のいずれか一項記載の2以上の質量標識のセット:
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
    Figure 2017519209
  30. 請求項1〜29のいずれか一項記載の質量標識の2以上のセットを含む、質量標識のアレイ。
  31. 前記アレイ中のいずれか1つのセットの質量標識の各々の整数質量が、該アレイ中の他の全てのセットの質量標識の各々の整数質量と異なる、請求項30記載の質量標識のアレイ。
  32. セット中の各質量標識が:
    a)該セット中の他の全ての質量標識と同じ整数質量を有する質量系列修飾基及び
    b)前記アレイの他の全てのセットの質量標識と異なる整数質量
    を含む、請求項30又は請求項31記載の質量標識のアレイ。
  33. セット中の各質量標識が同じ質量系列修飾基を含む、請求項30又は請求項31記載のアレイ。
  34. セット中の各質量標識が、前記アレイの他の全ての質量標識の質量系列修飾基のアイソトポログである質量系列修飾基を含む、請求項30〜33のいずれか一項記載のアレイ。
  35. 質量分析の方法であって、分析物と関連付けることができる質量標識又は質量標識の組合せを質量分析によって同定することにより、該分析物を検出することを含み、ここで、該質量標識が、請求項1〜34のいずれか一項記載の質量標識のセット又はアレイ由来の質量標識である、前記方法。
  36. a)各試料が1以上の分析物を含み、各試料が質量標識又は質量標識の組合せで示差標識されて、1以上の標識分析物が得られる、複数の試料を提供すること(ここで、該質量標識は、請求項1〜35のいずれか一項記載の質量標識のセット又はアレイに由来するものである);
    b)該複数の示差標識された試料を混合して、標識分析物を含む分析混合物を形成させること;
    c)任意に、該標識分析物を質量分析計で検出すること;
    d)該標識分析物を該質量分析計で解離させて、質量標識及び/又はインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントを形成させること;
    e)該質量標識及び/又はインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントを検出すること;
    f)任意に、該質量標識を該質量分析計で解離させて、レポーター部分を放出させ、該レポーター部分を検出すること;
    g)任意に、工程fで形成されたレポーター部分を解離させて、フラグメントを形成させ、該フラグメントを検出すること;
    h)該標識分析物の質量スペクトル;並びに/又は該質量標識及び/もしくはインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントの質量スペクトル;並びに/又は該レポーター部分もしくはレポーター部分のフラグメントの質量スペクトルに基づいて該分析物を同定すること
    を含む、請求項35記載の質量分析の方法。
  37. 前記分析物が、前記標識分析物の質量スペクトルに基づいて同定される、請求項36記載の質量分析の方法。
  38. 前記分析物が、該質量標識及び/又はインタクトな質量標識を含む分析物フラグメントの質量スペクトルに基づいて同定される、請求項36記載の質量分析の方法。
  39. インタクトな質量標識を含む前記分析物フラグメントが、インタクトな質量標識を含むb系列イオン、好ましくは、b1イオンである、請求項38記載の質量分析の方法。
  40. 前記分析物が、前記レポーター部分又はレポーター部分のフラグメントの質量スペクトルに基づいて同定される、請求項36記載の質量分析の方法。
  41. a)各試料が1以上の分析物を含み、各試料が質量標識又は質量標識の組合せで示差標識されて、1以上の標識分析物が得られる、複数の試料を提供すること(ここで、該質量標識は、請求項1〜40のいずれか一項記載の質量標識のセット又はアレイに由来するものである);
    b)該複数の示差標識された試料を混合して、標識分析物を含む分析混合物を形成させること;
    c)該標識分析物を質量分析計で検出すること;
    d)該標識分析物を該質量分析計で解離させて、レポーター部分を放出させ、該分析物又は該分析物のフラグメントに付着した該質量標識の残りの部分を含む相補イオンを検出すること;
    e)任意に、工程dで形成された該相補イオンを解離させて、フラグメントを形成させ、該フラグメントを検出する1以上のさらなる工程;
    f)該標識分析物の質量スペクトル並びに/又は該相補イオン及び/もしくはそのフラグメントの質量スペクトルに基づいて該分析物を同定すること
    を含む、請求項35記載の質量分析の方法。
  42. 前記解離が質量分析計における衝突誘起解離である、請求項36〜41のいずれか一項記載の方法。
  43. 質量電荷比400で分解能が60,000超、好ましくは、質量電荷比400で分解能が100,000超、最も好ましくは、質量電荷比400で分解能が250,000超の質量分析計で実施される、請求項36〜42のいずれか一項記載の方法。
  44. 工程d)において、前記相補イオンが、前記結合Lからの一酸化炭素のニュートラルロスによって形成される、請求項36〜43のいずれか一項記載の方法。
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