JP2009506910A - セメント系ボード製造のためのスラリースプレッダー - Google Patents

Abstract

本発明は、ボード成形システムであって、裏当て層を運ぶための表面を有するベルトを有する成形テーブルを有し；ミキサーを有し、該ミキサーは、裏当て層の上面にセメント系スラリー材料を堆積させ得る機械装置が取り付けられ；かつスラリースプレッダーを有し、該スラリースプレッダーは、ミキサーの下流に位置し、該スラリースプレッダーの一部分は複数の孔を有し、該孔が加圧された流体の源に連結する、ボード成形システムを提供する。スラリースプレッダーは、スラリースプレッダーの外表面を横切って、流体の連続的な膜が供給されるように、加圧された流体が孔を通ってスラリースプレッダーから流れ出るように構成される。スラリースプレッダーは、スラリーが排出器から出た後、かつスラリーが裏当て層の幅全体にわたって広がる前に、スラリーの厚さが、ボード成形のための所望のスラリーの厚さにほぼ等しくなるように、セメント系スラリーの少なくとも一部に接触できるように配置される。本発明は、さらに該スラリースプレッダーを使用することを含む、セメント系ボードの成形方法を提供する。
【選択図】図１

Description

（関連出願の相互参照）
本出願は、2005年9月1日に、国際スピード郵便ラベル番号EV 420404985 US、代理人整理番号234921で出願され、本明細書により、その全体が参照によって援用される、「セメント系ボード製造のためのスラリースプレッダー（Slurry Spreader for Cementitious Board Production）」と題する米国特許出願の優先権を主張する。

（発明の背景）
本発明は、概して、セメント系ボードシステム（cementitious board system）、およびセメント系ボードの製造方法に関する。

限定されないが、硫酸カルシウム系材料、およびポルトランドセメントなどのセメント系材料の使用は、ウォールボード、防音パネル、およびセメントボードなどの種々の製品に包含させることに関して、当該技術分野で周知である。かかるセメント系ボードまたはセメント系パネルの縦横にわたって厚さが実質的に均一であることが、壁、天井、または床に並べてこれらを使用するのに、望ましい。スクリード装置によって厚さを制御することは、水硬性セメント混合物の流動性によって制限される。セメント系スラリーは通常チキソトロピーを示すが、均一に広がるほど素早く高速ベルトコンベアーにわたって置いたスクリード（screed）で敷きならされないことが多い。高速ベルトコンベアー上に堆積するスラリーの量の不規則性は、いわゆる「セメントボード（cement boards）」および高速製造ラインにて製造される他の建築パネルにおいて、凹凸をもたらしやすい。

セメント系建築パネルは、一般に24〜54インチの幅で製造される。パネルの幅が広くなるほど、スラリーを均一に分配する課題が困難となる。移動する支持体表面への連続ミキサーからの直接のセメント系スラリーの排出は、下流のスクリードまたは成形プレートにかなり不動性の材料の連続的な稜線を示し得る。スラリーが広がるのを補助するために、スラリーに用いられる水の量が、しばしば増大される。しかしながら、大量の水の存在は、最終的なボード製品を得る前に該水を除去しなければならないため、望ましくない。水の除去は、水を蒸発させるのに要するエネルギー、および／または水を蒸発させるのに要する時間のために、高コストである。

また、排出されるスラリーの速度によって、ミキサーを出たセメント系スラリーが乱流となり、スラリーが、移動する支持体表面に接触するときに、大きなボイド（voids）（例えば5 mm以上の直径を有するボイド）が形成され得、望ましくない。ボード製造時のかかる大きなボイドの存在は、例えばボード強度、ならびに切り傷（score）特性、および折れ特性といった得られるボードの質を損ない、ブリスターの形成をもたらし得るため、望ましくない。

セメントボードの場合、ローラーおよび他の機器がスラリーを広げるために用いられてきたが、かかるローラーおよび機器は、スラリーの蓄積を被り得、ボード製造時に持続的に清掃することが要求される。持続的な清掃は、蓄積し固化したセメント片が、ローラーおよび他の展開（spreading）機器から落ち、裏当て紙（backing paper）、またはある応用においては剥離紙、を破ることによって、該ラインの完全な運転停止が要求されるというリスクを生じる。ボード製造ラインの中断は、費用がかかり、非効率的である。

したがって、上記より、セメント系ボードシステム、ならびに水の量、望ましくないほど大きいボイドの数を減少し得、および／またはより効率的で低コストのボード製品を提供し得る製造方法についての必要性が当該技術分野において存在することが理解されよう。本発明は、かかる諸特徴の一つ以上を含むボードシステムおよび方法を提供する。本発明のこれらの、および他の利点、ならびにさらなる独創的な特徴は、本明細書中に提供される本発明の説明から明らかになる。

（発明の概要）
本発明は、ボードライン上で、移動する裏当て層（backing layer）に間接的に、または直接的に、セメント系スラリー（cementitious slurry）を広げるために本発明のスラリースプレッダー（slurry spreader）を用いると、セメント系ボード製品の製造において改善がもたらされるという驚くべき発見に基づく。ボード製造に用いるパラメーターによって、本発明に関連する幾分かの、またはすべての改善を実現し得る。改善としては、セメント系スラリーに用いる水の量の減少、セメント系スラリーにおける望ましくない大きなボイドの存在を減少させること、もしくは排除すること等が含まれる。

したがって、本発明は、スラリーがボードラインのミキサーを出た後、セメント系スラリーに接触するためのスラリースプレッダーを提供する。スラリースプレッダーの少なくとも一部は、セメント系スラリー材料と表面接触するように設計され、複数の孔（apertures）を有し、該複数の孔は、運転時に流体源と流体で連通している。スラリースプレッダーは、常圧の（normally pressurized）流体が、スラリースプレッダーの外表面を横切る、好ましくは連続的な薄膜として、流体の継続的な流れを提供するように、孔を通って、スラリースプレッダーから流れ出るように構成される。スラリーがミキサーを出た後であって、かつ成形ステーション（該成形ステーションは、最終的な機械的な展開（spreading）ならびに／またはセメント系ボード製品の湿潤したボード前駆体を形成するための所定の幅および厚さにスラリーを成形することを行う）をスラリーが通過する前に、スラリースプレッダーは、セメント系スラリーの少なくとも一部に接触するように配置される。ミキサーから排出されたスラリーを直接的にまたは間接的に受ける、持続的に移動する裏当て層、セメント系スラリーを製造するためのミキサー、および成形ステーションを有するボード成形システムにおいて、スラリースプレッダーは、ミキサーから排出されたスラリーが裏当て層上に堆積する領域の下流、かつ成形ステーションの上流に位置し、スラリーに接触する。スラリーは直接裏当て層上に堆積し得るか、または例えば裏当て層に支持された高密度層（densified layer）上のように、裏当て層上に間接的に堆積し得ることを当業者は理解するであろう。流体は、スラリースプレッダーの流体出口の孔から流れる。

本発明はまた、セメント系ボードを成形する方法を提供する。該方法の一つの実施態様において、水およびセメント系材料を有する混合物が、移動する裏当て層の上に直接的にまたは間接的に移送され、裏当て層の表面上にスラリーを広げるために上述のスラリースプレッダーに接触される。次いでセメント系スラリーを、湿潤したボード前駆体を成形するために、任意に成形プレートに接触させ、該前駆体を乾燥させ、切断し、セメント系ボード製品を成形する。

本発明はまた、ボード製造時のセメント系材料に対する水の比を減少する方法も提供する。該方法は、水、セメント系材料、および任意に発泡剤を有する混合物を形成することを有し；該混合物を直接的にまたは間接的に、移動する裏当て層上に移送することを有し；ならびに該混合物の少なくとも一部を本発明のスラリースプレッダーに接触させることを有する。混合物をスラリースプレッダーに接触させることにより、スラリースプレッダーがない場合に要求されるよりも、混合物において少ない水を使用することが容易になる。

本発明はまた、セメント系ボード製造時の望ましくない大きなボイドの数を減少させる方法も提供する。該方法は、水、任意に発泡剤、他の適切な添加剤等、およびセメント系材料を有する混合物を形成することを有し；該混合物を直接的にまたは間接的に、移動する裏当て層上に移送することを有し；ならびに裏当て層の表面にスラリーを広げ、混合物中に存在する望ましくない大きなボイドを排除するために、該混合物の少なくとも一部を本発明のスラリースプレッダーに接触させることを有する。

本発明は、模式図とともに、以下の好ましい実施態様の詳細な説明を参照して、最もよく理解され得る。

（発明の詳細な説明）
図１および図２を参照すると、ボード成形システム1は、排出口12を備えたミキサー10、スラリースプレッダー14、成形ステーション（forming station）18、裏当て層20、任意の被覆層ロール22、および好ましくはセメント系ボード製品の連続的な製造を促進するためのコンベアーを備えた成形テーブル24を含む。運転に際しては、ボードのコアを形成するために用いられるセメント系スラリーは、ミキサー10にて調製され、直接的にまたは間接的に裏当て層20上に排出口12を通って排出される。排出口（すなわち堆積の機構）は、任意の適切な排出口であり得る。例えば、適切なスラリー排出口は、米国特許第6,874,930号に記載され、これは本明細書中に参照によって援用される。ミキサーからのスラリーは裏当て紙上に直接堆積させることができるが、いくつかの実施態様において、ミキサーからのスラリーは、例えば高密度層上のように裏当て層上に間接的に堆積される。限定されないが天井タイル、壁パネル、およびオフィスの小個室のためのパーティションといった、石膏ウォールボード、または防音パネルの製造などの本発明の好ましい実施態様において、ボードのコアを形成するスラリーは、例えばその各々が本明細書中に参照によって援用される、米国特許第4,327,146号および同第5,718,797号に記載されるように裏当て層によって支持されるセメント系スラリーの高密度層（すなわち皮膜被覆層（skim coat layer））上に堆積される。当該技術分野で公知のように、高密度層は気泡が導入される前に、ミキサーからスラリーの一部を導くことによって、またはスラリーから泡をかき混ぜて出すことによって、達成させ得る。当該技術分野で公知のように、特に石膏ドライウォール（drywall）などのように、被覆層が使用される実施態様において、第二の高密度層が任意にコアスラリーの上部に適用され得る。高密度層は、例えば約0.0625"〜約0.125"のような任意の適切な厚さを有し得る。

裏当て層20はコンベアー24上に送り出され、セメント系ボードの連続的な成形を容易にするために、好ましくは連続的に、コンベアーによって運ばれる。セメント系ボードの常套の製造において、裏当て層は典型的には紙、例えばマニラ紙またはクラフト紙、不織ガラススクリム、ガラス織物マット、ポリエステルなどの他の合成繊維のマット、アルミニウムなどの金属のホイルなど、およびこれらの組み合わせである。ポルトランドセメントのボード製造におけるような、いくつかの実施態様において、裏当て層20は、ボード製品から除去し得る剥離層である。堆積したスラリーを上に有する裏当て層がスラリースプレッダーを通った後、スラリーは、被覆層ロール22から送り出される被覆層26で任意に被覆される。次いで湿潤しているボードは、成形ステーション18を通過する。スラリースプレッダー14は、成形ステーションの方向に裏当て層20が移動するときに、スラリーが排出口12を出た後、かつスラリーが成形ステーション18を通過する前に、セメント系スラリーの少なくとも一部がスラリースプレッダーに接触するように配置される。

成形ステーションは、湿潤したボード前駆体を所定の幅および厚さ、ならびに任意に所定の長さにする、ボードラインにおける位置である。したがって成形ステーションとしては、裏当て層の幅全体にわたるスラリーの最終的な機械的な展開および／または成形を行い得る任意の機器が挙げられ、またはそれらであり得、その多くは当該技術分野で公知である。成形ステーションは、固化した場合、セメント系ボード製品を生成することになる、湿潤したボード前駆体の最終的な所望の厚さおよび幅に、スラリーの厚さおよび幅を、適合させる手段を有する。成形ステーションで作り出される最終的な所望のスラリーの厚さおよび幅は、もちろん、完成したボード製品の最終的な厚さおよび幅とは異なり得る。例えばスラリーの厚さおよび／または幅は、スラリーの結晶化（すなわち固化）時および乾燥時に拡張し得、および／または収縮し得る。典型的には所望のスラリーの厚さは、実質的には所望のボードの厚さに等しい（例えば約0.375"、約0.5"、約0.625"、約0.75"、約1"またはさらに厚い）。例にすぎないが、最終的なボードの厚さは、典型的には、最終的なスラリーの厚さの約±1/8"以下の範囲内である。

成形ステーションとしては、湿潤したボード前駆体の所望のスラリーの厚さおよび幅をつくり得る任意の機器を含む。適切な機器としては、例えば成形プレート、成形ローラー、成形プレス、スクリードなどが挙げられる。使用される具体的な機器は、製造されるセメント系ボードの種類に幾分依存することになる。好ましい実施態様において、例えばボード成形システムが石膏ボード成形システムまたは防音パネル成形システムである場合、ボード成形ステーションは当該技術分野において公知であるような成形プレート19を有する（図１）。他の実施態様において、例えばボード成形システムがポルトランドセメントのボード成形システムである場合、成形ステーションは成形ローラーまたはスクリードである。上記実施態様の任意のボード成形システムは、任意にさらに、裏当て層に堆積したスラリーを振動させ得るバイブレーター、湿潤したボード前駆体または乾燥させたセメント系ボード製品を所望の長さに切断するためのブレード、および／または固化したセメント系ボードから水を除去し得る乾燥部位を有する。

いくつかの実施態様において、例えばボード成形システムが石膏セメントボード成形システムである場合、スラリースプレッダー14が、スラリー排出器（discharge）12と成形プレート19との間にあって、スラリー排出器（discharge）から流れる移動する裏当て層上のスラリーの流速が遅くなり、その結果スラリーの流速が移動する裏当て層の進行速度と実質的に等しい領域に配置されることが望ましい。スラリースプレッダーのかかる配置は、裏当て層とともに移動するスラリーの乱流が、スラリースプレッダーとの効率的な接触を可能にするように十分に減少されるため、望ましいと考えられる。したがって、スラリースプレッダーの実際の配置は、スラリー排出器を出るスラリーの流速に少なくとも幾分は依存することになる。典型的には、これは、スラリースプレッダーが、ボード成形システムにおいてミキサー10よりも成形プレート18の近くに配置されることになることを意味する。図１を参照すると、ミキサーのスラリー排出器（discharge）12を出たスラリーが裏当て層に接触する(直接的にまたは間接的に)領域と成形ステーション18の前部との間の距離Ｄに関するこの例示される実施態様において、スラリースプレッダー14は、好ましくは、スラリーが裏当て層または裏当て層に支持される高密度層に最初に接触する領域から約0.5Ｄ〜約0.9Ｄ離れて配置される。

スラリースプレッダー14は、流体入口30、および流体入口と連通したスラリースプレッダーから流体を排出するための流体出口32を有する。スラリースプレッダーの少なくとも一部は、複数の孔を有し、これらは流体入口を介して、加圧された流体の源に連結している。好ましくは、孔はミクロ細孔（microporous）である。複数の孔を有するスラリースプレッダーの部分は、流動化膜と称され得る。スラリースプレッダーは、セメント系スラリーに接触するスラリースプレッダーの外表面を横切る連続的な流体源を提供するために、孔を通ってスラリースプレッダーから流体が流れ出るように構成される。複数の孔を有するスラリースプレッダーの部分は、任意の適切な方法で構成することができる。望ましくは、孔を有する部分は、実質的にセメント系スラリーが、接触時にスラリースプレッダーの表面に付着することを妨げるのに十分な流速および／または圧力損失で、流体を「流す（weeps）」ように構成される。また、セメント系スラリーまたはボード成形工程に対するいかなる悪影響（affect）も避けるために、スラリースプレッダーから流れ出る流体の量を制限することが望ましい。

好ましくは、スラリースプレッダー14には、孔を有するスラリースプレッダーの部分を越えての圧力損失が、液体の孔への連続的な流れを提供するだけでなく、流体が孔から流れる流速も制限するように、加圧された流体が供給される。スラリースプレッダー14に用いる所望の圧力損失は、スラリーのセメント系材料に対する水の比、スラリーに含まれる添加剤、ミキサーからのスラリーの排出速度、スラリーおよび裏当て紙がミキサーのスラリー排出器（discharge）から成形ステーションへ移動する速度などに依存することになる。ボード製造のために選択される様々なパラメーターの調節は、スラリースプレッダーの孔からの流体の所望の流速、および孔から排出される流体の量に直接的に、および間接的に影響を及ぼすであろう。典型的には、スラリースプレッダーの孔部分を超えての少なくとも約0.1 psig（重量ポンド毎平方インチ ゲージ(pounds-force per square inch gauge)）の圧力損失が有用である。少なくとも0.25 psig、または少なくとも約1 psigの圧力損失もまた有用である。好ましくは、圧力損失は約0.2 psig〜約20 psigである。より好ましくは、圧力損失は、約0.3 psig〜約20 psigである。スラリースプレッダーからの流体の流速は、セメント系スラリーに加えられる流体の量を制限するために、低いことが好ましい。スラリーに加える流体を制限することはまた、ボードを固化させる間、および固化させた後、ボードを乾燥させるためのエネルギーの必要量および／または時間もまた減少させることになる。典型的には、スラリースプレッダーの孔を通った流体の流速は、湿潤したセメント系ボード前駆体の１平方フィート当たり約0.6ガロン／分（gallons per minute）（gpm）以下である。好ましくは、流速は、１平方フィート当たり約0.5 gpm以下である。より好ましくは、流速は１平方フィート当たり約0.4 gpm以下である。

スラリースプレッダーの孔を有する部分は、任意の適切な物質からなり得る。該物質は、実質的に腐食に耐性であることが望ましい。該物質は、金属、高分子、セラミック、またはこれらの組み合わせからなり得る。適切な金属としては、ステンレス鋼（316L、304L、310、347、および430）、チタン、ならびにハステロイ（Hastelloy）（C-276、C-22、X、N、B、およびB2）、インコネル（Inconel）（600、625、および690）、ニッケル（Nickel）200、モネル（Monel）（登録商標）400（70 Ni-30 Cu）、およびアロイ（Alloy）20といった金属合金が挙げられる。好ましい実施態様において、該物質は、ステンレス鋼である。適切な高分子としては、ポリプロピレン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ならびにポリフッ化ビニリデンおよびポリテトラフルオロエチレン（PTFE）などのフッ素重合体が挙げられる。適切なセラミックとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ガラス、炭化ケイ素などが挙げられる。該物質はまた、セラミックに担持された高分子膜、例えばジルコニアPVP膜であってもよい。

スラリースプレッダーの孔を有する部分は、任意の適切な方法によって形成され得る。例えば、該部分は、中に切断または成型された（cast）複数のミクロ細孔の孔を有するシートからなり得る。例えば、孔部分は、１平方インチあたり約1,500個以上の孔穴（holes）を有するステンレス鋼の膜からなり得る。いくつかの実施態様において、孔部分は、１平方インチあたり約10,000個以上の孔穴を有するステンレス鋼の膜からなり得る。あるいは、スラリースプレッダーの孔を有する部分は、例えば１平方インチあたり1,500〜160,000個以上の孔穴、またはいくつかの実施態様において、１平方インチあたり10,000〜160,000個以上の孔穴を有する2以上の圧縮スクリーン（screens）からなり得る。また、スラリースプレッダーの孔を有する部分は、圧縮された焼結金属粉末からなる多孔性金属材料からなり得る。例として、該部分は、Mineola, NYのMartin Kurz & Co., Inc.から市販されているDynapore（登録商標） FoilMesh^TMLFM-1膜、LFM-5膜、もしくは LFM-10 膜、または Farmington, CT の Mott Corporation から市販されている０．２ μｍもしくは０．５ μｍの多孔性316SS膜からなり得る。

流体が通過する孔が、スプレッダーを出る流体を、スラリースプレッダーを通るスラリーと接触させ、孔を通る流体の通過を妨げるようにスラリーがスラリースプレッダーに付着することを阻止する限り、所望のメッシュサイズは、当業者に理解されるように、種々の方法によって達成され得る。例えば、膜は所望の数およびサイズの孔を有するように形成することができる。さらに、例として、本発明を限定するものではないが、所望のメッシュサイズを有する膜が、それぞれが予め選択された数およびサイズの孔を中に有する、2以上のスクリーンの多層構造を形成し、例えば複数のスクリーンを圧縮し、焼結することによって諸スクリーンを結合させ、１平方インチあたりに所望の数およびサイズの孔を有する所望の膜を生じることによって、達成され得る。１インチあたりに所望の数およびサイズの孔のある膜を形成するために適切な任意の順序で種々の組み合わせのスクリーンを用いることができるが、一つの実施態様において、多層膜は、最大の大きさの孔を有する基部スクリーン、およびそれに続く徐々に小さくなるサイズの孔を有するが、１インチあたりのより大きな孔数を有する頂部スクリーンにつながるスクリーンを有し、頂部スクリーンは、１インチあたりに最大の数の孔、および最小のサイズの孔を有する。スラリースプレッダーのために選択、または製造される膜は、好ましくはスプレッダーからの所望の流体の流速、およびスプレッダーにおける流体の圧力水頭と均衡がとれたものであることも当業者に理解されよう。

スラリースプレッダーは、プレナムとしてはたらき得、加圧された流体を有し得るチャンバー、チャンバーと流体接触している流体入口、および流体源から流体を受け取るための流体入口をさらに備える。流体入口は、ホース、チューブなどを有し得る。チャンバーは、任意の適切な寸法を有し得る。望ましくは、チャンバーは、一定の流速および／または圧力損失が、複数の孔を有するスラリースプレッダーの全部分を横切って存在するように構成される。典型的には、チャンバーの長さは、スラリースプレッダーの長さと実質的に等しくなる。いくつかの実施態様において、チャンバーの容積は、チャンバーの長さおよび幅全体にわたって一定であることが望ましい。入口は、スラリースプレッダーの任意の適切な位置に配置することができる。典型的には、入口は、スラリーに接触するスラリースプレッダーの表面と反対側に配置される。

スラリースプレッダーは、ボード成形システムに対して、種々の配置を有することができ、種々の方向に向けることができる。スラリーが成形ステーションに到達することによりスラリー「ダム（dam）」を生じる前に、複数の孔を有するスラリースプレッダーの少なくとも一部が、スラリーに接触することが望ましい。また、スラリースプレッダーが、裏当て層の幅全体にわたって、スラリーを広がらせることが望ましい。したがって、スラリースプレッダーは、望ましくは、このように、ボード成形システムに対して、スラリーに接触するのに適する、寸法および向きを有する。ボードシステムが1つより多くのスラリースプレッダーを有する実施態様において、望ましくは1つのスラリースプレッダーだけがこのようにスラリーに接触するように配置されるが、本発明は1つのかかるスラリースプレッダーに限定されない。

典型的には、裏当て層およびスラリーがミキサーの排出器（discharge）から成形ステーションへ移動するとき、スラリースプレッダーは、最も長い寸法が裏当て層およびスラリーの方向を横切るように方向付けられる。例えば、図２に示されるように、スラリースプレッダー14は、ボードラインの幅を横切って、ボードラインのコンベアー24および裏当て層20にまたがり得る。スラリーがスプレッダーを通過するとき、スラリースプレッダーの孔からの流体の流れがスラリーに接触するように、スラリースプレッダーの孔部分がスラリーに接触するように、スラリースプレッダーが、スラリーに対して方向付けられることは理解されよう。スラリースプレッダーは、孔部分がコンベアーの方向に垂直になるように方向付けることができ、例えば、スラリースプレッダーは、コンベアーの方向に対してある角度に方向付けることもできる。スラリースプレッダーの高さは重要ではない。典型的には、スラリースプレッダーの高さは、スプレッダーの最も低い端が、セメント系ボード製品の所望の厚さよりも高くなるような高さであることが望ましい。好ましくは、スラリースプレッダーは、その最も低い端が、セメント系ボード製品の所望の厚さよりも約0.2"以上、より好ましくは約0.25"以上、上になるように配置される。

スラリースプレッダーの長さは重要ではない。典型的には、スラリースプレッダーの長さは、スラリースプレッダーが裏当て層の全幅を超えないように、ボード製造ラインの幅未満であることが望ましい。好ましくは、スラリースプレッダーの長さは、ボード製造ラインの幅の少なくとも約1/4である。より好ましくは、スラリースプレッダーの長さは、約10インチ〜約50インチ（例えば約15インチ〜約45インチ）である。

スラリースプレッダーは、任意の適切な断面形状を有し得る。例えば、スラリースプレッダーは、長方形、三角形、円形、半円形、台形、卵形、弓形、または類似の断面形状を有し得る。さらに、スラリーに接触するスラリースプレッダーの表面は、任意の適切な輪郭を有し得る。例えば、表面は、実質的に平らであっても湾曲（凹形または凸状）していてもよい。好ましい実施態様において、スラリースプレッダーの断面形状は、スラリーと接触する湾曲した凸状の表面を有するように弓形である。いくつかの実施態様において、該表面はさらに表面組織、例えばセメント系スラリーをスラリースプレッダーの端に指向させる溝を有することが望ましいかもしれない。スラリースプレッダーは、さらに、ミキサーによって堆積するスラリーに接触し得、かかるスラリーがスラリースプレッダーの頂部からあふれ出る可能性を減少させる隆起した縁（上流方向に隆起）を任意に有する。隆起した縁は、任意に複数の孔を有する。

一つの好ましい実施態様において、スラリースプレッダーは、角箱（rectangular box）の形状である。例えば、スラリースプレッダーは、スラリーに接触する、箱の表面を含む箱の3つの側面が、複数の孔を有する長方形の箱の形状であってもよい。図３ａおよび図３ｂに示されるように、本発明による特に好ましいスラリースプレッダーは、裏面壁34、スラリーに接触する前面壁36、および4つの側壁38を有するチャンバー、流体入口30、ならびに流体源から流体を供給するためのホース40を有する。少なくとも前面壁、裏面壁、および／または側壁の一部分は、複数の孔32を有する。好ましくは、スラリースプレッダーの孔はミクロ細孔である。

別の好ましい実施態様において、スラリースプレッダーは、弓形の断面形状を有する。図４ａおよび図４ｂに示されるように、スラリースプレッダーは、裏面壁34、スラリーに接触する前面壁36、側壁38を有する弓形の断面を有するチャンバー、流体入口30、およびホース40を有する。前面壁は複数の孔32を有する。好ましくは、孔はミクロ細孔である。弓形の断面形状を有するスラリースプレッダーは、スラリースプレッダーの孔部分を超えてのより均一な圧力損失を可能にするため、有利であると考えられている。

さらに別の好ましい実施態様において、スラリースプレッダーは、湾曲したプレートまたはチューブの形状である。図５に示されるように、スラリースプレッダーは、複数の孔32、好ましくはミクロ細孔の孔を有する表面36を有するチャンバーを有するローラーである。該スラリースプレッダーは、流体入口30、および流体源から流体を供給するホース40を有する。

いくつかの実施態様において、スラリースプレッダーは、望ましくは、複数の孔を有するスラリースプレッダーの少なくとも1つの表面が、裏当て層の平面に平行にならず、スラリーダムを形成するようにスラリーに接触するような角度になるように方向付けられる。スラリースプレッダーが、スラリーダムを形成するようにスラリーに接触する平らな輪郭を有する場合（例えば長方形、または台形のスラリースプレッダー）、裏当て層の平面と、スラリースプレッダーのスラリー接触表面の長さおよび幅によって規定される平面との間の角度（α）を定めることが可能である（図１参照）。好ましくは、スラリーに接触するスラリースプレッダーの表面と裏当て層との間の角度αは、約10°〜約90°（例えば約10°〜約60°）である。他の好ましい実施態様において、スラリースプレッダーは、好ましくはスラリーダムを形成するために、スラリーに接触する湾曲した輪郭を有することもまた、理解されよう。

角度αを規定し、スラリーに接触する、スラリースプレッダーの表面は、スラリースプレッダーの最大の表面積を有する表面であることは要求されないことを当業者は理解するだろう。例えば、スラリースプレッダーは、スラリーに接触するスラリースプレッダーの表面と裏当て層との間の角度αを形成する、複数の孔を有する第一の隆起した部分、および裏当て層の平面に平行であるが、複数の孔も有し、スラリーに接触する第二のより広い部分を有し得る。さらに、スラリースプレッダーは、成形プレートの代わりに、または成形プレートとともに使用され得る場合もある。スラリースプレッダーが成形プレートの代わりに使用される場合、スラリーに接触する、複数の孔を有するスラリースプレッダーの表面は、裏当て層の平面に平行になる。スラリースプレッダーが成形プレートとともに使用される場合、スラリーに接触する、複数の孔を有するスラリースプレッダーの表面は、裏当て層の平面に平行であってもよい。

加圧された流体は、任意の適切な流体であり得る。典型的には、該流体は、水を有する。任意には、該流体は、好ましくは水に溶解された添加剤をさらに有する。適切な添加剤としては、硫酸アルミニウムなどの硬化剤、または酸、例えば無機酸または有機酸など、およびアルコールなどの遅延剤が挙げられる。いくつかの実施態様において、流体が水蒸気（steam vapor）を有することが望ましいかもしれない。好ましくは、流体は水を有する。より好ましくは、流体は、濾過し、脱塩した水を有する。任意の適切な水の軟化装置（softener）、および／または水の濾過器（water filter）をスラリースプレッダーとともに使用することができる。

いくつかの実施態様において、セメント系スラリー材料は、高密度層で被覆された裏当て層上に堆積される。したがって、セメント系スラリーは、高密度層上に直接堆積され、かつ裏当て層上に間接的に堆積される。好ましくは、セメント系ボード製品において、固化したセメント系スラリーは、裏当て層に直接接触しない。

ボード成形システムは、任意に、さらにスラリーバイブレーター（vibrator）を有する。本発明のスラリースプレッダーとともに間接的なスラリーバイブレーターを使用して、スラリーを展開する運転時に露出する、何らかの大きな泡もしくはボイド、または大きな泡もしくはボイドが破裂するときに生じ得る空洞を排除することができる。バイブレーターは任意の適切なバイブレーターであってもよく、その多くは当該技術分野で公知である。典型的には、バイブレーターは、成形テーブルの中に配置され、裏当て層の底面に接触する。適切なバイブレーターとしては、たたき棒（beater bar）としてはたらく、種々の形状のセグメント化ロール（segmented roll）、例えば本明細書中に参照によって援用される米国特許第4,477,300号に記載されるような、回転する多角形軸（rotating polygonal shaft）などが挙げられる。いくつかの実施態様において、バイブレーター42は、望ましくは、例えば図１に例示されるように、成形テーブル24および裏当て層20の下、スラリースプレッダーの下流、かつ成形ステーションの上流に配置される。他の実施態様において、バイブレーターをスラリースプレッダーおよび成形ステーションの上流に配置することが望ましい。

本発明のボード成形システムは、任意に1つより多くのスラリースプレッダーを有する。さらなるスラリースプレッダーは、任意の適切な位置に配置することができ、存在する場合は成形プレート、または裏当て層の幅全体にわたってスラリーが広がる領域の上流または下流に配置することができる。いくつかの実施態様において、さらなるスラリースプレッダー（1つかまたは複数）は、第一のスラリースプレッダーの近くで、かつ存在する場合は成形プレートの上流、または裏当て層の幅全体にわたってスラリーが広がる領域の上流に配置することが望ましい。例えば、2つ以上のスラリースプレッダーが連続して配置され得、一緒に動作し、セメント系スラリーを裏当て層全体にわたって均一に広げ得る。1つの好ましい実施態様において、複数のスラリースプレッダーの存在は、セメント系スラリーを広げるために十分であり、成形プレートの必要性をなくす。別の好ましい実施態様において、スラリースプレッダー自体が成形プレートとして機能し、従来の成形プレートとともに、または従来の成形プレートの代わりに使用され得る。スラリースプレッダーと成形プレートとの他の組み合わせを同様に検討することができる。例えば、1つより多くのスラリースプレッダーを成形プレートとともに、または成形プレートを伴わずに使用することができ、1つ以上のスラリースプレッダーを前述のように使用することができ、そして1つ以上のスラリースプレッダーを裏当て層の平面に平行にすることができる。

ボード成形システムは、任意の種類のセメント系ボードを形成するために使用することができる。いくつかの実施態様において、ボード成形システムは石膏ドライウォール（drywall）などの石膏ボードの成形システムである。他の実施態様において、ボード成形システムはポルトランドセメントのボード成形システムである。さらに別の実施態様において、ボード成形システムは防音パネル成形システムである。

ある実施態様において、ボード成形システムは、石膏ボード成形システムであって、（a）裏当て層を運ぶ成形テーブルを有し、（b）ミキサーを有し、該ミキサーは、裏当て層にセメント系スラリー材料を堆積させるためのスラリー排出器を含み、かつ（c）スラリースプレッダーを有し、該スラリースプレッダーは、流体入口と流体出口とを有し、該流体出口は、該スラリースプレッダーから流体を排出するために流体入口と連通している、システムである。流体出口の少なくとも一部は、流体源に連結している複数の孔、好ましくはミクロ細孔の孔を有する。十分な量の流体を通過するスラリーに供給し、裏当て層の幅に沿ってスラリーを広げるように、流体は、流体出口を通ってスラリースプレッダーから流れ出る。好ましい実施態様において、流体出口はミクロ細孔の孔を有し、孔を通ってスプレッダーを出た流体が、スプレッダーの流体出口の表面に連続的な膜を形成するように、流体は十分な圧力下でスラリースプレッダーに供給される。ボード成形システムは、任意に（d）スラリーバイブレーター、ならびに（e）スラリースプレッダーの数および機能に応じた成形ステーションを含む。ボード成形システムは、さらに（f）ナイフ、またはボード切断システム、および（g）形成されたボードから水を除去し得る乾燥領域を含む。上に記載したように、スラリースプレッダーは、スラリーが排出器を出た後、かつスラリーが成形ステーションを通過する前に、セメント系スラリーの少なくとも一部に接触するように、スラリーがミキサーから排出される領域の下流に配置される。

本明細書中で用いられる場合、用語「セメント系（cementitious）」は、水硬性セメントを含有するか、または水硬性セメントから誘導される任意の材料、物質、または組成物を指すように理解されるべきである。例えば、セメント系は、ポルトランドセメント、ソレルセメント（sorrel cement）、スラグセメント、フライアッシュセメント、カルシウムアルミナ（calcium alumina）セメント、硫酸カルシウムα半水和物、硫酸カルシウムβ半水和物、天然、合成または化学的に修飾された硫酸カルシウムα半水和物、硫酸カルシウム二水和物（石膏）、およびこれらの混合物を指し得る。用語「硫酸カルシウム材料」は、硫酸カルシウム無水物、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム二水和物、カルシウムおよび硫酸塩のイオン、またはこれらの任意のもしくはすべての混合物を意味するものとする。用語「スラリー」は、水および水硬性セメントを有する流動性混合物を指すように理解されるべきである。好ましくは、セメント系スラリーは、硫酸カルシウム材料またはポルトランドセメントを有する。

セメント系スラリーは、任意の従来のセメント系スラリーであってもよく、例えば、石膏ウォールボード、例えば本明細書中に参照によって援用される米国特許公報2004/0231916 A1として公開された同時係属の米国出願第10/804,359号に記載される防音パネルを含む防音パネル、またはポルトランドセメントボードを製造するために一般に使用される任意のセメント系スラリーであってもよい。したがって、セメント系スラリーは、任意に、さらに、セメント系ボード製品を製造するために一般に用いられる任意の添加剤を有してもよい。かかる添加剤としては、ミネラルウール、繊維ガラス、パーライト、粘土、炭酸カルシウム、ポリエステル、および紙繊維といった構造的な添加剤、ならびに発泡剤、糖、例えば本明細書中に参照によって援用される米国特許第6,342,284号に記載されるようなリン酸塩、ホスホン酸塩などのような促進剤（enhancing agents）、遅延剤、結合剤（例えばデンプンおよびラテックス）、着色剤などといった化学的添加剤が挙げられる。

本発明のボード成形システムはまた、セメント系ボード材料を形成する方法において有用である。該方法は、（a）水およびセメント系材料を有する混合物を形成することを有し、（b）直接的にまたは間接的に紙などの移動する裏当て層の上にセメント系スラリー混合物を移送することを有し、ならびに（c）セメント系スラリーの少なくとも一部分を上記のようなスラリースプレッダーと接触させることを有する。任意に、該方法は、さらに（d）湿潤したボード前駆体を形成するために、成形プレートにセメント系スラリーを接触させること、および／または（e）湿潤したボード前駆体を切断し、乾燥させ、ボード製品を成形することを有する。この文脈において、「乾燥」は、セメント系ボードが実質的に固化した後、過剰のおよび／または残留する水分を除去することをいう。「硬化させること（Curing）」は、セメント系材料の固化（setting）を増大または促進するためにセメント系ボード前駆体に熱を適用することをいう。セメント系スラリーを移動する裏当て層の上に移送する前に、高密度層を任意に裏当て層上に堆積させてもよい。

本発明のボード成形システムは、従来のセメント系スラリーを用いて、セメント系ボード材料を製造する方法において使用することができるが、本発明の驚くべき特徴は、本発明によるスラリースプレッダーを使用しない従来のボード成形システムによって要求される水の量に対して、セメント系スラリーにおける水の量を減少させることができることである。したがって、本発明のボード成形システムはまた、（a）水、発泡剤、およびセメント系材料を有する混合物を形成すること、（b）混合物を直接的にまたは間接的に移動する裏当て層の上に移送すること、および（c）スラリーがスラリースプレッダーを通過するときに、裏当て層の幅に沿って混合物を広げるように、混合物の少なくとも一部をスラリースプレッダーに接触させること、を有するボード製造時に、セメント系スラリーにおける水のセメント系材料に対する比を減少させる方法において有用である。スラリースプレッダーが、スラリーの分配を容易にする、したたり落ちる（weeping）表面を提供するため、当該技術分野で従来実施されているボード製造におけるよりも、低いセメント系材料に対する水の比を使用することが可能である。したがって、混合物をスラリースプレッダーと接触させることで、スラリースプレッダーのない場合に要求されるよりも、工程（a）の混合物においてより少ない水を使用することが可能になる。例えば、石膏ウォールボードまたは防音パネルに関するような本発明の実施態様において、水：セメント系材料比は、約80：100よりも小さくてもよく、より好ましくは約50：100〜約70：100であってもよく、さらにより好ましくは60：100〜約65：100であってもよい。いくつかの防音パネルに関するような、いくつかの実施態様において、該比は、約70：100〜約120：100、またはさらに約90：100〜約120：100のように幾分高くてもよい。セメントボードに関するような本発明の他の実施態様において、水：セメント系材料比は、約25：100〜約50：100であってもよく、好ましくは約30：100〜約45：100であってもよく、より好ましくは約32：100〜約42：100であってもよく、さらにより好ましくは約34：100〜約40：100であってもよい。該方法は、任意にさらに、（d）湿潤した石膏ボード前駆体を形成するために混合物を成形プレートと接触させること、および／または（e）湿潤した石膏ボード前駆体を切断し、乾燥させ、石膏ボード製品を形成することを有する。セメント系スラリーを移動する裏当て層の上に移送する前に、高密度層を任意に裏当て層の上に堆積させてもよい。

例えばボード強度、外観、たわみ抵抗（sag resistance）、または固化時間などのボード製品の質に悪影響を及ぼすことなく、本発明の方法は、セメント系混合物を形成するために使用する水の量を減少することを可能にする。望ましくは、セメント系混合物を形成するために使用する水の量は、本発明のスラリースプレッダーなしでのセメント系混合物の形成と比較した場合、約5%以上（例えば約10%以上、または約15%以上）減少する。セメント系混合物を形成するために使用される水の量の、約10%以上、もしくは約15%以上、またはそれを超える減少が達成される。さらに、またはあるいは、セメント系スラリーに添加される分散剤（例えばナフタレンスルホン酸塩）の量もまた減少させる（例えば約5%以上、または約10%以上減少させる）ことができる。セメント系スラリー中に存在する水および／または分散剤の量を変化させる（例えば減少させる）場合、スラリーに添加される他の添加剤の相対量もまた調節する必要があり得ることを当業者は理解するであろう。例えば、石膏ウォールボードの製造に使用される安定および不安定な石鹸などの発泡剤の相対量（米国特許第5,643,510号、同第5,714,001号、および同第6,774,146号参照）を所望の泡、気泡、ボイドの大きさを維持するために調節することができる。

本発明のボード成形システムはまた、セメント系ボード（特に石膏ボード）における望ましくない大きなボイドの数を減少させる方法においても有用である。前述のように、望ましくない大きなボイドは、典型的には約5 mm以上の直径を有するボイドである。かかる大きなボイドは、普通なら大きいと見なされ得る、より小さな望ましいボイド（すなわち5 mm未満の直径を有するボイド）であって、その存在がボード強度を増大させ得るが、全ボード重量を減少させるボイド（米国特許第5,643,510号、同第5,714,001号、および同第6,774,146号参照）とは区別される。かかる方法は、（a）水、発泡剤、および硫酸カルシウム材料を有する混合物を形成することを有し、（b）該混合物を移動する裏当て層の上に移送することを有し、ならびに（c）混合物がスラリースプレッダーを通過して進行するときに、裏当て層の幅に沿って混合物を広げ、混合物中に存在する大きなボイドの数を減少させ、および／またはなくすために、混合物の少なくとも一部をスラリースプレッダーに接触させることを有する。望ましくは、少なくともいくらかの大きなボイドは除去される。好ましくはすべての大きなボイドが除去される。任意に、該方法は、さらに（d）湿潤した石膏ボード前駆体を形成するために、当該技術分野で公知のように、成形プレートに混合物を接触させること、および／または（e）湿潤した石膏ボード前駆体を切断し、乾燥させ、石膏ボード製品を成形することを有する。スラリーを移動する裏当て層の上に移送する前に、高密度層を任意に裏当て層上に堆積させてもよい。

本明細書中に記載される本発明のシステムおよび方法のさらなる利点は、スラリースプレッダーの使用が、成形ステーションの上流に形成されるスラリー頭部（slurry head）の制御を向上させ得ることである。例えば、より平滑で変動の少ないスラリー頭部を達成することができ、セメント系ボード製品における縁の形成の制御の改善をもたらす。

本明細書中に引用される公開公報、特許出願、および特許を含む、すべての参照文献は、それぞれの参照文献が、本明細書中に、個々に、かつ具体的に、参照によって援用されるように示され、その全体が記載されるのと同じ程度に、参照によって本明細書により援用される。

本発明の好ましい実施態様は、本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施態様の諸変形は、前記説明を読むと、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に明らかになり得る。したがって、本発明は、適用法令によって許容される、本明細書に添付された請求の範囲に記載された主題のすべての変更、および均等物を含む。また、本明細書中に別段示さない限り、またはそれ以外にも文脈に明らかに反しない限り、それらのすべての可能な変形における上記要素の任意の組み合わせが、本発明に包含される。

図１は本発明の好ましい実施態様に従ったボード成形システムの側面図を示す。 図２は本発明の好ましい実施態様に従ったボード成形システムの上面図を示す。 図３ａは本発明の好ましい実施態様に従ったボード成形システムにおいて用いられるスラリースプレッダーの上面図を示す。 図３ｂは本発明の好ましい実施態様に従ったボード成形システムにおいて用いられるスラリースプレッダーの底面図を示す。 図４ａは本発明の好ましい実施態様に従ったボード成形システムにおいて用いられるスラリースプレッダーの上面図を示す。 図４ｂは本発明の好ましい実施態様に従ったボード成形システムにおいて用いられるスラリースプレッダーの底面図を示す。 図５は本発明の好ましい実施態様に従ったボード成形システムにおいて用いられるスラリースプレッダーを示す。

Claims (46)

1. ボード成形システムであって、
   （ａ）セメント系スラリー製造用ミキサーを有し、該ミキサーは、スラリー排出器を備えており、
   （ｂ）ミキサーから排出されるスラリーを受け取るための成形テーブルを有し、
   （ｃ）スラリースプレッダーを有し、該スラリースプレッダーは、ミキサーのスラリー排出器の下流にあり、かつ、セメント系スラリーがミキサーから排出された後の該セメント系スラリーと接触するものであり、該スラリースプレッダーは、流体入口と流体出口とを有し、該流体出口は、該スラリースプレッダーから流体を排出するために流体入口と連通しており、該流体出口は複数の孔を有しており、かつ、
   （ｄ）予め設定した寸法へとボードを成形するためのボード成形ステーションを有し、該ボード成形ステーションはスラリースプレッダーの下流に位置している、
   前記ボード成形システム。
2. スラリースプレッダーの外表面を横切る流体の連続的な膜を供給するために、流体が孔を通って該スラリースプレッダーから流れ出るように、該スラリースプレッダーが構成されている、請求項１記載のボード成形システム。
3. 孔がミクロ細孔の孔である、請求項１記載のボード成形システム。
4. 孔を有するスラリースプレッダーの部分が金属からなる、請求項１記載のボード成形システム。
5. 孔を有するスラリースプレッダーの部分が高分子からなる、請求項１記載のボード成形システム。
6. 孔を有するスラリースプレッダーの部分がセラミックからなる、請求項１記載のボード成形システム。
7. 孔を有するスラリースプレッダーの部分が、２以上の圧縮されたスクリーンからなる、請求項１記載のボード成形システム。
8. スラリースプレッダーの孔を通る流体の流速が、１平方フィート当たり約0.6ガロン／分（gpm）以下である、請求項１記載のボード成形システム。
9. 孔を有するスラリースプレッダーの部分を超えての圧力損失が、約0.2 psig（重量ポンド毎平方インチ ゲージ）から約20 psig までである、請求項１記載のボード成形システム。
10. 裏当て層とスラリーがミキサーの排出器から成形ステーションへと移動するときに、スラリースプレッダーの最も長い寸法が裏当て層とスラリーの方向を横切るように、該スラリースプレッダーが方向付けられている、請求項１記載のボード成形システム。
11. スラリースプレッダーの長さが、約10インチ〜約50インチである、請求項８記載のボード成形システム。
12. スラリーに接触するスラリースプレッダーの表面が、実質的に平らである、請求項１記載のボード成形システム。
13. スラリーに接触するスラリースプレッダーの表面が、湾曲している、請求項１記載のボード成形システム。
14. スラリースプレッダーが、長方形、円筒、台形、弓形、または卵形の断面形状を有する、請求項１記載のボード成形システム。
15. スラリースプレッダーが、角箱の形状である、請求項１４記載のボード成形システム。
16. 角箱の形状のスラリースプレッダーの３つの側面が孔を有する、請求項１５記載のボード成形システム。
17. 孔を有するスラリースプレッダーの部分が、ステンレス鋼の膜である、請求項１４記載のボード成形システム。
18. 該膜が１平方インチあたり少なくとも約1,500個の孔穴を有する、請求項１７記載のボード成形システム。
19. スラリーに接触する複数の孔を有するスラリースプレッダーの少なくとも１つの表面が、成形テーブルの平面に平行でないようにスラリースプレッダーが構成されている、請求項１記載のボード成形システム。
20. スラリーに接触する複数の孔を有するスラリースプレッダーの少なくとも1つの表面と成形テーブルとの間の角度が約10°〜約90°である、請求項１９記載のボード成形システム。
21. 流体が水を有する、請求項１記載のボード成形システム。
22. 流体が、該水に溶解された添加剤をさらに有する、請求項２１記載のボード成形システム。
23. 流体が水蒸気を有する、請求項１記載のボード成形システム。
24. セメント系スラリーが裏当て層に支持された高密度層上に堆積される、請求項１記載のボード成形システム。
25. セメント系スラリーが硫酸カルシウム材料を有する、請求項１記載のボード成形システム。
26. セメント系スラリーがポルトランドセメントを有する、請求項１記載のボード成形システム。
27. 成形ステーションが成形プレートを有する、請求項１記載のボード成形システム。
28. 距離Ｄが、ミキサーのスラリー排出器を出たスラリーが裏当て層に直接的にまたは間接的に接触する領域と、成形プレートとの間の距離であり、スラリースプレッダーが、ミキサーの排出器によって堆積されたスラリーから約0.5Ｄ〜約0.9Ｄ離れた方向に配置される、請求項２７記載のボード成形システム。
29. さらに１つ以上のスラリーバイブレーターを有する、請求項１記載のボード成形システム。
30. 種々の長さにパネルを切断するためのブレードをさらに有する、請求項１記載のボード成形システム。
31. 成形されたボードから水を除去するための乾燥器をさらに有する、請求項１記載のボード成形システム。
32. 石膏ドライウォール成形システムである、請求項１記載のボード成形システム。
33. ポルトランドセメントのボード成形システムである、請求項１記載のボード成形システム。
34. 防音パネル成形システムである、請求項１記載のボード成形システム。
35. 石膏ボード成形システムであって、
    （ａ）セメント系スラリー製造用ミキサーを有し、該ミキサーは、スラリー排出器を備えており、
    （ｂ）ミキサーから排出されるスラリーを受け取るための成形テーブルを有し、
    （ｃ）スラリースプレッダーを有し、該スラリースプレッダーは、ミキサーのスラリー排出器の下流にあり、かつ、セメント系スラリーがミキサーから排出された後の該セメント系スラリーと接触するものであり、該スラリースプレッダーは、流体入口と流体出口とを有し、該流体出口は、該スラリースプレッダーから流体を排出するために流体入口と連通しており、該流体出口は複数の孔を有しており、かつ、
    （ｄ）予め設定した寸法へとボードを成形するための成形プレートを有し、該成形プレートはスラリースプレッダーの下流に位置しており、かつ
    （ｅ）成形されたボードから水を除去し得る乾燥領域を有する、
    前記石膏ボード成形システム。
36. セメント系ボード材料を成形する方法であって、
    （ａ）水とセメント系材料とを有する混合物を形成することを有し、
    （ｂ）移動する裏当て層上にセメント系スラリー混合物を移送することを有し、かつ、
    （ｃ）裏当て層上にスラリーを広げるために、セメント系スラリーの少なくとも一部分にスラリースプレッダーを接触させることを有し、ここで、該スラリースプレッダーは複数の孔を有し、該複数の孔は、加圧された流体の源に接続されており、該流体が該孔を通ってスラリースプレッダーから流れ出るようになっている、
    前記方法。
37. さらに、
    （ｄ）湿潤したセメント系ボード前駆体を成形するために、セメント系スラリーを成形プレートに接触させることを有し、かつ、
    （ｅ）湿潤したセメント系ボード前駆体を切断することを有し、
    かつ、任意選択的に、
    （ｆ）湿潤したセメント系ボード前駆体を乾燥させて、セメント系ボードを成形することを有する、
    請求項３６記載の方法。
38. 工程（ｂ）の前に、高密度層が裏当て層上に堆積される、請求項３６記載の方法。
39. セメント系材料が硫酸カルシウム材料を有し、かつ、当該方法によって成形されるセメント系ボード材料が石膏ボード製品である、請求項３６記載の方法。
40. ボード製造時におけるセメント系材料に対する水の比を減少させる方法であって、
    （ａ）水と、発泡剤と、セメント系材料とを有する混合物を形成することを有し、
    （ｂ）移動する裏当て層上に該混合物を移送することを有し、かつ、
    （ｃ）裏当て層の幅に沿って混合物を広げるために、該混合物の少なくとも一部分をスラリースプレッダーと接触させることを有し、ここで、該スラリースプレッダーは流体入口と流体出口とを有し、該流体出口は複数の孔を有し、該複数の孔は、加圧された流体の源に接続されており、該流体が孔を通って該スラリースプレッダーから流れ出るようになっている、
    前記方法。
41. さらに、
    （ｄ）湿潤したセメント系ボード前駆体を成形するために、混合物を成形プレートに接触させることを有し、
    （ｅ）湿潤したセメント系ボード前駆体を切断することを有し、
    かつ、任意選択的に、
    （ｆ）湿潤したセメント系ボード前駆体を乾燥させて、セメント系ボードを成形することを有する、
    請求項４０記載の方法。
42. 工程（ｂ）の前に、高密度層が裏当て層上に堆積される、請求項４０記載の方法。
43. セメント系材料が硫酸カルシウム材料を有し、かつ、当該方法によって成形されるセメント系ボード材料が石膏ボード製品である、請求項４０記載の方法。
44. セメント系ボード内の望ましくない大きなボイドの数を減少させる方法であって、
    （ａ）水と、発泡剤と、セメント系材料とを有する混合物を形成することを有し、
    （ｂ）移動する裏当て層上に混合物を移送することを有し、かつ、
    （ｃ）裏当て層の幅に沿って混合物を広げ、かつ、該混合物中に存在する大きなボイドを排除するために、該混合物の少なくとも一部分をスラリースプレッダーと接触させることを有し、ここで、該スラリースプレッダーは流体入口と流体出口とを有し、該流体出口は複数の孔を有し、該複数の孔は、加圧された流体の源に接続されており、該流体が孔を通ってスラリースプレッダーから流れ出るようになっている、
    前記方法。
45. さらに、
    （ｄ）湿潤したセメント系ボード前駆体を成形するために、混合物を成形プレートに接触させることを有し、かつ、
    （ｅ）湿潤したセメント系ボード前駆体を切断し、乾燥させて、セメント系ボード製品を成形することを有する、
    請求項４４記載の方法。
46. セメント系材料が硫酸カルシウム材料を有し、かつ、当該方法によって成形されるセメント系ボード材料が石膏ボード製品である、請求項４４記載の方法。
    

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