JP2009503385A - ハーメチックシール構造 - Google Patents

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Abstract

互いに相対移動可能な2つの部材、特にシリンダ室内で移動可能なピストン又はピストンロッドのための2つ以上の可動シールを備えたシール構造。少なくとも2つの可動シール(A、B、C)の間に形成されるシール間隙にイオン液体(F)が封入されている。

Description

本発明は、互いに相対移動可能な2つの部材、特にシリンダ室内で移動可能なピストン又はピストンロッドのための2つ以上の可動シールを備えたシール構造に関する。
本発明はまた、係るシール構造を備えた流体圧機械にも関する。
冒頭に述べた形式のシール構造は、例えば水素圧縮機におけるピストンロッドのハーメチックシールとして使用されている。
以下の説明で言う「可動シール」とは、例えばシリンダとピストン又はピストンロッド等の相対移動可能な部材間に利用される当業者に周知のあらゆるシールを包含する。
従来から知られている可動シールは、いずれにせよ多かれ少なかれ不可避的な摩耗を受ける。その結果、シール部品は定期的に交換を余儀なくされている。シール部品の交換は比較的長時間を要し、複雑でコストのかかる整備作業を必要とする。使用済みシール部品は廃棄するほかはなく、再生できなかったのが従来の実情である。
図1は、従来の例えば水素圧縮機に必要なピストンロッドブッシングZの模式縦断面図である。このピストンロッドブッシングZはピストンロッドKを案内するためのものである。図示の状態では水素圧縮機の気体圧縮室はピストンロッドKの上方にあり、該ロッドの下方に圧縮機外部空間が位置する。この従来のシール構造は、ピストンロッドブッシングZ内に間隔を空けて連設された3つの可動シールA、B、Cを備えており、これら可動シールA、B、Cとしては公知のあらゆる形式の可動シールを任意に組合せて利用することができる。
ピストンロッドKの上方にある気体圧縮室に対するシールは第1可動シールAによって確保される。第1可動シールAが漏れを生じ、第1可動シールAと第2可動シールBの間のシール間隙に圧縮されたガス状媒体が達すると、このガス状媒体は漏れの生じたシール間隙から通路1を介して取り出され、圧縮機の吸込側に戻される。第2可動シールBも漏れを生じて第2可動シールBと第3可動シールCとの間のシール間隙にガス状媒体が流入すると、このガス状媒体は漏れの生じたシール間隙から通路2を介して取り出され、例えば排気ダクトなどの排出系へ導出可能である。例えば爆発性気体混合物が生成されるのを防止する目的で圧縮機周囲へのガス状媒体の漏出を防止する必要がある場合は、このような排気系は必ず付設しておく必要がある。
圧縮室側からの圧縮媒体が漏洩する可能性は第3可動シールCによって防止される。これら3つの可動シールのいずれも厳密な意味で持続的に完全な気密シールを与えるものではなく、従ってこのシール構造では圧縮されたガス状媒体の漏洩、換言すれば損失を完全に持続的に防止することはできない。
図1に示す従来のシール構造を例えば水素圧縮機に利用する場合、水素圧縮機の周囲には水素流出の危険性が常に存在し、従って従来では防爆仕様の高額な作動流体及びシール部品を使用せざるを得ないのが実情であった。
本発明の課題は、互いに相対移動可能な2つの部材、特にシリンダ室内で移動可能なピストン又はピストンロッドのための冒頭に述べた形式のシール構造において、上述の諸欠点を解消し、確実なハーメチックシールを提供可能なシール構造を提示することである。
この課題を解決するため、本発明によるシール構造は、少なくとも2つの可動シールの間に形成されるシール間隙にイオン液体が封入されていることを特徴とするものである。
本発明によるシール構造の好適な一実施形態において、イオン液体を封入したシール間隙を形成する少なくとも2つの可動シールは、オイルシール、ガスシール、又はオイルシールとガスシールとの組合せシールとして構成されている。
本発明によれば、2つの隣接する可動シールの間にシール間隙が形成されている限りにおいて、イオン液体の封入形態は、a)2つのみの隣接可動シール間に形成される単一のシール間隙にイオン液体を封入する形態、b)全てのシール間隙にイオン液体を封入する形態、又はc)4つ以上の可動シールが間隔を空けて連設されている場合に少なくとも1つのシール間隙をイオン液体の封入されていない空隙として残し、別の1つ以上のシール間隙にイオン液体を封入する形態、のいずれも採ることができる。
本発明で言うイオン液体とは融点が−90℃〜100℃の低融点有機塩であり、一般に室温域において液体状で存在する公知のイオン液体を包含する。イオン液体は、通常の水や有機溶媒などの分子性液体とは異なり、構成成分が配列したイオンだけからなる液体であるので新規且つ稀有な性質を示す。イオン液体はアニオンとカチオンの構造や組合せを変更することにより、目的に応じて多様な技術的課題に比較的良好に適合可能である。この理由から、イオン液体はしばしば「デザイナーソルベント」とも称される。これに対して、通常の液体では分子構造の変更が可能なだけである。
更にイオン液体は、通常の分子性液体とは異なって、蒸気圧が測定不可能なほど極めて低いという利点を有する。これは、イオン液体は熱分解温度に達しない限り高真空中でも不揮発性で蒸発しないことを意味する。このことから、熱分解温度未満の使用条件下ではイオン液体は不燃性と環境に優しい(親環境性)という性質を持つことが明らかであり、この場合、イオン液体は究極的に大気中に達し得ないことがその理由である。
既に述べたように、イオン液体の融点は定義によれば100℃以下である。いわゆる液体範囲、即ち融点と熱分解点との間の範囲は一般に400℃以上に亘っている。
加えて、イオン液体は高い熱安定性又は耐熱性を有する。イオン液体の熱分解点は400℃よりも高温である。イオン液体の密度及び別の液体との混合挙動は、イオンの種類の選択によって調節もしくは設定することができる。更にイオン液体は導電性であり、従って危険な電位となるような帯電を防止することができる利点を備えている。
圧縮機に利用する場合、イオン液体は、圧縮されたガス状媒体からの完全分離が比較的僅かな装置コストで可能であるという利点を有する。
先に述べたように、イオン液体は蒸気圧が極めて低いのでイオン液体の飛沫が圧縮されたガス状媒体に随伴される可能性はもはや存在しなくなる。
更に、シール間隙に封入するシール媒体としてイオン液体を使用する場合、圧縮されるべきガス状媒体もしくは圧縮されたガス状媒体がイオン液体に対して不溶性であることが重要であるが、これもアニオンとカチオンの選択により容易に適応可能である。
本発明はまた、以上に述べた本発明のシール構造を備えた流体圧機械も提供する。
本発明によるシール構造の上述及びその他の特徴と利点を、図2に概略構成を示した具体的実施形態に基づいて詳述すれば以下の通りである。
図2は、図1と同様に水素圧縮機に必要なピストンロッドブッシングZを例に挙げた場合の本発明の一実施形態に係るシール構造の模式縦断面図である。この場合のシール構造もピストンロッドブッシングZ内に間隔を空けて連設された3つの可動シールA、B、Cを備えており、これら可動シールA、B、Cとしては公知のあらゆる形式の可動シールを任意に組合せて利用することができる。
本発明の基本理念に従って、第2可動シールBと第3可動シールCとの間のシール間隙にイオン液体Fが(付加的)シール媒体として充填封入されている。
このシール間隙に封入されたイオン液体Fは絶対的で確実且つ長寿命の気密バリヤを提供し、この気密バリヤは殆ど又は全く摩耗を受けることがない。可動シールBやCがガス状媒体を通過させる程度の漏れ生じてしまっても、その程度のシール性の低下はイオン液体Fにとっては依然として充分に密である。
従って、シール外部へガス状媒体が流出する虞やそれに伴う諸問題は、本発明に係るシール構造によって本質的に低減される。
本実施形態によるシール構造では、第1可動シールAが漏れを生じて第1可動シールAと第2可動シールBの間のシール間隙に圧縮されたガス状媒体が達すると、このガス状媒体は図1に示した従来例と同様に漏れの生じたシール間隙から通路1を介して圧縮機の吸込側に戻される。一方、第2可動シールBと第3可動シールCとの間のシール間隙にはイオン液体Fが封入されており、従ってこのシール間隙から外部へ至る図1に示したような通路2及び排気系は設ける必要がない。
本実施形態では3つの可動シールが間にシール間隙を空けて連設されているが、既に述べたように、2つの可動シールBとCとの間のシール間隙にイオン液体Fが封入されていれば充分である。シリンダ室内で移動可能なピストンのシールに用いられる従来のシール構造に比べて、本発明によれば例えばオイルシールで構成される可動シールは本質的に整備不要かつ長寿命である。
シール媒体としてイオン液体を使用することにより、イオン液体は視認可能な色相を持たせることができるので、シール漏れを目視又は光学的手段によって簡単に検知することが可能となる利点も得られる。
このように、本発明によれば、互いに相対移動可能な2つの部材、特にシリンダ室内で移動可能なピストン又はピストンロッドのためのシール構造として、従来のシール構造よりも本質的に整備不要かつ長寿命な2つ以上の可動シールを有するシール構造を提供することができる。
また特別な利点として、使用中のシール構造が気密性能を失った場合でもイオン液体の漏出は差し当たっては発生することがなく、イオン液体の漏出が始まってもそれ自体は直ちに危険な自体となることはない。これは、本発明に係るシール構造ではイオン液体が完全に漏出した時に初めてシール漏れとなるからである。
尚、本発明に係るシール構造は一例として示した図1及び図2のようなピストンロッドブッシングにおける直線往復動部材間のシールに適用できるだけでなく、互いに相対移動可能な二部材間のシール構造に広汎に適用可能であることは述べるまでもない。
従来技術によるピストンロッドブッシングのシール構造を示す模式縦断面図である。 本発明の一実施形態に係るピストンロッドブッシングのシール構造を示す模式縦断面図である。

Claims (3)

  1. 互いに相対移動可能な2つの部材、特にシリンダ室内で移動可能なピストン又はピストンロッドのための2つ以上の可動シールを備えたシール構造において、少なくとも2つの可動シール(A、B、C)の間に形成されるシール間隙にイオン液体(F)が封入されていることを特徴とするシール構造。
  2. イオン液体(F)を封入したシール間隙を形成する少なくとも2つの可動シール(A、B、C)が、オイルシール、ガスシール、又はオイルシールとガスシールとの組合せシールからなることを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
  3. 請求項1又は2に記載のシール構造を備えた流体圧機械、特に圧縮機。
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