JP2009502938A - 鬱血性心不全が原因である組織の劣化、損傷、または破損を処置または予防する方法 - Google Patents

鬱血性心不全が原因である組織の劣化、損傷、または破損を処置または予防する方法 Download PDF

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Abstract

被験体において、鬱血性心不全疾患が原因である組織の老化、障害、または損傷を処置、予防、阻害、または軽減するため、あるいは、上記疾患によって悪影響を受けた組織を回復させるための処置方法には、被験体に、アミノ酸配列LKKTETもしくはLKKTNTが含まれているペプチド試薬、その保存的変異体、あるいは、組織の中でLKKTETもしくはLKKTNTペプチドの生産を刺激するペプチド試薬、またはその保存的変異体が含まれている組成物の有効量を被験体に投与する工程が含まれる。

Description

発明の背景
関連出願に対する相互参照
本出願は、2005年7月26日に提出された米国仮特許出願番号60/702,269の利益を主張する。
発明の分野
本発明は、鬱血性心不全が原因である組織の劣化、損傷、または破損の処置または予防の分野に関する。
背景技術の説明
鬱血性心不全(CHF)疾患は、心臓が血液の循環を適切に維持することができない、心臓のポンプ機能の不均等において、現れる。CHFの最も重篤な兆候である肺水腫は、この不均等によって、肺の毛細血管から肺の間質と肺胞への漏出に続く肺液の増加が引き起こされると発症する。
CHFは、前方または後方心室不全(forward or backward ventricular failure)として分類することができる。後方心室不全は、全身静脈圧の上昇に続くが、左心室不全は、大動脈および全身の循環に向かう流れの減少に続く。さらに、心不全は、収縮機能損傷および拡張機能損傷にさらに分類することができる。収縮機能損傷は、収縮性の低下を伴う左心室の拡張を特徴とし、一方、拡張機能損傷は、弛緩する能力、および血液を受け取りそして排出する能力の低下を伴う、正常であるかまたは損なわれていない左心室において起こる。
CHFのNew York Heart Associationによる機能分類は、最も有用なものの1つである。クラスIは、症状により正常な身体的活動が制限されない患者を記載する。クラスIIは、通常の身体的活動によって疲労、呼吸困難、または他の症状が生じる場合を記載する。クラスIIIは、正常な身体的活動が顕著に制限されることを特徴とする。クラスIVは、休止状態にあるか、または何らかの身体的活動を有している症状によって定義される。
CHFは、スターリング力(Starling force)の不均等、または次の収縮における収縮期の機械的作業の延長に対する拡張周期の繊維伸張の割合の程度の不均等として、最もうまく集約される。この不均等は、間質と肺胞を乾燥した状態に保つ機構と、間質への体液の移行を担っている反対向きの力との間での機能不全を特徴とし得る。
肺の毛細管圧(約7〜12mmHg)よりも高く血漿の膠質浸透圧(一般的には、約25mmHg)を維持すること、結合組織および細胞障壁の血漿タンパク質に対する比較的不浸透性の維持、および広範囲におよぶリンパシステムの維持が、間質および肺胞を乾燥した状態に保つ機構である。
間質への体液の移行を担っている反対向きの力としては、肺の毛細管圧と血漿の膠質浸透圧が挙げられる。正常な状況下では、体液が速いリンパ液の流れとともに肺の間質へと移行しても、間質の容積は大きくならない。しかし、リンパ排液の能力が過剰である場合には、気管支および肺血管系の周辺の間質空間に液体が蓄積し、したがって、CHFが生
じる。多量の体液と高い圧力によって、肺胞周辺の間質空間へのトラッキング、および肺胞膜の結合部分の破壊が起こり、体液が肺胞へと流れ、肺水腫の原因となる。
米国では、300万人を上回る人がCHFを有しており、毎年、40万人を超える新しい患者が存在している。CHFの患者数は一般的な集団の1〜2%である。
CHF患者のうちのおよそ30〜40%が毎年入院する。CHFは、65歳を超える入院患者の中では、第1位となる診断別分類である。診断後の5年生存率は1971年には、男性については60%、そして女性については45%と報告された。1991年には、データは、基本的に変化のないままであるCHFの5年生存率を示し、男性については3.2年、そして女性については5.4年の平均生存期間を示した。これは、他の疾患が原因である死亡率の低下に伴い、米国の高齢者の集団にとっては第2位となり得る。
CHFによる死亡の最も一般的な原因は進行性心不全であるが、突然死が全ての死亡の45%を占める。1992年から1993年の間のCHFで入院している4606人の患者についてのデータを監査した後、病院内での死亡率は19%であり、心臓以外の原因による死が30%あった。
鬱血性心不全が原因である組織の劣化、損傷、または破損を処置、予防、阻害、または軽減するための処置方法が、当該分野で依然として必要とされている。
発明の要旨
1つの態様にしたがうと、被験体において、鬱血性心不全疾患が原因である組織の劣化(deterioration)、損傷(injury)または破損(damage)を処置、予防、阻害、または軽減するため、あるいは、上記疾患によって悪影響を受けた組織を回復させるための処置方法には、そのような処置が必要な被験体に、アミノ酸配列LKKTETもしくはLKKTNT、それらの保存的変異体、あるいは、LKKTETもしくはLKKTNTペプチドの生産を刺激する刺激因子、またはその保存的変異体が含まれるペプチド試薬が含まれている組成物の有効量を上記組織に投与する工程が含まれ、それによって、鬱血性心不全が原因である上記組織の劣化、損傷、または破損が阻害されるか、あるいは、上記疾患によって悪影響を受けた組織が回復する。
発明の詳細な説明
鬱血性心不全はまた心不全とも呼ばれ、これは、心臓が効率よく血液をくみ上げる能力が低下しており、もはや心臓が置かれている正常な需要に応じて維持することができない損傷である。心筋を破損させるかまたは弱めてしまい、そして心室を伸ばす(拡張させる)症状の結果として、機能しなくなったポンプは、循環システムを通じて血液を効率よく移動させることができない。血液は逆流し始め、それによって血圧が上昇し、血管から体の組織へと体液が流れる。この症状は、心臓の右側に影響を与える場合も、左側に影響を与える場合も、または両側に影響を与える場合もある。通常、心不全により、血液の背圧によって肺の中に体液が集まってしまう(肺水腫)という機能不全(左心不全/左心室不全)が始まる。肺の中のこの余分な液体により、肺は吸入の際に気道を広げることがさらに難しくなる。呼吸はより困難になり、息切れ(呼吸困難)が起こる。心臓の右側が機能しなくなり始める(右心不全)と、心臓に入ろうとする血液の背圧が生じて、肢、踵、および下肢に体液が集まる。心不全が悪化すると、上肢が腫れ、そして最終的には腹部に体液が集まる(腹水)。体重の増加には体液の貯留が付随する。はれぼったい隆起(末梢浮
腫)は右心不全の兆候であり、特に、浮腫が圧痕水腫である場合にはそうである。肺、脚、肢、踵、肝臓、および腹部でのこの体液の貯留は、心不全の鬱血性の側面である。
CHFの発症は進行性であり、一般的には、慢性の長期にわたる症状であるが、これは、心臓発作または心筋の炎症性疾患(例えば、拡張型心筋症または拘束型心筋症など)の後に突然発症する場合もある。
拡張型(鬱血性)心筋症は最も一般的な形態であり、心臓腔の拡大および伸張(心臓の拡張)が原因で起こり、これによって心臓が弱くなり、ポンプ機能が異常となる。異常な心臓の律動(不整脈)および心臓の電気伝導の損傷もまた起こる場合がある。この症状の原因は多くの場合には判っていないが、ウイルス、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ)および過剰なアルコール摂取によって引き起こされる可能性がある。加えて、伸張した不整脈の心臓によっては、血液はよりゆっくりと、そして乱れて流され、血塊の形成の原因となる。
拘束型心筋症は、最も少ない心筋症のタイプであり、破損を受けた心筋が繊維性の瘢痕および脂肪組織に置き換わった場合に発症する。心臓の右側(心房が含まれる)が最初に肥厚し、そして後に拡張する、すなわち、薄くなっていく。これは、電気的活動の混乱を導く可能性があり、いくつかの場合には、心臓のポンプ作用の混乱を導く可能性がある。ほとんどの部分については、心室は、収縮の間に血液で満たされるには困難なほどに堅くなる。
CHFは、年齢が進むに伴ってより一般的となる。危険要因としては、肥満、糖尿病、タバコの使用、アルコール依存症、コカインの使用が挙げられる。
病因
鬱血性心不全の最も一般的な原因は、冠動脈疾患(アテローム性動脈硬化症)である。これは、心筋の一部の領域を酸素が多く含まれている血液および栄養素が慢性的に枯渇した状態にすることによって、心臓を弱くする。結果として、心臓のこれらの領域は、あまり活発にポンプ機能を行うことができない。多くの場合には、心筋への血液の流れは、筋肉の生存を維持するためにしか十分ではなく、満足に機能するためには十分ではない。他の場合には、心筋の1つの領域への血流が完全にブロックされてしまうと、心臓発作が起こる。心筋が死亡した領域はポンプ機能を行う心臓の全体的な能力を弱める。
CHFの別の重要な原因は高血圧であり、これにより、左心室不全が生じる。血圧が高い場合には、心臓は、体の隅々にまで血液を循環させなければならないので、それが行うよりもさらに激しく機能しなければならない。時間と共に、行わなければならない余分な作業を補うために心筋は肥厚し得るが、これには全く利益がないか、ほとんど利益はない。いくつかの場合には、心臓は大きくなるであろう。最終的に、心筋は、血液を効率よくポンプで送るためには、堅くなりすぎるか、または弱くなりすぎるかのいずれかであろう。
心不全の他の構造的または機能的原因としては、心臓弁疾患(不全または狭窄)、鬱血性心疾患、筋ジストロフィー(dystrophinopathy)、特発性拡張型心筋症(原因不明の心筋の疾患/破損/劣化)、長期にわたる深刻な不整脈(prolonged serious arrhythmias)、および肺疾患(例えば、肺動脈高血圧)が挙げられる。
CHFの分類
収縮期心不全:左心室のポンプ作用が低下するかまたは弱くなり、それにより、激しく
収縮するその能力の喪失が生じる。左心室機能の一般的な臨床的測定は駆出率である。収縮期心不全の患者は、50%未満の低い駆出率を有する(通常は、約40%またはそれ未満)。正常な駆出率は50%より大きい。
拡張期心不全:左心室は、通常通り収縮しているように見えるが、完全に弛緩または満たされるその能力が失われている(すなわち、それが弛緩しており血液で満たされている場合に、堅い、またはあまり弾性がない)。これは心臓への血液の充填を遅らせて、肺への逆流を生じる。拡張期心不全は、75歳を超える人にはより一般的である。拡張期心不全においては、駆出率は正常である。
いずれの特定の理論にも束縛はされないが、アクチン隔離ペプチド(例えば、サイモシンβ4(Tβ4またはTB4))、およびアミノ酸配列LKKTETもしくはLKKTNTが含まれているアクチン隔離ペプチドまたはペプチド断片を含む他の因子、あるいはその保存的変異体は、鬱血性心不全疾患が原因である組織の劣化、損傷、または破損の反転あるいは予防を促進する。
サイモシンβ4は、インビトロで、内皮細胞の移動と分化の間にアップレギュレートされるタンパク質として最初に同定された。サイモシンβ4は胸腺から初めて単離され、これは、様々な組織の中で同定された43アミノ酸で、4.9kDaの至るところに存在しているポリペプチドである。いくつかの役割がこのタンパク質に帰するとされており、これには、内皮細胞の分化および移動、T細胞の分化、アクチンの隔離、血管新生、および創傷の治癒における役割が含まれる。
1つの実施形態にしたがうと、本発明は、被験体の、鬱血性心不全疾患が原因である組織の劣化、損傷、または破損を処置、予防、阻害、または軽減するため、あるいは、上記疾患によって悪影響を受けた組織を回復させるための処置方法である。この方法には、そのような処置が必要な被験体に、ペプチド試薬が含まれている組成物の有効量を投与する工程が含まれる。ペプチド試薬は、アミノ酸配列LKKTETもしくはLKKTNT、または鬱血性心不全疾患を阻害する活性を有しているそれらの保存的変異体が含まれているポリペプチド(好ましくは、サイモシンβ4および/またはTβ4イソ型、アナログ、もしくは誘導体(これには、KLKKTET、LKKTETQ、酸化型Tβ4、Tβ4のN末端変異体、Tβ4のC末端変異体などが含まれる))であり得る。
好ましい実施形態においては、組織の劣化、損傷、または破損には、心臓の大きさまたは重さの増大、心臓組織の大きさまたは重さの増大、心筋の肥厚、または肺水腫の少なくとも1つが含まれる。
本発明にしたがって使用することができる組成物としては、サイモシンβ4(Tβ4)、および/またはTβ4イソ型、アナログ、または誘導体(酸化型Tβ4、Tβ4のN末端変異体、Tβ4のC末端変異体が含まれる)、ならびに、アミノ酸配列LKKTETもしくはLKKTNTが含まれているまたは原則としてそれらから構成されているポリペプチドまたはペプチド断片、あるいは、鬱血性心不全疾患を阻害する活性を有しているその保存的変異体のようなペプチド試薬が含まれる。国際出願番号PCT/US99/17282(引用により本明細書中に組み入れられる)には、本発明にしたがって有用であり得るTβ4のイソ型、さらには、本発明とともに利用することができるアミノ酸配列LKKTETおよびそれらの保存的変異体が開示されている。国際出願番号PCT/GB99/00833(WO99/49883)(引用により本明細書中に組み入れられる)には、本発明にしたがって利用することができる酸化型のサイモシンβ4が開示されている。本発明は、主にTβ4およびTβ4イソ型に関して、本明細書中以後に記載されるが、以下の記載は、アミノ酸配列LKKTETもしくはLKKTNT、LKKTETもしくはLK
KTNTが含まれているかまたは基本的にそれらから構成されているペプチドおよび断片、鬱血性心不全疾患を阻害する活性を有しているその保存的変異体、ならびに/あるいはTβ4イソ型、アナログ、または誘導体(酸化型Tβ4、Tβ4のN末端変異体、およびTβ4のC末端変異体が含まれる)などにも同様に適用できるように意図されることが理解される。
1つの実施形態においては、本発明により、心臓組織を本明細書中に記載されるペプチド試薬が含まれている組成物の有効量と接触させることによる、被験体の、鬱血性心不全疾患が原因である組織の劣化、損傷、または破損を処置、予防、阻害、または軽減するため、あるいは、上記疾患によって悪影響を受けた組織を回復させるための処置方法が提供される。この接触は、直接である場合も、また、全身的である場合もある。直接の投与の例としては、例えば、本明細書中に記載されるペプチド試薬が含まれている、溶液剤、ローション剤、軟膏(salve)、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、スプレー、懸濁剤、分散剤、ヒドロゲル、軟膏(ointment)、泡剤、または油剤との、直接の塗布あるいは吸入による組織の接触が挙げられる。全身的な投与としては、例えば、注射用水のような薬学的に許容される担体の中に本明細書中に記載されるペプチド試薬が含まれている組成物の、静脈内、腹腔内、筋肉内注射が挙げられる。
本発明で使用されるペプチド試薬は、本明細書中に記載されるように、任意の有効量で投与することができる。例えば、本明細書中に記載されるペプチド試薬は、約0.0001〜1,000,000マイクログラムの範囲の投与量で、より好ましくは、約0.1〜5,000マイクログラムの範囲の量で、最も好ましくは、約1〜30マイクログラムの範囲で投与することができる。
本発明にしたがう組成物は、1日に1回、1日おきに、1週間おきに、1ヶ月おきになどで、投与日1日につき1回の投与または複数回の投与(例えば、投与日1日につき2回、3回、4回、またはそれ以上の投与回数)で投与することができる。
多くのTβ4イソ型が同定されており、これらは、Tβ4についての既知のアミノ酸配列に対して、約70%、または約75%、または約80%、またはそれ以上の相同性を有している。このようなイソ型としては、例えば、Tβ4ala、Tβ9、Tβ10、Tβ11、Tβ12、Tβ13、Tβ14、および、Tβ15が挙げられる。Tβ4と同様に、Tβ10およびTβ15イソ型は、アクチンを隔離することが示されている。Tβ4、Tβ10、およびTβ15、ならびにこれらの他のイソ型は、アクチンの隔離または結合を媒介することに関係していると見られているアミノ酸配列LKKTETまたはLKKTNTを共有している。いずれの特定の理論にも束縛されることは望ましくないが、本明細書中に記載されるペプチド試薬の活性は、そのような試薬の抗炎症活性および/またはアクチン調節活性に、少なくとも一部原因があり得る。Tβ4は、アクチンの重合を調節することもできる(例えば、β−サイモシンは、遊離のG−アクチンを隔離することによってF−アクチンを脱重合させると見られている)。Tβ4のアクチンの重合を調節する能力は、LKKTETまたはLKKTNT配列を介してアクチンに結合するかまたはアクチンを隔離するその能力が原因である可能性がある。したがって、Tβ4と同様に、抗炎症性であり、そして/また、アクチンに結合するかもしくはアクチンを隔離する、またはアクチンの重合を調節する他のタンパク質(アミノ酸配列LKKTETまたはLKKTNTを有しているTβ4イソ型が含まれる)は、本明細書中で示されるように、単独で、またはTβ4と組み合わせて有効であるようである。
本明細書中に記載されるペプチド試薬、例えば、Tβ4およびTβ4イソ型は、炎症性ケモカイン、サイトカイン、およびカスパーゼ活性を低下させる。
したがって、既知のTβ4イソ型(例えば、Tβ4ala、Tβ9、Tβ10、Tβ11、Tβ12、Tβ13、Tβ14、および、Tβ15)、ならびにまだ同定されていないTβ4イソ型も、本発明の方法に有用であろうということが具体的に意図される。したがって、そのようなTβ4イソ型は、被験体において行われる方法が含まれる、本発明の方法の方法において有用である。したがって、本発明によってはさらに、Tβ4、ならびにTβ4イソ型(Tβ4ala、Tβ9、Tβ10、Tβ11、Tβ12、Tβ13、Tβ14、および、Tβ15)と、薬学的に許容される担体が含まれている薬学的組成物が提供される。
加えて、例えば、抗炎症活性および/またはアクチンを隔離するかもしくはアクチンに結合する能力を有しているか、あるいは、適切な隔離、結合、移動、もしくは重合アッセイにおいて明らかであるか、またはアクチンの結合を媒介するアミノ酸配列(例えば、LKKTETもしくはLKKTNT)の存在によって同定される、アクチンを移動させることができるかまたはアクチンの重合を調節することができる他の試薬またはタンパク質も、本発明の方法において同様に使用することができる。このようなタンパク質としては、例えば、ゲルゾリン、ビタミンD結合タンパク質(DBP)、プロフィリン、コフィリン、デパクチン、DnaseI、ビリン、フラグミン、セヴェリン(severin)、キャッピングタンパク質、β−アクチン、およびアキュメンチンを挙げることができる。このような方法には、被験体において行われる方法が含まれるので、本発明によってさらに、本明細書中に示されるような、ゲルゾリン、ビタミンD結合タンパク質(DBP)、プロフィリン、コフィリン、デパクチン、DnaseI、ビリン、フラグミン、セヴェリン、キャッピングタンパク質、β−アクチン、およびアキュメンチンが含まれている薬学的組成物が提供される。したがって、本発明には、アミノ酸配列LKKTETもしくはLKKTNT、およびそれらの保存的置換体が含まれているポリペプチドの使用が含まれる。
本明細書中で使用される場合は、用語「保存的変異体」またはその文法上のバリエーションは、別の生物学的に類似している残基による1つのアミノ酸残基の置き換えを示す。保存的変異体の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニンのような疎水性残基の、別のものでの置き換え、極性残基の別のものでの置き換え(例えば、アルギニンのリジンでの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸での置換、またはグルタミンのアスパラギンでの置換など)が挙げられる。
Tβ4は、多数の組織および細胞のタイプに局在化させられている。したがって、LKKTETもしくはLKKTNTペプチドの生産を刺激する因子(例えば、Tβ4または本明細書中に記載されている別のペプチド試薬)を、組織および/または細胞によってペプチド試薬の生産を行わせるために組成物に添加することができ、また、そのような因子には、組織および/または細胞によってペプチド試薬の生産を行わせるための組成物を含むことができる。そのような刺激因子としては、成長因子のファミリーのメンバー(例えば、インシュリン様成長因子(IGF−1)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、サイモシンα1(Tα1)、および血管内皮成長因子(VEGF))を挙げることができる。より好ましくは、刺激因子は、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)またはTGF−βスーパーファミリーの他のメンバーである。
1つの実施形態にしたがうと、被験体は、本明細書中で定義されるようなペプチド試薬の被験体の中での生産を刺激する刺激因子で処置される。
加えて、鬱血性心不全疾患が原因である組織の劣化、損傷、または破損の軽減を助ける、あるいは、上記疾患によって悪影響を受けた組織を回復させる他の試薬が、本明細書中に記載されるペプチド試薬と共に、組成物に添加される場合もある。例えば、限定ではな
いが、本明細書中に記載されるペプチド試薬は、単独で、または組み合わせにおいて、有効量の以下の薬剤の任意の1つ以上と組み合わせて添加することができる:抗生物質、VEGF、KGF、FGF、PDGF、TGFβ、IGF−1、IGF−2、IL−1、プロサイモシンαおよび/またはサイモシンα1。
本発明にはまた、薬学的に許容される担体の中に、本明細書中に記載されるペプチド試薬の治療有効量が含まれている薬学的組成物も含まれる。このような担体としては、本明細書中に列挙されるものが挙げられる。
処置を提供する実際の投与量または試薬、処方、または組成は多くの要因に応じて様々であり得、これには、被験体の大きさおよび健康状態が含まれる。しかし、当業者は、PCT/US99/17282(前出)およびその中で引用されている参考文献の中に開示されている臨床的な投与量を決定するための方法および技術を記載している教示を、使用する適切な投与量を決定するために使用することができる。
適切な処方物には本明細書中に記載されるペプチド試薬が、約0.001〜50重量%の範囲、より好ましくは、約0.01〜0.1重量%の範囲、最も好ましくは、約0.05重量%の範囲の濃度で含まれ得る。
本明細書中に記載される治療用アプローチには、本明細書中に記載されるペプチド試薬の、被験体への様々な投与経路または送達が含まれる。これには、任意の従来の投与技術(例えば、直接の投与、局所注射、吸入、または全身投与であるが、これらに限定はされない)が含まれる。本明細書中に記載されるペプチド試薬を使用するかまたはそれが含まれている方法および組成物は、薬学的に許容される非毒性の賦形剤または担体との混合によって、薬学的組成物になるように処方され得る。
本発明には、本明細書中に記載されるペプチド試薬と相互作用する、ペプチド試薬を強化する、またはペプチド試薬を阻害する抗生物質の使用が含まれる。様々なエピトープに関する特異性を有しているプールされたモノクローナル抗体から原則として構成される抗体、ならびに異なるモノクローナル抗体調製物が提供される。モノクローナル抗体は、PCT/US99/17282(前出)に開示されているような当業者に周知の方法により、タンパク質の断片が含まれている抗原から作製される。用語「抗体」は、本発明において使用される場合は、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体が含まれるように意味される。
なお別の実施形態においては、本発明により、遺伝子発現を調節する刺激因子の有効量を投与することにより、被験体を処置する方法が提供される。用語「調節する」は、本明細書中に記載されるペプチド試薬が過剰発現された場合の発現の阻害または抑制、ならびに、本明細書中に記載されるペプチド試薬が過少発現(under expressed)された場合の発現の誘導を意味する。用語「有効量」は、本明細書中に記載されるペプチド試薬の遺伝子発現の調節、それによる、鬱血性心不全疾患が原因である組織の劣化、損傷、または破損の症状の軽減、あるいは、上記疾患によって悪影響を受けた組織の回復に有効である刺激因子の量を意味する。本明細書中に記載されるペプチド試薬の遺伝子発現を調節する刺激因子は、例えば、ポリヌクレオチドであり得る。ポリヌクレオチドは、アンチセンスである場合も、3本鎖の因子(triplex agent)である場合も、またリボザイムである場合もある。例えば、本明細書中に記載されるペプチド試薬の構造遺伝子の領域に対するアンチセンス、またはペプチド試薬のプロモーター領域に対するアンチセンスを利用することができる。本明細書中に記載されるペプチド試薬の遺伝子発現を調節する刺激因子はまた、低分子干渉RNA(siRNA)である場合もある。
別の実施形態においては、本発明により、本明細書中に記載されるペプチド試薬の活性を調節する化合物を利用するための方法が提供される。本明細書中に記載されるペプチド試薬の活性に影響を与える化合物(例えば、アンタゴニストおよびアゴニスト)としては、ペプチド、ペプチド模倣物、ポリペプチド、化合物、ミネラル(例えば、亜鉛)、および生物学的因子が挙げられる。
本明細書中に定義される刺激因子をスクリーニングするための方法には、鬱血性心不全疾患を呈している心臓組織を候補の化合物と接触させる工程;および、上記組織の中でのLKKTETもしくはLKKTNTペプチドの活性を測定する工程が含まれる。ここでは、上記候補の化合物が含まれていない対応する組織の中での上記のペプチドの活性のレベルと比較した、上記組織の中での上記ペプチドの活性の増大が、上記化合物が上記刺激因子を誘導することができることを示す。
実施例1
マウスの心筋梗塞(MI)心不全モデルにおけるサイモシンβ4の実験
目的:
本実験の目的は、マウスのMIによって誘導した心不全モデルにおけるサイモシンβ4の効果を評価することであった。
モデル
本実験で使用した手順は、Nature(432:466−472,2004)に報告された手順と正確に同じとした。簡単に説明すると、C57ブラックマウス(14週齢)を本実験で使用した。マウスには、サイモシンβ4(Bachem,Lot#FTHYB40501B)(150μg/マウス)を心筋梗塞の直後、および、その後は、4週間にわたり、3日おきにi.p.注射によって投与した。この実験のパラメーターには、心臓の形態学と、心エコー検査(エコー)、Millarカテーテルを使用した侵襲的な心臓機能の測定、生存率、および組織化学的分析による機能を含めた。
心臓発作(心筋梗塞)は、直ちに、心停止(心拍がない)または左心室の永久的な破損の原因となり得る。破損が悪すぎると、心臓の複数の領域が適切に機能することができない場合があり、これは心不全に至る場合がある。Nature 2004(上記)には、TB4は、マウスのモデルにおいて心臓発作の直後に投与されると、機能的短縮および駆出率を改善することができることが示されている。この場合、薬剤は的確に投与され、機能の改善が明らかになった。機能の改善は患者の生存に重要であるが、TB4が動物モデルにおいて誘導した心臓発作によって生じた有意な破損後の結果を軽減または改善できることを示唆しているデータは存在していない。結果として、TB4が生存している動物において起こるであろう心不全を処置することができることは明らかではなかった。
本実験は、TB4が、心不全/鬱血性心不全(CHF)を有している哺乳動物を処置することにおいて有効であることを示唆している。この場合、TB4もまた、的確に投与された。しかし、実際には、薬物は、急性心筋梗塞(AMI)の直後および/またはその後長期的に、あるいは、CHFの症状の進行および悪化を停止させるために進行性心不全の患者において長期的に投与され得る。
血流力学的改善:
心室内圧の低下:
TB4での処置は、心筋の破損/損傷後に左心室収縮期圧(LVSP)を改善する(すなわち、低下させる)傾向を示した。高い左心室収縮期圧および/または左心室収縮期圧の上昇には、その根底に、特定のタイプの鬱血性心不全の原因がある。
TB4での処置によっては、左心室拡張末期圧(LVEDP)が有意に低下した。高い左心室拡張末期圧および/または左心室拡張末期圧の上昇は、特定のタイプの鬱血性心不全が原因である。
心室容積の減少
TB4での処置によっては、CHF患者において増大している、左心室収縮末期容積が有意に低下した。収縮末期容積は、収縮機能に関係している心臓の排出の適性の測定であるので、収縮期心不全のCHF患者に関係している。
TB4での処置によっては、左心室拡張末期容積が有意に減少した。罹患している心臓においては、心室の容積および心臓拡張の容積が高レベルにまで増大すると、心不全の場合にそうであるように、心拍出量が下がる。左心室拡張末期容積の増大は、拡張期心不全のCHF患者に付随する。
TB4での処置によっては、心室収縮力の代替的測定値である経時的な左心室圧の上昇の変化率(速度)(dP/dt)は有意に改善された。排出に利用できる一定時間だけが存在するので、心室内圧上昇速度の低下(すなわち、より長い収縮時間)によっては、1回の動作で拍出される血液の減少が生じる。これは、収縮期心不全のCHF患者において明らかである。
TB4での処置は、左心室の弛緩における変化率(速度)に影響を与える(改善する)傾向を示した。dP/dtがよりネガティブであればあるほど、心臓はより速く弛緩することができる。拡張期心不全のCHF患者は、弛緩し、血液で満たされる時に、あまり弾力のない心臓を有している。これにより、心室への血液の充填が遅れ、肺への逆流が生じる。
臓器の重量
TB4での処置によっては、心筋の破損/損傷後の肺水腫が有意に軽減される。肺水腫は、左心不全の結果としてCHF患者において起こる重篤な結果である。
TB4での処置によっては、心臓のポンプ作用にネガティブな影響を与える左心室の筋肉の肥厚が軽減された。
この実験では、TB4で処置した動物のグループ、媒体で処置した動物のグループ、および未処置の動物(偽治療)のグループにおいて臓器の重量(心臓および肺)を評価した。これらのデータは、TB4が、ストレス/損傷が原因である心筋の肥厚および肺水腫(左心不全が原因である肺での体液の蓄積)の両方を軽減したことを示しており、TB4が鬱血性心不全(CHF)の患者の処置に有効であり得ることを強く示している。CHF(心不全とも呼ばれる)は、大抵は慢性的な長期間にわたる症状であるので、TB4による長期間におよぶ処置によって症状の悪化の進行を遅らせるかまたは停止させることができる。
実施例2
筋ジストロフィー(dystrophic cardiomyopathy)の発症の間のサイモシンβ4の使用を実験した。本発明者らは、自然発生したジストロフィン欠損mdxマウスモデルを使用し、非侵襲的な心エコー検査を用いて心機能を縦方向で追跡した。サイモシンβ4は、膜安定性および抗線維症のその特性を通じて、心筋症の進行を遅らせることに有効な効果を有し得る。筋ジストロフィーにおいては、ジストロフィン(dystophin)と、細胞外マトリックスに対するその結合が欠損していることが原因
で剪断力はほとんど寛容化されない(poorly tolerated)。これらの力は、細胞死および線維症を導く筋細胞膜の破裂の原因となる。サイモシンβ4は、膜を安定化させる特性を有していることが示されており、これはおそらく、アクチンの重合に対する作用と関係している。本発明者らはまた、サイモシンβ4の投与によって利点を得るであろう骨格筋機能の機能的パラメーターも追跡した。予備的なデータを表1に示す。サイモシンβ4はまた、抗血栓症特性をも有している。剪断力およびカルシウムの流入が原因で破損を受けた心筋は、筋肉を再形成させるサイモシンβ4の調節による利点を得ることができる。線維症が軽度であれば、より長い時間、心臓機能を維持できる。
試験パラメーターと実験の設計:
マウスの4つのグループをサイモシンβ4で処置した。グループ1は、プラセボを投与した(処置しなかった)正常なマウス(BL10)である。グループ2は、サイモシンβ4で処置した正常なマウスである。グループ3は、プラセボで処置したジストロフィン欠損(mdx)マウスである。グループ4は、サイモシンβ4で処置したmdxマウスである。マウスを、1週間に2回腹腔内に投与した300マイクロリットルの緩衝液中の150マイクログラムのサイモシンβ4で処置した。プラセボマウスには、緩衝液だけを300マイクロリットル投与した。このマウスを、1週間に2回、12メートル/分の速度で30分間、トレッドミル(treadmill)で運動させた。機能、行動、および心エコー検査のデータを、ベースラインと、処置の2ヵ月後、4ヵ月後、および6ヵ月後に得た。
機能のデータは、骨格筋機能の非侵襲的測定である。前脚および後脚の筋肉の強度を、握力強度計(grip strength meter)を使用して評価した。動物を、測定用の台(meter platform)の上に載せ、その後、彼らが握力を失うまでゆっくりと引き上げた。掴まりを離させるために必要であった力の量を記録した。複数回の測定を、それぞれの時点で個々のマウスについて行った。同じプロトコールを、後ろ脚の筋肉の強度についても続いて行った。別の機能の測定は、Rotarod試験である。ここでは、マウスを回転する棒の上に載せ、速度を上げつつ棒を回転させながら(1分間に10RPM、その後、次の3分間で0.2RPMの上昇)、彼らに平衡状態と位置を維持させた。マウスが落下するまでの時間を測定した。この試験もまた複数回繰り返した。
行動のデータは、VersaMax(登録商標)動物の活動モニタリングシステムを使用して集めた。マウスをモニターボックスに入れ、活動を様々なセンサーによって定量した。水平方向の活動、垂直方向の活動、および移動した合計距離、および多くの他の活動のパラメーターを含むデータを測定した。複数回の測定を3日間かけて行った。
心エコー検査による評価を、VisualSonics Vevo 660(登録商標)高周波システムを使用して行った。心室の大きさ、心室機能、および流入/流出ドップラー速度の評価は、イソフロラン麻酔下で完了した。心エコー検査を行い、測定する心臓専門医には、実験グループについては盲検とした。
表1:ベースラインとサイモシンβ4での処置の2ヶ月後の正常なマウス(BL10)とジストロフィン欠損(mdx)マウスにおいて測定した機能のパラメーター
Figure 2009502938

Claims (16)

  1. 被験体において、鬱血性心不全疾患が原因である組織の劣化、損傷、または破損を処置、予防、阻害、または軽減する、あるいは、前記疾患により悪影響を受けた組織を回復させるための処置方法であって、前記疾患が原因である組織の劣化、損傷、または破損を阻害するか、あるいは、上記疾患によって悪影響を受けた組織を回復させるよう、被験体に、アミノ酸配列LKKTETもしくはLKKTNTが含まれているペプチド試薬、それらの保存的変異体、あるいは、前記組織の中でのLKKTETもしくはLKKTNTペプチドの生産を刺激する刺激因子、またはその保存的変異体が含まれている組成物の有効量を投与する工程を含む、方法。
  2. 前記組織の劣化、損傷、または破損に、心臓の大きさまたは重さの増大、心臓組織の大きさまたは重さの増大、心筋の肥厚、または肺水腫の少なくとも1つが含まれる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ペプチド試薬がサイモシンβ4(Tβ4)である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記ペプチド試薬がTβ4以外である、請求項2に記載の方法。
  5. 前記ペプチド試薬が酸化型Tβ4以外である、請求項2に記載の方法。
  6. 前記ペプチド試薬に、アミノ酸配列KLKKTET、アミノ酸配列LKKTETQ、およびTβ4のN末端変異体、Tβ4のC末端変異体、またはTβ4のイソ型が含まれる、請求項4に記載の方法。
  7. 前記ペプチド試薬が、約1〜30マイクログラムの範囲の投与量で前記被験体に投与される、請求項2に記載の方法。
  8. 前記試薬が、前記組織への直接の投与、あるいは、静脈内、腹腔内内、皮下、吸入、経皮、または経口投与によって前記被験体に投与される、請求項2に記載の方法。
  9. 前記組成物が全身的に投与される、請求項2に記載の方法。
  10. 前記組成物が直接投与される、請求項2に記載の方法。
  11. 前記組成物が、溶液剤、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、ローション剤、スプレー、懸濁剤、分散剤、軟膏(salve)、ヒドロゲル、軟膏(ointment)、泡剤、または油剤の形態である、請求項2に記載の方法。
  12. 前記ペプチド試薬が組み換え体ペプチドまたは合成ペプチドである、請求項2に記載の方法。
  13. 鬱血性心不全疾患を呈している組織を候補の化合物と接触させる工程;および、前記組織の中でのLKKTETまたはLKKTNTペプチドの活性を測定する工程が含まれる、請求項1で定義した刺激因子をスクリーニングするための方法であって、前記候補の化合物が含まれていない対応する組織の中での前記のペプチドの活性のレベルと比較した、前記組織の中での前記ペプチドの活性の増大が、前記化合物が前記刺激因子を誘導することができることを示す、方法。
  14. 前記ペプチドがサイモシンβ4である、請求項13に記載の方法。
  15. 前記ペプチド試薬が直ちに、長期的に、またはそれらの組み合わせで投与される、請求項1に記載の方法。
  16. 前記ペプチドの投与によって、心臓の左心室収縮期圧(LVSP)の低下、心臓の左心室拡張末期圧(LVEDP)の低下、心臓の左心室収縮末期容積の減少、心臓の左心室末期拡張期容積の減少、心臓の経時的な左心室圧の上昇の変化率(速度)(dP/dt)、の増大、心臓の経時的な左心室圧の低下の変化率(速度)(pdP/dt)の増大、心筋の破損/損傷後の肺水腫の軽減、あるいは、心臓の左心室の筋肉肥厚の軽減の少なくとも1つが生じる、請求項1に記載の方法。
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