JP2009302491A - 接合膜検査方法および接合膜検査装置 - Google Patents

接合膜検査方法および接合膜検査装置 Download PDF

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Abstract

【課題】寸法精度に優れ、かつ、固体接合法のような諸問題(特に接合不良)を生じることがない接合体を容易に製造するための接合膜の存在領域または接合領域を特定することができる接合膜検査方法および接合膜検査装置を提供すること。
【解決手段】シリコーン材料を含んで構成され、接合用エネルギーを付与することにより発現した接着性によって第1の基材21の接合面と第2の基材22の接合面とを接合する接合膜3の接合領域を特定する接合膜検査方法であって、接合膜3には、エネルギーの付与により発光する発光物質が添加されており、接合膜3の少なくとも一部の領域に接合用エネルギーを付与し、これにより接着性を発現させるとともに発光させ、その発光領域を検出することにより、接合領域を特定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、第1の基材の接合面と第2の基材の接合面とを接合する接合膜の存在領域または接合領域を検査する接合膜検査方法および接合膜検査装置に関するものである。
2つの部材同士を接合して接合体を得る際には、従来、これらの部材同士の間に、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤で構成される接合層を介在させることにより2つの部材同士を接合させる方法が多用されている。
また、このような接合層を介した部材同士の接合では、寸法精度が低かったり、硬化時間に長時間を要したりする等の問題点がある。
一方、前述したような接着剤を用いず2つの部材同士を接合して接合体を得る方法として、2つの部材同士を直接接合する固体接合法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
ところが、固体接合法には、
・接合可能な部材の材質が限られる
・接合プロセスにおいて高温(例えば、700〜800℃程度)での熱処理を伴う
・接合プロセスにおける雰囲気が減圧雰囲気に限られる
・一部の領域を部分的に接合することができない
・リサイクルなどの所望時に部材毎に効率よく分割することができない
といった問題がある。
また、接合プロセスや接合後において接合膜の存在領域や接合領域を視認することができず、その結果、接合不良を生じる場合があるという問題がある。
特開平5−82404号公報
本発明の目的は、寸法精度に優れ、かつ、固体接合法のような諸問題(特に接合不良)を生じることがない接合体を容易に製造するための接合膜の存在領域または接合領域を特定することができる接合膜検査方法および接合膜検査装置を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合膜検査方法は、シリコーン材料を含んで構成され、接合用エネルギーを付与することにより発現した接着性によって第1の基材の接合面と第2の基材の接合面とを接合する接合膜の接合領域を特定する接合膜検査方法であって、
前記接合膜には、エネルギーの付与により発光する発光物質が添加されており、
前記接合膜の少なくとも一部の領域に前記接合用エネルギーを付与し、これにより前記領域に前記接着性を発現させるとともに前記領域を発光させ、
その発光領域を検出することにより、前記接合領域を特定することを特徴とする。
これにより、寸法精度に優れ、かつ、固体接合法のような諸問題(特に接合不良)を生じることがない接合体を容易に製造するための接合膜の存在領域または接合領域を特定することができる。
本発明の接合膜検査方法は、シリコーン材料を含んで構成され、接合用エネルギーを付与することにより発現した接着性によって第1の基材の接合面と第2の基材の接合面とを接合する接合膜の存在領域または接合領域を特定する接合膜検査方法であって、
前記接合膜には、エネルギーの付与により発光する発光物質が添加されており、
前記接合膜に前記接合用エネルギーまたは検査用エネルギーを付与し、これにより前記接合膜を発光させ、
その発光領域を検出することにより、前記存在領域または前記接合領域を特定することを特徴とする。
これにより、寸法精度に優れ、かつ、固体接合法のような諸問題(特に接合不良)を生じることがない接合体を容易に製造するための接合膜の存在領域または接合領域を特定することができる。
本発明の接合膜検査方法では、前記接合用エネルギーまたは前記検査用エネルギーの付与は、前記接合膜の存在領域を包含する領域に対して行うことが好ましい。
これにより、接合用エネルギーまたは検査用エネルギーが接合膜全体に付与され、接合膜の存在領域または接合領域を特定することができる。
本発明の接合膜検査方法では、前記検査用エネルギーの付与は、前記接合用エネルギーの付与後に行うものであり、前記接合膜に検査用エネルギーを付与することにより前記接合膜を発光させ、その発光領域を検出することにより、前記存在領域または前記接合領域を特定することが好ましい。
これにより、接合用エネルギーには接着性の発現に適したエネルギーを用い、検査用エネルギーには発光物質の発光に適したエネルギーを用いることで、接合膜の接着性を優れたものとしつつ、接合膜の存在領域または接合領域の特定精度を向上させることができる。
本発明の接合膜検査方法では、前記検査用エネルギーの付与は、前記第1の基材の接合面と前記第2の基材の接合面とが前記接合膜を介して接合される前の状態で行うことが好ましい。
これにより、接合前に接合膜の良否を判断することができる。そのため、接合膜の存在領域または接合領域に不良がある状態で接合を行うことを防止することができる。
本発明の接合膜検査方法では、前記検査用エネルギーの付与は、前記第1の基材の接合面と前記第2の基材の接合面とが前記接合膜を介して接合されている状態で行うことが好ましい。
これにより、接合膜を介して第1の基材と第2の基材とが接合されてなる接合体の良否を判断することができる。
本発明の接合膜検査方法では、前記第1の基材および前記第2の基材のうちの少なくとも一方の基材は、透明性を有し、前記第1の基材または前記第2の基材を介して前記接合膜の形成パターンを検出し得るように構成されていることが好ましい。
これにより、接合膜を介して第1の基材と第2の基材とが接合されている状態であっても、接合膜の発光領域を容易に検出し、その結果、接合膜の存在領域または接合領域を正確かつ確実に特定することができる。
本発明の接合膜検査方法では、前記第1の基材および前記第2の基材のうちの少なくとも一方の基材は、前記検査用エネルギーに対する透過性を有することが好ましい。
これにより、接合膜を介して第1の基材と第2の基材とが接合されている状態であっても、接合膜に検査用エネルギーを容易に付与し、その結果、接合膜の存在領域または接合領域を正確かつ確実に特定することができる。
本発明の接合膜検査方法では、前記接合用エネルギーおよび/または前記検査用エネルギーは、紫外線であることが好ましい。
これにより、第1の基材および第2の基材に変質・劣化が生じるのを防止しつつ、接合膜に検査用エネルギーを付与することができる。
本発明の接合膜検査方法では、前記発光物質は、燐光材料を含んで構成されていることが好ましい。
これにより、エネルギーの付与後でも、しばらくの間、接合膜の形成領域を視認することができる。
本発明の接合膜検査方法では、予め設定されたパターンと、前記特定された領域のパターンとを比較し、その比較結果が所定条件であるときに、良と判断し、それ以外のときに、否と判断することが好ましい。
これにより、接合膜の良否を簡単かつ確実に判断することができる。
本発明の接合膜検査装置は、シリコーン材料を含んで構成されるとともに発光物質が添加され、接合用エネルギーを付与することにより発現した接着性によって第1の基材の接合面と第2の基材の接合面とを接合する接合膜の接合領域を特定する接合膜検査装置であって、
前記接合膜への前記接合用エネルギーの付与により発光した発光領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された発光領域に基づいて前記接合領域を特定する特定手段とを有することを特徴とする。
これにより、寸法精度に優れ、かつ、固体接合法のような諸問題(特に接合不良)を生じることがない接合体を容易に製造するための接合膜の存在領域または接合領域を特定することができる。
本発明の接合膜検査装置は、シリコーン材料を含んで構成されるとともに発光物質が添加され、接合用エネルギーを付与することにより発現した接着性によって第1の基材の接合面と第2の基材の接合面とを接合する接合膜の存在領域または接合領域を特定する接合膜検査装置であって、
前記接合膜への前記接合用エネルギーまたは検査用エネルギーの付与により発光した発光領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された発光領域に基づいて前記存在領域または前記接合領域を特定する特定手段とを有することを特徴とする。
これにより、寸法精度に優れ、かつ、固体接合法のような諸問題(特に接合不良)を生じることがない接合体を容易に製造するための接合膜の存在領域または接合領域を特定することができる。
本発明の接合膜検査装置では、前記接合膜に前記検査用エネルギーを付与するエネルギー付与手段を有することが好ましい。
これにより、接合膜に検査用エネルギーを付与して、接合膜を発光させることができる。
本発明の接合膜検査装置では、前記エネルギー付与手段は、前記検査用エネルギーとして紫外線を前記接合膜に付与するように構成されていることが好ましい。
これにより、第1の基材および第2の基材に変質・劣化が生じるのを防止しつつ、接合膜に検査用エネルギーを付与することができる。
本発明の接合膜検査装置では、前記撮像手段は、撮像素子を備えることが好ましい。
これにより、接合膜の発光領域を簡単かつ正確に撮像・検出することができる。
本発明の接合膜検査装置では、前記特定手段は、前記撮像素子の各画素の受光強度に基づいて前記特定を行うように構成されていることが好ましい。
これにより、接合膜の接合領域を簡単かつ正確に特定することができる。
本発明の接合膜検査装置では、予め設定されたパターンと、前記特定手段によって特定された領域のパターンとを比較し、その比較結果が所定条件であるときに、良と判断し、それ以外のときに、否と判断する判断手段を有することが好ましい。
これにより、接合膜の良否を簡単かつ確実に判断することができる。
以下、本発明の接合膜検査方法および接合膜検査装置を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<接合体>
まず、本発明の接合膜検査方法および接合膜検査装置の説明に先立ち、本発明の接合膜検査方法および接合膜検査装置の検査対象である接合膜を用いた接合体について説明する。
図1は、本発明の接合膜検査方法および接合膜検査装置の検査対象である接合膜を用いた接合体の一例を示す縦断面図である。
図1に示す接合体1は、第1の基材21と、第2の基材22と、これら基材21、22同士の間に介在する接合膜3とを備えている。
第1の基材21および第2の基材22は、接合膜3を介して互いに接合されるものである。
このような第1の基材21および第2の基材22の各構成材料は、それぞれ特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、インジウム錫酸化物(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、MgAl、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
また、第1の基材21および第2の基材22の構成材料は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。なお、これら基材21、22がそれぞれ異なる際に、後述する接合体の剥離方法を適用することにより、各基材21、22のリサイクル率を確実に向上させることができる。
接合膜3は、第1の基材21と第2の基材22とを、これらの間に介在して、互いに接合するものである。
この接合膜3は、シリコーン材料を含んで構成されているとともに発光物質(以下、「指標物質」とも言う)が添加されている。
このような接合膜3は、その少なくとも一部の領域に接合用エネルギーを付与したことにより接合膜3の表面付近の前記領域に発現した接着性によって、第1の基材21と第2の基材22とを接合している。
特に、接合膜3は、存在を検出可能な発光物質(指標物質)が添加されているので、接合膜3の形成プロセス時や形成後において、接合膜3の存在領域(以下、「形成領域とも言う」や接合領域(接着性発現領域)を視認し得る。
このような接合体1は、後に詳述するように、寸法精度に優れ、かつ、固体接合法のような諸問題を生じることなく容易に製造することができる。特に、接合プロセスや接合後において接合膜3の形成領域や接合領域を視認することにより、接合不良を防止することができる。なお、接合膜3の詳細な構成、接合膜検査方法および接合膜検査装置については、以下の接合体1の形成方法において説明する。
<接合体の形成方法>
上述した構成の接合体1は、例えば、次のような[I]および[II]の接合体の形成方法を用いて、第1の基材21と第2の基材22とを接合膜3を介して接合することにより形成される。
具体的には、[I]の接合体の形成方法では、第1の基材21と第2の基材22とを用意し、第1の基材21および第2の基材22の少なくとも一方に、シリコーン材料を含有する液状材料を供給することにより液状被膜30を形成する工程と、液状被膜30を乾燥して、第1の基材21および第2の基材22の少なくとも一方に接合膜3を得る工程と、接合膜3に接合用エネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、この接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合する工程とを経ることにより接合体1が形成される。
また、[II]の接合体の形成方法では、第1の基材21と第2の基材22とを用意し、第1の基材21および第2の基材22の少なくとも一方に、プラズマ重合法を用いて接合膜3を形成する工程と、接合膜3に接合用エネルギーを付与することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させ、この接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合する工程とを経ることにより接合体1が形成される。
以下では、[I]の接合体の形成方法を、接合体の形成方法の第1の例および第2の例で、[II]の接合体の形成方法を、接合体の形成方法の第3の例および第4の例で、それぞれ、工程ごとに詳述する。
<<第1の例>>
図2および図3は、接合体の形成方法の第1の例を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図2および図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
接合体の形成方法の第1の例では、接合膜3を、液状材料を用いて、第2の基材22上に形成することなく、第1の基材21上に選択的に形成して、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合することにより、接合体1を得る。
[1A]まず、前述したような第1の基材21と第2の基材22とを用意する。なお、図2(a)では、第2の基材22を省略している。
ここで、第1の基材21および第2の基材22のうちの少なくとも一方の基材は、透明性を有し、後述する工程において、第1の基材21または第2の基材22を介して接合膜3の形成パターンを視認(検出)し得るように構成されているのが好ましい。これにより、得られる接合体1は、第1の基材21、第2の基材22、接合膜3の形成領域(存在領域)の形成や大きさ等にかかわらず、接合膜3の形成領域を視認することができる。
これら第1の基材21および第2の基材22は、それぞれ、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
また、第1の基材21の構成材料と第2の基材22の構成材料とは、それぞれ同じでも、異なっていてもよいが、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。これらの熱膨張率がほぼ等しければ、第1の基材21と第2の基材22とを接合した際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体1において、剥離を確実に防止することができる。
なお、後に詳述するが、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率が互いに異なる場合でも、後述する工程において、第1の基材21と第2の基材22とを接合する際の条件を最適化することにより、これらを高い寸法精度で強固に接合することができる。
また、2つの基材21、22は、互いに剛性が異なるのが好ましい。これにより、2つの基材21、22をより強固に接合することができる。
また、2つの基材21、22のうち、少なくとも一方の構成材料は、樹脂材料であるのが好ましい。樹脂材料は、その柔軟性により、2つの基材21、22を接合した際に、その接合界面に発生する応力(例えば、熱膨張に伴う応力等)を緩和することができる。このため、接合界面が破壊し難くなり、結果的に、接合強度の高い接合体1を得ることができる。
なお、上記のような観点から、2つの基材21、22のうちの少なくとも一方は、可撓性を有しているのが好ましい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。さらに、2つの基材21、22の双方が可撓性を有している場合には、全体として可撓性を有し、機能性の高い接合体1が得られる。
また、各基材21、22の形状は、それぞれ、接合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
なお、本実施形態では、図2、3に示すように、各基材21、22がそれぞれ板状をなしている。これにより、各基材21、22は撓み易くなり、2つの基材21、22を重ね合わせたときに、互いの形状に沿って十分に変形し得るものとなる。このため、2つの基材21、22を重ね合わせたときの密着性が高くなり、最終的に得られる接合体1における接合強度が高くなる。
また、各基材21、22が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和する作用が期待できる。
この場合、各基材21、22の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。
[1A−1]次いで、必要に応じて、用意した第1の基材21の接合面23に、形成される接合膜3との密着性を高める表面処理を施す。これにより、接合面23を清浄化および活性化され、接合面23に対して接合膜3が化学的に作用し易くなる。その結果、後述する工程において、接合面23上に接合膜3を形成したとき、接合面23と接合膜3との接合強度を高めることができる。
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
なお、表面処理を施す第1の基材21が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、表面処理として、特にプラズマ処理または紫外線照射処理を行うことにより、接合面23を、より清浄化および活性化することができる。その結果、接合面23と接合膜3との接合強度を特に高めることができる。
また、第1の基材21の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第1の基材21の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
このような材料で構成された第1の基材21は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた第1の基材21を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第1の基材21の接合面23と接合膜3との接合強度を高めることができる。
一方、第1の基材21と同様、第2の基材22の接合面24(後述する工程において、接合膜3と密着する面)にも、必要に応じて、あらかじめ接合膜3との密着性を高める表面処理を施してもよい。これにより、接合面24を清浄化および活性化する。その結果、後述する工程において、接合面24と接合膜3とを密着させ、これらを接合したとき、接合面24と接合膜3との接合強度を高めることができる。
この表面処理としては、特に限定されないが、前述の第1の基材21の接合面23に対する表面処理と同様の処理を用いることができる。
また、第1の基材21の場合と同様に、第2の基材22の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との密着性が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第2の基材22の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
すなわち、このような材料で構成された第2の基材22は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合(露出)している。したがって、このような酸化膜で覆われた第2の基材22を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第2の基材22の接合面24と接合膜3との接合強度を高めることができる。
なお、この場合、第2の基材22の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜3と接合する領域において、接合面24付近が上記のような材料で構成されていればよい。
また、第2の基材22の接合面24に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、第2の基材22の接合面24と接合膜3との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような各種官能基、各種ラジカル、開環分子または、2重結合、3重結合のような不飽和結合を有する脱離性中間体分子、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基や物質、または、これらの基が脱離してなる終端化されていない結合手(未結合手、ダングリングボンド)が挙げられる。
このうち、脱離性中間体分子は、開環分子または不飽和結合を有する炭化水素分子であるのが好ましい。このような炭化水素分子は、開環分子および不飽和結合の顕著な反応性に基づき、接合膜3に対して強固に作用する。したがって、このような炭化水素分子を有する接合面24は、接合膜3に対して特に強固に接合可能なものとなる。
また、接合面24が有する官能基は、特に水酸基が好ましい。これにより、接合面24は、接合膜3に対して特に容易かつ強固に接合可能なものとなる。特に接合膜3の表面に水酸基が露出している場合には、水酸基同士間に生じる水素結合に基づいて、接合面24と接合膜3との間を短時間で強固に接合することができる。
また、このような基や物質を有するように、接合面24に対して上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、接合膜3に対して強固に接合可能な第2の基材22が得られる。
このうち、第2の基材22の接合面24には、水酸基が存在しているのが好ましい。このような接合面24には、水酸基が露出した接合膜3との間に、水素結合に基づく大きな引力が生じる。これにより、最終的に、第1の基材21と第2の基材22とを特に強固に接合することができる。
[1A−2]また、表面処理を施すのに代えて、第1の基材21の接合面23に、あらかじめ、中間層を形成するようにしてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層上に接合膜3を成膜することにより、最終的に、信頼性の高い接合体1を形成することができる。
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、第1の基材21と接合膜3との間の接合強度を特に高めることができる。
また、第1の基材21と同様、表面処理に代えて、第2の基材22の接合面24に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、前記第1の基材21の場合と同様に、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層を介して、第2の基材22と接合膜3とを接合することにより、最終的に、信頼性の高い接合体1を得ることができる。
かかる中間層の構成材料には、例えば、前記第1の基材21の接合面23に形成する中間層の構成材料と同様の材料を用いることができる。
なお、上記のような表面処理および中間層の形成は、必要に応じて行えばよく、特に高い接合強度を必要としない場合には、省略することができる。
[2A]次に、シリコーン材料および指標物質を含有する液状材料を塗布法を用いて接合面23上に供給する。これにより、第1の基材21の接合面23上に、液状被膜30が形成される(図2(b)参照)。
塗布法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法および液滴吐出法や等が挙げられるが、特に、液滴吐出法を用いるのが好ましい。液滴吐出法によれば、図2(b)に示すように、液状材料を液滴31として接合面23に供給することができるため、たとえ液状被膜30を接合面23の一部の領域に選択的にパターニングして形成する場合であったとしても、液状材料をこの領域の形状に対応して(選択的に)供給することができる。
液滴吐出法としては、特に限定されないが、圧電素子による振動を利用して液状材料を吐出する構成のインクジェット法が好適に用いられる。インクジェット法によれば、目的とする領域(位置)に、液状材料を液滴31として、優れた位置精度で供給することができる。また、圧電素子の振動数および液状材料の粘度等を適宜設定することにより、液滴31のサイズ(大きさ)を、比較的容易に調整できることから、液滴31のサイズを小さくすれば、たとえ膜を形成する領域の形状が微細なものであったとしても、この領域の形状に対応した液状被膜30を確実に形成することができる。
液状材料の粘度(25℃)は、通常、0.5〜200mPa・s程度であるのが好ましく、3〜20mPa・s程度であるのがより好ましい。液状材料の粘度をかかる範囲とすることにより、液滴の吐出をより安定的に行うことができるとともに、微細な形状の膜を形成する領域に対応した形状を描画し得る大きさの液滴31を吐出することができる。さらに、この液状材料で構成される液状被膜30を次工程[3A]で乾燥させた際に、接合膜3を形成するのに十分な量のシリコーン材料を液状材料中に含有したものとすることができる。
また、液状材料の粘度をかかる範囲内とすれば、具体的には、液滴31の量(液状材料の1滴の量)を、平均で、0.1〜40pL程度に、より現実的には1〜30pL程度に設定し得る。これにより、接合面23に供給された際の液滴31の着弾径が小さなものとなることから、微細な形状の接合膜3をも確実に形成することができる。
さらに、接合面23の膜形成領域に供給する液滴31を適宜設定することにより、形成される接合膜3の厚さの制御を比較的容易に行うことができる。
また、液状材料は、前述のようにシリコーン材料および指標物質を含有するものであるが、シリコーン材料単独で、液状をなし、リコーン材料に指標物質を溶解または分散するだけで目的とする粘度範囲である場合、シリコーン材料および指標物質のみで液状材料を構成することができる。また、シリコーン材料単独で、固形状または高粘度の液状をなす場合には、シリコーン材料の溶液または分散液に指標物質を溶解または分散したものを液状材料として用いることができる。
シリコーン材料を溶解または分散するための溶媒または分散媒としては、例えば、アンモニア、水、過酸化水素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等を用いることができる。
シリコーン材料は、液状材料中に含まれ、次工程[3A]において、この液状材料を乾燥させることにより形成される接合膜3の主材料として構成するものである。
ここで、「シリコーン材料」とは、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物であり、通常、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物のことを言い、主鎖の一部から突出する分枝状の構造を有するものであってもよく、主鎖が環状をなす環状体であってもよく、主鎖の末端同士が連結しない直鎖状のものであってもよい。
例えば、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物において、オルガノシロキサン単位は、その末端部では下記一般式(1)で表わされる構造単位を有し、連結部では下記一般式(2)で表わされる構造単位を有し、また、分枝部では下記一般式(3)で表わされる構造単位を有している。
Figure 2009302491
[式中、各Rは、それぞれ独立して、置換または無置換の炭化水素基を表し、各Zは、それぞれ独立して、水酸基または加水分解基を表し、Xはシロキサン残基を表し、aは0または1〜3の整数を表し、bは0または1〜2の整数を表し、cは0または1を表す。]
なお、シロキサン残基とは、酸素原子を介して隣接する構造単位が有するケイ素原子に結合しており、シロキサン結合を形成している置換基のことを表す。具体的には、−O−(Si)構造(Siは隣接する構造単位が有するケイ素原子)となっている。
このようなシリコーン材料において、ポリオルガノシロキサン骨格は、分枝状をなすもの、すなわち上記一般式(1)で表わされる構造単位、上記一般式(2)で表わされる構造単位および上記一般式(3)で表わされる構造単位で構成されているのが好ましい。この分枝状をなすポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物(以下、「分枝状化合物」と略すこともある。)は、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物であり、主鎖の途中でオルガノシロキサン単位の繰り返しが分枝するとともに、主鎖の末端同士が連結しないものである。
この分枝状化合物を用いることにより、次工程[3A]において、液状材料中に含まれるこの化合物の分枝鎖同士が互いに絡まり合うようにして接合膜3が形成されることから、得られる接合膜3は特に膜強度に優れたものとなる。
なお、上記一般式(1)〜上記一般式(3)中、基R(置換または無置換の炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部が、I)フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子、II)グリシドキシ基のようなエポキシ基III)メタクリル基のような(メタ)アクリロイル基IV)カルボキシル基、スルフォニル基のようなアニオン性基等で置換された基等が挙げられる。
加水分解基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基等が挙げられる。
また、分枝状化合物は、その分子量が、1×10〜1×10程度のものであるのが好ましく、1×10〜1×10程度のものであるのがより好ましい。分子量をかかる範囲内に設定することにより、液状材料の粘度を上述したような範囲内に比較的容易に設定することができる。
このような分枝状化合物は、シラノール基を有するものであるのが好ましい。すなわち、上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位において、各基Zは水酸基であるのが好ましい。これにより、次工程[3]において、液状被膜30を乾燥させて接合膜3を得る際に、隣接する分枝状化合物が有する水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜3の膜強度が優れたものとなる。さらに、第1の基材21として、前述したように、その接合面(表面)23から水酸基が露出しているものを用いた場合には、分枝状化合物が備える水酸基と、第1の基材21が備える水酸基とが結合することから、分枝状化合物を物理的な結合ばかりでなく、化学的な結合によっても第1の基材21に結合させることができる。その結果、接合膜3は、第1の基材21の接合面23に対して、強固に結合したものとなる。
また、シラノール基が有するシリコン原子に連結している炭化水素基は、フェニル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが水酸基である上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、フェニル基であるのが好ましい。これにより、シラノール基の反応性がより向上するため、隣接する分枝状化合物が有する水酸基同士の結合がより円滑に行われるようになる。
さらに、シラノール基が存在しないシリコン原子に連結している炭化水素基は、メチル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、メチル基であるのが好ましい。このように、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rがメチル基である化合物は、比較的入手が容易で、かつ安価であるとともに、後工程[4A]において、接合膜3に接合用エネルギーを付与することにより、メチル基が容易に切断されて、その結果として、接合膜3に確実に接着性を発現させることができるため、分枝状化合物(シリコーン材料)として好適に用いられる。
以上のことを考慮すると、分枝状化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表わされる化合物が好適に用いられる。
Figure 2009302491
[式中、nは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表す。]
さらに、上述した分枝状化合物は、比較的柔軟性に富む材料である。そのため、後工程[5]において、接合膜3を介して第1の基材21に第2の基材22を接合して接合体1を得る際に、例えば、第1の基材21と第2の基材22との各構成材料が互いに異なるものを用いる場合であったとしても、各基材21、22間に生じる熱膨張に伴う応力を確実に緩和することができる。これにより、最終的に得られる接合体1において、剥離が生じるのを確実に防止することができる。
また、分枝状化合物は、耐薬品性に優れているため、薬品類等に長期にわたって曝されるような部材の接合に際して効果的に用いることができる。具体的には、例えば、樹脂材料を浸食し易い有機系インクが用いられる工業用インクジェットプリンタの液滴吐出ヘッドを製造する際に、接合膜3を用いて接合すれば、その耐久性を確実に向上させることができる。また、分枝状化合物は、耐熱性にも優れていることから、高温下に曝されるような部材の接合に際しても効果的に用いることができる。
指標物質である発光物質としては、所定時(常時または所望時)に接合膜3の存在を検出可能(視認可能)とするものであれば、特に限定されず、例えば、蛍光物質、燐光物質(畜光物質)等が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
接合膜3に発光物質が添加されていると、所望時に接合膜3にエネルギーを付与(例えば紫外線のようなエネルギー線を照射)することで、発光物質を励起し、発光させることができる。これにより、接合膜3の形成領域を視認することができる。また、後述するような接合用エネルギーの付与により発光物質を発光させることができる。この場合、紫外線のような目に見えないエネルギー線を接合用エネルギーとして用いた場合でも、照射領域を視認でき、また、接合膜3の接着性が発現した領域をも視認することができる。
また、発光物質として非発光時の色が無色透明または第1の基材21や第2の基材22の色と同じものを選択することで、接合体1の表面への塗装等の他の処理を要することなく、接合体1の外観を美しくすることができる。一方、発光物質として非発光時の色が有色でかつ第1の基材21や第2の基材22の色と異なるものを選択することで、エネルギーを付与しなくも、接合膜3の形成領域を視認することができる。
また、発光物質は、紫外線照射により視認可能な色に発光するものであるのが好ましい。紫外線は発光物質を効率よく励起、発光させることができる。また、後述するような接合用エネルギーや剥離用エネルギーとして紫外線を用いた場合に、紫外線の照射領域(接合領域・へき開領域)を視認することができる。
蛍光物質としては、エネルギーの付与により視認し得る色の蛍光を発するものであれば特に限定させず、各色の蛍光物質を用いることができる。
例えば、赤色に発光する蛍光物質としては、ペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、ポリ[2,5−ビス(3、7−ジメチルオクチロキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1,4−(1−シアノビニレン)フェニレン]、ポリ[2−メトキシ−5−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、青色に発光する蛍光物質としては、例えば、ジスチリル誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、緑色に発光する蛍光物質としては、例えば、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、燐光物質としては、エネルギーの付与により視認し得る色の燐光を発するものであれば特に限定させず、各色の燐光物質を用いることができる。
燐光物質を含んで発光物質が構成されていると、エネルギーの付与後しばらくの間エネルギーを付与していなくても、接合膜3の形成領域や接合領域(接着性発現領域)を視認することができる。これにより、接合膜3の形成領域や接合領域(接着性発現領域)をより正確に視認することができる。
例えば、赤色に発光する燐光物質としては、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものも挙げられ、より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、青色に発光する燐光物質としては、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、より具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、緑色に発光する燐光物質としては、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、中でも、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つが、フェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つもの、より具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウムが挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、発光物質(指標物質)には、上記以外の成分が含まれていてもよい。
[3A]次に、第1の基材21上に設けられた液状被膜30を乾燥することにより、接合膜3を形成する(図2(c)参照)。
液状被膜30を乾燥させる際の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
また、乾燥させる時間は、0.5〜48時間程度であるのが好ましく、15〜30時間程度であるのがより好ましい。
かかる条件で液状被膜30を乾燥させることにより、次工程[4A]において、接合用エネルギーを付与することにより接着性が好適に発現する接合膜3を確実に形成することができる。また、シリコーン材料として前記工程[2A]で説明したようなシラノール基を有するものを用いた場合には、シリコーン材料が有するシラノール基同士を、さらには、シリコーン材料が有するシラノール基と第1の基材21が有する水酸基とを、確実に結合させることができるため、形成される接合膜3を膜強度に優れ、かつ第1の基材21に対して強固に結合したものとすることができる。
さらに、乾燥させる際の雰囲気の圧力は、大気圧下であってもよいが、減圧下であるのが好ましい。具体的には、減圧の程度は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜3の膜密度が緻密化して、接合膜3をより優れた膜強度を有するものとすることができる。
以上のように、接合膜3を形成する際の条件を適宜設定することにより、形成される接合膜3の膜強度等を所望のものとすることができる。
接合膜3の平均厚さは、10〜10000nm程度であるのが好ましく、50〜5000nm程度であるのがより好ましい。供給する液状材料の量を適宜設定して、形成される接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、第1の基材21と第2の基材22とを接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、より強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
また、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、後述する接合体の剥離方法において、接合膜3内にへき開を確実に生じさせて、第1の基材21から第2の基材22を剥離することができる。
さらに、接合膜3の平均厚さをかかる範囲とすることにより、接合膜3がある程度弾性に富むものとなることから、後工程[5A]において、第1の基材21と第2の基材22とを接合する際に、接合膜3と接触させる第2の基材22の接合面24にパーティクル等が付着していても、このパーティクルを接合膜3で取り囲むようにして接合膜3と接合面24とが接合することとなる。そのため、このパーティクルが存在することによって接合膜3と接合面24との界面における接合強度が低下したりこの界面において剥離が生じたりするのを的確に抑制または防止することができる。
また、本実施形態では、液状材料を供給して接合膜3を形成する構成となっていることから、たとえ第1の基材21の接合面23に凹凸が存在している場合であっても、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するようにして接合膜3を形成ことができる。その結果、接合膜3が凹凸を吸収して、その表面がほぼ平坦面で構成されることとなる。
[4A]次に、接合面23の膜形成領域に形成された接合膜3の表面32に対して接合用エネルギーを付与する(図2(d)参照)。
接合膜3に接合用エネルギーを付与すると、この接合膜3では、表面32付近の分子結合(例えば、シリコーン材料の主骨格がポリジメチルシロキサンで構成されている場合、Si−CH結合)の一部が切断し、表面32が活性化されることに起因して、表面32付近に第2の基材22に対する接着性が発現する。
このような状態の第1の基材21は、第2の基材22と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
また、前述したように、接合膜3の形成領域を視認することができるので、接合用エネルギーを接合膜3に確実に付与することができる。また、接合膜3が指標物質として前述したような発光物質を含んでいる場合、接合用エネルギーによって発光物質を発光させることができる。これにより、接合用エネルギーの付与領域や、接着性の発現領域を視認することができる。その結果、所望の領域に確実に、接合用エネルギーを付与し、接着性を発現させ、不良品の発生を防止することができる。なお、接合膜3の存在領域または接合領域の特定については、後に詳述する接合膜検査方法および接合膜検査装置を用いて行う。
ここで、本明細書中において、表面32が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面32の分子結合の一部、具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断されて、接合膜3中に終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
接合膜3に付与する接合用エネルギーは、いかなる方法を用いて付与するものであってもよいが、例えば、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、本実施形態では、接合膜3に接合用エネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よく接合用エネルギーを付与することができるので、接合用エネルギーを付与する方法として好適に用いられ、接合膜の表面を効率よく活性化させることができる。また、接合膜3中の分子構造を必要以上に切断しないので、後述する接合体の剥離方法において剥離用エネルギーを付与した際に、接合膜3内で確実にへき開を生じさせることができる。
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線のような電磁波、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、紫外線を用いるのが好ましい(図2(d)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、接合膜3から表面32付近の分子結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3に接着性を確実に発現させることができる。
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、分子結合の切断を効率よく行うことができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の表面32付近の分子結合を切断し得る程度の時間、すなわち、接合膜3の表面付近に存在する分子結合を選択的に切断し得る程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、1秒〜30分程度であるのが好ましく、1秒〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、大気雰囲気(特に、露点が低い雰囲気下)中で行うのが好ましい。これにより、表面32付近にオゾンガスが生じて、表面32の活性化がより円滑に行われることとなる。さらに、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜3に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、接合用エネルギーの付与による第1の基材21の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与する接合用エネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜3で切断される分子結合の量を調整することが可能となる。このように切断される分子結合の量を調整することにより、第1の基材21と第2の基材22との間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、表面32付近で切断される分子結合の量を多くすることにより、接合膜3の表面32付近に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、表面32付近で切断される分子結合の量を少なくすることにより、接合膜3の表面32付近に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与する接合用エネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きな接合用エネルギーを付与することができるので、接合用エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
[5A]次に、接合膜3と第2の基材22とが密着するように、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせる(図3(e)参照)。これにより、前記工程[4A]において、接合膜3の表面32に第2の基材22に対する接着性が発現していることから、接合膜3と第2の基材22の接合面24とが化学的に結合する。その結果、第1の基材21と第2の基材22とが、接合膜3により接合され、図3(f)に示すような接合体1が得られる。
このようにして得られた接合体1では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、2つの基材21、22が接合されている。このため、接合体1は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
また、このような接合方法によれば、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された第1の基材21および第2の基材22をも、接合に供することができる。
また、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合しているため、各基材21、22の構成材料に制約がないという利点もある。
以上のことから、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
また、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差にもよるが、第1の基材21および第2の基材22の温度が25〜50℃程度である状態下で、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体1における反りや剥離等の発生を確実に抑制または防止することができる。
また、この場合、具体的な第1の基材21と第2の基材22との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
また、第1の基材21と第2の基材22とが接合する接合膜3の面積や形状を適宜設定することにより、接合膜3に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、第1の基材21と第2の基材22との間で熱膨張率差が大きい場合でも、各基材21、22を確実に接合することができる。
なお、本実施形態では、前記工程[4A]および本工程[5A]で示したように、接合膜3に接合用エネルギーを付与して、接合膜3の接合面(表面)23付近に接着性を発現させた後、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接触させることにより接合体1を得るようにしたが、これに限らず、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接触させた後、接合膜3に接合用エネルギーを付与することにより接合体1を得るようにしてもよい。すなわち、前記工程[4A]と本工程[5A]との順序を逆にして接合体1を得るようにしてもよい。このような順序で各工程を施して接合体1を得る場合においても前述したのと同様の効果が得られる。
ここで、本工程において、第1の基材21と第2の基材22とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、第2の基材22の接合面24に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、第1の基材21に形成された接合膜3と、第2の基材22の接合面24とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜3の表面32に存在する水酸基と、第2の基材22の接合面24に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の基材21と第2の基材22とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、第1の基材21と第2の基材22との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、第1の基材21と第2の基材22とがより強固に接合されると推察される。
また、第1の基材21の接合膜3の表面や内部、および、第2の基材22の接合面24や内部に、それぞれ終端化されていない結合手すなわち未結合手(ダングリングボンド)が存在している場合、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせた時、これらの未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成されることとなる。これにより、接合膜3と第2の基材22とが特に強固に接合される。
なお、前記工程[4A]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[4A]の終了後、できるだけ早く本工程[5A]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[4A]の終了後、60分以内に本工程[5A]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、シリコーン材料を乾燥させて得られた接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜3を備えた第1の基材21を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[4A]に記載した接合用エネルギーの付与を行うようにすれば、接合体1の製造効率の観点から有効である。
以上のようにして、図3(f)に示す接合体1を得ることができる。
このようにして得られた接合体1は、第1の基材21と第2の基材22との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体1は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。また、かかる構成の接合方法によれば、第1の基材21と第2の基材22とが上記のような大きな接合強度で接合された接合体1を効率よく作製することができる。
なお、接合体1を得る際、または、接合体1を得た後に、この接合体1に対して、必要に応じ、以下の3つの工程([6a]、[6b]および[6c])のうちの少なくとも1つの工程(接合体1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
その際、前述したように接合膜3の形成領域を視認し、かかる形成領域に対応する部分に対し重点的に下記工程[6a]、[6b]および[6c]を行うことができる。
[6a] 図3(g)に示すように、得られた接合体1を、第1の基材21と第2の基材22とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、第1の基材21の表面および第2の基材22の表面に、それぞれ接合膜3の表面がより近接し、接合体1における接合強度をより高めることができる。
また、接合体1を加圧することにより、接合体1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合体1における接合強度をさらに高めることができる。
なお、この圧力は、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合体1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料によっては、各基材21、22に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
[6b] 図3(g)に示すように、得られた接合体1を加熱する。
これにより、接合体1における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体1を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[6a]、[6b]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図3(g)に示すように、接合体1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
[6c] 得られた接合体1に紫外線を照射する。
これにより、接合膜3と第2の基材22との間に形成される化学結合を増加させ、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
このとき照射される紫外線の条件は、前記工程[4A]に示した紫外線の条件と同等にすればよい。
また、本工程[6c]を行う場合、第1の基材21および第2の基材22のうち、いずれか一方が透光性を有していることが必要である。そして、透光性を有する基材側から、紫外線を照射することにより、接合膜3に対して確実に紫外線を照射することができる。
以上のような工程を行うことにより、接合体1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
なお、本構成の接合方法では、液滴吐出法としてインクジェット法を用いる場合について説明したが、これに限定されず、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してインクを吐出するバブルジェット法(「バブルジェット」は登録商標)を液滴吐出法として用いるようにしてもよい。バブルジェット法によっても前述したのと同様の効果が得られる。
<<第2の例>>
次に、接合体の形成方法の第2の例について説明する。
図4は、接合体の形成方法の第2の例を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、接合体の形成方法の第2の例について説明するが、前記第1の例に記載の接合体の形成方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
接合体の形成方法の第2の例では、接合面(表面)23上に、液状材料を用いて接合膜3が形成されている他に、さらに第2の基材22の接合面(表面)24上にも液状材料を用いて接合膜3が形成されている。そして、それぞれの基材21、22が備える接合膜3の表面32付近に接着性を発現させ、これら接合膜3同士を接触させることにより、第1の基材21と第2の基材22とを接合させて接合体1を得る以外は前記第1の例と同様である。
すなわち、本構成の接合体の形成方法は、液状材料を用いて、第1の基材21上および第2の基材22上の双方に接合膜3を形成して、これら接合膜3同士を一体化させることにより、第1の基材21と第2の基材22とを接合する接合体の形成方法である。
[1B]まず、前記工程[1A]と同様の第1の基材21と第2の基材22とを用意する。
[2B]次に、前記工程[2A]および前記工程[3A]で説明したのと同様にして、第1の基材21の接合面23に接合膜3を形成するとともに、第2の基材22の接合面24にも接合膜3を形成する。
[3B]次に、前記工程[4A]で説明したのと同様にして、第1の基材21に形成された接合膜3と、第2の基材22に形成された接合膜3との双方に対して接合用エネルギーを付与することにより、各接合膜3の表面32付近に接着性を発現させる。
[4B]次に、図4(a)に示すように、各基材21、22が備える接着性が発現した接合膜3同士を、それぞれが密着するように、各基材21、22同士を貼り合わせる。これにより、双方の基材21、22に形成された接合膜3により、基材21、22同士が接合され、図4(b)に示すような接合体1が得られる。
なお、各基材21、22同士を貼り合わせる際の条件は、前記工程[5A]で説明したのと同様の条件に設定される。
以上のようにして接合体1を得ることができる。
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じ、前記第1の例の工程[6a]、[6b]および[6c]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
例えば、接合体1を加圧しつつ、加熱することにより、接合体1の各基材21、22同士がより近接する。これにより、各接合膜3の界面における水酸基の脱水縮合や未結合手同士の再結合が促進される。その結果、接合膜3の一体化がより進行し、最終的には、ほぼ完全に一体化される。
<<第3の例>>
次に、接合体の形成方法の第3の例について説明する。
以下、接合体の形成方法の第3の例について説明するが、前記第1の例に記載の接合体の形成方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
接合体の形成方法の第3の例では、接合面(表面)23上に、プラズマ重合法を用いて形成された接合膜3を備えている以外は、前記第1の例と同様である。
すなわち、本構成の接合体の形成方法は、接合膜3を、プラズマ重合法を用いて、第2の基材22上に形成することなく、第1の基材21上に選択的に形成して、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合する接合体の形成方法である。
[1C]まず、前記工程[1A]と同様の第1の基材21と第2の基材22とを用意する。
[2C]次に、プラズマ重合法を用いて、接合面23上に接合膜3を形成する。
かかる接合膜3は、第1の基材21を強電界中に配置した後、この強電界中に原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を第1の基材21上で重合して得ることができる。
具体的には、[2C−1]まず、プラズマ重合装置が備えるチャンバー内に第1の基材21を収納して封止状態とした後、チャンバー内を減圧状態とする。
[2C−2]次いで、プラズマ重合装置が備えるガス供給部を作動させることにより、チャンバー内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給して、チャンバーに混合ガスを充填する。
混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、接合膜3の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
[2C−3]次いで、チャンバー内に設けられた一対の電極間に高周波電圧を印加することにより、一対の電極間に存在するガスの分子が電離して、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、重合することにより生成した重合物が第1の基材21上に付着・堆積して、第1の基材21上に接合膜3が形成される。
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られる接合膜3は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわち、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物(シリコーン材料)で構成されることとなる。
また、オルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンであるのが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜3は、接着性に特に優れることから、第1の基材21と第2の基材22とを接合する接合膜として特に好適に用いられる。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
一対の電極間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm程度であるのがより好ましい。
また、接合膜3の成膜時のチャンバー内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。
また、第1の基材21の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
このような条件で接合膜3を形成することにより、緻密な接合膜3をムラなく形成することができる。
[3C]次に、前記工程[4A]で説明したのと同様にして、第1の基材21に形成された接合膜3に対して接合用エネルギーを付与することにより、接合膜3の表面32付近に接着性を発現させる。
[4C]次に、前記工程[5A]で説明したのと同様にして、第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせることにより、第1の基材21と第2の基材22とが、接合膜3により接合され接合体1が得られる。
以上のようにして接合体1を得ることができる。
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じ、前記第1の例の工程[6a]、[6b]および[6c]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
<<第4の例>>
次に、接合体の形成方法の第4の例について説明する。
以下、接合体の形成方法の第4の例について説明するが、前記第1の例〜前記第3の例に記載の接合体の形成方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
接合体の形成方法の第4の例では、前記第1の例〜前記第3の例を組み合わせた構成となっており、接合面(表面)23上に、プラズマ重合法を用いて接合膜3が形成されている他に、さらに第2の基材22の接合面(表面)24上にもプラズマ重合法を用いて接合膜3が形成されている。そして、それぞれの基材21、22が備える接合膜3の表面32付近に接着性を発現させ、これら接合膜3同士を接触させることにより、第1の基材21と第2の基材22とを接合させて接合体1を得る以外は前記第1の例と同様である。
すなわち、本構成の接合体の形成方法は、プラズマ重合法を用いて、第1の基材21上および第2の基材22上の双方に接合膜3を形成して、これら接合膜3同士を一体化させることにより、第1の基材21と第2の基材22とを接合する接合体の形成方法である。
[1D]まず、前記工程[1A]と同様の第1の基材21と第2の基材22とを用意する。
[2D]次に、前記工程[2C]で説明したのと同様にして、プラズマ重合法を用いて、第1の基材21の接合面23に接合膜3を形成するとともに、第2の基材22の接合面24にも接合膜3を形成する。
[3D]次に、前記工程[3B]で説明したのと同様にして、第1の基材21に形成された接合膜3と、第2の基材22に形成された接合膜3との双方に対して接合用エネルギーを付与することにより、各接合膜3の表面32付近に接着性を発現させる。
[4D]次に、前記工程[4B]で説明したのと同様にして、各基材21、22が備える接着性が発現した接合膜3同士を、各基材21、22同士を貼り合わせることにより接合体1を得る。
以上のようにして接合体1を得ることができる。
なお、接合体1を得た後、この接合体1に対して、必要に応じ、前記第1の例の工程[6a]、[6b]および[6c]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
<接合膜の存在領域または接合領域の特定>
ここで、接合膜の存在領域または接合領域の特定に用いる検査方法(第1の検査方法および第2の検査方法)について説明する。
図5は、本発明の実施形態にかかる接合膜検査装置(第1の検査方法に用いる装置)の概略構成を示す模式図、図6は、図5に示す接合膜検査装置における接合膜の存在領域または接合領域の特定を説明するための図、図7は、本発明の他の実施形態にかかる接合膜検査装置(第2の検査方法に用いる装置)の概略構成を示す模式図である。
<<第1の検査方法>>
(接合膜検査装置)
まず、第1の検査方法に用いる接合膜検査装置の構成について説明する。
図5に示す接合膜検査装置200Aは、前述した接合体1の製造方法において、工程[3A]〜工程[5A]間、工程[2B]〜工程[4B]間、工程[2C]〜工程[4C]間、または工程[2D]〜工程[4D]間に用いられ、前述した接合膜3の存在領域または接合領域を特定するものである。すなわち、接合膜検査装置200Aは、第1の基材21と第2の基材22とが接合膜3を介して接合される前に、接合膜3の接着性が発現した領域を特定するものである。
このような接合膜検査装置200Aは、図5に示すように、載置手段201と、エネルギー付与手段202Aと、撮像手段203と、特定手段204と、判断手段205と、報知手段206とを有している。
載置手段201は、検査対象である前述した接合膜3を備えるものが載置されるものである。図5に示す接合膜検査装置200Aでは、載置手段201上に、検査対象として、前述した接合体1の製造方法における工程[3A]、[2B]、[2C]または[2D]で得られたもの、すなわち、第1の基材21上に接合膜3が形成されたものが載置される。ここで、かかる検査対象は、接合膜3が上側(後述するエネルギー付与手段202Aおよび撮像手段203の側)となるように載置される。
また、本実施形態では、載置手段201は、ベルトコンベアで構成され、載置された検査対象を図5中矢印方向へ(左側から右側へ)連続的または間欠的に移送(搬送)するようになっている。これにより、検査対象をエネルギー付与手段202Aのエネルギー付与領域から撮像手段203の撮像領域へ移送することができる。
なお、載置手段201は、ベルトコンベアに限定されず、例えば、リニア駆動方式のステージで構成してもよい。この場合、載置手段201は、水平な平面(xy平面)上の互いに直交する2方向(x軸方向およびy軸方向)に検査対象を移送するようにしてもよい。また、載置手段201は、検査対象を移送(移動)させない構成でもよい。この場合、後述するエネルギー付与手段および撮像手段203は、固定設置されていてもよいし、水平な平面(xy平面)上の1方向または互いに直交する2方向(x軸方向およびy軸方向)に移動するようにしてもよい。
このような載置手段201の上方には、エネルギー付与手段202Aおよび撮像手段203が設置されている。
エネルギー付与手段202Aは、検査対象である接合膜3に前述した接合用エネルギーを付与するものである。すなわち、エネルギー付与手段202Aは、前述した工程[4A]、[3B]、[3C]または[3D]を行うものである。
このようなエネルギー付与手段202Aは、接合膜3に接着性を発現させる機能と、接合膜3の接着性を発現した領域を検出しうる状態とする機能とを有する。
かかる接合用エネルギーとしては、前述した接合用エネルギーの中でも、エネルギー線(特に紫外線)が用いられる。なお、本実施形態では、接合膜検査装置200Aが接合エネルギー付与のためのエネルギー付与手段202Aを備えているが、エネルギー付与手段202Aは接合膜検査装置200Aの一部とせずに接合膜検査装置200Aの外部に設けてもよい。
このようなエネルギー付与手段202Aに対し、検査対象の移送方法下流側には、撮像手段203が設けられている。
撮像手段203は、接合膜3への前記接合用エネルギーの付与により発光した発光領域を撮像するものである。
このような撮像手段203は、CCDやCMOS等の撮像素子203aが備えられている。このように撮像素子203aを備える撮像手段203は、接合膜3の各部位の発光強度を検出することができる。そのため、接合膜3の発光領域を簡単かつ正確に撮像・検出することができる。
また、撮像手段203は、検査対象である接合膜3全体を包含する領域を撮像するように構成されている。なお、撮像手段203は、検査対象の移送方向に対し垂直な方向に1次元的に配列されたラインセンサで構成してもよい。この場合、載置手段201が接合膜3を連続的に搬送しながら、撮像を行うことで、接合膜3の発光領域を撮像することができる。
本実施形態では、撮像手段203の撮像領域は、前述したエネルギー付与手段202Aのエネルギー付与領域と重複していない。したがって、本実施形態では、接合膜3の発光物質として燐光物質が好適に用いられる。なお、撮像手段203の撮像領域は、エネルギー付与手段202Aのエネルギー付与領域と重複または一致していてもよい。この場合、接合膜3の発光物質として、燐光物質を用いてもよいし、蛍光物質を用いてもよい。
また、撮像手段203の撮像領域とエネルギー付与手段202Aのエネルギー付与領域との離間距離は、接合膜3がその発光が消えないうちに撮像手段203の撮像領域にもたらされるように、発光材料の発光寿命や載置手段201の移送速度等を考慮して設定されている。
このような撮像手段203には、特定手段204および判断手段205を備える制御手段207が電気的に接続されている。
制御手段207は、例えばコンピュータ等で構成されている。また、制御手段207は、後述する機能のほか、接合膜検査装置200A全体の動作を制御する機能を有する。
特定手段204は、前述した撮像手段203によって撮像された発光領域に基づいて接合膜3の接合領域(すなわち接着性が発現した領域)を特定するものである。
具体的には、特定手段204は、前述した撮像素子203aの各画素の受光強度に基づいて、接合膜3の接合領域を特定するように構成されている。これにより、接合膜3の接合領域を簡単かつ正確に特定することができる。
判断手段205は、予め設定されたパターンと、特定手段205によって特定された領域のパターンとを比較し、その比較結果が所定条件であるときに、良と判断し、それ以外のときに、否と判断するものである。これにより、接合膜3の良否を簡単かつ確実に判断することができる。具体的には、接合膜3の所望の領域に接着性が発現しているか否かを判断することができる。その結果、接合体1の接合不良(不良品)の発生を防止することができる。
このような制御手段207は、前述した判断手段205の判断結果に基づいて、報知手段206の動作を制御する。また、制御手段207は、前述した判断手段205の判断結果に基づいて、前述した載置手段201の動作を制御することもできる。この場合、例えば、接合膜3の接合領域が不良と判断した場合、載置手段201の移送方向を変化(例えば逆転)させて、接合膜3に再度接合エネルギーを付与したり、良品とは別の場所に移送したりすることができる。
このような制御手段207には、報知手段206が電気的に接続されている。
報知手段206は、聴覚、視覚等により判断手段205の判断結果を放置し得るように構成されている。例えば、報知手段206は、ディスプレイ、LEDなどの発光素子、スピーカ等で構成することができる。
(接合膜検査方法)
第1の検査方法では、前述した接合膜検査装置200Aを用いて、接合膜3の接着性が発現した領域を特定する。
より具体的に説明すると、まず、前述した製造方法における工程[3A]、[3B]、3C]、または[3D]で得られたもの、すなわち片面側に接合膜3が設けられた第1の基材21を載置手段201の移送方向上流側に載置する。
載置手段201上に載置された基材21は、エネルギー付与手段202Aのエネルギー付与領域にもたらされ、接合膜3の少なくとも一部の領域に接合用エネルギーが付与される。これにより、接合膜3の接合用エネルギーが付与された領域に接着性が発現するとともに、当該領域が発光する。
その発光が消えないうちに、発光した接合膜3は、撮像手段203の撮像領域にもたらされ、撮像手段203(撮像素子203a)により接合膜3の発光領域が検出(撮像)される。
そして、特定手段204は、撮像素子203aの各画素の受光強度に基づいて、接合膜3の接合領域を特定する。また、その特定結果に基づいて、判断手段205が良否を判断する。
ここで、特定手段204による接合膜3の接合領域の特定について、図6に基づき詳細に説明する。なお、図6は、撮像素子203aの撮像領域を撮像素子203aの各画素に対応した領域ごとに分割して図示している。また、図6においては、説明の便宜上、撮像素子203aがX1〜X6行、Y1〜Y6列の6×6の画素を有するものとし、図6中に太線で囲まれた領域が所望の接合領域を示し、斜線で示された領域が実際の接合領域(発光領域)を示している。
特定手段204は、撮像素子203aの各画素と撮像領域との対応が予め設定されており、受光強度が所定値以上である画素に対応する領域の集合領域を接合領域として特定する。
例えば、図6(a)に示すような発光領域の場合、(X2〜X4,Y2〜Y5)の各画素での受光強度が所定値以上となり、(X2〜X4,Y2〜Y5)の画素に対応する領域の集合領域が接合領域となる。この場合、判断手段205は、特定された接合領域と、所望の接合領域とが一致するため、良(OK)と判断し、その結果を報知手段206に報知させる。
また、図6(b)に示すような発光領域の場合、(X2〜X4,Y2〜Y3)の各画素での受光強度が所定値以上となり、(X2〜X4,Y2〜Y3)の画素に対応する領域の集合領域が接合領域となる。この場合、判断手段205は、特定された接合領域と、所望の接合領域とが一致しないため、否(NG)と判断し、その結果を報知手段206に報知させる。また、実際の接合領域が所望の接合領域よりも小さい旨を報知手段206に報知させてもよい。この場合、接合膜3に接合用エネルギーを再度付与して、良品としてもよいし、不良品として廃棄してもよい。
また、図6(c)に示すような発光領域の場合、(X2〜X5,Y2〜Y5)の各画素での受光強度が所定値以上となり、(X2〜X5,Y2〜Y5)の画素に対応する領域の集合領域が接合領域となる。この場合、判断手段205は、特定された接合領域と、所望の接合領域とが一致しないため、否(NG)と判断し、その結果を報知手段206に報知させる。また、実際の接合領域が所望の接合領域よりも大きい旨を報知手段206に報知させてもよい。この場合、接合膜3に接合用エネルギーを再度付与して、良品としてもよいし、不良品として廃棄してもよい。なお、図6(c)に示すような発光領域の場合、接着強度自体は十分なものが得られるので、接合体1の形態によっては、良品として判断することもできる。
なお、上記の接合領域の特定において、接合膜3全域を所望の接合領域とした場合、特定された接合領域は接合膜3の存在領域である。すなわち、接合膜3の接合領域とともに、接合膜3の存在領域をも特定することができる。
以上説明したような接合膜3の検査方法(第1の検査方法)によれば、接合膜3の少なくとも一部の領域に接合用エネルギーを付与し、これにより前記領域に接着性を発現させるとともに前記領域を発光させ、その発光領域を検出することにより、接合領域を特定するので、寸法精度に優れ、かつ、固体接合法のような諸問題(特に接合不良)を生じることがない接合体1を容易に製造するための接合膜3の存在領域または接合領域を特定することができる。
<<第2の検査方法>>
(接合膜検査装置)
次に、第2の検査方法に用いる接合膜検査装置の構成について説明する。
第2の検査方法に用いる接合膜検査装置200Bは、エネルギー付与手段の構成が異なる以外は、前述した第1の検査方法に用いる接合膜検査装置200Aとほぼ同様である。なお、以下の説明では、接合膜検査装置200Bについて、接合膜検査装置200Aとの相違点を中心に説明し、接合膜検査装置200Aと同様の事項に関しては、その説明を省略する。
図7に示す接合膜検査装置200Bは、前述した接合体1の製造方法において、工程[3A]後、工程[2B]後、工程後、または工程[2D]後に用いられ、前述した接合膜3の存在領域または接合領域を特定するものである。特に、図7に示す接合膜検査装置200Bは、前述した接合体1の製造方法において、工程[5A]後、工程[4B]後、工程[4C]後、または工程[4D]後に用いた場合には、接合体1の接合膜3の存在領域または接合領域を特定することができる。以下の説明では、前述した接合体1の製造方法において、工程[5A]後、工程[4B]後、工程[4C]後、または工程[4D]後に接合膜検査装置200Bを用いた場合を例に説明する。
このような接合膜検査装置200Bは、検査対象である接合膜3に前述した検査用エネルギーを付与するエネルギー付与手段202Bを有している。
このエネルギー付与手段202Bは、接合膜3の存在領域を包含する領域に対して検査用エネルギーを付与するように構成されている。これにより、検査用エネルギーが接合膜3全体に付与され、接合膜3の存在領域または接合領域を特定することができる。
この検査用エネルギーは、接合用エネルギーの付与後に接合膜3に付与するものであり、接合膜3に付与することにより接合膜3を発光させるものである。
このように検査用エネルギーは接合用エネルギーとは別のものであり、接合膜3の存在領域または接合領域の特定に特化したエネルギーを用いることができる。すなわち、接合用エネルギーには接着性の発現に適したエネルギーを用い、検査用エネルギーには発光物質の発光に適したエネルギーを用いることで、接合膜3の接着性を優れたものとしつつ、接合膜3の存在領域または接合領域の特定精度を向上させることができる。
このような検査用エネルギーとしては、前述した第1の検査方法における接合用エネルギーと同様のものを用いることができるが、紫外線であるのが好ましい。すなわち、エネルギー付与手段202Bは、検査用エネルギーとして紫外線を接合膜3に付与するように構成されているのが好ましい。これにより、第1の基材21および第2の基材22に変質・劣化が生じるのを防止しつつ、接合膜3に検査用エネルギーを付与することができる。
第2の検査方法では、検査用エネルギーの付与は、第1の基材21の接合面と第2の基材22の接合面とが接合膜3を介して接合されている状態で行われる。したがって、接合膜3の存在領域または接合領域の特定結果基づいて、接合体1の良否を判断することができる。
また、第2の検査方法では、第1の基材21および第2の基材22のうちの少なくとも一方の基材が透明性を有し、第1の基材21または第2の基材22を介して撮像手段203が接合膜3の形成パターンを検出し得るように構成されている。これにより、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とが接合されている状態であっても、接合膜3の発光領域を撮像手段203が容易に検出することができる。その結果、接合膜3の存在領域または接合領域を正確かつ確実に特定することができる。
また、第2の検査方法では、第1の基材21および第2の基材22のうちの少なくとも一方の基材は、検査用エネルギーに対する透過性を有する。これにより、接合膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とが接合されている状態であっても、接合膜3に検査用エネルギーを容易に付与し、その結果、接合膜3の存在領域または接合領域を正確かつ確実に特定することができる。
(接合膜検査方法)
第2の検査方法では、前述した接合膜検査装置200Bを用いて、接合膜3の存在領域または接合領域を特定する。
より具体的に説明すると、まず、前述した製造方法における工程[5A]、[4B]、4C]、または[4D]で得られたもの、すなわち接合体1を載置手段201の移送方向上流側に載置する。
載置手段201上に載置された接合体1は、エネルギー付与手段202Bのエネルギー付与領域にもたらされ、接合膜3全域に検査用エネルギーが付与される。これにより、接合膜3の全域が発光する。
その発光が消えないうちに、発光した接合膜3は、撮像手段203の撮像領域にもたらされ、撮像手段203(撮像素子203a)により接合膜3の発光領域が検出(撮像)される。
そして、特定手段204は、撮像素子203aの各画素の受光強度に基づいて、接合膜3の存在領域または接合領域を特定する。また、その特定結果に基づいて、判断手段205が良否を判断する。
以上説明したような接合膜3の検査方法(第2の検査方法)によれば、接合膜3に検査用エネルギーを付与し、これにより接合膜3を発光させ、その発光領域を検出することにより、接合膜3の存在領域または接合領域を特定するので、寸法精度に優れ、かつ、固体接合法のような諸問題(特に接合不良)を生じることがない接合体1を容易に製造するための接合膜3の存在領域または接合領域を特定することができる。
特に、第1の基材21の接合面と第2の基材22の接合面とが接合膜3を介して接合されている状態で検査用エネルギーの付与を行うので、接合膜3の存在領域または接合領域の特定結果に基づいて、接合体1の良否を判断することができる。
なお、第1の基材21の接合面と第2の基材22の接合面とが接合膜3を介して接合される前の状態で検査用エネルギーの付与を行う場合には、接合前に接合膜3の良否を判断することができる。そのため、接合膜3の存在領域または接合領域に不良がある状態で接合を行うことを防止することができる。
<接合体の剥離方法>
次に、接合体1を剥離する方法について説明する。
図8は、図1に示す接合体を剥離する過程を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1]まず、接合体の剥離方法に供される接合体として、前述したような、第1の基材21と第2の基材22とが、シリコーン材料を含有する接合膜3を介して接合された接合体1を用意する(図8(a)参照。)。
なお、次工程[2]において、接合膜3に剥離用エネルギーを付与する方法として、エネルギー線(例えば、紫外線)を照射する方法を用いる場合には、第1の基材21および第2の基材22の少なくとも一方、すなわちエネルギー線を照射する側の基材に、エネルギー線(例えば、紫外線)透過性を有するものが用いられる。
このようなエネルギー線透過性を有する基材の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル系共重合体等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、PMMAのような樹脂材料や、MgAlのようなセラミックス系材料等の紫外線透過性を有するものが挙げられる。
[2]次に、この接合体1の接合膜3に、剥離用エネルギーを付与する(図8(b)参照。)。これにより、前記シリコーン材料を構成する分子結合の一部が切断されることとなり、その結果として、図8(c)に示すように、接合膜3内にへき開が生じて、第1の基材21から第2の基材22を剥離することができる。
その際、前述したように接合膜3の形成領域を視認することができるので、剥離用エネルギーを接合膜3に確実に付与することができる。また、接合膜3が指標物質として前述したような発光物質を含んでいる場合、剥離用エネルギーによって発光物質を発光させることができる。これにより、剥離用エネルギーの付与領域や、へき開の発生箇所を視認することができる。その結果、所望の領域に確実に、剥離用エネルギーを付与し、へき開を生じさせ、第1の基材21から第2の基材22を剥離することができる。
また、第1の基材21および第2の基材22のうちの少なくとも一方の基材が透明性を有している場合、第1の基材21や第2の基材22を介して接合膜3の形成領域をより正確に視認することができる。そのため、このような場合、接合膜3に剥離用エネルギーを効率的に付与することができる。
ここで、剥離用エネルギーを付与することにより、接合膜3にへき開が生じるメカニズムとしては、次のようなことが考えられる。例えば、接合膜3に含まれるシリコーン材料の主骨格がポリジメチルシロキサンで構成されている場合、接合膜3に剥離用エネルギーを付与すると、Si−CH結合が切断され、雰囲気中の水分子等と反応することにより、例えば、メタンが発生する。このメタンは、気体(メタンガス)として存在し、大きな体積を占有することから、気体が発生した部分で、接合膜3が押し上げられる。その結果、Si−O結合も切断され、最終的に接合膜3内にへき開が生じるものと推察される。
剥離用エネルギーを付与する際の雰囲気は、雰囲気中に水分子が含まれていればよく、特に限定されないが、大気雰囲気であるのが好ましい。大気雰囲気であれば、特に装置を必要とせず、雰囲気中に十分な量の水分子が含まれていることから、接合膜3内にへき開を確実に生じさせることができる。
このように接合膜3にへき開を生じさせるためには、接合膜3がSiOで構成されることなく、膜中に有機物が結合した状態、すなわちシリコーン材料を含有した状態で接合膜3が形成されている必要があるが、接合膜3における、シリコン原子と炭素原子の存在比は、2:8〜8:2程度であるのが好ましく、3:7〜7:3程度であるのがより好ましい。
シリコン原子と炭素原子の存在比が前記範囲内となっていることにより、接合膜3として優れた機能を発揮させることができるとともに、剥離用エネルギーの付与によりへき開が確実に生じる膜となる。
また、剥離用エネルギーの大きさは、接合用エネルギーの大きさよりも大きくなっているのが好ましい。これにより、接合用エネルギーを付与した際には、接合膜3の表面付近に存在するSi−CH結合を選択的に切断することができるとともに、剥離用エネルギーを付与した際には、接合膜3内部に残存するSi−CH結合を切断することができる。その結果、接合用エネルギーを付与した際には、接合膜3の表面付近に接着性が発現し、剥離用エネルギーを付与した際には、接合膜3にへき開が生じることとなる。
また、接合膜3に付与する剥離用エネルギーは、前述した接合用エネルギーと同様に、いかなる方法を用いての付与するものであってもよく、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、本実施形態では、接合膜3に剥離用エネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法および接合膜3を加熱する方法のうちの少なくとも1つの一方により行うのが好ましい。かかる方法は、接合膜3に対して比較的簡単に、かつ選択的に剥離用エネルギーを付与することができるので、接合膜3により確実にへき開を生じさせることができる。
エネルギー線としては、接合用エネルギーの説明で記載したのと同様のものが挙げられるが、中でも、特に、紫外線、レーザ光のような光であるのが好ましい。これにより、第1の基材21および第2の基材22に変質・劣化が生じるのを防止しつつ、接合膜3にへき開を確実に生じさせることができる。
紫外線の波長は、好ましくは126〜300nm程度、より好ましくは126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3内にへき開が生じる程度の時間に設定される。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、10〜180分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、接合膜3のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による第1の基材21および第2の基材22の変質・劣化を確実に防止することができる。
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って接合膜3に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。また、パルス幅が前記範囲内であれば、レーザ光の照射に伴って熱が蓄積し、高温の領域が接合膜3の厚さ方向(レーザ光の照射方向)へ広がるのを特に確実に防止することができる。これにより、へき開位置の位置精度をより高めることができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、Si−CH結合を選択的に切断することができる。
また、接合膜3内にへき開を生じさせるためのエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、不活性ガス雰囲気(特に、窒素ガス雰囲気)中で行うのが好ましい。これにより、接合膜3内に効率よくエネルギーが供給されて、接合膜3内により確実にへき開が生じることとなる。
また、接合膜3を加熱する場合、接合体1を加熱する際の温度は、好ましくは100〜400℃程度とされ、より好ましくは150〜300℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、第1の基材21および第2の基材22が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜3にへき開を確実に生じさせることができる。
また、加熱時間は、接合膜3内にへき開が生じる程度の時間に設定される。具体的には、加熱する温度、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、10〜180分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
なお、接合用エネルギーを付与する方法と、剥離用エネルギーを付与する方法とは、同一であっても、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。これらを同一の方法とすれば、剥離用エネルギーの大きさと接合用エネルギーの大きさとを比較的容易に設定できることから、前述したように剥離用エネルギーの大きさを接合用エネルギーの大きさよりも容易に大きくすることができる。また、これらのエネルギーを付与するために用いる装置を同一のものとし得ること、すなわち、同一の装置で接合体1の形成から剥離まで行え得ることから、コストの削減を図ることができる。
以上のように、接合膜3に剥離用エネルギーを付与するという容易な方法で、第1の基材21から第2の基材22を効率よく剥離することができる。そのため、基材21、22同士が異なる材料で構成される場合であったとしても、基材21、22毎に分別して再利用に供することができるため、接合体1のリサイクル率を確実に向上させることができる。
<液滴吐出ヘッド>
次に、上述した接合体をインクジェット式記録ヘッドに適用した場合の実施形態について説明する。
図9は、インクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を示す分解斜視図、図10は、図9に示すインクジェット式記録ヘッドの主要部の構成を示す断面図、図11は、図9に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。なお、図9は、通常使用される状態とは、上下逆に示されている。
図9に示すインクジェット式記録ヘッド10は、図11に示すようなインクジェットプリンタ9に搭載されている。
図11に示すインクジェットプリンタ9は、装置本体92を備えており、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ921と、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口922と、上部面に操作パネル97とが設けられている。
操作パネル97は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。
また、装置本体92の内部には、主に、往復動するヘッドユニット93を備える印刷装置(印刷手段)94と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置94に送り込む給紙装置(給紙手段)95と、印刷装置94および給紙装置95を制御する制御部(制御手段)96とを有している。
制御部96の制御により、給紙装置95は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、ヘッドユニット93の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット93が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれる。すなわち、ヘッドユニット93の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
印刷装置94は、ヘッドユニット93と、ヘッドユニット93の駆動源となるキャリッジモータ941と、キャリッジモータ941の回転を受けて、ヘッドユニット93を往復動させる往復動機構942とを備えている。
ヘッドユニット93は、その下部に、多数のノズル孔111を備えるインクジェット式記録ヘッド10(以下、単に「ヘッド10」と言う。)と、ヘッド10にインクを供給するインクカートリッジ931と、ヘッド10およびインクカートリッジ931を搭載したキャリッジ932とを有している。
なお、インクカートリッジ931として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。
往復動機構942は、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸943と、キャリッジガイド軸943と平行に延在するタイミングベルト944とを有している。
キャリッジ932は、キャリッジガイド軸943に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト944の一部に固定されている。
キャリッジモータ941の作動により、プーリを介してタイミングベルト944を正逆走行させると、キャリッジガイド軸943に案内されて、ヘッドユニット93が往復動する。そして、この往復動の際に、ヘッド10から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
給紙装置95は、その駆動源となる給紙モータ951と、給紙モータ951の作動により回転する給紙ローラ952とを有している。
給紙ローラ952は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ952aと駆動ローラ952bとで構成され、駆動ローラ952bは給紙モータ951に連結されている。これにより、給紙ローラ952は、トレイ921に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置94に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ921に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
制御部96は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置94や給紙装置95等を制御することにより印刷を行うものである。
制御部96は、いずれも図示しないが、主に、各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、圧電素子(振動源)14を駆動して、インクの吐出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置94(キャリッジモータ941)を駆動する駆動回路、給紙装置95(給紙モータ951)を駆動する駆動回路、および、ホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとを備えている。
また、CPUには、例えば、インクカートリッジ931のインク残量、ヘッドユニット93の位置等を検出可能な各種センサ等が、それぞれ電気的に接続されている。
制御部96は、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。CPUは、この印刷データを処理して、この処理データおよび各種センサからの入力データに基づいて、各駆動回路に駆動信号を出力する。この駆動信号により圧電素子14、印刷装置94および給紙装置95は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
以下、ヘッド10について、図9および図10を参照しつつ詳述する。
ヘッド10は、ノズル板11と、インク室基板12と、振動板13と、振動板13に接合された圧電素子(振動源)14とを備えるヘッド本体17と、このヘッド本体17を収納する基体16とを有している。なお、このヘッド10は、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成する。
ノズル板11は、例えば、SiO、SiN、石英ガラスのようなシリコン系材料、Al、Fe、Ni、Cuまたはこれらを含む合金のような金属系材料、アルミナ、酸化鉄のような酸化物系材料、カーボンブラック、グラファイトのような炭素系材料等で構成されている。
このノズル板11には、インク滴を吐出するための多数のノズル孔111が形成されている。これらのノズル孔111間のピッチは、印刷精度に応じて適宜設定される。
ノズル板11には、インク室基板12が固着(固定)されている。
このインク室基板12は、ノズル板11、側壁(隔壁)122および後述する振動板13により、複数のインク室(キャビティ、圧力室)121と、インクカートリッジ931から供給されるインクを貯留するリザーバ室123と、リザーバ室123から各インク室121に、それぞれインクを供給する供給口124とが区画形成されている。
各インク室121は、それぞれ短冊状(直方体状)に形成され、各ノズル孔111に対応して配設されている。各インク室121は、後述する振動板13の振動により容積可変であり、この容積変化により、インクを吐出するよう構成されている。
インク室基板12を得るための母材としては、例えば、シリコン単結晶基板、各種ガラス基板、各種樹脂基板等を用いることができる。これらの基板は、いずれも汎用的な基板であるので、これらの基板を用いることにより、ヘッド10の製造コストを低減することができる。
一方、インク室基板12のノズル板11と反対側には、振動板13が接合され、さらに振動板13のインク室基板12と反対側には、複数の圧電素子14が設けられている。
また、振動板13の所定位置には、振動板13の厚さ方向に貫通して連通孔131が形成されている。この連通孔131を介して、前述したインクカートリッジ931からリザーバ室123に、インクが供給可能となっている。
各圧電素子14は、それぞれ、下部電極142と上部電極141との間に圧電体層143を介挿してなり、各インク室121のほぼ中央部に対応して配設されている。各圧電素子14は、圧電素子駆動回路に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。
各圧電素子14は、それぞれ、振動源として機能し、振動板13は、圧電素子14の振動により振動し、インク室121の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。
基体16は、例えば各種樹脂材料、各種金属材料等で構成されており、この基体16にノズル板11が固定、支持されている。すなわち、基体16が備える凹部161に、ヘッド本体17を収納した状態で、凹部161の外周部に形成された段差162によりノズル板11の縁部を支持する。
以上のような、ノズル板11とインク室基板12との接合、インク室基板12と振動板13との接合、およびノズル板11と基体16との接合のうち、少なくとも1箇所を接合する際に前述した接合の形成方法が用いられる。
換言すれば、ノズル板11とインク室基板12との接合体、インク室基板12と振動板13との接合体、およびノズル板11と基体16との接合体のうち、少なくとも1つに上述した接合体が適用されている。
このようなヘッド10は、上記の接合界面に前述したような接合膜3が介挿されて接合されている。このため、接合界面の接合強度および耐薬品性が高くなっており、これにより、各インク室121に貯留されたインクに対する耐久性および液密性が高くなっている。その結果、ヘッド10は、信頼性の高いものとなる。
また、非常に低温で信頼性の高い接合ができるため、線膨張係数の異なる材料でも大面積のヘッドができる点でも有利である。
また、ヘッド10の一部に上述した接合体が適用されていると、寸法精度の高いヘッド10を構築することができる。このため、ヘッド10から吐出されたインク滴の吐出方向や、ヘッド10と記録用紙Pとの離間距離を高度に制御することができ、インクジェットプリンタ9による印字結果の品位を高めることができる。
このようなヘッド10をリサイクル(分解)に供する際に、前述したような接合体の剥離方法を適用することにより、上述した接合体が適用されているノズル板11とインク室基板12との接合体、インク室基板12と振動板13との接合体、およびノズル板11と基体16との接合体のうちの少なくとも1つを確実に剥離することができる。その結果、これらの接合体を、それぞれ、ノズル板11とインク室基板12との分解体、インク室基板12と振動板13との分解体、およびノズル板11と基体16との分解体の少なくとも1つに分解でき、これらを部材毎に再利用することができるため、リサイクル率の向上を確実に図ることができる。
このようなヘッド10は、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子14の下部電極142と上部電極141との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体層143に変形が生じない。このため、振動板13にも変形が生じず、インク室121には容積変化が生じない。したがって、ノズル孔111からインク滴は吐出されない。
一方、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電素子14の下部電極142と上部電極141との間に一定電圧が印加された状態では、圧電体層143に変形が生じる。これにより、振動板13が大きくたわみ、インク室121の容積変化が生じる。このとき、インク室121内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル孔111からインク滴が吐出される。
1回のインクの吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極142と上部電極141との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子14は、ほぼ元の形状に戻り、インク室121の容積が増大する。なお、このとき、インクには、インクカートリッジ931からノズル孔111へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気がノズル孔111からインク室121へ入り込むことが防止され、インクの吐出量に見合った量のインクがインクカートリッジ931(リザーバ室123)からインク室121へ供給される。
このようにして、ヘッド10において、印刷させたい位置の圧電素子14に、圧電素子駆動回路を介して吐出信号を順次入力することにより、任意の(所望の)文字や図形等を印刷することができる。
また、ヘッド10は、圧電素子14の代わりに電気熱変換素子を有していてもよい。つまり、ヘッド10は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してインクを吐出するバブルジェット方式(「バブルジェット」は登録商標))のものであってもよい。
なお、かかる構成のヘッド10において、ノズル板11には、撥液性を付与することを目的に形成された被膜114が設けられている。これにより、ノズル孔111からインク滴が吐出される際に、このノズル孔111の周辺にインク滴が残存するのを確実に防止することができる。その結果、ノズル孔111から吐出されたインク滴を目的とする領域に確実に着弾させることができる。
また、前述した接合体は、本実施形態で説明したような液滴吐出ヘッド以外のものに適用可能であることは言うまでもない。具体的には、接合体は、例えば、半導体装置、MEMS、マイクロリアクタ等に適用することができる。
以上、本発明の接合膜検査方法および接合膜検査装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合膜検査装置では、必要に応じて、1以上の任意の構成を追加してもよい。
本発明の接合膜検査方法および接合膜検査装置の検査対象である接合膜を用いた接合体の一例を示す縦断面図である。 図1に示す接合体の形成方法の第1の例を説明するための図(縦断面図)である。 図1に示す接合体の形成方法の第1の例を説明するための図(縦断面図)である。 図1に示す接合体の形成方法の第2の例を説明するための図(縦断面図)である。 本発明の実施形態にかかる接合膜検査装置(第1の検査方法に用いる装置)の概略構成を示す模式図である。 図5に示す接合膜検査装置における接合膜の存在領域または接合領域の特定を説明するための図である。 本発明の他の実施形態にかかる接合膜検査装置(第2の検査方法に用いる装置)の概略構成を示す模式図である。 図1に示す接合体を剥離する過程を説明するための図(縦断面図)である。 インクジェット式記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)を示す分解斜視図である。 図9に示すインクジェット式記録ヘッドの主要部の構成を示す断面図である。 図9に示すインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施形態を示す概略図である。
符号の説明
1……接合体 21……第1の基材 22……第2の基材 23、24……接合面 3……接合膜 30……液状被膜 31……液滴 32……表面 201……載置手段 203……撮像手段 204……特定手段 205……判断手段 206……報知手段 207……制御手段 200A、200B……接合膜検査装置 202A、202B……エネルギー付与手段 203a……撮像素子 10……インクジェット式記録ヘッド 11……ノズル板 111……ノズル孔 114……被膜 12……インク室基板 121……インク室 122……側壁 123……リザーバ室 124……供給口 13……振動板 131……連通孔 14……圧電素子 141……上部電極 142……下部電極 143……圧電体層 16……基体 161……凹部 162……段差 17……ヘッド本体 9……インクジェットプリンタ 92……装置本体 921……トレイ 922……排紙口 93……ヘッドユニット 931……インクカートリッジ 932……キャリッジ 94……印刷装置 941……キャリッジモータ 942……往復動機構 943……キャリッジガイド軸 944……タイミングベルト 95……給紙装置 951……給紙モータ 952……給紙ローラ 952a……従動ローラ 952b……駆動ローラ 96……制御部 97……操作パネル P……記録用紙

Claims (18)

  1. シリコーン材料を含んで構成され、接合用エネルギーを付与することにより発現した接着性によって第1の基材の接合面と第2の基材の接合面とを接合する接合膜の接合領域を特定する接合膜検査方法であって、
    前記接合膜には、エネルギーの付与により発光する発光物質が添加されており、
    前記接合膜の少なくとも一部の領域に前記接合用エネルギーを付与し、これにより前記領域に前記接着性を発現させるとともに前記領域を発光させ、
    その発光領域を検出することにより、前記接合領域を特定することを特徴とする接合膜検査方法。
  2. シリコーン材料を含んで構成され、接合用エネルギーを付与することにより発現した接着性によって第1の基材の接合面と第2の基材の接合面とを接合する接合膜の存在領域または接合領域を特定する接合膜検査方法であって、
    前記接合膜には、エネルギーの付与により発光する発光物質が添加されており、
    前記接合膜に前記接合用エネルギーまたは検査用エネルギーを付与し、これにより前記接合膜を発光させ、
    その発光領域を検出することにより、前記存在領域または前記接合領域を特定することを特徴とする接合膜検査方法。
  3. 前記接合用エネルギーまたは前記検査用エネルギーの付与は、前記接合膜の存在領域を包含する領域に対して行う請求項2に記載の接合膜検査方法。
  4. 前記検査用エネルギーの付与は、前記接合用エネルギーの付与後に行うものであり、前記接合膜に検査用エネルギーを付与することにより前記接合膜を発光させ、その発光領域を検出することにより、前記存在領域または前記接合領域を特定する請求項2または3に記載の接合膜検査方法。
  5. 前記検査用エネルギーの付与は、前記第1の基材の接合面と前記第2の基材の接合面とが前記接合膜を介して接合される前の状態で行う請求項4に記載の接合膜検査方法。
  6. 前記検査用エネルギーの付与は、前記第1の基材の接合面と前記第2の基材の接合面とが前記接合膜を介して接合されている状態で行う請求項4に記載の接合膜検査方法。
  7. 前記第1の基材および前記第2の基材のうちの少なくとも一方の基材は、透明性を有し、前記第1の基材または前記第2の基材を介して前記接合膜の形成パターンを検出し得るように構成されている請求項6に記載の接合膜検査方法。
  8. 前記第1の基材および前記第2の基材のうちの少なくとも一方の基材は、前記検査用エネルギーに対する透過性を有する請求項6または7に記載の接合膜検査方法。
  9. 前記接合用エネルギーおよび/または前記検査用エネルギーは、紫外線である請求項1ないし8のいずれかに記載の接合膜検査方法。
  10. 前記発光物質は、燐光材料を含んで構成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の接合膜検査方法。
  11. 予め設定されたパターンと、前記特定された領域のパターンとを比較し、その比較結果が所定条件であるときに、良と判断し、それ以外のときに、否と判断する請求項1ないし10のいずれかに記載の接合膜検査方法。
  12. シリコーン材料を含んで構成されるとともに発光物質が添加され、接合用エネルギーを付与することにより発現した接着性によって第1の基材の接合面と第2の基材の接合面とを接合する接合膜の接合領域を特定する接合膜検査装置であって、
    前記接合膜への前記接合用エネルギーの付与により発光した発光領域を撮像する撮像手段と、
    前記撮像手段によって撮像された発光領域に基づいて前記接合領域を特定する特定手段とを有することを特徴とする接合膜検査装置。
  13. シリコーン材料を含んで構成されるとともに発光物質が添加され、接合用エネルギーを付与することにより発現した接着性によって第1の基材の接合面と第2の基材の接合面とを接合する接合膜の存在領域または接合領域を特定する接合膜検査装置であって、
    前記接合膜への前記接合用エネルギーまたは検査用エネルギーの付与により発光した発光領域を撮像する撮像手段と、
    前記撮像手段によって撮像された発光領域に基づいて前記存在領域または前記接合領域を特定する特定手段とを有することを特徴とする接合膜検査装置。
  14. 前記接合膜に前記検査用エネルギーを付与するエネルギー付与手段を有する請求項12または13に記載の接合膜検査装置。
  15. 前記エネルギー付与手段は、前記検査用エネルギーとして紫外線を前記接合膜に付与するように構成されている請求項14に記載の接合膜検査装置。
  16. 前記撮像手段は、撮像素子を備える請求項12ないし15のいずれかに記載の接合膜検査装置。
  17. 前記特定手段は、前記撮像素子の各画素の受光強度に基づいて前記特定を行うように構成されている請求項16に記載の接合膜検査装置。
  18. 予め設定されたパターンと、前記特定手段によって特定された領域のパターンとを比較し、その比較結果が所定条件であるときに、良と判断し、それ以外のときに、否と判断する判断手段を有する請求項12ないし17のいずれかに記載の接合膜検査装置。
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