JP2009302473A - 半導体レーザ素子とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】いわゆる窓構造を含む高出力半導体レーザ素子を改善する。
【解決手段】半導体レーザ素子は、GaAs基板(1)上において下部層(2−4)、活性層(5a)、AlGaAs上部第1層(6)、およびAlGaInP上部第2層(7)をこの順で含む化合物半導体積層構造(20a)を有し、半導体積層構造は共振器端面を有し、活性層は相対的に小さな禁制帯幅を有する井戸層と相対的に大きな禁制帯幅を有する障壁層とが交互に積層された量子井戸構造を有し、下部層、上部第1層、および上部第2層は井戸層に比べて大きな禁制帯幅を有し、共振器端面部において不純物の拡散によって活性層が無秩序化されており、井戸層と障壁層とがGaAs基板に対して互いに異なる歪を有することを特徴としている。
【選択図】図1
【解決手段】半導体レーザ素子は、GaAs基板(1)上において下部層(2−4)、活性層(5a)、AlGaAs上部第1層(6)、およびAlGaInP上部第2層(7)をこの順で含む化合物半導体積層構造(20a)を有し、半導体積層構造は共振器端面を有し、活性層は相対的に小さな禁制帯幅を有する井戸層と相対的に大きな禁制帯幅を有する障壁層とが交互に積層された量子井戸構造を有し、下部層、上部第1層、および上部第2層は井戸層に比べて大きな禁制帯幅を有し、共振器端面部において不純物の拡散によって活性層が無秩序化されており、井戸層と障壁層とがGaAs基板に対して互いに異なる歪を有することを特徴としている。
【選択図】図1
Description
本発明は、光ディスクシステムや光磁気ディスクシステムなどの光情報処理装置などに使用される半導体レーザ素子に関し、特にいわゆる窓構造を有する半導体レーザ素子の改善に関するものである。
近年では、記録再生可能なCDディスクやDVDディスクの普及により、記録に必要な高出力のレーザ光を照射し得る赤外レーザや赤色レーザの需要が拡大し続けている。現在では、DVDの記録とCDの記録との両方が可能なドライブが一般的となっている。最近では、青色レーザまたは青紫色レーザを含めて一つのドライブで3種類のレーザを搭載することが要求されており、このことによってドライブの構造が複雑化することが確実となっている。
ドライブの動作の高速化のためには、より高出力のレーザが求められている。また、複数の波長の光を一つの光学系で扱うために、光学系の設計は複数の波長の光の各々に最適な設計にすることができずに中間的な設計となっている。したがって、各波長の光の利用効率も低下し、その利用効率低下を補うように高出力のレーザが求められている。
ところで、CD用に用いられる波長780nm帯の赤外レーザの高出力化を可能にするために、いわゆる窓構造を有する半導体レーザ素子が例えば特許文献1の特開2002−26447号公報において提案されている。
図10において、先行技術による窓構造を有する半導体レーザ素子の一例が模式的斜視図で示されている。この半導体レーザ素子においては、n型GaAs基板1上に、n型GaInPバッファ層2、n型AlGaInP下部クラッド層3、AlGaAs下部ガイド層4、量子井戸活性層5、AlGaAs上部ガイド層6、p型AlGaInP上部第1クラッド層7、p型GaInPエッチングストップ層8、p型AlGaInP上部第2クラッド層9、p型GaInP中間層10、およびp型GaAsキャップ層11が順次積層されて、半導体積層構造20が形成されている。
量子井戸活性層5は、2層のAlGaAs井戸層とこれらに挟まれた1層のAlGaAs障壁層で構成されている。この活性層5における組成比と層厚は、波長780nmの光が発振するように設定されている。
共振器端面部には、窓部12が不純物拡散によって形成されている。この窓部12においては、活性層5中の量子井戸が無秩序化されている。
上部第2クラッド層9からキャップ層11までの層は、レーザ発光領域に対応する領域にストライプ状リッジ13が形成されるように、部分的にエッチング除去されている。
ストライプ状リッジ13が形成された半導体積層構造20の表面は、電流を注入するためのリッジ頂面以外の領域においてSiO2絶縁膜14によって覆われている。
そして、露出されているリッジ頂面を覆うようにp側電極15が形成され、基板1の下面上にはn側電極16が形成されている。
図11は、図10に示されているような半導体レーザ素子の製造工程を説明するための模式的断面図である。この図において、まずn型GaAs基板1上に、n型GaInPバッファ層2、n型AlGaInP下部クラッド層3、AlGaAs下部ガイド層4、量子井戸活性層5、AlGaAs上部ガイド層6、p型AlGaInP上部第1クラッド層7、p型GaInPエッチングストップ層8、p型AlGaInP上部第2クラッド層9、p型GaInP中間層10、およびp型GaAsキャップ層11がMOCVD法(有機金属気相堆積法)によって順次積層され、半導体積層構造20が形成される。
図12は、図11に続く工程を説明するための模式的断面図である。この図においては、半導体積層構造20上において、共振器端面に対応する部分にのみにZnO膜12zを形成する。その後に熱処理を行い、ZnO膜12zから共振器端面にのみZnを拡散させ、活性層5に含まれる井戸層と障壁層を混晶化して無秩序化させる。
図13は、図12に続く工程を説明するための模式的断面図である。この図においては、ZnO膜12zが除去され、共振器方向にストライプ状のSiO2マスク14mを形成する。そして、エッチングストップ層8より上の上部第2クラッド層9からキャップ層11までがドライエッチングによって部分的除去される。こうして、ストライプ状リッジ13が形成される。
その後マスク14mが除去され、図10に示されているように、ストライプ状リッジ13が形成された半導体積層構造20の表面は、電流を注入するためのリッジ頂面以外の領域においてSiO2絶縁膜14によって覆われる。そして、露出されているリッジ頂面を覆うようにp側電極15が形成され、基板1の下面上にはn側電極16が形成される。その後、窓部12を通って基板を劈開して共振器端面を形成するとともにチップ分割を行なって、図10の半導体レーザ素子が完成する。
図10の半導体レーザ素子以前の技術にしたがって窓構造を含まない赤外レーザ素子においては、通常は、半導体積層構造に含まれるバッファ層、クラッド層、エッチングストップ層、中間層などがAlGaAs(砒化物)系材料で形成されている。しかし、このような半導体積層構造において図12に示されているような方法で窓構造を形成しようとすれば、AlGaAs層中におけるZnの拡散速度が遅いので、窓構造の形成が非常に困難である。
これに対して、図10の半導体レーザ素子では、活性層5より上側の上部第1クラッド層7から中間層10までがAlGaInP(燐化物)系材料で形成されている。AlGaInP(燐化物)系材料においては、AlGaAs(砒化物)系材料に比べて、Znの拡散速度が10倍程度速い。したがって、熱処理によってZnの拡散を容易に行なうことができ、これによって窓構造を形成することができる。
特開2002−26447号公報
本発明者は、図10の半導体レーザ素子に関して、Znの拡散熱処理の前と後において、原子濃度の変化をSIMS(2次イオン質量分析)によって調べた。その結果、Znの拡散熱処理を行なえば、量子井戸活性層5が無秩序化されるだけでなく、AlGaInP系材料の上部第1クラッド層7からAlGaAs材料の上部ガイド層6へIn元素が顕著に拡散することが判明した。
図14と図15のグラフは、それぞれZnの拡散熱処理の前と後におけるIn、As、およびPの原子濃度分布を示している。すなわち、これらのグラフの横軸はSIMS測定における測定深さ(μm)を表し、縦軸は原子濃度(a.u.:任意単位)を表している。また、これらのグラフにおける一点鎖線はAlGaInP上部第1クラッド層7とAlGaAs上部ガイド層6との界面を表し、実線の曲線はIn原子の濃度分布を表し、点線の曲線はAs原子の濃度分布を表し、そして破線の曲線はP原子の濃度分布を表している。
図14と図15の比較から分かるように、Znの拡散熱処理後においては、AlGaInP上部第1クラッド層7からAlGaAs上部ガイド層6側へIn原子が顕著に拡散している。特に、上部第1クラッド層7と上部ガイド層6との界面からそのガイド層側へ10〜20nm程度の範囲においてIn原子濃度がピーク状に高いいわゆるパイルアップの状態となっている。他方、P原子とAs原子に関しては、いずれかの層への顕著な拡散は認められない。
AlGaAs上部ガイド層6は、Inが付加さればその禁制帯幅が小さくなり、Pが付加されればその禁制帯幅が大きくなる。上部ガイド層6内でInがパイルアップしている領域では、拡散によるP原子濃度の増大が小さいので、上部ガイド層6の禁制帯幅は小さくなる。このことによって、上部ガイド層6中の一部においてでもその禁制帯幅が780nmの波長の光を吸収するほどに小さくなれば、その波長のレーザ発振光が窓部12において吸収され、レーザ素子が高出力動作時に劣化する。
以上のような先行技術における状況に鑑み、本発明は、窓構造を含む高出力半導体レーザ素子を改善することを目的としている。
本発明の第1の態様による半導体レーザ素子は、GaAs基板上において下部層、活性層、AlGaAs上部第1層、およびAlGaInP上部第2層をこの順で含む化合物半導体積層構造を有し、半導体積層構造は共振器端面を有し、活性層は相対的に小さな禁制帯幅を有する井戸層と相対的に大きな禁制帯幅を有する障壁層とが交互に積層された量子井戸構造を有し、下部層、上部第1層、および上部第2層は井戸層に比べて大きな禁制帯幅を有し、共振器端面部において不純物の拡散によって活性層が無秩序化されており、井戸層と障壁層とがGaAs基板に対して互いに異なる歪を有することを特徴としている。
なお、井戸層はInを含み、障壁層に含まれるInの濃度は井戸層に比べて小さい値からゼロまでの範囲内にあることが好ましい。また、井戸層がInxAlyGa1-x-yAs(x>0;y>0;1≧x+y)であり、障壁層がAlGaAsであることが好ましい。特に、井戸層はInxAlyGa1-x-yAs(x>0;0.2≧y>0;1≧x+y)であることが好ましく、InxAlyGa1-x-yAs(0.2≧x>0;y>0;1≧x+y)であることも好ましい。共振器端面部において活性層を無秩序化させる不純物は、Znであることが好ましい。このような半導体レーザ素子において、770〜790nmの発振波長を好ましく得ることができる。
上述の第1の態様の半導体レーザ素子を製造するための方法では、共振器端面部に対応する領域において、上部第2層側から不純物を拡散させて活性層を無秩序化させることができる。
本発明の第2態様による半導体レーザ素子は、1つのGaAs基板上において互いに異なる発振波長を有する複数の半導体レーザ部を含み、各半導体レーザ部は活性層とその両端の共振器端面を含み、かつ活性層は共振器端面部において不純物の拡散によって無秩序化されており、複数の半導体レーザ部に含まれる第1種の半導体レーザ部は上述の第1の態様の半導体レーザ素子に対応する第1種の化合物半導体積層構造を有し、複数の半導体レーザ部に含まれる第2種の半導体レーザ部は、下部層、この下部層より禁制帯幅の小さいAlGaInP量子井戸活性層、およびこの活性層に隣接しかつ禁制帯幅のより大きいAlGaInP上部層をこの順で含む第2種の化合物半導体積層構造を有していることを特徴としている。
この第2の態様の半導体レーザ素子を製造するための方法では、GaAs基板上において第1種化合物半導体積層構造を形成し、基板上の第1種のストライプ状領域上に第1種半導体積層構造を残すようにこの第1種半導体積層構造を部分的にエッチング除去し、第1種ストライプ状領域上に残された第1種半導体積層構造と基板を覆うように第2種化合物半導体積層構造を形成し、第1種ストライプ状領域上の第1種半導体積層構造をそのまま保持しかつ第1種ストライプ状領域に対して平行でかつ隔てられている第2種のストライプ状領域上に第2種半導体積層構造を残すようにこの第2種半導体積層構造を部分的にエッチング除去し、共振器端面部に対応する領域において第1種と第2種の半導体積層構造の上面から不純物を拡散させて活性層を無秩序化させることができる。この製造方法において、第1種と第2種の化合物半導体積層構造の形成順を逆にしてもよい。
以上のような本発明によれば、上部ガイド層と上部クラッド層との界面近傍において、レーザ発振光を吸収する領域が窓部の形成に伴って形成されることを回避することができる。すなわち、共振器端面部に吸収領域を生じることなく窓構造を有する高出力半導体レーザ素子が得られる。
(実施形態1)
図1の模式的斜視図は、本発明の実施形態1による窓構造を有する半導体レーザ素子を示している。この図1の半導体レーザ素子は、図10の半導体レーザ素子に比べて、半導体積層構造20が半導体積層構造20aに変更されていることのみにおいて異なっている。半導体積層構造20aは、半導体積層構造20に比べて、量子井戸活性層5が量子井戸活性層5aに変更され、これに伴って窓部12が窓部12aに改善されていることにおいて顕著に異なっている。半導体積層構造20aに含まれる活性層5a以外の層は半導体積層構造20に含まれる活性層5以外の層と同じ元素の組合せで形成されており、それらの組成比は微調整され得る。
図1の模式的斜視図は、本発明の実施形態1による窓構造を有する半導体レーザ素子を示している。この図1の半導体レーザ素子は、図10の半導体レーザ素子に比べて、半導体積層構造20が半導体積層構造20aに変更されていることのみにおいて異なっている。半導体積層構造20aは、半導体積層構造20に比べて、量子井戸活性層5が量子井戸活性層5aに変更され、これに伴って窓部12が窓部12aに改善されていることにおいて顕著に異なっている。半導体積層構造20aに含まれる活性層5a以外の層は半導体積層構造20に含まれる活性層5以外の層と同じ元素の組合せで形成されており、それらの組成比は微調整され得る。
より具体的には、量子井戸活性層5aは、量子井戸活性層5に比べて、2層の井戸層の材料がAlGaAsからInAlGaAsに変更されていることにおいて異なっており、それらの井戸層に挟まれた1層の障壁層の材料はAlGaAsから変更されていない。ただし、活性層5aにおける組成比と層厚も、波長780nmの光が発振するように設定されている。また、このように活性層5aが活性層5から変更されたことによって、窓部12aにおいては窓部12に比べて元素濃度分布が少し異なっている。
図1の半導体レーザ素子も、図11から図13を参照して説明された方法と同様の方法によって作製することができる。すなわち、MOCVDで活性層5を形成する代わりに活性層5aを形成する変更を行なうことによって、図1の半導体レーザ素子を作製することができる。
本実施形態1による図1の半導体レーザ素子は、共振器端面部に窓構造12aを有し、780nmの波長にて高出力まで発振させることができる。この理由は、以下のように考えることができる。
上述のように、図1においては、活性層5aに含まれる井戸層がInAlGaAsで形成され、障壁層がAlGaAsで形成されている。ここで、AlAs結晶は、GaAs結晶に比べて、ほぼ同じ格子定数を有しかつ大きな禁制帯幅を有している。他方、InAs結晶は、GaAs結晶に比べて、大きな格子定数を有しかつ小さな禁制帯幅を有している。したがって、InAlGaAs混晶においては、Al濃度を増大させれば禁制帯幅が増大するが、格子定数はほとんど変化しない。他方、InAlGaAs混晶において、In濃度を増大させれば、禁制帯幅が減少するとともに格子定数が増大する。
すなわち、活性層5aに含まれるAlGaAs障壁層は、GaAs基板1に比べて、ほぼ同等の格子定数を有している。したがって、AlGaAs障壁層は、GaAs基板1から格子定数差に基づく応力を受けなくて内部歪を生じない。他方、Inを含むInAlGaAs井戸層は、GaAs基板に比べて、大きな格子定数を有している。したがって、GaAs基板1に拘束されているInAlGaAs井戸層は圧縮歪を含むことになる。
このように井戸層と障壁層との間で内部歪を異ならせた場合、無秩序化のための不純物の拡散熱処理を行なう際に、互いの歪量の差を緩和する方向に活性層5a内で構成元素が動きやすくなる。したがって、従来のようにAlGaAs井戸層とAlGaAs障壁層との間で内部歪にほとんど相違がない場合に比較して、活性層5aの窓部における無秩序化のための不純物拡散熱処理は短時間または低温度で完了させることが可能になる。また、このような熱処理の時間の短縮または温度の低減に伴って、上部AlGaInPクラッド層7から上部AlGaAsガイド層6へのInの拡散も抑制され、従来に比べて上部ガイド層における禁制帯幅の縮小も少なくなり、この部分における発振光の吸収も抑制することができる。
なお、本実施形態1では障壁層が無歪で活性層が歪を含む例が説明されたが、要は障壁層と活性層との間において互いに歪状態が異なっていれば、本発明の効果を得ることができる。
他方、本実施形態1のように半導体レーザ素子の活性層に含まれる量子井戸層が歪を含む場合、井戸層が無歪の場合に比べて、活性層における利得が向上して低い閾値電流でレーザ発振させることができる。その結果、レーザ発振の消費電力を低減させることができる。
ところで、Alを含む化合物半導体層においては、Alの混晶比の増大に伴って不純物としての酸素の濃度が増大する傾向にある。これは、Alが酸素と結合しやすいことに起因して、化合物半導体層の堆積時にAlとともに酸素が取込まれる傾向があることによる。他方、井戸層はレーザ発振時にキャリアが注入される層であるので、不純物準位の増大に伴って非発光再結合が増大し、半導体レーザ素子の劣化を引き起こしやすくなる。具体的には、井戸層のAl混晶比(III族元素におけるAlの比率)を0.2以下にすれば半導体レーザ素子の劣化が抑制され、そのレーザ素子を光ディスク用などに使用する場合の十分な信頼性を確保することができる。また、Al混晶比を0.14以下にすれば、レーザ素子のさらに高出力の動作において十分な信頼性を確保することができる。
前述のように、InAlGaAs井戸層の格子定数は、In混晶比(III族元素におけるInの比率)の増大に伴って増大する。したがって、井戸層のIn混晶比があまりに大きくなれば、井戸層とGaAs基板との格子定数差も大きくなり過ぎ、井戸層内に転位などの格子欠陥が生じやすくなる。これらの格子欠陥も、半導体レーザ素子の劣化を早めるように作用する。具体的には、井戸層のIn混晶比を0.2以下にすればレーザ素子の劣化が抑制され、そのレーザ素子を光ディスク用などに使用する場合の十分な信頼性を確保することができる。
また、前述のように窓部形成のためには不純物を熱処理によって拡散させるが、拡散速度の大きな不純物の場合には熱処理の温度低減や時間短縮が可能である。この観点から、窓部形成のための不純物拡散に用いられる元素として、Znが好ましく用いられ得る。
さらに、活性層の組成や厚さなどを調整して発振波長を770〜790nmの範囲内に設定し、これに適合するように他の層の組成比や厚さも微調整とすることによって、その井戸層を含む半導体レーザ素子がCD用の光ディスク装置における光源として使用され得る。
(実施形態2)
図2の模式的斜視図は、本発明の実施形態2による多波長半導体レーザ素子を示している。この多波長半導体レーザ素子においては、一つのGaAs基板1上に第1の半導体レーザ部31と第2の半導体レーザ部32が形成されている。これらの半導体レーザ部は基板上で互いに分離されており、互いに異なる波長の光を発振する。本実施形態2では、第1半導体レーザ部31は、実質的に図1の半導体レーザ素子と同じ構造を有している。
図2の模式的斜視図は、本発明の実施形態2による多波長半導体レーザ素子を示している。この多波長半導体レーザ素子においては、一つのGaAs基板1上に第1の半導体レーザ部31と第2の半導体レーザ部32が形成されている。これらの半導体レーザ部は基板上で互いに分離されており、互いに異なる波長の光を発振する。本実施形態2では、第1半導体レーザ部31は、実質的に図1の半導体レーザ素子と同じ構造を有している。
他方、第2半導体レーザ部32は、第1半導体レーザ部31に比べて、半導体積層構造20aが半導体積層構造20bに変更されていることのみにおいて異なっている。半導体積層構造20bは、半導体積層構造20aに比べて、量子井戸活性層5aが量子井戸活性層5bに変更されるとともに、活性層5aを挟む上下のガイド層4と6が活性層5bを挟む上下のガイド層4aと6aに変更されていることにおいて顕著に異なっている。半導体積層構造20bに含まれる活性層5bおよび上下ガイド層4aと6a以外の層は半導体積層構造20aで対応する層と同じ元素の組合せで形成されており、それらの組成比は微調整され得る。
より具体的には、量子井戸活性層5bは、量子井戸活性層5aに比べて、2層の井戸層の材料がInAlGaAsからGaInPに変更され、これらの井戸層に挟まれた1層の障壁層の材料がAlGaAsからAlGaInPに変更されていることにおいて異なっている。ただし、活性層5bにおける組成比と層厚は、波長660nmの光が発振するように設定されている。また、上下のガイド層4aと6aは、上下のガイド層4と6に比べて、それらの材料がAlGaAsからAlGaInPに変更されていることにおいて異なっている。
図3は、図2に示されているような多波長半導体レーザ素子の製造工程を説明するための模式的断面図である。この図において、まずn型GaAs基板1上に、半導体積層構造20aがMOCVD法によって形成される。
図4は、図3に続く工程を説明するための模式的断面図である。この図においては、半導体積層構造20aがウエットエッチングによって部分的に除去される。より具体的には、基板1上において、幅80〜120μmの第1のストライプ状領域31aに半導体積層構造20aが残され、他の領域において基板上面が露出される。
図5は、図4に続く工程を説明するための模式的断面図である。この図においては、基板1の露出された上面と残された半導体積層構造20aとを覆うように、半導体積層構造20bがMOCVD法によって形成される。
図6は、図5に続く工程を説明するための模式的断面図である。この図においては、半導体積層構造20bがウエットエッチングによって部分的に除去される。より具体的には、基板1上において半導体積層構造20aをそのまま保持しつつ、第1ストライプ領域31aでそこから隔てられた平行幅80〜120μmの第2のストライプ状領域32aに半導体積層構造20bが残され、半導体積層構造20bが半導体積層構造20aから分離される。
図7は、図6に続く工程を説明するための模式的断面図である。ここで、図7(B)は、図7(A)中の線7X−7Xに沿った断面図を示している。この図7においては、半導体積層構造20aと20b上において、共振器端面に対応する部分にのみにZnO膜12zを形成する。その後に熱処理を行い、ZnO膜12zから共振器端面にのみZnを拡散させて窓部12aと12bを形成して、これらの窓部内で活性層5aと5bに含まれる井戸層と障壁層を混晶化して無秩序化させる。
図8は、図7に続く工程を説明するための模式的断面図である。この図においては、ZnO膜12zが除去される。そして、半導体積層構造20aと20bにおいて、図13の場合と同様の方法によって、リッジ部13aと13bがそれぞれ形成される。
図9は、図8に続く工程を説明するための模式的断面図である。この図においては、基板1の上面側において、リッジ部13aと13bの頂面以外を覆うようにSiO2絶縁膜14が形成される。
その後、露出されているリッジ頂面を覆うようにp側電極15が形成されて基板1の下面上にはn側電極16が形成される。そして、窓部12aを通って基板を劈開して共振器端面を形成するとともにチップ分割を行なって、図2に示されているような多波長半導体レーザ素子が完成する。
こうして得られる図2の多波長半導体レーザ素子においては、それぞれ780nmと660nmの波長で発振し得る第1半導体レーザ部31と第2半導体レーザ部の両方が共振器端面部に窓構造12aを有するので、いずれの波長においても高出力まで発振させることができる。したがって、例えばDVDとCDの両方に記録するドライブに関して、図2のような高出力の多波長半導体レーザ素子レーザを用いることによって、1つの光学系でドライブを作製することができる。
なお、本実施形態2において第2半導体レーザ部32に含まれるGaInP量子井戸とAlGaInP障壁層において、In濃度の増大に伴って格子定数が増大するとともに禁制帯幅が減少し、Al濃度を調整することによって格子定数を変化させることなく禁制帯幅を調整することができる。換言すれば、量子井戸活性層5bにおいて、井戸層と障壁層の歪を同等にして、井戸層の禁制帯幅を小さくしかつ障壁層の禁制帯幅を大きくすることができる。
本実施形態2におけるように、複数の半導体レーザ部31と32において同時に窓部の形成を行なう場合には、それぞれの窓部の形成に望まれる熱処理条件を近似させることが好ましい。例えば、活性層5a上にAlGaAs層6が形成されている半導体レーザ部31においては、AlGaAs層6中の不純物の拡散速度が遅いので、活性層上にAlGaInP層6aが形成されている半導体レーザ部32に比べて、活性層中の無秩序化のための熱処理に長い時間を要する。したがって、特に活性層上にAlGaAs層6が形成されている半導体レーザ部31に本発明による活性層の歪を適用して必要な熱処理時間を短くすることによって、両方の半導体レーザ部における窓部形成に必要な熱処理条件を近似させることができる。これによって、いずれの波長の半導体レーザ部31と32も高出力で発振し得る多波長半導体レーザ素子を安定して製造することが可能になる。
以上のように、本発明によれば、CD用として高出力まで安定して発光する半導体レーザ素子を容易に提供することができる。そして、このような高出力半導体レーザ素子をCDドライブに用いることによって、CDドライブの高速化を図ることが可能となる。
また本発明によれば、CD用とDVD用に2波長の光を高出力で出射し得る多波長半導体レーザ素子を容易に提供することができる。そして、複数の波長の光を共通の光学系で扱うマルチ光ディスクドライブにこのような高出力多波長半導体レーザ素子を用いることによって、マルチ光ディスクドライブの高速化を図ることが可能となる。
1 n型GaAs基板、2 n型GaInPバッファ層、3 n型AlGaInP下部クラッド層、4 AlGaAs下部ガイド層、4a AlGaInP下部ガイド層、5,5a,5b 量子井戸活性層、6 AlGaAs上部ガイド層、6a AlGaInP上部ガイド層、7 p型AlGaInP上部第1クラッド層、8 p型GaInPエッチングストップ層、9 p型AlGaInP上部第2クラッド層、10 p型GaInP中間層、11 p型GaAsキャップ層、12,12a,12b 窓部、12z ZnO膜、13,13a,13b リッジ部、14 SiO2膜、14m SiO2マスク、15 p側電極、16 n側電極、20,20a,20b 半導体積層構造、31,32 半導体レーザ部、31a,32a ストライプ状領域。
Claims (11)
- GaAs基板上において下部層、活性層、AlGaAs上部第1層、およびAlGaInP上部第2層をこの順で含む化合物半導体積層構造を有し、
前記半導体積層構造は共振器端面を有し、
前記活性層は相対的に小さな禁制帯幅を有する井戸層と相対的に大きな禁制帯幅を有する障壁層とが交互に積層された量子井戸構造を有し、
前記下部層、前記上部第1層、および前記上部第2層は前記井戸層に比べて大きな禁制帯幅を有し、
前記共振器端面部において不純物の拡散によって前記活性層が無秩序化されており、
前記井戸層と前記障壁層とが前記GaAs基板に対して互いに異なる歪を有することを特徴とする半導体レーザ素子。 - 前記井戸層はInを含み、前記障壁層に含まれるInの濃度は前記井戸層に比べて小さい値からゼロまでの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ素子。
- 前記井戸層がInxAlyGa1-x-yAs(x>0;y>0;1≧x+y)であり、前記障壁層がAlGaAsであることを特徴とする請求項2に記載の半導体レーザ素子。
- 前記井戸層がInxAlyGa1-x-yAs(x>0;0.2≧y>0;1≧x+y)であることを特徴とする請求項3に記載の半導体レーザ素子。
- 前記井戸層がInxAlyGa1-x-yAs(0.2≧x>0;y>0;1≧x+y)であることを特徴とする請求項3に記載の半導体レーザ素子。
- 前記共振器端面部において前記活性層を無秩序化させる前記不純物がZnであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
- 発振波長が770〜790nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
- 請求項1から7のいずれかの半導体レーザ素子を製造するための方法であって、前記共振器端面部に対応する領域において、前記半導体積層構造の上面から前記不純物を拡散させて前記活性層を無秩序化させることを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
- 1つのGaAs基板上において互いに異なる発振波長を有する複数の半導体レーザ部を含み、
各前記半導体レーザ部は活性層とその両端の共振器端面を含み、かつ前記活性層は前記共振器端面部において不純物の拡散によって無秩序化されており、
前記複数の半導体レーザ部に含まれる第1種の半導体レーザ部は請求項1ないし7のいずれかの半導体レーザ素子に対応する第1種の化合物半導体積層構造を有し、
前記複数の半導体レーザ部に含まれる第2種の半導体レーザ部は、下部層、この下部層より禁制帯幅の小さいAlGaInP量子井戸活性層、およびこの活性層に隣接しかつ禁制帯幅のより大きいAlGaInP上部層をこの順で含む第2種の化合物半導体積層構造を有していることを特徴とする半導体レーザ素子。 - 請求項9の半導体レーザ素子を製造するための方法であって、
前記GaAs基板上において前記第1種化合物半導体積層構造を形成し、
前記基板上の第1種のストライプ状領域上に前記第1種半導体積層構造を残すようにこの第1種半導体積層構造を部分的にエッチング除去し、
前記第1種ストライプ状領域上に残された前記第1種半導体積層構造と前記基板を覆うように前記第2種化合物半導体積層構造を形成し、
前記第1種ストライプ状領域上の前記第1種半導体積層構造をそのまま保持しかつ前記第1種ストライプ状領域に対して平行でかつ隔てられている第2種のストライプ状領域上に前記第2種半導体積層構造を残すようにこの第2種半導体積層構造を部分的にエッチング除去し、
前記共振器端面部に対応する領域において前記第1種と前記第2種の半導体積層構造の上面から前記不純物を拡散させて前記活性層を無秩序化させることを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。 - 請求項9の半導体レーザ素子を製造するための方法であって、
前記GaAs基板上において前記第2種化合物半導体積層構造を形成し、
前記基板上の第2種のストライプ状領域上に前記第2種半導体積層構造を残すようにこの第2種半導体積層構造を部分的にエッチング除去し、
前記第2種ストライプ状領域上に残された前記第2種半導体積層構造と前記基板を覆うように前記第1種化合物半導体積層構造を形成し、
前記第2種ストライプ状領域上の前記第2種半導体積層構造をそのまま保持しかつ前記第2種ストライプ状領域に対して平行でかつ隔てられている第1種のストライプ状領域上に前記第1種半導体積層構造を残すようにこの第1種半導体積層構造を部分的にエッチング除去し、
前記共振器端面部に対応する領域において前記第1種と前記第2種の半導体積層構造の上面から前記不純物を拡散させて前記活性層を無秩序化させることを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
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