JP2009301997A - 燃料電池用熱交換器の製造方法 - Google Patents

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正昭 田村
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健次郎 窪
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Abstract

【課題】熱交換器内部に残る残渣フラックスを短時間で取り除くことができ、残渣フラックスの循環水への溶出を防止することのできる燃料電池用熱交換器の製造方法を提供する。
【解決手段】残渣フラックス除去工程S5では、コア部20の流路内にアルカリ洗浄液を注入して洗浄するアルカリ洗浄工程S6と、流路内に酸洗浄液を注入して洗浄する酸洗浄工程S8と、物理的に残渣フラックスを取り除く物理処理工程S10と、流路内に温めた純水を注入して洗浄する温純水洗浄工程S13を組み合わせる。これらの各工程を組み合わせることで、残渣フラックス洗浄時間を大幅に短縮することができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、燃料電池用熱交換器の製造方法に関し、詳細には、残渣フラックの除去技術に関する。
例えば、駆動源として燃料電池を搭載した燃料電池自動車であるFCEV車(fuel cell electric vehicle)用の燃料電池として、例えば、高分子電解膜型の燃料電池システムが開発されている。このシステムは、燃料電池スタック内の水素燃料を、高分子電解膜に担持したプロトン触媒の作用でプロトン化し、高分子電解膜を隔てて存在する酸素との共働により電位発生を行うように構成されている。
このようなシステムでは、電極等の導電性部材が燃料電池スタック内に多く存在するため、感電防止の観点より冷媒の導電性を低レベルにする必要がある。このため、極めて導電性の小さい純水が循環水として使用されているとともに、反応制御の必要性から、この循環水を熱交換器により冷却することが行われている。そして、このようなシステムでは、熱交換器を循環する循環水が、プロトン触媒に直接接触するため、触媒被毒の観点から、金属等のイオンの循環水中への混入を抑制することが要望されている。
ここで、ラジエータやエバポレータ等の熱交換器のコアは、波形状に成形されたアルミニウム材からなる複数個のコルゲートフィンと、扁平状に成形されたアルミニウム材からなる複数個のチューブとを交互に積層配列して構成されている。
このような熱交換器のコアは、先ず、噴射法により濃度の低いフラックス(例えば、非腐食性のノコロックフラックス)をコア全体に付着させ、次いで、浸漬法により濃度の高いフラックス(例えば、ノコロックフラックス)を部分的に付着させる。噴射法で濃度の低いフラックスを付着させる部位は、チューブとフィン間及びチューブと座板間とし、浸漬法で濃度の高いフラックスを付着させる部位は、チューブと座板間としている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、フラックスは、通常、ろう付け処理後の洗浄処理時において洗い流されるが、フラックスとして前記ノコロックフラックスを使用した場合、ろう付け後に残渣が残り易い。また、残渣は、水中でイオンを生じるため、導電率の低い水溶液や純水を使用する燃料電池用熱交換器では、特に高分子電解質膜への悪影響を考慮してフラックスを十分に注意深く取り除く必要がある。
そこで、さらに従来においては、フラックスが熱交換器内部に出来る限り侵入しないようにフラックスを熱交換器外部に塗布すること、チューブと座板間の嵌合クリアランスを狭めるなどの製造上の対処をすること、純水などの温水で残渣フラックスを洗浄すること、などの処理を行っている。
特開2001−167782 特開2004−233011 特開2005−203201 特開2005−196988
しかしながら、これでも細部に入り込んだフラックスを取り除くことはできず、また残渣フラックスの洗浄時間が非常に掛かる(24時間以上掛かる)ので、残渣フラックス処理が熱交換器製造上においてネックとなっている。
そこで、本発明は、上記した従来の課題に鑑みてなされたものであり、熱交換器内部に残る残渣フラックスを短時間で取り除くことができ、残渣フラックスの循環水への溶出を防止することのできる燃料電池用熱交換器の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る燃料電池用熱交換器の製造方法は、チューブとコルゲートフィンと座板を組み付けて構成したコア部に、ろう付け用のフラックスを塗布するフラックス塗布工程と、前記フラックス塗布工程でフラックスが塗布された前記コア部を加熱処理してろう付けするろう付け工程と、前記ろう付け工程後に、前記コア部の流路内に残る残渣フラックスを取り除く残渣フラックス除去工程と、を備え、前記残渣フラックス除去工程では、前記コア部の流路内にアルカリ洗浄液を注入して洗浄するアルカリ洗浄工程と、流路内に酸洗浄液を注入して洗浄する酸洗浄工程と、物理的に残渣フラックスを取り除く物理処理工程と、流路内に温めた純水を注入して洗浄する温純水洗浄工程を組み合わせることを特徴とする。
アルカリ洗浄工程(S6)で使用し、そのアルカリ洗浄剤の組成は、(1)アルカリ剤、(2)アルミニウム腐食抑制剤、(3)キレート剤、(4)界面活性剤及び水を必須成分とするアルカリ洗浄液である。
アルカリ洗浄剤の組成範囲は、アルカリ剤(1)の濃度が0.1〜10、およびキレート剤(3)の濃度がそれぞれ、0.1〜10重量%、キレート剤(3)の濃度が0.01〜5重量%であり、母材であるアルミニウムを腐食の防止の観点から、アルミニウム腐食抑制剤(2)の濃度が0.01〜20重量%であり、界面活性剤の濃度が0.001〜10重量%であり、さらに好ましくは(1)の濃度が0.5〜5重量%であり、アルミニウム腐食抑制剤(2)の濃度が0.1〜10重量%であり、(1)と(2)の重量比が(1)/(2)=5/1〜1/20であり、キレート剤(3)の濃度が0.01〜1重量%であり、界面活性剤の濃度が0.001〜0.1重量%である。
界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、および陽イオン性からなる界面活性剤であり、非イオン界面活性剤としては、親水基にエチレンオキシドを有し、炭化水素基は直鎖または分枝しているものであり、陰イオン界面活性剤としては、親水基にリン酸塩、カルボン酸塩を有し、炭化水素基が直鎖または分枝しているものであり、陽イオン界面活性剤としては親水基に、トリメチルアンモニウム塩を有し、炭化水素基が直鎖または分枝しているものであるものを含む化合物からなる群から選択される1種または2種以上の界面活性剤である。
フラックス残渣部分への濡れ性の向上を目的のため、フッ素系界面活性剤が有効であり、その炭素数が4〜10であり、パーフルオロアルキルまたは、パーフルオロアルケニル基を有し、且つその親水基にリン酸塩、カルボン酸塩、トリメチルアンモニウム塩、ベタイン、アルキルアミノオキシドおよびエチレンオキシド付加物を含む化合物からなる群から選択される1種または2種以上の界面活性剤である。
本発明によれば、残渣フラックス除去工程で、アルカリ洗浄工程と酸洗浄工程と物理処理工程と温純水洗浄工程を組み合わせて洗浄することで、従来洗浄工程に比べて残渣フラックスを取り除く処理時間を大幅に短縮できる。つまり、アルカリ洗浄時にアルミニウム材表面には、スラッジ(残渣フラックス反応生成物)及びスマットが残っており、水洗工程のみでスラッジおよびスマットを除去するには非常に時間を要するが、アルカリ洗浄、酸洗浄、物理処理、温純水洗浄を効率よく組み合わせることで効果的にスラッジおよびスマットを除去できる。
したがって、本発明によれば、従来、残渣フラックス洗浄作業に24時間以上もの膨大な時間を要していた作業を無くすことができ、熱交換器の生産性を高めることができる。また、本発明方法によれば、残渣フラックスがないことから、フラックスの循環水への溶出を防止することができる。
アルカリ洗浄液は、フラックス洗浄に効果的である、アルカリ剤、キレート剤を使用し、さらに界面活性剤を添加することにより、フラックス残渣部分へのぬれ性が向上し、細部に入り込んだフラックスをより効果的に取り除くことができる。また、アルミニウム腐食抑制剤を添加することにより、ラジエータやエバポレータ等の熱交換器のコアに用いられているアルミニウム材の腐食を防止することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本実施形態の燃料電池用熱交換器の製造方法について説明する前にFCEV冷却系システムについて簡単に説明する。
「FCEV冷却システムの概略構成」
図1は、燃料電池を搭載した電気自動車の冷却系システム図である。燃料電池を駆動源とするいわゆる燃料電池自動車は、当該燃料電池を約80〔℃〕に加温保持することで水素と酸素による反応が行われて電気を最も効率よく生成するため、加温し過ぎないように冷媒を循環させて燃料電池を冷却している。
この冷却系システム1では、加温された燃料電池を冷却する冷媒は、燃料電池本体2に形成された流路を流れると、ポンプ3によって熱交換器4へ送られ、発電により暖められた冷媒が熱交換器4によって冷却される。そして、冷却された冷媒は、再び燃料電池本体2へと送られ、加温された燃料電池を所定温度に保つように冷却する。
このような経路を循環する冷媒には、例えば導電性の低い純水または純水に凍結防止剤であるエチレングリコールを混合したものが使用される。これは、燃料電池本体2の内部には導電性材料からなる電極などが設けられているため、その内部を循環する冷媒が導電性を持っていると、水素と酸素の反応に悪影響を与えるためである。
「燃料電池用熱交換器の構成及びその製造方法の説明」
図2は本実施形態の製造方法により製造される燃料電池用熱交換器の断面図、図3は本実施形態の製造方法を工程順に示す工程図、図4は本実施形態の製造方法における残渣フラックス除去工程を示す工程図、図5は従来の残渣フラックス除去工程を示す工程図、図6は本実施形態の製造方法における第1の組み付け工程を示す図、図7は本発明洗浄方法と従来洗浄方法の洗浄時間比較を示す図である。
先ず、本実施形態の製造方法により製造される燃料電池用熱交換器の構成について簡単に説明する。
この実施形態の燃料電池用熱交換器(以下、単に熱交換器という)4は、図2に示すように、アルミニウム材より偏平長尺形状とされ、内部に循環水である純水を流通させる冷媒通路13が形成されたチューブ5と、アルミニウム材より波形状とされ、チューブ5内を流れる純水と周囲通過の空気との間で熱交換を促進できるようになっているコルゲートフィン6とを有し、これらチューブ5とコルゲートフィン6とを交互に複数積層することによって積層部を形成し、その積層部の上下端にアルミニウムからなるタンク部8、9を取り付けることにより構成されている。このとき、チューブ5、コルゲートフィン6およびタンク部8、9の互いの接触箇所は、それぞれろう付けによって固定されている。
一方のタンク部8は、燃料電池本体2から流入する純水を導入させる入口側のタンクであり、その一端側に冷媒入口パイプ10を有している。他方のタンク部9は、熱交換器4の内部を流れて冷却された純水を排出する出口側のタンクであり、その他端側に冷媒出口パイプ11を有している。なお、冷媒入口パイプ10及び冷媒出口パイプ11は、タンク部8、9の上端または下端に設けられているが側面に設けられていてもよい。そして、冷媒入口パイプ10より流入した純水は、一方のタンク部8の冷媒通路14より各チューブ5内の冷媒通路13を分流し、他方のタンク部9の冷媒通路15で再び合流して冷媒出口パイプ11より流出する。
次に、上記構成の熱交換器4の製造方法について説明する。初めに、第1の組み付け工程S1を行う。第1の組み付け工程S1では、図6に示すように、チューブ5とコルゲートフィン6とを交互に積層して積層部を形成した後、この積層部の両端に、タンク部8,9を構成する構成部品の一つである座板18、19を組み付ける。このプロセスを経ることにより、コア部20が組み立てられる。
次に、フラックス塗布工程S2を行う。フラックス塗布工程S2では、コア部20にろう付け用のフラックスを塗布する。本実施形態では、フラックスにノコロック(Alcanの登録商標)を使用する。
次に、ろう付け工程S3を行う。このろう付け工程S3では、第1の組み付け工程S1で組み立てられたコア部20を、図示しない炉内に搬送させ、所定温度で加熱処理することによってチューブ5、コルゲートフィン6、座板18,19などがろう付けされる。
次に、コア部20の座板18,19にタンクを組み付けることにより熱交換器を組み立てる第2の組み付け工程S4を行う。
次に、コア部20の流路内(座板18,19表面も含む)に残った残渣フラックスを取り除く残渣フラックス除去工程S5を行う。残渣フラックス除去工程S5は、図4の工程図に示すように、先ず、アルカリ洗浄工程S6を行う。
アルカリ洗浄工程S6で用いられる、アルカリ洗浄剤の(1)成分のアルカリ剤としては、水溶性のアルカリ剤では何れのものも使用できる。具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられ、これら2種類以上のアルカリ剤を組み合わせても良い。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。(2)成分のアルミニウム腐食抑制剤として、オルソ珪酸、メタ珪酸、セスキ珪酸等の珪酸およびそのアルカリ金属塩、トリポリリン酸、リン酸等のリン化合物およびそのアルカリ金属塩であり、アミノトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸等のホスホン酸類あるいはそのナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩であり、アルキル金属としてナトリウム、カリウム等が挙げられ、好ましくは、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム等である。
組成物中のアルカリ剤(1)の濃度及びアルミニウム腐食抑制剤(2)の重量比が(1)/(2)=5/1〜1/20が満足することにより、洗浄力とアルミニウム腐食抑制効果両方に優れた効果が得られる。その際、アルカリ剤の濃度は0.5〜5重量%であり、アルミニウム腐食抑制剤の濃度は、0.1〜10重量%である
本発明のアルカリ洗浄剤にはキレート剤が含有する。キレート剤としては、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸などのアミノカルボン酸類あるいはそのアルカリ金属塩、クエン酸、リンゴ酸等のオキシカルボン酸あるいはそのナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、好ましくは、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸である。キレート剤は、充分な洗浄力を与える観点から組成物中に0.01重量%以上含有され、またアルミニウムへの腐食が行われないという観点から組成物中に1重量%以下含有される。
本発明のアルカリ洗浄剤には、界面活性剤を含有しており、非イオン性、陽イオン性、および陰イオン性が挙げられ、非イオン界面活性剤としては、親水基にエチレンオキシドを有し、炭化水素基が直鎖または分枝しているものであり、陰イオン界面活性剤としては、親水基にリン酸塩、スルホン酸塩などを有し、炭化水素基が直鎖または分枝しているものであり、陽イオン界面活性剤としては親水基に、トリメチルアンモニウム塩、有機酸塩などを有し、炭化水素基が直鎖または分枝しているものを含む化合物からなる群から選択される1種または2種以上の界面活性剤である。
本発明のアルカリ洗浄剤には、界面活性剤を含有しており、好ましくは、フラックス残渣部分への濡れ性の向上を目的のため、フッ素系界面活性剤であり、炭素数が4〜10であるパーフルオロアルキルまたは、パーフルオロアルケニル基を有し、且つその親水基にリン酸塩、カルボン酸塩、トリメチルアンモニウム塩、ベタイン、アルキルアミノオキシドおよびエチレンオキシド付加物を含む化合物からなる群から選択される1種または2種以上の界面活性剤である。フッ素系界面活性剤は、フラックス残渣部分へのぬれ性が向上する観点から、細部に入り込んだフラックスをより効果的除去する目的で組成物中に0.001重量%以上から0.1重量%以下含有される。
表1に、本実施例で使用したアルカリ洗浄液の組成を示す。
Figure 2009301997
前記組成からなるアルカリ洗浄液を熱交換器4内部に、5〜15分、好ましくは7〜12分循環させることによりコア内部を洗浄する。
次に、水洗浄工程S7を行う。この水洗浄工程S7では、水道水を熱交換器4内部に、3〜30分、好ましくは4〜10分循環させることにより前記アルカリ洗浄液を除去する。
次いで、酸洗浄工程S8を行う。この酸洗浄工程S8では、アルカリ洗浄で発生したスラッジ(粉)を除去するべく、硝酸または硫酸を含む酸を、好ましくは硝酸を熱交換器4内部に、3〜30分、好ましくは4〜10分循環させることにより熱交換器内部のスラッジを除去する。
そして次に、再び水洗浄工程S9を行う。ここでは、水道水を熱交換器4内部に、3〜30分、好ましくは4〜10分循環させる。
次いで、物理処理工程S10を行う。物理処理工程S10は、超音波洗浄方法、高圧液噴射方法、表面研磨方法、電解洗浄方法、流体研磨方法、ブラスト処理方法などが採用できる。超音波洗浄方法は、コア部20内に水を注入した後に超音波槽に振動を与えてコア部20内に残存するフラックスを取り除く洗浄方法である。高圧液噴射方法は、コア部20内に高圧水を導入する洗浄方法である。表面研磨方法は、ブラシで擦って残渣フラックスを取り除く洗浄方法である。電解洗浄方法は、電気分解を使用して残渣フラックスを取り除く洗浄方法である。流体研磨方法は、スラリー状の研磨剤をコア部20に一定の圧力で導入して残渣フラックスを取り除く洗浄方法である。ブラスト処理方法は、ブラストメディアを投射してコア部20内のフラックスを取り除く方法である。中でも、超音波洗浄方法が望ましい。この物理洗浄は、10分〜60分、好ましくは15〜30分行う。
次に、再び酸洗浄工程S11を行う。硝酸または硫酸を含む酸を、熱交換器4内部に、3〜30分、好ましくは4分循環させることにより熱交換器内部のスラッジを除去する。
次いで、純水洗浄工程S12を行う。純水を熱交換器4内部に循環させる。
次に、温純水洗浄工程S13を行う。温純水洗浄工程S13では、90℃以下に温めた純水、好ましくは80℃の純水を熱交換器4内部に、10〜60分、好ましくは12〜20分循環させることによりコア部内を洗浄する。
そして最後に、コア部20内の導電率を検査する導電率検査工程S14を行う。
[実施例]
次に、アルカリ洗浄工程S6において、アルカリ洗浄液の組成を表1に示すようにして残渣フラックス除去を行った。この実験では、アルカリ洗浄による洗浄のみで、その他の洗浄工程(S7〜S13)は行っていない。
実施例では、水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、フッ素系界面活性剤、純水を洗浄液組成とした。比較例1では、実施例に対して界面活性剤をp-tert-ブチル安息香酸に代え、その他の成分は何れも実施例と同一とした。比較例2では、実施例に対して界面活性剤をp-トルエンスルホン酸ナトリウムに代え、その他の成分は何れも実施例と同一とした。
従来例1では、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸3ナトリウム、キレート剤、界面活性剤、純水を洗浄液組成とした。従来例2では、80℃の純水を洗浄液組成とした。
これら実施例、比較例1,2、従来例1,2のフラックス除去性能を、表1の最下欄に示す。フラックス除去性能は、従来例1を100としたときの洗浄効果を数値で示している。数値が低い程、洗浄効果が高いことを示す。
また、表2に実施例のアルカリ洗浄液を使用して前記した図4の各洗浄工程(S6〜S13)を行った場合と、従来例1の洗浄液を使用して図5の各洗浄工程(S20〜S22)を行った場合の洗浄時間を比較した結果を示す。
Figure 2009301997
従来工程では、表1の従来例1の洗浄液組成からなるアルカリ洗浄液を熱交換器4内部に注入して、約10分程度浸漬し洗浄するアルカリ洗浄工程(S20)を行った後、水道水を熱交換器4内部に、約5分循環させる水道水洗浄工程(S21)を行い、更に熱交換換気4内部に純水を注入し80℃恒温槽中で約24時間程度静置する温純水洗浄工程S22を行う。
実施例のアルカリ洗浄液を使用して図4に示す残渣フラックス除去工程(S6〜S13)を行えば、従来例1のアルカリ洗浄液を使用して図5に示す残渣フラックス除去工程(S20〜S22)に対して、図7に示すように、従来例1の温純水工程S22で24時間要したものが実施例の温純水工程S13では15分に短縮され、合計時間では95%も短縮することができる。実施例では、従来よりも工程数は増えるが、本実施例のアルカリ洗浄工程S6と、表2に示すように、酸洗浄工程S8及び物理処理工程S10により残渣フラックスを効果的に取り除くことができることから、合計時間では残渣フラックス除去時間を大幅に短縮することが可能となる。
次に、酸洗浄工程S8、S11で酸洗浄液に試験用表面処理アルミニウム材を4分間浸漬して耐蝕性試験を行い、試験用表面処理アルミニウム材の表面における変色の様子を評価した。評価については、目視にて変化のないものを○とした。結果を表3に示す。
Figure 2009301997
以上のように、本実施形態によれば、残渣フラックス除去工程S5で、アルカリ洗浄工程S6と酸洗浄工程S8と物理処理工程S10と温純水洗浄工程S13を組み合わせて洗浄することで、従来洗浄工程に比べて残渣フラックスを取り除く処理時間を大幅に短縮することができる。したがって、本発明によれば、熱交換器の生産性を高めることができると共に、残渣フラックスがないことから、当該フラックスの循環水への溶出を防止することができる。
また、本実施形態によれば、アルカリ剤、アルミニウム腐食抑制剤、キレート剤、界面活性剤の組成アルカリ洗浄液を使用しているので、熱交換器のコアに用いられているアルミニウム材を腐食させることなく、効果的に残渣フラックスを取り除くことができる。
図1は燃料電池を搭載した電気自動車の冷却系システム図である。 図2は本実施形態の製造方法により製造される燃料電池用熱交換器の断面図である。 図3は本実施形態の製造方法を工程順に示す工程図である。 図4は本実施形態の製造方法における残渣フラックス除去工程を示す工程図である。 図5は従来の残渣フラックス除去工程を示す工程図である。 図6は本実施形態の製造方法における第1の組み付け工程を示す図である。 図7は本発明洗浄方法と従来洗浄方法の洗浄時間比較を示す図である。
符号の説明
1…冷却系システム
2…燃料電池本体
3…ポンプ
4…熱交換器
5…チューブ
6…コルゲートフィン
8,9…タンク部
18,19…座板
20…コア部

Claims (8)

  1. チューブ(5)とコルゲートフィン(6)と座板(18,19)を組み付けて構成したコア部(20)に、ろう付け用のフラックスを塗布するフラックス塗布工程(S2)と、
    前記フラックス塗布工程(S2)でフラックスが塗布された前記コア部(20)を加熱処理してろう付けするろう付け工程(S3)と、
    前記ろう付け工程(S3)後に、前記コア部(20)の流路内に残る残渣フラックスを取り除く残渣フラックス除去工程(S5)と、を備え、
    前記残渣フラックス除去工程(S5)では、前記コア部(20)の流路内にアルカリ洗浄液を注入して洗浄するアルカリ洗浄工程(S6)と、流路内に酸洗浄液を注入して洗浄する酸洗浄工程(S8)と、物理的に残渣フラックスを取り除く物理処理工程(S10)と、流路内に温めた純水を注入して洗浄する温純水洗浄工程(S13)を組み合わせる
    ことを特徴とする燃料電池用熱交換器の製造方法。
  2. 請求項1に記載の燃料電池用熱交換器の製造方法であって、
    前記アルカリ洗浄工程(S6)で使用する、(1)アルカリ剤、(2)アルミニウム腐食抑制剤、(3)キレート剤、(4)界面活性剤及び水が必須成分であるアルカリ洗浄液を用いた
    ことを特徴とする燃料電池用熱交換器の製造方法。
  3. 請求項2に記載の燃料電池用熱交換器の製造方法であって、
    前記アルカリ洗浄液が、アルカリ剤(1)の濃度が0.5〜5重量%であり、アルミニウム腐食抑制剤(2)の濃度が0.1〜10重量%であり、(1)と(2)の重量比が(1)/(2)=5/1〜1/20であり、キレート剤(3)の濃度が0.01〜1重量%であり、界面活性剤の濃度が0.001〜0.1重量%である
    ことを特徴とする燃料電池用熱交換器の製造方法。
  4. 請求項2または請求項3に記載の燃料電池用熱交換器の製造方法であって、
    前記界面活性剤は、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、および陽イオン界面活性剤から選ばれた1種または2種以上である
    ことを特徴とする燃料電池用熱交換器の製造方法。
  5. 請求項2または請求項3に記載の燃料電池用熱交換器の製造方法であって、
    前記界面活性剤は、フッ素系界面活性剤であり、炭素数が4〜10であるパーフルオロアルキルまたは、パーフルオロアルケニル基を有し、且つその親水基にリン酸塩、カルボン酸塩、トリメチルアンモニウム塩、ベタイン、アルキルアミノオキシドおよびエチレンオキシド付加物を含む化合物からなる群から選択される1種または2種以上の界面活性剤である
    ことを特徴とする燃料電池用熱交換器の製造方法。
  6. 請求項1から請求項5のうち何れか1項に記載される燃料電池用熱交換器の製造方法であって、
    前記酸洗浄工程(S8)で使用する酸洗浄液が、硝酸または硫酸を含む
    ことを特徴とする燃料電池用熱交換器の製造方法。
  7. 請求項1から請求項6のうち何れか1項に記載される燃料電池用熱交換器の製造方法であって、
    前記物理処理工程(S10)として、超音波洗浄、高圧液噴射、表面研磨、電解洗浄、ブラスト研磨、流体研磨から選ばれたいずれか1種の処理又は2種以上の処理の組合せである
    ことを特徴とする燃料電池用熱交換器の製造方法。
  8. 請求項1から請求項7のうち何れか1項に記載される燃料電池用熱交換器の製造方法であって、
    前記温純水洗浄工程(S13)で使用する純水が、90℃以下である
    ことを特徴とする燃料電池用熱交換器の製造方法。
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