本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明に係る第1実施形態について説明する。第1実施形態が適用された車両システム1の概略構成を図1に示す。内燃機関10は、燃料である軽油を燃料噴射弁12から圧縮状態にある燃焼室内に直接噴射することにより自然着火させる型式の内燃機関、すなわちディーゼル機関である。
気筒14の燃焼室に臨むと共に吸気通路16の一部を区画形成する吸気ポートは、シリンダヘッドに形成されていて、吸気弁によって開閉される。シリンダヘッドには、吸気通路16の一部を区画形成する吸気マニホールド18が接続され、さらにその上流側には同じく吸気通路16の一部を区画形成する吸気管20が接続されている。吸気管20の上流端側には、吸気通路16に導かれる空気中の塵埃などを除去するべくエアクリーナ22が設けられている。また、スロットルアクチュエータ24によって開度が調整されるスロットル弁26が、吸気通路16の途中に設けられている。
他方、気筒14の燃焼室に臨むと共に排気通路28の一部を区画形成する排気ポートは、シリンダヘッドに形成されていて、排気弁によって開閉される。シリンダヘッドには、排気通路28の一部を区画形成する排気マニホールド30が接続され、さらにその下流側には同じく排気通路28の一部を区画形成する排気管32が接続されている。なお、排気ガス浄化触媒が充填された触媒コンバータ34が排気通路28の途中に設けられている。
さらに、排気通路28を流れる排気ガスの一部を吸気通路16に導くために排気ガス還流(EGR)装置36が設けられている。EGR装置36は、排気通路28と吸気通路16とを連通するEGR通路38を区画形成するEGR管40と、EGR通路38の連通状態調節用のEGR弁42と、還流される排気ガス(EGRガス)冷却用のEGRクーラ44とを有している。ここでは、EGR管40上流側の一端は排気マニホールド30に接続され、その下流側の他端は吸気マニホールド18に接続されている。EGR弁42はEGRクーラ44よりも下流側に設けられていて、その開度はアクチュエータ46により調節される。ここではEGR弁42はポペット式弁である。
さらに、排気ガスにより回転駆動されるタービンホイール48を含むタービン50が排気通路28に設けられている。これに対応して、タービンホイール48に回転軸52を介して同軸で連結され、タービンホイール48の回転力で回転するようにしたコンプレッサホイール54を含むコンプレッサ56が吸気通路16に設けられている。すなわち、内燃機関10には、排気エネルギーを取り出すタービン50と、タービン50により取り出された排気エネルギーによって内燃機関10に過給するコンプレッサ56とを有するターボチャージャ58が設けられている。そして、コンプレッサ56により圧縮された空気を冷却するべく、インタークーラ60がコンプレッサ56下流側に設けられている。
さらに、排気通路28の途中には、排気絞り弁62が設けられている。排気絞り弁62は、ここではタービン50下流側、且つ、触媒コンバータ34上流側に設けられているが、排気通路28の他の箇所に設けられてもよい。ここでは排気絞り弁62はバタフライ式弁であり、アクチュエータ64により駆動される。排気絞り弁62は、その閉弁時には排気通路28を流れる排気ガスすなわち燃焼ガスや空気である流体を効果的にせき止め、そのような流体の排気絞り弁62よりも下流側への流れを概ね遮断する遮断弁として機能する。なお、排気絞り弁62は、閉弁時に、排気通路の流路断面積を50%程度減少させるような構成を有する弁であってもよく、あるいは、閉弁時に、排気通路28を完全に閉塞するような構成を有する弁であってもよい。
また、排気絞り弁62上流側の排気通路Jの排気ガスを取り出すことを可能にするべく、管部材66によって区画形成された連通路68が設けられている。連通路68の一端は、上記EGR通路38につなげられていて、具体的には、EGRクーラ44下流側のEGR通路につなげられている。さらに詳細には、連通路68の上記一端は、EGRクーラ44とEGR弁42との間のEGR通路につなげられている。そして、連通路68の他端は、蓄圧容器70につなげられている。蓄圧容器70は、加圧されたガスを貯留することができる容器である。なお、ここでは、蓄圧容器70は、相対的に小さな内容積を有する容器である。
このように相互に関係付けられているので、連通路68とEGR通路38の一部とにより排気ガス回収用通路RPが構成され、排気絞り弁62上流側の排気通路Jと蓄圧容器70内とをつなぐ排気ガス回収用通路RPにEGRクーラ44が設けられることになる。なお、排気ガス回収用通路RPの一部を構成するEGR通路は、EGR通路38の内、EGR通路38の上流側端部からEGR弁42までの通路である。したがって、後述する排気ガス回収を行うとき、排気絞り弁62上流側の排気通路Jの排気ガスは、EGR通路38の一部を通る過程でEGRクーラ44を経て、連通路68に至り、蓄圧容器70内へ回収されるようになる。なお、EGRクーラ44は、排気ガス回収のときには回収される排気ガスを冷却する冷却機器として用いられる。
蓄圧容器70内と排気通路28との連通状態の調節用に、連通路68に流量制御弁72が設けられている。流量制御弁72が開弁することで蓄圧容器70内と排気通路28とは連通し、他方、流量制御弁72が閉弁することで蓄圧容器70内と排気通路28との連通は遮断され、蓄圧容器70内は密閉状態になる。ただし、流量制御弁72はアクチュエータ74により駆動される。なお、ここでは流量制御弁72はポペット式弁である。ただし、流量制御弁72の設置箇所は、通常時に連通路68への排気ガスの侵入を可能な限り防ぐように、連通路68の内、EGR通路よりであるほどよい。
上記排気ガス回収用通路RPは、ここでは、排気ガス放出用通路EPとしても利用される。この排気ガス放出用通路EPを介して、蓄圧容器70内とタービンホイール48上流側の排気通路Kとはつなげられ、蓄圧容器70内の排気ガスをタービンホイール48上流側の排気通路Kに供給することが可能になる。
他方、動力源である内燃機関10と駆動輪78との間には、駆動輪78に内燃機関10で生じさせた動力を伝達するために、駆動系80が設けられている。各燃料噴射弁12から噴射された燃料と吸気通路16を流れて燃焼室に至った空気とが混ざり合うことで形成される混合気が、燃焼室内で圧縮自着火して、爆発・燃焼する。このときに生じた高温高圧の燃焼ガスによりピストンが往復動され、クランクシャフト82が回転されて駆動力(出力トルク)が得られる。内燃機関10のクランクシャフト82には、クラッチ84を介して手動変速機86の入力軸88が接続されている。クラッチ84は、車室(不図示)内に設けられたクラッチ操作部としてのクラッチペダル90に機械的に連結されており、運転者によるクラッチペダル90の踏込み操作に応じて作動(継合または切断)する。クラッチ84が継合すると、クランクシャフト82の出力トルクがクラッチ84を通じて入力軸88に伝達され、また、クラッチ84が切断されると、クランクシャフト82から入力軸88への出力トルクの伝達が遮断される。こうしたクラッチ84は、常時は継合状態とされるが、クラッチペダル90の踏込み操作により切断状態となる。なお、本第1実施形態では、わずかでもクラッチペダル90が操作されているときのクラッチ84の状態は、切断状態に含まれるが、クラッチの切断状態とその継合状態との境界は任意に定められ得る。
手動変速機86は、前述した入力軸88のほかに、出力軸92と、互いに噛合わせられる複数のギヤ(図示略)と、運転者によって操作されるシフトレバー94と、そのシフトレバー94の操作をギヤに伝達する伝達機構(図示略)とを備える。この手動変速機86では、シフトレバー94の操作に応じて、噛合わせにかかるギヤの組み合わせ(変速段)が切替えられる(ギヤチェンジされる)ことにより、内燃機関10の回転速度(機関回転速度)、出力トルク等が変換される。この変換により、入力軸88と出力軸92との回転速度比である変速比(ギヤ比)がギヤの組み合わせに応じたものとなる。
手動変速機86の出力軸92はドライブシャフト96、ディファレンシャルギヤ98、車軸100等を介して駆動輪78に接続されており、出力軸92の回転がこれら各部材96、98、100を通じて駆動輪78に伝達される。上記内燃機関10と駆動輪78との間の各部品が駆動系部品に相当し、これらの部品によって車両システム1の駆動系(動力伝達系)80が構成されている。
内燃機関10や駆動系80は、電子制御ユニット(ECU)110に、各種値を求める(検出するあるいは推定する)ための信号を電気的に出力する各種センサ類を備えている。ここで、その内のいくつかを具体的に述べる。吸入空気量を検出するためのエアフローメーター112が吸気通路16に備えられている。また、エアフローメーター112近傍に吸入空気の温度を検出するための吸気温度センサ114が、そしてインタークーラ60下流側にも温度を検出するための吸気温度センサ116が備えられている。また、吸気圧すなわち過給圧を検出するための圧力センサ118が吸気管20の途中に設けられている。また運転者によって操作されるアクセルペダル120の踏み込み量に対応する位置、すなわちアクセル開度を検出するためのアクセル開度センサ122が備えられている。また、スロットル弁26の開度を検出するためのスロットルポジションセンサ124も備えられている。さらに、EGR弁42の開度(EGR開度)を検出するため、ここではそのリフト量を検出するためのバルブリフトセンサ126も備えられている。また、ピストンが往復動する、シリンダブロック(あるいはその近傍)には、連接棒を介してピストンが連結されているクランクシャフト82のクランク回転信号を検出するためのクランクポジションセンサ128が取り付けられている。ここでは、このクランクポジションセンサ128は機関回転速度(機関回転数)を検出するための機関回転速度センサとしても利用される。さらに、排気通路J、Kの排気ガスすなわち燃焼ガスや空気である流体の圧力を検出するための圧力センサ130が備えられている。また、蓄圧容器70内の圧力を検出するための圧力センサ132も備えられている。さらに、内燃機関10の冷却水温を検出するための温度センサ134が備えられている。さらに、車速を検出するための車速センサ136も備えられている。また、シフトレバー94には、その操作位置を検出するためのシフトセンサ(シフトスイッチ)138が設けられている。さらに、クラッチ84の状態を検知可能にするべく、クラッチ位置(クラッチストローク)を検出するためのクラッチポジションセンサ140が設けられている。ただし、蓄圧容器70内の圧力等は、上記種々のセンサ等を用いてあるいは用いずに推定されてもよく、例えば蓄圧容器70内の圧力は後述する排気ガス回収や排気ガス放出に関する種々のデータから推定されてもよい。
ECU110は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等を含むマイクロコンピュータで構成されている。入力インタフェースには、前述の各種センサ類が電気的に接続されている。これら各種センサ類からの出力信号(検出信号)に基づき、予め設定されたプログラムにしたがって各種演算等を行い、円滑な内燃機関10や駆動系80の運転ないし作動がなされるように、ECU110は出力インタフェースから電気的に作動信号(駆動信号)を出力する。こうして、燃料噴射弁12の作動、スロットル弁26、EGR弁42、排気絞り弁62および流量制御弁72の各開度などが制御される。ただし、ECU110は、スロットル弁26、EGR弁42、排気絞り弁62、流量制御弁72の各開度を制御するため、それぞれに対応するアクチュエータ24、46、64、74に作動信号を出力する。
なお、ここでは、手動変速機86の変速比を検出する変速比検出手段はシフトセンサ138とECU110の一部とを含んで構成され、要求負荷が増加したか否かを判定する要求負荷判定手段はアクセル開度センサ122とECU110の一部とを含んで構成され、流量制御弁72を制御する弁制御手段はアクチュエータ74とECU110の一部とを含んで構成される。そして、ここでは、この弁制御手段は、変速比検出手段により検出された変速機86の変速比に基づいて流量制御弁72の開度あるいは目標開度を設定する開度設定手段を含み、これにより設定された開度に流量制御弁72の開度がなるように流量制御弁72を制御する。また、蓄圧容器70内の圧力を検出する容器圧力検出手段は、圧力センサ132とECU110の一部とを含んで構成され、バッテリー電圧を検出あるいは推定するバッテリー電圧検出手段はECU110の一部を含んで構成される。また排気絞り弁を制御する排気絞り弁制御手段はアクチュエータ74とECU110の一部とを含んで構成され、EGR弁制御手段はアクチュエータ46とECU110の一部とを含んで構成され、スロットル弁制御手段はアクチュエータ24とECU110の一部とを含んで構成される。
内燃機関10では、エアフローメーター112からの出力信号に基づいて得られる吸入空気量、クランクポジションセンサ128からの出力信号に基づいて得られる機関回転速度など、すなわち機関負荷および機関回転速度で表される機関運転状態に基づいて、通常は、燃料噴射量(燃料量)、燃料噴射時期が設定される。そして、それら燃料噴射量、燃料噴射時期に基づいて、燃料噴射弁12からの燃料の噴射が行われる。
ただし、内燃機関10では、クランクポジションセンサ128からの出力信号に基づいて検出される機関回転速度が所定回転速度(燃料カット回転速度)以上であり、且つ、アクセル開度センサ122からの出力信号に基づいて検出されるアクセル開度が0%、すなわちアクセルペダル120が踏まれていないときに、燃料噴射弁12からの燃料噴射が停止(燃料カット)されるように予めデータを含めてプログラムが設定されている。すなわち、車両の走行中に機関回転速度が予め設定された所定回転速度領域にあり且つアクセル開度全閉状態にあるときに、つまりこれら燃料カット実行条件が満たされているときに、燃料カットが行われ、内燃機関10は燃料カット状態になる。ただし、このような燃料カット状態が続いて、機関回転速度が低下して別の所定回転速度(燃料カット復帰回転速度)に達すると、燃料噴射は再開される。また、燃料カットが行われているときに、アクセルペダル120が踏まれてアクセル開度が開き側に大きくなって0%を超えるようになった場合にも、燃料噴射は再開される。なお、燃料カットが行われているときは、概ね減速時に対応する。
そして、このように燃料カット状態のとき、上記スロットル弁26が閉じ側に制御されるように、予め上記プラグラムは設定されている。ただし、後述する排気ガス回収のときには、強制的にスロットル弁26は開状態になるように制御される。なお、ここではスロットル弁26は内燃機関10の始動時は全開に制御され、他方、内燃機関10の停止時は全閉に制御される。そして、通常走行時には、機関状態および冷却水温などに応じて、スロットル弁26の開度は適切な開度になるように制御される。
また、上記各種センサ類からの出力信号に基づいて定まる内燃機関10の機関運転状態に基づいてEGR弁42の開度は制御される。ここでは、機関運転状態の属する領域が高負荷側にあるほどEGR量が減少するように構築された、予め実験により定められたデータがROMに記憶されている。ただし、後述する排気ガス回収に際しては、EGR弁42も、機関運転状態にかかわらず、強制的に閉弁するように制御される。また、アクセルペダル120が踏まれて内燃機関10すなわち車両が加速される過渡期には、EGR弁42が一旦閉弁するように、機関運転状態に基づいて求められたEGR開度は補正される。
ところで、通常走行時、排気絞り弁62は全開の開弁状態に保持制御されているので、排気通路28を流れる排気ガスは触媒コンバータ34を通過して外気に放出される。これに対して、排気ガス回収を行うための所定条件が満たされたとき、排気絞り弁62は閉弁状態になるように制御され、排気通路28を流れる排気ガスは概ねせき止められる。そして、このようにしてせき止めた排気ガスが蓄圧容器70内へ回収される。
以下、排気ガス回収について、図2のフローチャートにしたがって詳細に説明する。ただし、図2のフローチャートは、所定時間毎、例えばおよそ8ms毎に繰り返される。なお、以下の記載から明らかになるように、蓄圧容器70内に回収される排気ガスは概ね空気である。
ただし、以下で図2に基づいて説明される制御は、内燃機関10が燃料カット状態であるときに、排気通路28の排気絞り弁62を閉弁制御して、排気絞り弁62上流側の通路Jの圧力が高まったときに流量制御弁72を開くことで、排気通路Jから蓄圧容器70へ排気ガスすなわちこの排気ガスの有する圧力エネルギーを回収することを具体化した例である。
内燃機関10が起動されると、まずECU110は、ステップS201において、回収フラグが「1」、すなわちONであるか否かを判定する。ここで、回収フラグが「1」ということは、排気ガス回収を行うための所定条件が満たされていることを表す。これに対してそれが「0」ということは、排気ガス回収を行うための所定条件が満たされていないことを表す。初期状態では同回収フラグはリセットされているためここでは否定判定される。なお、本第1実施形態において、排気ガス回収を行うための所定条件が満たされるとは、以下の記載から明らかなように、燃料カット実行中であること、および、蓄圧容器70内の圧力が所定圧以下であることの2つが満たされることである。
ステップS201で否定判定されると、次ぐステップS203で、内燃機関10が燃料カット状態であるか否か、すなわち燃料カット中か否かが判定される。ここでは、具体的には、燃料カット中か否かは、燃料噴射量が「0」とされているか否かで判定される。ただし、上記燃料カット実行条件が満たされているか否かの判定が行われてもよい。なお、通常走行時には、概して、内燃機関10により所定出力を生み出すべく、「0」より大きな燃料噴射量が上述の如く導かれて燃料噴射が行われている。それ故、そのようなときには、ステップS203において否定判定されて、該ルーチンは終了する。
上記ステップS203で燃料カット中として肯定判定されると、次ぐステップS205で、蓄圧容器70内の圧力(図2中の「容器内圧」)が、蓄圧容器70に許容される圧力であって、所定圧である予め決められてROMに記憶されている上限圧以下か否かが判定される。蓄圧容器70内に十分な量の圧力すなわち排気ガスが蓄えられているときに、さらに排気ガス回収が行われることを防ぐためである。蓄圧容器70内の圧力は圧力センサ132からの出力信号に基づいて検出される。なお、このステップS205で否定判定されると、該ルーチンは終了する。ただし、ここでは、上限圧として、ゲージ圧で400kPaという値が設定されている。
ステップS205で肯定判定されると、次ぐステップS207で、排気ガス回収を行うための所定条件が満たされているとして、上記回収フラグが「1」にされる。これにより、内燃機関10の通常の上記制御よりも、排気ガス回収用の制御が優先して行われることになる。そして、ステップS209に至ると、流量制御弁72が閉弁するように、アクチュエータ74に作動信号が出力される(流量制御弁72が閉弁制御される)。これにより、流量制御弁72の開度は全閉開度にされる。ただし、排気ガス回収も後述する排気ガス放出も行われていないときには、基本的に流量制御弁72は閉弁状態にあるので、概して、ステップS209を経ることで流量制御弁72は閉弁状態に維持される。そして、次ぐ、ステップS211で、排気絞り弁62が閉弁するように、アクチュエータ64に作動信号が出力される(排気絞り弁62が閉弁制御される)。ここでは、これにより、排気絞り弁62の開度は全閉開度である閉開度にまで制御されて、該閉開度になる。こうして当該ルーチンは終了する。
なお、回収フラグが上記の如く「1」にされるとき(実質的に回収フラグが「1」の間は)、EGR弁42は閉弁するように、アクチュエータ46に作動信号が出力される(EGR弁42が閉弁制御される)。ただし、このとき、EGR弁42の開度は、排気通路Jの圧力に応じた速度で全閉開度にまで制御されてもよい。また、このとき、スロットル弁26は開弁するように、アクチュエータ24に作動信号が出力される(スロットル弁26が開弁制御される)。ここでは、スロットル弁26は全開の開弁状態にされる。これは、排気通路Jの圧力をより迅速に高めるためである。
次のルーチンのステップS201では回収フラグが「1」であるので肯定判定される。そして次ぐステップS213では、上記ステップS203と同様に燃料カット中か否かが判定される。ここで肯定判定されると次ぐステップS215で、上記ステップS205と同様に蓄圧容器70内の圧力が上記上限圧以下か否かが判定される。なお、ステップS213およびステップS215での判定が行われるのは、ステップS207で回収フラグが「1」にされた後、排気ガス回収を行うための所定条件が満たされなくなったときに、排気ガス回収を終了する制御をするためである。
さてステップS213やステップS215で上記判定が行われるときには、排気絞り弁62が閉弁制御されているので、時間の経過につれて、排気絞り弁62上流側の排気通路Jの圧力(圧力エネルギー)は高くなる。そして、このように高まる圧力エネルギーを蓄圧容器70内に回収可能か否かを判断するべく、ステップS217での判定が行われる。
ステップS217では蓄圧容器70内の圧力が排気通路Jの圧力(図2では背圧)以下か否かが判定される。ここで、否定判定されると、排気通路Jの圧力エネルギーレベルは排気ガス回収可能なレベルに達していないとして、ステップS219で流量制御弁72が閉弁するようにアクチュエータ74に作動信号が出力される。なお、ステップS219に至った時点で流量制御弁72が閉弁されていた場合には、流量制御弁72は閉弁状態に維持される。他方、ステップS217で肯定判定されると、次ぐステップS221で流量制御弁72が開弁するようにアクチュエータ74に作動信号が出力される。こうして、排気通路Jは蓄圧容器70内に連通することになる。これにより、排気絞り弁62上流側の排気通路Jの高められた圧力を有する排気ガスは、排気ガス回収用通路RPを介して、蓄圧容器70内に回収される。このとき、排気ガスは、排気ガス回収用通路RPを流れる間に、EGRクーラ44を通過することになるので、蓄圧容器70内に回収される排気ガスは十分に冷却される。したがって、蓄圧容器70内には相対的に高密度の排気ガスが至ることになるので、より多くの排気ガスを蓄圧容器70内に回収することが可能になる。こうした排気ガス回収は、上記ステップS213あるいはステップS215のいずれかで否定判定されない限りは概ね続けて行われる。
なお、本第1実施形態では、上記のように、切断可能なクラッチ84が備えられている。そこで、クラッチ84が切断状態にあるときには、このような排気絞り弁62を閉弁しての排気ガス回収は行われないようにされるとよい。内燃機関10の適切な運転をより確実に保証するためである。
ところで、このように排気ガス回収を行うための所定条件が満たされているとして回収フラグが「1」にされて、上記のように排気ガス回収が行われているときに、上記ステップS213あるいは上記ステップS215で否定判定されるに至ると、排気ガス回収を終了するための制御が行われる。それらのいずれかで否定判定されると次ぐステップS223で、流量制御弁72が閉弁するようにアクチュエータ74に作動信号が出力される。また、排気絞り弁62が開弁するようにアクチュエータ64に作動信号が出力される。そして、次にステップS225では回収フラグが「0」にされて、該ルーチンは終了する。
なお、このとき、EGR弁42の排気ガス回収用の閉弁制御が解除されて、EGR弁42の開度は通常時に定められる開度に復帰される。スロットル弁26の排気ガス回収用の開弁制御も解除されて、スロットル弁26の開度は通常時に定められる開度に復帰される。この結果、内燃機関10は排気ガス回収を行わない通常の制御状態に復帰される。
ところで、一般的なターボチャージャにおいて、機関回転速度が低回転域に属するときには、排気ガスの流量が少ないためにターボチャージャの回転が低いので、アクセルペダル120を踏み込んでから吸入空気の過給効果が現れるまでに時間的な遅れすなわちタイムラグがある。そこで、アクセルペダル120が踏み込まれて車両が加速される過渡期に、速やかに過給圧を高めるべく、蓄圧容器70内の排気ガスが利用される。蓄圧容器70に回収された排気ガスの利用に関して図3のフローチャートにしたがって詳細に説明する。ただし、図3のフローチャートは、所定時間毎、例えばおよそ8ms毎に繰り返される。
まず、ECU110は、ステップS301において、上記回収フラグが「0」、すなわちOFFであるか否かを判定する。初期状態では同フラグはリセットされているためここでは肯定判定される。なお、ステップS301で否定判定されると、当該ルーチンは終了する。
ステップS301で肯定判定されると、次ぐステップS303では、アシストフラグが「1」、すなわちONであるか否かが判定される。ここで、アシストフラグが「1」であるということは、ターボ過給器58の作動をアシストする必要があることを表し、これに対してそれが「0」であるということは、そのような必要がないことを表す。初期状態では同アシストフラグはリセットされているためここでは否定判定される。
ステップS303で否定判定されると、次ぐステップS305では、機関回転速度が所定回転速度以下か否かが判定される。機関回転速度が所定回転速度より高いときには、過給器58の作動に関してアシストの必要がないので、機関回転速度が上記所定回転速度を越えているときにはステップS305で否定判定されて、当該ルーチンは終了する。他方、ステップS305で機関回転速度が所定回転速度以下であるとして肯定判定されると、ステップS307へ進む。例えば、ステップS305の判定での所定回転速度は3000rpmである。
ステップS307では、要求負荷が増加したか否かの判定として、加速か否かすなわち加速要求の有無が判定される。加速か否かの判定は、加速開始時期を検出することに等しく、アクセル開度に基づいて行われる。アクセル開度が所定値以上であり、且つ、アクセル開度が大きくなる方へ変化したときであって単位所定時間におけるその変化量すなわちその開き速度(アクセル開度開き速度)が所定速度を超えたときに、ECU110は加速、すなわち加速要求有りと判断する。より具体的には、ECU110は、アクセル開度センサ122からの出力信号に基づいてアクセル開度を求め、そのアクセル開度が例えば20%開度以上であり、且つ、それのアクセル開度開き速度が、予め設定されてROMに記憶されている基準速度である上記所定速度を超えたとき、加速と判断する。ステップS307で肯定判定されると、次いでステップS309での判定がなされる。なお、ステップS307で否定判定されると、当該ルーチンは終了する。なお、加速要求有りとして肯定判定されるようになるとステップS309へ進むが、他方、このときにはEGR弁42が閉弁するように、アクチュエータ46へ作動信号が出力される。
ステップS309では、蓄圧容器70内の圧力が所定圧以上か否かが判定される。この所定圧とは、ターボチャージャ58の作動アシストを行うのにここで最低限必要とされる圧力のことであり、予め実験により求められてROMに記憶されている。具体的には、この所定圧は、ゲージ圧で200kPaであり得る。なお、この所定圧は、タービンホイール48上流側の排気通路Kの圧力に、例えば100kPaである余裕分の圧力を足した値であってもよい。そして、ステップS309で否定判定されると、該ルーチンは終了する。他方、ステップS309で肯定判定されると、次ぐステップS311でアシストフラグが「1」にされる。そして、次ぐステップS313で流量制御弁72の開度あるいは目標開度として放出開度が設定されて、開開度であるこの放出開度に流量制御弁72の開度がなるように、アクチュエータ74へ作動信号が出力される。このようにして、ターボチャージャ58の作動アシストが開始される。
ターボチャージャ58の作動アシスト用の流量制御弁72の上記放出開度は、手動変速機86のそのときに選択されている変速段に基づいて設定される。すなわち変速機の変速比に基づいてその放出開度は設定される。選択されている手動変速機86の変速段は、シフトセンサ138からの信号に基づいて検出される。なお、ここでは、変速機が手動変速機86であるので、手動変速機86の選択された変速段(あるいは変速比)は、シフトセンサ138からの出力信号に基づいて検出されるとしたが、他の構成の検出手段(推定手段を含み得る。)に基づいて変速機の変速比が求められてもよい。例えば、入力軸88および出力軸92の回転速度を検出するためにそれぞれに対応した回転速度センサを設け、これら回転速度センサからの出力信号に基づいて変速機の変速比が求められてもよい。なお、上記手動変速機86に代えて、有段自動変速機や無段自動変速機を採用することもでき、このような自動変速機を採用した場合には、入力軸88や出力軸92の回転速度からその時々の変速比を求めることは有効である。
流量制御弁72の放出開度は、手動変速機86の変速段に基づいて、予め実験により定められてROMに記憶されているデータを検索することで求められて設定される。こうして設定される放出開度は、ターボチャージャ58の作動アシスト開始時点での初期開度から、そのアシスト終了時点での終開度まで変化する。
流量制御弁72の放出開度の内、初期開度および終開度は、それぞれ共に、手動変速機86の選択されている変速段が大きいほど(ハイギヤ段ほど)、すなわちその変速比が小さいほど、小さな開き度合いの開度が設定されるように、上記データは構築されている。ただし、異なる変速段間での初期開度が、同じ開度であることを本発明は排除しない。これは、異なる変速段間での終開度でも同様である。ここでは、手動変速機86が6段変速機構を有する場合、1速変速段に対する第1初期開度、2速変速段に対する第2初期開度、・・・、第6変速段に対する第6初期開度は、「第1初期開度≧第2初期開度≧・・・≧第6初期開度>全閉」の関係を有する。また、同様に、1速変速段に対する第1終開度、2速変速段に対する第2終開度、・・・、第6変速段に対する第6終開度は、「第1終開度≧第2終開度≧・・・≧第6終開度>全閉」の関係を有する。初期開度および終開度がこのような関係を有するのは、そのときの変速機の変速比が小さいほど、運転者からの加速要求の程度(レベル)すなわち要求負荷の増大の程度が低いと考えられるからである。
また、ここでは、同じ変速段に関して、終開度は、初期開度よりも小さな開度である。これは、加速開始直後にはタービン回転速度を速やかに上昇させてターボラグが生じないようにするために、蓄圧容器70からタービンホイール48への排気ガスの供給流量を多くする必要があるからである。また、タービン回転速度の上昇が速やかに生じ始めた後は、加速開始直後ほど多くの排気ガスによる作動アシストを必要としないからである。
そして、さらにその初期開度から終開度までの時間、すなわち蓄圧容器70内の排気ガスの供給時間が、手動変速機86の変速段に基づいて変化するように、上記データは定められている。具体的には、ターボチャージャ58の作動アシスト用の蓄圧容器70からの排気ガスの供給時間は、手動変速機86の選択されている変速段が大きいほど(ハイギヤ段ほど)、すなわちその変速比が小さいほど、より長い時間が設定されるように、上記データは構築されている。これは、変速機の変速比が大きいほど、機関回転速度の上昇が生じ易く、それ故に、加速性能に優れるからである。ただし、この蓄圧容器70からの排気ガスの供給時間は、手動変速機86の変速比のみに限らず、その変速比と機関回転速度との両方に基づいて設定されてもよい。なお、排気ガス供給時間が、機関回転速度のみに基づいてデータを検索することで設定されることを本発明は排除しない。
このような流量制御弁72の放出開度の変化を例示的に図4のグラフに表す。図4(a)のグラフは、手動変速機86において3速変速段が選択されているときの、ターボチャージャ58の作動アシスト用の流量制御弁72の放出開度の例を概略的に表したものである。これに対して、図4(b)のグラフは、手動変速機86において4速変速段が選択されているときの、ターボチャージャ58の作動アシスト用の流量制御弁72の放出開度の例を概略的に表したものである。なお、図4(a)、(b)では時刻t1でアシストフラグが「1」にされ、図4(a)では時刻t2でアシストフラグが「0」にされ、図4(b)では時刻t3でアシストフラグが「0」にされた場合を表している。図4から明らかなように、手動変速機86において3速変速段が選択されているときの方が、4速変速段が選択されているときよりも、初期開度および終開度が共に開き側の開度であり、その供給時間が短い。そして、初期開度から終開度まで、ここでは、流量制御弁72の開度は徐々に変化させられる。
なお、流量制御弁72が放出開度にされて蓄圧容器70からタービンホイール48への排気ガス供給が行われる上記供給時間を変速比に基づいてそのように変化させる理由を、図5のグラフに基づいて説明する。図5(a)のグラフは、手動変速機86において3速変速段が選択されているときの、蓄圧容器70内の圧力変化(曲線V1)と、過給圧変化(曲線C1)との関係例を概略的に表したものであり、そこにはターボチャージャ58への作動アシストがない場合の過給圧変化(曲線C0)が重ねて点線で表されている。これに対して、図5(b)のグラフは、手動変速機86において4速変速段が選択されているときの、蓄圧容器70内の圧力変化(曲線V2、V3、V4)と、過給圧変化(曲線C2、C3、C4)との関係例を概略的に表したものであり、これにもターボチャージャ58への作動アシストがない場合の過給圧変化(曲線C0´)が重ねて点線で表されている。なお、図5(a)、(b)での場合、時刻t4でアシストフラグが「1」にされて流量制御弁72が開弁されるが、その後、流量制御弁72の開度は、第1実施形態での放出開度とは異なり、初期開度に維持される。
図5(a)のグラフからは、時間t4〜t5の間、流量制御弁72が開弁されることで、過給圧が適切に高められることが理解できる。他方、図5(b)のグラフからは、時間t4〜t5よりも長い時間t4〜t6の間、流量制御弁72が開弁されても、過給圧を滑らかにかつ適切に上昇させることは難しく(曲線V4、C4参照)、それよりも長い時間t4〜t7の間、流量制御弁72を開弁しても同様に過給圧を適切に推移させることはできない(曲線V3、C3参照)ことを理解できる。そして、さらにそれよりも長い時間t4〜t8の間、流量制御弁72を開弁することで、過給圧を概ね滑らかかつ適切に上昇させることができることが分かる(曲線V2、C2参照)。これは、変速機の選択されている変速段すなわち変速比によって、タービン回転速度の上昇による過給圧の上昇速度および機関回転速度の上昇速度が大きく異なるからである。したがって、流量制御弁72が放出開度に開かれてタービンホイール48への蓄圧容器70からの排気ガス供給が行われる上記供給時間は、加速要求に見合ったトルク増大を適切に達成するように、変速比に基づいて上記のように変化させられる。
図3のフローチャートに戻って、アシストフラグが「1」にされた後の次回以降のルーチンでは、回収フラグが「0」であり、且つ、アシストフラグが「1」であるので、上記ステップS301およびステップS303でそれぞれ肯定判定される。次ぐステップS315では、上記ステップS305と同様に、機関回転速度が所定回転速度以下か否かが判定される。
そして、ステップS315で肯定判定されると、次ぐステップS317で、供給時間が経過していないか否かが判定される。ここで、判定対象となる時間は流量制御弁72が開かれたときからの経過時間である。ここではECU110は、内蔵するタイマ手段で、ステップS311に至ったときからの時間を計測し、この時間を経過時間と擬制して採用する。また、判定基準となる供給時間は、上で説明した手動変速機86の選択されている変速段に基づいて設定された時間である。ただし、ステップS317での判定に用いられる供給時間は固定値とされてもよい。
ステップS317で供給時間が経過していないとして肯定判定されると、次ぐステップS319で、上記ステップS309と同様に、蓄圧容器70内の圧力が上記所定圧以上か否かが判定される。そして、ここで肯定判定されると、当該ルーチンは終了する。
上記ステップS315から上記ステップS319のいずれかで否定判定されることで、ターボチャージャ58の作動アシストを終了するための制御が行われる。ステップS315からステップS319のいずれかで否定判定されると、ステップS321で流量制御弁72が閉弁するように、アクチュエータ74へ作動信号が出力される。そして、次ぐステップS323でアシストフラグが「0」にされる。これにより、該ルーチンは終了する。
ただし、一旦、ターボチャージャ58の作動アシストが開始された後、それを終了するか否かの判定には、上記ステップS315からステップS319の判定の他、さらに、加速(要求)が継続されているか否かの判定が加えられてもよい。加速が継続されていないときには、もはやターボチャージャ58の作動アシストを行う必要はないからである。具体的には、アクセル開度が加速要求有りと判定されたときのアクセル開度から所定量分閉じ側に変化したり、あるいはアクセル開度開き速度が負になってその大きさが所定量以上になったりしたとき、加速が継続されていないとして、作動アシストを終了するための上記制御(ステップS321およびステップS323)が行われ得る。
上記したように、ターボチャージャ58の作動アシスト条件が満たされているとき、蓄圧容器70内からタービンホイール48へ向けた排気ガスの供給流量を調整するように、流量制御弁72の開度が放出開度になるように、その供給時間の間、流量制御弁72を制御することで、以下の効果が奏される。それを図6の概念的なグラフに基づいて説明する。ただし、図6のグラフには、時刻taで、ターボチャージャ58の作動アシスト条件が満たされて、流量制御弁72が上記の如く放出開度に制御されたことによる吸気圧変化(曲線Ia、Ib、Ic参照)および蓄圧容器70内の圧力変化(曲線Va、Vb参照)の関係例が表されている。なお、図6では、ターボチャージャ58の作動アシストを行わなかったことに関する曲線Icを一点破線で表し、ターボチャージャ58の作動アシストを行ったときであるが、手動変速機86の変速段に関わらず流量制御弁72を全開に開けた場合に関する曲線Ib、Vbを点線で表し、他方、手動変速機86の変速段に対応した放出開度になるように流量制御弁72を制御した場合に関する曲線Ia、Vaを実線で表している。
上記したように、ターボチャージャ58の作動アシスト条件が満たされたとき、初めに、流量制御弁72の開度が変速機の変速比に基づいて設定される初期開度になるように制御される。そして、その初期開度は、変速機の選択されている変速比が大きいほど大きな開度にされるので、変速機の変速比が大きいほどより多くの排気ガスをタービンホイール48に供給することが可能になる。したがって、変速機の変速比が大きいほど、タービン回転速度の上昇率を高めることができ、速やかに吸気圧を高めることが可能になる(ターボラグを改善することが可能になる)(曲線Ia、Ic参照)。故に、手動変速機86の変速比に表れている運転者の加速要求の程度に見合った初期加速を実現することが可能になる。
また、ターボチャージャ58の作動アシスト条件が満たされているとき、流量制御弁72の開度は上記初期開度からこの初期開度よりも小さな終開度にまで変えられる。したがって、タービンホイール48への排気ガスの供給により高まるタービン回転速度、過給圧、排気ガス流量の変化に応じて、適切にターボチャージャ58の作動アシストを行うことができる。したがって、コンプレッサ56でサージングが発生したり、吸気圧のオーバーシュートが生じたりすることなく、滑らかに徐々に適切に吸気圧を高めて出力トルク向上を達成することが可能になる(曲線Ia、Ib参照)。なお、初期開度から終開度までの放出開度変化は、上記のように直線的である必要はなく、ステップ式であってもよい。
さらに、変速機の選択されている変速比に応じた時間が供給時間として定められて、その間、蓄圧容器70からタービンホイール48に排気ガスが供給されるので、機関回転速度の上昇速度等を考慮して適切に過給効果を発揮させることが可能になる(曲線Ia参照)。
このように、初期開度、終開度、供給時間を、変速機の選択されている変速比に基づいて変化させて、流量制御弁72を制御するので、蓄圧容器70内の排気ガスが無駄に消費されることがない(曲線Va、Vb参照)。つまり、車両が加速するとき、蓄圧容器70内のガスを効率的かつ有効に利用して、ターボラグの発生を抑制することはもとより、運転者の望む走行をより適切に実現することが可能になる。
なお、上記第1実施形態では、ターボチャージャ58の作動アシスト用の流量制御弁72の放出開度を初期開度から終開度まで変化させたが、その放出開度は、その作動アシストの間、初期開度に固定されてもよい。また、上記第1実施形態では、ターボチャージャ58の作動アシスト用に流量制御弁72の開度を放出開度にして蓄圧容器70から排気ガスを供給する供給時間を変化させたが、その供給時間は固定とされてもよい。すなわち、本発明では、加速するとき、蓄圧容器内のガスを効率的かつ有効に利用して、運転者の望む走行をより適切に実現するべく、蓄圧容器70内からタービンホイール48へのガス流量すなわち排気ガスの供給流量を調整するように、ターボチャージャ58の作動アシスト用に流量制御弁72の開度を変速機の変速比に基づいて制御する、種々の態様が許容される。
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。ただし、第2実施形態が適用された車両システムの構成は、上で説明された第1実施形態が適用された車両システム1の構成と概ね同じであるので、その説明は省略される。また、第2実施形態における排気ガス回収用の制御も、第1実施形態におけるそれと同じであるので、その説明は省略される。ただし、ECU110からの信号によって流量制御弁72制御用のアクチュエータ74に流す電流がデューティー制御される。
第2実施形態に係る排気ガス放出用の制御すなわちターボチャージャ58の作動アシスト制御は、流量制御弁72の放出開度をどのような開度にするかという点で、上記第1実施形態でのそれと相違する。つまり、ここでは、流量制御弁72は、上記ステップS313に至ることで放出開度になるように制御され、ステップS321に至ることで閉弁制御されることで、ターボチャージャ58の作動アシスト条件が満たされているときに開弁されるが、流量制御弁72の放出開度に関するデータ、それに関する制御の点で、本第2実施形態と上記第1実施形態とは相違する。しかしながら、この点以外、本第2実施形態におけるターボチャージャ58の作動アシスト制御と上記第1実施形態のそれとは概ね同じであるので、その詳細な説明は省略される。
第2実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、ターボチャージャ58の作動アシスト条件が満たされているときに、流量制御弁72の開度が放出開度に一致するように制御される。その放出開度は、上記第1実施形態での放出開度と同様に手動変速機86の変速段すなわち変速比に基づいて設定される。そして、さらに、本第2実施形態では、蓄圧容器70内の圧力(ここでは換言すると蓄圧容器の内外圧差)およびバッテリー(不図示)の電圧に基づいてそのような流量制御弁72の開度は調節される。具体的には、その設定された放出開度になるようにアクチュエータ74へ作動信号が出力されるが、そのアクチュエータ74への作動信号(デューティー信号)のデューティー比が、蓄圧容器70内の圧力およびバッテリー電圧に基づいて補正される。
流量制御弁72がある開度に開かれているとき、蓄圧容器70内の圧力によって、蓄圧容器72から放出される排気ガスの流量は変化する。それ故、蓄圧容器70内の圧力が異なる場合、自動変速機86の変速比のみに基づいて定まる放出開度になるように流量制御弁72を同じように制御しても、ターボチャージャ58の作動アシスト用にタービンホイール48の回転駆動に用いられる蓄圧容器70からのガス流量を一様にすることは難しい。例えば、流量制御弁72の開度が同じ場合、蓄圧容器70内の排気ガス量が多くて圧力が高いときは、この圧力が低いときに比べて、タービンホイール48へのガス流量は多くなり得る。
また、流量制御弁72は、上記説明および図1から明らかなように、アクチュエータ74で発生する電磁力によってその弁体を通路軸方向に進退移動可能な電磁弁である。特に、流量制御弁72の弁体の進退方向と蓄圧容器70からの排気ガスの流れ方向とが一致するように流量制御弁72が設けられているので、蓄圧容器70からの高圧の排気ガスがその弁体に作用することで流量制御弁72の開度が影響を受け得る。つまり、流量制御弁72の弁体に対してその弁軸方向に作用する圧力が高ければ高いほど流量制御弁72は閉じようとする。
さらに、流量制御弁72は、アクチュエータ74の電磁力によってその弁体を進退移動可能に構成された電磁弁である。つまり流量制御弁72は、バッテリーより駆動電力を供給され電動駆動される弁である。それ故、それの電力低下により流量制御弁72の開閉動作は影響を受ける。例えば、エアコン等の使用によりバッテリー電圧が低下したときに、バッテリー電圧が低下する前の状態と同じようにアクチュエータ74を制御すると、アクチュエータ74で発生させられる電磁力が弱く、流量制御弁72の開度を所望の開度に開くことは困難になり得る。したがって、バッテリー電圧に応じて流量制御弁72を制御しないと、流量制御弁72の制御上目標となる目標開度としての放出開度に適切に流量制御弁72を開くことが困難になり得る。
そこで、本第2実施形態では、流量制御弁72をターボチャージャ58の作動アシスト用に開くとき、その開度を適切に放出開度にするように、蓄圧容器70内の圧力およびバッテリー電圧に基づいてアクチュエータ74へのデューティー信号のデューティー比を補正しつつ、流量制御弁72を制御する。つまり、まず、ECU110は、上記第1実施形態で説明したように、ターボチャージャ58の作動アシスト条件が満たされているときに、手動変速機86の選択されている変速段すなわちその変速比に基づいて放出開度を設定する。他方、ECU110は、圧力センサ132からの出力信号に基づいて蓄圧容器70内の圧力を検出する。こうして検出された蓄圧容器70内の圧力と、設定された放出開度から、予め実験により求められてROMに記憶されているデータを検索することで、1パターンのデューティー比が選択される。具体的には、蓄圧容器70内の圧力が高いとき、その圧力に抗して適切に流量制御弁72を放出開度にまで開くように、デューティー比は大きくされる(ON時間が長くされる)。
そして、さらに、そのデューティー比を、別途、既知のセンサ等や上記した種々のセンサ等を用いてあるいは種々の機器の状態等に基づいて検出あるいは推定されたバッテリー電圧に基づいて補正して、用いられるデューティー比が定められる。具体的には、バッテリー電圧が低いほど、デューティー比は大きくなるように補正される。そして、最終的に、このデューティー比のデューティー信号がアクチュエータ74に対して出力されて、流量制御弁72が制御される。
こうすることで、より適切に、流量制御弁72をターボチャージャ58の作動アシスト用に開くとき、その開度は放出開度にされる。したがって、運転者の望む車両の走行をより適切に実現することが可能になる。
なお、上記では、流量制御弁72を放出開度にするための信号のデューティー比は、蓄圧容器70内の圧力によって補正されてから、バッテリー電圧に基づいて補正されたが、これらによる補正順序は逆であってもよい。また、ターボチャージャ58の作動アシスト用の流量制御弁72制御用のアクチュエータ74への信号に、手動変速機86の変速段すなわち変速比の他、蓄圧容器70内の圧力および/またはバッテリー電圧に基づいた補正を行う場合、それらの順番は如何なるものであってもよい。なお、さらに、アクセル開度に応じて、すなわち加速要求の程度に応じてさらにそれが補正されることを本発明は排除しない。
以上、本発明の2つの実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、上記2つの実施形態では、変速機は手動変速機であったが、有段自動変速機あるいは無段自動変速機(CVT)とされてもよい。この場合にも、同様に、上記実施形態の制御は適用され得る。
また、上記両実施形態では、加速するときに、タービンホイール上流側の排気通路に蓄圧容器内の排気ガスすなわち圧力エネルギーが供給されたが、このような圧力エネルギーの放出利用は加速するときに限られない。要求過給量つまり要求負荷が増加したときであれば、それは行われ得る。要求負荷が増加したときには、加速するとき、および、車両が上り坂に面して負荷が上昇した場合などの内燃機関への要求負荷が増加したときが含まれる。なお、「要求負荷」との表現における「負荷」には「トルク」や「出力」という概念が含まれる。
また、排気通路28と蓄圧容器70内とを連通可能にする連通路68は、排気ガス回収用の通路と排気ガス放出用の通路とに分けられてもよい。そして、排気ガス回収用の通路に設けられる弁は逆止弁であってもよく、逆止弁であるときには、その弁は排気通路Jの圧力が蓄圧容器内の圧力を超えたときに開くように構成されるとよい。なお、排気ガス回収用の通路は排気通路Jに直接的につなげられてもよく、また排気ガス放出用の通路は排気通路Kに直接的につなげられてもよい。
また、上記両実施形態では、排気絞り弁62はバタフライ式弁であったが、それ以外の形式の弁であってもよい。排気絞り弁62は、例えば、ポペット式弁、シャッタ式弁であり得る。なお、排気絞り弁62として、排気ブレーキ用に設けられた弁が用いられてもよい。また、流量制御弁72は上記の如きポペット式弁以外の形式の弁でもよく、また、排気ガス放出を行うときに蓄圧容器70からタービンホイール48へのガス流量を調整可能であればあらゆる形式の弁であり得る。なお、本明細書において、「弁」の用語は、流路断面積を可変とする機能を有するあらゆる部材を包含するものとして用いられ得る。
さらに、排気絞り弁62、流量制御弁72を含む上記した種々の弁を駆動させる種々のアクチュエータは、種々の、既知の当業者が利用可能なアクチュエータ、例えば負圧ダイヤフラム方式のアクチュエータ、電動モータであり得る。また、上記第2実施形態では、流量制御弁72用のアクチュエータ74をデューティー制御するとしたが、それは負圧デューティー制御であり得る。また、その制御は、ステップモータ制御、DCモータ制御とされてもよい。
また、上記両実施形態では、排気通路の排気ガスを蓄圧容器へ回収して蓄えるとしたが、蓄圧容器内に蓄えられるガスは、コンプレッサ等の圧縮機器によって加圧された外気でもよい。また、上記両実施形態では、蓄圧容器を1つ設けることにしたが、それは複数個設けられてもよい。そして蓄圧容器を2つ以上複数個設ける場合には、それら蓄圧容器は車両に分散して配置され得る。
なお、上記両実施形態では、本発明をディーゼル機関に適用して説明したが、これに限定されず、本発明は、ポート噴射型式のガソリン機関、筒内噴射形式のガソリン機関等の各種の内燃機関に適用可能である。また、用いられる燃料は、軽油やガソリンに限らず、アルコール燃料、LPG(液化天然ガス)等でもよい。また、本発明が適用される内燃機関の気筒数などはいくつであってもよい。
なお、上記両実施形態およびその変形例では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明は特許請求の範囲およびその等価物の範囲および趣旨に含まれる修正および変更を包含するものである。