JP2009299085A - 鋼材の製造方法及び鋼製部品の製造方法 - Google Patents

鋼材の製造方法及び鋼製部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Pbを実質的に含有しない硫黄快削鋼を用いて低コストで各種部品を製造可能な鋼材及びこれを用いた鋼製部品を実現する。
【解決手段】本発明の鋼材(線材若しくは棒材)の製造方法は、Mnが0.70〜1.32重量%、Sが0.24〜0.35重量%、Cが0.13重量%以下、Pが0.12重量%以下、Siが0.10重量%以下で、残部がFeを主体とし、Pbを実質的に含まない硫黄快削鋼を熱間圧延してなる線材状若しくは棒材状の母材を用い、前記母材に合計で加工率33〜60%となる範囲内で冷間で伸線加工を施す冷間伸線工程と、該伸線加工後の鋼材に650℃以上の温度に保持して球状化焼鈍を施す伸線後熱処理工程と、を具備し、前記冷間伸線工程では、途中で600℃以上の温度で行う熱処理を介在させずに前記加工率の範囲を達成することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は鋼材の製造方法及び鋼製部品の製造方法に係り、特に、塑性加工と切削加工を組み合わせて形成する部品の材料として好適な鋼材の製造方法に関する。
一般に、従来から硫黄快削鋼と呼ばれる切削加工用の鋼材が知られており、切削加工を施して製造される部品を製造するための材料として利用されている。これらの硫黄快削鋼は、比較的高いSの含有量により鋼中に硫化物(MnS)の粒塊が分散し、切削性を高める作用をなすが、一方でこの粒塊は機械的強度の劣化を招くので、Sの含有量を増加させるほど鋼材の伸び、絞り、衝撃値が悪化する。また、この粒塊は圧延、鍛造、引抜き等の加工によって変形し、鋼材の場合、加工方向に長く引き伸ばされた形状となる。
一方、Pbを添加することで潤滑性が向上して被削性がよく、材力や熱的安定性が基本鋼とほとんど変わらない鉛快削鋼が知られており、多くの機械構造用の鋼材として使用されている。しかしながら、近年の環境問題の意識の高まりとともにPbの使用を回避する動きがあり、Pbを使用しない快削鋼の開発が種々行われている。このようなPbを含まない快削鋼の開発内容は、例えば以下の非特許文献1及び2に記載されている。
また、硫黄快削鋼を冷間で引抜き加工を施してなる延性の優れた快削鋼棒線が以下の特許文献1に記載され、さらに、快削鋼のPbフリー化を図りつつ、疲労強度や靭性の高い浸炭部品を製造する方法が以下の特許文献2に記載されている。
染川雅実他3名 「鉛フリー快削鋼」 神戸製鋼技報 Vol.51,No.1 (Apr. 2001) 坂本浩一他5名 「Pbフリー低炭素硫黄快削鋼の開発」 神戸製鋼技報 Vol.56,No.3 (Dec.2006) 特開平6−279847号公報 特開2003−342678号公報
しかしながら、従来の硫黄快削鋼では切削性を高めるためにSを添加していることから靭性などの材力に劣るため、転造などの塑性加工が要求される部品には適用しにくい。一方、種々開発されているPbフリーの快削鋼(いわゆる新鋼種とよばれるもの)を用いて各種の部品を製造する場合には、上記と同様に転造などの塑性加工ができない上に、鋼材の調達コストが高いために安価に部品を製造することができないという問題点がある。
そこで、本発明は、上記従来の種々の材料のうち、Pbを実質的に含有しない硫黄快削鋼を用いて低コストで各種部品を製造可能な鋼材及びこれを用いた鋼製部品を実現することにある。
斯かる実情に鑑み、本願発明者らが種々の検討を行った結果、従来の硫黄快削鋼を用いて切削加工と転造等の塑性加工を組み合わせることで加工精度の向上と材料の調達コスト及び部品の加工コストの抑制とを図ることができることを着想し、この着想の下で、硫黄快削鋼を母材としながらも、転造等の塑性加工が可能になる材料の開発を鋭意試みた。その結果、以下のように製造した鋼材であれば、充分な靭性が得られ、転造などの塑性加工を施すことで表面に割れや剥離が発生するといったことがなくなることを見出し、本願発明に至った。
すなわち、本発明の鋼材の製造方法は、Mnが0.70〜1.32重量%、Sが0.24〜0.35重量%、Cが0.13重量%以下、Pが0.12重量%以下、Siが0.10重量%以下で、残部がFeを主体とし、Pbを実質的に含まない硫黄快削鋼を熱間圧延してなる線材状若しくは棒材状の母材を用い、前記母材に合計で加工率33〜60%となる範囲内で冷間で伸線加工を施す冷間伸線工程と、該伸線加工後の鋼材に650℃以上の温度で球状化焼鈍を施す伸線後熱処理工程と、を具備し、前記冷間伸線工程では、途中で600℃以上の温度で行う熱処理を介在させずに前記加工率の範囲を達成することを特徴とする。なお、ここで製造される上記鋼材は線材状若しくは棒材状である。この場合に、コイル状の線材が形成される場合には加工率10%以下のスキンパスを施す直線加工工程をさらに設けることがある。
この発明によれば、上記組成の線材状若しくは棒材状の材料を母材とし、この母材に650℃以上の温度で行う熱処理を介在させずに加工率33〜60%の範囲内で伸線加工を実施することにより、特に表層部の硫化物が引き伸ばされ、場合によって微細化され、その後、650℃以上の温度で球状化焼鈍を施す伸線後熱処理工程を実施することで、軟質化により転造加工しやすくなるため、切削加工容易性を維持しつつ、靭性を向上させることができ、表層部にとどまる範囲であれば転造等の塑性加工を行っても割れや剥離等を生ずることがなくなる。ここで、加工率が33%を下回ると表層部における硫化物の微細化効果が充分に得られなくなり、加工率が60%を上回ると鋼材そのものの破断や内部欠陥が生じやすくなる。一般的には加工率が40%を越えると破断や内部欠陥が生じやすくなるが、母材の外径が小さい場合(例えば母材の外径が15mm以下の場合)には加工率が40〜60%でも破断せず、内部欠陥も生じさせずに鋼材を製造することが可能である。
特に、本発明における鋼材では、高い範囲の加工率で伸線加工が施されることで、鋼材の中央部と表層部における硫化物の大きさ及び分布態様の差が大きくなり、鋼材の中央部では比較的大きな硫化物が粗く分布するのに対して外周方向に徐々に硫化物が微細化し、細かな分布態様となり、表層部では硫化物が十分に微細化される。これに対して、従来の加工率の低い鋼材では、中央部と表層部の硫化物の大きさ及び分布態様の差が小さいことがわかった。
この場合に、前記加工率を35〜50%とすることが好ましい。加工率が35%を越えると鋼材の外周部の硫化物の微細化が顕著になり、上記効果がさらに高められる。また、加工率が50%を越えると、特に外径の大きな鋼材では、破断の可能性が高くなり、内部欠陥も生じやすくなる。
冷間伸線工程では、途中で600℃以上の温度での熱処理を介在させずに上記加工率の範囲を達成する。この熱処理は鋼材に対する中温領域若しくは高温領域の熱処理(例えば中温焼鈍若しくは高温焼鈍)であり、このような熱処理を加えると鋼材の組織が変性し、本発明の上記効果が減殺される可能性があるである。ただし、このような熱処理が行われても、その前後に上記加工率の範囲で冷間伸線工程が実施されていれば本発明の効果を得ることができる。
また、前記伸線後熱処理工程では、前記鋼材に680〜720℃で2〜7時間保持して焼鈍を施すことが好ましい。この温度範囲及び時間範囲の熱処理を行うことで切削性を確保しつつ靭性の向上を図ることができる。焼鈍は、常温放置若しくは空冷で行うことが好ましい。
次に、本発明の鋼製部品の製造方法は、上記いずれかに記載の製造方法により製造した鋼材の表層部に転造等の塑性加工を施す塑性加工工程と、前記鋼材に切削加工を施す切削加工工程とをさらに具備することを特徴とする。この場合に、両加工工程はいずれを先に実施してもよい。硫黄快削鋼を母材として加工してなる鋼材に転造等の塑性加工と切削加工を組み合わせることで、高精度の部品を低い加工コストで製造することができる。ここで、上記塑性加工が行われる表層部の範囲(塑性加工による形状変化で生じた表面凹凸の最大高低差の範囲内に含まれる素材量と同じ体積を有する加工前の鋼材の厚み部分の厚みの外径に対する比)としては、鋼材の外径の30%以下であることが好ましく、20%以下であることがさらに望ましい。このような塑性加工では、たとえば転造を行ってウォームを形成する場合において、pcd(素材径)φ10mm以下はモジュール0.8以下、φ10mm以上はモジュール1.0以上が可能である。通常JIS規定のメートルネジはもちろん、TR・TMの台形ネジは有効径(素材径)に関わらず、加工可能である。インボリュートセレーションにおいては、PCDφ10mm以下ではモジュール1.0以下、φ10mm以上はモジュール1.0以上が加工可能である。
本発明によれば、既存の硫黄快削鋼を母材とすることで調達コストを低減し、切削加工に加えて転造等の塑性加工も可能にすることで加工精度を向上させ、加工コストを低減できるため、Pbを実質的に含まない高精度の鋼製部品を低コストで製造できるという優れた効果を奏し得る。
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。本発明としては、母材として、JISのSUM22又はSUM23と同等品で、Mnが0.70〜1.32重量%、Sが0.24〜0.35重量%で、Cが0.13重量%以下、Pが0.12重量%以下、Siが0.10重量%以下、残部がFeを主体とし(好ましくは残部がFe及び不可避不純物よりなり)、Pbを実質的に含まない硫黄快削鋼よりなる線材状の母材を原料として、各種の開発及び実験を行った。
なお、上記母材は、SUM22又はSUM23に対応する組成の鋼材を鋳造してビレット化し、これを熱間で連続鍛造(熱間圧延)して所定径のコイル状に構成したものである。この母材において、本実施形態で用いることのできる組成範囲は以下のとおりである。
Mn:0.70〜1.32重量%
MnはSと結合して鋼中で硫化物を形成し、切削性を向上させるとともに靭性を与えるための必須成分であり、0.70重量%未満では、切削性の向上効果が低下する。このMnの含有量としては、特に0.70〜1.05重量%の範囲内が望ましい。
P:0.12重量%以下
Pは切削性を向上させるために添加する場合もあるが、一般的には不可避不純物であり、基本的にはMnSの硫化物によってある程度の切削性が得られるので、本願発明の目的とは直接関連性がなく、意図的に含まない場合でも大きな問題は生じない。Pを意図的に含有させる場合には0.12重量%以下であることが望ましい。
S:0.24〜0.35重量%
Sは切削性を向上させるための必須成分であり、0.24wt%を下回ると切削性が悪化し、0.35wt%を越えて含有させると熱間加工性、耐食性、靭性が劣化する。一般的には、切削性を重視するために0.30〜0.35wt%の範囲内とすることが望ましい。
C:0.13重量%以下
本願発明の素材は0.13wt%以下の低炭素鋼である。炭素(C)は0.13wt%を越えて含有させると材料硬度に影響が出る。好ましくは0.10〜0.13wt%である。
Si:0.10重量%以下
Siの過剰の添加は切削加工性を低下させる。したがって上限を0.10wt%とした。
本実施形態で用いる母材は、JIS規格のSUM22若しくはSUM23に相当する(低炭素)硫黄快削鋼であり、きわめて容易かつ安価に入手することができる。
本実施形態の鋼材の製造方法は、上記の母材に伸線加工を施す冷間伸線工程と、この伸線加工を施してなる鋼材を熱処理する伸線後熱処理工程とを有する。
上記冷間伸線工程は冷間で母材の断面積を縮減する工程である。この工程は、いわゆる伸線加工、引抜き加工、押出し加工等により実施することができる。
この冷間伸線工程では、本発明の場合、加工率(減面率)を33%乃至60%の範囲内とする。加工率が33%未満では、加工そのものは容易であるが、硫化物であるMnSが微細化せず、所望の靭性が得られないので、転造などといった表層部の鍛造加工を施した場合に割れや剥離が発生する。加工率が60%を越えると、母材の外径に拘わらず、伸線時に破断が発生したり内部欠陥が生じやすくなるため、部品用の鋼材としては適格性を欠く。ここで、加工率としては35〜50%の範囲が特に望ましい。これは、加工率が35%を超えると表層部における硫化物の微細化が顕著となり、当該表層部の塑性加工性が弧状するとともに、加工率が50%を越えると母材の外径が大きい場合には上記と同様に破断や内部欠陥が発生しやすくなるためである。ただし、母材の外径が小さい場合や、複数の伸線加工を順次に行う場合、引抜き加工において一部押出し力を加えながら加工するなどの加工方法の改善を行うことにより、加工率が50%を超える範囲でも有効な鋼材を形成できる余地は充分にある。
本実施形態において、上記加工率は単一の伸線加工で達成しても複数回の伸線加工で達成しても構わないが、特に高い加工率を得るためには複数の冷間伸線工程を順次に実施することが好ましい。これによって材料の破断や内部欠陥の発生が抑制される。この場合、複数の冷間伸線工程は、600℃以上の温度での熱処理を介在させずに行う。この熱処理を介在させると、全体としては上記範囲の加工率が達成されていても、後述する組織の形成及び塑性加工性の向上効果が減殺される。また、途中で600℃以上の温度で熱処理が行われても、その後に改めて上記の加工率の範囲の冷間伸線工程が600℃以上の熱処理を介在させずに行われれば或る程度の効果が得られる。
この冷間伸線工程は、特に母材の表層部の硫化物を微細化し、転造等の塑性加工性を向上させるために行われる。上記のように加工率を33%以上とすることで、表層部の硫化物(MnS)が鋼材の軸線方向に引き伸ばされ、分断されることで充分に微細化される。加工率が低い場合には硫化物が引き伸ばされるが微細化はほとんど進まず、したがって、塑性加工性を向上させることができない。また、上記加工率の範囲の冷間加工を実施した場合でも、当該加工の途中で600℃以上の温度の熱処理を介在させた場合には、当該熱処理によって硫化物の微細化が阻害されるので、やはり塑性加工性を向上させることができない。また、上記熱処理を行った後に上記加工率の範囲の冷間加工を他の熱処理を介在させずに行った場合には、冷間加工の加工率の範囲は充分であっても、硫化物の微細化がある程度阻害されるものと考えられ、やはり、母材に600℃以上の温度での熱処理を全く行わずに冷間加工を実施した場合に比べると効果が減殺される場合がある。
本実施形態において、上記の伸線後熱処理工程は、650℃以上の温度で球状化焼鈍を実施する工程である。この伸線後熱処理工程は、主として硫化物に起因する塑性加工時の表層部の割れや剥離を防止するための工程である。ここで、球状化焼鈍は、通常、鋼中の炭化物を均一に球状化する熱処理である。球状化焼鈍の温度範囲は鋼材の組成によって変化するが、通常は650〜790℃の範囲内で行われる。本発明の場合、温度は680〜720℃の範囲内であることが特に好ましく、上記温度での保持時間は2〜7時間の範囲内であり、特に2〜5時間の範囲内であることが好ましい。なお、本発明の焼鈍時の冷却方法は常温放置でも空冷でもよいが、以下の実施例に対する焼鈍は全て常温放置の自然冷却とした。
<比較例>
外径12mmの線材状(コイル状とされたもの、以下同様。)の母材(熱間圧延材)のスケール除去を酸洗により行った後、引抜き(ドローイング)加工により外径10.5mmに伸線加工を施し、その後、720℃で6時間保持して球状化焼鈍を実施し、鋼材(線材)の直線加工(直線機やコンバインドマシン等による加工率10%以下(好ましくは6〜10%)のスキンパスによる直線加工、以下同様。)後、表面研削を施して外径10.1mmの鋼材(棒材)を完成させた。この例では加工率(減面率)が23.4%である。なお、この種の鋼材としては、一般的には加工率を20〜25%とする場合が多く、特に、加工率を20〜30%の範囲内で適宜に選択して引抜き加工を行った他の鋼材をも含め比較例とした。
<実施例1>
外径15mmの線材状の母材(熱間圧延材)のスケール除去を酸洗により行った後、引抜き(ドローイング)加工により外径13mmに伸線加工(加工率=24.9%)を施し、その後、650℃で4時間保持して焼鈍を施した。その後、さらに引抜き(ドローイング)加工により外径10.5mmとし(加工率=34.7%)、さらに、720℃で6時間保持して球状化焼鈍を施し、鋼材(線材)の直線加工後、表面研削を施して外径10.1mmの鋼材(棒材)を製造した。
<実施例2>
外径13mmの線材状の母材(熱間圧延材)のスケール除去を酸洗により行った後、引抜き(ドローイング)加工により外径10.5mmとし(加工率=34.7%)、その後、720℃で6時間保持して球状化焼鈍を施した。そして、鋼材(線材)の直線加工後、表面研削を施して外径10.1mmの鋼材(棒材)を製造した。
<実施例3>
外径13mmの線材状の母材(熱間圧延材)のスケール除去を行った後、引抜き(ドローイング)加工により外径10.2mmとし(加工率=38.4%)、その後、690℃で5時間保持して球状化焼鈍を施し、鋼材(線材)の直線加工後、表面研削により外径10.1mmの鋼材(棒材)を製造した。
[鋼材の加工、鋼製部品の製造]
上記の比較例、及び、実施例1乃至3の製造方法で製造した鋼材を転造加工し、リードスクリューである部品を製造した。部品のリード角は13.5度、ねじ条数は2条、ねじピッチは約4mm、ねじ山高さは約1mm、ねじ山の左歯角60度、右歯角7度、ねじ山の頂部の曲率半径は0.2mm、ねじ山の基部(前後2箇所)の曲率半径はそれぞれ0.3mm及び0.2mmとした。有効径は10.1mm、ねじ山の頂部の外径は11.2mm、ねじ山以外の部分の外径(谷径)は9.2mmである。なお、以下の塑性加工性の評価は転造加工直後の外面状態に基づいて行った。この部品は、上記ねじ山の歯角を見てもわかるように不対称でバランスの悪い形状をしており、転造加工が困難なものである。
上記の部品を顕微鏡で観察し、ねじ山形状の評価を行った。比較例の鋼材を用いて製造した部品は、図1に示すように、完全なねじ山の形成に至らず(シーミングが大きく開いている)、大きな割れや剥離が発生した。すなわち、実質的に所望の形状を得るための転造加工を行うことができなかった。一方、実施例1の鋼材を用いた部品では、図2に示すように、ねじ山の頂部の一部に小さな割れや剥離が発生したが、比較例よりも表面状態は改善し、全体としては良好な外面状態が得られた。また、実施例2の鋼材を用いた部品では、図3に示すように、ねじ山の頂部の僅かな部分に限定的な小さな割れや剥離が発生したが、表面の平滑性は良好で、実施例1よりもさらに加工性が向上していた。さらに、実施例3の鋼材を用いた部品では、図4に示すように、ねじ山の頂部を含め割れや剥離はほとんど発生せず、きわめて良好なねじ山形状が得られた。
なお、上記実施形態では鋼製部品としてリードスクリューを示したが、本発明の鋼製部品としては、転造その他の塑性加工を施すことで形成される各種の部品が含まれる。特に、各種のねじ部品、ウォームその他の各種の歯車部品、セレーションを備えた各種の部品などは転造加工に適したものであり、製品の品位が表層部の塑性加工性に大きく影響されるので、本発明の鋼製部品として最も好適なものである。特に、硫黄快削鋼を用いることで切削加工性を確保できると同時に転造等の塑性加工も可能になるため、塑性加工と切削加工を併用することで鋼製部品の精度向上や低コスト化を図ることができる。
次に、上記母材、並びに、上記比較例、及び、実施例1乃至3の断面組織をピクラル腐食後に顕微鏡にて観察した。母材は非金属介在物(硫化物)が均一に分散したフェライト+パーライト組織を呈するが、熱処理(球状化焼鈍)後は各例とも球状炭化物組織を呈していた。基本的には各例とも硫化物以外の基本的組織の態様にはほとんど差異がなかった。
一方、製造された鋼材中の非金属介在物(硫化物)について観察を行った。全体的に実施例1乃至3は比較例と比べて硫化物の微細化が進行しており、特に外周部で比較例との差異が大きかった。図5には比較例、実施例1及び実施例3の鋼材中央部の断面写真を対比して示し、図6には比較例、実施例1及び実施例3の鋼材1/4D部(中心と外周の中間部分)の断面写真を対比して示し、図7には比較例、実施例1及び実施例3の鋼材外周部(外周より0.5mmの部分)の断面写真を対比して示す。
図5に示すように、鋼材中央部では、いずれの例でも硫化物は軸線方向に引き伸ばされた形状となっているが、比較例に比べて実施例1及び3の硫化物がより微細化され、特に、実施例3ではかなりの微細化が生じていた。また、図6に示すように、鋼材中間部(直径の1/4の部分)では、比較例と実施例1及び3の硫化物の微細化具合にさらに差が生じた。実施例1及び3にも比較的大きな硫化物が一部に見られるが、それ以外の硫化物は比較例よりも大幅に微細化されている。さらに、図7に示すように、鋼材外周部(外周より0.5mm内側にある部分)では、比較例では硫化物が比較的大きいのに対して実施例1乃至3では硫化物の微細化が生じており、特に実施例3では硫化物の微細化がきわめて進行し、全体に均一に分散していた。全体的には、鋼材中央部より鋼材外周部の方が比較例と実施例の硫化物の微細化度合の差が大きく、これが塑性加工性に大きな影響を与えているものと推定される。
上記のように、熱間加工材である母材に600℃以上の温度の熱処理を全く行わずに33%を越える加工率で伸線加工を実施した実施例2及び3では、比較例に対する組織上の差異が大きく、塑性加工性においても明らかな改善が認められた。また、実施例1では、1回目の伸線加工(加工率=24.9%)後に650℃の焼鈍を施し、その後、さらに2回目の伸線加工(加工率34.7%)を行うことで総計で加工率=59.6%と高い値を得ることが可能となったが、途中で熱処理が介在することで、硫化物の微細化が阻害され、全体の加工率に応じた効果が得られていないものと考えられる。ただし、2回目の伸線加工で本発明の加工率の範囲が達成されたことで、比較例に対しては十分な加工性の向上が達成されている。
次に、上記各例について、切削加工性の確認を行った。切削条件として回転数を4320rpm、送りピッチを30μmとし、鋼材の軸線方向端部から切削を進める前削りと、鋼材の中間部より軸線方向端部へ向けて切削を進める後削りとで、それぞれ表面粗さ(Ry)及び切屑状態を、JIS規格のSUM24L(鉛快削鋼)の鋼材に対する上記と同一条件での切削状態と比較した。その結果、いずれの鋼材も鉛快削鋼と同等以上の切削性を有していた。具体的には、各例の鋼材については、表面粗さについてはいずれも鉛快削鋼より小さく良好であり、切屑状態も多少粗大であったが特に支障がなかった。
さらに、上記実施例以外の加工率で母材に対する引抜き加工性について検討したところ、以下の表1に示す結果が得られた。ここで、加工性が二重丸の場合は破断や内部欠陥もなく良好に断面減面加工が可能であることを示し、加工性が丸の場合は複数段の引抜き加工を行うなど加工方法によっては破断や内部欠陥なしに加工が可能であること(加工の上限値に近いこと)を示している。
表1の内容を見ると、母材の加工率は50%が上限に近いものと推定されるが、一般的に母材の外径が小さいほど加工率の上限は上昇する傾向があるため、実用的には50%を越える加工率が可能と考えられる。
一方、母材を650℃で2時間加熱し、自然冷却して焼鈍を施した後に、伸線加工を実施した場合には、表2に示すように、加工率の上限が上昇し、50%を越える加工率も実現できる。この場合、鋼材の利用効率が低下する(破断や内部欠陥等で利用できない部分が生ずる)危険性を無視すれば、実質的には加工率は60%まで上昇させることが可能と考えられる。
以上のように、本実施形態では、600℃以上の温度での熱処理を介在させずに硫黄快削鋼の母材に引抜き加工等の伸線加工を冷間で施して加工率を33〜60%の範囲内とし、その後に、650℃以上の温度で球状化焼鈍を施すことで、特に鋼材の外周部中の硫化物を微細化することができ、表層部の靭性を高めることができるので、転造等の塑性加工を支障なく行うことができるようになった。したがって、本発明は、Pbを含有しない環境に適合し、かつ、容易かつ安価に入手できる硫黄快削鋼を用いているにも拘わらず、塑性加工に対応可能な鋼材を提供できるという顕著な効果を奏する。すなわち、良好な切削性と転造等の塑性加工性を両立できるため、高精度且つ安価な部品を提供できる。
なお、上記実施例ではコイル状の線材を母材として冷間伸線工程及び伸線後熱処理工程を実施したが、直線状の棒材を母材として同様の工程を実施しても組織及び特性には何らの差異も本質的に生じないため、上記母材としては線材状と棒材状のいずれでも構わない。また、上記各工程後に形成される鋼材の形状についても、取り扱い上の差異はあるものの線材状と棒材状のいずれであっても構わない。
比較例により製造した鋼材を転造して形成した部品の外面拡大写真。 実施例1により製造した鋼材を転造して形成した部品の外面拡大写真。 実施例2により製造した鋼材を転造して形成した部品の外面拡大写真。 実施例3により製造した鋼材を転造して形成した部品の外面拡大写真。 各例の鋼材中央部の断面拡大写真。 各例の鋼材中間部の断面拡大写真。 各例の鋼材外周部の断面拡大写真。

Claims (5)

  1. Mnが0.70〜1.32重量%、Sが0.24〜0.35重量%、Cが0.13重量%以下、Pが0.12重量%以下、Siが0.10重量%以下で、残部がFeを主体とし、Pbを実質的に含まない硫黄快削鋼を熱間圧延してなる線材状若しくは棒材状の母材を用い、
    前記母材に合計で加工率33〜60%となる範囲内で冷間で伸線加工を施す冷間伸線工程と、
    該伸線加工後の鋼材に650℃以上の温度で球状化焼鈍を施す伸線後熱処理工程と、
    を具備し、
    前記冷間伸線工程では、途中で600℃以上の温度で行う熱処理を介在させずに前記加工率の範囲を達成することを特徴とする線材状若しくは棒材状の鋼材の製造方法。
  2. 前記加工率を35〜50%とすることを特徴とする請求項1に記載の鋼材の製造方法。
  3. 前記伸線後熱処理工程では、前記鋼材に680〜720℃で2〜7時間保持して焼鈍を施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼材の製造方法。
  4. 前記冷間伸線工程及び前記伸線後熱処理工程により形成された前記鋼材がコイル状の線材であり、該線材に加工率10%以下のスキンパスを施す直線加工工程をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鋼材の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法により製造した鋼材の表層部に塑性加工を施す塑性加工工程と、前記鋼材に切削加工を施す切削加工工程とをさらに具備することを特徴とする鋼製部品の製造方法。
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