JP2009296967A - 小型遺伝子解析装置 - Google Patents

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【課題】極微量の液体分注を簡易な機械構成で可能にする加圧分注方法において、特に試薬導出部と反応液が接触する場合に、目的外の核酸基質が混入する危険性を低減し、パイロシーケンシング法による遺伝子解析装置を実現するために必要な技術を提供する。
【解決手段】本発明は、試薬導出部を具備しかつ試薬を収める試薬容器を保持する試薬容器保持手段と、試薬容器保持手段を上下方向に移動させる上下移動手段と、試薬容器から試薬の供給を受けるための反応槽と、加圧により試薬容器から反応槽へ試薬を供給するための圧力印加手段と、試薬導出部の内部に気体層を設けるための陰圧発生手段と、反応槽に振動を印加する振動印加手段と、反応槽について光学的に検出する検出器とを備える分析装置であって、圧力印加手段により試薬を供給した後に圧力を排出するための排出口を有し、排出口が開口する圧力が、試薬導出部の内径から予め決まる圧力以下であることを特徴とする前記分析装置に関する。
【選択図】図1

Description

本発明は核酸を分析する装置に関する。より詳しくは、遺伝子配列解析、遺伝子多型解析又は遺伝子変異解析を実施するための装置に関する。
ヒトゲノム配列解析が終了して以降、配列情報を医療や種々の産業に活用する時代になってきた。そこでは長いDNAの全てを解析する必要はなく、目的とする短いDNA配列を知れば十分なことも多い。このようなDNA配列解析では簡便な方法・装置が必要とされる。
従来、DNA塩基配列決定にはゲル電気泳動による方法が広く用いられていたが、簡便な方法として生まれた技術に、パイロシーケンシングに代表される段階的化学反応による配列決定がある(例えば、特許文献1及び特許文献2)。この方法ではターゲットとするDNA鎖にプライマーをハイブリダイズさせた反応液を準備し至適温度に保持し、4種の相補鎖合成核酸基質(dATP、dCTP、dGTP、dTTP:以下核酸基質と略)を1種類ずつ順番に反応液中に加えて相補鎖合成反応を行う。相補鎖合成反応が起きるとDNA相補鎖が伸長し、副産物としてピロリン酸(PPi)が生成する。ピロリン酸は共存する酵素の働きでATPに変換され、これがルシフェリンとルシフェラーゼの共存下で反応して発光を生じる。この光を検出することで加えた相補鎖合成基質がDNA鎖に取り込まれたことがわかり、相補鎖の配列情報、従ってターゲットとなったDNA鎖の配列情報がわかる。一方、反応に使われなかった相補鎖合成基質はアピラーゼなどの酵素により速やかに分解され、次の反応ステップには影響が無いようにしている(例えば、特許文献2)。
このようにパイロシーケンシング法は反応メカニズムが簡便であるため、この方法の自動化装置の基本構成として、反応液の温度を制御する温度制御機構と、反応に伴う発光を検出する計測機構、及び試薬を定量的に分注するための試薬分注機構を構成すれば、逐次酵素反応による遺伝子解析装置を実現できる。当該装置では、さまざまな反応処理後の遺伝子が電気泳動法を用いて解析される従来装置と異なり、反応と検出が一体で行われるため、解析時間の大幅な短縮を見込むことができる。また機械要素も少ないため、解析処理数に応じた分注機構を準備すれば、大規模な解析から少量の解析まで応用可能な方法である。
このパイロシーケンシングを行う装置では、96穴の反応セル(体積100μL以下)を持つタイタープレートを反応セル板として活用する化学発光検出システムが用いられる場合が多い。その装置では4種の核酸基質(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を別々の反応試薬溜に保持し、順番に反応セルに注入していく(例えば、特許文献3)。即ち、あらかじめDNA、プライマー、相補鎖合成酵素、化学発光試薬などを反応セルにいれ、4本のノズルからなる試薬分注器のノズルあるいはタイタープレートをX−Y方向、及び回転方向に動かし、試薬溜に空気を加圧し、ノズル先端部から試薬液滴を順次滴下して、発光を検出するものである。
また、以上のパイロシーケンシングを可能とする小型化技術も開示されている(例えば、特許文献4)。この技術では、反応部に各々の核酸基質溜から細管を接続し、その細管を利用して4種の核酸基質を順次注入する手法により、小型・簡便な解析の実現が示唆されており、さらには試薬の供給作業を容易にするため、試薬をカートリッジ式とした液体分注装置も考案されている(例えば、特許文献5)。
一方、小型の生物発光測定装置としては、試薬分注を加圧ディスペンサ方式で行う発光検出装置が開示されている(例えば、特許文献6及び特許文献7)。同技術では、分注用キャピラリーは反応セルと1対1に配置され、加圧制御により核酸基質が分注される。さらに、この試薬分注方式を改良した装置として、1つの反応セルに4つの独立した試薬供給部を備えた、小型遺伝子解析装置が開示されている(例えば、特許文献8)。
また、パイロシーケンシング反応へ応用が可能な試薬として、先に述べた技術と異なる反応系の例も開示されている(例えば、特許文献6)。ここでは、酵素ピルビン酸リン酸ジキナーゼ(PPDK)の逆反応を用いて、AMPとPPiからATPを合成し、AMP濃度を測定している。
先に記述した通り、パイロシーケンシング法を実現する自動化装置は、温度制御機構、計測機構、及び分注機構を基本構成とするが、解析結果の信頼性に大きな影響を与える要素機構として、分注機構は特に重要である。まず第1に分注精度であり、測定中においては4種類の核酸基質をばらつきなく、要求にしたがって精度良く分注する必要がある。第2に、遺伝子解析を低コストで行うには、用いる試薬の総量を微量化することが必須であり、分注機構に対しても1μL以下の微量分注を実現するニーズがある。第3に、目的外試薬の混入を低減する必要性であり、具体的にはサンプル反応液に対し、計測時は基本的に4種類の核酸基質のうち1種類ずつの分注を行うが、目的外の核酸基質が混入すると、誤った相補鎖合成反応を引き起こし、解析結果の信頼性が損なわれる恐れがある。
目的外の核酸基質が混入する問題は、核酸分析装置において回避すべき重要な課題である。例えば、パイロシーケンシングを利用する配列解析では、4種の核酸基質のうちの1種を分注し、その結果、伸長が生じたか否かを発光で確認するため、目的の核酸基質以外の基質が混入すると、それはそのまま解析誤差となる。塩基の配列を連続的に評価する場合、その解析誤差は、解析する配列数だけ指数的に増加するため、解析可能な塩基長が著しく制限される。そのため目的外の核酸基質試薬の混入を低減することは重要な課題である。
特許文献5に記載の実施例では、加圧された気圧のパルスにより分注機構が構成され、核酸基質試薬は液滴の落下によって反応液に分注され、核酸基質試薬の導出部と反応液とは非接触である。また特許文献7、特許文献8も同様に、高圧源からの加圧の作用により核酸基質試薬の分注を行うが、その際、核酸基質試薬の導出部は反応液に接触する。こうした加圧力を用いた方法の利点は、加圧経路に設けた電磁弁若しくは三方向切り替え弁の開閉操作により、その加圧時間に基づいて分注量を制御できる点であり、例えばマイクロシリンジや送液ポンプなどを用いた分注手段に比べ、装置構成が簡便であり、かつ装置全体を小型化できる。また、分注動作により摩耗する部品が少なく、メンテナンスに要する作業も少ないなどの利点もある。
液滴を落下させる方法と試薬導出部と反応液を接触させる方法とを比べると、前者では極微量の分注時には表面張力の影響を受けて液滴を生成できない場合があり、また、導出部からの液滴の離脱に、加圧による液体移動の加速度以外の外力を要する。一方、後者では液体同士の親和性により所望の液量を反応液に移送することができるので、より精度の高い分注が期待できるが、反面、核酸基質試薬の導出部を介して、目的外の核酸基質が混入する可能性がある。
特許文献8に記載の小型遺伝子解析装置には、反応液の温度を制御する温度制御機構と、反応に伴う発光を検出する計測機構と、反応槽に振動を印加する振動印加手段と、試薬を定量的に分注するための試薬分注機構及びその上下移動機構と、陰圧発生手段が設けられている。この発明の意図するところは、4つの独立した試薬槽とそれぞれの試薬導出部として4本のキャピラリーを用いた一体型分注用チップを考案し、それが反応液槽に対し上下移動することで、装置構成のさらなる簡素化を果たし、装置全体の小型化を図ることである。当該装置においては、特に試薬導出部と反応液が接触しているとき、試薬導出部(キャピラリー)の内部に満たされた核酸基質試薬の漏洩が問題となるため、陰圧発生手段の作用により試薬導出部内の試薬を引き戻し、導出部の内部において試薬と反応液との間に気体層を設けることで、目的外の核酸基質が混入する危険性を低減している。
国際公開第98/13523号 国際公開第98/28440号 国際公開第00/56455号 特開2001−258543号公報 特開2002−258543号公報 特開2004−12411号公報 特開2006−177837号公報 特開2007−147416号公報 特開平09−234099号公報
本発明者らは、特許文献8を参考にパイロシーケンシング法による小型遺伝子解析装置を実現しようとしたところ、既知の遺伝子を用いた遺伝子解析において既知配列に伴わない発光がまれに発生する場合を確認した。そこで、更に探求したところ、一体型分注用チップの個体差や発生頻度にばらつきはあったものの、目的外の核酸基質試薬の漏洩が認められ、遺伝子解析結果が相違する現象との関連が予想された。即ち、本発明の課題は、極微量の液体分注を簡易な機械構成で可能にする加圧分注方法において、特に試薬導出部と反応液が接触する場合に、目的外の核酸基質が混入する危険性を低減し、パイロシーケンシング法による遺伝子解析装置を実現するために必要な技術を提供することにある。
本発明者らは、従来の装置におけるものよりも低い圧力で開口する排出口を設け、試薬を供給するために印加した圧力を試薬供給後により効率的に排出することで、目的外の核酸基質の混入を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)試薬導出部を具備しかつ試薬を収める試薬容器を保持する試薬容器保持手段と、試薬容器保持手段を上下方向に移動させる上下移動手段と、試薬容器から試薬の供給を受けるための反応槽と、加圧により試薬容器から反応槽へ試薬を供給するための圧力印加手段と、試薬導出部の内部に気体層を設けるための陰圧発生手段と、反応槽に振動を印加する振動印加手段と、反応槽について光学的に検出する検出器とを備える分析装置であって、圧力印加手段により試薬を供給した後に圧力を排出するための排出口を有し、排出口が開口する圧力が、試薬導出部の内径から予め決まる圧力以下であることを特徴とする前記分析装置。
(2)試薬導出部の内径から予め決まる圧力が、2・F/r(ここで、Fは液体の表面張力であり、rは試薬導出部の内半径である)であることを特徴とする、(1)に記載の分析装置。
(3)圧力を排出する排出口として逆止弁を有することを特徴とする、(1)に記載の分析装置。
(4)圧力印加手段がガスの供給により加圧をするものであり、試薬容器保持手段が圧力印加手段と試薬容器とを繋ぐガス流路を有することを特徴とする、(1)に記載の分析装置。
(5)試薬容器が複数の試薬槽を有し、各試薬槽にそれぞれ圧力を印加するための複数の圧力印加手段を有する、(1)に記載の分析装置。
(6)圧力を排出する排出口として、圧力印加手段と1対1で接続されている排出口を有することを特徴とする、(5)に記載の分析装置。
(7)圧力印加手段が、試薬導出部が上下移動手段により反応槽内の反応液に接触する前に加圧するよう制御されていることを特徴とする、(1)に記載の分析装置。
(8)試薬導出部がキャピラリーであることを特徴とする、(1)に記載の分析装置。
(9)キャピラリーの内径が25〜75μmであることを特徴とする、(8)に記載の分析装置。
(10)試薬容器が、第1の試薬を収める第1の試薬槽と、第2の試薬を収める第2の試薬槽と、第3の試薬を収める第3の試薬槽と、第4の試薬を収める第4の試薬槽とを有し、圧力印加手段は、第1の試薬、第2の試薬、第3の試薬、及び第4の試薬のいずれか1つを反応槽へ供給するように加圧することを特徴とする、(1)に記載の分析装置。
本発明によれば、加圧分注方式について、目的外の試薬の混入を抑制した分注を実現し、反応の精度を向上させ、小型で安価な核酸分析装置及び遺伝子配列解析装置を実現できる。
以下、本発明について図面を参照することにより説明する。
一実施形態において本発明の装置は、測定対象の遺伝子の配列を、パイロシーケンシング法の原理を用いて決定するものである。本発明の分析装置の構成例を図1に示す。本装置は反応槽ホルダー10を有している。反応槽ホルダー10は、測定試料を含む反応液を保持する4個の反応槽11〜14を保持する。本実施形態において反応槽は、好ましくは9mmピッチで1列に保持される。本装置では、酵素による核酸伸張を行うが、酵素反応は大抵の場合室温より高い温度条件で効率よく機能するため、反応槽ホルダー10には任意の温度に加熱・冷却することが可能な温度制御手段(ペリチエ素子など)が接続されている方が好ましい。なお、本実施形態では、反応槽の数量が4個で、9mmピッチ(96穴タイタプレートピッチ)で配置されている場合を示すが、実施に当たり個数やピッチは任意であり、限定されない。さらに、図中の1列配置を、複数列設けることにより、反応槽の総数を増加させることも可能である。反応槽ホルダー10は、振動印加手段としての振動モーターなどの振動発生器により、その全体を振動させることが可能である。この振動は試薬分注時に、分注した試薬と反応槽内の反応液、例えば試料液を混合させることに役立つ。
本装置は、反応槽について光学的に検出する検出器として光検出部15を有し、光検出部15は、反応槽11〜14に対応する4つのフォトダイオード16が、反応槽のピッチにあわせて構成されたものである。反応槽11〜14との境界部分には、好ましくは、裏面に透明電極層(ITO等)を有したガラス17を有する。この透明電極は、全体を覆う導電性の筐体に電気的に接続され、装置の接地電位に接続され、光検出部15全体は導電性材料の検出筐体で覆われている。反応槽からの発光は各々のフォトダイオード16で電気信号に変換され、次いでアンプ(AMP)18により増幅される。アンプは検出部外のA/D変換回路19に接続している。A/D変換回路19は、電気信号をディジタル化し、装置制御及びデータ取り込み用のコンピューターにデータを転送する。また、分析装置の全体を筐体20で覆うことにより内部を暗所にしており、光検出部において反応槽11〜14からの微弱な発光光を検出することができる。
本装置は、試薬導出部を具備しかつ試薬を収める試薬容器として分注チップ2を有する。分注チップ2は試薬を収める4つの試薬槽と、試薬導出部である分注用キャピラリー3を具備し、分注用キャピラリー3の先端が反応槽に対向するように保持される。分注ヘッド21は、内部に分注チップ2を保持する試薬容器保持手段としての機能を有する。圧力印加手段として、4種類の試薬のそれぞれに対応した4本の加圧用チューブ群22が、4つの三方向切替弁23の二次側ポートに接続している。加圧用チューブはガスの供給により加圧をするものである。また、本装置は、分注ヘッド全体を上下方向に移動する上下移動手段24を有する。上下移動手段24としては、図1に示す通り、分注ヘッド21にラックを設け、ピニオンをモーター等で駆動して行うものなどがある。この場合、接触スイッチやモーターの回転数により、ヘッドの移動位置を制御することができ、反応槽11〜14に対する分注チップ2の先端の位置制御が可能であり、図1の分注ヘッド21の位置は、上下移動手段24により分注ヘッド21が下降して、反応層内の反応液に分注用キャピラリー3の先端が浸漬している状態を表している。
4個の三方向切替弁23における各々一次側は、一次側ライン25により圧力源26より分配されて接続されている。圧力源26には、高圧ガスタンクや実験室に設置されている高圧ガスライン源などが使用できる。図1の三方向切替弁23は、すべての一次側ポートも閉止しており、すべての二次側ポートが排気ポートに接続されて導通している状態を表示している。
三方向切替弁23における各々の排気ポートは、統合された排気ライン27により陰圧発生手段であるマイクロエジェクタ28に接続されている。マイクロエジェクタ28はエジェクタ部28aと電磁弁28bからなり、電磁弁28bの1次側には圧力源26が接続されている。この電磁弁28bの作動により高圧ガスがエジェクタ部28aを通過する際に、高圧ガスの圧力に応じた陰圧を発生させ、排気ライン27内を所望の陰圧に保持できる。マイクロエジェクタの例にはKOGANEI社、ME03−E1があり、0.6MPaの供給で−80kPaの陰圧が得られるものがある。
排気ライン27には、三方向切替弁23の排気ポートより統合された位置以降に逆止弁30を設けられている。逆止弁は、試薬を供給するために印加された圧力を、試薬供給後に排出するための排出口としての機能を有する。この逆止弁30の入口側は排気ライン27に接続され、出口側は大気に開放されている。逆止弁はチェックバルブともいわれ、気体の流れる方向を一定方向に制御するものであり、試薬導出部の内径から予め決まる圧力以下で開口するものを用いる。本実施形態では、排気ライン27から流れるガスがある一定以上の圧力の際に弁が開き、大気へとガスを流通させる。
分注チップ2の上面図及び断面図を図2に示す。分注チップ2は、4種の試薬をそれぞれ個別に保持する試薬槽201〜204を有している。試薬槽201〜204は試薬導出部であるキャピラリー211〜214を、それぞれ有している。キャピラリーとしては、例えば、全長20mm、外径約350μm、内径約50μmのガラスキャピラリーを用いることができる。キャピラリーの外装はポリイミド樹脂などにより覆われていることが好ましい。キャピラリーの選定は、分注量、試薬容器の深さ、試薬の粘性条件などを考慮して行い、内径は25〜75μmの範囲が適しており、本発明では内径50μmのキャピラリーが特に好適である。試薬槽としては、例えば、内径2.4mm、深さ10mmのものを使用でき、この場合、試薬槽の容量は、およそ45μLである。試薬槽に収める4種の試薬の例としては、核酸基質、例えば、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)が想定される。具体的には、4つの試薬槽の各々にデオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)をそれぞれ1種類ずつ収めることが想定される。なお、dNTPの類似体を用いることも可能である。例えば、三リン酸のかわりに、α位置に相当するひとつのリンがイオウに置き換わったdNTPαSなどがある。
また、分注チップ2には、4種の試薬配置を間違わない様に、位置決定用つめ205をつけておくと便利である。さらに、チップの上面206は、その端面が実質的に同一平面上に位置するよう設計されていることが好ましい。これは分注ヘッド21におけるチップホルダー部において、後述の気密保持用部材303〜306による気密保持を容易にするためである。また、チップの上面206を同一平面上とすることにより、上部に封止するシール用の蓋、或いはシール材を用いて、試薬の乾燥を防止することが簡便になる。
図3は、分注ヘッド21の構造を模式的に説明する図である。分注ヘッド21は大きくは分注ヘッド下部301と分注ヘッド上部302に分割でき、(1)は分注ヘッド上部302の底面図、(2)は分注チップ2を内包したときの分注ヘッド21の断面模式図、(3)は分注ヘッド下部301の上面図である。分注ヘッド21は、分注チップ2を内包後に分注ヘッド上部302の底面(1)と、下部301の上面(3)を合わせる様にして組み立てられる。これらは、ばね力を作用させるクランプ309などを用いて図のように左右2箇所で固定される。分注ヘッド下部301には、各分注チップのキャピラリーを通す穴が設けられている。試薬容器保持手段としての分注ヘッドは、通常、圧力印加手段と試薬容器とを繋ぐガス流路を有する。より具体的には、分注ヘッド上部の内部には、ガス流路が形成され、分注ヘッド上部302の底部には、各分注チップ2の試薬槽に接続する高圧ガス流入口が、1つの分注チップ2につき4個設けられている。うち図3(2)には、1つの高圧ガス流路307が示されている。1つの高圧ガス流路は、1つの試薬槽に対応し、各分注チップのガス流入口に接続する。高圧ガス流路307は図1における圧力印加手段としての加圧用チューブ22であり、分注ヘッド上部の内部で分岐して4つの経路に分かれている。気密保持用部材303〜306はガス流路が形成されている部分以外は、分注チップ2の上面206と密着して、各試薬槽の気密を保持できる。密着性を最適とする部材としては、シリコンゴムやバイトンゴムなど、ゴム弾性を有する材料が好適である。
本発明における分注特性を説明する。試薬導出部にキャピラリーを用いた加圧分注方式は、微量分注において分注精度が高いことが特徴である。本発明の装置では、例えば、分注量0.20μL分注時の分注誤差は、約10%以下である。また、内径25μmより細いキャピラリーでは、分注誤差は約8%以下である。液体分注量Qは印加する加圧力と加圧時間により、Hagen−Poiseuilleの法則を元にした以下の式1に従って求められる。
Figure 2009296967
ここで、P1は加圧力であり、P2は対抗力であり、rはキャピラリーの内半径であり、tは加圧時間であり、μは液体の粘性係数であり、Lはキャピラリーの長さである。さらに、対抗力P2は以下の式2で求められる。
Figure 2009296967
ここで、Fは液体の表面張力であり、lは細管の内周径であり、Aは細管の断面積である。式2を変形すると右項は2・F/rとなる。
上式によると、液体の分注量を決める液体を押し出す力は、液体の上面にかかる加圧圧力P1と、細管の出口にかかる液体の表面張力、即ち対抗力P2との差分であり、加圧時間tに比例した1次式で求められる。対抗力P2はキャピラリーの内半径rに反比例して変動することも明らかである。また液体の粘性係数μと表面張力Fは温度に依存する物性値であって、環境温度によっても分注量が変動することがわかる。一般にはこうした加圧分注方式における液体の表面張力Fは無視されるが、本発明のように0.1μL以下の極微量を分注し、細管の内部で気体層を設けることにより目的外試薬の混入を低減する目的においては重要な条件である。なぜなら、極微量の分注においては、加圧圧力が、対抗力である液体の導出口での表面張力より低い場合には、液体の押し出す作用が得られないため、キャピラリーの内径に応じた分注限界があるからである。
本発明の目的である目的外試薬の混入を低減するメカニズムについて説明する。図1に示す本発明の実施形態と特許文献8との明瞭な違いは、排気ポートより統合された排気ライン27以降に逆止弁30を設けている点である。
図1において逆止弁30が設けられていない場合を考えてみる。液体分注時は4つの三方向切替弁23のうちひとつが作動(ON)し、高圧ガスが加圧用チューブ22を介して導通し、更に分配されて各々分注チップ2内のひとつの試薬槽に圧力が加わる。所定時間ののち三方向切替弁23が停止(OFF)したとき、加圧用チューブ22内に残存する高圧ガスは、該当する三方向切替弁23の排気ポートを経て、マイクロエジェクタ28のエジェクタ部28aを介して、やがて大気に放出される。しかし、一部の高圧ガスは統合されている排気ライン27を経由して、作動しなかった3つの三方向切替弁23の排気ポートを経て、加圧用チューブ22を通過してその先にある別の試薬槽に作用することが考えられる。この一連の高圧ガスの排気の流れが、遺伝子解析の途中で所定の試薬分注が行われた直後に起きた場合、4本のキャピラリー先端における試薬の導出部は反応液に浸漬していることから、混入してはならない他の核酸基質の混入が発生する可能性を否定できない。
一方で、キャピラリーの内部には陰圧発生手段の作用により気体層が生成されていることにより、高圧ガスの排気が作用しても条件によっては、試薬の漏洩が発生しない場合も考えられる。しかしながら、キャピラリー内径と圧力条件によっては、0.005MPaのわずかな加圧力で液滴が生成されうることから、細管内に設けられた気体層がその位置に留まる力、即ち表面張力は高圧ガスの排気の圧力に容易に屈し、結果として試薬を漏洩する場合があると考えられる。ここで、高圧ガスの排気の排気経路についてみると、最終的にはマイクロエジェクタ28を介して、大気に開放されるが、一般にエジェクタ部28aの内径は狭く、ここを排気が通過して排気ライン27の内部の圧力を大気圧まで低下させることは容易でない。特に時間的には、所定の試薬分注が行われた直後に、排気ライン27の内部の圧力を大気圧程度に低下させる必要性があるが、従来技術におけるマイクロエジェクタでは困難と考えられる。
逆止弁30の作用によれば、所定の分注動作を終えてひとつの三方向切替弁23が停止(OFF)して分注操作を停止したとき、加圧用チューブ22内に残存する高圧ガスは、該当する三方向切替弁23の排気ポートを経て、排気ライン27の途中にある逆止弁30より大気に速やかに排気され、高圧ガスの排気の圧力は一瞬で大気圧程度まで十分低下する。このため、本発明の装置における分注方式は、特許文献8のように分注時に用いた高圧ガスの排気についてなんら考慮していない分注方式に比べ、目的外試薬の混入の影響を低減できる点で有利である。
逆止弁の仕様には、弁が開放される作動圧力性能がある。例えば、アズワン社の型番GBP−001ANの逆止弁は0.01MPa以上の正圧での作動、即ち開口が保証されている。言い換えれば逆止弁などにより排気手段を講じても、まだ排気ライン27内の高圧ガスの圧力は、逆止弁30の作動圧力に依存して、試薬が漏洩する加圧力(例えば、直径50μmのとき0.0058MPa)以上に残存している可能性がある。しかし、この場合でも、作動した三方向切替弁23から作動しなかった他の3つの三方向切替弁23に高圧ガスの排気が到達するとき、その通過するライン内の総体積は単純に4倍に増加しているから、高圧ガスの圧力は元の1/4となっている。上記の逆止弁であれば残留する圧力は0.01MPaであるが、他の試薬に作用するときの圧力は1/4である0.0025MPaとなり、試薬の漏洩する加圧力0.0058MPa以下となるので、漏洩が生じない。このように機械構成の観点からも、従来に比して目的外試薬の混入の発生を低減できる効果が高い。
逆止弁としては、弁が開放される作動圧力が、試薬導出部の内径から予め決まる圧力以下、例えば、2・F/r(ここで、Fは液体の表面張力であり、rは試薬導出部の内半径である)以下であるものを用いる。具体的には、試薬導出部の内径が75〜25μmである場合、弁が開放される作動圧力が通常0.044MPa以下、より好ましくは0.01〜0.04MPaの逆止弁を用いる。
目的外試薬の混入の影響が全くない理想的な形態においては、三方向切替弁23の排気ポートの下流に排気の障害となるようなものは不要であり、ただ大気開放口があればよい。しかしながら、本発明において排気ポートの下流に逆止弁30を設けた理由は、三方向切替弁23のより下流に陰圧発生機構を設け、分注チップ2に保持された試薬を減圧し、試薬導出部に気体層を生成することで目的外試薬の混入の可能性をさらに低減させるためである。即ち逆止弁には2つの作用があり、ひとつは分注操作の直後には高圧ガスの排気を排出する開放弁の作用であり、もうひとつは分注チップを上方に移動後に、陰圧を発生させて試薬導出部に気体層を生成させるときは、排気ライン27の陰圧を維持する閉止弁の作用である。これら2つの作用を両立する上で、逆止弁は本分注機構において好適である。
次に、本発明の装置を用いた遺伝子解析法について説明する。図4は本発明の一実施形態におけるタイムシーケンスを表したものである。分注ヘッドとは分注チップ2を含む分注ヘッドが上下移動するタイミングであり、解析の開始からの待機時間(T11)と下降時間(T12)と分注操作の待機時間(T13)と分注ヘッドの上昇時間(T14)からなる。次いで分注機とは三方向切替弁23のうちひとつを開放させて、dNTP(即ち、dATPαS、dGTP、dCTP、dTTP)試薬のうちの一種を分注チップ2より分注する際のタイミングであり、待機時間(T21)と加圧時間(T22)からなる。次いで減圧弁とは陰圧発生手段としての減圧弁を所定時間開放し気体層を生成するタイミングであり、待機時間(T31)と減圧時間(T32)からなる。次いで攪拌モーターとは振動印加手段としての攪拌用振動モーターを回転させ反応槽を含む反応槽ホルダーに規定時間の振動を与えるタイミングであり、待機時間(T41)と作動時間(T42)からなる。解析工程は、以上の工程を1工程(T1)として、1工程ごとの間隔(T2)を順次、任意の回数繰り返す制御となっている。
1塩基ごとの解析の動作は以下の通りである。まず、分注ヘッド21を降下させ、反応槽11内の反応液の液面にキャピラリー先端を接触させる。次に、必要な試薬分注量に応じた加圧時間の間、三方向切替弁23を切り替えて加圧を行い試薬の分注を行う。次いで、分注ヘッド21を上昇させ反応槽内の反応液の液面よりキャピラリー先端を離脱させる。次いで、所定の攪拌時間だけ攪拌モーター(図示せず)を動作させ、反応槽内の液体を攪拌せしめる。並行してキャピラリー内に気体層を生成するため陰圧吸引を規定時間行う。光検出部15においては、上記タームシーケンスのうち、任意のタイミングで検出を行い、通常は分注ヘッドの下降時(T11)のタイミング以後から、攪拌モーターの作動時間の終了(T42)まで連続した計測を行う。遺伝子配列解析においては、この一連の動作を調査したい解析に応じて、分注する核酸基質試薬を順次変えて繰り返し行えばよい。
本装置で行うDNA塩基配列決定方法の原理は、DNA鎖に相補鎖結合したプライマーの伸長反応時に生成するピロリン酸(PPi)をルシフェリン/ルシフェラーゼ系の生物発光反応法で検出するものである。以下に、反応スキームを説明する。
測定対象の試料DNAに伸長反応用プライマーをハイブリダイズさせる。試料DNAと伸長反応用プライマーをハイブリダイズさせ、DNAポリメラーゼを用いてDNA相補鎖伸長反応を行う。その際、試薬としてデオキシリボヌクレオチド三リン酸(あるいは類似対核酸)溶液を1種類ずつ、順次加えていくと、DNA相補鎖伸長反応が起きた場合のみPPiが生じる。DNA相補鎖伸長反応により生じたPPiは、APS(アデノシン5’−ホスホスルフェイト)存在下でATPスルフリラーゼにより、SO 2−(硫酸イオン)を生じて、ATPに変換される。ATPスルフリラーゼにより変換されたATPは、マグネシウムイオン及びO2(酸素)存在下でルシフェラーゼによるルシフェリンの酸化反応に使用され、光を発する。その際、CO(炭酸ガス)が生じると共に、ATPはPPiとAMPに、ルシフェリンはオキシルシフェリンに変換される。ルシフェリン/ルシフェラーゼ系の生物発光に伴い生じたPPiは、再度APS存在下でATPスルフリラーゼにより、ATPに変換され、発光反応が繰り返し起こり、発光は持続する。本DNA塩基配列決定方法は、核酸基質溶液を順番に繰り返して加え、発光の有無を検出しながら1塩基種ずつ塩基配列を決定していく方法(Ahmadian、Aら、AnalyticalBiochemistry280(2000)103−110及びZhouGら、Electrophoresis22(2001)3497−3504参照)であり、本発明の装置を用いて容易に行うことができる。
図5に本発明の別の実施形態を記載する。図5は、図4に示すタイムチャートにおいて、分注機の動作のタイミングを変更したものである。本実施形態においては、試薬導出部が上下移動手段により反応槽内の反応液に接触する前に加圧するよう圧力印加手段が制御されている。図4と比較して、分注チップ2より分注する際のタイミングのうち、待機時間(T23)が、分注ヘッドが上下移動するタイミングのうち、解析の開始からの待機時間(T11)よりも以前に開始され、次いで加圧時間(T24)の終了時以降に下降時間(T12)が設定されることを特徴とする。これ以降、分注チップが下降して停止している待機時間(T13)と分注ヘッドの上昇時間(T14)と継続する。他の減圧弁の動作タイミング、及び振動攪拌モーターの動作タイミングは図4の場合と同様であり、解析工程の取り扱いも同様である。
図5のタイムチャートにおける一塩基ごとの解析の動作は以下の通りである。まず、必要な試薬分注量に応じた加圧時間だけ三方向切替弁23を切り替えて加圧を行い、試薬導出部に試薬の液滴を作る。次いで分注ヘッド21を降下させ、反応槽内の反応液の液面にキャピラリー先端を接触させて、分注を完了する。次いで、分注ヘッド21を上昇させ反応槽内の反応液の液面よりキャピラリー先端を離脱させる。次いで、所定の攪拌時間だけ攪拌モーターを動作させ、反応槽内の液体を攪拌せしめる。並行してキャピラリー内に気体層を生成するため陰圧吸引を規定時間行う。
本実施形態によれば、分注ヘッド21が下降前にあるときに、試薬導出部に試薬の液滴を作ることで、高圧ガスの排気ラインの作用により、他の試薬導出部に試薬の漏洩が発生しても、キャピラリー先端は反応液に接触しておらず、目的外試薬が混入する恐れがない。また、試薬導出部が空中にあるときは、表面張力の作用により、微量な液体はキャピラリーの先端より漏洩しにくくなる。故に、目的外試薬の混入の可能性をさらに低減できる効果がある。
本発明における分注機構のさらなる実施形態を図6に示す。図6は図1の実施形態に対し、圧力制御手段における排気口と陰圧発生手段の構成のみを変更したものである。三方向切替弁23における各々の排気ポートには、独立した排気ライン27が設けられ、各々の陰圧源であるマイクロエジェクタ28に接続されていることを特徴とする。即ち、圧力を排出する排出口が、圧力印加手段である加圧用チューブと1対1で接続されている。この三方向切替弁23に個別に減圧機構を導入することにより、所定の分注動作を終えてひとつの三方向切替弁23が停止(OFF)して分注操作を停止したとき、加圧用チューブ22内に残存する高圧ガスは、該当する三方向切替弁23の排気ポートを経て、排気ライン27を経て個別のマイクロエジェクタ28より大気に速やかに排気される。試薬導出部に気体層を作成するときは、マイクロエジェクタ28の電磁弁28bの作動を同時に行うことより、各分注チップの試薬導出部に気体層を同時に作成する。このように本実施形態では、他の試薬につながる排気ラインは接合されていないため、高圧ガスの排気が他の試薬に及ぼす影響を無視できる。従って特許文献8のように分注時に用いた高圧ガスの排気についてなんら考慮していない分注方式に比べ、目的外試薬の混入の影響を低減できる効果がある。
一方で、本実施形態は図1に示す実施形態に比して、逆止弁を使用しない代わりに複数の減圧機構を要し、部品点数としては多くなるという不利益はあるが、目的外試薬の混入の影響を低減する目的からは非常に有効である。
(実施例1)
上述した図1の装置を準備し、分注チップ2の試薬槽に水を入れた。キャピラリーの外径は350μmであり、内径は25μmと50μmと75μmと125μmの4種類のものを準備した。キャピラリー長Lはいずれも20mmである。圧力源には空気(元圧0.6MPa)を使用し、加圧ラインの途中に圧力計(KOGANEI社 G3P−40型)を備えた圧力制御弁(KOGANEI社 PR200型)を設け、装置への供給圧力を0.005〜0.3MPaの範囲で調整した。一定時間の加圧時間の経過後にキャピラリー先端より送液された水を、容器に受け重量法により液量を計測した。なお、重量測定には電子天秤(メトラー社、AE200)を使用した。測定時の環境温度は20℃、湿度25%であり、測定値より容器重量を差し引いた後、水の比重(1.0029μL/g、20℃)で積算することで、分注量を算出した。
図7に、4種類のキャピラリー内径における、供給圧力の変化に伴う分注量の測定結果を示す。加圧時間を1秒間に換算したときの水の分注量を示した。例えば、加圧力0.01MPaのとき、1秒換算で内径25μmでは1nL、内径50μmでは36nL、内径75μmでは0.27μL、内径150μmでは5.6μLであった。これは、内径50μmのキャピラリーでは36nL以下の分注が不可能であることを示すものでなく、加圧時間は最小0.10秒間までは動作保障でき、尚且つ実際の解析作業では、空の容器に対して分注するものでなく反応液にキャピラリー先端が接触していることから、図示した分注量の計測結果より、より微量で精度の良い分注が期待できることは当業者には自明である。本実施例から、加圧力と分注量の関係は比例関係であり、上記式1とよく一致することが示された。
しかしながら、加圧力が0.005MPaの場合、内径25μmと50μmのキャピラリーでは先端より液滴は見られず、内径75μmと150μmのキャピラリーでは、液滴が確認できたという差異があった。式1と式2に、試験した水の物性値を諸表より引用し(ガラス素材との粘性係数0.0089Pa・sec、表面張力73mN、いずれも20℃時)、その他の形状条件より対抗力P2を求めたところ、50μmのとき、0.0058MPaであり、75μmのとき0.0038MPaであった。即ち、前記の式に示すとおり、加圧圧力が対抗力である液体の導出口での表面張力より低い場合には、液体の押し出す作用が得られないこと、即ち、キャピラリーの内径ごとに分注限界があることがわかった。
(実施例2)
図1に示す本発明の装置を用いて試料DNAの配列解析を実施した。本実施例では、試料DNAとして以下に示すTMPT(チオプリンS−メチルトランスフェラーゼ)遺伝子を用いた。また、この配列の3’末端と相補的な配列であるシーケンシング用プライマーを使用した。
TMPT遺伝子:
5’-tgttgaagtaccagcatgcaccatgggggacgctgctcatcttcttaaagatttgatttttctcccataaaatgttttttctctttctggtaggacaatattggcaaatttgacatgatttgggatagaggagcattagttgccat taatccagg tgatcgcaaatggtaagtaattttt-3’(配列番号1)
下線部はシーケンシング用プライマーとの相補鎖位置を示す。
シーケンシング用プライマー:
5’-aaaattacttaccatttgcgatca-3’(配列番号2)
本実施例で使用した試薬溶液及び反応溶液の組成を表1に示す。
Figure 2009296967
各反応槽11〜14には、反応液を合計31μL分注し(うち1μLはプライマーアニーリング処理が施された試料DNAであり、測定直前に添加している)、この反応溶液に試薬溶液(デオキシヌクレオチド溶液)0.3μLを順次注入して、発光反応を測定した。ここで、プライマーアニーリング処理が施された試料DNAとは、試料DNA(400fmol)と1.5倍量のシーケンシング用プライマーをアニーリングバッファー中(10mM Tris−acetate buffer、pH7.75、2mM Magnesium acetate)でハイブリダイゼイション(95℃、20秒→60℃、120秒→室温)を行ったものである。ただし、試料DNAとシーケンシング用プライマーとのハイブリダイゼイションの方法は、前記したものに限定されない。例えば、反応槽に試料DNAとシーケンシング用プライマーを添加した後に、ハイブリダイゼイションに必要な所定の温度操作を行ってもよい。なお、本実施例においては、4つの反応槽11〜14内に同一の試料DNAを含む同一の反応溶液を分注した。
分注チップ2の位置201、位置202、位置203、位置204には、試薬溶液としてそれぞれ100mM dATPαS溶液、10mM dCTP溶液、10mM dGTP溶液及び10mM dTTP溶液が15μL保持されている。なお、本実施例においては、dATPの代わりに、類似体であるdATPαSを使用している。dATPαSは、dATP同様に、DNA相補鎖伸長反応の際にDNA3’末端に付加し、ピロリン酸を放出する基質として機能する一方で、ルシフェラーゼに対する基質特異性、即ち基質としての働きはdATPの場合の2桁以下であるため、dATPを使用した場合に比べてバックグランドノイズの大きさが非常に小さくなる。従って、試薬溶液としてdATPの代わりにdATPαSを使用することにより、感度が向上するためより好ましい。測定開始直後には、反応槽11〜14の上部には、それぞれ対応する分注チップ2が配設されている。
DNA塩基配列の決定は、温度制御装置を稼動して反応槽11〜14の温度を30℃に保持し、図4に示すタイムシーケンスに従って、解析工程を実施した。本実施例では、核酸基質をdATPαSから始め、次いでdCTP、dGTP、dTTPとし、この繰り返しを10回、合計40試薬数の解析を実施した。試薬溶液注入の時間間隔(T1)は120秒である。この時間間隔は反応溶液の組成や量並びに試料DNAの塩基配列によって適宜変更される。
図8は、本実施例における各反応槽の発光検出データの一部である。図8のDNA塩基配列データNo.11とNo.12は、それぞれ図1に示す反応槽11と反応槽12における結果に対応している。図の下部は分注した核酸基質の順番を表し、ピークはその分注のタイミングに生じた発光の強度を示すものであり、この発光強度から、あるアルゴリズムにより塩基配列に計算された配列の結果が図中ピークに添え書きされた「CC」、「T」、「GG」などである。その結果、全ての反応槽において重複するDNA塩基配列データが得られた。本実施例においては前記したように、4つの反応槽において、同一の試料DNAの塩基配列を分析しており、本発明の装置を使用することで、全ての反応槽において同時かつ適切にDNA塩基配列を決定できることが示された。
本発明はライフサイエンス及びバイオ産業分野の基本的なツールである核酸を分析する装置、より具体的にはDNA配列決定装置及びDNA検査装置に活用されるものである。さらには、ATP測定による細菌検査、あるいは小型ルミノメータとしても活用できる。
本発明の一実施形態を示す。 分注チップの例を示す。 分注チップを設置する分注ヘッドの説明図である。 測定時の装置動作のタイムシーケンスの例を示す。 測定時の装置動作のタイムシーケンスの例を示す。 本発明の一実施形態を示す。 本発明の装置による分注機構における水の分注量測定結果を示す。 本発明の装置を用いた配列解析結果を示す。
符号の説明
10・・・反応槽ホルダー、11〜14・・・反応槽、15・・・光検出部、16・・・フォトダイオード、17・・・ガラス、18・・・アンプ、19・・・A/D変換回路、20・・・筐体、21・・・分注ヘッド、2・・・分注チップ、3・・・分注用キャピラリー、22・・・加圧用チューブ、23・・・三方向切替弁、24・・・上下移動手段、25・・・一次側ライン、26・・・圧力源、27・・・排気ライン、28・・・マイクロエジェクタ、28a・・・エジェクタ部、28b・・・電磁弁、30・・・逆止弁、201〜204・・・試薬槽、205・・・位置決定用つめ、206・・・分注チップの上面、211〜214・・・キャピラリー、301・・・分注ヘッド下部、302・・・分注ヘッド上部、309・・・クランプ、307・・・高圧ガス流路、303〜306・・・気密保持用部材

Claims (10)

  1. 試薬導出部を具備しかつ試薬を収める試薬容器を保持する試薬容器保持手段と、
    試薬容器保持手段を上下方向に移動させる上下移動手段と、
    試薬容器から試薬の供給を受けるための反応槽と、
    加圧により試薬容器から反応槽へ試薬を供給するための圧力印加手段と、
    試薬導出部の内部に気体層を設けるための陰圧発生手段と、
    反応槽に振動を印加する振動印加手段と、
    反応槽について光学的に検出する検出器と
    を備える分析装置であって、
    圧力印加手段により試薬を供給した後に圧力を排出するための排出口を有し、排出口が開口する圧力が、試薬導出部の内径から予め決まる圧力以下であることを特徴とする前記分析装置。
  2. 試薬導出部の内径から予め決まる圧力が、2・F/r(ここで、Fは液体の表面張力であり、rは試薬導出部の内半径である)であることを特徴とする、請求項1に記載の分析装置。
  3. 圧力を排出する排出口として逆止弁を有することを特徴とする、請求項1に記載の分析装置。
  4. 圧力印加手段がガスの供給により加圧をするものであり、試薬容器保持手段が圧力印加手段と試薬容器とを繋ぐガス流路を有することを特徴とする、請求項1に記載の分析装置。
  5. 試薬容器が複数の試薬槽を有し、各試薬槽にそれぞれ圧力を印加するための複数の圧力印加手段を有する、請求項1に記載の分析装置。
  6. 圧力を排出する排出口として、圧力印加手段と1対1で接続されている排出口を有することを特徴とする、請求項5に記載の分析装置。
  7. 圧力印加手段が、試薬導出部が上下移動手段により反応槽内の反応液に接触する前に加圧するよう制御されていることを特徴とする、請求項1に記載の分析装置。
  8. 試薬導出部がキャピラリーであることを特徴とする、請求項1に記載の分析装置。
  9. キャピラリーの内径が25〜75μmであることを特徴とする、請求項8に記載の分析装置。
  10. 試薬容器が、第1の試薬を収める第1の試薬槽と、第2の試薬を収める第2の試薬槽と、第3の試薬を収める第3の試薬槽と、第4の試薬を収める第4の試薬槽とを有し、圧力印加手段は、第1の試薬、第2の試薬、第3の試薬、及び第4の試薬のいずれか1つを反応槽へ供給するように加圧することを特徴とする、請求項1に記載の分析装置。
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