JP2009296908A - マンノシルエリスリトールリピッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】栄養素と炭素源を含む培養液中でマンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物を培養してマンノシルエリスリトールリピッドを製造する方法において、前記マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物が、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)であることを特徴とするマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
【選択図】なし
Description
また、本発明者らは、クルツマノマイセス(Kurtzmanomyces)sp.I−11株を用いて18質量%の植物油脂から回分培養法により10日間で153g/L(生産速度:0.64g/L/h,原料収率:85質量%)のMELの生産が可能であること、及び、油脂の流加培養法により24日間で40質量%の油脂から307g/L(生産速度:0.53g/L/h,原料収率:77質量%)のMELの生産が可能であることを報告している(特許文献4参照)。
繰り返し回分培養では、前記回分培養と同様の方法で培養を開始し、任意の時間培養を行ってMELを生産した後に菌体を含む培養液の大部分を培養槽外に排出し、一部を培養槽に残して予め滅菌しておいた新たな培地(油脂を含む)を所定量だけ無菌的に加えて、次の回分培養を開始する。以後、このような操作を繰り返すことによりMEL生産に要する培養期間を短縮できる。
<1> 栄養素と炭素源を含む培養液中でマンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物を培養してマンノシルエリスリトールリピッドを製造する方法において、前記マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物が、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)であることを特徴とするマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<2> マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物が、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)TM−181株(NITE P−530)である前記<1>に記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<3> 培養液のpHを5.0〜5.8の範囲に制御して培養を行う前記<1>から<2>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<4> 培養液のpH制御をアンモニアを用いて行う前記<3>に記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<5> 培養液の溶存酸素濃度を1〜5ppmの範囲に制御して培養を行う前記<1>から<4>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<6> 培養液中にコーンスティープリカーを0.1〜4g/L含有させて培養を行う前記<1>から<5>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<7> 炭素源として炭素数6〜24の直鎖脂肪族炭化水素を用いる前記<1>から<6>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<8> 炭素源として炭素数6〜24の脂肪酸を用いる前記<1>から<6>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<9> 炭素源として炭素数6〜24の直鎖脂肪族炭化水素基を含むトリグリセリドを用いる前記<1>から<6>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<10> 炭素源として炭水化物を用いる前記<1>から<6>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<11> 炭素源として食品廃油を用いる前記<1>から<6>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<12> 炭素源濃度が10〜32質量%の範囲で培養を行う前記<1>から<11>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<13> マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物におけるマンノシルエリスリトールリピッドを生産する上での培地組成及び培養条件が、下記の通りである前記<1>から<12>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
酵母エキス:0.1〜2g/L
コーンスティープリカー:0.1〜4g/L
硝酸アンモニウム:0.1〜1g/L
リン酸2水素カリウム:0.1〜2g/L
硫酸マグネシウム:0.1〜1g/L
炭素源:100〜320g/L
培養液pH:5.0〜5.8
溶存酸素濃度:1〜5ppm
培養温度:26〜32℃
<14> 炭素源濃度が10〜30質量%の範囲で培養を開始し、該培養開始後2〜6日間の培養終了時に菌体とマンノシルエリスリトールリピッドを含む培養液の大部分を培養槽外に排出し、一部を培養槽に残して新たな培地を加えて、次の回分培養を開始し、該操作を繰り返して培養を行う前記<1>から<13>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<15> 更に、培養終了後の培養液を20〜70℃に保持する工程を含み、下記構造式(2)で表される構造を有するマンノシルエリスリトールリピッドを得る前記<1>から<14>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
<16> マンノシルエリスリトールリピッドの生産量が、7質量%以上(70g/L以上)である前記<1>から<15>のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法である。
本発明のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法は、栄養素と炭素源を含む培養液中でマンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物を培養してマンノシルエリスリトールリピッドを製造する方法であって、前記マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物が、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)であることを特徴とする。
前記マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物としては、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)を使用する。前記シュードジーマ ツクバエンシスとしては、使用する菌株に特に制限はなく、例えば、TM−181株(NITE P−530)、NBRC1940、ATCC24555、CBS6389などが挙げられるが、これらの中でも、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)TM−181株(NITE P−530)が、MELの生産速度が高い点で、特に好ましい。
i.コロニー観察
YM寒天培地上で25℃下、7日間の培養において、形成したコロニーは次のような形状を示した。
周縁の形状はほぼ全縁、隆起状態はクッション状、表面の状態は平滑、光沢及び性状は弱い光沢と湿性、色調は桃色味から黄色味を帯びたクリーム色
ii.顕微鏡観察
YM寒天培地上で25℃下、7日間の培養において,栄養細胞は長楕円形であり、極出芽により増殖する。培養開始後3週間後において有性生殖器官の形成は認められない。
(b)生理性状試験
1)生育できる範囲
pH2〜7、温度10〜37℃
2)糖類醗酵試験
グルコースを醗酵しなかった。
3)炭素源資化性試験
6)デンプン類似物質の生成無し。
(c)26SrDNA−D1/D2塩基配列解析
抽出からサイクルシークエンスまでの操作は、各プロトコールに基づいて行った。
1)DNA抽出:DNAeasy Plant Mini Kit(QIAGEN,Hilden,Germany)
2)PCR:puReTaq Ready−To−Go PCR beads(Amersham Biosciences,NJ,USA)
3)サイクルシークエンス:GigDye Terminator v3.1 Kit(Applied Biosystems,CA,USA)
4)使用プライマー:NL1,NL2,NL3及びNL4(O’Donnell,1993)
5)シークエンス:ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer System(Applied Biosystems,CA,USA)
6)配列決定:ChromasPro 1.4(Technelysium Pty Ltd.,Tewantin,AUS)
7)相同性検索及び簡易分子系統解析:
ソフトウエア アポロン 2.0
データベース アポロン DB−FU 1.0
国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)
以上の26SrDNA−D1/D2塩基配列解析、簡易形態観察、及び生理・生化学的性状試験の結果より、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)に帰属すると推定した。
前記シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)TM−181株の培養には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、酵母に対して一般に用いられる培地、例えば、YPD培地(例えば、イーストイクストラクト10g、ポリペプトン20g、及びグルコース20gの組成)を使用することができる。また、最適生育pHは5.2であり、生育可能なpH範囲は2〜7である。最適生育温度は30℃であり、生育可能な温度範囲は10〜36℃である。なお、MELの生産性を高めるためには、単にシュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)TM−181株が生育できるだけでは十分ではなく、培地組成及び培養条件を最適化する必要があり、これら最適条件については後述する。
回分培養では、培養途中で油脂などの炭素源の供給は行わないで、1日に2乃至3回培養液を無菌的に採取して、培養液中の各成分を経時的に測定する。MEL、トリグリセリド、ジグリセリド、炭化水素、及び脂肪酸については、採取した培養液に酢酸エチルを加えて激しく振とうした後に静置し、上清の酢酸エチル層を回収し、この酢酸エチル溶液をイアトロスキャン(ヤトロン社製)のロッドにチャージして、所定の方法により各成分を定量分析する。
前記回分培養では、前培養液を培養槽に接種することにより培養を行う。通常、前培養は培地に対して10容量%程度接種するが、前培養液中の菌体濃度は高くないために培養開始時の菌体濃度はあまり高くない。このため、MELの生産が開始するまでに1日程度の時間を要する。この期間を誘導期と呼んでいるが,この誘導期を短縮することにより,より短時間でMELを生産することができると考えられる。誘導期を短縮するためには,培養開始時の菌体濃度を高くすることが有効である。初発の菌体濃度を高くする手法の1つに繰り返し回分培養があり、この手法は,初発の菌体濃度を高くできること以外に、前培養が不要、培養槽の洗浄が不要などの利点を有している。
本発明のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法により得られるマンノシルエリスリトールリピッドは、下記構造式(1)で表される化合物である。
マンノシルエリスリトールリピッドは、前記構造式(1)において、R1〜R4への水素原子及びアセチル基の結合の数と位置により4種類の物質が報告されている。ここで、アセチル基は親油基であり水への溶解度を低下させるため、中でも、アセチル基の無いマンノシルエリスリトールリピッドが望まれている。
このアセチル基の無いマンノシルエリスリトールリピッドは、下記構造式(2)で示される。(前記構造式(1)と前記構造式(2)とでは、R1〜R4の種類が異なる。)
そこで、本発明者らは更に、前記のように回分培養或いは繰り返し回分培養を行った後のMEL含有培養液を、任意の温度下に保存することにより、前記構造式(1)においてR1〜R4にアセチル基が結合していないMEL(前記構造式(2)で示されるMEL)を製造できることを見出した。方法は以下の通りである。
本実施例1では、マンノシルエリスリトールリピッドを短時間で効率的に生産できる微生物株を選択した。
本実施例1における結果から、以降の実施例については、マンノシルエリスリトールリピッド生産微生物株として、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)TM−181株(NITE P−530)を用いることとした。
本実施例2では、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)TM−181株(NITE P−530)におけるマンノシルエリスリトールリピッドの生産効率を高めるための培地成分の最適濃度を決定した。
その結果、酵母エキス1g/L、コーンスティープリカー2g/L、硝酸アンモニウム0.5g/L、リン酸2水素カリウム0.4g/L、及び硫酸マグネシウム0.2g/Lが最適濃度であった。
本実施例3では、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)TM−181株(NITE P−530)におけるマンノシルエリスリトールリピッドの生産効率を高めるためのpH、溶存酸素濃度、培養温度の最適条件を決定した。
前培養用培地4mLが入った試験管にシュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)TM−181株(NITE P−530)を1白金耳接種し、30℃で1日間振とう培養を行った。これを同じ組成の培地100mLの入った坂口フラスコに接種して、30℃で2日間振とう培養を行った。更に、これを所定量の植物油脂(亜麻仁油あるいは大豆油)と酵母エキス1g/L、コーンスティープリカー2g/L、硝酸アンモニウム0.5g/L、リン酸2水素カリウム0.4g/L、及び硫酸マグネシウム0.2g/Lの組成の液体培地(以下、本培養用培地と略する)1.4L(回分培養)及び4.6L(繰り返し回分培養)が入ったジャーファメンターに接種して、30℃で1.5L/分(回分培養)及び5L/分(繰り返し回分培養)の通気速度と800rpmの撹拌速度で本培養を開始した。
回分培養では、培養途中において植物油脂(亜麻仁油あるいは大豆油)の供給を行わないで、1日に1乃至2回培養液を無菌的に採取して、培養液中の各成分を経時的に測定した。MEL、トリグリセリド、ジグリセリド、及び脂肪酸は、採取した培養液に酢酸エチルを加えて激しく振とうした後、静置し、上清の酢酸エチル層を回収した。この酢酸エチル溶液をイアトロスキャン(ヤトロン社製)のロッドにチャージして所定の方法により各成分を定量分析した。
次に、MEL生産に及ぼす培養液のpHの影響を調べるため、初発油脂濃度を18質量%として、pHコントローラーを用いて培養期間中のpH5.0〜5.8の間で一定の値に保持して培養を行った。なお、pHを調整するために用いるアルカリ溶液としては、菌体の栄養素となり得るアンモニア(14質量%アンモニア溶液)を使用した。
各pHにおけるMEL生産量とこの濃度に達するために要した培養時間を表4に示す。pHが5.0〜5.8、特にpH5.2に制御して培養することがMELの生産効率を高める上で効果的であることが認められた。
次に、MEL生産に及ぼす培養液の溶存酸素濃度の影響を調べるため、初発油脂濃度を20質量%としてDOを1、3、5ppmに制御して培養を行った。この時、溶存酸素濃度は溶存酸素濃度メーターにより測定し、回転数を自動的に制御することにより所定の溶存酸素濃度に制御した。各溶存酸素濃度におけるMEL生産量とこの濃度に達するために要した培養時間を表5に示す。DOを3〜5に制御して培養することがMELの生産効率を高める上で効果的であることが認められた。
上記実施例3のようにして設定した基本培養条件において、初発油脂濃度を表6に示すように変化させて、MEL生産に与える初発油脂濃度の影響を検討した。MELの効率生産を考慮すると、更なる高濃度化が望まれる。このためには、初発の油脂濃度を増加させる必要がある。そこで、油脂濃度を10から36質量%まで変化させて培養を行った。各培養におけるMEL生産量とこの濃度に達するために要した培養時間を表6に示す。
前培養用培地4mLが入った試験管に当該菌株を1白金耳接種し、30℃で1日間振とう培養を行った。これを同じ組成の培地100mLの入った坂口フラスコに接種して、30℃で2日間振とう培養を行った。更に、これを18質量%の亜麻仁油と本培養用培地4.6Lが入ったジャーファメンターに4本(合計0.4L)接種して、30℃で5L/分の通気速度と800rpmの撹拌速度で本培養を開始した。なお、pHは、pHコントローラーを用いて14質量%のアンモニアを供給することにより5.2に保持して、1回目の回分培養を96時間行った。植物油脂(亜麻仁油)は、菌体が分泌したリパーゼにより急速に脂肪酸とグリセロールに分解された。生成した中間代謝物である脂肪酸は、細胞内に取り込まれて代謝され、菌体とMELが生産された。
2回目の回分培養は、攪拌羽根の回転を停止させ、4.3Lの培養液を試料採取管を通じてジャーファメンターから引き抜き、0.7Lをジャーファメンター内に残した。直ちに、予め滅菌しておいた18質量%の亜麻仁油を含む本培養用培地4.3Lを接種口からジャーファメンターに無菌的に流し込み、回転羽根を800rpmの攪拌速度で培養を開始した。pHは、pHコントローラーを用いて14量%のアンモニアを供給することにより5.2に保持した。
3回目以降の回分培養は、上記のような操作を繰り返し、培養時間を次第に短くして、計10回の回分培養を繰り返した。この時、各回分培養での残存培養液量は表7に示すように0.3〜1.75Lの範囲で変化させると共に引き抜いた培養液と同量の滅菌した新たな培地を加えた。また、1日に2乃至3回培養液を無菌的に採取した培養液に酢酸エチルを加えて激しく振とうした後に静置し、上清の酢酸エチル層を回収し、この酢酸エチル溶液をイアトロスキャン(ヤトロン社製)のロッドにチャージして、経時的に培養液中の各成分を測定した。
表7に示したように、10回の培養何れも原料の油脂を完全に分解し、生成した脂肪酸をほぼ消費して約130g/LのMELを安定に生産でき、菌株の生産能力の低下はなかった。また、培養液を随時顕微鏡で観察した結果、バクテリアなどの雑菌は観察されず、雑菌汚染もなかった。これらのことより、さらに長期間の培養も可能であると考えられた。
前培養用培地4mLが入った試験管に当該菌株を1白金耳接種し、30℃で1日間振とう培養を行った。これを同じ組成の培地100mLの入った坂口フラスコに接種して、30℃で2日間振とう培養を行った。更に、これを18質量%の亜麻仁油と本培養用培地1.4Lが入ったジャーファメンターに接種して、30℃で1.5L/分の通気速度と800rpmの撹拌速度で本培養を開始した。培養期間中、pHコントローラーを用いてpHを5.2に保持しつつ4日間培養を行い、MEL含有培養液を作製した。MEL含有培養液が20〜70℃となるように、温度計で測定しながら恒温槽に入れて保温した。一定期間毎に試料を採取して等容積量の酢酸エチルで脂質成分を抽出し、TLCプレートにチャージし、クロロホルム:メタノール:水=65:15:2(容積比)で展開した。展開終了後、オルシノール硫酸試薬でMELの存在を確認した。結果を図1に示す。
一定温度で保存したMEL含有培養液に等容量の酢酸エチルの酢酸エチルで脂質成分を抽出し、酢酸エチルをエバポレーターを用いて留去し、脂質成分を回収した。この脂質成分を等量のクロロホルムに溶解し、これをシリカゲルクロマトグラフィーにかけ、クロロホルム、クロロホルム:酢酸エチル溶液(4:1)、アセトン、メタノールの順で溶出させた。各溶液をTLCプレートにチャージし、クロロホルム:メタノール:水=65:15:2(容積比)で展開した。展開終了後、オルシノール硫酸試薬でMELの存在を確認した。アセチル基が結合していないと思われるMEL成分の含まれる溶出液を集め、溶媒を留去してアセチル基が結合していないと思われるMEL成分を得た。得られたMEL成分を再度クロロホルム1mLに溶解し、イアトロビーズカラムクロマトグラフィーにかけ、クロロホルム:メタノール=95:5(容積比)で溶出させ、TLCで単一のバンドを示す糖脂質成分を単離した。
アシル基の結合位置は、過ヨウ素酸酸化糖脂質のNMRにより解析した。対照としてマンノースに2つのアセチル基と脂肪酸が結合したマンノシルエリスルトールリピッド(MEL:4,6−ジ−O−アセチル−2,3−ジ−O−アルカノイル−β−D−マンノピラノシル1−4−meso−エリスリトール)を用いた。
4.0ppmより低磁場側のシグナルから、マンノースが確認された。これらのシグナルに加えて、高磁場の領域には、アシル基の特性を示すシグナルが観測されており、それぞれ−COCH2−基の−CH2−プロトンシグナルと同定できることから、2分子の脂肪酸が存在していることがわかる。一方、アセチル基(−COCH3)のメチルプロトンの存在を示すシグナルは観測されなかったことより、マンノースにアセチル基は結合していないと同定できた。結果を図2に示す。なお、この化合物は慣例的にMEL−Dと呼ばれている。
Claims (16)
- 栄養素と炭素源を含む培養液中でマンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物を培養してマンノシルエリスリトールリピッドを製造する方法において、前記マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物が、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)であることを特徴とするマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物が、シュードジーマ ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)TM−181株(NITE P−530)である請求項1に記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- 培養液のpHを5.0〜5.8の範囲に制御して培養を行う請求項1から2のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- 培養液のpH制御をアンモニアを用いて行う請求項3に記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- 培養液の溶存酸素濃度を1〜5ppmの範囲に制御して培養を行う請求項1から4のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- 培養液中にコーンスティープリカーを0.1〜4g/L含有させて培養を行う請求項1から5のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- 炭素源として炭素数6〜24の直鎖脂肪族炭化水素を用いる請求項1から6のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- 炭素源として炭素数6〜24の脂肪酸を用いる請求項1から6のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- 炭素源として炭素数6〜24の直鎖脂肪族炭化水素基を含むトリグリセリドを用いる請求項1から6のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- 炭素源として炭水化物を用いる請求項1から6のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- 炭素源として食品廃油を用いる請求項1から6のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- 炭素源濃度が10〜32質量%の範囲で培養を行う請求項1から11のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- マンノシルエリスリトールリピッドを生産する能力を有する微生物におけるマンノシルエリスリトールリピッドを生産する上での培地組成及び培養条件が、下記の通りである請求項1から12のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
酵母エキス:0.1〜2g/L
コーンスティープリカー:0.1〜4g/L
硝酸アンモニウム:0.1〜1g/L
リン酸2水素カリウム:0.1〜2g/L
硫酸マグネシウム:0.1〜1g/L
炭素源:100〜320g/L
培養液pH:5.0〜5.8
溶存酸素濃度:1〜5ppm
培養温度:26〜32℃ - 炭素源濃度が10〜36質量%の範囲で培養を開始し、該培養開始後2〜6日間の培養終了時に菌体とマンノシルエリスリトールリピッドを含む培養液の大部分を培養槽外に排出し、一部を培養槽に残して新たな培地を加えて、次の回分培養を開始し、該操作を繰り返して培養を行う請求項1から13のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- 更に、培養終了後の培養液を20〜70℃に保持する工程を含み、下記構造式(2)で表される構造を有するマンノシルエリスリトールリピッドを得る請求項1から14のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
- マンノシルエリスリトールリピッドの生産量が、7質量%以上(70g/L以上)である請求項1から15のいずれかに記載のマンノシルエリスリトールリピッドの製造方法。
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