JP2009294148A - 分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光散乱特性を分析する分析装置において、分析に要する時間を短縮する。
【解決手段】試料の周囲に配置された複数の光源と、前記複数の光源の一部又は全てから照射される光をそれぞれ異なる周波数の正弦波で強度変調して前記試料に照射する光変調部と、強度変調された前記複数の光が前記試料に照射されて発生する散乱光を検出する検出器と、前記散乱光の強度波形を周波数解析する周波数解析部と、を備えることを特徴とする分析装置を提供する。
【選択図】図1
【解決手段】試料の周囲に配置された複数の光源と、前記複数の光源の一部又は全てから照射される光をそれぞれ異なる周波数の正弦波で強度変調して前記試料に照射する光変調部と、強度変調された前記複数の光が前記試料に照射されて発生する散乱光を検出する検出器と、前記散乱光の強度波形を周波数解析する周波数解析部と、を備えることを特徴とする分析装置を提供する。
【選択図】図1
Description
本発明は、光学的手段を用いた分析装置に関する。特に、光を試料に照射し散乱した光を検出し、散乱特性を求めることで試料を分析する分析装置に関する。
従来、分析対象とする試料に光を照射して試料の成分等を分析する分析方法として、光散乱測定法が知られている。光散乱測定法では、入射光に対する複数の散乱角の散乱光の強さを測定して、試料の散乱特性を求める。このように複数の散乱角で散乱する散乱光を測定する方法として、以下のものが知られている。
第1の方法として、試料に光を照射する光源および散乱光を受光するセンサをそれぞれ一つずつ設け、光源位置を固定した上でセンサの位置を動かして複数の散乱光を測定する方法がある。第2の方法では、第1の方法と同様に光源および散乱光を一つずつ配置し、センサ位置を動かす代わりに光源位置を動かし、複数の散乱光を順次、測定する。第1および第2の方法は、ともに、光源およびセンサを一つずつ配置すればよいという利点を有する。しかし、第1および第2の方法では、複数の散乱光を測定するため、光源またはセンサの位置を代えて複数回の測定を行う必要があるため、測定に時間を要する。
これに対し、一回の測定で複数の散乱光を測定する第3の方法として、試料を取り囲むように円形(楕円形)ミラーを配置し、全ての角度の散乱光をこのミラーで受光して散乱光の像を作り、この像を撮像器などで捉え、散乱特性を求める方法がある。あるいは一回の測定で複数の散乱角の散乱光を測定する別の方法(第4の方法)として、試料を取り囲むように複数のセンサを略円形に配置する方法がある(特許文献1、特許文献2参照。)。
上記従来技術のうち、第1および第2の方法では上述したとおり、測定に時間を要する。また、計測する散乱光の角度によって散乱体積が異なるため、体積補正が必要となる。第3および第4の方法ではこうした問題は回避されているものの、第3の方法は複雑な調整及び処理が必要となり、また、第4の方法の場合は高価なセンサを複数、配置するため測定装置の製造コストが高くなる。
また、散乱光の強度は散乱角によって異なるため、上記従来技術では、ダイナミックレンジの大きなセンサが必要とされる。さらに、散乱角によっては散乱光の強度が非常に弱くなるため、最も弱い散乱光でもセンサに受光されるようするためには入射光の強度を、試料を中心にした光源とセンサとの角度に応じて変化させる必要もある。
本発明者らは、試料の周りに複数の光源を配置し、各光源から照射される光をそれぞれ異なる周波数の正弦波で強度変調して試料に照射し、センサで受光された散乱光を周波数解析することで上記課題を解決できることを想到し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の一実施形態として、試料の周囲に配置された複数の光源と、前記複数の光源の一部又は全てから照射される光をそれぞれ異なる周波数の正弦波で強度変調して前記試料に照射する光変調部と、強度変調された前記複数の光が前記試料に照射されて発生する散乱光を検出する検出器と、前記散乱光の強度波形を周波数解析する周波数解析部と、を備えることを特徴とする分析装置を提供する。
このように照射する光を周波数変調すると散乱光の強度波形は、光源から照射される光の変調の周波数成分を持つので、散乱光の強度波形の周波数解析を行うことにより、どの光源から照射された光による散乱光であるかを識別することができる。この識別に基づいて、試料を中心として、光源とセンサとがなす角度を求めて散乱特性を得ることができる。また、正弦波により周波数変調を行うと矩形波などにより変調を行った場合におけるような高周波成分の発生を低減することができる。
前記複数の光源の一部又は全ての二以上の光源からの光の照射は同時に行われてもよい。また、前記周波数解析部は、前記複数の光源の一部又は全てから照射される光の周波数の強度を求めるスペクトル分析手段を有していてもよい。これにより、散乱特性の測定に要する時間を短縮できる。
また、前記複数の光源の一部又は全てのうち同時に光を照射する光源は、それぞれ異なる強度の光を照射するよう設定されてもよく、前記検出器が検出する散乱光の強度が、前記検出器が検出可能な最小強度以上となるよう前記複数の光源の一部又は全てのうち同時に光を照射する光源が照射する光の強度が設定されたり、前記検出器が検出する散乱光の最大強度が、前記検出器が検出可能な最大強度以下になるよう前記複数の光源の一部又は全てのうち同時に光を照射する光源が照射する光の強度が設定されたりしてもよい。
このように、光源から照射される光の強度を調整することにより、検出器のダイナミックレンジが小さくても散乱特性を測定することができる。
また、前記複数の光源は、略同一平面上に配置されてもよい。さらに、略同一平面上に配置される略同一波長の光を照射するようになっていてもよい。光源を略同一平面上に配置することにより、光源から照射される光を効率良く使用することができる。また、光源から照射される光の波長を略同一波長とすることにより、同種の特性を有する光源を用いることができ、複数の光源の調整を容易に行うことができる。
また、前記略同一平面上に配置される複数の光源は、前記試料を中心に略半円形に配置されていてもよい。光源を、試料を中心にして略同一の距離に配置して略円形に配置することにより、光源の調整をさらに容易に行うことができたり、光源から照射される光の強度の計算を容易にできたりする。また、略半円形に光源を配置することにより、必要な光源の数を少なくすることもできる。
また、略同一平面上に略円形に配置された複数の光源が多段に配置され、同じ段の略同一平面上に配置された光源は略同一波長の光を照射し、それぞれの異なる段の光源は異なる波長の光を照射するようになっていてもよい。これにより、異なる波長での散乱特性を測定することができる。
また、前記試料はホルダーにより支持されていてもよい。これにより試料の位置を固定できる。さらに、ホルダーは底面と側面を有する透明容器であってもよい。これにより液体または液状の試料の散乱特性を測定できる。例えば懸濁物を含む海水の散乱特性を測定できる。この場合の懸濁物としては、海苔、プランクトンを挙げることができる。また、赤潮や青潮の測定もできる。
本発明によれば、複数のセンサを設けることなく、一回の測定で複数の光を試料に照射し、異なる散乱角で散乱した複数の散乱光を受光して試料の散乱特性を求めることができる。このため試料の測定に要する時間を短縮できる。また、各光源から照射する光の強さを調整することで、センサに求められるダイナミックレンジを小さくすることもできる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下、同一部材には同一符号を付し説明を省略又は簡略化する。また、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に限定されないことはいうまでもない。
図1(A)は、本発明の一実施態様に係る分析装置1の構成を示す概略図である。分析装置10は、光変調手段としての光源駆動器1と、光を発生させる複数の光源2と、試料3と、光センサ5と、周波数解析手段としての周波数解析装置6と、を備える。なお、後述のように光センサ5に入射する光を、干渉フィルタ4を通過させるようにしてもよい。
分析装置10では、複数の光源2として、例えば、実質的に同一の波長の光を発する同一種類の発光ダイオード(LED)を用いることができる。光源から出た光はレンズなどを用いた光学系により、ビームとして試料に照射されるのが好ましい。これらの光源2は試料3を中心とする略円形を描き、特に略半円を描くように配置されるのが好ましい。また、実質的に同一の平面上にあるのが好ましい。ここで本明細書では「略円形」と記載する場合、楕円および半円(楕円の半円含む)を含むものとする。
図1(B)は、分析装置10の側面図である。各光源2は、光源駆動器1と接続されている。光源駆動器1は、LEDの数と同数のLED駆動回路を備えており、ある一つのLED駆動回路はある一つのLEDと接続されている。複数のLED駆動回路はそれぞれ、LEDに供給される電流を周期的に変化させ、各LEDからの光の強度を時間の経過と共に正弦波として変化するように周期的に変化させるように構成されている。
各LEDは、同じ波長の単色光を照射するように同一種類であることが好ましい。また、各光源から照射される光は、正弦波で強度変調されることで周期的に強度が変化し、その光の強度の変化パターンは、光の強度を縦軸、照射時間を横軸にとった場合において、ほぼ正弦波をなす波形を描く。すなわち、強度はA・sin(ω・t+φ)+Dという時間tの関数として記述できる波形を描くようにするのが好ましい。ここに、A、ω、φ、Dはtに依存しない定数である。
なお、「正弦波で光を変調する」という場合の「正弦波」は、実質的に正弦波であることを意味するものとする。すなわち、「正弦波で強度変調された光」(以下、これを「変調光」と称する場合がある)は、ある周波数の、実質的に正弦波である波形を描くように強度が変化する。以下、試料に照射される変調光の強度変調の周波数を「変調周波数」と称する場合がある。ここで、数学的には、正弦波は、その値がプラスの半周期とマイナスの半周期を繰り返す波形であるが、本明細書では、正弦波は、その値が全周期に亘ってプラスになるように、適正なプラスのバイアス(オフセット)Dを加えてなる波形を表す場合も含まれる。
光の照射を受けた試料は、照射とほぼ同時に光を散乱するので、照射された光の変調周波数と実質的に同一の周波数で強度変調された散乱光が得られる。そこで、本発明では、試料を収容する容器などを取り囲むように複数の光源を配置し、それぞれの光源から照射される光を異なる変調周波数で強度変調させる。重ね合わせの原理により、各入射光の変調周波数と実質的に同一の周波数で強度が散乱特性に応じた正弦波の和の強度の散乱光が得られる。ここで、散乱光を受光するセンサを一つ配置すれば、そのセンサには複数の光源から照射された光の散乱光であるそれぞれの散乱光の和の強度の光が受光される。このセンサに受光された複数の散乱光は、それぞれ、異なる位置に配置された複数の光源からの入射光に対応して異なる周波数で強度変調されている。すなわち、センサで受光された散乱光は、試料に同時に照射された複数の変調光のそれぞれに対応する変調周波数と実質的に同一の周波数の複数(試料に照射された変調光と同数)の周波数成分を含む。以下、センサで検出され変調周波数の異なる複数の周波数成分を含む光の波形を「混合光強度波形」と称する場合がある。
この混合光強度波形を周波数解析して、試料に照射した複数の変調光のそれぞれに対応する複数の周波数成分に分解する。このような複数の周波数成分は、光源から照射された光に対する複数の角度での散乱光に対応しており、各散乱光の散乱角とその散乱の強さを求めることで試料の散乱特性が求められる。このように、本発明ではセンサを複数設けなくても、試料の光散乱特性を1回の測定で知ることが可能となる。
周波数解析手段は、センサで受光された混合光強度波形の信号に含まれる成分を周波数毎に分解し、横軸を周波数、縦軸をレベルとしてグラフ化して表示するなどの機器で構成される。例えば、任意のスペクトラムアナライザを用いることができる。
例えば、n個の光源が同時に光を照射し、そのうちのi番目の光源iから照射される光がsinωi・tという正弦波により変調されるとする。そして、照射されることで試料に到達する光の強度が、ω1,ω2,…,ωnを相異なる定数とし、また、Dを定数として、I=A1・sinω1・t+A2・sinω2・t+…+An・sinωn・t+Dと表されるとする。この場合、関数空間上において内積<_,_>を適宜定義することにより、<sinωi・t,1>=0,<sinωi・t,sinωj・t>=δijとすることができる。ここにδijはクロネッカーの記号である。すなわち、δii=1であり、i≠jのときδij=0である。内積としては、例えば、一定の長さの時間の間での積の定積分を用いることができる。光源iから試料に照射された光がセンサの方向に散乱される場合、入射光の強度がνi倍となって散乱されるとする。すると、n個の光源から試料に到達してセンサ方向に散乱される光の強度は、S=ν1・A1・sinω1・t+ν2・A2・sinω2・t+…+νn・An・sinωn・t+D’となる。したがって、<S,sinωi・t>=<νi・Ai・sinωi・t,sinωi・t>=νiとなる。
なお、同じ周波数でも位相が異なる場合、例えば90度個なる正弦波sinω・tと余弦波cosω・tとについては<sinω・t,cosω・t>=0とすることができるので、二つの光源の間で位相を異ならせることにより同じ周波数で変調することができる。
近年、フーリエ変換またはウェーブレット変換により周波数解析を行うプログラムを実行する様々なソフトウェアが提案されている。このようなソフトウェアを用いれば、測定機器として特別に作られたスペクトラムアナライザに代えて、かかるソフトウェアをインストールした任意のパーソナルコンピュータでスペクトラムアナライザを構成できる。前記センサによって検出された光は、電気信号に変換される。また、このようなコンピュータとセンサとの間には、前記センサにより検出され変換された電気信号を増幅する増幅器を設けてもよい。
散乱光の強さは散乱角によって異なり得るが、複数の光源から照射する光の強さを散乱角に応じて異なったものとするようにしてもよい。具体的には、センサに受光される散乱光の強度がセンサのダイナミックレンジの範囲内に収まるよう、例えば散乱光が弱くなる角度に配置する光源からは相対的に強い光が照射され、強い散乱光を生じさせる角度に配置する光源からは相対的に弱い光が照射されるようにする。すなわち、Ai,Dを適宜設定することにより、S=ν1・A1・sinω1・t+ν2・A2・sinω2・t+…+νn・An・sinωn・t+D’の値を所定の範囲に収まるようにする。ここに所定の範囲に収まるとは、Sの最大値がセンサの検出可能な最小強度以上となるようにすることである。また、Sの最大値はセンサの検出可能な強度の最大値を超えないようにすることである。このように、各光源から照射する光の強さを、各光源の配置位置(すなわち散乱角)に応じて異ならせれば、センサで受光される散乱光の強度を同程度にすることができる。よって、センサとしてダイナミックレンジが狭いものが使用できる。これにより、本発明の一実施形態に係る分析装置や分析方法を安価に実施できる。
光を強度変調する方法としては、上述するように、光源に与える電流(または電圧)を正弦波で変調することで、光源から発される光の強度を変調させるのが好ましい。具体例としては、光源としてLEDを用いる場合、LEDに供給する電流を正弦波によって変調する。あるいは電圧駆動の光源を用いる場合は、供給電圧を正弦波で変調する。また、本発明においては、異なる光源が同時に略同一波長の光を照射する場合には、それぞれの光を異なる変調周波数で変調する。この場合、それぞれの光を幾つの変調周波数で変調するかという変調周波数の割り当ては特に限定されず、任意であってよい。また、光を強度変調する方法は、光源に供給する電流等を変調して光源から変調された光を発する方法に限定されず、一定の強度で光源から発された光の透過量(透過率)を正弦波形に変化させる機構を利用してもよい。
このような光源駆動器1の例としては、複数のシグナルシンセサイザを備え、各光源2をそれぞれ別のシグナルシンセサイザと接続して、異なる周波数で各光源から照射する光を変調するように構成したものが挙げられる。具体的には、ダイレクトデジタルシンセサイザのようなシグナルシンセサイザを複数、設け、各シグナルシンセサイザからそれぞれ異なる周波数の正弦波信号を出力する。正弦波信号は必要に応じて増幅器で増幅し、かかる正弦波信号により各光源2からそれぞれ異なる変調周波数の変調光を発生させる。なお、光源駆動器1には、各光源(LED)2より出力される光の強度波形が全周期に渡ってプラスの値の正弦波となるように、各光源2に適正な直流バイアスを加える回路が含まれている。
図2に、光源駆動器(シグナルシンセサイザ)11と各光源(LED)12との接続方法の一例を示す。この例では、シグナルシンセサイザ11と各LED12とをオーディオパワーアンプ111および電流制限回路112を介して接続している。オーディオパワーアンプ111としては、例えば株式会社東芝製TA7252AP(モノラル)オーディオアンプキットが使用でき、その電源電圧は12Vである。シグナルシンセサイザ11とオーディオパワーアンプ111との間にはコンデンサが設けられている。
シグナルシンセサイザ11から出力された信号は正弦波である。すなわち、その波形の電圧値は中心値を0Vとし、プラスの半周期とマイナスの半周期を繰り返す。このような波形の正弦波信号は、コンデンサを介してオーディオパワーアンプ111に入力され、オーディオパワーアンプ111で増幅される。増幅後、正弦波の電圧値の中心値は、電源電圧の略1/2、つまり約6Vとなる。シグナルシンセサイザ11から出力される正弦波信号の振幅と、オーディオパワーアンプ111の増幅率とは、オーディオパワーアンプ111からの出力信号波形が全周期に渡ってプラスになるように設定されている。よって、オーディオパワーアンプ111からの出力信号を、電流制限用抵抗を有する電流制限回路112を介してLED12に供給するように構成することで、LED12から照射される単色光を全周期に渡ってプラスの値となるようにオフセットした正弦波で強度変調することができる。なお、電流制限回路112の電流制限用抵抗は個々のLED12によって抵抗値が異なるものを使用している。
図3は、光源駆動器(シグナルシンセサイザ)11と各光源(LED)12との接続方法の別の例を示す回路図である。この例では、シグナルシンセサイザ11からの出力信号を全周期に渡りプラスの値となる正弦波信号としてLED12に送るために、オフセット電圧発生回路113と、2回路入りのオペアンプ114とを用いている。オペアンプ114としては、例えば新日本無線株式会社製の高出力電流オペアンプNJM4556Aが使用できる。
オペアンプ114は、第1オペアンプ114Aと第2オペアンプ114Bとを含む。シグナルシンセサイザ11からの出力信号は、シグナルシンセサイザ11と第1オペアンプ114Aとの間に配置された抵抗を介して第1オペアンプ114Aのマイナス端子に入力される。第1オペアンプ114Aのマイナス端子にはまた、オフセット電圧回路113から出力された電圧が抵抗を介して入力されるよう、構成されている。第1オペアンプ114Aは、反転出力が得られる加算回路として動作するように構成されている。
また、オフセット電圧発生回路113は、所定の範囲の直流電圧(ここではマイナスの直流電圧)を発生する機能を持つよう構成され、出力される電圧の値が適正なマイナスの値となるよう、調整される。すなわち、オフセット電圧発生回路113は、第1オペアンプ114Aからの出力電圧が全周期に渡ってプラスとなるように調整される。このように、全周期に渡ってプラスとなるようにされた第1オペアンプ114Aからの出力信号は、第2オペアンプ114Bのプラス端子に入力される。第2オペアンプ114Bからは、プラス端子に印加された電圧と極めて高い精度で比例する電流がLED12に送られる。よって、この例では、図2に示した回路構成とする場合に比べて歪みが少なく全周期がプラスの正弦波でLED12から照射される単色光を強度変調することができる。また、図2に示す回路構成では、オーディオパワーアンプ111からの出力の大部分がロスとなり電力効率が悪いという問題があるが、図3の回路構成とすれば、この問題を解消できる。
なお、オフセット電圧発生回路113には、内部にピーク検出回路を設け、シグナルシンセサイザ11から出力された信号のピーク値(ここではマイナスのピーク値)を検出して最適なオフセット電圧を自動で発生する機能を持たせてもよい。このようなピーク検出回路は、オペアンプを利用して公知の技術で容易に実現可能である。
図3の回路構成では、LED12の後段に電流検出用の抵抗を設けている。そして、LED12に送られる電流の値を、LED12の後段の抵抗によって直接的かつ忠実に計測し、第2オペアンプ114Bのフィードバックループ内に含めることにより、極めて歪みのない正弦波で強度変調する電流をLED12に供給できる。しかし、第2オペアンプ114BとLED12との間を長いケーブルを用いて接続するような場合には、長いケーブルが第2オペアンプ114Bのフィードバックループに含まれ、動作が不安定になる恐れがある。
図4は、図3の回路の変形例を示す。図4では、第2オペアンプ114BとLED12とを接続するケーブルと、第2オペアンプ114Bのフィードバックループとを分離している。その他は図3の回路と同様の構成であり、図3の回路と同様にオフセット電圧発生回路113の内部にピーク検出回路を設けてもよい。図4では、第2オペアンプ114BとLED12との間を長いケーブルを用いて接続するような場合でも、動作が不安定になる不都合を解消できる。
このように構成することにより、複数の光源(LED)12からはそれぞれ異なった周波数(変調周波数)で変調された複数の変調光が試料に対して同時に照射される。光源12はLEDに限定されず、例えばLEDに比してスペクトル幅が狭い光(単色光)を発する各種レーザを用いてもよく、または有機もしくは無機のエレクトロルミネッセンスやランプ等を用いてもよい。各種光源のうち、レーザはコヒーレントが高く高強度の光を照射できるが、試料の測定対象範囲は他の光源(例えばLED)を用いる場合に比べて狭い。一方、LEDはレーザほど強い光を照射することはできないが、レーザを用いる場合より測定対象範囲を広くできる。
ここで、複数の光を同時に試料に照射する場合、光を断続的に照射して照射される光の波形が矩形をなすようにすると、多くの高調波成分が現れる。高調波成分が発生すると、エネルギーが分散される。このため、矩形波で照射光を変調する場合は、より高いエネルギーの光を照射する必要がある。一方、照射する光を正弦波で強度変調すると、矩形波で強度変調する場合のような高調波の発生を回避できる。よって、正弦波で強度変調すると、光を断続的に照射する場合に比して、光源から照射される光の強度を低くすることができる。
すなわち、照射する光を正弦波で強度変調する場合、高調波成分の発生によるエネルギーのロスを抑制できるため、矩形波で強度変調する場合に比して照射する光の強度が少ない場合でも散乱光の強度が不足する恐れを回避できる。よって、光の強度が比較的低い光源を用いても、センサで受光できる量の光が得られる。そこで、光源としては、より広い範囲を測定対象とでき、安価で取り扱いが容易なLEDを好適に使用できる。なお、レーザからの照射光の強度を変調させる場合、寿命の短縮を避けるためにはレーザ照射光の前に光量を変化させる装置を配置する必要がある。一方、LEDの場合はLEDに供給する電流を変化させることにより直接的に強度変調させても寿命を短くする恐れが少ないという利点もある。
光源から照射される単色光の波長は特に限定されず、可視光に限らず、赤外光、または紫外光などを用いても良い。
さらに、光源駆動器1により単色光をある周波数で変調させて光源2から照射する構成に代えて、光源2から照射された光をある変調周波数で強度変調させる構成としてもよい。例えば、液晶などを用いて透過する光の量を変更する装置を光源2と試料3の間に設置してもよい。
また、入射光の強度が入射角によらず一定である場合、一般的に、前方散乱など小さな散乱角の散乱光は、後方散乱など散乱角が大きな散乱光よりも強度が大きくなる。本発明では、センサのダイナミックレンジを大きくしなくても短時間で試料の散乱特性を計測するために、小さな散乱角で入射する光の強度を小さくするのが好ましい。しかし、LEDなどの光源に供給する電圧・電流を制御し光源からの光を小さな強度範囲で変調を行うのは一般的に困難が伴う。そこで、光源から出る光の強度が光源の特性上最適な範囲で変調を行い、上述したように液晶や減光フィルタを用いて、減光させて、試料への入射光の強度を小さくするとよい。したがって、散乱角が小さな散乱光を生じさせる入射光の光源ほど大きく減光させるフィルタ等を光源と試料の間に設置するようにしてもよい。
試料3は、台の上に静置されていてもよいし、ホルダーにより支持されていてもよい。ホルダーは底面と側面を有する容器であってもよい。この容器の内部に資料が保持される。例えば、液体や液状の物質を保持する。そして、少なくとも側面は透明である。ここに透明とは、光源2より照射される光が透過することをいう。また、容器は円筒形をしており、各光源から照射される光は、側面に到達するようになるのが好ましい。各光源から照射された光は、試料3によって散乱する。散乱により光は様々な角度に進行方向が変化させられる。センサ5には、各光源2とセンサ5とがなす複数の角度に対応した複数の散乱角の散乱光が受光される。
試料に照射された光からは測定対象としない光(例えば蛍光)も生じ得るため、本実施態様ではセンサ5の前に干渉フィルタ4を設けてこのような測定対象外の光がセンサ5に入らないようにしている。具体的には、干渉フィルタ4として、測定用に選択した波長の光(単色光)のみを透過させる干渉フィルタを設けることで、測定対象の光以外の光を除外するようにしている。また、図示していないが、センサ5と周波数解析装置6との間にセンサ5が検出した光を電気信号に変換されてなる出力信号を増幅して出力する増幅器を設けてもよい。増幅器としては光センサからの出力を増幅する増幅器、例えば光センサとしてのフォトダイオードからの出力電流を電圧に変換した上で増幅する増幅器を用いればよい。
本発明では、同一種類の単色光が複数、それぞれ異なる周波数で強度変調される場合であっても、同時に試料に照射することができる。これらの複数の光(変調光)が試料で散乱して生じる散乱光は、それぞれ、対応する変調光の変調周波数と同じ周波数で強度変調する。センサ5で受光された光の波形(混合光強度波形)には、複数の異なる周波数で強度変調する散乱光が含まれており、この混合光強度波形を周波数解析することで所望の散乱角での散乱光の強さが求められる。以下、分析装置10の光源2、試料3、およびセンサ5の位置関係を示す部分平面図である図5を参照して説明する。
図5に示すように、光源の一つであるLED2Aから照射された光(「変調光A」と呼ぶ)は周波数Aで強度が周期的に変調する。変調光Aは試料3で散乱され、様々な散乱角の散乱光が生じる。変調光Aから生じた散乱光のうち、散乱角θAで散乱する散乱光(「散乱光A」と呼ぶ)がセンサ5に受光される。この散乱光Aは変調光Aと同様にその強度が周波数Aで周期的に変調するため、散乱光Aを示す出力信号は周波数Aで変化する正弦波形となる。
同様に、別の光源であるLED2Bからは、周波数Aと異なる周波数Bで強度が周期的に変調する光(変調光B)が試料に照射される。センサ5には、この変調光Bから生じる散乱光のうち、散乱角θBで散乱する散乱光(散乱光B)が受光される。この散乱光θBも、その強度が周期的に変化し、その強度変調の周波数は変調光Bの変調周波数と同様、周波数Bとなる。以下同様に、各LED2から照射された光が散乱されて生じる散乱光のうち、各LED2とセンサ5とがなす散乱角での散乱光がセンサ5に受光される。これらの散乱光は、各LED2からの光を強度変調させる変調周波数と同じ周波数で強度変調する。そこでセンサ5で受光された光(混合光強度波形)の出力信号を周波数解析して試料に照射された複数の光源からの入射光の変調周波数に対応する周波数の複数の周波数成分に分解し、その強度を表示する。これにより、各光源から照射された同一色(同一波長)の光に対する複数の散乱角の散乱光の強さが求められ、その光に対する試料の散乱特性が1回の測定で得られる。
また、本発明では正弦波で強度変調する光を照射するので、多くの高調波成分が発生することによる周波数同士の重なり合いを回避し、多くの異なる周波数で変調する光を同時照射できる。さらに上述したとおり、矩形波で強度変調させる場合に比べて照射する光の強度を少なくできる。
なお、本発明のように正弦波で強度変調する光を照射する場合でも、異なる周波数で強度変調する周波数成分同士が重なり合うことを避けることが好ましい。このため、例えば、複数の光を強度変調させる複数の変調周波数は、互いに、実質的に倍数関係でなく、かつ、約数関係でもなくするとよい。「複数の変調周波数の周波数同士が実質的に倍数関係でもなく約数関係でもない」とは、ある変調光の変調周波数が、同時に照射される他のいずれの変調光の変調周波数の倍数または約数となる周波数と完全に一致しない周波数であることはもとより、通常の周波数解析技術によって分解不可能な程度まで接近していない周波数であるように設定されていることを意味する。
具体的には、例えば6個の光源を用いて光を照射する場合において、強度変調させる変調周波数を200Hz、250Hz、300Hz、350Hz、450Hzとして、200Hzの整数倍である400Hz、あるいは600Hz、または約数である100Hzといった周波数を含まないようにすることを意味する。このように変調周波数を選べば、ある変調周波数の倍数の周波数成分が、他の変調周波数と同一の周波数成分に重なって影響しあう恐れを回避できる。
分析装置10は、変調周波数の異なる複数の光を同時に照射し、この照射光を受けた試料からの散乱光の強度波形を周波数解析して目的とする周波数成分を取出す解析を行う周波解析手段を備える限りにおいて種々の変形が可能である。以下、本発明の別の実施態様について述べる。
図6は、本発明の第2実施態様に係る分析装置30の構成を示す側面図である。分析装置30では、実質的に同一の平面上に光源302からなる光源群とセンサ304とを配置し、また異なる平面上に、光源312からなる光源群とセンサ314とを配置し、多段に平面が設けてられている。すなわち、分析装置30には測定面が2段、設けられている。
ここではその一方を第1の測定面13A、他方を第2の測定面13Bと称すると、分析装置30の第1の測定面13Aは、光源302を含む光源群とセンサ305とを含み、光源302を含む光源群は、試料304を中心として実質的に半円を描くように配置された複数の光源で構成されている。同様に、第2の測定面13Bは、第1の測定面13Aと同様の構成である。光源312からなる光源群とセンサ315が実質的に半円を描くように同一平面上に配置されるのが好ましい。
第1の測定面13Aの光源群を構成する複数の光源はいずれも実質的に同一の光を照射する同一種類の光源(例えば波長650nm程度の光を照射する赤色LED)である。また、第2の測定面13Bの光源群を構成する複数の光源はいずれも実質的に同一の光を照射する同一種類の光源(例えば波長550nm程度の光を照射する緑色LED)であるが、光源121Bは、第1の測定面13Aの光源121Aとは異なっている。
第1の測定面13Aに配置された複数の光源から照射される光は、異なる変調周波数で強度変調されて試料に照射され、これらの光から生じた散乱光がセンサ305に受光される。同様に、第2の測定面13Bに配置された複数の光源から照射される光は、異なる変調周波数で強度変調されて試料に照射され、これらの光から生じた散乱光がセンサ315に受光される。
第1の測定面13Aのセンサ305で受光された光の強度波形(混合光強度波形)は、上述した第1実施態様の分析装置1と同様に周波数解析される。同様に、第2の測定面13Bのセンサ315で受光された光の強度波形(混合光強度波形)も、周波数解析され、複数の周波数成分に分解される。このようにして、第1の測定面13Aでの測定により、第1の光(例えば波長650nmの赤色光)についての試料の散乱特性が求められ、第2の測定面13Bでの測定により第2の光(例えば波長550nmの緑色光)についての試料の散乱特性が求められる。
以上述べたとおり、測定面を多段に配置することで、同一種類の光に対する複数の散乱角での散乱光を1回の測定で測定できるだけでなく、複数種類の光に対する散乱特性を同時に求めることができる。
本発明のさらに他の実施態様として、センサ305、315は、試料により散乱した光を、干渉フィルタ304、314を通して受光してもよい。特に、光源としてランプその他の白色光源を用いる場合のように、スペクトルの幅が広い光が光源から照射される場合、ある1種類の光源から波長が近似する複数の単色光が照射されうる。そこで、適宜、光源の前に干渉フィルタを配置し、目的とする光が試料に照射されるようにすればよい。
本発明は、複数のセンサを設けることなく、一回の測定で複数の光を試料に照射し、異なる散乱角で散乱した複数の散乱光を受光して試料の散乱特性を求めることができる。したがって、例えば湖沼、河口や海洋などで採水された試料の水質分析を従来よりも廉価に短時間で行うことができる。
10 分析装置
1 光源駆動器(変調光照射手段)
2 光源
3 試料
4 光センサ
5 周波数解析装置
1 光源駆動器(変調光照射手段)
2 光源
3 試料
4 光センサ
5 周波数解析装置
Claims (13)
- 試料の周囲に配置された複数の光源と、
前記複数の光源の一部又は全てから照射される光をそれぞれ異なる周波数の正弦波で強度変調して前記試料に照射する光変調部と、
強度変調された前記複数の光が前記試料に照射されて発生する散乱光を検出する検出器と、
前記散乱光の強度波形を周波数解析する周波数解析部と、を備えることを特徴とする分析装置。 - 前記複数の光源の一部又は全ての二以上の光源からの光の照射は同時に行われることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
- 前記周波数解析部は、前記複数の光源の一部又は全てから照射される光の周波数の強度を求めるスペクトル分析手段を有することを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
- 前記複数の光源の一部又は全てのうち同時に光を照射する光源は、それぞれ異なる強度の光を照射するよう設定されることを特徴とする請求項3に記載の分析装置。
- 前記検出器が検出する散乱光の強度が、前記検出器が検出可能な最小強度以上となるよう前記複数の光源の一部又は全てのうち同時に光を照射する光源が照射する光の強度が設定されることを特徴とする請求項3または4に記載の分析装置。
- 前記検出器が検出する散乱光の最大強度が、前記検出器が検出可能な最大強度以下になるよう前記複数の光源の一部又は全てのうち同時に光を照射する光源が照射する光の強度が設定されることを特徴とする請求項5に記載の分析装置。
- 前記複数の光源は、略同一平面上に配置され、略同一波長の光を照射することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の分析装置。
- 前記略同一平面上に配置される複数の光源は、前記試料を中心に略半円形に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の分析装置。
- 略同一平面上に略円形に配置された複数の光源が多段に配置され、同じ段の略同一平面上に配置された光源は略同一波長の光を照射し、それぞれの異なる段の光源は異なる波長の光を照射することを特徴とする請求項7または8に記載の分析装置。
- 前記試料は、ホルダーにより支持されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一に記載の分析装置。
- 前記ホルダーは、底面と側面を有し前記側面が透明な容器であることを特徴とする請求項10に記載の分析装置。
- 前記容器に収容されて支持される試料は液体又は液状であることを特徴とする請求項11に記載の分析装置。
- 試料の周囲に複数の光源を配置し、
前記複数の光源の一部又は全てから照射される光をそれぞれ異なる周波数の正弦波で強度変調して前記試料に照射し、
強度変調された前記複数の光が前記試料に照射されて発生する散乱光を検出し、
前記散乱光の強度波形を周波数解析することを特徴とする分析方法。
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CN102741680A (zh) * | 2010-01-29 | 2012-10-17 | 株式会社日立高新技术 | 分析装置 |
-
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- 2008-06-06 JP JP2008149622A patent/JP2009294148A/ja active Pending
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