JP2009294060A - 被検物質の分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】種々の環境中に含有される微量の被検物質を、微細気泡等による影響を受けることなく、正確に分析することができる被検物質の分析方法を提供することを目的とする。
【解決手段】液体を通す流路と、該流路に連通しかつ被検物質を貯留させるための貯留部と、検出用区画とを含む検出用カートリッジを用いて被検物質を分析する方法であって、(a)予め前記貯留部に被検物質を貯留させた前記カートリッジ内で、前記被検物質を溶離し得る溶離液を、前記貯留部に到達するが通過しない状態で所定時間保持し、(b)その後、前記貯留部に、前記被検物質を溶離し得る溶離液を通過させて溶離した被検物質を前記検出用区画に導入し、(c)前記被検物質を測定する被検物質の分析方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、被検物質の分析方法に関し、より詳細には、カートリッジを用いて環境中に存在する微量成分を検出する被検物質の分析方法に関する。
従来から、チップカートリッジと、このチップカートリッジに接続される測定系と、送液系と、検出系等とを利用して種々の物質を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。
このような検出方法では、チップカートリッジ内に収容されたフィルターでサンプルを濃縮することにより、微量成分を分析することができる。
国際公開WO2004/039500A1 国際公開WO2006/080186A1
通常、土壌、泥等の環境中に含有される微量成分は、環境中の他の成分と結合又は吸着した形態で存在する場合がある。例えば、土壌中の重金属は、土壌中の有機物(主に、腐食質)によって取り囲まれた形態で存在することがある。
従って、このような被検物質を分析する場合には、上述したような、フィルターでサンプルを濃縮し、その後にフィルターに被検物質の溶離液を流通させても、溶離液のみが通過し、被検物質がフィルターから溶離されにくく、有機物と共に残留することがあり、正確な分析ができない。
また、別の課題として、予めフィルターにトラップした被検物質を溶離液によって溶離する際には気泡が混入してしまうが、通常は問題とならない気泡であっても、溶液の流量や流路容積が微量な系の場合には、正確な被検物質の分析に支障をきたすこともある。
本発明は、種々の環境中に含有される微量の被検物質を、微細気泡等による影響を受けることなく、正確に分析することができる被検物質の分析方法を提供することを目的とする。
本発明の被検物質の分析方法は、
液体を通す流路と、該流路に連通しかつ被検物質を貯留させるための貯留部と、検出用区画とを含む検出用カートリッジを用いて被検物質を分析する方法であって、
(a)予め前記貯留部に被検物質を貯留させた前記カートリッジ内で、前記被検物質を溶離し得る溶離液を、前記貯留部に到達するが通過しない状態で所定時間保持し、
(b)その後、前記貯留部に、前記被検物質を溶離し得る溶離液を通過させて溶離した被検物質を前記検出用区画に導入し、
(c)前記被検物質を測定することを特徴とする。
このような被検物質の分析方法では、
工程(b)において、前記溶離液を、前記貯留部に到達するが通過しない状態で、10秒間以上保持する、及び/又は、前記溶離液を、前記貯留部上流の流路から前記貯留部の全容積の1/5〜1倍の容積で前記カートリッジ内に導入することが好ましい。
また、工程(a)の前に、前記被検物質を含む被検液を、前記カートリッジ内の貯留部を通過させることにより、該貯留部に被検物質を貯留させることが好ましい。
被検液が土壌抽出成分を含有することが好ましく、被検物質が砒素であることがより好ましい。
検出用区画に電極が配列された検出用カートリッジを用いて、非検出物質の分析をボルタメトリ法によって行うことが好ましい。
本発明の被検物質の分析方法によれば、種々の環境中に含有される微量の被検物質を、微細気泡等による影響を受けることなく、確実に検出系に導入して、正確に分析することが可能となる。
本発明の被検物質を分析する方法では、所定の検出用カートリッジを用いる。なお、本発明における「分析」とは、被検物質の有無、濃度、組成、その他の性質に関連する情報を発生させ、収集することを意味し、定量及び定性分析のいずれをも含む。
また、「被検物質」とは、特に限定されず、後述する方法を利用して分析することができる物質であればよく、例えば、被検物質を含む被検液が検出用電極に接触した際に、被検物質に関する電気的情報を生成し得る物質、被検物質の有無によって光学的変化をもたらし得る物質等が挙げられる。具体的には、環境中の微量成分、特に土壌中の重金属が適している。このような重金属としては、Cd、Pb、Cr、As、Se、Zn、Cu等が挙げられる。なかでも、土壌中の有機成分と結びつきやすいAsの分析に有効である。なお、砒素(五価)は、L−システイン等の添加によって容易にAs(III)に変換できるため、L−システイン等の添加前後の測定を行うことによって、As(III)、As(V)、全量Asのいずれもを測定することが可能である。
このような検出用カートリッジは、少なくとも、液体を通す流路と、この流路に連通しかつ被検物質を貯留させるための貯留部と、検出用区画とを含む。また、検出用カートリッジは、通常、溶離液等の試薬、被検液(被検物質が含有されている分析対象となる液体)等を注入又は排出するための複数のポートを適当な位置に備えている。
検出用カートリッジの流路は、上述したように、被検液、試薬等の流れを確保し、液体を移送及び/又は貯留することができるものである。これらの流路の形状、長さ、大きさ、数等は特に限定されず、例えば、数μm〜数mmのオーダーの幅を有し、数μm〜百μmのオーダーの深さを有する溝により形成されていることが好ましい。例えば、流路の断面積は10μm2〜1mm2程度が挙げられる。
流路は、その最上流端にポートが形成されており、そのポートから貯留部への流れを確保するものであることが好ましい。
検出用カートリッジの貯留部は、被検液に含まれる被検物質を一時貯留させるための空間である。このような貯留部の大きさは特に限定されず、被検物質の種類、濃度、濃縮度、検出系の種類等によって適宜調整することができる。貯留部は、通常、被検物質を吸着する吸着担体を含むことが好ましい。吸着担体は、膜、微粒子又は多孔質体等、どのような形態であってもよい。
膜は、主として繊維によりフィルター状に形成される。高分子膜、金属膜に適当な孔を開けたものとすることもできる。膜の例としては、表面の形態により被検物質に対する吸着機能を有するもの、表面を官能基で修飾することにより同様の吸着機能を有するもの、繊維に特定機能を有する粒子を担持させたもの等が挙げられる。
微粒子は、その表面の形態により被検物質吸着機能を有するもの、微粒子表面を官能基
で修飾したことにより同様の吸着機能を有するもの等が挙げられる。微粒子を、流路の長手方向に延びるカラム状に充填すれば、クロマトグラフィー機能を実現することができる。充填の形状は、直方体状、円筒状のいずれでもよい。
多孔質体は、多数の連通孔を有するものが適しており、例えば、多孔質セラミック、多孔質ガラス等のモノリス型多孔質無機材料、ポリアクリルアミドゲル、スチレンジビニルベンゼン共重合体等を多孔質化したもの等が挙げられる。連通孔表面の形態により被検物質吸着機能を有するもの、連通孔表面を官能基で修飾することにより同様の吸着機能を有するもの等が挙げられる。連通孔を有する担体が一体構造である場合には、例えば、樹脂充填カラムに比べて相対的に低圧力で通液することが可能であるため、低圧送液ポンプを用いることができ、同じ分析性能を有する機器でも、より小型化、低消費電力化が可能になり、カートリッジ内に設置する際の取り扱いが容易である。
吸着担体を構成する材料としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリレート樹脂、ポリヒドロキシメタクリレート樹脂等、さらに、WO2006/080186号に記載されている当該分野で公知のもののいずれを用いてもよい。
なお、貯留部に吸着担体を含まなくても、貯留部の壁面が被検物質に対する吸着機能を有する場合には、同様に濃縮機能を生じさせることができる。
吸着担体の表面に被検物質に対する吸着機能をもたせるためには、表面が被検物質に対する相補的な構造を有するか、表面にイオン結合、配位結合、キレート結合、疎水性相互作用、分子内極性による相互作用等を起こす官能基を有するか、機能性分子が固定化等されていればよい。
相互作用を有する官能基としては、例えば、スルホ基、第4級アンモニウム基等、さらに、WO2006/080186号に記載されている当該分野で公知の官能基が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を同時に用いてもよい。また、このような官能基を含有する機能性分子を利用してもよい。
吸着担体の大きさは、吸着担体の吸着容量が、目的とする成分を吸着するにあたって飽和とならない範囲で適宜調整することができる。被検物質を含む被検液中に、吸着担体に吸着しうる物質がどの程度含まれているかを予め想定し、吸着担体の大きさを決定することが好ましい。吸着担体の吸着容量が小さい場合には、濃縮倍率を上げやすいが、飽和吸着となり易いため、所望の吸着容量が得られる大きさの吸着担体とすることが必要である。
吸着担体の空隙率、連通孔の大きさ等は、被検液との接触を確実に行うことができ、目詰まりが問題とならない範囲で適宜調整することができる。
膜の場合には、その目の粗さは0.3μm程度以上、その厚みは10μm〜2mm程度が適している。極薄の膜を用いることにより、液体を通過させるために必要な送液圧力を低減することができるため、ポンプの小型化、ひいては装置の小型化を実現することができる。具体的には、吸着担体として、3M社のエムポア(登録商標)ディスクカートリッジを用いることができる。エムポア(登録商標)ディスクカートリッジは、極薄であるため、吸着した被検物質を溶離させるときに、用いる溶離液の量を極少量とすることができ、これによって、溶離液中の被検物質の濃度を高くすることができ、結果として高感度の分析を実現することができる。
微粒子を用いる場合には、その粒子径は2μm〜50μm程度、多孔質体の連通孔は1μm〜50μm程度が好ましい。
検出用区画は、種々の原理を利用して被検物質の検出を実現し得るための流路であって
、電気化学的分析(ボルタメトリ法等)、光学分析法(比色法、比濁法、蛍光分析等)、クロマトフラフィー(液体クロマトグラフィー等)等を行うことができるように構成されている。
例えば、検出用区画は、溶離液等の導入口から貯留部までの流路の下流側に配置されており、電気化学的分析を行うために、検出用区画には、溶離液と接触できる状態で、少なくとも一対の作用電極及び対極を含むことが好ましい。
作用電極は、被検物質を吸着し易い材料形成されていること、印加できる電位の範囲が広いこと、すなわち電位窓が広いこと、腐食や酸化に耐性があるものが好ましい。ここで、電位窓とは、電気化学上、好ましくない水素イオン又は酸化皮膜が発生しない電位領域を指し、この領域は、電極の材質及び測定対象溶液のpH値によって異なる範囲となる。例えば、WO2006/080186号に記載されているもの、具体的には、白金、金、水銀、銀、ビスマス、カーボン等が挙げられる。被検物質がカドミウム、鉛及び水銀、六価クロムである場合には、作用電極としてはカーボン表面を有する電極を使用し、砒素及び水銀である場合には、金表面を有する電極を使用することが適している。
対極は、作用電極との間で電流を流すことができる導電性材料であれば、どのような材料であってもよい。
電極は、被検物質の種類、検出用カートリッジの大きさ、カートリッジで用いる溶離液等の試薬等によってそのサイズを適宜調整して用いることができる。また、電極は、薄板状に成形した電極素材をカートリッジ基板に貼り付けることにより、成形及び取り付けが容易となるが、カートリッジ基板に直接形成してもよい。さらに、電極の溶離液等の試薬との接触面積が微小、例えば、直径10μm以下の円形の微小電極によって感度を向上させることができる。
なお、この検出用カートリッジは、さらに、少なくとも1つの参照電極が設けられていることがより好ましい。参照電極は、既知の安定した電位を示すことにより電位の基準とすることができる電極である。代表的な参照電極として、水素電極、飽和カロメル電極(水銀/塩化水銀電極)、銀ハロゲン化銀電極等を挙げることができる。
参照電極は、作用電極、対極との間で電気的相互作用を有しつつ、これら電極と隔離されていることが好ましい。例えば、参照極に用いられている銀イオンが作用電極に影響を及ぼすことを防止するためである。このため、作用電極及び対極が収納される検出用区画とは別に参照電極室流路を別途設けておき、検出用区画と参照電極室流路とが流路により接続される構造とすることが適している。参照電極室流路は、検出用区画の下流側(つまり、貯留部と反対側)に配置されていることが好ましい。これら検出用区画及び参照電極室流路間は、容易に分子拡散を生じないように微細流路であることが好ましい。
また、参照電極室流路には、参照電極用試薬供給ポートが接続されていることが好ましい。これにより、測定前、参照電極室流路に、参照電極用試薬を予め含ませた状態とするか、参照電極用試薬を必要に応じて参照電極室に供給することができる。
作用電極、対極、任意に参照極は、適当な電解質を含む溶液に接触させ、電気化学測定を行う。電解質は、溶液中で塩を形成する物質であればどんな物質でもよいが、塩化カリウム、硫酸、硝酸、硝酸カリウム、水酸化ナトリウム等が価格の観点から好ましい。
また、光学分析法、クロマトフラフィー等を行うために、検出用区画は、カラム、光学セル等として機能し得るように構成されていてもよい。
なお、この検出用カートリッジには、少なくとも1つのカチオン性物質を吸着するカチオン吸着担体及び/又は少なくとも1つのアニオン性物質を吸着するアニオン吸着担体と
が別個に並列配置された2以上の貯留部を有し、それに対応して、2組以上の検出用区画、流路等を有する構成としてもよい。
本発明の検出用カートリッジには、通常、上述したように、貯留部に連通した流路の最上流、参照電極室流路の上流にそれぞれ形成されたポートの他に、(i)検出用区画の下流に少なくとも1つ、(ii)貯留部と検出用区画との間に少なくとも1つのポートが形成されていることが好ましい。(i)のポートにより適切な試薬等を供給することが可能となり、(ii)のポートにより不要な溶液を排出することが可能となる。
また、検出用カートリッジとして、例えば、上述したWO2006/080186号に記載されているものをそのまま用いてもよい。
上述したような検出用カートリッジを用いる本発明の分析方法では、まず、(a)予め貯留部に被検物質を貯留させたカートリッジ内で、前記被検物質を溶離し得る溶離液を、貯留部に到達するが通過しない状態で所定時間保持する。
ここで、被検物質を溶離し得る溶離液とは、主として、貯留部の吸着担体に吸着している被検物質を吸着担体から離脱させるものである。また、吸着担体を濡らす及び/又は活性化する機能、後述する電気化学的分析上の電解液としての機能を兼ね備えているものが好ましい。従って、このような機能を有するものであれば、その組成、濃度、pH等は特に限定されず、吸着の化学的特性等から判断して適切な溶離液を選択することができる。
例えば、吸着担体表面に吸着しやすいイオンを含有する溶液を溶離液として用いる場合には、この溶離液が吸着担体を通過するときに、吸着担体に既に吸着しているイオン形態の被検物質が溶離液中のイオンと交換することによって、被検物質を吸着担体から離脱させることができる。
本発明では、被検物質に応じて下記に示すような組成を有する溶離液を用いることができる。
・カドミウム、鉛、水銀測定の場合:
吸着担体として、3M社からCation-SRの商標により入手可能なエムポア(商標)ディスクカートリッジを用い、溶離液として0.4M塩化カリウム、10mMクエン酸、3.5mMエチレンジアミンを含む液体(pH=約4)を使用する。この吸着担体は、粒径50〜100μmの微粒子を繊維状テフロン(登録商標)に固着させ、0.5〜0.75mmの厚みの膜状にしたものである。微粒子10%、繊維状テフロン(登録商標)90%の構成である。微粒子表面はスルホン酸基により修飾されている。
・砒素、セレン、六価クロムの測定の場合:
吸着担体として、3M社からAnion−SRの商標により入手可能なエムポア(商標)ディスクカードリッジを用い、溶離液として、1M硫酸(pH=約2)を用いる。この吸着担体も、粒径50〜100μmの微粒子を繊維状テフロン(登録商標)に固着させ、0.5〜0.75mmの厚みの膜状にしたものである。微粒子表面は4級アミン基により修飾されている。
吸着担体によっては、サンプル液を通過させる前に吸着担体を活性化する液体を通過される必要があるものがある。例えば、砒素、セレン、六価クロムを吸着する4級アミンは、OH−イオンと接触することにより吸着性能を発揮するようになるが、これは、目的とする陰イオンがOH−イオンと置換する反応を利用するものである。この場合には、吸着担体活性化液が使用される。吸着担体活性化液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが用いられる。
溶離液の保持は、貯留部に到達するが通過しない状態で行う。つまり、貯留部の上流から溶離液を少量だけ流し、貯留部(具体的には吸着担体)に溶離液が接触している状態で所定時間以上、保持する。言い換えると、少なくとも、この溶離液が、検出用カートリッジ内に導入されるが、検出用区画に到達しない状態で、所定時間以上、保持する。
上記保持に先立って送液を行う溶離液の量は、貯留部までの流路の容積、貯留部自体の容積、用いる吸着担体の量及び種類等によって適宜調整することができ、例えば、貯留部の上流の全流路相当容積と貯留部の容積、つまり、溶離液の導入口から貯留部までの全容積の1/5〜1倍程度、1/4〜1倍程度、さらに1/4〜3/4倍程度との合計容積が適している。また、別の観点から、10〜20μl程度が例示される。
通常、貯留部は、被検液が注入されていることから、溶離液供給前に既に液体を含んでいることが想定される。従って、上記保持に先立って送液を行う溶離液の量は、貯留部に予め含まれる溶液分と溶離液の量を合わせた合計量の液体が検出用区画に到達しないように決定される。このため、溶離液の量を、貯留部の容積自体よりも少ない容量に設定される。ただし、貯留部が乾燥した状態であれば、貯留部の容積に相当する量又はやや少ない量の溶離液を供給することが好ましい。
このような溶離液量の範囲に調整することにより、被検物質を十分又は完全に溶離させ、その溶離液を検出用区画側に移行させることができる。つまり、後述する被検物質の貯留部からの溶離の際に、溶出のための時間を確保した後に再び溶離液を送液するため、貯留部(主に吸着担体)に補足されている被検物質と溶離液とを十分に反応させて、ほぼ完全な溶出を促すことが可能となり、貯留部に捕捉された被検物質のほぼ全量を貯留部から移行させて正確な分析を行うことができる。また、この間に、貯留部に同時に捕捉された微細気泡を消滅させることができる。
保持時間は、貯留部に溶離液が接触するが通過しない量の溶離液の送液終了後、溶離液の送液を再開するまでの時間をさす。例えば、保持時間として、10秒間以上とすることが適しており、上限は特に規定されないが、10分間程度以内、5分間程度以内、さらに2分間程度以内が好ましい。このような時間に設定することにより、微細気泡の混入防止及び反応時間の確保を実現することができる。
一般に、検出用カートリッジ内の流路は、上述したように極微小なものであるため、このような微細流路では、流体中の極所的な圧力差により発生する極微小の泡が、分析測定上無視できない問題となる。そして、一旦微細気泡が発生すると、残留しやすく、さらに別の微細気泡と合体して成長する。このような微細気泡を含んだ溶離液が、検出用区画に導入されると、その分析において悪影響を及ぼすことがある。具体的には、流路内の気泡の存在によって液流に偏りをもたらし再現性が悪化したり、検出用区画内の電極表面や壁に付着し、電極面積を減少させ又は絶縁させたり、偏った光の反射又は散乱を招くこととなる。
例えば、貯留部に溶離液が到達した際に起こるイオン交換等の化学反応を利用して被検物質を溶液中に溶離させて検出用区画に移行させる場合には、程度の多少はあるものの、この反応で体積変化及びそれに伴う圧力変化が避けられない(石坂浩二、「体積変化を伴う溶液内反応と圧力効果」、「分析」(2008年2月号、61〜66頁))。特に、検出手段が電気化学分析である場合には、溶離液として電解質溶液の性質を兼ねる低pHの溶液が用いられるために、溶離液が貯留部に接した瞬間に局所的なpH変化が起こり、溶存空気の開放、その他の化学反応に基づく気体の発生が非常に起こりやすい条件となる。
このような気泡発生のメカニズムを考慮せず、溶離液を連続して送液を行う継続すると、貯留部に溶離液が接触して貯留部近傍で局所的な圧力差が生じていた間にも、上流側か
ら加圧される。その結果、気泡発生及び成長を促進し、発生した気泡を検出用区画に移行させることとなる。
本発明では、貯留部に、溶離液が接触するが通過しない量の溶離液を供給し、貯留部内の化学物質と溶離液中の成分を反応させたところで一旦送液を止め、局所的な圧力差が平衡する時間を確保し、また発生した気泡が溶解する間保持し、この後に溶離液の送液を再開することにより、上記の問題を防止しながら、分析性能を向上させることができる。
また、土壌及び泥等、環境中に存在する微量成分は、環境中の他の成分と結合又は吸着した形態で存在することが多く、特に、検出物質が土壌中に含まれる重金属である場合には、土壌中の有機物(主に腐食質)に取り囲まれた微粒子形態で存在することがある。このような場合には、フィルターに溶離液を通過させて検出対象物質を溶離する過程において、検出対象物質がフィルターから離れず、有機物と共にフィルターに残留し、下流の検出用区画に到達せず、正確な定量ができないことがある。つまり、被検物質の種類又は形態等によって、イオン交換等の化学反応における反応時間に差があり、検出対象物質を確実に溶離させるためには、所定の反応時間を要する。従って、上述したように、溶離液が貯留部に接触した状態で保持時間を設けることにより、このような反応時間を要する被検物質に対しても、溶離液と十分に反応させて溶離させ、その溶離液を検出用区画に移行させることにより、分析精度をより向上させることができる。
溶離液の保持のための溶離液の送液速度は、例えば、貯留部までの流路の全容積等によって適宜調整することができるが、400μl/min以下、さらに200μl/min以下、100μl/min以下、50μl/min以下とすることが適している。これによって、溶離液中に気泡を巻き込んだり、乱流を発生させることを防止することができる。
なお、通常、工程(a)の前に、貯留部に被検物質が貯留される。このために、被検物質を含む被検液をカートリッジ内の貯留部を通過させる。この際の被検物質、被検液を調製するための溶媒、被検液の貯留部を通過させる量、速度等は、吸着の化学的特性等から判断して適宜選択することができる。
工程(a)の後、(b)貯留部に、被検物質を溶離し得る溶離液を通過させて溶離した被検物質を検出用区画に導入する。
被検物質の検出用区画への導入は、上述した溶離液の保持の際に導入した溶離液と同様のものを用いることができ、同様の方法で、例えば、貯留部の上流のポートから流路を通して導入することが適している。この際の溶離液の量は、カートリッジ内の流路の全容積、検出用区画の全容積、被検物質の種類等によって適宜調整することができるが、例えば、工程(a)で導入した溶離液の量の6〜20倍程度、さらに6〜12倍程度が挙げられる。また、別の観点から、60〜400μl程度、さらに100〜200μl程度が例示される。
溶離液の送液速度は、特に限定されないが、例えば、上記と同様に、400μl/min以下とすることが適している。
このように、貯留部に一時的に貯留されていた被検物質を溶離させ、検出用区画へ向けて流すことにより、検出用区画中の検出用電極において、被検物質に関連する電気信号が生成される。
工程(b)の後、(c)被検物質を測定する。
この測定は、上述したように、電気化学的分析(ボルタメトリ法等)、光学分析法(比色法、比濁法、蛍光分析等)、クロマトフラフィー(液体クロマトグラフィー等)等種々の方法によって実現することができる。なかでも、電気化学的分析が簡便かつ容易に実現できることから好ましい。
例えば、ボルタメトリ法によって測定する場合、アノーディックボルタメトリ法では、検出用電極に被検物質の酸化還元電位以下の電位(プレーティング電位)をかけた状態で、溶離液を貯留部から流すことにより、イオン化された被検物質が検出用電極(作用電極)に接触する。検出用電極は酸化還元電位以下となっているため、イオン化された被検物質は金属として検出用電極表面に析出する。
所定量の溶離液を流した後、送液を止めて検出用電極の電位を上げると、被検物質の酸化還元電位に達したところで電極表面に析出していた被検物質がはがれる(ストリッピング)。このとき電極にイオン化した被検物質の量に応じた電流が流れるため、それを測定する。
カソーディックボルタメトリ法では、検出用電極に被検物質の吸着脱離電位以上の電位(プレーティング電位)をかけた状態で、溶離液を貯留部の上流から流すことにより、吸着された被検物質が検出用電極(作用電極)に接触する。検出用電極は吸着脱離電位以下となっているため、被検物質は検出用電極に吸着する。
所定量の溶離液を流した後、送液を止めて検出用電極の電位を下げると、被検物質の吸着脱離電位に達したところで電極表面に吸着していた被検物質が脱離する(ストリッピング)。このとき電極にイオン化した被検物質の量に応じた電流が流れるため、それを測定する。
上述のボルタメトリ法で得られた電位−電極ピーク電位から被検物質(アノーディックボルタメトリ法では、例えば、カドミウム、鉛、ヒ素、セレン、亜鉛、銅、ニッケル、水酸基を持つ化合物等、カソーディックボルタメトリ法では、例えば、クロム等)の定性分析、ピーク面積又はピーク高さから定量分析を行うことができる。
なお、これらの方法においては、プレーティング段階において被検物質を含む被検液を一定の流速で流しながら測定を行うことが好ましい。このために、流量検出手段を採用してもよい。溶液を流すことにより、単位時間当たりに電極表面近傍を通過する重金属イオンの数が多くなり、その結果、析出する被検物質の量が多くなるので、測定を高感度で行うことができる。また、一定の流速で常に溶液を流し続けることにより、吸着担体の活性化液及び洗浄液等の液残り分の影響を考慮したり、溶液の全容積を管理したりする必要がなくなり、流速のみを管理するだけで精度の高い分析をすることができる。さらに、被検物質の種類又は濃度等に応じて流速を調整することにより、的確な条件で測定を行うことができる。
本発明の分析方法は、例えば、用いる検出用カートリッジに対応した電気化学分析装置、光学分析装置等を利用して実施することができる。このような分析装置としては、当該分野で公知のいずれをも用いることができ、例えば、WO2006/080186号に記載されている装置等を利用することができる。
このような分析装置は、通常、上述した検出用カートリッジに、直接又は間接に(例えば、配管プレート(図4及び図6の51参照)、ホルダ等を介して)接続可能であり、この検出用カートリッジ内に流通される被検液に含まれる被検物質に関する情報を生成する処理ユニットを備えている。特に、電気化学的検出のために、処理ユニットには、これに結線され、検出用カートリッジに接続するためのピン状の端子等が備えられていることが好ましい。このような端子には、予め設定した測定プロファイルに従って電圧が印加され、電極に流れた電流を検出して、記録や表示部に信号が送られる。被検物質を含む溶離液を検出用電極に接触させながら所定の電気制御を行うことにより、これら電極に溶離液に含まれる被検物質に関する情報を表す電気信号が生成される。
また、処理ユニットは、一体的又は別体で、生成した情報を読み取って演算処理を行う
電気的処理装置又は演算処理装置等を備えていることが好ましい。
さらに、処理ユニットは、以下のような流液システムを備えている。
例えば、上述した検出用カートリッジとして、図6に示すように、最上流に第1のポート111a、流路(301に相当)、貯留部(22に相当)、検出用区画(201に相当)、貯留部と検出用区画とを接続する接続流路(501aに相当)及びそれに接続された第2のポート112a、検出用区画の下流の第4のポート114aをこの順に備えているものを用いる場合、処理ユニット5は、検出用カートリッジ1aがこの処理ユニット5にセットされた際に吐出口が第1の吐出側バルブ531を介して検出用カートリッジ1aの第1のポート111aに接続される第1のポンプ521と、吐出口が第2の吐出側バルブ532を介して検出用カートリッジ1aの第2のポート112aに接続される第2のポンプ522と、検出用カートリッジ1aの第4のポート114aに接続される廃液タンク544と、第1及び第2のポンプ521、522のそれぞれに、第1及び第2の吸入側バルブ551、552を介して接続される第1及び第2の薬液タンク541、542とを備える。
このような流液システムでは、第1及び第2の薬液タンク541、542に所望の薬液(例えば、第1の薬液タンクに溶離液、第2の薬液タンクに電解液)を入れて、第1及び第2のポンプ521、522と、第1及び第2の吐出側バルブ531、532とを適宜作動させることにより、所望の分析を行うことができるように構成されている。
ここで用いられる第1及び第2のポンプ521、522は、少量の液体を安定して送液でき、脈動がなく、吸入した液体を定流速及び/又は定流量で吐出する形式のポンプであることが好ましい。例えば、5〜100μl/min程度の流速が安定して実現できることが好ましく、ポンプが送液可能な圧力は0.01〜10Mpa程度が挙げられる。また、本体が小型かつ軽量で消費電力が少ないものであることが好ましく、例えば、シリンジポンプ(特に、ユニフロー社製ペンシルポンプ)、ギヤポンプ等を使用することができる。
なお、上述した検出用カートリッジに代えて、図2に示すように、検出用カートリッジ1内で、貯留部(22に相当)と検出用区画(201に相当)とが接続流路によって接続されておらず、貯留部の下流、検出用区画の上流に、それぞれポート(112及び113に相当)が形成されものを用いてもよい。この場合には、貯留部(22に相当)と検出用区画(201に相当)とを連結する流路(501に相当)を、処理ユニットが備えるか、これらとは別個に配管プレート51等を用いて確保することが好ましい。
また、上述した検出用カートリッジとして、図4及び図6に示すように、上述したものに加え、検出用区画(201に相当)及び第4のポート114、114aの下流側に参照電極室流路(202に相当)を備え、さらにその下流に第5のポート115、115aを備えているものを用いる場合、処理ユニット5は、検出用カートリッジ1、1aがこの処理ユニットにセットされた際に吐出口が第3の吐出側バルブ533を介して検出用カートリッジ1、1aの第5のポート115、115aに接続される第3のポンプ523と、第3のポンプ523に、第3の吸入側バルブ553を介して接続される参照電極用薬液タンク543とを備えたものであってもよい。
ここで用いられる第3のポンプ523は、上述した第1及び第2のポンプと同様のものが例示される。
このような流液システムでは、まず、第1の薬液タンク541に溶離液、第2の薬液タンク542に電解液、第3の薬液タンク543に参照電極液を入れて準備を行う。ついで、第2の吐出側バルブ532を開いて第2のポンプ522を作動させることにより、検出用区画(201に相当)に電解液を流通させ、その後、第2のポンプ522の作動を停止
する。続いて、第2の吐出側バルブ532を閉じ、第3の吐出側バルブ533を開いて第3のポンプ523を作動させることにより参照電極室流路(202に相当)に薬液を送り、その後、第3のポンプ523の作動を停止する。次いで、第3の吐出側バルブ533を閉じ、第1の吐出側バルブ531を開いて第1のポンプ521を作動させることにより、溶離液を、流路(301に相当)から貯留部(22に相当)に流し、これによって、貯留部に貯留された被検物質を溶離させ、続いて検出用区画(201に相当)に流通させる。これによって、被検物質を含む溶離液を、検出用区画に配置された検出用電極(31、33に相当)に接触させることができ、被検物質が検出される。
以下、本発明の被検物質の分析方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
(検出用カートリッジ1)
図1に、本実施形態の検出用カートリッジの分解図を示す。
この検出用カートリッジ1は、3枚の樹脂製のベース基板11、12、13を、下からこの順で重ね、組み合わせて構成されている。例えば、各基板の大きさは、平面形状が35mm×50mmであり、一枚の基板の厚さは1mmである。
ベース基板11、12の間には、被検物質を吸着する吸着担体22、被検物質を検出するための作用電極31、作用電極31に対応する対極33及び参照極34が配置されている。
ベース基板11には、吸着担体22を収めるための凹部22aが形成されている。この凹部22aは、貯留部の一部を構成する。ベース基板11には、さらに、作用電極31、対極33、参照電極34を所定位置に収めるために、凹部31a、凹部33a、凹部34aが形成されている。
ベース基板12には、凹部22aに対応する位置に、凹部22aと同じ直径の凹部22bが形成されている。
例えば、砒素及びセレン測定用の作用電極32として、ガラス基材上にクロム層を介して金層が形成された金電極(3.5mm×8.4mm×0.5mm)が、対極33として、板状カーボン電極(3.5mm×8.4mm×0.5mm)、参照極34として、アルミナ基材上に銀/塩化銀ペーストが塗布された電極(バイオデバイス社製)(3.5mm×8.4mm×0.5mm)が、電極の大きさが全て統一されて、配置されている。
ベース基板12には、さらに、凹部31a、33a、34aが形成されており、これらの凹部31a、33a、34aに、各電極31、33、34が、電極表面とベース基板12の表面とが面一になるように収められている。
基板11と基板12の間、基板12と基板13の間は、粘着テープ24a、24bによって、それぞれ液密に固定されている。各粘着テープは、必要な個所に開口又は孔が形成されている。
作用電極31及びその他の電極の表面は、粘着テープ24aによってマスクされ、電極に対応する3ヶ所の位置に所定の面積の孔が開口されて、各電極が露出され、液体との接触を可能にしている。図1では、孔241が作用電極31に対応する。
さらに、粘着テープ24aには、ベース基板11上の凹部22aに対応する位置にも凹部22aと同じ大きさの孔243が形成されている。
ベース基板11には、第1のポート111、第2のポート112、第3のポート113、第4のポート114及び第5のポート115を形成する厚さ方向貫通孔が形成されている。さらに、ベース基板12には、第1のポート111に対応する位置に貫通孔211、第3のポート113と第4のポート114を接続する溝201、この溝201と第5のポート115を接続する溝202のそれぞれに対応する位置に、厚さ方向に延びる孔213
、214、215が形成されている。
図2は、ベース基板11、12、13を重ねて検出用カートリッジ1に組み立てた状態で各ポート及び内部流路の関係を示す断面図である。図3は、検出用カートリッジ1の内部流路を透視的に示す斜視図である。
図2に示すように、ベース基板11には、凹部22aの下側の位置に、第2のポート112が形成され、第2のポート112は、ベース基板11の下面から凹部22aに接続している。ベース基板12に形成される凹部22bは、ベース基板12の下面に開口し、ベース基板11の凹部22aとともに貯留部を形成する。ベース基板12は、凹部22bの上部からベース基板12の上面に達する貫通孔212を有する。
また、ベース基板12の下面には、孔213と孔214とを連通させるベース流路溝201と、第5のポート115に接続された孔215を参照電極34に連通させる流路溝202が形成されている。2つの流路溝201、202は、溝203により接続されている。溝203は、液体の交換を最小にするため、他の流路溝より狭くなっている。
ベース基板13には、下面に、ベース基板12上の孔211と孔212とを互いに接続する流路溝301が形成されている。
この検出用カートリッジ1では、第1のポート111から貫通孔211、流路溝301及び貫通孔212を経て凹部22bに至るまでの経路が、本発明の流路を構成する。貫通孔213、流路溝201から貫通孔214に至る経路が、検出用区画を構成する。貫通孔215から溝202に至る経路が参照電極室流路を構成する。
図4に、上述した検出用カートリッジ1が処理ユニット5の一部を構成する配管プレート51に装填された状態を断面模式図で示す。
配管プレート51は、検出用カートリッジ1の第2のポート112と第3のポート113を接続する接続流路501を有する。この接続流路501は、配管プレート51にではなく、検出用カートリッジ1のベース基板11に形成してもよい。
図4に示すように、配管プレート51には、第1のポート111、第2のポート112、第4のポート114及び第5のポートのそれぞれに接続される流路511、512、514、515が厚さ方向に貫通して形成されている。
図4に概略的に示すように、配管プレート51の流路511には、第1のポンプ521が第1の吐出側バルブ531を介して接続される。第1のポンプ521の吸入口には、第1の薬液タンク541が第1の吸入側バルブ551を介して接続される。流路512及び515にも、同様に、ポンプ、バルブ、タンクが配置接続されている。流路514には、廃液タンク544が接続される。ただし、廃液タンク544に代えて、最下部のベース基板11aの上面に凹部を設けることにより、廃液溜544bが形成されていてもよい。このようにカートリッジ内に廃液溜を形成する場合には、図1及び図2に示すポート114は不要になる。
また、図4に示すように、貯留部と検出用区画との間には、流路内の空気を除去するための空気孔333が形成されており、溶離液兼電解質溶液がカートリッジ外に出ないように防水透水性素材(ゴアテックス(登録商標)等)等によるフィルタ334が介在されていてもよい。
(検出用カートリッジ1a)
検出用カートリッジの別の実施形態として、図5及び図6に検出用カートリッジ1aを利用してもよい。この検出用カートリッジ1aは、4枚の樹脂製ベース基板11a、12a、13a、14a、3枚の粘着テープ24a、24b、24cにより構成されている以外は、実質的に検出用カートリッジ1と同様の機能を果たす構成である。
この実施形態においては、配管プレート51に形成されていた接続流路501に相当する内部流路501aが、最下層の樹脂製ベース基板14aに形成されている。
図5及び図6に示すように、ベース基板14aには、ベース基板11a内の第1のポート111、第2のポート112、第5のポート115にそれぞれ連通する第1のポート111a、第2のポート112a、第5のポート115aが形成されている。さらに、第4のポート114に連通する第4のポート114aが形成され、廃液タンク544に接続される。ただし、廃液タンク544に代えて、最下部のベース基板14aに第4のポート114aを形成せず、ベース基板14aの上面に、図5に想像線で示すように凹部を設けることにより、廃液溜544aを形成してもよい。この場合、ベース基板11a、12a、13aには、廃液溜544aに通じる空気抜き孔Vを形成することが好ましい。
(被検液注入用ホルダ)
本発明の分析方法では、図7に示したように、検出用カートリッジ1に被検液を注入する被検液注入用ホルダ70を利用することができる。
このホルダ70は、箱状の本体71を有し、本体71の上に蓋72が開閉自在に被せられる。本体71の内部には、検出用カートリッジ1を載置するためのプレート73が配置され、プレート73の上に検出用カートリッジ1が、ポート111、112を上にして置かれる。説明を簡単にするため、検出用カートリッジ1の他のポートは図示していない。本体71内において廃液溜74が形成されている。蓋72には上方に開口する注入口75が形成され、注入口75の下端は、蓋72が閉じられたとき、検出用カートリッジ1の第1のポート111に接続される。蓋71には、さらに、蓋72が閉じた状態で一端が検出用カートリッジ1の第2のポート112に接続される廃液通路76が形成されている。廃液通路76の他端は、プレート73に厚さ方向に貫通するように設けられた廃液パイプ77の上端に接続される。
実施例
この実施例では、以下の構成を有するカートリッジ及び上述した被検液注入用ホルダ70を用いた。
貯留部:3M社製エムポア(登録商標) アニオン用フィルター
作用電極:金電極(シリコンウェハ基板にスパッタリングにて金を蒸着して作成)
対極: カーボン電極(三菱鉛筆社製PFCE)
参照極:AgCl電極(AgCl含有の有機バインダー液を塗布して作成)
貯留部直前までの配管容積:5μl
貯留部の容積:18μl
貯留部直下から検出用区画直前までの配管容積(接続流路501を含む):6μl
検出用区画の容積:20μl
参照電極室流路の容積:3μl
まず、検出用カートリッジ1をホルダ70内にセットする。ここで、カートリッジ内の貯留部(吸着担体22)を活性化するためにカートリッジの前処理を、50%メタノール溶液、1M−NaOH溶液をこの順番で通液させて行った。
7種のAs汚染土壌サンプルを、日本工業規格K0102−61に示された方法に従って、風乾、粉砕、分取・水入れ、振とう、遠心分離、ろ過することによって、土壌中Asを抽出した被検液として使用した。
図4及び図7に示すように、注入口75から被検物質を含む被検液5mlを注入した。被検液は、注入口75からカートリッジ1の第1のポート111に入り、吸着担体22を通過して第2のポート112からホルダ70の蓋72に形成された廃液流路76を通って、廃液パイプ77から廃液溜74に排出される。被検液が吸着担体22を通る間に、被検
液内の被検物質が吸着担体22に吸着される。
検出用カートリッジ1を、図4に示す処理ユニット5にセットした。
検出用カートリッジ1を処理ユニット5に設置した際、貯留部(22に相当)の下流に、検出用区画(201に相当)に接続する接続流路(501の相当)ができる。
また、第1及び第2の薬液タンク541、542に、溶離液(兼電解質溶液)として、1M−NaCl、0.53M−L−システイン一塩酸塩及び1M−塩酸の混合溶液をそれぞれに入れた。参照電極用薬液タンク543に、参照極用溶液として、1.6−NaCl及び10mM−クエン酸一水和物の混合溶液を入れた。
第2の薬液タンク542から溶離液(兼電解質溶液)を供給して検出用区画(201に相当)を満たした。このとき、第1の吐出側バルブ531及び第3の吐出側バルブ533は閉じているので、余分な溶離液は廃液タンク544に押し出される。
参照電極用薬液タンク543から参照極用溶液を供給して参照電極室流路(202に相当)を満たした。このとき、第1の吐出側バルブ531及び第2の吐出側バルブ532は閉じているので、余分な参照極用溶液は廃液タンク544に押し出される。
次いで、第1の薬液タンク541から溶離液を、20μl/minの条件で、15μl送液した後、送液を止め、この状態で1分間保持した。このような量の溶離液を送液することにより、溶離液を貯留部における吸着担体22に到達させることができるが、吸着担体22を通過させない状態を保持することができる。
続いて、作用電極31にプレーティング電位(−0.4V)を印加し、第1の薬液タンク541から溶離液を20μl/minの条件で85μl送液した。
送液を止め、−0.4Vから0.8Vまで電位を変化させながら、電圧−電流カーブを記録した。
この際の測定条件(アノーディックストリッピングボルタメトリ法;ASV)を以下に示す。
プレーティング:20μl/minで45秒(15μl)送液した後1分間保持。
その後−0.4Vの電位を印加して、20μl/min×4分15秒(85μl)
。全送液量は15+85=100μl。
ストリップング:−0.4Vから0.8VまでLSV(Linear Sweep Voltammetry)にて0.4V/secで挿引した。
なお、比較例として、上述した溶離液の貯留部での1分間の保持時間を取らなかった以外、つまり、プレーティング:−0.4Vで20μl/min×5分(100μl)を連続して送液した以外、上記と同様の操作を行った。
電圧−電流カーブにおいて、0.3V付近に現れたAsのピーク面積から濃度を求め、グラフにプロットした。濃度は予め同様の条件で測定した標準試薬の測定結果から得られる検量線から求めた。その結果を図8に示す。
図8には、同じサンプルを土壌汚染対策法に指定された測定方法のひとつであるフレーム原子吸光分析法(AAS)によって測定し、AASの結果に対して、上記実施例及び比較例の各結果を合わせてプロットした。
図8によれば、溶離液を貯留部に到達するが通過しない状態で1分間保持することにより、AASによって測定された濃度に対して、実施例の結果はよく相関しており(相関係数0.97)、高い分析精度を示した。
なお、土壌サンプルではなくAs試薬を用いて同様に分析を行った場合は、上述した実施例及び比較例による極端な違いが見られないことから、この違いは土壌中成分の働きに
由来するものであり、本発明の分析方法によって土壌成分によらず一定の分析結果が得られることを確認した。
本発明で使用される一実施形態の検出用カートリッジを分解して示す斜視図である。 図1の検出用カートリッジの組立て状態を示す断面図である。 図1の検出用カートリッジの液体流路を概略的に示す斜視図である。 図1の検出用カートリッジ内の流路と配管プレートとの関係を示す断面図である。 本発明で使用される別の実施形態の検出用カートリッジを分解して示す斜視図である。 図5の検出用カートリッジの組立て状態を示す断面図である。 被検液注入用カートリッジホルダの外観を示す斜視図である。 本発明の分析方法によってAsの定量を行った結果を示すグラフである。
符号の説明
1、1a 検出用カートリッジ
5 処理ユニット
11、12、13、11a、12a、13a、14a ベース基板
22 吸着担体
22a、22b、31a、33a、34a 凹部
24a、24b、24c 粘着テープ
31 作用電極
33 対極
34 参照電極
51 配管プレート
70 被検液注入用ホルダ
71 本体
72 蓋
73 プレート
74 廃液溜
75 注入口
76 廃液通路
77 廃液パイプ
111 第1のポート
112 第2のポート
113 第3のポート
114 第4のポート
115 第5のポート
201、202、203 溝
211、212、213、214、215 貫通孔
241、243 孔
301 流路溝
333 空気孔
334 フィルタ
501 接続流路
501a 内部流路
511、512、514、515 流路
521 第1のポンプ
522 第2のポンプ
523 第3のポンプ
531 第1の吐出側バルブ
532 第2の吐出側バルブ
533 第3の吐出側バルブ
551 第1の吸入側バルブ
541 第1の薬液タンク
542 第2の薬液タンク
543 参照電極用薬液タンク
544 廃液タンク
544a、544b 廃液溜
552 第2の吸入側バルブ
553 第3の吸入側バルブ

Claims (7)

  1. 液体を通す流路と、該流路に連通しかつ被検物質を貯留させるための貯留部と、検出用区画とを含む検出用カートリッジを用いて被検物質を分析する方法であって、
    (a)予め前記貯留部に被検物質を貯留させた前記カートリッジ内で、前記被検物質を溶離し得る溶離液を、前記貯留部に到達するが通過しない状態で所定時間保持し、
    (b)その後、前記貯留部に、前記被検物質を溶離し得る溶離液を通過させて溶離した被検物質を前記検出用区画に導入し、
    (c)前記被検物質を測定することを特徴とする被検物質の分析方法。
  2. 工程(b)において、前記溶離液を、前記貯留部に到達するが通過しない状態で、10秒間以上保持する請求項1に記載の分析方法。
  3. 工程(b)において、前記溶離液を、前記貯留部上流の流路から前記貯留部までの全容積の1/5〜1倍の容積で前記カートリッジ内に導入する請求項1又は2に記載の分析方法。
  4. 工程(a)の前に、前記被検物質を含む被検液を、前記カートリッジ内の貯留部を通過させることにより、該貯留部に被検物質を貯留させる請求項1〜3のいずれか1つに記載の分析方法。
  5. 被検液が土壌抽出成分を含有する請求項6に記載の分析方法。
  6. 被検物質が砒素である請求項1〜5のいずれか1つに記載の分析方法。
  7. 検出用区画に電極が配列された検出用カートリッジを用いて、非検出物質の分析をボルタメトリ法によって行う請求項1〜6のいずれか1つに記載の分析方法。
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