JP2009293072A - 連続鋳造圧延材及び連続鋳造圧延材を用いた塑性加工部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】Al合金の連続鋳造圧延材において、確実にDC法によるスラブ圧延材より優れた塑性加工性を有する連続鋳造圧延材及びその鋳造圧延材を用いた塑性加工部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】過剰Si量が0.08質量%以下としているのは、過剰Si量と塑性加工性、スプリングバック量とが線形関数の関係があり、0.08質量%以下であればスプリングバック量をDC材のスプリングバック量よりも確実に小さくできるからである。また、Crを不純物レベルの無添加としているのは、耐力増加を抑制し、素材耐力の制御を過剰Si量のみに依存させるためである。
【選択図】 図3
【解決手段】過剰Si量が0.08質量%以下としているのは、過剰Si量と塑性加工性、スプリングバック量とが線形関数の関係があり、0.08質量%以下であればスプリングバック量をDC材のスプリングバック量よりも確実に小さくできるからである。また、Crを不純物レベルの無添加としているのは、耐力増加を抑制し、素材耐力の制御を過剰Si量のみに依存させるためである。
【選択図】 図3
Description
本発明は、アルミニウム合金による連続鋳造圧延材及びこの鋳造圧延材を用いた塑性加工部材の製造方法に関し、特に、合金成分を適正化して加工性に優れた連続鋳造圧延材及びこの鋳造圧延材を用いた塑性加工部材の製造方法に関するものである。
従来、アルミニウムの板材の製造方法として、DC(Direct Chill)法が良く知られている。これは、図10に示すように、アルミニウムの原料を溶解することから始まり、スラブ鋳造、均質化処理、面削、加熱、熱間圧延、冷間圧延の各工程を経て、アルミニウムの板材を得るものである。一方、アルミニウムの原料を溶解した溶湯から直接アルミニウム板材を製造する連続鋳造圧延(CC:Continuous Casting)法も周知である。
CC法の代表的なものの1つに、双ロール水平式連続鋳造圧延法がある。これは、図11に示すように、アルミニウムの溶湯をセラミックス製ノズルで上下一対のローラ間に注湯し、アルミニウムの板材を圧延方向に押出すもので、CC法の中では比較的薄い板材を製造できるという特徴がある。(特許文献1)
CC法には、他にも、板材を連続鋳造圧延するベルト式や連結ブロック式、或いは棒状のビレットを連続鋳造圧延する輪・ベルト式等があり、これらのCC法は、DC法と比較すると、工程が少なく、コストの低減、投入エネルギの削減、急冷凝固による材料特性の向上といった種々の利点を有している。
一方、自動車分野では、車体の軽量化要求に伴って、比重が鋼板の約1/3であるアルミニウム合金(以下、Al合金)が注目されている。以前より、エンジン等の鋳物部材にAl合金が使われていたが、最近では、ルーフ、トランクリッド及びドア等自動車ボディ用外板としてDC法によるAl合金が使用されている。特に、ボディ用外板材料として、成形性や耐食性が良好で、焼付け塗装時の時効処理が強度向上に利用できるベークハード性に優れたAl−Mg−Si系(6000系)合金が多く用いられる傾向にある。
DC法やCC法によって車両部材成形用の素材を製造する場合、6000系合金の中でも中強度で耐食性に優れたJIS規格6061合金が使用されることが多く、この合金はMgとSiとがMg2Si組成に略バランスしている合金である。この6061合金は、Al、Mg、Siの他に、Fe、Cu、Cr、Zn、Tiを含んでいるものである。
一般に、Al合金板材のプレス曲げ加工においては、形状凍結性による変形、所謂スプリングバック等が発生するが、CC材の場合、その傾向が一層顕著になる。
すなわち、スプリングバック量が多い程、型形状と実寸法との乖離が大きくなり、これにより、成形品の寸法精度、条件出しが影響を受け、大幅な型修正を必要とすることに繋がる。
すなわち、スプリングバック量が多い程、型形状と実寸法との乖離が大きくなり、これにより、成形品の寸法精度、条件出しが影響を受け、大幅な型修正を必要とすることに繋がる。
金属材料の分野では、引張試験において、規定された永久伸びを生じる時、所謂塑性変形限界時の加重を試験片の平行部の原断面積で除した値を耐力というが、この耐力とスプリングバックとは一次関数の比例関係があることが知られている。
本発明者らは、この耐力に着目し、スプリングバックの制御可能性について検討を行った。
本発明者らは、この耐力に着目し、スプリングバックの制御可能性について検討を行った。
スプリングバックの制御可能性検討に当り、車体部品に近似させた実験用の実験部品を準備し、以下の検証実験を行った。
図12は検証実験用の実験部品10を示し、図12(a)はAl合金で成形された実験部品10の側面図、図12(b)は背面図である。この実験部品10は、前後方向に延設されると共に、上下縁部は互いに反対向きに水平方向に略直角に折り曲げられている。材料成分は、表1に示すように、JIS規格6061系合金を基本組成とし、Crを不純物レベルの無添加としている。
図12は検証実験用の実験部品10を示し、図12(a)はAl合金で成形された実験部品10の側面図、図12(b)は背面図である。この実験部品10は、前後方向に延設されると共に、上下縁部は互いに反対向きに水平方向に略直角に折り曲げられている。材料成分は、表1に示すように、JIS規格6061系合金を基本組成とし、Crを不純物レベルの無添加としている。
実験部品10は双ロール水平式連続鋳造圧延法によって成形され、その製造条件は、表2に示すものとした。尚、図12に示すように、実験部品10の全長は1200mm、板厚は7mmとしている。
まず、第1の検証実験について説明する。
表3の試験材A〜Nに示すように、JIS規格6061系合金を基本組成とし、Crを不純物レベルの無添加とすると共に過剰Si量を変化させたCC法による板状の実験部品10と、6061系合金をDC法によって鋳造した試験材Oによる板状の実験部品10を準備し、特に、比較用としてCrを含有したJIS規格6061系合金組成のCC法による試験材Iを設定している。尚、過剰Si量とは、合金成分においてMg2Si化合物に関するバランス組成からのずれを示している。従って、合金素材が含有するMg成分及びSi成分が全て結合したと仮定して、残留する過剰なSi量として定義する。
表3の試験材A〜Nに示すように、JIS規格6061系合金を基本組成とし、Crを不純物レベルの無添加とすると共に過剰Si量を変化させたCC法による板状の実験部品10と、6061系合金をDC法によって鋳造した試験材Oによる板状の実験部品10を準備し、特に、比較用としてCrを含有したJIS規格6061系合金組成のCC法による試験材Iを設定している。尚、過剰Si量とは、合金成分においてMg2Si化合物に関するバランス組成からのずれを示している。従って、合金素材が含有するMg成分及びSi成分が全て結合したと仮定して、残留する過剰なSi量として定義する。
この試験材A〜Nは全てに対して、530℃で2時間保持後、80℃の温水焼入れを行う溶体化処理を施し、夫々の耐力測定及びZ曲げ寸法測定を行った。
Z曲げ寸法測定とは、試験材A〜Nの実験部品10を図12(b)のようにZ状に曲げ加工し、下縁水平部分を基準台に固定した上で、上縁水平部分について試験材Oの実験部品の上縁水平部分との寸法差を測定するものである。尚、測定部位は、図12(a)に示すように、実験部品10の前後方向の両端から夫々10mm及びその内方50mm位置1〜4の計4ヶ所を設定している。
Z曲げ寸法測定とは、試験材A〜Nの実験部品10を図12(b)のようにZ状に曲げ加工し、下縁水平部分を基準台に固定した上で、上縁水平部分について試験材Oの実験部品の上縁水平部分との寸法差を測定するものである。尚、測定部位は、図12(a)に示すように、実験部品10の前後方向の両端から夫々10mm及びその内方50mm位置1〜4の計4ヶ所を設定している。
図13に、試験材A〜Nの実験部品10と試験材Oの実験部品10との寸法差と耐力との相関関係を示す。尚、縦軸は寸法差、横軸は耐力を示す。
図13から、耐力が120MPa以下であれば、全てのCC材である実験部品10がDC材である試験材Oの実験部品10との寸法差がプラス領域、所謂スプリングバック量がDC材の実験部品10よりも小さなものとなることが確認できた。尚、DC材にもスプリングバックが発生しており、この加工による寸法差が0以上のプラス領域に成形型と同寸法であるスプリングバック量0の領域が含まれている。
次に、第2の検証実験について説明する。
表4に示すように、JIS規格6061系合金を基本組成として、Crを不純物レベルの無添加とすると共に過剰Si量を変化させたCC法による試験材a〜gと、同じく6061系合金のCC法による試験材xとを溶体化処理し、これらの実験部品10を準備して、耐力を測定した。
尚、溶体化処理の条件は、第1検証実験と同様に、530℃で2時間保持後、80℃の温水焼入れを施している。
表4に示すように、JIS規格6061系合金を基本組成として、Crを不純物レベルの無添加とすると共に過剰Si量を変化させたCC法による試験材a〜gと、同じく6061系合金のCC法による試験材xとを溶体化処理し、これらの実験部品10を準備して、耐力を測定した。
尚、溶体化処理の条件は、第1検証実験と同様に、530℃で2時間保持後、80℃の温水焼入れを施している。
図14に、過剰Siと耐力との相関関係を示す。縦軸は0.2%耐力、横軸に過剰Si量を示す。
この検証結果から、過剰Si量と素材耐力とは線形関数であり、過剰Si量が増加すると素材耐力が増加することが認識できる。
特に、過剰Si量が0.08重量%以下であれば、確実に耐力を120MPa以下にできることが確認された。また、過剰Si量0.04重量%以下では0.2%耐力が114MPa近辺に収束しており、逆に、過剰Si量が多すぎても所定の値で収束するものと予測される。
しかも、本検証結果より、Crの添加は耐力を大きく増加させ、塑性加工性を大きく低下させることが確認された。
この検証結果から、過剰Si量と素材耐力とは線形関数であり、過剰Si量が増加すると素材耐力が増加することが認識できる。
特に、過剰Si量が0.08重量%以下であれば、確実に耐力を120MPa以下にできることが確認された。また、過剰Si量0.04重量%以下では0.2%耐力が114MPa近辺に収束しており、逆に、過剰Si量が多すぎても所定の値で収束するものと予測される。
しかも、本検証結果より、Crの添加は耐力を大きく増加させ、塑性加工性を大きく低下させることが確認された。
以上の検証実験により、スプリングバック量と耐力の関連性、耐力と過剰Si量の関連性の存在について確認できた。
しかしながら、特許文献1には、CC材のスプリングバック量を制御する点、更には、スプリングバック量を確実に適正範囲に収める点について言及されていない。
しかしながら、特許文献1には、CC材のスプリングバック量を制御する点、更には、スプリングバック量を確実に適正範囲に収める点について言及されていない。
本発明の目的は、Al合金の連続鋳造圧延材において、確実にDC法によるスラブ圧延材より優れた塑性加工性を有する連続鋳造圧延材及びその鋳造圧延材を用いた塑性加工部材の製造方法を提供することである。
請求項1の連続鋳造圧延材は、MgとSiとを含有するAl合金から成る塑性加工用の連続鋳造圧延材において、Crを非含有とすると共に、過剰Si量を0.08質量%以下とすることを特徴としている。
請求項2の連続鋳造圧延材は、請求項1の発明において、連続鋳造圧延材の合金成分が質量%で、Si:0.4〜0.8%、Fe:0.7%以下、Cu:0.15〜0.4%、Mn:0.15%以下、Mg:0.8〜1.2%、Zn:0.25%以下、Ti:0.15%以下、残部Al及び不可避的不純物よりなることを特徴としている。
請求項3の連続鋳造圧延材を用いた塑性加工用部材の製造方法は、MgとSiとを含有し、Crを非含有とすると共に、過剰Si量を0.08質量%以下とする組成の合金溶湯を連続鋳造圧延する工程と、連続鋳造圧延材を所定温度にて溶体化処理すると共に焼入れする工程と、焼入れ後の連続鋳造圧延材を塑性加工する工程と、塑性加工後に人工時効処理する工程と、を有することを特徴としている。
請求項4の連続鋳造圧延材を用いた塑性加工用部材の製造方法は、請求項3の発明において、連続鋳造圧延材は前記連続鋳造圧延工程で板状にされると共に、塑性加工工程でプレス曲げ加工されることを特徴としている。
請求項1の発明によれば、MgとSiとを含有するAl合金から成る塑性加工用の連続鋳造圧延材において、Crを非含有とすると共に、過剰Si量を0.08質量%以下とするため、確実に連続鋳造圧延材の塑性加工性を向上しつつ、最終成形品の強度を確保することができる。
つまり、6000系合金においては、素材強度はMg2Si化合物の分布量に依存する点、SiはFe等の不純物と反応し易く、消費され易いため、バランス組成より過剰Si側で成分を調整すべきである点、過剰Siと耐力とは線形関数で表され、過剰Si量によって耐力を調整できる点の3つの観点に着目した。この観点に基づいて、Crを排除することにより、過剰Si量のみによって連続鋳造圧延材の耐力を調整可能とすることができる。
しかも、過剰Si量とスプリングバック量との関係に着目し、過剰Si量の値を0.08質量%以下の範囲とすることによって、塑性加工前のスプリングバック量をDC法によるスラブ圧延材のスプリングバック量よりも確実に小さくできると共に、最終成形品の強度を確保した連続鋳造圧延材を得ることができる。これにより、CC法の製造工程メリット、所謂、工程が少なく、コストの低減、投入エネルギの削減、急冷凝固による材料特性の向上を図りつつ、CC法による加工寸法精度の良い成形品を得ることができる。
請求項2の発明によれば、連続鋳造圧延材の合金成分が質量%で、Si:0.4〜0.8%、Fe:0.7%以下、Cu:0.15〜0.4%、Mn:0.15%以下、Mg:0.8〜1.2%、Zn:0.25%以下、Ti:0.15%以下、残部Al及び不可避的不純物よりなるため、6061合金の合金特性を維持しながら、確実に連続鋳造圧延材の塑性加工性を向上しつつ、最終成形品の強度を確保することができる。
請求項3の発明によれば、MgとSiとを含有し、Crを非含有とすると共に、過剰Si量を0.08質量%以下とする組成の合金溶湯を連続鋳造圧延する工程と、連続鋳造圧延材を所定温度にて溶体化処理すると共に焼入れする工程と、焼入れ後の連続鋳造圧延材を塑性加工する工程と、塑性加工後に人工時効処理する工程と、を有するため、基本的に請求項1の効果を得ることができる。つまり、予め、過剰Si量を0.08質量%以下とすることで、溶体化及び焼入れ工程後の連続鋳造圧延材の塑性加工性をDC法によるスラブ圧延材の塑性加工性よりも優れたものとすることができる。しかも、塑性加工後に適正な人工時効処理を行うことで、最終成形品の強度を確保することができる。
請求項4の発明によれば、連続鋳造圧延材は連続鋳造圧延工程で板状にされると共に、塑性加工工程でプレス曲げ加工されるため、スプリングバック量の増大傾向が顕著となる板状のプレス曲げ加工であっても、スプリングバック量をDC法によるスラブ圧延材のスプリングバック量よりも小さくすることができる。
以下、本発明を実施する為の最良の形態について説明する。
図1(a)は本実施形態に係る塑性加工部材である6000系Al合金で成形された車体部品1の側面図、(b)は背面図である。この車体部品1は自動車の車体下部の剛性を高めるため、フロア下に車体前後方向に延びて取付けられるものである。車体部品1の上下縁部は互いに反対向きに水平方向に略直角に折り曲げられている。尚、板厚は4〜7mmとされている。
この車体部品1は、図2に示す各工程を経て製造される。まず、Alの板材を連続鋳造圧延(CC)する。このCC工程では、例えば、図11に示す双ロール水平式連続鋳造圧延法により、Al合金を溶解して、4〜7mmの板厚のAl板材を製造する。
その後、図2に示すように、溶体化処理、塑性加工としてプレス成形、人工時効処理を経て最終成形品が形成される。
その後、図2に示すように、溶体化処理、塑性加工としてプレス成形、人工時効処理を経て最終成形品が形成される。
本車体部品1で用いるAl合金は、図3に成分組成範囲を示すように、過剰Si量が0.08質量%以下とされており、Crを不純物レベルの無添加とするものである。その他の成分は、Si、Fe、Cu、Mn、Mg、Zn、Tiを合金元素とし、これらについては6061系合金と同様の組成範囲に設定している。
過剰Si量が0.08質量%以下としているのは、図13及び図14に示すように、過剰Si量と塑性加工性、スプリングバック量とが線形関数の関係があり、0.08質量%以下であればスプリングバック量をDC材のスプリングバック量よりも確実に小さくできるからである。また、Crを不純物レベルの無添加としているのは、耐力増加を抑制すると共に、素材耐力の制御を過剰Si量のみに依存させるためである。尚、その他の成分については、6061系合金と同様のため説明を省略する。
図4に示すように、CC工程を経たAl合金材に対して溶体化処理を行う。この溶体化処理条件は、515〜550℃で1時間以上である。その後、温水で焼入れする。尚、この溶体化処理の前に溶質成分の均質化若しくは加工歪を低減するために加熱処理工程を行うことも可能であり、加熱処理工程を行う場合、加熱温度を低下させずに連続して行うことができる。
この溶体化処理を経たAl合金材に対して、塑性加工としてプレス加工を施す。まず、Al合金材であるAl板材から車体部品1のブランク(図6参照)を打ち抜く。詳しくは、車体部品1の長手方向がAl板材の圧延方向に沿うようにブランキングする。ここで、車体部品1の上下縁部の折曲ラインが板材の圧延方向に略沿うように延びることになる。一般に、ブランクを板材の圧延方向に沿う方向に折り曲げると、その曲げ部には割れや皺が発生し難くなる。そして、このように得られたブランクをプレス機にかけて、プレス加工を行う。
この塑性加工工程を経たAl合金材に対して、人工時効処理を施す。処理条件は、155〜180℃で8〜18時間である。
人工時効処理によって、プレス加工前に行った溶体化処理によって強制的に合金材中に溶け込まされて過飽和状態となっている合金元素が本来の安定な状態に戻ることとなる。 この結果、合金元素は所々において析出し、この析出によって転位が滑りを起こし難くなって、塑性加工された車体部品1の物性、特に強度が向上することになる。
人工時効処理によって、プレス加工前に行った溶体化処理によって強制的に合金材中に溶け込まされて過飽和状態となっている合金元素が本来の安定な状態に戻ることとなる。 この結果、合金元素は所々において析出し、この析出によって転位が滑りを起こし難くなって、塑性加工された車体部品1の物性、特に強度が向上することになる。
図5に示す成分組成のAl合金材を用いて、双ロール水平式連続鋳造圧延法で、板厚が4〜7mmのAl板材を製造し、図2に示す溶体化処理、プレス加工及び人工時効処理を連続して図6に示す形状の本CC部材2を製造した。
溶体化処理条件は515〜550℃で1時間以上、その後、温水で焼入れし、冷却速度は400℃/sec以上とし、プレス成形は、ブランクをプレス機にかけて、プレス加工を行い、人工時効処理条件は155〜180℃で8〜18時間とした。
比較のため本CC部材2と同形状であり、図5に示すDC部材を準備し、本CC部材2と同様の溶体化処理、プレス加工及び人工時効処理を行った。
本CC部材2とDC部材夫々について、溶体化処理後の引張強度、0.2%耐力及び伸びを測定した結果を図7に示す。
図7に示すように、本CC部材はDC部材に比べて0.2%耐力を低く抑えることができ、伸び特性を大きくできる。特に、過剰Si量がマイナス0.022重量%であることから、0.2%耐力は120MPa以下に抑えられている。
本成分組成のCC部材はDC部材に比べて塑性加工性に優れた特性を有している。
図7に示すように、本CC部材はDC部材に比べて0.2%耐力を低く抑えることができ、伸び特性を大きくできる。特に、過剰Si量がマイナス0.022重量%であることから、0.2%耐力は120MPa以下に抑えられている。
本成分組成のCC部材はDC部材に比べて塑性加工性に優れた特性を有している。
図8に、人工時効処理後における本CC部材とDC部材夫々について、溶体化処理後の引張強度、0.2%耐力及び伸びを測定した結果を示す。本CC部材は、溶体化処理後の引張強度、0.2%耐力及び伸びの何れについてもDC部材より優れた特性を有している。
図6に示すように、本CC部材について、前後方向の両端及びその内方に幅方向の2ヶ所の位置にイ〜チ計8ヶ所の測定位置を設定し、夫々位置についてDC部材との寸法差を測定した。
図9に示すように、加工後の寸法差について、本CC部材はDC部材に比べて等しいか、プラス領域となっており、本CC部材はDC部材に比べて、スプリングバック量が小さい、所謂塑性加工性についても優れた特性を有している。
図9に示すように、加工後の寸法差について、本CC部材はDC部材に比べて等しいか、プラス領域となっており、本CC部材はDC部材に比べて、スプリングバック量が小さい、所謂塑性加工性についても優れた特性を有している。
以上の構成によれば、過剰Si量の調整のみによって連続鋳造圧延材の耐力を調整可能とすることができる。しかも、過剰Si量とスプリングバック量との関係に着目し、過剰Si量の値を0.08質量%以下の範囲とすることによって、塑性加工前のスプリングバック量をDC法によるスラブ圧延材のスプリングバック量よりも確実に小さくでき、加工寸法精度の良い成形品を得ることができる。
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、6061系Al合金を用いた例について説明したが、合金の種類はこれに限られるものではなく、Al−Mg−Si系合金、所謂6000系Al合金であれば、何れに用いることも可能である。
1〕前記実施例においては、6061系Al合金を用いた例について説明したが、合金の種類はこれに限られるものではなく、Al−Mg−Si系合金、所謂6000系Al合金であれば、何れに用いることも可能である。
2〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
1 車体部品
Claims (4)
- MgとSiとを含有するAl合金から成る塑性加工用の連続鋳造圧延材において、
Crを非含有とすると共に、過剰Si量を0.08質量%以下とすることを特徴とする連続鋳造圧延材。 - 前記連続鋳造圧延材の合金成分が質量%で、Si:0.4〜0.8%、Fe:0.7%以下、Cu:0.15〜0.4%、Mn:0.15%以下、Mg:0.8〜1.2%、Zn:0.25%以下、Ti:0.15%以下、残部Al及び不可避的不純物よりなることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造圧延材。
- Al合金から成る連続鋳造圧延材を用いた塑性加工部材の製造方法において、
MgとSiとを含有し、Crを非含有とすると共に、過剰Si量を0.08質量%以下とする組成の合金溶湯を連続鋳造圧延する工程と、
前記連続鋳造圧延材を所定温度にて溶体化処理すると共に焼入れする工程と、
前記焼入れ後の連続鋳造圧延材を塑性加工する工程と、
前記塑性加工後に人工時効処理する工程と、
を有することを特徴とする連続鋳造圧延材を用いた塑性加工部材の製造方法。 - 前記連続鋳造圧延材は前記連続鋳造圧延工程で板状にされると共に、塑性加工工程でプレス曲げ加工されることを特徴とする請求項3に記載の連続鋳造圧延材を用いた塑性加工部材の製造方法。
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