JP2009292862A - 重合体溶液の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】噴霧乾燥法を用いることなく、また重合体のガラス転移温度に関係なく、さらには重合体が有機溶剤中で凝集することなく、乳化重合で得られたエマルションから水を除去し、含水率を低減できる重合体溶液の製造方法を実現する。
【解決手段】沸点が100℃以上の溶剤中に、アクリル系重合体エマルションを滴下して加熱し、該アクリル系重合体エマルション中の水分を留去する、重合体溶液の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば電子部品の電極、プリント配線板、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネルの製造等に用いられる焼成ペーストとして有用な重合体溶液の製造方法に関する。
無機物による成形体やそれにより形成されるパターンは、電子材料等の分野において有用なものである。このような成形体やパターンを形成する方法として、従来、金属粉末、金属酸化物粉末、蛍光粉末、ガラスフリット等の無機粉末(フィラー)をバインダー樹脂と混合して焼成ペーストを調製し、この焼成ペーストから所定の形状やパターンを形成した後、焼成して有機物を熱分解することにより形成する方法が知られている。
この方法に使用されるバインダー樹脂の成分(バインダー成分)は、成形加工時の加工性保持や、移動時に成形体やパターンが損傷するのを防ぐため、フィラーをつなぎ止めるために必要となるもので、最終製品となる前にフィラーを焼結させる際の熱分解により除去される。従って、バインダー成分に求められる性能としては、良好な熱分解性を有するとともに、各加工時の作業性を満足する必要がある。この加工方法としては、スクリーン印刷やスラリーをドクタープレート等によりシート状に成形する方法や、ディップ法による方法を挙げることができる。
特に、スクリーン印刷やディップ法に使用される用途には、焼結させるフィラー成分の充填率を上げるため、バインダー成分の含有量を出来るだけ少なくする必要がある。従って、バインダー成分は、低固形分でスクリーン適性やディップ適性を満足する高粘度を発現させる粘性特性が求められる。そこで、バインダー成分としては、通常、ブチラール樹脂やエチルセルロース等の重合体を有機溶剤に溶解した溶剤系バインダー樹脂(重合体溶液)が用いられる。
しかし、最近の電子材料に用いられる部品に関しては、アルミナのような高温焼成タイプのフィラーからガラス粉体等の低温焼成可能なフィラーがあり、特に低温焼成型のフィラーを焼結させる場合、もしくは金属フィラーの酸化防止のため還元性雰囲気中で焼結させる場合、バインダー成分としてブチラール樹脂やエチルセルロース樹脂を用いるとスラッジが発生して焼成不良となり、得られるセラミックもしくは金属導体の特性が低下するという問題があった。
そこで、従来のバインダー成分の欠点を解決するために、焼成性に優れたアクリル樹脂を使ったバインダー成分が提案されている。例えば、特許文献1には、メタクリル酸イソブチルエステルとメタクリル酸2−エチルヘキシルおよびβ位もしくはα位に水酸基を有するメタクリル酸エステルの共重合体よりなるセラミック成形用バインダー樹脂が開示されている。
特許文献1に記載の共重合体を用いた場合、熱分解性は向上するものの、スクリーン印刷やディップ塗工に必要な高粘度を発現させるためには、分子量を上げる必要があった。しかし、分子量を上げると糸引き現象が発生し、満足できる印刷適性やディップ塗工適性を得ることが困難であった。
そこで、上記問題を解決する方法として、特許文献2には、特定の構成成分からなるアクリル系ポリマーを乳化重合によって得る製造方法が開示されている。
乳化重合は、水を媒体とし、この中に乳化剤または界面活性剤を溶解させ、これに水に不溶または溶解性の低いモノマーを加えて、水に可溶な重合開始剤を用いて重合を行う方法で、重合体粒子が水中に分散されたエマルションとして得られる。このため、重合体溶液を得るには、まず得られたエマルションから重合体粉末を回収し、該重合体粉末を目的の溶剤に溶解させることで、重合体溶液を得ることが一般的である。この回収工程に用いられる方法としては、噴霧乾燥法(スプレードライ法)など公知の方法を利用することが可能である。
しかし、噴霧乾燥法では十分に水分が除去された重合体粉末が得られにくく、含水率の低い重合体溶液を得ることが困難であった。さらには重合体のガラス転移温度(Tg)が45℃以下になると、噴霧乾燥中に重合体粒子同士の融着が生じることがあり、噴霧乾燥法の適用が困難な問題があった。その他にも、噴霧乾燥法を用いた場合では、例え僅かであってもコンタミネーションが生じる可能性が高く、特に高い純度が求められる電子材料分野における製造方法には不向きであった。
そこで、エマルション等の水系分散体から樹脂溶液を製造する方法として、噴霧乾燥法の他に、特許文献3には、フッ素系重合体、並びに(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位及び官能基含有不飽和単量体に由来する構成単位を含む官能基含有重合体を含有する複合化重合体の水系分散体に、沸点が100℃以上の溶剤を添加し、加温減圧条件下で水分を蒸留留去する方法が開示されている。
特開平10−167836号公報 特開2003−183331号公報 特開2007−231264号公報
しかしながら、特許文献3に記載の方法では、水系分散体と溶剤との分散性が悪いために重合体が凝集することがあり、その結果、重合体溶液が得られにくくなるといった問題があった。
ところで、焼成用ペーストの分野では、水と、金属やガラスなどのフィラーとが反応すると、ペーストの性能等が低下しやすくなるので、焼成ペーストのバインダー樹脂として用いられる重合体や重合体溶液には含水率の低減が特に求められる。
また、近年では、RoHS指令を考慮して、テレビなどの家電機器や電子部品では、従来使われていた鉛ガラスから、それに代わるリン酸塩や多アルカリ・ホウ酸塩ガラスなどの耐水性が乏しい材料に置き換える動きが広がっている。このような動きからも、焼成ペーストなどのバインダー樹脂として用いられる重合体や重合体溶液にはさらなる含水率の低減が求められる。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、噴霧乾燥法を用いることなく、また重合体のガラス転移温度に関係なく、さらには重合体が有機溶剤中で凝集することなく、乳化重合で得られたエマルションから水を除去し、含水率を低減できる重合体溶液の製造方法の実現を目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、乳化重合法にて得られるエマルションを沸点が100℃以上の溶剤中に滴下して水分を沸騰させて留去することで、噴霧乾燥法を用いることなく、また重合体のガラス転移温度に関係なく、さらには重合体が有機溶剤中で凝集することなく、乳化重合で得られたエマルションから含水率の非常に低い高純度の重合体溶液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の重合体溶液の製造方法は、沸点が100℃以上の溶剤中に、アクリル系重合体エマルションを滴下して加熱し、該アクリル系重合体エマルション中の水分を留去することを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、噴霧乾燥法を用いることなく、また重合体のガラス転移温度に関係なく、さらには重合体が有機溶剤中で凝集することなく、乳化重合で得られたエマルションから、含水率の非常に低い高純度の重合体溶液が得られる。
また、本発明によれば、噴霧乾燥法を用いないので、乾燥機等によるコンタミネーションを抑制できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
[アクリル系重合体エマルション]
本発明に用いるアクリル系重合体エマルション(以下、「エマルション」という。)は、乳化重合により得られる。具体的には、
(a−1)成分;アルキル(メタ)アクリレート60〜100質量%と、
(a−2)成分;ラジカル重合可能な不飽和二重結合を2個以上有する化合物0〜2質量%と、
(a−3)成分;ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート0〜10質量%と、
(a−4)成分;その他共重合可能な化合物0〜40質量%とを構成成分とする単量体(ただし、(a−1)成分〜(a−4)成分の合計は100質量%)を乳化重合して得られるアクリル系重合体(A)のエマルションが好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの総称を表す。
(a−1)成分としては、炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(a−1)成分は、(a−1)成分〜(a−4)成分の合計100質量%中、60〜100質量%の範囲で含有されるのが好ましい。(a−1)成分の含有量を60質量%以上とすることによって、アクリル系重合体(A)に優れた焼成性を付与することができ、焼成材として好適に使用することができる。(a−1)成分の含有量の下限値は70質量%以上が好ましい。
(a−2)成分としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、プロポキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリントリ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドグリセリントリ(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。これらは、粘性増加効果と熱分解性とのバランスに優れるとともに、高粘性化しても糸引きを起こしにくく特に好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(a−2)成分は、(a−1)成分〜(a−4)成分の合計100質量%中、0〜2質量%の範囲で含有されるのが好ましい。(a−2)成分の含有量が上記範囲内であれば、(a−2)成分によって、アクリル系重合体(A)が溶剤に溶解した重合体溶液に高粘性を付与することができ、焼成材として好適に使用することができる。(a−2)成分の含有量の下限値は0.5質量%以上が好ましい。また、(a−2)成分の含有量を2質量%以下とすることによって、アクリル系重合体(A)に優れた焼成性を付与することができるとともに、溶剤への溶解性が良好となる。(a−2)成分の含有量の上限値は1.5質量%以下が好ましい。
(a−3)成分としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のモノヒドロキシ含有(メタ)アクリレートや1分子中にヒドロキシル基が2個以上含有する1,2−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシ 5−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、1,2,3−トリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,2,3−トリヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1,2−トリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,1,2−トリヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、中でも炭素数2〜8のアルキル基にヒドロキシル基を1個以上含有する(メタ)アクリレートが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(a−3)成分は、(a−1)成分〜(a−4)成分の合計100質量%中、0〜10質量%の範囲で含有されるのが好ましい。(a−3)成分の含有量が上記範囲内であれば、(a−3)成分によって、アクリル系重合体(A)が溶剤に溶解した重合体溶液に高粘性を付与することができるとともに、金属顔料等の分散安定性を向上させることができる。(a−3)成分の含有量の下限値は2.0質量%以上が好ましい。また、(a−3)成分の含有量を10質量%以下とすることにより、アクリル系重合体(A)に優れた焼成性を付与することができる。(a−3)成分の含有量の上限値は8.0質量%以下が好ましい。
(a−4)成分は、必要に応じて適宜選択して使用できる成分である。(a−4)成分の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル、フタル酸2−メラクリロイルオキシエチル、マレイン酸2−メタクリロイルオキシエチル、コハク酸2−メタクリロイルオキシエチル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等を挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(a−4)成分は、用いられるフィラーや溶剤等の種類に応じて、ペーストの安定性を考慮し、適宜、選択して用いることができる。(a−4)成分は、(a−1)成分〜(a−4)成分の合計100質量%中、0〜40質量%の範囲で含有されるのが好ましく、より好ましくは0〜20質量%の範囲である。
本発明に用いられるエマルションは、公知の方法で乳化重合して得られるものである。具体的には、水中に、上述した単量体と乳化剤と重合開始剤等を加え、加熱下に重合を進行させることで得られる。
乳化重合における乳化剤は公知のものが使用できるが、具体例としては、アニオン性乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等)、ポリオキシエチレン基を含むアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等)、分子中にビニル重合性二重結合を有する反応性乳化剤等が挙げられる。
乳化重合における重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸化合物;過塩素酸化合物、過ホウ酸化合物または過酸化物と還元性スルホキシ化合物との組み合わせからなるレドックス系開始剤等が用いられる。また、連鎖移動剤として、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類などを用いてもよい。
[重合体溶液]
重合体溶液は、沸点が100℃以上の溶剤(B)中に、上述したエマルションを滴下して加熱し、エマルション中の水分を留去することにより得られる。
溶剤(B)としては、沸点が100℃以上のものを1種以上選択して使用することが好ましい。沸点が100℃以上の溶剤(B)を用いることで、エマルションを滴下している際に、水分のみを蒸発留去させ、溶剤(B)が蒸発するのを防ぐことができ、重合体が溶剤中で凝集しにくくなる。溶剤(B)の沸点は120℃以上が好ましい。沸点が120℃以上であれば、より溶剤(B)が蒸発しにくくなると共に、得られる重合体溶液のスクリーン印刷またはディップ塗工時の塗装作業性がより良好となる傾向にある。
なお、本発明において「沸点」とは、1気圧における沸点をあらわす。
沸点が100℃以上の溶剤(B)としては、具体的には、α、β、γ−ターピネオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルー3−エトキシプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、イソホロン、3−メトキシブチルアセテート、ベンジルアルコール、1−オクタノール、1−ノナオール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、トルエン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられるがこの限りではない。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、α、β、γ−ターピネオール、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
沸点が100℃以上の溶剤(B)中に滴下するエマルションの量は、溶剤(B)の総量に対して毎分10質量%以下が好ましい。毎分10質量%以上の量を滴下すると、溶剤中でエマルションが凝集してしまう。滴下量の上限値は毎分5質量%以下がより好ましく、毎分2質量%以下がさらに好ましい。一方、滴下量の下限値は毎分0.1質量%以上が好ましい。
本発明においては、水と共沸する溶剤を併用してもよい。すなわち、前記沸点が100℃以上の溶剤(B)と、水と共沸する溶剤との混合溶剤中に、エマルションを滴下して加熱し、エマルション中の水を留去してもよい。
水と共沸する溶剤としては、より効率よく水を留去することができ、また脱水の完了の判断が容易になる観点から、比重が水よりも小さく、水と混和しない溶剤を用いるのが好ましい。具体的には、n−ヘキサン、3−メチルペンタン、2−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、2,2−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン等の脂肪族炭化水素が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、n−ヘキサン、n−ヘプタンが挙げられる。
なお、本明細書において、水と共沸する溶剤を2種以上用いた場合、最も沸点の低い溶剤を「低沸点溶剤」というものとする。また、水と共沸する溶剤を1種単独用いた場合は、該溶剤を「低沸点溶剤」とする。
水と共沸する溶剤を併用する場合、その使用量は、後述するデカンター内と製造釜内を還流できる量であればよい。具体的には、沸点が100℃以上の溶剤(B)100質量部に対して1〜300質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。使用量が1質量部未満であると、デカンター内と製造釜内を還流しにくくなる。一方、使用量が300質量部を超えると、重合体の溶解性が低下する。
また、水と共沸する溶剤を併用する場合、エマルションの滴下量は、沸点が100℃以上の溶剤(B)と、水と共沸する溶剤との総量に対して毎分10質量%以下が好ましく、5質量%以下が好ましく、毎分2質量%以下がさらに好ましい。一方、滴下量の下限値は毎分0.1質量%以上が好ましい。
本発明は、例えば図1に示すような製造装置10を用いて重合体溶液を製造する。
ここで、本発明の重合体溶液の製造方法の一例について、図1を用いながら具体的に説明する。
まず、沸点が100℃以上の溶剤(B)を製造釜11に投入し、撹拌翼13で撹拌しながら加熱する。乳化重合後のエマルションを滴下タンク15から製造釜11中に、撹拌翼13で撹拌しながら滴下する。エマルションを滴下することで、重合体が有機溶剤中で凝集するのを抑制し、エマルション中の水が蒸気となり、コンデンサー14に移動する。蒸気はコンデンサー14にて冷却され、デカンター12内で水に凝縮する。このようにして、エマルションに含まれる水が除去される。この際、製造釜11内に不活性ガスをフローすることで効率よく水を留去させることができる。
なお、製造釜11に、沸点が100℃以上の溶剤(B)とともに、水と共沸する溶剤を混合しておいてもよい。この場合には、水と共沸する溶剤(低沸点溶剤)と、エマルション中の水とが共沸して蒸気となり、コンデンサー14に移動する。蒸気はコンデンサー14にて冷却され、デカンター12内で水と低沸点溶剤とに凝縮する。これらは混和せず、デカンター12内で上層(低沸点溶剤)と下層(水)に分離する。デカンター12の中段に設けられた帰還ライン12aに液面が到達すると、低沸点溶剤のみが製造釜11へ返送され、再び水と共に共沸される。このように、還流を続けることで、エマルションに含まれる水が除去される。
エマルション中の水を留去する際の加熱処理温度は、70℃〜350℃が好ましく、90℃〜250℃がより好ましい。加熱処理温度が70℃以下では水の留去に時間を要し、350℃以上ではアクリル系重合体(A)の分解が生じる可能性がある。
水と共沸する溶剤を併用した場合、加熱処理温度は低沸点溶剤と水との共沸点よりも高く、かつ、低沸点溶剤以外の溶剤の沸点よりも低いことが好ましい。また、低沸点溶剤が水と共沸して製造釜11内で十分に還流する状態となるようにすることが望ましい。この際、製造釜11内に不活性ガスをフローすることで効率よく水を留去させることができる。
加熱処理時間は、0.1〜10時間が好ましい。
水の留去の完了は、デカンター12内での水の凝集が確認できなくなることで判断できる。デカンター12内に溜まった水は、水の留去中や留去が完了した後に、デカンター12の下部に設けられた排出ライン12bから排出すればよい。また、水と共沸する溶剤を併用した場合、デカンター12内に溜まった溶剤は、水の留去が完了した後に、水と共に排出ライン12bから排出すればよい。
このように水を留去させることにより、噴霧乾燥法を用いることなく、さらには重合体が有機溶剤中で凝集することなく、重合体溶液を得ることができる。また、噴霧乾燥法を用いないので、重合体のガラス転移温度に関係なく重合体溶液が得られる。従って、例えばガラス転移温度が45℃以下の重合体であっても、重合体粒子同士が融着しにくく、重合体溶液を容易に得ることができる。
共沸留去が完了したものを、そのまま重合体溶液としてもよいが、含水率を下げるためには、さらに加熱して、溶剤を留去するのが好ましい。この際、製造釜11内に不活性ガスをフローするか、または減圧することで効率よく溶剤を留去させることができる。このようにして得られる重合体溶液には、必要に応じて目的の固形分になるように溶剤をさらに添加してもよい。添加する溶剤としては、水の留去の際に用いた溶剤と同様の溶剤であってもよく、異なる溶剤であってもよいが、同様の溶剤が好ましい。
このようにして得られる重合体溶液は、含水率が非常に低く高純度であり、塗料、インク、接着剤、プラスチック成形材料、焼成ペースト等の樹脂として好適である。
以上のように、本発明によれば、噴霧乾燥法を用いることなく、また重合体のガラス転移温度に関係なく、さらには重合体が有機溶剤中で凝集することなく、乳化重合で得られたエマルションから、含水率の非常に低い高純度の、重合体溶液を得ることができる。
また、本発明によれば、噴霧乾燥法を用いないので、乾燥機等によるコンタミネーションを抑制できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
<各種評価>
(重合体溶液の含水率の測定)
重合体溶液は、容量法によるカールフィッシャー水分率計にて水分率(含水率)を測定した。
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
ガラス転移温度は、下記に示すFoxの式により算出した値を用いた。
1/Tg=w1/Tg1+w2/Tg2・・・
式中、Tg1、Tg2・・・は、成分1、2・・・のTg[K]、w1、w2・・・は、成分1、2・・・の質量分率を示す。なお、各成分のTgは、「Polymer Handbook 3rd Edition」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION、1989年)に記載された値を使用できる。
<実施例1>
(乳化重合によるアクリル系重合体エマルションの作製)
加温、冷却が可能な重合装置に、水100部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.05部を投入し、メチルメタクリレート(a−1−1)2.5部、イソブチルメタクリレート(a−1−2)2.5部を加え反応液とし、窒素雰囲気中、回転数150rpmで攪拌しながら80℃で0.5時間加熱重合し、コア粒子を形成した。この反応液に、脱イオン水25部、乳化剤としてジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王社製、「ペレックスOTP」)1部、表1に示す混合物(1)を2時間かけて滴下した後、80℃で0.5時間加熱重合した。引き続き、脱イオン水25部、乳化剤としてジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王社製、「ペレックスOTP」)1部、表1に示す混合物(2)を反応溶液中に1時間かけて滴下した後、80℃で1時間保持し、乳化重合を終了した。得られた反応液を目開き45μmのナイロン製濾過布により濾過し、表1に示すようなアクリル系重合体エマルション1を得た。
(重合体溶液の製造)
次に、図1に示すような、加温・冷却可能な製造装置10を用いて、以下のようにして得られたエマルション1から重合体溶液を製造した。
製造釜11に、ターピネオール(日本香料薬品社製、沸点:219℃)を122部入れ、窒素ガスをフローしながら攪拌し、90℃まで昇温しこの温度を保持した。ここに、アクリル系重合体エマルション1を100部、2時間かけて滴下タンク15から滴下した。この滴下スピードは、ターピネオール総量に対して毎分0.7%の量とした。滴下終了後、120℃まで昇温し、その後120℃の状態を保った。デカンター12に水分が生じなくなることで、脱水の完了を判断し重合体溶液を得た。
得られた重合体溶液中の重合体のガラス転移温度、重合体溶液の固形分、重合体溶液の含水率を表2に示す。
<実施例2>
コア粒子を形成する単量体、および混合物(1)と混合物(2)を構成する単量体の種類と使用量を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリル系重合体エマルション2を得た。
得られたエマルション2を用い、実施例1と同様にして重合体溶液を製造した。結果を表2に示す。
<比較例1>
実施例1で得られたアクリル系重合体エマルション1を噴霧乾燥し、重合体粉末を得た。得られた重合体粉末を固形分が10%になるようにターピネオール(日本香料薬品社製)に溶解させ、重合体溶液とした。結果を表2に示す。
<比較例2>
実施例2で得られたアクリル系重合体エマルション2を噴霧乾燥した。
しかし、噴霧乾燥中に、重合体粒子同士の融着が発生し、重合体粉末を得ることができなかった。
<比較例3>
図1に示すような加温・冷却可能な製造装置10の製造釜11に、実施例1で得られたアクリル系重合体エマルション1を122部入れ、そこにターピネオール(日本香料薬品社製)100部を加えた。
窒素ガスをフローしながら攪拌し、昇温したところ、重合体がターピネオール中で凝集してしまい、最終的に重合体溶液を得ることができなかった。
Figure 2009292862
表1中の略語は以下の通りである。
(a−1−1):メチルメタクリレート(MMA)、
(a−1−2):イソブチルメタクリレート(IBMA)、
(a−1−3):ノルマルブチルメタクリレート(nBMA)、
(a−2):エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、
(a−3):ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)。
Figure 2009292862
表2から明らかなように、実施例1および実施例2で得られた重合体溶液の含水率は、いずれも0.05%以下であった。
また、実施例2では、重合体のガラス転移温度(Tg)が22℃と低かったが、エマルション2から重合体溶液を容易に製造することができた。
一方、比較例1で得られた重合体溶液の含水率は0.08%であり、実施例に比べて高かった。
また比較例2のように、重合体のガラス転移温度(Tg)が22℃と低いエマルション2からは、噴霧乾燥法を経た重合体溶液の製造が困難であった。
さらには、比較例3では、アクリル系重合体エマルション中に、沸点100℃以上の溶剤中を加えて昇温したが、重合体が溶剤中で凝集し重合体溶液の製造が困難であった。
以上から明白なように、本発明は噴霧乾燥法を用いることなく、また重合体のガラス転移温度に関係なく、乳化重合で得られたエマルションから、含水率の非常に低い高純度の重合体溶液を得ることが出来る方法として、工業上非常に有益なものである。
重合体溶液の製造装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
10:製造装置
11:製造釜
12:デカンター
12a:帰還ライン
12b:排出ライン
13:撹拌翼
14:コンデンサー
15:滴下タンク

Claims (1)

  1. 沸点が100℃以上の溶剤中に、アクリル系重合体エマルションを滴下して加熱し、該アクリル系重合体エマルション中の水分を留去する、重合体溶液の製造方法。
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