JP2009288469A - 投影装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高輝度な投影装置において、小型化と高い放熱能力の両方を実現することが困難である。
【解決手段】レーザ光源を可動部と非可動部からなるベースのそれぞれに配置し、投影装置使用時に可動部を動かすことで、放熱能力を向上させる。可動と同時にレーザ光源が動くため、光軸がずれないように光ファイバで光路を確保しておく。
【選択図】図9

Description

本発明は、投影装置の光源により発生する熱を、光学系のベースが可動部を有することにより、効率的に放熱する機構及び光学系に関するものであり、特に、レーザを使用した投影装置に関するものである。
近年、投影装置は携帯性のよい小型のものが求められ、ポケットにいれて持ち運ぶことが可能なサイズの投影装置も研究開発されている。光源をランプからLEDに置き換えることで光源自身のさらなる小型化も提案されている。
また、半導体レーザを光源に利用する投影装置も提案されている。半導体レーザは理想的な点光源に近いため、略平行光にすることや、光を絞ることが容易であり、光学系の小型化や、高い光利用効率を得られる等の利点がある。
高い光利用効率は、投影装置の低消費電力化を実現し、バッテリー等のサイズを小さくできる等、携帯性をさらに高めることができる。また、レーザ光源は光を絞れるため、光を映像に変換する空間変調素子の面積を小さくすることができる。空間変調素子の面積が小さくなることは、光学系の小型化に有利であり、また、空間変調素子のコストを抑えることもできる。また、レーザはその発光方式の特性上、ランプやLEDよりも電気−光変換効率が高いため、レーザを光源に用いることで、さらなる低消費電力化が可能となる。また、レーザはスペクトル幅が小さいため、色純度の高い光源であり、色再現性に優れた映像を投射可能となる。
しかし、レーザを用いて、投影装置の小型化が進むにつれて放熱機構が大きな問題となる。十分な輝度(レーザ出力)を維持したまま、光学系の小型化をしていくと、発熱密度が非常に高い投影装置になってしまい、それ相応のサイズの放熱機構が必要となる。大きな放熱機構を本体に配置してしまうと投影装置全体としての小型化を妨げるといった問題がある。さらに、半導体レーザは温度上昇に伴い出力が低下する。特に高出力の半導体レーザは温度上昇による出力低下が顕著である。そのため、半導体レーザを使用する場合、温度上昇をできる限り抑えることは必須であり、放熱機構は投影装置の小型化と高出力化に対して非常に重要なポイントであるといえる。
この問題に対して、特許文献1に示すものが提案されている。投影装置本体は第一の放熱手段を備え、第二の放熱機構は分離されており、ケース等に設置されている第二の放熱機構が、本体から十分な放熱をする構成である。本体は第一の放熱機構だけであるので、投影装置を実現しつつ、第二の放熱機構をセットした際には放熱能力がアップするので、高輝度化にも対応するというものである。
投影装置を使用する際には、全体が大きくなろうともあまり問題にならない。携帯性の善し悪しを大きく左右するのは、持ち運び時のサイズが非常に重要だからである。
また、特許文献2に示すものも提案されている。光源から発生した熱を、可動する筐体に伝えるために、接続部分にばね性を有する熱伝導部材を備える構成である。
特開2006−308885号公報 特開2006−343541号公報
しかし、特許文献1及び特許文献2では、熱源となる光源から発生した熱を、分離された放熱機構に伝えるものであり、分離された放熱機構に熱が伝わるためには、必ず可動あるいは分離可能な接触部分を通る必要があった。接触部分を熱が伝わる際には、接触熱抵抗と呼ばれる不安定な要因がある。接触熱抵抗とは、一体型ではなく、分離している2物体が接触している時に物体から物体に熱が伝わるときの、熱の伝わりにくさを表す値である。接触熱抵抗は、各々の物体の表面粗さ、硬さ、接触面積、押し付け圧力、物体周りの流体等、さまざまなものに影響され、一般に、正確な値を導くのは極めて困難である。また、経年劣化等で値がおおきく変動する可能性もある。
本発明は上記課題を鑑みて創案されたものであり、レーザを光源とする投影装置であって、可動部と非可動部にそれぞれレーザ光源が配置されており、接触熱抵抗を考慮することなく、安定な放熱機構を提供するものである。
上述した課題を解決し、携帯時には小型でかつ、投影装置使用時には十分な放熱能力を備えるために、本発明の請求項1に記載される投影装置は、複数の光源と、前記光源から出射した光を投影する投影手段と、前記光源が配置される可動部を有するベースと、を備え、前記光源は前記ベースの可動部と非可動部のそれぞれに少なくとも一つ以上配置されていることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、熱源となる光源を可動部と非可動部にそれぞれ配置しているため、可動部を動かした後に効率的に放熱することが可能である。さらに、可動部を有することにより、本投影装置が未使用の場合には、小型化が可能となり、携帯性の優れた投影装置が実現できる。
また、本発明の請求項2に記載される投影装置は、複数の光源と、前記光源から出射した光を空間的に変調する空間変調素子と、空間的に変調された前記光を投影する投影手段と、前記光源が配置される可動部を有するベースと、を備え、前記光源は前記ベースの可動部と非可動部のそれぞれに少なくとも一つ以上配置されていることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、空間変調素子を備えることによって、映像を投影できる小型の映像投影装置を実現できる。
また、本発明の請求項3に記載される投影装置は、光源と、前記光源から出射した光を空間的に変調する空間変調素子と、空間的に変調された前記光を投影する投影手段と、前記光源と前記空間変調素子が配置される可動部を有するベースと、を備え、前記光源と前記空間変調素子が前記ベースの可動部と非可動部に別々に配置されていることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、空間変調素子による発熱と、光源による発熱を、可動部と非可動部にわけて配置できるので、空間変調素子と光源の温度差をつけることができ、動作温度の低い空間変調素子、あるいは光源を使用するときに有利である。
また、本発明の請求項4に記載される投影装置は、光源と、前記光源から出射した光を空間的に変調する空間変調素子と、空間的に変調された前記光を投影する投影手段と、投影しない光を吸収する光吸収手段と、前記光源と前記光吸収手段が配置される可動部を有するベースと、を備え、前記光源と、前記空間変調素子と、前記光吸収手段の三つのうち少なくとも二つは、前記ベースの可動部と非可動部に別々に配置されていることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、空間変調素子による発熱と、光吸収手段による発熱と、光源による発熱の三つのうち少なくとも二つを分けて配置できるので、空間変調素子、光吸収手段、光源の温度分布をつけることが可能となり、動作温度の低い空間変調素子、あるいは光源を使用するときに有利である。
また、本発明の請求項5に記載される投影装置は、光を導光する導光素子をさらに備え、前記光源から出射された光が、前記導光素子により前記投影手段まで導光されることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、導光素子を備えることにより、可動部の動作前後でも光軸のずれを抑え、光利用効率が高く色むらの起きない投影装置が実現できる。
また、本発明の請求項6に記載される投影装置は、請求項5記載の前記導光手段が光ファイバであることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、光ファイバを使うことにより、光軸のずれを抑えたまま可動域の拡大化が可能である。
また、本発明の請求項7に記載される投影装置は、請求項6記載の前記光ファイバの入射端が、前記ベースの可動部と非可動部のどちらか一方に固定され、かつ、前記光ファイバの出射端が、入射端が固定されていないもう一方のベースに固定されていることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、可動部と非可動部に光ファイバの端面を固定することによって、可動部と可動部に固定された端面の相対位置が固定され、かつ、非可動部と非可動部に固定された端面の相対位置が固定されるため、可動部の動きによらずそれら相対位置が一定となり、可動部の動きによる光軸のずれを防ぐことが可能である。
また、本発明の請求項8に記載される投影装置は、バンドルファイバをさらに備え、複数の光源から出射された光をバンドルファイバで合波していることを特徴とする。
の発明に係る投影装置によれば、バンドルファイバを使用するため、可動域の拡大化が可能である。
また、本発明の請求項9に記載される投影装置は、光を拡散する拡散光学素子と、ロッドインテグレータをさらに備え、前記光源から出射された光は、前記拡散光学素子で拡散され、ロッドインテグレータに入射することを特徴とする。
の発明に係る投影装置によれば、拡散光学素子とロッドインテグレータで光が均一化されるため、可動部の動きによる光軸ずれを防ぐことができる。
また、本発明の請求項10に記載される投影装置は、前記ベースの可動部と非可動部を機械的につなぐ駆動機構をさらに備えることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、駆動機構により可動部と非可動部がつながっているため、可動部の動作が毎回同じ動きになり、光軸のずれを防ぐことが可能となる。
また、本発明の請求項11に記載される投影装置は、前記光源の温度を測定する温度センサと、請求項10記載の前記駆動機構を動かすアクチュエータと、をさらに備え、前記光源の温度に応じて前記ベースの可動部が自動的に動くことを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、温度センサの値に応じて可動部が自動的に動くことにより、温度上昇が小さい場合は小型のまま使用できる。
また、本発明の請求項12に記載される投影装置は、請求項10記載の前記駆動機構はスライド式であって、スライドする方向が、スライドすることにより前記光源の出射光の光路が変化する光の光軸と平行であることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、可動部の動作は光軸方向と平行にスライドするため、光軸のずれを防ぐことができる。
また、本発明の請求項13に記載される投影装置は、断熱手段をさらに備え、可動部と非可動部を実質的に断熱していることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、可動部と非可動部を断熱することにより、可動部と非可動部に大きな温度差をつけることでき、温度特性の悪い光源や素子等を低温側のベースに配置することが可能となる。
また、本発明の請求項14に記載される投影装置は、請求項10記載の前記駆動機構が断熱手段を備え、可動部と非可動部を実質的に断熱していることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、駆動機構が断熱手段を備えていることにより、新たな断熱手段を備えることなく、可動部と非可動部の温度差をつけることができる。
また、本発明の請求項15に記載される投影装置は、請求項10記載の前記駆動機構は熱伝導率0.5W/mK以下の材質でできていることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、駆動機構が熱伝導率0.5W/mK以下の材料で構成されている場合、駆動機構自身が断熱材とみなすことができるため、新たに断熱手段を備える必要がない。
また、本発明の請求項16に記載される投影装置は、可動部を有する前記ベースは、放熱フィンをさらに備え、可動部の動作前後で表面積が変化することを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、可動部が動くことにより、表面積が変化し、放熱能力を大きく向上させることが可能である。
また、本発明の請求項17に記載される投影装置は、ファンをさらに備え、前記ベースの可動部の動作前後で、前記ファンによる流体の流路の断面積が変わることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、可動部が動くことによって、ファンによる流体の流路の断面積が変化し、流体の流れに対する通風抵抗を変化させ、放熱能力を大きく向上させることが可能である。
また、本発明の請求項18に記載される投影装置は、ペルチェ素子をさらに備えることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、ペルチェ素子によって、温度分布をつけることが可能である。
また、本発明の請求項19に記載される投影装置は、コリメートレンズをさらに備え、前記光源から出射された光が、前記コリメートレンズで略平行光になっていることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、略平行光になっている場合、光軸方向に動いた場合、ビーム径はほとんど変わらないため、可動部の動作によるビーム径の変化を低減することができる。
また、本発明の請求項20に記載される投影装置は、前記光源がLEDであることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、LEDを光源にすることで、光源が小型化され、本体の小型化が可能となる。
また、本発明の請求項21に記載される投影装置は、前記光源がレーザ光源であることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、レーザ光源とすることで、光源が小型化され、本体の小型化が可能となる。さらに、略平行光にすることや、集光することが容易であるため、投射光学系の小型化も可能である。
また、本発明の請求項22に記載される投影装置は、請求項21記載の前記レーザ光源が、赤・緑・青の3色のレーザ光源であって、可動部を有する前記ベースに配置された前記レーザ光源が、赤と緑・青に分けられていることを特徴とする。
この発明に係る投影装置によれば、赤レーザ光源を別に分けることで、温度特性の悪い赤レーザ光源の温度上昇を抑えることが可能である。
また、本発明の請求項23に記載される投影装置は、前記ベースの可動部が動いた後に赤レーザ光源の位置が緑・青レーザ光源から離れることを特徴とする。
この発明の係る投影装置によれば、赤レーザ光源が他のレーザ光源から距離が離れることにより、他のレーザ光源からの熱の影響を低減できる。
また、本発明の請求項24に記載される投影装置は、請求項21記載の前記レーザ光源の少なくとも1つは、波長変換素子を用いたSHGレーザ光源であって、前記SHGレーザ光源はペルチェ素子で温度制御されていることを特徴とする。
この発明の係る投影装置によれば、SHGレーザ光源をペルチェ素子で温度制御することで、SHGレーザ光源の高出力化が可能である。
また、本発明の請求項25に記載される投影装置は、請求項24記載の前記SHGレーザ光源は断熱手段を有し、SHG素子がSHGレーザ光源の中で熱的に分離されており、前記SHG素子がペルチェ素子で温度制御されていることを特徴とする。
この発明の係る投影装置によれば、SHG素子をペルチェ素子で温度制御することで、効率的にSHGレーザ光源の高出力化が可能である。
本発明の投影装置によれば、持ち運び時には小型で携帯性に優れ、使用時には、放熱能力が安定して向上することで、携帯性の高い、高輝度な投影装置が実現可能となる。
まず、本発明の投影装置の概略を簡単に説明する。図9は実施の形態1の概略構成を示す図である。本発明の投影装置は、赤レーザ光源1、緑レーザ光源2、青のレーザ光源3を光源とし、空間変調素子6、投射レンズ7を備える。レーザ光源が配置されるベースは、可動部21と非可動部20を有し、それぞれの部分にレーザ光源が配置されている。可動部21は駆動機構22によって動く。投影装置がoffの状態、つまり持ち運んでいる状態では、可動部21と非可動部22はコンパクトに収納されている。投影装置の使用時には、可動部が動き空間占有体積が増え、可動部が動く前に比べ表面積が増える等、放熱能力が向上する。レーザ光源は可動部と非可動部に配置されているため、可動部の動きによって光学系が変化する。つまり、投影装置の使用時と未使用時で、光学系が変動する。変動する光学系において、光軸のずれを防ぐために、例えば光路を光ファイバ10でつなぎ、光学系の変動に強くする。また、可動部と非可動部それぞれにレーザ光源が配置されているため、レーザ光源からそれぞれのベースに対しての熱の伝わりやすさは常に一定となる。本構成にすることで、使用時には放熱能力が安定に向上し、かつ、携帯性に優れた投影装置が実現できる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1の概略構成を示す図である。投影装置は赤レーザ光源1、緑レーザ光源2、青のレーザ光源3を光源としている。ここで赤・緑・青のレーザ光源が配置されているベースは可動部21と非可動部20から構成され、ベースの材質は熱伝導率の高い金属、銅やアルミが望ましい。
図1に示すとおり非可動部20には緑レーザ光源2と青レーザ光源3が配置され、可動部21には赤レーザ光源1が配置されている。
レーザ光源から出射されたビームは、コリメートレンズ4にて略平行光となる。赤の略平行光となったビームは、図示しないファイバカップリングレンズにより、光ファイバ10に入射する。光ファイバ10は、ベースの可動部が動くことによって、テンションがかからないように、十分な長さがある。光ファイバの出射端は非可動部のベース20にて固定されており、光ファイバの先には、図示しないファイバコリメータレンズが配置され、略平行光が出射される。非可動部のベース20には略平行光となっている緑レーザ光源2と青レーザ光源3を合波する第1のダイクロミラー11と、さらに赤を合波する第2のダイクロミラー8が配置されている。ダイクロミラー8によって合波されたビームは、拡散光学素子であるレンチキュラーレンズ5に入射する。レーザを投影装置の光源に用いた場合、レーザの強い干渉性により、レーザスペックルと呼ばれる光のぎらつきが生じる。このぎらつきを防ぐため、レンチキュラーレンズが光軸に対し垂直な平面で振動するようにアクチュエータ9が配置されている。レンチキュラーレンズで拡散されたビームは、ビームを画像に変換する空間変調素子6に入射する。画像に変換されたビームは、投射レンズ7を通して、スクリーン等に投影される。
ベースには可動部21と非可動部20を、機械的に接続する駆動機構22を備えており、駆動機構22によって、機械的につながったまま可動部は動くことができる。
図1は可動部が動く前の状態であり、図2は可動部が動いた後の状態である。図2に示すとおり、可動部のベースはヒートシンクとしてフィンA32を備えており、非可動部のベースはフィンB33を備えている。可動する前はフィンAとフィンBが重なって収納され、図1に示すとおりフィンAB31となっている。
さらに、図2に示すとおり投影装置はファン30を備えており、ベースの駆動前後でファンにより流れる空気の流路断面積が変化する。
次に、ベースの駆動前後による放熱能力の変化について述べる。フィンの収納の具体的な形状について図3を用いて説明する。ベースの可動前には、フィンA32、フィンB33が重なって収納されており、密になっている。そのため、フィン間の空隙がほとんどない。さらにファン30を備えており、ファンがフィンへと風80を送る。
フィンの表面から空気への熱の伝わり易さは熱伝達率h[W/m2K]で表現され、流速が大きく影響する。hは一般的に流速U[m/s]の関数となり、流速の値が大きくなれば、hも大きくなる。フィンの温度上昇ΔT[℃]は、フィン表面積S[m2]と、発熱量Q[W]を用いて、以下の式となる。
ΔT=W/(S・h) ・・・・(式1)
すなわち、流速が上がるとhが大きくなり、フィンの温度上昇を小さくできる。ここで、流路の断面積を小さくすると、流量が同じならば、流速が上昇する。しかし、流路の断面積が小さくなればなるほど、通風抵抗と呼ばれる、流れに対する抵抗値が大きくなる。すなわち、流路の断面積には最適な値が存在し、小さくすればよいというものではない。
可動部と非可動部のベースに取り付けられているフィンは、可動前には、非常に密になっており、空隙がほとんどない。望ましくは、0.5mm以下の空隙がよい。フィンの厚みは、加工上の問題と、熱伝導の問題から、薄くても0.5mm程度は必要となる。図4に示すとおり、ベース63に取り付けられたフィン64の厚みが0.5mmの場合、可動後のフィンの空隙が1.5mmとなり、流速3m/sの風に対して、ほぼ最適な空隙になるからである。100ccから200ccの投影装置に取り付けることのできるファンのサイズは大きくても30角のものであり、また、流路のスペースを考えると、流速は2.5m/s〜3.5m/sになるからである。
可動前には、通風抵抗が非常に高く放熱能力が低いが、可動後には、通風抵抗がファンの性能に対して最適な値となり、放熱能力が上昇する。仮に、ベースが可動することはなく、流路の通風抵抗を最適な値にしようとすると、フィンの間隔を大きくしなければならず、フィンの表面積が小さくなる。その結果(式1)より温度上昇が大きくなり、放熱能力が低下する。
次に、レーザ光源の配置による放熱能力への影響を詳細に述べる。本実施の形態では、赤のレーザ光源が可動部に配置され、緑・青のレーザ光源が非可動部に配置されている。各レーザ光源はねじでベースに固定されている。ここで、レーザ光源の固定は、ばね、圧入、接着剤等、固定できるものであればよい。ただし、望ましくは、固定した後に、レーザ光源とベースを押し付ける応力が残存するものがよい。レーザ光源で発生した熱が、ベースへ伝わる際の、接触熱抵抗が小さくなるからである。
ベースに固定されたレーザ光源から発生した熱は、ベースへと伝わり、さらにベースからフィンへ伝わって、空気中へと放たれる。仮に、非可動部に全てのレーザ光源が固定されている場合、レーザ光源から発生した熱は、非可動部に取り付けられているフィンへ移動するものと、可動部へ移動するものがある。可動部へ熱が移動するには、可動する機構を伝わらなければならない。可動する機構部分は、機能上完全に固定することができないため、接触熱抵抗の値が大きく、また不安定なものとなりやすい。本構成では、その接触熱抵抗を考慮する必要がなく、ベースの可動後に、安定な放熱能力の向上を得ることができる。
しかし、本構成は、可動部と非可動部の両方にレーザ光源が配置されているため、ベースの可動部の動作前後で、レーザ光源の位置が変化する。これはつまり、光学系が変化することである。可動後に設計した光学系になるような構造にしていても、繰り返し可動することで、例えばレーザ光源の光軸等がずれてくることが考えられる。そこで、本構成は、可動部に配置されている赤のビームを光ファイバで導光している。光ファイバの入射端は赤のレーザ光源とともに可動部のベースに固定されており、出射端は非可動部のベースに固定されている。つまり、可動部が動いた場合でも、赤のレーザ光源と光ファイバの入射端は相対的に変化せず、また、光ファイバの出射端と非可動部も相対的に変化することがない。そのため、可動部が繰り返し動いた場合でも、光学系のずれの発生を防ぐことができる。
以上のことより、本構成にすることによって、可動後に放熱能力が安定に向上し、かつ、光学系のずれを防ぐことができる投影装置を実現できる。
また、図5に示すように、合波光学素子が光ファイバでもよい。赤レーザ用光ファイバ12、緑レーザ用光ファイバ13、青レーザ用光ファイバ14が、バンドルファイバ15によって合波されている。合波光学素子に光ファイバを使うことで、光軸のずれをより防ぐことができる。
光ファイバを曲げることにより、光路を自由に変えることができるため、光路のレイアウトの自由度が増える。
レーザ光が光ファイバによって導かれるため、光路中にゴミ等が入ることがなく、防塵性の高い光学系を実現できる。
レーザを光源としていることで、ファイバの結合効率が高く、光ファイバによる光利用効率の低下を防ぐことができる。
また、レーザ光源を、可動部と非可動部にそれぞれ配置する代わりに、空間変調素子と、レーザ光源を別々に配置する構成でもよい。空間変調素子は、それ自身の駆動のための電力による発熱や、全黒表示のときはビームを投射しないため、ビームの吸収による発熱もあり、熱源となりうる。空間変調素子による温度上昇が大きな影響を及ぼす場合には、レーザ光源ではなく、レーザ光源と空間変調素子をそれぞれ分けて、ベースに配置してもよい。
また、可動部と非可動部を有するベースは、可動部が複数個あってもよい。可動部を2つ有し、ベースが3つに分けられる場合は、赤・緑・青それぞれの光源を別々に配置することが可能であり、放熱能力の向上に有利である。
(実施の形態2)
図6は実施の形態2の概略構成を示す図である。本実施の形態は、拡散光学素子として、レンチキュラーレンズ5とロッドインテグレータ16を用いている。ロッドインテグレータは内部で全反射により均一なビームにしつつ導光していく光学素子である。ロッドインテグレータの入射径を略平行光にされたビームよりも十分大きく設計しておく。本構成にすることで、可動による光学系のずれを低減することができる。
また、可動部がスライド式でスライドする方向が、可動部のベースに配置されたレーザ光の光軸26に平行であることが望ましい。図6の可動部と非可動部を機械的につなぐ駆動機構24は、スライド方向が25である。レーザ光源から出射されたビームはコリメートレンズにて略平行光になっているので、光軸方向の距離が多少変化しても、光学系としてはほとんど影響がない。しかし、光軸に垂直に動く構造では、光軸のずれが起こりやすい。本構成により、可動による光学系のずれを低減することが可能となる。
また、温度に応じて、駆動機構24が自動的に動く構成でもよい。投影装置は温度センサを備え、温度上昇により駆動機構に備えられたモータが駆動する。光学系は、駆動前後のどちらもが、同じ投射光学系を満たす必要があり、駆動前後で導光光学素子および、合波光学素子に光ファイバを用いたものが特に望ましい。光ファイバを使えば、駆動前後の投射光学系が同じになるからである。本構成によって、雰囲気温度が低温の場合等、放熱能力の向上が不要な場合は、小型のまま投影装置を使用することが可能となる。
(実施の形態3)
図7は実施の形態3の概略構成を示す図である。図7は可動部と非可動部からなるベースと、レーザ光源の配置の概略を示したものであり、他の光学素子等は省略している。赤レーザ光源50が配置されている可動部61と、緑レーザ光源51、青レーザ光源52が配置されている非可動部62が駆動機構60によって、機械的につながっている。この時、駆動機構60が実質的な断熱材でできていることを特徴とする。ここで述べている実質的な断熱材とは、テフロン(登録商標)などの樹脂のことであり、熱伝導率が0.5[W/Km]以下のものである。駆動機構を断熱材で構成することにより、可動部と非可動部を熱的に分離することができる。分離していない場合は駆動機構を通して熱が伝わり、温度差が緩和される。それに比べ、分離している構成であると、可動部と非可動部により大きな温度差をつけることができる。図8に温度分布の違いを示す。左図が熱的に連結した場合であり、右図が熱的に分離した場合の温度分布である。温度上昇をできるだけ抑えたい光源があるときに本構成は有利となる。
赤レーザ光源は、緑や青に比べて温度特性が非常に悪い。温度上昇と共にパワーの出力低下、発振波長の長波長化等の問題をもっている。そのため、赤レーザ光源は特に温度上昇を防ぎたい光源であり、温度差をつけることのできる本構成は有効である。
また、赤レーザ光源は、可動部と非可動部のうち放熱能力が大きいベースに配置されていることが望ましい。赤レーザ光源の温度上昇の低減に有効だからである。
また、赤レーザ光源は可動部が駆動した後に、緑・青レーザ光源から、距離が離れる構成が望ましい。距離が離れることで、緑・青レーザ光源からの熱的な影響をさらに低減できるからである。
また、緑にSHGレーザ光源を用いる場合にも有効である。SHGレーザ光源は、SHG素子と呼ばれる波長変換素子を使って、適当な波長のレーザを出力することができる。
SHG素子の中で、周期状の分極反転を有するMgドープLiNbO3の組成のものや、MgドープのLiTaO3の組成のものは、変換効率は高いが温度に非常に敏感で、温度許容幅が狭い。そのため、SHGレーザ光源は、SHG素子の特性に起因する最適温度の値がある。SHGレーザ光源のみをペルチェ素子やヒータで温調する構造とすれば、SHGレーザの出力や効率を高くすることが可能となる。この時、本構成であると、熱的にベースが分離されており、片方のベースにSHGレーザ光源が配置されている場合、ペルチェ素子やヒータによる発熱が、他のレーザ光源に伝わらず、有効であるといえる。
また、SHG素子のみをペルチェやヒータで温調してもよい。SHGレーザ光源の内部でSHG素子のみを熱的に分離しておき、SHG素子のみをペルチェ素子やヒータで温調することで、SHGレーザ光源に使用されている赤外のレーザ光源等の熱をコントロールする必要がなく、効率的である。
また、レーザ光源の代わりにLEDを使用してもよい。レーザに比べてLEDは光利用効率が低下するが、単価が安いため、コストを抑えることが可能となる。
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
本発明の投影装置は、可動部と非可動部からなるベースのそれぞれにレーザ光源が配置され、可動部が動いた後に投影装置の放熱能力が向上する。これらの機能により、持ち運び時にはコンパクトで携帯性に優れ、かつ、使用時には明るい画像を投影する投影装置が実現可能となる。
さらに、ベースのレーザ光源から出射したビームは光ファイバで導光し、可動部の動きによる光学系のずれを防止する。そのため画質のよい投影装置が実現可能となる。
実施の形態の一例の概略構成を示す図 可動部が動いた後の状態を示す図 可動前後でのフィンの様子を示す図 可動前後でのフィンの空隙の変化を示す図 実施の形態の一例を示す図 実施の形態の一例を示す図 熱的に分離する構成を示す図 熱的に分離した場合の温度分布の差を示す図 本発明の概略構成を示す図
符号の説明
1 赤レーザ光源
2 緑レーザ光源
3 青レーザ光源
4 コリメートレンズ
5 レンチキュラーレンズ
6 空間変調素子
7 投射レンズ
8 ダイクロミラー
9 アクチュエータ
10 光ファイバ
11 ダイクロミラー
12 赤レーザ用光ファイバ
13 緑レーザ用光ファイバ
14 青レーザ用光ファイバ
15 バンドルファイバ
16 ロッドインテグレータ
20 非可動部ベース
21 可動部ベース
22 駆動機構
24 駆動機構
25 可動方向
26 コリメート光
30 ファン
31 フィンAB
32 フィンA
33 フィンB
50 赤レーザ光源
51 緑レーザ光源
52 青レーザ光源
60 断熱材からなる駆動機構
61 可動部ベース
62 非可動部ベース
63 ベース
64 厚さ0.5mmのフィン
80 ファンによる風の流れ

Claims (25)

  1. 複数の光源と、前記光源から出射した光を投影する投影手段と、前記光源が配置される可動部を有するベースと、を備え、前記光源は前記ベースの可動部と非可動部のそれぞれに少なくとも一つ以上配置されていることを特徴とする、投影装置。
  2. 前記光源から出射した光を空間的に変調する空間変調素子をさらに備え、
    前記投影手段は、前記空間的に変調された前記光を投影することを特徴とする請求項1記載の投影装置。
  3. 前記光源と前記空間変調素子が前記ベースの可動部と非可動部に別々に配置されていることを特徴とする請求項2記載の投影装置。
  4. 投影しない光を吸収する光吸収手段をさらに備え、
    前記光源と、前記空間変調素子と、前記光吸収手段の三つのうち少なくとも二つは、前記ベースの可動部と非可動部に別々に配置されていることを特徴とする請求項2記載の投影装置。
  5. 光を導光する導光素子をさらに備え、前記光源から出射された光が、前記導光素子により前記投影手段まで導光されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の投影装置。
  6. 前記導光素子が光ファイバであることを特徴とする請求項5に記載の投影装置。
  7. 前記光ファイバの入射端が、前記ベースの可動部と非可動部のどちらか一方に固定され、かつ、前記光ファイバの出射端が、入射端が固定されていないもう一方のベースに固定されていることを特徴とする請求項6に記載の投影装置。
  8. バンドルファイバをさらに備え、複数の光源から出射された光をバンドルファイバで合波していることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の投影装置。
  9. 光を拡散する拡散光学素子と、ロッドインテグレータをさらに備え、前記光源から出射された光は、前記拡散光学素子で拡散され、ロッドインテグレータに入射することを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の投影装置。
  10. 前記ベースの可動部と非可動部を機械的につなぐ駆動機構をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の投影装置。
  11. 前記光源の温度を測定する温度センサと、前記駆動機構を動かすアクチュエータと、をさらに備え、前記光源の温度に応じて前記ベースの可動部が自動的に動くことを特徴とする請求項10記載の投影装置。
  12. 前記駆動機構はスライド式であって、スライドする方向が、スライドすることにより前記光源の出射光の光路が変化する光の光軸と平行であることを特徴とする請求項11記載の投影装置。
  13. 断熱手段をさらに備え、可動部と非可動部を実質的に断熱していることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の投影装置。
  14. 前記駆動機構が断熱手段を備え、可動部と非可動部を実質的に断熱していることを特徴とする請求項10記載の投影装置。
  15. 前記駆動機構は熱伝導率0.5W/mK以下の材質でできていることを特徴とする請求項10記載の投影装置。
  16. 可動部を有する前記ベースは、放熱フィンをさらに備え、可動部の動作前後で表面積が変化することを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の投影装置。
  17. ファンをさらに備え、前記ベースの可動部の動作前後で、前記ファンによる流体の流路の断面積が変わることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の投影装置。
  18. ペルチェ素子をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の投影装置。
  19. コリメートレンズをさらに備え、前記光源から出射された光が、前記コリメートレンズで略平行光になっていることを特徴とする請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の投影装置。
  20. 前記光源がLEDであることを特徴とする、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の投影装置。
  21. 前記光源がレーザ光源であることを特徴とする、請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の投影装置。
  22. 前記レーザ光源が、赤・緑・青の3色のレーザ光源であって、可動部を有する前記ベースに配置された前記レーザ光源が、赤と緑・青に分けられていることを特徴とする請求項21記載の投影装置。
  23. 前記ベースの可動部が動いた後に赤レーザ光源の位置が緑・青レーザ光源から離れることを特徴とする請求項21または請求項22記載の投影装置。
  24. 前記レーザ光源の少なくとも1つは、波長変換素子を用いたSHGレーザ光源であって、前記SHGレーザ光源はペルチェ素子で温度制御されていることを特徴とする請求項21から請求項23のいずれか1項に記載の投影装置。
  25. 前記SHGレーザ光源は断熱手段を有し、SHG素子がSHGレーザ光源の中で熱的に分離されており、前記SHG素子がペルチェ素子で温度制御されていることを特徴とする請求項24記載の投影装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP4985865B1 (ja) * 2011-05-31 2012-07-25 パナソニック株式会社 画像表示装置
CN103438992A (zh) * 2013-08-16 2013-12-11 深圳中建院建筑科技有限公司 一种带有自动定位功能的照度计

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