JP2009286812A - ポリ乳酸樹脂射出成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ポリ乳酸樹脂と、芳香族スルホン酸ジアルキルの金属塩、リン酸エステルの金属塩、フェノール系化合物の金属塩、ロジン酸類の金属塩、芳香族カルボン酸アミド及びロジン酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機結晶核剤と、分子中に2個以上のエステル基を有し、エステルを構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜5モル付加した化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤とを含有するポリ乳酸樹脂組成物を、超臨界流体と接触させながら溶融混練する工程(1)、及び工程(1)で得られた溶融物を金型内に充填し、射出成形する工程(2)を有するポリ乳酸樹脂射出成形体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
工程(1):ポリ乳酸樹脂と、芳香族スルホン酸ジアルキルの金属塩、リン酸エステルの金属塩、フェノール系化合物の金属塩、ロジン酸類の金属塩、芳香族カルボン酸アミド及びロジン酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機結晶核剤と、分子中に2個以上のエステル基を有し、エステルを構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜5モル付加した化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤とを含有するポリ乳酸樹脂組成物を、超臨界流体と接触させながら溶融混練する工程
工程(2):工程(1)で得られた溶融物を金型内に充填し、射出成形する工程
本発明の工程(1)で用いるポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂と、芳香族スルホン酸ジアルキルの金属塩、リン酸エステルの金属塩、フェノール系化合物の金属塩、ロジン酸類の金属塩、芳香族カルボン酸アミド及びロジン酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機結晶核剤と、分子中に2個以上のエステル基を有し、エステルを構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜5モル付加した化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤とを含有する。
本発明に用いられる可塑剤としては、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性及び耐衝撃性に優れる観点から、酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3〜9モル付加物とのエステル、酢酸とジグリセリンのプロピレンオキサイド平均4〜12モル付加物とのエステル、酢酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が4〜9のポリエチレングリコールとのエステル等の多価アルコールのアルキルエーテルエステル、コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜4のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル等の多価カルボン酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルがより好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物の成形性、耐衝撃性及び可塑剤の耐ブリード性に優れる観点から、酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3〜6モル付加物とのエステル、酢酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が4〜6のポリエチレングリコールとのエステル、コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とジ又はトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルがさらに好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物の成形性、耐衝撃性及び可塑剤の耐ブリード性、耐揮発性及び耐刺激臭の観点から、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルが特に好ましい。
本発明の工程(1)は、ポリ乳酸樹脂、有機結晶核剤、可塑剤、更に必要によりその他成分を含有するポリ乳酸樹脂組成物を、超臨界流体と接触させながら溶融混練する工程である。
本発明の工程(2)は、工程(1)で得られた溶融物を金型内に充填し、成形する工程である。本発明のポリ乳酸樹脂射出成形体は、物性を維持する観点から無発泡であることが好ましい。従って、本発明のポリ乳酸樹脂射出成形体の発泡倍率は、1.5倍以下が好ましく、1.2倍以下がより好ましく、1.1倍以下がさらに好ましく、1.05倍以下がさらにより好ましい。本発明のポリ乳酸樹脂射出成形体の発泡倍率を低く抑える方法としては、得られる射出成形体の形状を薄肉に設計したり、射出速度を上げたり、或いは、金型内を超臨界流体の超臨界状態を保つために予め窒素ガスなどの気体で加圧しておくことが好ましく、金型内の圧力は超臨界流体の臨界圧力以上が好ましい。
ポリ乳酸樹脂組成物として、表1に示す本発明品(A〜H)及び比較品(a〜d)を、2軸押出機((株)池貝製 PCM-45)にて190℃で溶融混練し、ストランドカットを行い、ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットは、70℃、減圧下で1日乾燥し、水分量を500ppm以下とした。
*1:ポリ乳酸樹脂(トヨタ自動車(株)製、エコプラスチックU’zS−12)
(光学純度99.6%、重量平均分子量112000、残存モノマー173ppm)
*2:ポリ乳酸樹脂(トヨタ自動車(株)製、エコプラスチックU’zS−17)
(光学純度99.7%、重量平均分子量110000、残存モノマー327ppm)
*3:ポリ乳酸樹脂(三井化学(株)製、LACEA H−400)
(光学純度98.5%、重量平均分子量142000、残存モノマー1200ppm)
<有機結晶核剤>
*4:5−スルホイソフタル酸ジメチル二バリウム(合成品)
*5:リン酸エステルの金属塩((株)アデカ製 アデカスタブNA−21)
*6:2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム
*7:ロジン酸金属塩(荒川化学(株)製、パインクリスタルKM−1500)
*8:1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド(合成品)
*9:p−キシリレンビスロジン酸アミド(合成品)
<本発明における可塑剤>
*10:下記可塑剤の合成例で得られたコハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル(合成品)
*11:下記可塑剤の合成例で得られた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのトリエステル(合成品)
*12:下記可塑剤の合成例で得られたグリセリンにエチレンオキサイドを6モル付加させたトリアセテート(合成品)
*13:アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル(大八化学(株)製、DAIFATTY-101)
<比較の可塑剤>
*14:アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学工業(株)製、ATBC)
*15:アジピン酸ジイソノニル(和光純薬、試薬)
<加水分解抑制剤>
*16:ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(ラインケミージャパン(株)製 スタバクゾール1−LF)
*17:ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(日清紡績(株)製 カルボジライトLA−1)
<無機結晶核剤>
*18:タルク(日本タルク(株)製、MicroAceP−6)
<無機充填剤>
*19:ガラス繊維(日本電気硝子(株)製、ECS03T−187)
<難燃化剤>
*20:水酸化アルミニウム(日本軽金属(株)、BT703ST)。
1)コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステルの合成例
攪拌機、温度計、脱水管を備えた3Lフラスコに無水コハク酸500g、トリエチレングリコールモノメチルエーテル2463g、パラトルエンスルホン酸一水和物9.5gを仕込み、空間部に窒素(500mL/分)を吹き込みながら、減圧下4〜10.7kPa、110℃で15時間反応させた。反応液の酸価は1.6(KOHmg/g)であった。反応液に吸着剤キョワード500SH(協和化学工業(株)製)27gを添加して80℃、2.7kPaで45分間攪拌してろ過した後、液温115〜200℃、圧力0.03kPaでトリエチレングリコールモノメチルエーテルを留去し、80℃に冷却後、残液を減圧ろ過して、ろ液として、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステルを得た。得られたジエステルは、酸価0.2(KOHmg/g)、鹸化価276(KOHmg/g)、水酸基価1以下(KOHmg/g)、色相APHA200であった。
トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、及び触媒としてパラトルエンスルホン酸一水和物を、トリエチレングリコールモノメチルエーテル/1,3,6−ヘキサントリカルボン酸/パラトルエンスルホン酸一水和物(モル比)=4/1/0.02になるように反応容器に仕込み、減圧下で、温度120℃で脱水を行うことにより、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのトリエステルを得た。
オートクレーブに花王(株)製化粧品用濃グリセリン1モルに対しエチレンオキサイド6モルのモル比で規定量仕込み、1モル%のKOHを触媒として反応圧力0.3MPaの定圧付加し、圧力が一定になるまで150℃で反応した後、80℃まで冷却し、触媒未中和の生成物を得た。この生成物に触媒の吸着剤としてキョーワード600Sを触媒重量の8倍添加し、窒素微加圧下で80℃、1時間吸着処理をおこなった。さらに処理後の液をNo.2のろ紙にラジオライト#900をプレコートしたヌッツェで吸着剤を濾過し、グリセリンエチレンオキサイド6モル付加物(以下POE(6)グリセリンという)を得た。これを四つ口フラスコに仕込み、105℃に昇温して300rpmで攪拌し、無水酢酸をPOE(6)グリセリン1モルに対し3.6モルの比率で規定量を約1時間で滴下し反応させた。滴下後110℃で2時間熟成し、さらに120℃で1時間熟成した。熟成後、減圧下で未反応の無水酢酸及び副生の酢酸をトッピングし、さらにスチーミングして、POE(6)グリセリントリアセテートを得た。
合成例で得られたポリ乳酸樹脂組成物(本発明品A〜H及び比較品a〜d)のペレットを、シリンダー温度を200℃とした射出成形機((株)日本製鋼所製 Mucell 85トン)に供給して溶融するとともに、射出成形機のシリンダー部に設けられたガス導入口から、8MPaの圧力の超臨界流体(超臨界状態の二酸化炭素)を、表2に示す濃度で圧入し、スクリューで混練して溶融状態のポリ乳酸樹脂組成物と接触させた。射出成形機の先端に取り付けられた金型内の温度を表2に示す温度に保ち、この金型内に、超臨界状態の二酸化炭素と接触させた溶融ポリ乳酸樹脂組成物を、表2に示すような成形に必要な射出圧で射出成形し、結晶化が終了するまで保持してテストピース(150mm×30mm×厚み1mm)を得た。得られたテストピースの離型に必要な金型保持時間を下記の基準で評価した。これらの結果を表2に示す。
表2に示す成形条件において、各テストピースの変形がなく、取り出しが容易と判断されるまでに有する時間を、離型に必要な金型保持時間とした。
合成例で得られたポリ乳酸樹脂組成物(本発明品A、B)のペレットを用い、超臨界状態の二酸化炭素を圧入せず、表2に示す金型温度で、表2に示すような成形に必要な射出圧で射出成形すること以外は、実施例1と同様にしてテストピースを得、同様に離型に必要な金型保持時間を評価した。これらの結果を表2に示す。
合成例で得られたポリ乳酸樹脂組成物(本発明品A,E,H、比較品a、c)のペレットを用い、表3に示す金型温度、超臨界二酸化炭素濃度及び金型保持時間とすること以外は実施例1と同様にして射出成形した。得られたテストピース〔平板(70mm×40mm×3mm)、角柱状試験片(125mm×12mm×6mm)及び角柱状試験片(63mm×12mm×5mm)〕について、角柱状試験片(125mm×12mm×6mm)は曲げ試験及び熱変形温度を、角柱状試験片(63mm×12mm×5mm)は耐衝撃性を、平板(70mm×40mm×3mm)は相対結晶化度、耐ブリード性及び発泡倍率を、それぞれ下記の方法で評価した。これらの結果を表3に示す。
A:テストピースの変形がなく、取り出しが容易。
B:テストピースの変形が若干あり、取り出しが困難。
C:テストピースの変形が大きく、ランナー部から離れない。
角柱状試験片(125mm×12mm×6mm)について、JIS K7203に基づいて、テンシロン(オリエンテック製テンシロン万能試験機RTC−1210A)を用いて曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた。クロスヘッド速度は3mm/min。曲げ弾性率が高いほど剛性に優れていることを示す。
角柱状試験片(125mm×12mm×6mm)について、JIS-K7207に基づいて、熱変形温度測定機(東洋精機製作所製 B-32)を使用して、荷重0.45MPaにおいて0.025mmたわむときの温度を測定した。この温度が高い方が耐熱性に優れていることを示す。
角柱状試験片(63mm×12mm×5mm)について、JIS-K7110に基づいて、衝撃試験機(株式会社上島製作所製 863型)を使用して、Izod衝撃強度を測定した。
この強度が高い方が耐衝撃性に優れていることを示す。
射出成形後の平板(70mm×40mm×3mm)のテストピースを粉砕し、7.0〜8.0mg精秤し、アルミパンに封入後、DSC装置(パーキンエルマー社製ダイアモンドDSC)を用い、1stRUNとして、昇温速度20℃/分で20℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度−20℃/分で200℃から20℃まで降温し、20℃で1分間保持した後、さらに2ndRUNとして、昇温速度20℃/分で20℃から200℃まで昇温した。1stRUNに観測されるポリ乳酸樹脂の冷結晶化エンタルピーの絶対値ΔHcc、2ndRUNに観測される結晶融解エンタルピーΔHmを求め、得られた値から、下記式により相対結晶化度(%)を求めた。
<耐ブリード性>
射出成形後の平板(70mm×40mm×3mm)について、80℃のオーブンの中に1ヶ月間放置し、その表面における有機結晶核剤及び/又は可塑剤のブリードの有無を肉眼で観察した。
発泡倍率は下記式により求めた。
Claims (5)
- 下記工程(1)及び工程(2)を有するポリ乳酸樹脂射出成形体の製造方法。
工程(1):ポリ乳酸樹脂と、芳香族スルホン酸ジアルキルの金属塩、リン酸エステルの金属塩、フェノール系化合物の金属塩、ロジン酸類の金属塩、芳香族カルボン酸アミド及びロジン酸アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機結晶核剤と、分子中に2個以上のエステル基を有し、エステルを構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜5モル付加した化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤とを含有するポリ乳酸樹脂組成物を、超臨界流体と接触させながら溶融混練する工程
工程(2):工程(1)で得られた溶融物を金型内に充填し、射出成形する工程 - ポリ乳酸樹脂組成物が、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、有機結晶核剤を0.01〜5重量部、可塑剤を1〜50重量部含有する請求項1に記載のポリ乳酸樹脂射出成形体の製造方法。
- 超臨界流体を、ポリ乳酸樹脂組成物に対し0.1〜10重量%の割合で接触させる請求項1又は2記載のポリ乳酸樹脂射出成形体の製造方法。
- 工程(2)における金型温度が10〜90℃である請求項1〜3いずれか記載のポリ乳酸樹脂射出成形体の製造方法。
- 有機結晶核剤と可塑剤のポリ乳酸樹脂組成物に対する含有量比(有機結晶核剤/可塑剤)が1/10〜5/1である、請求項1〜4いずれか記載のポリ乳酸樹脂射出成形体の製造方法。
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