JP2009285775A - 操作インタフェースを含む部分が操作者に対して移動可能な装置を制御するための技術 - Google Patents

操作インタフェースを含む部分が操作者に対して移動可能な装置を制御するための技術 Download PDF

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Abstract

【課題】作業者の意図を考慮に入れた判断を行うことによって、パワーアシスト装置の動作を適切に制御するための技術を提供する。
【解決手段】操作者の手によって操作される操作インタフェースを備え、且つ少なくとも該操作インタフェースを含む部分が該操作者に対して移動可能である装置のための、制御技術であって、操作者の腕部までの距離を少なくとも計測しうる第1の距離センサと、該操作者の下体までの距離を少なくとも計測しうる第2の距離センサと、第1及び第2の距離センサによる計測値に対して所定の演算を行い、該演算の結果に基づいて第1の信号を出力する演算処理手段とを備え、前記所定の演算が、接近する操作インタフェースを操作すべく該操作インタフェースに操作者が手を差し伸べる際の、予め調べられたデータパターンを用いて、センサによる計測値を処理することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、パワーアシスト装置などの、操作インタフェースを含む部分が操作者に対して移動可能な装置を制御するための技術に関するものであり、例えば、移動機構を含む部分の衝突危険性をインテリジェントに予測して移動制御を行うことなどに利用することができる。
加齢化傾向の進む労働集約的な生産現場で働く熟練作業者に継続的な雇用機会と労働達成感を与えることを目的とし、本発明者らは、人間機械共働型パワーアシストシステム「スキルアシスト」の研究開発を行ってきた(非特許文献1)。スキルアシストは既に実用化されており、現在国内外の自動車生産ラインで活躍している。このスキルアシストによる作業をさらに効率化するために、パワーアシストのような手動制御モードだけでなく、これに自動搬送のような自動制御モードを組み合わせることが考えられる。例えば、遠隔地で組み立てられたインパネを、組立ライン上を移動する自動車のフレーム付近までスキルアシストが自動搬送することができれば、そのフレームに近い距離からはパワーアシスト制御で作業者の最終確認を伴う搭載作業を行うことができる。このような自動制御モードと手動制御モードとの組み合わせはシステムとマンパワーの効率的な配置と関わるため、コストの観点からも極めて望ましいことであり、関連研究として著者らは既にスキルアシストが自動から手動へモードをなめらかに切り換えるための制御手法を提案している(非特許文献2)。
図1に、上に紹介したスキルアシストの概要を示す。スキルアシスト100は、前後移動方向に設けられるレーン109a,電動アクチュエータ102aを介してレーン109aに取り付けられる、左右移動方向のレーン109b,電動アクチュエータ102bを介してレーン109bに取り付けられる、上下移動方向のレーン109c,電動アクチュエータ102cを介してレーン109cに取り付けられる支柱114,支柱114に固定されるエンドエフェクタ104を有する。エンドエフェクタ104は、主に、パワーアシストを必要とする重量物を取り付けるための要素である。電動アクチュエータ102a〜102cは、自動又は手動制御により作動することができ、エンドエフェクタ104を前後・左右・上下各方向に移動させることができる。
支柱114には台116を介して力覚センサ108が設置され、力覚センサ108には操作ハンドル106が設けられている。手動制御モードにおいて、操作者が、操作ハンドル106を握ってエンドエフェクタ104を動かそうと力を加えると、その力はハンドル106の根元に装備された力覚センサ108に検出され、力覚センサ108のセンサに基づいて電動アクチュエータ102a〜102cが作動し、エンドエフェクタ104を動かす。また、レーン109a〜109cには移動量センサ110a〜110cが設けられており、エンドエフェクタ104の移動量を検出して電動アクチュエータ102a〜102cへ適切なフィードバックをかける。移動量センサとしては、リニアエンコーダやロータリーエンコーダを用いることができる。エンドエフェクタ104には、例えば数10kg〜数100kgといった重量物を取り付けることができる。操作者は、ハンドル106を握って操作するだけで、エンドエフェクタ104に取り付けられた重量物を軽々と動かすことができる。
自動制御モードにおいて、スキルアシスト100は、エンドエフェクタ104に取り付けられた部品を操作者へ自動制御により搬送する。つまり、例えば、制御器から生成された目標位置と目標速度に従って電動アクチュエータ102aが動作することにより、エンドエフェクタ104がレーン109aに沿って移動し、遠方の作業区域から部品が操作者へ運ばれる。操作者が力覚センサに接触すると、スキルアシスト100は自動制御モードから手動制御モードへ切り換わり、以後電動アクチュエータ102a〜102cは、力覚センサ108及び移動量センサ110a〜110cの出力に基づいて動作する。また、スキルアシスト100には緊急停止スイッチ112が設けられており、緊急の際に押すことで、スキルアシスト100の動作をいつでも停止することができる。自動制御と手動制御のモード間のなめらかな切り換えは、やはり発明者の提案による非特許文献2の方法に従い、非定常インピーダンス制御則をスキルアシストに適用することで実現する。手動制御モードでは、制御器がエンドエフェクタの仮想インピーダンスを自動的に調整することで、重量部品の操作が可能となる(非特許文献1)。
自動制御モードではスキルアシストが重量物を自動搬送することで作業の効率化を図ることができる。その反面、操作者に向って移動するため、操作者のエラーによりモードが正常に切り換わらずスキルアシストが操作者に衝突し重篤な傷害を負わせる可能性がある。そこで、産業用ロボットの安全の観点からこのモード切り換えを考えると、スキルアシストは操作者との衝突を回避するために安全距離を保った場合のみ自動制御モードが許され、その安全距離以下でスキルアシストが操作者に接近した場合、もしくは距離計測そのものが失敗した場合には必ず停止するように構成されることが好ましい(非特許文献3)。安全距離以下の接近により一旦停止した状況では、手動制御モードは、操作者がイネーブルスイッチを押すことではじめて可能されるべきである。
このように、自動制御を伴うパワーアシスト装置は、安全面に十分に配慮した設計がなされるべきであり、操作者とパワーアシスト装置との関係が危険な状態になった場合は、装置の減速や停止、自動制御モードから手動制御モードへの切り換えなど、しかるべき処置をとるべきである。ところが、操作者がパワーアシスト装置を操作するにはどうしてもパワーアシスト装置を直接触って操作しなければならないことから、たとえ操作者とパワーアシスト装置との距離を計測しても、操作者とパワーアシスト装置とが接近している状況が、操作を行うために生じている状況なのか、あるいは操作者の不注意により意図せずにパワーアシスト装置の接近を許している状況なのかを判断することができなかった。従って従来は、安全性を確保するために、一律に減速や停止等の制御モードの切り換えといった処置を取らざるを得なかった。しかしながら、これらの処置を繰り返すことは、生産性の観点からみればエネルギーと作業時間の多大な損失であることは明白である。
自動制御を伴うパワーアシスト装置を使用する上での安全面を考慮した研究として、Schraft らが行った重量部品組み立て用人間協働型ロボットの研究がある(非特許文献4)。この研究では自動区域、搬送区域、組み立て区域と3 つの区域に従ってロボットの動作を厳密に区別しており、センサライトカーテンなどにより危険区域をあらかじめ設定することで自動モード運転における安全距離を維持している。しかしながらSchraft らの研究には、作業者の意図を判断してパワーアシスト装置の動作を制御するという思想は窺うことが出来ない。
Yamada, Y., Konosu, H., Morizono, T., and Umetani, Y., "Proposal of Skill-Assist: A System of Assisting Human Workers by Reflecting Their Skills in Positioning Tasks", Proceedings of IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics, part IV, pp.11-16, Tokyo, Japan, 1999. Lee, S., Yoon, S., Hara, S., and Yamada, Y., "Smooth Switching Control for Transferring from Automatic Traveling Mode to Power Assist Mode of Skill-Assist", IEEJ Transactions on Electrical and Electronic Engineering, vol.2, no.4, pp.479-481, 2007. ISO Technical Committee 184 / Subcommittee 2, ISO10218-1:2006, Robots for Industrial Environments -- Safety requirements -- Part 1: Robot, ISO, 2006. Schraft, R., D., Meyer, C., Parlitz, C., and Helms, E., "PowerMate - A Safe and Intuitive Robot Assistant for Handling and Assembly Tasks", Proceedings of the 2005 IEEE International Conference on Robotics and Automation, pp.4085-4090, Barcelona, Spain, 2005.
このような背景の下、本願の発明者は、作業者の意図が考慮された判断を行うことを可能にすることによって、パワーアシスト装置の動作を適切に制御するための技術を開発しようとした。ただし、かかる技術開発の結果誕生した発明は、上記の課題に対する解決策を提供するのみならず、他の技術的課題に対する解決策をも提供しうるものである。すなわち、以下の説明から諒解可能なように、本発明は、パワーアシスト装置の制御に適した実施形態のみならず、他の様々な装置の制御に適した実施形態をも含むものである。
本発明は、パワーアシスト装置のような、操作者の手によって操作される操作インタフェースを備え、且つ少なくとも該操作インタフェースを含む部分が該操作者に対して移動可能である装置のための、制御技術を提供するものである。この制御技術は、
・ 前記装置と、該装置の操作者の腕部との距離を少なくとも計測しうるように配される第1の距離センサと、
・ 前記装置と前記操作者の体の下部との距離を少なくとも計測しうるように配される第2の距離センサと、
・ 前記第1及び第2の距離センサによる計測値に対して所定の演算を行い、該演算の結果に基づいて第1の信号を出力する演算処理手段と、
を含み、さらに前記所定の演算が、接近する操作インタフェースを操作すべく該操作インタフェースに操作者が手を差し伸べる際の、前記第1及び第2の距離センサまたはこれらの同等物の予め調べられた出力データパターンを用いて、前記第1及び第2のセンサによる前記計測値を処理することを特徴とする。設計者は、上記第1の出力信号を、警報の生成や移動部分の減速、移動停止など、様々な目的に使用するように上記装置を設計することができる。
以下、上記の構成が、なぜ本発明の目的を達成しうるのかを説明する。
図1に例示されるようなパワーアシスト装置が自動制御で移動中であるとき、操作者が手動制御に切り換えようとするならば、その操作者はパワーアシスト装置の操作インタフェース(例、ハンドル106)へ手を差し伸べる行為を行うであろう。本願発明者はこの動作に着目した。以下、操作者が操作インタフェースに手を差し伸べる行為をリーチングと呼ぶことにする。このリーチングをモニタリングするため、本願発明者は、パワーアシスト装置と操作者の腕部との距離を計測するための第1の距離センサ、及び、パワーアシスト装置と操作者の下体との距離を計測するための第2の距離センサを用いることとした。
図2は、図1のパワーアシスト装置(スキルアシスト100)を、本願発明に従って変更したパワーアシスト装置の例(スキルアシスト200)を描いた図である。図1において点線で囲まれた領域120が、図2において点線で囲まれた領域220に対応する。スキルアシスト100とスキルアシスト200の外観上の相違は、この領域120に係る構造と領域220に係る構造の違いのみであるので、図2においては領域220以外の部分の描画を省略している。また、図2において、図1と同様の要素は同一の符号を付してそれを表している。
図2に描かれるスキルアシスト200において、力覚センサ108は、図1の先行技術のように台116に設置されるのではなく、台116の上方に位置する支柱114に設けられた別の台204上に設置される。そして、少なくとも操作者の腕部までの距離を計測するための第1の距離センサ206が、力覚センサ108の直下に位置するように、台116に設置される。さらに、台116の下面に、操作者の体の下部までの距離を計測するための第2の距離センサ208が取り付けられる。
後に示される実験データを取得した時は、第1及び第2の距離センサ206,208として、北陽電機株式会社製のレーザレンジセンサ(Laser Range Sensor;以下LRSと表記する場合がある)URG-04LXが用いられた。第1の距離センサ206は、操作者の上体をスキャンすることで操作者の存在を検知すると共に、特に、スキルアシスト100のモード切り換え行為に伴う操作者の腕の動きを検知する。第2の距離センサ208は、特に操作者の体の下部までの距離を検出すべく、スキャン方向が斜め下方向になるように取り付けられる。スキャン方向が斜め下方向になるように取り付けるのは、操作者の足元から胴体をスキャンすることで死角なくし、常時操作者の存在を検知するためである。
予備実験から上体検出用のレーザレンジセンサ206の検出範囲はスキルアシスト100の走行方向(図1における前後移動方向)に対して左方向−4°〜右方向8°をカバーするように設定した。ここで、0°の軸は操作者の右腕とセンサ206を結ぶ軸にほぼ一致する。図2Aの中段のイラストを参照されたい。センサ206の配置を図2Aのようにしたのは、操作者の右腕の動きを確実に捉えるためである。また、下体検出用のレーザレンジセンサ208の検出範囲は広く45°をカバーするように設定した。なおこの例では、センサ208に対する0°の軸は、センサ206に対する0°の軸とほぼ同一平面上に位置している。図2A下段のイラストを参照のこと。さらに、操作者がしゃがんだ状態でスキルアシスト100に衝突する可能性を考慮し、下体検知用レーザレンジセンサ208は、床面に対して25°の傾きで取り付けられた。図2A上段のイラストを参照のこと。また図2も参照のこと。
レーザレンジセンサ206,208のスキャンデータから時系列的な特徴を効率よく抽出するため、本発明者は、単位時間に得られた距離データの最小値(最小距離)に着目した。図3は、自動制御により操作者へ接近しつつあるスキルアシスト(具体的にはエンドエフェクタ104やハンドル106などを含む部分)に対してリーチングが行われたときのスキルアシストの移動量と、上体と下体のスキャンデータから抽出した最小距離の時間変化を測定したデータをグラフ化したものである。ここで上体までの最小距離データと比較するため、下体までの最小距離データは床面に対して写像した距離で示している。このデータによると、スキルアシストの接近により下体までの最小距離は比較的なだらかに減少しているのに対し、上体での距離に関してはリーチングにより急激な変化がおきている箇所(符号300で示した箇所)が確認できる。
実験から最小距離データの特徴は以下のようにまとめられた。
(1)リーチングが無ければ2つの最小距離データは共に類似した減少傾向を見せる。
(2)リーチングが行われると上体までの最小距離データが急激に減少する箇所が現れる。
(3)操作者が正しい位置で待機しなければ最小距離データに乱れが生じる。
すなわち、操作者が、自動制御で接近中のパワーアシスト装置を手動制御に切り換えようと意図してリーチングを行った場合((2)の場合)は、図3に示されるような特徴が現れるが、不注意による接近を許してしまったなど何らかの理由で手動制御に切り換えようとはしない場合((1)の場合)や、操作者の体勢が正常なものではない場合((3)の場合)は、図3に示されるような特徴が見られない。従って、図3の特徴が現れるか否かは、接近するパワーアシスト装置に対する操作者の操作意図に関連している。
このような特徴は、本願発明者により初めて発見されたものである。そして、この特徴を利用することにより、接近するパワーアシスト装置に対する操作者の操作意図を判定することが可能となり、ひいてはかかる判定結果を利用した制御方法が実現されることになる。
図4は、リーチングが行われ、自動制御から手動制御モードへの切り換えが正常に行われた際に計測された距離データを2次元軌道で示したものである。図中の矢印は時間経過による軌道の変化方向を示す。この計測では操作者がスキルアシストの走行方向(図1における前後移動方向)に対して胴体の方向を正面に向けた場合、横に向けた場合、変化させた場合など、計12回にわたり最小距離を測定した。
図4のデータから、操作者の姿勢の変化にはさほど影響されず、軌道はほぼ類似した経路を辿ることが分かる。従って、本願発明者による操作意図推定は、高い安定性を有しうることが理解できる。いずれの場合でも、上体検知用LRS206から得られる最小距離が約0.5mの付近で、操作者が操作ハンドル106にリーチングすることにより、その後に最小距離が急激に減少することが示されている。
以上の説明で明らかなように、本願発明者が明らかにしたところによれば、操作者の上体、特に腕部との距離を少なくとも計測するための第1の距離センサと、操作者の体の下部との距離を少なくとも計測するための第2の距離センサとを用いると共に、リーチングの際のセンサ出力データパターンを予め調べておき、この出力データパターンを利用して上記第1及び第2の距離センサの計測値を処理することにより、操作者の操作意図を考慮に入れた制御を実現することができる。
例えば、操作者とパワーアシスト装置とが接近している状況を検知した時、それが手動操作を開始しようとしているために生じている正常な状況なのか、操作者の不注意により意図せずにパワーアシスト装置の接近を許している危険状況なのかを判定することができ、その判定結果に基づいて、パワーアシスト装置の移動速度の調節や緊急停止などの制御を従来よりも適切に行うことができる。従って本発明は、装置の無駄な減速や停止の頻度を減らし、電力や作業時間の損失を抑え、生産性を高めるといった目的に資することができる。
そして、ここで開示された制御技術が、「移動中の機器の操作インタフェースへ手を差し伸べる」という行為における距離の変化パタンを利用するものであることから、本明細書で開示される技術思想は、パワーアシスト装置の制御にのみ用いられうるのではなく、操作者の手によって操作される操作インタフェースを備え、且つ少なくとも該操作インタフェースを含む部分が該操作者に対して移動可能である装置一般に対して、適用が可能なものである。
本発明の具現化のいくつかの例は添付の特許請求の範囲に特定されている。しかしながら、本発明の具現化のバリエーションは、特許請求の範囲に特定されるものに限らず、本願の特許請求の範囲や明細書、図面および当業者の通常の技術的能力に基づいて、当業者が想定可能な全てのものを含むことに留意されたい。
次に、以上に示された新たな知見を用いて制御のための判断を行うための、一例を紹介する。この例では、先に図4を用いて示された、正常なリーチングが行われた時の最短距離データのパタンを隠れマルコフモデルによってモデル化し、このモデルに基づいたアルゴリズムによって、図2に描かれる実施例(スキルアシスト200)の衝突予測を行う。
〔隠れマルコフモデル〕
モード切り換え時に行われるリーチングをモニタリングし、安全な状態と非安全な状態を予測するために、本実施例では隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model;HMM)を用いる。HMM はノイズなどによる学習パタンの乱れに対してロバストであり、識別されたパタンに至るまでの履歴をトレースできるデータ処理構造を含んでいることから本発明におけるパタン識別手法として適合していると考えられる。(参考:Yamada, Y., Morizono, T., Umetani, Y., and Konosu, H., "Working Toward a Dependable Skill-Assist with a Method for Preventing Accidents Caused by Human Error", IEEE Robotics and Automation Magazine, pp.34-45, vol.11, issue 2, 2004.)
あるパタンh に対するHMM は以下のように表すことができる。
Figure 2009285775
ここで、
Figure 2009285775
は状態i番目から状態j (1≦i, j≦N)への状態遷移確率の分布、
Figure 2009285775
は状態jおいてk番目の観測信号vkが出力される確立分布、
Figure 2009285775
は初期状態の確率分布である. これらのモデルパラメタはBaum-Welchのアルゴリズムにより逐次算出される。(参考:Levinson, S. E., Rabiner, L., R., and Sondhi, M., M., "An Introduction to the Application of the Theory of Probabilistic Functions of a Markov Process to Automatic Speech Recognition", Bell System Technical Journal, vol. 62, no. 4, pp.1035-1074, 1983.)
結果的にモデルλhで観測:
Figure 2009285775
(t は観測時刻.τは最終観測時刻を示す)が出力される確率は、以下のように算出される。
Figure 2009285775
ここで、
Figure 2009285775
である。ここでsiはi番目の状態、stは時刻tでの状態を示す。αtは下記の漸化式により算出される。
Figure 2009285775
Figure 2009285775
判別の基準になる値としては観測データが出力される確率である式(2)を用いるが、この計算を逐次コンピュータで実行するとアンダーフローを起こしやすいため実際にはLog 関数によりスケーリングすることで値の更新を行う。
〔学習データの計測〕
先に説明したように、図4は、リーチングが行われ、自動制御から手動制御へのモードの切り換えが正常に行われた際に計測された最小距離データを2次元軌道で示したものである。計測は、操作者がスキルアシストの走行方向に対して胴体の方向を正面に向けた場合、横に向けた場合、変化させた場合など、計12回にわたり行われた。図4に示されるように、2次元軌道は操作者の姿勢の変化にはさほど影響されず、ほぼ類似した経路を辿る。そこで、図4のデータに基づき、リーチングモニタリングに用いるHMMを学習させるための、最小距離データの2次元軌道に基づき定義した安全状態s1と非安全状態s2 を定義する。定義の様子を図5に示す。図4と対比して参照されたい。2次元軌道を利用することで,切り換えタイミングに依存することなく学習に必要な状態の定義が可能となり,定義の作業自体も容易となる。安全状態s1 はスキルアシストが操作者から十分離れている場合、あるいは操作者により自動から手動へ制御モードが切り換わった場合をその条件とする。2次元軌道が状態s1を離脱すると、観測データの出力確率、つまり学習されたパタンである確率は低い値を示すことになる。
〔アルゴリズムの検証〕
上に定義された状態s1、s2、及びこれらに基づいて学習されたHMMに基づき、本実施例の衝突ハザード予測アルゴリズムをスキルアシストの制御モード切り換え実験により検証した。その結果を以下に紹介する。
図6は、操作者が定位置に待機している状態で、接近するスキルアシスト200(より正確にはエンドエフェクタ104)の操作ハンドル106に触れることにより、力覚センサ108がそれを感知し、自動制御モードから手動制御モードへ切り換えが正常に行われた場合の実験結果を示している。図7は、操作者が同じ位置に待機しており、エンドエフェクタ104が操作者の方へ移動してくるものの、操作ハンドル106にリーチングすることなく、スキルアシスト200が自動制御モードのまま衝突直前までに至る場合のデータを示す。
図6Aと図7Aは、それぞれ上段からエンドエフェクタ104の変位と速度、操作者までの最小距離、Log関数によりスケーリングされた観測データの出力確率、判定結果、および力覚センサ108のデータと制御モードを表す。図6Bと図7Bは、それぞれ2つのレーザレンジセンサ(206,208)により計測された最小距離データの2次元軌道を示す。実験時は、安全を確保するために、操作者はスキルアシスト200のレーンに設けられた走行方向の機械リミッタ外側の定位置で待機させた。レーザレンジセンサ206及び208のデータは非同期処理により約0.1sで制御ループ取り込まれており、制御ループは0.005sの周期で処理を行う。衝突ハザード予測アルゴリズムの判断はスケーリングされた確率により行い、予備実験によって−25以上を安全、−25未満から−35以上を警告、−35未満を危険と閾値の設定を行った。判断結果は1、0、−1の整数で表し、それぞれ安全、警告、危険を示す。またスキルアシストの制御モードは0を自動制御モード、1を手動制御モードとする。
図6Bの場合においては、2次元軌道が学習された軌道に類似した経路を辿っていることから、図6Aのスケーリングされた出力確率は、多少の変動はあるものの、急激な変化は無く安全の判断を維持している。これに対して図7Bでは、操作者が操作ハンドルにリーチングしなかったことで、軌道が時間の経過により学習された軌道とは異なる経路をたどり、図7Aに示す確率が負の方向に大きく変化している。この結果、スキルアシスト200から操作者までの距離約0.3m手前で警告、約0.25m手前で危険の判断を下していることがわかる。
このように、本願発明者の提案に従えば、「操作者が操作意図を有していないのにスキルアシスト200の接近を許している」という状況を機械が判断することが可能となる。かかる判断が可能となれば、その判断結果を利用して、警報ブザーを鳴動させたり、電動アクチュエータ102aを制御してエンドエフェクタ104を緊急停止させたりするなどの制御を行うようにパワーアシスト装置を設計することは、当業者にとっては容易であろう。一方、スキルアシスト200が接近しても危険ではない、すなわち操作者がリーチングを行っており、手動制御を行う意図を有しているならば、操作者は十分な注意力をもってエンドエフェクタ104の接近に対処しているとして、エンドエフェクタ104の減速を行わないか、あるいは必要最小限の減速のみを行うなどのように制御することができるだろう。従って、本願発明者の提案によれば、装置の不要な減速や停止を最小限に抑えることができ、エネルギーと作業時間の損失を防ぎ、生産性を向上させることが可能となる。
当業者であれば以上の説明から容易に想像できるように、本願発明者の提案に係る衝突予測は、2つのセンサ206,208を用いる他は、基本的にソフトウェア処理によって行うことができる。従って、本願発明者の提案に係る衝突予測を行うためのハードウェア構成を模式的に描くと、図8のようになる。
図8において、符号800は、必要なハードウェア構成の全体を概念的に表している。メモリ804には、上に説明したような、実験データによって学習されたHMMに基づく判定アルゴリズムが格納されており、CPU802は、当該アルゴリズムに従ってレーザレンジセンサ206,208から出力されるデータの処理を実行する。メモリ804には、レーザレンジセンサ206,208の測定間隔を定めるなど、測定を制御するためのプログラムが格納されていてもよい。CPU802は、当該プログラムの命令に従ってセンサ206,208の動作を制御する。判定アルゴリズムが所定の結果、例えば「要警告」「危険」などに対応する結果を得た場合は、CPU802は、適当な出力信号806を生成する。この出力信号806は、例えばスキルアシスト200の警報機の作動や、電動アクチュエータ102a〜cの減速・停止・加速などのために利用されることができる。
実施形態によっては、CPU802やメモリ804は、スキルアシスト200が有するCPUやメモリと同一のものであることができる。またむしろ、そのような実施形態の方が多いと思われる。現在の装置は大抵CPUやメモリを備えているので、すると本実施例に係る衝突予測方式は、上体用と下体用の2つの距離センサを追加し、必要なソフトウェアをインストールするだけで、既存の装置に適用することが原理的には可能である。従って本発明は、その実施形態によっては、実装が極めて容易であるという利点を有する。またこのことから、本発明の実施形態は、上記のアルゴリズムを含むソフトウェアが含むことが理解できるだろう。
ただし、距離センサを設置するに当たっては、一方のセンサが操作者の上体、特に腕部までの距離を計測可能なように設置する必要がある。また、他方のセンサは操作者の体の下部までの距離を計測可能なように設置しなければならない。これらのセンサの配置は、必要な計測を行うことができるのであれば、特に制限されない。しかしながら、本発明による制御技術は、移動中の機器の操作インタフェースへ手を差し伸べる」という行為における腕部(又は手)までの距離の変化パタンを利用するものであることから、上体用センサの設置位置は、操作インタフェースの近傍であると便利である。これが、図2の実施例において、LRS206が操作ハンドル106の直下に設置されていたことの理由である。
また、下体用センサは、操作者の足元から胴体をスキャンすることで死角なくし、常時操作者の存在を検知することを可能にするため、スキャン方向が斜め下方向になるように取り付けられることが好ましい。このような設置方法を採用すれば、操作者がしゃがんだ状態であっても、操作者の存在を検知することができるだろう。
メモリ804に格納されるソフトウェアは、センサ206,208の出力データに対して、上述の操作者意図推定に基づく衝突予測を行うだけでなく、単純に、これらのセンサの少なくとも一方の出力信号から装置と操作者の距離を計測し、その計測結果に応じて所定の信号を出力するように、CPU802に命令するものであってもよい。例えば、上述の操作者意図推定に基づく衝突予測の結果が如何なるものであっても、装置と操作者との距離が一定以下になれば、停止信号を出力するようにプログラムすることができるだろう。従って、このような実施形態におけるCPU802の出力信号は、上記の出力信号806と同じ信号であってもよいし、違う信号であってもよい。
何度も説明してきたように、本発明の実施形態は、操作者の上体、特に腕部までの距離を計測可能なセンサと、操作者の体の下部までの距離を計測可能なセンサを用いる必要がある。しかし、上体及び下体までの距離を計測できればよいので、センサの数には特に制限はない。すなわち、必要な計測ができるのであれば、図8におけるセンサ206,208は同一の筐体に収まる1つのセンサ装置であってもよいし、逆に、センサ206,208の少なくとも一方が、物理的に異なる複数のセンサであっても構わない。本発明の範囲には、かかる実施形態が含まれることを理解されたい。
上体用と下体用に2台以上のセンサを用いる場合、通常の条件では、これらの出力は互いに類似した時間的変化を示すであろう。従って、センサ206の出力とセンサ208の出力の時間的変化が大きく異なる場合は、どちらかのセンサが異常をきたしている可能性があると言える。そこで、メモリ804に格納されるソフトウェアは、センサ206と208の出力データを比較し、これらの相違が大きい時に第3の信号を出力するように、CPU802に命令するものであってもよい。第3の信号は、例えば、センサ異常を操作者に知らせるために利用されることができる。
以上、本発明の理解に資するために本発明の実施形態の例を詳細に説明したが、本発明の実施形態は以上に止まるものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱せずに、様々な実施形態を取りうるものであることは言うまでもない。図2に描かれた実施形態は、装置の一部が自動制御により移動しうるパワーアシスト装置であったが、本発明は、タイヤ等で自走しうるパワーアシスト装置(例えば特開2005−59640の図1に描かれるようなパワーアシスト装置)に対しても、むろんのこと適用可能である。前述のように、本発明は、一般に、操作者の手によって操作される操作インタフェースを備え、且つ少なくとも該操作インタフェースを含む部分が該操作者に対して移動可能な様々な装置に対して適用可能である。操作インタフェースも、図2の操作ハンドル106のように棒状のものに限らず、自動車のステアリングのようなホイール形状であったり、バイクのステアリングのような横棒式のものであったり、レバー状のものであったり、プッシュボタンが並んだ操作パネルのようなものであったりしてもよい。とにかく、操作者の手によって操作される操作インタフェースであることが重要である。
前述の実施例では、正常なリーチングが行われた時のセンサ出力データパターンによって学習させた隠れマルコフモデルを用いて、センサの計測値を処理していたが、本発明の実施形態はそのような方法に限定されるものではなく、当業者が通常知っている、センサの出力データパターンを評価可能な如何なる方法を用いる場合も、本発明の実施形態に含まれうることは理解されるべきである。
先行技術におけるパワーアシスト装置の一例を説明するための図である。 本発明の実施例となりうるパワーアシスト装置の一例を説明するための図である。 スキルアシスト200におけるレーザレンジセンサ206,208の走査範囲を説明するための図である。 ある実施例において、リーチングが行われたときのパワーアシスト装置の移動量と、上体と下体のスキャンデータから抽出した最小距離の時間変化を測定したデータをグラフ化した図である。 ある実施例において、リーチングが行われ、自動制御から手動制御へのモードの切り換えが正常に行われた際に計測された距離データを2次元軌道で示した図である。 図4のデータに基づく安全状態s1と非安全状態s2 の定義例。 説明された実施例の性能検証例。 説明された実施例の性能検証例。 説明された実施例のハードウェア構成例。
符号の説明
100 スキルアシスト
102a-102c 電動アクチュエータ
104 エンドエフェクタ
106 操作ハンドル
108 力覚センサ
109a-109c レーン
110a-110c 移動量センサ
112 緊急停止スイッチ
114 支柱
116 台
120 領域
200 スキルアシスト
204 台
206 上体用距離センサ
208 下体用距離センサ
220 領域
802 CPU
804 メモリ
806 出力信号

Claims (16)

  1. 操作者の手によって操作される操作インタフェースを備え、且つ少なくとも該操作インタフェースを含む部分が該操作者に対して移動可能な装置のための、制御システムであって、
    ・ 前記装置と、該装置の操作者の腕部との距離を少なくとも計測しうるように配される第1の距離センサと、
    ・ 前記装置と前記操作者の体の下部との距離を少なくとも計測しうるように配される第2の距離センサと、
    ・ 前記第1及び第2の距離センサによる計測値に対して所定の演算を行い、該演算の結果に基づいて第1の信号を出力する演算処理部と、
    を備え、前記所定の演算は、接近する操作インタフェースを操作すべく該操作インタフェースに操作者が手を差し伸べる際の、前記第1及び第2の距離センサまたはこれらの同等物の予め調べられた出力データパターンを用いて、前記第1及び第2のセンサによる前記計測値を処理することを含む、制御システム。
  2. 前記予め調べられた出力データパターンを用いて前記第1及び第2のセンサによる前記計測値を処理することは、前記予め調べられた出力データパターンで学習させた隠れマルコフモデルを用いて、前記第1及び第2のセンサによる前記計測値を処理することである、請求項1に記載の制御システム。
  3. 前記演算処理部は、前記所定の演算とは別に、前記第1及び前記第2の距離センサの少なくとも一方のセンサの出力信号から、前記装置と前記操作者との距離を判断し、該判断に基づいて第2の信号を出力するように構成される、請求項1又は2に記載の制御システム。
  4. 前記演算処理部は、前記第1及び第2の距離センサの一方の出力信号と他方の出力信号とを比較し、これらの相違が大きい時に、第3の信号を出力するように構成される、請求項1から3のいずれかに記載の制御システム。
  5. 操作者の手によって操作される操作インタフェースを備え、且つ少なくとも該操作インタフェースを含む部分が該操作者に対して移動可能な装置であって、請求項1から4のいずれかに記載の制御システムを備える、装置。
  6. 前記第1の距離センサは前記操作インタフェースの近傍に設置される、請求項5に記載の装置。
  7. 前記第2の距離センサは斜め下方向にスキャンを行うように設置される、請求項5又は6に記載の装置。
  8. 前記制御システムの前記演算処理部のCPUは、前記装置の演算処理部のCPUと同一である、請求項5から7のいずれかに記載の装置。
  9. 前記装置の演算処理部は、前記第1の信号に基づいて、警報の生成,移動部分の減速,移動停止のうち少なくとも1つを行うように構成される、請求項5から8のいずれかに記載の装置。
  10. 前記操作インタフェースが力覚センサを備えるグリップ部を有する、請求項5から9のいずれかに記載の装置。
  11. パワーアシスト装置である、請求項5から10のいずれかに記載の装置。
  12. 装置のためのソフトウェアであって、
    前記装置は、CPUと、操作者の手によって操作される操作インタフェースと、操作者の腕部までの距離を少なくとも計測可能な第1の距離センサと、前記操作者の体の下部までの距離を少なくとも計測可能な第2の距離センサとを備え、少なくとも前記操作インタフェースを含む部分が前記操作者に対して移動可能に構成された装置であり、
    前記ソフトウェアは、前記CPUを、前記第1及び第2の距離センサによる計測値に対して所定の演算を行い、該演算の結果に基づいて第1の信号を出力する手段として動作させるように構成され、ここで前記所定の演算は、接近する操作インタフェースを操作すべく該操作インタフェースに操作者が手を差し伸べる際の、前記第1及び第2の距離センサまたはこれらの同等物の予め調べられた出力データパターンを用いて、前記第1及び第2のセンサによる前記計測値を処理することを含む、
    ソフトウェア。
  13. 前記予め調べられた出力データパターンを用いて前記第1及び第2のセンサによる前記計測値を処理することは、前記予め調べられた出力データパターンで学習させた隠れマルコフモデルを用いて、前記第1及び第2のセンサによる前記計測値を処理することである、請求項12に記載のソフトウェア。
  14. CPUと、操作者の手によって操作される操作インタフェースと、操作者の腕部までの距離を少なくとも計測可能な第1の距離センサと、前記操作者の体の下部までの距離を少なくとも計測可能な第2の距離センサとを備え、少なくとも前記操作インタフェースを含む部分が前記操作者に対して移動可能に構成された装置であって、請求項12又は13に記載のソフトウェアをその記憶装置に格納する、装置。
  15. 操作者の手によって操作される操作インタフェースを備え、且つ少なくとも該操作インタフェースを含む部分が該操作者に対して移動可能な装置を制御する方法であって、
    ・ 前記装置と、該装置の操作者の腕部との距離を少なくとも計測しうるように第1の距離センサを設置し、
    ・ 前記装置と前記操作者の体の下部との距離を少なくとも計測しうるように第2の距離センサを設置し、
    ・ 前記第1及び第2の距離センサによる計測値に対して所定の演算を行い、該演算の結果に基づいて所定の制御を行う、
    ことを含み、ここで前記所定の演算は、接近する操作インタフェースを操作すべく該操作インタフェースに操作者が手を差し伸べる際の、前記第1及び第2の距離センサまたはこれらの同等物の予め調べられた出力データパターンを用いて、前記第1及び第2のセンサによる前記計測値を処理することを含む、制御方法。
  16. 前記予め調べられた出力データパターンを用いて前記第1及び第2のセンサによる前記計測値を処理することは、前記予め調べられた出力データパターンで学習させた隠れマルコフモデルを用いて、前記第1及び第2のセンサによる前記計測値を処理することである、請求項12に記載の装置。
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