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Abstract
【課題】表示デバイスに用いられる薄膜トランジスタ基板の配線構造において、アルミニウム合金薄膜と透明画素電極を直接コンタクトさせることができるとともに、低電気抵抗率と耐熱性を両立し、薄膜トランジスタの製造プロセス中に用いられるアミン系剥離液やアルカリ性現像液に対する腐食性を改善できるアルミニウム合金膜を開発し、それを備えた表示デバイスを提供する。
【解決手段】アルミニウム合金薄膜と透明電極との直接コンタクトを可能にするために、Alマトリクス中に、所定の元素を添加するとともに、300℃以下の低温プロセスにおいても透明電極との安定コンタクトを実現し、耐食性を改善するために、アルミニウム中でNi、Ag、Zn、Coとの間に金属間化合物を形成・析出する元素を添加する。これらの金属間化合物のサイズが最大径150nm以下となっているアルミニウム合金薄膜を備えた表示デバイスが提供される。
【選択図】図1
【解決手段】アルミニウム合金薄膜と透明電極との直接コンタクトを可能にするために、Alマトリクス中に、所定の元素を添加するとともに、300℃以下の低温プロセスにおいても透明電極との安定コンタクトを実現し、耐食性を改善するために、アルミニウム中でNi、Ag、Zn、Coとの間に金属間化合物を形成・析出する元素を添加する。これらの金属間化合物のサイズが最大径150nm以下となっているアルミニウム合金薄膜を備えた表示デバイスが提供される。
【選択図】図1
Description
本発明は、改良された薄膜トランジスタ基板を備え、液晶ディスプレイ、半導体装置、光学部品などに使用される表示デバイスに関し、特に、Al合金薄膜を配線材料として含む新規な表示デバイスに関するものである。
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)は中小型では携帯電話のディスプレイやモバイル端末、PCモニタに使用され、また近年では大型化が進んで大型TVにも用いられている。液晶ディスプレイは単純マトリクス型とアクティブマトリクス型とに分けられ、アレイ基板や対向基板と、それらの間に注入された液晶層、更にカラーフィルタや偏光板などの樹脂フィルム、バックライトなどからなる。上記のアレイ基板は半導体で培われた微細加工技術を駆使してスイッチング素子(TFT:Thin Film Transistor)や画素、更には、この画素に電気信号を伝えるために走査線と信号線が形成されている。
走査線や信号線に用いられる配線材料には、これまで一般的に純AlやAl合金、或いは高融点金属が用いられてきた。その理由は、配線材料としては、低電気抵抗率、耐食性、耐熱性などが求められるからである。
大型液晶ディスプレイでは配線長が長くなり、それに伴って配線抵抗と配線容量が大きくなるので応答速度を表す時定数が大きくなり、表示品位が低下する傾向にある。一方、配線幅を太くすると画素の開口率や配線容量が増え、或いは配線膜厚を厚くすると材料コストが増加し、歩留まりが低下するなどの問題が生じ、これらから、配線材料の電気抵抗率の低いものが好まれている。
また、液晶ディスプレイを作る工程では配線の微細加工や洗浄が繰り返し行われ、また使用に際しては、長期間にわたる表示品位の信頼性が求められるため、高い耐食性が必要となる。
さらに別の問題として、配線材料は液晶ディスプレイの製造工程で熱履歴を受けるため、耐熱性が求められる。アレイ基板の構造は薄膜の積層構造からなっており、配線を形成した後にはCVDや熱処理によって350℃前後の熱が加わる。例えばAlの融点は660℃であるが、ガラス基板と金属の熱膨張率が異なるため、熱履歴を受けると、金属薄膜(配線材料)とガラス基板の間にストレスが生じ、これがドライビングフォースとなって金属元素が拡散しヒロックやボイドなどの塑性変形が生じる。ヒロックやボイドが生じると、歩留まりが下がるため、配線材料には350℃で塑性変形しないことが求められる。
これまで我々は新たなAl合金配線材料と配線膜形成技術を用いて、Al合金膜を画素電極に直接接触させることを可能にし、純Alなどで用いられる積層配線構造を単層化してバリアメタル層を省略する技術を提案している(以下ダイレクトコンタクトと言うことがある)(特許文献1、特許文献2を参照)。
ところで上記特許文献2は、ダイレクトコンタクトの達成だけでなく、それを比較的低いプロセス温度で実施してもAl合金膜自体の電気抵抗率の低下と耐熱性を兼ね備えた薄膜トランジスタ基板の提供に成功したものであるが、種々の実施態様の中では、アルカリ現像液に対する耐食性、現像後のアルカリ洗浄に対する耐食性なども併せて改良できるものであることを見出している。特許文献2では、Al中に添加する元素として、グループαの元素及びグループXの元素を選定し、Al−α−XからなるAl合金組成であることを発明の基礎としている。グループαの元素は、Ni,Ag,Zn,Cu,Geから選択される少なくとも1種、グループXの元素は、Mg,Cr,Mn,Ru,Rh,Pd,Ir,La,Ce,Pr,Gd,Tb,Eu,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Dyから選択される少なくとも1種を用いることとしているが、本願発明は、当該特許文献2の発明をさらに発展させることに成功したものと位置付けることができる。
Al合金に元素を添加することによって、純Alには見られなかった種々の機能が付与されるが、一方で添加量が多くなると、配線自体の電気抵抗率が増加してしまう。例えばダイレクトコンタクト性は本願明細書で規定するX1群の元素(Ni、Ag、Zn、Co)を添加することによって優れた性能が得られるが、これら合金元素の添加によって前記電気抵抗率や耐食性が悪化するという、好ましくない傾向が現れる。
大型TV用途では純Alの積層配線構造が用いられているが、配線設計をそのままにして純Alを何らかのAl合金に変更する場合を考えると、このAl合金配線(ダイレクトコンタクトを前提として単層で用いることを考える)が、配線構造トータルの電気抵抗に比べても同等以上の電気抵抗率を得ることが好ましい。
また耐熱性についてはLa、Nd、Gd、Dyなどを添加することによって改善されることを別途見出しているが、X1群の元素と比べると、それらの元素自体はAlマトリクス中での析出温度が高いため、電気抵抗率を更に悪化させてしまうという問題がある。なおこのときの電気抵抗率の悪化は添加元素の種類や添加元素の合計量に依存するため、これら元素の添加量は少な目であることが好ましい。
ところで、アレイ基板の製造工程では複数のウェットプロセスを通ることになるが、Alよりも貴な金属を添加すると、ガルバニック腐食の問題が表れ、耐食性が劣化してしまう。例えばフォトリソグラフィ工程ではTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)を含むアルカリ性の現像液を使用するが、ダイレクトコンタクト構造の場合、バリアメタル層を省略してAl合金がむき出しとなってしまうために、現像液によるダメージを受けやすくなる。
他にも、フォトリソグラフィの工程で形成したフォトレジスト(樹脂)を剥離する洗浄工程では、アミン類を含む有機剥離液を用いて連続的に水洗が行なわれている。ところがアミンと水が混合するとアルカリ性溶液になるため、短時間でAlを腐食させてしまうという別の問題が生じる。ところでAl合金は剥離洗浄工程を通るより以前にCVD工程を経ることによって熱履歴を受けている。この熱履歴の過程でAlマトリクス中には合金成分が析出物を形成する。しかるにこの析出物とAlの間には大きな電位差があるので、剥離液であるアミンが水と接触した瞬間に前記ガルバニック腐食によってアルカリ腐食が進行し、電気化学的に卑であるAlがイオン化して溶出し、ピット状の孔食(以下黒点と記載することがある)が形成されてしまう。
この黒点は、外観検査で欠陥として認識される場合があり、耐食性の観点からできるだけ排除したい。
特許文献1、2の技術では、前記したダイレクトコンタクト、即ちAl合金膜と透明画素電極の直接接続が可能になる。他方近年では、表示デバイスを製造する際のプロセス温度についての検討も進められ、歩留まりの改善および生産性向上の観点からプロセス温度が低温化される傾向にある。プロセス温度の低温化が進むと添加元素の析出が十分に進行し難くなり、またその結果、析出物の粒成長が十分でなく、そのため、Al合金自体の電気抵抗率やコンタクト抵抗が高くなるなどの課題が生じる。上記析出物は透明画素電極との電気的接続に好影響をもたらすが、プロセス温度の低温化の下でも十分な析出物が形成できるようにするための、材料面での改善が求められる。
本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、ダイレクトコンタクト材料において、低温の熱処理(300℃以下)を経た後でも、低電気抵抗率と透明導電膜との低いコンタクト抵抗を得るとともに、添加元素と析出物の制御によってAl合金の耐食性と耐熱性を改善させたアルミニウム合金膜を備えた表示デバイスを提供することである。
上記課題を達成することのできた本発明の表示デバイスは、薄膜トランジスタと透明画素電極を有し、アルミニウム合金膜と酸化物導電膜が直接接続しており、その接触界面にアルミニウム合金成分の一部または全部が析出して存在する表示デバイスであって、上記アルミニウム合金膜は、Ni、Ag、Zn、Co(本明細書で言う元素X1)よりなる群から選択される少なくとも1種、且つ上記X1と金属間化合物を形成することのできる元素(本明細書で言う元素X2)の少なくとも1種以上を含み、最大径150nm以下のX1−X2もしくはAl−X1−X2で示される金属間化合物が形成されていることを特徴とするものである。
また前記したX1−X2とAl−X1−X2の各金属間化合物の合計の面積は、全ての金属間化合物の合計の面積の50%以上であることが望ましい。尚本発明では、後述の元素X3を配合する場合もあり、この場合のX1−X2やAl−X1−X2とは、X1−X2−X3やAl−X1−X2−X3を含む場合があることを意味する。
本発明では、最大径が150nmを超えるX1−X2もしくはAl−X1−X2で示される金属間化合物の密度が、1個未満/100μm2であることが好ましい。
なお元素X2は300℃以下の熱処理でその一部もしくは全部が析出するものであることが好ましい。より好ましい熱処理温度は270℃以下であり、更に好ましくは230℃以下であり、最も好ましくは200℃以下である。なお、熱処理温度の下限は150℃であることが好ましい。
元素X2としては、後述の如く、Cu、Ge、Si、Mg、In、Sn、Bなどが挙げられる。例えば、元素X1としてNiを選び、元素X2としてCuを選ぶ場合は、Alマトリクス中に、Al−Ni−Cu金属間化合物やNi−Cu金属間化合物;元素X3(代表的にはNdやLaなど)を更に配合する場合はAl−Ni−Cu−X3金属間化合物やNi−Cu−X3金属間化合物が形成される。また、元素X1としてNiを選び、元素X2としてGeを選ぶ場合は、Alマトリクス中に、Al−Ni−Ge金属間化合物やNi−Ge金属間化合物;元素X3を更に配合する場合はAl−Ni−Ge−X3金属間化合物やNi−Ge−X3金属間化合物が形成される。
同様に、元素X1としてCoを選び、元素X2としてCuを選ぶ場合は、Alマトリクス中に、Al−Co−Cu金属間化合物やCo−Cu金属間化合物;元素X3(代表的にはNdやLaなど)を更に配合する場合はAl−Co−Cu−X3金属間化合物やCo−Cu−X3金属間化合物が形成される。また、元素X1としてCoを選び、元素X2としてGeを選ぶ場合は、Alマトリクス中に、Al−Co−Ge金属間化合物やCo−Ge金属間化合物;元素X3を更に配合する場合はAl−Co−Ge−X3金属間化合物やCo−Ge−X3金属間化合物が形成される。
尚前記したように更にプロセス工程中における耐熱性の向上が意図されるときは、元素X3として、La、Nd、Gd、Dyなどから選ばれる1種以上を配合することも本発明の範囲内に包含される。
本発明によれば、ダイレクトコンタクト材料において、低温の熱処理(300℃以下)を経た後でも、低電気抵抗率と透明導電膜との低いコンタクト抵抗を得るとともに、添加元素と析出物の制御によってAl合金の耐食性と耐熱性を改善させたアルミニウム合金膜を備えた表示デバイスを提供することができた。
本発明では、材料設計の観点からAl−X1−X2合金膜(好ましくは、Al−X1−X2−X3合金膜)に到達し、上記課題を克服する技術の完成に至った。以下、本発明に用いられる各元素について説明する。
まず析出物の形成を促進させる技術的手段として、低温の熱処理を経た後でも、低電気抵抗率と透明導電膜との低いコンタクト抵抗を発現し得る元素として、まず第1に、前記X1群の元素(Ni、Ag、Zn、Coの少なくとも一種)に想到した。これらは単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。このうち好ましい元素はNi、Coである。
低いコンタクト抵抗を実現するためには、X1群元素の好ましい含有量(1種のみを含むときは単独の量であり、2種以上を含むときは合計量)の下限を0.05原子%にする。X1群元素の含有量が多くなるほど、コンタクト抵抗の低減化作用も向上する。コンタクト抵抗の低減化という観点からすれば、より好ましい下限は0.08原子%であり、更に好ましい下限は0.1原子%であり、更により好ましくは0.2原子%である。一方、X1群元素の含有量が過剰になると、Al合金膜自体の電気抵抗率が上昇する。また、現像液エッチングレートが速くなって現像液耐性が低下したり、最大径150nm以下のX2含有金属間化合物の面積率が少なくなる、などの問題もあるため、その上限を6原子%とすることが好ましい。主に電気抵抗率の上昇抑制といった観点からすれば、好ましい下限は4原子%であり、更に好ましくは2.5原子%であり、もっとも好ましくは2原子%である。
第2としては、Alマトリクス中で、上記のX1元素よりも低温で(昇温プロセスという観点からすれば昇温の初期段階から早めに)析出する元素を添加し、時間的に先に析出している元素X2群を元素X1群の析出核として機能させるという思想の下で、X2群の元素を検討した。その結果X2群の元素として、Cu、Ge、Si、Mg、In、Sn、Bなどに想到した。
後に図面および実施例に基づいて詳述するが、X2群の元素は、上述したX1群の元素と金属間化合物を形成して耐食性向上(剥離液洗浄後に生じる黒点発生の防止、および現像液耐性の向上)に寄与する元素である。X2群の元素は、Cu、Ge、Si、Mg、In、Sn、Bより選択される少なくとも一種であり、単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。このうち好ましい元素はCu、Geである。
上記作用を有効に発揮させるための元素X2の好ましい添加量(1種のみを含むときは単独の量であり、2種以上を含むときは合計量)は0.1原子%以上であり、より好ましくは0.3原子%以上である。一方、X2群元素の含有量が過剰になると、Al合金膜自体の電気抵抗率が上昇するため、その上限を2原子%とすることが好ましい。電気抵抗率の上昇抑制といった観点からすれば、好ましい上限は1.5原子%である。
本発明に用いられるAl合金膜は、上記のX1元素およびX2元素を含むAl−X1−X2合金膜(残部:Alおよび不可避不純物)であっても良いが、La、Nd、Gd、Dy(本明細書ではX3群元素または単にX3元素と記載することがある)を少量含むAl−X1−X2−X3合金膜であることが好ましい。X3元素は、プロセス工程で必要なヒロック防止といった耐熱性を具備させるために有用な元素である。上記X3群の元素は、La、Nd、Gd、Dyより選択される少なくとも一種であり、単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。このうち好ましい元素La、Ndである。
上記作用を有効に発揮させるための元素X3の好ましい添加量(1種のみを含むときは単独の量であり、2種以上を含むときは合計量)は0.05原子%以上であり、より好ましくは0.1原子%以上であり、更に好ましくは0.2原子%以上である。ただし、過剰に添加するとAl合金膜自体の電気抵抗率が上昇する。電気抵抗率の上昇抑制といった観点からすれば、好ましい上限は1.5原子%である。
以下、本発明を特徴付けるX2元素の作用効果について、Al−X1−X2−X3合金膜を用いた基礎実験に基づき、詳しく説明する。
X2群として選んだ元素は昇温プロセスにおいて300℃以下、好ましくは270℃以下、更に好ましくは250℃以下、更により好ましくは230℃以下、最も好ましくは200℃以下の低温で析出を開始する。詳細には、X2群の元素としてCuを選んだ場合は、まず、例えば150〜230℃の比較的低い温度で、粒界に10〜30nm径のAl−CuやAl−Cu−X3の微細な析出物を形成する。更に昇温して、おおむね200℃付近からはX1群の元素の析出も始まるが、このときはX2群の元素を含む析出物を核として析出が進み、粒界に10〜30nm径の微細なX1含有析出物(例えばAl−X1−CuやAl−X1−Cu−X3など)を形成する。
また、X2群の元素としてGeを選んだ場合も上記と同様である。まず、例えば150〜230℃の比較的低い温度で、粒界に10〜30nm径のAl−GeやAl−Ge−X3の微細な析出物を形成する。更に昇温して、おおむね200℃付近からはX1群の元素の析出も始まるが、このときはX2群の元素を含む析出物を核として析出が進み、粒界に10〜30nm径の微細なX1含有析出物(例えばAl−X1−GeやAl−X1−Ge−X3など)を形成する。
これに対し、X2群の元素を含まない場合は(X3群の元素を含んでいても良い)、上述した微細な析出物が形成されず、最大径が150nmを超える粗大な析出物が形成されるようになる。このことを、図1および図2の顕微鏡写真を用いて説明する。
まず、図1を参照する。図1は、X2群の元素を含まないAl−0.2Ni−0.35Laを300℃の温度で熱処理したときの写真(TEM観察像)である。ここで、「Al−0.2Ni−0.35La」中の数値は原子%の意味であり、Al−0.2原子%Ni−0.35原子%Laを意味する。以下の記載においても、すべて同じである。図1に示すように、X2群の元素を含まない場合は、Al3NiとAl4La(もしくはAl3La)などの析出物が観察されるが、Al3Niの析出物には150〜300nm径の粗大な析出物が含まれる。
次に図2を参照する。図2は、X2群の元素を含むAl−1Ni−0.5Cu−0.3Laを300℃の温度で熱処理したときの写真(TEM観察像)である。X2群の元素(ここではCu)を添加しておくと、X2群の元素はAlの再結晶が進むまえにAlの粒界に微細に分散して高密度に析出物を形成する。この析出物を核にすることにより、図2に示すように、例えば20〜100nm径程度のAl−Ni−CuやAl−Ni−Cu−Laの微細な析出物が膜中に均一に分散して形成される。X2元素群を添加したときは、これらは低温での析出が早く進んでAlマトリクス中に数多く微細分散するため、この微細分散した核が、NiなどのX1元素を夫々に集めて析出物としての成長が進む為、個々の析出物としては小さいものになる(数としては多くなる)結果を招くのである。
これによって、最大径150nm以下のNi含有析出物が低温で均一に高密度に分散して形成される。その結果、最大径が150nmを超えるNi含有析出物の密度は、観察視野100μm2あたり1個未満となり、コンタクト抵抗が安定する。従って、X1の添加量が低い場合でも、比較的ダイレクトコンタクト性が安定するため、低抵抗化も実現できる(後記する実施例を参照)。また、耐食性の観点からは個々の析出物を微細化することで、腐食の起点を分散させて小さくすることができ、耐食性が改善されることがわかる(少なくとも外観上からの耐食性不安を解消または軽減できることが分かった(後記する実施例を参照))。
同様にX2元素=Geの場合もAl−Ni−GeやAl−Ni−Ge−Laの微細な析出物を速やかに分散して生じさせるため(図3:TEM観察像)、ダイレクトコンタクト性の安定化に効果がある(後記する実施例を参照)。
またX1元素=Co、X2元素=Geの組合せで本発明を実施すると、Al−Co−GeやAl−Co−Ge−X3(X3はLa、Ndなど)の析出物が形成される。
また、X1元素として、上記以外のAgやZnを選らんだ場合も同様の現象が認められる。
以上の実験結果に基づき、本発明では、耐食性向上の指標として、最大径150nm以下のX1−X2もしくはAl−X1−X2で示されるX2含有金属間化合物が形成されていること、好ましくは、上記のX2含有金属間化合物の合計の面積が、全ての金属間化合物の合計の面積の50%以上(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上)であることを規定した。150nmを超える析出物を形成させないようにすることによって、剥離液を水洗するプロセスにおける視認できるほど巨大なクレータ腐食の発生を抑制させることができる。このことは、最大径150nm超のX2含有金属間化合物との関係で整理すると、最大径が150nmを超えるX1−X2もしくはAl−X1−X2で示される金属間化合物の密度が、1個未満/100μm2であることを意味する。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
本実施例では、表1および2に示す種々の組成のAl合金膜(数値の単位は原子%、残部Alおよび不可避的不純物)を用い、以下の特性を評価した。
(1)コンタクト抵抗の測定
本実施例では、250℃でCVD成膜したときのITOとのコンタクト抵抗を、コンタクトホールが50個直列に連続してつながったコンタクトチェーンを用いて評価した。
本実施例では、250℃でCVD成膜したときのITOとのコンタクト抵抗を、コンタクトホールが50個直列に連続してつながったコンタクトチェーンを用いて評価した。
まずガラス基板上にスパッタにて300nmのAl合金を成膜する。次にフォトリソグラフィとエッチングによって配線を形成する。その後CVDによって250℃の温度でSiNを300nm成膜する。再びフォトリソグラフィによって10μm角のコンタクトホールを形成し、Ar/SF6/O2プラズマエッチングによってSiNをエッチングする。次に酸素プラズマアッシングとTOK106を用いてレジスト剥離を行い、水洗した後に透明導電膜(アモルファスITO)を200nmの膜厚でスパッタ成膜を行ってフォトリソグラフィとエッチングによって配線を形成することにより10μm角の上記コンタクトチェーンを形成し、コンタクトホール1個あたりに換算したコンタクト抵抗を求めた。
本実施例では、以下の評価基準に基づきコンタクト抵抗を評価した。
◎:100Ω以下
○:100Ω超、500Ω以下
●:500Ω超、999Ω以下
×:999Ω超
◎:100Ω以下
○:100Ω超、500Ω以下
●:500Ω超、999Ω以下
×:999Ω超
(2)黒点の密度
耐食性の観点から、剥離液洗浄後に生じる黒点発生(正確にはクレーター腐食密度)に関する評価を、以下のようにして行った。剥離洗浄後に生じる黒点は、既述の説明から理解される様に、析出物を起点として生じる。
耐食性の観点から、剥離液洗浄後に生じる黒点発生(正確にはクレーター腐食密度)に関する評価を、以下のようにして行った。剥離洗浄後に生じる黒点は、既述の説明から理解される様に、析出物を起点として生じる。
まず、Al合金をガラス基板上(コーニング製イーグル2000、直径2インチ、板厚0.7mm)にスパッタ装置を用いて膜厚300nmのAl合金膜を形成し、300℃の窒素雰囲気の熱処理炉を用いて30分間の熱処理を行った。窒素気流下に炉内を300℃に保持してから基板を投入し、基板投入後、15分間を要して炉温の安定を待って更に30分間の熱処理を行った。次に、モノエタノールアミンを主成分とする剥離液(東京応化製TOK106)を純水で55,000倍に希釈してpH10のアルカリ性液体を調製し、熱処理後の基板を5分間浸漬し、純水で1分間リンスした。その後、窒素ブローで乾かして顕微鏡観察(倍率1000倍)を行った。観察した際に、明確にコントラストが生じて黒点として視認されるときには、これを欠陥と判断する。
本実施例では、以下の評価基準に基づき、黒点発生(クレータ腐食密度)を評価した。
◎:0.9個/100μm2以下
○:0.9個/100μm2超、10個/100μm2以下
●:10個/100μm2超、50個/100μm2以下
×:50個/100μm2超
◎:0.9個/100μm2以下
○:0.9個/100μm2超、10個/100μm2以下
●:10個/100μm2超、50個/100μm2以下
×:50個/100μm2超
(3)最大径150nm以下のX2含有析出物の有無
上記のように300℃で30分間の熱処理が施されたAl合金膜を用い、以下の方法で、最大径150nm以下のX2含有析出物を観察した。
上記のように300℃で30分間の熱処理が施されたAl合金膜を用い、以下の方法で、最大径150nm以下のX2含有析出物を観察した。
まず、Al合金膜の断面を、平面TEM(透過電子顕微鏡、倍率30万倍)または反射SEM(走査型電子顕微鏡、倍率30000〜50000倍)で観察し、金属間化合物[加速電圧8keV(膜深さ方向全体)で見えた金属間化合物]の粒径を、(長軸+短軸)/2として算出し、これを析出物径とした。上記金属間化合物がX2元素を含有するかどうかはEDX分析にて確認をした。125μm×100μmの視野中に観察されるX2含有析出物の析出物径を上記のようにして測定したとき、観察視野中の析出物の最大径が150nm以下であり、最大径が150nm超の析出物が観察視野中に全く見られなかったものを○と評価し、観察視野中に150nm超の析出物が1個でも観察されたときは×と評価した。
(4)X1−X2金属間化合物とAl−X1−X2金属間化合物の面積比率
上記(3)の方法と同様にして、125μm×100μmの視野中に観察される全金属間化合物と、X2含有析出物(詳細には、X1−X2金属間化合物とAl−X1−X2金属間化合物)を測定し、全金属間化合物に占めるX2含有析出物の合計面積の比率を測定した。この比率が50面積%以上のものを○、50面積%未満のものを×と評価した。
上記(3)の方法と同様にして、125μm×100μmの視野中に観察される全金属間化合物と、X2含有析出物(詳細には、X1−X2金属間化合物とAl−X1−X2金属間化合物)を測定し、全金属間化合物に占めるX2含有析出物の合計面積の比率を測定した。この比率が50面積%以上のものを○、50面積%未満のものを×と評価した。
(5)150nm超の析出物密度
上記(3)の方法と同様にして、125μm×100μmの視野中に観察される最大径が150nmを超えるX2含有金属間化合物の個数を求め、観察視野100μm2あたりの個数に換算した。観察視野100μm2あたりの個数が1個未満のものを○と評価し、1個以上のものを×と評価した。
上記(3)の方法と同様にして、125μm×100μmの視野中に観察される最大径が150nmを超えるX2含有金属間化合物の個数を求め、観察視野100μm2あたりの個数に換算した。観察視野100μm2あたりの個数が1個未満のものを○と評価し、1個以上のものを×と評価した。
(6)電気抵抗率の測定
Al合金膜自体の電気抵抗率は、以下の評価基準に基づき評価した。
◎:3.9Ω・cm以下
○:3.9Ω・cm超、4.4Ω・cm以下
●:4.4Ω・cm超、5.0Ω・cm以下
×:5.0Ω・cm超
Al合金膜自体の電気抵抗率は、以下の評価基準に基づき評価した。
◎:3.9Ω・cm以下
○:3.9Ω・cm超、4.4Ω・cm以下
●:4.4Ω・cm超、5.0Ω・cm以下
×:5.0Ω・cm超
(7)現像液耐性の評価
スパッタで300nm厚みに成膜した膜を用いて、現像液(TMAH2.38wt%水溶液)に浸漬したときの膜減り量を段差計で測定し、エッチングレートに換算して、以下の評価基準で現像液耐性を評価した。純Alのエッチング速度は20nm/分であるが、これより、余り速くなることは好ましいことではない。
◎:19nm/min.以下
○:19nm/min.超、39nm/min.以下
●:39nm/min.超、60nm/min.未満
×:60nm/min.以上
スパッタで300nm厚みに成膜した膜を用いて、現像液(TMAH2.38wt%水溶液)に浸漬したときの膜減り量を段差計で測定し、エッチングレートに換算して、以下の評価基準で現像液耐性を評価した。純Alのエッチング速度は20nm/分であるが、これより、余り速くなることは好ましいことではない。
◎:19nm/min.以下
○:19nm/min.超、39nm/min.以下
●:39nm/min.超、60nm/min.未満
×:60nm/min.以上
耐食性は、上記(3)〜(5)、(7)に基づき、総合的に評価される。
(8)耐熱性の評価
Al合金膜を、350℃で30分間の真空中熱処理を行なったときのヒロックの有無や表面状態を観察し、以下の評価基準に基づいて耐熱性を評価した。
◎:ヒロックなし、表面荒れもなし。
○:ヒロックはないが表面に若干の荒れが観察された。
Al合金膜を、350℃で30分間の真空中熱処理を行なったときのヒロックの有無や表面状態を観察し、以下の評価基準に基づいて耐熱性を評価した。
◎:ヒロックなし、表面荒れもなし。
○:ヒロックはないが表面に若干の荒れが観察された。
これらの結果を表1および表2に示す。
以下、各実験No.ごとに考察する。
実験No.1〜5は、Al−(0.05〜0.2)Ni−0.5Cu−0.3Laの例である。
このうち、実験No.1はNi量が0.05%と非常に少ないため、コンタクト抵抗が高く、本発明におけるそもそもの前提であるダイレクトコンタクトを実現できなかった。ただし膜自体の電気抵抗率はNiが少ないことによって低く保たれていた。なお本発明の課題である耐食性については、X2元素であるCuの添加により改善されており、これは析出物サイズの最大径:150nm以下(以下「析出物サイズ要件」と言うことがある)、X1−X2およびAl−X1−X2の面積比率:50%以下(以下「析出物面積要件」と言うことがある)の各要件がいずれも○印評価であることと整合している。なお本発明で付加的に改善希望として掲げている耐熱性ついては、X3元素であるLaの添加により、優れた値を示している。
実験No.2はNi量が0.1%と十分量含有されているため、実験No.1に比べてコンタクト抵抗が改善され、本発明の課題であるその他の項目についても、問題のない優れた結果を示している。
実験No.3はNi量が1%と更に増量されたため、コンタクト抵抗がさらに改善され、他方Al合金膜自体の電気抵抗率が若干増えたが、実用上は問題ではなく、本発明の課題である耐食性は、さらに耐熱性の点も含めて優れた成果を挙げている。
実験No.4はNi量が2%と、更に増量されたため、コンタクト抵抗が一層改善された。Al合金膜自体の電気抵抗率は極めて僅かに増えたが、実用上問題ではなく、本発明の課題である耐食性は実用上問題のないレベルに改善され、さらに耐熱性の点も含めて優れた成果を挙げている。
実験No.5はNi量が6%と、非常に多くなったため、コンタクト抵抗がさらに改善された。Al合金膜自体の電気抵抗率は増加し、現像液エッチングレートがやや増大しているが、実用上問題のないレベルである。
実験No.6〜10は、Al−1Ni−(0.1〜3)Cu−(0.1〜0.3)Laの例である。
このうち実験No.6は実験No.3に比べて現像液によるエッチレートがやや増えたが(純Alの20mm/min.より早くなったが)、耐食性としては問題がなく、また耐熱性も良好だった。
実験No.7は実験No.6に比べてCuが有意に多くなったためコンタクト抵抗が更に良くなり、他方耐食性、耐熱性においても、非常に良好である。
実験No.8は実験No.7に比べて更にCuが多くなったため、耐食性において、やや不利であったが、実用上の問題があるレベルではない。耐熱性も良好である。
実験No.9は実験No.8に比べてCuが一層多くなったため、耐食性や現像液エッチレート、更に電気抵抗率において、やや不利であった。実用上は、やや問題が生じてくる場合もあるが、総じて言えば、安定した性状を示す。
実験No.10はCu含有量を実験No.1〜5のレベルに戻した。現像液エッチレートにおいて、やや不利であったが、総じて言えば、実用上の問題はないと言える。
実験No.11、12は元素X2を含有していない。そのため、「析出物サイズ要件」「析出物面積要件」において問題が生じ、剥離液洗浄プロセスにおいてクレータ腐食が発生するなど耐食性に問題が残り、本発明の課題を達成できていない。なお、表中の「−」とは、元素X2を含有していないため、X1−X2、X1−X2−X3の析出物が形成されていないという意味である。
実験No.13〜17は、Al−(0.05〜0.2)Ni−0.5Ge−0.5Ndの例である。このうち実験No.13はNi量が0.05%と少ないため、コンタクト抵抗が増加したが、Ni量が好ましい範囲で添加されたNo.14〜17は、低いコンタクト抵抗を確保できた。また、X2元素およびX3元素を好ましい範囲で添加しているため、耐食性および耐熱性の双方も良好であった。
実験No.18〜20は、Al−(0.1〜0.2)Ni−0.5Ge−0.2Ndの例である。これらは、Ni、Ge、Ndの各元素の含有量がいずれも、好ましい範囲内にあるため、低いコンタクト抵抗、低い電気抵抗率、耐食性および耐熱性のすべてに優れている。
実験No.21および22は、Al−0.1Ni−0.5Ge−(0.25〜0.3)Ndの例である。これらは、Ni、Ge、Ndの各元素の含有量がいずれも、好ましい範囲内にあるため、低いコンタクト抵抗、低い電気抵抗率、耐食性および耐熱性のすべてに優れている。
実験No.23〜25は、Al−(0.1〜0.2)Ni−0.5Ge−0.2Nd−0.2Cuの例である。これらは、Ni、Ge、Nd、Cuの各元素の含有量がいずれも、好ましい範囲内にあるため、低いコンタクト抵抗、低い電気抵抗率、耐食性および耐熱性のすべてに優れている。
実験No.26〜28は元素X1、X2が共に適切量含有されており、本発明の課題を問題なく解決し得ている。
実験No.29は元素X1を含有していない。そのため本発明の前提的課題であるダイレクトコンタクトを実現することができない。
実験No.30、31は実験No.3の元素X3(La)をNdまたはGdに置き換えただけであり、結果において、実験No.3と比肩し得るものである。
実験No.32は元素X2であるCuを実験No.9を超えて更に増量し、本発明の好ましい範囲を超えたため、クレータ腐食密度、現像液エッチレートが少し悪くなり、使用目的によっては推奨できない場合がある。
実験No.33も元素X2を含有していないため、「析出物面積要件」を満足せず、150nm超の粗大な析出物の個数密度も多くなった。また、現像液エッチレートが速過ぎるといった問題もある。
実験No.34〜36は、X2元素としてGeとCuを併用した例で、Al−0.1Co−0.5Ge−0.2La−(0.1〜0.3)Cuの例である。これらは、各元素の含有量がいずれも、好ましい範囲内にあるため、低いコンタクト抵抗、低い電気抵抗率、耐食性および耐熱性のすべてに優れている。
実験No.37および38は、Al−0.2Co−0.5Ge−(0.2〜0.3)Laの例であり、No.39は、No.37において、Laの代わりにNdを添加した例である。これらは、各元素の含有量がいずれも、好ましい範囲内にあるため、低いコンタクト抵抗、低い電気抵抗率、耐食性および耐熱性のすべてに優れている。
実験No.40〜42は、Al−(0.1〜0.2)Co−0.5Ge−(0.2〜0.3)Ndの例である。これらは各元素の含有量がいずれも、好ましい範囲内にあるため、低いコンタクト抵抗、低い電気抵抗率、耐食性および耐熱性のすべてに優れている。
実験No.43および44は、X2元素としてGeとCuを併用した例で、Al−0.1Co−0.5Ge−0.2La/Nd−0.3Cuの例である。これらは各元素の含有量がいずれも、好ましい範囲内にあるため、低いコンタクト抵抗、低い電気抵抗率、耐食性および耐熱性のすべてに優れている。
実験No.45、46、48は、Al−(0.8〜1)Co−(0.5〜2)Ge−(0.1〜0.3)Laの例である。これらは、各元素を本発明の好ましい範囲で含有しているため、コンタクト抵抗、電気抵抗率、耐食性、耐熱性の面において、何ら問題はなく、本発明の課題を全て良好に解決し得ている。
実験No.47は、上記のNo.38において、Geの代わりにCuを添加した例であるが、全評価項目とも、優れた効果を示している。
実験No.49は、Co添加量を本発明の好ましい範囲を超えて多く添加した例であり、電気抵抗率が増加した。また、「析出物面積要件」が好ましくない状態となり、現像液エッチレートが顕著に速くなるという問題が生じた。
実験No.50は元素X1を含有していない。そのため本発明の前提的課題であるダイレクトコンタクトを実現することができない。また、X2含有析出物の面積率が少なくなった。
実験No.51〜54は元素X1をAg、Znに変更し、元素X2としてのCu、Geを共に適切量含有しており、本発明の課題を全て解決し得ている。
実験No.55〜57は、元素X1およびX2を含有しているが、元素X3を含有していない。そのため、コンタクト抵抗および電気抵抗率が低く耐食性も良好であるが、元素X3を更に含有する例に比べ、耐熱性は若干低下した。また、これらは、NiやCuの添加量が増加したものの、X3元素が入っていないために現像液エッチングレートが速くなった。また、No.57では、合金元素の合計量が多くなるため、電気抵抗率が増加した。
実験No.58、59は、元素X3の含有量をNi、Co並みに多く添加した例である。そのため、電気抵抗率は若干高くなったが、元素X3の好ましい上限を満足しているため、耐熱性は良好である。
これらの結果から、元素X1の添加量は0.05〜6原子%、好ましくは0.08〜4原子%、更に好ましくは0.08〜2.5原子%、もっとも好ましくは0.2〜1.5原子%であり、元素X2の添加量は0.1〜2原子%、好ましくは0.3〜1.5原子%である。次にLa,Nd,Dy,Gdといった元素X3の添加量は0.05〜2原子%、更に好ましくは0.1〜0.5原子%である。
各元素X1、X2、X3についての総評を示すと、コンタクト安定性の観点ではCoがNiに比べて少量でも有効という点で特徴があるが、いずれも安定した性能が得られるという点で好適である。一方現像液耐性の観点ではCoはNiに比べて若干劣る。
ただし電気抵抗率について、CoはNi添加に比べて若干低くなる。また剥離液による黒点発生については、Coは低添加域ではほとんど発生しない。さらにCu添加とGe添加はほぼ同等の効果があり、電気抵抗は若干低下し、コンタクト抵抗にも改善が見られる。また耐食性については特にNiやCoの低添加域で良好な改善効果が見られた。
次に、顕微鏡によって欠陥と判断した黒点をSEM(30000倍〜50000倍)で確認したところ、サイズが150nmを超えるものであった。上記手法によっては欠陥品と認識されなかった膜についてSEM(30000倍〜50000倍)および平面TEM(30万倍)を用いて観察を行った結果、析出物のサイズは150nm以下であった。多数のサンプルを用いて統計的に解析すると、黒点と認識されるサイズと実際の析出物のサイズとの関係は、Al−Ni−Laを用いて観察した結果から図4となり、析出物のサイズは最大150nm以下であることが必要といえる。
以上の結果から、黒点のサイズは起点となる析出物のサイズにほぼ比例することを前提に考えると、黒点抑制のためには、析出物の析出形態やサイズを制御する必要があるということが分かった。
Claims (8)
- 薄膜トランジスタと透明画素電極を有し、アルミニウム合金膜と酸化物導電膜が直接接続しており、その接触界面にアルミニウム合金成分の一部または全部が析出して存在する表示デバイスであって、
Ni、Ag、Zn、Co(以下X1と称することがある)よりなる群から選択される少なくとも1種以上、且つ
上記X1と金属間化合物を形成することのできる元素(以下X2と称することがある)の少なくとも1種以上を含み、最大径150nm以下のX1−X2もしくはAl−X1−X2で示される金属間化合物が形成されていることを特徴とするアルミニウム合金膜を備えた表示デバイス。 - アルミニウム合金膜におけるX1−X2とAl−X1−X2の各金属間化合物の合計の面積が、全ての金属間化合物の合計の面積の50%以上である請求項1に記載の表示デバイス。
- 最大径が150nmを超えるX1−X2もしくはAl−X1−X2で示される金属間化合物の密度が、1個未満/100μm2である請求項1または2に記載の表示デバイス。
- 元素X2は300℃以下の熱処理でその一部もしくは全部がAlマトリクス中に析出するものである請求項1〜3のいずれかに記載の表示デバイス。
- 元素X1がNiであり、元素X2がGeであって、300℃以下の熱処理でAl−Ni−Geの金属間化合物を形成するアルミニウム合金膜を備えた請求項1〜4のいずれかに記載の表示デバイス。
- 元素X1がNiであり、元素X2がCuであって、300℃以下の熱処理でAl−Ni−Cuの金属間化合物を形成するアルミニウム合金膜を備えた請求項1〜4のいずれかに記載の表示デバイス。
- 元素X1がNiであり、元素X2がGe及びCuであって、300℃以下の熱処理でAl−Ni−Ge及びAl−Ni−Cuの各金属間化合物を形成するアルミニウム合金膜を備えた請求項1〜4のいずれかに記載の表示デバイス。
- 元素X2は150〜230℃の熱処理でその一部もしくは全部がAlマトリクス中に析出するものである請求項4に記載の表示デバイス。
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- 2009-03-31 JP JP2009088127A patent/JP2009282504A/ja active Pending
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