JP2009281938A - 磁気センサ及び磁気エンコーダ - Google Patents
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Abstract
【課題】 特に、出力波形に出力ピーク以外の突出点が形成されるのを抑制でき、検出精度を向上させることが可能な磁気センサ及び磁気エンコーダを提供することを目的とする。
【解決手段】 磁気抵抗効果素子を構成する固定磁性層は、積層構造の各層の界面と平行な面内であって固定磁性層の磁化方向(P方向)と直交する方向(X1,X2)から外部磁界が作用したときに無磁場状態から磁界強度αの外部磁界の作用までは磁化方向(P方向)が固定されており、磁界強度αよりも大きい外部磁界が作用すると磁化方向(P方向)が傾く。無磁場状態では、固定磁性層の磁化方向(P方向)は、磁石の着磁面と平行な面内であって相対移動方向に対して直交する方向(Y1方向)に向けられ、フリー磁性層の磁化方向(F方向)は、固定磁性層の磁化方向に対して逆方向(Y2方向)に向けられている。
【選択図】図5
【解決手段】 磁気抵抗効果素子を構成する固定磁性層は、積層構造の各層の界面と平行な面内であって固定磁性層の磁化方向(P方向)と直交する方向(X1,X2)から外部磁界が作用したときに無磁場状態から磁界強度αの外部磁界の作用までは磁化方向(P方向)が固定されており、磁界強度αよりも大きい外部磁界が作用すると磁化方向(P方向)が傾く。無磁場状態では、固定磁性層の磁化方向(P方向)は、磁石の着磁面と平行な面内であって相対移動方向に対して直交する方向(Y1方向)に向けられ、フリー磁性層の磁化方向(F方向)は、固定磁性層の磁化方向に対して逆方向(Y2方向)に向けられている。
【選択図】図5
Description
本発明は、特に、出力波形に出力ピーク以外の突出点が形成されるのを抑制でき、検出精度を向上させることが可能な磁気センサ及び磁気エンコーダに関する。
巨大磁気抵抗効果(GMR効果)を利用した磁気抵抗効果素子(GMR素子)は、磁気エンコーダに使用できる。
図9は、従来における磁気エンコーダの斜視図である。図9に示すように磁気エンコーダ90は、磁石91と磁気センサ92とを有して構成される。
図9に示すように磁気センサ92には複数個のGMR素子93a〜93hが設けられる。各GMR素子93a〜93hはマトリクス状に配置され、相対移動方向にて隣り合うGMR素子の中心間距離はλ/4(λは磁石91のN極とS極の中心間距離)離れている。
各GMR素子93a〜93hは、図10に示すように下から反強磁性層100、固定磁性層101、非磁性層102、フリー磁性層103及び保護層104の順に積層される。反強磁性層100と固定磁性層101との間には交換結合磁界(Hex)が生じて、固定磁性層101の磁化方向(P方向)はY1方向に固定されている。
図11は、各GMR素子93a〜93hのR−H曲線を示す。図11に示すようにY2方向(固定磁性層101の磁化方向とは逆方向)の外部磁界が作用すると、曲線HR1と曲線HR2で囲まれたヒステリシスループHRが形成される。GMR素子93a〜93hの最大抵抗値と最低抵抗値の中間値であって、ヒステリシスループHRの広がり幅の中心値がヒステリシスループHRの「中点」である。そしてヒステリシスループHRの中点での磁界の強さが層間結合磁界(+Hin)の大きさである。
GMR素子93a〜93hが、図11に示す層間結合磁界(+Hin)を備えるとき、無磁場状態(外部磁界が作用していない状態)にてフリー磁性層104の磁化方向(F方向)は、固定磁性層101の磁化方向(P方向)と同じ方向を向いている(図9、図10参照)。
図9に示すように、例えば、磁気センサ92はX1方向に相対移動する。このとき、磁石91から磁気センサ92に外部磁界H1あるいは外部磁界H2が作用する。外部磁界H1は、磁気センサ92に対してX1方向に作用し、外部磁界H2は、磁気センサ92に対してX2方向に作用する。
上記したように、無磁場状態でのGMR素子93a〜93hの固定磁性層101の磁化方向(P方向)及びフリー磁性層103の磁化方向(F方向)は共にY1方向であるから、これら磁化方向は、外部磁界H1,H2に対して直交する方向を向いている。
図12は、GMR素子93a〜93hに対して外部磁界H1,H2の方向であるX1方向、X2方向から外部磁界が作用したときの電気抵抗変化を示している。また図12には、グラフのa点、b点、及びc点での固定磁性層101及びフリー磁性層103の磁化方向が示されている。
図12に示すように、外部磁界が作用しない無磁場状態(a点)では、固定磁性層101及びフリー磁性層103の磁化方向(P方向、F方向)は同一方向を保つから、電気抵抗値は最小値となっている。
次に、X1方向に外部磁界が作用し、その磁界強度が徐々に強くなったときの電気抵抗変化を説明する。図12のb点で、フリー磁性層103の磁化方向(F方向)はX1方向となり、固定磁性層101の磁化方向(P方向)とフリー磁性層103の磁化方向(F方向)とが直交した関係になる。このため電気抵抗値はa点からb点にかけて徐々に上昇する。
さらに、X1方向に作用する外部磁界の磁界強度が強まると、a点からb点までは磁化が固定されていた固定磁性層101の磁化方向(P方向)も、X1方向に向けて傾き始める。固定磁性層101には、一方向性交換バイアス磁界が作用しており、これにより、固定磁性層101の磁化方向(P方向)は所定範囲の磁界強度に対して固定状態を保つ。図10に示す積層構造では、一方向性交換バイアス磁界は、反強磁性層100との間で生じている交換結合磁界(Hex)である。また固定磁性層101が積層フェリ構造(第1磁性層/非磁性中間層/第2磁性層)であるとき、一方向性交換バイアス磁界は、交換結合磁界(Hex)と、第1磁性層と第2磁性層間で作用するRKKY相互作用における結合磁界とを合わせた磁界となる。
しかしながら、X1方向に、一方向性交換バイアス磁界より強い外部磁界が作用すると、固定磁性層101の磁化方向(P方向)はその外部磁界の方向に向けて傾き始める。
図12に示すc点では、固定磁性層101の磁化方向(P方向)が、X1方向向けて傾いた状態であり、その結果、X1方向に向いているフリー磁性層103の磁化方向(F方向)と、固定磁性層101の磁化方向(P方向)間の角度は直交よりも小さくなるため、電気抵抗値はb点をピークとして徐々に下がり始める。すなわち従来では、a点からc点の間に、電気抵抗値の増減傾向が変化する変曲点(b点)が存在する。
図13は、直列接続されるGMR素子93a及びGMR素子93cの相対移動距離に対する電気抵抗変化と中点電位を示すグラフである。このグラフの左側の縦軸が、GMR素子93aとGMR素子93cの電気抵抗値(Ω)を示し、右側の縦軸が、中点電位(V)である。入力電圧は5Vである。
図9に示すようにGMR素子93aとGMR素子93cの中心間距離はλ/2であるので、図13に示すように、GMR素子93aの抵抗波形と、GMR素子93cの抵抗波形にはλ/2の位相差がある。
そして図13に示すように、GMR素子93a,93cの電気抵抗変化に基づいて得られた中点電位の出力波形には、出力ピーク以外に、丸で囲った突出点が発生する。
そして、このような突出点を感知してしまうと、誤作動を起こすため、検出精度が低下する問題があった。
特開2007−218610号公報
特許文献1に記載された発明では、無磁場状態にて、固定磁性層の磁化方向(P方向)は、磁石の着磁面と平行な面内であって相対移動方向に対して直交する方向に向けられ、フリー磁性層の磁化方向(F方向)も、固定磁性層の磁化方向と同方向を向いている(特許文献1の図5や図7)。
よって特許文献1に記載された発明では、上記した出力波形に出力ピーク以外の突出点が発生する問題が生じてしまう。
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、出力波形に出力ピーク以外の突出点が形成されるのを抑制でき、検出精度を向上させることが可能な磁気センサ及び磁気エンコーダを提供することを目的とする。
本発明は、相対移動方向に交互にN極とS極が着磁された着磁面を有する磁界発生部材の前記着磁面から離れた位置に配置され、外部磁界に対して電気抵抗値が変化する磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗効果素子を有して成る磁気センサにおいて、
前記磁気抵抗効果素子は、固定磁性層と、外部磁界により磁化変動するフリー磁性層と、前記固定磁性層とフリー磁性層との間に位置する非磁性層との積層構造を備え、
無磁場状態では、前記固定磁性層の磁化方向は、前記着磁面と平行な面内であって前記相対移動方向に対して直交する方向に向けられるとともに、前記フリー磁性層の磁化方向は、前記固定磁性層の磁化方向に対して逆方向に向けられていることを特徴とするものである。
前記磁気抵抗効果素子は、固定磁性層と、外部磁界により磁化変動するフリー磁性層と、前記固定磁性層とフリー磁性層との間に位置する非磁性層との積層構造を備え、
無磁場状態では、前記固定磁性層の磁化方向は、前記着磁面と平行な面内であって前記相対移動方向に対して直交する方向に向けられるとともに、前記フリー磁性層の磁化方向は、前記固定磁性層の磁化方向に対して逆方向に向けられていることを特徴とするものである。
また本発明の磁気エンコーダは、上記に記載された磁気センサと、前記磁界発生部材とを有してなることを特徴とするものである。
本発明では、磁界発生部材から磁気センサに対して磁界強度αよりも大きい外部磁界が作用する相対移動領域が存在しても、出力波形に出力ピーク以外の突出点が形成されるのを抑制でき、検出精度を向上させることができる。
本発明によれば、出力波形に出力ピーク以外の突出点が形成されるのを抑制でき、検出精度を向上させることができる。
図1は、本実施形態の磁気エンコーダの斜視図、図2は、本実施形態の磁気抵抗効果素子の部分断面図、図3は、本実施形態の磁気抵抗効果素子に固定磁性層の磁化方向と平行な方向から外部磁界が作用したときのR−H曲線、図4は、磁気センサの回路図、図5は、本実施形態の磁気抵抗効果素子に固定磁性層の磁化方向と直交方向から外部磁界が作用したときのR−H曲線、図6は、磁気抵抗効果素子A1及び磁気抵抗効果素子A2の相対移動距離に対する電気抵抗変化と中点電位を示すグラフ、図7、図8は、図1とは異なる実施形態の磁気エンコーダの斜視図、である。
各図におけるX1−X2方向、Y1−Y2方向、及びZ1−Z2方向の各方向は残り2つの方向に対して直交した関係となっている。X1−X2方向は、磁石21及び磁気センサ22の相対移動方向であり、磁気センサ22を構成する基板23の横方向である。この実施形態において特に断らない限り「相対移動方向」とは磁気センサ22の相対移動方向を指す。そしてこの実施形態では、磁気センサ22の相対移動方向はX1方向である。よって、磁石21が固定で磁気センサ22が移動する場合、磁気センサ22はX1方向に動き、磁気センサ22が固定で磁石21が移動する場合は、磁石21がX2方向に動いている。なお磁石21及び磁気センサ22の双方が動く形態でもよい。Y1−Y2方向は、基板23の平面内にて相対移動方向に対して直交する磁気センサ22の縦方向である。Z1−Z2方向は磁石21と磁気センサ22とが所定の間隔を空けて対向する高さ方向である。
図1に示すように磁気エンコーダ20は、磁石(磁界発生部材)21と磁気センサ22を有して構成される。
磁石21は図示X1−X2方向に延びる棒形状であり、磁気センサ22との対向面が図示X1−X2方向に所定幅にてN極とS極とが交互に着磁された着磁面である。N極とS極との中心間距離(ピッチ)はλである。例えば、λは、0.5〜4.0mmである。
図1に示すように磁気センサ22は、基板23と、共通の基板23の表面(磁石21との対向面)23aに設けられた複数の磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2を有して構成される。
図1に示すように、8個の磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2は、X1−X2方向に4個ずつ、Y1−Y2方向に2個ずつマトリクス状に配列している。図1に示すようにX1−X2方向にて隣り合う各磁気抵抗効果素子の中心間の間隔はλ/4となっている。
各磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2は、図2に示すように、下から反強磁性層7、固定磁性層8、非磁性層9、フリー磁性層10及び保護層11の順で積層された構造で形成される。ただし、図2の積層構造は一例である。例えば固定磁性層8は積層フェリ構造で形成されてもよい。また、例えば反強磁性層7はIrMn、固定磁性層8はCoFe、非磁性層9はCu、フリー磁性層10はNiFe、保護層11はTaで形成される。
磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2は、少なくとも固定磁性層8とフリー磁性層10が非磁性層9を介して積層された積層部分を備える。反強磁性層7と固定磁性層8との間には交換結合磁界(Hex)が生じて固定磁性層8の磁化は一方向を向いている。
固定磁性層8の磁化方向(P方向)は、固定磁性層8に作用する一方向性交換バイアス磁界より大きい磁界が作用しない限り一方向に固定されている。一方向性交換バイアス磁界は、図2に示す形態では、反強磁性層7との間で生じている交換結合磁界(Hex)である。また固定磁性層8が積層フェリ構造(第1磁性層/非磁性中間層/第2磁性層)であるとき、一方向性交換バイアス磁界は、反強磁性層7との間で生じる交換結合磁界(Hex)と、第1磁性層と第2磁性層間で作用するRKKY相互作用における結合磁界とを合わせた磁界である。
一方、フリー磁性層10の磁化方向(F方向)は固定磁性層8と違って外部磁界Hにより容易に変動する。
本実施形態では、磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2を構成するフリー磁性層10と非磁性層9との間の界面は、磁石21の着磁面21aと平行な面方向(X−Y面方向)を向いている。
上記の構成では非磁性層9がCuで形成された巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)の構成であるが、例えば非磁性層9がAl2O3、MgO等の絶縁材料で形成されるとき、トンネル型磁気抵抗効果素子(TMR素子)として構成される。
図1,図2に示すように各磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2の固定磁性層8の磁化方向(P方向)は、Y1方向である。
図3は、各磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2のR−H曲線である。図3に示すように、無磁場状態(外部磁界が作用していない状態)のとき、電気抵抗値は最大値となっており、Y2方向(固定磁性層8の磁化方向(P方向)とは逆方向)の外部磁界Hが作用しても電気抵抗値は一定のままである。
一方、Y1方向(固定磁性層8の磁化方向(P方向)と同方向)の外部磁界Hが作用すると曲線HR3と曲線HR3で囲まれたヒステリシスループHRが形成される。磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2の最大抵抗値と最低抵抗値の中間値であって、ヒステリシスループHRの広がり幅の中心値がヒステリシスループHRの「中点」である。そしてヒステリシスループHRの中点での磁界の強が層間結合磁界(−Hin)の大きさである。
図3に示す層間結合磁界(−Hin)を得るには、例えば、非磁性層9の膜厚を18〜22Åの範囲内で調整する。
磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2が、図3に示す層間結合磁界(−Hin)を備えるとき、無磁場状態(外部磁界が作用していない状態)にてフリー磁性層10の磁化方向(F方向)は、固定磁性層8の磁化方向(P方向)に対して逆方向を向いている(図1,図2参照)。すなわち無磁場状態でのフリー磁性層10の磁化方向(F方向)は、Y2方向である。
図4に示すように、2個の磁気抵抗効果素子A1と、2個の磁気抵抗効果素子A2とでA相のブリッジ回路が構成されている。一方の磁気抵抗効果素子A1と一方の磁気抵抗効果素子A2とがA相第1出力端子(Va1)50を介して直列接続されている。また、他方の磁気抵抗効果素子A1と、他方の磁気抵抗効果素子A2とがA相第2出力端子(Va2)51を介して直列接続される。符号52は入力端子、符号60はグランド端子である。
また本実施形態ではもう一つB相のブリッジ回路が、2個の磁気抵抗効果素子B1と2個の磁気抵抗効果素子B2とで構成されている。一方の磁気抵抗効果素子B1と一方の磁気抵抗効果素子B2とがB相第1出力端子(Vb1)54を介して直列接続され、他方の磁気抵抗効果素子B1と他方の磁気抵抗効果素子B2とがB相第2出力端子(Vb2)55を介して直列接続されている。
図1に示すように、図4に示すブリッジ回路にて直列接続される磁気抵抗効果素子どうしの中心間の間隔はλ/2となっている。
磁気センサ22が磁石21に対してX1方向に相対移動すると、各磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2には、磁石21の着磁面21aから外部磁界H1,H2が進入する。図1に示すように外部磁界H1と外部磁界H2の方向は互いに逆方向であり、これら外部磁界H1,H2の方向は、固定磁性層8の磁化方向(P方向)に対して直交方向である。またちょうど磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2が磁極上に位置すると、磁気抵抗効果素子に対して磁場成分は垂直磁場が支配的となり、無磁場状態(外部磁場が作用していない状態)となる。
図5は、固定磁性層8の磁化方向(P方向)に対して直交する方向、すなわち図1の外部磁界H1,H2の方向であるX1−X2方向に外部磁界が作用したときの各磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2の電気抵抗変化を示している。また図5には、グラフのd点、e点、及びf点での固定磁性層8及びフリー磁性層10の磁化方向が示されている。
図5に示すd点は、無磁場状態である。よって固定磁性層8の磁化方向(P方向)と、フリー磁性層10の磁化方向(F方向)は逆方向となっている。したがって磁気抵抗効果素子の電気抵抗値は最大値となる。無磁場状態からX1方向に外部磁界が作用したときの磁気抵抗効果素子の電気抵抗変化について説明する。なおX2方向の外部磁界に対する磁気抵抗効果素子の電気抵抗変化は、X1方向に外部磁界が作用したときと同じであるため説明を省略する。
X1方向に向く外部磁界(図1での外部磁界H1と同方向)の磁界強度が強くなると、徐々に、フリー磁性層10の磁化方向(F方向)はX1方向に回転する。そして図5のe点で、フリー磁性層10の磁化方向(F方向)はX1方向を向く。このとき固定磁性層8の磁化方向(P方向)は、Y1方向のままである。したがって、固定磁性層8の磁化方向(P方向)とフリー磁性層10の磁化方向(F方向)は直交関係となる。図5に示すように、磁気抵抗効果素子の電気抵抗値は、d点からe点にかけて徐々に小さくなる。
固定磁性層8の磁化方向(P方向)は、無磁場状態から図5のe点に示す外部磁界の磁界強度αまでは、Y1方向に固定されている。しかし、外部磁界が磁界強度αよりも強くなると、磁界強度が、固定磁性層8に作用する一方向性交換バイアス磁界を上回り、固定磁性層8の磁化方向(P方向)が、徐々にX1方向に回転し始める。図5にはf点での固定磁性層8の磁化方向(P方向)がY1方向からX1方向に向けて回転していることが示されている。一方、フリー磁性層10の磁化方向(F方向)はX1方向を向いている。よって図5のf点では、固定磁性層8の磁化方向(P方向)とフリー磁性層10の磁化方向(F方向)間の角度が、e点での直交状態よりも小さくなる。このため、図5に示すようにe点からf点にかけて徐々に電気抵抗値は小さくなる。
ところで、一方向性交換バイアス磁界は、100〜500Oe程度である。一方、磁気エンコーダ20の磁石21から磁気センサ22に作用する磁界範囲は、0〜1000Oe程度である。よって、磁気センサ22がX1方向に相対移動したときに、磁石21から磁気センサ22に対して磁界強度αよりも大きい外部磁界が作用する相対移動領域が存在する。
そして、上記の相対移動領域が存在しても、本実施形態の磁気抵抗効果素子A1,A2,B1,B2を用いれば、図5に示すようにd点からf点にかけて漸次的に電気抵抗値が小さくなり、図12の従来例と違って、d点からf点の間に電気抵抗値の増減傾向が変化する変曲点が形成されない。
図6は、直列接続される磁気抵抗効果素子A1及び磁気抵抗効果素子A2とのX1方向への相対移動距離に対する電気抵抗変化と中点電位(図4のVa1)を示すグラフである。このグラフの左側の縦軸が、磁気抵抗効果素子A1と磁気抵抗効果素子A2の電気抵抗値(Ω)を示し、右側の縦軸が、中点電位(V)である。入力電圧は5Vである。
図1に示すように磁気抵抗効果素子A1と磁気抵抗効果素子A2の中心間距離はλ/2であるので、図6に示すように、磁気抵抗効果素子A1の抵抗波形と、磁気抵抗効果素子A2の抵抗波形にはλ/2の位相差がある。
また図6に示すように、中点電位を示す出力波形には、出力ピーク以外に図13の従来例に示すような突出点が形成されないことがわかる。このように突出点が形成されないのは、図5に示すようにピーク以外に、磁気抵抗効果素子の電気抵抗値の増減傾向が変化する変曲点が存在しないためである。
以上により本実施形態では、従来に比べて、誤作動を抑制でき、検出精度を向上させることが可能である。
本実施形態の磁気エンコーダ20は、図1に示すように磁気センサ22が磁石21に対して直線的に相対移動するものであったが、図7に示すように、例えば表面89aにN極とS極とが交互に着磁された回転ドラム89と磁気センサ22とを有し、回転ドラム89の回転によって得られた出力により、回転速度や回転数、回転方向を検知できる回転型の磁気エンコーダであってもよい。磁気センサ22は、回転ドラム89の表面89aから離れた位置に配置されている。
また図1では、隣り合う磁気抵抗効果素子の中心間距離がλ/4であったが、磁気抵抗効果素子の配置は図1以外であってもよい。例えば、図8では、2個の磁気抵抗効果素子A1と、図示しない2個の固定抵抗素子CとがA相のブリッジ回路を構成し、2個の磁気抵抗効果素子B1と、図示しない2個の固定抵抗素子DとがB相のブリッジ回路を構成している。固定抵抗素子C,Dは、図4の回路図では磁気抵抗効果素子A2,B2の位置に配置される。
隣り合う磁気抵抗効果素子A1,B1の中心間距離はλ/2である。図1は、一周期(λ)の間にA相及びB相とで夫々、2パルス分の出力があり、またA相とB相とでλ/4の位相ずれがある磁気エンコーダの構成であるが、図8は、一周期(λ)の間にA相及びB相とで夫々、1パルス分の出力があり、またA相とB相とでλ/2の位相ずれがある磁気エンコーダの構成である。
7 反強磁性層
8 固定磁性層
9 非磁性層
10 フリー磁性層
11 保護層
20 磁気エンコーダ
21 磁石
22 磁気センサ
23 基板
50 A相第1出力端子(Va1)
51 A相第2出力端子(Va2)
52 入力端子(Vdd)
54 B相第1出力端子(Vb1)
55 B相第2出力端子(Vb2)
66 グランド端子(GND)
89 回転ドラム
A1,A2,B1,B2 磁気抵抗効果素子
F (フリー磁性層の)磁化方向
P (固定磁性層の)磁化方向
8 固定磁性層
9 非磁性層
10 フリー磁性層
11 保護層
20 磁気エンコーダ
21 磁石
22 磁気センサ
23 基板
50 A相第1出力端子(Va1)
51 A相第2出力端子(Va2)
52 入力端子(Vdd)
54 B相第1出力端子(Vb1)
55 B相第2出力端子(Vb2)
66 グランド端子(GND)
89 回転ドラム
A1,A2,B1,B2 磁気抵抗効果素子
F (フリー磁性層の)磁化方向
P (固定磁性層の)磁化方向
Claims (2)
- 相対移動方向に交互にN極とS極が着磁された着磁面を有する磁界発生部材の前記着磁面から離れた位置に配置され、外部磁界に対して電気抵抗値が変化する磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗効果素子を有して成る磁気センサにおいて、
前記磁気抵抗効果素子は、固定磁性層と、外部磁界により磁化変動するフリー磁性層と、前記固定磁性層とフリー磁性層との間に位置する非磁性層との積層構造を備え、
無磁場状態では、前記固定磁性層の磁化方向は、前記着磁面と平行な面内であって前記相対移動方向に対して直交する方向に向けられるとともに、前記フリー磁性層の磁化方向は、前記固定磁性層の磁化方向に対して逆方向に向けられていることを特徴とする磁気センサ。 - 請求項1に記載された磁気センサと、前記磁界発生部材とを有してなることを特徴とする磁気エンコーダ。
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JP2008135904A JP2009281938A (ja) | 2008-05-23 | 2008-05-23 | 磁気センサ及び磁気エンコーダ |
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Cited By (2)
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JP2015232473A (ja) * | 2014-06-09 | 2015-12-24 | Dmg森精機株式会社 | 位置検出装置 |
JP2017009400A (ja) * | 2015-06-22 | 2017-01-12 | Tdk株式会社 | 磁界発生体、磁気センサシステムおよび磁気センサ |
-
2008
- 2008-05-23 JP JP2008135904A patent/JP2009281938A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2015232473A (ja) * | 2014-06-09 | 2015-12-24 | Dmg森精機株式会社 | 位置検出装置 |
JP2017009400A (ja) * | 2015-06-22 | 2017-01-12 | Tdk株式会社 | 磁界発生体、磁気センサシステムおよび磁気センサ |
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