JP2009272057A - 回転陽極型x線管装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】信頼性が高く、製品寿命の長期化を図ることが可能な回転陽極型X線管装置を提供する。
【解決手段】回転陽極型X線管装置は、電子衝突面Sに電子eが衝突されることによってX線xを発生させる陽極ターゲット2と、電子衝突面にほぼ垂直に衝突させる電子を放出する電子放出源8と、電子の軌道を取り囲み、電子衝突面にて反跳した反跳電子を捕獲する内面を有した反跳電子捕獲構造体9と、真空外囲器1と、を備えている。反跳電子捕獲構造体9の内面は、回転対称形状である。上記内面の中心軸は、電子衝突面Sにほぼ垂直である。
【選択図】 図1
【解決手段】回転陽極型X線管装置は、電子衝突面Sに電子eが衝突されることによってX線xを発生させる陽極ターゲット2と、電子衝突面にほぼ垂直に衝突させる電子を放出する電子放出源8と、電子の軌道を取り囲み、電子衝突面にて反跳した反跳電子を捕獲する内面を有した反跳電子捕獲構造体9と、真空外囲器1と、を備えている。反跳電子捕獲構造体9の内面は、回転対称形状である。上記内面の中心軸は、電子衝突面Sにほぼ垂直である。
【選択図】 図1
Description
この発明は、回転陽極型X線管装置に関する。
X線画像診断装置や非破壊検査装置などに搭載され、X線の発生源として使用される回転陽極型X線管装置が知られている。この回転陽極型X線管装置は、電子の衝突によりX線を発生する陽極ターゲットと、陽極ターゲットに向けて電子を放出する電子放出源と、少なくとも陽極ターゲット及び電子放出源の周囲を所定の真空度に維持する真空外囲器とを備えている。
電子放出源から放出された電子は、陽極ターゲットと電子放出源との間に印加された電圧によって加速され、陽極ターゲットの焦点面に衝突する。陽極ターゲットに衝突した電子は、陽極ターゲット上で熱とX線に変換され、発生したX線の一部が真空外囲器に設けられたX線透過窓から出力される。
ところが、陽極ターゲットに衝突した電子の中には、熱やX線に変換されずに反跳電子となって散乱を繰り返すものがある。反跳電子の方向や強度は、印加電圧や焦点近傍の電界によって変化するが、通常、入射電子の約40%以上があらゆる方向に反跳することになる。
反跳電子は、陽極ターゲットの電子衝突面ではない部分に帰還したり、真空外囲器に突入したりするが、これら反跳電子の帰還もしくは突入によっても熱やX線が発生する。
反跳電子によって発生したX線は、陽極ターゲットの焦点面から発生するX線に対するノイズ成分となり、均一なX線を得る妨げとなる。また、反跳電子によって発生する熱は、陽極ターゲットやX線透過窓などの温度を上昇させる要因となる。
そこで、これらの問題を解決するために、発生した反跳電子を捕獲して、陽極ターゲットに帰還する反跳電子や、真空外囲器に突入する反跳電子を低減させた回転陽極型X線管装置が提案されている(例えば、特許文献1乃至4参照)。この回転陽極X線管は、陽極ターゲットと電子放出源との間に、反跳電子を捕獲するためのトラップとして機能する反跳電子捕獲構造体を具備している。
反跳電子捕獲構造体は、電子放出源から陽極ターゲットに向かう電子の軌道を取り囲むように円筒状に形成されていて、その内周面を利用して、陽極ターゲットにて反跳した反跳電子を捕獲する。
特開2007−149452号公報
特開平5−21028号公報
米国特許第5689542号明細書
米国特許第4309637号明細書
反跳電子捕獲構造体は、電子放出源から陽極ターゲットに向かう電子の軌道を取り囲むように円筒状に形成されていて、その内周面を利用して、陽極ターゲットにて反跳した反跳電子を捕獲する。
通常、陽極ターゲットには、極めて高いエネルギーの電子が投入される。そのため、反跳電子捕獲構造体の発熱は膨大なものとなり、強烈な冷却が必要となる。これにより、反跳電子捕獲構造体の発熱部と冷却部には大きな温度勾配が生じ、結果として、反跳電子捕獲構造体及びその真空外囲器との接合部に大きな熱応力が発生する。
一般に、反跳電子捕獲構造体は、発生した膨大な熱量をできるだけ早く外部に逃がすために、熱伝導率の良い銅材を基本として構成されることが多い。特に、純銅は、熱伝導率やろう流れ性に優れていて、且つ比較的安価であるため、採用されることが多い。
しかしながら、純銅は、上述のような熱応力の繰り返しによって、表面荒れと呼ばれる2次再結晶化を起こしやすい。2次再結晶化が進行すると、粒界すべりなどによって、結晶粒界からのガスの発生や表面粗さの低下などが生じ、結果として、耐電圧劣化につながる。即ち、純銅を材料とした反跳電子捕獲構造体には、所謂寿命が短い、という欠点がある。
そこで、近年、純銅の短寿命を改善するために、純銅に酸化物を分散させて機械強度を高めた酸化物分散強化銅が採用されるようになっている。例えば、アルミナ(酸化アルミ)分散銅などがそれにあたる。また、純銅に微量の異種金属を混ぜて銅合金にすることで、機械的強度を高めた強化銅合金も採用されるようになっている。例えば、クロムやタングステンなどの銅合金がそれにあたる。
酸化物分散強化銅や強化銅合金は、いずれも銅の高い熱伝導率をある程度維持したまま、機械強度を高めることを目的に採用されていて、これらを材料として使用することで、前述した純銅の欠点はある程度改善される。
しかしながら、酸化物分散強化銅や強化銅合金は、純銅に比べて延性が低いため、一度結晶割れが生じた場合に、その割れがクラックとなり、どんどん進展して、最終的に大気貫通に至ることがある。即ち、酸化物分散強化銅や強化銅合金を材料とした反跳電子捕獲構造体には、真空外囲器の内部の真空気密が維持できなくなるという欠点がある。
従来におけるアルミナ分散銅を材料とした反跳電子捕獲構造体の内周面に発生したクラックは、反跳電子捕獲構造体の半径方向に沿って進展する。そして、クラックが大気貫通する恐れがある。
特に、アルミナ分散銅などの酸化物分散強化銅は、その素材の製造方法に、引き抜きもしくは押し出しが用いられているため、これら引き抜きもしくは押し出しの影響によって、素材に特定の結晶方向が生じていることが多い。しかも、反跳電子捕獲構造体には、加熱によって半径方向に拡大しようとする大きな力が作用する傾向がある。したがって、酸化物分散強化銅の結晶方向が反跳電子捕獲構造体の軸心方向と一致していると、反跳電子捕獲構造体には、結晶繊維と結晶繊維とを引き離すように力が作用するため、発生したクラックが反跳電子捕獲構造体の半径方向に進展しやすくなる。
さらに、酸化物分散銅や強化銅合金などを材料とした反跳電子捕獲構造体が回転陽極型X線管装置に採用された場合、発生したクラックが小さいうちは、耐電圧に影響が現れにくい。そのため、知らぬ間にクラックが進展してゆき、最終的に大気貫通した時点で、はじめて回転陽極型X線管装置が使用不可能となることもある。即ち、突如として使用不可に陥るという、医療用として好ましくないライフエンドとなる可能性がある。
また、反跳電子捕獲構造体は、銅をろう材としたろう付けによって真空外囲器に接合されることが多いが、反跳電子捕獲構造体の材料に酸化物分散銅や強化銅合金などが使用されていると、反跳電子捕獲構造体に対するろう流れ性が悪くなり、反跳電子捕獲構造体と真空外囲器との接合部分において、応力剥がれなどが発生しやすくなるという欠点もある。
まとめると、反跳電子捕獲構造体は、膨大な熱が発生するため、熱伝導率の良い銅材の使用と内部強制液冷の構造が採用される。しかしながら、反跳電子捕獲構造体の材料に純銅が使用された場合は、使用中の熱応力の繰り返しによって、表面荒れによるガスの放出や、耐電圧劣化などによる短寿命化が生じる。一方、寿命を少しでも長くするために用いられる酸化物分散強化銅や強化銅合金は、クラックが進行しやすいため、反跳電子捕獲構造体の材料に酸化物分散強化銅や強化銅合金が使用された場合は、突如として貫通リーク不良となる危険性がある。
また、反跳電子捕獲構造体がある場合でも、反跳電子の一部はX線透過窓を依然として衝撃してX線透過窓の温度を上昇させている。すると、真空外囲器及びハウジング間を充たしている冷却液と接触する側のX線透過窓の表面で、冷却液を温度上昇させて分解する。その結果、その分解生成物がX線透過窓の外表面に堆積することによりX線透過窓から冷却液への熱伝達が悪化し、更なる温度上昇をもたらすことになる。
また、反跳電子捕獲構造体がある場合でも、反跳電子の一部はX線透過窓を依然として衝撃してX線透過窓の温度を上昇させている。すると、真空外囲器及びハウジング間を充たしている冷却液と接触する側のX線透過窓の表面で、冷却液を温度上昇させて分解する。その結果、その分解生成物がX線透過窓の外表面に堆積することによりX線透過窓から冷却液への熱伝達が悪化し、更なる温度上昇をもたらすことになる。
そして、回転陽極X線管の使用時間の経過とともに最終的にX線透過窓の温度が過度に上昇し、X線透過窓の接合破壊による真空気密不良が発生する可能性がある。また、冷却液が水系冷却液の場合には沸騰による気泡発生によるアーチファクトが診断画像に発生する可能性がある。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、信頼性が高く、製品寿命の長期化を図ることが可能な回転陽極型X線管装置を提供することにある。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、信頼性が高く、製品寿命の長期化を図ることが可能な回転陽極型X線管装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の態様に係る回転陽極型X線管装置は、
回転可能であり、電子衝突面を有し、前記電子衝突面に電子が衝突されることによってX線を発生させる陽極ターゲットと、
前記電子衝突面にほぼ垂直に衝突させる電子を放出する電子放出源と、
前記電子放出源から前記電子衝突面に向かう電子の軌道を取り囲み、前記電子衝突面にて反跳した反跳電子を捕獲する内面を有した反跳電子捕獲構造体と、
前記陽極ターゲット及び電子放出源を収容し、前記反跳電子捕獲構造体の内側を含み、内部を真空に維持する真空外囲器と、を備え、
前記反跳電子捕獲構造体の内面は、回転対称形状であり、
前記内面の中心軸は、前記電子衝突面にほぼ垂直である。
回転可能であり、電子衝突面を有し、前記電子衝突面に電子が衝突されることによってX線を発生させる陽極ターゲットと、
前記電子衝突面にほぼ垂直に衝突させる電子を放出する電子放出源と、
前記電子放出源から前記電子衝突面に向かう電子の軌道を取り囲み、前記電子衝突面にて反跳した反跳電子を捕獲する内面を有した反跳電子捕獲構造体と、
前記陽極ターゲット及び電子放出源を収容し、前記反跳電子捕獲構造体の内側を含み、内部を真空に維持する真空外囲器と、を備え、
前記反跳電子捕獲構造体の内面は、回転対称形状であり、
前記内面の中心軸は、前記電子衝突面にほぼ垂直である。
この発明によれば、信頼性が高く、製品寿命の長期化を図ることが可能な回転陽極型X線管装置を提供することができる。
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。
図1に示すように、回転陽極型X線管装置は、X線画像診断装置や非破壊検査装置などに搭載されるものである。回転陽極型X線管装置は、回転陽極型X線管15と、回転陽極型X線管を収容したハウジング10と、ハウジングの内部に満たされた冷却液17とを備えている。冷却液17は、ハウジング10及び回転陽極型X線管15間に設けられている。冷却液17としては、水を主成分とした電気伝導率が低い非油脂系冷却液、もしくは周知の絶縁油などが使用される。
図1に示すように、回転陽極型X線管装置は、X線画像診断装置や非破壊検査装置などに搭載されるものである。回転陽極型X線管装置は、回転陽極型X線管15と、回転陽極型X線管を収容したハウジング10と、ハウジングの内部に満たされた冷却液17とを備えている。冷却液17は、ハウジング10及び回転陽極型X線管15間に設けられている。冷却液17としては、水を主成分とした電気伝導率が低い非油脂系冷却液、もしくは周知の絶縁油などが使用される。
回転陽極型X線管15は、電子eの衝突によりX線xを放射する陽極ターゲット2と、陽極ターゲット2に対向配置され、この陽極ターゲット2に向けて電子eを放出する陰極5と、陽極ターゲット2と陰極5との間に配置され、陽極ターゲット2にて反跳した反跳電子reを捕獲する反跳電子捕獲構造体9と、陽極ターゲット2、陰極5及び反跳電子捕獲構造体9を収容し、これらの周囲を所定の真空度に維持する真空外囲器1とを備えている。
陽極ターゲット2は、円盤状に形成されていて、その半径方向の中心部が回転体3によって支持されている。陽極ターゲット2は、陽極2aと、この陽極の外面の一部に設けられたターゲット層2bとを有している。陽極2aは、回転体3に固定されている。ここでは、陽極2aは、回転体3と一体に形成されている。陽極ターゲット2は、回転軸a1を中心に回転可能である。
陽極ターゲット2は、電子衝突面Sを有している。この実施の形態において、電子衝突面Sは、ターゲット層2bの表面である。また、電子衝突面Sは、陽極ターゲット2の回転軸a1に垂直な平面である。
回転体3は、固定体4によって回転可能に支持されていて、真空外囲器1の外部に配設されたステータコイル7とともに、陽極ターゲット2を回転させるためのモータ18を構成している。陽極ターゲット2を回転させていれば、陰極5からの電子eが陽極ターゲット2の一個所に集中照射されない。このため、回転陽極型X線管装置が長時間にわたり使用されても、陽極ターゲット2が過加熱状態に陥ることはない。
回転体3は、筒状に形成され、この回転体の回転動作の中心軸となる回転軸a1に沿って延出している。回転体3は、この回転体の内側に、円形枠状に窪んだ凹部3aを有している。
固定体4は柱状に形成されている。固定体4の両端部は、真空外囲器1に固定されている。固定体4の両端部は、真空外囲器1の外部に露出されている。固定体4は、陽極ターゲット2及び回転体3と同軸的に設けられ、回転軸a1に沿って延出している。固定体4は、この固定体の外側に、円形枠状に突出した凸部4aを有している。固定体4は、回転体3を回転可能に支持している。
凸部4aが凹部3aの内部に嵌合された状態で、固定体4は、回転体3の内部に嵌合されている。凹部3a及び凸部4aは、回転体3及び固定体4の回転軸a1に沿った方向への相対的なズレを規制するものである。
回転体3及び固定体4は、互いに隙間を置いて設けられている。回転体3及び固定体4間の隙間に、潤滑剤としての金属潤滑剤が充填されている。上記したように、回転陽極型X線管15はすべり軸受を使っている。
陰極5は、真空外囲器1との電気的絶縁をはかるために、絶縁部材6を介して真空外囲器1に取り付けられている。陰極5は、電子放出源8を有している。電子放出源8は、陽極ターゲット2に対応する部位に配置され、電子衝突面Sにほぼ垂直に衝突させる電子eを放出するものである。絶縁部材6の素材としては、例えばアルミナセラミックスなどが使用される。
真空外囲器1は、陽極ターゲット2、陰極5、回転体3及び固定体4等を収容している。真空外囲器1は、反跳電子捕獲構造体9の内面側を含み、内部を真空に維持するものである。真空外囲器1は、陽極ターゲット2から出射されるX線xを透過させるX線透過窓1aを有している。ハウジング10も、X線xを透過させるX線透過窓10aを有している。X線透過窓1a及びX線透過窓10aは対向している。
図1及び図2に示すように、反跳電子捕獲構造体9は、円筒状である。なお、図2において、反跳電子捕獲構造体9の断面形状を示すため、一部を除いた反跳電子捕獲構造体9を示している。反跳電子捕獲構造体9は、陰極5の電子放出源8から陽極ターゲット2に向かう電子eの軌道を取り囲むよう形成されている。反跳電子捕獲構造体9は、電子放出源8から放出されて陽極ターゲット2にて反跳した電子を捕獲する内面21を有している。
反跳電子捕獲構造体9の素材としては、熱伝導率が良好で、且つ2次再結晶化が発生しにくい素材として、例えばアルミナ分散銅(酸化物分散強化銅)が使用される。反跳電子捕獲構造体9は、内面21に、陽極ターゲット2から離間するにつれて内径が拡大するテーパを有している。反跳電子捕獲構造体9の内面21は、回転対称形状である。内面21の中心軸a2は、電子衝突面Sにほぼ垂直である。
上記回転陽極型X線管装置において、ハウジング10は、架台30に載置され、固定されている。架台30は、ハウジング10を傾けて固定できるため、X線xを出射させる方向を調整することができる。
次に、回転陽極型X線管装置の動作について説明する。
まず、陰極5の電子放出源8から電子eが放出される。放出された電子eは、陽極ターゲット2と陰極5との間に印加されている高い電圧により加速され、陽極ターゲット2の電子衝突面Sにほぼ垂直に衝突する。陽極ターゲット2に衝突した電子eは、熱とX線xに変換され、発生したX線xの一部がX線透過窓1aを透過して、X線透過窓10aからハウジング10の外部に出力される。
まず、陰極5の電子放出源8から電子eが放出される。放出された電子eは、陽極ターゲット2と陰極5との間に印加されている高い電圧により加速され、陽極ターゲット2の電子衝突面Sにほぼ垂直に衝突する。陽極ターゲット2に衝突した電子eは、熱とX線xに変換され、発生したX線xの一部がX線透過窓1aを透過して、X線透過窓10aからハウジング10の外部に出力される。
しかしながら、陽極ターゲット2の電子衝突面Sに衝突した電子eの一部は、熱やX線xに変換されることなく、反跳電子reとなって繰り返し散乱する。陽極ターゲット2にて反跳した反跳電子reは、反跳電子捕獲構造体9に捕獲される。
反跳電子捕獲構造体9に反跳電子reが入射すると、反跳電子捕獲構造体9、特に内面21側には、膨大な熱が発生する。しかしながら、電子eは電子衝突面Sにほぼ垂直に衝突するものであり、内面21の中心軸a2は電子衝突面Sにほぼ垂直である。反跳電子reは、内面21全体に均一に入射されるため、内面21の一部への熱応力の集中を抑制することができる。
このため、反跳電子捕獲構造体9の内面21側でのクラックの発生を抑制することができる。これにより、反跳電子reが内面21全体に均一に入射される反跳電子捕獲構造体9の寿命は、反跳電子reが内面21の一部に集中して入射される反跳電子捕獲構造体に比べて飛躍的に長くなる。
次に、電子eを電子衝突面Sにほぼ垂直に衝突させ、内面21の中心軸a2を電子衝突面Sにほぼ垂直としたことによる効果について詳細に説明する。
陽極ターゲット2での反跳電子reは、電子eが衝突した焦点を中心に360°どの方向にも散乱するが、従来、陽極ターゲット2の電子衝突面の傾き角と、焦点形状の影響で、X線透過窓1a、10a側で反跳電子reがより多くなる。これにより、陽極ターゲット2に温度の差が生じ、反跳電子捕獲構造体9の内面21で発生する熱応力の集中が、特にX線透過窓1a、10a側に発生しやすい。
陽極ターゲット2での反跳電子reは、電子eが衝突した焦点を中心に360°どの方向にも散乱するが、従来、陽極ターゲット2の電子衝突面の傾き角と、焦点形状の影響で、X線透過窓1a、10a側で反跳電子reがより多くなる。これにより、陽極ターゲット2に温度の差が生じ、反跳電子捕獲構造体9の内面21で発生する熱応力の集中が、特にX線透過窓1a、10a側に発生しやすい。
従来、この熱応力の集中により反跳電子捕獲構造体9の内面21側にクラックが発生する場合があり、この場合、発生したクラックの先端に熱応力が一層集中し、クラックはどんどん進行していく。このため、従来の回転陽極型X線管装置の多くは上述した現象で不具合に至り、従来の反跳電子捕獲構造体に複数個のクラックが同時に確認されることはあまりない。また、上述したように、熱応力が加わる方向は、図2で言うと、反跳電子捕獲構造体9の内径が広げられる方向である。
図3及び図4は、陽極ターゲット2への電子eの入射角度によって反跳電子reの分布がどのように変わるかを定性的に示したものである。電子eの陽極ターゲットへの入射点を始点とし、分布曲線の任意の点を終点とするベクトルは、その方向が反跳電子reの放出される方向であり、その大きさは反跳電子reの放出数に比例する値として表現されている。
図4は、従来の回転陽極型X線管装置を用いた場合の反跳電子reの分布を示す図であり、電子衝突面Sに垂直な方向から傾斜した方向から電子eが入射される状態を誇張して示している。従来の場合は、電子eが陽極ターゲット2に入射する方向と反対方向に反跳電子reがより放出され易いことを示している。そして、従来の回転陽極型X線管装置では、反跳電子捕獲構造体の内面で発生する熱応力の集中がとくにX線透過窓1a、10a側に発生しやすいことを良く説明している。
これに対し、図3に示すように、この発明の実施の形態によれば、電子放出源8から発生する電子(熱電子)eが陽極ターゲット2の電子衝突面Sに入射される方向は、ほぼ電子衝突面Sに垂直である。また、上述したように、反跳電子捕獲構造体9の内面21は、回転対称形状であり、内面21の中心軸a2は、電子衝突面Sにほぼ垂直である。
このため、反跳電子reは中心軸a2に対して回転対称な分布をもって反跳電子捕獲構造体9を衝撃する。これにより、反跳電子reの衝撃による反跳電子捕獲構造体9の温度上昇が全体的に均一となり、反跳電子捕獲構造体9の局所的な温度の過上昇を防止することができ、回転陽極型X線管15の製品寿命の長期化を図ることができる。
また、図3及び図4に示した反跳電子reの分布から分かるように、X線透過窓1aを衝撃する反跳電子reの数も減少する。このため、X線透過窓1aの温度上昇が軽減し、冷却液17との接触面で反応生成物が堆積することによる製品寿命の低下を抑制することができる。
上記したことから、内面21側でのクラックの発生を抑制しつつ、反跳電子捕獲構造体9の熱容量の増加を図ることができるため、反跳電子捕獲構造体9を強制冷却している部分での熱交換率を向上させることができる。これにより、回転陽極型X線管装置の冷却効率を全体的に向上させることができる。
上記したように構成された回転陽極型X線管装置によれば、電子放出源8は、電子衝突面Sにほぼ垂直に衝突させる電子eを放出するものである。反跳電子捕獲構造体9は、電子放出源8から電子衝突面Sに向かう電子eの軌道を取り囲み、電子衝突面Sにて反跳した反跳電子reを捕獲する内面21を有している。反跳電子捕獲構造体9の内面21は、回転対称形状である。内面21の中心軸a2は電子衝突面Sにほぼ垂直である。
電子衝突面Sにて反跳した反跳電子reは、内面21全体に均一に入射されるため、反跳電子捕獲構造体9の内面21側でのクラックの発生を抑制することができる。クラックの発生を抑制することにより、真空外囲器1の内部の真空度を良好に維持することができる。
上記したことから、信頼性が高く、製品寿命の長期化を図ることが可能な回転陽極型X線管装置を得ることができる。
上記したことから、信頼性が高く、製品寿命の長期化を図ることが可能な回転陽極型X線管装置を得ることができる。
次に、この発明の他の実施の形態に係る回転陽極型X線管装置について詳細に説明する。なお、この実施の形態において、他の構成は上述した実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図5に示すように、電子衝突面Sは、陽極ターゲット2の回転軸a1に垂直な平面に対し、電子放出源8と反対側に5°乃至20°の角度θをなす錐面である。
電子放出源8は、電子衝突面Sにほぼ垂直に衝突させる電子eを放出するものである。反跳電子捕獲構造体9の内面21は、回転対称形状である。内面21の中心軸a2は電子衝突面Sにほぼ垂直である。このため、内面21の中心軸a2は、陽極ターゲット2の回転軸a1から傾いている。
上記したように構成された回転陽極型X線管装置によれば、電子放出源8は、電子衝突面Sにほぼ垂直に衝突させる電子eを放出するものである。反跳電子捕獲構造体9は、電子放出源8から電子衝突面Sに向かう電子eの軌道を取り囲み、電子衝突面Sにて反跳した反跳電子reを捕獲する内面21を有している。反跳電子捕獲構造体9の内面21は、回転対称形状である。内面21の中心軸a2は電子衝突面Sにほぼ垂直である。電子衝突面Sは、陽極ターゲット2の回転軸a1に垂直な平面に対し、電子放出源8と反対側に5°乃至20°の角度θをなす錐面である。
電子衝突面Sにて反跳した反跳電子reは、内面21全体に均一に入射されるため、反跳電子捕獲構造体9の内面21側でのクラックの発生を抑制することができる。クラックの発生を抑制することにより、真空外囲器1の内部の真空度を良好に維持することができる。
上記したことから、信頼性が高く、製品寿命の長期化を図ることが可能な回転陽極型X線管装置を得ることができる。
上記したことから、信頼性が高く、製品寿命の長期化を図ることが可能な回転陽極型X線管装置を得ることができる。
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
1…真空外囲器、1a…X線透過窓、2…陽極ターゲット、2a…陽極、2b…ターゲット層、3…回転体、4…固定体、5…陰極、8…電子放出源、9…反跳電子捕獲構造体、10…ハウジング、10a…X線透過窓、15…回転陽極型X線管、17…冷却液、21…内面、30…架台、a1…回転軸、a2…中心軸、θ…角度、S…電子衝突面、x…X線、e…電子、re…反跳電子。
Claims (3)
- 回転可能であり、電子衝突面を有し、前記電子衝突面に電子が衝突されることによってX線を発生させる陽極ターゲットと、
前記電子衝突面にほぼ垂直に衝突させる電子を放出する電子放出源と、
前記電子放出源から前記電子衝突面に向かう電子の軌道を取り囲み、前記電子衝突面にて反跳した反跳電子を捕獲する内面を有した反跳電子捕獲構造体と、
前記陽極ターゲット及び電子放出源を収容し、前記反跳電子捕獲構造体の内側を含み、内部を真空に維持する真空外囲器と、を備え、
前記反跳電子捕獲構造体の内面は、回転対称形状であり、
前記内面の中心軸は、前記電子衝突面にほぼ垂直である回転陽極型X線管装置。 - 前記電子衝突面は、前記陽極ターゲットの回転軸に垂直な平面である請求項1に記載の回転陽極型X線管装置。
- 前記電子衝突面は、前記陽極ターゲットの回転軸に垂直な平面に対し、前記電子放出源と反対側に5°乃至20°の角度をなす錐面である請求項1に記載の回転陽極型X線管装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008118930A JP2009272057A (ja) | 2008-04-30 | 2008-04-30 | 回転陽極型x線管装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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WO2012033027A1 (ja) * | 2010-09-10 | 2012-03-15 | 株式会社 日立メディコ | X線管装置及びその製造方法とx線画像診断装置 |
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2008
- 2008-04-30 JP JP2008118930A patent/JP2009272057A/ja not_active Abandoned
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